2015-07-11 18:47:46 更新

実に困りました…。

まさか…まさかこんなことになるとは…


今は夏。

今日、体育の授業で水泳がありました。

肌を見せるのは恥ずかしいのでつい、スクール水着ではなく、ウェットスーツのような全身の隠れるようなものを着て体育に臨んでしまいました。

一人だけ格好が違うので先生はもちろん問いただしてきます。


「園田?お前…その格好はどうした?スクール水着、忘れてきたか?」


肌を見せるのは恥ずかしいと言うのは恥ずかしいので、


「い、いえ…その、キロクヲネラッテイルノデ…。」


つい嘘をついてしまいました。

それが先生の逆鱗に触れたのか、水泳部を前に呼び出し


「そうかぁ、園田は泳ぎに自信アリか。じゃあこいつらと50mのタイムを競ってもらおうか?」


「もし一位じゃなかったら、赤点な?」


なんて。

ちょっと県一位の娘もいるんですが…

確実に怒らせましたね。

赤点は確定したも同然ですね。

県一位に勝てるはず無いです。

ほら、ことりがすごく心配そうに私を見ています。

私のせいで余計な気遣いをさせてしまいました…反省ですね。

一方穂乃果は、目をキラキラとさせて私を見ています。…何々、海未ちゃんなら勝てるよ!とでも言いたいのでしょうか。

だとしたら答えはノーです。

しかしそうです。

気持ちで負けてはいけません。やるならば勝つつもりでぶつかっていきましょう!


「さあ、早く位置につけ。」


うっ、プレッシャーが凄いです。

今気が付きましたが水泳部の皆さんも機嫌が悪いじゃないですか。

完全に口から災いが出て行きましたね。

これからは言葉をもう少し選びましょうか、そうしましょう。


「泳ぎ方はお前らに任せる。位置について、ヨーイ…スタート!」


先生…今とても悪い顔をしています。

そんなに私の赤点が嬉しいのでしょうか。ちょっと癇に障りますね。

…そんなことより泳ぎましょうか。

クロールにしましょう。一番早く泳げそうです。

確かこう…腕を…


バシャバシャ


ん?


バシャバシャ


おや?

皆さん慌ててどうしたのでしょうか?

私が溺れているように見えているのですか?失礼じゃないですか?ほらちゃんと泳げて…


「おい!園田!私が悪かった!今すぐ泳ぐのをやめてくれ!!」


先生はなにを言ってるのでしょうか?


バシャバシャ


「本当にやめてくれ!今すぐ!!」


はぁ仕方ありませんね。

私はトビウオのように水中から飛び出しプールサイドにみごと着地しました。

…なんですかこれ?

プールはまるで嵐の時の海のように大荒れです。

誰がこんなことをしたのでしょう?

水泳部の方々は、あの荒波に揉まれ溺れていますね…。よし、助けますか。


「海未ちゃん!津波起こせるなんてすごいよ!救助もしちゃうし、体育の成績も5確定だよ!」


穂乃果…。

ちょっとまぶしすぎませんか?

津波なんて起こせるわけがないじゃ無いですか。そんな目でみつめられても困ります。


「海未ちゃん?ことり心配したんだよ?死人が出な…ううん、やっぱりなんでもないよ。」


ことり…。

あなたの心の声、隠せてませんよ?

それに私のせいではないです。


この日、ここ音乃木坂ではこのプールに波浪警報が出されていたそうです。

さらに私は体育の時間、泳ぐことを禁止されました。

先生…この仕打ちは無いですよ。

私は何もしていないというのに、本当に困りました…。





今日も私は困っています。

季節は冬、クリスマスという日がまもなくやってきます。

穂乃果とことりの三人でパーティをすることになりました。プレゼント交換とやらをするそうです。

…そうです。今日はパーティ前日、まだプレゼントが決まっていないのです。

穂乃果とことりへのプレゼントが思いつかないのです。

彼女達は何を貰っても喜んでくれるでしょう。しかしそれに甘えてはいけません。本当に心から喜んで欲しいのです。


どうせなら人の温もりがこもった…、そうです!手作りのものを贈りましょう。

何がいいでしょうか…何が…。

っ!ひらめきました!あれをつくりましょう!!


ということで材料を買ってきました。

炭素です。もうおわかりですよね?

…そうです。世のレディならば誰でも喜ぶもの…ダイヤモンドです。

詳しくは知りませんがある程度の圧力と熱を炭素に加えるとダイヤモンドになるはずです。

善は急げ、さっそく握りますか。ギュオオオ

おおっ!出来てます!こんなに簡単に出来て良いのでしょうか。

いえいえ、問題はどのようにカットするかです。

そうですね、ダイヤモンドを作ること自体は簡単に出来てしまいましたし、難しそうなWish upon a starやらに挑戦しましょう。

では手刀でパパッと…。シュッ

むぅ…、中々上手くいきませんね…。形がいびつになってしまいました。

幸い炭素はまだまだたくさんあります。根気強くいきましょう!

ギュオオオォ

シュッ

ギュオオオォ

シュッ

ギュオオォ

シュッ

……

………

……………


気付けば日付が変わっていました。夜も明けています。

しかしおかげで納得のいくものを仕上げました。

あとはパーティにそなえるだけですね。

オールですから眠いです。とりあえずねましょう…。


…はっ!

今は何時でしょうか。ゔ…、もうパーティの時間です。と、とりあえず急いで着替えなくては!

しかしもう辺りは暗くなっています。まずは部屋の電気をつけましょう。パチッ

よし、着替えましょう…ってあれ?

真っ暗です。電気をつけたはずですが?もしかしてついていた?そんなはずは…


「海未ちゃん?いきなり電気消さないでよ〜。」


聞き覚えのある声がします。


「海未ちゃん聞いてる?」


この声は…穂乃果?なぜここにいるのでしょうか。


「駄目だよ穂乃果ちゃん。海未ちゃんまだ寝ぼけちゃってるみたい。」


ことりまで何故?



