東方紅魔郷 序章
これは序章です。物語の始まりの前の話しです。
紅霧異変の起こるすこし前の話
東方紅魔郷
『常識から隔離された世界』
私達が住み暮らしているこの世界から隔離され、忘れ去られた者たちがたどり着くもう一つの世界、それが幻想郷。外の世界の科学中心の文化に対して、幻想郷では精神・魔法中心の独自の文化が築かれていた。そして外の世界に対して大きく違っている点は、その幻想郷で暮らしているのは人間だけではない、妖怪・妖精・神などの私達が暮らしている世界では存在が確かではない者たちも住み着いている。
博麗大結界制定後、人間と妖怪の関係は大きく変化し、妖怪が人里へ顔を出したり、人間が妖怪の住処へ遊びに行くことも珍しくなくなった。しかし人間と妖怪のバランスを保つため、「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する」という立ち位置は変わっていない。
『紅霧の幻想』
普通、『妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する』それがこの幻想郷でのルールだ。しかし、幻想郷の最東端に位置する神社。博麗神社と呼ばれるこの神社には妖怪退治を専門とする巫女が住んでいた。なのに何故かその巫女のところえ妖怪が来ても、一向に退治をしようとしない。
『あら、また来たの。よくこんな何もないところに遊びに来るわねぇ...』
暗茶色したストレートの髪をなびかせながら少し鋭い目つきをしたその茶色の瞳で相手を見ている。袖が無く肩・脇の露出した赤い巫女服、後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの大きな赤いリボン。いかにも巫女という雰囲気を出しているこの少女こそ、幻想郷で妖怪退治を専門としている博麗の巫女、博麗霊夢だ。
『相変わらず暇そうだな!れいむ!』
宙を舞いながら元気な声で叫んでいる青い服装に氷の羽根もち、霊夢よりかなり低めの身長の妖精。湖上の氷精チルノ、妖怪も妖精も退治を専門とする巫女の目の前に堂々といる。
『別に暇じゃないわよ、私には妖怪退治をするという大事な仕事が...』
『ならなんで目の前に妖怪、そう私!が入るのに退治しないんだー?』
『うるさいわねぇ...用が無いなら早く帰りなさいよ』
『やだねぇー!暇だもん!』
目の前に退治する標的が入るのに、ごく普通に話をしている。
『あんたら妖怪がいるから参拝客が来ないのよ!
『参拝客なんて最近だれもきてないじゃないかー』
『だからあんたら妖怪がいるからって言ってるでしょうが!!』
そう叫ぶと霊夢は神社の中に入っていった。しばらくするとお茶を二杯運んできた。早く帰れと言っていたのにわざわざお茶を出してくれた、相手は妖怪なのに。
『おう!気がきくな!』
『まったく....』
すると巫女と妖精、二人並んで縁側に座りお茶を飲み始めた。そしてのんきに世間話を始めた。
『あんた他にやる事ないの?』
『私達妖精は自由な生き物なのだ!』
『大妖精やルーミアと遊んでくればいいじゃないの』
『大ちゃんもルミャもみんな忙しいの!』
『妖精は自由な生き物じゃなかったの...』
空を眺めながらそんなのんきな話を最近ずっとしている。チルノも霊夢もどちらとも何もやる事が無く、暇だからだ。するとお茶を飲み終わった霊夢が一度ため息をつくとチルノに向かってこう言った。
『私これから人里に買い物しに行くんだけど、あんたも暇ならついてくる?お手伝いしてくれるならね』
『お、行く行く!れいむ!なんか買って!』
『おだまりっ』
そしてチルノもお茶を飲み終わると同時に勢いよく立ち上がり霊夢の手を掴んで引っ張った。
『れいむ!早く行こー!』
ハイハイとため息をついてから立ち上がり、チルノと一緒に人里目指して歩き始めた。異様な光景である。
『まったく、妖怪のあんたが人里に行っても何も騒がしくなったりしないなんて、変な時代になったわね...』
『いいことじゃないか!みんな幸せに暮らしてるのさ』
『紫が見たら何て言うかね...』
そうこう話している間にいつの間にか人里についていた。 幻想郷の人間の大半が住んでいる場所。人間の生活に必要な物はほぼ全てここで手に入る。
「妖怪は人間を襲い、人間は妖怪を退治する」という幻想郷のルールの例外的な場所。妖怪退治の専門家も住んでおり、何かあれば霊夢も駆けつけるため、妖怪により人命がおびやかされることは殆ど無い(0ではない)。
妖怪も日常的に里を訪れ、人間の店で買い物したり遊んだりする者も多い。中には夜に妖怪専門店として営業している人間の店さえある。
『なぁれいむ、何を買いにきたんだ?』
『んー、今日の夕ご飯の材料かな、冷蔵庫空だし...』
『ほう、で何を作るんだ?』
『カレーにでもしようかしら』
『甘口にしろよな!じゃないとアタイ食べられない』
『何であんたも食べることになってるのよ...』
『別にいいじゃないか、減るものじゃないしな!』
『減るわよ』
幻想郷でも、割と私達が住んでいる世界と同じようなものを食べている。(見たこともない食べ物もあるが。)
すると、いきなり霊夢が止まりだした。
『ん、どうしたれいむ?』
『げっ、アレは...』
霊夢が相手を見ると同時にその相手も霊夢の方を振り向いた。
片側だけおさげにして前に垂らしているロングヘアーの金髪を隠すようにかぶっている大きな魔女のような三角帽子、黒系の服に白いエプロン、そして箒まで所持している。どこからどう見ても完全に魔女だ。すると
『おぉ!霊夢ーー!』
黄色い瞳をキラキラ光らせながら霊夢に飛びかかった。それに対して霊夢は反射的に横に回避した。
『いてて...何で避けるんだよぉ』
彼女の名は霧雨魔理沙。霊夢に飛びかかるほどに仲がいいらしい、実際かなり長い付き合いだ。
『そっちこそなんで人里にいるのよ...』
『どこに居ようと私のかってだぜ!』
魔理沙もチルノとどことなく雰囲気が似ている。明るく元気、そしてうるさい。
『おお!ようまりさ!』
『ん?チルノか、なんで霊夢と一緒にいるんだ?』
『知らないわよ、勝手についてきたの』
『ちがうぞ、れいむに一緒に買い物行こうって誘われたんだ!』
『ほほう、珍しいなぁ』
『余計なこというな!』
そしてチルノの頭を軽く叩く、なのにニコニコしている。
『イッテッ!何すんだよ~、馬鹿になったらどうするんだよー』
『もう手遅れだろ』
霊夢も魔理沙も声を揃えてそう言う、チルノも顔をムーっとするが、すぐに笑顔になり。
『よし!早くカレーの材料買いに行くぞー!』
『ほうカレーか、霊夢、私甘口でなー、じゃないと食えないから。』
『お前まで食べる気かっ!』
本編はまってね。
東方好きにはたまらない作品ですねw応援してます!