2020-08-15 21:12:14 更新

概要

chirutan.txt_5の続きです。登場人物紹介あります


前書き

今更ながら登場人物の紹介(part6現在)―ちょい役も可能な限り紹介。忘れられた存在も多いです(笑)

主要人物

伊崎 基茂(いざき もとしげ)   どこにでもいる高校生。家では飯にしか出てこない引きこもり

椎木 ちる(しいのき ちる)   基茂の嫁。転校生。話せるコミュ障。極度の人見知り。ぼろアパートで一人暮らし。趣味は読書とガーデニング。怖いもの(人以外)が好き

羽衣 ゆい(はごろも ゆい)   幼女その1。基茂の愛人。最近主人公の座を奪った。神社の巫女。いろいろ電波

高砂(たかさご)    幼女その2。隣町に住む魔女。ゆいの旧友であり、再会してからはやりたい放題している

八城(やしろ)   幼女その3。ちるが拾ってきた捨て子。後に伊崎家に加入。高砂最大の被害者。本人は至ってまとも

延原 磨夢(のぶはら まむ)   いろいろちっちゃいが、幼女ではない。無口で無愛想。現伊崎邸の先住民。伊崎家 では家事を行う母的存在。料理の腕は鉄人級。基茂らの学校で教師をやっている

蕨(わらび)   幼女その4。基茂の父が拾ってきた。まだ言葉も発せない段階

レオポン   伊崎家のペット。八城と同じように捨てられていた。何も珍しくない普通のぬこ

三宅 霞(みやけ かすむ)   基茂やちるの後輩。貴重なきょぬーキャラ。放送部所属。格ゲーとネトゲが好き。磨夢とは相思相愛。実家暮らしの地元民

上井 玄那(うわい くろな)   霞の親友の女の子。クラスも部活も一緒。学生だが、ちびっこでぺったんこ。霞よりはライト層のゲーマー。シューティングが得意。ちると同じアパートに住む

マスター   幼女その5。居酒屋のマスター。12時間睡眠の夜行性。名前はルイしか知らない。ブラジル人と日本人のハーフだが、大阪育ちなので、関西弁しか喋れない。軽い料理なら作れる。

ルイ    幼女その6。フランス出身。マスターを追って日本に来た。日中は宅配のアルバイト、夜はマスターの店で働く疲れ知らず。一流の洋菓子職人

ポルトナ   幼女その7。ちるの家に送られた人形。玄那は良い遊び相手


学校の人々(女)    学園ネタは救済処置

村雲 剣(むらくも つるぎ)   ちょっとおバカにゃおにゃのこ。野球部に所属し、ポジションはセカンド。義斗に一途な想いを寄せている

高木 飛鳥(たかぎ あすか)   潤作の妹。ややブラコン。茶道部に所属、野球部のマネージャーも兼ねている

竜瀬 紫餡(たつせ しあん)   学級委員長の女の子。そこそこ恵まれた家庭から電車通学

金子 美竜(かねこ みりゅう)   放送部部長の女の子。学校はサボり気味なので、ボス扱いされている

柘榴(ざくろ)   野球部の女の子。外野手。剣や飛鳥などとはクラスが違う。見た目に反して優れた身体能力を持つ


学校の人々(男)

佐竹 純治(さたけ じゅんじ)   基茂の悪友。メガネ男。ロリを愛する。基本的にモテないキャラだが、飛鳥とは腐れ縁

指宿 義斗(いぶすき よしと)   クラスの文武両道イケメン男。野球部に所属し、ポジションはキャッチャー

公田 剛(くでん つよし)   坊主男。義斗とは腐れ縁。野球部に所属し、エースを務める

高木 潤作(たかぎ じゅんさく)   飛鳥の兄。野球部部長。能力はそこそこ

舞浜(まいはま)    潤作と同学年。野球部を裏で牛耳るボス的存在

鋼田 楽郎(はがねだ らくろう)   基茂達のクラスの担任。国語教師。サングラスを掛けているが、怖くはない

利登(りと)   数学教師。同僚の磨夢を密かに狙っている

湖 敏樹(みずうみ としき)   音楽教師。選曲はオタク。霞と玄那のクラスの担任でもある



その他の人々 町の人々、あるいは関連人物

村雲 虎徹(むらくも こてつ)   剣の祖父。剣とは一緒にアニメを観る仲。ロリ同志募集中

露崎 合歓(つゆさき ねむ)   自称ちるの姉。ネタを求め、世界を旅する作家

倉津 務(くらつ つかさ)   幼女その8。ドイツ出身。ょぅι゛ょ隊の隊長で、ゆいに忠義を尽くす

伊崎 嘉寿夫(いざき かずお)   基茂の父。実家で漁師をしている

れーちゃん   メイド。マスターの店で働く。夜営業の居酒屋に対して、昼に喫茶店を営業している

ロントット   ロボット。主を探しにきた。マスターの店で働く料理長

井筒(いづつ)   幼女その9。町の銭湯の番台。ゆい、高砂とは知り合い

ちぇす、くさか、なだ   ネトゲ住民


マスターの店の常連   基本的に出番は少ない

ガル    外国の人。出番は一度きり

ルドルフ   マスターの店の常連。欧州紳士

靖之(やすゆき)    ルドルフの連れ

エーゲル   忍者のおっさん


魔界の皆さん   グタツナ、サフール以外の出番はこれから増やそうと思います

グタツナ   現魔王。平和を愛し、人と魔族の融和を図っている。見た目は兎に近く、かわいい

サフール   魔界の案内人。門番とでもいうべきか

ザーミア   グタツナの参謀ポジ

マクセル   魔界の突撃隊長

ヤゼノ   魔界温泉の番台

土山牙八(つちやま きばはち)   つっちゃん。三角怪獣。材質は紙のアリクイ


283

マスター「夢の世界?」

ゆい「はい、誰もが望まない結果になったこの世界は非現実に過ぎないのです」

マスター「そうは言うてもうちらはこうして喋ってるわけやし、とても非現実なんて思えんなぁ、るーちゃん」

ルイ「あはは、ゆいのほっぺぷにぷにぃ」

ゆい「触感はありますけど」

マスター「知ってる範囲で残ってるのはシャギー含めて四人、かぁ。記憶も出来てるわ」

ゆい「では仮にですよ。過去の世界、そして今この世界、その二つが存在しているなら、どちらが正しいと思いますか」

マスター「過去なんか正確に思い出せないもんやし、うちは今が正しいと思うけど」

ルイ「でも過去の思い出があるよね。昔があってからの今だっていうでしょ」

ゆい「るーちゃんの言うとおりです。歴史はその対象が世界であれ自分であれ大切なものなんですよ。過去を振り返ることで現在の自分の構造が分かります。人間は漸進的な成長をする生き物ですからね。急激な変化はなし得難いのです」

マスター「というのはあれか。それはありえるってことかな」

ゆい「才能が開花する、いわゆる覚醒ですね。先天的な能力というのはなかなか自覚し難いものですからね。初めての事柄に挑戦し、成功を収めることでその才能に気付くのです」

