アイドルと艦娘の因果戦線! 穂乃果「その2だよ!」
アイドルと艦娘の因果戦線!の続編です。
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前回作です。
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第四章・激闘ソロモン海戦!
2042年11月13日深夜、トレス海峡海戦からおよそ半日が経った頃、敵南太平洋艦隊全軍がゆっくりとサンタクルーズ諸島沖からソロモン諸島を目指し進行を開始、この敵の動きはガダルカナル島より発進した星電が捉え、そしてその報告はすぐさまラバウルの艦隊司令部および港で待機中の矢澤艦隊総員へと届けられた。
にこ「敵は今この辺りかしら・・・」
真姫「珊瑚海よりソロモン海を目指す航路です・・・、恐らくはサモアやガダルカナル島からの空襲を恐れての事でしょう。」
凛「提督、いっそまだ珊瑚海にいる幽霊達に撃破してもらってはいかがですか?」
にこ「まあそれは考え方の一つではあるけど、今あいつらが持ち場を離れるとここぞとばかりにオーストラリアの連中が出て来る可能性があるわ・・・」
CIC1「提督!、ガダルカナル島の哨戒機より入電!、敵艦隊は珊瑚海とソロモン海の境目に帯状に陣取ったとの事です!」
にこ「なるほど・・・、端から見れば今の私等にできる事は籠城か本陣目指して突っ込むか、でしょうね・・・」
これまでの挑発攻撃や先のトレス海峡海戦で敵の戦力をある程度削ったとは言え、現在の敵戦力はまだ矢澤艦隊の倍以上あり、正面からまともに戦っても勝ち目は薄い。
にこ「でも後者を選択した場合、敵は鶴翼の陣形を取って数に物言わせて潰す算段でしょうから、ここは籠城で行くわ!」
にこ以外「「「「!!」」」」
かと言って籠城ともなれば補給が続くうちは問題ないが長期化し、万が一孤立して援軍が出せない状況にでもなれば矢澤艦隊は壊滅するが、矢澤はあえてその不安をねじ伏せ籠城を選択した。
参謀長「提督!、籠城などすれば長期化は避けられません!、それにもしその間にパプアニューギニアの陸上基地が復活すれば東と南から十字砲火を浴びます!」
CIC2「それだけではありません!、この戦線での戦闘長期化は統堂艦隊にも影響がおよび、更にパナマ運河が復旧すれば我が艦隊は無論、南方方面から全日本軍が総崩れとなります!」
参謀1「提督!、お考え直しを!」
にこ「あんた達なに勝手にギャースカ騒いでんのよ!、人の話は最後まで聞きなさい!」
矢澤のこの選択に星空、西木野以外の者はこぞって反対したが、矢澤は一切考えを改めずこう続けた。
にこ「ラバウルのあるニューブリテン島を中心にソロモン海は北東のソロモン諸島と南西のニューギニア島に挟まれ、この三つの島の海岸線をつなぐと逆楔型になっているわ!」
真姫「そうですね・・・」
にこ「しかもソロモン海は奥に進めば進むほど縦に長くなり、横幅はどんどん狭くなっていくからもし、敵が一斉に進撃してくるとなれば陣形が縦長になるのは必須、そうなればこちらは側面から突き崩せるし、大軍で押し寄せて来るからその数が仇となって間違いなく身動きが取れなくなる。」
凛「確かに・・・」
にこ「だから敵をわざと懐深く攻め込ませ、敵艦隊が縦に長く伸びきったところを側面から切り崩す!」
参謀長「なるほど!、合理的な作戦ですが艦隊の布陣はどの様に!」
にこ「・・・」
凛「提督?」
にこ「ごめん・・・、ちょっとトイレ・・・」スクッ
矢澤は何処か優れない様子で一度席を立った。
真姫「・・・」スクッ
そして何かを感じ取ったのか、西木野がその後を追う。
席を立った矢澤は司令部の外のベンチに腰掛ける。
にこ「はあー・・・」
真姫「提督・・・」
にこ「なんだ、あんたか・・・」
真姫「何だとは何ですか!、それに何だか様子がおかしいですよ!」
にこ「何でそんな事わかるのよ・・・」
真姫「あなたは昔からすぐ顔や態度に出る・・・、その辺は前世から何も変わってないわ。」
にこ「・・・、実の事言うと、僅かに足りないのよね・・・」
足りない、つまりは作戦に必要な人員が足りていない。
この事は誰から見てもすぐわかる事であったが、今回はどんな策を用いようとそのわずかな人員の穴を埋められない物量差があった。
真姫「でしたら私の航空部隊で敵本陣に切り込みましょうか?」
にこ「何バカな事言って・・・」
参謀2「提督!、港に待機中の愛宕さんから通信です!」
にこ「!!、何事!」ダッ
矢澤は急いで司令部に駆け戻る。
バーーン!
にこ「はあー、はあー・・・、愛宕!」ゼーゼー
CIC2「こちらに・・・」
愛宕「提督!」
ガチャ、ザーーーーー
にこ「?」
那珂「やっほ~!、矢澤提督!、艦隊のアイドル!、那珂ちゃんで~す!」パチコン
にこ「那珂!、あんた確かトラック島にいるはずじゃ!」
那珂「なんか今すぐにラバウルに向かって矢澤艦隊に加われって高坂総長から通信があってね!、だから今回の作戦中限定で我が第四水雷戦隊が矢澤艦隊に加わりま~す!」
にこ「・・・」
那珂「?、提督?」
にこ「・・・った、この戦・・・勝ったわ!」
会議室に戻り、那珂からの通信によって園田直属の第四水雷戦隊が陣営に加わった事を知った矢澤は勝利を確信した。
そして自身に満ちた表情で作戦会議を再開する。
にこ「あ、そうそうさっきの地形戦略の付け足しとして、今回の作戦ではなるべく戦線を広げない様にするわ、そのために一度ガダルカナル島は放棄するけど文句ないわね!」
参謀達「「「了解!」」」
真姫「まあ確かに、戦線を広げたら少数で大軍と戦うのは不可能ね。」
にこ「なお、今作戦は戦国時代の第一次上田合戦をベースに組んでいくわ!」
凛「ほほー・・・」
にこ「そこで各部隊の布陣だけど、まず四水戦、日が昇る前に直ちに珊瑚海とソロモン海の狭間に部隊を構え、敵状をすぐさま知らせて頂戴、具体的な作戦については持ち場に着いたら追って説明するわ。」
那珂「了解!、那珂ちゃん達にお任せ!」
にこ「次にニ水戦と四航戦、あんた達も日が昇る前にこっそりに闇に紛れて出港してサモアに向かい、たぶん翌日の夜明け頃になると思うけど私が合図したらソロモン海の出入り口側より敵の背後を強襲しなさい!」
龍驤・神通「「了解や!(しました!)」」
にこ「次に一水戦、あんた達はブーゲンヴィル島南側、言うなればソロモン海側で待機、アイアン・ボトム・サウンドからも必ず闇に紛れて攻めて来るからそいつらを迎え討ちなさい!」
川内「了解!」
にこ「続いて五水戦と二航戦、あんた達はブイン基地を拠点に攻め込んで来た敵に対して側面から迎撃して頂戴!」
飛龍・阿賀野「「了解!」」
にこ「その後、パプアニューギニアの海岸線に沿う形で布陣した三戦隊と五戦隊が慌てた敵の側面から主砲および魚雷を撃ちまくって頂戴!」
金剛「了解ネー!」
妙高「お任せください!」
にこ「最後に四戦隊、あんたたちはラバウル基地の港に待機、敵が最深部まで攻め込んで来たら追って指示を出すわ!」
愛宕「了解!」
にこ「それまでは程よく敵を迎え撃ちつつ撤退!、一撃離脱を心がけて!」
矢澤艦隊一同「「「「了解!」」」」
にこ「さて、これで役者は揃った、参謀長!、全通信回線は開いているわね!」
参謀長「はっ!」
にこ「よし!、矢澤艦隊将兵総員聞きなさい!、我が国の!、いえ、人類の存亡この一戦にあり!、皆より一層奮起せよ!」
将兵艦娘一同「「「「「「「「おおおおおおーーーーーーーー!!!!」」」」」」」」
矢澤の基地全員に宛てたこの言葉を述べた直後、島のあちこちから遥か彼方まで聞こえんばかりの戦士たちの声が挙がり、港のマストおよび矢澤艦隊総旗艦・愛宕のメインマストにZ旗が掲げられた。
にこ「作戦開始!」
そして2042年11月14日夜明け前、人類の存亡を賭けた大海戦の幕が切って落とされ、午前4時頃、まだ薄暗いソロモン海の入り口、ソロモン海側の物陰に軽巡・那珂が率いる四水戦が構え、敵を目視で発見した。
那珂「提督、敵艦隊発見・・・、この距離からだとまだ前衛しか見えません・・・」
にこ「了解・・・」
那珂「あっ!、動き始めました・・・、敵速5~10ノット、先頭に前衛の水雷戦隊、その後ろに戦艦や重巡、軽空母、主力空母と南方棲姫はまだ目視では捉えられていませんがおそらく最後尾に・・・」
にこ「・・・」
ザーー、ザーー、ザーーーーー、ザザーーーー、ザーーー、ザザーーーーー
那珂「敵艦隊、間もなくソロモン海入り口に達します・・・、あっ!、敵水雷戦隊、二手に分かれました!、別れたもう一方は提督の読み通りアイアン・ボトム・サウンドに向かっています!、その別動隊の旗艦は軽巡棲姫です!」
にこ「やっぱり・・・、わかってたとはいえ夜戦モードの川内でも1対1でやり合えば相当キツイ相手ね・・・」
敵はソロモン海の入り口付近で部隊を二つに分け、軽巡棲姫を旗艦とし軽巡2、駆逐12の別動隊は進路を本体よりやや北西に取り、アイアン・ボトム・サウンドを目指し、残りの本体は駆逐棲姫を先頭に南方棲姫、軽空母棲姫、レ級など総勢89もの大軍でソロモン海への侵攻を図る。
にこ「午前5時前・・・、那珂!、作戦開始よ!」
那珂「了解!、みんな行くよーーーー!」
四水戦「「「おおおーーーーー!」」」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
駆逐棲姫「?」
~♪、~ 、~~ 、~~♬
駆逐棲姫「ナニコレ・・・」
朝潮「探照灯照射!」
バッ、バッ、バッ、バッ、バッ、バッ、バッ、バッ
敵艦隊「「「「!!!!????」」」」
駆逐棲姫「ウッ!、目クラマシノツモリ!」
~♪、~ 、~~ 、~~♬
那珂「はあ~い!、深海棲艦の皆さ~ん!、艦隊のアイドル!、那珂ちゃんだよ~~!、よろしく~!」パチコン
敵艦隊「「「「・・・」」」」ポカーーン
那珂「それではこれより那珂ちゃんによるゲリラ海上ライブを開催したいと思いま~す!、それでは~、恋の2-4-11!、ミュージックスタート~!」
荒潮「それ~!」ポチ
~♪、~ 、~~ 、~~♬、~♪、~ 、~~ 、~~♬
突然敵艦隊の真正面に現れた那珂は部下に持たせたミニライブセットから流れるミュージックに合わせて歌い踊り始めた。
端から見ればどうかしているとしか思えない、が、ここに矢澤の狙いの一つが隠されていた。
駆逐棲姫「フザケタ奴ラネ!、集中砲火ヲ浴ビセテアゲナサイ!」
ドンドンドンドン!、ドンドンドンドン!、ドンドンドンドン!、ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー
バッシャーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
那珂「うわっ!、ちょっとーーー!、せめて一曲くらい聞いてよ!、総員180度回頭!、最大船速!」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
四水戦は敵方の砲撃開始と同時に180度回頭し全速力でソロモン海へと撤退を開始、ラバウルを目指す。
駆逐棲姫「逃ガサナイデ!」
ドンドンドンドン!、ドンドンドンドン!、ドンドンドンドン!、ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー
バッシャーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
那珂「もーー!、酷いなーー!」
朝潮「そこそこ距離があるのに近弾が多いですね!」
荒潮「あらーー、なかなかのスリルじゃな~い!、結構楽しいわね~♪」ニコ
満潮「どこがよ!」
霞「こんなスリル二度と味わいたくないわ!」
この時、敵艦の速力30ノットに対して味方の速力は37ノットとはじめ1000程しか離れていなかったが徐々に敵を引き離しはじめ、進む先で先頭を行く那珂の目に一つの明かりが見えた。
那珂「見えた!、総員魚雷装填後180度回頭!、レーダー照準雷撃用意!」
ザザーーーーン!、ザザーーーーン!、ザザーーーーン!
その明かりのある位置に達した瞬間、再び敵のいる方向に向き直り雷撃の準備を整え、一斉に発射。
ハ級E「敵部隊!、こちらに向き直りました!」
那珂「距離約15000!、撃てーーーーーー!」
パンパンパンパン!、パンパンパンパン!、パンパンパンパン!、シュルルルルルルルルルルルルルーーーー
朝潮「発射完了です!」
那珂「総員180度回頭!、最大船速!」
ザザーーーーー!、ザザーーーーー!、ザザーーーーー!
そして魚雷を発射し終えたら再び回頭しどんどんラバウル基地の方角えと撤退して行く。
駆逐棲姫「!!、雷撃ヨ!、回避!」
ニ級E「間ニ合イマセン!」
バッシャーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
ハ級1・2・3「「「ギャアアアアーーーー!」」」
ハ級E「ウグッ!、グアアアアアーーーーー!」
駆逐棲姫「チッ!、雷撃用意!、敵距離12000!、撃テーーーー!」
パンパンパンパン!、パンパンパンパン!、パンパンパンパン!、シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、バッシャーーン!
満潮「うぎゃあああーーー!、出オチ!」プスプス
敵の物量から放たれた魚雷はいくら速力に優れていても完全に回避するのは不可能であった。
朝潮「満潮!」
霰「愛宕さん!、満潮大破!」
愛宕「満潮ちゃん、今すぐ戦線離脱しなさい!」
満潮「りょ、了解・・・」ズキズキ
シュルルルルルルルルルルルルルーーーー
大潮「!!、レーダーに感あり!、第二波来ます!、アゲアゲです!」
那珂「もうすぐ中継ポイント!、面舵いっぱーーーい!」
ザザーーーーン!、ザザーーーーン!、ザザーーーーン!
那珂はまた別の目印を確認すると共に右90度に舵を取る。
駆逐棲姫「今度はどういう・・・」
ブーンブーンブーンブーン、ブーンブーンブーンブーン
ハ級4「敵機来襲!、数60以上!」
駆逐棲姫「!!」
四水戦が突如進路を変えた瞬間、上空より襲い来るはブイン付近に待機していたに航戦の空母・飛龍、蒼龍から発艦した新鋭攻撃機・流星改であった。
流星改妖精s「「「「くらえーーーー!!!!」」」」
ヒューーーー!、ヒューーーー!、ヒューーーー!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
チ級1・2「「ギャアアアアーーーー!」」
ハ級4・5「「グアアアアアーーーーー!」」
ヒューーーー!、ドカーーーーン!
駆逐棲姫「ウグッ!」
流星改妖精1「駆逐棲姫に命中!、小破!」
飛龍「姫級はそう簡単にはいかないね・・・」
流星改妖精2「敵艦隊!、いよいよソロモン海中腹地点に迫りつつあります!」
現状は矢澤が言うところの第一次上田合戦において大手門を突破した敵が上田城下になだれ込んで来た時点に一致する。
敵の正面で踊り、敵を挑発、自らを餌にソロモン海内部まで誘き寄せて来た那珂はさながら真田幸村と言ったところである。
もし那珂をそう例えるならサモアの龍驤や神通は真田信幸、ラバウル基地の港に構え指揮を執る愛宕は真田昌幸と言ったところである。
愛宕「(さて、次は・・・)」
2042年11月14日午後15時前、敵艦隊の先鋒は四水戦および二航戦による少数時間差攻撃を受け次第に数を減らしていったが遂に懐深く飛び込み始めた。
哨戒機妖精1「現在の敵艦隊の位置はブーゲンヴィル島最西端近海です!」
哨戒機妖精2「ブイン付近より飛び立った攻撃機隊の攻撃を受けるも敵艦隊、更に前進!」
参謀長「提督、そろそろでは・・・」
にこ「いいえ、まだよ、まだ・・・」
哨戒機妖精3「敵艦隊主力がソロモン海中腹に差し掛かりました!」
にこ「通信参謀、ラエの仮設基地に打電、三戦隊および五戦隊は直ちに基地を出撃!、敵艦隊主力の側面から砲撃を浴びせよ!、ただし、砲撃はただ一斉射のみで済み次第直ちに離脱せよ!」
通信参謀「了解!」
四水戦が更にニューブリテン島に近付き、敵艦隊の先鋒がソロモン海中腹の位置を突破した事を確認した五戦隊、続いて三戦隊が待機していたパプアニューギニア湾岸線のラエ仮設基地から出撃、敵艦隊の主力の側面へと一気に突っ込む。
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
金剛「さあ皆さん!、行きますよー!」
妙高「いよいよここからが本番です!、参ります!」
矢澤艦隊による多彩な攻撃を受け多大な損害を受けた事を知った南方棲姫は焦っていた。
南方棲姫「先鋒ガ敵ノ挑発ニマンマト乗セラレタカ!、被害ハ!」
ヲ級FS「軽巡2、駆逐6撃沈マタハ大破炎上、更ニ駆逐棲姫様ガ敵ノ爆撃デ小破ト言ッタトコロデス・・・」
南方棲姫「無駄ニ戦力ヲ失ウナト言ッタナズダ!、馬鹿者メ!」
レ級「敵ノ旗艦ハ中々頭ガキレルミタイダネー。」ウンウン
南方棲姫「関心シテイル場合カ!」
ル級FS「!!、左舷10時ノ方向ニ感アリ、敵艦隊デス!」
南方棲姫「!!」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
金剛「皆さん!、準備はOKですか?」
三・五戦隊「「行けます!」」
金剛「ready! fire!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
敵艦隊「「「「ミギャアアアアーーーー!」」」」
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
軽空母棲姫「グアアッ!!」
金剛「Hit!」
妙高「長居は無用、撤退します!」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
敵は完全に不意を突かれ軽空母1、重巡2、軽巡1が爆沈、軽空母棲姫が金剛型の砲撃をもろに受け中破、艦載機の発着機能を奪った。
三戦隊、五戦隊の目的はただ攻撃するのではなく、真の狙いはどさくさ紛れに軽空母棲姫の航空戦力を奪う事であった。
そして目的を達成した三戦隊、五戦隊はラバウルを目指し全速力で撤退していく。
同日午後17時、ラバウル基地の港に迫りつつある敵艦隊先鋒、主力共に幾度か航空攻撃を受けたがとうとう最後尾が中腹の位置を突破、敵艦隊は上田城で言うところの二の丸へとなだれ込んで来たところである。
駆逐棲姫「急激ニ狭クナッタ・・・」
那珂「やっほーーー!」フリフリ
駆逐棲姫「・・・」イラッ
那珂「こんなにステージ狭くなっちゃった!、これじゃお客さんが少なくてライブも盛り上がりに欠けるね!」
駆逐棲姫「殺リナサイ!」
ガコン
那珂「退散!、退散!」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
駆逐棲姫「待チナサイ!」
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
駆逐棲姫「グウッ!」
那珂「12.7㎝じゃ撃沈は無理か・・・」
段々と苛立ちを見せ始め先頭を切って突撃して来たところへ那珂の後方に構えていた駆逐隊の12.7㎝連装砲一斉射撃を浴びせ、駆逐棲姫は中破程度のダメージを負ったが怒りに任せ突撃して来た。
パンパンパンパン!、シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
大潮・霰「「ぎゃあああーーーー!」」
那珂「愛宕さん!、大潮、霰ともに大破!」
愛宕「すぐに戦線離脱して!」
敵の雷撃により大破した大潮と霰は一足先にラバウル軍港の波止場に急行、戦線を離脱した。
朝潮「こちら朝潮!、間もなく最終中継ポイントを通過します!」
愛宕「了解!」
同日午後19時、日が落ち始めた頃、敵艦隊はついにラバウル軍港に姿を現した。
参謀長「敵先鋒、最終中継ポイントを通過!、ラバウル軍港に間もなく敵影が現れるかと思われます!」
にこ「OK、聞いたわね愛宕!」
愛宕「ええ・・・」
にこ「でもまだ・・・、敵が最後尾まで完全に港にすっぽり入るまで待って・・・」
愛宕「了解・・・」
那珂「愛宕さーーーん!」
愛宕「お帰り、那珂ちゃん。」ニッコリ
駆逐棲姫「見エタ!、敵基地ノ港ト、ソノ奥ノ飛行場ニ敵司令部!、全艦突撃!」
ハ級s「「「「クタバレーーーー!!!!」」」」
ザザーーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーーー
那珂「うわ来たー!、握手や写真はいいけどぉ!、贈り物は鎮守府を通してね!」
駆逐棲姫「何ヲフザケテ!」ガコン
那珂「どっかぁーん!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
ハ級s「「「「グアアアアアーーーーー!」」」」
駆逐棲姫「ナ!、何ガ起コッタノ!」
那珂「どう?、14㎝単装砲6門のレーダー照準一斉射撃は!」
駆逐棲姫「クッ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ガキガキガキーン!
那珂「きゃあっ!、顔はやめてぇ!」
駆逐棲姫「ドコマデモフザケタ奴ネ!」
ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー、パーーーーーン!
駆逐棲姫「発光信号・・・、フフフ!、我ガ艦隊ノ本体ガ港湾施設ニ到着シタ様ネ!、コレマデヨアナタ達!」
那珂「うわっ!、やばっ!(愛宕さん早くーーー!)」
四水戦「「「「・・・」」」」
第一次上田合戦最終段階、本丸手前で那珂率いる四水戦は日が沈み明かりが無く真っ暗な港を背に立ち、敵は本丸手前の堀を越えるための橋の前まで迫っていた。
駆逐棲姫「砲雷撃用意!!」ニヤリ
那珂「・・・(ヤバイヤバイヤバイ!)」ガタガタ
そして真っ暗な港では何事もなかったかの様に静まり帰っていた。
バサバサ、バサバサ、バサバサ、バサバサ、バサバサ、バサバサ
南方棲姫「?、何ノ音ダ?」
レ級「サア?」
シュルシュル、シュルシュル、シュルシュル、バサバサ、バサバサ、バサバサ
愛宕「全探照灯照射!」
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ
南方棲姫「グッ!、マブシッ!」
愛宕「ぱんぱかぱーん!、お待たせーーー!」
南方棲姫「!!、何ダ・・・、コレハ!」
駆逐棲姫「クッ!、敵艦隊旗艦・愛宕!、沈ミサイ!」
愛宕「そうはいかないわ!、地上部隊全砲門!、魚雷発射管用意!」
地上部隊「「「「照準よしっ!」」」」
南方棲姫を始め敵艦隊は驚愕した。
何故ならラバウル港湾施設全域に各艦娘達が予備用に持っている砲(12.7㎝~36.5㎝)と魚雷発射が隙間なくおよそ100基以上が配備されており、それもものの見事に敵のみを徹底攻撃出来る方位に向けられている。
にこ「全く、言い出しっぺの自分で言うのもなんだけど、こんだけの物をよく用意出来たわね。」
琴音「急に呼び出されたから何事かと思ったけど、いいよいいよ!、こっちも技術者として腕の振るいがいがあったしさ!」
これほどの兵器を短時間でそろえたのはこの技術将校・天野琴音の尽力によるものであった。
にこ「サンキュー、そんじゃ、愛宕!」
愛宕「撃てーーーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!
パンパンパンパン!、パンパンパンパン!、パンパンパンパン!
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
敵艦隊「「「「グアアアアアーーーーー!」」」」
シュルルルルルルルルルルルルーーーー、バシャバシャバッシャーーー!
敵艦隊「「「「ギャアアアアーーーー!」」」」
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
南方棲姫「グアアアアアーーーーー!」
CIC1「南方棲姫に命中弾確認!、小破!」
にこ「36.5㎝でその程度か・・・、キツイわね・・・、第二射装填急げ!」
その後、南方棲姫に更に数発の命中弾があったものの、12.7㎝や20.3㎝ではかすり傷程度のダメージしか与えられず、不運な事に魚雷は一発の命中もなかった。
というより味方が庇い魚雷を自ら受け爆沈した艦は多く、この陸上からの一斉射撃、雷撃で20隻を超える敵を一度に撃沈または大破させた。
愛宕「主砲レーダー照準!、撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカーーーーン!
