2018-07-18 19:49:47 更新

概要

深海棲艦との戦の後に一人の男が浮かんできた
それは過去より舞い戻った帝国海軍軍人だった

「我・・・艦娘と共にいざゆかん!」 第二章 覚醒 
第四幕 【 2-4 我ヲ狙フ者 】 更新


前書き

前章 我・・・艦娘と共にいざゆかん! 第一章 出現
http://sstokosokuho.com/work/edit/13504

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本作品には実在した人物と同姓同名、全く同じ年表で同じ役職で登場いたしますが
あくまでもオリキャラです
その人物を卑下したり批評するつもりは毛頭ございません
その実在した方の人物像についても一切存じませんので悪しからず

また、こちらでの投稿は初となりますので
修正等多々あると思いますのでご了承下さいませ


【 2-1 我ハ解ヲ知ラント欲ッス 】



窓から朝日が差し込み目を覚ますと見慣れぬ天井と点滴が目に入った、その点滴の管を目で追うと自分の右腕に伸びており、その向こうには昨日から看病していてくれたのか?  銀髪の少女が椅子に座り静かな寝息をたてていた


(この娘はたしか・・・  そうだ駆逐艦の叢雲だと名乗っていたな この娘が駆逐艦? 何の事やら理解出来ん それにこの右胸の上で左掌の下に潜り込むように寝ている小人が妖精だと? 昨日朧気ながらこいつ等が動いているのを見ていなければ人形としか思えんとこだな )


妖精を起こさないようにほんの少しだけ指を動かし存在を確かめようとした


(ん! 何だこれは)

自分が動かしたつもりの後に、少し遅れてその指がピクリとだけ動く

(変だ、 まだ意識と感覚が狂っているのか?)

2度3度と繰り返すが同じ事が起こる


この変な感覚を確かめる為に、今度は握る動作を何度か繰り返してみると、 今度は柔らかくそしてそして湿り気のあるような感触が伝わってきた


「いや~~~ん」  (えっ!)


声のした左へ顔を向けると、そこには寝ぼけ眼の少女が俺に抱きついており、その手は少女の肩から生えていた


「もう~ 漣はご主人様の物ですから構いませんけど、  その~ 時と場所を選ぶって言うか、 寝てる時に突然女の子の部分を触るのは止めて下さい♡」ポッ


慌てて起き上がろうとしたが力が入らないのか?それとも少女にしては抱きしめる力が強かったのか?身動ぎする程度しか動けない、 それに何故か足も重く感じられ、こちらも動かす事が・・・・


(あれ?)

「あっ おはようございます」時計をチラ見

「でも起床時間にはまだありますよ菅艦長」


(あぁっ? この足下で丸まって寝ていた振り分けお下げの娘は誰だ?)


「よいしょっと  起きられたのなら点滴を替えますね」

ベッドから降り奥の方へ移動する娘の後ろ姿を見て


(あの娘もそうだが、ここの連中はなんてハレンチな格好してんだ・・・眼福だけど・・)


話し声に目を覚ました叢雲は大きく伸びをしながら

「ふわぁ~~  あら、あなた起きてたのね、  なら白湯を持ってきてあげるわ」


椅子から立上りざまにこちらを指さし

「それと漣、 抱きついてないでいい加減ベッドから降りなさい」

「い~~~だっ そんな事言って本当は叢雲も抱きつきたいんでしょ! この場所は譲れねぇ~です」

と更に強く抱きしめる漣を見て  やれやれ、と言った仕草のあとヤカンを持ち医務室を出る叢雲だった


「いやいやちょっと待ってくれ、 君は漣と言ったな」

「はいご主人様 ♡」ギュッ

「君には、いや他の者にも聞きたい事が山ほどあるんだが、 まずご主人様とは何の事かね?それと君は何で俺に抱きついてくるんだ? いくら小さい子とはいえ婦女子が軽々しくする行為では無いと思うのだが」

「漣は子供じゃありません!」プンスカ


「それにこれはお礼と言うか、お返しですぞ」と顔を近づける

「おっ、お返しぃ?」

「はい、 だってご主人様はあの最後の時に漣がくらった魚雷で弾薬庫が誘爆した後、みんなを艦橋から退去させてから戻ってきてくれて、羅針盤にギュ~~~~って抱きついて漣と一緒に逝ってくれたじゃないですか、 そのお礼です」ポッ ホホソメ