マスター「るーちゃんのパティシエの才能はうちも気付かんかったわ。本当にやらせてみたらできたっていうか」

ルイ「確かにあまりやってこなかったけど、おじいちゃんの料理してるのを眺めていたというのもあったかも」

ゆい「視覚学習ですか。見るだけで手法を覚えるのはなかなか人間離れしていると思います」

ルイ「わたしが店に入って暫く経ってね、マスターが注文したの。食後のデザートってやつをね。じゃあ昔食べたあれだなってことで作ってみました」

マスター「それがそっくりそのままな味やったみたいでな。うちは当然驚いたけど、一番驚いたんはやっぱるーちゃんやったなぁ」

ルイ「それからね。マスター専属の洋菓子職人として、このお店に勤めることになったの」

ゆい「成程、嘘のような本当の話というわけですか」

マスター「ま、嘘やけどな」

ルイ「あぁ、マスター。嘘吐いたら針山地獄なんだよ」

ゆい「飲むか刺されるか選んでくださいね、マスター」

マスター「いや、るーちゃんも便乗していたし」

ルイ「マスターの嘘を成立させるように話を合わせただけだよ」

カランコロンカラン

高砂「しゃちょー、見つけたぞ」

ゆい「そうですね、そろそろでした。マスター、代金は置いときますね」

マスター「あぁ、おおきにな」

ルイ「またのご来店をお待ちしております」


284-1

高砂「腐食した部位を付け替えるのがしゃいきんの楽しみだ」

ゆい「だからって四肢分断する必要はないと思うんですが」

高砂「達磨のしゃちょーもいー」

ゆい「こっちは痛いだけです」

高砂「バラバラしゅきじゃないか」

ゆい「それはそうですが」

高砂「しゃちょーなら食ってもいーかもしれない」

ゆい「同志を得るのは嬉しいことですが、素直に喜べませんねぇ」

高砂「並の人間ならとーに死んでる」

ゆい「いやいや、どうするんですかこれ」

高砂「新しい身体がほしーのだろー。しょんなものは捨て置け」

ゆい「一応今まで使ってきたものなんですが」

高砂「だいじょーぶだ。元来のしぇーのーはもとより、しょれを遥かにりょーがしゅるものを作ってやろー」

ゆい「期待していいんですか」


284-2

高砂「どーだ、あたらしー手足」

ゆい「一見変化は見られませんが」

高砂「ロケットパーンチ」

ゆい「おぉ、腕が火を噴いて飛びました」

高砂「ロケットキーック」

ゆい「おぉ、脚も直線を描いて飛び、爆発四散しました」

高砂「腕があれば何分不自由ないだろ」

ゆい「ありますよ、要介護ですよ」

高砂「ほんとーの手足も渡しょー」

ゆい「動作は問題ありません。お、細さまで再現してくれましたか」

高砂「違和感ないよーに作った」

ゆい「こっちは細工していませんよね」

高砂「ないない、天に誓う」

ゆい「無神論者の癖に」

高砂「しゅーきょーにきょーみないだけだ。大自然の力をきょーじゅして我々は生かしゃれてうだけだ」

ゆい「宗教に入る以前に信仰心の篤い方でした。恐れ入ります」

高砂「まほーはしぜんしゅーはいの結果だ」

ゆい「人間を超越した力は何でもない自然の力なんですね」

高砂「身近にあるものがきょーりょくなのだ。人間がどーぐをもちーて初めて、しょの力を得る」

ゆい「人が生活する為には道具の使用は欠かせません。工業が発展する陰には、最先端の製品を開発した科学者が存在するのです」

高砂「科学者は偉大だ。彼らのけんきゅーあってこそだ。まほーもいつかいめーしゃれてもおかしくなかった」

ゆい「人には理解できないものが魔法ですからね。本当にタネも仕掛けもございませんから」

高砂「けんきゅーきかんのれんちゅーは何がたのしかったのか分からん」

ゆい「未知なる領域には一足踏み込んでみたくなるのです」

高砂「自分の理解のはんちゅーじゃなけりゃー無駄なものよ」

ゆい「八城ちゃんには教えてくれましたけど」

高砂「やしろんには強い意志が感じられたから」

ゆい「純粋な気持ち程可愛いものはありませんよ」

高砂「あれ使ってれば生きてるんだが」

ゆい「もしかして結界教えちゃったんですか。そして自由に扱えるようになったと」

高砂「ああ、たかしゃごもまさか覚えてもらえるなんて思ってなかった」

ゆい「わたしを守ってくれたのは高砂さんではなく八城ちゃん……」

高砂「かのーしぇーはじゅーぶんある」

ゆい「ああ、八城ちゃん今すぐにでも会いたいです」

高砂「連絡が取れればいーが」


285-1

八城「ゆいちゃん」

ゆい「ここは現実ですか」

高砂「ここも向こーも現実だぞ」

八城「魔女さん、こんにちは」

ゆい「高砂さんとはいつも話しているように思えます」

高砂「ははは、たかしゃごもしゃちょーも友達が居ないからな」

八城「あたしが二人を繋ぐ架け橋なんだ」

ゆい「高砂さんとは八城ちゃんに会う前から知り合いですからそれはないです」

高砂「むしろしゃちょーが橋だ」

八城「そっか。ゆいちゃんを橋にして渡ればいいんだ」

高砂「橋なんてなくてもやしろんとは友達だ」

八城「わぁい、友達」

ゆい「………」

高砂「どーした、橋」

ゆい「高砂さんのくせに生意気ですよ」

八城「略してしゃごなま」

高砂「ゆーじょーより利益をゆーしぇんするやちゅとは友達になれない。りよーできる範囲ではりよーしゅるが」

ゆい「高砂さんなりに考えがあるんですね」

高砂「だから、今のけんきゅーきかんと縁を切ることはない」

八城「お友達なの」

高砂「友達じゃにゃい。ただの金庫」

ゆい「表面上は上手くやっているんですよね」

高砂「かんじぇんほーち。きかんにまほーが分かるわけにゃい」

八城「あたしは分かった気がするよ」

ゆい「八城ちゃん、嘘はいけませんよ」

八城「嘘じゃないやい」

高砂「しゅくなくともしゃちょーよっかは理解してる」

ゆい「はいはい、わたしには何度生まれ変わっても分かりませんよ」

八城「やろうと思ったことはないの」

ゆい「ありません。魔道書はみんな横流しです」

高砂「やしろんは勤勉なのにしゃちょーは」

ゆい「人には向き不向きがあるんです。得意分野がありますから……プイッ」

八城「拗ねちった」

高砂「しゅこしいじめしゅぎたか」」

ゆい「いいですよ。海見てきます」

高砂「あまりとーくに行くなよ」

八城「あたしもついていこうかな」

高砂「たかしゃごは留守番しとくな」

ゆい「服は着替えてもらって構いませんよ」

高砂「りょーかいした」


285-2

八城「魔女さんって何でゆいちゃんに厳しいの」

ゆい「八城ちゃんという可愛い弟子ができて自慢したいだけですよ。もとよりわたしに対して素直じゃありませんが」

八城「そゆこったかぁ」

ゆい「はい」

八城「海来んの久しぶりかも」

ゆい「夏が恋しいですねぇ。エックシャイ」

八城「やっぱ冬は寒いや」

ゆい「人気のない砂浜、悪くないです」

八城「夏は来ないの」

ゆい「日に焼けるのはあまり好きくないです」

八城「へぇ……あ、まみーだ」

磨夢「ん」

ゆい「いつも黄昏ていませんか。何か悩みでもありますか。死にたければとりあえず肉を寄越してください」

磨夢「ちょっと入水してくる」

八城「冷たいよ、まみー」

磨夢「寒中水泳」

ゆい「や、やせ我慢もほほどほにしてくださいよっ」

磨夢「………」

八城「ゆいちゃん、めっちゃ震えよる」

ゆい「あああ嵐来ませんかこれ」

磨夢「嵐の中、波に飲まれて海の藻屑になりはててくる」

ゆい「なぁんにも戻ってきませんよそれ」

八城「まみー、どうしたの。本当に大丈夫なの」

磨夢「どうもしてない。いつものわたし。それよりゆいの頭は」

ゆい「わたしの頭をどうしたいのですか。高砂さんじゃあるまいし、そんなことはできませんよね」

磨夢「医学的な知識はない」

八城「まみーも魔法使いになればいいよ」

ゆい「あくまで高砂さんの例ですから。何も医学に関わる必要はないんですよ」

磨夢「ん」


286-1

prrr

霞「ん、んんぅ」

ピッ

霞「はひ。三宅れふ」

磨夢「今、朝の三時です」

霞「何時に寝たらそんな時間に起きられるんですか」

磨夢「八時寝七時間で余裕」

霞「先生なら幾らでも縮めてきそうです」

磨夢「早起きして霞の声を聞く。これぞ究極」

霞「起きていることもありますが、大抵は寝て数時間の内なんで甚だ迷惑ですよぅ」

磨夢「明石より早いから」

霞「わたしが明石に行っても誤差程度ですよ多分」

磨夢「例えばラジオ体操をする際、わたしが第二を始めたとき、霞は首を回している」

霞「その間じゃないでしょうかねぇ。それこそ沖縄と北海道くらい離れていないと絶対的な差は見られないんじゃないですか」

磨夢「ちょっとロンドン行ってくる」

霞「何も半日ずらすことはないです。今はおやつの時間ですよ」


286-2

磨夢「ペプシうまし」

霞「コークうまし」

磨夢「違いが分からない」

霞「美味しいところがいい、ペプシネクスト」

磨夢「これゼロだけど」

霞「ふぇぇぇん」

磨夢「霞、今度卒アル見して」

霞「中学の時は根暗だったので、小学校の時のをお見せしましょう」

磨夢「血まみれになるけどいい?」

霞「それは困りますよぅ。永久保存版ですから、老後に半生を振り返ってみたいんです」

磨夢「それまでの空白期間は何していましたか」

霞「実家でネトゲ三昧……ですかね。一家で立ち上げたギルド、まさかここまで成長するとは思わなんだ」

磨夢「ということはわたしも立役者」

霞「直接的には関わっていないですけどね」

磨夢「ん」

霞「何だか頭が働かないです」

磨夢「そっち行こか」

霞「残念ながら先生が来ても変わらないと思います」

磨夢「それは残念」

霞「ではおやすみなさい」

磨夢「おやすみ」


287

高砂「しゃちょー、生きてるか」

ゆい「冬眠なんてしていませんよ。わたしは年中無休営業です」

高砂「はつもーでに来た」

ゆい「表はかなり盛り上がっているでしょう」

高砂「任しぇっきりなのか」

ゆい「明らかに一人で処理できる範疇を超えています。ああいうのは他人に任せれば良いのです」

高砂「だめ巫女だなー」

ゆい「高砂さんもあの中には居られないでしょう」

高砂「ああ、しょーゆーことか。しょれならたかしゃごも同じだ」

ゆい「休暇はみな平等に与えられるべきです」

高砂「おみくじはあるか」

ゆい「ちっちゃいのならありますよ」

高砂「はい、五円」

ゆい「お賽銭じゃないですが、まあこれでいいでしょう」

高砂「よし、じゃあ引こう」

ガサゴサ

高砂「ぐにゅ?」

ゆい「生肉が入っているだけです。続けてください」

高砂「あーじゃーこれで」

ドサッ

ゆい「美味しそうですね。煮ますか」

高砂「ちゅぎの箱を頼む」

ゆい「なら、これでしょう」

高砂「うむ。じゃー引くぞ」

ガサゴソ

ゆい「どうでしたか。今年の運勢は」

高砂「凶だ。まーこんなとこもあるよな」

ゆい「高砂さんは吉なんて望まないでしょう」

高砂「ははは、しょーゆーたいしちゅだからな」

ゆい「魔に関係する者が神頼みするわけがないですからね」

高砂「しゃちょーが偽善者に見えるな」

ゆい「巫女を見つけなきゃ完全に隠遁生活でしたよ」

高砂「しゃちょーもまほーちゅかいになれば良かった」

ゆい「仮になったとしても、高砂さんにはとても及ばなかったでしょう」

高砂「ふくしゅーのぞくしぇーを覚えるだけで、たかしゃごを超えるぞ」

ゆい「一つの属性に特化するのも十分優秀ですよ」

高砂「しょーだな。ふくしゅーあちゅかえても、威力が弱けりゃだめだ」

ゆい「火魔法は人気なものじゃないですか。身近なものとして」

高砂「あかまほーは人気だ。後は水をあちゅかうあおまほーだな。ちすいかふーはとっちゅきやしゅてわりかし人気だ。何度もゆーよーに黒白は物好きしかやらない」

ゆい「黒魔法なら昔ハマってましたねぇ」

高砂「何か呼び出しぇたか」

ゆい「いいえ、霊の力だけではどうしようもないのです」

高砂「まほーじんは描いたか」

ゆい「描きました」

高砂「単に魔力が足りない」

ゆい「雰囲気だけは楽しめましたよ」

高砂「一体だけじゃない。団体しゃまにお越しいただくのだ」

ゆい「お祭りはハロウィンだけにしてくださいね。神社にまで呼ばないでいいです」

高砂「町のちゅーしんのほーがめーわくだと思うが」

ゆい「どこで開いても迷惑ですよ。だからハロウィンでごまかすのです」

高砂「化け物に扮するなら本物がいたって構いやしにゃーこった」

ゆい「今年からはわたしが話を通しておきますよ。いくら安全と雖も魔族の皆さんも石を投げられるのは不快でしょう」

高砂「しぇっとくは二のちゅぎだろー」

ゆい「はい、向こうがどう思われようと、儀式は行われるのです」高砂「しょのこーしょーは意味をなさないな」

ゆい「今年のハロウィンは例年より派手に行われると彼らの脳内に刻むのです」

高砂「しゃちょーはいつも人頼みだなぁ」

ゆい「高砂さんみたいな人を見れば誰だって頼りますよ」

高砂「ほー。愚かなやちゅらだ」

ゆい「おっとろしい人です」

高砂「たかしゃごのゆーじんはしゃちょーとやしろん、しょれと、ばんだい」

ゆい「井筒さんとこ行きたくないですか」

高砂「たかしゃごははつもーでに来たのだが」

ゆい「絵馬に願いを書いてください」

高砂「人魔のきょーぞん」

ゆい「それは是非叶ってほしいです」

高砂「しゃいしぇん入れてくる。時が止まったらたかしゃごの番」

ゆい「割り込みはいけませんよ」

高砂「分かった、ちゃんと並ぶ」

ゆい「………」


288-1

カランコロンカラン

マスター「いらっしゃーい」

土山「マスター、蟻丼一つ」

マスター「お客さんの要望に応えたいのはやまやまやけど、そんなものはない」

土山「じゃあ仕方ない。おすすめ頼む」

マスター「好き嫌いしないのはええことや」


288-2

土山「魔界も変わったな。人が住んでいるとは」

マスター「こんなことやってるのはうちらくらいやけどな」

土山「そういや人間界は滅びたんだってね。こっち来てて良かった」

マスター「お客さんもあっちに住んでたん」

土山「うん。あっちに住んでたが、前魔王が倒されてからはこっちの者になったよ」

マスター「前魔王ってのは悪い人やったん」

土山「悪いやっちゃあ悪い奴だな。定番の世界征服を掲げていた。一度はねのけたと思えば第三勢力が現れたな。世界は混沌に包まれた」

マスター「まあ魔王らしいな。その第三勢力ってのはどんなのさ」

土山「前魔王より世界征服の意志が強い輩だよ。遂に奴らは結託した。オレの友人が正義の刃の下、奮闘したよ。世紀の大決戦ってやつだな」

マスター「結果正義が勝って今の魔王があるってわけやな」

土山「そう、総力上げて潰した。ただ犠牲は多かったけどな。それはともかく現魔王になってからは本当に平和だ。だからこっちに住むことにした」

マスター「やからそれ以降の人間界のことは全く知らんってわけか。そういう人も居るんやね」

土山「今残っている人間はマスターだけか」

マスター「いや、うちの他にもう一人可愛い店員がおるし、後知り合いに二人おるわ」

土山「選ばれし四人か。人類再興の時を祈っているよ」

マスター「みんな女やし、こればっかはどうしようも出来んなぁ」

土山「マスターは好きな魔族とかいるのか」

マスター「お客様にそんな感情を抱いたことはありません。大体何や好きな魔族って。確かに人間とは恋愛できんなったけど」

土山「こんな世だ。マスターも近い未来はグフフ。ちなみにオレは一生独身だから協力しないぞ」

マスター「えらく男らしいな」

土山「マスターは将来ないすばでぃーになると確信している。きっと良い相手が見つかると思うぞ」

マスター「はは、おおきに。体型を見て惹かれるというのもどうかと思うけど」

土山「ところで可愛い店員はまだか」

マスター「さっき寝たので、明日いらしてね」

土山「覗きに行っていいか」

マスター「魔王様に借りてる店でいうのもあれやけど、関係者以外立入禁止です」

土山「そいつぁ残念だ」

カランコロンカラン

マスター「魔女さん、いらっしゃーい」

土山「何ぃ、魔女だと」

高砂「いかにもたかしゃごは魔女だ」

土山「おー、ほのかな灯りじゃないか」

高砂「この店燃やしてもいーんだが」

マスター「放火魔は帰ってもらうわ」

高砂「魔界に規則などないだろーに」

土山「まぁ無法地帯だな。人間界とは違う」

マスター「その人間がやろうとしててんけどな」

高砂「まーいーや。勘弁してやる」

土山「炎以外に何かあるのか」

高砂「元素まほーはほのーだけだが、禁断まほーもしゅこし

土山「禁断魔法か。ここじゃ言えないか」

高砂「初見には無理だ。まほーにきょーみがあるのか」

土山「オレに使えるとは思えんしドーピングしとく」

マスター「ムキムキよりしわしわになりそうやわ」

土山「男は己を磨かねばならんからな。てゅるってゅるの肌を目指すのだ」

マスター「ちょっと触ってええか」

土山「よし来い。いつまでもくしゃくしゃとは言わせないぜ」

マスター「あっ、思ってた通りの感触や」

土山「人は紙などとほざくが、こう見えてアリクイなんです」

マスター「ややっこいやっちゃなー」

高砂「燃やしてみたい」

土山「オレを燃やせば、第二第三の土山が来るぜ。申し遅れた、土山です。つっちゃんと呼んでくれ」

高砂「たかしゃごはたかしゃごだ。よろしく」

土山「気が合いそうだな。よろしく頼む」

マスター「ちなみにシャギーはそんなにうちに来うへんで」

高砂「しゃちょーと人を探しているからな」

土山「そいつがもう一人の生存者か」

高砂「しょのとーり。かじゅしゅないしぇーぞんしゃだ」

土山「その社長とやらはどこに」

高砂「しゃー、どっかで寝てるんじゃないか」

土山「今は何時だ」

マスター「常闇の魔界じゃ分からんわ」

高砂「眠いときに寝ればいーのだ」

土山「確かにオレもそうしてたよ。何とも原始的だな」

マスター「時計はあっても意味を為さんこったな。無用の長物ってやつ」

高砂「しょもしょも魔族のれんちゅーにしゅいみんがあるん、だろか…zzz」

マスター「店内での居眠りは禁止ですよ、お客さあああん」

土山「やっぱり夜なんじゃないのか」

マスター「そうかもしれへんなぁ」


288-3

ルイ「もう朝なの」

マスター「朝なんちゃうかな。おはようるーちゃん。どんくら寝た思う」

ルイ「こんなに寝たの久しぶりってくらい。十時間は寝たかなぁ」

マスター「向こうおった時はよっぽど無茶な生活しててんな」

ルイ「わたしは楽しかったからいいけど。七、八時間睡眠はしてたから普通だよ。むしろ十二時間寝てたマスターがすごい」

マスター「そういう体質なんよ。うちの場合、七八時間なんて夢の中やし。やっぱ個人差あるんやなぁって改めて実感した」

ルイ「そだね。普通なんてないんだよ」

マスター「じゃあそろそろ寝るわ」

ルイ「あっ、わたしも寝直そうかな」

マスター「なんやそれ。確かに店は閉めたけど」

ルイ「だからすることないし、寝ちゃおかな作戦」

マスター「るーちゃんならこっちでもほかの仕事見つけられる思うけどなぁ」

ルイ「どうかなぁ。外出たら多分戻ってこれなくなるよ」

マスター「外出られへんなんて、うちとおんなじになっちゃうな」

ルイ「それもいいかなぁなんて。早速十二時間睡眠実践してみよっかな」

マスター「また寝たら二十四時間睡眠なんで。起きとき」

ルイ「起きててもすることないよぅ」

マスター「灯り消すで。おやすみ」

フッ

ルイ「真っ暗なの」

マスター「zzz」

ルイ「寝つくの早。わたしも寝ちゃおっと」


289-1

少年「こ、こんにちは」

ゆい「はい、こんにちは」

少年「あの、人を殺しちゃったんですが」

ゆい「そうですか。まだ新鮮ですか」

少年「あ、はい。これです」

ゆい「若くして才能がありますね。時間はどれくらい掛かりましたか」

少年「怖くて、三時間掛かりました」

ゆい「初心者の方はそのくらいが妥当ですよ。一日二日置かれるよりはましです」

少年「そうですか。変わった人ですね」

ゆい「よく言われます。しかし、わたしはそれを欲しているだけなのです」

少年「ただ、欲するだけなんですね」

ゆい「味を知っといた方がいいですよ。将来の飢饉で役立ちます」

少年「あ、遠慮しておきます」

ゆい「誰も彼も釣れないものですねぇ」


289-2

高砂「やーしょーねん。消し炭になるか人形になるかどっちがいー」

少年「あ、いや、その」

ゆい「高砂さんいけませんよ。この方は良い人なんですから」

高砂「あーしょっちかんけーか。なら問題ない」

少年「ほっ」

ゆい「世間が騒いでも素知らぬふりをするのです。これだけは守ってくださいね。いずれ迷宮入りしますから」

少年「はい」

高砂「まーいざとゆーときは守ってやるから安心しろ。ここに連絡してくれ。ゆーしゅーな社員がおーたいしゅる」

ゆい「関係ない人を巻き込まないでください。これは三人だけの秘密です」

高砂「しゃちょーが他人に頼ってばかりなんじゃないか」

ゆい「そうですね。わたし一人じゃ無力です」

少年「………」

高砂「らしくないな、しゃちょー」

ゆい「わたしも何か特殊能力を備えたいです」

高砂「ゆーれいに顔が広いじゃないか」

ゆい「勘違いしないでほしいんですけどね。わたしに見えて話し掛けても向こうは無関心なのが殆どですから」

少年「幽霊が見えるんですか」

ゆい「はい。でもその死体の霊はここにあらずですね。既に食用肉です」

高砂「現場でしゃまよってるかな」

ゆい「どこで殺したなんざ興味ないですね。早く捌いてください」

高砂「たかしゃごはりょーりにんじゃないぞ。よしょ当たりたまえ」

ゆい「むぅ、仕方がありませんね。じゃあ大将の所まで行きますか。あ、あなたは帰って大丈夫ですよ。ご協力ありがとうございます。またよろしくお願いしますね」

少年「はあ、こちらこそ、ありがとうございます。ではこれにて失礼します」

高砂「ありゃふつーのめじゃないな。いつかしゃちょーも殺しゃれりゅ」

ゆい「ややっ、身内以外に殺されるタマじゃないですよ。安心してください」

高砂「成程、身内を増やしゅほど危険になるか。暗い夜道に気をちゅけろ」

ゆい「高砂さんしか信用できないかもです」

高砂「家族はどーした家族は」

ゆい「みんなわたしに対していつ牙をむくか分からないのです。愛している故にそれが怖いのです」

高砂「しょの時はこの町ごと焼き払ってやる」

ゆい「神社の人間としては悲しい話ですねぇ」

高砂「ならしんよーするしかないだろー」

ゆい「杞憂でしょうか」


290-1

八城「ゆいちゃん、お風呂の時間だよ」

ゆい「いいですねぇ」

八城「まみー、ここは任せたよ」

磨夢「ん」

基茂「オレは部屋に戻ろっかな」

レオポン「ニャア」

磨夢「これは珍しい」

基茂「媚びるなし。ちょっとgatoo動画観てくる」

磨夢「アイゴー」

基茂「どっちもやりすぎだ」


290-2

ゆい「八城ちゃん、最近面白いことはありましたか」

八城「うーん、特に何にも。お兄ちゃんはまだ忙しいし」

ゆい「高砂さんとは会いましたか」

八城「会わないにゃあ。魔女さんはゆいちゃんかいるとこにしか来ないもん」

ゆい「八城ちゃんの事も友達と認識しているはずですけどねぇ」

八城「あっ、魔女さんで思い出した。変な夢見るの」

ゆい「どんな夢ですか」

八城「未来の話だけどね。みんなが大人になるのに、ゆいちゃんと魔女さんだけ今と変わんないままなの」

ゆい「まぁ、そうなるでしょうねぇ。決して嘘とは言い切れません」

八城「ゆいちゃんは特殊な肉体を持ってるの。骨と皮だけにしか見えないけど」

ゆい「この肉体は借り物です。わたしは正義の心に感銘を受けて魂を預けたのです」

八城「正義の味方かな」

ゆい「この町は犯罪が多いですからね。誰かが立ち上がらねばならないのです。わたしは神社からこの俯瞰風景を監視しています」

八城「それでお巡りさんに通報するの」

ゆい「お巡りさんとは関わりたくないですねぇ。磨夢さんが勝手にやってくれますし」

八城「右腕ってやつだね」

ゆい「わたしは対等な関係を望んでいるんですけどね。磨夢さんが高砂さんくらい信頼できる存在になるのはまだ先になりそうです」

八城「そうなの」

ゆい「まだどこかで磨夢さんを脅えているわたしがいます。磨夢さんと二人でお風呂なんて不可能です」

八城「あはは、あたしはいけるけどな」

ゆい「八城ちゃんは可愛いですからね、特別なんですよ」

八城「ゆいちゃんが可愛いからだと思うけど」

ゆい「磨夢さんがそんなこと思ってますかねぇ」

八城「にゃあ、ゆいちゃんが可愛くないわけがないよ」

ゆい「あぁだからあんな風に」

八城「まともに入れてるのはあたしぐらいかにゃ」

ゆい「まともなのは八城ちゃんだけですよねぇ」

八城「らびぃもいるけどね」

ゆい「蕨ちゃんと入ったらお姉ちゃんできると思います」

八城「ゆいねぇやーい」

ゆい「なんですか、八城ちゃん」

八城「何も変わらないね」

ゆい「ですねぇ」

八城「じゃああたしがお姉ちゃんになるよ」

ゆい「八城ちゃんはおばあちゃんですよ」

八城「そうねぇ。お互い年を取ったものよね」

ゆい「年を取っても若い肉体を維持すれば気にしなくなりますよ」

八城「ほんとそうだよね」


290-3

八城「あっがりー」

ゆい「牛乳戴きますね」

八城「あ、あたしも」

高砂「たかしゃごはトマトジュースが欲しい」

ゆい「誰も飲まないからありませんよ。要望は磨夢さんへどうぞ」

高砂「しょれは残念だ。いちおーこのほわいとぼーどに書いておこー」

八城「魔女さんこんばんは。お風呂どうぞ」

高砂「くしょーかんじぇんに出遅えた」

ゆい「冬は冷えますからね。入った方がいいですよ」

高砂「人ん家で一人かー」

蕨「?」

高砂「よし、そこのじょーちゃん、一緒に風呂入ろー」

蕨「♪」

八城「魔女さんとらびぃって初対面だよね」

ゆい「そうですね。しかし蕨ちゃんがあんなあっさりとついていくとは驚きです」

八城「あれも魔法なの」

ゆい「それはないと思います」

磨夢「蕨の将来が心配」

ゆい「高砂さんは不審者じゃありませんよ。ちょっと変わってますけど」

八城「魔女さんは良い人だよ」

磨夢「ん、状況次第で蕨を預けよう」

ゆい「磨夢さん」

磨夢「ついでに八城も」

ゆい「兄さんはわたしが引き取りますよ」

八城「まみー寂しくなるよ」

磨夢「基茂来るまでは一人だったから大丈夫」

ゆい「それはそれでお家がもったいないですね。兄さんは返しましょう」

磨夢「いらない」

ゆい「仕方ないですねぇ、ちるさんに引き渡します」

八城「お兄ちゃんはそれが一番だね」

磨夢「確実にヒモになる」

ゆい「家庭崩壊しそうですね」

八城「やっぱりまみーがいなきゃだめだよぅ」

磨夢「………」

ゆい「財産面はわたしが支援するので、なんとかなるとは思いますけど」

磨夢「甘やかしすぎは良くない」

ゆい「今も大して変わりませんよ」


290-4

基茂「だよな、言ってくると思った」

磨夢「ゆいは金銭感覚が狂ってるから」

基茂「いつかはそんな日も来るよな」

磨夢「基茂なら大丈夫」

基茂「ありがとな」


290-5

八城「じゃあさ、やっぱりまみーはお母さんになるわけだよね」

ゆい「わたしにとっては契約者ですが」

高砂「あがったりー」

蕨「♪」

八城「薄手の魔女さんって貴重だね」

高砂「部屋着だ。ちなみにしょーぞくも夏服と冬服があって……くはは」

ゆい「何こっち見て笑ってるんですか。わたしもあんまし変わりませんよ」

八城「寒いときは着込まにゃならんね」

ゆい「春が待ち遠しいですねぇ」

高砂「ところで二人して何の話をしてたんだ」

八城「まみーはやっぱまみぃだねって話」

ゆい「磨夢さんは我が家の母なる存在です、と訳しましょう」

高砂「母か。親無き子にはひつよーだな」

ゆい「あらご存知でしたか。わたしたちみんなワケありりんごです」

高砂「じゃーたかしゃごも一緒だな。仲間に」

磨夢「無理」

八城「まみーなんで。部屋は空いてるじゃんさ」

磨夢「わたしが耐えられない」

高砂「よろしー。じゃーしぇんしぇーでてーきてきに実験を行う。その結果に基づいて、しゃちょーをかいぞーしゅる」

ゆい「良いんですか、磨夢さん」

磨夢「ん」

八城「にゃんだかなー」