ヲ級FS「グアアアアアーーーーー!、コノ私ガ!、重巡如キニ!」ボチャン
鳥海「レーダー照準とはいえ最後尾の敵を一撃ですか・・・」
摩耶「ははは、やっぱ愛宕姉には敵わねえーわ・・・」
高雄「索敵レーダーに映る敵に動きあり!、こちらの目論見に気付き脱出を図るつもりです!」
にこ「残念、もう遅いわ!、参謀長!、サモアのニ水戦および西木野航戦へ出撃命令を出して頂戴!」
参謀長「了解!」
琴音「あれー?、確かそいつらって明朝に出撃させるつもりじゃなかったー?」
にこ「予定を早める、出来る限り潰して欲しいと高坂総長から命令があったわ!、このチャンスは逃さない!」
琴音「case by caseて事?」
にこ「そうよ!、てかあんた何しれーっと指令室にいるのよ!」
琴音「気付くの遅!」
にこ「確かにあんたは天才だけどここじゃむしろ邪魔よ!」
琴音「確かに技術者のアタシじゃこういった事はあんましわかんないけど!、港湾施設のあれはアタシが作ったんだし出来栄えくらいは見たいじゃん!」
にこ「はあ・・・、あんたと話すと頭沸騰しそうよ・・・」
琴音「酷い!」
同日午後20時過ぎ、ニ水戦および西木野航戦が出撃、作戦は最終段階に移ろうとしていた。
しかし、矢澤のこの判断が近いうちに想定外の悲劇を生む事になる。
日付が変わり11月15日午前1時、ラバウル軍港およびその周辺で矢澤艦隊の面々や陸上部隊と敵南太平洋艦隊との激戦は今だ決着の時を見せず、敵方は既に半数以上が轟沈または戦闘不能にも関わらず攻撃に手を緩めない。
サンタクルーズ諸島沖
ドガドカドカドカーン!、ドガドカドカドカーン!、ドガドカドカドカーン!、ひゅるるるるるるルルルルルルーーーー
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
神通「激しくやっていますね・・・」
龍驤「敵さんも必死見たいやな・・・」
真姫「もうそろそろ作戦開始地点よ!、航空隊発艦用意!」
龍驤「了解や!」
ラバウル軍港および港湾施設
愛宕「主砲一斉射!、撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
駆逐棲姫「ギャアアアアーーーー!、グウッ!、キサマ!」
ドカーーーーン!
駆逐棲姫「ゴハッ!」
摩耶「よそ見とはいい度胸だなおい!」
金剛「fire!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
南方棲姫「グウウウウッ!」
にこ「港に近づけるな!、陸上部隊は一斉射撃から時間差攻撃に切り替え!」
陸上部隊「「「「了解!」」」」
この敵の必死の攻撃で見方もまた大潮、親潮、霰、山雲が大破し妙高、足柄、鳥海、矢矧が中破のダメージを負っており、陸上部隊も敵の砲撃で40%以上が撃破され500名に上る戦死者を出していた。
哨戒機妖精1「駆逐棲姫が大破!、南方棲姫も小破です!」
にこ「愛宕!、摩耶!、そろそろ駆逐棲姫に留めをくれてあげなさい!」
愛宕・摩耶「「了解!」」
にこ「金剛は南方棲姫を出来る限り本体から引き離して!」
金剛「了解ネー!」
参謀長「提督!、ニ水戦旗艦・神通より通信です!」
にこ「了解!、・・・、私よ!」
神通「こちら神通、間もなくソロモン海に突入いたします!」
にこ「了解!、二航戦全軍!、発進せよ!」
飛龍・蒼龍「「了解!」」
ギギギギッ!、パシュッ!、ギギギギッ!、パシュッ!、ギギギギッ!、パシュッ!、ギギギギッ!、パシュッ!
ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
星空航戦所属の空母・飛龍、蒼龍より電征60機、流星改80機、更にブイン基地から電征48機、流星改・72機が飛び立ち、爆装にて一斉に敵艦隊直上から襲い掛かる。
リ級1「敵機来襲!」
南方棲姫「クソッ!、対空戦闘!、撃チ落トセ!」
ババババババババババ!、ドーンドーンドーン!
ブーンブーンブーン
流星改妖精s「「「「食らいやがれーーーー!」」」」
ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカドカドカドカーン!
敵艦隊「「「「ギャアアアアーーーー!」」」」
ル級FS「後方ヨリ更ニ敵機来襲!」
南方棲姫「ナンデスッテ!」
同日午前4時、四航戦所属の軽空母・龍驤、龍翔、飛鷹、隼鷹より発進した電征40機、流星改80機がこちらは雷装にて水平面から襲い掛かる。
ババババババババババ!、ドーンドーンドーン!
流星改妖精s「「「「魚雷発射!」」」」
ボチャン、シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカドカドカドカーン!
敵艦隊「「「「ギャアアアアーーーー!」」」」
南方棲姫「オノレーーーー!」
バキバキバキーン!
南方棲姫「ノアッ!」ズキ
金剛「お前の相手はこの私ネー!」
ル級FS「後方ヨリ敵水雷戦隊!、突ッ込ンデ来マス!」
南方棲姫「ナニ!」
このとき敵は前方の陸海の強靭な砲陣地および暗闇より襲い来る航空隊に完全に気を取られ、注意が後方まで回らなくなっていた。
神通「ニ水戦!、突撃します!」
ニ水戦「「「「突撃ーーーー!」」」」
ドカドカドカドカーン!、パンパンパンパン!
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
敵艦隊「「「「グアアアアアーーーーー!」」」」
軽空母棲姫「ナ!、マ!、マズイ!」
ドカーーーーン!
軽空母棲姫「グアッ!、貴様!」
夕立「どこ行くっぽい?」
軽空母棲姫「随伴艦共!、コイツヲ殺レ!」
夕立「(小さい頃から変な夢をみてうなされてた・・・)」ゴゴゴ
リ級2「ハッ!、行クゾ!」
ハ級s「「「「クタバレーーーー!!!!」」」」
夕立「こっちだよ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
ハ級1・2・3「「「ミギャアアアアーーーー!」」」
夕立「(どうやらあの悪夢はこの事だったっぽい!)」ゴゴゴ
軽空母棲姫「!!、バカナ・・・」
夕立「ふふふ、うふふふ、ソロモンの悪夢!、もう一回見せてあげる!」ゴゴゴゴゴ
前世の第三次ソロモン海戦第一夜時の駆逐艦・夕立はこの海域で悪夢と恐れられるほどの活躍を見せた。
そして彼女自身も生まれながらにしてその時の記憶が一番強く脳裏に焼き付いている。
夕立「前世の駆逐艦・夕立はここで沈んだけど!、私はそうはいかないよ!」ダッ
夕立は闇夜の中、赤い瞳を不気味に光らせ敵陣に突撃を開始した。
リ級2「行ケ!」
ハ級4・5「「ウオオオーーー!」」
夕立「さあ、最高に素敵なパーティーしましょ?」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
ハ級4・5「「ギャアアアアーーーー!」」
リ級2「タッタ一発デ中破!、コイツ本当ニ駆逐艦カ!」プスプス
それに対し敵も応戦を試みるが駆逐艦の域を超えた大火力に僅か数分で駆逐5を撃沈、重巡1を中破させた。
夕立「ぽいぽいぽーーーい!」ポイポイ
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
リ級2「グアアアアアーーーーー!」
更に敵艦に肉薄し魚雷を投擲、至近距離で直接ぶつける事によってその威力は倍増、敵重巡は木端微塵に吹き飛んだ。
軽空母棲姫「ア、アアッ!」ガタガタ
夕立「さようなら!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
軽空母棲姫「オ!、オノレ・・・、バケモノメ・・・」ボチャン
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
敵艦隊「「「「グアアアアアーーーーー!」」」」
夕立「ぽい?」
春雨「これで・・・、殲滅もはかどりますね!」
夕立のすぐ横では春雨が敵駆逐3、軽巡2を撃沈しており、一足先に海域へと発撃したニ水戦の面々は航空攻撃で半壊した敵中枢へ強襲攻撃をかけ混乱した敵を冷静に狙い撃ち、確実に撃沈していった。
哨戒機妖精1「敵艦隊総崩れ!、主力艦はほとんど撃沈!」
哨戒機妖精2「味方の新たな損害!、駆逐艦・時雨、村雨が大破!、更に戦艦・比叡が中破!」
その後、幾度かの抵抗はあったもののかつての敵南太平洋艦隊の姿はもうどこにもない。
そして時刻ははや正午、味方にも目立った損害が見え始めていたが敵本体は総戦力の70%以上を損出していた。
にこ「あと一押し・・・、哨戒機!、アイアン・ボトム・サウンドにいる敵別動隊は?」
哨戒機妖精3「今だ動きなしです!」
にこ「ちなみにそいつ等、今どこにいるのかしら?」
哨戒機妖精3「ガタルカナル島北の海岸、前世大戦時に米軍が上陸した浜です!」
にこ「そこから全く動かないと・・・、誘ってるのかしら・・・」
哨戒機妖精3「解りません・・・、ですがこちらから仕掛けるのは得策ではないでしょう・・・」
にこ「そうね・・・」
CIC1「提督!、敵艦隊の電波発信源を積んだ艦が撃沈されました!、これで敵は別動隊と連絡が取れなくなります!」
にこ「よくやったわ!」
それから更に時が経ち午後17時過ぎ、ソロモン海中腹、ニ水戦が通って来た航路には敵艦隊突撃時には無かった物が現れていた。
南方棲姫「柵!、イツノ間ニ!」
敵は主力の大半を失い遂に撤退を始め海域脱出を試みるが、逃げた先にはあらかじめ海中に仕込まれていた丸太の柵が出現、ジグザグに張り巡らされ敵の撤退を妨害した。
南方棲姫「急ギ海域カラ奪出シロ!、コノママデハ全滅ダ!」
駆逐棲姫「クッ!」プスプス
時雨「雨はいつか止むさ。」ガコン
夕立「逃がさないっぽい!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!
駆逐棲姫「キャアアアアーーーー!」ボチャン
金剛「待つネー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
金剛「ああああああーーーーーー!」
しかし、この大乱戦の中で矢澤艦隊のほとんどが忘れているある存在があった。
哨戒機妖精1「!!、戦艦・金剛が大破炎上!」
にこ「!!、何ですって!」
愛宕「何事!」
レ級「アハハハ!、私ノコト忘レラレチャ困ルヨーーー」ガコン
愛宕「戦艦・レ級!、今までどこに!」
摩耶「何だこいつ!」
愛宕「(レ級の主砲・・・、間違いなく16インチ!)」
レ級「食ライナヨ!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
榛名「きゃああああーーーー!!!!」
霧島「ぐあああ!!、2番、4番砲塔消失!、電子回路半壊!」
哨戒機妖精1「戦艦・榛名、霧島共に大破炎上!」
にこ「榛名!、霧島!」
榛名「ううっ!、榛名は、榛名は大丈夫です!」
霧島「これは、戦闘続行は不可能です・・・」
突如として戦艦・レ級が艦隊に襲い掛かる。
レ級は主力兵装の16インチ砲で金剛型を始め矢澤艦隊の名だたる主力を大破炎上させていった。
レ級「アハハハ!、アハハハ!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
高雄「ぐううっ!」
春雨「きゃああ!!」
神通「ああああ!!」
バッシャーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
摩耶「この野郎!、主砲レーダー照準!」ガコン
愛宕「摩耶ちゃん!、2人同時にいくわよ!」ガコン
摩耶「おうっ!」
レ級「ホラホラ死ニナヨーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
白露「ぐあああ!!、痛たたた!」
村雨「化け物・・・」
阿賀野「火力が違いすぎるわ!」
愛宕・摩耶「「撃てーーーーーー!」」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ガキガキガキーン!
レ級「ソンナノ効カナイヨーーー!」
愛宕「!!、全弾弾かれた!」
摩耶「何て硬いんだよこいつ!」
南方棲姫「モウイイ!、引キ上ゲロ!」
レ級「チッ!、セッカクダカラ皆殺シニシタカッタノニ残念ダナーーー!」
南方棲姫の命令によりレ級は去って行った。
しかしレ級介入後、僅か数分で戦艦・金剛、榛名、霧島が大破炎上という大損害を被った。
レ級「トコロデサーーー、コノ艦隊ノ旗艦テ確カ・・・」クル
愛宕「・・・」
レ級「ソコノオッパイデカイ金髪ノオマエダヨネーーー、名前、ナンテ言ウノ?」
愛宕「矢澤艦隊総旗艦、重巡洋艦・愛宕・・・」
レ級「アタゴカー、モシカシタラマタ会ウカモネ!、ソノ時ハコノ私ガ真ッ先ニ殺シニ来テアゲルヨーーー、ジャーネー!」
そして午後19時、主力の戦艦や重巡を失ったとはいえ、総旗艦および空母が健在な矢澤艦隊に対し敵艦隊は海域の中腹まで押し戻され、退却および防戦一方に変わり完全に形成逆転していた。
愛宕「提督・・・」
にこ「ええ、深追い無用!、艦隊引き上げ!」
矢澤艦隊一同「「「「了解!」」」」
哨戒機妖精3「提督!、敵別動隊が動き始めました!、ブーゲンヴィル島に向かっています!」
にこ「!!、やつら特攻でもするつもり!」
愛宕「(番狂わせ・・・、厄介ね・・・)」
だが、想定外の報告がガダルカナル島上空にいた哨戒機からもたらされた。
敵別動隊は待機していたガダルカナル島を離れ、現在はブーゲンヴィル島手前のチョイスル島およびベラ・ラベラ島に挟まれた位置を進行していた。
それに対して警戒のためブーゲンヴィル島南東に位置するフォーロ島にて待機していた一水戦が敵艦隊迎撃に向かった。
ブーゲンヴィル島沖、一水戦と敵別動隊をレーダーで捉えたのは同日21時、完全に日が沈み辺り一面暗闇と化した頃であった。
川内「軽巡へ級Eliteが1に駆逐ハ級が12、内3はElite、そして軽巡棲姫か・・・」
吹雪「味方はレ級の攻撃でかなり損害を被ったとの事で今すぐ援軍を出すのは無理だそうです!」
川内「対しこちらは軽巡1に駆逐艦8・・・、ヤバイなこりゃ・・・」
江風「川内さん!、迎え撃ちましょう!、少なくとも援軍がくるまでは!」
川内「そうだね、今の本体が襲撃されるのはもっとヤバイ・・・、一水戦総員!、敵艦隊を迎撃するよ!」
一水戦「「「おおおーーーーー!」」」
綾波「敵艦隊接近!、距離10000切りました!」
川内「さて、夜戦の時間だよ!、掛かって来なさい!」
しかし、敵は正面の艦隊だけでは無かった。
白雪「川内さん!、南より敵本体の残党と思われる反応あり!、距離6000以内!」
川内「数は!」
白雪「軽巡2、駆逐3です!」
川内「挟まれたか・・・」
後退せず本体からあぶれた数隻がブーゲンヴィル島方面えと脱出を試みたのである。
ドカドカドカドカーン!、ヒュルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
綾波「敵の残党は私が引き受けます!」
吹雪「綾波ちゃん!」
そしてその残党艦5隻を相手に砲撃で啖呵を切ったのは前世の第三次ソロモン海で夕立と並ぶ驚異的な活躍を見せ、ソロモンの鬼神と恐れられた駆逐艦・綾波だった。
川内「わかった・・・、けど無茶しないでね!」
綾波「はい!」
ザザーーーーー
綾波は一人南下、敵艦の下へ駆ける。
綾波「(幼い頃の変な夢、これの事だったんだ・・・)」
ホ級1「ナンダ、小娘一人デ向カッテ来タゾ・・・」
ホ級2「アラ丁度イジャナイ!、サッキマデ酷イ目ニ合ッテタシ皆デリンチシテアゲマショウ!」
綾波と敵艦の距離は既に1000を切っていた。
ハ級1「食らえーーー!」
ドカドカドカドカーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
綾波「ううっ!」ずぶ濡れ
綾波「(私が引いたら川内さん達が危ない・・・)」
ハ級2「ドウシタ、攻撃シテコナイノカ?」
綾波「(・・・、やっぱり、やるしかないかな?)」ガコン
ホ級1「消エナサイ!」ガコン
綾波「この海域は、譲れません!」ゴゴゴゴゴ
綾波・ホ級1「「撃てーーーーーー!」」
ドカドカドカドカーン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!、ドカーーーーン!
ホ級1「グアアアアアーーーーー!」
綾波「レーダー照準は伊達じゃありません!、主砲!、よく狙って・・・、撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
ハ級1「ウアアアアーーー!」
ホ級1「ウウッ!、駆逐艦ゴトキニ・・・」
暗闇で同時に射撃を行った場合、命中率も回避性能も優秀なレーダーを持つ綾波が有利であった。
ハ級2「クソッ!、敵ハ何処ニ!」
綾波「何所に行くんですか?」
ドカーーーーン!
ハ級2「ギャアアアアーーーー!」
綾波「ここですよ・・・」
ホ級2「!!」ゾワッ
綾波は開戦後わずか数分で軽巡1、駆逐2を撃沈した。
綾波「左舷!、砲雷撃戦、用意!」
ホ級2「ソコカ!、撃テ!、撃テーーーー!」
綾波「撃てーーーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、パンパンパンパン!、バッシャーーン!、バッシャーーン!
ホ級2・ハ級3「「アアアーーー!」」
綾波「!!、更に敵!、重巡2!」ビビビビビビーーーー
リ級1「何ダト、駆逐艦1隻ニヤラレタノカアイツラ!」
リ級2「私達で片ヅケルゾ!」
綾波「次弾装填!、行きます!」
その後、綾波は重巡2隻を相手に単独で挑み火力で圧倒的に勝る敵の砲雷撃を巧みに交わし、一瞬の隙をついて敵を攻撃、レーダー照準による正確な一撃が敵の急所を貫いた。
駆逐艦・綾波はこの現世においても鬼神の如き戦いぶりを見せた。
さて、綾波が敵と交戦状態に入った頃、軽巡・川内率いる一水戦はどうしていたであろうか。
2042年11月15日午前0時、初めは互いに距離を取り合っていた第一水雷戦隊と敵別働艦隊は遂に本格的な戦闘に入った。
一水戦は駆逐艦・綾波が後方支援(虐殺)に向かったため総戦力は軽巡1、駆逐7の計8名、対する敵部隊は軽巡1、駆逐12、そして軽巡棲姫、真っ向から戦えば戦わずとも結果は見えている。
だが、不気味な暗黒の世界と化したブーゲンヴィル島沖合の海域では少なからず状況が変わっていた。
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!
ハ級1「ウギャアアアアーーー!」
ハ級2「グハアッ!!!(化ケ物!、化ケ物ノ集団ダ!!!)」
ハ級3「ギャアアアアーーーー!」
ザザーーーー、ザザーーーーー、ザザーーーー、ザザーーーーー
ハ級E1「(悪夢ダ!、敵ガ何隻居ルカワカラナイ!、ソレニ加エテ私ノ戦隊ハ全滅!)」
ザザーーーーー、ザザーーーーー
ハ級E1「ナ!、ナメナイデ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!
ハ級E1「グアアアアアーーーーー!」
ボチャン、ボチャン
吹雪「ふー、ぎりぎりでした・・・」
白雪「ですが、Eliteを撃沈しました!」
川内「OK!、ナイス待ち伏せ!」
一水戦の各員は見事に己の気配を殺し暗闇と同化、2名ずつ不規則に点在し通りかかった敵に対し遊撃的奇襲攻撃を浴びせていった。
ハ級E2「クッ!、ハ級E1ノ部隊トノ連絡ガ途絶エタ!、用心シテ!、遭遇シタラマズ棲姫様ニ報告スルシテ!」
ハ級4・5・6「「「了解!」」」
ぱんぱんぱんぱん!、ぱんぱんぱんぱん!
ハ級E2「!!、右舷2時ノ方向ヨリ魚雷!、回避シテ!」
バッシャーーン!、バッシャーーン!
ハ級4・5「「ギャアアアアーーーー!」」
ハ級6「ヒャワアアアーーー!」
ザザーーーーー
ハ級E2「待テ!、単独行動ハ危険ヨ!」
シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカーーーーン!
ハ級6「ギャアアアアーーーー!」
この時、敵にも少なからずレーダーは存在するが新たに川内が発案、偶然にも矢澤に無理やり呼び出されていた技術将校・天野琴音に急ピッチで開発してもらった夜間レーダー戦闘システム、通称・夜眼の性能は索敵範囲こそ変わらないが、敵艦だけでなく魚雷も探知できるため、レーダー外の敵のある程度の位置を知る事ができ、また対潜能力も格段に向上している。
深雪「敵駆逐3撃沈!、どうだ思い知ったか!」
初雪「私だって・・・、殺る時は殺る・・・」
深雪「おい字間違ってないか!、まあ間違っちゃいないが・・・」
川内「せい!」
シュルッ!、グイッ!
ハ級E2「グウッ!!」
ぎりぎりぎりぎり
ハ級E2「グハッ!」
川内は己の愛用のマフラーで敵の首を締め上げ、呼吸器官を潰した。
川内「さて次、江風に涼風、そっちはどう?」
しかし、いくら優秀なレーダーをもってしても何も見えない闇の中で自由自在に動き回るのは不可能に等しいはずだ。
江風「はい!、順調っすよ!」
ハ級E3「追エー!、逃ガスナ!」
ハ級7・8・9「「「待テーーー!」」」
涼風「鬼さんこちら!」
シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、ドカドカドカドカーン!
ハ級8・9「「ギャアアアアーーーー!」」
敷波「命中!、敵駆逐2撃沈です!」
ハ級E3「後方カラ!」
ドカドカドカドカーン!
ハ級7「ギャアアアアーーーー!」
江風「江風達を忘れんなよ!」ニヤリ
ハ級E3「コノーーー!!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、パンパンパンパン!
涼風「ヤバい!」
ドカーーーーン!、バッシャーーン!
涼風「ぎゃああああーーーー!!!!」
敷波「ぐううっ!、や、やられました!」
江風「川内さん!、涼風、敷波が大破です!」
川内「今すぐ撤退して!」
敷波・涼風「「はい・・・」」プスプス
江風「この!、雷撃用意!、撃てーーーー!」
パンパンパンパン!
ハ級E3「ドウセヤラレルナラ貴様モ道ズレニ!」
パンパンパンパン!
シュルルルルルルルルルルルルルーーーー、バッシャーーン!、バッシャーーン!
ハ級E3「グアアアアアーーーーー!」
江風「ちくしょうーーー!!、大破確定・・・か・・・」プスプス
暗闇の激戦の中では敵どころかすぐそばにいる味方にさえ気が付けないのがこの現状で至近距離での雷撃を交わすのはなおさら困難である。
川内「敷波、江風、涼風が大破か・・・」
だが、川内率いる一水戦はラバウル基地に配属後、ここブーゲンヴィル島沖、それも真夜中での訓練しか行っていない。
普通に戦っても神通のニ水戦や那珂の四水戦にも引けを取らない戦闘能力を持つが夜ともなるとその能力は全水雷戦隊の中でも群を抜いている。
ヘ級E「エエーーーイ!、チョコマカト!」
どかどかどかどかーん!、ばっしゃーーん!、ばっしゃーーん!
吹雪「撃てーーーー!」
パンパンパンパン!、バッシャーーン!
ヘ級E「グアアアアアーーーーー!、軽巡棲姫様!!」
吹雪「随伴艦はあらかた撃沈しました!」
川内「OK、生き残った者は私のそばまで来て・・・」
そして何より1ヶ月以上この海域で訓練を重ね、海域をホームグラウンドと化した一水戦はこの海域に限れば夜戦のみであるが絢瀬艦隊や小泉艦隊、統堂艦隊クラスの艦隊ならほぼ壊滅に追い込めるほどの力を持った世界最強の水雷戦隊である。
軽巡棲姫「・・・」
川内「ここからが・・・、真の夜戦の始まりよ!」ゴゴゴゴゴ
軽巡棲姫「ドウヤラ私ハオ前ラノ力ヲ侮ッテイタラシイ・・・、残ルハ私ノミ・・・、全力デオ前ラヲ潰ス!」ゴゴゴゴゴ
ドカドカドカドカーン!、スッスッスッスッ!、バッシャーーン!
