2014-12-24 18:10:01 更新

今日は12月24日、クリスマス__

ふと街に足を運ぶとクリスマス色に染められ、恋人たちの笑顔が寒いなか、なぜか心に暖かさをもたらしてくれます。


雪歩「今日は、クリスマス…」

そんな暖かさと冷たさをはらんだ街の中で、私のつぶやきは風にさらわれてどこかへ飛んでいってしまいました。


雪歩「あ、美希ちゃんだ」

ビルの電光掲示板に流れるCMに、美希ちゃんの笑顔が眩しい。

そんなまばゆい彼女の笑顔にしばらく見とれた後、私は事務所に向かいます。


雪歩「おはようございますぅ」


P「おー雪歩、おはよう」


小鳥「雪歩ちゃん、おはよう」


雪歩「おはようございますぅ」


事務所に入ると、プロデューサーと音無さんが挨拶してくれました。


雪歩「律子さんはどうしたんですか?」


P「今日は午後からの出勤だそうだ、竜宮もオフだしな」


P「それより雪歩こそどうした?今日は一日オフのはずだろう?」


雪歩「今日はなんだか目が冴えちゃって…

家にいようかなとも思ったんですけど、どうせなら事務所に来たくって

もしかして、ご迷惑でしたか…?」


P「まさか、雪歩を迷惑に思ったことなんて、一度もないよ

むしろ感謝してるくらいだ、ねえ音無さん?」


小鳥「ええ、さっきまでプロデューサーさん、

今日みたいな冷える日は雪歩のお茶が飲みたいなー、なんて言ってたんですよ?」


P「ちょっと音無さん!」


小鳥「事実ですから、何もおかしくありませーん」


雪歩「ふふっ」

お二人のお話が面白くって、思わず笑ってしまいました。


雪歩「それじゃあ、お茶淹れますね?」


P「本当か?来たばっかりなのに悪いな」


雪歩「いえ、プロデューサーのためですから」


P「え?」


小鳥「あらあら、これはこれは」


雪歩「え?」


雪歩「あ、いや、これは違くて、その、ええと…」

自分の頬が熱くなっているのを感じてしまいます。

私、今すごく恥ずかしいことを言ってしまったような…


雪歩「お、お茶入れてきますぅ!」

お二人の顔を見られないまま、給湯室に駆け込みます。


雪歩「私、なんてことを…」

顔が真っ赤になっていることを自覚しながら、お茶の用意をします。

あんなこと言って、私がプロデューサーのことを、その、あれだってこと気づかれたらどうしよう…!


雪歩「でも、嬉しいな

私の事を必要としてくれるなんて」

プロデューサーが私のお茶を必要としてくれる、それだけで顔がほころんでしまいます。


雪歩「お茶です、どうぞ」


P「ありがとう」


小鳥「ありがとう、ズズッ、あ゛~生き返る~」


P「音無さん、まだそんな年じゃないでしょうに」


小鳥「いいんですぅ~、私はこの外の寒さみたいに冷えきった心を溶かす雪歩ちゃんのお茶を飲むことこそが至福の時なんですぅ~」


P「まあ、それには同意しますけどね」


P「うん、今日も雪歩のお茶はおいしい、さすがだな、雪歩」


雪歩「ありがとうございます、喜んでいただけて何よりですぅ」


P「でもいいのか?わざわざ来てもらってなんだが、今日はクリスマスイヴだろ?