ゆい「ほんとよく分かりませんよねぇ」

高砂「しゅーかんって怖いな」

ゆい「磨夢さんをあんなのにしたのは高砂さんでしょう」

八城「まみーまみー」

磨夢「ん」

八城「まみーはおちゅーしゃとか怖くないの」

磨夢「ん、慣れているから」

八城「ふぅん」

高砂「まかいりゅーかいぼーじゅつは心得ている」

ゆい「ああ、わたしの身体はどうなるのやら」

磨夢「期待してる」

高砂「とーといぎしぇー、無駄にはしない」

八城「魔女さんかっこいい」

ゆい「あぅぅ」


291

舞浜「校舎周り五周。十分後に出発。各自準備しておくように」

みんな「ウス!」

剣「あれれ、あすぽん、部長来ちょらんの」

飛鳥「お兄ちゃん風邪みたいでね。今日は部活休むって」

剣「へぇ、そいつぁ大変ね。試合はまだ先だけど」

飛鳥「風邪をひかない人は羨ましいとお兄ちゃん言ってた」

剣「わはは、わたしは健康には気をかけているんでね。風邪なんてひかないね」

柘榴「へくちっ」

飛鳥「柘榴ちゃんは風邪かな」

剣「二月は寒いから仕方ないよ」

柘榴「なんでもなーい。無理して出てきてたりしてないのー」

剣「今から走るけど大丈夫かい」

柘榴「それは無理かな」

飛鳥「お大事にー」

柘榴「筋トレくらいならわたしにもできます」

剣「ザクロフは個人的に無尽蔵の体力を持つ超人だと思ってた」

柘榴「寝言は寝て言うんだ」

剣「外野手はやっぱりすごいよ。あんなに走るんだもの」

柘榴「走るときは走るけど、来ないときはすっごく暇なのさ」

剣「わたしも外野手転向しようかな」

柘榴「二塁手抜けるのは痛いよ」

義斗「そこのお二人さん、そろそろ出発するよ」

柘榴「あっ、わたしは階段ダッシュやっときます」

義斗「こんなに良い日なのに勿体ないな」

剣「雨の日メニューはザクロフに任せよう」

柘榴「ちょっと雨乞いの儀式を」

義斗「やめて」

剣「行くよ、よっしー」

義斗「柘榴ちゃんは来ないんだね」

柘榴「体調が優れないんで別メニュー取り組みまふ」

剣「っていうことなんだ」

義斗「分かった、舞浜さんには僕が伝言しておくよ」

柘榴「さんきゅー」


292-1

ちる「………」

ポルトナ「ご主人様」

ちる「は、わたしは誰」

ポルトナ「しっかりしてください。平和に過ごしすぎて我を忘れてますよ」

ちる「平和、です。日々災いなく、平穏に、暮らして、きました。わたしは、幸せ、です」

ポルトナ「わたしは少し退屈です。ご主人々も玄那様のように、遊んでほしいです」

ちる「わたしは、読書とガーデニングしか、できません」

ポルトナ「庭の植物はご主人様が大丈夫でもわたしは食べられてしまいそうです」

ちる「みんな良い子、です。気の弱い、わたしが、大丈夫、ですから、ポルたんなら尚更、です」

ガララッ

ポルトナ「今外から開きましたけど」

ちる「窓に、寄りかかって、いる子なの、で、鍵を、開けると、自動で、開くん、です」

ポルトナ「ご主人様がお先に」

ちる「食べられたり、しません、よ」

ポルトナ「大きさが、違いすぎです」

ちる「ポルたんが、すっぽり収まる、口、ですか」

ポルトナ「わたしを守ってほしいです」

ちる「みんな、おとなしいん、ですが」

ガササッ

ポルトナ「こっち見ないでください」

ちる「この子は、ポルたんが、気に入ったん、です。犬が、尻尾を、振っている、みたいに」

ポルトナ「そうですね、涎垂らしています」

ちる「ポルたん、固まって、ばっかり、なので、わたし、一人、で、行きます」

ポルトナ「その方がいいみたいです」


292-2

ちる「水やり、終わり、ました」

ポルトナ「頭から血が出てますけど」

ちる「愛の、為せる、業、です」

ポルトナ「包帯巻きますね」

ちる「ありがとう、ござい、ます」

ポルトナ「………」


293-1

純治「そういやバレンタインだったか」

基茂「そんなものもあったな」

純治「幾ら貰ったんだ」

基茂「これだけだ。これでチョコ買ってこいとか正直萎えた」

純治「三百円か。板3つ買えるじゃねーか」

基茂「そういうお前はどうなんだ」

純治「やしろんがハロウィンのお返しだって、チロルチョコをくれたぞ」

基茂「それそん時の余りじゃねーのか」

純治「確かにチロルあげた気がすんなぁ」

基茂「まぁ貰えっだけ羨ましいわ。オレは貰ってねーし」

純治「ちるたんと先生は」

基茂「二人共いつも通りだよ」

ちる「いっくし」

磨夢「忘れてた」

純治「今年はこいつに勝ちました、先生」

磨夢「まだ今年も始まったばかり」

基茂「なーんつってる間に年が明けるぞ」

純治「あすぽんから無かったのが意外だ」

剣「あすぽんは本命しか作らなかったらしいよ」

純治「ぜってー兄貴だよな」

飛鳥「zzzzz」

剣「ドンマイドンマイ来年はきっと義理もあるよ」

純治「義理禁止法案が通ったらどーすんだ」

剣「そんときゃあそんときよ。ジュンジークも彼女作るんだよ」

純治「あすぽんを嫁にしろってか」

剣「腐れ縁でも無理だぎゃあ」

純治「オレとあいつじゃあ釣り合いが取れん」

磨夢「………」

純治「オイコラシゲリンガル」

基茂「んだよ、今年は貰ってねーつってんだろ」

純治「ソレホントカ」

基茂「本当だ。あー三百円で何買うかね」

純治「ゲーセンの前んとこでガチャりにいこうぜ」

基茂「一瞬で溶けるじゃねーか。つっても、チョコレート三百円はきついし、帰りに駄菓子屋寄るか」

純治「菓子パでも開催すんのか」

基茂「おっ、それいいね。先生もどうだ。三百円はこれで」

磨夢「ん、久しぶりだし」

基茂「決まりだな。たまにはいいもんだ」

純治「吹っ切れたな」


293-2

八城「お、お兄ちゃんサンタのおかえりだ」

基茂「クリスマスはとうの昔に終わったぞ」

八城「ゆいちゃんに会わなかった」

基茂「見てねーな」

八城「ちょっと迎えに行ってくるね」

基茂「友達思いだな」


293-3

八城「なんだ、向かってたんだ」

ゆい「把握済みですよ」

高砂「しょーだな。はーくじゅみだ」

八城「魔女さんも」

ゆい「高砂さん、もう驚きませんからね。げっ」

高砂「脚をちゅかいたくない」

八城「萎えるよん腐るよん」

高砂「違和感がないよーに地面しゅれしゅれに飛ぼー」

ゆい「その箒、どうにかならないんですか」

高砂「しゃちょー、このたかしゃごにふかのーはないぞ」

八城「あっ、消えた」

ゆい「一体どこまでできるんですか」

高砂「地面を叩けば、おーじょらへ舞い上がりゅ」

ゆい「嘘は駄目です」

高砂「しょーだな。ふつーに浮いたほーが楽だ」

八城「浮いたよ、浮いちゃったよ」

高砂「もっと高みへ向かうんだ」

ヒョオオオオキラーン

八城「星になっちゃ……」

ゆい「行きましょう、我々は何も見てないのです」


293-4

八城「ただいまー」

ゆい「お邪魔します」

磨夢「………」

ゆい「何ですか」

磨夢「いや、なんでもない」

八城「誰か足りないかにゃ」

磨夢「………」

ゆい「高砂さんなら星になりましたよ。宇宙旅行に出かけるようです」

磨夢「そう」

八城「あたしも行きたかったなぁ」

ゆい「高砂さんのことです。すぐに帰ってきますよ」

磨夢「帰ってこなくていい」

高砂「しょんなひどいことゆーなよ、しぇんしぇー」

磨夢「………」

八城「魔女さん、おかえりー。宇宙旅行楽しかったの」

高砂「おーほししゃーまきーらきらーだった」

ゆい「それは気を失っていただけです」

高砂「しょれはしょーと、こんなものちゅくった。しゃいみんやくってゆーのか。相手を思うままにあやちゅる」

磨夢「………」

高砂「逃げる気か、しぇんしぇー」

磨夢「今ここでするもの」

高砂「ここじゃ悪いのか」

八城「まみーに使っても面白くないよ」

高砂「ほーん、じゃーしぇんしぇー、しゅきなときにちゅかえばいー。たいしょーは誰でもいーぞ。結果はゆーしょーでつーちしてくれ。これじゅーしょ」

磨夢「ん」

ゆい「使い道は決まってますよねぇ」

磨夢「ん」

八城「早くお菓子パーティーしようよ」

高砂「しょーだ、しぇんしぇー、パーティーだパーティー。たかしゃごはしょのために来たんだ」

ゆい「パーティーといえばすることは決まっています。複数の男女を集めたらいずれ盛大なものになる筈です」

磨夢「うるさい。特にゆい、廊下に立ってて。よしと言うまで入ってこないで」

ゆい「わたしゃ犬ですか」

八城「行こか魔女さん」

高砂「うん。あ、しゃちょー、くちゅーに耐えられないときはしゃけんでくれ。しゃっきゅーにたしゅけにゆく」

ゆい「高砂さんは本当に優しいですね。分かりました、そのときは叫びます」

磨夢「近所迷惑だからやめて」


293-5

八城「で、何でいきなりお菓子パーティーなのさ」

磨夢「それは基茂が今年のバレンタインチョコ貰えなふごご」

基茂「気分だ気分」

ゆい「オムライスにハートでいいじゃないですか」

基茂「どこのメイド喫茶だ」

高砂「これ美味い」

八城「やっぱりぽてちはバーベキュー味に限るね」

高砂「おっ猫乗った」

磨夢「落とすと食べちゃう」

高砂「しょーか、じゃー鯖缶を与えよー」

レオポン「ニャーオゥ」

ゆい「そんなものどこから盗んできたんですか」

高砂「人聞きの悪いことをゆーな。ちゃんとちゅくってきた」

ゆい「缶詰生活ですか」

八城「チョコあったよ、お兄ちゃん」

基茂「そいつぁ良かったな」

磨夢「自分で買ってきたの」

基茂「そうだが何か問題が」

八城「わああん、苦いよぉ」

ゆい「苦いという字は苦しみとも読みますよね。つまり神が課された一つの試練なのです」

八城「わけわかんないよぉそれ」

レオポン「ナァァーオ」

高砂「りょーしは偉大だにゃ」

八城「魔女さん、食べないの」

高砂「時を止めにゃいと駄目だったかー」

ゆい「わたしが苦しむことで異母兄弟が生まれるのです。ねぇ、兄さん」

基茂「うるせぇ、五年早ぇ」

磨夢「だが待ってほしい。ゆいがこれ以上年を取るなど考えられるのか」

基茂「それは考えたくないな」

ゆい「安心してください。わたしはこの肉体からは離れません」

磨夢「それは肉体が異様」

高砂「日々の点検は怠るべからず」

ゆい「そういう所以でこの肉体は維持されるのです」

磨夢「羨ましい」

基茂「ジュース吹いた」

八城「ジュースは飲むものだよ。お兄ちゃん」

ゆい「わたしは磨夢さんの生き血が欲しいです」

磨夢「やだ」

高砂「たかしゃごはしゃちょーの生き血が欲しー」

ゆい「良いですよ、確かうなじですよね」

高砂「確かうなじだな」

かぷっ

ゆい「おひょひょひょひょひょひょおおおうう」

八城「まみー、あれ何してるのー」

磨夢「変態と変態のいかがわしい行為」

基茂「お、蕨、来ちゃ駄目だ。やしろーん、相手してやってくれ」

蕨「?」

八城「らびぃ、チェスしよう」

蕨「♪」

基茂「オレも席外すな」

磨夢「………」

ゆい「はぁはぁ」

高砂「そしてしぇんしぇーしか居なくなった」

ゆい「そりゃあそうなりますね」

磨夢「ゆい、血が」

ゆい「高砂さん、強く噛みすぎです。流れてます」

高砂「あー悪い。舐めとく」

ちろちろ

ゆい「にょほほほほ」

磨夢「………」

高砂「けんこーてきなえーびー型だ」

ゆい「天才肌ですね」

高砂「言ってない」

磨夢「済んだ」

ゆい「はい、無事終えることができました。今度は磨夢さんのが欲しいです」

磨夢「欲しがり」

高砂「確かに」

ゆい「では失礼します」

かぷっ

磨夢「………」

高砂「全く動じない。どっかのしゃちょーとは違うな」

磨夢「痛い」

ゆい「ですよね、すみません」

磨夢「ん」

ゆい「健康的なB型です。とっても美味しいです。肉まで食べたいくらいです」

磨夢「………」

高砂「じっしゃいしぇんしぇーは美味いのか」

ゆい「わたしゃにゃわかりゃへんよ」

高砂「しぇんしぇーしゃけ飲んでりゅのか」

磨夢「飲んでない」

ゆい「さっきぃ、飲んじゃったみたいれふ」

高砂「しぇんしぇー、ベッド借りるぞ」

磨夢「やめて」

高砂「もんどーむよー」


293-6

ドサッ

ゆい「くぅ、すぴぃ」

高砂「床開くと、面白い瓶があってだな」

磨夢「もういい、染みる……」

高砂「かわいしょーに」

ゆい「まむさん、すきぃですぅふふふ」

磨夢「気持ちは嬉しいけど、わたしには嫁がいるので、ごめんなさい」

ゆい「くぅ、くぅ」

高砂「なーに、しゃちょーのことはたかしゃごに任しぇればいー」

磨夢「ん、じゃあお願いする」

高砂「戻るのか」

磨夢「ちょっと様子を見てくる」

高砂「りょーかい」


293-7

八城「おかえり、まみー」

蕨「♪」

磨夢「ひょっとして食べてた」

八城「うぅん、チェスやってたよ。らびぃ結構強いんだよ」

蕨(ニコッ)

磨夢「そう」

八城「また負けちゃった。お菓子食べよかな。まだ残ってたよね」

磨夢「まだある」

八城「わーい、あたしたちで食べちゃお、らびぃ」

蕨「♪」

磨夢「それがいい」

八城「そういや、ゆいちゃんたちどったの」

磨夢「ゆいが酒飲んでわたしの部屋で寝てる」

八城「大丈夫なの」

磨夢「死にはしない。ゆいだから」

八城「そだね、ゆいちゃんだもんね」


293-8

高砂「あーは言ったものの、たいくちゅだ。くーかんまほーで本の呼び出しを」

バシッ

ゆい「あうっ」

高砂「まーしょーなるか」

ゆい「いったたた、あれ、ここは」

高砂「しゃめたか」

ゆい「さめた、何のことですか。わたし寝てたんですか」

高砂「酒飲んでぐっしゅり寝てた」

ゆい「お酒飲んじゃってましたか。誰が持ってきて……高砂さん」

高砂「よく分かったな、これだ」

ガチャン

ゆい「あっ、瓶落ちちゃいましたよ」

高砂「慣れないもんだ。一瞬で片付ける」

ゆい「まぁ汚れが一瞬で落ちちゃいました」

高砂「これぐらい朝飯前だ」

ゆい「でも瓶の破片残ってますよ」

高砂「不完全だからな」

バシャ

ゆい「わっぷ、これお酒です」

高砂「風呂に入るこーじつができた」

ゆい「あんまりです」


293-9

高砂「しゃちょー、しぇなか洗う」

ゆい「ありがとうございます」

高砂「ふっふーん♪」

ゴシゴシ

ゆい「機嫌がいいですね。何かいいことありましたか」

高砂「なんでもないー♪」

ゆい「?」

高砂「傷染みないのか」

ゆい「何のことですか」

高砂「記憶飛んでいるか。成功だ」

ゆい「??」

高砂「しぇなかにゃがす」

ゆい「お願いします」

バシャ

高砂「たかしゃごのお腹にもんしょーがある」

ゆい「立派なものです」

高砂「人間によくじょーしなくなるしょーだ」

ゆい「それは結構ですね」

高砂「じーっ」

ゆい「大したことないですね」

けりっ ドサッ

ゆい「わっ」

高砂「もっとよくみしぇるんだ」

ゆい「どど、どうしちゃったんですか、一体」

高砂「たかしゃごはどーもしない。ものの試しにじっくり眺めるまでだ」

ゆい「いやです。恥ずかしいですこんな格好」

高砂「飽きた」

ゆい「それもそれで残念です」

高砂「人間にはよくじょーしないんだ。例えしゃちょーでもな」

ゆい「高砂さんには性教育する必要があります」

高砂「赤ちゃんはこーのとりが運んでくるぐらい知ってるぞ」

ゆい「高砂さんはただ純粋なだけなんですね」

高砂「舐めろとでも」

ゆい「言ってないですそんなこと」

高砂「じゃあおっぱいは何の為にあるんだ」

ゆい「赤ちゃんに与えるためです」

高砂「しゃちょーにはいっしょー縁がない話だな」

ゆい「実は出るといえばどうします」

高砂「しゃちょー、ちゅーしゃしゅるか」

ゆい「そういうのはですね。地下の子に使うのです」

高砂「これだが」

ゆい「出てきてませんが」

高砂「あれ、こーな筈なんだが」

ゆい「詠唱間違ってるんじゃないですか」

高砂「えいしょーなんかしているうちに殺しゃれるぞ」

ゆい「どこの戦場ですか。魔法出る幕ないんじゃないですか」

高砂「火力があればじゅーだんなんて怖くない」

ゆい「壁張ってから言ってください」

高砂「しょんなのいらない。敵を見れば焼きちゅくしぇ」

ゆい「見つからなかったらどうするんですか」

高砂「闇討ちは仕方ない」

ゆい「手段も何もないんですね」

高砂「あーしゃむくなってきた。しゃちょーあっためて」

ゆい「風呂に浸かればいいです」

高砂「やだしゃちょーといちゃつきたい」

ゆい「してるじゃないですか」

高砂「もーちょっとあちゅくしていい」

ゆい「骨も残さず灰にするつもりですか」

高砂「人喰いにゃーりしょーのしゃいごだ」

ゆい「高砂さんに殺されるなら本望ですけど」

高砂「しゃちょーが死ねばこの世は終わりだー」

ゆい「そこまで影響力は持ってないです」

高砂「よし、しぇめてものちゅぐないだ。これを裸でくちつちゅししゅればとーぶん死なない」

ゆい「意味分かんないです」

高砂「まー細かいこたー気にしない」

ゆい「ん……」

高砂「ひらひにひはをひへふほおひほーははへふ」

ゆい「………」

高砂「ほい、終わり」

ゆい「ぶはぁっ、死ぬかと思いました」

高砂「しゃちょー、顔が熱いぞ」

ゆい「頭おかしーです」

高砂「お互いしゃまだ」


294-1

磨夢「霞……」

霞「今日はNOですよ、先生。今レベル上げに忙しいです」

ポチッポチッ

磨夢「今夜は準備できてるけど」

霞「誘惑しようと無駄です」

磨夢「霞っ霞っ霞っ……うっ」

霞「ナニしても無駄です」

磨夢「はぁはぁ、霞、今ならぶち込んでいいから」

霞「わたしゃ生えてないですよ、伊崎先輩に頼んでください」

磨夢「基茂は論外。霞のがいい」

霞「すでに挿入済みでしたか!?」

磨夢「そんなこといいから早くして。キちゃうから」

霞「分かりました先生、永遠の愛を誓いますか」

磨夢「誓います」

霞「そうですか」

磨夢「そのままウェディングドレスエッチに持ち込まれ、今では二児の母です」

霞「双子がいいですね」

磨夢「霞のためならどんなに苦しい思いをしても産んでみせるから」

霞「先生はおっぱいないのにおっぱい出すんですね」

磨夢「霞のおっぱいはただの飾り」

霞「肩こって仕方ないです」

磨夢「む」

霞「ところで先生、今どこのギルドに所属されてるんですか」

磨夢「霞愛好会」

霞「冗談でしょうが、もし作ったなら本気で引きます」

磨夢「鏡よ鏡、世界で一番美しいのは霞です。どうもありがとうございました」

霞「はーい、鍵は締めといてくださいね」

磨夢「合い鍵の形状がおかしい」

霞「何勝手に作ってるんですか。ちょっと見せてください」

磨夢「ほら。これは霞の部屋。これは三宅家のトイレ。脱衣場。霞の部屋の金庫。オルゴール。ピアノ。ギター入れ。秘密の小部屋」

霞「まず玄関の鍵を作りましょうね。秘密の小部屋はわたしも知らないです」

磨夢「全部要らないから、オークションに出してくる。もちろんどこの鍵かは記載しない」

霞「得体の知れない鍵を集めるマニアなんているんですか。保護していただくのは助かりますが」

磨夢「使えなくなったから新しいの作らないと」

霞「壊れちゃったんですか。作り直さなくて結構ですけど」

磨夢「確かに。今まで通り窓から行けばいいし」

霞「そうですよ、窓から颯爽と現れるのが先生らしいです。今は冷えるんで鍵も締めてますけど」

磨夢「鍵まで締めることはないのに」

霞「先生だったらいいですが、もし違ったら襲われちゃいます」

磨夢「霞はSだから返り討ちする筈」

霞「先生がMだからそれに合わせているだけです。わたし本当は怖がりなんです」

磨夢「そんな霞に殺人スプレー、これで暴漢もコロリ。魔女提供」

霞「殺しちゃったら過剰防衛ですよ。わたしが捕まりますって」

磨夢「霞に男を近づけない方法は」

霞「わたしルートが無いことは伊崎先輩も分かっている筈です」

磨夢「非攻略ヒロイン同士で勝手にゆりんゆりんする」

霞「そんなの百合ゲーでいいです。男要らないです」

磨夢「基茂はちる以外に手を出したらバッドエンド」

霞「椎木先輩以外は非攻略対象です。これは売れないですね」

磨夢「一方わたしと霞は幸せな家庭を築きました。めでたしめでたし」

霞「先生死んじゃ駄目ですからね」

磨夢「え、今から首吊りに行く予定だったけど霞がそういうなら、電波塔から飛び降りる」

霞「その前に感電死しそうですね」

磨夢「結局は落ちる」

霞「先生はわたしが卒業するまで死んじゃ駄目です」

磨夢「霞が卒業したら清水の舞台から飛び降りる」

霞「それ死なないやつです」

磨夢「じゃあどうやって死ねば」

霞「天寿を全うしてからにしてくださいね」

磨夢「120になってギネスに載る」

霞「ところで先生っていく……育児休暇は貰えるんですか」

磨夢「霞が孕ませてくれたらいくらでも貰える」

霞「見え透いた嘘です」

磨夢「本当は年訊こうとした」

霞「その通りです、すみません」

磨夢「生理は来ているから」

霞「来てなかったら子供できませんからね」

磨夢「だからいつでもYES」

ポチポチ

霞「だらしない格好は止してください」

磨夢「霞、手を貸して」

霞「はい」

ファサ

磨夢「わたしの鼓動、感じる」

霞「はいはい感じますよ」

磨夢「これはわたしのお腹」

霞「ですねぇ。プニプニです」

磨夢「この下はトロトロ」

霞「触ってもらいたいですか」

磨夢「……ん」

霞「顔もトロトロです」

磨夢「霞のえっち」

霞「言い始めたのは先生の方ですよ。ではいきます」

クチュクチュ

磨夢「……んっ」

霞「先生いやらしいですね。指が二本入ります」

磨夢「あっ……霞、もっと」

霞「あれ持ってきてますか」

磨夢「ん、もしかして本番」

霞「本番には至りませんね。気持ちよくなるのは先生だけですから」

磨夢「霞も気持ちよくなりたい」

霞「わたしは求めてないですよ。先生が気持ちよくなりたいんですよね」

磨夢「……ん、気持ちよくなりたい。じゃあこれを」

霞「はい、これ以上のサービスは有料となります」

磨夢「愛は金じゃ買えないもの。特に霞の愛は」

霞「いやですよ先生。でも、嬉しいです。愛してますよ」

磨夢「ん……霞、好き」

霞「先生は甘えん坊さんなんですから。ん、ちゅ」

磨夢「ん、んん……」

霞「ずっとずーっと一緒にいてくださいね」

磨夢「ん」


294-2

八城「まみー帰ってこないね」

基茂「今頃蜜月の夜だろうな。男の野菜炒めを見せてやる」

八城「究極を探求するんだね」

ゆい「兄さんの料理久しぶりですねぇ」

八城「お兄ちゃん三日ぐらい自炊してたんだよ」

ゆい「はぁ、三日ぐらい」

基茂「三日で飽きたんじゃねーからな。三日で磨夢に支配されたんだ」

八城「まみー凄いね。お兄ちゃんより強い」

ゆい「三日で磨夢さんに押し倒されましたか。兄さんも草食系ですね」

基茂「ちなみに三日で裸見たぞ」

八城「まみーはゆいちゃんとは違うエロさがあるからね」

ゆい「身体的にはあの人の方がずっと大人ですからね」

基茂「だから三日で鼻血出た」

八城「殴られたんだね」

ゆい「磨夢さんは殴りませんよ。包丁を首元にそっと当てるんです」

基茂「どっちも違うぞ。磨夢はそんな奴じゃねーよ」

八城「じゃあ鼻血出たっていうのは」

基茂「そりゃあ当時はウブだったからなぁ」

ゆい「女を知らなかったんですね。だからわたしが教えてあげたのです」

基茂「ちるがいるが」

八城「いないよ」

ゆい「放置プレイされてますよ」

基茂「悲しいぜ」

ピンポーン

ちる「あの、お夕飯」

基茂「ほぅそう来るか、磨夢よ」

八城「ちるお姉ちゃんだ、ちるお姉ちゃんが来たぞぉ。ヒャッホオオオオオイッ」

ゆい「八城ちゃん、とっても嬉しそうです」

基茂「これはありがたい。恩に着る」

ちる「えっと、喜んでもらえると、嬉しい、です」

ゆい「磨夢さん絡みですよね」

ちる「はい。先生から、お電話が、あって」

ゆい「電話中入ってましたよね」

基茂「やめろ」

ちる「入ってた、とは」

ゆい「それはですね磨夢さんのまんフガガ」

基茂「何でもない、何でもないから」

ちる「はぁ」

八城「美味しそうなにおいがするよ」

ちる「あ、手作り、ピッツァ、です。どうぞ、皆さん、で」

八城「わぁい、ちるお姉ちゃんの手作りピッツァだぁ」

ゆい「ちぃぃぃぃずぅぅぅぅぅ」

基茂「懐かしいなそれ」

ちる「喜んで、もらえて、嬉しい、です」

ゆい「ちるさんの分はあるんです」

ちる「はい、わたしは、先に、食べました、から」

基茂「少食なんだよなぁ」

ゆい「なんか悪いですね」

ちる「本当に、お腹、いいです、から」

ゆい「身ごもってるんですか」

基茂「んなわけねーだろ」

ちる「基茂さん、との、子供、です、か」

八城「らびぃみたいなかわいい子が欲しいなぁ」

基茂「まだ早えーよ。大体ちるは身体弱いし」

ゆい「どうしても交わりたくないなら、高砂さんに依頼してホムンクルス養成するのも一つの手段です」

八城「ほむんくるすってなあに」

ゆい「人体錬成術です。俗にいう人造人間ですね。様々な液体や粒子を使って錬成するんですが、兄さんやちるさんの遺伝子を使用すれば、より理想的な子供を作成できます」

基茂「でも高いし、色々アレだよなぁ」

ゆい「高砂さんにはわたしが働きかけるので費用などについては問題ありません。まぁ確かに寿命など考えると普通の人間とは異なりますけどね」

基茂「人工的なものに頼るか、それとも」

ちる「基茂、さん」

基茂「あぁ悪かった。晩飯だったな。ありがたくいただくよ」

ちる「あ、はい」

八城「ちるお姉ちゃん顔真っ赤だなぁ」

ゆい「ちるさんは純粋な乙女ですから。いわば処女です」

基茂「ゆいゆい、とりあえず黙っとけ」

ゆい「未来が見えなきゃ先に進めませんよ」

基茂「何言ってんだか」

ゆい「ということでお風呂入りたいのですが」

基茂「まだ入れてないが」

ちる「ゆい、ちゃん、ついて、きますか」

ゆい「お外のお風呂ですか」

八城「いーじゃん。行こうよ、ゆいちゃん」

ゆい「別に構いませんけど」

八城「じゃあご飯食べた後にれっつごーだよ」

ちる「あ、基茂、さんは」

基茂「オレはやめとく」

ちる「も、申し訳、ない、です」

ゆい「兄さんは混浴じゃないお風呂には価値を見出さないのです」

ちる「基茂、さん……」

基茂「か、勘違いすんなよ。ゆいゆいややしろんのお供に過ぎん」

八城「お兄ちゃんは優しいからね」

ゆい「でも勃っちゃいますよね」

基茂「そればかしは男だし仕方なか」

ちる「あ、あの、そういう、ことで、わたしは、し、失礼、します」

バタム

八城「帰っちゃったよ」

基茂「ゆいゆいのせいだぞ、ちきしょー」

ゆい「わたしは兄さんとちるさんの将来を考えてですね。日常の細部に至るまでちるさんにお教えしようとふごごご」

基茂「余計なお世話だ」

八城「ゆいちゃんのほっぺは伸びるなぁ」

ゆい「ほっへも、ひはいれふ」

八城「かてーないぼーりょくだー」

基茂「伸びるのが悪い」

ゆい「それは理不尽ってやつですよ」

八城「ゆいちゃんのびぃる」

ゆい「ふにゃにゃにゃ」

基茂「さぁてと、ちるから貰ったピッツァを食うか」

八城「れっついーとぴっつぁー」

ゆい「二人ともひどいです……グスッ」

高砂「しゃちょーの泣き声が聞こえるとわらわらと集まってくるその一人、たかしゃごであーる」

ゆい「それじゃただの野次馬です」

高砂「どこを引っ張られたんだね」

ゆい「ほっぺぐらいしかないと思いますよ」

高砂「多分たかしゃごのほーが負けないぞ。うにょーん」

ゆい「よく伸びますねぇ。でもそこ競うとこじゃないですよ」

高砂「こんなの痛くも何でもないんだか。何で泣いたんだ」

ゆい「気遣いの欠片もないです」

高砂「しょれはちゅまり、しゃちょーのほっぺがたかしゃごよりも柔らかいからことにある」

ゆい「まぁ間違ってないですけど」

高砂「よーしゅるに無理しゅんなって話だな」

ゆい「わたしはやられている側なんですけどね。無抵抗なのです」

高砂「知ってるぞ、しょーゆーのはドMとゆー」

ゆい「嬉しいわけでもないですけど」

高砂「しょーいえば、この家にとーちょーきをしぇっちしたんだが、日を改めて聴くと、しゃちょーがしゃけんでたな。何をやっていたか知らないが、あれはしゃちょーがドMだってしょーこだ」