吹雪「!!」
白雪「奇襲失敗!」
初雪「引きこもりたい!」
深雪「こっちの居場所がばれたぞ!」
軽巡棲姫が川内に気を取られている隙に行った背後からの奇襲は失敗した。
軽巡棲姫「行クヨ・・・」
そして軽巡棲姫はまず正面の川内に仕掛ける。
川内「せや!」
ブンブンブンブン!、ボチャンボチャン、ボチャンボチャン、バッシャーーン!
対して川内は空中に飛び上がり手裏剣の如く魚雷を空中から投擲、全て交わされたとはいえ魚雷の爆発で大きな水柱が立つ。
軽巡棲姫「ソコ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
川内「ぐううーーー!!」
軽巡棲姫はその水柱に主砲を打ち込みまだ着水していない川内に15.5㎝砲を直撃までとはいかなくとも絣傷程度に命中させた。
軽巡棲姫「小賢シイワネ・・・」クルッ
白雪「探照灯照射!」
ボワッ!
軽巡棲姫「ううっ!」目逸らし
その後、軽巡棲姫は背後の気配に気づき振り向くが、振り向いた瞬間に白雪による探照灯の閃光が視界を奪う。
深雪「深雪様スペシャル!、食らえーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ガキガキガキーン!
軽巡棲姫「ウウッ!」
そして軽巡棲姫が目を逸らせた隙に深雪の12.7㎝が直撃、貫通はしないものかなり肉薄していたため、小破程度のダメージを負っていた。
川内「みんな行くよ!」
軽巡棲姫「!!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!、バキバキバキーン!
軽巡棲姫「狙イガ!、定マラナイ!」
深雪の砲撃を合図に川内、吹雪、初雪、遅れて白雪、深雪が四方八方から多彩な攻撃を繰り出し、軽巡棲姫はその動きによって狙いが定まらず段々と焦りを感じ始めた。
川内「愛宕さんや金剛さんに付き合って貰って散々練習したもんね!、一撃離脱戦法!」
軽巡棲姫「ウザイ!、チョコマカト!」
ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
吹雪「きゃああああーーーー!!!!」
初雪「ああああああーーー!!!!」
白雪「吹雪!、初雪!」
深雪「畜生!、やりやがったな!」
軽巡棲姫「沈メーーー!!!」ガコン
シュン!、ドカーーーーン!
軽巡棲姫「投擲魚雷・・・」
川内「2人は大破した2人を非難させて!」
白雪「しかしそれではあなたが一人に!」
川内「大丈夫!、行って!」
軽巡棲姫「オ前一人デ私ニ勝テルトデモ?」
川内「さあ、どうだろうね・・・」
軽巡棲姫「随分ト舐メラレタモノネ・・・」
川内「・・・」
敵を目の前に川内は敢えて一度目を閉じ深呼吸をした。
軽巡棲姫「・・・」
川内「今は全身全霊でお前を討つ!」ゴゴゴゴゴ
この時の川内からは普段の夜戦モードの川内とも比較にならない気迫が漂っていた。
軽巡棲姫「圧巻ダネー!、デモ不利ナ事ニ変ワリ無イワ!」
川内「さあ!、行くよ!」ガコン
ザザーーーーー
軽巡棲姫「オイデ、ソシテ沈ンデ行キナサイ!」
川内「アンタこそおいでよ・・・」クルッ
ザザーーーーー
軽巡棲姫「!、何ノツモリダ!、逃ゲルノカ!」
始め川内は敵めがけて突っ込んで来たが突然向きを変え全速力で水面を滑走、敵もそれを一目散に追って来る。
向かう先はブーゲンヴィル島の海峡だった。
そこはあちこちに切り立った岩や波が打ち付けられ抉れた崖などが沢山ありあくとても狭い。
軽巡棲姫「チッ!、ドコヘイッタ!」
ポチャン
軽巡棲姫「ソコ!」ガコン
シーーーーン
軽巡棲姫「・・・」
川内「あんたさあー、もしかして夜戦は素人?」
軽巡棲姫「!!、ドコ!」
川内「本当は夜戦慣れして無いんじゃないの?」
軽巡棲姫「姿ヲ現シナサイ!、卑怯ヨ!」
川内「戦いに卑怯もクソもないよ!」
シーーーーン、ボチャン
軽巡棲姫「?」
バッシャーーン!
軽巡棲姫「!!、爆雷!、ソコネ!」
川内「気が付くの遅いよ!」ニヤリ
軽巡棲姫「マサカコンナ険シイ崖ニ張リ付イテイルトハネ・・・、沈ミナサイ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!
川内「ふふ・・・」ヒョイッ
ドカーーーーン!、ドカーーーーン!、バラバラ
軽巡棲姫「!!、切リ立ッタ壁ノ表面ヲ走ッテ!」
川内「(ここでならアイツを攻略できそうだね!)」ガコン
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
軽巡棲姫「ソンナモノ効カナイヨ!」
川内「さあ、どうかな・・・」だだだだ
川内は壁の表面を奇妙に走り、また一度海におり反対側の壁に移る。
その動きはまるで忍者の様であった。
川内「撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
軽巡棲姫「フフフ、何度ヤッテモ同ジ事ヨ!、14㎝デハ私ノ装甲ハ貫ケナイワヨ!」
川内「次!、撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
その後も移動しながら主砲を討ち続ける。
軽巡棲姫「(コイツ、何デ逃ゲナイノ!、一体何ノ勝算ガアッテ!)」
川内「撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!
軽巡棲姫「無駄ナ足掻キヲ!、ダガ、コレナラドウダ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、ババババババババババ!、バキバキバキーン!、バキバキバキーン!
軽巡棲姫「主砲ダケデナク高射砲ヤ対空機銃モ撃ッタ・・・、コノ弾幕ヲ交ワスノハキツインジャナイ?」
軽巡棲姫は辺り一面に15.5cm主砲を始め5.7㎝高射砲や12.7㎜対空機銃を掃射した。
川内「そんな無茶苦茶な攻撃を正面から食らうほど鈍くはないよ!」
だが川内は機銃以外の攻撃を全て交わし敵の上を取る。
川内「主砲にさえ当たらなければ問題ない!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!、メシッ!、ビキビキ!
軽巡棲姫「!!、装甲ニヒビガ!、マサカ!」
川内「どんなに硬い装甲でも、同じところに何度も攻撃を受ければひびの一つや二つできちゃうよね?」ニヤニヤ
軽巡棲姫の装甲は軽巡でありながら戦艦並みに堅牢で、30㎝砲にまで耐えられる強度を持っていた。
しかし、時間は掛かるが同じ個所を何度も攻撃し続ければ破壊することができる。
川内「一か所でも破壊できれば、そこに魚雷を打ち込まれれば・・・、どうなるかな?」ニヤニヤ
軽巡棲姫「クッ!」
川内「私はさ、完全に一対一になるこの瞬間を待ってたんだ・・・、仲間がいるとどうしても他に気を回さなきゃいけないから正直邪魔でしかないんだよね・・・」
軽巡棲姫「・・・」
川内「でも今は敵も味方も邪魔する奴はいない、アンタの攻撃を確実に回避して同じ個所に一撃を入れ続ける・・・、今の状況ではアンタは私には勝てないよ!」
軽巡棲姫「(コレマデノアイツノ射撃ノ精度ナライツデモコノ裂ケ目ニ一撃ヲ叩キ込メル・・・、ムシロ離レテイル方ガ危険ダ!、ダッタラ!)」
ザザーーーーー
軽巡棲姫は川内の懐目がけ最大船速で直進する。
川内「!!」
軽巡棲姫「主砲モ魚雷モ!、ホボゼロ距離ナラ予想シテイナケレバ打チ込メマイ!」ガコン
ドカドカドカドカーン!、バキバキバキーン!、ドカーーーーン!
川内「ぐあああ!!」
そしてほぼゼロ距離で15.5㎝砲を打ち込まれ、中破に止まったがその衝撃で体が宙を舞い、海面に叩きつけられた。
川内「ぐううっ!、げほっ!」
軽巡棲姫「頭カラ血ガ流レテイルワヨ!、ケドサッキノ攻撃デ中破デ済ンダ事ハ褒メテアゲルワ!」ニヤニヤ
川内「(痛たた・・・、あと一歩で大破だねこれ・・・)」ズキズキ
軽巡棲姫「ウフフ、沈ミナサイ!」
ザザーーーーー
軽巡棲姫は再び最大船速で直進、ゼロ距離射撃を仕掛ける。
川内「!!」ススッ
グサッ!、グサッ!
軽巡棲姫「グハッ!、コイツ!」ガコン
しかし川内は自身の腕が届く範囲まで敵が近づいてきた瞬間、魚雷発射管と制服の間に隠し持っていた二振りの刀を抜き、装甲の裂け目に突き刺した。
川内「2度も同じ手を食うか!、全砲門一斉射!、撃てーーーー!」
ドカドカドカドカーン!、ドカドカドカドカーン!、ドカーーーーン!、ドカーーーーン!
軽巡棲姫「グアアアアアーーーーー!」
ザッバーーーーン!
軽巡棲姫は14㎝砲6門一斉射により空高く吹き飛ばされ、そして海面に叩き付けられたと同時に海底へと沈んで行った。
ばしゃん!
川内「かはっ!、はあー、はあー、大破か・・・」ぽたぽた
そして川内もまた敵の最後の一撃を受け大破炎上、完全に戦闘能力を失った。
川内「提督、敵別働艦隊殲滅完了・・・、ただし艤装は動力部分以外ほとんど破壊されました・・・」
にこ「そう、よくやってくれたわ・・・、迎えを寄越すからおとなしく待ってなさい。」
川内「了解・・・」
2042年11月15日午前5時過ぎ、ようやく敵艦隊の残党を海域から追い出し、また別働艦隊を撃滅した。
この南太平洋における大海戦は前世の物とは全く逆の結果で、日本海軍、矢澤にこ提督が指揮する矢澤艦隊の勝利で幕を閉じた。
それでもこの戦いにおける味方の損害は半端では無かった。
第五章・太平洋戦略ライン構築作戦!
にこ「敵艦隊は南方棲姫とその直営部隊6隻を除き全滅。」
参謀長「こちらは現在確認されている味方の被害状況です!」
にこ「味方の被害は・・・、空母部隊以外ほとんど大破・・・、加えて陸上部隊の死傷者は10000人以上・・・、最悪ね・・・」
参謀長「はい、主力の戦艦や重巡、水雷戦隊のほとんどが大破のダメージを受け、怪我の回復およびリハビリなどを合わせると、我が艦隊の戦力が回復するには2年は必要と思われます・・・」
にこ「今日明日は被害現状の確認に当てる・・・、それが済んだら比較的ダメージの少ない娘達で臨時の部隊を編成するわ。」
参謀長「了解!」
現状で矢澤艦隊の総戦力は本来の25%ほどしか残っておらず、矢澤しばらくは防戦に徹する事を艦隊の将兵および艦娘に伝えた。
にこ「(こんな中で愛宕や飛龍、龍驤が健在なのが唯一の救いね・・・)」
ソロモン海の激戦から早3日、2042年11月18日正午、ようやく部隊の全体的な被害状況の集計が取られた。
そしてそれらの報告がラバウル基地の大会議室の空気をより一層重くする。
愛宕「以上がこちらの被害状況です・・・」
にこ「戦艦4、重巡4、軽巡2、駆逐11の計21名が大破炎上・・・」ギリッ
琴音「足の部分以外の艤装は全部パージして捨てた娘もいるから・・・、予備がある娘はいいけど一から作り直すのはちょっと時間かかるよ~」
にこ「まあ当然ね・・・、愛宕、今すぐ臨時の艦隊を組むわよ!」
愛宕「まだ戦闘が終わってから3日しか経ってませんよ!」
にこ「南方棲姫を取り逃がした!、あいつを撃沈しない限り!、パナマ運河が復活すれば奴らまた湧いて出て来る!、戦力が回復しないうちに戦ったら今度は間違いなく負けるわ!」
矢澤にとっても厳しい選択であった。
しかし矢澤の言う通り、軍令部および参謀部からの通達では来年1月中にはパナマ運河が復旧するであろうと結論付けられていた。
そのためもし戦力が回復しないうちにパナマ運河が復旧すれば前回とも比較にならない大艦隊がラバウル基地を始め周辺の島々に襲い掛かって来るだろう。
にこ「そうなる前に敵旗艦を倒す!」
愛宕「援軍で来た那珂ちゃんの四水戦も明後日にはトラック島への帰投命令が出ています・・・、仮に今の残存戦力を投入するとして、攻撃隊と基地防衛隊、編成はどうなさいますか?」
矢澤は戦闘可能な艦娘達を集め、以下の様な艦隊を編成を伝えた。
攻撃艦隊
旗艦・愛宕
空母・飛龍、蒼龍
軽空母・龍驤、飛鷹、隼鷹
重巡・摩耶、那智、羽黒
駆逐・朝霧、夕霧、天霧、狭霧、磯波、浦波、叢雲、東雲
基地防衛艦隊
旗艦・龍翔
軽巡・神通
駆逐・白雪、深雪、白露、春雨、五月雨、海風、山風、朧、曙、漣、潮
にこ「今度はこっちから出向いて瀕死の敵南太平洋艦隊を撃破!、フィジーを奪還するわ!、作戦決行は3日後!、それまでゆくっり休みなさい!」
矢澤艦隊一同「「「「了解!」」」」
愛宕「フィジー攻撃艦隊!、出撃します!」
ザザーーーーー、ザザーーーーー
そして2042年11月21日午後20時、攻撃隊は一同フィジーを目指し出撃した。
フィジー軍港
ル級FS「敵機体来襲!」
南方棲姫「クソッ!、今攻撃サレタラ!」
プーンブーンブーン、ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
流星改妖精s「「「食らいなあーーー!」」」
ヒュルルルルルルルルルルルー!、ドカーン!、ドカーン!、ドカーン!、ドカーン!
南方棲姫「グアアアアーーー!」
南方棲姫を旗艦とする敵南太平洋艦隊に対し持てる航空戦力およそ300機余りが一斉に襲い掛かり夜明け頃には南方棲姫をはじめ、その他護衛艦を撃沈、島に上陸しフィジー奪還に成功した。
そしてその報告はすぐさま軍令部へと届けられた。
第五章・大平洋戦略ライン争奪戦!
軍令部の執務室
穂乃果「フィジー奪還なる・・・」
ヒデコ「やりましたね!、総長!」
穂乃果「うん・・・」
希「総長、これで残すは敵本土防衛艦隊とオーストラリアの艦隊のみです!」
穂乃果「東條参謀総長!、シンガポール基地の統堂提督に12月中には作戦行動に入れと伝えて!」
希「はっ!」
穂乃果「それからハワイ・パールハーバー基地の小泉提督にはライン諸島完全奪還の準備を開始せよと伝えて!」
希「了解!、ですがオーストラリアの連中はどうしますか?」
穂乃果「ふふ、その件に関しては私に考えがあるよ。」ニヤリ
海軍軍令部総長・高坂穂乃果が率いる日本海軍はこの日を持って新たにインド洋へと作戦範囲を広げた。
2042年12月上旬、インド洋進出を狙う統堂英玲奈提督率いる統堂艦隊はシンガポール基地に艦隊の総戦力、重巡4、軽巡2、雷巡2、水母4、駆逐20の計32名を集結させ、また援軍として派遣された渡辺曜提督、桜内莉子提督が率いる支援艦隊がそれぞれ巡洋戦艦1、潜水艦5の計6名と巡洋戦艦2、装甲空母1、駆逐3の計6名を率いて11月下旬にシンガポール基地に集結した。
渡辺、桜内両艦隊の陣容は以下の通りである。
渡辺支援艦隊
旗艦・シャルンホルスト(巡洋戦艦)
潜水艦・U500、U501、U502、U503、U504
桜内支援艦隊
旗艦・イラストリアス(装甲空母)
巡洋戦艦・フッド、レパレス
駆逐艦・エクストラ、エクスプレス、テネドス
シンガポール基地・大会議室
ガチャッ
曜「渡辺支援艦隊司令官・渡辺曜中将および旗艦・シャルンホルスト、ただいま参りました!」敬礼
シャルンホルスト(以降シャルン)「Guten Tag!、Admiral・統堂!、シャルンホルスト級巡洋戦艦のネームシップ・シャルンホルストです!」
莉子「桜内支援艦隊司令官・桜内莉子中将および旗艦・イラストリアス、ただいま参りました!」敬礼
イラストリアス(以降IR)「私はLoyal Navy、イラストリアス級装甲空母一番艦・イラストリアスですわ!、以降お見知りおきを!、Admiral・統堂!」
英玲奈「遠いところをよく来てくれました、知っていると思いますが私が統堂艦隊司令長官・統堂英玲奈です!、よろしく頼みます!」
青葉「統堂艦隊総旗艦の重巡・青葉です!、よろしくお願いします!」
衣笠「秘書艦の衣笠です!、よろしくお願いします!」
各艦隊の面々はすぐに打ち解け、いよいよ本題に入って行った。
衣笠「高坂総長曰く、我々は最低限ここアンダマン海の制海空権を抑える事が望ましいとの事で、必ずしもセイロン島を奪還する必要は現段階では必要ないと総長は仰られました。」
英玲奈「欲張りかもしれないがやはりこの敵東インド洋艦隊がどうしても気になる・・・、撃破は出来ずとも戦力の消耗はさせて置きたい!」
曜「そこはご安心を!、私達は統堂提督がそう仰られる事を見込んで、高坂総長の命によりはせ参じたんですから!」
英玲奈「本当にすみません・・・、我が艦隊には火力、航空戦力が不足していたので本当に助かります!」
統堂艦隊には千歳、千代田、千早、秋津洲の4名の水上機母艦が配属されている。
千歳型水母3名はそれぞれ水上艦爆・春嵐20機と水上攻撃機・雷洋が4機搭載され、秋津洲には運用という形でニ式大艇改・仙空が6機配備されている。
しかし、セイロン島に接近し敵陸上機の猛攻に晒された場合とても防ぎきれないと予想されていた。
莉子「フッドにレパルス、シャルンホルストなら敵に主力戦艦に必ず大ダメージを与えられます!」
英玲奈「敵艦隊の主力戦艦は38cm砲を持っているから助かります!」
青葉「提督、最後の問題は航空支援を行ってくれるという鹿屋航空隊です!、一式陸攻の航続距離ではアンダマン海までは攻撃後も余裕で帰れますがベンガル湾まで出て来たとなると航空支援はあまり期待しない方がよろしいのでは?」
英玲奈「まあ、そうは思うが、例の新型4発重爆撃機がもうすぐ実践配備される。」
莉子「青山さんがB30型の設計から生み出した新鋭陸上攻撃機・星雲ですか?」
英玲奈「ええ、だが我らは元より星雲が実践配備されるまでは動かないつもりです。」
星雲とは米軍のB17やB24を遥かに上回る性能を誇る4発重爆撃機で、頑強な装甲と機体の要所7か所に装備された20㎜機銃、実用上昇高度12000mを誇り高度7000mから極めて正確な爆撃を行えるレーダー照準システムを持つB30型のプロトタイプとも言える高性能爆撃機である。
統堂は作戦方針を渡辺、桜内に伝えた後、現世では中学時代からの腐れ縁となっている青葉と港を訪れ該当の下で酒を口にしていた。
青葉「私が提督と出会ってあれからもう10年以上ですか・・・」グビグビ
英玲奈「ああ、こっちの私の家の隣に住んでいたものな、10年とは意外と早い物だ・・・」グビグビ
統堂の序盤戦はクーデターおよびハワイ奪還作戦成功のわずか二日後の2041年12月10日、青葉および衣笠を南シナ海に偵察に出した際に偶然にもアンダマン海を超えシナ海への進出を図る敵艦隊を補足、軍令部への通報の後、鹿屋航空隊と連携して戦艦1、重巡1を撃沈、駆逐2を大破させる戦果を挙げた。
この現世におけるマレー沖海戦である。
青葉「現世に元からいた青葉達が出会ってからはもう20年近く経ちますね。」
英玲奈「ああ、時が経つのは実に早い。」
ウーーーーーーン!、ウーーーーーーン!、ウーーーーーーン!
英玲奈・青葉「「!!」」
英玲奈「衣笠!、何事だ!」
衣笠「基地上空8000に敵哨戒機3!、B25型です!」
英玲奈「千歳達の春嵐では間に合わない!、高射砲にて直ちに迎撃せよ!」
高射砲体長妖精「射角固定!、撃てーーーー!」
ドンドンドンドン!、バーン!、バーン!、バーン!
敵哨戒機1「当たるかよ!」
敵哨戒機2「艦隊機関に打電!、シンガポール基地に敵主力艦隊が集結中!」
ブーン
敵哨戒機3「!!、上空10000に敵機だ!」
敵哨戒機1「なに!」
スピットファイア(以降SF)妖精1「食らえーーー!」
ババババババババババ!、ドカーーーーン!
敵哨戒機3「ぎゃああああーーーー!」
敵哨戒機1「くっ!、逃げるぞ!」
SF妖精2「逃がすかーーー!」
ババババババババババ!、ドカーーーーン!
敵哨戒機1「ぐあああーーー!」
敵哨戒機2「ひいいい!」
ブーン
SF妖精3「下っ腹ががら空きだ!」
ババババババババババ!、ドカーーーーン!
敵哨戒機2「ぎゃああああーーー!」
英玲奈「あのシルエットは紫電改か?、いや蛇の目!、スピットファイアか!、どこから飛んで来た!」
紫電改に少し似た容姿を持つ一風変わったスピットファイアが突如現れ敵哨戒機を直ちに撃墜していった。
そしてすぐ桜内莉子提督と艦載機を操る装甲空母・イラストリアスが洋弓を持って現れた。
莉子「間に合ってよかったー!」
イラストリアス「いかがでしたか?、私の航空隊の皆さんは?」
青葉「イラストリアスさんのでしたか!、助かりました!」
イラストリアス「全機着艦して頂戴。」
ブーンブーンブーン、キュッ、キュウウウウウウウーーー!
