2016-03-07 21:16:39 更新

どこから語ればいいだろうか

君と出会った学生のころからだろうか

その頃の私は野心に燃え、この世のすべてを手に入れられると本気で考えていた

君に近づいたのもそういった理由からのスタートだった

本当に苦労したよ

本当に君は優秀だった

だからこそ、私は君に見合うだけの者になろうと必死に努力した


君との交際が始まってしばらくしたころ、君はこう言ったな

「可愛い人。」

と。嘘で作られた自分を見透かされているようで恥ずかしい気持ちでいっぱいになったのを覚えているよ

そこからだろう、君のことを本当の意味で大切に感じ始めたのは


君はどんどん私のはるか先に進んでいったね

君との間に子供ができたとき、君はこう言ったな

「生きていればこそ」

この時の私は君の言葉の本当の意味に全然気づけていなかったな


君が取り込まれたとき、私は本当に悲しかった

すべてを失ったと感じたのはこの時が最初で最後だろう

私は君の忘れ形見である息子と別れ、君を取り戻すことを決意した

すべては君の思惑通りだったとも知らずに


少年になった息子と再会したがあの頃の私には息子と向き合う勇気もその権利もなくすべてを他人に任せた

きちんと会話が成立したのは

君の嘘の墓参りの時だけだろう

「自分の足で立て」

息子に言えたのはそれだけだった

決して、

「自分のようにはなるな」

そう言ってしまえばよかったのかもしれなかったが、それは自分の存在意義を根底から否定し拒絶することを意味するから

あの頃の私にはとても言えなかった


君は本当に賢く素晴らしい

しかし、私はすべてを息子に委ねることにする

たとえ、それが君の思惑通りでなくとも

君が望んだ永遠は手に入らないかもしれない

自分で無責任であることは自覚している

しかし、私がやってもどうしてもうまくいかないことだけは確かだから

ただ君ともう一度出会いたかっただけなのだがな

「すまなかったな、ユイ」


END





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