ゆい「趣味が悪いですよ、高砂さん。知らないなら身体に教えてあげますよ」

高砂「たかしゃごをおしょってもこっちは何も感じないぞ」

ゆい「いいえ、感じるはずです。試しに自分の秘部を触ってみてください」

高砂「何が面白いんだ」

クチュクチュ

ゆい「こういう風にひやらひい、音を、はぁ、立ててくだひゃい」

高砂「じーっ」

ゆい「あっ、見られちゃ、わたし、弱ひでふから……うぅんっ」

高砂「どーしたらしょんな顔ができるんだか」

ゆい「無表情な磨夢さんでもこうなるんですよ」

高砂「ひょーじょーだけではかんじょーをおしゃえきれない。わじゅかなるぼんのーに負けるからしょーなるんだ」

ゆい「磨夢さんが無表情なら高砂さんは無感情ですね」

高砂「なぁに、たかしゃごだって笑うぞ。はははは」

ゆい「目が笑ってないです」

高砂「たかしゃごが笑ってるといえば笑ってるんだ。今とっても愉快だ。あっははは」

ゆい「喜怒哀楽を表現できますか」

高砂「きどあいら…あー、あれか。しかし普通は怒ることも哀しむことはないぞ。たかしゃごはいちゅだって愉快だからな」

ゆい「はぁ、幸せな人ですね」

高砂「まーしゃちょーが死んだら哀しむし、しょのうんめーに怒りを感じるかな。しょのときのために取っている」

ゆい「それは嬉しいことです」

高砂「だからしょーしょっちゅー怒ったり哀しんじゃ駄目だ。ほんとにしょーしたいときにじっこーできないからな。だからしゃちょーも笑っていてほしー」

ゆい「笑顔が一番ってことですか。わたしが死んだときに本当に哀しむか、つまり涙を流すかは別としていい思想だと思います」

高砂「涙、ねー。涙っていつ流しゅ」

ゆい「一般的には痛いとき、悲しいときですね」

高砂「痛いとき、か。ちょっと待たれ」

ゆい「はい」

高砂「赤鬼か。たかしゃごだ。あーしゃっしがいーな。しょのとーりだ。覚悟か、しょんなものはよゆーだ。ひょっとして生身の人間には痛くないかも、じゃー一時的に死ぬかな。あー、分かった。とゆーことでよろしく」

ゆい「大体察しましたけど、地獄、ですよね」

高砂「しょのとーり。ちょっと地獄行ってくる。あしょこじゃ幾万の痛みや苦しみが味わえるからな。で、一時的に死ぬにはこのくしゅりだな。よし、ゴクン」

バタリ

ゆい「あれ、高砂さん。そんなあっさり、高砂さああああん」

八城「どしたのゆいちゃん、あれ魔女さん」

ゆい「こんなとこで死なれても困りますよぉ、ぐすっ」

八城「魔女さん死んじゃったの」

ゆい「一時的に、ですけど。やっぱり悲しいですよ。あ、その薬は絶対に飲んじゃ駄目ですからね」

八城「いかにも危険そうだよぅ」

ゆい「とりあえずどうしましょう。磨夢さん、帰ってきませんよね。磨夢さんの部屋に」

八城「適当な部屋でいいと思うよ」

ゆい「駄目ですよ。死人は鄭重に扱わねばならないのです」

八城「そうなの、じゃあそうするけど」

ゆい「必ず帰ってきてくださいね、高砂さん」


294-3

高砂「しゃてとここが地獄か。やーやー赤鬼、予約していたたかしゃごだが」

赤鬼「たかしゃご、ああ、高砂様ですね。少々お待ちください」

高砂「あー」

赤鬼「お待たせしました。閻魔様がお待ちです。こちらをお通りください」

高砂「やけにてーねーな赤鬼だなー」

閻魔「貴様が高砂か。進んで地獄に来るとは愚かな人間よ」

高砂「天国なんかじゃ苦しみは味わえないからな」

閻魔「最大の苦痛をお望みか。地獄と分かってその態度。望みのままに導かれよう。赤鬼、青鬼、あれを」

赤鬼「はい」

青鬼「へい。さて、人間、覚悟するんだな」

高砂「ふむふむ、これが舌抜きか」

青鬼「二度と食を味わえないようにしてやる」

高砂「死んでいる身だ。何も食いはしない」

赤鬼「何も悔いはない、ですか。行きますよ、青さん」

青鬼「あいよ、赤ちゃん」

びよよよおおおん

青鬼「思った以上に伸びるものだな」

赤鬼「舌の長い人間かもしれませんね」

ポトリ

青鬼「その割にはあっけないな。どうだ人間、お前の舌は」

高砂「古かった方が切り取ってくれてありがとう」

青鬼「なっ、再生していやがる」

赤鬼「次行きましょう。針山です」

高砂「これは無理だな」

青鬼「この針山の頂上まで登るんだ。うちではそうなっている。落ちたら串刺しだぞ。ほら、早くしろ」

高砂「木登りとかやったことないな。命綱とかないのか」

赤鬼「そんなものはありません。観念しなさい」

高砂「しょんなー」


294-4

高砂「ちょ、ちょーじょーまで上がった」

青鬼「なかなかやるじゃねーか。イカサマもなしによ」

赤鬼「こういう体力勝負には弱いんでしょう。さて次は釜茹で風呂です」

高砂「ほー」

青鬼「早く脱げ。脱ぐまでもなくボロボロだけどな」

高砂「分かった。ただ、後で直しといてほしーな」

赤鬼「それぐらいは用意してます。ほら、早く入ってください」

高砂「はーい」

タンタンタン。ザパーン

高砂「ふぅー、極楽極楽」

青鬼「一万まで数えるんだぞ」

高砂「しょんなに浸かってちゃのぼしぇちゃう」

青鬼「口答えするな。ちゃんと数えるんだ」

高砂「分かった。いーちにーい」

青鬼「温度低くないか」

赤鬼「いえ、いつも通りですけど」

青鬼「次は灼熱か。こいつは手応えないかもな」

赤鬼「そうですか」


294-5

高砂「いちまーん。数え終わったぞ。次は何だ」

青鬼「灼熱と思ったがやめた。地獄は熱いのにお前みたいなのには向かん」

高砂「しゃむいのは苦手だぞ」

赤鬼「ではこちらへどうぞ」


294-6

高砂「しゃぶい。ちゅめたい。これはいけにゃい」

青鬼「ふぁっふぁっふぁっ、さっきの威勢はどうした。そのまま冷水の中で一万数えるんだ」

高砂「これぞ地獄だな」

赤鬼「特別に用意した甲斐がありましたね」

青鬼「本当の地獄を見ることになるか」

高砂「うぶぶぶぶ」


294-7

ゆい「……さん、高砂さん」

パチリ

高砂「……帰ってきたのか」

八城「良かった魔女さん、生き返ったんだ」

ゆい「良かったです。本当に良かったれふ。高砂あんっ」

ギュッ

高砂「だから一時的にしか死んでないって」

ゆい「例えそうでも高砂さんが死んじゃったら悲しいです。ああ高砂さん、たかひゃごあんっ。たかしゃごひゃんがいなかったらわたひ……ぐすっ」

高砂「しょんな泣くこともないだろーに。待てよこれが涙か。しょっぱい」

ゆい「その涙の意味も哀しみから喜びに移行しつつあります。ああもう考えが纏まらにゃいないでふ」

高砂「一時的な死であってもしゃちょーを哀しましぇる。このくしゅりは失敗だな」

八城「そういや魔女さん、地獄どうだったの」

高砂「地獄か。きー失ってあんま覚えてないけど、なかなか苦しかった」

八城「やっぱり暑かったの」

高砂「あ、しょーしょー全体的に蒸しあちゅかった。まーたかしゃごには応えなかったけどな」

八城「じゃあ気失っちゃったのは寒いやつかぁ」

高砂「うっ……思い出してしまった。しょーだ釜茹ででいい湯加減と思っていたら冷水にぶち込まれてああああああああああ」

八城「魔女さん、落ち着いて」

高砂「はーはー、まーなんだ。たかしゃごだってくちゅーを味わうために行ったんだが」

八城「くつう」

高砂「しゃちょーがたかしゃごをむかんじょーとかゆーから、今回のしゃくしぇんは行われた」

八城「まみーと似てるかな」

ゆい「磨夢さんが分かりやすい一方で、高砂さんは読めませんね」

高砂「とまーこれがしゃちょーの意見だが。やしろんはどう思う」

八城「いや、まみーも分かんないよ」

ゆい「磨夢さんは結構露骨だと思いますが」

八城「ほんとかなー」

ゆい「一つ実験をしてみましょう」


294-8

磨夢「うっ、んくっ」

基茂「やめろ、帰宅早々吐くな」

磨夢「頭痛い」

基茂「寝てヨシ」

ゆい「磨夢さん体調が優れないんですか」

基茂「毒でも盛られたな」

ゆい「先は長くないですね」

基茂「磨夢だから大丈夫だとは思うが」

ゆい「はは、その通りです」

八城「まみーとっても苦しそうだったけど」

ゆい「暗殺は未遂に終わりました。大丈夫ですよ」

八城「大丈夫なのかなぁ」

基茂「気になるんなら見舞いにいってやればどうだ」

八城「うん、見てくる」

ゆい「わたしも見てきます」

基茂「相手が相手だ。慎重にな」


294-9

八城「まみー」

ガチャ

磨夢「ううう……」

ゆい「ポカリですよ」

磨夢「ありがと……」

ゆい「お腹痛いんじゃないですか」

磨夢「確かに、産まれ……そうかも」

八城「おめでただぁ」

ゆい「まだ決まったわけじゃないですけどね」

磨夢「………」

ゆい「あ、そうです。熱計りましょう。磨夢さん、おでこを」

磨夢「うう……」

ゆい「熱いですねぇ。外はこんなに寒いのに」

磨夢「………」

八城「はい、体温計だよ」

ゆい「八城ちゃん、ありがとうございます。さっ、磨夢さん咥えて」

磨夢「ん」

ゆい「もっとしゃぶってください」

磨夢「………」

ゆい「わたしじゃ駄目ですかぁ」

八城「ゆいちゃんじゃなぁ」

ゆい「これでも兄さんには寵愛されているんですよ」

八城「おっぱい見せるとか」

ゆい「そうですか、磨夢さん」

ピピピ、ピピピ

ゆい「八度四分です。もう少し上げたいところですね」

磨夢「もうしんどい」

ゆい「磨夢さんは見られる方が好きですか」

磨夢「頭痛い」

ゆい「汗ぐっしょりですよ。ついでに股間もぐっしょりです。服を脱ぎましょう。八城ちゃんタオルを」

八城「らにゃー」

磨夢「ん」

ポチポチ

ゆい「脱がしてもらうのは好きですか」

磨夢「ん」

ゆい「谷間がすごくえっちです。大して胸ないくせに」

磨夢「ゆいほどじゃない」

ゆい「そんな平原は多くの人を虜にしてきたのです」

磨夢「………」

八城「おたませー」

ゆい「八城ちゃん、ありがとうございます」

八城「にゃーにゃーにゃー」

ゆい「こんなところにぃ、兄さんが来ればぁ」

磨夢「わたしの部屋だから来ない」

ゆい「密室に女三人、ですかフフフ」

八城「家族二人にお客さん一人だよ」

ゆい「だからいいかげんわたしを家族と」

磨夢「じゃあ戸籍移せば」

ゆい「分かりました、お客さんでいいです」

八城「ゆいちゃんとは家族ぐるみの生活をしてるの」

ゆい「羽衣家はわたしだけですけど」

磨夢「神社捨てれば」

ゆい「そんなこと言う元気があるなら心配ないですね。八城ちゃんもう構いませんよ。部屋を出ましょう」

八城「うん、そうだね」

磨夢「………」

ゆい「何か引き止めるなりしないのですか」

磨夢「汗が」

ゆい「そうでしたね。拭いて差し上げましょう。八城ちゃん、磨夢さんに替えのシャツを」

八城「あいにゃー」

磨夢「ゆい」

ゆい「怒ってないですよ。愛嬌ある笑顔がわたしの取り柄です」

磨夢「………」

ゆい「背中いいですか」

磨夢「ん」

八城「ゆいちゃん、これでいい」

ゆい「磨夢さんに訊いてください」

八城「まみー、これでいい」

磨夢「どれも一緒だから」

ゆい「曖昧な返事です」

磨夢「………」

八城「んじゃ置いとくね」

ゆい「ありがとうございます」

八城「うん」

ゆい「どうぞ着てください」

磨夢「ん」

ゆい「家族と客、改めて見直してもらいたいものです」

磨夢「家族に近い客」

ゆい「ですよねぇ」

八城「今日お泊まりしていかない」

ゆい「お泊まりですか。寝るだけなら楽なものですが」

八城「一日いるってのは無理なの」

ゆい「難しいですねぇ。日課は済ませておきたいものです」

八城「日課かぁ」

磨夢「イツ、ナニヲ、シテイルノカ」

ゆい「ご想像にお任せします」

八城「朝ご飯食べにきてお昼ご飯食べにきてお風呂入って晩御飯」

ゆい「寝るまではなかなかいかないれす」

磨夢「朝帰りだから」

八城「あーだから今いるんだ」

ゆい「ということなので、そろそろ帰りますね。磨夢さん、お大事に」

磨夢「ん」

八城「またね」


294-10

ゆい「どうですか高砂さん、目は口ほどにものをいうのです」

高砂「しゃちょーはずいぶん早起きだな」

ゆい「ずっと潜んでいたんですね」

高砂「潜伏はたかしゃごの十八番」

ゆい「高砂さん結構おしゃべりなのに意外です」

高砂「けっこーちゅらかった。しゃちょーと喋りたかった」

ゆい「何も昨晩から潜んでいることもないでしょうに」

高砂「なんか食べたい」

ゆい「料理人は寝込んでますよ」

高砂「しょのりょーりにんを食べるのか」

ゆい「嫌ですねぇ、磨夢さんを食べるのはずっと先の話です」

高砂「しょの前に死んだら」

ゆい「そんなことありうるのですかね」

高砂「しゃちょーとしぇんしぇーがどれくらいのけーやくを交わしたのか知らないが、あまりこしゅぎたらしゃちょーが危ないぞ」

ゆい「いくら磨夢さんでも死は避けられませんか」

高砂「ふつーの人間だからな。とーよはおーいほーだが」

ゆい「薬物乱用は身体に毒です。投与も程々にお願いしますね」

高砂「事実吐いてるからな。人間はあまりにも弱い」

ゆい「磨夢さんの寿命縮めてるのは確実に高砂さんです」

高砂「美人ははくめーだからな」

ゆい「磨夢さん明日にも死にますね」

高砂「しゃちょーの予言はたいてー当たらない」

ゆい「神域でもなきゃ適当ぬかしてますよ」

高砂「いーかげんだなー」

ゆい「ねぇ高砂さん」

高砂「しょれは無理」

ゆい「まだ何も言ってませんけど」

高砂「れーぞーこにでも保管したほーがいーぞ」

ゆい「一応冷やしてるんですけどね、これ」

高砂「れーぞーことおんなじきのーのたるかー」

ゆい「磨夢さんに配慮して形を変えているだけです。当の磨夢さんはあまり気にしてないみたいですが」

高砂「しぇんしぇー以外も分かっているだろー」

ゆい「そりゃあそうなんですけど」

高砂「やしろんだって」

八城「にゃ?」

高砂「しゃちょーはエロの権化だな」

八城「そだね、ゆいちゃんは変態の極みだよ」

ゆい「そういう話はしてませんよ」

高砂「しょんな変態なしゃちょーをやしろんはどー思ってる」

八城「うーん、ゆいちゃんらしくていいと思うよ。そんなゆいちゃんが好きだもん」

高砂「かりしゅまだ、伊達にしゃちょーをやってない」

ゆい「高砂さんも似たようなものでしょう」

高砂「金づるを従えれば偉いものでもないぞ」

八城「わーい、二人共金持ちだぁ」

ゆい「高砂さんはともかく、宝くじはロマンだと思います。当たりが億単位ですからね」

八城「一生遊んで暮らせるね」

高砂「億なんてけんきゅーひよーにまわしぇばあっとゆーまだぞ」

ゆい「夢のないことを言わないで、もっと庶民的に生きてください」

高砂「たかしゃごは庶民的だ。しゃちょーと違って、じしゅいできるし。外食もしゅくないほーだ」

ゆい「まるでわたしが毎日外食しているかのようですが、わたしは磨夢さんに寄生しているだけです。ね、八城ちゃん」

八城「ゆいちゃんは寄生虫だったんだ」

高砂「しかしだやしろん、きーたことあるはずだ。それはいっぽーてきなきしぇーではない。しゃちょーとしぇんしぇーのけーやくの上で成り立ってるとゆーことを」

八城「そいや、聞いたことあるよ。けーやくがなんとかって、よくわかんないけど」

ゆい「要は磨夢さん、悪魔と契約をしたのです。生前我々の恩恵を受けますが、死後は魂とその肉を頂きます」

八城「ふぇぇ、まみー……」

ゆい「まああくまで予定なんですけど。八城ちゃんに殺されちゃ困りますし」

八城「うん、そのつもりだよ」

ゆい「ふぇぇ、やらないから殺さないでくだしゃあい」

高砂「やしろん、じゅーは使えるか。小型で持ちやしゅいものだ。こいちゅでしゃちょーの頭としんぞーを狙え。ぜつめーしゅるから」

八城「うん、使い方は……説明書付きだぁ」

ゆい「よ、読みだしちゃいましたけど」

高砂「理解しゅるのもおしょくないんだろ」

ゆい「こういうところは本当に羨ましいですよねぇ」

八城「こうこう、こうか。大体分かった。ゆいちゃん覚悟ぉ」

バスッ

ゆい「あうっ」

高砂「実弾なら死んでた」

ゆい「精度バッチリです」

八城「えへへ」

ゆい「玩具で命拾いしました」

高砂「じゅーとーほー違反でちゅかまる」

ゆい「薬事法はどうしたんですか」

高砂「しゅべてししゃくひんだ。何ができるかお楽しみ」

八城「あたし助手やるよ」

高砂「しゅべてしぇんしぇーに飲ましぇるんだ」

ゆい「死にますから」

高砂「人はいつか死ぬ」

ゆい「八城ちゃん」

八城「おっけー」

バスッ

高砂「はにゃうっ」

ゆい「高砂さんの弱点って分かんないですねぇ」

高砂「物理はしゅべてきゅーしゅーしゅる」

ゆい「うーん」

高砂「うにゅうう」

八城「おぉゆいちゃんよりのびーる」

高砂「しゃちょーじゃ駄目だ」

ゆい「にゅう」


294-11

磨夢「………」

ゆい「治りましたか」

磨夢「お蔭様で」

ゆい「あれからどうですか、霞さんとは」

磨夢「まだ会ってない。けどまた相手してもらう」

ゆい「本当に理想的ですよねぇ。お似合いです」

磨夢「ん」

ゆい「良かったら、わたしで練習しませんか」

磨夢「いいの」

ゆい「磨夢さんなら構いません」

磨夢「じゃあお風呂入ろう」

ゆい「えっちなんですから」

磨夢「いろいろ持っていこう」

ゆい「ちょっぴり怖いです」

磨夢「痛いのは最初だけだから」

ゆい「何ぶち込む気ですか。末恐ろしい人です」

磨夢「血祭りに上げてくれる」

ゆい「ひぇぇ」


295-1

ズズズッ

ちる「………」

ポルトナ「ご主人様、遊んでほしいです」

ちる「きんつばなら、ありますよ」

ポルトナ「ありがたく頂戴します」

ズズズッ

ちる「………」

ポルトナ「和菓子と紅茶は合いますね」

ちる「はい」

ブルルルン

ポルトナ「誰か来ましたね」

ちる「この時期は、あの人、しか」

コンコン

合歓「ちーるたん、居るなら返事しなぁ」

ポルトナ「わたしはどうしましょうか」

ちる「お好きに、どうぞ」

ガチャ

合歓「うぉ、ちるたん、遂にお人形になっちったの」

ポルトナ「コンニチハ、エート」

ちる「お姉ちゃん、です」

ポルトナ「オネーチャン」

合歓「どしたん、人と会わなすぎて、人形なったんか。かわいーやっちゃのぅ」

ちる「えーと、お姉ちゃん」

合歓「うは、ちるたんが二人」

ちる「わたしが、ちるです。そちらは、ポルたん。喋ります」

合歓「なぁん、馬鹿なことを」

ポルトナ「わたしはちるさんの妹です」

合歓「ちるたんの妹が人形なんて姉も知らなんだ。しかも喋りよる」

ちる「新しい、お友達です。送ったの、ネムスケ、ですよね」

合歓「ちるたん、冗談が過ぎんよ。そん人形ぁ未来の世界から来たに違いねーわ」

ポルトナ「未来からご主人様を助けるためにやってきたです」

ちる「ダメダメな、わたしを、教育、するために」

ポルトナ「はい、お姉様がそう指示されたのです」

ちる「はぁ……では、ネムスケも、未来人、ですか」

合歓「お姉ちゃんは未来人、なんか矛盾しにゃーか。わーちるたんやめろー

ナデナデ

ちる「姉を名乗る、妹が、いても、いいんです」

合歓「身体がちっちゃなってんの。ねー誰か教えてけろー」

ポルトナ「時空が歪んでますね」

ちる「ネムスケも、可愛いときが、あった。それだけの、話です」

ポルトナ「ご主人様の身体も小さくなっています」

ちる「何かの、演出、でしょう。魔女の、魔女……ってなあに」

合歓「ねむに訊かれても困るぅ」

ポルトナ「魔女ですか。ご主人様がたまに口にする。彼女の存在がそこにあるなら」

高砂「掛けたたかしゃごも頭が痛くなる」

ポルトナ「出ましたか、魔女。ご主人様とお姉様に何をやったのですか」

高砂「まーまー怒鳴るにゃ。ちょっとした実験だ。にんぎょーはたいしょーがい、しぇんとーりょくのない玩具か」

ポルトナ「何を言っているんですか。二人を戻してください」

高砂「にんぎょーは、まほーを知っているか。まほーはいーもんだ。ヒトを思うままに動かしぇる。くしゅりもどーよー、しょれにちゅーどくしぇーが付与しゅることで結果どーなるかも知らずにヒトはしょれをほっしゅる。よくぼーを抑えるしゅべがないからだ」

ポルトナ「それがどうしたんですか」

高砂「まだ分からないか。たかしゃごはにんぎょーを仲間にしゃしょっている。ちょーじんてきなかのーしぇーを感じる。こっちに来ないか」

ポルトナ「何を言ってるのか分かりませんが、わたしはご主人様に付き従います。ヒトの命は短いですが、せめてその間はご主人様に尽くしたいのです」

高砂「しょーか、残念だな。ヒトはいつか滅ぶのに、そのヒトに仕えたいとは愚かなものだ。これたかしゃごのでんわばんごー。べちゅに本件じゃなくても構わない。まずはお友達から始めよー。ではしつれーしゅる」

ポルトナ「変な人です」

ちる「わぁ、かわいい、にんぎょぉ、です」

合歓「ネムにもさわらせて」

ポルトナ「ムギュウ」

ちる「おきがえ、させたいです。おふく、作ります」

合歓「かわいいおふくがいい。あっその前におふろいっしょにはいりたいな」

ちる「さんせー。おふろ、入りましょう」

ポルトナ(もう好きにしてください)


295-2

prrr

ポルトナ「魔女さぁん」

高砂「こっち来る気になったか」

ポルトナ「違いますよ、時空が歪んだままです」

高砂「あーわしゅれてた」

ポルトナ「実験だかなんだか知りませんが、あんまりです。お蔭でほつれてきてます」

高砂「新しい肉体にうちゅるべきだ。ともえちゃん4歳があるんだが」

ポルトナ「人形が喋るっておかしいですか」

高砂「きょーみぶかいな。かいぼーしてみたい」

ポルトナ「かか解剖だなんて、恐ろしい」

高砂「脱いだらどーなる」

ポルトナ「裸ですけど」

高砂「ご主人に風呂連れてってもらえばいー」

ポルトナ「自分の生体が分からないので遠慮してます」

高砂「にんぎょーだ、なんとかなる」

ポルトナ「時空戻してください」

高砂「実はまほーじゃない。時計の裏を見てくれ」

ポルトナ「はい……これはお札ですか。呪術ですね」

高砂「じゅじゅちゅちゅーのにゃーて、結界だ。このげんしょーが起きてるのもここだけの話」

ポルトナ「で、どうするんですか。はがすんですか」

高砂「はがしゅより焼いたほーがいー」

ポルトナ「焼くって」

高砂「火はちゅかったことないか」

ポルトナ「ありません」

高砂「よし分かった。ちょっと待ってろ」

ポルトナ「はい」


295-3

高砂「待たしぇたな」

ゆい「こんにちは」

ポルトナ「巫女さんですね」

ゆい「はい、そうですけど」

高砂「しゃちょー、へーわてきなやり方であれを解除してくれ」

ゆい「ああいった類のものにハマってたのは一昔前ですから」

高砂「しゃちょーなら行ける」

ポルトナ「頑張ってください」

ゆい「といっても普通に剥がすんですが」

ベリ

ゆい「んっ」

ポルトナ「うぁっ、眩しい」

ゆい「くっ、くく……」

ガシィッ

高砂「しゃちょーが飲み込まれる」

ゆい「も、ものすごい魔力です」

高砂「何をしてるんだにんぎょー、早く手を」

ポルトナ「あっ、はい」

ガシィッ

ゆい「封印っ」

シュー

高砂「やったか」

ゆい「最善は尽くしました」

ポルトナ「ぽるたんわかんない」

高砂「まーしょーなるか」

ゆい「どうするんですかこれ」

高砂「持ち帰る」

ゆい「せめてちるさんに許可を頂いてから」

高砂「一晩でかえしゅ」

ゆい「あっ、いけないです。高砂さん」

ちる「んっ、あれ」

合歓「寝てたのな」

ちる「もう一休み、したいです」

合歓「だのぅ」

zzz

ゆい「………」


295-4

高砂「ふー」

ポルトナ「………」

高砂「物言わぬにんぎょーか」

ポルトナ「………」

高砂「喋ったらどーだ」

ポルトナ「わたしを、どうするつもりですか」

高砂「治ったから帰れ。帰れるものならな」

ポルトナ「鬼、悪魔、ひとでなし」

高砂「たかしゃごは魔女だ」

ポルトナ「だからってこんなことしていいとでも思っているんですか」

高砂「人みなびょーどーにしゃちを享け、またびょーどーにばちゅを受けりゅ。神の下にあって、特別な存在はない。しょれゆえに魔女の異端視は矛盾している。まーしょしぇんしゅーどーしは人間だ。神の域にたっしゅることはない」

