2019-01-01 01:39:37 更新

前書き

五年目と言う節目を超えた提督と、提督に寄り添い、幾千幾万の戦場を駆け抜けた艦娘に敬意を。
五年目という節目を迎えても、なお鎮守府を援護する大本営に、万雷の喝采と感謝を。




「あけましておめでとう、比叡」


「あけましておめでとうございます、司令。今年も気合! 入れて! 行きます!」


「ああ、期待してるぞ。今年もよろしくな、比叡」


「ええ!」



 時刻は2019年1月1日午前0時0分。俺と比叡は、日本酒を開け、くる年を祝っていた。


 酒精の香りがほんのりと香る中、俺と比叡の仲もあり、酒はとても進んだ。俺と比叡の関係は、言うなれば親友のようなものだ。あるいは――そう、ライバルともいうのかもしれない。


 戦力増強のためにケッコンカッコカリだけは行ったが、しかし比叡の金剛への思いは変わらない。というか、俺も最初から金剛への思いがかわらないことを承知で比叡にケッコンカッコカリを施した。


 しかし、これがきっかけで俺と比叡の仲は急速に進展した。まぁ、それは今こんな感じで酒を飲み交わしていることから察することが出来るだろう。



「しれぇ! この日本酒、キレがよくて辛口です!」


「よっしゃよくやった比叡! こっちはフルーティーだぞ!」


「わーい」



 それぞれが持つ日本酒の一升瓶を、それぞれの御猪口へとついでいく。とくとくと、御猪口に日本酒が満ち――それを一気に煽る!


 喉に突き抜ける酒精の火照り。ぴりりと舌の上で刺激的な感触を残す日本酒は、比叡の見立てもあり俺の好みととてもマッチしていた。


 それは比叡も同じだったらしい。とても幸せそうな表情を浮かべ、ちびちびと呑んでいた。



「――あ」



 しかし、そんな比叡が声を上げた。視線の先には、俺が就任してから間もなく購入した棚が存在した。確か視線の先には――地元の沖縄から持ってきた泡盛が入っていた。



「なんだ比叡、泡盛が欲しいのか?」


「あっ、ち、違います! 違いませんけど違います!」


「どっちなんだよ」


「……今はどうでもいいんです。それより――」



 比叡は棚を開き、その奥から泡盛を取り出した。俺が沖縄からその泡盛を持ってきた時、”14年物”と記載されていた。つまるところ、2019年になった今は"20年物”と言うことになるが――それが一体どうしたのだろう。


 比叡は、俺が気付かないことに怒りを覚えたらしく、頬を膨らませている。はて、何かあったか――。



「……あ」



 そこまで来て、ごくありきたりな真実にぶつかる。それは、戦争と言う状況に身を置くものならばこれ以上なく必要で、幸せなもの。つまるところ、比叡が言いたいのは――。



「今年も一年、生き残れたな」


「……はい」



 近年の深海棲艦の進行はますます強くなっている。それに伴って、大本営の方でも新しい艤装や艦娘などが続々と配属されてはいるが――しかし、やはり大きな危険が鎮守府の通常業務に伴っているのは事実だ。


 これはあくまでうんちくだが、提督業をに就き、五年を超えた時に轟沈した艦が一隻も存在しない確率は実に5%ほどだという。ウチはその5%の内に入る。……しかしそれは、あくまで運の問題だ。これまでだって、何度か轟沈しそうになった苛烈な作戦は存在していた。


 去年だって、夏に榛名が深刻なダメージを負っていたし。――長くなってしまったが、比叡は今年も生き残れたことにただただ喜んでいるのだろう。そして、そんな喜びを親友である提督と共有したくて、敢えて泡盛と言う”共通の記念物”を取り出したのだ。



「もう六年目か……」


「早いものですね」



 思えば、大井しかいなかった鎮守府の記憶が、今のみんながいる鎮守府のそれに塗り替えられつつあった。前の閑散とした鎮守府の気配が残るのは、以前興味本位で俺が撮影していた鎮守府内装の写真のみだ。


 それが嬉しく――ちょっとだけ、寂しさを感じた。



「……司令、来年もこうしてお酒を飲み交わしたいですね」


「ああ、そうだな」


「そのためには、強くならないと」


「……比叡も、俺も、な」


「そうですね。金剛お姉さまと肩を並べるためにも!」



 ふんす、と両手を握り決心を固める比叡。俺はそのうち右手を握ると、それを解いた。比叡は不思議そうな表情で俺のことを見つめる。


 俺はそんな比叡に――。



「なら、まずは酒にも強くならなきゃな」


「…………司令、ほんっと貴方って人は……」


「なんだ、受け付けなかったか?」


「否、否否否! さぁ呑みましょう! 何なら肴も作りましょうか?」


「……それだけは勘弁してくれ」


「えーっ」



 頬を膨らまし、比叡は抗議の意を俺に示してくる。俺は一考する間もなく、比叡の抗議を却下し、やがてしめやかに酒宴は再開されたのだった。


 さて、本当に比叡が肴を作るのを諦めたかどうかは、来年の元旦にわかることだろう。


――――

―――

――




 願わくば、全ての提督、艦娘に――永遠無窮の平穏が訪れますように。


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2019-01-01 11:13:22

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2019-01-01 09:40:59

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1: SS好きの名無しさん 2019-01-01 11:14:16 ID: S:FWUmCh

不知火『沈め。』


広開土大王『』

2: SS好きの名無しさん 2019-01-01 11:24:31 ID: S:734qym

95%も無能がいるのか…


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1: SS好きの名無しさん 2019-01-01 11:13:50 ID: S:Ehyku9

加賀『能登半島沖で貴女は何をしていたのかしら?返答次第では沈めます。』


広開土大王『』


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