青葉「おや?、私達のよく知るスピットファイアとは少し違いますね!」
イラストリアス「私は在日英国人の娘で、本家のスピットファイアをあまり知らなかった上に従来のスピットファイアではF6F型やF7F型、P51型などが相手では勝ち目が無さそうだったので、訓練をしていた基地にあった紫電改を参考に青山さんに改良してもらった機体です。」すっ
青葉「なるほど!、それで私達にも分かりやすいシルエットをしていたわけですね!、名前は何と言うのですか?」
イラストリアス「私、ネーミングはあまり得意ではないのでシンプルにスピットファイアⅡ、元英空軍の物を海軍仕様にし、エンジンを始め武装や運動性能を上げた機体です。」
英玲奈「機体は元よりパイロットの妖精達も中々の腕だ!、作戦時には是非頼らせて貰うぞ。」
イラストリアス「期待に応えられる様頑張ります。」
こうして夜間強行偵察にやって来た敵哨戒機は日英の技術が生み出した新鋭機・スピットファイアⅡによって全機撃墜された。
英玲奈「先ほどのB25型はおそらく空母から飛んで来た物だろう・・・、敵は近いぞ!」
この事で統堂を始め艦隊の参謀達は戦いがすぐそこまで迫っている事を感じ取った。
そしてイラストリアスがシンガポール基地上空の敵哨戒機を撃墜した時刻とほぼ同じ頃、トレス海峡を封鎖している幽霊艦隊司令官・松浦果南は神田(前世と同じ場所)にある高坂の自宅を訪れていた。
果南「・・・」
パチッ
穂乃果「今日この日までにアリューシャン列島やソロモン諸島、サモア、フィジーなど敵の各方面の一大拠点はあらかた潰し、制海空権を奪還したけどまだオーストラリア、ライン諸島、セイロン島などは今だ健在・・・、さてと・・・」
パチッ
果南「!!」
穂乃果「待ったは無しだよ!、敵東インド洋艦隊が孤立したよ!」ニヤニヤ
果南「うぐっ、この一石は統堂艦隊による紅海のシーレーン奪還、そして紅海から顔を見せているのは英、独、仏、伊、露の地中海艦隊!、となると北米西海岸は・・・」
パチッ
穂乃果「これでもう敵は太平洋に手が出せない・・・、だから西海岸に接近できる。」
パチッ
果南「総長、それは・・・」
穂乃果「実は今、長門さんに陸奥さんが大泊基地にて極秘に訓練している艦隊があってね。」
果南「それは初耳です!」
穂乃果「その中核となるのは戦艦・メリーランド、ネバダ、ヴァージニア、ペンシルベニアの4名、いずれも旧式の米軍艦だけど、高野さんがくれた記憶の中にある方法で様々な改装を施し奇想戦艦となった娘達だよ。」
果南「それって!、まさか紅玉艦隊ですか!」
紅玉艦隊とは転生の際に高坂らに記憶を与えた高野五十六や前原一征らのいた世界に存在した奇想艦隊である。
穂乃果「まあそんな感じ、一度解隊した第四艦隊を再建しようと思って思いついたんだけど、艦隊司令長官も天照の会の黒澤さんに内定しているよ。」
果南「黒澤ダイヤ中将ですか!」
穂乃果「艦隊の名前も、別世界の紅玉艦隊と彼女自身の名前を掛けて宝玉艦隊としようと思ってる、それに彼女が司令官の座に就けば必然的にアイオワさん達も加わってくれるそうだよ。」
果南「なんと!、しかし私はこのオーストラリアの敵艦隊が目障りです!」
穂乃果「まったく、飛び石作戦とは上手く言ったものだよ・・・、前世ではオーストラリアを拠点に確実に石を伸ばしながら日本本土に迫って来たんだから・・・」
果南「はい・・・、あそこにもしB30型が大量に配備されれば・・・」
穂乃果「パプアニューギニア、マリアナ諸島、グアム、小笠原諸島、沖縄、そして日本本土・・・」
果南「前世ではミッドウェー海戦で惨敗しました!、あの戦にさえ負けていなければ敵も容易には手を出せなかったはずです!」
穂乃果「高野さんは前世で本土空襲によって世論に負け焦ってしまった結果、墓穴を掘ってしまったと言っていたよ・・・、十分な研究もせず敵を侮って出掛けたが故に敗北とも・・・」
しかし2039年6月、横須賀鎮守府が爆撃された上に途中まで司令官不在で行われたのが現世のMI作戦であり、もしあの時負けていたら現世も前世と同じ悲劇を繰り返していた事になる。
穂乃果「けど、太平洋の敵はもうオーストラリアの連中だけ、奴らは是非幽霊達に片づけて欲しい。」
果南「はい!」
それから一月程は敵に目立った動きは無く平凡な静けさと共に年が明けた。
2043年1月下旬、参謀部CICルームの監視衛星がカリブ海に集結する敵の大艦隊を捉え、また幽霊艦隊によって破壊されたパナマ運河が復旧された事によりカリブ海からパナマ運河を通り抜け太平洋への進出を狙っていた。
穂乃果「奴らの狙いはハワイの奪回に違いない!、至急幕僚達を集めよ!」
ヒデコ「了解!」
大きな戦の足音が迫っていたのはインド洋のみならず、太平洋に再び大艦隊が進出してくる可能性が極めて大であった。
この敵に対する戦略次第で今後の戦況に大きく関わる事は言うまでもない。
穂乃果「(敵もより一層焦ってる、なら執るべき作戦は一つ!)」
統堂、渡辺、桜内の3艦隊がシンガポール基地に集結、松浦が高坂と作戦会議を行った翌日、舞鶴鎮守府総司令官・高海千歌大将と同鎮守府参謀長・国木田花丸中将が軍令部を訪れていた。
穂乃果「昨日、松浦さんと話した、オーストラリアの連中は幽霊達が海底に引きずり込んでくれるから矢澤艦隊が必要に攻撃される心配は無くなったし、アンダマン海は統堂、渡辺、桜内の3艦隊が抑える!、これらに次いで心配なのが・・・」
千桂「ライン諸島の各航空基地および敵北極海艦隊、敵南極海艦隊ですか?」
穂乃果「違う、南極海艦隊は英海軍が本格的な軍備を整えつつある事に些かの危機感を抱き、北大西洋艦隊に合流した後、北大西洋から動く気配が無い。」
最近になって英海軍は最新鋭のキング・ジョージⅤ世級戦艦、ネルソン級戦艦、イラストリアス級装甲空母をはじめとする艦娘適正と記憶を持つ者達が訓練を終え、新たに戦列に加わった事によりヨーロッパ戦線も次第に制海権を奪還しつつある。
これに危機感を抱いた敵南極海艦隊が敵北大西洋艦隊と合流したという情報をCICが得ていた。
穂乃果「これを、南極海の衛星写真、敵の姿が全く無い・・・」
花丸「奇妙すぎるずら・・・、本当に敵さん1隻もいないんですか?」
穂乃果「幽霊艦隊所属の呂号戦隊が確認した・・・、間違いない・・・」
千歌「それで、この私がここに呼ばれた理由をそろそろ伺いたいのですがよろしいですか?」
穂乃果「そうだね、そろそろ本題に入ろうか。」
そして高坂はこう話を切り出した。
穂乃果「高海千歌大将、国木田花丸中将、本日を持って舞鶴鎮守府総司令官および参謀長の任を解く。」
千歌・花丸「「!!」」
千歌「総長!、いきなりそれはどういう事ですか!」
花丸「確かに私達はこれまでの海戦で大した活躍をしていないし艦隊も持っていません!、だからっていきなりこんなのはあんまりです!」
普段は温厚な高海と国木田、特に高坂に対し並みならぬ尊敬の念を抱いていた高海は思わず激怒した。
穂乃果「はあ~、軍人の悪い癖なのかな~、別にクビする訳ではないんだけど・・・」
千歌「で、ではいったい!」
穂乃果「新しく出来た鎮守府の司令官を任せたいと思ってここに呼んだんだよ今日は。」
千歌「新しい鎮守府・・・、ですか?」
穂乃果「1週間後に天照の会の幕僚達をそこへ集め、そこで完遂された黎明計画と、それらを利用した黎明作戦の容姿を話す。」
花丸「黎明計画が完遂したんですか!」
穂乃果「うん、そのおかげで本土防衛に関しては綺羅長官の本土防衛艦隊をアリューシャン方面に出しても十分過ぎる戦力が揃ったよ。」
千歌「計画書である程度はわかっているつもりでしたが・・・」
穂乃果「そこで、この黎明作戦をより効果あらしめるために作られたのが、これから高海長官達に行ってもらう新しい鎮守府、そこで高海長官には先にその鎮守府に行き作戦会議の準備をしてもらいたいんだよ。」
千歌「そういう事でしたら喜んでお引き受け致します!」
花丸「私も了解しました!、それから先ほどは訳も知らず怒鳴りつけてしまい申し訳ありませんでした!」
千歌「その事については私も!、申し訳ありませんでした!」
穂乃果「気にしないで、ちゃんと説明しなかった私が悪いんだし。」
そして新鎮守府への移動を命じられた高海、国木田はその日の夕刻には先立ってその新鎮守府へと向かった。
穂乃果「(二人は勿論、本土にいない渡辺、桜内以外の元Aquarsのメンバー達は驚くだろうね。)」
コンコン
希「東條です。」
穂乃果「どうぞ。」
希「我々はいつ頃向こうに向かいましょうか?」
穂乃果「そうだね、明々後日の朝に向かうとしよう。」
希「了解。」
同日午後22時過ぎ、新鎮守府に到着した高海と国木田は盛大に驚いた。
千歌「まさか新鎮守府が前世の浦の星女学院と全く同じ場所に作られたなんて!」
花丸「総長も意気な事してくれるずら!」
新鎮守府、正式名・沼津鎮守府の敷地は内陸の道路から先端は長井崎まであり前世では浦の星女学院であった建物がそのまま司令部に、また大瀬崎から長井崎を経由して内浦湾沿いに沼津港まで続く海域には広大な防衛陣地が敷かれ、内浦湾および江浦湾には港湾施設、淡島には航空基地が設けられている。
また内浦鎮守府は駿河湾の付け根の内側に位置し、広大な港湾施設と航空基地に加え天城山をはじめとする天然の要鎧が多数存在するため、鉄壁の要塞軍港と化していた。
そしてそれを見て唖然としているところにピンク色の髪をし、作業着を着た女性が出迎えに来た。
?「お待ちしておりましたよ!、沼津鎮守府総司令官さんに参謀長さん!」
千歌「明石さん!」
明石「我ながらいい出来です!」
千歌「・・・」クスッ
花丸「長官?」
千歌「いや、何でもない・・・、明石さん、会議室に案内してくれるかな?」
明石「はい!」
ワイワイ、ガヤガヤ
花丸「?(できたばかりなのにやけに人が多いずら・・・)」
それから早7日、新設された沼津鎮守府大会議室に高坂を始め、園田、東條、南、綺羅、高海、東野などの海軍首脳陣を始め絢瀬、矢澤、小泉、黒澤(ダイヤ)、津島、小原や各艦隊の旗艦、秘書艦達が集結した。
穂乃果「これより会議を始めますが、まず初めに遂に完遂された黎明計画について話したいと思います。」
ヒデコ「総長、資料全員分を配り終えました。」
穂乃果「ご苦労様、それでは皆さん、手元にある機密資料を開いてください。」
高坂の指示のもと開かれた資料の最初のページには「黎明計画・新機動艦隊計画書」と書かれていた。
海未「ふふっ、いよいよですか・・・」
絵里「!!、これが!」
穂乃果「園田、綺羅両元帥の下に翔鶴型空母4名および大鳳型装甲空母2名を一度配備したのはこの6名の新鋭空母達の訓練をするため、絢瀬艦隊の長門さん達を対空戦艦および航空戦艦に改装したのはこれらの様な娘達を守るためです。」
絵里「長門さんに陸奥さん、扶桑さん、山城さんは当時の計画通り対空戦艦になりましたが、伊勢さんや日向さんを航空戦艦にしたのは我が艦隊を航空機動艦隊にするためでしたか!、ねえ長門さん!、武装はどんな風になったの?」
長門「演習の時にたっぷり見せてやる!、改装されたこの長門の力をな!」
希「進言したのはウチやけどな。」
長門型や扶桑型の改装は予定通り行われたが、計画の中盤に差し掛かった辺りで高坂の承諾の下で東條が突如として伊勢型を航空戦艦に改装せよと旅順秘密ドックの技術者達に命令を出した。
そして絢瀬が最も驚いたのが、天照の会の各メンバー達の知る航空戦艦とは全く違う容姿に改装をされていたからである。
希「前世の伊勢型航空戦艦では設計上、春嵐や雷洋の様な水上機しか飛ばせ無かったから、電征を搭載出来る様に思い切って後世の旭日艦隊に配備されていた信玄型航空戦艦の設計を元に改装して貰ったんや。」
穂乃果「まあ絢瀬艦隊には赤城さんとその妹の桜城ちゃん、それから加賀さんの3名が配備されてるから問題はないと思ったけど、念のために、ね。」
絵里「総長!、ありがとうございます!、我々は参戦当時から航空支援に悩まされて来ましたが、これでどの海域でも航空支援の憂い無く戦う事が出来ます!」
絢瀬はこの艦隊改装計画にとでも満足した様子だった。
しかし、この黎明計画の本題はここからであった。
穂乃果「なお、この計画についての抽象的な内容は次のページより・・・」
ここから先、高坂の話す黎明計画の主な内容は以下の通りである。
第一に長距離任務もこなせる様に速吸型補給艦を各艦隊に十分な人数を配備する事。
第二に主力戦艦は航空機動艦隊の中核として行動できる様、高速かつ重対空武装へと改装する事。
そして最も重要なのが第三項である。
穂乃果「第三項、空母については主力空母、装甲空母、艦隊護衛空母、哨戒空母の四種に分け、新航空機動艦隊では1つの機動部隊に主力空母、装甲空母、艦隊護衛空母をそれぞれ1名ずつ配備、また周囲警戒のため哨戒空母を2名ずつ配備する。」
以前の会議の後、新たに大鳳型装甲空母・魁鳳、雲龍型空母・黒龍、九頭龍、大鷹型軽空母・翔鷹、輝鷹が着任し、空母の数はより一層増えた。
第四に秋津丸型を洋上要塞となせる様改装する事。
簡単に言えば海上のどこからでも局地戦闘機や四発爆撃機の発着を可能にするための改装を行う事。
これは現在太平洋地域では各基地に蒼莱を最低12機配備されている。
だがこれから激化するであろうインド洋地域にはまだ高高度迎撃機は存在しないためとても望ましい。
第五に本土防空隊および基地防空隊の規模拡張する事。
本土防空隊はこれまで各基地に蒼莱12機と電征40機、基地防空隊は電征1個戦隊(60機~80機)を配備していたが、以前のラバウル空襲時の反省を生かし最低でもこれらを2倍規模にする事。
穂乃果「その他にもまだ細かい内容が沢山ありますが、以前の会議から本日までに着任した艦娘達を今日ここに集結させました、次のページをご覧ください。」
そして高坂の発言の後、国木田が一足先に次のページに目を通し、書かれていた内容に納得していた。
花丸「どうりで出来たばかりの割に人が多いと思いました。」ボソッ
穂乃果「それから高海長官がをここに配属させた真の理由も、高海長官にここに集めた娘達を率いて貰うため。」
千歌「!!」
穂乃果「高海千歌!、鎮守府総司令の任に加え、新航空機動艦隊の司令長官を命ずる!」
千歌「私がですか!、私がこんな大艦隊を!」
穂乃果「この娘達をお願いね!」
千歌「は!、はい!」
高海は見た事のない大艦隊に少々肝を潰したが、高坂の命令ということもあり快く承諾した。
穂乃果「この艦隊は太平洋戦略の大きな要となる艦隊、そしてこの艦隊は”新八八機動艦隊”と命名する!」
綺羅「まさかここまで細かいかつ具体的な計画が出来上がってたとは・・・」
海未「主力空母4名、装甲空母2名、艦隊護衛空母2名、哨戒空母6名・・・、これなら敵太平洋艦隊の残党は勿論、敵インド洋艦隊や敵大西洋艦隊が援軍を出して来ても問題ありません!」
花陽「万が一この世の全敵艦隊が一度に押し寄せて来たとしても、他の艦隊と連携すれば必ず勝てます!」
新八八機動艦隊の航空戦力は最大で900機以上、小泉艦隊と矢澤艦隊の航空戦力の合計数に匹敵する数であった。
これに加え規模を拡大した本土防空隊や基地防空隊なども会わせると現世日本海軍の航空戦力は機種にもよるが艦隊のみでおよそ2500機以上、防空隊も加算すると最低でも8000機を越えていた。
穂乃果「新八八機動艦隊の話はここで一度終わらせ、次に宝玉艦隊および第九航空戦隊についての計画ですが、宝玉艦隊についてはこのまま編成は変えず、引き続き訓練を進めて貰うとして・・・」
希「まだ艦隊としての正式な任務はもう少し先になると思うけど、宝玉艦隊の艦隊司令長官は黒澤ダイヤ中将に命ずる!」
ダイヤ「わたくしがですか!」
海未「はい、あなたの才覚を見込んで私が推薦しました、これより先、艦隊の基地を旅順から舞鶴鎮守府に移し作戦時までの訓練をよろしくお願いします。」
絵里「私も貴女が適任だと思うわ。」
ダイヤ「園田長官!、絢瀬提督!、わかりましたわ!、この黒澤ダイヤ!、必ずやご期待に応えて見せますわ!」
宝玉艦隊は高坂、園田、綺羅、東條、南、高海の6名が計画中の新たな大作戦に投入されるが、それはまだ先の話である。
穂乃果「宝玉艦隊についてはもう一つ、つい先日までこの艦隊には空母が1名もいなかったけど、敵の目を盗みアラスカからやって来た空母・レキシントン、サラトガの2名を艦隊に加えたいと思う。」
ダイヤ「レキシントンにサラトガ、いずれも米軍艦ですわね。」
穂乃果「けど、彼女たちがやって来た事で一つの確信を得られた・・・、アメリカ合衆国内陸部はまだ生きている。」
ザワザワ
希「確かに、でなきゃアメリカで新たな艦娘の艤装を生み出すのは無理やね・・・」
穂乃果「けど、せっかく艤装の適正者見つけ訓練までしたのに向こうの諸事情?、とかで少数の練習機しか積んで来てなくて、彼女達を日本へ行くよう命じた米軍将校曰く、こちらの艦載機を貸してやって欲しいとの事・・・」
鞠莉「Oh・・・、それはそれは、奴らそれでこっちの技術を盗むつもりなんじゃないですか?」
穂乃果「それは深く考えすぎだと思うよ、たぶん・・・」
ルビィ「・・・」
鞠莉「?、どうかした?」
ルビィ「い、いえ・・・、レキシントンさんにサラトガさん・・・」
ダイヤ「昨日、ルビィはその御二方に部屋に連れ込まれて着せ替え人形にされてましたわね・・・」
ルビィ「ひいいい!」ガタガタ
穂乃果「あははは、参ったな・・・、黒澤ルビィ司令官には第九航空戦隊を搭載したその二人の指揮を執って貰おうと思ったんだけど・・・、だめかな?」
ルビィ「た!、例え私が司令官になったとしてもまた、いえ、一日中着せ替え人形やそれ以上の事をされるかもしれません!」ガタガタ
ダイヤ「(相当トラウマになってますわね・・・)」
海未「(レキシントンにサラトガはどこかことりと似ている様ですね・・・)」チラッ
ことり「(ルビィちゃんに目を付けるとは!、その二人は中々見る目があるね!、写真とかあったら後で貰おうかな。)」ニッコリ
穂乃果「空母部隊の司令官は在日米軍にいた同士でもよかったけど。」
希「彼女には宝玉艦隊の副指令として着任する事が決まっとるからな。」
穂乃果「と言う訳で、航空戦に詳しい人はもう黒澤司令官以外いないようだね。」
ルビィ「!!」
穂乃果「黒澤ルビィ少将に第九航空戦隊司令官を命ずる!、異論は認めません!」
ルビィ「やっぱり私がやるんですか!、無理です無理です!」
ダイヤ「この世界ではあなたももう一人の将官なのですから!、しっかりなさい!」
始めはとても否定的であったが他の者にも説得され、黒澤ルビィは最後には快く第九航空戦隊司令官を引き受けた。
そしてこの第九航空戦隊もまた宝玉艦隊の所属となる。
しかしこれから先、黒澤ルビィがレキシントン、サラトガの両人に週1で着せ替え人形にされ、半ば南も参加し殆どオモチャ状態にされているのはまた別の話し。
穂乃果「それから余談だけど、高千穂さんは正式に小泉艦隊に配備するね。」
花陽「了解です!」
穂乃果「それから先程も話したけど、新八八機動艦隊のメンバーはもうここに到着してるから、高海長官、後を任せるよ!」
千歌「了解!」
それからしばし時が経ち2043年2月1日早朝、敵動きに対する第一報はハワイ・パールハーバー基地の小泉の下に届けられた。
花陽「輸送船団の出入りが激しくなっている・・・、か・・・」
翔鶴「多数の物資の陸揚げも確認されています。」
花陽「そろそろ動いてくれると嬉しいですが、あの用心深い敵艦隊どうやって戦場に引きずり出しましょうか・・・」
翔鶴「幽霊さん達のサモアを奪還し敵を誘き出すという作戦にはとうとう乗ってきませんでしたね。」
花陽「それだけ彼女達が抑止力となっているんでしょう。」
瑞鶴「提督!、艦隊総員の出撃準備が整ったわ!」
花陽「よし、我が艦隊はこれより進路を南へ!、攻撃目標はライン諸島です!」
同日夕暮れ、空母・瑞鶴を旗艦とする小泉艦隊はパールハーバー基地を出撃、ライン諸島完全奪還を狙う。
花陽「果たして敵はこちらの作戦に乗ってくれるでしょうか・・・」
第六章・松浦果南危機一髪!
