2018-05-21 01:42:03 更新

概要

問題を抱えた艦娘達と提督が、戦力外と蔑まれる鎮守府で共に戦っていく物語。


前書き

作品の事で質問やご指摘等がありましたら、コメント欄にて気軽に送信してください。



ある昼下がりの事。



天候にも恵まれ、気温もいい今日この頃俺たちが何をしているかというと・・・



電「はわわっ、司令官さん!電の竿にお魚さんが来ました!なのです!」グググッ



提督「お、奇遇だな!俺のほうにも反応ありだっ!!」グググッ



電「これは未だかつてない程の手ごたえなのです!」グググッ



提督「ほぉ?じゃあ今から釣り上げる魚の大きさで勝負するぞ!大きかったほうが今日の晩飯の食事当番だ、とっ!!!」



ザッパーンッ



魚「」ピチピチ



提督「よしゃ!なかなかの大きさだ!これは俺の勝ち『ザッパァァァァァンッ』



巨大魚「」ピチピチ



電「は、はわわ!こんなに大きいお魚さんが釣れてしまったのです・・・!」キラキラ



提督「・・・あ~、さっきの話無かった事には」



電「ならないのです!」ニコッ



提督「ですよねぇ~。」



二人仲良く釣りをしてました。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


俺たちが何でこんな真昼間から釣りをしているかというと、ただ単純に生きるためだ。



今、俺たちが所属しているこの鎮守府は本土からも激戦区からも最も離れた場所に位置している。



それ故に普段は近隣の海域を哨戒(といっても、滅多に深海棲艦に遭遇しないためただの散歩みたいになっている)したり、近くを通りかかる輸送船の護衛をする事(余程の事がない限りこの海域は遠回りになるので、未だに要請はない)が主な任務となる。



そんな鎮守府として機能しているかどうかも怪しい所に俺みたいな新米提督が着任するものだから、更に状況は悪くなり



この鎮守府は『不要な鎮守府』と蔑称で呼ばれ始めた、もっと口の悪い輩には『ゴミ捨て場』と揶揄されることも珍しくはない。



こういった鎮守府の扱いは想像するのに難はないだろう。資材の配給は無いに等しく食料でさえも雀の涙程度だ。



だからこうして日がな一日あいた時間はこの鎮守府の艦娘達と食材を調達しているというわけなのだが・・・


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ー執務室ー



提督「ふぃ~、つかれたぁ・・・今日の執務はもう終わりでいいよね~?」ダラーン



電「だ、だめですよ司令官さん!まだ釣りをしただけでお仕事のほうには全く手をつけてません!なのです!」



提督「といわれても、俺らの仕事なんて高々そこら辺の見回り程度だろ?ここら辺なんて平和そのものじゃないか。」



電「ですが・・・。じゃあなんで電達はここにいるのですか?」シュン



提督「・・・ああ、言いたいことはわかるぞ電。だがな電、戦いなんて物は無いにこしたことはないんだ。」ナデナデ



電「あっ・・・」ピクッ



提督「自分の存在意義を間違えるなよ、俺たちは起こるかもしれない『もしも』の為にここにいるんだ。」



提督「だから、お前は安心してどっしり構えときゃいいんだよ。」ニカッ



電「・・・っ!はい!」ニコッ



提督「というわけで、一応見回りにでもいってもらおうかな。手が空いてそうな子達に声かけてくるから、電は準備しておいてくれ。」スタスタ



電「はいっ!なのです!」ビシッ



ー艦娘寮ー



提督「・・・とはいったものの、はてさて一体何人が俺の話を聞いてくれるかな。」



この鎮守府はその成り立ちからして異常だ、ここに所属している艦娘は全員他の鎮守府から追い出された娘ばかりで構成されている。



中には、戦い自体を恐れてこの鎮守府にやってきたこもいるが・・・なんにせよここの艦娘はみんな問題を抱えていることに変わりはない。



提督「『ゴミ捨て場』、か。皮肉なものだが、確かに的を射ているな。」



提督(とりあえずは物腰の柔らかそうな子を中心に話を持ち掛けよう。)



提督「まずはこの部屋・・・榛名からいくか。」コンコン



「・・・はい、どちら様ですか?」



提督「俺だ、提督だ。すこし頼みごとがあってきた、話だけでも聞いてもらえないか?」



「わかりました、少々お待ちください。」



提督(よかった、とりあえずは話を聞いてくれるみたいだ。)



