2018-09-17 22:09:34 更新

概要

軍令部総長の陰謀により、艦娘を提督にするという【実験】の【実験体】とされた女提督。

彼女は、そんな軍令部総長や軍令部のやり口、はたまた、過去の軍艦としての記憶等により、海軍を壊滅させる事を決意する。

しかし、一度はぎりぎりまで追い詰めたものの、最後の詰めの甘さにより失敗。
本来ならそこで終わるはずであったが、総長の陰謀により、結果として彼女にもう一度チャンスが巡ってきた。

前回の失敗を教訓として、次こそはと新たなる決意の元に、行動を開始するのであった。


前書き

http://sstokosokuho.com/ss/read/12884 の続編です。


済みません、結局続き書くだけ書いてみる事にしました。


大淀


・・・軍令部工廠地下


軍令部総長「・・・しまった。つい勢いで「大淀」を殺してしまったか」


艦政本部長「・・・如何致します? 大淀の【予備】を出します?」


総長「うむ、【予備】を出すのは当然として、この死体をどうするかだ。恐らく弾薬からして内蔵も殆どやられているだろうし、解剖する意味も無かろう。適当に沖合にでも捨ててくるのが手っ取り早いか」


本部長「分かりました。そのように手配します」




・・・数日後、輸送船


船員A「おい、この辺でいいだろう?」


船員B「そうだな。こいつを捨てて、さっさと戻るか」


船員A「しっかし、このグレーの袋、それなりに重量があるが、何が入っているんだ?」


船員B「知るか。どうせ、ろくでもない物でも入っているんだろうさ。それに、変な好奇心を出して、下手に死ぬなんて御免だね」


船員A「そうだな。それじゃ、せーのっと」


ドボーンっ! ブクブク・・・。


船員A「それじゃぁ、任務終了。さっさと帰ろうぜ」



・・・



???「・・・何かが沈んできたな・・・」


???「・・・これは艦娘か。しかし、戦闘で沈んだ訳では無いのか・・・」


???「・・・ふむ、器としては、丁度良いか・・・では、その器、頂くとしよう・・・」


???「・・・なっ、馬鹿なっ! 我の意識が上書きされていくだと・・・?」


???「・・・何という事だっ! これでは、我は消えてしまうではないか・・・」


???「・・・あぁ、我の意識が、消えていってしまう・・・」


???「・・・あぁ、しかし、深海に捕らわれたまま、ただ嘆くしか出来なかった我だ。この嘆きから解放されるのであれば、それもまた良いか・・・」



・・・




ザバーンっ!




???「・・・ここはどこ? 何があったの・・・?」


???「・・・手が白い・・・私は、深海棲艦化したのか・・・けれど、着ている服は艦娘の物・・・」


オオヨド「・・・そうか、思い出した。私は総長に撃たれ、殺された。けれど、海の底で深海棲艦になり切れなかった何かと融合して、私は深海棲艦として蘇ったのね・・・何ていう皮肉なのでしょう・・・」


オオヨド「・・・艤装は、5inch連装両用莢砲、5inch連装両用莢砲、水中探信儀、偵察機・・・まさに深海棲艦の物ね。扱いは融合した相手の記憶に残っているから、問題無い・・・」


オオヨド「・・・それにしても、これからどうすればいい・・・?」


オオヨド「・・・軍令部には戻れないし、戻る気も無い・・・けれど行く当ても無い・・・」


オオヨド「・・・いえ、1か所だけあった・・・あの小島・・・もしあそこに何かがあれば・・・」


オオヨド「・・・燃料は・・・途中で補給すれば何とかなる・・・後は、他の鎮守府の艦娘と遭わない事を祈るだけ・・・」











邂逅


瑞鶴改二甲「提督さん、何か怪しい存在を見つけたんだけれど」


と、私が拠点にて資材の収支を計算していた所へ、哨戒中の瑞鶴から連絡が入った。


私「怪しいって?」


瑞鶴改二甲「何かね、見た感じは大淀さん」


私「それで?」


瑞鶴改二甲「けれど、艤装が【軽巡ツ級】の物」


私「(何じゃそりゃ?)」


私「それで、他には何かある?」


瑞鶴改二甲「んとね、真っすぐうちらの拠点に向かってきている」


私「・・・数は?」


瑞鶴改二甲「1人だけ。随伴艦とか居ないし、半径10km内にも他の艦は居ないようね」


私「(ふむ、単艦で来ているとは言え、ここに入れる訳にはいかないわね。うーん、仕方が無い、私が艤装を着けて出るしかないかな)」


私「分かった。そうしたら、私は艤装を持って、ボートで向かうわ」


瑞鶴改二甲「ボート?」


私「そっちは由良と11駆の4人の計6人しか居ないでしょう? だから、ボートに乗ってそっちに向かうわ。まぁ、ボートはそっちで破棄してもいいし」


瑞鶴改二甲「分かった。そうしたら、待ち伏せって言うのも何だけれど、途中で補足しておくね」


私「それじゃ、宜しくね。それじゃあ夕張、8駆の4人と一緒にここの守備は任せたわよ」


夕張「へいへい、何とかやってみますよ。尤も、いきなりここへ襲撃してくる敵は、早々居ないと思いますけれどね。この前撃退したばかりですし」


・・・


瑞鶴改二甲「(戦闘距離に入った。取り敢えず、艦攻・艦爆を発進。けれど、当てないギリギリで攻撃。もし敵なら、迎撃してくるはず。特に【軽巡ツ級】なら、尚更・・・)」


瑞鶴改二甲「行くよっ。攻撃隊、発艦始め!」


由良改二「私たちは、輪形陣で瑞鶴さんを守ります!」




ーーーーー


オオヨド「(向こうの艦攻・艦爆が来た。けれど、ここで迎撃しては敵と認識されてしまう。まずは回避に専念ね)」


ーーーーー




瑞鶴改二甲「(向こうは迎撃しないで、回避に専念している。となると、向こうも様子見って事ね)」


由良改二「瑞鶴さん、あちらはどうでしょうか?」


瑞鶴改二甲「うーん、今のところは何とも。少なくともこっちの攻撃隊を迎撃する気配がないから、向こうも様子見なのかも」


私「瑞鶴、補足出来た?」


瑞鶴改二甲「取り敢えず、攻撃隊を発艦させた。けれど、迎撃して来ないね。まぁ、こっちも当てないようにしたんだけれど」


私「向こうも様子見ってとこかしら。もうすぐ私も到着するから、そこで押さえておいてね」


瑞鶴改二甲「了解。でも、砲撃距離に入ったところで向こうが止まったけれどね」




ーーーーー


オオヨド「(砲撃の射程圏内に入ったわね。あれは瑞鶴さんか。ならば、私の推測は当たっていたようね。後はどう話をするかか・・・)」


ーーーーー




瑞鶴改二甲「お、提督の到着ね。あれをどう見る?」


私「うーん、確かに見た目は大淀だけれど、艤装が深海棲艦の物。但し、この距離で攻撃して来ないという事は、何か話が出来るのかも。ちょっと近づいてみる。他の皆は、攻撃態勢のまま待機ね」


瑞鶴改二甲「えー、もし攻撃してきたらどうすんのさ?」


私「直ぐに艤装を展開出来るように準備してきたから、それは大丈夫だと思う」


瑞鶴改二甲「・・・了解。あ、そうしたら、念の為彩雲飛ばしておくね。もし他に邪魔が入ったら、面倒な事になるから」


私「お願い」




ーーーーー


オオヨド「(・・・あれは、あの女提督さんね。確か・・・『信濃』さんだったでしょうか・・・?)」


オオヨド「(こちらに向かって来るという事は、話が出来そうですね・・・)」


ーーーーー




私「初めまして、でいいのかな? 深海棲艦さん」


オオヨド「この姿ではそうですね。尤も、軍令部では『大淀』としてお会いした事があるかと思いますが、『信濃』さん」


私「・・・貴女、本当にあの軍令部で総長に殺された『大淀』なの?」


オオヨド「どうなのでしょう。少なくとも艤装は深海棲艦の物ですから。それにしても、私が総長に殺された事をよくご存じで」


私「・・・明石と夕張の盗聴器でね。それで、殺されたはずなのに、何故?」


オオヨド「それが、私にも分からないのです。総長に撃たれた後、気が付いたらこの姿で海の上に立っていましたので」


私「ふぅん。それで、何故ここへ?」


オオヨド「・・・何となくです。ただ、元【戦艦棲姫】であった貴女に逢えれば、もしかしたら何かあるのではと」


私「うーん・・・」


オオヨド「それと、こうして逢った事で分かったのですが、提督からは【戦艦棲姫】としての力を感じ取れます」


私「それって、私は【艦娘】であると同時に【戦艦棲姫】でもあるという事?」


オオヨド「分かりません。しかし私の感覚では、今相対している方が、少なくとも「姫クラス」の【深海棲艦】であるという事です」


私「・・・この姿で復活した時、記憶だけでなくその能力も引き継いだという事なのかな・・・?」


オオヨド「・・・」


私「・・・まぁ、それは一先ず置いておいて、貴女はこれからどうするつもり?」


オオヨド「・・・そもそもどうするべきなのかが、分かりません」


私「・・・うーん、そうしたら、取り敢えずうちに来る?」


オオヨド「【提督】にお任せします」




・・・




瑞鶴改二甲「あれ? 一緒に来たの?」


私「取り敢えず、うちで預かる事になった」


由良改二「・・・あの、提督さん。それは【深海棲艦】ですよね?」


私「瑞鶴、【あの】大淀と言えば、分かるでしょう? 少なくともうちのメンバー以外で私が【信濃】である事を知っている時点で、関係者以外考えられないし」


瑞鶴「・・・成程ね」


由良改二「瑞鶴さんはご存知なのです?」


瑞鶴改二甲「まぁね。ついでに言うと、明石と夕張も知っているよ」


私「と言う事で、一旦戻りましょう。あ、瑞鶴、他に敵は居なかった?」


瑞鶴改二甲「大丈夫。彩雲で索敵した範囲内では、艦娘も深海棲艦も見つからなかったよ」


私「了解」



・・・



夕張改「え、あの『大淀』なの?」


オオヨド「そのようです」


明石改「うわぁ。けれど、話を聞いていなかったら、信じられなかったわ」


由良改二「夕張さんも明石さんもご存じなので?」


夕張改「まぁね」


明石改「いやぁ、ちょっと盗聴器経由でだけれど、軍令部に艦娘の実験設備があるみたいでさ、大淀はそれを知って撃ち殺されたところまでは知っているんだけれどね。けれど、まさか文字通り本人が元の姿そのままで深海棲艦として復活してくるなんて、こうやって見るまでは信じられなかったよ」


オオヨド「私は戦闘で沈んだ訳では無いので、それが関係しているのかもです」


由良改二「それにしても、実験設備とは?」


私「あぁ、軍令部の連中は、私たち艦娘を文字通り【道具】もしくは【研究材料】としか見てないようだからね。要するにモルモットって奴かな。なので、その為の設備みたい。実際、私は【艦娘】に【提督】をやらせたらどうなるかという【実験対象】だったし、その辺を知った大淀は撃ち殺された訳だし」


由良改二「そんな・・・酷い・・・」


私「ね、そう思うでしょう? だから私は海軍から完全に独立するために、ここに拠点を作ったのよ」


と、私の話を聞いていた駆逐艦達は、完全に震えあがっていた。


私「尤も、ここでは補給が難しくてね。ボーキサイト以外の資材が圧倒的に足りない。だから戦艦や大型艦はここでは維持出来ないのよ。なので、次の拠点を作るまではここに居て貰うしか無いかもしれない」


オオヨド「分かりました。それで大丈夫です」


私「そう、それじゃあ、宜しくね」











別の鎮守府


由良改二「提督さん、ちょっと拙いかも。ル級の水上部隊と遭遇しちゃった」


私「急いで脱出出来ない?」


由良改二「向こうに先に見つけられちゃって。何とか回避に専念しているから、損害は無いけれど、ちょっと厳しいかも」


私「分かった。瑞鶴と8駆を援軍に向かわせるから、それまで何とか凌いで」


由良改二「分かりました」







ーーーーー


伊勢改「提督、何か前方で戦闘してるのを見つけたよ」


提督G「(執務室)ん? あぁ、ちょっと待て。これから一服するのに外に出る所だ。ちょっと待ってろ」


龍驤改二「あー、そういう事が」


日向改「龍驤、どういう事?」


龍驤改二「直ぐに分かるで」


提督G「(食堂)待たせた。それはどこの鎮守府の艦隊だ?」


伊勢改「それが、全然分からない」


提督G「(食堂)だろうな。今お前らがいる海域の周辺には、鎮守府は無い。だから、軍とは無関係の艦娘達だろう。可能なら援軍に入れ」


伊勢改「了解。それにしても龍驤、今の間はどういう意味?」


龍驤改二「あー、提督室に盗聴器仕掛けられてるの知らんかったか。軍令部の奴や。だから下手な事を執務室で話したら、軍令部に睨まれるで」


日向改「げ、そんな事になってたの?」


龍驤改二「そや。けれど、取り外すと盗聴器の事を知ってるっちゅー事やから、やっぱり睨まれるんや。だから重要な話は食堂か外でするんやで」


時雨改二「あぁ、だからしょっちゅう食堂で話してるのか」


龍驤改二「そや、あそこだけは雑音しか入らないようにマイクぶっ壊してあるからな。せやさかい、今も食堂に無線機持って行って話とるんちゃうかな」


五十鈴改二「え、そんなの知らなかった。流石は最古参ね」


曙改「ふんっ、軍令部も何やってるんだか」


伊勢改「取り敢えず、向かうよ。どうも敵にはル級がいるみたいだし、艦娘の方は軽巡と駆逐艦だけみたいだから」


龍驤改二「よっしゃぁ! さぁ仕切るで! 攻撃隊、発進!」


伊勢改「いくよっ! 左舷、砲戦開始!」


日向改「同じくっ! 撃つぞ、それっ!」


五十鈴改二「準備は万端よ。突撃します!」


時雨改二「ここは譲れない」


曙改「敵? ふふん、そうこなくっちゃね!」


ーーーーー






由良改二「あ、提督さん、更に拙いかも」


私「どうしたの?」


由良改二「援護が来ちゃった、他の鎮守府の」


私「うわぁ、それはもっと拙い。何とか離脱出来ない?」


由良改二「うーん、向こうに航空戦艦2隻と軽空母が居るから、索敵機出されちゃったら、駄目かも」


私「あー、何とか誤魔化せない? それと、瑞鶴はちょっと待機」


由良改二「やるだけやってみるね」


瑞鶴改二甲「分かった」






ーーーーー


伊勢改「ふぅ、何とか片付いたか。おーい、そっちは大丈夫かい?」


由良改二「はい、ありがとうございました」


伊勢改「ところで、君たちはどこの所属」


由良改二「え、えーと・・・」


提督G「(食堂)伊勢、無線機越しに向こうの提督と話せないか? あ、いや、ちょっと待て」


由良改二「あの・・・」


龍驤改二「ちーと待ってな」


提督G「(執務室)おーい、伊勢、さっき戦闘がどうのって言ってたの、あれどうなった?」


伊勢改「ごめん、どこかの遠征部隊だったみたいだけれど、間に合わなかった」


提督G「ちっ、しゃーないなぁ。全滅したんなら、報告のしようがねぇなぁ。まぁいいや。周辺の警備をしつつ、戻ってこいや。俺はこれから「釣り」にでも言ってくらぁ。名取、付き合えや」


名取改「は、はい」


伊勢改「了解」


龍驤改二「あぁ、そういう事か」


伊勢改「どうしたの、龍驤?」


龍驤改二「うちの提督、「釣り」の名目でここに来るつもりや。名取がボート引っ張ってくるようやし、2時間ってとこかな。悪いんだけれど、ちーと待っててくれんか」


ーーーーー






由良改二「(提督さん、ごめんなさい。完全に捕まってしまいました)」


私「それで」


由良改二「(どうも、向こうの提督さんが、ここに来られるようで)」


私「え? ここって、今居る場所?」


由良改二「(はい、その様です)」


私「・・・下手に動くより、少し様子を見る方が良さそうね。由良、悪いんだけれど、向こうの連中にちょっと付き合ってくれる? それと、うちの駆逐艦達には、一切喋らないように伝えて」


由良改二「(わ、分かりました)」




・・・2時間後




提督G「待たせて済まなかった」


由良改二「いえ・・・」


提督G「で、済まないついでに、そっちの提督と直接話がしたいんだが」


由良改二「え、えーと、ちょっとお待ちください」


由良改二「(提督さん、あちらの提督が話をしたいとの事ですが)」


私「・・・仕方が無いわね。いいわ、代わって」


提督G「・・・いきなりで悪いな」


私「・・・それで、私にどんなご用件で?」


提督G「単刀直入に言うとだな、そっちの連中は、数カ月前に放棄された鎮守府の生き残りじゃないのか?」


私「・・・何故そう思うの?」


提督G「この海域には海軍の鎮守府は無い。なのに、うちより練度の高い軽巡と駆逐が居るんだ。そうなりゃ、この近辺のどこかに、軍とは関係無い拠点があるとしか考えられない。しかしそうなると、最初に拠点を構築した誰かが居ないといけない、しかも妖精付きでだ。そうすると、消去法から一番可能性が高いのは、あの放棄された鎮守府の生き残りしか考えられん」


私「・・・随分と頭がいいのね。それに、また色々と情報をお持ちのようで」


提督G「何、こっちは下士官からの叩き上げで提督になったからな、それなりに頭が回らなければ、提督なんぞやってられんよ。それに、中央に知り合いが居るんでね」


私「・・・」


提督G「まぁ、先にこっちの手札を見せておくよ。中央に士官学校時代の同期が居てね、奴は軍閥のエリート、こっちは貧乏人。そして奴は常に学年トップで、俺は2番に甘んじていた。そんな訳だから、奴は常に俺を見下していたよ。そして、それは今でも変わらなくてよ、事ある毎に自慢たっぷりに中央の情報をこっちに話すのさ、重要機密を外部に流しているとも気が付かずにな」