「え~~~っ なななな何でそんな事を知ってるんだ!」


やや仰け反りながらも、漣の顔をマジマジと見つめる菅


「漣だからです、 あたしが綾波型駆逐艦の漣だからなんです、  大事な事だから二度言いました」

指を二本立てながら、満面の笑みで答える漣だった


混乱した頭を振っていると先程の娘が戻ってきて点滴を差し替えながら

「あら そんな事があったんですか、 漣さんがうらやましいわ」

「ふっふーん、いいっしょいいっしょ」

得意げな顔を菅の左胸にスリスリさせる漣


「いやいや良くないから、離れてくれないか、 それと君は・・・誰っ  かな?」

その娘はあからさまに不機嫌な顔をし

「昨日も自己紹介しましたよ、  天津風ですよ、ア・マ・ツ・カ・ゼ! 三度目を言いましょうか?」

「あ~すまんすまん、 まだあまり意識と記憶がハッキリしてなくてな、  ところでアマツカゼって俺が乗る予定だった天津風・・・なの?」


くるりと体を半回転させ、腰に手を当て自慢げに

「そうよ、次世代型駆逐艦のプロトタイプ、あたしが天津風  艦長これから宜しくお願いしますね」ペコリ

まるで映画スターのお披露目であるかのような見事なお辞儀を披露する天津風


「駄目~~~っ、ご主人様は漣のなの! シッシッ」

手を前後に振りあっちいけをする漣


そこへ叢雲が湯飲みを持って帰ってきた

「あら、随分と賑やかね、 起床時間まで30分はあるのよ、それに菅さんはまだ体調が良くないんだから少しは静かにしたらどうなの?    さぁ漣は少し離れなさい、 それじゃ起きられないし右腕に点滴が刺さってるんだから飲めないでしょ」

しぶしぶ離れるが菅が湯飲みを受け取るとまた直ぐに抱きつく漣、たじろぐ菅


「もういい加減にしなさい!」キッと睨む

「だって提督と大淀さんが目を離すなって言ってたじゃないっすか」頬を膨らます漣

「目を離すなって言うのは色々と嫌疑が掛けられてるからで監視しろって事でしょ、抱きつく必要なんて・・・ 提督?あんた何時からあいつの事を提督って呼ぶようになったの?」

「だってあたしのご主人様はこの人しか居ないんだも~~~ん」オカオスリスリ

「まぁ・・・  あきれたもんね」


密着している漣の胸部装甲に影響が出ないようそっと左手を挙げ

「あの~  嫌疑って言うのは? ひょっとして艦を沈めながらも無様におめおめと生きて帰った臆病者だから・・・」


「「「それは違うわ(ますよ)(ますぞ)」」」


「菅艦長は立派に戦って名誉の戦死を遂げられたんです、  もし臆病者なんて言う奴が居たら・・ あたし達が海の藻屑にしてあげるわ!」

握り閉めた拳を振るわせながら掲げる天津風


「えっ?戦死?」


(名誉の戦死って、  あれ?そう言えばさっき漣が一緒に行ってとか・・・逝って?   ここはあの世?・・・  えっ、何?何なの?俺は今どうなってんの?  分からない事だらけだ! 頼む、誰か教えてくれ~~~~)ムンクノサケビー


世の中が暗転したかのように思われたその時



[ オイラが教えてやろっか? ]


「えっ?」眼前の3人を見直す菅


[ オイラが教えてやるってんだよ ]


「誰? 今の誰?」


「酷~~~い! さっき天津風って三回も言ったじゃないですか」プンスカ

立てた3本の指を顔に突きつけんばかりに迫る天津風


「ごめんごめん、 そうじゃなくて今誰かが教えてくれるって [ オイラだよ~  ほらこっち見ろや ]グイッ」


耳を引っ張られ、顔を向た右肩の上には、ウインクしながらサムズアップしている妖精が居た








[ お前さんはオイラの言葉が理解出来てんだろ? ]





【 2-2 我ヲ導キシ者 】



ベッドの上で車座になって話し込んでいる妖精達と菅


「菅艦長がお話しされているのは何処の言葉で、妖精さん達と何を話してるんですかね?」

「さぁ? ご主人様って確か満州の奉天出身だから中国語?」

「あたしは満州国皇帝だった溥儀さんが来日する時、比叡さん達と送迎したから多少は知ってるんだけど、 これは中国語では無い感じがするわね」

菅と妖精達が話しているのをただ見ているしか出来ない3人だった



[ まあお前さんの置かれている現状とか、コイツ等の事とか鎮守府が何なのかって説明はざっとこんなとこだが・・・  ところでお前さん、気が付いてるか? ]

[ えっ、何を? ]

[ あのよ~、 お前さんは今まで一度でもあの戦争はどうなった~?とか、 他の乗組員の安否を誰かに尋ねたかい?   それって帝国軍人として、また艦長としても有り得ねぇ事だとは思わねぇか ]

[ えっ、 だってそんな事は・・・     (あれ?自分の置かれた状況すら分からなかったのに何で知ってるんだ?) ]