榛名「お待たせいたしました、それでご用件のほうは?」ガチャ



提督「ああ、この後電と共にこの海域周辺の哨戒任務に向かってほしいのだが、頼めないか?」



榛名「またですか・・・お断りします。この周辺の海域は穏やかで敵なんていないじゃないですか、電さんだけで十分かと。」



提督「それもそうだが何かあったときに電だけでは心配だ、その分戦艦である榛名がいてくれたら頼もしいんだ。」



榛名「では、なにかあったときに呼んでください。それでは・・・」バタン



提督「・・・はぁ、だめか。」



提督(まぁ、大体予想はついてたがな。断られるのも慣れてきた。)



提督「落ち込んでいたって仕方がないよな、つぎは・・・睦月のところにでも行くか。」



提督(睦月は大人しいし、頼めば引き受けてくれるだろう・・・)スタスタ



提督「たしか・・・ここだな。」



提督「おーい、睦月。俺だ、今大丈夫か?」コンコン



「あ、提督!ちょっと待っててくださいね今開けますから!」パタパタ



睦月「こんにちわ、提督。睦月に何か御用ですか?」



文月「・・・」ギュッ



提督「あ、ああ。少し頼みたいことがあったんだが・・・」



提督(しまった、今は文月が一緒だったか・・・。)



確かに、俺が頼めば睦月『は』引き受けてくれるだろう。



だが、それはあくまで睦月の服の裾を握っている少女・・・文月がいないという前提に基づいた話だ。



睦月「頼みたいこと、ですか?睦月でよければ力になりますよ!」



提督「で、その内容なんだが・・・電と一緒に周辺海域の哨戒任務へ出てほしいんだ。」



文月「・・・っ!!!!」ギュゥゥ



その言葉を聞いた瞬間、文月が顔を青くし先ほどよりも断然に強い力で睦月の服を握った。



提督「・・・」



そんな動作を見た俺は、頼みごとが失敗に終わったという事実を悟る。



睦月「ふ、文月ちゃん・・・大丈夫だよ。」ナデナデ



文月「ぃや・・・おねぇちゃん・・・いかないで・・・?ふみつきを、お、おいていかないで・・・」ギュゥ



睦月「・・・」



睦月はチラリとこちらの様子を窺うように顔を向けてくる。



その顔があまりにも痛々しく思えた俺は、首を横に振り肩を竦めるてみせることで睦月の意思を汲んだ。



提督「わかった・・・また今度頼むよ。」



睦月「ごめんなさい・・・提督。」ペコリ



提督「いや、いいんだ。文月も、ごめんな?」



文月「・・・」ジロッ



提督(はぁ、嫌われてるなぁ。そりゃあ唯一の姉を危険かもしれないところに連れ出そうとしてりゃ嫌われるのも当然か。)



提督「それじゃあ、俺はこれで。」



睦月「はい、では失礼しますね。」バタン



睦月が申し訳なさそうな顔で扉を閉めたことを確認してから、俺は小さくため息をついた。



提督「ふぅ、まずいな・・・あと話ができそうで残ってる子といえばもう彼女しか・・・。」



提督「だが彼女は・・・危険な気がする。やはり電一人で・・・」



提督(・・・いや、ここはあえて話をしに行ってみるべきじゃないか?最近あまり様子を見にいけてないし。)スタスタ



提督「まぁ・・・正直、気は進まないんだがな。・・・ここか。」



提督「おい、島風。いるか?」コンコン



島風「ん?あれ、提督!どうかしたの~?」ガチャ



提督「あ、相変わらず早いな。島風は・・・いやなに、少し頼みごとがあってきたんだ。」



島風「え~!?提督からの頼み事~!?やるやるやらせて~!」ピョンピョン



提督「返事も早すぎる・・・!てかちゃんと話聞いてから答えろよ!」



島風「おう~?じゃあ、私に何してほしいの?」



提督「電と一緒に、この海域周辺の哨戒任務に当たってほしいんだ。・・・頼めるか?」



島風「うん!もちろんだよ~私に任せてっ!」



提督「あ、ああ。よろしく頼む、それじゃあ早速で悪いが執務室まで一緒にきてもらうぞ。」



島風「は~い!」



提督(・・・だめだ、やはり島風といると落ち着かない)