突然ではあるがここで一度2043年1月中旬へと遡る。
この日、奥神田にあるあまり人目に付かない小さな料亭に高坂は東野ひかりと青山蓮を内々に呼び出していた。
女将「ようこそいらっしゃいませ、お連れ様はもう到着なさっていますよ。」
穂乃果「そうですか・・・」
ガラッ
穂乃果「失礼します。」
ひかり「呼び出した本人が遅刻ですか?」
穂乃果「ごめんごめん、待たせたね。」
蓮「総長の言いつけ通り人目を避けて参りました。」
穂乃果「ふふ、実は今日はもう一人、幽霊が来る事になっていてね。」
蓮「この神田に幽霊とは、それならきっと粋筋ですね。」
穂乃果「あはは、それならいいけどね。」
コンコン
女将「お連れ様が参られました。」
果南「どうも、遅くなりました。」
穂乃果「女将さん、お酒は後でいいよ。」
女将「かしこまりました。」
ガラッ
ひかり「松浦さん!、久方ぶりだね!、最後に会ったのは蒼莱を見に行った時だっけ!」
果南「はい!、青山さんもご無沙汰してます。」
蓮「こちらこそ、雷洋や春嵐を存分に使って頂き、誠にありがとうございます。」
果南「お礼を申し上げるのは私の方です!、あれが無ければパナマ運河破壊は成し得ませんでした!」
松浦と青山は実に2年ぶりの再会であった。
穂乃果「早速で悪いけど東野さんに青山さん、敵方の超空の要塞、B30型を凌駕する航空機を作る事は可能かどうかの相談、それもできる限り早く。」
ひかり「総長!、まだ星雲を配備したばかりで資材が危うい状況ですよ!」
蓮「確かに前世大戦末期に富嶽という太平洋横断爆撃機が計画されていましたが・・・、あのような物をですか?」
穂乃果「まあ、そんな感じだね。」
蓮「!!、富嶽は片道飛行!、言わば特攻兵器です!、例え攻撃に成功しても帰ってこれません!」
穂乃果「それは前世での話で、この現世ではハワイを抑えている。」
蓮「まあ、ハワイからでしたら北米大陸西海岸を爆撃して容易に帰ってこられるでしょう・・・、しかしそれには200機、最低でも100機は必要です!、今の我が国の生産力では不可能です!」
穂乃果「敵は前世、それから記憶をくれた後世の米軍に等しい、本気になれば数に物を言わせて攻めてくる・・・、それを我らの頭でカバーするしかない、これは園田長官に綺羅長官、東條参謀総長と極秘に考えた計画だけど、およそ1年後に北米大陸奥深くにある五大湖当たりまで潜入し爆撃できる超長距離爆撃機が欲しい。」
蓮「およそで1年ですか・・・」
穂乃果「用法についてはまだ話せないけど、どうか引き受けてくれないかな!」
ひかり「なるほど、そういう事でしたらこの東野ひかり!、全力でお引き受け致します!」
穂乃果「本当!、よろしくお願いします!」
何かを察した東野は高坂の要望を引き受けた。
ひかり「それで、総長が欲しいのは陸上機ですか?、それとも水上機ですか?」
穂乃果「と言うと?」
ひかり「まさか総長からその様な相談があるとは思わず、この様な物を用意してきたのですが。」
ぴらぴら
東野は自分の鞄から一つに、テーブルを覆い隠す程大きな設計図を取り出した。
穂乃果・果南「「!!」」
果南「これは!」
そして設計図の上には”空中戦艦”と書いてあった。
ひかり「天照の会のがまだ発足されたばかりで、会に技術将校が私と蓮に琴音、燐火しかいなかった時に4人で暇つぶしで書いていたものだったのですが、本当に作って見ようと思いまして!」
穂乃果「双胴飛行艇とは驚いたよ!」
ひかり「我が技術部ではこれを空中戦艦と称して、艦娘の妖精さんに運営可能で過給機なしで成層圏までも高出力を出せる革命的な航空用発動機の装備を考えております。」
果南「東野さん!、この機体にはジェットエンジンも搭載するのですか!」
ひかり「ええ、それを前提にしています。」
この現世には前世の日本航空自衛隊が誇るF3を遥かに凌駕する人間用のジェット機が存在するが、これらの兵器は深海棲艦相手では一切通用しない。
敵も日に日に進化しているため、これまでレシプロ機が主流であった艦娘の艦載機を艦娘にも搭載可能なジェット機の開発が始まっていた。
東野が出したこの機体に使用するジェットエンジンはそれの大型版であり、プロペラと併用できるものと言える。
ひかり「艦娘の艦載機用のジェットエンジンはまだ小型化に成功していないため完成されていませんが、これくらい大きな機体であれば可能です。」
果南「可能なのですか!」
蓮「過酸化水素は扱いが難しいですが、過給機を使わずともエンジンを作動でき高度20000mでも飛行できます、空力学的に飛行艇は不利ですが、この高度でしたら敵の戦闘機の性能ではまず近づくことすらできず、しかもジェットエンジンを発動させれば短時間ではありますが時速800㎞は出せるでしょう。」
穂乃果「ジェットエンジンはあくまでも上昇用と逃走用というわけだね。」
ひかり「それにこの機体は水上機ですからサイズで問題になる滑走路が不要になり、航続距離は20000㎞以上で幽霊艦隊に新たに配備される伊900型潜水艦を移動基地とすれば作戦行動半径を伸ばす事ができます。」
果南「それはすごいです!」
穂乃果「東野さん!、この巨大飛行艇の!、いや、空中戦艦の計画を急ぎ進めて欲しい!」
ひかり「はい!、この空中戦艦は私達のロマンの1つでした!」
蓮「総長のご希望に添える様、心命を投げ打つ覚悟です!」
双胴飛行艇・空中戦艦、表向きには超飛行大艇と称された。
そしてこの空中戦艦は松浦の提案で「富士」と名付けられた。
蓮「東野さん、私達の青春がいよいよ形になりますね。」
ひかり「うん、楽しみ。」
穂乃果「それじゃあ、富士の研究開発成功を祈って、乾杯!」
コン、コン、コン、コン、グイッ
ひかり「プハー!、必ずや成功させます!」
蓮「・・・」
果南「?、青山さん?」
蓮「ううっ・・・、目が・・・、回る~・・・」デロデロ
果南「熱燗一杯で酔ったんですか!、ていうか南長官達と飲んだ時もビールコップ一杯で酔っていた様な・・・」
ひかり「アハハハ!、蓮は相変わらず酒に飲まれやすいね~」グビグビ
東野の飲酒量は隼鷹や千歳などに匹敵するが青山は酒には滅法弱かった。
青山がダウンし松浦が介抱している間、高坂と東野はこれまでの連日の激務で溜まりに溜まったストレスを発散するが如く飲みまくっていた。
穂乃果・ひかり「「ヒャッハーーー!!」」
果南「(元気だなぁ、あの人たちは・・・)」ニガワライ
蓮「ううっ、頭に響く~、頭痛いです~・・・」グデングデン
それから酔った東野が熱燗一杯で泥酔した青山を担ぎ料亭を去っていった。
ひかり「大丈夫?」
蓮「大丈夫じゃ無いですよ~」
ひかり「・・・」ジー
蓮「ううっ」ボイン
ひかり「くっ!(別に無いわけじゃないけど何だろうこの複雑な気持ちは!)」
部屋には高坂と松浦のみである。
そして先程とは打って変わって高坂の表情とても険しくなった。
穂乃果「これは超機密だけど、敵は核爆弾の完成が間近らしい・・・」
果南「!!」
穂乃果「核爆弾の出現は天照の会でも何度も討論してきた重要議題であるが、CICルームによれば早くて来年末には使用される可能性すらあるらしい・・・、私達はこれの対策に苦悩している・・・、何せいつどこに落とされるか分からないからね・・・」
果南「・・・、予想される核爆弾の被害は・・・」
穂乃果「仮に新八八機動艦隊の真上に落とされたならば・・・」
果南「・・・」ゴクリ
穂乃果「一撃で全滅するだろうね、生き残れるのは潜水艦ぐらいかな・・・、本土を攻撃されたら・・・、言うまでもない!、地獄絵図と化す事になる!」
果南「何としても阻止しなければ!」
穂乃果「前世の広島や長崎の二の舞になる、何としても潰す!」
高坂は参謀部に監視衛星をフル活用し何としても敵の核爆弾開発工場を突き止める様命令を発した。
ここで時系列は戻り2043年2月1日、幽霊島より伊601を旗艦とする幽霊艦隊が極秘に出撃、フェニックス諸島経由でライン諸島を目指している小泉艦隊に対し、幽霊艦隊の向かう先はタスマン海であった。
そして翌日の昼下がり頃、敵哨戒潜部隊5隻が小泉艦隊の姿をフェニックス諸島沖にて捉えた。
カ級1「コチラ哨戒部隊、フェニックス諸島沖ニテ敵艦隊ヲ発見!、編成ハ戦艦1、空母6、軽空母6、ソノ他護衛艦多数ヲ確認!」
カ級2「主力、軽空母合ワセテ12・・・、小泉艦隊ニ違イナイネ・・・」
カ級E「至急シドニーオヨビブリスベンニ報告セヨ!」
カ級3「了解!」
カ級4「敵艦隊上空ニ機影無し・・・、早メニ撤退シタ方ガヨロシイカト・・・」
カ級E「エエ・・・」
しかし、鉄壁の対潜輪形陣に阻まれ攻撃はできなかった。
伊19「奴らにも学習能力があったのね・・・」
同日、シドニー軍港、ここに太平洋艦隊最後の敵艦隊が集結していた。
敵方はこれまでの日本海軍の行動パターンからライン諸島奪還作戦を開始したと確信していたが、敵本体の情報部の分析から真に意図する日本海軍の狙いはこのシドニー軍港の艦隊の殲滅そのものにあると報告した。
ヲ級E1「一体本部ドウイウツモリデショウカ・・・」
ル級FS「コノママ時ガ経テバ我々ハ復活シタ矢澤艦隊ノ一方的ナ攻撃ニ晒サレル事ニナルデショウネ・・・、ダカラ東インド洋艦隊ガセイロン島ヨリアンダマン海ヘノ侵攻ノ際、我ラモソレニ合ワセテ出撃、南太平洋艦隊トノ激戦デ瀕死ノ矢澤艦隊ガ相手ナラ間違イナク勝テル・・・、本部ハソウ踏ンダノデショウ・・・」
ヲ級E1「シカシ、今出撃スレバ小泉艦隊ニ襲ワレルノデハ・・・」
ル級FS「イヤ、小泉艦隊ハコチラヘハ来ナイ、小泉艦隊ハアクマデ囮、標的ハライン諸島デ間違イナイワ・・・」
そして同日北米大陸某所沖海上、戦艦、空母、鬼、姫など合わせて200に上る大集団が集結していた。
空母棲姫「シドニーノ艦隊ニハアア伝エタケド・・・」
重巡棲姫「私ハ反対ヨ!、X艦隊ガ待チ構エテイルカモシレナイ海域ニ奴ラヲムザムザ出撃サセテ全滅デモシタラ最終目標ノハワイ奪回ハ更ニ困難ヲ極メル!」
空母水鬼「確カニ、ソレドコロカ西海岸ヘノ接近ガアッタ場合・・・、西海岸防衛ニ当タラセテイル防衛艦隊ト西海岸各基地ノ防衛艦隊ダケデハトテモ防ギキレナイワ!」
水母棲姫「ソノ時ハ復興シタパナマ運河ヲ使イカリブ海艦隊ヤ東海岸防衛艦隊ヲイクツカ西海岸ニ連レテクレバヨイノデハ?」
戦艦水鬼「何ヲ言ウ!、我々ガ戦ッテイルノハ日本ダケデハ無イ!、反対側ニハイギリスヤドイツ、イタリアナドガイル!、敵ノ脅威ヲ背後ニ受ケタママ戦エルト思ウノ?」
港湾棲姫「Adomiral・高坂ガ厄介デナラナイ!、マルデ我ラノ心ガ読マレテイル様ダ!」
軽空母水鬼「あら?、ソノTop Adomiral・高坂ニトコトン踊ラサレテ来タノハドコノドイツダッタカシラネ!」
港湾棲姫「ナンダト!」クワッ
空母棲姫「ヤメナイカ!、今ハ喧嘩ヲシテイル場合デハ無イワ!」
ワーワー、アーダコーダ、ナンダトー、フザケルナー
戦艦棲姫・中核棲姫「「・・・」」
これは敵方による日本海軍との太平洋での戦いについての会議であった。
だが会議があまりに進まなく、困り果てた深海棲艦全軍の副旗艦たる戦艦棲姫は会議を翌日に持ち越す事にし、会議の直後、深海棲艦全軍の総旗艦たる中核棲姫と一対一での対談をした。
戦艦棲姫「ヤハリ問題ナノハ姿無キ海中艦隊デス・・・、ドコニ潜ンデイルノカ所在ガ全クツカメナイタメ、一切ノ対策ガ立テラレニイマス・・・」
中核棲姫「先ホドノ話デヨク分カッタワ・・・、X艦隊カ・・・」
戦艦棲姫「奴ラガ太平洋ヲ跳梁シテイル限リ我ラハ手モ足モ出マセン!」
中核棲姫「何トシテモX艦隊ヲ撃滅シタイワ・・・、東側デハイギリスノ最新鋭戦艦ヤドイツノ新型ジェット機デ手痛イカウンターパンチヲ食ラワセテ来テイルトイウ・・・」
このときドイツで新たに戦列に加わった装甲空母・グラーフ ツェッペリンには世界初の艦娘に搭載できるジェット機が搭載され、猛烈な反撃を開始していた。
戦艦棲姫「ココハ・・・、空飛ブ悪魔(フライングデビル)ノ使用ヲ許可シテ頂ケマセンカ!」
中核棲姫「シドニーノ連中ヲムザムザ壊滅サセル訳ニモイカナイ・・・、仕方ガ無イ・・・、カ・・・」
この事はすぐさま伝えられ、北米大陸本土から最新鋭超重爆撃機・B32(フライングデビル)型90機がオーストラリアへ向けて飛び立った。
このB32型の編隊は途中タヒチで補給を行ったがこれを偶然にも哨戒中であった伊168が目撃していた。
伊168「なにあれ!、まるで化け物じゃないの!」
この情報は直ちに暗号に組み替えられ軍令部および参謀部へと送られ、航空機の専門家である青山の下に届けられた。
穂乃果「かなり大型の機体だそうだよ・・・」
蓮「B30型よりも大型、翼の後ろ側に推定2000馬力級の発動機が計6発、間違いなくB32(フライングデビル)です!」
穂乃果「B32・・・」
2043年2月3日、日本海軍は伊168によるB32型の目撃情報を元に各島の基地かた仙空12機を飛ばし索敵を開始した。
そして幸運にもその内の1機が高度12000mを飛行中の大編隊を電探で捉えた。
通信士妖精「我、新型爆撃機を発見す!、巡航速力375ノット以上と推測される!、これ以上追跡出来ず!」
この情報はすぐさま各地を駆け巡り南下中の小泉艦隊に幽霊艦隊およびティモール基地司令部へと伝達され緊張が走る。
そんな中でトラック島基地司令部にて園田もこの情報を得て高坂と特殊衛星電話にてこの作戦を続けるか否かを議論した。
海未「気になります!」
穂乃果「敵は我々の潜水艦決戦思想の対し戦略航空決戦思想と言う新機軸を一層鮮明に打ち出してきたね・・・」
海未「その通りです!、我々が最も警戒していた戦略です!、まるで平面の盤上で戦う碁が突然三次元になった様な物です!」
穂乃果「敵はアメリカ大陸を手中に抑えている!、工業力を背景に何千機もの超重爆を一気に投入して来れば防ぎようがない!」
海未「敵の航続距離はいか程ですか?」
穂乃果「青山さん曰く、タヒチからオーストラリア東部まで一気に飛んだと仮定すれば最低でも6000㎞以上、7000㎞あるかも知れないそうだよ・・・」
海未「ヨーク半島から東京まで飛んで来られる距離ですね!」
穂乃果「富士計画が一歩遅れを取ってしまった・・・」
海未「例の空中戦艦ですか?」
穂乃果「うん、まあ仮に間に合ったとしてもこちらは手作り、向こうは大量生産、戦争は一大消耗戦だから勝てない・・・」
海未「ええ、恐らく・・・」
穂乃果「園田長官、この作戦は中止すべきではないかな・・・」
海未「しかし高高度を飛行する戦略爆撃機では海上を高速で移動す艦隊に命中させるのは極めて困難だと思いますが・・・」
穂乃果「確かにその通りだけど、どうも嫌な予感がする・・・」
海未「わかりました!、今すぐ小泉提督および艦隊旗艦・瑞鶴に連絡をとり独自に判断する様にと伝えます!」
園田が通信を切る。
穂乃果「・・・」すくっ
それと同時に高坂は不安を抱えつつ執務室の窓から晴れ渡った東京の空を見上げ、高坂の中にあるとある記憶が呼び起された。
穂乃果「(やはり敵はこれを完成させてしまった・・・、奴らの日本本土に核攻撃を仕掛けるための空飛ぶ悪魔!)」
同日未明、ニューカレドニア島北部沖合に二航戦所属の4名の駆逐艦娘がいた。
そしてそれらをブイン基地の星空が指揮を執る。
ボチャン、ボチャン、ボチャン
朝霧「よいしょっと!」
ボチャン、ボチャン、ボチャン
夕霧「重いなこれ!、よいしょ!」
ボチャン、ボチャン、ボチャン
天霧「設置完了だぜ!」
狭霧「こちらもOKです!」
朝霧「司令官!、海底設置魚雷全弾設置完了しました!」
凛「了解!、長居は無用、引き上げて!」
朝霧「了解!」
凛「(松浦さん、今度は何を企んでるのかにゃ?)」ニヤニヤ
朝霧たち4名が設置した海底設置魚雷とは何か、それは近い内に明らかになるであろう。
同日昼すぎ、シドニー軍港にて敵艦隊が動き出した。
ル級FS「クッ!、コンナ危険極マリナイ作戦ヲ何故実行シナケレバナラナインダ!」
リ級1「シカシル級様!、B32型ヲ投入スルコノ必殺作戦ガ成功スレバ一撃デ敵艦隊ヲ!」
ル級FS「貴様ニ言ワレンデモソレグライワカル!、出撃準備ヲ急ガセナサイ!」
シドニー軍港に立て籠もる敵艦隊は小泉艦隊をフィジー沖にて殲滅せんと出撃、ただし旗艦のル級FSにとっては不承不承の出撃であった。
ル級FS「対潜警戒ヲ怠ルナ!、常ニ厳ニシナサイ!」
敵艦隊は潜水艦を警戒し陸上基地から入れ替わり立ち代わり支援機に守られ海岸に沿って北上した。
編成は戦艦1、空母2、軽空母1、重巡3、軽巡3、駆逐艦12であったが基地防衛のためシドニー軍港攻撃用に矢澤がラバウルに配備した一式陸攻改によってこれまで4度の爆撃を受け戦力の40%以上を失った状態であった。
しかし敵艦隊の警戒網は厳重で幸先よく潜り込もうとした伊号潜水艦数名が血祭に上げられ、哨戒機も敵の支援機の阻まれ撃墜されていた。
敵艦隊のX艦隊に対する警戒は尋常ではなくニューカレドニアのヌーメアに到着するまで4日も掛かっていた。
ヌ級E「哨戒機ヨリ通信!、敵機動艦隊フェニックス諸島南方マデ南下シテイルソウデス!」
ル級FS「敵ノ第一目標ハ今ハ瀕死ノフィジーデアル事ニ間違イナイワネ!」
ル級FS「(上手ク行ケバ敵ノ裏ヲカケルワネ!)」
敵艦隊は小泉艦隊の進行速度を考慮し2月8日にはニューカレドニア島北部に浮かぶリフー島まで進出、マレ島にリフー島、ウベア島の3島が並び水道になっている。
航空支援が受けやすいこの位置で敵艦隊は小泉艦隊を待ち伏せた。
更に幅150㎞程ある水道の両側およびその他の海峡にも駆逐艦を配備し重圧な対潜網を固め神経質な程にX艦隊の侵入を警戒した。
果南「残念、あんた達の動きは想定内だよ!」ニヤニヤ
しかしそれを伊701から発艦した星電改が遥か遠くからレーダー波を探知しつつ敵の位置を割り出していた。
同日夜、敵艦隊にとって状況を一変させる出来事が起こった。
ル級FS「ナニ!、敵艦隊ガ姿ヲ消シタダト!」
始めは単なる韜晦かと思われたが敵は必死になって小泉艦隊を探した結果、小泉艦隊が急遽東へ向かったと判明した。
ル級FS「ナンテ事!、今スグ総本体ヘ暗号電文!」
ヲ級E1「了解!」
そして敵艦隊は作戦を中止し夜明けと共にシドニー軍港へ帰投すると暗号電文を送り撤退の準備を開始した。
その頃、某太平洋洋上にて。
瑞鶴「提督、予定通り進路をクリスマス島へ取りました。」
花陽「了解、敵のハワイ奪回の拠点となる島だからね、この機に一気に叩き潰すよ!」
瑞鶴「でも提督、園田長官からの電文では・・・」
花陽「そう神経質ならなくて大丈夫だよ、陸上基地ならともかく戦略爆撃機だから高高度からの爆撃で、ジグザグ航行で高速回避する艦隊に命中させる事なんて出来ませんから。」
瑞鶴「だといいんだけど・・・」
このとき、幸運艦娘とも言われる瑞鶴もまた不安を覚えた。
ニューカレドニア島北部、リフー島付近、敵艦隊が夜明けと共に撤退を開始した。
ル級FS「帰投スルワヨ!」
ヲ級E1「了解!」
ザザーーーー、ザザーーーー、ザザーーーー、ポチャン
伊601「敵艦隊遠目で補足、撤退を始めた様です。」
果南「よし!、G7発射!」
伊601「了解!、艦隊総員、G7発射!」
幽霊艦隊一同「「「「「発射!」」」」」
パンパンパンパン、パンパンパンパン、パンパンパンパン、シュルルルルルルルルルルーーーーー
ボゴボゴボゴボゴ、ボゴボゴボゴボゴ、ボゴボゴボゴボゴ
ハ級FS「前方に無数の気泡発見!」
ル級FS「ナニ!」
へ級FS「軽巡、駆逐全艦爆雷投下用意!、撃てーーー!」
バシューーーン、バシューーーン、バシューーーン、ボチャン、ボチャン、ボチャン
バッシャーーーン!、バッシャーーーン!、バッシャーーーン!
伊501「当たるかバーカ!」
伊702「こちらの居場所はまだバレていませんね。」
ピッ、バシューーーン、ピッ、バシューーーン、ピッ、バシューーーン、ピッ、バシューーーン
シュルルルルルルルルルルーーーーー、バッシャーーーン!、バッシャーーーン!、バッシャーーーン!
ハ級1・2・3・4「「「「ギャアアアアーーーー!!」」」」
へ級E1、E2「「グアアアアーーーー!!」」
ル級FS「何事!」
リ級1「X艦隊デス!、X艦隊の襲撃デス!」
ル級FS「待チナサイ!、コレハX艦隊デハ無イワ!、特殊潜ノ仕業ヨ!、爆雷デ片ヅケナサイ!」
この後も敵艦隊は爆雷を四方八方に投下するが命中している気配は全くない。
そして混乱した敵の直下から多数の海底設置魚雷が放たれその餌食となっていった。
伊601「海底設置魚雷の作動を確認!、軽空母1、重巡1、軽巡2、駆逐6を撃沈!、重巡2、軽巡1、駆逐5大破炎上!」
シュルルルルルルルルルルーーーーー、バッシャーーーン!
ル級FS「グアアアアーーーー!!、オノレーーーー!!」
ヲ級E1「ギャアアアアーーーー!!」
ル級FS「(念イニハ念ヲ入レタハズ!、ナノニドウヤッテコノ対潜網ヲ!、何故ダ!)」
星電改機妖精「敵は海底設置魚雷を食らって泡を食っている!、幽霊艦隊および司令部へ連絡!」
副長「通信です!、伊701の星電改からです!、敵艦隊は大混乱に陥り艦隊行動が取れなくなっている模様です!」
参謀長「海底設置魚雷の謀計は当たりましたね!」
海底設置魚雷とは魚雷を沈底カプセルに収納し海底で敵艦隊を待ち伏せ、各種の信号によって発動すると短魚雷をを発射する機雷型魚雷である。
今回カプセルに収められていた魚雷は小型の53式酸素魚雷である。
果南「そう、でもまだだよ。」ニヤニヤ
ル級FS「(クソッ!、コノ水道カラ脱出スベキカ・・・、シカシ水平ノ向コウニハ敵潜ガ・・・)」
敵機関は判断に迷う。
そんな中、敵に幽霊艦隊の雷洋と春嵐が襲い掛かる。
ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
ル級FS「(ン?、何ノ音ダ?、ナンダ?、朝日ノ中ニ・・・)」
隊長妖精「おう、まだまだ残ってやがる!」ニヤニヤ
ル級FS「敵機!、ガトゥーン・ロックヲ破壊シタ奴ラヨ!」
隊長妖精「突っ込むぞ!」
航空隊妖精s「「「「おおおーーー!!」」」」
ル級FS「対空戦闘開始!、撃チ落トセ!」
ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!
隊長妖精「62式を食らいやがれ!」
カッ!、ボチャン、シュルルルルルルルルルルーーーーー、バッシャーーーン!
ル級FS「グアアアアーーーー!!、オノレーーーー!!」
春嵐妖精1・2「「食らえ!」」
ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドッカーーーン!、ドッカーーーン!
ヲ級E2「グアアアアーーーー!!」
ドッカーーーン!、ドッカーーーン!、ドッカーーーン!
春嵐妖精3「ヲ級大破!、これで敵艦載機は0に等しい!」
更なる想定外の攻撃で敵はより一層混乱に陥った。
敵戦闘機1「くそっ!、あいつら!」
敵隊長機「一機も逃がすな!」
後座妖精「隊長!、後方に敵機!、F6F型15機!」
隊長妖精「制空戦闘機か!、野郎共!、とんずらだ!」
ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
雷洋および春嵐の速力は敵機を凌駕しているため、すぐに引き離し去っていった。
果南「確かにF6F型は優秀な機体だけど、その重量ゆえ些か速力に難がある。」
ル級FS「ナンテ事ダ・・・」ゾワッ
ヲ級E2「レーダーニ感アリ!、敵大編隊接近!」プスプス
ル級FS「何ンデスッテ!、ソンナ馬鹿ナ事ガアリ得ルカ!」
ヲ級E2「間違イアリマセン!」
ル級FS「シカシ、敵機動艦隊ノ艦載機ガ飛ンデ来レル訳ガ無イ!、アリ得ナイ!、コンナ事絶対ニアリエナイ!」
ヲ級E2「北西ニ敵機確認!、数100以上!」
星電改妖精1「柴式水上戦闘機および緑電改水上攻撃機の到着を確認!」
柴式隊長妖精「前方に敵戦闘機!、我ら柴式隊は緑電改の援護に回る!」
緑電改隊長妖精「了解!、こちらは間もなく攻撃態勢に入る!、全機弾倉、雷倉開け!」
緑電改妖精s「「「「「了解!」」」」」
一体これらの航空機がどの様にしてこの海域まで飛んで来たのか。
遡る事およそ2日前、横須賀鎮守府からこれらは発進し、水上機母艦・瑞穂による時間差リレー補給を受けながらヤルートまで飛び、そこで新たに幽霊艦隊に加わった補給潜水艦・伊1000、伊1001、伊1003、伊1004によって再び時間差補給リレーによっておよそ3000㎞の彼方から飛来したのである。
往復では6000㎞であるからB17型やB24型をも超える作戦範囲でり、補給リレーを回数繰り返す事が出来れば、理論的には哨戒時の仙空の航続距離7400㎞をも上回るのである。
ババババババババババッ!、ババババババババババッ!、ドカーーーン!、ドカーーーン!
ブーンブーンブーン、、ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
緑電改妖精s「「「「「食らえーーーー!!」」」」」
カッ!、ボチャンボチャンボチャン、シュルルルルルルルルルルーーーーー、バッシャーーーン!、バッシャーーーん!、ばっしゃーーーん!
敵艦隊「「「「ギャアアアアーーーー!!」」」」
ヲ級E2「コレマデカ・・・」ボチャン
ル級FS「ニューカレドニアカラノ支援機ハドウナッテイルノヨ!」
リ級3「大変デス!、ニューカレドニアノ陸上基地モ敵機ノ爆撃ニ晒サレテイテ支援ドコロデハナイソウデス!」
ル級FS「ナッ!、ソンナ馬鹿ナ・・・」
リ級3「ル級様!、ゴ指示ヲ!」
ル級FS「脱出ヨ!、コノ魔ノ海域カラ一刻モ早ク脱出スルワ!」
伊601「敵艦隊が水道からの脱出を図りました!!」
果南「ふふ、さーて、とどめといきますか!、潜望鏡攻撃を行う!」
伊601「了解!、総員潜望鏡深度!」
幽霊艦隊一同「「「「「了解!」」」」」
伊601「潜望鏡からの映像モニター出します!」
ピピッ!