首を傾げる菅


[ だろ~っ、 いいかい、お前さんはオイラ達が今までくだくだと説明した事なんざ本当は全て知ってんだよ、 ただ記憶を少し弄られて必要の無い、そして知ってちゃ今後の行動に影響が出る部分だけを一時的に消されてるって寸法さ ]

[ それってどういう・・・ ]

 

他の妖精が話していた妖精の袖を引っ張り何やら耳打ちをしている

そして両掌を急に前に突きだした妖精


[ おっと、こっから先の事はオイラにも言えねぇっ  てか分からねぇ事もあるんでな  まあお前さんが困ったらオイラ達が何時でも相談に乗るし、大概の事なら教えてやら~な   それとな、もう一丁あんだよ ]

顎で周りを差す妖精


[ ほれ、  この三人がさっきからボケ面さらしてオイラ達を見てやがんだろ、  しかもてめぇの事が話題に上ってもそ知らん顔して話しに入るどころか肯きすらしやしねぇ ]

三人を見る菅

[ あぁ  そう言えばそうだったな・・・ ]


[ それは今オイラ達が話してんのは日本語どころか人間の言葉ですらねぇから、聞いててもからっきし分っかんねぇからさ ]


[ えっ  じゃあ今話してる言葉っていったい? ] 


[ まあ、ひらったく言えば妖精語、  とでも思っててくれれば良いやな、 そしてお前さんが妖精語で会話出来る理由、こいつも今は言えねぇ、 ただオイラ達が妖精語で話し掛けた時は、お前さんが人間の言葉で喋ろうと意識しない限り妖精語になっている、 有り体に言えば日本語で話し掛けられりゃ日本語で返す、英語で話し掛けられりゃ英語で返すってのと同じこったな、 とりあえず今はそうとだけ理解してりゃあ良いんじゃねぇかな・・・ ] チラッ

周りの妖精達が首を縦に振っている


(う~~~ん、     何か分かったような分からないような、 それにこいつ等は俺に何を隠してるんだ? この先俺に何をさせようとしているんだ? 誰の差し金なんだ?)

俯き悩んでいた顔を上げ、妖精達を睨む菅


[ 大の男が何時までもゴチャゴチャと悩んでんじゃねぇよ ] ケリッ

「痛っ!」

何時の間にか左肩に乗っていた妖精に蹴られた


[ 言っとくがな、 お前さんが頭の中で思ってる事なんざ、こちとら全てお見通しなんだぜぃ ]

肩の上で腕組みをしている妖精を凝視する菅


[ 尤も、心の中まで聞こえんなぁ、こうしてお前さんと接触してる時だけだがな ]


「ちょっと! 何でご主人様を蹴るんですか、妖精さんといえども調子に乗ると、ぶっとばしますよ!」

妖精を掴もうとする漣、 ひらっと避ける妖精


「失礼致しました、 足が滑って顔に当たってしまっただけです、   菅艦長、ご無礼大変申し訳ありませんでした~~~」ドゲザー

「あれ? 言葉使い・・・」

「あぁ、その事はどうぞお気になさらず」

にっこり笑う妖精達


「あんた達、 足が滑ろうが手が勝手に動こうが、 次やったらあたしが許さないわよ」

凄む叢雲に頷く漣と天津風

座っていた妖精が全員立上り、直立不動の姿勢で敬礼をし 

「ヨーソロ!」ピシッ


「ところであんた、 今話してたのは何処の言葉?何を話していたの?」

「えっ・・・」

何と説明したものか悩む菅


「あ~、あれは満州語です、私達も満州出身の者が多いので、菅艦長が満州出身と知ってつい懐かしくって」

「そう? 溥儀さんの時に憶えた言葉と随分違うようだけど?」

「それは端的に言うなら上流階級語なんですよ、 今私達が話していたのは言わば平民語、しかも満州地方独特の言語なんです」

「へ~~、 中国語って言っても全然違うのね」

「そりゃそうですよ、 あれだけ広い国土で更に他民族国家ですから」


よくもまああれだけ嘘八百を蕩々と語れるもんだな、と感心していると肩の上に乗っていた妖精が

[ おい、 お前さんは声に出さずに頭の中で考えるだけにしろよ、  あいつが時間稼ぎをしてる間に重要なとこをもう少し説明しといてやる ]


「そもそも北京語って・・・ 平民語は・・・」 「「「へ~ そうなんだ、それでそれで・・・」」」


[ オイラ達はお前さんの事を操り人形にするつもりねぇ、 これから少しずつ経験を重ねて行けば色んな事を勝手に思い出すはずだ、 そうすりゃお前さんのゆく道は自ずと見えてくる、(コクリ) バカ!肯くんじゃねぇ  頭の中だけにしろと言っただろうが! (すまん) こっちを向くな~! 向こうの話しを聞いてるフリをしとけってんだこの唐変木 !]