「ああっ!」


そうでした。毎年穂乃果の家パーティをしていたので勘違いをしていました。

今年は私の家でする事になっていたんでした。


「海未ちゃ〜ん、いきなり大声出さないでよぉ〜。」


「ことりちゃんの言う通りだよ!びっくりするじゃん!」


すいません…。

とりあえず電気をつけますか。バチッ


「すいません。穂乃果、ことり。しかしきているなら、起こしてくれれば…。」


「え〜だって〜、ね〜ことりちゃん?」


「うん!寝顔が可愛いからついずっと見てたのっ!」


「でも珍しいよね。海未ちゃんがこんな時間まで寝てるなんて。」


「風邪でもひいちゃった?」


プレゼントを作っていたとは言えませんね。まだ秘密にしておかなくては。


「いえ、風邪ではないです。まあ、色々あったんです。」


「無理しないでね?海未ちゃんは頑張り屋さんだから…。」


「そうそう!いつか倒れちゃうよ。だから程々にね?」


「ええ、肝に命じておきます。」


「さて、パーティの準備をしましょう。」


「海未ちゃん、もう出来てるよぉ。」


「あとは海未ちゃんが座るだけ!簡単だね!」


よく見ればテーブルに美味しそうな料理が並んでいます。


「全部ことりが作ったのですか?」


「穂乃果ちゃんも手伝ってくれたんだよ?ね〜穂乃果ちゃん!」


「うん!穂乃果も頑張ったんだから!」


「二人とも…すいません。私は手伝うことが出来ませんでした…。」シュン…


「せっかくのパーティだし、ね?明るくいこうよ!それに起こさなかった穂乃果達が悪いんだから。気にしないでいいんだよ。」


「しかし…。」


「もう!いいんだって!」


「ほら海未ちゃん、あーん」


「あ、あーん…。美味しいです!」


それから楽しい時間は過ぎ、プレゼント交換の時間がやって参りました。


「ジャーン!穂乃果からは〜、マフラーでーす。ほら、海未ちゃんには青色、ことりちゃんには白色です!」


「ことりからは帽子と手袋です!海未ちゃんには青色、穂乃果ちゃんにはオレンジ色です!」


「もしかして、二人とも一緒に作りました?」


「うん!ことりちゃんに教えてもらいながら頑張ったよ。」


「どうせならお揃いにしようって穂乃果ちゃんが言ったから、私は手袋と帽子にしたんだ。」


「なぜ私を呼んでくれなかったのですか?」ウルウル


「わっ、泣かないで海未ちゃん!」


「あのね?最初はもうどうせなら三人で作ろう!ってなったんだけど…。」


「うん…。それだとサプライズ感がないし、せめて海未ちゃんだけにでも新鮮な気持ちでプレゼントを貰って欲しかったから…。」


「そうだったのですか…。」


「海未ちゃん…。」


「ごめんね?海未ちゃん…。」


「いえ、もういいのです。二人の気持ちを知る事が出来ましたので。」


「そうですか…、私のために…。本当に嬉しいです!ありがとう穂乃果、ことり。」


「そう言われると嬉しいよ!」


「でもちょっと照れくさいね。」


「さて…、私からはこれです。」パカッ


「これって?」


「もしかして…。」


ええ、ダイヤです。


「ええ、ダイヤです。」


大事なことなので二回言いました。


「店売りのダイヤはとても手は出せませんから、炭素から手作りました。」


「“Wish upon a star”というカットをしたので星が二つ顔を出すはずです。」


「海未ちゃんもしかして…。」ヒソヒソ


「うん…ついに私たちにプロポーズを…。」ヒソヒソ


「長かったね、ここまで…。」ヒソヒソ


「ちょっと涙が出てきちゃった。」ヒソヒソ


「私も…。」ヒソヒソ


「あの、それでどうですか?気に入りました?」


「う、うん!」


「もちろんだよ!」


「だって私たちの事を想って作ってくれたんでしょ?」


「本当に嬉しいっ!」


「ええ、良かったです。二人の喜ぶ顔を見られるなんて…、私は幸せものです。」


「ことりたちも幸せだよ?だって…。」


「うん。これからは恋人ととして…。」


「そうです!こんなに喜んでもらえるならみんなにも作ってあげましょう!」


「え?」


「ですから、皆さんにも作ってあげましょうと…。」


「ねえ、穂乃果ちゃん…。」ヒソヒソ


「うん、ことりちゃん…。」ヒソヒソ


「「海未ちゃんの馬鹿ー!!」」


「いきなり酷くないですか!?」


いきなり不機嫌になった二人は、この日私にベタッリとひっつきずうっと甘えてきました。なぜでしょうか?

これでは身動きが取れません。

困りました…。





今日も困りました…。

練習中のことでした。

穂乃果が足を挫きました。それならばまだよくあることです。

なので湿布をして今日は隅の方で休んでおてもらおう、そう思っていました。

しかし、いつもよりもずっと痛そうにして…。もしかしたら折れているのでは?一度そう思うと気が気でなく…


「穂乃果!あゝどうしましょう…。そうです!クレープを食べに行きましょう!たくさん食べれば治るはずです!」


「海未ちゃん!?落ち着いてよ!クレープを食べてこの痛みが取れる訳ないじゃん!」


あゝ…そうですよ。クレープを食べて治るはずありません。今の私はどうかしているようです。


「接骨院に行きましょう。もしかしたらもあるので。」


「さすがに大げさだよー。」


「いいえ、そんなことはありません!現にいつもより痛そうにしてるじゃないですか。さあ、おぶるので早く背中に乗ってください。いえ、乗せます!」グイッ


「わっ!ちょっと海未ちゃん!?おんぶしたままなんて恥ずかしいよ!」


「かまうもんですか。事態は…一刻を争うのですから。」


「穂乃果がかまうの!」


などと言い合いをしましたが、結局おんぶして穂乃果を連れ出しました。

いつも振り回されてますし、たまにはいいでしょう。


穂乃果が寝てしまい少し暇ですが、接骨院まではもうすぐです。この川を渡ればすぐです。橋もありますがそれでは遠回りになりますね…。

やはりこの川をこのまま横断するべきでしょう。

ええ、右足が沈む前に左足を繰り出せば沈まず川を渡れます。常識ですね。

では行きますか…。


むむっ

ふぅ…無事渡りきれました。

接骨院まではもうすぐです。急ぎましょう。


診察結果は…安心しました。折れてはないそうです。


「いや〜、本当に折れてなくてよかったよ!」


「本当ですよ。ただの捻挫でよかったです。」


「まあしばらく練習出来ないのに変わりはないけどね…。あっ、そうそう。人間って水の上走れるんだね。びっくりしちゃったよ。」


「起きていたのですか…。」


「そりゃあんだけ揺れればね?」


「鍛錬の賜物ですよ。」


「そういう問題なのかなぁ?まあいいけど。」


「ふふ、それよりほら、穂乃果の好きなイチゴのクレープです。はい、あ〜ん。」


「あ〜〜ん。んぐんぐ…、すっごく美味しいよ!足の痛みも吹っ飛んじゃうね!」


「ほら、クレープで足が治ったでしょう?」


「これはそういうんじゃなくて、それぐらい美味しいってこと!」


「すいません、つい。」クスクス


「馬鹿にしてるな〜。」ジト〜


何はともあれ、穂乃果が大事に至らなくてよかったです。

穂乃果は元気じゃないとじゃないと困りますからね…。





今日も困りました…。

体育大会の前日でした。


「海未ちゃん、私に走りを教えて欲しいの。早く走れるようになりたいの。お願い!」


ことりからこのように言われました。


「そういうのは凛に頼んだ方が良いのでは?」


「凛ちゃんにも頼んだんだけどね?花陽ちゃんに教えなきゃいけないからって。」


「そうでしたか。そういうことなら任せてください!」


「よろしくお願いします!」


流石に脚力をあげるというのは現実的ではありませんね。明日が本番ですし。

そうなるとフォームの改善でしょうか。


「まずはフォームの改善です。ことり、走ってみて下さい。」


「走りました!」


「ふむ。悪くはありませんが、ここをああして、そこをこうしてもう一度走ってみましょう。」


「はぁはぁ…。どうだった?」


「よくなっていますよ。凄いです、ことり。」


「えへへ、海未ちゃんのおかげだよ〜。」


「次は…、そうですね。スタートダッシュでしょうか。」


「スタートダッシュ?」


「ええ、いくら良い走りが出来ても、スタートで遅れてしまっては台無しですから。」


「確かに…。それでどうすればいいの?」


「その前に、ことりは知っていますか?