果南「ありがとう・・・、よし、水道から出で来る!、魚雷全弾一斉射撃!」
幽霊艦隊一同「「「「「「撃てーーーー!!」」」」」」
パンパンパンパン、パンパンパンパン、パンパンパンパン、シュルルルルルルルルルルーーーーー
果南「潜望鏡下げ!、急速潜航!」
幽霊艦隊一同「「「「「「急速潜航!」」」」」」
ブクブクブクブク
バシャバシャバッシャーーーン!、バシャバシャバッシャーーーン!、バシャバシャバッシャーーーン!
伊601「敵艦隊の反応・・・、全て消失しました!」
先ほどまで激戦が繰り広げられていた海原は何事も無かったかの様に再び平和な南海の楽園へと戻っていった。
果南「進路を南へ!」
伊601「了解!」
副長「司令官、オーストラリア封鎖を継続するんですか?」
果南「いいえ、もうオーストラリアは丸腰同然の状態、呂号戦隊と二、四航戦がとどめを刺すそうだから、こちらは南極を目指すよ!」
副長「ペンギンに会いにですか?」
果南「遊びに行く訳じゃ無い、偵察のためだよ。」
参謀長「偵察ですか?」
果南「ひょっとすると南極大陸はこちらの基地として使う事が出来るかもしれないからね!」
参謀長「司令官!、南極海にはまだ敵が!」
果南「敵南極海艦隊のほとんどは大西洋に移動した事は確認済、大西洋側に出るよ!」
このとき敵南極海艦隊は南大西洋に進出していた。
松浦はこの機を逃さず将来を見越した予備航海を行うようあらかじめ高坂から命を受けていたのである。
副長「と、言いますと?」
果南「インド洋のみならず、大西洋も我ら幽霊艦隊の作戦圏にならないとは限らないからね。」
しかしその頃、幽霊艦隊の遥か上空を巨大な大編隊が北上していた。
B32(フライングデビル)型が秘計を抱えライン諸島を目指して飛行していた。
危うし、小泉艦隊。
2043年2月7日早朝、オーストラリアから飛び立った90機のB32型はニューカレドニア島上空で二手に分かれた。
隊長機率いる75機の本体は日本海軍の太平洋戦略ライン構築の拠点となるハワイを目指し、もう一方の別動隊15機は密命を受けクリスマス島を目指す。
クリスマス島はハワイから南へ2000㎞以上、東京からはおよそ7500㎞の中央太平洋の赤道上に浮かぶ環礁であるが、この島は深海棲艦の陸上基地として開発されていた。
南東太平洋洋上、そのにクリスマス島を目指して東進する小泉艦隊の姿があった。
瑞鶴「クリスマス島奪還が成功せれば太平洋戦略ラインが完成して敵は当分手も足も出せなくなるわね!」
葛城「はい!、なにせ今や太平洋の制海権はこっちの物ですからね!」
天城(雲龍型)「油断は禁物よ葛城。」
翔鶴「高坂総長はこの作戦が成功すれば北米大陸本土の艦隊を誘き出して、太平洋の全ての艦隊を撃滅できると仰られていたわ!、その裏に何かもっと大きな計画があるらしいけど・・・、まあその意味でも本作戦の意義は極めて重要ね。」
大鳳「幼い頃に見た夢の1つで、総長達の前世では大戦時は皆お国の為に死ぬとか、一部の資本家の利益の為に死ぬとか、そんな事がよくあったらしいのよ。」
祥鳳「なによそれ、そんなくだらない事してたの?、総長達の前世の軍人は・・・」
翔鶴「だから総長はこの世界で、深海棲艦全軍の撃滅は勿論、軍人などいらない世の中を作るために、私達軍人は戦う、そのように仰っていました。」
大鳳「しかし、平和という物は黙って待っていればやってくる物では無いわ。」
天城(雲龍型)「血を流し戦って恒久平和の門を1つずつ開いていくしか無い・・・、というわけですね。」
雲龍「そういえば仏の世界にも毘沙門天という甲冑姿の仏様がいたわね。」
翔鶴「不動明王という仏様もいるわ・・・、この仏様は大日如来の名代として現世界に降り立ち悪と戦ったと言うらしいけど・・・」
天城(雲龍型)「仏の世界と言えど平和な神だけでは成り立たない、というわけね。」
大鳳「戦う神もまた必要ね。」
艦隊の面々は広い太平洋洋上で思い思いの事を話し合う。
その時、一つの通信が入る。
ピピッ
花陽「皆さん聞こえますか!」
瑞鶴「うん、聞こえているわ!」
花陽「こちら基地から飛ばしていた哨戒機がクリスマス島の敵の姿を捉えました!、基地には防空棲姫にリコリス棲姫がいます!」
瑞鶴「うわ!、またやばそうなのが・・・」
高千穂「私の主砲で吹き飛ばしましょうか?」
瑞鶴「できればそうして貰いたいけど・・・」
花陽「作戦は予定通り行います。」
翔鶴「!!、レーダーに感あり!、敵機接近中!」
瑞鳳「お任せください!」
ギリギリ、パシュッ、ブーンブーンブーン
電征妖精1「敵機発見!、B17型です!」
電征妖精2「ちっ!、逃げられました!」
フミコ「偵察任務中の偵察機と思われます!、提督、CICの調査では敵にも優秀なレーダーが装備されている可能性があります!」
敵機迎撃のため瑞鳳から電征が飛び立つも、それをいち早く察知した敵はすぐさま引き返して行った。
花陽「・・・」
フミコ「レーダーによって発見されたとなると、先に仕掛けるべきではありませんか!」
花陽「そうですね!、瑞鶴さん!、作戦を開始してください!」
瑞鶴「了解!、艦隊総員!、作戦開始!」
そして同日午後13時30分、艦隊が発見された可能性があると考えた小泉は予定より早く作戦開始を宣言した。
瑞鶴「予定通り艦隊を二手に分けるわ!、各自役目を遂行されたし!」
小泉艦隊一同「「「「「「了解!」」」」」」
作戦開始と共に艦隊は二手に分かれ、総旗艦・瑞鶴の指揮下には装甲空母・大鳳、対空重巡・利根、筑摩、対空駆逐・秋月、照月、涼月、初月、そして今作戦から新たに加わった最新鋭高速戦艦・高千穂の計8名が残り、他の者は空母・翔鶴の指揮の下でクリスマス島を目指す。
瑞鶴「そういえば言うの遅れちゃったけど、今回から改めてよろしく、高千穂さん!」
高千穂「ええ、こちらこそ!」
瑞鶴と並走する黒髪で長身、大和と赤城を足して2で割った様な容姿をした女性。
この高速戦艦・高千穂の艤装は外見こそ大和型をそのまま小型化した様な形をしている。
しかし小型化されたにも関わらず、アイオワ級に匹敵する攻撃力と速射性を持った41㎝3連装砲を始め大和型の副砲の部分には10.5㎝長3連装砲が搭載され、艤装のあちこちに対空兵器と電子機器も充実、長門型よりも大型であるが30ノット以上という高速を出せる新鋭艦である。
大鳳「そういえば提督・・・」
花陽「どうかしましたか?」
大鳳「今作戦の会議で高坂総長を怒鳴りつけたといのは本当なんですか?」
花陽「どこで聞いたんですか?」
大鳳「会議に出席していた翔鶴さんです・・・、翔鶴さん曰く、また私の艦隊を囮に使うのか!、と激怒された様で・・・」
花陽「当たり前です!、皆さんを危険に晒す訳ですから当然です!」
瑞鶴「(提督、これは一芝居打ったわね!)」ニヤニヤ
ハワイ・パールハーバー基地上空
敵隊長機「弾倉庫を開け!」
敵超爆撃機1「全機準備完了しました!」
敵隊長機「(フフフ、コンナ楽ナ作戦モイイネ、トモカク今回ハ敵パールハーバー基地ニ命中サセレバイイ、ハワイ初空襲ニ意義ガアルカラ、イズレハ日本本土ヲ焦土化シテヤル!)」
敵隊長機「投下!」
ヒュルルルルル-----、ヒュルルルルル-----、ヒュルルルルル-----
敵隊長機「景気良くやれ!、一発も残すな!、空になるまで全部ぶっ放せ!」
パールハーバー基地・司令部
ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!
花陽「!!、何事ですか!」
参謀1「空襲です!」
ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!
フミコ「あっ!、軍港が!」
参謀2「提督!、至急避難を!」
花陽「う、うん!」
この日、パールハーバー上空に75機のB32型が飛来、敵は高度12000mからのレーダー照準爆撃を仕掛けて来たため対空レーダーでの発見が遅れ、また局地戦闘機の発進が間に合わなかった。
南東太平洋上空
星電妖精1「こちら瑞鶴一番!、上空に敵編隊を探知!、こちらに向かってきます!」
瑞鶴「機種は?」
星電妖精1「わかりません!、ですが大きさから見て重爆です!」
瑞鶴「重爆!、まあいいわ!、護衛戦闘機隊!、発艦開始!」
ギギギギッ、パシュッ、パシュッ、パシュッ、ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン、ブーンブーんぶーん
敵編隊を捉えたとの通報を受けた瑞鶴、大鳳はすぐさま電征を発艦させた。
ブーンブーンブーン
隊長妖精「!!、見つけたぞ!、敵機種B17型!、かかれーーー!!」
ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
ババババババババババッ!、カッ!、カッ!、カッ!、カッ!、ドカーーーン!
電征妖精1「ぎゃああああーーーー!!」
隊長妖精「ちっ!、護衛機か!」
電征妖精2「P51型です!」
ババババババババババッ!
隊長妖精「散開しろ!」
ブーンブーンブーン、ブーンブーンブーン
隊長妖精「くそっ!、これじゃB17型どころじゃない!」
ブーン、ブーン
隊長妖精「後ろを取った!、食らえーーー!!」
ババババババババババッ!、ドカーーーン!
敵戦闘機「ぎゃああああーーーー!!」
隊長妖精「一丁上がりだ!」
ブーン、ババババババババババッ!
隊長妖精「ちっ!」
電征妖精2「させるかーーー!!」
ブーン、ババババババババババッ!、ドカーーーン!
敵戦闘機2「ぐああああーーーー!!」
隊長妖精「これじゃあB17型は艦隊の方で始末してもらうしかないな!」
南東太平洋洋上
瑞鶴「こっちに向かってくるのはB17型・・・」
大鳳「間違いないわね・・・」
瑞鶴「艦爆や艦攻ならまだしも重爆とはね・・・」
瑞鶴は星電からの報告に不安感を覚えた。
高千穂「とりあえず、対空戦闘準備しますか?」
瑞鶴「ええ、総員対空戦闘用意!」
艦隊はすぐさま対空戦闘の準備を整える。
そんな中、大鳳がとある異変に気が付た。
大鳳「瑞鶴さん、先ほどから提督および司令部との通信が途絶えました!」
瑞鶴「!!、どういう事!」
大鳳「わかりません・・・」
瑞鶴「・・・」
瑞鶴率いる艦隊がB17型接近の知らせを受けた頃、先の翔鶴率いるクリスマス島攻撃隊は予定通りクリスマス島への攻撃を開始、瑞鶴と大鳳を除く全航空隊を投入、その航空戦力は600機にのぼる大軍であった。
ウーーーーーーーン!、ウーーーーーーーン!、ウーーーーーーーン!
ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!
流星改妖精s「「「「「食らいやがれえーーーー!!」」」」」
ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカドカドカーーーン!
リコリス棲姫「グアアアアーーーー!!、オノレ忌々シイ者ドモメ!、護衛戦闘機隊ハ何ヲシテイル!」
防空棲姫「敵ノ護衛戦闘機隊ニカナリ苦戦シテイル!、基地ノ支援ドコロデハ無い様ダ!」ガコン、ガコン、ガコン
ババババババババババッ!、ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!、ドーンドーンドーン!
ドカーーーン!、ドカーーーン!、ドカーーーン!
流星妖精s「「「ぎゃああああーーーー!!」」」
ババババババババババッ!、ブーンブーンブーン
隊長妖精「くそっ!、あいつが邪魔だ!」
ブーンブーンブーン、カッ!、ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカドカドカーーーン!
防空棲姫「グハッ!、エエイ!、小賢シイ!」
ババババババババババッ!、ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!、ドーンドーンドーン!
ドカーーーン!、ドカーーーン!、ドカーーーン!
流星妖精s「「「ぎゃああああーーーー!!」」」
作戦開始当初はこれほどの大軍を送り込まずともリコリス棲姫を撃破できると推測されていたが、突如クリスマス島に現れた防空棲姫の凄まじい対空砲火によって味方も少なからず損害を被り、更にリコリス棲姫を撃破する事ができなかったのである。
翔鶴「攻撃機の損出100機以上、戦闘機も40機以上・・・、かなりの被害ね・・・」
雲龍「あっ!、被弾した敵機が燃料貯蔵庫に墜落しました!」
ドッカーーーン!、ドカドカドカーーーン!、ブワーーーーン!
翔鶴「・・・、燃料基地大破炎上・・・」
幸か不幸か、電征の攻撃を受け被弾したP51型が敵燃料基地に墜落、その瞬間に凄まじい爆風と爆炎が辺りを襲いクリスマス島陸上基地は炎に包まれたのである。
再び南東太平洋洋上にてB17型が瑞鶴等からも目視できる距離まで接近していた。
高千穂「右舷前方に敵機!」
瑞鶴「秋月達は先頭の奴らを!、利根さんと筑摩さんは中腹の奴らを狙って頂戴!」
秋月・照月、涼月・初月「「「「了解!」」」」ガコン、ガコン、ガコン、ガコン
利根「おう!」ガコン
筑摩「お任せを!」ガコン
大鳳「左舷9時の方向より敵機!、高千穂さんの真横です!」
高千穂「了解!、対空戦闘!、撃ち方始め!」
ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!、ドカーーーン!
敵爆撃機「ぎゃああああーーーー!!」
大鳳「敵は容易には近づいて来ないわね・・・」
瑞鶴「やっぱりね、新三八弾は十分抑止力になっている様ね・・・」
大鳳「しかし、何故B17型なんか、敵の真意が読めないわ。」
瑞鶴「ん?」
中々敵機が知被いて来ず、ある程度の距離を互いに保って出方を伺っていたが、ここで瑞鶴はとある異変に気が付く。
瑞鶴「あいつら、何か落としてる・・・」
大鳳「あんな遠くに落として、連中は何がしたいのかしら・・・、爆撃を諦めたとか・・・」
上手く敵に近付けず爆撃を諦め機体を軽くするために爆弾を投下して逃走を図ろうとしている様にも見えた。
瑞鶴「いや待って!、あれは機雷よ!」
艦隊一同「「「「!!」」」」
瑞鶴「いけない!、艦隊総員取り舵一杯!」
ザザーーーー、ザザーーーー、ザザーーーー
秋月「高千穂さん直上に敵機!」
高千穂「ちっ!」
ババババババババババッ!、ドカーーーン!
敵爆撃機1「ぎゃああああーーーー!!」
ババババババババババッ!、ブーン
敵爆撃機2「食らえーーー!!」
カッ!、ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカーーーン!
高千穂「ぐううっ!、三番主砲被弾!、ですが航行には支障ありません!」
瑞鶴「敵もとんだ子供だましを考えたものね!」
初月「後方左舷!、我らの真後ろに新たな敵影!、数10以上接近!」
瑞鶴「!!、あのスコールの中ね!、レーダーの反応は・・・」
小型爆撃機に続いて背後に広がる暗雲の中に何か大きな機影を探知した。
瑞鶴「何これ!、でかい!」
大鳳「問題の超重爆では!」
瑞鶴「迎撃に上がった電征は!」
大鳳「P51型との戦闘後、B17型追撃に向かっているわ!」
瑞鶴「呼び戻して!、それから高千穂さん!、新三八弾をお願い!」
高千穂「了解!、新三八弾装填急いでください!」
ブーーーーン、ブーーーーン、ブーーーーン
敵超重爆撃機1「見つけた!、敵艦隊だ!、新兵器で木端微塵にしてやれ!」
高千穂「先ほどの攻撃で照準システムに異常あり!、目視で撃ちますが少々時間が掛かります!」
瑞鶴「・・・、取り舵一杯!、急げ!」
ザザーーーー、ザザーーーー
艦隊一同「「「「「ヨーソロー!!」」」」」
ザザーーーー、ザザーーーー
敵超重爆撃機1「弾倉開け!」
瑞鶴「!!、12.7㎝墳進弾!」
高千穂「一番左舷直角!、二番右舷直角!」ガコン、ガコン
瑞鶴「来る!、衝撃に備えよ!」
敵超重爆撃機s「「「「ファイヤー!!」」」」
バシュバシュバシュバシュ!、バシュバシュバシュバシュ!、バシュバシュバシュバシュ!
バキバキバキバキ!、バキバキバキバキ!
利根「ぐうううっ!」
筑摩「きゃあああーーー!!」
ドカーーーン!、ドカーーーン!、バキバキバキバキ!
瑞鶴「物凄い衝撃!」
ザッブーーーーン!!
キーーーーン!、キーーーーン!
墳進弾を放ち尽くした先頭のB32型3機は艦隊上空を通過し去ろうとする。
高千穂「・・・、二番撃てーーー!」
バシューーーン!
高千穂「一番撃てーーー!」
バシューーーン、ボワーーーー!!、バキバキバキバキ!
敵超重爆撃機s「「「「ぎゃああああーーーー!!」」」」
ボンボンボンボン!、ドカドカドカーーーン!
高千穂の41㎝主砲から放たれた新三八弾は一瞬で敵を吹き飛ばしたのであった。
高千穂の新三八弾を撃つタイミングがズレていれば全滅していたのはむしろ艦隊の方であった。
更に高千穂の類稀なる速力と彼女自身の一瞬の判断が勝敗を分けたといっても過言では無い。
高千穂「敵超重爆の編隊、消失しました!」
大鳳「報告!、利根、筑摩が大破炎上!、機関部および電子機器はほぼ全壊!、航行不能です!」
瑞鶴「!!」
しかし、被害はこの利根、筑摩だけに留まらなかった。
敵超重爆撃機2「食らえーーー!!」
バシュバシュバシュバシュ!、バキバキバキバキ!、ドカドカドカーーーン!
大鳳「きゃあああーーー!!」
瑞鶴「大鳳さん!」
秋月「この秋月が健在な限り!、やらせません!」
ババババババババババッ!、ドーンドーンドーン!、ドカーーーン!
敵超重爆撃機2「ぎゃああああーーーー!!」
瑞鶴「くうっ!」ギリッ
装甲空母・大鳳が大破した。
重圧な装甲を施された大鳳ですら僅かな時間で大破に追い込まれる程の兵器を敵は開発していたのである。
ピピッ
花陽「こちら小泉艦隊司令長官・小泉花陽!、誰か聞こえますか!」
艦隊が致命的な打撃を受け、予想を遥かに上回る事態に混乱し始めていたが、運良くそれを打破するが如く小泉との通信が回復した。
瑞鶴「提督!、こちら瑞鶴!、何があったの!」
花陽「敵超重爆撃機にパールハーバーを爆撃され決して軽微では無い被害を受けました!」
瑞鶴「何ですって!、でも提督が無事で良かった!」
長い時間通信が途絶えていた小泉との通信が復活して瑞鶴は僅かながら安堵した。
花陽「瑞鶴さん!、そちらも例の超重爆に襲われたらしいけど!、被害は!」
瑞鶴「戦艦・高千穂が中破、重巡・利根、筑摩、それから装甲空母・大鳳が大破、これ以上作戦を続けられる状態ではありません!」
高千穂「私は応急修理を済ませて間もなく小破程度のダメージまで回復できます!」
花陽「了解!、でも大鳳さんが大破したって事は、大鳳隊の妖精さん達はどうしますか?」
瑞鶴「私が補給リレーをさせます!」
その時、カウアイ島の陸上基地から飛ばした哨戒機が敵の足取りを掴んだ。
フミコ「哨戒機より入電!、敵はパールハーバー爆撃後は南へ去ったとの事です!」
花陽「南・・・、瑞鶴さん、こちらを襲った敵はどこに去ったと思いますか・・・」
瑞鶴「・・・、タヒチ・・・」
フミコ「仮にタヒチだとしたらB32型の航続距離は12000㎞以上!、まさに化け物です!」
花陽・瑞鶴「「・・・」」
フミコ「しかし、クリスマス島ならば9000㎞という事になりますが・・・」
花陽「さっきパールハーバーから南へと向かったと言いましたね・・・」
フミコ「はい!、真南がクリスマス島です!」
花陽「何か臭います・・・」
小泉は何かを感じ取っていた。
花陽「クリスマス島攻撃隊の攻撃は終了しましたか?」
フミコ「はい、既に会合地点へ向かっています!」
花陽「了解!、では秋月型4名は大破した3名を護衛しつつパールハーバーまで撤退してください!」
大鳳・利根・秋月「「「了解!」」」
花陽「それから残った瑞鶴さんと高千穂さんはこのまま北上してください!」
瑞鶴・高千穂「「!!」」
瑞鶴「提督まさか!」
花陽「先ほどの我が艦隊の攻撃でクリスマス島は炎上しましたし、こちらも少なからぬ被害を受け翔鶴さん達の攻撃隊は既に撤退しています・・・、そんな状況で襲われたら・・・、敵はどう思いますか?」ニヤニヤ
瑞鶴「ふふっ!、了解!」ニヤリ
高千穂「賭けてみる価値はありますね!」ニヤリ
クリスマス島陸上基地のリコリス棲姫と防空棲姫は共に健在だが、翔鶴率いる攻撃隊の猛攻に晒され受けた被害は甚大であり、とても敵を迎撃できる戦力は残っていなかった。
花陽「乾坤一擲、常識だけに捕らわれていては勝てません・・・、それにこのままでは私の腹の虫が収まりません!」キッ!
フミコ「!!」ビクッ!
同日日暮れ、クリスマス島陸上基地では応急修理に追われ、つなぎ合わせではあるがB32型編隊期間時にはリコリス棲姫の滑走路が使用可のにまで修理されていた。
リコリス棲姫「何トカ間ニ合ッタワ・・・、コレダケノ修理ガデキレバ大シタ物ヨ。」
防空棲姫「シカシ今日ハ空襲ノタメニ酷イ1日ダッタワ・・・」
ブーーーーン、ブーーーーン、ブーーーーン
防空棲姫「オッ!、帰ッテ来タ様ネ!、着陸態勢ニ入ルワ!」
リコリス棲姫「少シ揺レルガ我慢シテ頂戴!」
キーーーーン!、キュッキューーーー!
敵隊長機「ヨウヤク任務終了ダ・・・、我ラ本体ラパールハーバーヲブッ潰シ、別動隊モ敵ノ重巡2ト空母1ヲ血祭ニ上ゲテヤッタシ、今日カラ戦況ガ大キク変ワル!」
防空棲姫「私ハ初メテ見ルガ、コレガB32型カ!、物凄イナ!」
リコリス棲姫「アト1年スレバ原子爆弾ガ完成スルワ!、ソウスレバ散々我ラノ邪魔ヲシテクレタAdomiral・高坂ヲ始メ忌々シイ連中ヲ皆殺シヨ!、フフッ!、フフフッ!、フハハハハハッ!、原爆サエアレバ我々ノ完全勝利ハ近イワ!」ニヤニヤ
パールハーバー攻撃を終えたB32型が続々と着陸、作戦成功にリコリス棲姫は大いに満足し、日本本土原爆攻撃という新たなる野望を抱いていた。
バーン!、ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカドカドカーーーン!
リコリス棲姫「グウウウッ!」
敵隊長機「ギャアアアアーーーー!!」
ズドーーーン!
リコリス棲姫「ナニ!、艦砲射撃!」
ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!
防空棲姫「何事!、一体何ガ起コッテイルノ!」
リコリス棲姫「滑走路ガ・・・、燃料ガ尽キカケテイル我ガB32編隊ハ・・・、全滅・・・、私ノ野望ガ・・・」
B32型がクリスマス島に到着した直後、クリスマス島近海の海上から突如として艦砲射撃が浴びせられた。
高千穂「撃てーーー!」
ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!
ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカーーーン!、ドカーーーン!、ドカーーーン!