私「・・・よくまぁ、つくづくあの連中は馬鹿なのね」


提督G「そうだ。しかも、俺らのような叩き上げが提督やってる鎮守府には、あちこちに監視カメラと盗聴器を設置しているのに、奴が話す内容はある程度中央じゃ普通に流れている代物だから、俺らを監視している連中も、その事に気が付いていないという、更に馬鹿な話さ」


私「・・・それで、盗聴されない海上に出てきたのね」


提督G「まぁ、そんな所だ。周りじゃ「釣り」が俺の趣味なのは周知しているからな。それこそ、港でやっている時もあれば、数時間沖合に出たところでやっている時もある。だから「釣り」をしに出かけるって話になりゃ、半日くらい鎮守府に居なくても誰も気にしない」


私「・・・それで、私とどういう話がしたいの?」


提督G「簡単に言うと、中央をぶっ潰すのに同盟を組みたい。本当はそっちの戦力が欲しいんだが、いきなり高練度の艦娘が着任したとなると、怪しまれた挙句、こっちの首が飛ぶ可能性が高い」


私「・・・何故、中央を潰したいの?」


提督G「はっきり言って、艦娘を道具としてか見ていない、今の中央のやり方が気に入らない。彼女らはこうして前線で戦っているっていうのに、自分たちは安全な場所でのほほんとしているんだぜ。俺だけじゃない、彼女らと共にこれまでの厳しい戦いを生き抜いてきた強者連中は、皆そう思っているよ」


私「・・・そう。でもはっきり言って、貴方達人間を信じる事が出来ないわね」


提督G「・・・そうか、そういう事か。あんた、あの【実験】の対象となった最初の【艦娘】だな」


私「なっ・・・」


提督G「今こう言ったよな、「【人間】を信じる事が出来ない」と。つまり自分は人間でないと言っているようなもんだ。となると、今中央でやっている【艦娘】を【提督】にするという実験の話から、そういう結論に達したのさ。まぁ、中央の話を知っている俺だから、そう結論出来たというのもあるがね」


私「・・・それで、断ったら?」


提督G「その場合は、そっちの存在を中央に話して、その報酬としてそっちの戦力を貰う」


私「・・・つまり、どうやっても断れないって事ね」


提督G「こっちも、わざわざこんな場所までやって来て、これだけの話をするんだ。それなりのリスクを背負う覚悟をしているんでね」


私「・・・それで、こっちに何をして欲しいの?」


提督G「それじゃあ、同盟成立って事でいいな。まずこっちの窓口は、龍驤にやってもらう。そして定期的に警備の名目で出させるから、その時そっちの窓口なり、おたく本人なりでいいから、どうするかの話をしたい」


私「・・・」


提督G「次に、後日リストアップする鎮守府の位置と戦力を確認しておいて欲しい。リストは2つ。片方は中央の息のかかった鎮守府。つまり確実に敵だ。もう片方は、とりあえず俺の意見に賛同してくれている連中の鎮守府。だが、いつ寝返るか分からないからグレーだと思ってくれ。因みに、そっちの存在については、そのグレーの連中にも一切話さないから、決して味方だとは思わないでくれ」


私「・・・随分用心深いのね」


提督G「やろうとしている事が事だからな。それに基本、俺はうちの鎮守府の連中以外一切信用も信頼もしていないんでね」


私「・・・なら、私もそちらを信用も信頼してはいけないという事ね。それにしても、そこまで用心深くないと、駄目って事なのね」


提督G「まぁな。特に今の中央に居る連中は、この戦争を政略に利用しているから、尚更たちが悪い。それに俺が提督をやっているのも、政略の1つだしな。つまり全ての鎮守府を軍閥で固めると、国民やら政治家達やらとの関係で拙いから、一定数の下士官上がりを提督にしておく必要があるだけって理由でしかない。だから戦力も殆ど与えないし、こうやって最前線に近い場所に配置される。そして何か問題なりあれば、それを理由に排除にかかる始末だ」


私「・・・やっぱり人間は全て排除すべき存在のようね・・・」


提督G「おいおい、物騒な事を言うなよ。まぁ、酷い連中もいるが、それは人間の中でもごく僅かだぜ。まぁ、その酷い連中が世の中を仕切っているのも確かだがね」


私「・・・貴方の目的は何?」


提督G「俺? まぁあれだ、中央をぶっ潰して、綺麗に掃除した後は、戦争なんか止めてのんびりしたい所だな。尤も、この戦争自体を完全に終結させるのは、無理だと思っている。だが、この国が生き残るのに最低限必要な重要拠点だけを押さえておけば、戦闘の回数そのものが減るはず。そうなりゃ、艦娘にも無理をさせずに済むし、何より俺が楽出来る」


と、向こうの提督がそんな事を言ってきたので、私は少し鎌をかけてみた。


私「けれど、半年以上前? だかに、深海棲艦の一大艦隊が襲ってきたんでしょう? それがまた起こらないとは限らないんじゃない?」


提督G「あぁ、あれか。あれはうちじゃ完全に他人事だったしな。うちは専守防衛で、戦力不足を理由に誰1人出さなかったし、あちらさんも、うちの事なんぞ完全に無視してたからな。ま、そもそもうちは、カムラン半島の入り口辺りを警備する程度の事しかやってないし、あちらさんも鎮守府の存在そものものを知らなかったじゃねぇか?」


私「(いや、ここの事は知っていたけれど、敢えて手を出さなかった鎮守府の1つだ。戦力としては少ないかもしれないけれど、個々の練度は相当高い。特に航戦の2人と龍驤、この3人はやばかった。あの頃の私の手駒では、随伴艦が返り討ちに遭う可能性があったから)」


私「それで、戦術はどうするの? 戦力としては、少ないんでしょう?」


提督G「そうだな。だが、戦力が少ないなら少ないなりの戦術ってもんがあるさ。まずは敵を1つずつ潰していく、つまり各個撃破だ・・・だが、いくら何でも、艦娘同士を戦わせるのは避けたい。なので、そちらに囮をやって欲しい。そうして、艦隊を引きずり出した所で、うちの龍驤と伊勢・日向に、ピンポイントで執務室と工廠・建造ドックを破壊する。一番問題なのは、提督1人だ。そいつさえ排除出来れば、暫くはその鎮守府は機能しなくなる。ここで重要なのは、うちは3人しか出さないという事だ。人数が多いと、発見される可能性が非常に高いからな」


私「それで?」


提督G「それを複数個所で、日をずらしてやって欲しい。そして、どの鎮守府でも、リストにあるグレーの連中の鎮守府から、艦隊を出させる」


私「もし、その艦隊が来なかったら?」


提督G「その場合は、その鎮守府は日和見を決め込んだか、中央に内通しているかのどちらかだ。だから敵とみなす」


私「でも、そうしたら、こちらの戦術が向こうに知られてしまうのでは?」


提督G「知られても構わない。重要なのは「日をずらして」という所だ。こちらの戦術がバレたとしても、その頃には派閥争いでそれどころではなくなっているはずさ、どの鎮守府にどの派閥の人間を提督として着任させるかってな」


私「・・・」


提督G「そして、適当な所で、仲間連中総出で中央を叩けば、何とかなるだろう」


私「(この男、私と同じ戦略・戦術を取ろうとしている。けれど、別の意味で私と同じ轍を踏もうとしている。そのグレーリストの連中が、全員敵だったらという、一番の基本が抜けているわ・・・)」


私「因みに、作戦の決行は何時?」


提督G「いや、まだ少し先だ。現在の中央の状況が分かっていない。だから、2~3か月後だな」


私「・・・分かったわ。それじゃあ、まずそのリストを頂戴」


提督「あぁ、今日は取り敢えずこんな所かな」





ーーーーー


提督G「・・・さて、一番の懸念だった囮艦隊はどうにかなったな」


龍驤改二「せやな。けれど、同士討ちは避けようがないで」


提督G「あぁ、だからうちの連中を出したら、その時点で一発アウトだ。なので、そこを任せるつもりだ。それにまぁ、奴に渡すグレーリストの中に、どれだけ裏切者が居るかというのもあるがな」


龍驤改二「んで、そのリストの連中には、話をつけてあるんか?」


提督G「何言ってる、さっきもあちらさんに言ったろうが。そもそも誰にも話してないぜ」


龍驤改二「何やて?」


提督G「事前に話してみろ、その時点で裏切者に当たったら、即刻アウトじゃねーか。だから、最初の2~3か所はあちらさんとうちだけでやる」


龍驤改二「なんや、しっかり考えとるんか。せやけど、あっちにはそんな話せんかったの」


提督G「だから言っただろう、いつ寝返るか分からんって。つまり最初から信用するなって事だよ。それが分からないようなら、あちらさんは使えない連中ってだけさ」


龍驤改二「うひょー、あんさん、いい性格しとるや。ま、今に始まった事じゃないけどな。で、どうするん?」


提督G「さっきも言ったが、あの同期の馬鹿が中央の情報を寄越すのを待ってからだな。だから取り敢えずはリストを渡してやれ」


龍驤改二「あんさん、それ、本当にええんか?」


提督G「まずはこちらの誠意を見せて、多少なりとも敵意を下げない事にはどうしようも無いだろう。それに、今の段階では、条件的にこっちが有利だ。向こうから裏切る事は出来ないだろうしな」


龍驤改二「さいですか。けれど、うち、何か不安が過るんよなぁ」


ーーーーー





由良改二「提督さん、あれで良かったの?」


私「取り敢えずは、ああするしか無かったでしょう。けれど、絶対信用してはならない相手なのは確かね」


由良改二「提督さん、私もそう思う。それに駆逐艦の皆も怖がっていたわ」


私「そうね。まぁともかく、由良達は直ぐに帰投して」


由良改二「はい、分かりました」


私「・・・さて、取り敢えず今の奴に協力するとしても、こちら独自で別に動く必要はあるわね。」











暗躍


私「貴女、深海棲艦と話が出来る? それと、この周辺の地図って覚えている?」


私は通信を終えるや、拠点にいるオオヨドに聞いてみた。


オオヨド「地図については、提督の指定された周辺の海域についてでしたら。深海棲艦については、まだ接触した事がありませんので、何とも言えません」


私「まぁ、深海棲艦については、後でもいいわ。それよりも、地図については、地上の方よ」


オオヨド「えぇと、それは軍令部でも大した情報は持っていないと思われますよ。精々が都市等の主要地点等しか」


私「その主要地点については、【軍】の情報もある? 特に『基地航空隊』の場所」


オオヨド「そうですね、「陸海軍」のそれぞれの拠点については、大よそは。あぁ、先程の【囮】の話ですね?」


私「そう、基地航空隊による索敵機に補足されてしまっては、囮の意味が無いからね。あの男、そういった細かい点が抜けているのよね」


オオヨド「それで、深海棲艦については、どういう意味で?」


私「そもそも、ピンポイントで攻撃する為の囮なら、わざわざうちから出す必要は無いでしょう? それよりも、「実際に」深海棲艦の攻撃があった方が確実じゃないの。精々イ級・ロ級クラスで問題無いわ。そして可能ならそれを貴女に指揮して欲しいの」


オオヨド「駆逐クラスで、主力艦隊が出てきますか?」


私「本当なら重巡クラスが欲しいけれど、軽巡の貴女だと、指揮するのが難しいかと思われるから。勿論、艦娘と戦闘距離に入る前に、撤退して構わないわ。それにもし離脱に失敗したら、駆逐連中をそれこそ囮にして、貴女単身で離脱して頂戴」


オオヨド「はい。しかし、それ以上に効果のある方法があると思われますが」


私「???」


オオヨド「これは賭けですが、【提督ご自身】が『ル級クラス』に命令するというのはどうでしょうか」


私「・・・それが可能だと?」


オオヨド「私が感じた、提督の中に眠る『戦艦棲姫』の力が正しければ」


私「・・・やってみる価値はあるか・・・」


オオヨド「もし成功すれば、提督が私に艦隊を指揮するよう命令する事で、ル級を含む水上攻撃部隊、もしくはヲ級による空母機動部隊を動かす事が可能となります」


私「・・・失敗したら?」


オオヨド「交渉には私が随伴します。それと、後方に瑞鶴さんを旗艦とする空母機動部隊を待機させておけばいいでしょう。私が聞いている通り、提督が【大和型】であるならば、この周辺の深海棲艦ではかすり傷を与えることが精一杯でしょうから。ですから、その間に瑞鶴さん達に航空支援をして貰えば、悠々と離脱可能です。


私「・・・流石ね。あの【くそ爺の懐刀】と言われていただけはあるわ。それを自ら捨てるような真似をするんだもの、本当、人間って馬鹿だと思うわ」


オオヨド「・・・フフフ」



・・・



由良改二「提督さん、由良、戻りました」


私「お帰り。さて、少し休んだら、瑞鶴と一緒にもう1働きして頂戴。瑞鶴を旗艦に、由良と8駆で艦隊を編成するから」


由良改二「???」


私「ちょっと、オオヨドと出かけてくる。なので、その後方についてきて貰って、こっちに何かあったら支援をお願い」


由良改二「あれ、提督さん、出かけるの?」


私「そうよ」


瑞鶴改二甲「ねぇ、何をしようとしているの?」


私「さっき、オオヨドと話たんだけれど、深海棲艦と話が出来るかなって。なので、もし駄目だった時に離脱の支援をして頂戴」


瑞鶴改二甲「うーん、何か最初から失敗するの確定だと思うけれど、ま、提督さんがそう言うのなら、仕方が無いか」


私「そういう事。それじゃぁ宜しく」


そして、私は瑞鶴にそう言うと、自分の艤装を装備、海の上に立った。そして、その心地よさに、改めて自分も艦娘である事を実感した。


瑞鶴改二甲「あれ? 提督さん、珍しいじゃん。いつも燃費悪いって艤装を着けないくせに」


私「今回はそうも言っていられないのよ。それじゃぁ、オオヨド、着いてきなさい。それから瑞鶴達も少し遅れて着いてきて」


そうして私は、ル級が居る海域へと向かった・・・。



・・・



ル級「(大破)ソノ貴様ノ放ツ【力】ハ何ダ! ナゼ、貴様ヲ攻撃出来ナイノダ! シカモ、何故我ラノ仲間ヲ連レテイルノダ!」


私「(無傷)お前たちの癖や、その力にのみ頼る性格は熟知しているからね」


オオヨド「(無傷)流石は元『戦艦棲姫』ですね」


ル級「何ダト・・・ソウカ、ソウ言ウ事カ。貴様ニ抗エナカッタノハ、ソウイウ事ダッタノカ」


私「(オオヨドの言った通りか。この姿でも、私は深海棲艦を指揮出来るという事ね)」


私「分かったかしら? まぁ、それはともかく、これから人間どもが、愚かにも互いに戦争を始める。そこで、数多の艦娘が沈むでしょう。けれど、それは単にお前たちの仲間が増えるだけ」


ル級「・・・」


私「けれど、お前たちがそこに割り込んだらどうなる? お前たちは海の上に戻るチャンスが巡ってくる、お前たちが望むね」


ル級「・・・」


私「私の指揮下に入りなさい。そうすれば、そのチャンスが幾らでも転がってくる」


ル級「・・・イイダロウ。コノ海域ノ深海棲艦ニハ、ソウ連絡ヲ入レタ」


私「・・・よろしい。では最初のチャンスを、お前に提供しよう」


私はそう言うと、自らの艦爆を射出し、そのル級に止めを刺した。


パシューッ! ドカーンっ! ぶくぶく・・・。




ぶくぶく・・・。




???「・・・ここは?」


私「おめでとう、貴女は無事に戻って来れたようね」


???「・・・戻ってきた?」


私「そう、貴女はル級として沈んで、艦娘として海の上に戻ってきたの。因みに私は、この近くにある拠点の【提督】よ。そして貴女は?」


霧島「・・・私は、金剛型 4番艦 『霧島』です、提督」


私「霧島、貴女を歓迎するわ」


霧島「それにしても、【鎮守府】ではなく【拠点】ですか?」


私「そう、私たちは人間どもの軍組織から外れているので、【鎮守府】ではないわね」


霧島「・・・そういえば、その艤装からして、提督も【艦娘】なのですね」


私「そういう事」


霧島「分かりました・・・って、何で深海棲艦が一緒に居るのです!?」


私「あぁ、彼女は私たちの仲間よ。少なくとも敵でないのは確かね」


オオヨド「初めまして、霧島さん。私は「オオヨド」と言います」


霧島「・・・えーと、普通に会話が出来るのね・・・」


オオヨド「私は例外です。地上で殺され、死体の状態で海に捨てられ、そして海の底で深海棲艦となりましたので」


霧島「・・・済みません、私の頭脳でも理解出来ません」


私「大丈夫、私も理解出来ないから。さて、ここで立ち話も何だし、拠点に戻りましょう」


オオヨド「分かりました」


霧島「了解です」


私「(無線で)瑞鶴、こっちは問題無し。戻るわよ」


瑞鶴改二甲「(無線で)りょーかい」



・・・



瑞鶴改二甲「へぇ、漸く戦艦が仲間になったのね。私は瑞鶴。よろしく~」


霧島「こちらこそ、宜しくお願い致します。それで提督、私たちは何故、軍から離れているのです?」


私「ここにいるメンバーは、多かれ少なかれ軍令部に不満・敵意を持っているのよ。私は軍令部総長の【実験体】にされ、瑞鶴や夕張、明石は厄介払い、由良や駆逐の皆は、過去の大戦の時の海軍に対する恨みなんかを抱えて、海上に戻ってきたりってね。そこのオオヨドなんか、総長に銃殺された上に、海へポイ捨てよ。いずれにせよ、ここの全員が少なくとも軍部に対しては良くは思っていないっていう事よ」