せっかくみんなのスケジュール空けてあることだし、一緒に遊べばいいじゃないか」


雪歩「それなら夜に事務所のみんなで集まってクリスマスパーティする予定です」


P「そうか、仲良き事は美しきかな」


雪歩「それも皆さんのおかげですぅ」

クリスマス特番などは事前収録しているとはいえ、仕事に追われる年末の一日を

全部空けるなんて難しいことなのは私でもなんとなくわかります。


P「いいんだよ、みんなは今年本当よく頑張ったんだから

俺達からのクリスマスプレゼントだ」


小鳥「私達が感謝したいくらいですものねー」


P「ええ、全く」


P「今日くらいはみんなアイドルとしてではなく、一人の女の子として楽しんでほしいからな」

プロデューサーが向けた笑顔が眩しくって、また私の顔が赤くなるのを感じて、

顔が見えないようソファに逃げ込みました。

そんな様子を笑顔で見てる音無さん、すごく楽しそうですぅ…。

そんな楽しそうな小鳥さんがなにか思いついたようにプロデューサーさんに振り向きます。


小鳥「そういえば、プロデューサーさん、午後の予定はあるんですか?」


P「えー、今日はだれのレッスンもありませんし、今やってる事務処理が終わったら

後は軽い雑務をこなしてそれから…」


小鳥「つまり、今日中にやるべきことは特にない、と?」


P「そうなりますね、ただ今日できることは今日中n」


小鳥「ならちょうどいいです、午後の事務は私と律子さんがやっておきますので、

プロデューサーさんは今日は早く上がってくださいよ」


雪歩・P「ええ!?」


P「ちょっと、そんなの無茶ですよ、まだやらなきゃならないことが!」


小鳥「さっきアイドルのみんなにあげた休暇がプロデューサーさんのプレゼントなら、

これはいつもお世話になっているプロデューサーさんへの事務所からのプレゼントです」


P「しかし社長がなんていうか…」


小鳥「今日は夜から黒井社長と飲み会だーなんて騒いでる社長に、午後の間はむしろ働いてもらいましょう」


P「しかし…」

久しぶりの休暇に難色をしめすプロデューサー、できるなら私も今日くらいは休んで欲しいです。


小鳥「だったら…」

少し悪い笑顔をした後、


小鳥「雪歩ちゃんとデートしてあげてください」

音無さんがこれ以上ないくらいの笑顔で言い放ちました。


_________


時は変わってお昼ごはん、私はレストランに来てます。

プロデューサーと一緒に…。

音無さんが「クリスマスなのに雪歩ちゃんを一日事務所に監禁するのはさすがに気が引けるでしょう?」という

提案をすると、プロデューサーもしぶしぶ納得して、早帰りとなりました。

そしてそのままデート、と。

プロデューサーと一緒にごはんを食べるなんて、夢見てるみたいです。


P「あーなんだ、雪歩はいやじゃなかったか?

男とふたりでご飯なんて」


雪歩「いえ、プロデューサーなら、大丈夫ですから」


P「そうか…」


まだ料理が来ていないので、会話の糸口がないとどうしても黙ってしまいます。

私は今すっごく嬉しいけど、すっごく戸惑ってて、何を話したらいいか考えてるうちに伏し目がちになって黙ってしまって、

そんな負のスパイラルに陥ってしまってます。

プロデューサーは、こんな私といても楽しいのかな…?

不安になりながらチラッとプロデューサーを見ると、笑いながら私のことを見つめていました。

優しいプロデューサーの笑顔を見て、思わず心臓が飛び上がってしまいそうでした。


P「雪歩」


雪歩「は、はいぃ!」


P「ありがとうな」


雪歩「え?」


P「いや、今年一年振り返ってみて、雪歩やみんなにお世話になったなと思って」


雪歩「いえ、むしろ私達みんなプロデューサーにお世話になりっぱなしで

私なんか特にだめだめで、プロデューサーに迷惑かけてばっかりで…」

言い出すと、さっきまでの高揚感がなくなって、なんだか悲しくなってきました。

こんな私がプロデューサーとふたりでご飯なんて浮かれててもいいのかな…


P「そんなことはない」


雪歩「え?」


P「雪歩はこの一年、本当に強くなったし、俺も感謝しっぱなしだぞ?」


P「俺とこうして面と向かって話ができるようになったのも雪歩が変わろうって努力した証だし、

その結果として多くのファンが雪歩の元に集まった」


P「そのファンの歓声を浴びながら歌う雪歩に俺は、いや、俺達事務所のみんなはどれほど勇気づけられたか」


P「だから、雪歩は感謝されこそすれ迷惑に思われることなんて何一つないんだぞ?」


雪歩「プロデューサー…」

プロデューサーがかけてくれる言葉ひとつひとつが、私を励まし、一歩一歩私を前に推し進めてくれる。

そんなところに私は今も惹かれ続けていること、プロデューサーに伝えてもいいんでしょうか。

今日は特別だし、ちょっとは欲張ってもいいんでしょうか?