「西安に孔子廟・・・ 石碑が・・・ 漢文・・・」 「妖精さんって凄い博識なんですね~~」


[ ここは肯いとけや! ]

(無茶言うなよ、お前の話聞きながら向こうになんて合わせらんだろうが!)

[ しゃ~ない、こっちの話しの途中でもオイラが耳を引っ張ったら肯いとけ!]

(分かった)

[ でな、軍人の本分に戻って日本を守る為に深海棲艦との戦いにお前さんも一枚噛んでもらう事になると思う ]

(また軍艦に乗る事になるのか?)

[ 違っ・・いやっ、そうとも言えるかな? ]

(どっちなんだ!)

[ 微妙・・・ まあその辺りは実際に見てもらってからの話しだな・・・  事が上手く運ぶようにこっちでも動いておくから、まあ心配すんな・・・ それとな・・・ ゴニョゴニョ… ……… と言う事だ、この先の話は次にお前さんが必要になったんじゃねぇかと思う頃にしてやんよ]


肩の上の妖精が耳から離れたのに気が付いた、講義らしきものをしていた妖精が話しを締めくくりに掛かったようだ


「・・・と言う事なんですが、 もうそろそろ起床時間なんで、今日はこの辺りでまた今度にしましょう」ペコリ

「凄い勉強になったわ、妖精さんありがとう    ところで中国の言葉や歴史については分かったけど、菅艦長とは何を話されていたんですか?」

小首を傾げる天津風


「あぁ、 皆さんの事とか鎮守府の事とかこれから困らないよう、色々とご説明を差し上げていたのです、 ねっ艦長」


と先程までとは打って変わり可愛らしい態度でウインクするする妖精だが、 ドスの効いた声が耳元からも聞こえてきた

[ お前さんは余計な事ぁ喋んじゃねぇぞ ] 


「あっぁ~~ まあそういう事だな  うん、そう だな・・・色々と丁寧に教えて貰ってたんだよ」

良く出来ましたと言わんばかりに妖精に耳の後ろを撫でられる


「ふ~~~ん、丁寧にね  でも足が滑ったと?」

先程の事を思い出した叢雲の片眉だけがピクリと動く

「まあ色々面白い話しも聞けたし、今回だけはそういう事にしといてあげるわ」


そんな時に静寂だった営内にあの独特の調べが聞こえてきた

パッパ パッパ パッパ パッパ パッパ パッパパー♪ オキロヤオキロ ミナオキロー

「おっ 総員起しか なんか懐かしい気もするな~」

目を細め感慨深げな菅

「しかし5分前は無かったような・・・」


「漣では当直が掛ける号令だけでしたもんね~、 それとこの鎮守府では5分と15分前は無いんですよ   そうだ!ご主人様ぁ、体調は如何ですか? 昨日から点滴だけで何も食べてないじゃないですか、 何か持って来ましょうか? それとも食堂へ行かれますか? ここの鎮守府は( ゚д゚)メシウマーなんでwktkものですぞっ」


(メシウマー・・・  wktkって何?)[ ソレハナ…ゴニョゴニョ… ]


ふと何かに思い当たりポケットを触る叢雲

「間宮券もあるわよ」

「あっ、あたしもです、みんなで一緒に行きましょうよ」

「キタコレ!」


(マミヤケン?  支那そばとか?)[ マ・ミ・ヤ デツカエルケンダヨ ]


「間宮さんの所が開くまでまだ時間もあるし、後であいつの机からもう二枚ギンバイしてきてやるわ、  それにあなたアイスクリームが大好きだったわよね」

まるで母親であるかのような微笑を見せながら菅の膝に手を置く叢雲であった


「アイスクリーム?  えっ! マミヤってあの間宮の事か?」

「「「そうよ(です)」」」


「そうか~~  間宮か~~ アイスクリームか~~~ 」

心の奥からほわっとした暖かさがこみ上げ、笑みのこぼれる菅であった


が!


(あれっ?  凄くカレーが食べたい気がするのは何でだ?)




