アルミン「君と歩いていくことが叶うその日まで」※アルアニ
アニは何か考えたかのようにして、重たい口を開いた。
アニ「アルミン、人には得意不得意があるだろ?」
アルミン「え…?」
アニ「あんたは頭が冴えている、それにできることなら他にもたくさんある。その頭が使えれば、この先色んな人を救える、別に───」
アニ「兵士でなくとも」
アニ「それなのに、何で兵士になったの?別に人の役に立つ以外はあるのだろうし…」
僕はその言葉に目を見開く。
アルアニNL
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風を切り苦しそうに飛ぶ。
それを見て僕は何でそこまで苦しそうに飛ぶのかを聞きたくなる。
しかし、それを聞けるほど、僕は馬鹿ではなかった。
いっそこのこと馬鹿だったら良かったのに。
馬鹿なら、君のその辛い所を和らげることも可能であったのに。
君は立体機動で空を駆け抜けるとき、何を思っているの?
そう聞きたい。先陣を切って、かけて行くその背はどこか重い重りを背負っているかのようだった。
表情や物事の捉え方も、僕らと年齢の差はそこまでないのに、どこか大人びていた。
僕はね、立体機動で空をとんでいるとき、いつもあることを思うんだ。
君の背負っている重りを僕にも分けて、と。
立体機動の訓練というのは、他の訓練に比べ、極めて点数が高く評価されるものであった。
その理由は多々あると思うが、基本的には兵士には一番必要な技術だからだと思う。
その為、立体機動の点数は今後の成績に関わるもであり、成績上位者はそれを落とさないようにしている。
訓練開始と共に、上位者と自分との実力の差がわかるものでもある。
「アルレルト訓練兵、行け」
教官の低く太い声に合図を出される。僕は立体機動のアンカーを木にさし、ガスを噴出した。
立体機動で肝心なことは、ガスを如何にどう吹かせるかの問題である。
それは、多少なりとも教えてもらいできるようになる。
しかし、その本質を理解し如何にどう扱うかは個人によって異なる。
それは感覚と慣れでしかわからないものだとも言える。
少しバラけて訓練兵はスタートするが、そこまでの誤差はない。
なので、腕の立つ者が一番巨人の模型を多く削ぎ、一番に着く。
残念のことに僕はあまり腕が立たない。なので、スタートが早かろうが遅かろうが対して変わらない。
巨人の模型がどこにあるのかは予想ができる。しかし、肝心なことに、それを削げるかどうかに意味があるのだ。
後ろからガスを噴出させる音がする。かなりのハイスピード。
そして、僕の脇を通り過ぎて行った。
僕の脇を通って行ったのはアニ。アニは上位者でもあり、また立体機動が得意でもある。
僕はそれに追い付こうとは頑張るが、無駄な悪足掻きでしかなかった。
しかし、幸いなことに下に巨人の模型があった。僕はそれに向かいブレードを構え、削いだ。
アルミン「ひとまず、平気かな…」
僕はそう呟いて最終地点へと向かった。
最終地点に着くなり、僕の目にはアニの姿が目に映った。
最終地点には三十人以上の訓練兵が辿り着いているのに、アニのことをすぐ見つけられることができた。
アニは立体機動装置を外していて、随分前に辿り着いたようだ。
エレン「お、アルミン聞いてくれよ。ミカサの奴また一番だったんだぜ?どうやったらあんなに速く動けるんだよ」
アルミン「流石ミカサ、すごいや」
僕はガチャガチャと音を立てながら、立体機動装置を外す。
エレンの瞳には驚きが映っている。表情はまるで好奇心旺盛な子供のようだ。
ミカサ「…エレンも充分にすごい…」
エレン「お前にすごいとか言われてもな…」
僕にとっては二人がすごいように思える。
スタート地点は同じだったのに。多少なりとも個人差はあるが、僕は二人に追い付くことができなかった。
立体機動のスタート地点も、訓練でのスタート地点でも、僕は遅れをとるばかり。
「訓練兵、集合」
教官の低い声で兵士達は、教官のもとまで走った。そして、整列する。
「発表する!」
教官は怒鳴る。僕はいまいちこの教官の怒鳴り声に慣れないでいる。