最高速度でスタートダッシュ出来る稀有な存在を。」


「うーん。わかんないよぉ。」


「それは…蜚蠊です。」


「ご、蜚蠊?」


「そうです!彼等の体長が人類並だとするなら――――――あろうことか時速270キロメートル!!!」


「つまり初速から最高速を出せれば、あなたの素晴らしい走りを最大限に引き出せるのです!」


「そ、それで…、どうすればいいの?」


「まずは液体をイメージして…。」


「ふむふむ。」


「極限の脱力を…。」


「ふむふむ。」


………


こうして私達の特訓は終わり、体育大会当日がやって来ました。


「じゃあ海未ちゃん…、行ってくるね。」


「ええ、見せつけてやりなさい。ことり…あなたの力を。」


(大丈夫。だって海未ちゃんが教えてくれたんだから。)イチニツイテ


(脱力…、液体…。)ヨ-イ


(そして…気化…。)ドンッ


シュン


(海未ちゃん、いかがですか?あなたが教えてくれた…、蜚蠊ダッシュ…です。)


いい走り…

あっ、一位になったようですね。

うぅ…、まるで自分のことのように嬉しいです。グスッ

あれ?涙が…。

うぅ…困りました。これではことりに顔を見せられません…。





困ったことがありました…。

それは中学生の時、剣道の大会が行われた時のことです。


「うぅ…、悔しいよぉ。」グスッ


穂乃果は珍しく泣いていました。

普段は試合に負けたぐらいでは泣かないのに…。

理由はわかっています。ほぼ互角の試合をしていた穂乃果。結果は判定負けでした。自分よりも格上を相手にし、勝利が目の前に見えていただけに本当に悔しいでしょう。


「練習もたくさんして頑張って…、それなのに…それなのに…。」グスッ


「ええ、負けてしまいました。」


「うっ」ズキッ


「しかし、知っています。穂乃果が今日に向けてどれだけ頑張ってきたか。知ることができました。その涙を見て。」


「誇らしいことです。結果はどうあれその心意気さえあれば、絶対に次に繋がりますよ。」


「…ありがとう。」


「礼には及びませんよ。私と穂乃果の仲ですから。」


「次の海未ちゃんの相手…、私が負けた人だね。ねえ海未ちゃん…。」


私は何も言わず、言わせず近くにあった薔薇を握り絞り出したエキスを手に閉じ込め、解放し、香りを漂わせました。


「受け取りましたよ。穂乃果。」


穂乃果にそれ以上言わせるのは野暮ですよね?

意思は伝わっています。かならず勝ちます。私が負けて穂乃果がまた悲しい顔をするのは困りますから…。





今日も困りました…。

なにやらことりが悩んでいるそうです。


「どうしたのですかことり?元気がないようですが…。」


「あっ、海未ちゃん。実はね…。」カクカクシカジカ


「ふむ、そのようなことがあったのですか。私に出来る事は何か無いでしょうか?。」


「うーん、じゃあ海未ちゃんには、…やっぱり大丈夫だよっ。」


「ことりの力になりたいのです。」


「でも…。」


「ではことりの好物のチーズケーキを買ってきましょう。好きなものを食べて、少しでも元気を出して下さい。」


「そんなっ…、悪いよぉ…。」


「私では力になれないのですね…。」グスッ


「じゃ、じゃあお願いしちゃおうかなぁ〜。よろしくお願いします、海未ちゃん。」


「合点承知です!」




「というわけで買ってきました!」


「早い!」


「ええ、ダッシュで買ってきましたから。」


「…なんと言うことでしょう。」


「海未ちゃんどうしたの?」


「急ぎすぎるあまりほむまんを買ってきてしまいました…。私は最低です。お使いも満足にこなせない駄目人間です…。」


「私はほむまんも大好きだし、別にそこまで…。」


「いいえ。私はチーズケーキを買うと言って出て行きました。それなのにこの醜態!…しばらく旅に出ます。探さないで下さい…。」ダッ


「ちょ、ちょっと海未ちゃん!?」


「行っちゃった…。」


気づけば私は公園に来ていました。

懐かしい…、よくここで穂乃果とことりと遊んだものです。

今ではあまり来ることはありませんが、落ち込んだ時には、何故かここに来てしまいます。

そして…


「海未ちゃん!」


「やっぱり…ここにいたんだ…。」ハァ...ハァ...