花陽「新型対地攻撃用四式弾が確実に命中していますね!」
瑞鶴「憎い敵とはいえ、ちょっと同情するわ・・・、連中は燃料を切らして海上に不時着する他無くなりますからね・・・」
高千穂「連中はリコリス棲姫に防空棲姫、70機以上の新型機を一挙に失うわけですから、極めて効率的な作戦だと思います。」
クリスマス島陸上基地に放たれた四式弾とは、砲弾の内部に多数の子爆弾を内蔵し、空中分解後に広範囲に子爆弾を撒き散らし、更に子爆弾、正式名称・タ式弾は着弾と同時に前部の形成炸薬がノオマン効果で高温高圧のジェット流を噴射、滑走路を焼き切り、後部の弾体が地面に貫通して爆発を起こすのである。
瑞鶴「高千穂さん!、右舷から敵機接近!」
ブーーーーン
敵超重爆撃機3「セメテコイツハ沈メテヤル!」
高千穂「もう攻撃パターンは分かっています!、面舵一杯!」
敵超重爆撃機3「!!」
高千穂「正面攻撃しかできないその墳進砲は側面には攻撃できませんよね!」
ババババババババババッ!、ドカーーーン!
敵超重爆撃機3「グアアアアーーーー!!」
瑞鶴「あちゃー、これ航空隊の出番無しかー、提督、敵影完全に消失、敵機は近くのクック島に不時着した模様です。」
花陽「まるでB32型の墓場ですね・・・、もう使えるとは思いませんが、念のためです!、高千穂さん!」
高千穂「了解!、四式弾!、撃てーーー!」
ドカドカドカーーーン!、ドカドカドカーーーン!、ヒュルルルルルルルルルルーーーーー、ドカーーーン!、ドカーーーン!、ドカーーーン!
花陽「作戦終了です・・・、直ちに帰投してください・・・」
瑞鶴「了解。」
やがて海は夜の帳を降ろし、空母・瑞鶴、高速戦艦・高千穂は針路をパールハーバーに取り、炎上するクリスマス島を去って行った。
2043年2月9日、ライン諸島陥落により、ついに高坂の悲願の1つであるアリューシャン列島からハワイ、ライン諸島、フィジーを結ぶ太平洋戦略ラインが確固たる物になった。
2043年4月18日、クリスマス島を含むライン諸島奪還作戦からおよそ2か月が経ち、敵の太平洋艦隊はほぼ壊滅したと同時に太平洋戦略ラインが完成した。
そして高坂は軍令部総長執務室に園田、南、東條、綺羅、高海の天照6首脳および東野を集め、先の作戦で得た事柄から決戦へ向けての会議を行った。
穂乃果「今作戦は天佑と言うべきですね・・・」
海未「大鳳を始め主力3名が大破!、150機もの航空機を失いパールハーバーも空襲を受けました!、小泉艦隊の被害は少なからざる物があります!、しかし、そんな中で撃墜した敵超重爆撃機B32型を鹵獲できた事は不幸中の幸いと言えるでしょう・・・」
瑞鶴、高千穂がクリスマス島への突撃を開始した際に大鳳、利根、筑摩を護衛していた秋月達に撃墜され、海上を漂っていたB32型の残骸を運よく発見、直ちに回収し本土へと送られ調査されたのである。
ひかり「あれはもう脅威以外の何物でもありません!、あれだけの機体を短時間で開発!、しかも大量生産できる能力は古典的とは言え敵方の基礎科学、基礎技術、基礎工業力があっての事と思われます!」
ことり「B32型を見ただけでも敵の工業力の大きさを実感させられます!」
海未「そうですか・・・」
ツバサ「前世の様な精神力ではもうどうにもならない、工業力戦の時代にとっくの昔になってますからね・・・」
千歌「長引けば負ける、という事ですね・・・」
ひかり「奴らはその気になれば1000機ぐらい容易く作り上げるでしょう・・・」
穂乃果「・・・、1000機ものB32型が一挙に襲来すれば・・・」
高坂はその恐ろしさがすぐさま脳裏に浮かんだ。
穂乃果「皆さんはジュリオ・ドゥーエの爆撃機用兵理論をご存知かな?」
ひかり「何ですかそれは?」
希「戦略爆撃に関する理論です。」
穂乃果「そう、用兵学の原理なんだけど・・・」
ことり「この前、海軍士官学校のカリキュラムにも導入されたやつですね。」
爆撃機用兵理論は前世、現世、後世の各世界において1920年代にイタリアの将軍・ドゥーエが著した物で、明らかな攻撃意図を持って国土上空へ侵入して来る敵爆撃隊はいかなる手段を持っても100%阻止する事は不可能だ、と謳っている。
ことり「攻撃側がいつどこを攻撃するかという点で常に主導権を握っているため、防御側は甚だ不利な立場に立たされる。」
穂乃果「そう、私達が例え数100機の蒼莱を作ろと、敵が1000機ものB32型を投入して来たならば完全防御は不可能、ましてや威力のある新型爆弾が搭載されていたならば!」
希「核爆弾!」
高坂をはじめとする天照の会のメンバーが如何なる秘策を持ってこの戦争を戦おうと、ドゥーエ戦略爆撃理論ではこれを阻止するすべは無い。
そして多数の核爆弾が投下されれば日本全土が爆炎に包まれ全てを破壊尽くされ、更に強烈な放射能汚染によって日本民族は絶滅、そうなれば世界中が破壊の炎によって消し飛ばされる。
今ここに集められた7名の脳裏には地獄絵図が浮かび上がった。
翌日、軍令部総長執務室にて高坂は改めてドゥーエ戦略爆撃理論の本に目を通していた。
穂乃果「(こればかりはどうしようもない・・・)」
コンコン
穂乃果「どうぞ。」
?「失礼しますAdomiral・高坂、頼まれていた本を持って来ました!」
穂乃果「Grazie(ありがとう)、リベちゃん。」ニコ
リベッチオ「いえいえ!」
穂乃果「ごめんね、まだ日本に来たばかりでいきなり秘書艦みたいな事させて。」
リベッチオ「とんでもありません!、Adomiralの事はイタリアでも大きな話題にになっています!、Adomiralのお祖母様もイタリア人!、私達の同胞ですから当然です!」
穂乃果「そっか・・・」
リベッチオ「しかしイタリア人のお祖母様がいるとはいえ、よくドゥーエ戦略爆撃理論をイタリア語の原本で読めますね!、私にはさっぱりです!」
穂乃果「私にもよくわからないけど・・・、お母さんに教えて貰った覚えがあるんだよね。」
その日一日、高坂はひたすらその本を読んでいた。
会議から数日後、東條の秘書艦で参謀部CICルーム室長の大淀が率いるCICが敵の核兵器開発の拠点の1つの正確な位置をついに掴んだのである。
そして高坂はすぐさま天照6首脳を呼び出した。
希「敵が核兵器開発に使用している場所は2か所、まだもう1か所の正確な位置はつかめていませんが、ロッキー山脈中、ニューメキシコ州コロラド高原に位置するロスアラモスにある事が判明しました!」
千歌「やはりロスアラモスでしたか!」
核兵器開発の拠点の1つは前世同様ロスアラモスに存在した。
だが、このロスアラモス攻撃に関してまだ大きな問題が残っていた。
穂乃果「このロスアラモスに近づくためには、復興したパナマ運河から湧き出て来た400隻を軽く超える、今では600隻にのぼるとされる敵の大艦隊が目障り!、もしあれが一斉に日本本土目掛けて突撃して来た場合、核兵器を使用される前に決着が着くかも知れない!」
パナマ運河復興後、突如として現れた敵の大艦隊、今はまだメキシコ湾に収まっているが戦艦、空母を始めその数600隻を超えている。
CICの監視衛星によってこれらは全て五大湖周辺の工業地帯で新たに作られた物だと判明した。
穂乃果「これは私の推測だけど、敵は核爆弾完成前にそれらを投入、こちらの防衛手段を全て破壊し尽くした後で核攻撃を仕掛けて来ると思われる!」
希「こちらの防衛手段を全て破壊されてしまえば敵はほぼ無傷であの悪魔の大量破壊兵器を好きにばら撒けるちゅう訳ですね!」
海未「それだけではありません、我が日本海軍連合艦隊が敗れ去ったと知れば国民は計り知れぬ不安に襲われ、恐らくは精神的に壊れて行くでしょう・・・」
ツバサ「2035年のあの日とも比較にならない様な惨劇がまた繰り替えされようとしている、というわけですね!」
綺羅が述べた2035年のあの日とは現世において人類が持てる力のほとんどを失った太平洋大海戦の事である。
穂乃果「二度目の太平洋大海戦は必ず!、それも近い内に起こる!、そう他の者達にも伝えて!」
海未「はい!」
千歌「いよいよですか!」
ツバサ「ここで負けたら人類は滅びる!」
ことり「負ける訳にはいかないね!」
希「それにここで負けたらウチらがこの世界に転生して来た意味が無くなってしまう!」
そして高坂らはその大海戦への足音が迫っている事を確実に感じ取っていた。
決戦はもうそう遠くない。
同日深夜、高坂は秘書艦のリベッチオを彼女の宿舎まで送り届けた後に帰宅した。
穂乃果「・・・」ペラッ、ペラッ
そして高坂は再び本を読み始める。
しかしこの本は前日まで読んでいた物では無く、2035年に太平洋大海戦へ参戦し、生き残った将兵達が執筆した物であった。
穂乃果「(大海戦直後に海軍省や軍令部の総長が前任の人達に変わったせいでほとんどひた隠しにされていたけど・・・)」
大海戦での大敗は国民への不安を煽ると判断され、世界各国でひた隠しにされて来たが、その時の現状を見れば素人でも一目瞭然であった。
穂乃果「全く酷い話だよ、本部にあった資料と全然内容が違う・・・、それにこの本・・・」
高坂はこういった本の内容がこれからやってくる決戦に役立つのでは無いかと様々な本を読み漁り、たった今読み終えた本を再び手に取る。
翌日、高坂は横須賀の海軍大学校を訪れていた。
穂乃果「前世の防衛大がどういうところかはほとんど知らないけど、ここらは随分と賑やかだね。」
左翼派「「「戦争反対!」」」「「「艦娘反対!」」」「「「子供たちに平和な未来を!」」」
穂乃果「(うるさいなー、艦娘がいなかったら国が滅ぶってのが解らないのかな?)」イライラ
高坂は校舎の入り口付近で何やら騒がしい左翼連中に腹を立てながら敷地内に入った。
なお、ここの敷地が広いため目印の意味も兼ねて作られた日本海軍連合艦隊の将達の像が建てられていた。
その中で敷地の中央広場にある東郷平八郎の銅像の前のベンチに座った。
他にも建物の入り口付近には様々な人物の銅像があり、航海科校舎前には山本五十六、航空科校舎の前には山口多聞、砲雷科校舎の前には木村昌福など、因みに東郷平八郎の像の正面には艦娘科の建物があり、艦娘達各演習場の前には岩本徹三や吉川潔などの像がある。
穂乃果「・・・、来たね松浦さん。」
果南「はい、お久しぶりです総長。」
穂乃果「それから青葉ちゃんも、遠路はるばるご苦労様。」
青葉「恐縮です!、総長!」
高坂がここに来た理由は、松浦および藤堂艦隊旗艦で記者でもある青葉にとある依頼をするためであった。
その後、2043年12月初旬には艤装改装中で実質休暇中である艦隊のメンバー6人と極秘裏に幽霊島から日本本土へ向かった。
果南「いよいよだね!、皆準備は良い?」
伊601「大丈夫ですよ!」
果南「ではでは、久方ぶりの日本本土へ向け出発!」
幽霊艦隊「「「おおーーー!!」」」
伊601「銀座!」
伊501「渋谷!」
伊502「原宿!」
伊701「表参道!」
伊503「ちょっと、遊びに行く訳じゃ無いんだから・・・」
伊702「くれぐれも私たちの正体バレ無い様にしなければね。」
メンバー達は軍令部が用意した通常の人間用の中型潜水艦で移動を開始、そしてその途中、休憩のためサイパン島のガラパンの町を訪れていた。
伊601「んぐっ、んぐっ、んぐっ、ぷっはーーー!!、やっぱり本場のトロピカル生ジュースは最高だねーーー!!」
果南「ちょっ、おっさんじゃないんだから・・・」
伊601「あんな狭苦しい島に年がら年中閉じ込められている様な物ですからねーーー、ストレスの10個や20個溜まりますよーーー」
伊601を始め、彼女たちの実年齢は世間一般的にに高校生くらいであり、艦娘に成って着任した早々に死んだ事にされ島に閉じ込められていたも同然なため、ストレスがピークを迎え、当然まだまだ遊び盛りな彼女達は一晩中大騒ぎした。
伊601「とは言っても自分から進んで成ったから文句言えないけど。」
しかし、自分から言い出した事でもあるので文句は言えないと彼女達は思う。
そんな時、外を歩いていた伊501が一枚のチラシを持って飛び込んで来た。
伊501「ねえねえこれ見て!、地元開催のライブやるんだって!」
果南「ライブ良いね!、久しぶりに騒ぐとしようか!」
伊502「つい昨日お酒で酔っ払って大騒ぎしてた人がよく言うわ・・・」ボソッ
果南「あ?」ギロッ
伊502「!!」ビクッ
伊701「ねえ、これってアマチュアの大会でフリー参加できるみたいだよ!」
伊503「じゃあさじゃあさ!、アタシら6人で出ようよ!、1曲だけどできるの有るし!」
伊702「アレをやるの?」
伊601「良いね!、やろっか!」
果南「??」
そしてそのチラシを見てテンションが上がるメンバー達の会話についていけない松浦は頭に?が浮かびキョトンとした表情であった。
この後、前世での過去の古傷を抉られるまでは。
野外ライブステージ
伊601「初めまして!、私たちは地元のスクールアイドル!、Ghost Fleetです!」
果南「(??、は?、地元のスクールアイドルって?、てかあなた達の地元思いっきり日本本土でしょ!!、と言うかこの島に高校と言う高校有ったっけ?、しかもGhost Fleetって!!、なに正体バレるかも知れない名前にしてんの!!)」
自己紹介の地点で松浦は混乱した。
伊501「私達はaquarsというスクールアイドルに憧れてこのチームを結成しました!」
果南「・・・」
更にaquarsの名前が出た途端に嫌な予感を感じ始めた。
伊502「ではまずAquarsを知らない人のために!、aquarsは初めは3人から始まりましたがメンバーのすれ違いによって一度解散してしまったそうです!」チラッ
果南「!!」ビクッ
ここから先、幽霊艦隊のメンバー達によるしばしのaquars紹介ミュージカル(サンシャイン1期13話のやつ)?の様な物が行われた。
伊601「東京での惨敗を教訓に再び立ち上がるメンバー!、しかしここで更なる強敵出現!、なんと理事長が学校が廃校になるという!、そしてそんな時現れたのが心が凍り目が死んだ不登校生の元メンバーの1人でした!」
果南「(は?、ちょっと誰が心が凍り目が死んでるって?、不登校って何?、それは盛り過ぎじゃないかなん?)」ワナワナ
伊501「そして何が何でもスクールアイドルに復帰して欲しい理事長?、と以前から気になっていた幼馴染達がその元不登校メンバーを追跡!、そしたらなんと神社の前で誰にも見られていないと思い突然ダンスし始めました!」
伊502「実は未練タラタラだったのです!」
果南「(止めてーーー!!、ていうか何!、何で自分達の自己紹介し無い訳!!)」グサグサ
その内容があまりにも間違って伝わっていたため、松浦は思わぬところで心に致命傷を負った。
果南「(誰よこんな風に伝えたの!、これじゃあまるでクズでカスでどうしようもないただの未練タラタラのダメ人間じゃん!)」ゴゴゴゴゴ
このとき松浦の脳裏に一人の人物が思い浮かんだ。
鞠莉「シャイニー!」
果南「(今度あったらただじゃ置かない!)」ゴゴゴゴゴ
伊601「それでは聞いてください!、”未熟DREAMER”」
果南「・・・」
ライブは成功し、観客が湧きたっていた。
観客「「「ヒューヒュー、最高ダゼーーー!!、アンコールクレ!!」」」
果南「(歌とダンス、下手したら私らより上手いじゃん!、まあ普段あんな怪物なんかと戦わされてたらあんな体力や身体能力も身に着くかなん?)」
松浦の思う通り幽霊艦隊のメンバーのダンス技術や歌唱力は並のレベルではない。
対深海棲艦訓練の副産物ではあるがその凄さに驚いた。
ライブが無事に終わりホテルへ戻ると艦隊メンバー達はお菓子やジュースを広げ大いにはしゃいでいた。
約一名を除いて。
果南「・・・」チーン
伊501「イヤッホーーー!、優勝だーーー!!」
伊502「まさか優勝できるとはね・・・」
伊601「まあ楽しかったから良いんじゃない!」
果南「ねえ・・・」
伊503「さてと、明日の便で東京に行くからもう寝ましょ。」
伊701「疲れたし寝ようか。」
伊702「ええ、明日は早いですからね。」
果南「おい・・・」
幽霊艦隊「「「「「「!!」」」」」」ビクッ
果南「よくもある事無い事言い降らしてくれたねー、ついでに誰から聞いたのかも教えてくれると嬉しいかなん♪」ゴゴゴゴゴ
伊601「あ、いえ、その、その方がウケるかと・・・」ビクビク
果南「あっそう、それじゃあ何されても文句ないよね?」
伊601「い、いえ、それはその・・・」ガタガタ
果南「覚悟しなさい!」ゴゴゴゴゴ
この後、伊601を始め幽霊艦隊一同は滅茶苦茶お仕置きされました。
伊601「ごめんなさーーーい!!」
サイパンを経ってから2日後、横須賀の航空基地にて一度幽霊艦隊メンバーと別れた松浦は単身で軍令部を訪れ高坂と会っていた。
果南「以前行った南極調査の報告書です。」
穂乃果「ご苦労様。」
果南「敵は来年にも本格的な反攻作戦を実施するでしょう。」
穂乃果「現在把握できる敵戦力は数だけ言えばこちらの3倍近いしまだレ級かそれ以上の隠し玉がいる可能性もある。」
果南「はい、我々も調査中に遠目ではありますがタ級やツ級を確認しました。」
穂乃果「やっぱりいたか・・・、そういえばあなたもこれから統合作戦会議のためにハルビンへ向かうんだよね?」
果南「はい。」
穂乃果「だったら途中で旅順に寄ってこれらの資料を届けてもらえないかな?、青葉ちゃんもそこにいるから。」
高坂は松浦にいくつかの資料を渡した。
穂乃果「場所は港の秘密ドックだよ。」
果南「!!、了解しました!、しかしなぜ青葉を?」
穂乃果「まずはこれを見て。」
果南「これは、新聞ですか?」
松浦の問いに対し、高坂はまず新聞を渡した。
穂乃果「色々おかしいから。」
果南「では拝見・・・」
少し読み進めると松浦はいくつかの記事に違和感を覚えた。
果南「どうして、どうして統合作戦会議の日程が、公式発表よりも早く記事にされてる!」
穂乃果「他言無用のはずの内容がいくつか漏洩している、よりによって旭日新聞(朝日新聞)にだよ。」
果南「旭日新聞・・・、前世の朝日新聞よりたちが悪いですね・・・」
その内容は本来は機密事項で、高坂または園田、東条が公式発表を許可しない限り一般には出ない内容であった。
穂乃果「調査隊を派遣したけど支社の数が多くてね、でも最近になって国内支社じゃない事がわかったの。」
果南「では青葉は!」
ここで松浦は高坂の意図に気が付いた。
穂乃果「目には目を歯には歯を!、記者には記者をだよ!、青葉ちゃんには軍令部の従軍記者として海外の支社に潜入させて、要約片が付くから、旅順で合流、後処理をお願いしたいわけだよ。」
果南「なるほど!、了解しました!」
穂乃果「(前に千歌ちゃんが言ってた果南ちゃんの活字アレルギーが解消されててよかった。)」ホッ
こうして高坂の意図に気が付いた松浦は翌日から旅順へ向かうため早めに軍令部を去って行った。
なお伊601とは旅順行の船で、他の艦隊メンバーとは目的地のハルビンにて合流する予定である。
果南「さて、明日も早いしさっさと寝ますか。」
時刻は0時を回っていたが軍令部から少しは離れたところで煙草に火を付けながら帽子を深く被った者とすれ違った。
?「・・・」スパー
果南「(こんな時間にこの辺で人とすれ違うなんて珍しいな・・・)」
?「・・・」カシャッ
同日ニューヨーク沖某所。
戦艦棲姫「富嶽南、従軍記者デ日本海軍軍令部総長ノ高坂穂乃果トハ親戚?、ソノ他ハ不明・・・ネエ・・・」
レ級「怪シイネコイツ。」
戦艦棲姫「高坂ト接触ノ後ハ旅順ヘ向カウ・・・、奴ラノ社会体制ヲ撹乱スルノニ持ッテ来イノ女ネ。」ニヤリ
レ級「殺リマスカ?」
戦艦棲姫「エエソウネ、コノ女ヲ調査ノ上デ殺シナサイ!」
松浦の写真を見ながら不敵な笑みを浮かべる戦艦棲姫は松浦の抹殺を部下に命じた。
翌日早朝、護衛として一般の女子高生に扮した伊601を連れた松浦は旅順行の客船上にいた。
果南「すぐに出発しちゃったけど、久々の本土はどうだった?」
伊601「はい、とても懐かしく思いましたし、もし許されるのであれば実家にも寄りたかったです。」
果南「そうだよね・・・」
?「あのー、すみません。」
果南「はい。」
船上で海風に当たりながら何気ない話をしていると一人の若い男性が話しかけて来た。
男性「失礼ですが火をお持ちではないですか?」
果南「ライターでいいですか?」
男性「はい、ありがとうございます。」
プシュッ、プシュッ、ボー
男性「はあー・・・」スパー
果南「・・・」
男性「12月だというのに少々気温が高いですね。」
果南「そうですね。」
松浦から受け取ったライターで煙草に火を着け一息ついたところで男性が話を切り出した。
男性「失礼ですが、お2人とも記者さんですか?」
果南「いえ、この子は親戚の子で、両親が旅順に住んでいるので送り届けるところです。」
伊601「あなたも記者さんですか?」
男性「おっとこれは失礼、自分は通信社の者で東洋連合通信社の伊藤と申します。」
男性改め伊藤はそう言いながら名刺を松浦に渡す。
果南「旅順支局長をされているのですか!」
伊藤「ええ、まあ・・・、実は自分もこれから旅順の職場に戻るところです。」
伊601「今、旅順はどうなっているんですか?」
伊藤「高坂総長らが近隣の深海棲艦を一掃してくれたおかげで大分復興が進んでおり、活気も戻って来ています。」
伊601「よかったです。」
実際には伊601の両親は東京住まいだがそうである様に一安心した女子高生を演じる。
伊藤「旅順は良い所ですよ、新たに政権を獲得した高坂総長が犬猿の仲であった中国との交渉を上手く進め、非戦闘員は皆、旅順を港として陸地へと非難する事が出来て多くの人命が救われております。」
果南「はい、存じております。」
伊藤「この頃は反政府でもを行っていた一般国民達も今では日本領事館にビザを求めて長い行列を作っています。」
果南「深海棲艦も内陸部までは攻撃できませんからね。」
伊藤「ジャーナリストの端くれとして、当初の自分はクーデターで政権を、しかも軍事政権的な物にした高坂総長に批判的だったのです。」
果南「初めは誰でもそう思うかもしれません。」
伊藤「ですがこの3年間の実績を振り返ってみて、あの場合は仕方が無かったと考える様になりましたし、もしあのまま前政権が続いていたら、今頃は日本のあちこちが空襲に晒されていたでしょう。」
果南「私もその様に思います。」
伊藤「私は同胞として誇らしく思いますし感動しました!、三国志でいうところの諸葛孔明と言ったところでしょうか!」patiltu
熱が入り情熱的に高坂がこれまでやって来た事を語った伊藤は話の切れ目に煙草を海へ飛ばし捨てた。
伊601「タバコは灰皿にお願いします!」ムスッ
伊藤「おっとこれは済まない。」
ポツッ、ポツッ、ザザザーーー!!