「一位、ミカサ・アッカーマン、ジャン・キルシュタイン。二位、ベルトルト・フーバー、三位、ライナー・ブラウン」
成績上位者の名前が次々と呼ばれていく。僕は彼女の名前がないかと、じっくりと聞いた。
「四位、アニ・レオンハート、五位、ユミル、六位、エレン・イェーガー、サシャ・ブラウス、コニー・スプリンガー」
彼女は四位。全体的に見てもかなりすごい方ではあり、やはり彼女には敵わないと思う。
「…以上だ。貴様等にはあっと一ヶ月の時間がある。まだ、一般の兵士よりも劣るものがいる。この一ヶ月は立体機動の訓練が多いので、心して訓練に励むように!解散」
「ハッ!!」
訓練兵の活気のある声が響き、敬礼をする。教官が去ると訓練兵達は敬礼をやめた。
僕はエレンの元へと向かう。その途中、彼女の脇を通った。
彼女の顔は無表情でまっさらな顔からは何の感情も読み取れなかった。
一体、何が彼女にあんな顔をさせるのだろうか、僕にはそれがわからなかった。
エレンを見つけると誰かと口論をしているのがわかった。
またジャンと喧嘩しているのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。
エレンに近付いていくと、エレンと口論をしているのは女性だということがわかった。
その人物は彼女みたいにポーカーフェイスが上手くて、感情が読み取れない人物。
ユミル「おいおい死に急ぎ野郎、難癖つけてくるんじゃねえよ」
エレン「お前、いつも手を抜いていたんだろ?何でだよ?!」
ユミルであった。
口調には苛つきが出ているが、表情からは何の感情も読み取れない。
ユミル「私が手を抜こうが勝手だろ?」
エレン「…っ!お前、それでも兵士かよ?!」
ユミル「ああ、兵士だよ。これでもな。しかし、エレン君よぉ…」
ユミルはヘラヘラと笑いながら、エレンにつめよった。
ユミル「こんな兵士にお前は立体機動で負けたんだぜ…?」
ユミルは痛い所を突いた。そのせいで、エレンは何も言えずに黙った。
エレンは兵士の理想を描いたような、まるで兵士の鏡と言っても良いほど。
エレンの言い分は正論だ、しかしそれを上回る理屈に負けることで、正論の正という文字を無くす。
ユミル「何も言えねえだろ?結局そんなもんなんだよ、せいぜい頑張るんだな…」
ユミルはそう言って踵を返し、エレンに背を向け、立ち去って行った。
エレン「クソッ…」
エレンは悔しそうに呟いた。
アルミン「エレン…」
エレン「なんだアルミンか、いたのか」
アルミン「いたのかって酷いなあ」
エレン「わりい」
エレンは僕に先ほどのことを隠すかのように、何事もなかったように笑った。
その笑いはいつもの輝いているエレンではなかった。そして、耳がほんのりと赤かった。
アルミン「そろそろ戻ろう。夕食がサシャに取られかねない」
エレン「それもそうだな、戻ろう」
僕とエレンは歩き出した。エレンは少し立ち止まり、恨めしげに後ろを見た。
そして僕に聞こえないように、
「次こそはユミルに勝つ…」
そう呟いたのだった。
その日の夜、アニの姿を外で見かけ、僕はエレンとミカサに、
アルミン「先に戻ってて、僕忘れ物したから…」
などと理由をつけてアニを追った。
アルミン「アニ…」
僕がそう名前を呼ぶとアニはクルリと振り返った。少し驚いた表情をしている。
アニ「なんだ、あんたか…」
そうホッとしたように言うと、アニは体をこちらに向けた。
月夜に照らされたアニはまるで月を鏡にでも写したかのように綺麗だった。
月に照らされ、輝く金色の髪。そして、暗い中でもわかる青い瞳。
そのどれもが神秘的なものであった。それと同時に美しいとも思う。
アルミン「こんなところで、何をしているの?」
アニ「物思いに更けていたのさ、悪いかい?」
アルミン「い、いや!そういうわけで言ったわけじゃないんだ、アニに気を悪くさせたのなら、その……ごめん…」
僕が慌ててそう言うと、アニはクスリと笑った。アニの笑った表情を初めて見た気がした。
アニの笑った顔は星がキラリと光ったような、そんな綺麗で儚いものだった。