息こそは切れていますが、それほどでもありません。探し回るのではなく、一直線にここに来たのでしょう。

分かっていたのです。ここへ来ることが。

ことりもそうだからです。ことりも私と同じように悩んだ時には公園に来るからです。

もちろん穂乃果も私達と同じです。

だから私達は落ち込んでいる姿を見ると、そっと公園へ行きふらっと立ち寄っているであろう幼馴染みを励ましに行くのです。


「ええ、やはりわかりましたか。」


「わかるよ。でもなんで海未ちゃんが行っちゃったのかわからないよ。」


「それは…。」


「確かにチーズケーキを食べれば少しは元気が出るかもしれないよ?けどね、美味しいものを一緒に食べてお喋りする方がずうっと元気になるんだよ?」


「ことり…、あの…。」


「もういいよ海未ちゃん、こっちに来て?」


「しかし…。」


「いいからおいで?」


「あ、あの…。」


「海未ちゃん?」


「…わかりました。」スタスタ


「駄目だよ海未ちゃん、レディに三回も言わせたら。」ダキ


「こ、ことり?何故抱きつくのですか?」


「胸、貸して?私だってギリギリなんだから…。」ウルッ


「すいませんことり。私が間違っていました。」ナデナデ


「いいy…、許さないよ。」


「どうしたら許してもらえますか?」


「それはね…。」


あゝ、なんということでしょう。

私は穂乃果とことりの1日着せ替え人形になってしまいます。

やられました。さすがことり、策士ですね。





今日も困ってます。

時は大晦日、普通ならば家族とテレビでも見ながらゆっくりとしています。

それなのに…


「それなのに穂乃果、何故私の家に…?」


「ふふふ…、それはね海未ちゃん一緒にお参りに行くためだよ。」


「現地集合すれば良いでしょう。」


「穂むらの営業開始は1月3日からなのです。」


「関係無いでしょう。」


「なのでお父さんとお母さんは旅行に旅立ちました。雪穂も家にいません。」


「それで?」


「もうっ!1人で家にいるのは寂しいから海未ちゃん家に来たの!わかってよ〜。」


「仕方ないですね…。ではことりも呼びましょうか。」


「心配無用だよ、海未ちゃん。ことりちゃんは今外国だからね。」


「それはまた唐突ですね。」


「うん。それでね何回も誘ったんだけど本当に申し訳なさそうにしてて、これ以上は迷惑になっちゃう!って思って。誘うのを諦めたよ。」


「当たり前です。というよりまず一度断られたら、潔く引くべきです。」


「へへ、もしかしたらって思って…。」


「ことりがいないとは…、年明けは少し寂しくなりそうですね。」


「うん…、てあれ?海未ちゃんのママさん達は?」


「あぁ、二人とも出掛けましたよ。年明けは色々と忙しいようで…。」


「じゃあ海未ちゃんと二人きりって訳だね!」


「ええ、残念ながら。」


「ひどいっ!」


「嘘ですよ。穂乃果が家に来ると思って楽しみにしていました。」


「ん?なんで来ると思ったの?それに楽しみって。」


「先の穂乃果の話、全て知っていました。1人で寂しい穂乃果は家に来るだろうそう思いまして。」


「へぇ、じゃあ海未ちゃんも寂しかったんだ。」


「そうですね。さすがに大晦日に1人は中々心にくるものがあります。」


「だよね。」グゥ〜


「いい音を鳴らしますね。」


「うぅ…、お腹減ったんだもん。しょうがないじゃん!」


「では一緒に作りましょう。今から。」


「やるったらやる!」


そして…


「出来た!」


「ええ、出来ました。」


「美味しそうだねぇ。」


「ええ、美味しそうです。」


「海未ちゃん…。なんか返答がテキトーだね。」


「ええ、テキトーですね…、ってすいません!お腹が減って意識が…。」


「まあいいや!頂こう!」


「この世の全ての食材に感謝を込めて…。」


「「いただきます。」」


パクッ

モグモグ…


「ご馳走さまです。」


「ご馳走さま!いや〜美味しかったね。ついつい食べ過ぎちゃった。」


「ええ、満足です。」


「じゃあ洗い物だけど…じゃんけんで決めよう!」


「と言うと?」


「負けた方が皿洗い、シンプルでしょ?」


「いいですね。受けて立ちます。」


「せーのじゃーんけんぽん!」グ−


「ぽん!」チョキ


「やった!穂乃果の勝ちーって海未ちゃん!?」グ-


「チョキで挟まないで!痛い痛い!」グググ…パ-


「穂乃果。覚えておきなさい、この世には石をも砕くハサミがあるということを…!」


(卑怯だよ海未ちゃん…。)ゴシゴシ


「洗い物終わったよ!」


「お疲れ様です。初詣までまだ時間もありますし、お風呂にしましょうか。」


「うん!入ろう入ろう!」タタタッ


「コラ穂乃果!着替えも持って行きなさい!」


「いい湯だね〜、生き返るようだよ。」


「おじさんですか、あなたは。」


「だって本当に気持ち良いんだもん。」


「…、湯船の中で寝るのだけはやめて下さいね。どざえもんは回収したくありませんから。」


「さらっと怖いこと言わないでよ〜。」


「さあ、妄想が現実とならない内にあがりましょうか。牛乳も用意しています。



「流石海未ちゃん!さあ出よう!」


「クゥー、風呂あがりの牛乳は格別だね!レインボー!」


「穂乃果、テンション高すぎですよ。」


その後、私達はたくさんお話しをしました。時間がたつのも忘れて…。

あっという間に日付が変わってしまいました。

そして、これから起こることも知らずに、私達は初詣に向かいました。

予想以上に賑わっている神社、驚きました。その中にある不気味な静けさ、心がざわつきました。


「今年一年、皆さんに健康で幸せな一年が訪れますように。」


そう祈願し、家路につく途中それは現れました。


「そこの長髪、相当の手練れと見える。私は敗北を知りたいのだ。さあ、教えてくれ、その味を!」


静けさの正体…、それは初詣に来た客を監視されていたからでしょう。その気配に気づいた私に目をつけた…。


「いいでしょう。穂乃果、下がっていて下さい。」


「わかった…。」


バチィィン!!!


「…不意打ちですか。」ジ-ン…


「ずいぶん余裕そうじゃないか。」


バチィィン!!!


「鞭打ですか。しかし所詮は女子供の武器…笑わせますね。」


バチィィィィン!!!


「ーーーーーッ!!」


「しかしたまには私も使ってみるのも悪くないでしょう。」


バチィィィィィィン!!!


「ーーッ!貴様!」


「鞭打ではやはり致命傷は与えられませんね。」


(何故だ…。)


「殺すと色々と面倒ですね。」


(何故こいつに毒が効かない…。)


「ひとまず寝かせてムショに突き出しますか。」シュンッ


(私の毒手が何故…。)トン


「ふう…。穂乃果、寄り道になりますが警察署へいきましょう。」


「うん、全然大丈夫だよ。」


その日からでした。私の体に異変が起きたのは…。


「海未ちゃん…、お粥作ってきたよ。」


「ありがとうございます。」


「大丈夫なの?」


「ええ、食べたら元気になりますよ。」


「…ないじゃん。」


「え?」


「食べてないじゃん!」


「ふふ、そうですね。食べてないです。」


私の体は日に日に弱っていき、御飯も喉を通りませんでした。

穂乃果に心配をかけさせてしまいました。私もまだまだですね。


「海未はいる?入るわよ?」


「はい、どうぞおあがり下さい。」


「絵里ちゃんどうしたの?」


「海未に伝えたいことがあってね。」


「なんでしょう。」


「あなたは毒に侵されているわ。普通の解毒薬では治せないでしょうね。」


「成る程、先日の相手は毒手の使い手でしたか。」


「じゃあ海未ちゃんは死ぬしかないの?」


「ひとつだけ方法があるわ。それはね、中国で行われる大擂台賽に出ることよ。」


「そのような大会に出ることと私の体の異変に繋がりがあるのでしょうか。」


「その大会にあなたの体の治す鍵となる人が出るの。もちろん絶対に治るという保証があるわけではないわ。」


「成る程…。」


「駄目だよ海未ちゃん!今度こそ本当に死んじゃうよ!」


「行くしかありません。残された道はこれしかないのです。」


「じゃあ私も連れてって。」


「しかし…」


「海未ちゃんと一緒に頑張りたいの!」


「いいじゃない海未。連れてってあげなさいよ。」


「うぅ…、わかりましたよ。」


こうして私達は中国へ向かい大擂台賽の会場につきました。


「そういえば何故絵里はここに?」


「私も出場するからよ、この大会に。」


「絵里ちゃんも!?」


「ええ、エリーチ海王としてね。折角海王の称号を得たんだもの。私の力がどれだけ通用するか知りたいじゃない。それに海未と戦いたいじゃない。」


「治療以外にもそんな狙いが…。」


「海未ちゃん!絵里ちゃん!もう対戦相手が決まったみたいだよ!」


「私の相手は…、どんな人なんでしょう。」


「流石海未ね。毒手の使い手よ。」


「そんな!それじゃ海未ちゃんが!」


「一見運が悪いようだけど、とてもいいのよ?」


「どういうことです?」


「治療の鍵はそいつってことよ。」


「そんなの信じられないよ絵里ちゃん。やっぱりこんなところを出て薬を探そうよ。海未ちゃんが治る前に毒で死んじゃう…。」


「…大丈夫です穂乃果。私は死にません。それにおそらくですが方法はこれしかないのです。」


「見守っていて下さい。応援していて下さい。それが私の立つ理由になります。」


「では」


毒手の相手…、恐らく先日の方よりも数段は上でしょう。

しかし絵里の言っていた意味…治療の鍵。勝って聞き出すということでしょうか?

そう考えながら私はリングに立ちました。


「私も随分と舐められたものだ。弱った小娘が相手とは…。」


「ふふっ、すぐに後悔しますよ。私と当たったことを。」


ゴォオオン!!


ゴングと共に、試合は始まりました。

初撃、私は蹴りを入れました。


「…命中。」


何を言って…今蹴りを当てたのは私…。

ふと足元に目をやると、足が腫れていました。これが本来の毒手…。

なる程、初撃を入れたのはあなただったというわけですね。


「小娘…ここからは地獄だぞ。」


「覚悟の上です。」…ゴクリ


相手の一撃一撃が私を蝕んでいきました。

そして相手の打撃が止んだ頃には私は


ザァァァァ…


自身の血の雨に降られ、倒れていました…。

振り絞り放った拳が宙をきりながら…。


「海未ちゃん!」


?誰かが駆け寄って…?


「海未ちゃん……変わっちゃったね…。」


「鍛えられて引き締まった腕も、脚も

そして体も…全部変わっちゃった…。」


「でも…。」グスッ


「ちっとも変わってない。」


「海未ちゃんは…何一つ変わってないよ…。」ウルウル


…ポタリ


彼女の涙が私の頬を伝いました。


ドクンッ


その時、私の中で何かが…


ドクンッ


ドクンッ


ああ体が軽いです。今ならば空を飛べそうなぐらいに。


「…すいません。待たせましたね。」


「毒が裏返ったか。小娘よ。」


「裏返った?」


「解毒されたということだ。何故解毒されたか説明をしようか。」


「結構です。聞いても分からないと思います。それに…、体が言ってるんです。早くヤっちゃえって。」


「ほう、私も甘く見られたものだな。流石に舐めすぎだ!」シュッ!!