[ オイ!オイラタチモギンバイニイクセゾ    オォーーーー ]






【 2-3 我ガ進ムベキ航路 】



ベッドから降り屈伸運動など、体の状態を確かめる菅

「うん、 幾分ふらつくような感じはするが歩くのには特段問題無いようだ」


何時でも支えられるように構えていた漣だったが、菅の腰へ手を回し

「何かあっても漣が支えますから大丈夫ですよ」ニコッ

「じゃあ反対側はあたしね」と叢雲


「えっ じゃっ じゃああたしは えっと・・・」

「あんたは後ろから付いてきなさい」


「アタシダッテスガカンチョウノ…」

「何か言ったかしら?」


(なあ、艦の性能とか種別と艦娘の上下関係は一致してないのか? ・・・ おい! ・・・・ あれ?妖精居ないの? )


「ぼ~っとされて、どうかされましたか菅艦長? ご気分でも悪くなられたとか?」

心配そうに見つめる三人


「いやいや、ちょっと考え事をな、 食事に行くのは良いんだが、その前にここの司令にちゃんとご挨拶をした方が良いんじゃないかと思ってな」

「あ~ それなら無用よ、 今日は日曜日だからあいつは自宅に戻ってるはずだし、 当番の娘達が即時待機してるのと、あとは哨戒組が出るだけで、今日の鎮守府は基本的にお休みよ」


「えっ? お休み? 鎮守府が機能停止させるなんて大丈夫なのか?」


「司令官の意向よ」

「それであたし達三人がご主人様の看護全般を任されてるって訳です」

また抱きつこうとする漣

「監視もでしょ」

と言いながら漣を離れさせる叢雲と、抱きつくのを止めた天津風であった


「ところで部屋から出るのは良いとして、俺の上衣と帽子は無かったのか?」

辺りを見渡す菅

「えっ、 帽子はありませんけど、菅艦長の服ならそこに掛けてありますよ」

ベッド脇の衝立に掛かった服を差し示す天津風


「違うよ~ 俺は少佐だから、 それは他の誰かの物じゃないのか?」

俯き加減で首を横に振る叢雲

「ここで軍服を着てるのはあいつだけ、そして階級は少将よ」


「えっ! あれで将官なの? あんな若造が?  あっ、いやすまんすまん、 意識がハッキリして無かったから若く見え『い~え、若造で合ってるわ、まだ24歳よ、 世が世なら中尉になってるかも怪しいわね』」

「えっ、   じゃあ・・・叩き上げの凄い歴戦の勇士で英雄って事なのか?」


「「「歴戦の勇士で英雄?」」」


爆発したかのような三人の笑いが室内に轟いた

「やめっ・・・ 苦しっ・・・ 死んじゃうから・・・ 」

漣などは床を転げまわってヒィーヒィー言っている


(えっ 違うの? じゃあ何で将官にまでなれたんだ?  あとで妖精に聞いてみよう)


暫くすると笑いの発作が治まり、零れる涙拭きながら

「あんたの戦歴と比べたら月とすっぽん、 いや、狼とアリンコ以下ね、英雄なんてもんじゃなくて寧ろ逆、臆病者よ、 弾の飛び交う戦場に出るた事なんか一度も無いわ  ただ・・・」

少し真顔に戻った叢雲


「そう、 ただ優しいし私達艦娘の事をもの凄く大事にしてくれるのよ」

笑みを浮かべる三人


「この鎮守府にあいつが来てから沈んだ娘は一人も居ないわ、 余程の事が無い限り中破進撃すらしないし、危険な任務は全て拒否してるの」

「戦い方だって「牛刀をもって鶏を割く」ってやつです、 アメ公のやり方を増々にした感じ、と言った方がご主人様には分かり易いですかね?」


「会合なんかで付いて行くと、同期の提督達は聞こえよがしに張り子の虎だの臆病者だのって言ってるのを耳にするんです、 司令官は「それぐらいでうちの鎮守府は丁度良いんだよ」と笑っておられるのを見て、こっちが歯がゆいぐらいなんです、司令官を馬鹿にされるのが悔しいんです!  菅艦長、この鎮守府に、うちの司令官にお力を貸して戴けないでしょうか?」

「あたしからもお願いするわ」

「ご主人様~~」


突然の懇願に困惑する菅

「いや、俺の処遇もまだどうなるのか分からん状況なんだろ? それに俺はしがない水雷屋だ、巡洋艦までなら経験はあるが、戦艦や空母、航空隊の運用法なんて知らんぞ」

「「「はい」」」

意気消沈する三人


( おい、さっき戦いに一枚噛んでもらう、とか言ったよな)


「だがこれは先程妖精達に言われた事なんだが・・・」

(これは言って良いのか?  おーーい!  あっ、居ないんだった・・・)


「「「それで妖精さんは何と?」」」


「日本を守る為に深海棲艦との戦いがどうとか、軍人の本分がどうとか言っておった・・・ ような・・・     まあ何れにせよ帝国軍人として日本を守る戦いを拒絶するつもりは無いんでな、 どのような形になるか分からんが、この鎮守府に居る事になるなら力の限り尽くす事を約束しよう」