他の人が島風を見れば、明るくて元気溢れる普通の少女だと思うだろう。



だが、そんなのは『普通の鎮守府』で見たならばという話だ。ここで見るのとはわけが違う。



そう、あり得ないのだ。彼女の明るさ、快活さ、素直さは・・・はっきり言って『この鎮守府』では異常だ。



この鎮守府には問題を抱えた子達が所属している。これは俺を含めた全員が承知している事実だ。



電は戦闘センスが無く、敵を労わる優しさを持ってしまったために戦力外と蔑まれてここにきた。



だが俺は彼女の信念も、覚悟も、優しさも知っているから敢えてそこは言及しないと決めている。



榛名は戦いに対する意欲が全くない為、この鎮守府に左遷されてきた。



その態度は先ほどのやりとりを繰り返しているので把握している。俺自身彼女が戦った姿を一度たりとも目にしたことはない。



睦月と文月はお互いがお互いの存在に依存しているため現実出撃不可能とみなされ、この鎮守府に左遷されてきた。



睦月はまだ軽いほうだが、文月のほうが致命的に手遅れだ。つまり、睦月は文月に付き添うといった形でこの鎮守府にやってきたということになる。



そして島風なのだが・・・彼女の素性だけがわからない。



この鎮守府に左遷される時、その艦娘の経歴を記した書類が前もって送られてくる。当然、俺も目を通した・・・



しかし、島風の前の鎮守府での生活は記録として残ってはいなかった。いや、まるで奇麗に切り取られたかのような・・・そんな不自然な白さだった。



白々しく書かれた戦績と、彼女の名前を何度も見返したのを今だって鮮明に覚えている。



だが、俺は彼女を拒むことができなかった。大本営からの圧力もそうだが、何よりも・・・彼女の在り方が不安定であまりにも脆いと不憫に思えてしまったからだ。



だから受け入れた、『ここ』はそういう場所なんだという言い訳を花として考えることを放棄した。



島風「えへへ~!ひっさしぶりにはしれる~!」タッタッタ



提督「あんまりはしゃぐと転んじまうぞ。」



その結果が彼女にとって最適であったかどうかなんてもうわかりはしない。



債は投げられた、今更悔やむことなんて許されないのだから・・・



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ー執務室ー



島風「やっほ~!とーっちゃくぅ!」ガチャ



電「はにゃっ!?し、島風ちゃん?」ビクッ



提督「ぜぇ・・・ぜぇ・・・コイツ早い・・・」



電「司令官さん・・・その、大丈夫ですか?」



提督「あ、ああ。どうにかな・・・」



島風「電ちゃん!今から海域哨戒いくんでしょ~?一緒にいこう!」ガシッ



電「えっ!?ま、待ってください!明石さんのところで艤装を受け取らないと!」



島風「わかってるよ~っだ!じゃあね~提督ぅ!」タッタッタ



電「なのですぅぅぅぅぅぅ!?!?」



提督「いってらっしゃ~い・・・」



提督(この調子なら大丈夫・・・だよな?)



提督「俺も行くか。」



ー工廠ー



島風「と~ちゃくだよ!ほらっ、電ちゃん!起きて起きて!」ツンツン



電「し、島風ちゃん・・・早過ぎなのです・・・」グッタリ



明石「あら、島風ちゃんに電ちゃんじゃない。二人ともどうしたの?」



島風「今日は提督に頼まれて出撃しにきたんだよ~!」ピョンピョン



明石「へぇ・・・出撃ねぇ。珍しいわね、なにかあったの?」



電「私の、その・・・我儘で司令官にお願いしたんです。何もできないのは嫌なので・・・」



明石「・・・そう。」



明石(何もしないのがこの鎮守府の仕事だというのに、電ちゃんは奇特な子ですねぇ。)



明石(まぁ、私は自分の仕事をするだけですが・・・。)