「遅い!」ドゴォォ!!


「…レフェリー!」


この一撃で相手を沈め無事勝つことが出来ました。


「穂乃果…ありがとうございます。」


「ばか…。心配したんだから。」


「すいません…。」


「許さないよ!いっつも無茶ばっかりして…。」


「く、クレープをおごりましょう!」


「今の穂乃果は食べ物になんか釣られないよ!」


「喋るのもいいけどまずは栄養補給よ。控え室に行きましょう。美味しい料理が揃ってるわ。」


「海未ちゃんごはんだって!早く行こうよ!」ダダダダッ


「まって下さい!ごはんは逃げたりしませんよ〜。」ダダッ


「すごいよ海未ちゃん!豪華だよ!美味しそ〜だなぁ。どれから食べようか迷っちゃうよ。」


「本当ですね…絵里が作ったのですか?」


「いいえ。私じゃないわ。」


「ん〜、私だよっ!」


「ことり!?何故ここに?」


「海未ちゃんがピンチだって絵里ちゃんから聞いてね?駆けつけてきたんだ!」


「そんな海未ちゃんを元気づけるにはどうすればいいか考えたの。」


「それでね、穂乃果ちゃんは声で元気づけるって思ったから私は食で海未ちゃんを幸せにしよう!って思って。」


「今まで作っていたのですか…。手間だったでしょうに…、ありがとうございます。」


「海未ちゃん!この肉美味いよ〜。このパンも!海未ちゃんも早く来なよ、ことりちゃんもさ!」


「では行きますかことり。」


「うんっ!」


「絵里は来ないのですか?」


「ええ、残念ながら今から試合があってね。」


「そうですか…、頑張って下さいね。」


「じゃあまた後で。」バタンッ


「…、いただきます。あ、本当ですね、すごく美味しいです!」


「そんなに喜んで貰えるなら作った甲斐があったよ。」


「ことりちゃんは天才だね!」


「私もそう思います。」


こうやって美味しい御飯をいただきながら、楽しい会話をしていました。


「それでね?海未ちゃんがチョキでグーを挟んで無理矢理パーにしたんだよ!だから穂乃果が食器洗いをする羽目に…。酷いよね?ことりちゃん!」


「あはは…、海未ちゃん負けず嫌いだからね。」


「い、いや〜美味しい御飯でしたね。また食べたいです。」


「海未ちゃん!話をわざとそらさないでよ!


「海未ちゃん、デザートがまだだよ?」


「デザート?」


「うん、絵里ちゃんからもらったんだけどね?」


「これは…バケツいっぱいの水?…ですか?」


「うん、それにこれを入れるの。これは果糖って言ってね、果実を精製した純粋な甘味料でね。すごい吸収率なんだって。」


「本当はタンパク質やデンプンがいいんだけど…。今の弱った海未ちゃんのは時間がないからね。この果糖水をグイッと。」


「この量は流石に…キツくありませんか?」


「海未ちゃん、ファイトだよ!」


「うぅ…いきます!!」ゴキュッ ゴキュッ


猛毒に侵され極限まで衰弱しきった少女の肉体

そこへ闘争による更なる負担が加わり、人体最後のエネルギー貯蔵庫である肝臓のグリコーゲンも底をついた。

酷使に継ぐ酷使…もはや破壊されつくした少女の金筋肉細胞達。彼女等は復讐を誓っていた。

次なる酷使に対する復讐。つまり今後もし 同じような事態が起こったならば必ず…


「おぉ、これは…!」シュ--


必ず独力で乗り越えてみせると!

人ならぬ 神の創造りたもうた肉体

神の誓いし復讐にミスはありえない!

今、少女の身体に空前の超回復が起こった。


「…以前よりも体が強く…?」


「海未ちゃん良かった!」ぎゅー


「私も〜。」ぎゅー


「あまり引っ付かないで下さい。恥ずかしいんですから。」


「離さないよ!心配させた罰なんだから。」


「罰だよっ!」


「仕方ありませんね…。」


「よしことりちゃん、あれしようよ!」


「あれだね!いいよ、やろうやろう!」


「「せーの!」」


「「園田海未復活ッ!!」」


「「園田海未復活ッ!!」」


「「園田海未復活ッ!!」」


「「園田海未復活ッ!!」」


「「園田海未復活ッ!!」」


「してぇ…。」


「ライブしてぇ〜。」


「…茶番いいんです!早く日本に帰ってゆっくりしましょうよ。流石に疲れました…。」


「もう!それは私達のセリフだよ!安心して疲れが一気に出ちゃったよ。」


「それに試合は?絵里ちゃんは?」


「もう試合に興味はありませんね。それに絵里はやる気みたいですし、そっとしておきましょう。」


私達は日本に帰りゆっくりとしました。絵里に何故置いて行ったのか、寂しかったのだと泣きながら言われて困ったことになるのはまた別の話です。





今日はまだ困ったこともなく平和な時間を過ごしています。

むむっ、穂乃果と絵里が何やら話をしているようです。

少し聞いてみましょうか。


「米軍の偵察衛星に常に監視されている人がいるのよ。その監視されている人が乗り物に乗って移動したり、走ったり、闘ったりする以外で時速4Km以上を出すとね…。」


「どうなるの?どうなっちゃうの?教えて絵里ちゃん!」


「偵察衛星が緊急動作をしてしまうの。

何か異変があったと判断してその人を集中して監視するのよ。」


「そしたら?」


「これはほんの一例だけどね、カーナビが70m現在地からずれるのよ。」


「すっごーい!穂乃果も監視されてカーナビずらしてみたいよー。」


「穂乃果対国の友好条約が結べるくらい強くないと無理よ。」


「それって努力でなんとか出来る領域じゃないよ…。」


「そういえば絵里ちゃんは監視されている人は知ってるの?」


「勿論。」


「教えてよ!」


…女子高生が話す話題じゃないでしょうこれは。もっと可愛い…こう、なんと言えばいいのか…。

そうです!例えばスイーツの話や洋服の話題、少々破廉恥ですが恋話なるものを話すべきでしょう。


「……がいるんだけど、実はもう一人いるの。誰だと思う?ヒントはこの学校の人よ。」


あゝ、考え込んでいる間に聞き逃してしまいました…。

しかしもう一人ですか、この学校の人…誰でしょうか。


「うーん、もしかして絵里ちゃんかな?前び海未王っていうすごい称号貰ったって言ってたし。」


「穂乃果、海王よ、海王。あと残念だけど私じゃないわ。」


「じゃあ凛ちゃんかな?すっごいパワフルだし!」


「残念、違うわ。でも流石ね、正解はμsの中にいるの。」


「ほえ〜、じゃあいい線いってるんだねえ。じゃあ希ちゃんかな?あの不思議な雰囲気まさに猛者って感じだし!」


「残念!正解は海未よ。見事なハズレっぷりね、穂乃果。」クスクス


「海未ちゃんが一番最初に出てこないなんて…、穂乃果どうかしてたよ…。でもそうだね、海未ちゃんすっごい強いもん。いつも一緒にいるから感覚が麻痺してたのかも。これが普通なんだって。」