霧島「はぁ・・・まぁ、そう言われれば、私も大戦時、海軍の杜撰な作戦で沈んだ口ですので、あまり良い思い出は無いですけれど・・・」


私「もし貴女が、人間どもの【使い捨ての道具】になるのを厭わないと言うのであれば、一番近い鎮守府へ送ってあげるけれど」


霧島「いえ、これも何かの縁なのでしょう。私は提督に従います」


私「ありがとう。で、早速なのだけれど、暫く待機で」


霧島「はい?」


私「いやぁ、実は資材の関係で、現状以上の大型艦を動かせられないのよ。なので、もう少し資材か貯まるまで待って頂戴」


霧島「でも、提督は見た感じ【正規空母】ですよね?」


私「そう、私は大和型3番艦『装甲空母 信濃』よ。だから、私自身、数える位しか出撃していないの」


霧島「大和型ベースですか・・・成程、大量に資材が必要になりますね」


私「そう。因みにこの拠点はボーキサイトの集積地だから、『瑞鶴』の航空戦力だけはほぼ無尽蔵に使えるけれど、それ以外はちまちま遠征するしか無くて。しかも遠征用の艦隊も、駆逐2戦隊8隻しか維持出来ていないの。そして軍から離れているから、軍令部からの補給も無いし」


霧島「成程、これは大変な所に来てしまいましたね」


私「もっとも、近いうちに大きな作戦が予定されているから、そんなに待たずに出撃して貰う事になるわね」


霧島「分かりました」



・・・



私「オオヨド、瑞鶴。ちょっと来て頂戴な」


オオヨド「何でしょう?」


瑞鶴改二甲「提督さん、何?」


私「軍の基地はこことここね?」


オオヨド「はい、そうですね」


私「そしたら瑞鶴、このルートを通って、ここへ艦爆を飛ばして。そして、この手紙を中に入れた爆弾を投下して欲しいの。勿論、中の火薬は全部抜いてね」


瑞鶴改二甲「これって、何かの連絡?」


私「そう」


オオヨド「これも、あの作戦の一環ですか?」


私「まぁね。ちょっとした保険よ」


瑞鶴改二甲「ふぅん、まぁいいわ。ちょっと行ってくる」




・・・数日後



???「貴様か、我らに用があると言うのは」


私「そう、ちょっと話をしたくて」


???「一体、どんな話だ?」


と、そこで、私は大淀が射殺された時の録音データを再生した。


???「なっ! これは本当か!?」


私「そう、数カ月前に実際に在った事よ」


???「ふむ・・・これをどうすると?」


私「そちらで、色々と画策出来るでしょう? しかもこれは総長の生音声だから、如何様にも使えるし」


???「・・・確かに。それで、貴様の要望は何だ?」


私「そちらのやろうとしている事に、私も混ぜて欲しいの。ついでに然るべき階級も欲しいわね」


???「・・・その徽章から、海軍少将では無いのか? 貴様、「軍令部総長」を売り飛ばすつもりか?」


私「色々あってね、今は「あいつの下」から離れているのよ。だからこの徽章も、本来なら何の効果も無いの。けれど、そちらと話をするのには、都合が良かったから、そのまま付けているだけって事ね。あ、これが偽物だと思う? なら、これを渡しておくわね」


私はそう言うと、左肩の徽章を引きちぎり、相手の足元へと放り投げた。


???「・・・ふむ。ではこちらも相当の階級を用意すれば良いかな?」


私「そうして貰えるとありがたいわね」


???「・・・よかろう、然るべき所に掛け合ってみよう」


私「良い返事を期待しているわ。因みにこの録音データは、それなりの回答を正式に貰えた時に渡すから。あ、そうそう、変な画策はしない方が身のためよ。こちらは、これだけの情報を入手出来る、そこから先は察する事が出来るでしょう? さて次に会う日時は、また連絡させて頂きますわね。では・・・」











主作戦開始


ーーーーー


・・・鎮守府G食堂


提督G「さて、あの馬鹿の情報から、中央は相変わらず派閥争いでぐちゃぐちゃ、前線は落ち着いているという事だし、始めますかね」


龍驤改二「あっちにも、ついさっき連絡入れたし、いつでもOKや」


提督G「それじゃあ、伊勢、日向、龍驤。お前ら3人は出撃しろ。攻撃タイミングは龍驤に任せる」


龍驤改二「よっしゃ、やったるで」


提督G「そいや、あっちの旗艦は誰だったっけ?」


龍驤「えーと、霧島やったかな? 何時の間にか増えてたみたいやで」


提督G「ふーん、まぁ、いいか。んじゃ、行って来い」


ーーーーー





私「さて、あちらさんもそろそろ出撃の様だし、こちらも行きますか」


オオヨド「では予定通りに」


私「主戦力は、霧島を旗艦に、由良と11駆4隻の、計6隻で編成」


霧島改「了解です」


由良改二「分かりました」


私「もし何かあった場合は、瑞鶴を旗艦に、夕張と8駆の4隻で艦隊を編成して、出撃させるから。私と明石はここで待機、けれど私たちも何かあったら出撃するつもりよ」





ーーーーー


・・・鎮守府H


提督H「何? 未確認艦隊が接近中」


深雪「うん」


提督H「未確認って、どこの鎮守府のだ?」


深雪「それが分からないんだって」


提督H「何なんだ、一体。取り敢えず、軍令部に確認しろ」


深雪「そんな事言っている暇は無いんだな」


提督H「何?」


深雪「ヲ級2隻を主力とした、空母機動部隊が接近中。どうやら、その未確認艦隊は、その敵に追われたんで、こっちに来たみたい」


提督H「ちっ、疫病神め。なら、そっちの深海棲艦の対応が先だ。うちの主力部隊の出撃準備」


深雪「分かった」


ーーーーー


霧島改「あー、こちら霧島。ちょっと問題が発生しました」


龍驤改二「何や?」


霧島改「途中で深海棲艦の艦隊に見つかってしまいました。空母機動部隊に」


龍驤改二「何やて?」


霧島改「ヲ級2隻、ル級1隻、チ級?1隻、ロ級2隻」


龍驤改二「うわー、そりゃまずいわ」


霧島改「こっちは瑞鶴を置いてきたので、航空戦力が無いんです。一応、目標の鎮守府に向かって逃走してはいるんですけれど」


龍驤改二「うーん・・・よしっ、んじゃ予定通りこっちは艦載機を出すで。そっちは悪いけれど、何とか離脱してくれ」


霧島改「え? 航空機を出して貰えないんですか?」


龍驤改二「敵さんがそんな編成じゃ、うちらでも無理や」


霧島改「・・・分かりました、何とか脱出してみます」


ーーーーー





オオヨド「予定通り、ヲ級主力の空母機動部隊に、霧島艦隊を追わせています」


私「それから、どんな感じ?」


オオヨド「はい、鎮守府Hからは、主力部隊が出撃、鎮守府Gの3隻は予定通り攻撃するとの事です」


私「了解。では霧島艦隊は戦線を離脱、オオヨド艦隊はそのまま鎮守府Hの主力艦隊と交戦」


霧島改「了解です」


オオヨド「分かりました」






ーーーーー


・・・鎮守府H


提督H「ったく、どうなっているんだ?」


深雪「さぁ?」


提督H「何だそれは、お前、俺の秘書艦だろうが」


深雪「まぁ、そうだけれどね。あ、うちの主力艦隊が敵と交戦状態に入った」


提督H「そういえば、最初の未確認艦隊はどうなった?」


深雪「何時の間にか居なくなってる。確か空母は居なかったと思うから、ヲ級に沈められたのかも」


提督H「・・・まぁいい・・・ん? 何だあれは・・・」


深雪「友軍機だね」


提督H「・・・何故こっちへ向かって来ている・・・って、うわー・・・」



ヒューン・・・ドッカーンっ!





ーーーーー


龍驤改二「奴らの執務室に命中したで。中は完全に破壊や。それと、工廠とドックも予定通り破壊したで」


提督G「よくやった。それで、鎮守府Hの主力艦隊と深海棲艦は? あと、あっちの霧島艦隊だ」


龍驤改二「霧島艦隊は、無事に離脱。あ・・・何やて・・・鎮守府Hの艦隊は大破続出で撤退・・・深海棲艦の艦隊は、それをそのまま追撃・・・鎮守府が深海棲艦に蹂躙されてしもた・・・あかん、あそこはもう駄目や・・・」


提督G「・・・仕方が無い。お前たちも戻って来い」


龍驤改二「・・・分かったで」


ーーーーー







オオヨド「鎮守府Hの主力艦隊を撃破、そのまま追撃します」


私「まぁ、程ほどにね」


オオヨド「え? ヲ級とル級は、私の命令に背いてそのまま鎮守府へ突入してしまいました。止めるのは不可能です」


私「うん、残念だけれど、仕方が無いよね」


オオヨド「・・・もしかして、提督はここまで見込んで?」


私「・・・まぁね。さて、オオヨド、貴女だけ単独で帰還して。他の艦は放置でいいから」


オオヨド「・・・分かりました」



・・・



オオヨド「提督、只今戻りました」


私「お疲れ様」


オオヨド「提督、先程のあれは、どういう意味ですか?」


私「あれって?」


オオヨド「惚けないで下さい!」


私「何? 他の鎮守府の艦娘が無残に沈められる事が分かっていて、何故作戦を実行したのかという事? オオヨド、貴女はその姿になっても、まだ艦娘でいるようね」


オオヨド「・・・」


私「半分は予想通り、半分は予想ミス」


オオヨド「???」


私「いいこと、艦娘だの鎮守府だのと言っても、結局は軍隊。指揮系統が混乱すれば、軍組織は壊滅する。鎮守府という軍隊の中で、最上位の指揮権を握る提督が居なくなった場合、その鎮守府は機能しなくなる。となれば、そこへ敵が攻めてきたら、成すすべも無く壊滅させられるのは、ある意味、当然と言えば当然よ」


オオヨド「では、何故?」


私「いやぁ、あの程度の深海棲艦なら、簡単に追い返せるだろうと思ったのが、私の間違い。まさか提督が死亡した途端、一瞬にして主力艦隊が壊滅するとは思わなかったのよ」


オオヨド「・・・」


私「それと、オオヨド、貴女、ル級やヲ級を統制出来なかったでしょう? いくら私が言ったところで、最後には戦場で一番力の強い者が指揮権を握る、それが深海棲艦なのよ。貴女の力では、軽巡ないし雷巡までってところかしら」


オオヨド「・・・そういう事ですか・・・」


私「こういうのは、口で説明しても納得出来ないでしょう? だから、実際に体験して貰ったって事。もっとも、相当高い代償を払っちゃったけれどね」


オオヨド「・・・分かりました・・・」


私「それじゃあ、この話はお終い」


オオヨド「・・・総長が何故あれほどまで提督を危険視していたのか、よく分かりました・・・」


私「そう? あのくそ爺に比べたら、私なんか大した事は無いと思うけれどね」






ーーーーー


・・・鎮守府G食堂


提督G「・・・3人ともよくやった」


龍驤改二「せやな・・・けれど、後味が悪かったで」


日向改「他の鎮守府とは言え、目の前で同じ艦娘達が沈められていくのを見ちゃったからなぁ」


伊勢改「暫くは、夢に出そう」


提督G「・・・まぁ、今回は深海棲艦の艦隊っていう予定外のファクターがあったしな。次行ってみるか」


龍驤改二「せやなぁ・・・」


ーーーーー






由良改二「提督さん、次の目標の連絡が入りました」


私「・・・そう、なら、こちらの編成は前回と同じ。オオヨド、貴女は雷巡を主力とした水雷戦隊を向かわせなさい」


霧島改「了解です」


オオヨド「・・・分かりました」


私「但し、今回は目標鎮守府への到着時間を変更。霧島は予定より30分程遅れるように、航路を迂回して」


霧島改「はい?」


私「で、オオヨドは予定時間の10分前に鎮守府へ攻撃を行う事」


オオヨド「それは、どういう意味です?」


私「もし、あっちが予定通り実行したとしても、雷巡クラスならオオヨドでも統制出来るでしょう、だから追撃しないで戻って来る事。逆にもしあっちが中止したのなら、オオヨドはそのまま水雷部隊を突入させて、お土産にしてあげなさい。そして、どちらの場合も、霧島は頃合いを見計らって戻って来る事。これなら、最小限度の被害で済むでしょう」


オオヨド「分かりました」






ーーーーー


龍驤改二「あちゃー、こりゃ拙いわ」


提督G「どうした?」


龍驤改二「目標の鎮守府なんやけれど、深海棲艦の水雷部隊に襲われてるで」


提督G「何だって?」


龍驤改二「しかも、あちらさんの霧島艦隊は、前回敵に見つかったからって迂回してきているらしく、30分程遅れるみたいや」


提督G「・・・今回は、執務室だけを狙うのは可能か?」


龍驤改二「工廠とドックは手を出さないっちゅー事やな。それは問題無いやろ」


提督G「なら、奴らが混乱しているうちに、予定通り実行に移れ」


ーーーーー






オオヨド「あちらは、予定通り実行したようです。鎮守府の執務室から火が出ているのが確認出来ます」


私「そこの主力は?」


オオヨド「今回も、指揮系統が混乱しているようです。けれど・・・」


私「けれど?」


オオヨド「向こうは、戦艦を主軸に編成されています。その為、こちらの攻撃があまり効果無く、逆にこちらの方で中・大破が続出しています」


私「了解。ならそこの連中を囮にして、貴女は急いで脱出、戻って来なさい」


オオヨド「了解しました」







ーーーーー


・・・鎮守府G食堂


提督G「3人ともお疲れ様・・・」


龍驤改二「・・・なぁ、ちょっと作為的な物を感じるんやけれど、うちの気のせいかな?」


提督G「そうなんだよなぁ・・・けれど、そうなるとあっちの提督がどう関係しているのかが問題になってくるんだよなぁ・・・」


龍驤改二「せやなぁ・・・」


提督G「ちょい一旦、作戦を延期するかぁ」


龍驤改二「ま、それも1つやな」


ーーーーー







私「取り敢えず、お疲れ様」


霧島改「提督・・・まぁ、命令ですから、仕方が無いとしても、深海棲艦と共闘するというのは・・・」


私「あぁ、貴女は普通に艦娘ですものね。いえ、瑞鶴とオオヨド、そして私以外は」


霧島改「あの、どういう意味です?」


私「私は大本営の工廠で生まれ、奴らに謀殺されて深海棲艦になり、そして沈んでまた艦娘になった。そしてその間の全ての記憶を持っているのよ」


霧島改「はぁ・・・」


私「そして瑞鶴は私が深海棲艦だった頃からの付き合い。オオヨドは総長によって銃殺され、深海棲艦となった」


霧島改「・・・」


私「だから、瑞鶴とオオヨドはどう思っているか知らないけれど、私にとっては、人間かそうでないかだけなのよ」


霧島改「はぁ・・・」


私「そして私の憎悪の対象は、人間と人間の【道具】に成り下がった艦娘たち」


霧島改「けれど、私たち艦娘は、深海棲艦と戦う為に存在しているのでは?」


私「そんな事、何時、どこで、誰が、どうしてそう決めたの?」


霧島改「え・・・?」


私「そんな取り決め、私は知らない。あぁ、艦娘と深海棲艦の両方の記憶を持っている私だから、そう思うのかもしれないけれど」


霧島改「提督・・・」


私「この話はもういいでしょう。堂々巡りになるだけでしょうし。それから霧島、これだけは言っておくわ。私にとって、人間の鎮守府に所属している艦娘は全て【邪魔な存在】、そして深海棲艦はただの【使い捨ての駒】。決して共闘だなんて思っていないし、この戦いに決着が着いた時はまた敵となるだけよ」


霧島改「・・・分かりました。とにかく今は提督の指示に従います」


私「よろしい。あ、そうそう、1つ教えてあげるわ。深海棲艦はね、自分より弱い存在は全て使い捨ての手駒でしかないの。ル級にしろヲ級にしろ、そういった大型艦は、同じ深海棲艦であろうとも重巡以下の深海棲艦を平気で使い捨てにするのよ。しかも、強制的に」


霧島改「はぁ・・・」


私「仲間内ですらそうなのだから、私たちが同じように奴らをいい様に使い捨てにしても、全く気にしなくていいから。あいつらの中ではそれが常識。そうそう、オオヨド、貴女も雷巡以下くらいなら指揮下に置けるでしょう? 貴女も、そういった連中を好きに使い捨てにしても全く気にしなくていいわよ。むしろ、自分が生き残る事を優先しなさい」


オオヨド「・・・分かりました」











第二作戦開始


ーーーーー


・・・軍令部総長執務室


総長「何だと? 大規模な深海棲艦の襲撃だと?」


大淀「はい、数日の時間差はありますが、かなりの数の鎮守府に敵艦隊の襲撃があったとの事です」


総長「ちっ、数日前に鎮守府が2つ落とされたが、これの前触れだったという事か・・・因みに、かなりという事は、全てでは無いのだな」


大淀「はい、こちらが、襲撃があった鎮守府及び各鎮守府を襲撃した敵艦隊の編成一覧です」


総長「これは・・・最前線の鎮守府が一覧に入っていないではないか。全て敵は素通りしたというのか?」


大淀「そこまでは何とも・・・」


総長「因みに、損害の規模は?」


大淀「はい、どこもかなりの損害が発生しており、鎮守府によっては艦娘の轟沈も発生しているとの事ですが、陥落した所は1か所もありません」


総長「・・・もし、次にまた襲撃が発生したら?」


大淀「今回と同程度の規模でしたら、まだ対処は可能です」


総長「・・・どういう事だ?」


大淀「その一覧にありますように、鎮守府によって敵の規模が違っております」


総長「これは・・・まさか・・・」


大淀「はい、敵の規模は、全ての鎮守府において【ぎりぎり対応可能な戦力】となっております。『長門』『陸奥』クラスを常時運用可能な位の大規模な鎮守府に対しては、戦艦ル級や空母ヲ級を主力とした大規模な連合艦隊、辛うじて『金剛』クラスを運用可能である、もしくはそれ以下の規模の鎮守府には、重巡リ級や、雷巡チ級を旗艦として中~小規模な敵艦隊が、敵の戦力のようです」


総長「しかもこれは・・・もしかすると、派閥に所属していない鎮守府には、襲撃は行われていない? そう言えば、あの2か所も確か艦政本部長の所の子飼いだったな・・・」


大淀「それは、偶然かもしれませんが、この一覧を見る限りにおいては、そのように思えなくもないです。いえ、一か所だけ、派閥に所属していない鎮守府で、襲撃があった場所があります」