果南「空模様が怪しくなって来ましたね。」
伊藤「また機会があればどこかでお会いしましょう!」
果南「ええ・・・」
通り雨に当たり松浦らは船内の自室へと戻っていった。
伊601「我が高坂総長が日本の諸葛孔明、と言うのは少し褒め過ぎでは?」
果南「どうだろうね、前世ではともかく、この後世ではそういう風に見えるんじゃない?、前世では差し詰め高杉晋作や羽柴秀吉かな?」
伊601「アハハ、ではそういう事にしましょう!、・・・、ん?」
すると自室が目の前に見えた時、伊601はとある異変に気が付く。
伊601「司令官の部屋、少し空いてる?」
果南「え?」
松浦の部屋のドアが少し空いていたのである。
伊601「清掃は行われないはずなのでおかしいですよ・・・」
果南「・・・」
立ち止まり少し考えている間に松浦の部屋から一人のホテルマン風の中年男性が出て来た。
中年男性「・・・」
松浦「ねえあなた、私の部屋に何の用ですか?」
松浦が問うと中年男性は黙ったまま松浦を無視して反対方向に歩き出す。
伊601「トランクのカギが壊されてる!」
果南「!!、待ちなさい!」ダッ
中年男性「!!、クソッ!」ダッ
伊601の声を聴いた瞬間に中年男性は全速力で逃げ出し、それを松浦が追いかけ甲板に追い詰めた。
果南「ここは海の上だよ!、観念しな!」
中年男性「・・・」スッ
果南「!!」
しかし中年男性は懐からサイレンサー付の拳銃を取りだし抵抗を試みる。
伊601「司令官!」
パンッ、パンッ!
そして2発の銃弾が松浦目掛けて発射された。
果南「ぐっ!!」
中年男性から松浦に向けられ正確に発射された弾丸が松浦の左こめかみ掠めていた。
運が良かったとは言えこの距離からでは額に直撃していてもおかしくなかった。
一瞬硬直し、そんなことを考えていたが、とっさに正面を見ると銃を持っていた中年男性の右手が血塗れになり銃は弾き飛ばされていた。
中年男性「ぐううーーー!!」バッ
伊601「待てっ!」
そして伊601が銃を構えると共に中年男性はケガをした右手を庇いながら海に飛び込んだ。
伊601「司令官お怪我は!」
果南「大丈夫、かすり傷だよ・・・、船内に戻ろう。」
伊601「はい・・・」
果南「(しかしさっきのは一体・・・、何者かが私を付け狙うと同時に別の何者かが私を庇ったというの?、だとしたら前者は深海棲艦が送り込んだ刺客!、用心した方が良いね!)」
伊601「(さっきの、司令官の正体を知っての暗殺の可能性が高い!、私がしっかりと司令官をお守りしなければ!)」
松浦と伊601はいくつかの疑問とそれぞれの決意を抱えながら浮かない表情で船内に戻って行った。
船上の物陰
?「まだ、まだ早い・・・」ガサゴソ
物陰に隠れていた1人の少女は懐から写真を取りだす。
?「富嶽南(とみたけ みなみ)・・・、いえ、松浦果南、また会いましょうか・・・」
それからおよそ2時間後、船は旅順の港町に到着、時刻は丁度夕飯時であった。
果南・伊601「「・・・」」テクテク
伊藤「記者さん!、記者さん!」
果南「?」
松浦と伊601が深く考え事をしていた最中、船で出会った伊藤が再び2人に声をかけて来た。
伊藤「どうも!」
果南「伊藤さん・・・」
伊藤「随分と考え事をしているようですが、いかがされましたか?」
果南「まあ仕事の事で少し・・・、それで、あなとのご用件は?」
伊藤「はい!、あなた方さえ宜しければこの後ご一緒にお食事など如何でしょうか?、すぐそこのホテルなのですが!」
伊601「おおーーー!!、高そうなホテルですね!!」
果南「良いですよ。」
端から見ればこの時の伊藤はまるで街中で女性をナンパする男子大学生の様に見えた。
旅順の港町の高級ホテル
ワイワイガヤガヤ
伊601「いただきまーす!、ハムハム、おいしいです!」
果南「うん!、良い感じじゃない!」
伊藤「この町で長年過ごして来た自分の一押しレストランです!」
果南「若いのにやるね~。」
レストランにて食事を楽しんでいると松浦はある一角にできた人だかりの中心にいる伊601とあまり年齢差の無い少女が気になっていた。
伊藤「気になりますか?」
果南「え、まあ・・・」
伊藤「彼女は亀田天(かめだ そら)、デビュー1年目にしていきなり話題作の主役を勝ち取った若手の超人気アクション女優です!」
伊601「亀田天って言ったら今度のゾンビと戦う映画に出演する人ですよね!」
伊藤「ええ。」
果南「知ってるの?(こんな戦時中に映画作るって、色々な意味で何考えてんの!)」
伊601「今は艦娘やってる那珂ちゃんの後輩ですよ!」
果南「ああ、あんたファンだったもんね・・・」
伊601「今もです!、アイドルとしての那珂ちゃんも艦娘としての那珂ちゃんも大好きです!」
果南「艦娘ってさ、とんでもない命懸けの仕事だよねあれ・・・」
そしてその少女の話で盛り上がっていたところに、噂をすれば何とやらである。
天「あら、こんなところで奇遇ですね伊藤さん。」
伊藤「これは天ちゃん!、今日も可愛いね!」
天「ありがとうございます!」ニコ
果南「・・・」
近づいて来たのは文字通り亀田天である。
彼女は松浦が想像してたよりも背が高く、また大人びた顔と男女問わず人を魅了するスタイルを持っていた。
伊601とて容姿は少し幼めだが身長とスタイルは高校生の時の松浦と同等ぐらいであるが亀田はそれ以上であった。
伊藤「旅順にいるならうちの社にも寄ってくれれば良かったのに!」
天「うふふ、実は今度の試写会の挨拶を旅順の映画館でやる事になってまして。」
伊藤「おお!、それはニュースだ!」
果南「(もし青葉が一般の記者だったらこんな感じなのかな?)」
天「ところでそちらの方々はどなたですか?」
伊藤「ああ失礼、・・・、ええっと・・・」
果南「!!、いけない!、名刺名刺!、すみません遅くなってしまって!」
?「そういうところは相変わらずネ~♪」
意外とガサツな性格の松浦は亀田の質問から伊藤の受け答えの際に名刺を渡していない事に気が付き大慌てで名刺を渡すと、背後から聞きなれた声の人物が現れた。
果南「余計なお世話だよ!、鞠莉!(出たなうちの艦娘に変なこと噴き込んだ張本人!)」
鞠莉「シャイニー♪、久しぶりね!、もう私の所には取材に来てくれないの?」
果南「忙しいの!」
伊藤「おやあなたは!」
鞠莉「自己紹介が遅れマシタネー!、私は日本海軍中将・小原鞠莉デース!、シャイニー♪」
伊601・天「「シャイニー!」」
伊藤「驚きましたよ富嶽さん!、あなたは小原中将と随分仲がよろしいのですね!」
鞠莉「幼馴染なのデース!」
天「それではあなた方はリアルの戦場に出向かれているんですか!」
果南「ええ、まあ・・・」
鞠莉「イエース!」
天「深海棲艦ってどんなのですか!」
果南「どこからともなく湧き出て来てウザイ&姿がキモイ、これに限る!」
鞠莉「禍々しいしいの一言ですネー!」
天「あはは・・・、私の先輩にも艦娘になった方がいまして、彼女も似たようなこと言ってました。」
果南「(そりゃあ那珂だもんね。)」
天「おっといけない、では明日も早いので今日はこれで。」
伊601「映画!、楽しみにしています!」
天「ありがとう。」
それからしばらく話し込み、時刻が22時を回ったところで亀田は部屋に戻って行った。
伊藤「良い娘でしょう?」
果南「ええ、ああいう娘は職場以外ではほとんど見た事がないですね、魅力的だと思います。」
鞠莉「本当に?」ジロ
果南「嘘じゃない!」
伊藤「実際に彼女は勇敢ですよ!、それこそ現役の艦娘に負けないくらいに!」
ほとんどの艦娘はその職場故に見た目や年齢に反して精神年齢がかなり高い者が多い。
伊藤「富嶽さんもああいう娘の誘惑には気を付けてくださいよ。」
果南「あの、私、この通り女なんですけど。」
鞠莉「そんなの関係無いよ!」
果南「あんたねぇ!、とにかく私は大丈夫だよ!」
伊藤「いいえ!、あなたは不思議と潮の香を漂わせる人だから特に!、潮の香りがする人は艦娘は勿論一般の艦娘に憧れる少女達にも人気なのです!」
果南「あはは、そこまで言うなら、気を付けますね。」
伊藤「なんて、冗談ですよ!」
伊601「(いや、一部では冗談じゃ無いです・・・)」
伊藤「それで、行先の方はどちらでしたっけ?」
果南「ハルビンです。」
鞠莉「oh!、実は私もよ!」
伊藤「ではアジアエクスプレスにお乗りになるのですね!」
果南「ええ、そのつもりです。」
伊藤「あれは良いですよ!、日本が持てる技術をつぎ込み開発した最新のリニアモーターカーです!、ほんとに日本の技術力は誇らしいと思います!」
果南「それは楽しみですね。」
鞠莉「私はレストランが一番楽しみかな?」
伊601「あのー、明日も早いのでそろそろ行かないと・・・」
鞠莉「ほんと、もうこんな時間ですね。」
果南「それではまたどこかで。」
伊藤「はい!」
アクション女優・亀田天の話題や松浦、小原の戦場での体験(ウソ)などを楽しんだ後、松浦と伊601は軍令部指定のホテルに戻った。
そして旅と襲撃の疲れがピークに達した2人はホテルに着くなりベッドに倒れ込んだ。
果南「さてと、明日は早朝から預かったこの書類を例の場所に届け、その後でアジアエクスプレスでハルビンへ向かうとしますかね。」ドサッ
伊601「総長が渡して来た機密資料って何ですかね?」ドサッ
果南「さあね、だけど周りにばれたらとてつもなくヤバい物だって事ははっきりしてるから、しっかり私を守ってよね。」ニコッ
伊601「はい!、もちろんです!」
翌朝、ホテルのレストランで朝食を済ませた2人は旅順の港を訪れた。
果南「ここかな?」
警備兵「何者だ!、立ち入り禁止だぞ!」
果南「私だよ。」
警備兵「これは少将!、大変失礼致しました!」
港の外れにあるいかにも怪しい一角に足を運び、一見地下駐車場の様に見える入り口から中へ入って行った。
果南「はいこれ、総長から。」
主任技師「確かに!、大変お疲れ様でした!、これで完成させられます!」
そして内部の研究室にいた主任技師の男性に資料一式を渡した。
伊601「あの、結局それの中身って何なんですか?」
主任技師「そうですね、こちらをご覧ください!」
2人が主任技師に案内されやってきた場所は艤装の保管庫、そしてその中央に一際目立つ大型潜水艦の艤装があった。
果南「これは・・・」
主任技師「我が日本海軍が誇る最新の超潜水艦、伊3001(亀天)の艤装です!」
伊601「伊3001・・・、亀天・・・、それって紺碧艦隊の!!」
果南「いやあなたもでしょうが。」
伊3001は後世日本が開発した潜水艦を超えた潜水艦、超潜水艦と言う位置づけをされている。
その性能は基準排水量13500トン(水上で10500トン)、出力24000馬力以上、最高速力は70ノット(水上で35ノット)と言う快足を誇る。
この現世では天野琴音技術中将が艤装の設計開発を進めており、松浦の持参した資料を加える事でようやく完成を迎えられるところであった。
主任技師「こいつが完成すれば、松浦少将の艦隊はそれこそ無敵、高海長官の新八八機動艦隊の殲滅も不可能ではないでしょう!」
果南「ははは、そんな大げさな・・・」
伊601「こっちが伊3001だとするとこっちは・・・」
2人が話していると伊601はその隣にあるまだ機関部分しか完成していない艤装を見て何の艤装か少々考えていた。
主任技師「そちらは伊3001さえ上回る超潜水艦・伊10001(須佐之男)の艤装です!、とは言えまだモーター部分しか出来てませんがね。」
伊10001もまた後世日本が開発した最新の超潜水艦でその諸性能はまだ未知数であるが理論上では水中で100ノットもの超高速を出せると言う。
また武装も従来の潜水艦とは比較にならないほど強力であった。
伊601「100ノットって、水流噴進モーターに換装した島風(現在52ノット)もびっくりですね・・・」
果南「いよいよ本格的な大海戦も近い、いやもう真近だね・・・」
しかしこれらの艤装開発は裏を返せばそれほどにまで危険な敵が現れる事を予想させる。
主任技師「松浦少将、そろそろお時間では?」
果南「おっとそうだね、また近いうちに会いましょ。」
主任技師「はっ!」敬礼
松浦と伊601は午後12時にはこの秘密ドックを去り旅順駅に到着したのは午後13時を過ぎた頃であった。
果南「うわっ、すっごい人だかり・・・」
伊601「流石は世界一の鉄道ですね!」
この頃の駅は多くの人で溢れ、それを象徴するかの様に世界最新のリニアモーターカー・アジアエクスプレスが堂々と駅に停車、乗客を受け入れていた。
果南「さてと、部屋はここだね。」
伊601「今回は2人部屋ですね。」
果南「そうだね、護衛、しっかり頼んだよ。」
伊601「はい!」
乗客の2人として松浦と伊601は車輛中腹に位置するビジネスクラスの部屋(ファーストクラスは無茶苦茶高いので)に入る。
果南・伊601「「それっと。」」ボフッ
そしてすぐさま各自のベッドに倒れ込んだ。
伊601「やっと少し寝れますね。」
果南「結局昨日も寝たの3時くらいだし朝も6時・・・、流石に少し寝るか・・・」
伊601「はい、賛成です。」
2人はハルビンに到着するまで睡眠をとる事にした。
因みにこのアジアエクスプレスは世界最新の技術を取り込み作られているが、道中の線路(満洲北上)の強度などの影響で本来は時速400㎞以上出せるところを時速150㎞~時速200㎞で走るためある程度の暇ができる。
果南「さてと、カーテン閉めて、おやすみ~。」
伊601「司令官、おやすみなさい。」
その時間を寝不足の2人は睡眠を取る事で有効活用する。
しかし、睡眠に入ろうとした松浦は自分の枕元に何かがある事に気が付く。
果南「(これは・・・、亀田天のブロマイド・・・、何で?、ま、いいや。)」
それは昨日ホテルで知り合ったアクション女優の亀田天であったが松浦は乗客の忘れ物だろうと判断し、特に気にする様子も無く眠りについた。
果南「んん、んんーーー!、あーーー、よく寝た。」ノビー
伊601「もう18時、お腹がすきましたね。」
ガラガラッ
鞠莉「おはよう果南!」
果南「今はその名前で呼ばないで!」
鞠莉「ごめんごめん、早くレストランに行きましょ?」
伊601「ここの食堂車はかなりの評判だしね!、ぜひ行きたいです!」
睡眠から目覚めた2人はそのまま食堂車に向かった。
ガラッ
果南・鞠莉・伊601「「「!!」」」
大男「死ね!!」ガバッ
だがドアを開けた瞬間、身長2mは有ろうかという大男が待ち構えていた。
果南「ぐっ!、たく!、次から次へと!」スカッ
そして大男は拳を振り上げ松浦に襲い掛かって来たが、松浦は間一髪で交わした。
果南「何なんだあんた達は!」
大男「うおおおーーー!!」バッ
直後、大男は再び殴り掛かる。
伊601「せやあーーー!!」ドスッ
大男「ごはっ!!」ヨロッ
だが松浦の後ろから伊601が強烈な回し蹴りを放ち、それを受けた大男はその巨体よよろめかせた。
果南「ナイス!」
鞠莉「殺るわよ!」
ドスッ!、バキッ!、ゲシッ!
それを好機と見た松浦と小原は腹部に膝蹴り、次いで顎に握撃を食らわせた。
大男「くそっ!!」ダッ
果南「待て!」
伊601「逃がさないよ!」
鞠莉「列車の中は狭いから逃げ場なんて無いわ!」
そして大男は逃げ出し、松浦と小原、伊601は後を追い、列車の最後尾へ追い詰めた。
果南「さあ、もう逃げらん無いよ!」
伊601「覚悟してね!」
鞠莉「こういうの、年貢の納め時って言うのかしら?」
大男「くっ・・・」バッ
果南・伊601「「!!」」
すると逃げ場が無いと悟った大男は時速300㎞は有るであろうこの列車から飛び降りた。
大男「ぐあああーーー!!」
ドサドサドサーーー!!
果南「・・・、最悪の目覚めだね・・・」
伊601「はい・・・」
鞠莉「・・・」
その一部始終を見た3人は少々沈んだ空気のまま食堂車に向かった。
天「富嶽さん!、小原提督!、こっちです!」
果南「亀田さん!」
天「如何でした?、映画の方は?」
果南「見ました!、最高でした!」
天「楽しんで頂けたなら幸いです。」
伊藤「富嶽さん、亀田さん、、小原提督、お待たせ致しました。」
果南「それじゃあ、始めますか!」
そしてその一角、6人席に着いた松浦と小原、伊601は伊藤と亀田に合流、食事を始めた。
伊601「ふうー、食った食ったー。」
伊藤「流石はアジアエクスプレスのフルコースですな!」
鞠莉「中々やりますネー!」
天「列車から自然を眺めながら頂くのも良いですね!」
果南「(これ一体いくらするんだろう・・・、予算全部軍令部持ちで良かった・・・、でなかったら鞠莉に立替えて貰おっと。)」
伊601「ふわあああーーー、なんか食べたら眠くなって来ました・・・」
果南「さっき寝たばっかじゃん・・・」
天「私も、すこし休もうかな。」
鞠莉「うう、私もデース・・・」
料理を堪能した小原、伊601と亀田は近くのソファーに横になると同時に寝てしまった。
伊藤「自分は食後のコーヒーでも頂きましょうか、富嶽さんも如何です?」
果南「うん、貰おうかな。」
松浦は席を立ち、コーヒー片手に窓の外を眺める。
果南「でかい夕陽、大陸では夕陽がこんなに大きく見えるんだね。」
そして大きな夕陽を見て黄昏ていた。
果南「・・・、!!」バッ
中年男性「せやっ!」ジャキッ
すると突然スーツ姿に中年の男性がナイフ片手に襲い掛かって来た。
その男は以前船上で松浦を襲撃した者だった。
シュルン!、ブン!、シュン!
果南「あんた船の時の!」
中年男性「チッ!」ダッ!
果南「今度は逃がすか!」ダッ!
果南「(そういえば伊藤さん、いつの間にどこ行ったの?、ま、いっか・・・)」
襲撃に失敗したと悟った中年男性は逃走、松浦が後を追う。
果南「今度は逃がさないよ!」
中年男性「ぐううう・・・」
そして今度は列車の屋根まで追い詰めた。
中年男性「死ね!」ジャキッ
中年男性は拳銃を抜き松浦を撃とうとする。
パシュン!
中年男性「ぐふっ!」
しかし、撃たれたのは中年男性の方であった。
中年男性「がはっ!」
ドサッ!
果南「サンキュー、601!」
松浦が振り向くと松浦とは反対側かあら登って来たであろう伊601の姿があり、その手にはサイレンサー付の拳銃が握られていた。
伊601「二度も同じ手を食うか!」
果南「全く、飛んだ災難だらけの旅行だよ・・・」
伊601「司令官、私は部屋に戻って良からぬ連中が居ないか確認して来ます!」
果南「お願いね。」
以前この様な状況に出くわした事のある2人は予め打ち合わせを行い、誰も居なくなった部屋に侵入して物色されるのを恐れ、片方、今回は伊601は部屋に戻った。
果南「さてと、こいつの荷物確認をっと・・・」
現場に残った松浦は息絶えた中年男性の衣服の中身を確認しようと手を掛けた。
バーン!!、パシュッ!
果南「ぐうっ!」
だがほぼ同時に銃声が鳴り響き、弾丸は松浦の左上腕を掠めた。
果南「!!、あんたは!」
伊藤「ふふふ・・・」ジャキ
そして銃弾を放った主は先ほどまで共に食事を楽しんでいた伊藤であった。
果南「私の命を狙っていたスパイ共の親玉はあんただったんだね!」ギリッ
伊藤「その通りです。」ニコッ
果南「あんたの様な知も学もある様な人がスパイだったとは・・・」
伊藤「だからこそ、誰にも知られずスパイ活動ができるんですよ。」
果南「けどなんで私を?、ただの従軍記者だよ?」
伊藤「それで正体を隠したつもりですか?」ニヤリ
果南「私の正体?」
伊藤「このアジアエクスプレスの行先はハルビン、そこでは国際連合海軍の統合作戦会議が行われるそうですね、そのハルビンに向かう小原鞠莉と幼馴染で高坂軍令部総長と深い関係があり軍港を自由に出入りできる者がただの記者であるはずがありません。」
果南「ほほう・・・」
伊藤「あなたの存在がこの世界に大きな災いを齎すと自分は考えました。」
果南「理由はそれだけ?、それだけの為に深海棲艦のスパイになったの?」
伊藤「やはり見抜いていましたか、しかも深海棲艦が人間のスパイを使う事まで、やはり只者では無いですね!、流石は高坂総長の従軍記者・富嶽南さん!、いいえ、X艦隊司令官・松浦果南さん!」
果南「!!、なるほど、深海棲艦共の狙いは陰でX艦隊を消す事だったか・・・、しかしまあ、あんたの様な人がその工作員だったとは残念だよ。」
伊藤「自分も残念です!、個人的には高坂総長も貴女も好きだったのですが、これも運命、そしてこれが自分の任務ですから!」ジャキ
伊藤は拳銃を握り直し、松浦の額に狙いを定めた引き金を引いた。
ズドーーー!!、パシュッ!
伊藤「!!」
果南「何・・・」
しかし伊藤が銃弾を放つ直前に別の銃声が響き、その弾丸は伊藤の胸部を貫いた。
そして伊藤を撃った人物は2人の良く知る人物であった。
天「私も残念ですよ・・・」ジャキ
果南「亀田さん・・・」
伊藤「ははは、亀田さんですか、あなたに撃たれるなら本望ですよ、これも自分の運命の様ですな。」
果南「・・・」
伊藤「松浦さん、あなたは不思議な人ですね、この大陸にいても潮の香がします。」
果南「そりゃあ長い間、海に関する事をしてきたからね。」
伊藤「松浦果南さん、もし来世がありましたら、是非ともあなたの友人でありたい物です。」バッ
果南・天「「!!」」
撃たれた胸を押さえながら伊藤は立ち上がり、そして飛び降り自殺を図った。
果南「伊藤さん、深海棲艦共のいない世界に生まれ変われたら、また。」
少しの間、夕日を眺めていると伊601も屋根に上がって来た。
伊601「司令官!、ご無事ですか!」
鞠莉「私の果南を口説こうなんて、あんな下劣な男になんか渡さないわ。」
果南「うん、大丈夫。」
伊601「部屋に怪しい人物はいませんでした!、また時限爆弾が仕掛けられていたので解除して車外に捨てました。」
鞠莉「最後は私達もろとも爆破しようと考えてたみたいよ?」
果南「やっぱりあったか!、まあいいや、お疲れ様。」
松浦と伊601の部屋に時限爆弾が仕掛けられていたため、小原と伊601はそれを解除した後だった。
伊601「はい!、ところでどうして天さんが?、しかも拳銃を・・・」
天「船での騒動の時、あなたは何故あの中年男性の拳銃を撃った後すぐに足を撃たなかったんですか?」
伊601「!!、何で船での事を!」
果南「亀田さん、もういいんじゃない、教えてよ、あなたの正体。」
伊601は船での一件を思い出し亀田を怪しい者扱いするが松浦は先ほどの一件で亀田の正体にある程度気が付いている様である。
天「そうですね、本当はハルビンに着いてから自己紹介をしようと思っていたのですが。」
伊601「?」
天「私、亀田天は前作で女優の仕事を辞し、今後は艦娘としてあなたの指揮下に入ります!」
伊601「!!、私たちの新しい仲間!」
天「私は最新鋭の超潜水艦・伊3001(亀天)です!、高坂総長の命により新たに幽霊艦隊のメンバーとなります!、今後ともよろしくお願いいたします!」
鞠莉「最強のnew faceね!」
果南「これはすごい!、こちらこそよろしくね!」
伊601「まさか天さんが艦娘になるなんてびっくりだよ!」
亀田は自らの正体を明かした。
この伊3001(亀天)は新たな幽霊艦隊の主力として松浦の指揮下に入った。
そしてアジアエクスプレスはハルビンへと到着、松浦らは高坂に指定された場所へと向かった。
いよいよ2日後より世界の行く末を決めるであろう海軍統合作戦会議がされる。
このSSへのコメント