2017-04-22 14:05:48 更新

概要

毎週日曜に更新します。 その後のIFストーリーです。あの世界はその後でこうなったら..みたいな感じです。
主人公の経歴がちょっと変わってたり本編の話が少し変わってたりしますが。
ご了承ください。あとオリキャラも少し(予定)いますがどうか勘弁してください。


前書き

Ss初心者なので至らぬ所もあります。ここのこれどうゆうこと?など不明な点があったら気軽にコメントください。


インスティチュート壊滅から二年後。

連邦中に逃げ出した第三世代の人造人間達は、人々から隠れ、生活を送っていた。そのなか連邦中の少数勢力を多数取り込み大きく拡大したミニッツメンの下でBOS、レールロードは人造人間への外敵という扱いの撤回を認めることにより三勢力は一時的に和解した。人造人間の人権は認められ三勢力は彼らを含む連邦の人々の安全管理という大義の下で三勢力は結託した。それから最初の夏の事である。


[1: ダイヤモンドシティ ]


春が終わり夏に差し掛かった頃、ミニッツメンのキャラバンは補給を目的にダイヤモンドシティへ立ち寄ろうとしていた。三年前に比べ、ミニッツメンの装備は充実し人の数も大幅に増えておりキャラバンがそれを物語っていた。キャラバンの先頭を歩く部隊の指揮官に、泥だらけの恰好の女性のミニッツメンが声をかけた。


ミニッツメン「キツイ..仕事でしたね。」


感情が抜けたような声で呟いた。

彼女達ミニッツメンは数日前まで輝きの海にてそこからデスクローの群れが押し寄せて来ていた為にBOSと共に二週間程キャンプを張り込み駆逐に当たっていたのだ。死者の数も決して少なくないが、一応任務は成功に終わった。指揮官はやつれた彼女の顔を見て言った。


ガービー「確かにな、でも君や他の皆がよくやってくれたお陰で奴等を追い払えた。おかげで連邦は今日も平和でいられるんだ..きっと皆..それを望んでたはずだ。」


ミニッツメン「だと..いいですよね。本当に...」


彼女は目を反らしたが表情はどこか柔らかな物になっていた。

他の隊員達もそれを聞いて少しずつ元気を取り戻していた。そんな中、一同はダイヤモンドシティにたどり着いた。


ダニー「ミニッツメンだな..よし通っていいぞ。ありがとうな。」


バラモン達を外に止めさせ、プレストンは階段を上がった。彼の目に町の全貌が飛び込んできた。


ガービー「ここも...かなり変わったな。」


ダイヤモンドシティは前市長の一件以降、後任が次々と変わった。短期間ではあるがミニッツメンが維持していた事もある。それもあってか、市民の数もその人種も増え、それに伴い建物も大幅に増築された。

ふと見ると、大声を上げて人混みに新聞を配っている少女がいる。


ガービー「..ナット?見ない間に大きくなったな..。」


ナット「なに?..ガービー!?久しぶりね。」


肩まで伸びた髪の毛を耳に掛けて、彼女は手を振った。

・・・・


タカハシ「ナニニシマスカ?」


ガービー「ラーメン。ミソ..ア..ジ イッチョ..ウ」


タカハシ「・・・カシコマリマシタ。」


ナット「日本語上手くなったわね。」


ガービー「君のお姉さん程じゃないがな..ところでナット?」


ナット「(ズズッ)、ナットはやめて。もうそんな子供みたいなニックネームは名乗らない事にしたの。ナタリーって呼んで。」


ガービー「そうか..子供は育つのが早いな。」


ナット「よく言われる。そう言われればそうなのかな。実感はないんだけ...あ.パイパー!」


ガービー「(ズズッ。)ん?どこに行ってたんだパイパー」


そこにいたのは初めて会った時と変わらず、図々しそうな顔した女性だった。


パイパー「取材に決まってるでしょ。社長も動かなきゃ社員がついてこないの。..久しぶりプレストン。」


トリガーマン「パイパー。俺達は..近くで飲んでるから、ちゃんと今月分こそは払ってくれよ?」


パイパー「わかって..、て、いないし..。たく、あいつら必要ないのに護衛だって強引に付いてきたんだよ?酷いよね。」


ナット「南にできた新しい町はどうだった?しっかりうちの宣伝できた!?」


パイパー「後で教えてあげるから、向こうに行ってて、あたし達はちょっと話があるから」


ガービー「すまないなナタリー。」


ナット「なんだ...わかったよ、タカハシ。キョウハツケトイテ。」


そう言うとナットは休んでいるミニッツメンのキャラバンまで駆けていった。


タカハシ「マイドアリ。」


パイパー「たく、あの子は..またタカハシが壊れたらどうするんだ。話は聞いたわ...お疲れ様。ガービー。よければ新設した本社に来ない?」


ガービー「..あの看板は、相変わらずなんだな。」


パイパー「もちろん。...良いセンスしてるでしょ?」

・・・・・

パブリックオカレンシズはミニッツメンのサポートの元で急速に拡大していった。パイパーライトは今や、十数人ほどの部下を連邦中に持つ新聞社の取締役となっていた。


ガービー「なかなか広いな。」


パイパー「でしょ。設備も豪華だけど、その分仕事に追われまくってて。やっと今度、一ヶ月ぶりの休みができたんだ。まぁ..つまり、色々面倒になったの。」


ガービー「俺も似たようなもんだよ。新人を率いるのは..いろいろとな...お互い、偉くなったもんだな。」


パイパー「確かに、色々変わった。..ダグアウトインのチラシは見た?」


パイパーはガービーをイスへ座らせ、自分の椅子に座った。社長には似合わない簡素な物だ。


ガービー「ビール感謝曜日の?」


パイパー「そう!、まだやってるのよ。酔った勢いで提案しただけなのに。」


ガービー「今でも覚えてる。酔った将軍とキュリーが皆の前で叫んだよな。金曜くらい飲んで飛んでけ!、て。」


パイパー「あれ、あたしとディーコンで考えたんだ。あのお医者さま二人が言うのも良いシャレになったしね。」


ガービー「確かにな。」


パイパー「はぁ..あれが1年前か。皆どうしてる?」


ガービー「マクレディはウェイストランドに帰ってからたまに手紙くるな。元気にやってるって。ジュンとマーシーは今もサンクチュアリで薬局を続けてるよ。二人目ができて少しマーシーは丸くなったかな。キュリーも人間の体にだいぶ慣れたみたいだし。ディーコンは...相変わらずだ。」


パイパー「変わりなくて良かったよ。そうだ..ケイトはどうしてる?」


ガービー「大人しくなったよ。最後に会ったときに君の話をよくしてたな..親友がいなくて寂しいんだろ。」


パイパー「しょうがないな。..皆..無事でよかった...ブルーは?」


ガービー「..将軍は..どうだろうな。最近はあまり表に出てこないんだ。指令部..サンクチュアリに籠りっぱなしで..ショーンとああなってから。」


パイパー「そっか..私も気にしてたんだ。最後に会ったとき、落ち込んでたから。..このあとはどうするの?」


ガービー「キャッスルに皆で帰って。久しぶりの休暇だな。基地を回って、サンクチュアリに行こうと思う。」


パイパー「そう...あたしもそろそろ休みだし...ついて行こうかな。」


ガービー「..そうだな。途中でディーコンやダンス達も拾って、久しぶりにサンクチュアリに集まるか。」


ナット「...あたしもいいかな?」


ガービー「ナタリー?」


パイパー「う~ん。まだ連邦に出るのは早いんじゃ...」


ナット「お願い!。ショーン君にも久しぶりに会いたいの!」


パイパー「うっ...まぁ..いいかな?最近はそこまで治安も悪くはなくなったし。」


ガービー「まだ危ないとは思うんだが、」


ナット「ありがとうガービー!待ってて、支度してくる!」


パイパー「....ごめん。ああなると、私でも止められないんだ。」


ガービー「みたいだな。....ショーンの事を理解できてる友達はあの子くらいだ。良い薬になるかもしれない。」


パイパー「..失礼な事しなければいいけど。大丈夫かな..」


パイパーは椅子に身を掛けて、飾ってある写真を見た。そこに写っているのはパイパー、ケイト、ガービーにブルー、コズワースやドッグミートもいる。ミニッツメンも大きくなく、今よりも酷い暮らしだった筈なのにパイパーはその頃がいつも愛しく思えた。


[2:ファーハーバー]


連邦から離れた場所に位置するファーハーバーは数年前までは、魔境とも言うべき場所だった。だが二年前、この島の三大勢力は一人の人造人間の犠牲を出した後に変化し始める。

島で絶対的な力を持っていたアトム信者達の領土は、その過激とも言える指導者の死により縮小しその数も減らした。変わりに力を持ったのが人造人間の組織であるアカディアだった。彼らはファーハーバーの住民と共鳴するとアトム信者達の領域をミニッツメンの仲介の下、交渉という形で譲り受け、島の環境改善が始まった。アカディアはレールロードとも密接に繋がりファーハーバーには数多くの人造人間が移住。結果、人造人間達にとってファーハーバーは己の人権が認められる唯一の聖地となった。