ポルトナ「魔女も人間だと」

高砂「しゅべからくしょーあるべきだ。ただ人間は愚かだ。魔力をかいほーできない」

ポルトナ「まあ普通の人間ですから」

高砂「ただ、期待できる人間もいる。誰もが秘めたる力であるから」

ポルトナ「同志が欲しいんですか。お断りします」

高砂「にんぎょーはしょの人間よりぼーだいな魔力を秘めている」

ポルトナ「魔力があろうとなかろうとわたしはあなたみたいな野蛮な人の仲間には入りたくないです」

高砂「まほーだけじゃないぞ。こういう秘薬もちゅくれる」

ポルトナ「ん……」

ゴクン

ポルトナ「……ヒック」

高砂「しゃっくり薬だ。百回しゃっくりすると死ぬ」

ポルトナ「あっ、ちょっと待ってください魔女ヒック」

高砂「魔女たかしゃごだ」

ポルトナ「な、何回まで続くんでヒック」

高砂「無論死ぬまで」

ポルトナ「そんなぁ」

高砂「じゃー気をちゅけて帰るんだ」

ポルトナ「そんな無責任な」

高砂「ほらほら帰った帰った」

ポルトナ「ふぇぇん」

高砂「さてと」

prrr

ガチャ

高砂「たかしゃごだ」

玄那「上井というものだが」

高砂「知らない人だ。切りゅ」

玄那「待て待て、噂の魔女か」

高砂「どこで噂しゃれてるか分からんがたかしゃごは魔女だぞ」

玄那「その魔女にお願いなんだが」

高砂「たかしゃごもゆーめーになったもんだな」

玄那「その、なんだ、胸を大きくする薬があるということだが」

高砂「ペチャパイか」

玄那「悔しいことにな」

高砂「胸を大きくしたいのか」

玄那「女としてひんぬーは恥ずかしい」

高砂「悩める年頃だな」

玄那「友人がきょぬーだと劣等感を覚えるものだからな」

高砂「きょぬーなんて珍しい。周りはみんなひんぬー」

玄那「そら周りが幼女しか居ないからだろ」

高砂「たかしゃごの年が分かるのか」

玄那「声で大体分かる」

高砂「しょーゆー客はがくしぇーか」

玄那「ご名答、学生人口が多いからな」

高砂「がっこがあればがくしぇーが固まるからにゃあ」

玄那「魔女も学校に行ってたのか」

高砂「昔行ってたけどやめた」

玄那「魔法学校か」

高砂「がっこが腐っていたから何もいい思い出はないぞ」

玄那「普通の人間が居なきゃまともなわけないか」

高砂「ははは、あいつらはみんな頭がおかしーからな」

玄那「逃げるのが普通だったのか」

高砂「いや、みんなしぇんのーしゃれてた。あれはしゅーきょーだ。たかしゃごがまともだったんだ」

玄那「洗脳教育か」

高砂「ちゅーたいした後はこうして山中に籠もっている」

玄那「金とかは大丈夫なのか」

高砂「無駄なのに、まほーのけんきゅーをする機関が支援してくれてる。まー奴らが居なくてもくしゅりの販売で何とかなる」

玄那「羨ましい。わたしもそういう仕事をしてみたい」

高砂「機関が動くから助手はひつよーないが」

玄那「色々面倒見がいいんだな」

高砂「りよーしゃれてるのに面白いやちゅらだよ。学者の考えることは分からない」

玄那「調べられることは嫌じゃないのか」

高砂「人間には絶対に理解できないからへーきだ」

玄那「魔法は分かるやつにしか分からんというのか」

高砂「しょもしょも原理がじょーじんにはいみふめーだからな。一度ちゅかってみないと分からない」

玄那「例えば火を出してみるとか」

高砂「うちが燃える。町が燃える。しぇかいが燃える」

玄那「火力自重しろい」

高砂「人を焼くぐらいがちょーどいい」

玄那「火葬か」

高砂「でもしゅこし物足りない」

玄那「やめて、町は燃やさないでくれ」

高砂「決してとーい未来ではない」

玄那「ん?」

高砂「しゃちょーの占いはよく当たるからな」

玄那「占いなぁ」

高砂「よもしゅえだ」

玄那「きょぬーになりたい」

高砂「ひんぬーで構わない。たかしゃごだってしょーなんだから」

玄那「いいから薬送って」

高砂「じゅみょーが縮むぞ」

玄那「どんな代償だよ」

高砂「夢を見るほど高くちゅくものだ」

玄那「夢か、これは夢なのか」

高砂「しょれはたかしゃごにも分からない」

玄那「その薬も幻想に過ぎなかったということか。良いだろう、今回は手を退こう。でももし完成したらよろしくな」

高砂「ちゅくるか分からないが、りょーかい」

玄那「じゃあな、楽しかったよ。それでは失礼する」

高砂「うん」

ガチャ、ツー、ツー

高砂「ふあー」


296-1

ゆい「悪い夢ですね」

高砂「こっちもじゅーぶんしゅごしやしゅいがな」

ゆい「未だに安否が確認できないんですが」

高砂「過去は大海の塵に消えたのだ。今魔界を生きよー」

ゆい「はぁ」

高砂「ましゅたーのみしぇ行くぞ。何か食べないと身体に悪い」

ゆい「この身体朽ちてもわたしは滅ばないんですよ」

高砂「めちゃめちゃにしゅるぞ」

ゆい「えぇ、めちゃめちゃにしてください。四肢切断して和室にお飾りください。そして勝利を祈願するのです」

高砂「よし分かった。ちょっと痛むぞ」

ゆい「はい……つっ、な、なにを」

高砂「今までのしゃちょーに直したまでさ」

ゆい「人のにおいですか」

高砂「味が分かればにおいも分かる。いつかしょのもくひょーに辿りちゅくんじにゃいか」

ゆい「ありがとうございます。ただ、また飢えに苦しむ羽目になります」

高砂「たかしゃごが見えるか」

ゆい「高砂さんは人間と認識しません」

高砂「かなしーものだ」

ゆい「お腹空きました。お肉ください」

高砂「たかしゃごは美味くないぞ。骨の髄まで腐ってる」

ゆい「仕方ないですねぇ、他の生き残りを探しますか」

高砂「ましゅたーや職人は分かるか」

ゆい「大丈夫ですよ。肉になってからで構いません」

高砂「活け作りとか」

ゆい「馬刺しみたいにしたら美味しそうです」

高砂「しかしたかしゃごは焼くことしかできない」

ゆい「高砂さん自炊してるんで料理得意ですよね」

高砂「鍋はよくしゅる。何でも突っ込めるから」

ゆい「どんな部位でも突っ込んで構わないでしょう」

高砂「しゃちょーと闇鍋したい」

ゆい「高砂さんヒトはいける口ですか」

高砂「食べたことはないが多分いける」

ゆい「世の中食わず嫌いばかりで困ります。しかし高砂さんならきっとその味を理解できるでしょう」

高砂「美味いかは知らないが」

ゆい「大将の店が恋しいです」

高砂「むむ」


296-2

マスター「いらっしゃーい」

ゆい「人肉ステーキ一つ」

マスター「ヒトなんてうちらしかおらんやろ」

ゆい「見たんですよ。怪しげな研究員を」

高砂「あれは確かうちの組織の一人だ」

ゆい「よく生きてましたねぇ」

高砂「この袋の中にしょのとき焼いた肉が」

ゆい「高砂さん、流石です。でも腐って」

高砂「れいとーくらいしてる」

ゆい「それではお願いしますね、マスター」

マスター「流石にヒトは無理やなぁ」

ゆい「札束出しますから」

マスター「円とか使えんやろ」

グタツナ「使えるぞ」

高砂「まおー久しぶり」

グタツナ「最近忙しかったもんでなかなか会えなかったが」

マスター「あ、魔王様何にしはりますか」

グタツナ「巫女のおすすめで」

ゆい「人肉ステーキです」

マスター「いやないから」

グタツナ「じゃあそれで」

マスター「用意します」

高砂「ほれ」

ドサッ

マスター「ゲーッ」

ゆい「飲食店で吐いちゃいけませんよ」

ルイ「おはようございます」

マスター「る、るーちゃん、ちょうど良かった、それを」

ルイ「なあにこれ」

ゆい「人肉です」

ルイ「にんにくってこんなだっけ」

高砂「しゅりちゅぶしぇばいー」

ルイ「うぃー」

ゆい「ちょっと待ってください」

グタツナ「ステーキはまだか」

ルイ「マスターなら作れるんですが」

マスター「うちは無理ぃ」

土山「やあやあ諸君。おお魔王様もいらっしゃったか」

グタツナ「おお戦友よ、久しいな。ずっと魔界にいたのか」

土山「ああ、先日このこたちに会ったんだが、人間界は壊滅的な被害を受けたとか」

グタツナ「原因は隕石が有力だな。かつて恐竜たちが絶滅したのと同じように人間は大半が絶滅したのだ。この者たちはその生き残り」

ゆい「誰かが結界を張っていてくれたので無事助かりました」

高砂「なぜたかしゃごの方を向く」

土山「魔女ならそれぐらいできるだろと嬢ちゃんは言いたいんだろ」

高砂「たかしゃごは魔界門かいほーぐらいしかできない」

土山「それでも十分すげーじゃん」

グタツナ「魔女は人間界の神より遣わされた使者だったのだ」

高砂「何が神だ、自然の実体化でしかないくしぇに」

ゆい「高砂さんはともかく人間に近しい存在が必要だったんですよ。人間は神の子である。その神は万のものにおける象徴である、と」

高砂「たいよーがあるのに、それを基にした神がしょんじゃいしゅるのか」

ゆい「太陽は万物の長です。我ら神道では最高神天照大神。仏教徒からは大日如来として親しまれ、ギリシア神話においては太陽神アポロンでしたっけ、るーちゃん」

ルイ「うぃー、アポロンはゼウスの息子だから相当偉いよ」

高砂「とまぁ人間共はこんな感じだが」

土山「魔女も人間じゃないのか」

高砂「人間なんて腐った生き物とはどーいつししゃれたくにゃい」

土山「何そんなに恨んでんだか」

ゆい「実はかくかくしかじかで」

土山「ああ、一度そんな有様を見てればこうなるか」

高砂「魔女はじゆーに生きるべきだ。あんな箱庭で生きていてては物足りない。じゆーにまほーをちゅかい、じゆーにしぇーかちゅをしゅるのだ」

ゆい「自由の追求は革命を引き起こすのです」

高砂「まーふつーのしぇーかちゅをしてたわけだが」

土山「普通ねぇ」

ゆい「怪しい薬屋さんが普通ですか」

高砂「あまりおーやけにはしてにゃいからな」

ゆい「あんなの公にしたらえらい話ですけど」


29-3

マスター「にゃむ」

ルイ「あ、マスター、起きた」

マスター「こっちか」

ルイ「なんかもうどっちか分かんないよね」

マスター「こんな思いまでして生き残った価値はあったんかね」

ルイ「魔族のみんなは良いお客さんでしょ」

マスター「まぁ人と比べりゃあマシかな」

ルイ「だんだんゆいや魔女に似てきた」

マスター「あんなん影響されんわけないやろ」

ルイ「二人のこと、好き」

マスター「別に嫌いやないけど」

ルイ「じゃあわたしは」

マスター「もちろんるーちゃんは大好き」

ルイ「♪」

マスター「さてと、もうひとがんばりしよかな。あれ、なんでうち寝てたんやっけ」

ルイ「知らなーい」


296-4

高砂「で、あのやくちゅーが死んだげーいんってのは」

マスター「おまたせしました。まあ魔女これでも食べな」

高砂「得体の知れない肉だ。しゃちょーにあげよ」

ゆい「まさかマスター、本当にやってくれたんですか」

マスター「え、何の話。うちはそこにあった材料をつこーたまでなんやけど」

ゆい「ありがとうございます、いただきます」

高砂「ましゅたーもまた一歩こっちに来たとゆーことか」

マスター「?何のこっちゃ分からん」

ゆい「ほうれふね」

土山「加工技術だな」

ゆい「美味そうに見えればみんな同じですよねぇ」


297

パチリ

ゆい「戻ってきましたね」

高砂「おはよー、向こうでも変わってないな」

ゆい「お互い様です」

高砂「ちょっとしつれーしゅる」

ゆい「きゃっ、高砂さん、どこ触って」

ドックンドックン

高砂「生きているな」

ゆい「そりゃあ生きていますよ。今喋っていますし」

高砂「むこーの記憶はあるか」

ゆい「ありますけど」

高砂「しょーじきどっちが好き」

ゆい「そりゃあこっちですね。愛する人がいますから」

高砂「愛する対象を失えばしょの愛はしぇーりつしない」

ゆい「まさか兄さんを」

高砂「たかしゃごは犯罪者じゃない、魔女だ。どこかのしぇんしぇーとは違ふ」

ゆい「磨夢さんは犯罪者じゃありませんよ。秩序を正しているだけなのです」

高砂「とーたたいしょーにあるやつは片っ端からか」

ゆい「はい、そうすることにより泰平の世の中が維持されるのです」

高砂「しょーだな。ヒトをみにゃごろしにしゅればちきゅーは長生きしゅるな」

ゆい「ヒトは頭が良いので大規模な自然災害でも起こらない限り全滅しないのです」

高砂「預言者によるととーい未来にしょの日が訪れるらしー」

ゆい「そりゃああの日はいつかは来ます」

高砂「しょりゃーしょのときににゃらな分からんしゃ」

ゆい「ですねぇ。一体何が起こるのでしょう」

高砂「20XX年、しゃちょーが子を宿しゅ。一体誰が」

ゆい「神以外に考えられません」

高砂「ふーん」

ゆい「人間は神の子です。それゆえに高い知能を誇るのです」

高砂「美味しいのか」

ゆい「不味かったら人間だなんて認めませんよ」

高砂「食わないと確かめられないか」

ゆい「食文化を知るからにはまず牧場からです。次に工場、加工されたものが店舗に出回り食卓に出るのです」

高砂「そこまでしっかりやってるものか」

ゆい「わたし自身そこまで丁寧なものは見たことありませんね。あくまで聞いた話なんで」

高砂「知ったかは駄目だ。げんばけんしょーだ」

ゆい「高砂さんなら知ってそうです」

高砂「たかしゃごは知らないが、このれんらくしゃきで分かりゅ人はいるか」

ゆい「わたしの知ってる人なんてそういませんよ。まして外の人なんて……あ」

高砂「ん、いたか」

ゆい「いえ、なんでもないです」

高砂「これだけ名前がありゅんだ。知ってる名前があってもおかひくにゃい」

ゆい「何をやってる方ですか」

高砂「たかしゃごを研究しているれんちゅーだ。まじゅちゅけんきゅーなんちゃら。昔から頭のおかしーやちゅらだが、しゃちょーの話も知ってるやちゅがいるかもと思ったが」

ゆい「見ず知らずの人間など知ってるわけありませんよ」

高砂「これだから人見知りはやめらんない」

ゆい「むぅ、あまり人と会ってないだけですから」

高砂「しょれならたかしゃごも同じだ。基本的にしゃちょーとしか会ってない」

ゆい「その機関の人たちと面識は」

高砂「ない。面会はお断りしてーる」

ゆい「難しい付き合いですね」

高砂「まじゅちゅとはみしぇるものじゃないからな」

ゆい「え」

高砂「しぇーかつに役立てるものだ」

ゆい「珍しくまともですね」

高砂「火は便利だ」

ゆい「焼くのに使えますからね」

高砂「たかしゃごのほのーで焼けないものはにゃいっ」

ゆい「是非うち専属炎の料理人になってください」

高砂「焼き加減はいつもうぇるだーん」

ゆい「ふへぇん。高砂さんのいじわるぅ」

高砂「しゃちょーもじしゅいしにゃいと」

ゆい「神社ではあらゆるものが浄められてしまうのです。穢れを払い、ということは料理もうまく」

高砂「ならにゃい」

ゆい「そもそも厨房以前に台所がないですから」

高砂「本しかない」

ゆい「まぁ寝室兼物置ですからねぇ」

高砂「散らかってるよりはましだ」

ゆい「ゴミやホコリはうるさいのです」

高砂「本いっしゃついっしゃつてーれしてしょー」

ゆい「流石にそこまではしてないです。全部を読んでいるわけじゃないですから」

高砂「いっしゃつを読み込むことが大事だ」

ゆい「魔法覚えたりしないです。普通の本です」

高砂「得るものがにゃいな」

ゆい「知識を得られればそれで十分です」

高砂「ふーん」

ゆい「例えばこの美味しいヒトの食べ方という本」

高砂「レシピかな」

ゆい「大体レシピですねぇ。後解体方法とか書いてます。ほら図解で分かりやすいですよ」

高砂「これならたかしゃごにもしゃばけしょーだ」

ゆい「自由に持ってってくれて構わないですよ」

高砂「いや、もー覚えた」

ゆい「保存方法もあります」

高砂「これはいーな。借りてく」

ゆい「どうぞどうぞ」

高砂「まーしぇんしぇーがいるから、たかしゃごが覚えたところでだが」

ゆい「職人が一人でも増えることはありがたいことです」

高砂「自分でちゅくって自分で食え」

ゆい「料理だけはどうしてもできないのです」

高砂「人任しぇだにゃー」

ゆい「なんと言われようと構いません。自覚してますから」

高砂「しぇんしぇーが死んだら」

ゆい「世も末ですね」

高砂「ただの人間だぞ」

ゆい「美味しそうだから期待するんです」

高砂「肥えてもいない」

ゆい「磨夢さんくらいがちょうどいいです」

高砂「食べてみなきゃ分からない」

ゆい「大丈夫です。磨夢さんは人間です」

高砂「たかしゃごがかいぼーしてしゃちょーが食べる」

ゆい「完璧な計画ですね」

高砂「たましーが欲しい」

ゆい「磨夢さんならきっとくれますよ」

高砂「しぇんしぇーが死にしょーになったら言ってくれ。取りにくるから」

ゆい「分かりました」


298-1

磨夢「………」

八城「まみー、おはよ」

磨夢「おはよ」

八城「ぎうにうだ。ありがたふ」

磨夢「ん」

八城「さんちちょくそーだって」

磨夢「北の大地からお届け」

八城「甘くておいし」

磨夢「そりゃ良かった」

八城「まみー飲まないの」

磨夢「わたしはこれで十分」

八城「にゃあ」

磨夢「ん」

八城「うーん♪」

磨夢「………」

レオポン「にゃあ」

八城「おはレオポン。お散歩かな」

レオポン「なーう」

八城「ひらけーごま。うわもう明るい」

レオポン「にゃーう」

八城「いってらっしゃーい」

ゆい「おは」

バタム

八城「あ、間違えた」

ガチャ

ゆい「ひどいですよ。八城ちゃん」

八城「にゃはは、わるわる」

ゆい「レオポン、どこに行くんですか」

八城「さああたしにも分からんねぇ」

ゆい「海浜公園ですかねぇ」

八城「そっち行ってみようかな」

ゆい「いってらっし」

八城「ゆいちゃん、帽子」

ゆい「ああ、ありがとうございます」

八城「ゆいちゃん、麦わらがよく似合うにゃ」

ゆい「八城ちゃん、キャップが似合います」

八城「えへへ」

ゆい「ではわたしはこれで」

八城「めっ、海行くの、ゆいちゃん」

ゆい「海ですか。兄さんと海」

八城「海だね」

ゆい「可哀想な兄さん」

八城「お兄ちゃんならいつでも会えるよ」

ゆい「兄さんに会いたいです兄さんとお風呂入りたいです兄さんと一緒に寝たいです」

八城「にゃあああたしもそうしたい」

ゆい「久しぶりにお風呂入りたいです」

八城「海じゃだめ」

ゆい「冷たいじゃないですか」

八城「早く夏になあれ」

ゆい「海開きはまだですねぇ」

八城「あの島まで行ってみたいな」

ゆい「あの島は曰く付きだからだめですよ」

八城「じゃあその隣の島」

ゆい「無人島です」

八城「でも住んでそう」

ゆい「ああ最近一人漂流したみたいですね」

八城「あっ魔女さんだ」

ゆい「あれは見事に墜落してます」

八城「寝起きかな」

ゆい「魔力で動かしてるんじゃないですか」

八城「知んないや」

高砂「転移がおしょければ死んでた」

ゆい「ぼっろぼろじゃないですか」

八城「おはよう魔女さん」

高砂「おはようやしろん。潮干狩り」

ゆい「まだ海開きしてませんよ」

高砂「こんなにあちゅいのに」

八城「レオポン発見」

レオポン「にゃあ」

猫2「にぃ」

八城「お友達かな」

高砂「そればんとーんとこの野良猫だぞ」

ゆい「あくまで野良猫ですか」

高砂「猫より犬がしゅきにゃんだと」

八城「砂浜ってねこじゃらしないの」

ゆい「魔女さん、ひとっ飛びお願いします」

高砂「しゃっきの見てただろー。きょーは船で帰る」

ゆい「川上るの大変そうですね」

高砂「やっぱやめた。しゃちょーほーき貸して」

ゆい「その辺に落ちてますよ」

八城「あったよ」

高砂「木の枝か」

ゆい「小さいですね。後汚いです」

高砂「やしろん、これちっちゃくてダメだ」

八城「ダメなの」

高砂「もーちょい長さがほし……ん」

ズガーン

八城「あ、無人島が」

ザァ

ゆい「やだ、雨です」

八城「にゃあああ、雨宿りいい」

高砂「出たか」

邪神ガノアーク「力が欲しいか」

高砂「箒が欲しい」

ガノアーク「悪魔の箒をやろう」

高砂「ありがとー」

ガノアーク「代償として生き血を頂こう」

ザクッ

高砂「ぐっ」

ガノアーク「では、さらばだ」

サァッ

八城「雨やんだ」

ゆい「晴れましたね。あっ、高砂さん、大丈夫ですか」

高砂「なんともにゃい、かしゅりきじゅだ」

ゆい「そうは見えませんけど」

八城「魔女さん、血だらだらー」

高砂「鈍感を植えちゅけてしゃっていくのは悪魔のじょーとーしゅだんだ」

ゆい「麻酔もなしに、ですか」

高砂「しょーじき痛い」

ゆい「その肉体では限度がありますよ」

高砂「肉体かいぞーか」

八城「魔女さん、ムキムキになるの」

高砂「しゃちょーがムキムキになる。はい、しゃちょー」

ゆい「なんですかこのプロテイン」

高砂「しゃちょーがムキムキになる薬だ。名付けてシャチョテーン、しゃちょーしぇんよーだ」

八城「じゃああたしが飲んでも平気かぁ」

高砂「しゃちょー以外が飲んだらただのドクペだ」

ゆい「じゃあ八城ちゃんに飲んでほしいです」

八城「やふー、ドクペだー」

高砂「なぜしゃちょーが飲まないのか」

ゆい「わたしは一生もやしで構わないです」

高砂「鶏皮か」

八城「揚げたら美味しいやつだね」

高砂「しゃちょーを揚げたらどんな味がしゅるか」

ゆい「食べるのは好きですが、食べられることは望みません」

高砂「食べはしない。揚げるだけだ」

ゆい「じゃあ誰が食べるんです」

高砂「しゃちょーがしゃちょー自身を喰らうのだ」

八城「そんな手があったんだ」

ゆい「いやどうしろって話ですけど」

高砂「人くーのってしゃちょーぐらいだしにゃー」

八城「にゃー、あっレオポン釣れてるかにゃ」

レオポン「にゃ」

高砂「ありゃー海のにゃーだ」

ゆい「ウミネコですか」

ウミネコ「ミャアミャア」

高砂「あれに乗って帰る」

ゆい「なかなか下りてきませんけど」

高砂「焼き鳥にしてくれよー」

ゆい「待ってください。大惨事になりかねませんよ」

高砂「群れとゆーのは厄介だー」

八城「帰ってっちゃった」

高砂「魚いないからだ」

ゆい「高砂さん魚食べませんよね」

高砂「海来ないから食べない」

ゆい「まあうちは大して大きい港でもないんですが」

八城「お兄ちゃんの実家は船とかすごかったよ」

ゆい「きっと比べもんにゃならんですね」

高砂「こっちは単にじんこーがしゅくない」

ゆい「もっと人が欲しいです」

高砂「ぼくじょーへ行け」

ゆい「人口密度高そうですね」

八城「搾り取られちゃうの」

ゆい「牛やヤギじゃないですよ。ヒトです。肉専用です。十分に肥やすのです」

高砂「食っちゃ寝繰り返しゃ太りゅ」

ゆい「後美味しい肉をたんまりと食わせるのです。魚じゃなくて肉です」

高砂「たかしゃごはしゃいしょくしゅぎだ」

八城「魔女さんお肉食べないの」高砂「肉はカラスにくれてやれ」

ゆい「肉は食べてもわたしのようになりますから」

高砂「えいよーが偏ってる」

八城「ゆいちゃんお野菜も食べてるよ」

ゆい「好き嫌いはしません」

高砂「好きにいっぺんとー」

ゆい「嫌いなものに寄り添う必要はないのです」

八城「ゆいちゃん、あたしのこと好き」

ゆい「もちろんです。八城ちゃんも高砂さんもわたしの親友です」

高砂「しゃちょー友達しゅくにゃいからな」

ゆい「あーたに言われたくないでつ」

八城「あたしも友達すくなーい」

高砂「こっけーだな。実にこっけーだ」

八城「オエオッオウウウ」

ゆい「五時です」

高砂「みんな早起きだな」

八城「にゃー、誰もいないよ」

ゆい「朝っぱらから海で騒いでる人なんていませんよ」

高砂「一人じゃなくて良かったな」

ゆい「みんながいますから」

八城「おしまい」

高砂「めでたしめでたし」

ゆい「ふぇぇん」

八城「海にもお友達いるかな」

高砂「邪神来たけど帰ったぞ」

ゆい「何しにきたんですか邪神」

高砂「ほーきくれた。今まで埋めてたけど」

八城「お城の下からほうきが発掘されたよ」

ゆい「ほうきよりいきなりできた砂のお城に驚きます」

八城「えっ、さっきまで作ってたけど」

高砂「しゃちょー何で気づかなかったんだ」

ゆい「あ、朝日が綺麗ですね」

八城「これまだ高くなるかな」

高砂「にゃみにしゃらわれる」

八城「にゃあ、お城さんはそういう運命なの」

ゆい「いい天気ですけどね」

高砂「しゃちょーお腹しゅいた」

八城「ゆいちゃんお腹空いた」

ゆい「そろそろ戻りますか」

八城「おいでレオポン」

レオポン「なーおぅ」


298-2

八城「帰ってきたよん」

磨夢「おかえり」

八城「さーたあんだぎ食う」

磨夢「ん」

ゆい「さんぴん茶いただきます」

磨夢「ん」

高砂「あいしゅ」

磨夢「箱アイスなら冷凍庫」

高砂「ほーむりゃんうちゅ」

八城「あたしもー」

ゆい「これはジャスミンです」

高砂「らみゅにぇうみゃひ」

八城「つぶつぶいいね」

ゆい「あんだぎは美味しいですか」

八城「うん、ほいひいよ」

高砂「だぶるぷれー」

磨夢「それは残念」

八城「二塁打出た」

高砂「しゃちょー、頼む」

ゆい「ははは、運なんてとうの昔に使い切りましたよ」

磨夢「サマージャンボがもうすぐ」

ゆい「今年も当ててきますかね」

八城「またお金持ちになるね」

高砂「きゃははははは、たかしゃごが貰ってやろー」

ゆい「一瞬で溶けちゃいますよね、それ」

高砂「あらゆるとーしに無駄はないのだ」

八城「お菓子いっぱい食べたいにゃあ」

高砂「美味いお菓子をかいはちゅしよー」

八城「やたー」

ゆい「当たればの話ですけどね」

高砂「何ならとーししてもいー」

ゆい「イカサマはいけません。自分の運に頼るのです」

高砂「期待しているからな」

ゆい「人任せですねぇ」

八城「あたしも当ててみたい。まみー、おこづかいちょーだい」

磨夢「賭け事は大人になってから」

ゆい「うちのおみくじで我慢してください」

八城「ふぇぇ」

高砂「しゃちょーも無理がある」

ゆい「ですかねぇ」

八城「ということでゆいちゃん頑張ってね」

ゆい「頑張るも何も引くだけですから」

高砂「当たりしかないよーに仕組んでおこー」

ゆい「だからイカサマはいけませんって。そんなのしたら誰でもいけちゃいますよ」

高砂「しゃちょーが外したばーいの保険だ」

ゆい「当たりがあるなら外しませんからね」

磨夢「すごい自信」

ゆい「これだけ言っておかないと高砂さんが」

高砂「タネも仕掛けもありましぇん」

八城「ほんとだ、当たりしか出ない」

磨夢「………」

ゆい「外したときが怖いです」

磨夢「そう当たることもないかと」

ゆい「磨夢さんは優しいですね。そういうところが好きです」

磨夢「嫁がいるからごめんなさい」

ゆい「はは、冗談です」


299-1

高砂「やーやーばんだいよー」

井筒「一人風呂かね」

高砂「しゃちょー連れてくるか」

井筒「いや、一緒じゃないなんて珍しいからね。なんとなく不思議に思うただけさ」

高砂「たかしゃごは一人慣れしてるほうだが」

井筒「ロモちゃんもそうじゃないかね」

高砂「友達いないからな」

井筒「他人のこと言えたもんじゃないよ。で、一人だね」

高砂「これで頼む」

井筒「桁を間違えてますよお客さん」

高砂「こーがくな取引ではないのか」

井筒「うちも大衆浴場だからね。みんなの手に届く値段でやってるさ」

高砂「りょーがえ頼む」

井筒「ちょっと難しいねぇ。シャゴちゃん、財布は」

高砂「ちょっとしゃちょーから奪ってくる」

井筒「いってらっしゃーい、はは。あっ、いらっしゃい」

ルイ「魔女さんとは仲良いの」

井筒「仲良いも何も幼なじみだかんね」

ルイ「ふぅん」


299-2

高砂「連れてきた」

ゆい「三回吐きました」

井筒「たまには下にいる人も考えなよ」

ゆい「寝起きでしたし、仕方ないですよ」

高砂「吐いた後の風呂か」

井筒「うちでは吐かないでほしいの」

ゆい「普段から吐く人間じゃないですけど」

高砂「しゃちょー、小切手じゃだめらしー」

ゆい「当たり前ですよ。どこに小切手で大衆浴場に入る人がいますか」

井筒「ロモちゃんは庶民的よね」

ゆい「わたしは庶民の代表ですからね。料理はできませんが、買い物はできます」

高砂「それは嘘だな。しゃちょーを見る人は少ないはずだ」

ゆい「行動範囲は狭いですが、たまには足を伸ばします」

井筒「遠路はるばるどうも、お二方」

高砂「しゃちょーりょーがえして」

ゆい「奪われたら大変ですよ」

高砂「使うにはあんしょーばんごーがひつよーだ。後、顔にんしょーにけつえきにんしょーなどもどーじに行う」

ゆい「金として利用するのも大変なんですね。はい、こども二枚です」

井筒「どうもね」


299-3

高砂「しゃちょー、トイレ行きたい」

ゆい「行けばいいでしょう」

高砂「冷たいにゃあ」

ゆい「さてと、いますよね」

幽霊「見えちゃ仕方ないな。へっへ」

ゆい「ここは女湯ですよ、お兄さん」

幽霊「わーってらぁ。だからこそいるんだが」

ゆい「若い人が多くて良かったですね」

幽霊「若いのとババアと半々くらいだな。君たちのような幼女は珍しい」

ゆい「やはり学生さんが多いんですね」

幽霊「オレも圭道の人間だったからな。知ってるさ」

ゆい「自殺ですね」

幽霊「正解だ。住みやすく死にやすい町だよ」

ゆい「むぅ、年々自殺者が増えているんですよ。これはゆゆしき事態です」

幽霊「しまいにゃ人がいなくなるのか。それは大袈裟に考えすぎだぜ」

ゆい「悩みがあるなら相談してほしかったです」

幽霊「君が誰か知らんな」

ゆい「わたしもあなたがわかりません」

高砂「しゃちょー、戻ったぞぉ」

ゆい「それではお風呂入ってきますね」

幽霊「ついていっていいか」

ゆい「女湯ですよ」

幽霊「見るだけでいい。黙っておくから」

ゆい「それはそれで不気味です」

高砂「なんだゆーれーか、焼き払ってやる」

ゆい「独り言です。高砂さんは先に行っててください」

高砂「つれてくんじゃにゃーよ」

ガララッ

ゆい「ではわたしも行ってきますね」

幽霊「お、オレはここにいるよ」

ゆい「分かればいいのです」

ガララッ

高砂「久しぶりだな。誰かいしょー」

ゆい「るーちゃんがいますね」

高砂「職人はきれーだなー」

ルイ「ん、ゆいを連れてきたんだ」

高砂「たかしゃごにはかへーけーざいがわからない」

ゆい「日本では日本円を使えばいい、それだけの話です」

ルイ「フランスはルーヴルだよ」

高砂「国によって違うのか。ふくじゃちゅだにゃあ」

ゆい「とりあえず今は円だけでいいと思います。通貨と紙幣があるんですよ」

高砂「ふーん」

ルイ「ふぅいいお風呂。やっぱり日本のお風呂はいいねー。極楽極楽」

高砂「しゃてと、あらいっこの時間だ」

ゆい「背中より前が先ですよね」

高砂「お腹からか」

ゆい「最近食ってないです」

高砂「肉になるとでも思ってるのか」

ゆい「そうは思いませんねぇ。趣味の領域ですから」

高砂「でも飢えてるだろー」

ゆい「普通の食事をして満腹にはなるんですが。やっぱりそれはあります」

高砂「肉か」

ゆい「大体痩せていますからねぇ」

高砂「ふーん」

ゆい「自分が太っていても見栄えがよくないでしょう」

高砂「てーどとゆーものがある」

ゆい「むぅ」

高砂「たまに食う肉は美味いものだ」

ゆい「そうですね、たまに食べるから美味しいのです」

高砂「しゃちょーのべちゅばらがにゃいてーる」

ゆい「そうですねシクシク」

高砂「しぇなかにゃがす」

ゆい「お願いします」

高砂「よし」

ゆい「ちゃんと手を使ってください」

高砂「しゃちょーにしゃわるとやけどしゅるぜー」

ゆい「人体発火ですか、面白いですね」

高砂「しゃちょーは焼き加減悪いだろーな」

ゆい「よく火を通してお召し上がりください」

高砂「まずい、あまりにもまずい」

ゆい「まぁそうでしょうね」

高砂「骨が見えている」

ゆい「よく言われます」

高砂「おまけに霊も見れる」

ゆい「見たくなんぞないのですが」

高砂「見たくないなら見なきゃあいい」

ゆい「それを自殺が多い町の住民に言うんじゃありません」

高砂「しゃちょーはいじょーだからな」

ゆい「変態というらしいですよ」

高砂「変態というよーしょは誰でももっちぇる」

ゆい「変態じゃないと言ってもある面においては変態なのです」

高砂「しゃちょーみたいな無趣味はおーいと思うが」

ゆい「読書は継続できるものじゃないですから」

高砂「娯楽のための読書か。しゅきなときでいーんじゃないかな」

ゆい「高砂さんも慣れてきましたよね」

高砂「うーん、これぐらいでいーか」

ゆい「はい、後は自分でお願いできますか」

高砂「しゃちょーも筋肉をちゅかうんだ」

ゆい「ないの知ってて言ってますよね。やりますけど」

高砂「いちゅたかしゃごが消えてもいーよーにだ」

ゆい「八城ちゃんはいますけど、高砂さんの代わりにはなりませんよ」

高砂「ふくざちゅなかんけーだな」

ゆい「たーんじゅんな腐れ縁ですよ。後は磨夢さん争奪戦ですか」

高砂「なんでしぇんしぇーなのか知らにゃいが、多分魔女の気まぐれってやちゅだー」

ゆい「磨夢さんぐらい食い付きがよくないと、実際試薬や魔法を喜んで受けてくれる人なんていませんよ」

高砂「実験にしては上手くいきしゅぎだからな」

ゆい「ほとんど失敗だらけですけど。並みの人間なら死んでてもおかしくないですよ」

高砂「だからたいきゅーを与えてやったのだ」

ゆい「最初の投与はいかがでしたか。注射でしたかお薬でしたか」

高砂「ちゅーしゃだ。とーぜん失神した。むひょーじょーでもな」

ゆい「耐性つけるのも大変ですね」

高砂「ふつーの人間にはにゃいものだからな」

ゆい「あったら怖いですけど」

高砂「流してくれ」

ゆい「はい」


299-4

ゆい「さて高砂さん」

高砂「露天か」

ゆい「見られるのに快感を覚えます」

高砂「見えないけどな」

ゆい「相反する二つに隔てるものは何もないのです」

高砂「ふたちゅはただのしょんざいにしゅぎない」

ゆい「原始に戻ってみなさい。男女を差別化する必要がないことがわかるでしょう」

高砂「ヒトはヒトであり、悪魔は悪魔だ」

ゆい「さらに抽象的にすれば獣、生き物、ついには分子の塊となるわけですからね」

高砂「ほんとーにくだらないものだな」

ゆい「ヒトを物質に喩えることはできますが、温もりを求めるのは生きている証なのです」

高砂「しゃちょーはずいぶんやしゃしーな」

ゆい「人情というものですよ」

高砂「しょーか」

ゆい「温かいですねぇ。わたしは幸せです」

高砂「ぬるいの間違いだ」

ゆい「わたしにとってはちょうどいい温度です」

高砂「しょんなんじゃ灼熱地獄で死ねる」

ゆい「地獄で生き残るというのも変な話ですけどね」

高砂「あちゅいのはたかしゃごにはつーよーしなかった」

ゆい「さすが火魔法使い、頼もしいです」

高砂「生きてたら死んでたが」

ゆい「死んでいたからこそ耐えられたものなんですねぇ」

高砂「しゃちょーも一度地獄を見てみればいー。あのくしゅり余ってるし」

ゆい「誰が喜んで地獄を見るんですか」

高砂「ましゃか天国にいけるとでも。しゃちょーは金のもーじゃだからだめだ。地獄に落ちる

ゆい「くじ運強いだけなのに、あまりにもあんまりです」

高砂「おみくじも毎年大吉だしな」

ゆい「大吉を引かなきゃ幸運を呼び寄せにくいですからね」

高砂「インチキだ」

ゆい「タネもシカケもございません」

高砂「ましゃかてしゃぐりだけで」

ゆい「はい、ただの運ですけど」

高砂「しょれはたかしゃごにも真似できにゃい」

ゆい「まあわたしの存在意義ですから」

高砂「しゃちょー」

ゆい「わたしはここにいますから、ね」

高砂「うん」


295-1

霞「天気悪いですね」

玄那「梅雨だな」

ガララッ

磨夢「ふぅ」

霞「びっしょびしょですよ先生、タオルで身体拭いてお風呂どぞです」

磨夢「ありがとう、助かる」

玄那「しかしなぜ傘なしなんですか」

磨夢「そこに霞の家があるから」

霞「それを聞くのは嬉しいですけど、割と距離があると思いますよ。夕立は考えられましょう」

磨夢「傘持ってたら登りづらいから、ん、折りたたみ」

霞「次からは持ってきてくださいね」

磨夢「ん、じゃあ風呂借りる」

霞「どうぞどうぞー、わたしたちはポーカーしてます」

玄那「ジョーカ一枚な」

霞「二枚来たら問題ですからね。はい、引いてください」

玄那「よし、やるか」

霞「わたしは、三枚交換します」

玄那「四枚で」

霞「では、いっせーので」

玄那「Kハイ」

霞「Aハイです。揃わないものですね」

玄那「フラッシュとか狙うもんじゃないな」

霞「ストレートも来ませんねぇ。次です」

玄那「うむ、ちょっとジュースが欲しい」

霞「お注きしましょう。我らがサイダーです。先生のためにいちごオレ取ってきます」

玄那「おっ、じゃあレア武器ドロ狙うか」

霞「頑張ってくださいね」


295-2

磨夢「ただいま」

霞「おかえりなさい、いちごオレありますよ」

磨夢「ありがとう、霞愛してる」

霞「いえいえ、当然のことをしたまでです」

玄那「早く結婚しろよ」

磨夢「わたしはいつでもいいから、むしろ今すぐにでも子作りを」

霞「いやいやもう少し待っていてほしいです」

磨夢「霞はそればっかし」

玄那「せめて卒業してからじゃないですかね」

霞「わたしは大学院まで止まりませんけど。先生が年を取るとは思えませんし」

磨夢「あまり待たされるとわたし死んじゃう」

玄那「ここでかすむんの真価が問われる」

霞「体調を崩したら是非ともうちの病院に来てくださいね」

玄那「未来は明るいな」

磨夢「霞、どっか行くの」

霞「そこに患者がいる限り、わたしはどこへでも行きますよ。全国の病人を救いたいです」

磨夢「ゴフッ、ゴファッ」

霞「大丈夫ですか、先生」

磨夢「頭がクラクラする、霞、膝枕」

霞「はい、先生専用の膝枕です。」

磨夢「ついでに耳かき」

玄那「意外と余裕ですね」

磨夢「横になれば若干楽になる」

霞「優しくしますからね」

磨夢「ん」

玄那「うーん、サイダーが美味い」

磨夢「zzz」

カタガタガタガタ

玄那「揺れてる揺れてる」

ザクッ

磨夢「いたっ」

霞「すみません、刺してしまいました」

磨夢「つー」

玄那「長いな」

霞「急にきますからね」

磨夢「耳が」

玄那「パソコンは大丈夫なのか」

霞「しっかり固定しています」

玄那「ほんとだ微動だにしない」

バササッ

磨夢「ぶっ」

霞「本棚は無理でしたか。先生、大丈夫ですか」

磨夢「なんとか」

玄那「やっと収まったな」

霞「先生」

磨夢「んんぅ」

玄那「ちょっとうち心配だなぁ。椎木先輩に安否確認がてら訊いてみよう」

磨夢「この漫画……霞ってなんでもいける」

霞「どんな漫画でもわたしは好きですよ」


295-3

ちる「ポルたん、大丈夫、ですか」

ポルトナ「ご主人、助けてください」

ちる「はい、今引き上げ、ます」

ポルトナ「ありがとうございます」

ちる「痛いところ、とかは」

ポルトナ「人形は痛みを感じません。ただ動けないのは嫌です」

ちる「そう、ですか」

prrr

ポルトナ「お電話ですよ」

ちる「はい、ただいま」

ガチャ

ちる「もしもし椎木です」

玄那「上井です。椎木先輩地震、大丈夫でしたか」

ちる「はい、ポルたんが、本の、下敷きに、なったくらい、です」

ポルトナ「ご主人……」

玄那「椎木先輩は無事でしたか。よかったよかった」

ちる「うちには、物がありません、から」

玄那「うちには物が少しあるんで心配ですね」

ちる「今、外に、いるんですか」

玄那「かすむんちにお邪魔してます。だから自宅のことなどわかりません」

ちる「そうでした、か。建物自体は、どうも、なって、いません、から」

玄那「なら多分大丈夫だと思います。中身は帰ってから確認するんで、ではありがとうございます。失礼します」

ちる「はい」

ツーツー

ちる「あの、余震とか、ありません、よね。あ、これ以上、揺れたりは」

ポルトナ「それはわからないです。こんなことが続くなんて」

ちる「ですよねぇ。地震というのは、予測、できないものです、から」


296-1

ゆい「どこかでわたしを呼ぶ声がします」

八城「にゃあにゃあ」

ゆい「ネコさんですか」

八城「空耳というやつだよ」

ゆい「ですかねぇ」

高砂「しょれたかしゃごの声だ」

ゆい「それはないと思います」

高砂「しゃちょーをしゃがしゅためにしゃちょーを呼ぶからな」

ゆい「そりゃあ聞こえてしまいますね」

八城「なんだぁ魔女さんの声だったんだ」

ゆい「でも違いますね。まるで生きているものとは思えない声です」

高砂「死者の声か」

八城「そんなの聞こえるものなの」

高砂「しゃちょーはゆーれーが見えるだろー。だから声も聞こえるんじゃないかって」

ゆい「でもわたしが話しているのもまともに話せる方ですし、これは一方的に聞こえているものかと」

八城「盗み聞きかな」

高砂「しゃちょーも意識して聞きたくはないだろーなー」

ゆい「はい、ほんっとに迷惑ですからね。でもこれが一般的な幽霊の声だと認識するのも誤りじゃないですか。もしそうなら、わたしなど知らないはずです」

八城「そんなー、ゆいちゃんは人気者じゃないの」

高砂「しゃちょーはしゃちょーだからな」

ゆい「いつもと言ってることが違いますね」

高砂「まーちゅじゅけて」

ゆい「だからですね、わたしの名前を呼ぶなんておかしなことです。冥界の声ではなく天からの声であってほしいです」

高砂「よし」

八城「あっ懐かしいなその薬」

ゆい「神々は地上より遙か上空天界におはしまします。我らが容易く到達できる場所にありません」

八城「遙か上空かぁ」

高砂「地獄、それから魔界は遙か地のしょこにある。魔界は扉作ったほーが早いけど」

八城「へぇ」

ゆい「天使界の扉はまだですか」

高砂「残念ながら、しょっちの知識はにゃい」

ゆい「人体錬成の技術は必要ですよね」

高砂「無から生み出すのはにゃかにゃかむじゅかしー」

ゆい「高砂さんの子供ですか」

八城「ゆいちゃんの子供なら想像できるのになぁ」

ゆい「安心してください。ヒトじゃありませんから」

八城「可愛い巫女さんだよ」

高砂「えにもいわれぬ悪魔かな」

ゆい「産まれた瞬間に白い羽を広げ天界へ飛び立つのです」

高砂「こーけーしゃもんだい」

八城「そうだそうだ」

ゆい「わたしが引退する頃にはもうこの町はありません」

高砂「悲観的だなー」

八城「そうだそうだ」

ゆい「だってぇだってぇ」

高砂「しょーと決まれば魔界にいじゅーだ。今こそ開門」

八城「わーい」

ゆい「待ってください。今は時期が違いますよ」

高砂「まだちょっとはやいかー」

八城「そうなんだ、残念」

高砂「また今度、連れていこー」

八城「わーい」

ゆい「魔界ですか」

高砂「親善大使」

ゆい「そんなに関わっていないはずですが。むしろ高砂さんの方でしょう。かつて魔界から招待を受け、厚く歓迎されたじゃないですか」

高砂「あれ、誰が行ってもよかったんだぞ。たかしゃごがたまたましょこに居合わしぇただけで」

ゆい「あれは高砂さんだから成功を収めたのです。魔界の事情をよく飲み込んでいる高砂さんだからこそですよ。仮にわたしが呼ばれたとして、高砂さんと同等の評価を得ることは難しかったでしょう」

高砂「しょーか。魔王に会ったのも初めてだったが」

ゆい「英雄は自覚せずとも称えられるものです」

八城「なんとかたいしばんざーい、魔女さんばんざーい」

ゆい「これぞ神々の導きなのです」

高砂「しゃちょー、ちょっと首かしぇ」

ゆい「はい。首、ですか」

かぷっ

ゆい「おきょほほほほほ」

八城「うわぁ」

ちうちうちう

ゆい「うらひゃひゃひゅ、ひゃかひゃごひゃん、ひゃめれ」

高砂「ちょーど喉が渇いてた」

ゆい「だからっていきなり噛みつくこたぁないでしょうが」

高砂「しゃちょーが人肉を好むのと一緒だ」

ゆい「わたしより磨夢さんの方が美味しいですよ」

高砂「目の前にしゃちょーがいた。しょれだけの話だ」

ゆい「無差別殺人とか犯しそうで怖いです」

高砂「しゃちょー、ヒトなんて殺してもつまらないだろー」

ゆい「急に真面目になられても困ります」

八城「ゆいちゃあん」

高砂「お昼寝の時間だ、しゃちょー」

ゆい「くっつかないで布団でも敷いたらどうですか」

高砂「しゃんにんで同じ布団」

ゆい「あっついですねぇ。蚊取り線香焚いときます」

八城「ゆいちゃん、腕枕ー」

ゆい「折る気ですか」

高砂「しゃちょー、腹枕ー」

ゆい「下手しちゃ吐きますけど」

高砂「布団に血がつくぞ」

ゆい「おっと危ないところでした。ですが、高砂さんもですよ」

高砂「ごっくん」

ゆい「そういう意味じゃないんですけど」

フキフキ

高砂「じゃーおやしゅみ」

八城「おやすみー」

ゆい「つかの間の休息ですね」


296-2

八城「あづぅーい」

ゆい「こまめな水分補給が欠かせません」

高砂「今ならむしぇーげんにやきちゅくしぇる」

ゆい「高砂さんは頭冷やしてきてください」

高砂「あいしゅ」

ゆい「お茶ならありますよ」

八城「ゆいちゃん大丈夫なの」

ゆい「お茶ぐらい作れますよ」

高砂「よし、お湯はまかしぇろ」

ガララッ

ゆい「お願いします」

八城「やっぱりうち燃えちゃうの」

ゆい「燃えやすいものばっかでして」

高砂「うひひ、ちょーどいー死体が」

ゆい「鮮度はどうですか」

高砂「火をとーしぇばなんとかなるだろー。着火」

ボォッ

ゆい「結局燃料に」

八城「かゆっ、刺されちった」

ゆい「はい、かゆみ止めです」

八城「ありがとう、ゆいちゃん」メラメラ

高砂「やかん投げてもたかしゃごは受け取れないぞ」

ゆい「魔法が偏りすぎです」

高砂「とりあえずふっとーは一瞬だ」

シュー

八城「ほんとに一瞬だ。すごーい」

ゆい「後は茶の煮出しです。高砂さん、火力を下げて」

高砂「うん、うまいお茶を飲みたい」

八城「ゆいちゃんの美味しいお茶」

ゆい「どうですか、燃料の方は」

高砂「肉が焦げてる。食えたもんじゃない」

ゆい「やかんも焦げてますからね。当然っちゃあ当然ですか」

八城「井戸水はどうなのよさ」

ゆい「使ってもいいですが、汲んでくるのは大変ですよ」

八城「誰が使うんだろ」

高砂「何にちゅかってるのかもわからん」

ゆい「高さとかは普通ですから」

高砂「首ちゅりは」

ゆい「たまぁに見ますねぇ。死の間際まで熱心な方です」

高砂「いっぽーしゃちょーは海の藻屑に」

ゆい「わたしの骨は海に投げてください」

高砂「しゅべてのしぇーぶつがいきちゅくしゃきだ」

ゆい「大地と海、どちらに還ることでしょうか」

八城「昔はみーんな海だったんだよね」

高砂「あの家もあの家もみーんな海のしょこだ」

ゆい「かつて海の生き物だったご先祖様はやがて陸に出ます」

高砂「陸に上がったところできょーじゃになったとも限らない」

ゆい「弱者が生き延びてきたわけですから。力が弱くとも彼らには生命力があったのです」

八城「ふーん」

高砂「これまでのれきしじょー、今後海に沈むのはとーい話か」

ゆい「海が干上がって砂漠化ですかね」

八城「水がなきゃ生きてけないよ」

高砂「完全に干上がることはないだろー。水がとーのくのは確かだが」

ゆい「いつか水が貴重になることを予知して、今ある幸福を味わうのです」

高砂「お茶できた」

八城「湯のみ取ってくるん」

高砂「ついでにしぇんべーも」

八城「おけー」

ゆい「砂漠よりは海に沈んだほうがいいですよね。我々が新文明により発掘されるのです」

高砂「かいてー神社か。おもしろしょーだ」

八城「へいおまちだう」

ゆい「ありがとうございます。お茶はもちろんアツアツですよ」

八城「えー、冷たいのがいい」

高砂「やかんを日陰にうつしょー」

八城「まだ燃えてるよ」

高砂「石でもみ消しぇ」

ゆい「あのー、井戸から汲んできても」

高砂「みんな非力じゃないか」

八城「あっちっち」

ゆい「清めの川もありますけど」

高砂「確かに汚れてるかな」

ゆい「この身体の持ち主はどこに行ったのでしょう」

高砂「近くにいるんじゃないか」

ゆい「数が多すぎます」

高砂「どこでも言えるな、しょれ」

ゆい「死者の方が圧倒的に多いですからね。特にこの町では。この世に未練を持っている霊が多いんです」

高砂「まとめてじょーぶつしゃしぇてやるが」

ゆい「高砂さんに任せたら火の海になりますね」

八城「ゆいちゃんはやんないの」

ゆい「わたしは可視、会話ができても、消す術を持っていません。お寺の人にお任せしたいところですね」

八城「お札使ってほしいな」

高砂「あれはゆーれいより魔力せーぎょ向けだな。たかしゃごもかなわない」

ゆい「よほど強大なものじゃない限り跳ね返してますよ」

八城「じゃあ隕石」

ゆい「無理です。高砂さんに頼んでください」

高砂「えー、貼り方によるだろー」

ゆい「そんな高度な魔術展開わたしには無理です」

高砂「無理無理言ってちゃ何も進歩しないぞ」

ゆい「その超人的思考をなんとかしてから言ってください」

八城「魔女さんは魔女さんでしょ」

高砂「しゃちょーも魔女になればいーのにな。しょーしたら無理もとーしぇるよーになるのに」

八城「ゆいちゃんはどんな魔法使ってみたいの

ゆい「みんなを癒やす光魔法です。天使を呼んで人々を幸せにします」

高砂「うしょちゅき」

八城「あっ、そうだ。ダウトしよか」

ゆい「ははは、正直者は誰でしょうね」

高砂「やしろん、切るの早い」

八城「伊達にゆいちゃんとスピード100本勝負してないよ」

ゆい「なんでスピードだけそんなに続けられるんですか」

八城「だって二人でやるったらそれぐらいだし」

高砂「しゃんにんいればやれるものは増えるか」

八城「トランプやるんだったら三人は欲しいな」

ゆい「二人でもせがんでくるじゃないですかぁ」

八城「よーし、切り終わったよん」

高砂「ここでかぜまほーがちゅかえたら」

ゆい「風魔法って念動力と似てませんか」

高砂「かぜまほーのほーがしぇーぎょむずかしーぞ」

ゆい「くくりは別なんですか」

高砂「自然に力を借りるか、ただ念じるか、しょれだけ。じっしゃい似てーるかも」

ゆい「火魔法で持ち上げようとしたら焦げますからね」

八城「じゃんけんたーいむ。最初はぐー、じゃんけんぽん。にゃはは、あたしからだ。いーちっ」

ゆい「にぃっ」

高砂「さんっ」

ゆい「三枚ですか」

高砂「疑うかはじゆーだが」

ゆい「いいえ、わたしは信じますよ」

高砂「しょーか」

八城「んじゃあ、よーん」

高砂「二枚だぞ」

ゆい「八城ちゃんに限ってそんなことありません。ごー」

高砂「ろくっ」

八城「ななっ」

ゆい「八城ちゃん、スリーセブンとはなかなかな」

八城「言うかな」

ゆい「わたしは幸運に感謝し、手を出しません。はちっ」

高砂「きゅー。しゃっきから一枚ずつなんてしゃちょーは弱気だなー」

八城「じゅっ」

ゆい「一周目は探りあいですからね。じゅーいち」

高砂「じゅーに」

八城「じゅーさん」

ゆい「ではわたしがいちっと」

八城「だうとーっ」

高砂「これは間違いない」

ゆい「グルとかやめてくださいよ」

高砂「これはやしろんの自然などーしゃつりょくだ」

八城「やっぱ嘘吐きはゆいちゃんだって」

ゆい「誰一人としてまともに出してませんけど」

八城「貯めなきゃ面白くないよ」

高砂「しゃしゅが、ダウトのもーしごだ」

八城「えへへ、誉められた」

ゆい「続けてください。もう負けません。二人の手札は全てお見通しです」

高砂「どことなく本気だ。ほい、に」

八城「はい、さん」

ゆい「むむむ」


296-3

高砂「はい、いーちっ」

ゆい「だうとーっ」

高砂「残念ハートのエースだ」

ゆい「ふぇぇん、なんでしっかり持ってるんですかぁ」」

八城「ゆいちゃんよわーい」

ゆい「二人共嘘吐きです」

高砂「しょーゆーげーむだから」

ゆい「涼しくなってきましたね」

高砂「たかしゃごはけんきゅーしゅるから帰りゅ」

ゆい「また薬ですか」

高砂「いーや、今回はまほーだ。しゃっきしゃちょーが言ってたやちゅをりよーしゃしぇてもらう」

ゆい「わたしの意見が研究課題として採用されるとはおそれおおいです」

高砂「とゆーことでうちにちゅいてこい」

ゆい「はい?」

八城「いいなぁ、あたしも行きたい」

高砂「やしろんでもいーか」

ゆい「そ、そうですね、八城ちゃんの方がいいです」

高砂「やしろんはしぇんしぇーとこにしゅんでるんだよな」

八城「そだよー、あっそうか、まみーに連絡しなきゃ。ゆいちゃん、電話借りるね」

ゆい「はい」

高砂「きょーはてちゅやか」

ゆい「そんな無理するこたぁないでしょうに」

高砂「早くやらないと忘れちゃう」

ゆい「まあほどほどに頑張ってください」

八城「いいってさー」

高砂「よし、しょーと決まれば飛ぶぞ」

八城「わーい、飛ぶぞー」

ゆい「いってらっしゃいまし」

高砂「じゃーやしろん、ほーきに跨がるのだ」

八城「わーい、ほうきだぁ」

高砂「さん、に、いち。発射」

バビュン

八城「わーい、飛んだ飛んだー」

ゆい「八城ちゃん、お気をつけて」


296-4

ガサッ

高砂「と、とーちゃく」

八城「足切れちった」

高砂「くしゅりとほーたいならあるぞ」

八城「ありがとう、魔女さん」

高砂「しょれにしてもこいつに引っかかって落ちるとは」

八城「下から見るとずいぶんおっきいんだね」

高砂「じゅれー六百年だとか。しゃちょーのとかのはもっとしゅごいけどな」

八城「魔女さんとこも神社なの」

高砂「うちはふつーの家だ。なんか土地あいてたからけんぞーした」

八城「へぇ」

高砂「しゃてと」

八城「あにゃ、鍵使わないの」

高砂「しゅこしまほーがかかっているから、たかしゃごの手にしかはんのーしない」

八城「そいつぁすごいや」

高砂「たかしゃごの家によーこしょ。どーぞ上がって上がって」

八城「お邪魔しまーす」

高砂「しょしゃいにごあんないしよー」

八城「うわぁ、ゆいちゃんちよりずっと広い」

高砂「しゃちょーの家はしぇましゅぎる。たかしゃごの家が広いのは、しゃぎょーごとに部屋を分けているからだ」

八城「書斎と研究室だね」

高砂「魔術けんきゅーと薬学じゃーやることは違ってくるからな。たかしゃごは火まほーくらいしかまともにちゅかえないから、技術的な面が強いのは薬学のほーだ。で、今回やるのはまほーだが」

八城「本読んで研究するんだよね」

高砂「火まほーなら実践かのーだが、他ぞくしぇーは慣れない。だからしぇんじんの文書に頼るんだ。ここがしょしゃい」

八城「すごい本の量だぁ。みんな魔法に関するものなの?」

高砂「魔法と、それに関するしりょーってとこだ。今回調べたいのが風まほーとねんどーりき、待てよ、くーかんまほーもかんけーあるかもしんない」

八城「ねんどうりきってのは魔法じゃないの?」

高砂「まほーと念じる力はちょっと違う。ねんどーりきは魔力によるものじゃない」

八城「魔法じゃないのかぁ」

高砂「同じいのーりょくではあるが。しょしてたかしゃごはねんどーりきの代替として風まほーをあげりゅ。風をりよーして物体をふゆーしゃしぇる」

八城「風を使うんだ」

高砂「だからねんどーりきやゆーれーがやるぽるたーがいしゅとなんかは理解できにゃい」

八城「じゃあほうきはどうなのさ」

高砂「ほーき自体にまほーがかかっているものだが、あれをふゆーしゃしぇるのは八割方、術者の魔力によるものだ。だからしゃちょーのほーきでも飛べないことはない。あのどーりょくげんは風まほーだったはず、もしや知らず知らずにねんどーりきを使っていたとでも!? しょれをしょーめーできるものなら新発見ではあるが。たかしゃごの認識が間違っていたのかもしれにゃい。しょもしょもまほーつかいだからってねんどーりきが使えないわけじゃないが。誰でも持っている力だし」

