2016-10-08 20:38:47 更新

概要

アイドルマスターシンデレラガールズ長編SSです。
オリジナルのプロデュサーを軸に、アニメにも登場した先輩アイドル達のIFストーリーになる予定です。
筆者は文章力・構成力・演出力皆無なんで期待せず、気軽に気楽に見てやって下さいm(__)m
ピクシブには、4話まで掲載中です。


前書き

アニメに準拠した形でなるべく進められたらなぁとかぼんやり考えてますが、行き当たりばったりなんでどうなるかは未定です(笑)


「アイドル事業部の既存のプロジェクトを解体し、すべて白紙に戻す」


女王はそう言った。悪い予感が的中したらしい。面倒くさいことになった。俺は赤みがかった癖っ毛の頭を掻く。


346プロダクション、第一会議室。大手芸能事務所であるこの社内でも、重要な方針や企画を検討する為に主に使用される。そこに集められたのは、アイドル事業部の各プロジェクトの部長職に就く者及びプロデューサーだった。俺も未だに肩書きはプロデューサーってことになってるし、同席してても何らおかしくはないのだが。現状として、プロジェクトを受け持っているわけではないし、担当アイドルがいるわけでもない。日常業務なんて他プロジェクトの事務作業や補助がほとんどだ。それなのに、この会議に出席を求められた理由を察して、『あの人』を見る。


いつも通り微笑んでいる。なるほどね。これをきっかけに一緒にもう一度ってことか。どうやら、俺の考えなんて『あの人』にはお見通しらしい。相変わらず食えない人だ。それが嬉しいやら悔しいやらで苦笑が出る。


「待って下さい!今あるプロジェクトでアイドル達は、個性を発揮し始めています!」


武内か。馬鹿がつくほど真面目で、アイドルを想っている癖に不器用な後輩。最近では、『シンデレラプロジェクト』の担当になって、成果を上げてきた所だ。反論したくなる気持ちは分からなくはないけどな。


「俺は、武内と違って馬鹿なんで、アイドルの個性がどうのこうのなんて分かりませんがね。いきなりプロジェクト解散だなんて言われても納得できませんわ」


内匠。武内と同期入社のプロデューサー。柄シャツにサングラスの出で立ちで普段は経費で酒を飲みまくりのアホだが、プロデュース業になればそれすらも一転させるほどの手腕を発揮する。最近では、藤本里奈を始め向井拓海や片桐早苗さん等の個性的なアイドルを輩出し、こちらも成果を上げている。一体どこであんな魅力的なアイドルを見つけてくることやら。


「アイドルの個性を発揮させる。大いに結構だ。だが、それは私が選ぶアイドルに限ってのことだ。346プロダクションアイドル事業部はこれより転換期を迎える。かつての芸能界に見られた『スター性』『物語性』を武器にブランド力を強化し、社内外にアピールする。それが私の方針だ」


なるほど。確かに魅力的な企画だ。それが実現すれば、成果はこれまでより格段に上がるだろう。だが、必要あるかといえばどうだかな。武内も内匠も押し黙る。女王、否、アイドル事業部統括重役美城常務の言葉にはそれだけの説得力がある。

『あの人』を見ると、こちらを微笑んで見つめている。それがGOサインだということは、長い付き合いで知っている。俺はまた苦笑して、覚悟を決める。本当に敵わないな。


「ブランド力。確かに魅力的な企画ですね。ですが、それは本当に必要ですか?アイドル事業部全体で見れば成果は現状でも十分に出ています。それこそ、他部門へ分配可能なほどに。急激な転換で混乱が生じ、社外の関係者に不安を与える結果にはなりませんか?」


「それは心配しなくてもいい。関係者には既に説明責任は果たしている。全員、私の企画に同意してくれている」


だろうな。この程度で揺らぐものなら、初めからこんな強行はしない。流石は美城の女王か。

それは、置いておくとして、武内、内匠。2人して目を丸くするな。そりゃ、お前達2人にいくら説得されても動かなかった俺にも非はある。だけど、お前達に賛同してるんだから、そんな顔するな。安心させるように、笑顔を見せる。


「それにしても、君が率先して発言するとは珍しいな。君が意欲を示してくれるならば、私の企画への参加を勧めるが?」


動揺もなしか。彼女と仕事をしたのはたった半年。当時の俺を彼女は随分高く買っていたようだ。

その後、彼女は海外の関連会社へ移籍。対して、俺はプロデューサーという肩書きにしがみつく落ちぶれ社員だ。

当時は今の武内達のように、プロデュース業に日々邁進していた。けれど、俺は-


『私達、シンデレラガールズです!』


あの眩しさに、あの輝きに、目が曇ってしまった。もう俺(プロデューサー)なんて必要ないのだと思ってしまった。

プロデューサー業務に疑念が湧いた。彼女達(アイドル)の魅力を引き出し、最高の舞台に上げる。それがプロデューサーの存在意義だと信じていた俺にとって、あの輝きはその存在意義すら奪った。


『彼女達はもうプロデューサーなんていなくたって、魅力を伝える為に自分で舞台に上がることができる』と。


だから、俺は彼女達の担当を外れ、プロデューサー業務を休止し、プロジェクトを自ら解散した。彼女達の動揺はもちろんあったし、武内や内匠達からの追求もあったが、俺は何も言わなかった。彼女達には未来がある。同様にプロデューサーにも未来がある。俺の疑念はその妨げにしかならない。だから、ただ黙って事務職に就いた。