ニックバレンタインが島に着いたのは数時間前の事だった。彼は花束を簡素な墓碑の前に捧げるとしばらく立ち止まっていた。すると小綺麗なスーツに身を包んだ老人が彼に話かけてきた。


ニック「なんだあんたか、驚かせないで欲しいな、こっちはもう歳なんだ。」


老人は笑ってサングラスを外した。


ロングフェロー「確かにあちこちボロがきているようだな。」


ニック「そうだろ。耳の穴が錆びてきててな。最近は良く聞こえないんだ。」


ロングフェロー「気にする事はない誰だって年は取るさ。バレンタイン、もう少しここにいるか?」


ニック「いや、もう十分だよ。それよりあんたのホテルのスイートは俺用に空けてくれてるんだろ?」


ロングフェロー「ホテルじゃない。クラブだ。ファーハーバーズハンタークラブ。

お前やキュリーちゃん、あの小僧が来た時には、あの小屋がこうなるとは思わんかったが...」


そう言うとロングフェローは感慨深く遠くを見つめた。まだファーハーバーにまだ霧がかかっていた頃、ただの小屋に過ぎなかったが、住民達の提案でミニッツメンの指揮の下、ファーハーバーに住むハンター達の拠点となり島の環境回復に使われるがその後は設備が充実していた事もあり観光客向けのホテルのようになっていた。遠くの方で男が声を上げた。


ハンター「オーナー!宿泊客のリストが見当たらないんだが!」


ロングフェロー「大丈夫だ!儂が持ってる!」


このロングフェローという老人は、クラブの会長を経て酒場、土産物や雑貨、武器のいつの間にか経営責任者となっていた。


ニック「あんたもよくやるな。」


ロングフェロー「人生はよくわかないもんだよ。自分が何者になるかなんて決して本人にはわからないんだ。あんただってな」


ニックは頷いた。


ホテルの空部屋に着くと、椅子に座り、目を閉じてみた。思えば長かった気がする。目を開けてもらった手紙に目を通す。明日の公園の予定表だった。人造人間と人間の友好を願う講演。自分はその体現者としてスピーチする。ニックは窓を開けて海を見た。


ニック「Dima...これで良かったのか?」


今はもういない兄弟に向け、ニックはつぶやいた。遠くで汽笛が鳴り響いていた。


[3: キャッスル]


ダイヤモンドシティを発った後、ミニッツメンのキャラバンがキャッスルに着いたのは二日後の夕方だった。気温が下がり始め、夕日が水面へ沈みこんでいた。


ナット「はぁ....。やっと着いたよ。」


ナットは疲れ混じりのため息を漏らしながら呟いた。ここにくるまでの二日間、レイダーとは一度遭遇したが、ミニッツメンとみるやいなや早急に逃げたしていった。おかげで死者はおらず。無事にキャラバンは帰ってくる事ができた。キャラバンのムードも和やかなものだった。


パイパー「こんなんで弱音を吐いてたら連邦では生活してけないよ。あたしの妹なんだからもっとしっかりしてよね。」


姉がもっともな口出しをするとナットは首を横に振りながら言った。


ナット「違うよ。ただ、こういうセリフを言ってみただけだって。これくらい本当は楽勝なんだからさ。」


パイパー「へぇ..。なら良いけどね。」


すると列の先頭が、キャッスルの門に着いたらしく、ガービーが指示すると門が開いた。その音を聴いて即座に動いたのは誰でもなくナットだった。


ナット「あ!ごめんなさい。ちょっと通して!」


ナットはキャラバンを掻き分けながら先頭に向かった。街がどのようにまた発展したのかが、気になって仕方なかったのだ。


ガービー「なんだナットか、君には二日間も厳しかったろ。」


ナット「全然平気だよ。ねぇ?前にあたしが来たときよりここは変わってるの?」


ガービー「確か、1年以上前だったな。あれからここも色々あったんだ。目新しい物なら山ほど増えてるさ。」


期待通りの返答にナットは、本人も無意識にピョンピョンと羽上がっていた。門が開くと。夕暮れに染まったキャッスルには人がごった返し。そこら中から楽しそうな会話が聞こえてきた。キャラバンの人々は友人、あるいは家族に無事に帰ってきた者達を喜んで出迎えた。


キャッスルへようこそ。そんな中、そう言って出迎えたのは、BOSのジャンプスーツを着た屈強な男だった。


ガービー「久しぶりだな。無事でよかった。」


ガービーが懐かしそうに男の肩を叩いた。

叩かれた男もそれに答えるように肩を叩きかえした。さすがに自分よりも屈強な男からは痛いのか、ガービーは苦笑した。


ダンス「少し痩せたなプレストン。無事でよかったよ。」


パラディンダンスはかつての友人を労うとキャラバンをキャッスル内に招き入れた。


キャッスルはミニッツメンの手に渡った後、現在に至るまでに連邦中の様々な勢力やトレーダーが出入りするようになった。それに伴って、兵士の休息所だったここには、商人達が店を開き。化学者が研究を行い。連邦中の人々が情報を交換しそれを発信する。連邦の新しい名所となっていた。


パイパー「久しぶりね。あたしを覚えてる?」


ダンス「君みたいな自己主張の強い女性を忘れたりはしないさ。」


ナット「えっと....ダンスさん。お久し振り。」


ダンス「ということは、君はナットか?見ない間に大きくなったな!」


ナット「ありがとう。でもね、今はもうナットは辞めたの。子どもっぽいから、ナタリーって呼んでよダンス。」


ガービー「だそうだ。気を付けろよダンス。」


ダンス「ハハッ肝に命じさせてもらう。今日は人が多くてやかましいかもしれないがゆっくり休んでいってくれ。ガービーとパイパーは私と来てくれ、話がある。」


パイパー「わかったわ。ナット、他の人に迷惑をかけないようにね!」


ナット「もちろん。肝に命じてさせてもらう。じゃね。」


そう言うとナットは人混みへと消えていった。


ダンス「ほんの少し見ない間に、あんなに変わるものんだな。」


パイパー「そんな事ないよ。中身は世間知らずなじゃじゃ馬のまま。はぁ..見事にあたし似。」


ガービー「子どもは元気が一番だ。そうだろ?」


ダンス「もちろんだ。」


ガービー達の気の抜けた返答に、パイパーは顔をしかめた。


ダンス「ガービー。帰ってきて早々に悪いんだが話がある。ここでは不味い。」

・・・・・・・


パイパー達と離れた後、ナットはキャッスルを見て回った。以前来たときにはぼろぼろだった城壁が修復され。様々な出し物がところ狭しと陳列していた。


ナット「それ1つください。ありがとう。」


グール「あいよ。また来てね。」


ナット「(パイパーも馬鹿みたい。グールを怖がってるなんて、皆ただ、見た目が違うってだけの死に損ないなだけなのに.....今のは言葉の使い方が違ったな、気を付けなきゃ。)」


ふと目についた猫の旗の下にあるベンチに座り買ったお菓子を食べながら、ナットは人混みを見つめた。トレーダー。グール。それだけじゃない。


男の子「こんにちは、ここは初めて?良ければ案内しようか?」


声を掛けられ目をやると自分より少し小さな少年が立っていた。目立った特徴のない普通の子どもだったが、ナットはすぐに少年の異質さを感じ取った。


ナット「ごめんなさい。お父さんを待ってるの。だから他を当たって。」


少し冷たく彼女は答えた。少年はすぐに返事を返した。


男の子「ああ。いいんだよ。何かわからない事があったら言って。じゃあね。」


ナット「うん。...(間違いない。あの子..インスティチュートで暮らしてた子だ。)」


三年前のインスティチュートの壊滅の際に本部は跡形もなくミニッツメンによって爆破された。避難し生き残った研究員や子どもたちはミニッツメンが保護した。研究員にはインスティチュートの行いに反感を抱いていものおり、数人の科学者達がミニッツメンに加わった。