八城「魔法よりも簡単かな」

高砂「魔力をひつよーとしないからな。一度身にちゅければ簡単だ。ただし念じるわけだから頭が痛くなる。だから習う気はにゃい」

八城「魔女さん結構頭使ってるよね」

高砂「けんきゅーに頭をちゅかうのは問題ないが、まほーをちゅかうのは初心者の頭を悩ましゅ。ちゅえはしゅこしでものーに負担をかけまいとしゅる便利などーぐだ」

八城「魔女さん杖使わないもんね」

高砂「やしろんもまほーを学ぶなら、杖持ってって構わんぞ。にゅーもんしょと一緒に。風でも水でもちゅかえたらしょの時点でたかしゃごより上だ」

八城「魔女さんほんとは使えたりして」

高砂「風はほーきしかちゅかえないし、火以外は基本的に手付かず。覚えていても大したことはできないから」

八城「にゃあ、じゃああたし頑張って何か覚える」

高砂「まーどんなまほーでも見てみりゃーいー。きしょをちゅかめば後はどーにでもなる」

八城「ありがと魔女さん」

高砂「しかしねんどーりき、難しーものだ。風の力を頼らないで、如何に念じれば物が浮くんだか」

八城「浮かせる前に動かすんじゃないかな」」

高砂「例えばこのリンゴ。動け動けと念じるわけだ」

八城「動け動けー」

高砂「おっ、動いた」

ヒュッ

八城「一瞬であたしの手まで飛んできた。食べていい?」

高砂「甘いぞ、召し上がれ」

八城「あめーの大好き。いただきまーす」

高砂「思わず空間まほーを使っちゃうなー」

八城「それは慣れてるの?むしゃむしゃ」

高砂「最近始めたばかりだから、まだ慣れてにゃい。前もしゃちょーの頭に本ぶっけた。今のはまぐれだ」

八城「ゆいちゃんだったから失敗したんだよ」

高砂「しょれは一理あるな。ちなみにくーかんまほーは物をいどーさせる魔法だ。飛ばすわけじゃないからねんどーりきとはびみょーに違う」

八城「あれかぁ。瞬間移動とか?」

高砂「自分を移動させるのはまだできないな。たいしょーがおーきいほど難易度は上がる」

八城「へぇ、それも面白そうだな」

高砂「あとくーかんを歪めることもできる。くーかんのしゃけめを作って、やしろんの家までいどーできるよーにするとか」

八城「あれ、魔女さんもっとすごいことしてたよな」

高砂「やしろんが思っているのは多分こんなやしゅっぽいまほーじゃないぞ」

八城「そうだよね、なんだったかな」

高砂「やしろん」

八城「ん、何さ」

高砂「いや、なんでもない」

八城「むー、魔女さんのいじわるぅ」

高砂「眠くなってきた」

八城「今日はお泊まりだ」

高砂「人を泊めたことなどないなー」

八城「ゆいちゃんでも?」

高砂「うん、でもやしろんはしんよーできるから初めての宿泊客だ。ここで寝ても……いやどこでもいーな。てけとーなとこで」

八城「いつも寝てる部屋はないの」

高砂「たかしゃごはてけとーにごろごろー。ほい、もーふ。これにくるまってごろごろー」

八城「わーい、たーのしーな」

高砂「あづい」

八城「夏だもの」

高砂「ちゃーんと寝室はありゅ」

八城「お布団は欲しいよね」

高砂「向かいの部屋」

八城「あら近い」

高砂「研究室からもしょしゃいからも近い」

八城「わーい魔女さんと寝れる」

高砂「くっつくと噛むぞ」

八城「いーじゃん、お泊まりだもの」

高砂「むー、じゃーおやしゅみ」

八城「おやすみなさーい」


296-5

基茂「一人か」

ゆい「今日もいいお目覚めですね」

基茂「ったく、誰に入れてもらったんだかな」

ゆい「ちゃんと通用口から来ましたよ」

基茂「どこの話だか分からんなぁ」

ゆい「兄さんの部屋まで直行できる通路です。レオポンに教えてもらいました」

基茂「レオポンまで味方につけたか。でも身体汚れんぞ」

ゆい「ちょっと汚れちゃいました。でもこのくらいならお風呂に入ったらいいですね、兄さん」

基茂「いくら暑いからって脱ぐの早すぎないか」

ゆい「兄さん二人っきりですよ」

基茂「ちょっと磨夢に電話するか」

ゆい「兄さんも脱いでください。わたしはいつでも準備ができていますよ」

基茂「すでにパンイチなわけだが」

ゆい「ずらしますよ」

基茂「こんなところで脱いだら磨夢にどやされっぞ」

ゆい「自分で脱いだ場所くらい自分で覚えておくんですよ、兄さん」

基茂「全裸で風呂まで行く理由がねーだろ」

ゆい「他人に脱がせておいて言う口ですか」

基茂「はいはい服持っていく」

ゆい「むぅ」


296-6

ガララッ

ゆい「さあ兄さん、滑りやすいのでお気をつけください」

基茂「他人んちで好き勝手しおって」

つるっ

ゆい「あいたっ、心臓が」

基茂「相変わらず脆いのな」

ゆい「下手しちゃちるさんよりも脆いですからね。あ、そうそう、ちるさんとはどこまで行きましたか。もう金婚式ですか、おめでとうございます。曾孫の顔が見たいですね」

基茂「何十年経ってもゆいゆいはゆいゆいのままだな」

ゆい「わたしがまだ見えているうちはいいんですよ。ただ、少しでもぼやけようならえっと……目医者に行ったほうがいいですよ」

基茂「目の悪さには自信があるぞ。そうか、ゆいゆいも見えない存在になるのか」

ゆい「わたしをわたしだと認知してくれるならまだいいです。その本質を知ったときに恐怖を覚えるだけです」

基茂「なに言ってんだ。ゆいゆいはゆいゆいじゃないか」

ゆい「そう言ってもらえると嬉しいです。分かりました、兄さんの側にいる間はわたしはわたしでありましょう。決して内側に触れないようにしてください」

基茂「別にゆいゆいが何であっても構わんがな。むしろずっとそのままであってほしい」

ゆい「本当に兄さんは今のわたしが好きなんですね」

基茂「ったりめぇよ。ゆいゆいだけはババアにならんと信じてっからな」

ゆい「数十年後のわたしたちなんて想像できませんけどね」

基茂「あるだろう、神通力」

ゆい「わたしには過去も未来も見えませんよ。見えるのは幽霊だけです」

基茂「神に授かった力はそれだけか。悲しいもんだぜ」

ゆい「いいえ、わたしの天性のものですね。神様は関係ありません」

基茂「普通の巫女なんだな」

ゆい「はい、氏子の方々の永久なる健康安全を祈願する普通の巫女です」

基茂「ゆいゆいの髪は長いよなぁ」

ゆい「くしゃくしゃにしないで、ちゃんと洗ってくださいね」

基茂「ゆいゆいとやしろんは洗い慣れてるから安心して身を委ねてくれ」

ゆい「磨夢さんはどうなんですか」

基茂「磨夢は二人と違って大人だからなぁ」

ゆい「磨夢さんの推定年齢は十四ぐらいかと」

基茂「何を言ってるありゃ完全に院卒だぜ」

ゆい「磨夢さんはわたしと違って天才ですから」

基茂「天才ねぇ」

ザパーン

ゆい「では兄さん、浴槽温めておきます」

基茂「今浴びただろ、すでにあちぃよ」

ゆい「汗が流れて気持ちいいですよ」

基茂「それは良かった。ゆいゆいの家にも風呂つけろよ」

ゆい「ドラム缶で十分です」

基茂「そこは身浄めだろう」

ゆい「わたしは穢れを恐れないのです」

基茂「いや浄めろよ、巫女だろ」

ゆい「神の御前に馳せ参じるときに穢れを完全に払うのは当然のことです。しかしですね、俗に浸かるときにはこうして兄さんとイチャコラしたいんです」

基茂「我ゆいゆいよりちるを欲す」

ゆい「いつか叶うといいですね、その夢」

基茂「愛人のくせに、愛人のくせに」

ゆい「悔しければさっさとちるさんと結婚することですね。わたしは絶対に結婚しませんから」

基茂「ああ分かったよ。ちるの左手の薬指に指輪はめりゃあいいんだろ。そんな金持ってないけど」

ゆい「キスはできますか」

基茂「そんなのゆいゆいにしねーが、いざとなれば濃厚な口づけを見せつけてくれよう」

ゆい「兄さんが本気を出したら大雪が降るでしょうね」

基茂「いつも手を抜いてるわけでもないんだが」

ゆい「確かに、兄さんが物事に打ち込む様は真剣そのものです」

基茂「そう評価してもらえるとはありがたい」

ゆい「これからもわたしの兄さんであってください」

基茂「妹じゃなくて愛人だろう。そもそも妹なんて想像上の生き物だ」

ゆい「兄さん、夢を諦めちゃだめです。いつかきっと思い出すはずですから」

基茂「記憶すら曖昧なんだよな。前よりも記憶にない」

ゆい「兄さんは一人っ子だったのでは?」

基茂「いや、確かにいたはずなんだが。やっぱいないことでいいや。考えるのもめんどくさい」

ゆい「兄さん」

基茂「いたとしてもだな、顔も名前も忘れているんだ。思い出せるはずがない」

ゆい「いつか見つかるといいですね」

基茂「血が繋がってなかったりするんだろうなぁ。入るぞ」

ゆい「どうぞ、豪快に」

基茂「おーし」

ツルッザッパーン

基茂「ブクブクブク」

ゆい「わたしが想像を遥かに超えました。まさか飛び込んでくるとは」

基茂「ぷはぁ、はあはあ。危うく死ぬところだったわ」

ゆい「では次は足下に気をつけて入ってください」

基茂「おぅ」

ジャッポン

ゆい「わたしと兄さんじゃ溢れませんね」

基茂「オレデブじゃねーし」

ゆい「そういうものですかね」

基茂「ゆいゆい程ではないが、痩せてる方さ」

ゆい「兄さんまで、みんなひどいですぅ」

基茂「今度焼き肉でも行くか」

ゆい「うちなら無料でやれますよ」

基茂「遠慮しとく」

ゆい「まだ何も言ってませんけど」

基茂「うちでは暗黙の了解だ」

ゆい「みんな食わず嫌いです」

基茂「余程窮地に立たされん限りは共食いなどせんなぁ」

ゆい「平和な日常に人肉は有らず、ですか」

基茂「実際誰かの食糧として置いてあるんだが」

ゆい「現状磨夢さんしか使ってくれないです。兄さんも気楽に使ってくれたら嬉しいのですが」

基茂「オレは美味いものが食いたいんだ。それと磨夢は感性が違うから」

ゆい「それが兄さんと磨夢さんの差です。愛情が足りないのです」

ちょこん

基茂「この体勢だと入っちゃうんだが」

ゆい「入れちゃってもいいですけど、あえてズラします」

基茂「足か」

ゆい「お風呂でも元気ですね」

基茂「まあな」

ゆい「熱いです」

基茂「うむ、上がるとよい」

ゆい「はい」

ザパー

ゆい「では、お待ちしております」

基茂「帰っていいぞ」

ゆい「まぁひどいです。わたしの愛情なぞまるで分からん素振りですね」

基茂「先上がってアイスでも食っとけ。後磨夢が帰ってくると思うんでよろしく」

ゆい「はーい」


296-7

磨夢「ただいま」

ゆい「おかえりなさい、磨夢さん。兄さんなら風呂ですよ」

磨夢「ん」

ゆい「頭とか痛くないですか」

磨夢「特には」

ゆい「磨夢さんにも愛人ができたんですね」

磨夢「あれはペットだから」

ゆい「しかしすっかり常連ですか。なかなかに穴場でしょうに」

磨夢「昔は知らなかった」

ゆい「大して年は経ってないかと。あれ、磨夢さんはいつからこの町に?」

磨夢「基茂よりは長い」

ゆい「ああ、そうでしたね。使用人歴が長かったんですね」

磨夢「この家はそこまで長くないけど」

ゆい「早計でしたか」

磨夢「いや、これでいい」

ゆい「兄さんが来るのは想定内でしたか」

磨夢「一人で住もうとも思ってなかったしちょうどよかった」

ゆい「兄さんが来なかったらと考えると」

基茂「上がったぞーい。お、磨夢おかーり。寝なくていいのか」

磨夢「なぜわかった」

基茂「疲れが出てるぞ。帰ってきてソファに掛けてから動いてまい」

磨夢「も、基茂にしては鋭い」

基茂「はい、風呂行った行った。今ならあったけぇぞ」

磨夢「ん、わかった」

ゆい「兄さん、すごいですね」

基茂「夜遊びは身体に悪いからな。察しがついた」

ゆい「さて兄さん、磨夢さんも風呂に行ったことですし、二回戦いきますか」

基茂「オレは部屋に戻るわ。朝飯になったら呼んでくれ」

ゆい「兄さんのいけず」

基茂「ゆいゆいは強引すぐる」

ゆい「こんないいベッドがあるのに」

基茂「それソファだし。じゃあな」

ゆい「むぅ。ふて寝してやります」


296-8

八城「……ちゃん。ゆいちゃん」

ゆい「はっ、八城ちゃんいつのまに」

八城「今帰ってきたとこよん」

磨夢「朝ご飯も今食べ終わった」

八城「ごめん、先に食べちった」

ゆい「磨夢さん、わたしのご飯を」

磨夢「白飯で我慢して」

ゆい「ふぇぇん、せめて肉をぉ」

八城「目玉焼きとベーコンとお味噌汁だったよん」

ゆい「ではそれでお願いします」

磨夢「それすらも与えない」

ゆい「じゃあお茶漬けで我慢しますぅ」

磨夢「朝ご飯だから」

八城「ねー」

ゆい「うぅ……」

磨夢「鮭をあげよう」

ゆい「鮭茶漬けですね、いただきます」

八城「今日は何を観よっかなー」

磨夢「夏だからホラーを」

八城「これ呪われてそう」

磨夢「古いのはみんな呪われてる」

ゆい「映像が乱れるだけでしょう」

八城「じゃあこれ、いくよ」

カチャ

八城「再生っと」

ザー

八城「砂嵐だー」

ゆい「見えますよ、古びた洋館が」

八城「にゃあ、もう始まったの?」

ゆい「今日はここで泊まっていこう。ほほぅ、館モノですね」

八城「あっ、映った。町の中だよ、全然違うじゃん」

ゆい「じゃあこの二人が殺されます」

八城「あっほんとだ、やられちった」

ゆい「しかしゾンビとして生き返るのです」

八城「こっちに向かってくるよ」

磨夢「頭撃ち抜きゃ大丈夫」

ゾンビ「うううう」

八城「でで、出てきちゃったよ。これどうしよう?」

ゆい「押し戻すのです」

八城「そんなこと」

磨夢「ん」

ゾンビ「うううう」

八城「まみー非力なの」

磨夢「わたしは技術特化だから」

ゆい「悪霊退散悪霊退散」

八城「意味ないよそれ」

ゾンビ「zzz」

八城「あら寝ちゃった」

ゆい「磨夢さん、今の内にとどめを」

磨夢「魔女呼べばいい」

ゆい「そうですね、電話してみましょう」

prrr

ゆい「高砂さん、わたしです」

高砂「その声はしゃちょーか、おはよ。よーけんは何かな」

ゆい「緊急事態です。磨夢さん宅にゾンビが出現しました。浄化お願いしたいのですが」

高砂「こっち飛ばしてくれたらしゅぐにでも」

ゆい「今すぐ来てください、今度実験台になりますから」

高砂「お願いしゃれなくても改造するが。分かったしゅぐ向かう」

ゆい「お願いします。磨夢さんの家ですよ。では後程」

ガチャ

ゆい「これで一安心です」

磨夢「八城、外に出しておこう。はい、ゴム手袋」

八城「ありがとー、まみー」


296-9

高砂「たかしゃご、しゃんじょー。ゾンビか、頭燃やしゅか」

ゆい「ですね」

八城「ふぁいあー」

ゴォッ

ゾンビ「う!?ぐおおお」

ゆい「成仏してください」

ゾンビ「があああああ」

高砂「こっちの世界のやちゅか」

八城「うぅん、画面の中にいたゾンビだよ」

高砂「戻しゃなくていーのか」

八城「えっ、わかんない」

ゆい「ビデオは巻き戻しが可能なんですよ。問題ありません」

高砂「よく分からないが、このまま消し炭にしてくれよう。火力じょーしょー」

ゴォッ

ゾンビ「あああああ」

プスプス

高砂「ちょっと強くししゅぎたな。夏らしー」

八城「あついよー」

ゆい「とっとと鎮火しておきましょう」

高砂「しぇんしぇー、あしゃごはんをよーきゅーしゅる」

磨夢「ゆいが食べなかった鮭をどうぞ。ついでにしじみ汁も」

高砂「ありがとー、いただきまーす」


296-10

八城「これが問題のビデオだよ」

高砂「なんだ、観ないのか」

八城「また出てきたらやだよぅ」

高砂「しょーゆーことか、しゃちょー」

ゆい「繰り返し利用されるものですから、何度だって再生するのです」

高砂「呪いのビデオか、よくこんなにあちゅめたものだ」

ゆい「磨夢さんの収集癖にはつくづく感心させられます」

磨夢「ほとんどが押収品」

ゆい「でもそれ以外の映画なんかは完全に磨夢さんの趣味でしょう。ちるさんの喜びそうなのばっかり」

磨夢「霞の趣味は分からない」

ゆい「ちるさんはホラー担当ですからね。これ持ってったら喜ぶかもしれませんよ」

八城「ちるお姉ちゃんだったらゾンビ飼っちゃいそう」

高砂「なかなか面白い人なんだな、そのちるってのは」

ゆい「高砂さんはあまり会ったことないと思いますが、優しいお姉さんです」

高砂「一応顔は知っている。じくーまほーの実験台にもなってもらったし」

八城「魔女さん、火魔法以外も使えるじゃん」

高砂「ひまほー以外は未熟なんだ。いつもしぇーこーしゅるとは限らにゃい」

八城「へぇ」

ゆい「さてと、そろそろ神社に向かいます」

高砂「じゃあたかしゃごはちるとやらに会ってこよう」

八城「あたしも散歩に行こっと」

磨夢「熱中症に気をつけて。八城にポカリを与えよう」

八城「ありがとーまみー。ポカリイェーイ」

ゆい「わたしにも支給お願いします」

高砂「たかしゃごにも与えたまへ」

磨夢「資産家共は自分で買って」

ゆい「じゃあ磨夢さんの生き血でも貰っていきます」

磨夢「肉の次は血」

ゆい「これは完全に高砂さんの影響です。では、失礼します」

磨夢「どうぞご自由に」

かぷっ

ちうちうちう

ゆい「磨夢さんはいつでも冷静ですね」

磨夢「それほどでもない」

八城「マスターんとこから帰ってきたらふらふらだよね」

磨夢「それは仕方ない」

ゆい「酒入ってないですけどね」

高砂「そんなしぇんしぇーに媚薬をあげよー」

磨夢「また注射」

高砂「たりょーしぇっしゅしゅれば全身がしぇーかんたいに、感度も最大になるからな。指に触れただけできょーしぇーをもらしゅだろー」

ゆい「実際自分で試したんですか?」

高砂「たかしゃごは鈍感だからむこーかできる」

ゆい「じゃあ何のために研究を?」

高砂「知らん、ただしゅきでやってるだけ。しかしなんでしょんなことを?」

ゆい「科学者が実験道具を用いるのはわかりますが、他人に試してばかりでは得るものがないんじゃありませんか」

高砂「たかしゃごは実験がしゅきだ。無から物を生み出しゅのが楽しー。べちゅに何かとくてーのものをちゅくろうという意識はない。ただむちゅーになってかんしぇーしたのがしょのよーなくしゅりであるだけ」

ゆい「得るものは新しい技術であると」

高砂「まほーよりは独自の技術を開発しやしゅいと思っている」

ゆい「魔法は既存のものが多いんですね」

高砂「まほーはぞくしぇーが決まっているからな。地水火ふーの元素まほーに加え、光闇、じくー、くーかん、しりょー……まーいろいろある。しょれをしゅべて会得しよーならば、今を生きるだけではふかのーだ」

ゆい「散逸した魔法書が多数を占めるわけでしょうし」

八城「魔女さんが持っているのがすごいことなんだ」

高砂「しぇんぞ代々のものがあれば、魔界の土産もあるし、闇市場もしゅくなくない」

ゆい「今手に入れるなら魔界か闇ですね。この世界に魔法使いが存在するならその著書なんかも」

高砂「しぇかいは広いからなー。彼らはみないんしぇーしてーる。忍者と一緒だ」

八城「魔女さんも山の中に住んでるしね」

高砂「美味い空気に触れれば知識がしゃえわたるのだ」

八城「じゃあ今日は山の方に行ってみようかな。しゅっぱーつ」

ガラッ

磨夢「いってらっしゃい」

ゆい「磨夢さん、ゆっくり休んでくださいね。あまり激しい行為に至らないように気をつけてましょう」

磨夢「これ」

高砂「こーよーはうしゅいはずだ。しぇーぶんも大したものは入れてない」

磨夢「………」

高砂「今ここでちゅかってみるか」

磨夢「いや、取っておく」

高砂「しょーか」

ゆい「ほら高砂さん、八城ちゃんは先行っちゃいましたよ」

高砂「あ、待って、やしろん」

八城「あはははは」


296-11

高砂「たのもー」

ちる「ポルたん」

ポルトナ「あの声は」

ガチャ

ポルトナ「やっぱりあのときの魔女!今回こそはご主人様には指一本触れさせませんから」

高砂「しょのご主人によーがある」

ポルトナ「な……」

ちる「まあまあ、ポルたん。わたしが、椎木ですが。あ、魔女さん」

高砂「隣町にしゅむたかしゃごだ。よろしく頼む」

ちる「椎木ちるです。こっちは、相棒の、ポルトナさん、です」

ポルトナ「ポルトナですっ!改めてよろしくです」

高砂「うむ」

ちる「何も、ない、ところですが。何か、欲しい、ものは」

高砂「しぇんしぇーんちであしゃめし食べて腹八分」

ちる「そう、ですか。では、お茶を、用意、します」

ポルトナ「ご主人様、わたしにお任せください」

ちる「では、お言葉に、甘えます」

高砂「ここでいーか」

ちる「はい、我が家の、居間です」

高砂「趣味は読書か」

ちる「はい、一般的な、小説、です」

高砂「きょーふしょーしぇつか」

ちる「はい、夏限定ではなく、わたしの、好み、です」

ポルトナ「さんぴん茶です」

ちる「ありがとう、ございます」

高砂「しゃんぴん?」

ちる「沖縄の、ジャスミンティー、です」

高砂「ご主人は沖縄人なのか?」

ちる「いいえ、わたしは奈良県民、です」

高砂「ならか、ならね」

ポルトナ「それは分かってない顔ですね」

高砂「人間界の事なんか知らん」

ちる「魔女さんは、ただ者じゃ、ない、ですね」

ポルトナ「魔女ですよ、まともなわけありませんっ」

高砂「心外だにゃー。これじゃーえいきゅーに解決しゃれまい。こんなにしゅばらしいとゆーのに」

ちる「その首飾り、とっても、綺麗です」

高砂「人間に作れたものじゃないだろー。ご主人へしゃしゃげよー」

ちる「ありがとう、ござい、ます」

ポルトナ「ご主人様、魔女の誘いに乗っちゃいけませんよ。精神ごと取り込まれてしまいます」

ちる「こんなに綺麗な、宝石を、見て、その魅力に、吸い込まれ、ない、女性が、いるでしょう、か」

ポルトナ「あわわ、ご主人……やい魔女、一体何を考えてるのですか。またよからぬ企みがあるに違いありません」

高砂「何って、今回はにんぎょーではない。ご主人によーがある」

ポルトナ「ぐぬぬぅ」

ちる「はい、改めて、何でしょう、か」

高砂「ご主人は怖いものがしゅきときーた」

ちる「はい、実際の、人じゃ、なければ。幽霊でも、絶叫マシーン、でも」

高砂「幽霊はしゃちょーが見れる」

ちる「わたしも、見たい、です」

高砂「残念ながらしりょーまほーには疎い」

ちる「残念、です」

ポルトナ「魔女は幽霊が見えるんですか」

高砂「見えないからしゃちょーが見ちゅけ次第じょーかしてーる」

ちる「浄化、しちゃうん、ですか」

高砂「しゃちょー曰はくおーしゅぎて嫌になるんだと」

ちる「浄化活動は、自発的な、こと、ですか」

高砂「うん、しゃちょーのめーれーじゃーない。魔力のはっしゃんだ」

ちる「個人的な、恨みでは、ないんです、ね」

高砂「敵意は気まぐれだにゃー」

ポルトナ「わたしはどうなりますか」

高砂「にんぎょーはしぇーめーが宿っているじゃないか」

ちる「幽霊はあくまで、さまよう霊魂、です」

高砂「こんなに生き生きとしたゆーれいは多分いない」

ポルトナ「幽霊とはみんな暗いんですか」

高砂「しゃちょー曰はく、喋らないのが大半。今日喋るのは未練が残ってるやちゅらだ」

ちる「喋らない、というのは、意思が、ないん、ですか」

高砂「あの世への行き方をしらにゃいだけだ。この時点でのあくりょーどもはあの世へ向かう気がにゃい」

ちる「幽霊に、なっても、楽しんで、ます、ね」

高砂「死後の楽しみ、か」

ポルトナ「魔女は地獄に堕ちそうですね」

高砂「一度行ってきた」

ポルトナ「じゃ、生き返って」

高砂「仮死状態とゆーのか、戻りたくばしゅぐに戻ってこれる。しょれをりよーして地獄を体験してきた」

ちる「暑かった、ですか」

高砂「釜茹で、煉獄。ありゃじょーじんには耐えられまい。針山、血の池、たかしゃごは寒さに勝てなかった」

ポルトナ「魔女は寒いのが苦手ですか」

高砂「熱いのに強けりゃ冷たいのには弱い。しょの逆だって」

ちる「暑いのは、苦手、です。だから、怖い、もの、を」

ツツーッ

ポルトナ「ごごご主人様、コップが勝手に」

ちる「魔女さん、ですか」

高砂「たかしゃごならもっと派手にやる。しょれこしょ、ふわーぱりーんがっしゃーん、とな」

ちる「そう、ですか」

高砂「ご主人、れーかんは」

ちる「ありま、せん」

高砂「ふむ、これはしゃちょー案件。ちょっくら行ってくる」

ちる「はい」

ポルトナ「何だったんですかね」

ちる「………」


296-12

高砂「わはは、たのもー」

ゆい「もう用事は済んだんですか」

高砂「ちる宅に出た」

ゆい「幽霊なんてどこにもいますよ。悪さするやつですね」

高砂「何か動きがなきゃわからないもの」

ゆい「ほっとけばどこか行きそうですけどねぇ」

高砂「ご主人もあまりに気にしてなかったみたいだしいーか」

ゆい「次回訪問時にいれば報告お願いします。せいぜい一週間でしょう」

高砂「まーしょのてーどならおーめに見てやろー。わっはっは」

ゆい「せっかく来たんですから鳴らしていきませんか」

高砂「五円ないから諭吉で」

ゆい「お札も見ますけど、気持ちだけ受け取っておきます」

ルイ「ぼんじゅーる。やあやあ我こそは宗教をこよなく愛するルイここに見参」

ゆい「おはようございます。聖書を片手に熱心な方です」

ルイ「お宅の記紀と交換したく候」

ゆい「勝手に持っていってください。異教に手をつける気はありません」

高砂「しゃちょーは堅いな」

ゆい「無神論者に云われる所以はありません」

ルイ「魔女さんはこっちの人間かと思うけど」

高砂「じゅーじかを見るとはなぜか憎しみを覚える」

ルイ「あ、そか。ぱるどん」

高砂「職人は悪くない。しょれはとーい昔のことだろー」

ルイ「うん」

ゆい「ではルリネコさん、お願いします」

ルイ「いや手渡しでいいけど」

高砂「たかしゃごも魔術書をかしょー。えっとこれとか」

ボトッ

ゆい「あうっ」

ルイ「大丈夫?」

高砂「いちゅもしゃちょーの上に落ちる」

ゆい「狙ってますよね」

高砂「下手なだけだが」

ゆい「いいかげん火魔法以外も修得してくださいよ」

高砂「むつかしーから無理だ」

ルイ「せっかくだしお祈りしたら?」

高砂「しょーだった。ここは仮にも神社。りょーがえ頼む」

ルイ「いいよ、五円くらい。どうぞ」

高砂「職人、また何かの形で返そう。さて」

ルイ「よし、わたしも」

チャリーン

ガランガラン

高砂「………」

ルイ「………」

ゆい「叶えたい夢はありましたか?」

高砂「しゃちょーが新鮮な肉と巡りあえましゅよーに」

ゆい「やはり取れたてが欲しいところです。るーちゃんは?」

ルイ「商売繁盛だ、笹持ってこい」

ゆい「今度はえべっさんに行くことをおすすめしますよ」

ルイ「マスターが今宮戎行くみたいだしついていくよ」

ゆい「大阪、ですね」

高砂「奈良とかおーしゃかとかわからん」

ゆい「京都と同じでかつて都があった所ですよ。現在の東京みたいなものです」

高砂「地理はしゃっぱりだ」

ルイ「マスターがね、大阪出身なんだよ」

高砂「あの喋り方の原点か」

ルイ「うぃ、でも関西がみんなああなわけじゃなくて、京都や奈良はちょっと異なるんだって」

ゆい「京都といえば芸者さんですね。語尾が上がったりはんなりした話し方です。実際この町にも京都人がいますよ」

ルイ「佐竹だよね」

ゆい「京都要素がないですけどね」

高砂「おしゃえてるだけじゃにゃいか」

ゆい「今の喋り方に慣れたんでしょうね。そうなれば方言も隠れます」

ルイ「ジスイフランソワーズ。えっへん」

ゆい「神社好きですか?」

ルイ「ゆいの神社は好きだよ。なんかこう、わびさびがあるね」

高砂「静かな場所だから落ちちゅく」

ゆい「それは嬉しいです。人が来ないいいとこですよ」

高砂「なに、たかしゃごの家のほーが人来ないぞ」

ゆい「あんな山ん中誰も来やしませんよ」

ルイ「魔女さんは隠れ住んでるの 」

高砂「別に隠れているつもりはにゃいが。単に自然を愛しゅる気持ちからだ」

ルイ「自然信仰?」

ゆい「神ではなく自然そのものを崇拝しているそうです」

ルイ「敵でもなく味方でもないね」

高砂「今ある自然に感謝しゅる。しょれだけの話だ」

ゆい「堅苦しい決まりなどなくて結構です」

ルイ「宗教も没頭しなけりゃ自由なものだけど」

ゆい「神職でもないかぎり、そうなる必要はありません」

ルイ「わたしも毎週教会に行ってるわけじゃあないし」

ゆい「この町にないですからねぇ」

ルイ「近くにないものかな」

ゆい「小さい町ですからね。日本ならではの寺社仏閣ぐらいしか」

ルイ「ゆいのところは大きいの?」

ゆい「はい、うちは古くからこの町をお守りしていますから」

高砂「頼もしーな」

ぐぅぅ

ルイ「お腹減ったよ」

高砂「隣町のふぁみれしゅ来るか?」

ゆい「山越えないといけませんけど。高砂さん、ほうきは」

高砂「三人はちときついから、しゃちょーは歩きで」

ゆい「わたしそんなに活動的じゃないですよ」

ルイ「確かにゆい、脚ほっそいね」

高砂「火炙りにしゅれば一瞬で消し炭に」

ゆい「むぅ」

ルイ「ゆい、美味しいかな?」

ゆい「人肉食べたいなら大将の店をおすすめしますよ」

高砂「なぜ潰れにゃいのか」

ゆい「基本的に常連客で成り立っています。それと目を付けられにくい場所にあるので大丈夫です」

ルイ「マスターの店と同じだね」

ゆい「この町にあってないようなものですから。地図ではこのあたり」

ルイ「駅前は闇が多いなぁ」

ゆい「商業区域、住居区域、としっかり区分されてますから」

高砂「ふぁみれしゅが欲しー」

ゆい「商店街から独立するようなお店が珍しいですから。美しき哉、田園風景」

高砂「変なところで田舎だ」

ゆい「実際栄えてるのは駅前だけですから」

ルイ「歩くと結構あるよね。自転車とか持ってないの?」

ゆい「自転車ですか。八城ちゃん歩きですから」

高砂「飛んだほーが速いのに」

ゆい「その手段を我々は持っていません」

ルイ「あはは」

ゆい「宅配業務は自転車ですか?」

ルイ「うぃ、自転車とバイク、半々かな。もちろん荷台付き」

ゆい「そりゃあ大層な自転車で」

ルイ「車で入り込むのはみんな避けてるよ」

ゆい「大通りの方が家ありませんから」

ルイ「あの道は一体」

ゆい「ただ海岸線を繋げるだけの道路です」

高砂「しょの道はうちには来にゃい」

ゆい「また違う隣町です」

ルイ「魔女さんの住んでるとこがこっちで、道が繋がってる町がこっちか」

ゆい「山道と海岸線、交通の要所ですね」

高砂「ほー、こーなってたのか。山越えはしんどいだろー」

ゆい「一度歩いていきましたけど、結構大変でした」

ルイ「軽い登山だね」

ゆい「登った先にあるので、まだいいんですけどね」

ルイ「登山ってのは下りの方がラクチンだよ。駆け下りられるわけだし」

ゆい「あんまり走ったりはしないんですが」

高砂「しゃちょーの場合、まず筋肉をちゅけないと」

ゆい「腕はまだほうき掃いてるんですが」

ルイ「あはは、荷物運ばないと。わたしもそんな重いのは無理だけどね」

高砂「しゃちょーはほしょいな」

ゆい「高砂さんも他人のこと言えないのでは?」

高砂「体力の代わりに魔力をちゅかってるからいーのだ」

ゆい「はあ、わたしにゃあ理解できませんよ」

ルイ「わたしもわかんない」

高砂「まーなんだ。魔力しょーひしゅると身体に負担はかかるぞ」

ゆい「体力とはまたべっこになるわけですね」

高砂「走って息切れしゅるよりは町を焼きちゅくしたい」

ルイ「マスター連れて引っ越そうかな」

ゆい「ああ、また二人転出者が」

高砂「でもあれじゃないか。しぇかいのしゅーまつは必ず訪れる」

ルイ「うぃ、だから人は救いの主を求めるわけ。主は人々を恐怖から救い出し、楽園へと導くでしょう」

ゆい「導き、ですか。可能な限り、人の手で解決したいものですね」

ルイ「翼を持たずして、起こり得る奇跡は存在するの?」

ゆい「試してみる価値はあると思います。人間の可能性ってやつを」

高砂「信者だからってみんなたしゅかるわけじゃないしなー」

ルイ「それはあれだよ。お布施の金額や信仰心。わたしはあんましないなぁ」

ゆい「信仰心は行動で決まるとは思いませんね。心謂わば気持ちの問題です。行動に表れずとも、信じる気持ちが強ければいいのです。そうでしょう、るーちゃん」

ルイ「そうか、わたしも立派な信者だ。信じる者は救われる」

ゆい「その通りです」

高砂「このしぇかいにいられなくなれば、しょんなものもしゅてる」

ルイ「確かに。信じられなくなったらそれまでだよね」

高砂「どーちょーしゃがいなくなるわけだからな」

ゆい「何もかもが一瞬のうちに消え去るのでしょうか」

高砂「たかしゃごならしょーしゅしゅりゅ」

ルイ「魔女さんおっかないね」

ゆい「いつもこんなんですよ」

高砂「この町だけはたかしゃごの手で」

ゆい「他人の町を巻き込まないでください」

高砂「しゃちょーがしゅんでるからこしょ、でもあるが」

ゆい「わたしが許しませんからね」

高砂「しかし、しゅーまつを迎えたらしゃいご、げーいんきゅーめーはできまい」

ゆい「それはそうですけど」

ルイ「魔女さんがこの町の救済者になるんだ」

ゆい「高砂さんなら守ってくれそうな気がしますね」

高砂「しゅーまつを迎えしとき、高砂が手を貸しゅことはないと思う」

ゆい「そーんなこと言って、高砂さんの些細な行動が人々を救うんですよ」

ルイ「ああ、救済者様。その時になったらお願いします」

高砂「職人がしょのとき、どこにいるのかわからない。助けてもらうにしても、たかしゃごじゃない誰かってかのーしぇーもあるし」

ルイ「その人がきっと運命の人なんだね」

ゆい「るーちゃんの理想高すぎます」

ルイ「あはは、理想は高く掲げるものだよ。それにね、それまでの全てを失うなら、以後安心できる存在あるいは空間が必要だと思う。いつまでも悲しい過去を引きずってちゃ人は未来を歩めないんだよ?」

ゆい「それはもっともな意見ですね。るーちゃんのように前向きになりたいです」

高砂「たかしゃごは失敗しても全く気にしてない

ゆい「それで研究費用は足りるんですか?」

高砂「げんじょー問題ないし、還元できてる。それにたかしゃごには信頼できるしゃちょーがいるわけだし」

ゆい「あくまで友人としてですからね。一個人として高砂さんの研究には付き合えません」

高砂「しょー固いことゆーなよ。しゃちょーは耳を傾けてくれるだけでいーんだから」

ゆい「余計な口出しなんかしないしできません」

高砂「まー人にゃー得手不得手があるか」

ルイ「魔法なんか魔女さんにしか使えないじゃん」

高砂「ゆーれーはしゃちょーにしか見えないし」

ゆい「霊能力者は探せばいるかと」

高砂「れーのーりょくはかんかちゅがいだ」

ゆい「物理よし、超能力みたいなのもあれば、鬼火を灯すこともあります」

ルイ「幽体離脱みたいなのは?」

ゆい「ありますね。本体から分離するので少々危険ですが」

高砂「生きながらして死ぬもんじゃない。下手したら帰ってこれない」

ゆい「高砂さんは無事でよかったです」

ルイ「え、魔女さん、何かあったの?」

高砂「ちょっと地獄に行ってきた」

ルイ「え、地獄ってそんな簡単に行けるとこなんだ」

高砂「くしゅりをちゅかえば簡単だ」

ゆい「一時的に死んじゃう薬です。服用したくないですねぇ」

ルイ「地獄は行きたくないなぁ」

ゆい「神を信ずる身ならばきっと天からの迎えがあることです」

ルイ「そうだね、誰が為の十字架か。でもどっちに行けるか神の御心次第、審判が行われるんだよ」

ゆい「微塵も過ちのない真人間なぞ存在するのでしょうか」

高砂「しゃちょーはどす黒い。いつも人に飢えている」

ゆい「はっはぁ、食人は文化ですよ。そういう高砂さんだって実験に使うじゃないですか」

高砂「ざいりょーとゆー点では一致しゅるが」

ゆい「結局は我々似た者同士なんですよ」

ルイ「人類みな兄弟っいうしね」

ゆい「人である以上みんなどこかで繋がっているというアレですか」

ルイ「うぃ、原初にたどり着けば、二人の男女だからね。人は植物じゃないんだから生えてきたりしないよ」

ゆい「神より授かりし命を無駄にする人なんて食べちゃいます」

ルイ「天使が見えちゃったんだよ。だから首を括っちゃう」

ゆい「人はなぜ殺し合いをするのでしょうか」

ルイ「どうしても欲しいものがあるから。あるいはその欲求を満たすため、かな」

ゆい「それが自分の権益において得難いものであっても?」

ルイ「多少無理を侵してでも手に入れたいんでしょ。なるほど、だから事件は起きちゃうのかぁ」

高砂「みんなけんきゅーにぼっとーしてれば事件なんて起こらないのに」

ゆい「ひきこもり推奨ですか」

高砂「他人に関心を持つとろくなことない。ゆーじんとはこーして気兼ねなく話しぇなきゃ駄目だぁ」

ゆい「だから友人は現状維持ですね」

高砂「出会いがないから」

ルイ「視界が狭いよ。全ての人に愛を与えないといけないの」

ゆい「わたしもその一人、それでいいじゃないですか」

高砂「にゅーしんしゅる、るーちゃん教」

ルイ「わたしはただのクリスチャンさ」

ゆい「うちにも十字架みたいの欲しいです」

ルイ「御守りくださいな」

ゆい「それなら販売していますよ」

高砂「ちゃっかりしてるな」

ゆい「そんなに高いものでもないですし」

ルイ「安いの買うよ。百円ぐらい」

ゆい「さすがに百円はないですけど」

ルイ「でも御守りって身に付けないよね」

ゆい「御守りは持っておくものですからね。鞄の中なんかに大事にしまっておくんです」

ルイ「首に掛けたいね」

ゆい「勾玉ですかね。仏教ならお数珠なんかありますけど」

ルイ「いいね勾玉。買っちゃう」

ゆい「るーちゃんの場合、御守りでいいのでは?」

ルイ「十字架も大事だけど、たまには、ね」

ゆい「では蔵の方に」

ルイ「蔵?」

ゆい「出店とかありませんし」

ルイ「そういうのは雇っていいんじゃないかなぁ」

高砂「しゃちょーはドケチだからな」

ゆい「つかさん達もそんなに暇じゃないですからね」

高砂「しょーいや故国に帰ってるらしー」

ゆい「本場アルプスですか」

ルイ「アルプスとかヒマラヤとかいいよね」

ゆい「登山するんですか?」

ルイ「昔家族でね。こっち来てからはそんなにかなぁ」

高砂「職人も山に引っ越しぇばいーのに」

ルイ「高地は慣れてるけどね、今は海が近い所でもいいかな、なーんて」

ゆい「海も山もいいものですからね。高砂さんは山側の過激派です」

高砂「海は山のよーに木が生い茂っているわけでもないし」

ゆい「海の中も神秘的ですよ。魚が群をなし、海藻が揺れ踊る様は決して山に劣りません。可能なら海底に神社を移したいくらいです」

ルイ「せぼん。なかなか夢があるね。窓からは魚たちが見えるんだよ。天然の水族館」

ゆい「竜宮城の皆さんに参拝してもらいたいです」

高砂「ちゅいに人を諦めたか」

ゆい「人外の方が清らかな心を持っています」

ルイ「ゆい、マスターの店で給仕してみない?」

ゆい「知らない人と話すなんてできません」

高砂「しゃちょーに聞き手は向かない」

ゆい「無趣味なんで他人の話なんか理解できません」

高砂「まほーぐらいは触れとくべきだ」

ゆい「八城ちゃんのような好奇心が欲しいです」

ルイ「知らないことは知ろうとしないの?」

ゆい「あらゆる知識を探求してはキリがないんです。広く浅い知識を持つより、狭く深い得意分野を持っていることを誇るべきでしょう。己が理解できない知識を学ばんとするのは愚かなことです」