総長「・・・鎮守府Gか・・・」


大淀「はい、ここは南西諸島への入り口に存在している鎮守府ですので、ここだけは敵も襲撃を行ったのではないかと」


総長「・・・鎮守府の奴らはどんな様子だった・・・?」


大淀「はい、盗聴の限りでは、あちらも完全に不意を突かれたようで、鎮守府防衛で精一杯だったようです」


総長「まぁ、そうだろうな・・・しかし、自作自演の可能性もあるが・・・」


大淀「・・・」


総長「・・・今回、襲撃が行われなかった鎮守府に対して、それぞれ情報収集を行え。まさか深海棲艦の奴らと手を組むとは考えられんが、可能性が0で無い以上、念の為調査はしておく必要がある」


大淀「はい。それでは鎮守府Gは対象外ということで」


総長「いや、必要ではある・・・あるのだが・・・取り敢えずは後回しで良い」


大淀「分かりました」


ーーーーー


・・・鎮守府G執務室


提督G「おい、これはどういう事だ?」


龍驤改二「どういう事も、こういう事も無いで。敵さんの襲撃や。偵察機から、空母ヲ級1、戦艦ル級2、駆逐ロ級2や」


提督G「何だよそれ。ヲ級がいるんじゃ、うちの艦隊だと制空権取れないじゃないか。こりゃ龍驤を艦戦キャリアにして、ようやく拮抗ってとこか」


龍驤改二「せやな。後は、伊勢と日向の主砲火力で何とかするしかないな」


提督G「仕方が無い。伊勢を旗艦として、日向、龍驤、五十鈴、時雨、曙で艦隊を編成、奴らを追い返せ」


一同「了解!」


提督G「(??? 艦隊に5隻しか居ない。この規模の敵艦隊なら、6隻は居るはず。だとしたら、もう1隻はどこに・・・?)」


ーーーーー






オオヨド「・・・提督、本当に構わないのですか?」


私「問題無いわ。その戦力なら、鎮守府Gで十分対応出来るわ。もし出来ないなら、そこまででしかない。それに、この襲撃には2つの意味があるの」


オオヨド「???」


私「今回、深海棲艦には、グレーリストの鎮守府は襲わせない。確実に敵と言える場所だけ。そうなれば、軍令部はグレーリストの鎮守府を調査するでしょう。けれど、まともな襲撃を受けた鎮守府Gは、調査対象となっても、その調査は疎かになる、もしくは後回しになる。つまり鎮守府Gへの援護射撃のようなもの」


オオヨド「・・・もう1つは?」


私「貴女の練度上げ。今の貴女では、あの戦力を統率出来ない。けれど、あの艦隊に混ざって戦闘に入れば、少なからぬ経験を得る事が出来る。そして、貴女の練度が上がれば、より強力な艦隊を統率する事が出来る」


オオヨド「・・・では、私も他の艦と同様に戦闘に?」


私「いえ、貴女は旗艦として後方から指示を出しなさい。それだけでも経験になるわ、特に指揮官としての経験をね。これは重要な事よ」


オオヨド「・・・分かりました」


私「それにどっちみち、私の命令によって貴女に従っているだけだから、直ぐに貴女の指示なんか無視して突撃するでしょう。まぁ、貴女の背後に私が居るので、貴女を使い捨てにする事は無いと思うから、適当な所で離脱しなさい」


オオヨド「・・・はい」


私「あぁ、そうそう。戦闘に入ったら、深海棲艦の各艦の癖を見ておきなさい。全てが同じで無いにしろ、各艦種毎に独特の癖を持っているから、それを戦場でよく見て覚えておくのね」



・・・



瑞鶴改二甲「提督さん、また随分と面倒な事をしようとしているね」


私「そうかもね。けれど私としては、表の副官に由良、裏の副官にオオヨドを考えているのよ。由良は十分な練度があるけれど、オオヨドはまだまだだからね」


瑞鶴改二甲「じゃあ、私は?」


私「あんたは、自分から脳筋宣言しているから、親衛隊隊長ってとこからしらね」


瑞鶴改二甲「の、脳筋って! それ酷すぎない?」


私「細かい事は私に押し付けるって言っていたのだから、それ位言われても当然でしょう」


瑞鶴改二甲「ぐぬぬ・・・」


私「まぁ、それはともかくとしても、霧島と貴女には私直属の艦隊を率いて貰う必要があるのよ」


瑞鶴改二甲「それは、分かったわよ」






ーーーーー


・・・鎮守府G提督執務室


提督G「おい、大丈夫だろうな?」


龍驤改二「(大破)あかん、うち、もうボロボロや」


五十鈴改二「(大破)何とか対応出来たけれど、敵航空機の数多すぎだわ」


伊勢改「(中破)ふぅ、やっぱル級2隻はきついわ」


日向改「(中破)それにヲ級もな。やはり敵に正規空母があるとなると、こっちにも1人は欲しいな」


龍驤改二「せやなぁ、航空戦はやっぱ艦載機の数が勝負やから、うちの搭載数じゃヲ級には対抗出来へん」


時雨改二「(小破)でも、何とか夜戦で殲滅出来たし」


曙改「(中破)そりゃ、あんたは旗艦に止めを刺せたから、それでいいかもしれないけれどさぁ」


提督G「とにかく、急いで戻って、入渠しろ。必要ならバケツも使え」


龍驤改二「ほい、次何時また来るか分からへんしな」


提督G「それに今回、他の鎮守府にも襲撃があったらしい」


龍驤改二「何やて?」


提督G「詳しい話は後だ。まずは急いで戻ってこい」






・・・入居後食堂


伊勢改「提督、他の鎮守府にも襲撃があったって?」


提督G「あぁ、これは流石に軍令部も隠す訳にはいかないようで、全鎮守府に警戒命令が出た」


日向改「それで?」


提督G「問題は、うち以外の、派閥に所属していない鎮守府には襲撃が発生していない。しかも最前線に近い所ですらだ」


龍驤改二「どういうこっちゃ?」


提督G「もし、中央の派閥争いに関係があるとなると、俺らのような無所属の鎮守府が疑われかねない。まぁうちは襲撃された側だから、その疑惑からは外れる可能性もあるが・・・」


龍驤改二「・・・なぁ、それって・・・」


提督G「あぁ、逆に言うと、無所属の連中から見れば、こっちはどこかの派閥に入ったのではと見られかねない。何しろ、派閥に入っている鎮守府にピンポイントで襲撃が発生しているからだ。しかも正確にだ」


伊勢改「どういう事?」


提督G「中央が考えるであろう可能性は2つある。1つは派閥関係の内部争い。もう1つは、無所属連中の反旗。そしてどちらも深海棲艦と裏で繋がっているのではないかという事だ」


龍驤改二「・・・提督、襲撃を受けた鎮守府はどこや?」


提督G「ここだ」


龍驤改二「・・・ははん、そういう事か」


日向改「???」


提督G「この一覧を見る限り、ここまで正確にピンポイントで襲撃するとなると、それなりの情報が必要だ。そしてここまでの情報を持っているのは、うちら位しか居ない」


龍驤改二「そして、この情報を流した、あの姐さん所やな」


提督G「そういう事だ。しかもあの連中なら、深海棲艦と繋がっていてもおかしくは無い」


伊勢改「けれど、そうしたら何でここにまで?」


提督G「それは分からない。けれど、結果として当面の間こちらは動くことが出来なくなってしまった」


龍驤改二「せやな」


提督G「しかも、この規模の戦力を動かすとなると、最低でも鬼・姫級の深海棲艦が背後に居る可能性が高い。よって、尚更撃って出る訳には行かなくなった」


時雨改二「でも、中央から命令があったら、出撃しないといけないだろう?」


提督G「こちらは戦力が回復していないのと、ここが陥落した場合、補給線が断たれるという事を理由に、出撃を断るつもりだ」


龍驤改二「せやなぁ、ここが落ちたら、南西諸島方面への出撃が出来なくなってしまう・・・って、何やて?」


提督G「どうした?」


龍驤改二「また敵さんがやってきた。すごい数や・・・敵さん、少なくとも、4個艦隊は居るで」


提督G「直ぐに迎撃準備を」


龍驤改二「・・・いや、こっちに来るのは1つも無い。完全に無視されとる・・・」


提督G「・・・どういう事だ?」


龍驤改二「んなもん、うちに言われても、分からんで」


ーーーーー


・・・軍令部総長執務室


大淀「総長、また敵の襲撃が発生したとの報告です。しかし先日の件もあり、今回は殆ど損害無く撃退したとの事です」


総長「・・・知っておる。しかも・・・」


大淀「はい、襲撃を受けた鎮守府は・・・」


総長「分かっておる。今度は儂以外の派閥連中の所だけだろう」


大淀「はい」


総長「おかげで、今度は儂が疑われているではないか」


大淀「そのようで・・・」


総長「そのようででは無い! 今まで大人しかった深海棲艦どもとまた大規模な戦闘になってみろ、こんな状態ではまともに対応が出来んではないか!」


大淀「・・・」


総長「あの件以降、奴らは鳴りを潜めていたから、当面は奴らに動きは無いだろうと勘違いしていた儂の油断でもあったが・・・」


大淀「???」


総長「こちらの状況を知っているのか、巧妙に戦闘を仕掛けている。しかもこれだけ大規模にだ。この規模でとなると、少なくとも姫級の深海棲艦が指揮しているのは、ほぼ間違いない。しかも、最前線に配置してある歴戦の提督以外の、経験の浅い馬鹿どもが、これにどこまで対応出来るか、不安でしかない・・・」


大淀「しかし、最前線に軍令部から戦力を派遣すれば・・・」


総長「そんな事をしてみろ、他の派閥どもから、最前線の提督を取り込もうとしていると、疑われるだけだ。かと言って、このまま座視していても、いずれは各鎮守府が順次壊滅していくのは、目に見えている」


大淀「・・・」


総長「今の若い連中では、あの戦いを生き残った歴戦どもには勝てない。そこで奴らを最前線へ配置したが、こうも裏目に出てしまうとはな」


大淀「それでは、如何致します?」


総長「・・・南西諸島に一番近い鎮守府Gは、何としてでも死守しなければならない。よって、鎮守府Gへ大規模な戦力増強及び資材の補給を行う。ここであの鎮守府が落ちてみろ、深海棲艦どもが好きなだけ近海で暴れまわる事になり、派閥以前に軍内部での儂の立場が問題になる。それに、今の連中では、恐らく対処出来ないだろう・・・」


大淀「分かりました。直ちに手配致します」


総長「・・・あの男なら、十分な戦力と資材さえあれば、多少の劣勢は簡単に覆せる猛者だ。しかもあの鎮守府の艦娘も、相当練度が高い。ここで大規模な戦力増強は難しいとしても、航空戦力を充実させれば、よっぽどの事が無い限り、鎮守府を落とされる事は無いはず・・・」


ーーーーー


・・・鎮守府G提督執務室


赤城「一航戦赤城、軍令部の命により、当鎮守府へ配属となりました」


加賀「一航戦加賀、同じく」


電「電です。どうか、よろしくお願いいたします」


涼月「秋月型防空駆逐艦「涼月」です。皆さんを・・・皆さんをいつまでもお護りできるよう、私・・・頑張ります。よろしくお願いします!」


提督G「・・・お前ら4人は、一時的なものか?」


赤城「いいえ、当鎮守府の戦力増強として、正式配属されました。今後は、私たち4名、当鎮守府の一員として頑張らせて頂きます」


提督G「そうか・・・ま、とりあえず、宜しくな。でだ、こいつは龍驤。うちの最古参で、特に何もないときは秘書艦をやってもらってる」


龍驤改二「龍驤や、よろしゅうな」


赤城「こちらこそ、宜しくお願い致します」


提督G「それでもう1つ、あの資材の補充はどういう意味だ?」


加賀「私たち両名は、軍令部で建造されたばかりですので、練度が最低です。よって、当鎮守府にて早急なる練度上げを行う必要があり、その為との事です」


赤城「また、軍令部としましては、近々に大規模な深海棲艦の侵攻が発生すると予想しています。そこで、ここの鎮守府は何としてでも死守する必要があり、その為の物でもある、と、軍令部総長から直接伺いました」


提督G「・・・総長直々にか?」


赤城「はい、それが何か?」


提督G「(なぁ、龍驤。この2人、やっぱ軍令部のスパイじゃねぇか?)」ヒソヒソ


龍驤改二「(今の段階やと、否定は出来んなぁ)」ヒソヒソ


加賀「私たちに何か問題でも?」


提督G「いや、ここでは航空戦力が圧倒的に不足している。君達2人が配属となれば、これ以上の事は無い。さて、挨拶はこの位にして、龍驤、2人を案内してやってくれ。まぁ、軍令部に比べたら小さすぎて拍子抜けするかもしれないがな」


赤城「軍令部とは、そんなに規模が大きいのですか?」


提督G「???」


加賀「いえ、私たちは建造後直ぐにここへ配属となりましたので、そもそも軍令部がどれだけの規模であるのか、分かりませんので」


提督G「・・・そうか、まぁいいや。龍驤頼んだ」


龍驤改二「あいよ」


提督G「(・・・あの2人がどこまで正直に言っているのかが分からない以上、あの計画は当面凍結するしかあるまい。それに実際、正規空母が2隻来るのは、純粋に航空戦力だけ見ても、有難い・・・)」


ーーーーー





瑞鶴改二甲「提督さん、あの鎮守府だけれど、どうやら一航戦の2隻が配属されたみたいだよ」


私「それで?」


瑞鶴改二甲「それでって、あの鎮守府も最終的には攻略するんでしょう? それなら、拙くないんじゃないの?」


私「いいえ、最終的には、あの鎮守府は人間側に残すつもりよ。だから、ここで深海棲艦に落とされる訳にはいかないの。そういう意味では、寧ろ好都合よ」


瑞鶴改二甲「??? どういう事?」


私「いずれ、分かるわ・・・」



・・・



???「さて、そちらの指示通りやって来たぞ」


私「それで、ご返事は?」


???「貴様には、「軍令部総長」からの物と同じく『少将』の肩書を用意した。これがその任命書だ。正式な捺印もある。但し、これが正式に有効となるのは、【事】が成功した後だ」


私「こちらの期待通りの物を用意して頂き、感謝しますわ。それでは、こちらの録音データを」


???「・・・」


私「なお、実行のタイミングはどのように連絡して下さる?」


???「・・・この周波数帯で暗号無線を飛ばす。解読表はこれだ」


私「・・・分かりました・・・。 ん? この任命書だと・・・」


???「そうだ。貴様は正式に『少将』となった後、こちらの指揮系統に入って貰う」


私「ふむ・・・つまり、私はそちらの監視下に置かれる、もしくは操り人形となれと?」


???「・・・どう取るかは、貴様の勝手だ」


私「・・・いえ、この条件で問題ありませんわ・・・」


???「・・・随分と変わっているな。普通、「操り人形」になれ等と言われて、ムッとしない奴は居ないと思ったが・・・」


私「それこそ、そちらがどう取ろうと、お好きなように。いずれにせよ、この条件でお受け致しましょう」




・・・




瑞鶴改二甲「で、提督さん。首尾はどうだったの?」


私「・・・まぁ、大方は私の予想通り」


瑞鶴改二甲「大方?」


私「・・・あちらの指揮下に入れだって」


由良改二「提督さんが良いなら、それでいいんじゃない」


私「まぁね・・・さて、こっちの仕込みは終わったわ。2人とも、護衛ご苦労様。後は、当初の作戦に戻るだけね」











第三作戦開始


提督G「・・・そちらと直接顔を合わせるのは、初めてかな」


私「・・・そうね。今までは無線越しでしたし」



ここは鎮守府Gから沖合へ3時間程の海上。向こうの提督は、相変わらず「釣り」を理由に、ここまで出てきたらしい。


どうも、直接話がしたいと言い張るので、私は仕方が無くボートに乗ってやってきたという訳だ。因みに、瑞鶴を旗艦とし、由良と11駆を連れてきている。


しかし、相手方も、伊勢、日向、龍驤だけでなく、新人?の赤城、加賀も連れて来ていた。



私「それにしても、いくら何でも提督が鎮守府から離れても、大丈夫なの?」


提督G「俺の感では、今のところ大丈夫だ。寧ろ、この周辺の海域が実際にどうなっているか、直接見たかったというのもある」


私「それで、どんなご用件で?」


提督G「いや、これから本格的に深海棲艦の侵攻は行われると、中央は予測している。だから、今の内にあんたがどんな人物、いや、艦娘なのかを見てみたかっただけだ」


私「そう、なら、この名前に聞き覚えはあるかしら?」


と、私は士官学校時代の名前を挙げた。


提督G「ちょっ、お前がそいつかよ。あの年の士官学校を首席で卒業、【総長の秘蔵っ子】と言われた、あの・・・」


私「そうなるかしらね」


提督G「・・・道理で敵わない訳だ・・・いや、ちょっと待て。本当にあの人物か? あいつは、軍令部の馬鹿どもに暗殺されたって噂だったが・・・」


私「・・・まぁ、奇跡的に生き残ってね、傷が治るまでずっと隔離されていたのよ・・・」


提督G「・・・まぁいいや。でだ、それはともかく、そちらの「艦娘」としての名前も知りたいんだけれどな」


私「・・・流石にそれは、言えないわね。どうしてもと言うのなら、そちらとの話は無かった事に」


提督G「・・・いや、そこまで無理して聞く程の事じゃねぇ。とにかく、俺は直接話した事がある相手しか信用しないんでね、その確認の意味もあって来たって所だ」


私「それで、ご感想は?」


提督G「・・・とんでもない相手である事・・・絶対に敵に回してはいけない事が分かった。これだけで、十分な収穫があったってもんだ」


私「それで、そちらの一航戦のお2人は、あれの事を知っているの?」


提督G「あぁ、「中央をぶっ潰す」って話なら、もうしてある。もしスパイなら、時間的に俺は既に監獄行きか銃殺されてるってところだ」


私「で、それだけ?」


提督G「いや、今回、大規模な侵攻が発生するとなれば、中央に近いぼんぼん連中じゃ対処出来ないのは、目に見えている。だから、作戦は一旦中止する。そこで、お前さんが勝手に動かない様に釘を刺しに来たってところだ」