ナット「(やっぱりなんかわかっちゃうんだよな....なんでだろ...」


新しい新聞のアイディアが芽生えかけた時、ベンチに男が腰かけてきた。


ジーク「こんな所に女の子一人で何してるんだい?」


はっとしてナットが振り向くといかにも胡散臭そうな(彼女にはそう見えた。)サングラスを掛けた男がいた。ダサ...。直感的にそうナットは思った。


ナット「独りじゃないわ。近くにパパと同僚のトリガーマンが何人もいるの。」


警戒してとっさにそう口走った。だが男の顔色に変化はなく。余裕な口調で言った。


ジーク「俺に嘘は無駄だ。女の嘘は、特にな。」


ラウディ「何してるんだ。」


そう言うとジークは彼女へ歩みより肩を抱いた。その女性の登場にはナットも安堵の表情になった。


ナット「ラウディさん..?。私の事覚えてる?パブリックオカレンシズのパイパーの妹の...」


ラウディ「ああ..昔取材してきたあの可愛い娘でしょ。あたしたちが有名になるのに一役買ってくれた。」


ジーク「パイパー?俺は知らないぞ。」


ラウディ「あんたはパワーアーマーレースのせいで風邪引いて寝込んでたでしょ。」


ジーク「..ああ!..あの時の..」


ナット「じゃあ..あなたがジークさん?..アトムキャッツがこんなところで何してるの?」


ラウディ「ライブよ。ミニッツメンの傘下にキャッツが加わって一周年のね。」


ジーク「傘下じゃないぜ。協力しているだけさ奴等の格好を少しはマシにしてやるための。」


ラウディ「はいはい..。後はパワーアーマーの整備や提供とかね。にしてもなんであなたがここに?お姉さんと一緒に来たの?」


ナット「ええ。実はこれからパイパーやパイパーの仲間とサンクチュアリに行くの。」


ジーク「サンクチュアリだって?。少し長旅になるぜ。デスクローの騒動も治まったばっかだってのに。」


ラウディ「そうよ。あなたみたいな子どもにはまだ危険なんじゃない。悪いことは言わないわ。旅はもっと大人になってからでいいんじゃない?」


ラウディから子ども扱いされナットはムッとした。彼女ように大人びた女性に言われると余計にそう感じた。


ナット「確かに見た目は子どもよ。でも自分が危険な時に取るべき行動はわかってるわ。それに連邦では大人になるのに見た目なんて関係ないでしょ。」


自分でも生意気に感じたがもうどうしようもない。仕方なく胸を張ることにしたが、多分これで良いのだと心なしか思った。するとジークは口笛を吹いて言った。


ジーク「君。可愛い顔してなかなか度胸あるね。」


ラウディ「わお。なかなか言うのね。貴女。」


自分の勘が間違ってなかったようで内心ホッとした。


ラウディ「いいわ。生意気な子猫ちゃん。私が間違ってたみたい。」


ジーク「気に入ったぜ。今度会った時までに君のサイズに会うようなアトムキャッツのジャケットを作っておくよ。きっと気に入るぜ。」


ナット「はは..ありがとう。」


ラウディ「発つのはさすがに明日でしょ。よければライブを見に来て。色んな組織から集まったクールな奴等が詞を朗読して盛り上がるから。」


自信たっぷりな物言いで語るその企画に不安がよぎりつつ、わかったわ必ず観に行く。と言ってしまった。少なくとも暇潰しにはなるとは思ったからだが、後に彼女はこの事を後悔した。

・・・・・・・


ダンスに連れられて二人が来たのは、ミニッツメンの重要な話し合いが行われる会議室だった。二年前に三勢力とその他勢力の指導者、将軍、エルダーマクソン、デスデモーナが揃い協定を結んだ場所だった。


パイパー「で、大事な話とは何かな?」


ダンス「うむ...。」


うつむきながら、考え込んでいた。ダンスもここ二年で随分変わったが、それでもこんな彼は珍しかった。


ガービー「不味い事でも起こったか?」


ダンス「ああ。連邦に新しいレイダー達が出没してる。...ヌカワールドの生き残りだ。」


その言葉に二人は驚きを隠せなかった。

ヌカワールド。かつての巨大テーマパークだ。二年前..数奇な導きから将軍はそこにたどり着いたのが始まりだった。そこはレイダー達の巣窟で、彼らは連邦のそれとは比較にならない程に統率され狂暴で強かった。だが、彼らも最後は将軍とその仲間達の前に壊滅した。唯一彼らに降伏しミニッツメンに服属したもの達はまとめてオペレーターズと呼ばれミニッツメンの兵力となった。ヌカワールドからレイダー達がオペレーターズも含め退却した後、その支配権は奴隷となっていた。トレーダー達に渡され、形のみだが、将軍が総支配人となり。ヌカワールド騒動は幕を閉じた。


ガービー「....ブラック達は?」


ダンス「調査してるそうだ。今のヌカワールドの支配人が言うには、自分達がトレーダー時代に使っていた裏口から逃げたんじゃないかと」


パイパー「あいつらが連邦に...被害は?」


ダンス「東の農場で10人ほど、ディサイプルズのやり方で殺されていた。すでにbosでも死傷者が出てる。」


ガービー「....部隊は?」


ダンス「奴等の調査にミニッツメンの腕利きやBOSが当たっている。一度戦闘もしたそうだ。それで分かった事がある。奴等は..ヌカワールドの残党だけじゃない。第2世代の人造人間も混じっていたそうだ。」


パイパー「そんな..!、...ラストデビルね。」


ダンス「奴等もヌカワールドの残党と行動を共にしてるそうだ。奴等がそこまでの技術を付けるとは思わなかったが...きっと協力者がいるはずだ。」


ガービー「....俺も部隊を編成しよう。奴等の全滅と調査にあたる。」


ダンス「いや、ガービー。お前には、すまないが別の事をしてもらいたい。よければ君にも協力して欲しいパイパー。」


パイパー「あたし?」


ダンス「君たちの能力は充分分かってる。だからこそ頼みたいんだ。」 


ガービー「何をすれば?」


ダンス「各地の拠点に赴き、防衛を強化してくれ。そして..彼を..将軍をここに引っ張り出してほしい。彼の力が必要だ。」


パイパー「ブルーを?」


ダンス「無線装置に不具合が発生してな。あれは彼が設計したものだ。直してもらいたいんだ。」


ガービー「...頼めるか?パイパー」


パイパー「断るなんて思う?やるに決まってる。」


ダンス「よし。...分かってると思うが陸路で頼む。BOSにはもう飛行機の残機がないんだ。」


ガービー「むしろそっちの方がいいさ。なぁ、ナットはどうする?」


パイパー「スペクタルアイランドに置いてくしかないね。ミニッツメンに囲まれてば安全だ。」


ダンス「こんな事を頼んでしまってすまない。君たちが出ている間に私達は南側の拠点や検問所の調査に専念させてもらう。」


三人が外に出た頃には辺りは既に夜になっていた。昼間と違い涼しい風邪が吹いていた。パイパーはナットを探しに行き、ダンスは書類仕事を済ませると、また室内に戻って行った。


プレストンはふとコンクリートで修復された壁に目をやった。三つの組織の旗がライトに照らされ飾られていた。それはその組織らの友好と団結を表したもので。ミニッツメンの旗はプレストン本人が着けたものだ。プレストン壁にもたれかけながらそれを見つめた。


プレストン「やっと始まったんだ...終わらせてたまるか..」


[4: ミニッツメン ]


数週間前・・・連邦の何処か。


男はカードをいじっていた。タロット占いに使用する物だ。イスに座り、机にカードを広げて、占いの手順を確かめた。酒場の前に位置を確保したものの酒場に入る客はまばらで自分の客になるもの者などいなかった。

潮時か..別の事で金を稼ぐべきか..。すると男が一人、前に座った。物好きですね..占いを信じられるとは、成る程..奥様の。男はカードを並べながら親切に男に接した。すると客の男は彼の布で巻かれた左腕について聞いた。この腕?連邦に来る前に撃たれたんです。..ご心配どうも、優しいですね。最近の連邦は安全だと聞いて来たんです。さてと..後はめくるだけ..らしいですね。占いを?..実は信じてないんです。現実主義でしてね..お客さんも多分そうでしょ。..だと思いました。さて..めくってみますか。


現在キャッスル・・・・


ナット「はぁ...楽しかった?パイパー。」


パイパー「勿論だよ。今期の詩は季節的だけど猟奇性を秘めさせた者が多かったね。新聞のネタにもなったし、ありがとうね。ナタリー。」


満足げな顔をしてパイパーは言った。


ナット「う...ん。あたしもつまらなかったわけじゃないんだけど何だかピンとこないかな。」


パイパー「それはまだ、ナットちゃんが子どもだからじゃないの。」


反論しようと思えばできたが、多分反論で返されると思い。ナットは口を閉じた。


ナット「はいはい。あなたに比べればまだ子どもよ。たくっ...」


パイパーは意地悪く微笑んだ。


パイパー「さてと。もう遅いし休もうか。」


ナット「そうだね。あたしもう歩けないよ」


二人は、キャッスルからスペクタルアイランドに行く渡し船に乗ってスペクタルアイランドに向かった。ナカノ家協力、と書かれた。船には、ミニッツメンやトレーダー達が窮屈そうに揺られていた。しばらくすると遠くの方で巨大な建物に覆われた離島をナットが見つけた。


ナット「へぇ...あそこがスペクタルアイランドなんだ。」


パイパー「三年前まで、モンスターと植物しかなかった島があっという間に町になったんだよ。ミニッツメンの皆で作ったんだ。あたしも手伝ったんだよ。ペンキ塗りとか。」


ナット「妹を家に一人でほったらかしてそんな事してたんだ...」


パイパー「...そうだね。うん。ごめん。」


スペクタルアイランドは、その土地とキャッスルからの距離からミニッツメンの領土の中でも最も広い居住地だった。ミニッツメン達の大半はここを生活の拠点にしている。船が到着すると二人は食堂で夕食を済ませると空き部屋に向かった。