ぱっと花が咲いたような笑顔になった三人が抱きついてきた

「「「ありがとう(ございます)」」」


グゥ~~~~~


「あっ 菅艦長のお腹が警報を鳴らしてますよ」

「本当ね」

「腹が減っては戦が出来ませんぞ! さあご主人様、ご命令を!」


「よし、分かった   出っ・・・」


ふと己が姿を思い出した菅


「この格好で食堂へ行っても大丈夫かな? 中佐の階級章が付いてる服を着るわけにもいかんし」

「階級詐称ってやつ? この鎮守府ではそんな軍法関係無いわよ、 それにあなたは死後だけど正式に中佐に任命されてるし、公示だってされたのよ  でも・・・」


菅から離れて頭の天辺からつま先までを確認する三人から出た言葉は

「「「良い」」」


「だってあなたは駆逐艦の艦長なのだから、むしろその方が似合ってるわ、 靴だって乾いてないからサンダル履きでしょ、上衣着てる方が変よ、  それに暑い盛りだし、いっその事防暑衣みたいに裾を捲ってみたらどう?」

「あははは、 なんかその格好を想像すると田中艦長を思い出します」

「ねえご主人様、 小西司令なんか夜はFU一丁で艦橋を見回る事もあったじゃないですか、 それにこれからはこの鎮守府がご主人様の家になるんでしょ、 その格好の方が艦の頃を思い出せて、その~ 安心しますし格好良いです・・・」 ポッ

漣の言葉に微笑みながら肯く二人であった


(そうか、ここが我が艦、我が家になるのか・・・)


(色々と戸惑う事やこの先の分からない事もあるが、踏ん切りがついたような気がするな   よし!)

両手を後ろで結び、胸を張る菅


「宜しい、では諸君、  食堂へ向けて出航!」


「「「はい! 艦長!」」」 ピシッ

「うむっ」 ピシッ

三人の見事な挙手の敬礼に答礼する菅、そして食堂へ歩き出す四人だった











「ところであんた、 少佐になってまで猫招き型の敬礼してたの?」ジロッ

「えっ だって帽子被ってなかったし・・・」

「言い訳はしない! 全く何時まで経ってもしょうがない子ね、 誰の教育が悪かったのかしら?」 ブツブツ


(あれ? 30半ばになってるのにガキ扱いされてねえか俺・・・)






※文中で「艦の性能とか種別と艦娘の上下関係」と言う行がありますが、性能的に叢雲が天津風に大きく見劣りする事はありませんが、一等駆逐艦の中でも旧式艦の艦長は少佐、新型艦の艦長は中佐と格の上下があり、朝潮型以降では中佐、もしくは昇進前の少佐が艦長になり、中には乗艦中に大佐に昇進した艦長も居られました。


※敬礼にはきちんとした型以外にも「はるかな型」や「猫招き型」と言われている物があります。 「はるかな型」は遠くを眺める時に手で庇を作るように指を直角ぐらいに曲げる感じ、 「猫招き型」は気軽に挨拶する時に「よぉ!」って手を挙げる事がありますが、その湾曲させた指の形のままで眉の横ぐらいに当てる感じで、正式な場面や階級の高い者にする事は勿論、下級兵同士でも相手と場面を考えてやらないと2~3発ビンタを張られるか、後で罰直が待っている敬礼です。




【 2-4 我ヲ狙フ者 】



「あ~~~ ご主人様だけ良いな~~~」

「あの~ 何で俺だけメニューが違うんですか?」

「えっ、 違うのですか?   だって妖精さん達が来られて、艦長さんが来たらカレーを出すように!ってしつこく念を押されたんですけど 」

(まさかあの子達ったら、 自分達が食べたかったから艦長さんをだしに使ったんじゃ・・・)

戸惑う鳳翔


(そう言えばカレーが食べたいって思った時に妖精が肩の上に居たっけ)


「何よあんた、 初っ端から別メニュー出させるなんて、既に我が物顔に振る舞ってるじゃない、 まあ良いけど」

「さすが菅艦長さん凄いですね、 もう妖精さん達に使いが頼める程仲良くなってるんですね~」

瞳にハートマークが浮かびそうな天津風であった


「あ~いや、 これは違うんだ、何か知らんが凄くカレーが食べたいと思っただけで、別に頼んだわけじゃないんだ」

((あ~~ アレか・・・)) 

「作戦行動中の駆逐艦じゃカレーなんて殆ど食べられませんからね、無理もありません」と天津風


「何れにせよあんたが頼んだも同然じゃない、食べたいって思いを妖精さんがくみ取って伝えてくれただけの事でしょ、むしろ感謝しなさい」

(あぁ、 そう言われると反論の余地は無いな、 妖精が心を読めるのは知ってた訳だし、口にしたのと同じ事か・・・今後は色々と気を付んとイカンな   でも、何でこんなにカレーが食べたいんだろう?)