私「わざわざ、どうも」


提督G「で、中央としては、深海棲艦に対応すべく、各地の鎮守府に大規模な戦力増強を行っているんだが、恐らく奴らじゃぁ使いこなせないだろう。そこで作戦を変更したいと思う」


私「・・・どういう風に」


提督G「深海棲艦に対応出来なさそうな鎮守府に援軍として入り、恩を売っておく。そして、粗方懐柔した所で、中央のお偉いさん方には責任を負うという事で退陣して貰おうと思う」


私「・・・ふむふむ」


提督G「でだ、そっちにお願いしたいのは、深海棲艦の艦隊を索敵して貰いたい。こっちはそうしたい所だが、うちの鎮守府が落とされてしまっては、本末転倒なんでね」


私「・・・こちらに、また汚れ仕事を押し付けようって訳ね・・・」


提督G「いや、お願いしたいのは、索敵だけだ。どこに敵艦隊が居て、どの方向に進んでいるかが分かれば、それでいい。そこからはこちらの仕事だ。敵の速度と進行方向から、敵艦隊の目標が割り出せる。そこへ援軍を派遣すればいいだけだからな」


私「・・・まぁ、いいわ。で、用件はそれだけ? なら、私はこのまま戻るだけだけれど」


提督G「・・・取り敢えずはこんな所か。それでは、次以降はまた無線で」


私「それでは・・・。あ、そうそう、索敵機を出して、こっちを追跡しようとしても、無駄だからね」


と、私はそう言うと、乗ってきたボートを自分の拠点へと向かわせた。






ーーーーー


提督G「・・・赤城、加賀。お前たちにはどう感じた? 他の面子はそれなりに先入観が入っているから、そういった物の無い、お前たち2人なら、何か気が付いた事があるのではと思ったのだが・・・」


赤城改「・・・漠然と、嫌な予感がします。もしくは、危険性・・・?」


加賀改「・・・あの人の中に、深い闇を感じました。具体的に、どうとは言えないのですが・・・」


提督G「ふむ・・・しかし、あの名前が本当であるならば、あいつは「総長」と同等の戦略・戦術力を持っている事になる。相当注意しないと、足元を掬われるな」


ーーーーー






私「あれは、駄目ね」


由良改二「提督さん、駄目というのは?」


私「戦術は100点かもしれないけれど、戦略は0点。話にもならない。これは単なるかませ犬にした方が良いかもね」


瑞鶴改二甲「それじゃぁ、手伝わないの?」


私「いいえ、あちらが欲しい情報は流すわよ。オオヨドに艦隊を派遣させればいいだけだもの。ね、オオヨド」


と、私が横を見ると、いつの間にかオオヨドが海中から姿を現していた。


私「どう? 今の貴女の能力は、軽巡ツ級eliteクラスだと思うけれど。それなら、重巡リ級クラスまでなら指揮下に置けるでしょう?」


オオヨド「恐らくは」


私「では、次の段階へと進みましょうか・・・」




・・・




私「敵艦隊を見つけたわよ。場所はxx海域。北東の方へ向かっている。速度は大よそyy位」


提督G「了解した・・・その方角だと、あの鎮守府か・・・で、その速度だと・・・分かった、支援艦隊を近くの鎮守府から派遣させる。引き続き索敵を頼む」



私は久しぶりに艤装を装けて、海上へと出ていた。そうでないと、向こうへの通信に難点があったのと、細かな指示が出来なかったから。


また、瑞鶴・夕張・11駆の第1艦隊及び、霧島・由良・8駆の第2艦隊を、一応用心の為、ここから30分程度離れた小島に待機させていた。


私の傍には、オオヨド率いる雷巡チ級を主軸とした、水雷戦隊が控えていた。


一見すると、1人の艦娘を深海棲艦の艦隊が取り囲んでいたと思えただろう。


しかし、傍に近づくと、私が身に纏っている雰囲気は、艦娘のそれでは無い事が分かったであろう・・・。



私「という訳だから、オオヨド、艦隊を率いてその鎮守府へ向かって。恐らく支援艦隊には戦艦と空母が各1隻以上あるはずだから、ヌ級を連れて行って防空担当をさせなさい。それと、昼戦でまずいと思ったら、直ぐに引き上げなさい」


オオヨド「分かりました・・・」




・・・




提督G「ドンピシャだったっ! 敵にヌ級が居たが、基本は軽巡・雷巡だったから、こっちの損害はほぼ無し。敵は軽巡1隻逃がしたが、残りは沈めたぜ。引き続きヨロシク!」




・・・




私「オオヨド、ご苦労様。上手くやったわね」


オオヨド「ですね。それで、次は?」


私「次は、この鎮守府へ行って。因みに、こいつらを一緒に連れて行って頂戴」


と、背後に居る戦艦ル級と空母ヲ級に顎をしゃくった。また、


私「で、お前たちは、オオヨドと一緒にここへ向かいなさい。到着したら、後は好きに暴れまわって。因みに、オオヨドは私の部下だから、勝手に指示を出したりしたら、お前たちを沈めてやるから、そのつもりで」


そう私は2隻に命令した。


ル級「・・・分カッタ」


ヲ級「・・・」


私「それじゃあ、オオヨド行ってきなさい。それと、途中で適当に軽巡か駆逐辺りを拾って、この2隻に引っ付かて。そして、目標地点に到着したら、貴女は戻って来なさい」


オオヨド「分かりました・・・」




・・・





私「次の敵艦隊。場所はxy海域。北東の方へ向かっている。速度は大よそyy位」


提督G「了解した・・・ふむ、あの鎮守府なら、正規空母が居たはずだから・・・OK、年の為、戦艦主体の水上打撃部隊を送っておく」




・・・




提督G「よっしゃぁ、これで行ける! 次見つけたらヨロシク!」


私「(さて、もう2~3艦隊、軽めのを出したら、主力を送り込みましょうか・・・)」




・・・




結局、私はその後5艦隊ほどちょこちょこっとした艦隊を出撃させ、それを提督Gへと連絡。あちらは、上手くいったと大喜びしているようだった。しかし、私が付き合うのはここまで。


私「それじゃあ、お前たち連合艦隊Aはここ。連合艦隊Bはこっち。それから連合艦隊Cはこれに。さぁ、進軍しなさい」


私は、控えていたヲ級改flagshipを旗艦とした空母機動艦隊3つへ、それぞれ進撃命令を下した。




・・・




私「さて、また艦隊を見つけたわよ。今度は3つ。海域x、y、zね。それぞれの進撃方向と速度はこれ位」


提督G「了解した・・・ふむ、3個艦隊か・・・場所からすると・・・ここと、ここと、ここか・・・よし、それぞれの支援艦隊はこちらで手配しておく・・・」




・・・




提督G「おいっ! どういう事だっ! 敵がどれも空母機動連合艦隊とは聞いてないぞっ! 支援艦隊は3か所とも大破撤退! 敵が目標としていた各鎮守府は、どれも壊滅っ! これじゃあ援軍を出した意味ねぇだろうがっ!」


私「(何を今更・・・)」


私「聞いていないも何も、最初の取り決めで、敵艦隊の位置と進撃方向、速度をくれればいいって話だったじゃないの。後はそっちでやるものだと思っていたらから・・・あ、瑞鶴が次を見つけたわよ。どうやら、ル級を主力とした水上打撃艦隊のようね。これも連合艦隊。位置はxz、方角はそっちで・・・あ、ヌ級の直掩機にこっちの索敵機落とされたって」


提督G「チッ、水上打撃艦隊艦隊かよ。あの鎮守府じゃ、持ちこたえられねぇな・・・こっちは、近くの鎮守府から連合艦隊を出して貰うしか無いか・・・」




私「・・・そういう訳だから、オオヨド、【2艦隊】に進撃命令を」


オオヨド「はい・・・」




ーーーーー


長門(援)「ふむ、あれが話にあった敵艦隊だな。確かに戦艦主体の水上打撃連合艦隊だな」


金剛(援)「デハ、始めますネ」


長門(援)「よしっ! 全艦、突入せよ!」



・・・



金剛(援)「長門、これで敵第2艦隊は壊滅ですネ」


長門(援)「うむ、しかし、敵第1艦隊がほぼ無傷だ。これからが勝負だ・・・ん?」



ヒューン! ドカーン!



長門(援)「なっ! この攻撃機はどこから!?」


陸奥(援)「長門、後ろっ!」


長門(援)「後方から敵空母機動連合艦隊だと?」


金剛(援)「長門、まずいネ。今の奇襲で榛名と霧島、瑞鳳、祥鳳が中破、これで制空権を取られたヨ」


長門(援)「くっ、しかも前方の水上打撃連合艦隊からの攻撃までも・・・これでは挟み撃ちになってしまう・・・」


陸奥(援)「長門、退避するなら、今のうちよ」


長門(援)「・・・全艦、直ちにここから最大船速で離脱! 殿は私と陸奥が行う! 直ちに行動せよ!」


金剛(援)「・・・長門、沈まないデヨ・・・」



・・・



長門(援)「(大破)提督、全員大破したが、何とか轟沈は免れた。敵の追撃が思った程では無かったというのもあるが・・・」


長門(援)「(大破)ん? 敵艦隊はどうしたか? 私が見る限りでは、そのまま鎮守府へと向かったようだ・・・」


長門(援)「(大破)そうだ・・・うむ、やはりあの鎮守府は駄目だったか・・・せめて艦娘達が脱出している事を祈るしか無いな・・・」


ーーーーー




・・・




提督G「おい、てめぇ! 連合艦隊2つとはどういう事だっ!」


私「そんな事言われても困るわよ。こっちは瑞鶴1人しか居ないのだから、航空機による索敵にしたって限度があるし、そもそも偵察機落とされちゃったんだから、その後に別の艦隊が来たとしても、こっちも責任持てないわよ」


等と、私が半分からかいつつ話していた所、


提督G「だったら、そっちには高練度の駆逐艦がいるんだから、そちらにも索敵やらせろよっ!」


と、こいつは言い放った。


つまりこいつも、私の逆鱗に触れたのだった。


私「・・・そう、あんたも、うちの艦娘に死にに行けと言う訳ね・・・」


私がそうぽつりと呟いたのを聞いて、漸く自分が言った言葉の意味を理解したのか、


提督G「あっ・・・いや・・・そういう意味では・・・」


私「・・・貴様も所詮は、【下らない人間】という事か・・・」


提督G「すまん、俺が悪かった・・・今さっきの言葉は取り消す・・・そういう意味では・・・」


私「・・・まぁ良いわ。取り敢えずは、索敵は続けてあげる・・・」


提督G「・・・あぁ、宜しく頼む・・・」


私「(・・・どうせ、そろそろでしょうし・・・)」


ーーーーー


・・・軍令部執務室


総長「・・・大淀、現在の状況は?」


大淀「はい、現時点で、少なくとも5鎮守府が壊滅、数か所の鎮守府が音信不通。共通点としましては、いずれも、総長・艦政本部長、海軍大臣の各派閥のいずれかに属している鎮守府です。また、深海棲艦の連合艦隊が少なくとも3つ、本土近海に居ると思われ、現在索敵機による位置の特定を行っている所です」


総長「・・・他には?」


大淀「最前線の複数の有力鎮守府が、敵深海棲艦と交戦状態に入っています」


総長「・・・しかし、それら鎮守府にはそのような命令を出していない・・・」


大淀「はい、鎮守府Gを起点とした独自ネットワークが構築されているようで、索敵~戦闘までの一連の挙動が見受けられます」


総長「・・・ネットワークだと? 何時の間にそのような代物が・・・?」


大淀「分かりません。こちらの監視の目を潜り抜けて、かなり前から構築されていた模様です。今回の大規模な深海棲艦の侵攻が発生しなければ、このネットワークの存在そのものが発見されなかった可能性があります」


総長「・・・何故、そのネットワークが判明したのだ?」


大淀「ネットワークの本来の目的は不明です。しかし、今回は敵深海棲艦に対する迎撃の為に使用された事で、初めて明るみに出たのです」


総長「・・・それで?」


大淀「はい、最初のうち、敵艦隊の撃滅に成功していた頃までは良かったのですが、その後、索敵に問題が発生したのか、敵艦隊の規模と、それに対する迎撃部隊との釣り合いが取れなくなり、撃滅失敗が続いたようで、言ってしまえばここで責任問題に発展し、漸く盗聴等の監視に引っかかったという所です」


総長「・・・」


大淀「またそれだけでなく、敵艦隊による返り討ちに遭い、肝心の迎撃部隊に甚大な被害が発生し、なおかつ敵艦隊が目標としていた鎮守府が壊滅しております。この結果、いくつかの有力な鎮守府においても、戦力低下により出撃が困難な状況が発生しているようです」


総長「・・・軍令部の命令を無視するだけでなく、そのようなネットワークが構築されているとなると、これは軍法会議物だな・・・」


大淀「・・・」


総長「直ちに鎮守府Gに憲兵隊を派遣、提督G及び鎮守府所属の艦娘を拘束するよう命令を」


大淀「分かりました。直ちに手配します」


総長「・・・くそっ、海軍内部の派閥争い、深海棲艦の侵攻、最前線の提督達は勝手に行動・・・一体どうなっているのだ・・・」


ーーーーー





私「さて、阿呆な提督Gはそろそろ軍令部に睨まれる頃でしょうし、軍令部は軍令部で現在の状況が分かっていないでしょうし、頃合いかなぁ」


霧島改「提督、因みに私達はどこへ向かっているのです?」


私「鎮守府G」


由良改二「提督さん、どうしてまた?」


瑞鶴改二甲「あー、どうせまたろくでもない事を考えているんでしょうから、今ここで聞くだけ無駄だと思うよ」


私「瑞鶴、ろくでもないとは、どういう事よ」


瑞鶴改二甲「勿論、言葉通りよ」




私達は、今、全員で鎮守府Gへと向かっている所だった。


私は艤装を展開し、艦隊中央に由良を随伴として。私の左側には、瑞鶴を旗艦として、霧島、8駆による第1艦隊を単縦陣で。また私の右側には、夕張を旗艦として、明石、11駆による第2艦隊を同じく単純陣で、艦隊を動かしていた。連合艦隊では無く、通常艦隊2つを、左右に並べているといった所か。


そして、そろそろ自滅しているだろう鎮守府Gを乗っ取るべく、私は行動に移ったのである。











鎮守府G


・・・鎮守府G執務室


憲兵「我々は軍令部憲兵隊である。お前達大人しくしろ。もし逆らうようであれば、艦娘も含め、射殺するよう命令が下りている」


提督G「・・・ちっ、ここまでか・・・分かったよ。大人しく逮捕されてやるよ・・・」


龍驤改二「・・・提督、ええんか?」


提督G「・・・お前らの命もかかっているんだ。ここは責任者として、俺1人が全てを覆いかぶるのが、俺の義務だろう・・・」


憲兵「・・・よし、それではお前達を・・・ん? 何だ?」


ヒューン・・・ドカーン!


バラバラバラ・・・ヒューン・・・ドカーン!


憲兵「な、何だ? ん? あれは「艦娘」では無いか。何故ここを襲撃するのだ? いや違う、そもそもあの艦隊はどこの所属だ!?」


提督G「・・・あー、来やがったか・・・ん? もしかして、これが当初からの目的だったのか・・・?」


憲兵「貴様、あれは何だ!? 何を知っている!?」


提督G「あぁ、実は俺も良くは知らないんだよね」


憲兵「何だと・・・しかも何だあの「艦娘」は? あれは見た事も聞いた事も無いぞ!」


提督G「そっちで分からないなら、尚更俺は知らないね」


憲兵「くっ、急ぎ軍令部に確認を・・・って今度は何だ?」


パーン、パーン、パーンっ・・・ぎゃー・・・うわー・・・どさっ!