パイパー「ふぅ...疲れた...。」


ベットにうつ伏せになりながらパイパーは呟いた。


ナット「ふぅ...明日から冒険か...楽しみだな。」

ソファーでくつろいでいたナットは楽しそうにそう呟いた。パイパーは胸の奥がキュッと締め付けられるような感覚になった。


パイパー「..そう。明日のお昼位に出発するから充分休んでおきなさい。」


ナット「分かってるって。プレストンはまだ仕事?」


パイパー「明日の準備だって。」


ナット「そっか..真面目だねぇ。ねぇパイパー?」


パイパー「なに?」


ナット「今回の旅で一番行ってみたい場所はどこ?」


パイパー「多分....サンクチュアリかな。」


ナット「ああ..あの人に会えるからね。」


意味を持たせた言い方だった。


パイパー「あのね..。ナッ、」


ナット「はいはい。ごめんなさい。私も一番行きたいのはサンクチュアリかな。ショーン君に会いたいし。」


パイパー「(子どもは素直だな....ブルー..いま何してるんだろ..)」


ナット「ただバンカーヒルは嫌だな。あいつがいるし。」


その後も二人は他愛のない話をつづけた。

・・・・・・


プレストン「これで荷物は全部だな。バラモンはどうだ?」


ミニッツメン「大丈夫ですよ。このバラモンなら。いまうちで一番根性がある子ですから。」


そう言って若い隊員がバラモンの2つの頭を交互に撫でた。


プレストン「休みを先伸ばしにしてしまったな。すまない。」


ミニッツメン「大丈夫ですよ。人を護るために旅をするからミニッツメンに入ったんです。むしろ楽しそうじゃないですか。」


プレストン「そうか。だが、事は一刻を争う。観光なんてしてられないぞ。」


ミニッツメン「えぇ...まぁ..ですよね。」


プレストン「お前ももう休め。日が上がる前に出発するからな。」


ミニッツメン「はい。お疲れ様です。」


そう言うと若いミニッツメンは船へと向かった。まだ若いが戦力としては充分だった。


ダンス「終わったか?プレストン。景気付けに酒でもどうだ。」


プレストンは喜んで承知した。

二人が最後に飲んだのはずいぶん前だったが、その時はお互い酔っぱらうのに時間はかからなかった。いまもそうだ。


ダンス「はぁ...平和になったと思ったら、これか....正直に言ってしまえば、あいつらはヌカワールドで始末してしまえば良かったと思ってる。」


プレストン「それじゃ....多分、あいつらと変わらない。ミニッツメンのやり方に反するからな...それに将軍が許さなかっただろうな。」


ダンス「まぁな。彼はいつもそうだ...最後に会ってから随分経つな。」


プレストン「俺もだ。元気だといいが...BOSではどうだ?」


ダンス「..最近は昔に戻ってきてる。私が人造人間だという事が少しずつ気にならならくなってるみたいだ。」


プレストン「良かったな。...長い人生なんだ。いつか皆。気にしなくなる時がきっとくる。」


ダンス「だといいがな。お前はどうだ。隊長というのは。」


プレストン「いい気分だ。本当に....」


ダンス「..嘘をつくな。」


プレストン「ははっ..辛いもんだな。」


ダンス「だと思ったよ。いいか。兵士たちに必要なのは、お前のような立場の人間なんだ。いることで彼らは安心できる。」


プレストン「分かってる。俺も経験したからな...でも俺は...たまに思うんだ。自分なんかでいいのかって。」


ダンス「...」


プレストン「今まで最低な状況だったからこそ。何も考えずに理想を優先させる事ができた。でも、いまになってみると...あまりにも多くの事に背を向けたんだって気付き始めてきて、...その全てが..」


プレストンは言葉を詰まらせた。


ダンス「無理をするな。きっといつかは答えが見つかる。だがその間は..耐えるしかないんだ。」


プレストンはコップに入った酒を飲みこんだ。その表情には苦悶の色が浮かんでいた。


ダンス「だが....一人で苦しむ事はない私達も少しは力になれる筈だと思う。その事を忘れるなよ。」


プレストン「...ありがとう。お前も変わったな....」


ダンス「そうか?誰かに影響されたからかもな。」


プレストンもダンスもその後、他愛ない会話を少ししたが、二人は明日のために早めに切り上げる事にした。

・・・・


パイパーが目を覚ました時にはまだ外は暗く。

静かだった。ナットもまだ眠っており物音を立てないように荷物を詰めた。最後に手紙を書いた。妹への謝罪だった。それを眠る彼女の側に置き。頬にそっとキスをした。


舟乗り場には先に二人がいた。一人はプレストン。もう一人は軍服を着こなした老婆だった。


ロニー「別れは済ませたかい?」


パイパー「ええ。あの子の事...お願いします。」


ロニー「任せなさい。子守なら慣れてる。」


パイパー「ありがとう..」


ダンス「...うぅ。すまない。準備があって遅れた。」


プレストン「昨日の酒が残ったか..」


ダンス「お前はいつも平気だな。私はいつも酷いよ。さて...彼女達もいれて、全員だな。」


ダンスに後ろにいた二人の若者がさっと隊列を組んだ。

 

プレストン「パイパー。紹介しよう。右の女性がスー。スナイパーだ。」


ゴーグルのついたミニッツメンの帽子を被り

薄手の服にレザーアーマーを装備していた。

背中に背負っていたライフルはかなり高価な物に見えた。


スー「よろしくね。ライトさん。」


パイパー「パイパーでかまわないよ。良いライフルだね。」


スー「どうも。昨日トレーダーから買った新品なの。」


プレストン「左の男がソルトだ。バラモンの体長管理や。気象学に詳しい。」


ミニッツメンの制服にバックパックと必要最低限のアーマーという出で立ちだった。それに

背が小さい訳ではないが、スーの横に立つと二人の背丈はほぼ同じでありこれもあってかパイパーには少したよりなさげに見えた。


ソルト「始めましてライトさん。バブリックオカレンシズは毎号見てます。」


パイパー「本当に!?読者に会えて光栄だよ。後で感想教えて。」


プレストン「これで全員だな。ではロニーショウ。キャッスルの事をお願いします。」


ロニー「まかせなさい。あんた達も本当に気を付けるんだよ。」


ダンス「心配ないさ。プレストンはともかく。パイパーも腕が立つし。スーとソルトも優秀な兵士だ。きっと大丈夫だ。」


ロニー「きっとなんて。そんな言い方するんじゃないよ。縁起が悪い....。スー!ソルト!あんた達も足引っ張るんじゃないよ。」


スー「気を付けます大佐。」


ソルト「頑張ります。」


ロニー「よし。」


ダンス「では、全員に目的を明確に説明する。まず、サンクチュアリまでの道のりで拠点に武装の強化をさせ、遠くの拠点にも同じことを伝えるメッセンジャーをそこから派遣させてくれ。南側は既に派遣した。君たちは北側を頼む。そしてサンクチュアリについたら、将軍を呼んで、ここにつれてきてくれ。」


スー「質問なんですが。何故、わざわざここに将軍を?」


ダンス「彼の戦力と指揮力が必要なんだ。それに将軍なら複雑な機械の修理できる。彼がここに着きしだい。三勢力の会議を予定している。」


パイパー「それが、今回の旅の目的ね。」


ソルト「一刻を争うわけだ。」


プレストン「だが、やることは分かってる。今や連邦に新たな危機が迫ってる。俺達が行動すれば、止められる。」


スー「ははっ凄い。あ、ごめんなさい。」


パイパー「よし。皆でちゃっちゃと終わらせちゃおうよ。」


ダンス「パイパーの言うとおりだ。..気を付けろよ。アド・ヴィ」


プレストン「待てダンス..。俺たちはミニッツメンだ。そういうのは..」


ダンス「だが..こういう場合は掛け声が必要だろ?」


パイパー「でも..ミニッツメン的には..その言葉はちょっと..やり過ぎ?」


ダンス「わかった。..じゃあ...そうだな。」


ロニー「はぁ...みんな、無事に戻ってきなさい。」


パイパー「...いいね。いいフレーズだよ。」


プレストン「良い感じだな。よし..船に乗って出発だ。」


四人はボートに乗り込み。スペクタルアイランドを出た。

遠くでダンスとロニーショウが見送ってくれていた。朝陽が昇り始め、海面に日の光りが反射していた。


プレストン「二人とも大丈夫か?」


スー「平気です。ソルトもそうでしょ。」


ソルト「僕は..なんだか不安になってきた。こんな長い旅に出たことなんてないからさ。」


パイパー「二人とも大丈夫だよ。ただの新聞記者ですら連邦の隅々を旅してきたんだから、兵士のあなた達にできないわけないでしょ。」


スー「ほらライトさんだってそういってるじゃない。大丈夫だって、きっと上手くいくからもっとシャキッとしなよ。」


ソルト「そういわれればそうだけどさ...でも。まぁ..そうだね。」


半分諦め気味にソルトは言った。そんななかでパイパーはやはり浮かない顔をした。


パイパー「(ごめんねナタリー。...よし気合いいれなきゃね。)」


スー「隊長?それで最初は何処に向かうんですか?」


船を操縦していたプレストンにスーが聞いた。


プレストン「大きな拠点に向かう。人も多く出入りしていてミニッツメンとも関係が深い場所...まずはバンカーヒルだな。」


[5: ヌカワールド ]