高砂「だからって諦めることもないと思うが」

ゆい「魔法は才能だってさんざん聞きましたけど」

高砂「ちょっと腕貸してみ」

ゆい「はい」

高砂「脈がない」

ゆい「ははは、夢の中とでもいうのですか?」

高砂「現実とゆーほしょーもないが」

ルイ「こうして三人で話せるのも夢のようだね」

ゆい「そう現実離れしてる事象でもないですけどね」

高砂「夢の中では生きていると思うか?」

ゆい「この目で確かめられるものじゃないので生きているようには思えません。かといえ死んでいるとも言い難い」

ルイ「じゃあ死後の世界で夢は見れるかな」

ゆい「夢とは醒めて見るものじゃないです。それは死んでからでも同じです」

高砂「死がどーゆーじょーたいか、たかしゃごには分からない」

ルイ「魂が抜けた状態っていうけど、実際には分からないよね」

ゆい「目の前が真っ暗になり、心拍機能が停止します。その後は死者のみぞ知るところです」

ルイ「後冷たくなって、死後硬直に入っちゃうんだ」

高砂「しゃちょー、たかしゃごが地獄に行ったときはどーだった?」

ゆい「あれがまさしく死ですね。他人にはどうすることもできません。高砂さん本人が帰ってこない限り、息を吹き返すことはなかったでしょう」

高砂「しゃちょー、しゅごい顔になってた」

ゆい「大切な人の死ほど悲しいものはありませんよ」

ルイ「友情って素晴らしいね」

ゆい「ただの腐れ縁ですけどね」

高砂「まるで離れていたとも思わにゃい」

ゆい「お互い一人でもやっていけますからね」

ルイ「わたしはマスターに会うためにこっち来たんだけど」

ゆい「実際そこにいるなんて思わないほうがいいですよ。人は知らぬ間に行方をくらましてしまうのです」

高砂「たかしゃごがけんきゅーじょにしゅんでたことなんて知らないだろー」

ゆい「初耳ですね。家がないときがあったんですか」

高砂「物を持ち込んでたから帰っても何もなかっただけ」

ルイ「それだけ信頼してたってこと?」

高砂「けんきゅーいんはみな無口だった。その空気にたかしゃごはしょめられていたのだ」

ゆい「じゃあなぜやめたんです?」

高砂「どくりちゅがひとつ、しょれとかいほーとゆー名のじゆー」

ゆい「息苦しいのはあったんですね」

高砂「いくら居心地がよくても、澱んだくーきはいちゅまでもしゅっていられにゃい。その後はしゃちょーが知っているとーり」

ゆい「こっちに来て、いやだからその後が知らないんですが」

高砂「しゅこし旅に出てたかな、しりょーあちゅめて、時にはしぇかいを往き来したりってとこ」

ゆい「魔界や天界ですか?」

高砂「へーこーしぇかいとゆーのか。しょこではしゃちょーに会わなかった」

ゆい「わたしの知らない間に別のわたしと会ってたらぞっとします」

高砂「へーこーしぇかいでもこのしゅーへんに降り立つわけじゃないし」

ゆい「それ平行世界の意味ないと思います。ただの遠出でしょう?」

高砂「まーへーわなしぇかいだった。事件のひとつも起きやしない」

ルイ「神より授かりし命で何不自由なく生き、天寿を全うする。これこそ理想の生き方だよね」

ゆい「いくら事件が起きなくとも寿命というのは人それぞれですけどね。若くして亡くなる人がいれば、それこそギネスに載るような人も現れるのですから」

ルイ「わたしもできるなら長生きしたいなぁ」

ゆい「仮に何百年も生きられたらどう思いますか?」

ルイ「今持っているものが骨董品になるよね。そしてわたしは人間国宝になる、ような偉業を成し遂げたいな」

高砂「ろくじゅーななじゅーでろーじんになるならくつーだな」

ゆい「老けないようにしないと仙人になっちゃいますからね」

ルイ「山姥になるのもいいかも」

ゆい「あまり悪さをすると、高砂さんに森ごと焼かれますよ」

高砂「んー森より町のほーがいーな」

ゆい「じゃあるーちゃん町で悪さをしてください」

ルイ「わたしが怪獣役だね、がおーっ」

高砂「ふはは、かいじゅーめ。この町ごときしゃまを焼き払ってやりゅ」

ルイ「かかってこい、がおーっ。ちょっと待って、魔女さんも悪だったら誰も助けてくれないよ!?」

高砂「だいじょーぶ。ちょっと焼け野原になるだけだから」

ゆい「どうせみんな死んじゃいますしね」

ルイ「ゆいがそんなんじゃこの町は終わりだぁ」

ゆい「こればかしはわたし一人の力で何ともできませんし」

高砂「自分だけ助かればいーと思っているな、しゃちょー」

ゆい「可能な限りは救いたいのですが。るーちゃんとかるーちゃんとか」

ルイ「ほんと? 約束だよ?」

ゆい「すみません保証できません。その刀剣で斬り捨ててください」

ルイ「へぇこれが刀かぁ。重くて振れないや」

高砂「たかしゃごのほのーをゆーごーしゃしぇれば、しょのしょんざいごとかきけしぇる」

ゆい「なんならこのナイフで。毒が塗ってあります。この通りです、お願いしますっ」

ルイ「いらないよ、わたしにはわたしが信じる主がいらっしゃるので」

ゆい「そのまま連れていかれないでくださいね。飛び立つ瞬間にふとももに飛び込んでさしあげます」

ルイ「天使の歌声が聞こえてくる」

ゆい「そしてそのまま押し倒します。この世に未練を与え給へ」

ルイ「そうだ、マスターを助けなきゃ」

ゆい「わたしのような利己的な人間になってはいけないのです」

高砂「愚かだな、とても醜い」

ゆい「人として演じる必要があるのです。例え何もできなくても己が力を生かしたい、そう思っちゃ悪いですか?」

高砂「くーかんの狭間を歩いているだけだ。しょの歩みは誰も見ちゃいない」

ゆい「これは辛口です。本場のカレーです」

ルイ「カレーって結構辛いんだね。熱いの辛いの大変だよ」

ゆい「熱いと辛いは相性抜群ですから」

高砂「カレーよりちゅーかが作りたい。ちゅーぼーが燃え上がるよーな」

ルイ「厨房燃やしちゃやーよ。火事は未然に防がないと」

ゆい「高砂さんは加減を知りませんから」

高砂「としゃちょーはゆーが、焚き火ぐらいならたかしゃごにもできる」

ゆい「まあ焼き芋はやりましたけど」

ルイ「焼き芋食べたいな。八百屋さん見てこよか」

ゆい「わたしも大将の所行ってこないと」

高砂「たかしゃごは特にないな」

ゆい「薬の触媒とかないんですか?」

高砂「資材店のほーには置いてなかった。今欲しーのは人の血よ」

ルイ「魔女さん、吸血鬼なの?」

高砂「うしゅいながらもしょの血は流れている。だからたまにしゃちょーからいただくことたしょー」

ゆい「わたしの血は神職でありながら汚れてますけど」

高砂「ぼんのーをしゅてしゃれ、そしてきゅーらいの形に戻るのだ」

ゆい「ヴァージンループですか」

ルイ「ん?」

高砂「しゃちょーは変態らしー」

ルイ「そんなことフランスにいたときから知ってるよ」

ゆい「誰ですか、わたしのことを世界に拡散したのは」

高砂「しゃちょーはゆーめーだからな」

ゆい「有名になるのは嫌です。いつ命を奪われることか」

高砂「しょのときはたかしゃごが守ってやるしゃ」

ルイ「いつでも助けてくれる人がいて羨ましいなあ」

ゆい「能力者ってだけで珍しいですからね」

高砂「みんな隠れしゅんでるだけだ。どこにいるかは知らにゃいが」

ゆい「集団を好まないのでしょう。みんな魔術研究に忙しいのです」

高砂「けんきゅーに現を抜かし、人の顔をわしゅれるのだ」

ゆい「ひきこもった高砂さんはきっと人じゃない何かですね」

高砂「家の中だからバケモノでいられる」

ルイ「一人だからっていうのはあるよね」

ゆい「そういえばみんな一人暮らしなんですね。自炊すごいですね」

ルイ「一人暮らしは自炊か外食だしね。わたしはどっちもするけど、あまり家戻らないからどっちかというと後者かな」

ゆい「マスターのお店で作れますしね」

ルイ「マスターんとこでやるのはどっちに当てはまるのかな。よそでご飯作るって変な気分。あっ、マスターが作ることも多いけどね」

ゆい「わたしは磨夢さんに全部任せてますけどね」

高砂「しぇんしぇーのりょーりは美味いからなー」

ルイ「磨夢の料理食べたことないけど、二人が言うなら美味しいかな。今度お邪魔していいかな」

ゆい「わたし言われましてもあの家の者じゃありませんが。まあ確かに一番ちかしい間柄であるので今度連絡しておきます」

ルイ「やったー、楽しみー」

高砂「あんな家いつでもしんにゅーできるが」

ゆい「そんなんやるのわたしたちくらいですよ。普通の人なら表玄関から入るはずです。ね、るーちゃん」

ルイ「あ、うん、そうだね。お客様の家には正面突破しかないよ」

ゆい「そりゃ庭から入るのは言語道断ですよね」

ルイ「その行為が許される関係ならってとこだよね」

高砂「たかしゃごはしゃちょーが見えたらきゅーこーかしゅる」

ゆい「それは危険なので直ちにやめてください」

高砂「うむ、怪我はしたくないからな」

ゆい「怪我どころじゃないです、何度も死にかけています」

ルイ「やっぱりお空の散歩は危険なの?」

高砂「慣れていても決して油断はできない」

ゆい「空から人が落ちてきたら八割方高砂さんです」

ルイ「人が落ちてくるなんて聞かないよ」

高砂「天使が堕ちてくるだろー」

ルイ「羽のない天使さんかぁ」

ゆい「天に帰れなくなった天上人はただの人となり果てるのです。それは悪魔だって同じこと。悪さができないなら悪魔失格です」

高砂「夜な夜な町に火をつけてまわるりゆーもしょこにある」

ルイ「通りで夜明るいわけだ」

ゆい「わたしも何かしないとですね」

高砂「しゃちょーと一緒にいるとじゅみょーが縮まる」

ルイ「嫌だぁまだ死にたくなぁい」

ゆい「いいえ、伸びます」

高砂「うしょだ、こーして話しているだけで二百年は縮まってる」

ルイ「二百年かぁ、わたし生まれ変わってるね」

ゆい「るーちゃんは今まで以上に美人になっています」

ルイ「こないだ美人の湯に行ってきた効用かな」

ゆい「井筒さんとこは種類が多いのです」

高砂「番台にはしゃいきん顔見しぇてないな」

ゆい「また夜に行きましょう」

高砂「いーな、貸切だ」

ルイ「貸切いいな、わたしも仕事抜け出して行こうかな」

ゆい「戦力半減したらマスターもやってられませんよ?」

ルイ「ああ見えて昔一人でやってたんだよ?大丈夫だって」

高砂「客も半減しゅる」

ルイ「マスターなら大丈夫」

ゆい「今じゃるーちゃん人気高騰中みたいですけど」

ルイ「わたしはお菓子作ってるだけだよ。それにわたしが一人になってもお店回せないよ?マスターありきのお店だから」

ゆい「そうですね、マスターがいなきゃ店として成立しませんか」

ルイ「わかってくれたんだ」

ゆい「革命を起こさんとする者には賛同者が必要不可欠ですからね」

高砂「一人や二人じゃ何もできない」

ゆい「るーちゃんなら集めてくれますよきっと」

ルイ「知り合いにゆいや魔女さんみたいな人はいないよ」

ゆい「なぁに洗脳すりゃいいだけです。こっちには高砂さんがいるんですから」

高砂「あれちゅかれるからやだ」

ゆい「今度ご飯ご馳走しますから」

高砂「いらにゃい」

ゆい「高砂さんへのお願いなら、腕の一本や二本、惜しくありません」

高砂「今度達磨にしゅるからいーや」

ルイ「なんだか不穏な会話が」

高砂「ましゅいあるからへーき」

ゆい「わたしならともかく、普通の人間にはとても耐えられたものじゃありませんよ」

高砂「ちゅかったあとはもとどーりにしてる」

ゆい「文字通り手も足も出せません」

高砂「じゃーな、しゃちょー。次会うとき、しょの手足があると思うな」

ゆい「ひぃぃっ」

ルイ「ん、んじゃあ、わたしもここで」

ゆい「ふぇぇん、置いでがないでぐだざいぃぃ」


297

磨夢「裸にジャージはエロい」

霞「中だけ脱がすとはなかなかマニアックです」

磨夢「今度わたしが雨の中霞の家行ったら霞が中学のときのジャージ着せて」

霞「先生ははだワイで十分です」

磨夢「ん」

霞「むしろ靴下だけで十分です」

磨夢「そのまま暖めてくれるなら」

霞「最近朝なんかは特に冷えますよ。わたしのベッドは好きに使っていいですからしっかり暖をとってください」

磨夢「そうじゃない」

霞「親はいないときのほうが多いですから、お風呂入ってもいいですよ」

磨夢「いぢわる」

霞「お菓子は大量に仕入れてありますからいつでも好きなだけ食べていいですよ」

磨夢「………」

霞「どうしましたか。まだもてなしが足りませんか。これ以上何を望みますか」

磨夢「子供が欲しい」

霞「何人欲しいですか。先生に負担がかからないくらいがいいですね」

磨夢「ん、頑張る」

霞「先生は異種姦のほうが似合いそうです」

磨夢「むぅ、霞はわたしをどうしたいの」

霞「そりゃもう、むちゃくちゃにしたい、なんて思ってませんよ。誰よりも大切に想っています」

磨夢「霞」

霞「おおっと、口づけはお預けだぜ。いや別に受けてもいいですが」

磨夢「じゃあ、霞から」

霞「えっと、どこからでしたっけ」

磨夢「焦らさないで」

霞「えとえっと」

磨夢「霞っ」

霞「もぐっ」

磨夢「………」

霞「……?」

磨夢「………」

霞「……!」

磨夢「………」

霞「……ぷはっ、はあ、はあ。でぃ、ディープキスがこれほどの味だったとは」

磨夢「霞にわたしの全てを注ぎ込んだから」

霞「ふふ、せーんせい」

ドサッ

磨夢「霞、力が強い」

霞「先生は非力すぎません?」

磨夢「わたしと霞、どちらも同じ引きこもり。その体力に大差なし。だから二人は惹かれあう。その愛に偽りなし」

霞「その愛が真実なのか、確かめ合いたいですね」

磨夢「霞、来て」

霞「先生、その顔は反則です」

磨夢「あっ」

霞「まだ何もしてませんけど」

綺天「きてんが帰ってきたぞーーっ!!」

霞「はて、どちら様でしょうか」

綺天「この顔を忘れたというのかね? 幼き頃、生涯共にあろうと契りを交わしたではないか」

磨夢「なにこのどろモゴ」

綺天「今ベッドから声がしたっ確認するぞ」

バサッ

綺天「なんだ五月人形か」

磨夢(ギヌロ)

霞「磨夢さん抑えて抑えて」

綺天「しかし人形と一緒におやすみなんて、ねえねは昔と変わらんな」

霞「きーちゃんも相変わらずですね」

ガバッ

磨夢「ねえね!?」

綺天「最近の五月人形は喋るんだー。きてんびっくりしたぁ」

霞「いや、普通に人間ですけど」

磨夢「どうも義妹様。お姉さんの彼女です」

綺天「これはこれは。いつも姉がお世話になっております。末永く爆発しろ」

霞「きーちゃん」

綺天「ねえねも隅に置けんなぁ。さてはお邪魔したかな」

磨夢「ん、とっても邪魔。今すぐ地球から出てって」

綺天「ねえねの彼氏だかなんだか知らないがきてんの後ろには聞いて驚くな、ねえねがいるんだぞ。怒ったらママより怖いんだぞ」

霞「まあまあ二人とも。初対面なのに喧嘩してどうするんですか。まずは自己紹介からしたらどうですか」

綺天「じゃあきてんからな。三宅綺天。唯一無二のねえねの妹だ」

磨夢「わたしは延原磨夢。霞はわたしの嫁。例え相手が妹だろうと渡しはしない」

綺天「でもね、綺天のほうがねえねとの関係が深いね。なんだってねえねはきてんが産声を上げたときからの付き合いだからな」

磨夢「わたしは霞にピーをピーされたりピーでピーされたりしたし」

綺天「ねえねも変態なんだな」

霞「安心してくださいきーちゃん、この人が変態なだけですから」

磨夢「霞がSだから相手は絶対的に皆Mになる」

綺天「なるほど、じゃ、じゃあきてんも、あんなことやこんなこと、されちゃうのかな」

磨夢「近親相姦はまずい」

霞「そういう問題ですかね」

磨夢「ところで霞の妹って行方不明になってたんじゃ」

綺天「あれ、そういや5年くらい記憶が飛んでいる気がする」

霞「きーちゃん何も言わずに出てったじゃないですか、あれ、もしかして誘拐」

綺天「悪いな、きてんも記憶にないんだ」

霞「ツゴウガイイナー」

綺天「出てったのは覚えてるんだけど、あ、これか。月の石」

霞「月行ってたんですか」

綺天「月帰りの人から貰った」

霞「そんな里帰りみたいに」

綺天「あとこんなのも、ちょっと重いけど」

霞「わーわーわー」

磨夢「え、何、どしたの、霞」

霞「先生だけには見せられないものです」

磨夢「霞の等身大人形」

綺天「正解、正解者のあなたにはそのまま差し上げます」

磨夢「やった、嬉しい」

霞「あーあ、もう好きにしてください」

磨夢「これでいつでも霞と一緒」

霞「じゃあもううちに来なくて済みますね。いつでもわたしと一緒ですから。これでゆっくりゲームができます。きーちゃんぐっじょぶです」

綺天「わはは、ねえねの喜びはきてんの喜び」

磨夢「やっぱなしで。これ返す」

綺天「えー、きてんの自信作なのに。仕方ない、ねえねの部屋に飾っとこう」

霞「自分の部屋に自分の等身大人形を飾る人がいますか。きーちゃんの部屋ちゃんとありますからそっちに」

綺天「へー気が利くこった。後でかたしとく」

霞「で、わたしのとこに置いておく、と」

綺天「うん」

磨夢「それにしても霞の妹、訊きたいことは山ほどある」

綺天「なんだね、ねえねのことならなんでも尋ねたまへ」

磨夢「じゃあスリーサイズ」

綺天「昔はバスト80台だったけど今は90あるんじゃないかね。なんでこんなにでかくなるさ? わたしにはわからない」

霞「よく食べてよく寝ることです」

綺天「えー、きてんは結構食うほうだぞ?」

磨夢「個人差があるから。後はよく揉むこと。妹君にも期待はできる」

霞「言ってて空しくないですか」

磨夢「………」

綺天「そういや言うよね、人から揉んでもらえばいいとか」

霞「どこでそんなことを」

スカッ

磨夢「………」

綺天「きてんよりもない」

磨夢「霞がちゃんと揉んでくれないから」

綺天「なるほどね。それはねえねの怠慢か」

霞「先生は呪われてるかの如くまな板ですから。揉んでもほとんど効果がないのです」

綺天「悩ましいな、実に悩ましい」

磨夢「三宅家の遺伝子が欲しい。だから霞の子供が欲しい」

霞「それ先生には影響ないものかと思いますけど」

磨夢「わたし、頑張るから」

霞「えー」

綺天「ねえね、きてんは許可するぞ。お家の存続はねえねに任せた

霞「きーちゃん、意外と結婚は興味ないほうですか」

綺天「結婚かぁ。好きな人とかできるかわかんないし、きてんはきてんなりに生きていくさ」

霞「今回の旅で出会いとかなかったんですか」

綺天「いろんな旅人にあったよ。泳いで列島一周する人、路上のギタリスト、きてんとおんなじように路頭を迷う人とか」

霞「もしかして帰れなくなってたんじゃないですか」

綺天「そうかもしんない。この町からずっと遠くに行っちゃってたから」

霞「通りで戻らないわけですねぇ。まさか本当に帰ってくるなんて思ってもいませんでした。あまりにも長い年月が経っちゃいましたし。えっと、きーちゃんって今14ですよね」

綺天「そうだよ、ねえねと二つ違いだから。学校も考えなくちゃいけないかぁ」

霞「父さんも母さんもそう思っているでしょう。うちの中等部になると思いますけど」

磨夢「飛び級を期待」

霞「姉妹で同学年ってのもなんか複雑ですね」

綺天「ねえねと同学年……じゃあ中等部も実質なしだな」

霞「じっくり二年間学んでから進級するのもいいと思いますよ。仮についていけなくても、わたしや先生を始め、みんなが手を貸してくれます」

綺天「さっきから先生言ってるけど先生?」

磨夢「わたし? そうだけど」

綺天「きてんと同じ年に見えるけど」

磨夢「飛び級といえば納得してもらえる?」

綺天「飛び級かぁ、飛び級なら納得、先生」

磨夢「それでわたしと霞は教師と生徒という禁断の愛に染まっていく」

綺天「禁断の愛かぁ。ちなみに両想いってやつ?」

磨夢「ん」

綺天「ねえねよかったね、こんな素敵な人と巡り会えて。早く孫の顔が見たいのぅ」

磨夢「ん、頑張る」

霞「別によそから貰ってきてもいいんですが」

磨夢「わたしと霞の子供だからいいのに」

霞「愛が重い、というやつですかね。確かに両想いです。先生のことは大好きです。その想いと同じくらい先生を傷つけたくないんです。先生に白い天井なんて似合いませんから」

磨夢「わたしよく保健室で寝てるけど」

霞「仮病だけは得意ですよね。先生にあまり身体が弱いという印象はありませんし」

磨夢「………」

綺天「先生も旅に出よう。旅先で食う団子は美味しいぞ」

磨夢「家の人間が餓死するからパス」

霞「それは信用しなさすぎだと思いますが。ひとまず椎木先輩との交渉ですよね」

磨夢「ん、ちるに住み込んでもらえば無問題」

綺天「じゃあ明日にも出発だ」

磨夢「まだちょっと忙しい」

霞「きーちゃん、せっかく帰ってきたんですからゆっくりしていってくださいよ。なんならわたしの部屋使ってもいいですよ」

綺天「ねえねの部屋か、いつでもごろごろしに来るよ。今きてんの部屋何もないだろうし」

霞「はい、いつでもごろごろしておいてください。正直、きーちゃんの部屋は物置と化してますから片付けなきゃですね」

綺天「それまではねえねの部屋にいるー」

磨夢「わたしも霞の部屋にいる」

霞「先生はお家に帰ってくださいね」

磨夢「妹先輩先生友人霞が主人公向いてると思う」

霞「幼なじみがいないんですよ。もう先生が幼なじみでもいいんですけど」

綺天「きてんは先生とは今日初めて会った」

霞「長年町を離れていたきーちゃん知ってる人なんて家族以外にまずいませんよ」

綺天「きてんもこの町のこと忘れてらぁ」

霞「きーちゃんの帰ってくる場所はいつでもこの町ですからね、忘れないでください。ところで先生はここの方ではないんですよね」

磨夢「ん、でも最終漂着地点第二の実家みたいなもの」

霞「まあ先生もいろいろあったみたいですが、今を楽しく生きてればいいと思いますよ。ギルメンはみんなイキイキしてます」

綺天「ほぅこれがパソコン、これでゲームをしてるのね」

霞「ネトゲは面白いですよ。育てれば育てるほど強くなりますから。ただ最新環境についていくとなると、それなりの根気は必要ですが」

綺天「ねえねのこれ、とても強そうだ」

霞「武器は頑張りましたけど、防具は二流ですよ」

磨夢「本垢じゃなさそう」

霞「十二人目です」

磨夢「わたしのも育てといて」

霞「自分でやってくださいね。先生も本垢はなかなか強いじゃないですか。ギャイナモスかっこいいですね」

磨夢「あれ魔物呼び寄せがきつい」

霞「魔王気分で楽しめるじゃないですか。誰も近寄ってこなくなりますけど。魔物の強さはもちろんレベル準拠です。大丈夫です、わたしが蹴散らしにいってあげますよ」

磨夢「どこまで強いのか」

綺天「ねえねは最強だぞ。母ちゃんも認めるくらいに」

霞「母さんは規格外ですねぇ」

磨夢「お義母さんにも挨拶しとかないと」

霞「今遠征中なのでいないです」

綺天「ということはきてんが飯作らないとだな。よぉし、はりきっちゃうぞ」

霞「まあそろそろ寝なきゃですけど。先生もちろん泊まっていきますよね」

磨夢「ん」

綺天「そういやきてんも疲れて眠い」

霞「一日や一週間どころじゃない疲れですよね。ベッド使ってください。わたし布団持ってきますから」

磨夢「ん、そうする」

霞「先生は廊下で寝てください」

磨夢「ひどい」

綺天「きてんの部屋空いてるぞ。蜘蛛の巣だらけだと思うけど」

霞「開かずの間ってやつですよね。黒い何かも走り回ってそうですね」

綺天「蜘蛛は好きだけどゴキは無理だなぁ」

霞「あとゲジゲジとかガガンボも好きですよね」

綺天「小動物特有の愛らしい動きがいいな」

磨夢「大きいのは苦手?」

綺天「捕食は勘弁でございます」

霞「でかいからといってみんながみんな肉食なわけじゃないですけど」

綺天「キリンやゾウみたいな、虫にもそういうのいるんかね?」

霞「でかい虫って大抵おぞましいですよね」

磨夢「さそりはかっこいい」

霞「しっぽの針でぐしゅっといくのがイカしますね」

磨夢「毒でじわじわとやるのが好き」

霞「こっちゃあぞわぞわするんですが」

綺天「ねえねは先生にやるよ」

磨夢「妹公認」

霞「すげく感情がこもってないでふ」

綺天「ねえねは嫁にやらんぞ」

磨夢「じゃあわたしが嫁になる」

綺天「え、ねえねって男だったの?」

霞「女ですよ。どっからどう見たって女の子ですよ。ねえ先生。むしろ先生のぺったん具合が」

磨夢「ないものと思えば」

綺天「ねえねの胸を三分割してくれよう」

磨夢「霞の胸に顔を埋めたい」

綺天「先生には夢がないなぁ。現状に満足してちゃダメなのよ」

磨夢「これだけでは足りない、霞」

霞「いや、知らないですけど。そもそもきーちゃんいる前ではちょっと」

綺天「よぉしわかった。きてんがねえねとらぶらぶしよう。先生は廊下で寝たまえ」

磨夢「なるほど、妹のいうことは絶対」

霞「客人は鄭重に扱うのですよ、きーちゃん。粗野な扱いをしてはなりません。ここを逃せば次なる機会はないことを頭の片隅に留めておいてください」

綺天「そうか、先生ともお別れか」

磨夢「わたしと霞は二人だけの愛の巣に引っ越すからお別れ」

霞「どうしてそんな都合のいい解釈ができるんですか」

綺天「ねえねも出ていくとなるとこの部屋は完全にきてんのものとなる」

磨夢「なにそれずるい」

綺天「わっはっは、姉妹としての特権ってやつだぁ。内装もきてん仕様にしよう。とりあえず各地の名産品を並べてっと。このお菓子美味しかったから箱も置いておこう。それと今度旅に出るとき用に食糧を蓄えとこう。そして壁にはねえねの写真を張り詰めて、旅先知り合った抱き枕職人にねえねの抱き枕を特注でお願いしちゃおう」

磨夢「同志」

綺天「ねえねのこと忘れないようにしないと」

霞「わたしがきーちゃんを覚えていたんです。きっと大丈夫ですよ」

綺天「先生のことは忘れてもねえねのことは忘れない」

磨夢「なにそれひどい」

霞「赤の他人だから仕方ないです」

磨夢「未来の義妹。なんなら今日からでも」

綺天「どうみても同い年」

霞「あんまり年のこと言っちゃダメですよ。先生気にしてますから」

磨夢「霞お姉ちゃん」

霞「そっち回っちゃいますか」

綺天「ねえねの妹はきてんだけだぞ」

磨夢「同い年ならわたしも妹」

霞「先生を妹として見ることは一度もなかったです。なぜならきーちゃんこそが真の妹だからです」

綺天「きてんが二人の仲を認めるからそれでいいじゃないか。でも妹の座は絶対に渡しませぬ」

磨夢「やっぱり嫁入りするしかない」

霞「先生はよく通いますよね」

綺天「ちゃんと窓から入るべし」

磨夢「ん」

霞「いや、ですから、一階には誰もいませんし正面から入ってもらって構わないんですが」

磨夢「正面からじゃ面白くない」

霞「別に面白さなんて求めていませんよ?先生が無傷で純潔なままの姿をお目にかかれるならこの霞、これ以上の喜びはありませぬ」

磨夢「無傷で純潔」

霞「不治の病とかってありますけど、現代医学の力があればなんとかなるかもしれません」

磨夢「恋は不治の病」

霞「いつか解決する日がくるといいですね」

綺天「きてんにとっては放浪癖が不治の病」

霞「帰ってきたと思ったらまたスッと居なくなりそう、そんな気がします」

綺天「実家が存在するうちは帰郷の念も忘れないよ」

霞「きーちゃんには帰る場所が必要。あ、でも、旅先で安楽の地を見つけようならそこに定住するのもいいかもしれません。我ら雛鳥いつかは巣立ちのときが来ますから、来ますよね」

磨夢「大丈夫、一生養ってあげる」

霞「先生に甘えちゃってもいいですが、やるだけやってみるつもりです」

綺天「ねえねは総理大臣にでもなるのか」

霞「政治には関心ありません。わたしは医学の力でダメ人間の皆さんを苦しみから解放してさしあげましょう。名付けてダメ人間矯正計画。もちろんそれまでに医師免許を取得しなきゃならんわけですから、その国家試験を通過する必要があります。医者の道は狭き門ですからわたしはまず医大に特待生で入なきゃですね」

磨夢「霞はこう見えて学年主席」

綺天「ねえねは頭いいのな」

霞「これもみんな先生の指導の賜物ですよ」

綺天「ああ先生は飛び級だった」

磨夢「わたしは一分野特化だから霞みたいになんでも分かるわけじゃない」

霞「なぁに言ってるんですか先生、その特化している分野がすごいんじゃないですか。わたしはまだ学生ですし先生のような天才にはとても及びませんよ。そこがまた憧れです」

磨夢「霞にもそんなところあるんだ」

綺天「先生からしても意外?」

磨夢「意外。霞はそういう目でわたしを見てくれないものかと」

霞「嫌ですねぇ、ちゃんと見てますよ先生のこと。むしろ先生しか見えてませんよ最近、というのは大袈裟すぎますかね」

磨夢「いや、全然構わないけど」

綺天「それはいくらなんでも行き過ぎた恋愛だ。ねえねにはわたしという妹がいるし、友達もいることだろう。きてんは一期一会だけどみんな友達になった」

霞「きーちゃんは誰とでも友達になれそうですね。裏表なく接せるのが羨ましいです」

磨夢「………」

綺天「ねえねは誰に対してもこうじゃないのか」

磨夢「霞はわたしに対してだけこう」

霞「先生はわたしに固執しすぎですね。だから通常のわたしであるわけにゃあいけませんのよ」

磨夢「通常の霞ってのを知らない」

綺天「きてんにもわかんない」

霞「優等生というのをやっております。男女分け隔てなく話せます」

綺天「ねえねならありそうだな」

磨夢「でも玄那としか喋ってない気が」

霞「上辺の付き合いというものです。クロちゃんこそが真なる友人なんですよ」

綺天「ほぅらいるじゃないか、友達」

磨夢「で、わたしが恋人」

霞「学園内ではあくまでも教師と生徒です。変な噂されて困るのは先生のほうだと思います」

磨夢「そう」

霞「あまり自覚とかなさそうですね」

磨夢「わたしには失うものがないから」

霞「………」

綺天「教師と生徒の恋愛ってそんなに危険なものか? きてんにはわからない」

霞「その関係というよりは未成年に手を出すことは法律で禁じられていますよ。わたしは被害者と認識されるので何にもありませんが、先生がエラい目に合います」

綺天「法律っちゅうのはめんどくさいのぅ」

磨夢「なおわたしと霞には特例が出され違法認定されない」

綺天「やっぱり先生とねえねは一味違うのかー」

霞「ないです。まあ我々の関係がバレなきゃなんてことはないんですけど」

磨夢「学園で自粛は残念」

綺天「先生可哀想だぁ」

霞「わたしが卒業して医師免許取るまで待っていてくださいね。一生先生のかかりつけ医になりますから」

磨夢「長いしなんか違う」

綺天「一生ねえねと一緒なんて羨ましいぞ」

磨夢「末期症状になるのを今か今かと待たれても」

霞「安心してください。既に手をつけられない状態になってますから。あときーちゃんも同居しましょうよ。そうすれば先生の不慮の事故であの世行きなんてことにはなりませんから」