ん?ちょっと待って下さい。私なんですか!?確かに武道をしているので、他の女の子よりは力は強いとは思います。

でも監視されるほど強くは…。


「うわ〜!海未ちゃんが地面を殴って地震を止めたことを思い出していれば!」


「いつもそうやってるから気がつかなかったんだ〜!」


「ここ10数年オトノキを避けるように地震が来てたのはそういうことだったのね…。」


「絵里ちゃんは出来ないの?」


「出来ないわよ。当たり前じゃない。」


…武道を嗜む人なら誰でも出来ると思ってました。


「…ちゃん!」


「海未ちゃん!」ガバッ


「こ、ことり!?」


バッタ-ン


ピピッ


「ん?海未ちゃん、ことりちゃん!?そこで何してるの?」


「えへへ、ドアの前に海未ちゃんがいたからつい飛びついちゃって。」


「まったく、危ないですよ?怪我したらどうするんです。」


「ごめんなさい…。」


「ずるいよことりちゃん!穂乃果も抱きつく!」ぎゅー


「もう、穂乃果まで…。しょうがないですね、本当に。」


私達は知りませんでした。私が飛びつかれて倒れた瞬間、カーナビが70mずれていることを…。





ふぅ…。

今日の練習は中々にハードでしたね。

原因は私ですけど。

穂乃果とことりはもうグロッキーなようで…少し申し訳ないですね。

……飲み物でも買ってきましょうか。


「穂乃果、ことり、今日はお疲れ様です。私はあなた達の飲み物を買ってくるのでゆっくり休んでいて下さい。」


「そんな〜、悪いよ海未ちゃん。穂乃果達も行くよ。」


「お金だって渡してないし…。」


「いりませんよ。そうですね…言うなれば今日の練習を頑張ったご褒美でしょうか。ふふっ、なんだか少し偉そうでしたね。」


「でも…。」


「はぁ…、強情ですね。素直に奢らせて下さいよ。」


「ではこうしましょう。じゃんけん3本勝負!これで負けた人が買い出しに行く、それならば文句はないでしょう。」


「ま、まあそれならまだいいかも…。(待てよ…海未ちゃん前じゃんけんでズルしなかったっけ?)」


(穂乃果ちゃんが前に海未ちゃんがじゃんけんでズルしたって言ってたような…?)


「ではいきますよ〜。最初はグー、じゃんけん…。」


「ぽん!(まあいいや。)」


「ぽんっ!(まあいっか。)」


「…チョキって、あぁ負けてしまいました…。グーと迷ったんですけど…。」


それは…


「次です!最初はグー、じゃんけん…」


「ぽん!」


「ぽんっ!」


「グー…、ってまた負けましたね。来ると思ったんですよね〜。残念です。」


「しかし、次は勝ちますよ〜?最初はグー、じゃんけん…。」


「ぽん!(……。)」


「ぽんっ!(……。)」


世界一曖昧なゲーム


「あぁ〜…。負けてしまいました。最後の最後で深読みをしすぎました。悔しいです。」


「では私が負けたので買ってきますね?ゆっくり休んでいて下さい。」


勝つも負けるも言ったもの勝ち


「ほら穂乃果、ことり?買ってきましたよ。」


「ありがと海未ちゃん。」


「私達からも、これ。」


それは…


「何故このような物を?」


「いや〜、穂乃果達海未ちゃんにじゃんけんで勝てなかったからさ、海未ちゃんに奢るんだよ。そういうルールだったよね?」


何度繰り返そうが


「今回は一回も勝てなかったけど…。」


勝つも負けるも言ったもの勝ち


「次は絶対負けないからっ!」


世界で一番優しいゲーム





今日はテストの返却日です。

赤点を回避出来なければ、困った事になります…。

穂乃果は大丈夫なのでしょうか?心配です。あぁ…、緊張して来ました。


ガラガラ...


「海未ちゃん見て!」


あれこれ考えている内に穂乃果が来ましたね。


「どれどれ…」


「すごいじゃないですか!どうして…?もしかしてカンニングですか?」


「違うよもうっ!」


「ふふっ、冗談ですよ。しかしすごいじゃないですか。全部平均点越えですよ?」


「それはもう…、海未ちゃんが…スーパースパルタだったからね…。あぁ〜!!もう思い出しただけで地獄だよっ!」


「当たり前です。そうでもしないと勉強しない穂乃果が悪いんですよ?」


「それはそうだけど…。今はもっと褒めてくれても良いんじゃない?」


「す、凄いです穂乃果!良く頑張りましたね。やっぱり穂乃果はやれば出来る子だったんですね!」


「そんなわざとらしく褒められても嬉しくないよ!」


「…本当に良く頑張りましたよ穂乃果は。」ナデナデ


「へへ♪」


こういうことって…

たいていは…そう…たいていは…


『夢』


ガラガラ...


「海未ちゃ〜ん!どうしよ〜。赤点とちゃったよ〜。」


「穂乃果…あなた…。」ゼツボウ


このあと鬼の追い込みをして、なんとか追試を乗り切ることができたのはまた別の話です。





うーん…、困りましたね…。

凛が今日は一緒に帰ろうだなんて

まあそれ自体は何にも問題は無いのですが…。


(強い海未ちゃんのことだから、きっと毎日波乱の日常だよね!今からそれをこの目で見られるなんて、楽しみだにゃ!)


なんだか考え事をしているみたいなんです。悪だくみでなければいいんですが…


「凛、知ってるよ?海未ちゃんはきっととてつもない敵と向き合ってるんだよ。」


「凛が好きな格言で《その人の大きさを知りたくば、その人の敵を見ろ》ってのがあるんだ!」


「海未ちゃんはきっと…、想像もつかない強大な敵を毎日真向から叩き伏せてるんだにゃ!」


「ふふっ、なんですかそれ?そんなことないですよ。」


「私の日常なんて…、退屈で…静かな…いたって普通な日常ですよ。」


ヴァン...オオン...バババ...ギャギャギャ...


(そんなわけないにゃ!って前から暴走族?言った側からこれだよ!)


(海未ちゃんVS暴走族…どう考えても退屈でも静かでもないよ!)


「はぁ…、走族ですか…。」ボソ...


「え?そ…。」


(そーぞく?暴走族を走族って…凄いかっこいい!」


シ-ン...


(え?どういうこと…?エンジンを切られた無音のバイク達…、凶悪だった風貌は見る影もなくって、私達の左右を整然とすり抜けて行っちゃった…。)


(そうか!暴走族は暴走するから暴走族…!だから海未ちゃんにとっては暴走しない奴らはただの走族なんだね!)


なんだか凛が凄いキラキラした目で私を見ています…。


「確かに退屈で静かな日常だったね。やっぱり海未ちゃんは凄いにゃ!本当にかっこいいよ!」


退屈で静かな日常なのに凄いとかかっこいいとか…なんなんでしょうか?


「り、凛?」


「決めた!凛は海未ちゃんみたいになるよ!海未ちゃんを監視して、盗めるところはどん盗んでいくにゃ〜!」」


ああ…困りました…!なんだか面倒なことになった気がします…。

しばらくは凛に気を付けないといけませんね…。





ああ…、困った事になっちゃった!

きっかけは凛ちゃんのあの言葉…


「海未ちゃんってちょっと堅すぎないかにゃ?」


「んなっ!そんなことありません!私はすっごいフランクで明るいですよ!見せてあげましょう…、ありのままの私を!



なんかいやな予感がプンプンするよ…


「海未ちゃん?何するか知らないけど辞めておいた方が…。」


「いいえ、そういう訳には行きません。私のイメージを変える為には必要なんです。」


あ…これもう駄目だ…


プルルルルルル.....


「もしもし総理ですか?今から1時間後に殺しに行くので。では。」


「穂乃果、行ってきますね。」


ガチャ


「ちょっと海未ちゃん!…行っちゃった…。」


「でも不思議と距離を感じないし、何より凛達のことをちゃんと考えてくれてるし…、やっぱり海未ちゃんはそのままでいい…ってあれ?海未ちゃんは?」


「聞いてなかったんだ…。」


海未ちゃんも早とちりしすぎだよ!