一年前の夏のことだった。なにがパックスとディサイプルズそしてオペレーターズ達を駆り立てたかは証人のいなくなった今となってはわからないが、その日ブラック姉弟はミニッツメンに着いた。反旗を翻したレイダー達がまもなく倒れていく中で、彼女達と数人のレイダー達はミニッツメンに降伏した。例え生き残っても明るい未来など彼らにはあるはずなかったがそれでも彼女達は生きることを選んだ。


ヌカワールド・・・ミニッツメンがキャッスルに着いたのと同時期。


書類仕事の合間にマグスブラックは窓の外で賑わう観光客を見ていた。

ヌカワールドのレイダー達がミニッツメンの管理下、もっと言えばオペレーターズの管理下に入った後、オペレーターズのリーダーであるマグスブラックはミニッツメン等の監視の下で腕を買われ警備責任者となっていた。


マグス、と声をかけられる。仕事の報告に来た部下だった。


マグス「何かしら?」


オペレーターズ「今週の収益です。時間はありますか?」


マグスは椅子を回し部下の方を向いた。

その男はかつてパックスに属していたレイダーの男だった。彼のように自らの組織を抜けオペレーターズについた人間も少なくはなかった。


マグス「あるわ。続けて。」


オペレーターズ「はい。今週はモハビからキャラバンが来ていたのでマッケンジー達も随分儲かったみたいです。その分俺達への取り分も少しは増えています。」


マグス「そう。....ここ、この日に売れた品数分よりキャップの量が少ないわね。どういうこと。」


オペレーターズ「その...随分口の上手い奴に値段を負かされたらしくて、モハビのキャラバンに混じってたあの運び屋です。」


マグス「ああ...彼女..。わかったわ。下がっていいわよ。」


オペレーターズ「はい。」


彼が部屋から出ていくと入れ替わり二人の男が入ってきた。一人はマグスの弟でオペレーターズの副官であるウィリアム。もう一人も見知った顔ではあったが少なくとも会いたいと思う者ではなかった。


ウィリアム「すまない。止めたんだが」


ディーコン「弟さんは悪くない。連邦一の敏腕工作員が相手なんだ。仕方ないさ。」


颯爽と登場した男にマグスは溜め息を吐いた。


マグス「ディーコン。今度は何処のお使い?レールロードそれともミニッツメン?」


ディーコン「後者だ。連邦に出没中のお宅の元同僚についてだ。」


そんな事か。と内心で安堵したのかマグスは笑みを浮かべながら言った。


マグス「調査中だ。ウィリアム。」


ウィリアム「連日連夜。オペレーターズに加わった元ディサイプルズやパックスの奴等への情報の聞き出しと裏切り者の調査が行われている。」


マグス「徹底的にね。おかげで有益な情報もいくつか集まったわ。でも調査するならどうぞ。私たちに止めれる権限はないから構わないわ。」


ディーコン「成る程。積極的に強力してくれてるようだな。本部への調査報告はそんなんでいいだろ。」


ウィリアム「わかったら。土産でも買って帰ってくれ。」


ディーコン「いいや実はもう一つ。新しい提案をしに来たんだ。」


マグス「なに?」


ディーコン「レイルロードで考案した新しい作戦でミニッツメンの許可も降りてる。新しい部隊を作る。あんたと..俺で。」


ウィリアム「なんだと?」


ディーコン「連邦ではぐれレイダーどもを捜査する新しい部隊だ。レイダーを追うならレイダーってな。それで、メンバーとしてここから何人か先鋭集めて俺が指揮する。ただし俺は見張り役。実際の指揮はあんただ...マグス。」


マグスは何も言わずディーコンを見つめた。


ウィリアム「意味がわからんな。彼女はここの総括者なんだぞ。もし外で何かあったら...」


ディーコン「二人いる責任者の一人だろ。ミニッツメンの許可は降りてるし危険は最小限に抑えてあるから心配するな。今回の作戦が上手くいけば連邦でのアンタらの評判も良くなる」


ウィリアム「仮定の話だろ。それに、」


ディーコン「それに?そうそれにだ。」


ディーコンは顔を椅子に座ったまま沈黙するマグスに向けた。


ディーコン「これが成功すればお前達の命の恩人に借りを返すことができるはずだ。あんたが自らが動いたとなればなおさらだろ?」


ディーコンはマグスの顔つきが変わった事を見逃さなかった。


ウィリアム「マグス?.....やるのか..!?」


マグスはため息をつきながら口を開いた。


マグス「...ウィリアム。仲間達のプロフィールを持ってきて。」


ウィリアムは困惑しながらも部屋を出ていった。ディーコンとマグスが部屋で二人机を隔てて向き合っていた。


ディーコン「感謝するマグス。で...人選には何日待てば良いのかな?」


マグス「..1日よ。明日の早朝には出発できるわ。」


ディーコン「それは素晴らしいな。じゃぁ、これから宜しく副官殿。」


マグス「少し待つと思うわ。どうぞ椅子に座ってくつろいで。」


マグスは資料に目をやりながらそう言った。ディーコンは何も言わずに腰かけると鼻歌を歌いながら窓の外に広がるヌカワールドを見つめた。


マグス「(ディーコン..あんたの事だ。何か裏があるんでしょ...)」


マグスは資料に目を通すふりをしながら目の前の男の真意を考察した。部屋で二人。一人は牙を折られたレイダーのボス。もう一人は、そうなった要因の一端とも言える男。彼女達の間に信頼関係は今のところなかった。



[6:シャーリー ]


ミニッツメン検問所 テント


枕元で挙がったバラモンの鳴き声にスーは目を覚ました。キャッスルを出発して一日。プレストン達はミニッツメンの検問所で休息していた。


スー「ソルト!この子鳴いてるよ!」


ソルト「どうしたんだ?エサならさっき食ったろ?トイレか?」


スー「トイレ?だったら速く連れてってあげてよ..ここでされたら堪んないって。」


ソルト「はいはい。まったくバラモンはデリケートなんだからちょっとは言葉を選んでくれよ。そんな事言われたら傷付くだろ。」


バラモンは何も答えずソルトに連れられて林へ向かった。


スー「...だよね。..何であんなこと言ったんだろ..。」


パイパー「ソルト!ちょっといいかな?」


パイパーがハンドガンを握りながら言った。


パイパー「さっき念のために撃ってみたんだけど、どうも照準が合わなくてさ、ちょっと見てくれない?」


スーは言われるまま彼女の銃を点検し始めた。


パイパー「へぇ。ガービーが言った通り、本当に詳しいんだね。」


スー「まぁ..昔そういう店でアルバイトしてて。」


それから少し時間が掛かった。その間のスーは人が変わったように銃を点検していた。


スー「たぶん..ネジが錆び付いてたから撃った衝撃でスコープの位置が狂ったんだと思います。随分長い間使ってなかったんですね。」


パイパー「最近は滅多に使う機会がなかったらね。整備もしてなかったかな。」


スー「それにしても凄い...こんな改造品キャッスルにも流れて来ないですよ。」


パイパー「それは買ったんじゃないの。友達に昔改良してもらったんだ。」


スー「凄い人ですね..ここまでいじれる人はそういませんよ。」


するとパイパーは何か思い出したように苦笑いした。


パイパー「はは..そんなの序の口だよ..」


スー「何か言いましたか?」


パイパー「いや、何でもない。」


スー「私にも紹介して欲しいですその人。旅が終わったら会いに行きたいです。」


パイパー「その人に会いに往くんだよ。だから旅してるの。」


スー「え? じゃあ..これってしょうぐ..」


プレストン「みんな。そろそろ出発するぞ。..? ソルトは?」


スー「あ、バラモンのトイレに..」


ソルト「から戻りました。長旅で緊張してただけみたいです。」


プレストン「よし。荷物をまとめてここを出るぞ。 」


そう言うとプレストンは検問所のミニッツメン達の元に歩いていった。


プレストン「泊めてくれてありがとう。助かった。」


ミニッツメン「当然の事をしただけですよ。バンカーヒルまでの道には最近レイダーの報告はありませんから気を楽にしてください。」


プレストン「そうか..ここら辺も随分平和になったな。」


ミニッツメン「そうですね...。本当に嬉しい限りですよ。ガービーさん。..このドッグタグを届けてくれて..本当にありがとうございます。遺ったものは、もうこれしかなかったんです。」