ちょっとくらいならいいですよね、今日はデート、ってことですし。


雪歩「プロデューサー、あの…」


店員「お待たせしました、ご注文のボンゴレロッソでございます!」


私の声は、店員さんの声にかき消されてしまいました。


雪歩「うぅ…」


P「おお、おいしそうだ

ん、雪歩なにか言おうとしてたみたいだが、どうかしたのか?」


雪歩「いえ、なんでもないです…」


P「ん、そうか」


タイミングを逸しちゃいました…。

思わずプロデューサーから顔をそむけると、横のカップルが二人で食べさせ合いをしてました。

これ、プロデューサーとやってみたいなぁ…。


店員「こちら、もう一つのご注文のカルボナーラでございます!」


店員さんが私のスパゲッティも運んできてくれました。


P「お、雪歩のもおいしそうだな」


雪歩「え…」


P「あ、いやすまん、魚介も好きなんだがクリームソースも大好きなんだ」


P「なんか食い意地がはってるみたいだな、ははは」


…これは、チャンス到来です。


雪歩「それなら、一口いかがですか?」


P「え?」


雪歩「私の食べかけで良かったら、どうそ召し上がってください」


P「おお、本当か?ではお言葉に甘えて」


プロデューサーがご自身でカルボナーラをすくおうとします。


雪歩「待ってください」


P「あ、なんだ、やっぱり男が口つけたフォークを食べかけに突っ込むの、いやか?」


雪歩「いえ、そうじゃなくて…」

私は自分のフォークにカルボナーラを巻きつけ、プロデューサーの口の前に持っていきます。


雪歩「あ、あーん…」


P「いや、それはちょっと、まずいというか」


雪歩「もしかして、ご迷惑でしたか?

私の食べかけなんて、食べられませんか?…」


P「いや、それ以前にこういうのは彼氏と彼女の関係になった人がやるべきでなぁ」


雪歩「今日はデート、ですよね?」


P「けど雪歩はアイドルだろ?こんなとこ誰かに見られたら…」


雪歩「今日くらいは一人の女の子として楽しんでほしいっておっしゃったの、プロデューサーですよ?」


P「ぐ…」


雪歩「それとも、やっぱり私と一緒に食べるの、嫌ですか?」

ちょっとズルいなって思うけど、こんな質問をしてみます。

プロデューサーはきっと、優しいから断ることなんてない、っていう期待をこめて…。


P「わ、わかった」


P「あーん」


雪歩「はい、あーん」

プロデューサー、顔真っ赤にして食べてます。


P「は、恥ずかしくて味がよくわかんないな、あはは」

照れ隠しに笑っているプロデューサー、すごくかわいいです。


P「よし、それなら俺もお返ししないとな」


P「はい、あーん」


雪歩「!」


雪歩「ええ!?なにを…」


P「お返しだよ、お返し」


P「雪歩から受けたご好意は誠心誠意お返ししないとな!」


P「それに、俺も今日はもう休みだし、プロデューサーとしてじゃなく一男子としてあーんしてるからな、

拒否権はないぞ?


真っ赤になりながらもプロデューサーはフォークを私の口元に近づけます。

今、きっと私プロデューサー以上に顔が真っ赤になってます…!


雪歩「あ、あーん」


P「あーん」


プロデューサーが言ってたとおり、味わって食べるなんて恥ずかしくてできません…。

でも、今この瞬間、私は世界一幸せものです。



_________


P「ちょっとレストランでゆっくりしてたらもう真っ暗だな」


雪歩「そうですね」


P「この後のクリスマスパーティは大丈夫なのか?」


雪歩「はい、今日は伊織ちゃんのお家でお泊りパーティなので、始まるのも夜遅くなんです」


P「そうか」


P「…」


P「なら雪歩」


雪歩「はい」


P「これから二人でイルミネーションでも見に行かないか?」


雪歩「え、ええ?!」


_________


うう、どうしてこんなことに…。

私はちょっとだけプロデューサーとデートできればいいかなって思ってたのに…。


P「雪歩、見てみろ!すっごい綺麗だぞ!」


雪歩「うぅ…」

二人でクリスマスツリー見ることになってるんですか!