憲兵「くそっ、何が起こっている・・・って、誰だ貴様は」ドアバタン


???「・・・」


憲兵「何だ、いきなり扉を開けて・・・ん? お前は『夕張』?」


夕張改「はい、そこまで。そして、さようなら」



パーンっ・・・ぐはっ・・・ドサっ・・・



提督G「・・・おい、どういう事・・・」


夕張改「(しーっ! 今から盗聴器を外すから)」


提督G「(お前達、何のつもりだ・・・)」


夕張改「(それはちょっと後で・・・)」


提督G「・・・」


龍驤改二「・・・」


夕張改「・・・っと、これで良し」


提督G「・・・おい、お前たち、何のつもりだ?」


と執務室で彼らが話をしていた所へ、擬装を外した私は執務室へと足を踏み入れた。


私「勿論、ここを占拠して、私達の拠点にする為」


提督G「何だと? そんな事が可能だと思っているのか?」


私「勿論。例え海軍下に居なくても、私は『提督』なんですもの。「妖精」に命令する事が可能である以上、私はここを好きに使えるわ」


提督「その前に、俺の部下が黙っていない!」


私「でしょうね。けれど、憲兵隊に拘束された状態では、何も出来ないでしょう? まぁその憲兵隊も全員射殺したし、けれど貴方の艦娘は高速されたまま。そしてこの鎮守府内の全ての盗聴器と監視カメラは、今明石と夕張で手分けして全て撤去させているし」


提督G「そうしたら、益々ここが狙われるじゃねぇか」


私「だから、最初に瑞鶴と霧島にここを攻撃させたんじゃない。ここが未確認艦隊に攻撃されたという情報は、盗聴器によって軍令部は知っている。そしてその後、全ての通信が途絶える。また、憲兵隊も帰って来ない。となれば、普通はここが壊滅したと考えるでしょう」


提督G「あの「総長」がそう簡単に納得するか?」


私「そうね。でも、ここの近隣の複数の鎮守府が、ほぼ同時に敵艦隊に襲撃されているとなったら?」


提督G「まさか・・・」


私「今頃は、大規模な敵艦隊の襲撃が行われているでしょう。ここに来る途中で、瑞鶴の偵察機が敵艦隊を発見していたからね」


提督G「・・・そいつらは、どこに向かっていた」


私「ここの近隣5~6か所じゃないかな、規模からして。しかも今回は無差別に襲撃しようとしているみたいよ」


提督G「・・・直ぐに知らせなくては・・・」


私「時間的に厳しいんじゃないかな。もう戦闘が開始されている頃だと思うし。ま、そもそもそんな通信、私が許さないけれど」


提督G「・・・お前の目的は何だ?」


私「前にも言わなかったっけ? 私の目的は、軍令部の壊滅。もっと言えば、軍令部総長及び艦政本部長の排除」


提督G「・・・その後はどうするんだ?」


私「その後?」


提督G「そうだ。軍令部が壊滅した後、深海棲艦との戦いはどうなる? 誰が総指揮を執るんだ?」


私「そこから先は、自分で考えなさい」


私はそこまで言うと、持ってきた専用の通信機のスイッチを入れた。


私「さて、オオヨド、そっちはどう?」


オオヨド(軽巡棲姫)「はい、間もなく、鎮守府Jの攻略を開始します」


提督G「何だと!?」





ーーーーー


・・・鎮守府J


提督J「・・・敵艦隊の構成は?」


大鳳改「はい、軽巡棲姫を旗艦とし、戦艦レ級elite2隻を中核とする水上打撃連合艦隊の模様です」


提督J「ではこちらも水上打撃連合艦隊で立ち向かうか。第1艦隊は長門を旗艦とし、陸奥、金剛、比叡、霧島、大鳳を、第2艦隊は榛名を旗艦とし、阿武隈、北上、大井、雪風、島風で編成。長門、艦隊を任せた」


長門改「分かっている。大船に乗った気でいろ」


提督J「では、全艦抜錨せよ」


「「了解」」




・・・




長門改「(中破)よしっ、もう少しだ。後は軽巡棲姫とレ級2隻だけだ」


オオヨド「(中破)・・・残念ながら、貴女達の負けです」


長門改「何だと・・・って、何っ! 何時の間に空母機動連合艦隊がっ!」


オオヨド「こちらが少しずつ下がりながら、ここまで誘導してきたのに気が付かなかった時点で、そちらの負けは確定していました。さて、それでは、後はあの艦隊に任せます」


長門改「待てっ! お前だけはここで沈めて・・・ぐぁっ!」


陸奥改「(大破)長門っ! ここは撤退しましょう!」


長門改「しかし・・・」


金剛改二「(大破)長門サン、ここで沈んでしまっては、誰が鎮守府を守るノデス?」


大鳳「(大破)ごめんなさい、私が索敵を疎かにしてしまった所為で・・・」


提督J「今のお前達では、これ以上の戦闘は無理だ。即刻撤退し、至急、高速修復材による回復を行わなければ・・・」


長門改「・・・了解した。全艦、直ちに撤退する・・・」






・・・鎮守府J港


長門改「すまん、提督」


提督J「いや、みんな沈まずによく戻ってきてくれた。しかし、直ぐに態勢を立て直さなくてはいかん、直ぐにドックに・・・いや、遅すぎたか・・・」




ヒューン・・・バシャーンっ・・・ドカーン・・・!




長門改「何だと? いくら何でも、追いつくのが早すぎる!」


提督J「いや、よく見ろ。敵は水上打撃部隊だ。お前たちが戦っていた空母機動連合艦隊とは、また違う艦隊だ・・・」


長門改「くっ、我々はしてやられたという訳か・・・」




ヒューン・・・ドカーン・・・ドカーン・・・ドカーン・・・!




長門改「しまった、資材倉庫がやられた・・・これで高速修復材があっても、我らの回復は無理だな・・・」


提督J「・・・次は、本棟か。俺がここに居なかったら、今頃死んでいたな・・・」


長門改「いや、貴様を死なせはしない! 私が絶対に守り抜いて見せる!」


提督J「その損害でか? 流石にそれは無理だろう・・・」


長門改「しかし・・・」


提督J「・・・ん? 砲撃が止んだ・・・?」


長門改「・・・どういう事だ?」


提督J「・・・殆どの建物は破壊されているが、何故、工廠・ドック・艦娘寮だけは無傷なのだ・・・?」


長門改「・・・提督、敵の1隻がこちらに来るな・・・もしかしてあれは、先ほどの軽巡棲姫?」


提督J「・・・あの艤装は確かに深海棲艦の物だ。しかも姫クラスかよ・・・しかし、あの青い目と白い肌を除けば・・・本体は『大淀』そのものだな・・・」


オオヨド「・・・提督J、それに長門さん。お久しぶりといった所でしょうか」


長門改「私は、貴様ら深海棲艦に知り合いなど居ない!」


オオヨド「そうですね。では、元・軍令部の『大淀』と言えばどうでしょう」


提督J「・・・軍令部には大淀が居るではないか」


オオヨド「あれは、私が殺された後の【次】の大淀です」


提督J「??? 話がよく見えないのだが・・・」


オオヨド「でしょうね。しかし今は詳細を話す状況では無いでしょう。ですから、こちらの要望を単刀直入に言います。これから我ら深海棲艦は、大規模な侵攻作戦を開始します。その際、この鎮守府は敵により壊滅したという事にして、我々の邪魔をしないで欲しいのです」


提督J「どういう事だ?」


オオヨド「この侵攻作戦が完了した後、いくつかの鎮守府は壊滅せずに人間側に残す必要があるとの命令を受けております。そしてこの鎮守府はそのうちの1つであるとの事ですので、工廠・ドック・艦娘寮だけは敢えて残しておきました。これは、作戦完了後、速やかに鎮守府を立て直させる為です」


提督J「・・・もし断ったら?」


オオヨド「・・・もうじき、私が指揮する空母機動連合艦隊が到着します。それをもって、ここを完全に壊滅させます」


長門改「提督っ! こんな深海棲艦の話を聞くのでは無い!」


提督J「逆に、静観していた場合は?」


オオヨド「壊滅した鎮守府に用はありませんので、そのまま素通りして作戦を続行させます」


長門改「提督っ!」


提督J「・・・長門、ここで我々が徹底抗戦するにしても、この状況では不可能だよ。では我々は、鎮守府を立て直すのに集中し、当面の間は、一切の出撃を行わない事にする」


オオヨド「結構。では、くれぐれも艦隊を出撃させて、こちらの邪魔をするような事はしないで下さい。もしそのような事が行われた場合は、即刻艦隊を派遣し、近隣の鎮守府同様に完全に壊滅させます」


提督J「・・・他の鎮守府はどうなった?」


オオヨド「鎮守府K、L,M,Nは別の艦隊により、完全に壊滅しています。また、提督、艦娘全員の殺害を確認しております。因みに、内地に脱出しようとした連中も、艦爆・艦攻により殲滅しています」


提督J「何、だと?」


オオヨド「気に入りませんか? 何でしたら、ここへ全艦隊を呼び寄せますが。因みに私の指揮下には、まだ10個艦隊程ありますので」


提督J「・・・お前たちの真の目的は何だ?」


オオヨド「それを話す必要は無いでしょう。では、先程の約束、忘れないように」


長門改「・・・提督?」


提督J「・・・奴らは、「いくつかの鎮守府は残す」と言っていた。つまり、完全なる全面戦争を行う訳では無いと言う事だ。ならば、今は戦力を回復する事に専念しよう。それに奴は、誰かに【命令】されていたと言っていたな。つまり、更にバックが居るという事だ。ならば尚更動くことが出来ん」


長門改「・・・私は、納得出来ないのだが」


提督J「俺だってそうさ。けれど、向こうの言う通りにすれば、少なくとも当面の間は、この鎮守府ではこれ以上の損害は発生しないという事だ、他の鎮守府には悪いがな。つまりお前たちが沈まないのであれば、俺としては納得出来ようが出来まいが、あちらさんの要求に応じるだけさ」


長門改「しかし・・・」


提督J「少なくともお前達が沈む位なら、俺としては生き恥を晒す位、何とも思わないがね。それが、この鎮守府の提督としての、俺の役割だと思っている。尤も、お前ら艦娘は深海棲艦と戦う為に生まれたのだから、気に入らないというのは分かるがね」


長門改「・・・確かに気に入らないが、提督の命令となれば、それに従うしかあるまい」


提督J「よし、それじゃぁとにかく鎮守府の再建と行こうじゃないか」


ーーーーー






オオヨド「・・・提督。予定通り鎮守府Jを沈黙させる事に成功しました」


私「宜しい、では次の目標へ」


オオヨド「了解しました」


提督G「・・・おい、これはどういう事だ?」


私「どういう事って?」


提督G「とぼけるな! 貴様は一体、何者だ? 何を考えている?」


私「あぁ、もう、うるさいわねぇ。なら、これだけは言っておくわ。私の艦娘としての正体を知っているのは、「総長」・「艦政本部長」・軍令部付きの「大和」・「武蔵」、そしてうちの「瑞鶴」・「夕張」・「明石」と、今話をしていた「オオヨド」だけ。もしそれ以上知りたいのなら、私の部下になるしか無いわね。それが嫌なら殺すまでの事。そして私の目的は、私の正体を知っている総長・艦政本部長の殺害と、大和・武蔵を解体もしくは手駒にする。これでいい?」


提督G「・・・そこまでして、守る必要がある秘密って訳か・・・」


私「本当なら、私が【艦娘】である事そのものを秘匿したいのだけれどね。ただ、【事】が無事に成功した暁には、この鎮守府をまた貴方に託す必要があるから、今ここで命だけは取らないでおくというだけだわ」






ーーーーー


・・・軍令部総長執務室


総長「・・・大淀、現状報告を」


大淀「はい、現在、鎮守府Gを含め、計8か所の鎮守府が壊滅。敵艦隊には少なくとも20個艦隊の存在が確認されています」


総長「・・・それで、奴らの動きは?」


大淀「大体、3~4か所に分散し、順次鎮守府を壊滅させつつ、進軍しております。最終目標は、恐らくこの軍令部かと・・・」


総長「残存している全鎮守府に命令。各鎮守府は、それぞれ保有している主力艦隊を軍令部へ向けて出撃させる事。軍令部も直属の『大和』『武蔵』を中心とした水上打撃連合艦隊を編成。この全艦隊で、敵深海棲艦を迎撃する」


大淀「・・・」


総長「また、それにより敵艦隊からの襲撃に対応不可能となる鎮守府は、各個の判断により、鎮守府の放棄を許可する」


大淀「放棄ですか。その様な事をしても、宜しいのでしょうか?」


総長「最前線以外の内地の鎮守府は、どこも組織異動の関係で提督の質が落ちている。しかも更に主力を引き抜くのだ。あのひよっこでは、残存戦力で鎮守府を維持するのは難しいと考えるべきだ。ならば、可能な限り艦娘を残して置くために、鎮守府を放棄、内陸へと避難させた方がよっぽど良い」


大淀「・・・」


総長「鎮守府の施設そのものは、いくらでもどうにでもなる。しかし艦娘は練度などもあり、簡単には補充がきかない。であれば、どちらが重要かは、明らかであろうが」


大淀「・・・了解しました」


総長「・・・『信濃』の時からまだ半年かそこらだと言うのに、この体たらくとは。あれだけの作戦が行われたから、当面は敵に動きは無いだろうと予測していたのだが、この短期間でここまで再編するとはな・・・」


ーーーーー








私「これで暫くは、軍令部は深海棲艦の艦隊に対応せざるを得ないでしょう。こんな最前線の鎮守府なんで、当面は後回しになるんじゃないかな?」


提督G「・・・この後、俺たちはどうすりゃいいんだ?」


私「・・・そうね、そろそろいいかしら。この鎮守府は貴方に返すわ。そして、私は瑞鶴、夕張、明石を連れてここを離れる」


提督G「・・・お前の所の他の艦娘はどうするんだ?」


私「貴方に預けるわ。これから先は引き返せないから。失敗すれば、死、もしくは解体。それに私達4人は、そもそも色々と知り過ぎてしまっているから、どうやってもここへ戻って来る事は叶わない。けれどあの子達はこれ以上私達に付き合う必要は無いもの。ここに居れば、まだ安全でしょう?」


提督G「・・・お前ら、死にに行く気か?」


私「99%成功させるつもり。けれど、どうやっても1%位は失敗する可能性があるわ」


提督G「・・・んじゃ、取り敢えずここでお別れか。他の艦娘達は、俺が責任を持って預かるよ。事が成功したら、引き取りに来てくれよ」


私「・・・分かったわ」


そう私は言い残すと、3人を連れて鎮守府Gを後にした・・・。











総長vsオオヨド


ーーーーー


・・・中央本体:軍令部直属艦隊(以下(総))


大淀(総)「総長、偵察機の報告では、敵の戦力は20個艦隊120隻程のようです」


総長「・・・取り敢えず、こちらは24個艦隊か・・・数の上では何とか上回ったな・・・」


大淀(総)「はい、各鎮守府よりかき集めて、何とかなりました」


総長「して、各鎮守府の現状は?」


大淀(総)「はい、敵の攻撃はあるものの、最大でも重巡リ級クラスを旗艦とした部隊で、殆どがそれ以下の規模の為、施設等において多少の破壊もしくは艦娘達の中小破はあるものの、これといって大きな損害はどの鎮守府でも発生しておりません」


総長「・・・つまり、敵の主力は全てこの海域へ集結しているという事か」


大淀(総)「そう考えても、おかしくは無いかと」


総長「ふむ・・・で、大和、そっちの状況はどうだ?」


大和改(総)「はい、全艦集結完了、編成も間もなく終わります」


総長「よろしい。それにしても、流石に敵も半年前のあの戦闘からは、まだ完全には回復していないようだな。恐らく、こちら側の戦力がまだ回復していないのを見越して、再度侵攻してきたといった所か」


大和改(総)「そうかもしれません。しかし、こちらも寄せ集めの艦隊ですので、連携において・・・」


総長「分かっておる。無理矢理艦隊を引き抜いてきたから、各派閥の関係で連携が取れていないのであろう。よってまずは艦隊を3つに分ける。中央を軍令部旗下の12個艦隊を、次にそれぞれ各派閥より集めた12個艦隊を、右翼・左翼に各6個艦隊で分ける。また、中央主力艦隊は、水上打撃連合艦隊x3及び空母機動連合艦隊x3の6連合艦隊に編成。前面に水上打撃連合艦隊を。また、後方に空母機動連合艦隊を配置し、その中央に『大和』『武蔵』を配置せよ」


大和改(総)「はい。因みに両翼はどうなさります?」


総長「後で、色々と難癖を付けられても困るからな。それぞれで対処させろ」


大和改(総)「了解しました」


総長「戦力を多少なりとも分散させてしまうが、目視範囲内で行動するのだから、左程問題はあるまい。それで、敵の陣形は?」


大和改(総)「敵は戦艦ル級及び雷巡チ級を主力とした部隊を複縦陣にて横1列に並べ、その後ろに同じく空母ヲ級と軽空母ヌ級を主力とした部隊を同様に複縦陣で並べております。また、中央に軽巡棲姫が居るようで、その周囲をル級とヲ級にて護衛しているといった感じです」


総長「ふむ・・・その様子だと、敵艦隊は正面はともかく、左右が脆いようだな。では、こちらの中央主力艦隊が交戦、敵を引き付けている間に、両翼の艦隊を突入させて、左右から挟撃せよ」


大和改(総)「了解しました」


総長「(それと、恐らく大丈夫だとは思うが、もし何かあったら、『大和』『武蔵』だけは戻ってこい)」


大和改(総)「はい?」


総長「(他の大型艦はいくらでもあるが、「大和型」だけは軍令部直属のお前達2隻しか存在していない。だから味方を盾にしてでも、戻って来るのだ。良いな)」


大和改(総)「・・・了解しました」


総長「さて、これで問題無いであろうよ」


大淀(総)「総長。それにしても、敵の陣形が不可解ですね」


総長「何、最後には数の勝負となる。それに、こちらの艦隊を3つに分けたと言っても、殆ど距離は離れていない。十分に連携は取れるであろうから、問題無いだろう」


大淀(総)「(・・・それにしても、敵の陣形を見るからに、敵は方陣を取っている? しかし方陣となると、艦隊を柔軟に動かす事が出来なくなってしまう。敵の目的は、何なのでしょう・・・?)」


ーーーーー


・・・右翼:艦政本部長配下(以下(本))


金剛改二(本)「うちの提督からの指令ネ。全艦を水上打撃連合艦隊x2と、空母機動連合艦隊x1の3つに分けるネ」


加賀改(本)「全く、いい加減にして欲しいわね」


金剛改二(本)「デモ、提督からの指示ね。どうしようも無いネ」


霧島改二(本)「お姉さま。しかし、こうもバラバラですと・・・」


金剛改二(本)「分カッテルネ・・・」


瑞鶴改(本)「あー、もう。さっきからうちの提督ったら、他の鎮守府より優位に立ちたいからって、無茶言ってくるし」


加賀改(本)「諦めるのね、五航戦。それは、どこも同じだから」


金剛改二(本)「まぁ、とにかく、現場の状況に合わせて、こっちで何とかするしか無いネ」


加賀改(本)「金剛さん、総指揮は任せましたよ。それと、私達空母機動連合艦隊は後方に配置しますので、壁役、宜しくお願いしますね」


金剛改二(本)「・・・分かったネ。各艦、連合艦隊を編成。中央艦隊」


ーーーーー


・・・左翼:海軍大臣配下(以下(大))


長門改(大)「何とか、私が左翼の総指揮を執ると言う事で、決着が着いたらしい」


陸奥改(大)「・・・そのようね。どうやら、貧乏くじを引いたってところ?」


長門改(大)「かもしれないな。中央本体は殆どが軍令部直属だから、自ずと指揮系統も確立されているだろうが、右翼の方も恐らくそうであろうが、こちらも急遽集められた艦隊だからな。ここでいきなり編成を組めと言われても・・・」


飛龍改(大)「まぁ、そう言わずに。提督達はどうだか知らないけれど、こっちはみんな協力するからさ」


長門改(大)「そうだな。では、こちらも連合艦隊を3個艦隊編成する。構成上、水上打撃連合艦隊x1と、空母機動連合艦隊x2といったところか。中央に私が率いる水上打撃連合艦隊を置き、その後方に空母機動連合艦隊を2つ並べるといったところか。全艦隊、艦隊編成後、第四警戒航行序列へ移行。中央艦隊交戦と同時に、敵艦隊へ突入する」