明石「事情はわかったわ、艤装はきちんとメンテナンスしておいたから問題ないわよ。そこに置いてあるから持って行ってくださいね。」



電「ありがとうございます!」ペコリ



島風「もうっ!電ちゃん遅いよ~!早くいこ~!!」タッタッタ



電「あ、ちょっと!待ってくださいなのです!」タッタッタ



明石「あら、元気がいいですね。二人とも頑張ってください!」



島風「うんっ!いってきま~す!」



電「はい、なのです!」



明石「・・・本当に、おかしな子達。」



提督「あはは、やはり明石もそう思うか?」



明石「うえっ!?て、提督・・・!いらっしゃっていたんですか?」



提督「おう、今来たところだ。それにしても、艤装のメンテナンスしていてくれたんだな?心配していたんだが杞憂で済んだみたいだ。」



明石「ええ・・・『一応』この鎮守府の工作艦ですからね、工廠を預かる身としては当然です。」



『一応』、明石のその言葉はきっと俺を遠回しに責めているようにしか聞こえなかった。



この鎮守府には工作艦が不在だったため、工廠が使えず装備の点検や作成ができなかった。



そんな状態では鎮守府運営に支障がでると思った俺は、大本営に必死で交渉し、なんとか明石に来てもらうことになったというわけだ。



提督「・・・ごめんな明石、こんな所にいさせてしまって。俺も早く君を返してあげたいんだが・・・」



明石「冗談ですよ、私これでもココのこと気に入っているんです。落ち着きますからね」ニコッ



提督「そういってもらえると助かるよ。」



提督(彼女の笑顔に少し罪悪感を覚えるが・・・今は明石の優しさに甘えておこう。)



自分の弱さを誤魔化すために、胸ポケットに入った煙草を取り出し口に咥え火をつける。



こうしていると少しだけ前向きになれるような気がするから、やめられない。



そんな俺を見た明石は苦笑いを浮かべたのちに、口を開いた。



明石「それにしても、本当によかったのですか?」



提督「・・・電の事か?」



明石「ええ、あの子戦闘に適性がないからこの鎮守府に来たんですよね。島風ちゃんが一緒とはいえそんな子を海域に出してしまってもいいのですか?」



提督「ふぅ・・・本当は出したくはない。だが、戦いが嫌いな彼女が自ら進もうとする意思を見せたんだ。」



提督「艦娘の抱える問題を解消してやって、もとの鎮守府に戻してやるのもこの鎮守府の提督としての仕事だろ?」



明石「ちゃんと艦娘達の事、考えているんですね。」



提督「当然だ、そうしないと俺もここから解放されないからな。」



明石「解放されない・・・?どういうことですか、望んで提督になったわけではないということですか?」



提督「・・・それは」



明石「・・・話したく、ないんですね?では今は無理に聞きません。」



提督「すまないな、明石。本当に迷惑をかける。」



明石「いえいえ。でも、いつかちゃんと教えてくださいよ。」



提督「ああ、いつかな。」



明石「約束ですからね。それと提督、電ちゃん達もうすぐ出撃する準備が終わりそうですよ?」



提督「そうか・・・そろそろ執務室に戻らないとな。」



明石「提督、今更ですけど鎮守府内は喫煙禁止ですよ。ちゃんと消していってください。」



提督「ああ、悪い。忘れてたよ。」ジュッ



明石「では、頑張ってくださいね。」



提督「・・・ありがとう。」スタスタ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ー執務室ー



提督「よし、二人とも準備はできたな?」



電『はい!』



島風『もっちろ~ん!いつでもいけるよ!』



提督「いい返事だ。今回は電を旗艦として、島の周りを哨戒してもらう。」



提督「そこまで遠くに行く必要はないからな。」



島風『えぇ~!せっかくだからもっと遠くに行きたい行きたぁ~い!』



提督「駄目だ、遠出をするには人数が足りなさすぎる。また今度にしてくれ、すまないな。」



島風『むぅ~、わかった!じゃあまた今度だよ?約束したからね~!!』



提督「よし、作戦概要は以上だ。電、島風、任せたぞ。なにかあったら連絡してくれ。」



電『了解しました!なのです!』ブツッ



島風『はいは~い!』ブツッ



提督「・・・ふぅ。」



提督(また今度、ね。我ながら心にもないことをいったもんだ・・・島風には悪いが、その日は来ないだろうな。)