なんで凛ちゃんの話を最後まで聞かないかなぁ…。

…とりあえず海未ちゃんさがそ。


「そんなものですか?見損ないました…。」グググ...


あ!いたいた…。

…何してるんだろ?


「馬鹿な!こっちは100人いるんだぞ!?」


うわぁ…、100対1のおしくらまんじゅうで勝っちゃってるよ…。


「話になりませんね。」シュッ


ダダダダ


あ、中に入って行っちゃった。

てか今の海未ちゃん元気っていうかクレイジーだよ…。

中に入れないし外で待とうかな。


ダァン!!


「総理、お元気ですか?」


「総理も大変ですね。無能なボディーガードばかりで…。警備体制がなっていませんね。」


「ご、ご忠告ありがとう…。」


ツクエ...ガコォッ!!


「あなたも気が休まりませんね。」クスッ


シュッ


「そ、総理!ご無事ですか!?」ダダダ


「………。」


「君たち、私はもう死んでいるのだよ…。」


あ、海未ちゃん帰って来た。


「穂乃果?そんなところでどうしたんですか?」


「止めに来たんだよもう!海未ちゃんが早とちりするから!」


「え?早とちりとは…。」


カクカクシカジカ


「そんな…まさか…。」ダラダラ...


「てゆうかそれじゃ元気アピールにならないよ!」


「ならないんですか!?」


「ちょっと…いや凄く危ない人だよ。」


「そんな…。」ボ-ゼン


いやいや、呆然じゃないよ。誰でもわかるよそれくらい…。

元気アピールついでに総理殴り込みに行く人なんていないよ…。


「とりあえずもどろっか?」


「はい…。」シュン


その後、みんなにしばらく距離を置かれて海未ちゃんがショックを受けちゃって…。まあ自業自得なんだけど。





おや?もうすぐ練習だと言うのに彼女達は何をしているのでしょうか?


「穂乃果ちゃん見てみて〜、グニョングニョンだよ〜。」


「凄い!…ってグミなんだから当たり前だよ〜。」


「えへへ、ばれちゃった。」


「じゃあ穂乃果もいきます!鉛筆を振ると〜。」フニャフニャ


「すご〜いっ!」


「ふふふ、甘いにゃ穂乃果ちゃん。」


「な、甘いってどういう…。それは…シャープペン…?それをどうするつもりなの!?」


「…。」フニャフニャ


「なに!?鉛筆よりはるかに硬いシャープペンがいとも簡単に…。」


「ふふ、これが力の差だにゃ。」


「ちょいと待ちーな。」


「希ちゃん!?…それはスプーン?」


「これを…、こうや!」グニャリ


「「「「SUGEEEEEEE!!!」」」


「入門したい?」


「「「したい!!」」」


「うちの修行は厳しいでぇ〜?」


「覚悟のうえだよ!だよね?ことりちゃん!凛ちゃん!」


「うん!もちろんっ!」


「当たり前だにゃ!」


「よし!じゃあ、しっかりついてくるんやでぇ〜。」


ガラガラ...


「あなたたち、いったい何をしてるんですか?」


「いや、あの…。」ガクガク


「もうすぐ練習だと言うのに遊んでて良いとでも?」


「そ、その手に持ってる鉄パイプみたいなのは何かな…?」ブルブル


「ああ、これですか。あなたたちが魔法を見たいと言うので持ってきました。」


ブゥンッ!!!


「ほら…、グニャグニャ、ですよ…?」


「「「「練習、行こう!!!」」」」


今日の練習はいつになく真面目にやっていました。いつもこうだと困らないんですがねぇ…。





今日は学校はお休みですが、練習はあります。場所はここ、神社です。


「うーん練習だ〜!」


「なにする?歌?踊り?」


「まずは基礎練です。この男坂を往復しましょうか。」


「え〜つまんないよ〜。」


「つまらないとはなんですか。こういう地味な練習だってちゃんとする意味があるんですよ?」


「それはそうだけど…。」


「まあ確かに気持ちはわからないでもないですが…。」


「じゃあ!」


「困りましたねぇ…。そうです!アレンジを加えましょう!」


「と言っても下りだけですが…。それでも十分に新鮮だと思いますよ。」


「嫌な予感しかしないにゃ。」


「では手本を見せるのでしっかりと見ていて下さい。次は貴方達ですから。」


「ことりちゃん…、助けて?」


「穂乃果ちゃん…、もう止められないと思うよ」


「だよね…。」


「では行きます!」シュッ


ダダダッ


「ただ下るのではありません!落ちるのです!落下よりも速く!」


ヒュ---


「転倒したくなければ、更なる加速が必要不可欠です!落ちるというよりは疾走るイメージでしょうか?底に向かって一気に疾走り抜けるイメージ…。」


ヒュ----


シュタッ!


「無事に着地しました。さあ!貴方達も早くして下さい!」


「出来るわけないよ!」


「凛達を亡き者にする気かにゃ?」


「ちょっと無理があるかな〜?」


結局皆さん普通に男坂を往復していました。いい案だと思ったんですが…。





今日はあいにくの雨…。

だから部室でだらだらしてるんだ!


「雨には困ったもんだよ〜。」


「活動場所は屋上ぐらいしかないから…。」


「雨の日は何も出来ないのよね。」


ゴロゴロゴロゴロ...


「うわ〜、雷さんも落ちて来そうやなあ。」


「どうして雷って落ちてくるんだろ?」


「それはな、雲の中の氷の粒がこすれ合って電荷…、電気が溜まって溜まって…もうこれ以上は溜めれへん!って電気を外に出すからやん?」


「そうだったんだ…、初めて知ったよ!」


「穂乃果も雷について知ってることあるよ!」


「というと?」


「雷はね…、落ちる場所を選ぶんだよ。背の高い木、避雷針、とにかく尖ったものを探して、そこに落ちるんだ。」


「選ぶなんて、そんなことある訳ないにゃ!意思がある訳でもないし。」ハハハ


「ひどーい!笑わなくてもいいじゃん!」


「そういえば海未はどこにいるの?」


「ああ、海未ちゃんなら今日は用事があるので家に帰らせていただきますって。ほら、ちょうど校庭を歩いてるよ。」


ゴロゴロ...


「申し訳ありませんって、そんなにかしこまらなくても良いのにね。」


ピシャ--ンッ!!


「あっ!!海未ちゃんに雷が!!!」


「ど、どうしよう…。」


「これあかんやつやないの…?」


「み、見て!何も無かったかのようにピンピンしてるわ!」


「「「「「………。」」」」」」


「と、尖り過ぎだよ、海未ちゃん…。いろんな意味で…。」





今日は終業式…、私達がアイドル活動をしてからもうこんなに経っていたんですか。あっと言う間でした。

しかしそれ以外にも頑張るべきものがあ

るんです。


「ですよね?穂乃果?」


「な、なにかな?」ビクッ


「どこに行こうというのですか?」


「いや…。」クル...


