男「手錠、外してくれない?」 女「駄目よ」
男「駄目?」
女「駄目」
男「じゃあつけたままでいいから外行きたい」
女「駄目ね」
男「でも僕、かれこれ一か月外出てないんだけど?」
女「外なんてどうでもいいじゃない。男が外にでたら死んでしまうわ」
男「僕どれだけ信用ないのさ...」
女「それだけ外は危ないの。心配しなくても私が生活用品買いに行くとき以外は、ずうーっと一緒よ」
男「たまには違うのもみたいなーなんてね?」
女「外には男を狙う獣みたいなやつらが多すぎるのよ。私だけじゃ守りきれないかも」
男「気を付けるから。ずっと女さんだけを見てるから」
女「..........駄目よ」
男(相当葛藤したみたいだね)
女「とにかく駄目よ。たとえ、恨まれたとしても私はやめないから」
男「警察が来るかもよ?」
女「一か月たってる時点で察しなさい」
男「それもそっか」
男「じゃあ僕の親。心配してるかもよ?」
女「男をよろしくって頼まれたわ」
男「あらら。まさかの親公認」
女「ちなみに私の親からは、はやく孫を見せて安心させてとまで言われたわ」
男「もはやなんと言えば良いのやら」
女「...男って結構余裕があるわよね?怖かったりしないの?」
男「それ、一か月経ってから言うこと?」
女「それもそうだけど」
男「あえて言うなら強者の余裕...冗談冗談。本当は女さんなら、君になら監禁されるのも悪くないかなって」
女「なんでそんな恥ずかしいことはっきり言えるのかしら」
男「顔真っ赤だよ?」
女「そこは強者の余裕でもなんでもいいからスルーしなさいよ...」
男「女さん、本当に受けに回ると弱いよね」
女「...男限定よ。この馬鹿」
男(そのセリフも結構恥ずかしいけどね。主に僕が。言わないけど)
.......
......
....
...
..
.
女「そろそろ時間ね。私買い出しに行ってくるわ」
男「うん、行ってらっしゃい」
女「...男、お願いがあるのだけど」
男「良いよ。じゃあほら、こっち来て」
女「ん..ちゅむ、う、ん...ふう、満足」
男「ぷはっ...毎度よくやるね。買い出しのたびにキスなんて」
女「ふふ、乙女にとっていってらっしゃいのキスはお守りみたいなものよ」
男「ちょっと何言ってるか分からないけど、ようは大切なんだね?」
女「そう、とっても大切。これで私は今日も大丈夫ね。行ってきます」
男「行ってらっしゃい。気を付けてね」
場所:自宅前
女「...来なさい。化け物」
化け物「「「「グアオオォッ!!!」」」」
女「あら、少し増えたかしら?ま、それでもーーー」
女「すぐに終わるから関係ないけど」
私は女。一か月前までは男に恋する普通の女だったわ。
一か月前まではね。今から一か月前、世界が変わった日から何の因果か、化け物を圧倒できる程度の男に恋する普通の女よ。
私は嘘は言ってない、この化け物を倒してしばらくするとなぜか肉や野菜や飲み物に変化するから。
外に出て、食材とかを持って帰る。買い出しと何も変わらないわね。
...男の親も、私の親も、私は助けられなかった。私はあの光景を忘れられない。
”男をよろしく” ”はやく孫を見せて安心させて”
四人とも、笑ってそう言い残して息絶えた。私が妙に強くなったのは、そのすぐあとだった。
そのあと、男をさらって家に監禁して。真実はまだ伝えていない。
責められることが怖かったから。
...いつか言わなきゃいけないのは分かってる。
それでも、今は。
化け物の角が目の前に迫る。
先端をつかみ取り、同じく突っ込んできた化け物に叩きつける。
二匹とも汚い肉塊に変わり果てた。
残りの化け物もどこか引け腰になっている。
私は化け物を睨みつけ、言い放った。
女「私に穴開けていいのは男だけよ!!」
化け物「「グ、オオオッ!!!」」
今は、男に嫌われずに一緒に生きたい。
私は腕を振りぬいた。
場所:女自宅
男「女さんはそろそろ戦い始めたかな?僕もそろそろかなー。隠れても無駄だよ?気配の消し方が全く駄目だね」
一見何もないところに声をかける。
空間が歪み、翼と角を持った悪魔が現れて苛立ちを顔に浮かべている。
ちなみに僕は手錠されてるけど笑顔だ。
悪魔「チッ、さすが勇者だ。この程度の隠蔽術なら見破るか」
男「僕にばれたくないなら、別次元からの攻撃とか?一発で倒れる気はさらさらないけど」
悪魔「この化け物がッ!」
男「化け物がそれ言う?」
悪魔「殺してやる!」
男「よっと。行くよ」
互いの姿が掻き消え、部屋は静寂に包まれた。
......
.....
....
...
..
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女「ただいまー、男」
男「あ、おかえりー。今日のご飯何?」
女「それは後のお楽しみ。座って待ってて」
男「分かったよ。楽しみにしてる」
女「ふふふ、腕によりをかけて作るわね!」
私と僕の。
歪な日々は続く。
というわけで、変化球なssに挑戦した結果、出来上がったssでした。
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