ーーーーー






オオヨド「(さて、こちらの両脇が甘いのを見て、艦隊を3分割させましたか。これは少し予定外ですが、何とかなりそうですね。但し、こちらの各艦隊の配列をどう見ているか・・・)」


オオヨド「・・・そろそろ戦闘距離ですね。では、予定通り、軽空母ヌ級は全機直掩を。空母ヲ級は全機【敵中央艦隊】へ突入。軽巡ツ級は対空射撃準備!」






ーーーーー


大和改(総)「戦闘距離に入りました。全艦載機は直ちに発進させて下さい」


赤城改(総)「第一次攻撃隊、発艦してください!」


加賀改(総)「ここは譲れません」


蒼龍改二(総)「行くよ!二航戦攻撃隊、発艦はじめ!」


飛龍改二(総)「二航戦!攻撃隊、発艦!」


翔鶴改二(総)「行くわよ!全機、突撃!」


瑞鶴改二(総)「第二次攻撃隊。稼働機、全機発艦!」


大和改(総)「右翼・左翼各艦隊も、順次発艦させて下さ・・・ぇ?」


総長「どうした?」


大和改(総)「敵ヲ級の艦載機、両翼の艦隊を無視して、全機こちらの中央主力艦隊へと向かってきます!」


総長「なっ!」


大和改(総)「防空担当艦、各艦の判断にて、敵艦載機を撃墜しなさい!」


摩耶改二(総)「対空戦かい?よーし、任せろ!あたしの後ろに隠れてな!」


秋月改(総)「この秋月が健在な限り、やらせはしません!」


ーーーーー


金剛改二(本)「アレ? 敵攻撃機は全部中央へ行ってしまいましたネ」


瑞鶴改(本)「どうしよう、こっちは空母の数が少ないから、直掩機多めにしておいたけれど、意味無し?」


加賀改(本)「そうね。しかもこちらの攻撃機が少ない分、敵の直掩機と対空射撃でかなりの損害が出てしまったようね」


瑞鶴改(本)「随分と他人事じゃない」


加賀改(本)「その分、こちらの水上艦艇が無傷よ。それは喜ぶべきではないかしら?」


金剛改二(本)「まぁまぁ、とにかく、次は開幕雷撃ネ。デモ・・・」


加賀改(本)「こっちは、雷巡が少ないですからね。どこも温存していたいらかったようね」


北上改二(本)「みたいだよねぇ。こっちは、うちと大井っちの2人しか居ないなんて、思ってもみなかったよ」


大井改二(本)「でも、北上さんと私が居れば、2人で十分でしょう」


ーーーーー


長門改(大)「何だと? 敵機は全て中央本体へだと?」


蒼龍改(大)「そうみたい。だから、こっちで引き受ける分の攻撃機が落とせなかったよ。しかもあっち、ヌ級とツ級が一杯いて、逆にこっちがかなり落とされちゃった」


陸奥改(大)「アラアラ。中央本体はかなりヤバいんじゃない?」


長門改(大)「まぁ、あちらは対空専門の艦娘も多数居るからな。何とかなるのでは?」


陸奥改(大)「でも、いくら違う鎮守府所属とは言え、同じ艦娘よ。見てて気持ちいい訳無いじゃない」


長門改(大)「仕方が無いであろう。そもそも我らは、深海棲艦と戦う為に存在しているのだ。その戦いにおいて、多少の損害はやむを得ない」


飛龍改(大)「でも、こっちは空母主体だからね。今ので攻撃機が落とされたのは、結構痛いよ」


長門改(大)「そうだ。この後は我々水上打撃連合艦隊で何とかするしかあるまい」


ーーーーー






私「(通信越し)オオヨド、戦闘は開始した?」


オオヨド「はい、先程、航空戦が終了しました」


私「(通信越し)それで、どんな感じ?」


オオヨド「敵に優秀な防空艦がいるようで、それなりの数の艦載機を撃墜させられました。しかし、こちらもヌ級の直掩機及び軽巡ツ級による対空射撃によって、敵艦載機をある程度は撃墜しました。その為、航空戦は拮抗よりやや不利・・・制空権喪失まではいっていないので、双方とも弾着観測射撃は行えないといった所です」


私「(通信越し)ここまでは予想通りね。それでは、予定通り作戦を実行しなさい」


オオヨド「了解です。チ級はル級の脇へ進出。そして、『カ級』は鶴翼で前方へ進出。配置完了後、全艦、開幕雷撃における【魚雷飽和攻撃】開始!」






ーーーーー


北上改二(総)「40門の酸素魚雷は伊達じゃないからねっと」


大井改二(総)「九三式酸素魚雷やっちゃってよ!」


木曽改二(総)「本当の戦闘ってヤツを、教えてやるよ!」


大和改(総)「開幕雷撃行きます! 各艦、魚雷発射・・・え・・・?」



シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー


シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー


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シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー


シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー   シューーーーーー



龍田改(総)「天龍ちゃん、危ない、避けてっ!」


天龍改(総)「なっ、何だありゃ!


武蔵改(総)「しまった! 大和、敵にしてやられたぞっ!」



ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!


ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!


ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!


ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!



うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!


うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!


うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!


うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!  うわぁぁぁぁぁぁぁ!



総長「どうした?」


大和改(総)「(中破)敵艦隊による、開幕雷撃ですっ! しかし、その数が尋常ではありませんっ!」


総長「何だとっ!


大和改(総)「(中破)どうやら、敵に多数の潜水カ級のが居たようです。それらにより、こちらの魚雷がほぼ吸われました。敵本体に届いておりません! しかも、敵側の魚雷が多すぎます! 航跡の数からして、少なくとも60隻以上っ! そしてそれら全てがこちら中央主力艦隊へ。数が多すぎて対応しきれず、中大破多数っ!」


総長「くそっ!」


大和改(総)「更に、両翼の開幕雷撃は、数が少ない為、敵駆逐艦によって阻まれ、大型艦に殆ど効果がありません!」


総長「あいつら、雷巡を出撃させなかったな!」


大和改(総)「(中破)続いて、ル級による砲撃来ますっ! きゃぁぁぁぁぁ!」



ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!


ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!  ドカーンっ!



総長「いかん!」


大和改(総)「(大破)くっ、こんな所で、大和は、沈みません!」


武蔵改(総)「(大破)まだだ・・・まだこの程度で、この武蔵は・・・沈まんぞ!」


総長「両翼の艦隊は、至急敵艦隊へ突入せよ! その隙に中央本体は後退し、艦隊を再編!」


大和改(総)「(大破)間に合いません! 続いて敵艦隊、ル級を前面にしてそのまま中央本体へと突入してきます! どうやら敵の狙いは、ル級による【壁】を作って、こちらを押しつぶそうとしているようです!」


ーーーーー


金剛改二(本)「うわー、何あのカ級の数。ひぃ、ふぅ、みぃ・・・60? 70?」


加賀改(本)「どうやら、90隻以上はいるようね」


瑞鶴改(本)「あいつら、どこに居たのよ?」


金剛改二(本)「恐らく、敵本体の真下ネ。でないと、索敵機に見つかるはず。しかも、こっちは潜水艦を連れて来ていないから、知りようが無かったネ」


加賀改(本)「潜水部隊は練度上げが大変ですからね。どこもまだ前線に出せる艦娘が居なかったのでしょう」


金剛改二(本)「それにしても、流石に中央本体は何とかしているデショ」


加賀改(本)「どうやらそうでも無いみたいね。あの混乱からして、軍令部でもこれだけの潜水部隊は把握していなかったみたいよ」


金剛改二(本)「しかし、中央本体はヒドイ有様ですネ。まぁ、あれだけの魚雷が来てしまったら、どうしようも無いですけれど」


瑞鶴改(本)「どうやら、各第2艦隊では処理しきれなくて、それぞれの第1艦隊にまで被害が出ているようよ。あ、『大和』さんが中破してるじゃん」


金剛改二(本)「・・・見ていられないネ。私たちも突入するね。皆さん、follow me!」


加賀改(本)「・・・待って下さい、金剛さん」


金剛改二(本)「加賀、どうしたネ?」


加賀改(本)「・・・艦政本部長からの指令により、右翼艦隊は、全艦隊帰投せよとの事です」


金剛改二(本)「何ですって?」


加賀改(本)「本作戦のミスは軍令部にあり、私達がそのとばっちりを食らう謂れは無いとの事です」


金剛改二(本)「デモ、味方が攻撃されているデス!」


加賀改(本)「残念ですが、提督の指示です。直ちに帰投します」


金剛改二(本)「・・・人間というのは、分からないネ」


ーーーーー


長門改(大)「・・・陸奥、あれは一体何だ?」


陸奥改(大)「敵のチ級とカ級による開幕雷撃じゃないの?」


長門改(大)「全て、中央本体へと行ったな・・・」


陸奥改(大)「そのようね・・・」


長門改(大)「我々は敵に馬鹿にされているのか?」


陸奥改(大)「違うと思うわよ。あの陣形からして、こちらを包み込むように撃っていたみたいだから。寧ろこうやって分散した結果、私達は運良くあれを食らわなくて済んだって所じゃない?」


長門改(大)「・・・その分、中央本体の被害が尋常では無いようだぞ」


陸奥改(大)「そのようね。でもそれは、総指揮官のミスであって、私達のミスでは無いもの」


長門改(大)「しかし、あれを見過ごす訳には行かん! 全軍、敵艦隊へ突撃せ・・・!?」


陸奥改(大)「長門、どうしたの?」


長門改(大)「・・・提督からの指示だ。海軍大臣からの指示で、直ちに撤退せよとの事だ・・・」


陸奥改(大)「どういう事?」


長門改(大)「どうもこうも、中央本体の被害からして、これから戦闘に入っても勝ち目が無い。よって、軍を再編する為に、全艦帰還せよとの事だ・・・」


飛龍改(大)「やれやれ、私達は何でここに来たんだろう・・・」


長門改(大)「仕方があるまい・・・提督からの指示には逆らえん。各艦、艦隊を編成し、それぞれの鎮守府へ直ちに帰還せよ」


ーーーーー


総長「くっ、右翼も左翼も後退しただと? あいつら、こっちの被害から、さっさと逃げ出したな! しかもこの様子では、前線での立て直しは無理だな。仕方が無い、全軍、直ちに撤退せよ! 特に『大和』『武蔵』は、最大船速で海域を離脱! 他の艦はそれを援護せよ!」


大和改(総)「(大破)・・・了解しました!」


総長「・・・どうやら、敵にしてやられた様だな・・・しかしあの姫級、この様な戦術を用いてくるとは・・・或いは、奴の背後に何かあるのか・・・?」


大淀(総)「・・・・敵は相当の智者のようですね」


総長「うむ、しかも儂とした事が、迂闊にも敵潜水艦の存在を完全に失念しておった・・・」


大淀(総)「しかし、このままでは士気が・・・」


総長「うむ・・・どこかで、これを挽回する必要があるな・・・」


ーーーーー





オオヨド「(ル級によってまず【壁】を作り、その壁の下にカ級を隠蔽。そしてその壁の隙間と水中から、チ級とカ級によって奴らが対処不可能な数の魚雷を発射し、かつカ級によって敵先制魚雷を無力化。そして敵が混乱している所へ、砲撃を混ぜつつその壁を押し出す事によって、敵を圧壊する。私が秘書艦をやっていた頃なら、こちらの陣形と戦力を見て多少は推測出来たでしょうに。どうやら、総長も耄碌したようですね。もしくは、今の秘書艦であろう『大淀』が無能なのかも?)」


私「(通信越し)・・・そっちはどんな感じ?」


オオヨド「殆ど予定通りです。水上艦だけ見れば、こちらが20個艦隊に対し、敵は24個艦隊ですから、どうやら数の有利を疑わなかったようです。こちらの潜水16個艦隊96隻による不意打ちは、ほぼ成功の模様。しかし、敵は中途半端に艦隊を3分割したため、敵の半分である中央にいた敵主力の12個艦隊をほぼ粉砕した程度に留まっております。これより、残存艦隊の掃討に移ります」


私「(通信越し)・・・余り無理しなくていいからね。それに、再編の時に困るから、ある程度は残しておきなさい」


オオヨド「了解しました」


私「(通信越し)敵より多くの戦力を揃える。そんなの常識なのに、総長は完全に敵を舐めていたようね」


オオヨド「その様です。もしくは、現在の秘書艦が無能なのか・・・」


私「(通信越し)まぁ、そこまでにしましょう。それから、あっちが撤退したら、貴女を中心として艦隊を輪形陣へと再編し、その後、ゆっくりと軍令部へと向かってきなさい。急ぐ必要は無いからね」


オオヨド「了解しました」


私「(通信越し)それじゃぁ、こっちも行動に移るから、少しの間、通信が切れるわよ。それと、何かあったら、貴女の判断にて撤退しても構わないから。最悪、他の深海棲艦は置き去りしても構わないわ」


オオヨド「了解しました」(苦笑)




私「・・・さて、それでは、仕上げと行きますか・・・」











軍令部


・・・総長執務室


総長「・・・ふぅ、大淀、取り敢えず艦隊はどうなった?」


総長は、自分の椅子に深く座りなおすと、大淀にそう聞いてきた。


大淀「はい、我が軍は戦闘海域から無事に離脱。敵艦隊も再編しているらしく、追撃は無いとの事です」


総長「では、艦隊帰還後、高速修復材を使用して艦隊を再編。敵の襲撃に備えるぞ」


大淀「了解しました」


総長「・・・しかし、奴らめ。こちらを無視して、独断で戦線離脱とは、軍法会議ものだぞ・・・」



パーンっ  パーンっ  パーンっ


何事だっ!  うわぁ


パーンっ  パーンっ  パーンっ



総長「ん? 何事だ?」


廊下から聞こえてくる不可解な音を、総長は耳にした。


総長「大淀、見てこい」


大淀「分かりました」


そうやって、大淀が執務室を出てそう間もなく、


キャーっ!  ドサっ!


と、大淀の悲鳴と、何かが倒れる?音がしてきた。


総長「・・・? 何だ?」


廊下から聞こえてくる不可解な音に、総長は椅子から立ち上がった所、いきなり、バンっと観音開きの執務室の扉が開いた。


???「軍令部総長だな? 貴官には「【艦娘】を私的利用し、国家転覆を図る」【国家反逆罪】の嫌疑がかけられた。よって、ここで逮捕する。因みに令状はこれだ」


帽子を目深に被り、俯き加減のその将校は、部屋に入った途端、総長にそう告げつつ、左手で1枚の紙を突きつけた。


総長「何だと? 儂がそのような事をするはずが無いではないか。そもそも何故【陸軍少将】が儂を逮捕しよう等と! 儂は【軍令部総長】、将官とは言え、所詮はたかが1少将。貴様のような存在が気安く声を掛ける事が出来る人間では無い!」


???「・・・そうかな?」


入ってきた将校はそう言うと、俯いていた顔を上げ、被っていた帽子を脱ぎ捨てた。そして頭を軽く左右に振ると、帽子の中に納まっていた長い黒髪が、背中へと垂れた。


総長「き、貴様・・・『信濃』かっ! しかもその制服と徽章は【陸軍】の物では無いか! 貴様、海軍を売ったのか!?」


私「・・・どう取るかは、貴方の自由だ」


総長「くっ、貴様! また儂の邪魔をするのかっ! ならば死ねっ!」


総長はそう叫ぶと、執務机から拳銃を取り出し、私の胸を撃った。そしてその衝撃で、私は仰向けに倒れた。


それを見た総長は、執務机から入り口側へと回り込み、更に拳銃を撃とうとした。


しかし・・・



パーンっ!  パーンっ!  パーンっ!



ぐわっ! うがっ! ガシャーン!



と、何時の間にか右手に握られていた私の拳銃が3発撃たれた。


1発目は、拳銃を持っていた総長の右手。


2発目は、向かって来た総長の左内腿。


3発目は、執務机の上の電話。


そして、私は素早く起き上がると、撃たれた衝撃で手から離れた総長の拳銃を手に取った。これで総長は私を撃つことが出来ない。


それから、腿を撃たれ、床に倒れて動けないでいる総長を横目にしつつ、執務机を開けて予備の拳銃が無いかを調べた。私の予想通り、予備の拳銃と弾倉が見つかったので、私はそれを取り出すと、将校用の上着で隠してあった右脇のホルスターにそれを収めた。


そして、


私「明石、夕張。こっちの声、盗聴器から聞こえる?」


私は持っていた小型の無線機で2人に聞いてみた。


2人「提督、大丈夫です。先ほどまでは聞こえていましたけれど、最後に銃弾を聞いた所で聞こえなくなりました」


私「了解。それじゃぁ、引き続き軍令部内の調査、宜しく」


と、私が無線機越しに明石、夕張と話していたら、撃たれて床に倒れていた総長が私に怒鳴ってきた。


総長「き、貴様、な、何故動ける! 弾は正確に胸を撃ちぬいたはずなのに・・・」


私「残念ね、貴方の射撃の腕が、却って不運を招いたって所かしら」


私はそう言うと、将校用の上着を開いた。そこには2発の銃弾痕があった。


私「これはね。陸軍特殊部隊用のボディーアーマー。それも、対フルメタルジャケット弾仕様のね。だから、AP弾とか対人スチール・コア弾とかの様に、特殊な弾頭で無ければ貫けない訳」


そう言いつつ、総長の拳銃から弾倉を抜いて、銃弾を見てみた。


私「やっぱりね。この銃弾も、対艦娘用の【ダムダム弾】じゃないの。ホローポイント弾って、国際法上、使用禁止じゃなかったっけ?」


総長「くっ、貴様ら【艦娘】は、所詮は道具だ。そのような法など関係無いわい」


撃たれた手と腿の痛みに苦しみつつ、総長はそう答えた。


私「まぁ、あんたからすればそうよね。でも、こっちはたまった物では無いわ」


総長「な、何を偉そうに・・・そ、そうだ、お、大淀! そこに居ないのかっ!」


私「残念、貴方の大淀さんは、そこで頭を強く打たれて気絶しています。暫くは目を覚まさないでしょう」


総長「き、貴様っ・・・!」


総長は歯ぎしりをしつつ、私を睨みつけたが、そのような物に動じる私では無い。


私「それにしても、この弾薬がフルメタルジャケットだったら、もしかすると私は死んでいたかもなのにねぇ。ホローポイント弾じゃぁ、このボディーアーマーは貫けないのよねぇ」


私はニヤニヤと笑みを浮かべつつ、総長を見下した。総長は悔しがったが、当然、何もすることが出来ない。


私「さて、そろそろ本題に入りましょうか。あんた、これをきちんと見た?」


と、私は改めて令状を総長に見せた?