「穂乃果?」


「ど、どうしたの?」ビクッ


「いえ…、穂乃果は私達のリーダーとしてよく頑張っていたので、お疲れ様と一言声を掛けようと思いまして。やはり穂乃果あっての私達なので。」


「いやいや、そんなことないよ〜。じゃあ…。」クル...スタスタ


「穂乃果?」


「何か急ぎの用でも?」


「べ、別に…。」


「では早速ですが…、通知表を見せていただきましょう。」


「う、海未ちゃん…。穂乃果、旅に…出たいんだ…。」


「いいでしょう。しかしその前に穂乃果。」


「海未ちゃん。……なんでかな。」


「何がですか?」


「何がですかって海未ちゃん…。……あれだよ、ほら期待に応えたいって…。やってはみるけど…、うまくいかないっていうあれだよ…。」


「穂乃果、あなたは十分期待に応えてますよ。さあ、ともかく通知表を。」


「海未ちゃん…。」


「穂乃果。旅も!反省も!後です後!通知表を見てからですっ!」


「う…。」


「穂乃果が勉強を私に任せると、そう言ったので…。それに応える為です。今後に生かすためにも、見せていただけないと困ります。」


「わかったよ…。」


「では、穂乃果の家に行きますよ。」


そうして穂乃果の部屋で私が目の当たりにした現実(通知表)は…。


「5…、無いですね。」


「でも…。」


「それは音楽でしょうっ!…これでは見せたくないわけです。」


「で、でも…。」


「『でも』?…まさか1はとってないとか言うつもりじゃないですよね?」


「うっ…。」ビクッ


「言うつもりだったんですね…。」ハァ...


「いいですか穂乃果。学習することに価値があるのではないのです。結果が伴って初めて価値が決まるんです!」


「この文机にだって漫画やお菓子…果てはゲームまで…、ここは漫画喫茶じゃ無いんですよ?駄目とは言いません。しかし勉強の後です。今さらこんな当たり前なことを言わせないで下さい。」


「……。」


「ただ…、ただ…穂乃果…。」ウルウル


「所見欄は…、立派でした。」ボロボロ


「え、えっと…海未ちゃん?その…、遊びにでも行く?」


私が泣いているから気をつかって…。

本当に優しい子です。

しかし…。


「勉強が…、終わってから…です…。」グスッ


甘やかす訳にはいきませんよね?


「…ん、わかった。約束だよ?」


「もちろんです。さあ、やりますよ!」





…彼女はしゃがみこんで何をしているのでしょう。


ペロッ…


「っ!これは…青酸カリ!?」


「何を言ってるんですか?穂乃果、それはアーモンドパウダー…」


「知ってる!知ってて言った!」


「びっくりしました。一段と穂乃果がスクラップになったのかと思いましたよ。」ホッ


「海未ちゃんの言葉が辛い!じゃなくて、コナン君ごっこをしてたんだよ!」


「穂乃果…、コナン君が舐めたのは麻薬ですよ?ちゃんと読んでるんですか?」


「穂乃果は全巻持ってるからね。そんなことぐらい分かるよ」


「そうです!私のコナン君そろそろ返して下さいよ!」


「だって面倒なんだもん…。それに海未ちゃんだって私のうしおととら返してくれてないじゃん!」


「…そういえば穂乃果は何で青酸カリなんて言ってたんですか?」


「え…ああ、…え?逸らすんだ。まあ、あの…、ネットのコラ画像を見て、マネしてみたくなって…」


「だからあんな馬鹿なマネを…。」


「で、でも、実際に舐めたら死んじゃうよね。猛毒だし」


「まあ確かに毒には違いありませんが…。指の表面についた粉を舐める程度なら、致死量には及ばないでしょう」


「なんだかちょっとがっかりだな〜。すっごい強い毒だと思ってたから」


「では穂乃果。世界で一番強い毒はなんだと思います?」


「うーん…。サリンだとか、それから海の生き物は強い毒を持ってる子が多いような…、でも分かんないや」


「確かに猛毒と言われるものはこの世にはたくさん存在します。」


「しかしそれらは簡単に手に入るものではありません。私の言う毒というのは…」


「いうのは…?」


ガラララッ


「お疲れ〜…って海未ちゃんと穂乃果ちゃんだけなの?」


シュッ


「え?何海未ちゃん、いきなり凛の前に…」


バタンッ


「凛ちゃ〜〜ん!!」


「私が言う毒というのは空気です!」


「空気です!…じゃないよ!なんてことを海未ちゃん!」


「空気中に含まれる酸素は約21%…、その酸素が18%以下になると酸素欠乏空気となります。」


「説明してる場合じゃ…!凛ちゃんが!」


「酸欠の空気を吸うと身体に異常が現れ始め、6%を切ると一呼吸で気を失ってしまいます」


「私は手の平で酸欠空気を生み出すことが可能となったのです。凛は…、はい」


「…いやいやいや海未ちゃん!」


「心配せずとも大丈夫です。時期に目を覚ますでしょう」


「ならいいけど…。でも身近にあるって言っても海未ちゃんじゃないと気軽に酸欠空気なんてできないでしょ?」


「穴の中などは基本的に酸欠空気である事が多いです。目で見て酸欠状態である事は分からないので迂闊にそこに足を踏み入れることが多いようです」


「酸欠空気そのもので死ぬ、というよりは気を失って転落するなどの二次災害が死亡事故の主な原因でしょうか」


「酸欠…、恐ろしいね…」


「ええ、本当に。惜しい人を亡くしました…」


「ちょ!ふきつなこt…。おーい凛チャーン!」


「冗談ですよ、穂乃果?」


「…冗談ヘタクソか!」


「おや、凛起きましたか」


「呑気すぎるよ!こちとらかよちんと過ごした思い出が走馬灯のように駆け巡ったんだよ!?もう凛駄目かもって思ったにゃ!」


「おかしいですね…。一瞬で気を失うはずが…、私もまだまだと言う事でしょうか。」ボソッ


「海未ちゃん!」


「おっと、すいません凛。悪気は無かったんです。」


「許さないよ!」


「困りましたね…。ほら、凛の好きなラーメン。おごりますから」


「うっ…、トッピングもつけなきゃ嫌だよ!」


「ええ、好きなだけ頼んでいいですから。では行きましょうか?」


「うん!凛、海未ちゃん大好きだにゃ!」


このあと何故か穂乃果の分のラーメンもおごらされました…。

やはり人を実験台のようにするのは間違いでしたね…。


後書き

一応刃牙ほぼ刃牙ネタ
なのでトンデモ理論です。
気付かない程度の修正もたまにします。


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14件評価されています


SS好きの名無しさんから
2015-04-14 22:00:44

hbさんから
2015-03-18 15:56:48

ギョタンさんから
2015-03-13 22:33:26

ラインさんから
2015-03-13 22:33:07

カヤックさんから
2015-02-19 20:56:03

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2015-02-02 23:27:55

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2015-02-01 13:17:35

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2015-02-01 01:15:25

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2015-01-28 21:01:57

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2015-01-25 23:52:25

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2015-01-19 02:38:54

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2015-01-17 01:54:15

このSSへのコメント

3件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2015-02-07 21:50:22 ID: nWp6dFAV

狼のクロニクル

2: ゆっけ 2015-02-07 22:35:46 ID: _WMAk-Po

剣道には判定負けはない、しかし例外もあるそうなので、その大会では延長が長引けば判定になるということにして下さい。今考えました。

3: ゆっけ 2015-02-07 22:40:51 ID: _WMAk-Po

さらに普段はない判定で負けてしまい悔しさ倍増ということにしておいて下さい


このSSへのオススメ

4件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2015-01-17 01:21:39 ID: 4i14bBD6

プールの話、いまいちわからなかったから誰か教えて

2: SS好きの名無しさん 2015-01-18 01:14:39 ID: Mv2SrqI0

元ネタは刃牙
プールの奴は刃牙の花山薫を主人公にした漫画があるんだけどそれのネタ

3: SS好きの名無しさん 2015-01-18 23:10:28 ID: 7_iQQD2D

色々気になるけど先生は男?

4: SS好きの名無しさん 2015-02-07 17:52:31 ID: 4i3l6qtE

剣道に判定負けは無いと思う。一本負けの事?


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