アニ「フッ…あんたは本当に人がいいね」
アルミン「なんだ、怒っていなかったんだ。良かった」
アニ「こんなことじゃ怒らないよ。そこまで短気ではないからね、それより何の用だい?」
用という用件はなかった。
ただ、アニの姿が見えて追いかけたくなった、それだけだった。
僕は少し押し黙って、僕は思考という頭脳を働かせる。
アニ「何もないんだったら、私は行くけど…」
アニはそう言って、僕に背を向けて行こうとする。僕は咄嗟にアニの手を掴んだ。
アルミン「明日の対人格闘、一緒にやってくれないか?」
アニ「……は?」
アニは僕に手を掴まれたよりも、僕の言ったことに疑問だった。
アルミン「その、僕はあんまり対人格闘ができるほうじゃないし、アニは対人格闘がすごいだろ?だから、一度手合わせして欲しいんだ…」
僕がそう言うと、あまり気乗りはしなさそうな顔をした。
しかし、はあと溜め息をついて呆れた顔をした。
アニ「…期待しちまった私が馬鹿だった」
アニはボソリと、がっかりとした声で言った。僕にはあまり聞こえなかった。
アルミン「え?」
アニ「…いいよ、相手してあげる」
アニはそう言って、僕を見た。胸の内がどこか熱くなるのを、僕は感じた。
アニ「あのさ、手…」
そう言われて僕はパッと手を放した。
しばらく手を掴んでいたことを、すっかり忘れていたのだ。
アルミン「ごめん…、その、ありがとう」
僕がそう言うと、アニはプイとそっぽを向いた。何か悪いことでもしたのだろうか。
それとも、手を掴まれたのがそんなにも嫌だったのだろうか。
アニ「…じゃあ」
そう言って、アニは僕に背を向けて、去って行った。
その姿を僕はただただ見ていた。
アルミン「いった…」
アニに倒されてしまい、僕は腰を地面に打った。僕の口から呻き声が漏れた。
アニと一緒に組むという約束をしていたので、僕はアニにと手合わせをした。
アニはやはり強かった。僕は何度も何度も倒された。
アニ「…あんた、本当に弱いんだね」
アニはそう言うと、僕に手を出した。僕は戸惑ってアニの顔を見た。
アニ「手、掴みなよ。痛いだろ?無理することはないさ」
アニはそう言って自身の手を僕に差し出す。
アルミン「このぐらい平気だよ、大丈夫。ありがとう。それに、僕は無理なんかしていないしね」
僕はそう言って立ち上がって、アニを見る。アニの表情はどこか複雑だった。
アニは何か考えたかのようにして、重たい口を開いた。
アニ「アルミン、人には得意不得意があるだろ?」
アルミン「え…?」
アニ「あんたは頭が冴えている、それにできることなら他にもたくさんある。その頭が使えれば、この先色んな人を救える、別に───」
アニ「兵士でなくとも」
アニ「それなのに、何で兵士になったの?別に人の役に立つ以外はあるのだろうし…」
僕はその言葉に目を見開く。
アニの言葉はどれも僕の為に言ってくれているような気がした。
僕にまるで兵士になって欲しくはない、そんなように聞き取れた。
しかし、アニの助言は正しいかもしれない。
だけれど、それを決めるのはアニでも、それ以外の他の誰でもない。
アルミン「それを決めるのは、アニでも他の誰でもない────」
アルミン「僕が決めることだろ?」
僕がそう言うと、アニは目を見開いた。
僕の返事に驚いたのか、それとも他の何かか、よくわからないが。
そして、クスリと笑った。
呆れたような、それとも何か奇妙なものを見たようなそんな笑い。
アニ「…頑固だね、あんたは」
アルミン「そうかな…?」
僕はそう言って笑った。
アニも笑った。
君のその笑顔を僕は守りたい。
いつも複雑な顔をして、無表情なお面をはずしたい。
その硬い硬い鎧を剥ぎ取りたい。
君の側にいたい。
ねえ…
卒団まであと一日という日は休日であった。
それは訓練兵の為の配慮か、それともただの偶然かはわからなかった。
僕は運良く卒団できる、しかし、卒団できない者も少なくはなかった。
今でさえ、これは夢なんじゃないかって思うぐらい、奇跡な出来事なのだ。
みんなは買い出しへ行っていた。
卒団すると、新しい兵団へと配属される。その時の為に買い出しへと行ったのだ。