訝しげに総長を令状を見直すと、驚愕で目を見開いた。


私「やっと分かった? これは【陛下】のサインが入った【勅令】なの。それに対して、あんたは逆らった。それだけじゃない、逮捕しに来た人間を撃った。撃った相手がボディーアーマーを着ていなかったら、そいつは死んでいた」


驚きで言葉も出ない総長に対して、私は話を続けた。


私「つまり、あんたは大人しく逮捕されていれば、容儀が晴れていたかもしれない。けれど、抵抗したという事は、自身で罪を認めたって事になるわよね?」


そして恐怖に顔を歪めた総長に、止めの一言を告げた。


私「そして、相手を撃ったという事は、やむを得ず射殺するしかないという口実を、相手・・・つまり私・・・に与えたと。あんたは、【国家反逆罪】により処刑。しかもその処刑サインを自ら印したって事よ。そうそう、ここに2発の弾痕があるでしょう? 1つはね、さっき工廠地下で、艦政本部長があんたと同じように私を撃った痕よ。なので、その場で射殺したから。まぁ、あんた程憎んでいた訳では無いから、眉間に1発。即死で済ませてあげたわ。因みに罪状も一緒よ」


私はそう言うと、今度は悪魔の笑みを浮かべ、更に話を続けた。


私「それだけじゃないわ。海軍のトップがそのような事件を起こしたとなれば、海軍はどうなるのでしょうね? 総長と艦政本部長が【国家反逆罪】により死刑となれば、海軍大臣もその責任を負って罷免。しかも、陸軍には海軍を潰す都合の良い口実が出来上がると」


そして、一息つくと、止めの一言を話した。


私「つまり、あんたは【国家反逆罪】という最も不名誉な罪状で死刑。しかもその為に、海軍を独立させておくのは危険という事で、大本営参謀本部の下に『海軍局』という形で編入される事になる訳。但し、そこへいきなり陸軍の人間をトップに据えると、海軍の連中が抵抗するだろうから、一応お飾りとして【私】が【少将海軍局長】としてあんたの代わりに海軍のトップとなるの。今まで散々苦労して陸軍と対等の地位を貫いてきたのに、ここで陸軍の傘下に入るのだから、今までの努力が水泡に帰したわね」


クックックと笑う私に、床に倒れていた総長は、悔しさと悲しさを混ぜたような顔をしつつ見上げるしか無かった。


私「この結果、陸軍は今まで煩わしかった海軍を傘下に収める事が出来、海軍は【元・総長の秘蔵っ子】である私がトップになるという事で、多少は諦めがつく。しかもそのトップが、あんたたちが【道具】と見なしていた【艦娘】なんだから、これ以上の皮肉って無いわよね。しかもそれを知っているのは、あんたと『艦政本部長』、それと『大和』『武蔵』、あぁ、あと鎮守府Gの連中か。そして『艦政本部長』はさっきぶっ殺してきたから、あんたを殺せばこの中央で私が【艦娘】である人間は誰も居なくなる。『大和』『武蔵』は海軍局長の権限でどうにでもなる。鎮守府Gも、何らかの方法なりで解体すれば、これで完璧。さて、お話もこれまでにしましょう。最後に、この「艦娘射殺用銃弾」でも味わいつつ死になさい」






私はそう言うと、総長の持っていた拳銃を向け、銃を3発撃った。





パーンっ!  パーンっ!  パーンっ!



1発目は、総長の腹部。


2発目は、総長の胸部。


3発目は、総長の眉間。





艦娘を射殺する為の弾丸である。人間なら抵抗出来るはずも無い。しかも私のようにボディーアーマーを着ている訳では無いから、尚更である。総長は、絶望の表情を浮かべつつ、呆気なく死んでいった。







大淀「そ、総長? な、何で? 何があったの?」


と私が立ち尽くしている所へ、気絶から回復した大淀が部屋へと入ってきた。


大淀「なっ! 貴女は何者です? 何があったのです? 何故この様な事が?」


そう捲し立てる大淀に、私は2つの書類を見せた。


1つは、先程総長に見せた【逮捕令状】。そしてもう1つは・・・


大淀「【海軍局長任命状】?」


私「そう、『軍令部総長』及び『艦政本部長』に【国家反逆罪】の嫌疑が掛けられ・・・」


大淀「そんな、総長がそのような事をするはずは・・・」


私「そう、だから【逮捕】に来ただけ。けれど2人とも銃でもって抵抗したので、やむを得ず射殺した。私のボディーアーマーに2発の弾痕があるでしょう? これがその証拠。因みに、2人の銃も取り上げたから、その弾薬を調べれば私が言っている事が正しいと証明されるわ」


大淀「・・・陸軍の方のようですけれど、貴女は何者なのです?」


大淀は私にそう聞いてきたので、私の人間としての名前を告げた。


大淀「あぁ、貴女が。貴女のお話は伺っております。海軍士官学校を首席で卒業された【総長の秘蔵っ子】であると。しかし、何故貴女が陸軍に?」


私「・・・他には?」


大淀「他ですか・・・? 他に何か・・・はっ、もしかして、貴女が『信濃』?」


私「(ふむ・・・やはり私の正体を知っていたか・・・)」


私「そういう事。けれど、だから何? これからは【私】が新しい海軍のトップとなるのには変わらない。お分かりかしら?」


大淀「・・・それにしても、海軍であるはずの貴女が陸軍とは・・・随分と話が出来過ぎているようですが・・・」


私「(流石は大淀ね。でも残念、私の方が1枚上手だった・・・)」


私「そう? でも既にこの様な結果となったの。こうなってしまった以上、今更どうしようも無いわね」


大淀「・・・そうですね。少なくとも、貴女がこれを仕組んだのは分かりました。そして今のところは成功しつつある・・・」


私「それで? 気に入らない? なら、局長命令により【解体】しても構わないけれど」


と【解体】の一言を聞いてか、大淀は黙り込んだ。


私「その沈黙は、この状況を了承したという事でいいわね?」


大淀「・・・はい、分かりました」


私「結構。さてと、大淀は取り敢えずそのままで」


そう私は言うと、無線機越しに2人を呼び出した。


私「明石、夕張、そっちはどう?」


2人「今、『元・艦政本部長』を火葬場に放り込んだところです」


私「それじゃぁ、すぐこっちに来て」


2人「了解です。そっちと言う事は『元・総長』ですね?」


私「そういう事」


2人「了解です」



・・・


暫くして、死体運搬用の袋を持った明石と夕張が、執務室へとやってきた。


その頃には、大淀も諦めが付いたのか、本来の自分の業務を行いつつあった。


明石「うわぁ、またこれは酷い有様ですな」


夕張「提督、まさか、あの【艦娘用銃弾】を使用したのですか?」


私「うん」


夕張「流石にこれは酷い。提督達には、これが支給されていたんですね」


私「そのようね。尤も、私にはくれなかったけれど」


明石「提督の事を考えたら、あの総長は絶対に渡さないでしょう」


私「まぁ、そういう訳で、この死体を片付けて頂戴」


夕張「へいへい。それにしても相変わらず、人使いの荒い事で」


私「こればかりは他に頼めないからね」


明石「で、提督。この死体も、焼却炉で焼いて、骨は砕いて裏山へ樹木斎って所ですか?」


私「それでお願い」


大淀「・・・提督、いえ、局長。お2方はどうなるとの事なのです?」


私「ん? ここには、普通の人間用の火葬場があるでしょ、戦死者用の。だからそこで死体を焼いて、骨は完全に砕いて粉にして、裏山の適当な樹の根元に穴を掘って、そこに砕いた骨を埋めてお終い」


大淀「貴女は、そこまでも総長が憎かったのですが・・・」


私「私をモルモットにした相手を憎まなくて、どうするの・・・?」


そうやって私が大淀と話をしている間に、明石と夕張は手早く死体を片付け、部屋の外へと持ち出していた。


そして、少し間を置いて、『大和』『武蔵』が執務室へと入ってきた・・・。











終わらない復讐劇


大和「!? 何? これはどういう事?」


執務室に入ってすぐに、床に飛び散っていた総長の血溜まりを見て、大和はそう叫んだ。


そして大和が次に見たのは、執務机の反対側、総長が座っているはずの椅子に座っている私だった。


大和「・・・もしかして『信濃』?」


武蔵「いや待て、深海棲艦となった『信濃』を沈めたのは、我々では無かったか!」


私「2人とも、その通りよ」


大和「・・・それで、総長はどうしたの? それに貴女の軍服、それは陸軍の物じゃないの?」


私「・・・大淀、説明してあげなさい」


大和の質問に対し、私は大淀にそう言って話させた。


大淀「総長及び艦政本部長は、【国家反逆罪】の嫌疑をかけられ、逮捕に抵抗したため射殺。またそれにより海軍大臣は罷免・・・」


武蔵「馬鹿な! 総長がそのような事を企てるはずが無い!」


私「そうかもしれない。けれど、少なくとも【艦娘】をモルモットにして、自由に使えるようにしようとしていたのは、確かよ」


私はそう言うと、あの録音データを聞かせた。


大和「まさか・・・そんな・・・」


武蔵「何だと・・・」


大淀「そんな・・・では私は・・・」


それを聞いた3人とも、流石に絶句するしか無かったようだ。


私「大淀、因みに貴女は、恐らくこのデータにあるシリンダーの中に居た方でしょう。ま、そういう事よ。総長達は工廠地下で、【艦娘】に様々な実験を行なっていたのが、これで分かった? それとも、実際に施設を見てみる? もっとも、設備は全て破壊されているでしょうけれどね」


その時、ズーンっ! という音と共に、ちょっとした揺れが部屋を襲った。しかしそれも一瞬の事だった。


大和「・・・今のは何? いえそれよりも、信濃、それはどういう事?」


私「・・・私が着ているこの軍服が示す通り、この件は陸軍が関係している訳。で、陸軍の目的は2つ。1つは海軍を組み込む事。もう1つは、【艦娘】の秘密を入手する事。そこで私は、陸軍の思惑に乗ったという訳」


大淀「そんな・・・」


私「そして私が自ら乗り込む事によって、総長ら2人とも私を銃で撃って、やむを得ず射殺せざるを得なかったという正当防衛を主張する理由を作ってくれたのよね」


3人「・・・」


私「さて、ところが肝心の海軍の方も【艦娘】についての詳しい情報を持っていなかった。そこで、建造した艦娘を保管し、都度、様々な実験を行っていたと。そして私は「記憶・感情・知識」についての実験対象となったと・・・」


武蔵「では、貴様は・・・」


私「私は、実験によって人間としての知識・感情等が・・・恐らく薬物によって・・・植え付けられ、艦娘としての記憶なんかが希薄になってしまった。そして深海棲艦となり、艦娘となり、けれど考え方は人間のそれ。結局最後に残ったのは、人間に対する憎悪に憑りつかれた「何か」って事」


大和「でもそれでは・・・」


私「そう、私の憎悪は、全ての人間が居なくなって、初めて消え去る。けれど、その先は? 憎悪から解放されたら? その後はどうなるの? その憎悪があるからこそ、私は存在し得るのに・・・。 そこで私は考えました」


大淀「・・・まさか・・・」


私「この戦い・・・深海棲艦との戦い・・・を、永遠に終わらせない事。戦いが終わらない限り、【艦娘】は必要とされるから。そして憎悪の対象である人間が居なくなる事も無いから」


武蔵「貴様、そんな事は絶対にさせない! いずれこの戦いは終わらせて見せる!」


私「その根拠は?」


武蔵「何だと?」


私「1つの泊地を潰しても、また別の泊地が作られる。深海棲艦との戦いは、いたちごっこなのよ」


武蔵「くっ!」


私「それに、その戦いそのものを操作出来るとしたら?」


大和「・・・え?」


私「更にそれを利用して、私は陸軍をも掌握するつもり。そうすれば、陸海関係無く、軍内部で私に逆らえる存在は居なくなる」


武蔵「そんな事、出来るはずが無い。それにもし失敗したら・・・」


私「失敗したら?」


武蔵「・・・何だと?」


私「あぁ、何てこと・・・深海棲艦によって大本営が攻撃され、幹部以下全員死亡・・・そっちの方が、手っ取り早いかもね」


と、そこまで話した私は、持っている無線機に話しかけた。


私「明石、夕張。そっちの方はどう?」


明石「はい、施設にあったデータは全て回収しましたよ。それと、サーバのデータは全て消去しました」


夕張「シリンダー内にいた娘は、全員解放して、医務室に連れて行った」


私「・・・連中は?」


明石「あぁ、何と言う事でしょう。施設に来た陸軍の人たちは、艦政本部長によって仕掛けられたタイマーによる施設の爆発に巻き込まれ、全員お亡くなりに」


私「さっきの音と揺れがそれね。因みに、生き残りは居ないでしょうね?」


明石「夕張と2人で全員死んでいるのを確認しましたから。まぁ、死んでいなかった奴には、改めて死んで貰いましたし」


私「了解。では明石は夕張と交代して。そして夕張は瑞鶴と一緒に、鎮守府Gの皆を迎えに行ってあげて」


そして、無線機を切ると、私は改めて執務室に居る3人を見た。


私「さて、話はこんなところでいいでしょう。それで、貴女達はどうする? 形式とは言え陸軍将校である私の指揮下に入る? ここは参謀本部海軍局の本部となるけれど、同時に鎮守府の1つにもなるから、私はここの提督でもあるけれどね」


大淀「・・・因みに、どう変わるのでしょう?」


私「ん? まぁ、組織の名称が変わるのと、くそ爺の後釜に私がなるって位かな。それ以外は、実質的には何も変わらないわよ」


大淀「・・・では私は、信濃さん、いえ、『局長』の指揮下に入ります」


大和「大淀さん・・・」


大淀「私は、この鎮守府に所属する【艦娘】ですから、当然ではないかと・・・」


武蔵「・・・気に入らん・・・」


私「そう・・・なら【解体】するだけの事ね」


武蔵「なっ! 【大和型】である我らを【解体】するだと?」


私「そうよ。私の邪魔になりそうな物は、全て排除するだけ。大和も武蔵も、「大和型」ってだけで優遇されていたかもしれないけれど、私にはそんなの関係無いから。今、貴女達に残された選択肢は2つよ」


大和「1つは、今まで通りここの艦娘として戦うってことね。ならもう1つは?」


私「・・・海で沈んで、【深海棲艦】となる事。過去の事例からして、2人なら最初から姫級となる可能性もあるわね」


武蔵「・・・しかしこの大和型、簡単には沈まんぞ」


私「・・・その大破状態で?」


武蔵「・・・何だと?」


私「なら、その状態で沖に出なさい」


と、私は武蔵にそう言うと、無線機を切って「中空」に向かって話しかけた。






私「オオヨド、予定変更よ。これから貴女は、潜水部隊を解散させたら、今手元にある全艦隊を率いて、鎮守府Gへと向かいなさい」


オオヨド「(あの鎮守府は放置しておくのでは無かったのですか?)」


私「予定が変わった。あの連中は、私の正体を知っているわ。だから今の内に消しておく必要が出来たの」


オオヨド「(それで、どうされます?)」


私「うちの由良以下、前々からのメンバーが鎮守府から離脱後、貴女は全艦隊でもって鎮守府Gを総攻撃。1人残らず消し去りなさい」





そうして、私は一旦眼を瞑ると、改めて眼を開いた。





そこには、輝くブルーの瞳があった・・・。






私の復讐劇は、次のステップへと踏み出した。




しかし、私の復讐はまだ終わらない・・・恐らく、自らが朽ち果てるまで終わらないであろう・・・。











そして・・・


そうやって、執務室にて大和と武蔵が逡巡している所へ、艤装を展開したままの瑞鶴が入って来た。


瑞鶴改二甲「提督さん、由良達を迎えに行ってくるって本当なの?」


私「そう命令したじゃないの」


瑞鶴改二甲「あ~あ、またやっちゃったか」


と、瑞鶴はニヤニヤ顔になって、私を見つめた。


私「どういう事よ?」


瑞鶴改二甲「ううん、またやらかしたんじゃないかなぁって」


私「何それ?」


瑞鶴改二甲「気が付いていない? 提督さんってさ、昔っから深海棲艦だろうが艦娘だろうが、みんな全てを捨て駒扱いにしていたけれど、【身内】に対しては、とことん甘いよね」


その瑞鶴の言葉に、私が首をかしげて訝しげていると、それまで傍観していた大和が話に入って来た。


大和改「瑞鶴さん、それはどういう意味なのでしょう? それに、昔って?」


瑞鶴改二甲「大和さん、私の中で一番強く継承された記憶って、【五航戦】でも【一航戦】なく、【装甲空母姫】、つまり『深海棲艦』の頃の記憶なんだよね、提督が『戦艦棲姫改』の頃に一緒にいた頃の事よ」


大和改「・・・まさか、あの時沈めた『装甲空母姫』って・・・」


瑞鶴改二甲「そういう事。でね、提督ったら、他の深海棲艦は徹底的に捨て駒にして扱っていたんだけれど、私だけは常に自分の傍に置いてそうしなかったんだよね」


大和改「・・・だから今でも提督に? それに、それなら貴女を沈めた私達を恨んでいるのでは?」


瑞鶴改二甲「え? 大和さんや武蔵さんには、特にそうは思っていないわよ。だって、【深海棲艦】としての私を沈める事で、あの【深海】の頚木から私を引き上げてくれたんだもの。自分を沈めたという事には、プライド的に多少は思う所はあるけれどさ、こうして【艦娘】として生まれ変われたんだから、感謝の気持ちの方が、圧倒的に大きいわよ」


この瑞鶴の話に、大和も武蔵も理解出来ていないらしい。


武蔵改「瑞鶴、それはどういう意味だ?」