「お~い ご主人様こっちこっち~~」

窓際の席を確保した漣が大きく手を振っていた

「あそこはこの食堂で一番眺めが良い席よ、 それに都合も良わね」

「都合が良い?」

「とにかく行くわよ」

漣の元へ行く三人


「いただきます!」 モグモグ マクマク ムシャムシャ


「おい、その味噌汁の具は冬瓜か?」

「はいそうです、 あまり味のあるお野菜じゃありませんけど、凄く日持ちするから昔はありがたかったですね」

「そうか? 出汁のしみた煮物なんか俺は好きだったけどな~」

「艦じゃ生の野菜は貴重だったもの、あの頃は野菜ってだけでありがたがってたわね、 あんたは戻ってきたばかりだから缶詰の筍ですら喜ぶんでしょうけど、 あたしはもう見るのも嫌だわ」

「海が荒れてカブりっぱなすと乾パンと缶詰が続きましたからね、 ご主人様は士官ですし駆逐艦で北方に行ってないから恵まれてた方なんですぞ」

「あぁ すまんな・・・」


「ところで、 こんなに広い食堂なのに他に二人しか見えないんだが、この鎮守府って何人ぐらい居るんだ?」

「100人を少し越えたぐらいです菅艦『108人よ』 うっ  そっ、それと普段だとこの時間は満席に近くなるんですけど、今日は日曜日だから皆さんもっと遅めに来るんです」

「ほう、そんなに居るのか、  ところであの二人に挨拶をしてこようと思うんだが、紹介してくれんか?」

「はい、ご主『無駄よ!』」


「食事中に話し掛けても無駄なのよ、特にあの二人はね」

「あ~、そうでしたそうでした」テヘペロ

(話し掛けても無駄って、食事以外に何か理由があるのか?)


「それよりあんた、 挨拶なんかしてる間があるなら早く食べた方が良いわよ、 面倒な事にならないうちにね」

「面倒な事って?」

「え、 この後何かありましたっけ?」

「赤いのと青いのがご主人様のカレーを狙ってくるとか?」

呆れ顔の叢雲


「も~、 あなた達来る途中で気付いてなかったの?」

「「何に?」」

「駆逐寮の前を通る時、初めは2~3人だったけど、最後に振り返った時には略全員がこっちを見てたわ、 しかも揃いも揃ってさっきのあんた達と一緒、 目がキラキラしてたし、顔が赤くなってる娘も居たわよ、 アホ毛姉妹なんか窓から落ちそうなぐらい身を乗り出してたわ、 あの様子だと此処で大騒ぎが始まるわね」

「それは非常にマズイですぜ姉御 急いで食べないと!」

漣を睨み付ける叢雲


「あんたこの人に鈴谷の二の舞させる気なの?」

「あっ」

「えっ? 鈴谷さんがどうかしたんですか」

「あ~ 天津風は居なかったわね、 鈴谷の事はもういいから今は食べる事に専念なさい、  但しよく噛んでね」


先程までと違い、もくもくと食べる四人

あと少しで食べ終わろうかと思われた頃、叢雲の頭のユニットがピクリと動いた、窓の外を確認すると急いで食事の残りをかき込む

モグモグモグモグモグ、 ゴクン

「アホ毛姉妹の他にも10人ぐらいは来たようよ、 あたしが食堂の扉を締めて時間稼ぎをするから、漣はこの人を裏口から連れ出してとりあえず工廠へ行って、今日なら誰も居ないはずだし、間宮さんとこにも近いから丁度良いわ、 但し走っちゃ駄目よ!  天津風はここを綺麗に始末してから漣を追って、 あたしは執務室へ行ってギンバってから合流するから向こうで待っててちょうだい」

「「はい」」


扉へ駆け出す叢雲の前に鳳翔が出て来た

「話しは聞いていました、私がやりますから叢雲さんはそのまま出ていって下さって結構です、 艦長さんはまだ体調も戻られてないご様子ですし、あのパワフルな娘達に囲まれたら大変ですからね フフッ」