僕は前々から準備を終わらせていたので、兵舎にいることにした。
そして今、食堂で本を読んでいた。
食堂の窓からは暖かな日差しが降り注ぎ、心地の良いものだった。
しばらく読んでいると、ある声が僕の名前を呼んだ。
アニ「…アルミン?」
その声を聞いた瞬間、僕はアニだということがわかった。
振り返るとそこにはアニがいて、少し驚いたような顔をしていた。
アルミン「おはよう、アニ」
アニ「ああ、それより人が少なくないかい?」
アルミン「みんな買い出しに行っているんだよ。アニは行かないの?」
アニ「眠かったからね…」
アニの目は少し眠たそうで鋭い目付きも幾らか柔らかい目付きになっている。
アニは僕と同じテーブルに座った。僕とアニは向き合う形になる。
アニ「何を読んでいるの?」
アルミン「ああ、これかい?これはね、外の世界のホームなんだ」
アニ「…、外の世界の本は禁止とされていなかったっけ?」
アルミン「ああ、そうなんだけどね。これは僕の亡くなったおじいちゃんのものなんだ。」
アルミン「この本にはね、外の世界には砂の雪原、氷の大地、そして海のことが書かれているんだ」
僕がそう言うと、アニはクスリと笑った。
何故笑ったのかわからない僕は何故笑ったのかを尋ねた。
アニ「あんたがあんまりにも楽しそうに話すものだから、つい…」
僕はそんなに楽しそうに話していたのだろうか。
外の世界について話すことは好きだ。僕にとっては外の世界というのは未知な世界。
好奇心、探求心が沸いてくる。
アニ「アルミン、あんたはその外の世界を信じているのかい?」
信じているか。この本は確実に確かなものとは言えない。
どちらかというと、信じがたいものしか書かれてはいない。
しかし、信じるか信じないかは僕自身の問題である。
本当か不確かかを聞かれているわけではない。
アルミン「ああ、僕は信じているよ。例えこの本が不確かなものだとしてもね」
そう言うと、気のせいかもしれないがアニが僕に微笑んだ気がした。
アニ「…やっぱり、あんたは頑固なんだろうね。そういえば、何であんたは兵士になったの?」
アルミン「…外の世界を見る為だよ」
僕が兵士になった理由、それは幼い頃からの夢を叶える為。
壁に囲まれて過ごした僕らはまだ壁の外に出たことはない。
ほとんどの人々が知らない壁の外に興味を持ったのだ。
そして、興味を持つことが禁止であることにより、僕の好奇心はそそられたのだ。
僕が調査兵団へ行くと言ったら、二人の愛すべき友人は困った顔をするだろう。
そして、反対もするだろう。
しかし、僕は決意したのだ、調査兵団に入り、外の世界を見ると。
アルミン「調査兵団に入って、外の世界を見る、それが僕の夢であり、理由なんだ」
こんなこと馬鹿げている、アニはそう思っているのかもしれない。
しかし、それでいい。それでいいのだ。僕の夢は自身が決める者。
与えられた道を歩くわけではない。
自分で決めた道を歩くのだ。
アニ「あんたらしいね、やっぱり」
アルミン「え?」
予想外の言葉に僕は驚いた。きっと馬鹿にされるそう思っていた。
しかし、アニは馬鹿にもしなかったし、賛同もしなかった。
アニ「あんたは臆病で弱くて頭が良い、だけどあんたは勇敢で強くてそして、馬鹿だ」
アニは僕から目を離さず喋る。予想外の言葉の数々に僕は動揺を隠し切れなかった。
アニ「あんたのこと、見直したよ。あんたは強い、勇気があって人のことを自分のように思える馬鹿だ」
貶されているのか誉められているのか、僕にはよくわからなかった。
しかし、励まされた気がした。
アルミン「…ありがとう、アニ」
アニ「いや、気にすることはないよ」
そう言ったアニの表情は複雑だった。
アルミン「ねえ、アニ…」
僕はそう言ってアニの手に触れた。アニの肩がビクリと震えた。
今伝えなくては後悔すると、僕は思った。直感的に。
アルミン「アニに伝えたいことがあるんだ、聞いてくれないかい?」
僕はそう言ってアニの顔を覗いた。
ポーカーフェイスでお面を被ったようなアニの顔はいつもと違い、頬を少し赤く染めていた。