綺天「先生、死ぬのか」

磨夢「そういう事態に陥ったときのために心臓は複数植え付けられている」

綺天「先生、人間じゃない」

霞「いや、普通の人間ですよ、先生は。自称人外です」

磨夢「さすが霞わたしの嫁」

綺天「仲が大変よろしゅうようで」

磨夢「やられる。そしてわたしは股を広げてみせた」

綺天「え」

霞「両手をあげるぐらいにしてください」

磨夢「ん、無抵抗」

綺天「無様だな、先生」

磨夢「うぅ」

霞「羞恥プレイですね」

磨夢「霞に見られるならむしろ興奮する」

綺天「うわ」

霞「やめてくださいね。うちの妹に変なこと教えないでください」

綺天「先生が変態なのは知ってる。赤の他人でありながらねえねに恋するぐらいだし」

霞「恋というのは赤の他人で正常なものですが」

磨夢「このシスコンめ」

綺天「ねえねは嫁にやらんぞ」

霞「あーあ、せっかく築いた信頼関係が台無しに。この計画はおじゃんですね。一生独身で過ごします」

磨夢「わたしは諦めない。いつかあの美少女を振り向かせてやる」

綺天「わはは、ねえねが美少女だって。数年後にはおばあちゃんなのに」

霞「何年後の話ですか。まあそう遠い話じゃありませんけど」

磨夢「霞攻略難易度高杉晋作」

霞「先輩の壁には先生がいて、先生の壁にはきーちゃんがいる。盤石の守りですね」

綺天「ねえねが欲しくば200万寄越せ」

磨夢「なんならカードごと。暗証番号は霞のスリーサイズ」

霞「なんで漏れてるんですか。ってそもそもわたしを金で買わないでください」

磨夢「じゃあなんならいいの」

霞「愛、ですかね」

綺天「ならきてんの勝ちだな。きてんのほうが付き合い長いし」

霞「きーちゃん数年したら追い越されそうですけど」

磨夢「ん、まだまだこれから」

綺天「じゃ、じゃあきてんは監視役でついていく」

霞「それもう認めちゃってます」

綺天「むぅ、ねえねこんなやつの彼女でいいの」

磨夢「………」

霞「両想いとまではいきませんが、先生の愛情は理解しています」

綺天「薬指ぃっ」

磨夢「今更気付いた」

霞「きーちゃんにあげましょうか」

綺天「そうだな、きてんが預かっておこう」

磨夢「妹はいらない。霞が欲しい」

綺天「ねえねはやらない」

磨夢「じゃんけんぽん」

綺天「勝ーって嬉しいはないちもんめ」

磨夢「負けても諦めないはないちもんめ」

霞「一対一で何やってんですか」

磨夢「よし、指輪は無事」

綺天「石鹸水持ってこないと」

霞「別にいいじゃないですか。わたしは気に入ってますよこの指輪」

綺天「決してそういう意味はなくて?」

霞「わたしがそういう気を起こしてないのはきーちゃんも知っての通りです」

磨夢「嘘ばっか」

綺天「ねえねは昔からそうだ。ほんとのことを言わない」

磨夢「こういうときはキスしたらいい?」

綺天「うーん、きてんわかんない」

霞「わかってて受けはしませんよ」

磨夢「不意打ちほど嬉しいものじゃない?」

霞「先生はそうみたいですね」

綺天「なんでそんなに冷めてんの、ねえね」

霞「きーちゃんはどっちの味方なんですか?」

綺天「え、そりゃあもちろん、ねえね、だけど。こんなどこの馬の骨ともわからん女をかばったりはしない」

磨夢「………」

霞「確かに先生は謎に包まれていますよね。えーと」

磨夢「測ってみる?」

霞「先生って足も小さいんですね。大変可愛らしい」

磨夢「もっと触ってほしい」

霞「先生のほっぺたふにふにですねぇ」

磨夢「わたひは肉ふいへるはら」

綺天「先生みたいな体型が一番じゃないかな。ねえねみたいに無駄な脂肪はいらない」

霞「標準体重を維持しつつ、全身に肉を巡らせるか、一部分に留めておくか。個人の判断によりましょう」

磨夢「そういえば最近太ってきた気がする。お菓子食べすぎかも」

霞「そうですかむしゃむしゃ。自重するのもありかもしれませんよむしゃむしゃ」

磨夢「………」

綺天「久しぶりにお風呂入ってくる」

霞「入ってなかったんですか」

綺天「だいぶ汚れてると思う」

霞「しっかり汚れを落としてきてくださいね。旅人にどうこう言いません」

綺天「あーい」

バタム

磨夢「さて二人になったわけだけど」

霞「期待したところで何も出てきませんよ。とっとと寝たらどうですか」

磨夢「脱いだほうがいい?」

霞「何も言いません。お好きにどうぞ」

磨夢「そう」

ファサ

霞「そのまま風呂の前で待機してみては」

磨夢「寒いやっぱ着る」

霞「何を考えて……」

磨夢「おやすみ」

霞「はい、おやすみなさい」


298

八城「初詣に来たよ。あけましておめでとう」

ゆい「あけましておめでとうございます。もう十日ほど経ってますけど」

八城「なんかいろいろあって来れなかったんだ、ごめんね」

ゆい「せっかく来てもらえたので、おみくじどうぞ。引いてけドロボー」

八城「おほぉ、何が出るかな」

ゆい「わくわく」

八城「大吉頂きました、わーい」

ゆい「おめでとうございます。まだ残ってたんですね」

八城「今年はあたしに敵はいなーい」

高砂「相変わらず人いないなー」

ゆい「正月はそれなりにいましたよ。もう終わりましたけど」

八城「魔女さん、あけましておめでとう、だよ」

高砂「だ、しょーだ、しゃちょー」

ゆい「我々にとっては新年を迎えることがめでたいんですよ」

高砂「ふーん」

ゆい「その目で何を見てきましたか」

高砂「まほーのまの字も知らないむきょーよーども」

ゆい「魔法が広まれば世の中良くなったりするんでしょうか」

八城「便利にはなるかも。火起こしたり電気作ったり」

高砂「まずは元素まほーだ。極めるのは大変だが」

ゆい「単純に高砂さんの目標が高すぎるだけでは?」

高砂「極めるにしても限界がにゃい。きしょを学びおーよーに至りたかしゃごはほのーに惚れてしまったのだ」

ゆい「学校のほうはあくまで基礎魔法であると」

高砂「一つのまほーをけんきゅーし始めるとがっこーのはんちゅーでは補えなくなる。しょーなると独学しかなくなるだろー」

ゆい「八城ちゃん、わたしよりも高砂さんを見本とすべきです」

八城「えー、ゆいちゃんもゆいちゃんで良さはあると思うけどなぁ」

ゆい「理想を述べているだけより実行に移せるほうが尊敬すべきです」

高砂「しゃちょーもしゃちょーでたかしゃごにはよくわからないことを言ってるししゅごいのにゃー」

八城「うん、ゆいちゃんの言ってることも魔法もよくわかんなーい」

ゆい「常に思考を巡らせ頭をよく使うことです。そして求むる理想は常に高きものを仰ぐことですかね。それこそ雲を突き抜ける山の如くですよ。その頂を決して拝むことはありません」

高砂「けんきゅーしゃとして賛同できる意見だ。理想は常に高くあれってか。あるてーどの段階まで達してーるひつよーはあるが」

八城「魔法って全然わかんないの」

高砂「こたいしゃってものはあるけど、やしろんにはしょしちゅがある」

八城「魔女さんそればっかけろ」

ゆい「素質ですか。いったい何を以てそんなことが言えるんですか」

高砂「しゃちょーにないもの、それに限る」

八城「だよねー」

ゆい「それだけで判断できるとはさすが高砂さんです」

高砂「握手したりしゅればわかる。こーゆーふーに魔力を感じ取れる」

八城「魔女さん、手がゆいちゃんみたいに冷たい」

高砂「手袋つけてるのに、ずいぶん冷え込んでんだな。しゃて、やしろんはほんのり温かい」

八城「それが魔力ってこと?」

高砂「もーしゅこしたどっていけば見えるはずいやしかし」

ゆい「どうしました?」

高砂「なんか違う。これじゃない」

八城「掴めない?」

高砂「ふーむ、どーしたものか」

ゆい「血が足りてないんじゃないですか。手冷えてますし」

高砂「なるほどしょれもしょーか。ちょっと失礼」

ゆい「やっ」

ガブッ

ゆい「あ、あ……」

八城「うわぁ……」

高砂「やっぱり不味い」

ゆい「全く、血が飛び散っちゃいました」

八城「あっ、もう元気になったんだ」

ゆい「これくらいなんともありませんよ」

高砂「しゃちょーも地獄を見たほーがいー」

ゆい「なんちゃって高砂さんが加減してくれたんですよね」

高砂「えっ、たかしゃごはちっとも加減してないぞ」

ゆい「えっ」

八城「思いっきりいってたよ」

高砂「しゃちょーも一瞬頭が真っ白になったろう」

ゆい「えっ、うん、まあ、そうですね。ということは高砂さんも人肉に目覚めたということですか」

高砂「人じゃないからやった」

八城「えっ、人じゃない?」

ゆい「むぅ、この身体は人のもののはずですよ」

高砂「でもしゃちょーは自分を食ーまい」

ゆい「自分を食えばまた新しい身体を探さなきゃならないのでやんないです」

八城「ゆいちゃんたちって抜け出せるの。その、身体から」

ゆい「はい、でも簡単にはできませんよ。一応一つの人生を構成しているわけですから。この身ある限りはこのままであるつもりです」

高砂「しゃちょーであるしゃちょーしか知らないわけだ。それはたかしゃごもやしろんも一緒」

ゆい「今のわたしは羽衣ゆいですから八城ちゃんは安心してもらって構いません。身体が変わるなんて何百年周期ですから」

高砂「しゃちょーがいくらしぇちゅめーしても悪魔のしょーめーはふかのーだ」

ゆい「人間界に親しみを覚えてしまえばそうなりますよね」

八城「魔女さんは魔女だけどゆいちゃんを悪魔とは思わないなぁ」

ゆい「この格好ではそう思いますよね。でも実際悪魔なんですよ」

八城「あはは、うっそだー」

ゆい「そんなこと言ってられるのも今のうちですよ」

八城「人間でも悪魔でもあたしゃ気にしないよ。ゆいちゃんはゆいちゃんだもの」

ゆい「ありがとうございます、八城ちゃん。そうですね、わたしはわたし。自我を失うわけにはいきません」

高砂「やしろんはやしゃしーな」

八城「友達だからね。ゆいちゃんはとっても大切な人なの」

ゆい「幸せですね。これならいつでも死ねます」

高砂「死ぬよりはたかしゃごにしょの肉体をていきょーしてくれ。ヒトの肉体とゆーのはさいこーの実験台であるから、寝たきり状態でくしゅり漬けにしてやりゅ」

ゆい「生き地獄ってやつですね」

高砂「達磨にしゅるからだいじょーぶ」

ゆい「何が大丈夫ですか」

高砂「なんなら生首だけでも」

ゆい「や、八城ちゃーん」

八城「人間じゃないんでしょ」

ゆい「半分悪魔で半分人間です。いや、むしろ八割方人間です。どこからどう見ても人間でしょう。悪魔である要素が微塵にも見られません。そんな無茶が利かないのは火をみるより明らかでしょう」

高砂「でもじっしゃい、だいじょーぶじゃないか。仮に命を落としてもまた芽吹くだろー」

ゆい「わたしゃ不死鳥じゃありませんよ。死ぬときは死ぬものです」

八城「ゆいちゃんがゆいちゃんのままってのはいいけどちょっと不安かも」

ゆい「老化なんて馬鹿らしかです。一生このままで不便ありませんし」

八城「ふぅん、あたしは大きくなりたいな。いつかないすばでぃになるんだ」

ゆい「磨夢さんみたいに育たなくても泣かないことですね」

八城「まみー身長はあるほうじゃ?」

ゆい「あれ十分ちっさいほうですよ。学校に行けばわかる話です」

高砂「ほぅ、しゃちょーはがっこししゃちゅしたのか」

ゆい「そうですね、町の人間として挨拶に出向くこともあります」

八城「あっそれ知ってる、布教ってやつだね」

ゆい「異教ならともかくわたしはそんな真似はしませんよ。町の住民はみな潜在的に我が羽衣神社の大切な信者なのです。わたしはいつでも皆さんを優しく見守っていますよ」

八城「ということはゆいちゃんがみんなのお母さん」

ゆい「わたしに母性を感じるとかとんでもない変態です」

高砂「母なるはこの大地だ」

八城「つまりゆいちゃんは大地」

ゆい「大地と肩を並べる程の権威はとてもないですね」

八城「にゃあにゃあ」

高砂「ネコなんてレオポンしか知らにゃい」

ゆい「うちは結構猫の巣窟になっていると思いますが」

高砂「ネコよりもカラスのほーがおーい」

ゆい「そりゃあカラスは集団行動しますからねぇ」

八城「からっさんも好きだよ。かぁかぁ」

ゆい「カラスさんとは友好的でありたいですね。死体の在処を教えてくれます。ヒトじゃなかったら残念ですけど」

高砂「しょれはしょれで大地の一部となる。あとざいりょーになりしょーなものは送ってくれ」

ゆい「高砂さんだったらなんでも鍋に混ぜそうですけど」

八城「闇鍋だね」

高砂「しょれでも飲めるものができるんだ。思ったより上手くきのーしてる」

ゆい「成功率のほうは?」

高砂「25%ぐらい」

ゆい「全然じゃないですか」

高砂「でも最近魔界で買ったやつは死亡率はだいぶ抑えてるほー」

ゆい「それ人に試しちゃダメなやつです」

高砂「死ぬときは死ぬ。しょれでいーじゃないか」

ゆい「確かにそうですね。外傷が少ないほうが捌きやすいですし」高砂「鍋はでかいから切り刻むひつよーはない」

八城「ふぇぇ、二人とも怖いよぉ」

ゆい「わたしが手を汚すことはないので安心してください」

高砂「しゃちょーはしゃどーに特化してるからな。けっこーなおてまえで」

ゆい「お客様がいらっしゃったらまずお茶を出すのが儀礼となっておりますから。茶菓子、まあ和菓子ですがきんつばが好きですね」

八城「うんうん、きんつばは甘くてうめえのね」

高砂「とゆーことでお茶飲みたい」

ゆい「血液は扱っていませんのでお茶単体になりますが大丈夫ですか」

高砂「血なんていつも飲んでるものじゃにゃい」

ゆい「まあ、わたしと同じですね。わたしもいつも人肉を食べてるわけじゃないです」

八城「ゆいちゃんいつもみんなと違う肉じゃん」

ゆい「そうですよ、皆さんが食べる鶏豚牛、その肉にあたる部分が人肉というだけです。だから野菜や魚も食べれちゃうんですよ」

八城「肉以外の味もわかるんだ」

ゆい「はい、味がわからなきゃ食事は楽しめませんよ。人並みの味覚はあるつもりです」

八城「肉の好みみたいなのはあるでしょ」

ゆい「好みの問題ならほかを圧倒するぐらいに人肉が好きですねぇ。ほかの肉も食えないわけじゃないですけど」

八城「やっぱり無理しちゃう?」

ゆい「肉に関してはそうですね、種族上仕方のないことですが」

高砂「でもしゃちょーだ、まずそうに食わない」

ゆい「普通のお肉は普通のお肉ですよ。大体外食じゃ人肉出てこないじゃないですか」

高砂「家にあるのも問題だが」

ゆい「磨夢さんが数少ない理解者ってことですね」

八城「さすがまみー」

高砂「しょーゆーかんけーか」

ゆい「磨夢さんはきっといいお嫁さんになりますよ」

八城「あたしもゆいちゃんをお嫁さんにしたい」

高砂「しゃちょー嫁にしても何もいいことないぞ」

八城「だよねー、何もいいことないね」

ゆい「磨夢さん出てったら家庭崩壊しますね」

高砂「ほんとにしゃちょーは今までどーやって生きてきたのか」

ゆい「カップ麺缶詰暮らしですかねぇ」

八城「まみー泣いちゃうね」

ゆい「だから磨夢さんはまさに神のようなお方だったんです。最初は残飯処理から今となっては三食頂けるようになりましたし」

八城「まみーやっぱり優しいね」

ゆい「普段は無愛想な方ですが根は良い人なんです。その性格から今の環境を築き上げたといえましょう」

高砂「あの家はしゅごい」

ゆい「いろいろ事情があるんですけどね」

八城「もともとまみーの家じゃないんだよね」

ゆい「はい、前の家主からのっとった形になりますね。美味しかったです」

高砂「前の家主でしゅら部屋余らしてしょー」

ゆい「ですね、先代は部屋を余らすくらいに金を余らしていたんでしょう」

八城「ゆいちゃんもその気になれば建てらんない?」

ゆい「建てるにしても一人暮らしですから。そしてわたしにはこの神社を維持管理しなければならないという義務がありまして、ほかに住居を持つことは良きものとしませんね」

高砂「しゃちょーが神社にいなきゃ町がこーはいしゅる」

八城「ふへぇ、ゆいちゃんいっちゃやだぁ」

ゆい「大丈夫です。わたしはどこにも行きませんよ」

八城「うちと神社の往復だけだもんね」

ゆい「磨夢さんから食事を頂けないと餓死しますからね」

高砂「しぇんしぇーにしぇーめーを握られてる」

ゆい「こればっかは仕方がないのです。腹が減っては生きてはおれませんから」

八城「やっぱまみーはすげーや」

高砂「なるほどなー」


299-1

純治「こちらジュンジーク。本屋でちるたん発見。お近づきいただきたい所存」

基茂「近づけるもんなら近づいてみれ」

純治「言ったなシゲリンガル。このジュンジーク、ちるたんのハートを鷲掴みにしてくれるわ」

基茂「おう」

純治「しかしだな、ちるたんは警戒状態。どうしたものか」

基茂「軽く世間話から入ってみな」

純治「それができたら苦労しないんだが」

霞「携帯電話片手になぁにやってんですか、佐竹先輩」

純治「しっ、こっちは伊崎の助言を受けつつ極秘任務進行中だ」

霞「極秘任務って……あ、椎木先輩。ひょっとして伊崎先輩から寝取ろうとでも?ふふ、上手くいけばいいですね」

基茂「かすむんかな」

霞「はい、三宅霞、佐竹先輩の命を受け馳せ参じた次第」

純治「かすむん、声を潜めろ。気付かれるぜ」

霞「気付かれないでどうすんですか。これ以上探っても何もありませんよ」

基茂「いいぞかすむん、もっと佐竹の肩を押してやれ」

純治「くっそお前ら結託しやがって」

霞「わたしは単に面白いことに首突っ込みたいだけですよ。どれ、わたしが斥候として参りましょうか」

純治「確かに。かすむんに探ってきてもらうのは悪くないかもな。ちと話してきてくれ」

霞「任せてください。きっといい情報を持ち帰りますよ」

純治「かすむんがちるたんのもとに向かったぞ」

基茂「面白いことになってきたな。これがどう転ぶかだ」

霞「あの、椎木先輩」

ちる「あ、かすむん。奇遇、ですね。何か、探しに?」

霞「はい、こないだ観た映画の原作があるか見にきました。しかし椎木先輩は本屋にも来られるんですね。普段は大学図書館のほうに行ってると聞きましたが」

ちる「大学図書館は、本の在庫、こそ、ありますが、こういった、大衆向けの、雑誌なんかは、置いて、いません、から」

霞「マンガとかもありますしね。あーこのゲームもマンガになってますか。この作品をやってすぐ次のんが出ちゃいましたからね。プレイヤーはそんなに減ってないと思いますよ。わたしはあんまりですが、佐竹先輩はかなりやりこんでたって話です」

ちる「佐竹、さん?」

霞「伊崎先輩の同志です。悪そうな顔をしてますけど案外いい人なんですよ。一時期遊んでいたこともあります。どうですか先輩、佐竹先輩にお会いしませんか」

ちる「男、の人は、苦手、です」

霞「佐竹先輩は伊崎先輩と似たような方ですからすぐ慣れると思います。ちょっと顔を合わせるだけでも」

ちる「だめなもの、は、だめ、です」

霞「そうですか。失礼しました。では」

ちる「はい」


299-2

霞「難しい御仁です」

純治「かすむんで無理ならもはやこれまでか」

磨夢「あっ霞とメガネ、珍しい組み合わせ」

霞「そうですかね」

純治「オレを伊崎と置き換えてみてください。何の違和感もないはず」

磨夢「ん、基茂のほうが痛い」

純治「確かに。ヤツの痛さは筋金入りっすわ」

磨夢「で、二人でヲタトーク?」

霞「実はかくかくしかじかで」

磨夢「そう」

霞「先生がいれば百人力です。よろしくお願いします」

磨夢「ん」


299-3

磨夢「ちる」

ちる「え、あ、はい。せ、先生」

磨夢「基茂は童貞じゃない」

ちる「そう、ですか」

磨夢「それに対して純治は童貞。だから今が買い。彼女募集中」

ちる「いい、ご相手が、見つかると、いい、ですね」

磨夢「夢を見したげて」

ちる「といっても、話した、こと、ない、です」

磨夢「じゃあ無理か。ありがとう」


299-4

磨夢「ん」

純治「ずいぶん早かったですね」

磨夢「釣れる気配がしなかった」

純治「なぜ伊崎ばかりモテるのか」

磨夢「別に基茂は今モテてない」

純治「なぜ昔モテてたのか」

霞「過去の先輩を敵対視する必要はないと思いますよ。同志ならそれでいいじゃないですか」

純治「でもいつ裏切るかわからん。本当に油断のならんやつだからな」

磨夢「ちるがいるわけだけど」

純治「でも最近喋ってないと聞きましたよ」

霞「お互いコミュ障でどちらからも声を掛けられないだけでしょう」

磨夢「コミュ障万歳」

純治「類は友を呼ぶってやつなんすかね」

磨夢「ん、コミュ障同士だから対話ができる。ね、霞」

霞「わたしは卒業したつもりですよ。ギルドで一番話してんの多分わたしですし」

純治「かすむん放送部やってなかったっけ」

霞「あ、貴重なリスナーさん、嬉しいです。それなんですがスピーカー切られたら誰も聞いてくれないんですよ。佐竹先輩どこで聞いてるんですか」

純治「オレ食堂民だから移動中にちょっと聞こえるくらいだけど」

磨夢「屋外スピーカー拾えるんだから少しでも霞の声を聴くために外に出て食べないと」

純治「いや別にそんな聞きたいわけでもないっすよ」

霞「屋上は結構聞こえますからね。放送聴くにはまさにお誂え向きです。佐竹先輩もお弁当持って屋上に来てください。」

磨夢「ちるが鍵持ってるから純治が知る由がない」

純治「 まるで鍵を作ったかみたいな言い様ですな」

磨夢「なぜかはわからない」

霞 「そういうのは学校側が管理すべきものじゃないですか。は、ひょっとしたら椎木先輩は特待生だったりするんですかね」

純治「ちるたんは普通の転入生のはずだが」

磨夢「前の学校で屋上を誰よりも愛していたこと知っていた教師がいたのかも」

純治「鋼田先生ならありそうな話だ」

霞「鋼田先生絶対裏の繋がりありますよね」

磨夢「………」

純治「磨夢先生が見てる」

霞「先生、今日いちごミルク安いみたいですよ。スーパーへ共に駆けましょう」

磨夢「ん」

霞「それでは先輩。わたしたちはこれで。頑張ってくださいね」

純治「あ、オレも帰るわ」


299-5

霞「魔女っ娘発見」

磨夢「げっ」

高砂「あ、しぇんしぇー」

霞「こんなちっさいこなんてうちにいませんよね」

高砂「しぇんしぇーは皆からしぇんしぇーと慕われてるのだ」

磨夢「生徒じゃないくせに」

霞「では魔女っ娘がいたら楽しいと思います。学校ぶっ潰しちゃってください」

高砂「イフリートやレッドドラゴンってところか」

霞「おお、ドラゴン召喚しちゃいますか。これは終末の日もそう遠くありませんね」

高砂「この町ぐらい一瞬で焼け野原にできる」

磨夢「やめて」

霞「先生は現実主義者ですね。夢を語るのもいいと思いますけど」

磨夢「夢、じゃあわたしと霞が結ばれるのも、んふふふ」

高砂「しぇんしぇーとは恋仲なのか」

霞「ここだけの話わたしも先生のこと好きですよ。どう察するかは妄想にお任せします」

高砂「たかしゃごはしょーゆー気持ちになったことがないからわからんなぁ」

霞「魔女さんもいつか乙女になる日が来ると思いますよ」

高砂「自分がなるよりは人をかんしゃちゅしゅるほーがしゅきなものでね」

磨夢「趣味悪い」

霞「先生が言うのも変な気がしますけど」

磨夢「そう」

高砂「しぇんしぇーは俗にちゅかりしゅぎだ」

磨夢「人間だから」

高砂「しゃちょーに毒しゃれている」

磨夢「恋愛に無頓着なほうが異端」

高砂「ほんと面白いケタケタケタ」

霞「魔女さんかわいいですね」

磨夢「浮気?」

霞「ちっちゃいこはみんなかわいいものですよ」

磨夢「いや魔女は例外」

高砂「しぇんしぇーだけはわかってくれない」

磨夢「………」

高砂「しぇんしぇーのばーか」

霞「ほらかわいい」

磨夢「どこが?」

高砂「もうかえりゅ」

霞「お持ち帰りしたいです」

磨夢「逆に連れていかれる」

高砂「たかしゃごは神社に行く」

磨夢「いってら」

霞「残念です。また今度にしましょう。あ、歩きなんですね」

高砂「ほーきは置いてきた」


299-6

高砂「ただいま」

ゆい「高砂さんも歩くんですね」

高砂「ちじょーを歩くのはいいものではないにゃー」

ゆい「お散歩はいいものですよ。いつも同じ道でも運動になるものです」

高砂「足がにゃえたら困るからな」

ゆい「だから浮いてないで地に足をつけましょう」

高砂「うー。足使うと痛くなるからやだー」

ゆい「わたしの草鞋と高砂さんのブーツを比較すると高砂さんのほうが足痛めそうです」

高砂「慣れればどーとゆーことはない」

ゆい「ブーツより草鞋のほうが履くの楽ですよ。今なら足袋もお付けしましょう」

高砂「個人しゃとゆーやちゅだ。たかしゃごは歩かないからブーツでいー。何より見た目が気に入っている。しゃちょーも浮けるならブーツがいーぞ」

ゆい「浮遊のやり方なんて覚えてませんよ。悪魔でも歩行は好むものもいます。第一巫女をやっている以上はこの服装が最適です。誰がなんと言おうと和装は素晴らしいものです」

高砂「しゃちょーはしょとに出ないから何も知らにゃい」

ゆい「どの口が叩きますか。家に缶詰め状態のくせして」

高砂「しょーいやしゃいきんしゃと帰りしてないな」

ゆい「人間界にも帰る場所を作ってもいいと思いますよ。わたしはこの町を愛してやみません」

高砂「たかしゃごもじょーくーから見たこの町はしゅき」

ゆい「この町と特定するのも難しいのでは?」

高砂「確かにあまり目印になるよーなものがない」

ゆい「景観を損なわないように高さ制限されてますから。そのお蔭で隣町より低地であることが特に顕著になっているのです」

高砂「完全に海賊だ」

ゆい「海の幸は素晴らしいですよ」

高砂「しゃかなきらーい」

ゆい「もはや山も海も関係ありません。どこにでも食糧はあります」

高砂「狩る者の眼だ」

ゆい「狩りはしません。ただ喰らうのみです」

高砂「貪欲だ」

ゆい「協力者を得るためにちょっとした細工をしています。大将あってこそですけどね」

高砂「死体はあまりきょーみがないなー。生きた実験体がほしー」

ゆい「治験ですか。アルバイト募集かけたらいっぱい集まるんじゃないですか」

高砂「金なんて一瞬で溶けるのに愚かな」

ゆい「投資の頻度がおかしいだけです。普通に何もしない一人暮らしならお金使わないと思いますよ。高砂さんなんて食費がまずかかってなさそうです」

高砂「飯なんてくー暇もないし。自然としょーしょくになる」

ゆい「こういう外出は?」

高砂「気晴らしにしゃちょーに会いにきてるだけ。それ以外はほぼきょーりょくしゃ」

ゆい「強制しちゃいけませんよ。こちらからお願いするくらいじゃないと」

高砂「せんぽーがやりたいよーに仕向けよー。しょのためにはどんな手段も惜しまない」

ゆい「あんま洗脳しないであげてくださいね。見てるこっちが可哀想です」

高砂「そこまでしゅるひつよーはないぞ。みんなくしぇになってるだけ」

ゆい「薬漬けにしてヤク中に至らすとは本人がそれでいいならってとこですかねぇ。まあそこまで来て普通の状態なんて保てませんよね」

高砂「ふつーといじょーの区別がちゅかなくなるだろー」

ゆい「錯乱状態にあるかその状態に落ち着くか、この状態にあることが普通なんだと一般人から見れば異常だって話です」

高砂「一般人がどーとかはしゃちょーに任しぇる。たかしゃごは別にしぇんのーしたいわけじゃない。被験者がほしーだけだ」

ゆい「そんなに新薬発明してるんですか」

高砂「味やこーのーにこだわらずどんなざいりょーでもちょーごーしゅる。しょーしゅれば新薬なんていくらでも生まれる」

ゆい「だから高砂さんの薬は八割方不味くて身体に悪影響を及ぼすんですね」

高砂「二割でもしぇーこーしゅりゃじゅーぶんだ。良薬をちょーごーしゅることでしゃらにしぇーのーが良くなる」

ゆい「なるほど、ついていけないです」

高砂「薬学にかんしゅる本はしょーだな、このあたりがいーかと。まほーがなくても作れるくしゅりはおーいからしゃちょーにもおしゅしゅめだ。この本は並の知識でもだいじょーぶ」

ゆい「薬学に関する並の知識って何ですか。わたしはそれに関しては無知ですよ」

高砂「じゃーこのにゅーもんしょで読めばいー。後はやしろんにでも教えてもらえ」

ゆい「八城ちゃんの学習能力は羨ましい限りです」

高砂「人間のよーしょーきは侮れない。しゃちょーなしゃけないな。一度死んだほーがいい」

ゆい「ひどい言いようですね。わたしの脳は腐食しているのですか」

高砂「やしろんとどーかしゅることがしゃちょーの生きるしゅべだ。げんじょーに甘んじればこれいじょーの知識は得られない」

ゆい「 わたしは考えているだけで幸せです。思考の神のある限りわたしの脳は衰えません。もとより、わたしには生きていると感覚がありませんから、ただ夢を見ているに過ぎません」

高砂「しょーゆーのを現実とーひとゆーのだ」

ゆい「現実をあるがままに受け入れるのも愚かなものです。簡単に騙されますよ」

高砂「しゃちょーは騙しやすいにゃあ」

ゆい「ひどい、今までの話全部嘘だったんですか」

高砂「だましゃれるほーが悪い」

ゆい「でも高砂さんが言うのも尤もです。わたしには向上心が必要ですね」

高砂「しゃいしょから諦めるのはいけにゃいってこった」

ゆい「でも魔法使いみたいなほとんど才能の世界は無理です。努力に対する結果が表れないものほど無駄なものはありません」

高砂「自分の出来る範囲でやってみよー」

ゆい「雑学としてでも知っておきましょうか。高砂さんの話についていけないのもあれですし」

高砂「たかしゃごは何も難しーことはしてないけどなー」

ゆい「高砂さんの常識は次元が違いますからね。高砂さんが当たり前だと思っていることも我々には理解し難いものなのです」

高砂「たかしゃごにしか分からないってのもしゃみしーな。しゃちょーが理解してくれたらいーのに」

ゆい「まあ努力しますよ」

高砂「しゃちょーと話し合える日を楽しみにしてーる」

ゆい「.........」

高砂「とゆーことできんつばおくれ」

ゆい「高砂さんもお茶を点ててみませんか」

高砂「どんな味がいー?」

ゆい「で、できれば普通の味だと嬉しいですね」

高砂「たかしゃごはじしゅいしてるからな。期待してくれていいぞ。でもやり方が分からにゃい」

ゆい「とりあえず羽衣家代々に伝わる茶道の手順書を読んでみてください。初心者にも分かりやすく説明してありますよ」

高砂「ほーちょーごーしのたかしゃごにはおちゃのこさいさい。お茶だけに」

ゆい「高砂さんほどの頭をもってすれば赤子の手をひねるぐらい容易なことでしょう」

高砂「これでどーだ」

ゆい「ぶふっ、飲めたものじゃないです」

高砂「にゃにおー、クジャクの羽とオニカマスの牙ならいけると思ったのに」

ゆい「余計な手を加えちゃだめですよ。純粋な茶の味を楽しむものです。それこそわびさびですよ」

高砂「こーかを求めるには手を加えなきゃならんのだ」

ゆい「肉体を変性されるような薬でも作ってるんですか。お腹から変なものが湧き出そうでしたよ」

高砂「あー間違えた。ガーゴイルの羽とヒグマの爪だ。あとネコの耳とシカの目か。こりゃけっこー骨が折れるぞ」

ゆい「お茶を作ってくださいね?」

高砂「むーいいレシピになると思うけどなー」

ゆい「じゃあわたしのやるのを真似してください。いいですか、決して変なものを入れないでくださいよ」

高砂「うーい」

ゆい「あと心は無にしてください。僅かな心の乱れで茶の味が左右します」

高砂「しょれはちょーごーと同じことだ」

ゆい「そうだ、ローブだと座りにくいでしょう? この機会に着物着てみてください。わたしとあんま変わんないですしサイズありますよ」

高砂「しゃちょーよりはまともな体型してる」

ゆい「まあちょっと詰めたら、というよりわたしが帯締めてるほうですけど」

高砂「しゃちょーはとくちゅーにしゅべき」

ゆい「わたしのことはいいんですよ。ささ、着付けしましょう。わたしよりかは八城ちゃんですね」

高砂「やしろんの肉を貰うのだ」

ゆい「まだ肥やさないといけませんねぇ。和牛はとにかく食わせるみたいですよ」

高砂「ふーん」

ゆい「高砂さんもわたしほどじゃないですけど肉ないですね」

高砂「たかしゃごもあんま食わないほーだし。でもまともなものを食べてる」

ゆい「へぇ、あまり触れないでおきますけど」

高砂「今度ファミレス行こー」

ゆい「ファミレスしかないんですかあの町」

高砂「ここより田舎だから仕方ない。隣町なのになー」

ゆい「ぶっちゃけ栄えてるのは駅前商店街くらいですねぇ。海沿いはまばらなものですよ」

高砂「都会ってやつか」

ゆい「実際の都会からは離れてますね。人が少ないことは住みやすいことですが」

高砂「都会は人がおーいのか」

ゆい「噂によるとそうですね。幸い電車がありますから乗り継いでいけばいずら着くかと思われます」

高砂「人ばっかのとこなんか行きたくないなー」

ゆい「祭りのときも上から観戦してますし」

高砂「下りるのがめんどくしゃい。しゃちょーもいしょがししょーだし」

ゆい「祭事のときはいつも忙しいですよ。特に初詣は人手がいくらあっても足りないくらいです」

高砂「だからこーして暇してるときにおしゃべりするのが楽しーんだ」

ゆい「何もないときは気楽にやってます」

高砂「へーおんなにちじょーの中に思わぬ発見がある。そのぐーぜんこそがしぇかいを揺り動かす」

ゆい「こうしてわたしと話してるときもですか?」

高砂「しゃちょーやしぇんしぇーを見ているだけで今後のけんきゅーがはかどる」

ゆい「わたしは構いませんけど磨夢さんにはよっぽど嫌われてることでしょうね」

高砂「あんな人間だ。このよーな仕打ちはひつよーだ」

ゆい「高砂さん、シベリア旅行の案内が来てるんですが」

高砂「やだなー、夏こそ常夏の国に行かないと」

ゆい「普通は涼しい所に行くもんですがね」

高砂「シベリアはしゃむい。たかしゃごでもわかる」

ゆい「じゃあ北海道行きましょう。夏に行けば涼しいですよ」

高砂「気温の変化にしゃゆーしゃれるのは愚かだ」

ゆい「その言葉、冬になったらそっくりそのまま返してあげましょう」

高砂「夏にも熱いお茶を飲むとか」

ゆい「まあそういうものですからね」

高砂「しょこだけはしょんけーしよー」

ゆい「もったいないお言葉です」

高砂「和服で和菓子を食べるとおいしーな」

ゆい「そうでしょそうでしょ、だから普段着も和服にしましょうよ。きっと過ごしやすいはずですよ」

高砂「しょれはやだ」


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