プレストン「...すまない。体はまだ..」


ミニッツメン「ええわかってます。..奴ら..まだひよっこですが..どうか..宜しくお願いします。」


男は帽子を取り深々と頭を下げた。


プレストン「...わかってる。元気でな」


プレストンも同じく帽子を取り頭を深く下げるとバンカーヒルへと向かっていった。

遠くでパイパーも同じく頭を下げていた。


パイパー「...ここからどうする?」


プレストン「バンカーヒルに直行する。そしたらサンクチュアリだ。」


パイパー「わかった。...スー、うなされてたよ。」


プレストン「..旅に慣れてないんだろう。サポートしてやらなくちゃな。君は大丈夫か?」


パイパー「あたしは平気だよ。何でもない。」


プレストン「ならよかった。..そう言えばニックはいつ帰ってくるんだ?」


パイパー「ファーハーバーには一週間だけだ。って言ってたけど...また1ヶ月は戻ってこないんじゃない。」


パイパーは呆れた様に言った。


プレストン「あいつも副業が忙しいんだろう。」


パイパー「初めて自由を手にした人造人間。聞えはいいしあの見た目じゃ英雄みたく語られても仕方ないけどさ。」


プレストン「まぁな。」


パイパー「そっちは..最近どう?誰か良い人とかいないの?」


プレストン「ちょっと前までいたんだが..仕事が忙しくてね。」


パイパー「そうだったんだ。..大丈夫だよ。また良い人が見つかるって。」


プレストン「ありがとう。そういえば、君とはもう長い付き合いだが..確か君から彼氏の話は聞かな..」


パイパー「さぁて!!バンカーヒルまでまだまだ長いんだ!張り切らなくちゃね!!」



スー「...ねぇ?」


ソルト「どうした?...二人のこと?」


スー「うん。なんだか..仲良いよね。」


ソルト「たぶん君が考えてるようなものじゃないと思うよ。」


スー「そうかしら..。あたしの勘の良さ知らないでしょ。」


ソルト「鈍いだろ。お陰でバラモンが傷ついた。」


スー「動物の事なんか知らないわよ..人間の話をしてるの。」


ソルト「ほら、また。」


バラモンの近い方の頭の耳を手で塞ぎながら呟いた。


スー「たく、こっちが優しくしてんのにあなたは!」


パイパー「二人のとも何か困り事かな?」


パイパーが二人のなかに割って入った。


ソルト「何でもないですよ。」


スー「何でもなくない!聞いてくださ....」


スーは急に黙るとそこに立ち止まった。


パイパー「スー?」


ソルト「..どうしっ」


スー「銃声...構えて!!」


プレストン「確かか?」


駆け寄ってきたプレストンがスーに尋ねた。


スー「まだ遠いですが、確かです。」


ソルト「ここら辺にレイダーはいない筈じゃ..」


パイパー「でも誰かが襲われてるのかも..行こう。まだ間に合っ、」


パイパーの背後で起きた巨大な爆発による爆音で彼女の声がかき消された。ビルとビルの間から小さなキノコ雲が浮き上がっていた。


スー「あ...」


パイパー「......」


プレストン「..行った方が良さそうだな。」

・・・・・・・


娘と別行動をとったのは、俺の人生の中で最も大きな間違いだった。次は犬を飼ってやった事かな。爆発で薄れ行く意識の中で男はそう思った。手足があるのを確認すると立ち上がろうと試みたが力が入らず断念した。すると地面を鳴らす巨大な足音が聞こえる。煙の中から巨大な影が浮き出てきた。


クリントン「しぶといな。くそっ。」


腰に着けていた10mピストルを構えて煙に浮き出る影に向けて撃った。だが視界が歪んでいるせいか銃弾はあらぬ方向に向かっていった。1発。外した。また1発。駄目。もう一度。また駄目。もう一度。今度はしっかりと胸のあたりを当てた。


クリントン「倒れ...ないよな。その図体じゃ。」


クリントは煙から全貌を表したベヒモスに向かって言った。

体は焼け焦げボロボロだが、それでも目の前にいるクリントを殺そうと彼へと向かっていた。


クリントン「勘弁してくれ。...誰か!!..助けてくれぇ!」


クリントンは叫ぶが聞こえてくるのはベヒモスの怒りに満ちた唸りだけだった。


クリントン「終わりかよ...。くそっ。シャーリー..」


その瞬間だった。視界を全て支配するベヒモスの開けた口に赤い閃光が飛び込んだ。それはベヒモスの口内を貫いて頬に穴を開けた。


ガービー「パイパー!彼を頼む!」


パイパー「ベヒモスにケンカ売るなんて正気じゃないよ!」


クリントン「はぁ..ぁぁ..く..。」


...よかった。俺にはまだ運があったみたいだよ。パイパーに引きずられながらクリントンは亡き妻に向けて呟いた。


ソルト「傷の具合は!?」


パイパー「自分で歩けないみたい..爆風の影響だと思う。スーは?」


ソルト「ガービーさんと一緒です。..上手く逃げ切ったと思いっ、」


突然の地響きに二人は態勢をくずした。


スー「なんでかなぁ!。ついさっきまであたし友達とケンカしてたのに..いつのまに..巨人に食べられそうになってるの!?」


ガービー「核爆弾が発明されたからだ。」


ベヒモスが怒りで暴れだし、それにより地面が世話しなく揺れていた。幸いにもベヒモスは彼らを見失っていた。


ガービー「今なら逃げられる..。パイパー達は?」


スー「あの三つ目の角の向こうです。...どうしてもらいます?..この方には。」


ガービー「...そうだな..あのケガじゃ長くはないだろう。..ほおっておいてもいいが。.....それができればな。」


するとガービーは横に置いておいたヌカランチャーを脇に抱えて歩きだした。


スー「さっきの爆発がそれ単体の物だとしたら相当な物ですよ。」


ガービー「そうだな。君はパイパー達の所に先に行ってくれ。俺も後から行く。」


スー「はい。..それもって帰ってきてくださいよ?捨てるには勿体ないですから。」


スーは走り出した。ガービーはベヒモスから距離を取るとランチャーを構えた。


ガービー「ふぅ..良し。」


クリントンが喋れるようになると始めに口にしたのは娘の事だった。


パイパー「わかった。じゃあ何処に隠れてるの?」


クリント「いちば..ん近くの..レッド..ロケット..」


パイパー「場所は知ってるわ..あなたは?」


ソルト「わかります。パイパーさんは彼を診ててください。俺は、」


スー「二人とも大丈夫?」


ソルト「彼女と行って来ます。パイパーさんはクリントさんを。」


パイパー「わかったわ。スーお願いね。」


スー「わかりました...けどなんの話?」

・・・・・・・


再び大きな爆音が遠くで聞こえた。また大きなキノコ雲が上がっているんだろうなとシャーリーはレジの下から身を乗り上げ窓から外を見つめた。足元で彼女のペットの犬がひどく怯えていた。


シャーリー「だいじょうぶ..。父さんはきっと帰ってくる。」


犬の眉間を撫でながらシャーリーは呟いた。

またレジの下に戻ろうと後ろを振り向いた時だった。角の向こうのドアが開く音がした。彼女は銃を構えた。


シャーリー「...父さん..?」


角から現れたその姿はとても人の物とは思えなかった。裂けた口から血が滴り。細く長い腕がふらふらと腰で揺れていた。自分よりも数十センチ高いそのグールの登場にシャーリーは圧倒された。


シャーリー「..っ!」


パイプピストルを構え、頭へと照準を合わす。

不規則なスピードで距離を縮めるグールにシャーリーは緊張に手を震わせた。


シャーリー「..くっ!...」


1発目は肩に当たった。だが威力が低いのか、上半身を傾かせる程度で歩行は止められない。

血の臭いが香りだした。血に反応したのか威嚇するばかりの犬が足元から抜け出しグールへと飛び付いた。グールの肩はあっけなくもげ、激しく抵抗しながらも絶命した。


シャーリー「はぁ...よし。良い子ね。」


犬は気がすむと嘘のようにおとなしく鳴きシャーリーの下へ戻った。


シャーリー「よしよし。...ここは、もう危ないわね..。父さんの所に..?、」


肩に伝わる感触に寒気がした。体の血が一気に抜けていくように力が抜け、そこにヘタリこんでしまった。幸いにそのお陰で肩に噛みつこうとしたグールの歯先から抜け出すことができた。


シャーリー「...!?。あ..ああ!」


我を取り戻しグールから逃げ出したが、前方の空き窓から外を見ると、さらに数体のグールがこちらへ来るのが見えた。距離にして数メートル程だ。


シャーリー「銃..銃は..!?」


後ろでグールの脚がパイプピストルを踏みつける音がした。それだけじゃない。そこらじゅうからグールの叫び声が聞こえる。核爆発の熱風で眠っていたグール達が目を覚ましたのだ。事態はシャーリーの想像以上に酷く。レッドロケットを囲むグールの数は十数体に上っていた。


シャーリー「...とりかえさなきゃ。行って..。」


そう催促すると犬はグールに突進して体勢を崩させた。シャーリーは息を大きく吸い込みピストルへとむかった。犬の悲鳴が聞こえた。


シャーリー「っ、!!」


体勢を崩していたグールは上半身を起こし、その手の爪を犬の背に突き刺していた。傷口からは赤い血がながれていた。空いていた片手でシャーリーを転ばせるが、次の瞬間には左頬に風穴が空いた。