その後、アイドル達は他プロジェクトやセルフプロデュースという形で、輝き続けた。そして、武内と内匠も信頼できるプロデューサーへと成長した。


アイドルとプロデューサーの関係を一歩下がった所で見続けた結果、疑念は解消した。

馬鹿真面目にアイドルを想いアイドルに想われ一緒に成長した武内。

アイドルを想いアイドルに想われ全力で一緒に馬鹿をやる内匠。

そこにあるのは一方通行の想いではなく、信頼という絆だった。かつての俺は一方的にその信頼を崩した。


アイドルはプロデューサーを信じているから輝ける。プロデューサーはアイドルがいるから信じて輝かせられる。そんな当たり前のことに気付くのに随分と時間がかかってしまった。だから、ここからは一緒に輝くんだ。


一つ息を吸い込む。もう輝きから目は背けないと決めた。


「残念ですが、お断りします」


「何?」


「ブランド力。確かにこの346プロダクションには必要かも知れません。しかし、アイドルにとってそれが必要とは思えません」


息を呑む音が聞こえる。相手はこの部門の実質的なトップであり、上司だ。それにたかだか一社員が歯向かっている。当然といえば当然か。今もの凄く頭を掻きたい。昔からの癖。集中したり、考えごとをするとやってしまう。


『プ、プロデューサーさん、また頭掻いてる』


『小梅ちゃん、またですか!?全力で止めましょう!』


『茜ちゃんが止めると余計にボサボサになっちゃうよ~』


『じゃあ、代わりにまゆが止めてきますね』


『まゆはんが直しに行くとプロデューサーはんがまた困ってしまいますえ』


『フ、フヒ、親友も大変だな』


『わかるわ。これだけ個性的なメンバーじゃねぇ』


あの時以来、この癖もやらなくなってたことに気づく。

同時に彼女達とのやりとりが思い出されて、少し笑える。

キラキラした彼女達。俺(プロデューサー)すらも目が奪われるほどの輝きを持ったシンデレラ達。

彼女達と今度こそ一緒に進むんだ。だから、ここはひけない。


「では、君は私の案以上に成果をあげられる企画を持っているのかね?」


「まだ、現状では構想途中です。しかし」


「会議中に失礼します!神野プロデューサーさん、お待たせしました!」


「いえ、丁度いいタイミングですよ。ありがとうございます。千川さん」


プロジェクト時代からお世話になっている事務員の千川ちひろさんが息を切らして入室してくる。本当、彼女には頭が下がる。今回の件でも、また迷惑をかけてしまった。しかし、彼女のことだ。それすらも笑顔で『プロデューサーさんとアイドル達のためです!』と言ってくれるのだろう。


「皆さん、千川さんがお配りする資料に目を通して頂ければ幸いです」


千川さんがテキパキと卒なく用紙を配布していく。受け取った社員達は、再び息を呑む。驚きかそれとも呆れか。前者であればありがたいのだが。何分、個性派揃いのメンバーだし、常務の方針とは真逆のプロジェクトだからな。


だが、やはり常務だけは、冷静に資料に目を落としている。


【Brilliant☆Girlsプロジェクト再始動草案】


それは俺の希望であり、彼女達との絆。千川さんと『あの人』、武内や内匠の助けで導き出せた答え。かつて、俺が自ら灯し自ら消した輝き。


白坂小梅、日野茜、高森藍子、佐久間まゆ、小早川紗枝、星輝子、そして、リーダーの川島瑞樹からなるプロジェクト。去年の冬のライブを最後に解散した。今では、他部署やセルフプロデュースで活動している彼女達を集結させる。今度は一緒に輝く為に。

まぁ、その為に彼女達のスケジュールを合わせたりプロジェクトルームを確保したりと千川さんと『あの人』には、奔走させてしまったが。もっとも『あの人』とアイドル達には、バレないようにしていたけれど、『あの人』にはお見通しだったようだ。


「既に再結成イベントも準備進行中です。それをきっかけに現在構想途中の企画も同時進行で進めていく予定です」


半分本当で半分嘘だ。常務が戻ってくることを聞いた時から、再結成とそのイベントの準備に必死で構想途中の企画はない。まぁ、そこは目の前の再結成イベントを成功させてから考えても遅くはない、と思いたい。今はアイドル達と一緒に輝きを取り戻すことが第一だ。


「面白い。再結成イベントやってみなさい。成功するに越したことはないが、失敗すれば再結成の話はなしだ。同時に君達2人の部署については、暫く様子を見よう。それと構想途中という企画も早々に提出しなさい。ただし、当然、一定の成果をあげなければ、部署の存続に関わるものと思いなさい」


「寛大な処置に感謝します。それでは私達は失礼させて頂きます。武内プロデューサー、内匠プロデューサー、退室しましょう」


「は、はい」


「ウッ~ス」


武内は緊張した面持ちで、内匠は楽しそうにといった真逆の表情だが、俺の後に続いて退室する。それに苦笑が漏れる。これからどうなることやら。





後書き

とりあえず、1話目掲載して反響ありそうならこっちでも引き続きやっていこうかなって感じで(;^ω^)
ちなみに、3話までアイドルは登場しません(笑)


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