アニの腕が小刻みに震えているのが、振動で伝わる。
もしかしたら、僕の声も震えているのかもしれない。
アルミン「…駄目かな?」
自分自身の体温が高くなっていき、胸の鼓動が激しくなっていく。
アニ「…きっとあんたが私に抱いている感情と私があんたに抱いている感情は同じだと思う」
アニがそう言うと、自分の胸の内が熱くなることを感じる。
何気に僕は無意識のうちにアニのことをどこかで意識していた。
そしていつの間にかとある感情をアニに抱いた。
それに気づいた時は驚きを隠せずにいたが、今なら驚きもしない。
こんな素敵な人に会えたのだから。
不器用で遠回しなことを言って勘違いをさせたり、ポーカーフェイスで無表情で感情を表に出さない君だけど、
アルミン「僕は君が好きだ…」
僕がそう言うと、アニの肩は震えていた。そして、額には涙がつたっていた。
アニ「…私もあんたが好き…、だけど、あんたの気持ちには答えることが、できない…」
アニの声は震えていて、珍しく感情を表に出していた。
アニ「理由は何であれ、あんたの気持ちには答えられない、けど…今日だけは、甘えさせてもらえないかい?…あんたの優しさにつけこんでいるようで…悪いのだけど」
アニは僕の頬をアニの冷たい手で触れた。そして、僕に口付けをした。
甘くて深くて、そして何よりも苦しい接吻。
悲しくて、そして痛いほどに好きなのに、許されることのないもの。
アニの手に自分の手を絡ませ、額や瞼に口付けを落とす。
目を瞑るアニの顔、金髪の髪、そのどれもが愛しくて仕方がなかった。
運命とは一体なんなのだろう。
愛する人に会えたこと
愛する人と両思いなこと
そして結ばれぬこと
それが運命なのだろうか。
長い接吻を終えると、僕とアニは顔を見合わした。
アニの白い頬は赤く、耳の縁まで赤く染まっていた。
アニ「アルミン、私と約束してくれない?」
アルミン「…!ああ……!」
アニ「これは今日だけの関係だと、そして私のことを忘れて…」
アニはそう言って、泣きながら笑った。青い瞳からは宝石のような美しい涙が流れた。
アルミン「…アニのことを忘れることなんてできない…」
アニ「お願い…だから」
アルミン「アニ、今は無理でもいつかはアニと手を繋げる日がくる…、僕はそう信じている。だから、そんなことは言わないでくれ…!そして…」
アルミン「君と歩いていくことが叶う日まで、僕は忘れない、待っているから…」
僕はそう言ってアニの頬を流れている涙を自分の手で拭った。
そして、アニの手を強く握る。
ひんやりと冷たいアニの手は線を描いたように細く壊れてしまいそうだった。
壁外調査でエレンが女型の巨人に襲われた。それにより、リヴァイ班は壊滅。
女型の巨人はエレンと同種と考えた僕の仮説はさらに新たなる仮説を導いた。
知りたくはなかったのに、女型の巨人の正体がわかってしまった。
アニ「私は…戦士になり損ねた…」
エレン「だから…!!つまんねぇって言ってるだろうが!!」
ミカサ「もういい…これ以上聞いてられない。不毛…もう一度ズタズタに削いでやる…」
「女型の巨人」
アニ「アルミン…」
僕をそう呼んだアニの顔は笑っていた。悲痛な笑い。
〝After two thousand years〟
僕は過去がある、前世の記憶というのが。
僕には愛していた女性がいた。
君は今どこにいるだろうか。
僕のことを覚えているだろうか。
僕はいつも通りに、交差点を歩いていた。スクランブルの交差点には、大勢の人が行き来をしている。
その中で見つけたのはただ一人。
君だ。
アルミン「…アニ」
僕は近づきそう呼ぶと君は振り返った。
君は不思議そうな顔をして、「アルミン…?」とそう呟いた。
アルミン「ああ、君はアニだよね…?」
アニ「…アルミン…、アルミン…」
君は僕の名前を呟いた。そして青い瞳からは大粒の涙が溢れた。
僕は君を抱き締めた。
君を抱き締めたかった。
二千年も懸けて君と巡り会うことができた。
やっと、君と歩いていくことができる…
END
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