シャーリーの手に握られたピストルからは煙が出ていた。自分が何とか生き延びている事を前にいるグールの死骸が教えてくれた。意識が目の前のグールから解放され、視野がだんだんと広がっていった。前からは二体程、後ろからは三体のグールが侵入しようとしていた。 


犬の弱々しい鳴き声はグール達の声の中でも不思議なほど鮮明に聞き取れた。


シャーリー「(...終わり?....そっか...もう無理か..。)」


自然と銃口が頭に向かっていた。犬を抱きしめそして引き金に力を込めた。グールが二体、部屋へと侵入してきていた。だがシャーリーには引き金を引く事ができなかった。

閉じた目を開け、小さく呟いた。


シャーリー「..助けて」


前のグールが急激にスピードを上げた。口を大きく開き、シャーリーへと突進してきていた。一発の銃声の後、グールはシャーリーの横に倒れていた。脊髄から血が吹き出していた。


シャーリー「.....あ..あ」


スー「女の子を見つけた!中に入るよ!」 


射撃を繰り返し背後のグールが倒れていった。


ソルト「数が多い!このまま逃げるのは無理だ!」


スー「中で数を減らしてから退却しよう!」


二人はそう言うとシャーリーを背に囲んでグールを迎えうった。


ソルトはショットガンを。スーはスコープを外したライフルで応戦していた。


スー「こっちの数が多い!変わって!」


ソルト「こっちを頼む!窓の右に一体隠れてる!」


スーは場所を交代するとすぐさま窓へ移動し隠れていたグールを仕留めた。


ソルト「立てるか!?立てたら窓際まで移動するんだ!」


射撃しながらシャーリーに言った。返答はせず震える足を犬に支えてもらいながら立たせた。

体が言うことを聞かずスーの下に転がるように倒れこんだ。


ソルト「10m!」


スーがマガジンを投げる。ソルトは受け取りショットガンからピストルへと切り替えリロードしグールの胸を撃ち抜いた。


スー「しっかりして!お父さんの所に連れていくから!」


その言葉でシャーリーはまるで目が覚めたような気分になった。父が生きている。なのにふぬけてばかりではいられない。ここで死んで父を哀しませたりはできない。シャーリーは顔を上げ、ピストルを握り窓の外のグールへ射撃した。


スー「はは、やれるじゃん。ソルト!そっちどれくらい!?」


ソルト「4た、いや三体だ!逃げれそう!?」


スー「ええ!走るよ!..走れるよね?」


シャーリー「..え、ええ。大丈夫。」


スー「よし。行くよ!」


シャーリー「行くよ。」


そう言いながら犬の顔を撫でた。窓からスー。シャーリー。犬。ソルトの順で抜け出した。シャーリーはただ前の女性を追って全力で走り続けた。後ろではショットガンの銃声とグールの叫び声が聞こえる。それを背にシャーリーは走った。空は蒼く、道のコンクリートは凸凹としていたが、彼女はひたすら全速力で走り続けた。口内で血の味がしたし疲れはてていたが、それでも空は蒼かったし、いつもと違って見えはしなかった。自分達はちっぽけなんだなと胸がつまった。

・・・・・


いつのまにか眠っていたトレントが目を覚ますと、空には太陽が登っていた。まだ昼前だった。目を擦ろうと腕を上げるととても痛んだし手の感覚も痺れているようだった。だが、そうして始めて気がついた。自分のまだ幼い娘が息を切らし涙を流しながら自分にしがみついていたのだ。


クリントン「シャ...。...」


疲れ果てて眠っていた娘を起こさないように優しく抱き締めた。彼の目から涙が流れていた。


プレストン「.....」


パイパー「知り合いなんだろ。彼らとは。」


プレストン「ああ。初めて会ったとき、将軍とサンクチュアリに戻る途中でな、一週間くらいかな..一緒に暮らしてたんだ。だが...まぁ、とりあえず無事でよかったよ。...彼らを頼む。」


パイパー「ええ。」


プレストンは壁に腰かけたスーとソルトの隣に座った。


スー「....」


ソルト「..?」


プレストン「スー?」


スー「...」


ソルト「スー。」


スー「え..あ、すいません。どうしました?」


プレストン「..いや、二人に礼が言いたかったんだ。彼らは古い知り合いでな。あの子が小さいときから知ってるんだ。..本当にありがとう。」


スー「あの子..大丈夫ですか?..怪我とか..」


プレストン「大丈夫だ。疲れて寝てるよ。」


ソルト「...」 


スー「よかったです。..ハァ..。」


プレストン「ソルトもありがとう。しばらく休んでてくれ」


ソルト「はい。そちらもお疲れ様です。」


プレストン「いいや。こっちは一発で倒れてくれたからな。」


スー「あ、あのベヒモス。..あの、ヌカランチャー..」


プレストン「それが..すまん。壊してしまった。」 


スー「あ。そうですか。ならいいんです。」


プレストン「はは..悪いな。」


そう言うとプレストンは立ち上がりスーとソルトに労いの言葉と感謝を述べて、クリントンのもとへ歩いていった。

スーは目をつぶりうつむいた。そして顔をあげないままソルトに言った。


スー「さっきの口喧嘩は..ごめん。あたしが悪い、ほんとに性格悪かったよね。」


ソルト「さっきの..?あ、ああ、あれは.....」


スー「少なくとも突っかかったのはあたしだよ。だから...ごめん、ソルト。」


ソルト「ああ。...どうして謝ろうと思ったの?」


スー「どうして?..それは..だって...えと..」


ソルト「いや..ごめん。あんまり人に謝られたりした事なくて。その..さっき怒ってたのに、急にどうしたのかなって。」


スー「ああ...。いや..あのね。グールから逃げてる時にさ。生きてられたら、謝んなきゃって思ってさ。」


ソルト「(ああ..そういことなんだ。)ああ。ありがとう。俺も..悪かったよね。俺も..」


スー「...じゃあ。チャラって事だよね。」 


ソルト「ああ。全部無しにしよう。」


スー「オッケ。良かった。....グールでもあんなに怖いもんなんだね。」


ソルト「ああ..ホントに..そうだよね。」


スー「生きてて良かった。」


ソルト「...そうだね。」


二人はそれからはあまり多くは話さなかったが、二人はこの事をずっと記憶に留めていた。


ガービーはパイパーにバラモンを任せ。クリントンの隣に座った。


クリントン「ガービー。前に会ったのは..」


ガービー「去年の9月くらいだな。グッドネイバーに住むんじゃなかったのか。」


クリントン「住んでたよ。でもあそこはまだ治安が悪すぎるんだ。ダイヤモンドシティに家を探したんだけどな..デスクローの騒ぎがあって、それが難しくなってな。それが収まったからダイヤモンドシティに向かってたんだ。」


胸で眠る娘の頭を撫でながら彼はそのあとのいきさつを話した。グッドネイバーを去る前に犬を買った事。

モハビのキャラバンに世話になったこと。そこで不思議な女性に会ったこと。


ガービー「なるほどな..シャーリーには..」


クリントン「ああ。最近は辛い思いをさせてる。...犬を飼っておいて良かったよ。シャーリーに良くなついてる。」


ガービー「なぁ..その犬なんだが..あれは..」


ガービーの目線の先でパイパーがおとなしく座る犬に止血をしていた。


パイパー「我慢強いね君。血が出てるのに表情一つ変えないだから。」


犬「...」


バラモン「..」


犬「ガフッ。」


バラモン「!」


ガービー「スーパーミュータントの犬だよな。」


クリントン「雑種なんだ。毛が生えてるだろ。放射能の影響も噛まれたりしない分はない。」


ガービー「...名前は?」


クリントン「スーパードッグ。」


ガービー「良い名前だな。」


クリントン「シャーリーが付けたんだ。可愛いだろ。」


ガービー「スーパードッグか..。」


ドッグ「..カフッ(くしゃみ)」


ガービー「ハハッ。可愛いじゃないか。..なぁ、あのヌカランチャーはどうしたんだ。」


クリントン「グッドネイバーにいた頃に買ったんだ。ピップボーイを付けた男から。」


ガービー「かなりの改造品だったのに..壊して悪かったな。」


クリントン「いいさ。実際に買ったのは俺じゃない。シャーリーだ。そいつ、シャーリーを見た途端に値段を下げたんだ。50キャップに。」


ガービー「50..?..そいつは?」


クリントン「11月頃にいなくなった。それきり会ってない」


ガービー「ピップボーイか..実は最近、危険な勢力が出てきてるんだ。既に死者も出てる。このあとは?」


クリントン「考えてる..。ダイヤモンドシティに行くかどうか。」


ガービー「ここからじゃ少し遠いぞ。俺たちと一緒に来ないか。いまからバンカーヒルに行くんだ。」


クリントン「バンカーヒル..?」


ガービー「しばらくそこで暮らせば良い。ミニッツメンの検問所がある。ダイヤモンドシティに行くのは、とにかく、少人数では今は危険だ。」


クリントン「..しかし..。」


シャーリーの頭に手をおきながらクリントンは悩んでいた。元々、人に頼るのが苦手な男だった。だが胸で眠る娘の事を考えれば答えは一つだけだった。



[7:マリナー]