P「雪歩、顔をあげないとみられないぞ?」


雪歩「うぅ、でも恥ずかしくて…」


P「…」


P「雪歩、これは俺のひとりごとだから聞かなくてもいいが」


P「俺は今日を雪歩と過ごせてよかったよ」


雪歩「…」


P「今日はクリスマスっていうのは当然だけど」


P「雪歩の誕生日でもあるからな」


雪歩「え、私の誕生日、覚えてくれてたんですか?」

驚いてしまって、思わずプロデューサーの顔を見上げてしまいます。

ちんちくりんな私のことなんか、覚えてないと思ってたのに…。


P「当たり前だろ、俺は雪歩のプロデューサーだぞ?」


雪歩「プロデューサー…」

プロデューサーの優しさに心が暖かくなります。

思わず笑顔になってしまいます。


P「やっぱり雪歩は笑ってる顔がかわいいな」


ナデナデしてくれてます、プロデューサーが。

プロデューサーの手、あったかいです。


P「いつもお疲れ様」


P「いつもありがとう」


P「そして、お誕生日おめでとう」


P「これ、プレゼントな」


P「似合ってると思って買ってきたんだが」


突然過ぎて言葉が出ない私にクリスマスカラーにラッピングされた

箱が渡されます。


雪歩「え、これ私に?

でも今日は一日おやすみってプレゼントが…」


プロデューサーはちょっとはにかみながら頬をかいています。


P「それはあくまでプロデューサーとしてのプレゼントであって」


P「あくまで一人の女の子である雪歩へのプレゼントは」


P「一人の男としてきっちり渡したかったというか」


雪歩「え、でもそんな、私プロデューサーから何かもらえるほど何もできてないですし」


雪歩「むしろ迷惑かけちゃってるというか」


雪歩「だから、私がプロデューサーからプレゼントもらえるなんて、申し訳ないです」

言ってるうちに悲しくなってきて、また俯いてしまいます。

そんなうなだれた私の頭にプロデューサーの温かい手がポンと置かれます。


P「雪歩、これを雪歩に買ったのは雪歩に似合うって思って勝手に買った俺のエゴだし」


P「雪歩が要らなかったら捨ててもらって構わない」


雪歩「要らないわけ、無いです!」

プロデューサーからもらったプレゼント、いらないものなんかあるわけ無いです!


P「そうか、ならよかった」


P「はー緊張した!」


そういうとプロデューサーは大きく息を吐きます。


P「要らないって突っ返されたらどうしようかと思った!」


私の頭をナデナデしてしながらプロデューサーは嬉しそうに笑っています。


P「雪歩が迷惑って思って尻込みしていることってな、

俺からしてみれば迷惑でもなんでもないんだ」


P「だから、雪歩は困っていたら、いつでも俺に相談してくれていい」


P「仮にも俺は雪歩のプロデューサーなんだから、いくらでも協力してやる」


P「あ、もちろん雪歩が迷惑じゃなければ、な」


プロデューサーが焦って付け加えます。

私はその言葉を聞いて、自分の瞳から温かいものが溢れるのを感じました。


雪歩「いいえ、私、プロデューサーのこと迷惑だなんて思いません」

自然とプロデューサーとの距離が縮まって、気づけば背伸びまでして、プロデューサーの顔がすぐそこまで迫ってます。


P「お、おい雪歩?」


たじろぐプロデューサーの腰に手を回して、そっとつぶやきます。


雪歩「だって私」


雪歩「プロデューサーのこと」


雪歩「大好きですから!」チュッ


プロデューサーは、突然のこと過ぎてあっけに取られてるようです。

そんなプロデューサーに私は笑顔でこう言います。


雪歩「プロデューサー!」


雪歩「私、今日のことは忘れません!

絶対忘れません!」


雪歩「だって今日は、クリスマスイヴと」


雪歩「私の誕生日と」


雪歩「私の初恋の人に思いを伝えられた、記念日だから!」


おわり


その後、雪歩がプロデューサーとよく出かけるようになったのは、またのお話


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白風さんから
2014-12-24 21:53:52

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2014-12-30 09:09:09 ID: eSd35u7k

最高!
雪歩かわいいよ雪歩

2: コック 2015-01-01 02:08:58 ID: iKpz4tZy

〉〉eSd35u7kさん
ありがとうございます!

24日に突貫でつくったんで今度はちゃんとレスわけて投稿しますorz


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