「ありがとう鳳翔さん、恩にきるわ」


平静を装いながら歩き出す叢雲の背後では カチャリ と鍵の閉まる音が聞こえた


ドドドドド ドドドドド

「あら、おはよう」

「叢雲さんおはヨウゴザイマー…   イッチバー」ゴン 「イッター!」

ガチャガチャガチャ

「カギガシマッテルッポイ…アカナイッポーイ…」

「ソレ! ドーーーーン!」

「マローン…」


「ふふっ、 ま、せいぜい頑張りなさい」

心の中で鳳翔にありがとうと言いながら走り出す叢雲だった




一方漣達は無事食堂を抜け出し、建物の陰を伝い工廠へと向かっていた

抱きつかれこそしなかったが、どうやら二人共握った手を離すつもりは無いらしい


「さあ着きましたよ、 ご主人様は憶えてないでしょうけど、此処が工廠です」


その建物は頑丈な壁の造りになっており、工廠と言うよりはまるで弾薬庫にように見え、危険物が沢山ある事を彷彿させる景観の為か? 妙な胸騒ぎを憶える菅だった


中に入り後を付けられていないか確認したあと扉を閉める

「取り敢えずご主人様はそこの台の上にでも座ってて下さい」

「あっ、 台が少し汚いですね、これを使って下さい、 はい、どうぞ」

と天津風がハンカチを菅に差し出すも


「台って何処? 何も見えないんだが・・・」



その時工廠の奥から話し掛けてくる者が

「そりゃゲートも全部閉まってるし、この暗さじゃ人間には見えませんよ」 ヨイショット

「飛んで火に入る夏の虫って感じだね」ムクッ

「ちょっと~、 それ言葉選びが悪すぎよ~」


「今点けますね」 カチッ

暗闇から突然光の世界へ戻され、目が慣れてくると、そこには先程まで寝ていたであろう茣蓙の上に座っている女性と、壁際には起用に指先でハンマーを回しながら立っている娘が見えた




「丁度良いところへ来てくれました、 菅さんには是非お願いしたい事があるんですよ」












(ん! 背後で気配を感じたような・・・)


「ドモ…」


後書き

腹が満ち、どうやら気力と体力も回復してきたようだ
だが赤いのやら青いのやらアホ毛姉妹?
一体どんな奴等なんだ
叢雲の頭に着いているアレは何なのだ?

そして爆弾よりも危険と教えられたあの二人とは?
ドモ…キョウシュクデス…

次 第二章「覚醒」 第五幕【 2-5 我ヲ守リ給フハ神カ鬼カ 】

刮目して待て!

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先の大戦時には艦と共に逝った沢山の男達が居ました
中でも駆逐艦は海の狼とも言われ独特の心意気がありました
しかし主役になる事は殆ど無く
「あ~~ 何だその命令は! 分かったよ 死にゃ~良いんだろ死にゃ~」
と悪態をつきたくなる事が山ほどありながらも
豪放磊落
「駆逐艦乗りは3日やったら止められね~のさ」
といった生き様を織り交ぜて書いていけたらと思っております

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菅 明次様  経歴

奉天中卒業  海兵56期
4年8月23日 少尉候補生に任官
4年11月30日 少尉に昇進
5年 駆逐艦「榧」
6年12月1日 中尉に昇進
  (この間の公式資料見当たらず)
11年12月2日 潜水艦「呂63」
12年10月以前  駆逐艦「叢雲」
14年12月又は15年1月 二等巡洋艦「鈴谷」水雷長兼分隊長
          (鈴谷乗艦時に少佐へ昇進、後航海長へ就任と思われる)
16年4月10日 水雷艇「友鶴」艇長 [ 艦長 ]
17年6月3日 第十戦隊 水雷参謀  旗艦 二等巡洋艦「長良」 
17年7月20日 駆逐艦「漣」艦長
19年1月1日 駆逐艦「天津風」艦長に任命
19年1月14日 天津風へ着任前「漣」と共に逝く

19年4月20日発令 19年1月14日をもって海軍中佐に任ずる 辞令公報第1433号

心よりご冥福をお祈り致しております


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1: SS好きの名無しさん 2018-07-18 20:16:26 ID: sNMQwe5_

これ、提督無視して話が進んでない?

大丈夫なの?

勝手にやってるなら叢雲達、解体処分もあり得るよね?

2: イシュタル 2018-07-18 22:14:00 ID: M4p8JcVr

ネタバレしない範囲で言うなら
叢雲達は自分の意思のみ
但し、介護、警護、監視については全権委任

菅艦長は妖精より全面サポートの約束がある
ってとこでしょうか

3: SS好きの名無しさん 2018-07-18 22:27:46 ID: sNMQwe5_

嫌疑がある人間を監視付きとはいえ、
食堂なり、鎮守府内を歩かせるのはどうなのかと思いますが?

4: イシュタル 2018-07-18 22:34:29 ID: M4p8JcVr

【 2-3 我ガ進ムベキ航路 】の中に

「それであたし達三人がご主人様の看護全般を任されてるって訳です」
また抱きつこうとする漣
「監視もでしょ」
と言いながら漣を離れさせる叢雲と、抱きつくのを止めた天津風であった

「この鎮守府に居る事になるなら力の限り尽くす事を約束しよう」
----------------------------------------------
と言う台詞があります

また、現在2-7までの途中まで執筆は進んでいますが
この先の展開で2-5、2-6を修正する可能性を含んでいますので
これ以上は申せません

5: イシュタル 2018-07-18 22:37:44 ID: M4p8JcVr

嫌疑の内容については2-5で出て来ます
(現在の執筆内容通り公開するなら、ですが)


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