ニックは、ファーハーバーとロングフェローを直接結ぶ橋を渡り、ファーハーバーに訪れた。タバコを買う為だ。橋を渡りきり黄色く優しい街灯の光に照らされた港町は良い雰囲気に包まれていた。ニックはそれが気に入っていた。酒屋の扉の前で帽子を脱ぎ、扉を開けて店内を見回した。見せは明るく人がいるお陰か暖かかった。


ミッチ「~♪。ん?..よぉニック!」


ニック・ヴァレンタインの登場に一部の客はざわつき始めた。


ニック「商売繁盛だなミッチ。」


そう言ってカウンターに座った。ミッチと向かい合わせとなった。


ミッチ「あんたのせいでな。なに頼む?」


ニック「タバコと..あとビールを。」


ミッチ「つまみは?」


ニック「まだいい。」


ミッチは先に煙草とライター。灰皿を出した。煙草を一本持ち火を着け、ミッチはコップにビールを注いだ。


ミッチ「しかし、あんたはほとんど機械の癖に酒も飯も食うんだな。」


ニック「食べれるし腹も減るんだから仕方ないだろ。」  


煙を吐きながらニックは言った。すると階段からカウンターへ少女がトレー持って入ってきた。ニックは慌てて火を消した。


ニック「バーサ?ここで何してる?」


バーサ「ああ、ニック。来てたの。」


バーサは慣れた手つきで棚から酒を取りだしながらニックに返答した。


ニック「小屋にいないからおかしいと思った...」


ミッチ「ここでバイトしてもらってるんだ。」


バーサ「ミッチ。上に泊まってる客が睡眠薬はないかって。」


ミッチ「ベイトショップに売ってるって伝えて上やれ。なんなら買ってくるかな。」


バーサ「いいんじゃない。」


ニック「なぁ..ミッチ。バーサを居酒屋で働かせるのは早すぎるんじゃないか。体にも悪いだろ。煙草の煙とか。」


バーサ「煙より危ないもの毎日体にいれてるじゃない。放射能とか。」


ミッチ「そうだぜ。」  


ニックは少しむっとして煙草をポケットにしまった。


ニック「世代が違うのかもな。」   


ミッチ「ちゃんと俺も配慮はしてるから心配するなよ。でも、ロングフェローには言うなよ。裏方で仕事してるってことにしてるらしいから。」


ニック「あっちのバーで働けばいいじゃないか。」


ミッチ「あっちは人が足りてるんだよ。こっちが足りないから手伝ってもらってるんだ。」


バーサと彼女の弟はいま、ロングフェローのホテルで暮らしていた。ミッチはロングフェローの孤島のバーもロングフェローと共同経営していた。


ミッチ「大丈夫さ。そろそろ上がってもらうよ。」


ニックは時計を見た。年代物の丸時計がオレンジの明かりに照らされていた。八時を回っていた。


ニック「良い子は寝る時間だな」


バーサ「いつの時代の話してるの。..それより明日だよね。アカディアのやつ。」


カウンターを雑巾で磨きながらバーサは二人に尋ねた。


ミッチ「ああ、アカディアに皆で出店を開いてちょっとしたお祭りにするんだ。」


バーサ「で、ニックがスピーチしてくれるんでしょう。もう考えたの?」


ニック「スピーチを?..勿論。それより..弟は元気か?」


バーサ「会ってないの?最近は調子良いんだよ。ロングフェローさんの仕事を手伝ったりしてる。」


するとミッチはバーサにビール瓶を運ぶように指示した。バーサはカウンターを抜けてビールを運んだ。


ミッチ「..皆。感謝してるんだ。あんたやあんたの仲間達に。」


ニック「..ネイト達のことか..?」


ミッチ「ああ。あの将軍さまにさ。それにキュリーちゃん達にも。とにかく、あんた達が島に来たお陰で、ここはまともになったんだと思う。」


ニック「どうしたんだ。酔ってるのか?」


ミッチ「なんだよ。たく、せっかく感謝してんのによ。もう二度と言わないからな。」


ニック「悪かった。気持ちは伝わったよ。」


そう言ってグラスを口に運んだ。ふと横を見ると、ニックは驚きのあまり酒を吹き出した。


ミッチ「なんだ。いま気づいたのか?」


ニック「ああ。久しぶりだな...エリクソン。」


ニックの目線の先にはソファーに腰かけるスーパーミュータントがいた。バーサは彼のコップにビールを注いでいた。


エリクソン「久しぶりだな。あ、ありがとうバーサ。」


バーサ「いいよ。常連さんだし。」


ミッチ「バーサ。そろそろ上がっていいぜ。」


バーサ「わかった。じゃあ最後に帳簿つけてくる。エリクソンまたね。」


ニック「じゃあ..俺もそろそろ出るかな。」


ミッチ「おう。また明日な。」


ニック「ああ、そうだミッチ。持ち帰りできるか?」

・・・・・・


息苦しさを覚えてマリナーは目を覚ました。熱っぽく。思考もまとまらず、ただ天井を見つめていた。ベッドから身をのりだし顔を洗おうと洗面台に向かった。

するとドアをノックする音が聞こえた。ノックの仕方でマリナーには誰かわかった。 


マリナー「ニック。開いてるわ」


弱々しいが穏やかな声でマリナーは言った。


ニック「何で俺だとわかった?」


ドアを開けたニックの顔には笑みが浮かんでいた。


マリナー「歯車がきしむ音が聞こえたの。それは?」


ニックの手には布に包まれた小さな何か良い匂いのする物が握られていた。


ニック「ミッチの所のサンドイッチだ。君が好きなやつだよ。」


マリナー「マイアラークの?それはありがとう。座って。お茶を入れるから。」


するとニックはぎこちなく言った。


ニック「ああ。ありがとう。いつも気が利くな。」


テーブルに着きサンドイッチを頬張る姿を見てニックは言った。


ニック「食欲はあるみたいだな..良かったよ。」


マリナー「好物にはね..でも代わりに体が冷えて。彼に申し訳ないわね。風通しが悪いように家を直してもらったのに。」


毛布を握る姿にニックの顔はわずかに曇った。


ニック「あいつは女に弱いんだよ..今のうちにわがまま言っておけ。」


優しく微笑みながらニックは言った。


マリナー「明日..スピーチするんでしょ。何を話すの?」


ニック「もちろん...。」


マリナー「もちろん..?..考えてないんでしょ。」


ニック「....。」


ニックは気まずそうな表情をした。体は若干縮こまって見えた。


ニック「いや..考えてはいたし、それをメモしておいたんだが..ナカノの所に置いてきたみたいでな..」


マリナー「あ-あ..どうするの?いまは船が足りなくて出せないんでしょ。」


ニック「まぁ..君が心配する事じゃないよ」


マリナー「心配してない。..むしろ楽しくらいかしら。」


ニックは唖然とした表情で苦笑した。


ニック「..じゃあ。そろそろ行くよ。待たせて人がいるんだ。」


マリナー「そう。じゃあ..明日は楽しみにしてる。」


ニック「意地が悪いな。誰にもさっきの事は言わないでくれよ、適当な奴って思われたくないんだ。」


マリナー「もう思われてるわよ。..おやすみ..ニック。」


ニック「..また来るよ。..おやすみ。」


ニックはそう言ってドアを閉めた。きっとまだドアの前にいるのだろう。私は咳を我慢しながら自分のベッドに倒れこんだ。残された日数..あと僅かな時間の中で何をしよう..。何が..私にまだできるだろう..。

・・・・・・


バーサ「....彼女はどうだった?」


ニック「大丈夫だよ。少なくとも、俺を苛めるくらいの元気はあるみたいだ。」


二人は橋を渡りながら、ゆっくりとした歩き方で会話を続けた。聞こえてくるのは橋を鳴らす靴音と僅かに聞こえる波の音だけだった。


バーサ「そっか...レッドデスを倒したのに..病気で、だなんて..。」


ニック「...それは昔も今も変わらないな。...結局、現実では何が起こるかわからないものだよ。..だから今を大切にしなければな。恐ろしい事が起こるかもしれない、未来に備えて。」


バーサ「...未来に..備えて..。明日のスピーチ?」


ニック「まぁ..そうだな..使うかもな。..さて、明日は忙しくなる。早起きしなきゃな」


バーサ「えっ....寝れるの?」


[8: ニシャ]


ヌカワールド発モノレール・・・


ニシャの事を良く思ったことはない。彼女の血に飢えた仲間達より多少は話が通じはしたが、深入りするべき人間ではないと思ったからだ。そもそも..理解することなどできないと。だけど...あの時の、あの彼女は..


マグスは夕焼けが差すモノレールで目を覚ました。連邦まではまだ時間があった。


「マグス?」


部下の一人が尋ねた。男だ。弟が推薦した者で優秀な人物だと記憶していた。


マグス「大丈夫よ。サム..大丈夫。彼女は?」


サム「ディーコンと一緒にいます。」



















































 



























































































































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