提督「・・・考えたって仕方がないよな、とりあえずは俺も執務でもしますかね。」



執務とはいっても、俺がするのはこの鎮守府の資材の出納をメモするぐらいしかないのだが・・・今日は少し違う。



提督「はぁ、最近滅多に来なかったから安心していたのに・・・」



今、俺の手元にある封筒にはここに左遷が決まった艦娘の経歴書が入っている。



綺麗に包装されたそれを見るだけで頭がいたくなる、だがこのままこうして握りしめているだけじゃ何も始まらない。



提督「今回は・・・どんな娘が来るのだろうか・・・」



意を決し、封を開ける。中には幾つかの書類が入っていた。俺はその一枚を取り出し、目を通す。



提督「・・・正規空母、加賀。正規空母なんて珍しいな、一体なにをやらかしたんだ?」



続けて書類に目を落とす、戦果は上場で器量もいい。加賀がいるだけで艦隊の士気も戦果も向上していただろう。



ここまで見れば非の打ちどころのない優秀な艦娘だ・・・ここまではな。



問題は左遷理由だ、俺に言わせれば戦果よりもこちらのほうが大切だ。



提督「・・・上司に対する不敬、暴言、暴力、か。」



提督「よ、よかった・・・この程度か。ならまだ何とかなりそうだ」



提督(正直ほっとした、自殺志願者だったり生きる気力がない娘じゃないならこの鎮守府でもやっていけるだろう。)



提督「しかも、ここまで行動的な艦娘ならウチの戦力になるかもしれない。これでなにか変わってくれるといいんだが・・・」



提督「早速、大本営に電話しなくちゃな。」



一縷の希望を胸に、俺は机に置かれた受話器に手を伸ばした。




ー鎮守府周辺海域ー




電「・・・やっぱり、この辺りは何もなさそうなのです。」



島風「そ~だね!お昼寝できそうなほど平和だよ!」



電「平和なのはとてもいいことなのです・・・。」



島風「・・・ふぅ~ん?その割には暗い顔してるみたいだけど、何かつらいの?」



電「い、いえ!そういうわけではないのです、ただ・・・平和だったら私たちはいらないんじゃないかって思ってしまって・・・」



島風「存在理由ってさ、そんなに大切なことなのかな?」スゥ



電「えっ?」



島風「私たちは自分の意思で生まれてきたわけじゃないでしょ?なら、今更気にしたってそんなの後付け・・・ウソになるじゃん。」



島風「だからさ、気にしないほうがいいよ。そういうの、面倒くさいから。」



電「島風ちゃん・・・」



島風「・・・なんちゃってね~!本気にした?大丈夫だよ~!」ギュウ



電「はわわ・・・っ!///」



島風「電ちゃんがいないと私も提督もさみしくなっちゃうからここにいてほしいな~!それじゃ・・・だめ?」



電「・・・っ!ありがとうございます!」



島風「よしっ!いいこいいこ~!もうこの辺りには何もないってことがわかったし早く帰ろ~!」



電「そう、ですね。」



きっと、さっきの言葉は島風ちゃんの本音だと思った。



その言葉は私に向けられていたのか、それとも島風ちゃん本人に向けられていたのかはわからなかったけれど・・・



島風「ん?どうしたの電ちゃん?はやくかえろ~よ~!」ニコッ



そう言って無邪気に笑った彼女の笑顔には、少し影がかかっているような気がした。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



耳に残る砲撃の音、鼻孔を霞める硝煙の匂い。



『ハァ・・・ハァ・・・っ!』



それが私が今、知覚できる地獄そのものの風景だ。そしてそれは決して覆ることのない現実でもあった。



だが、ここで倒れるわけにはいかない。例え、全身が引き裂かれるような激痛に襲われていたとしても私は進まなければならない。



なぜなら、私の後ろには私の命以上に大切な仲間たちがいるのだから・・・。



『皆さん!あと少しの辛抱です!』



声を出し仲間を、自分を鼓舞するように叫ぶ。



・・・しかし、帰ってきたのは悲痛な叫び声と水しぶきの音だけだった。



『え・・・?』



信じたくない、信じたくない・・・っ!そんなことがあっていいはずがない!私はまだ立っている!戦っている!誰も死なせていいはずがない!!!



先ほどの音がどのような結果に繋がっていたかなんてとっくに分かっていた。でも、心は、感情はそれに追いつくことができない。



何かに急かされるように私はゆっくりと後ろを振り向く。



そこには、炎上している艤装が幾つも水面に浮いていた。・・・その持ち主たちは何処にもいなかった。




『・・・・・嗚呼っ』



守れなかった、死なせてしまった、ごめんなさい・・・なんて、当たり前な事を考えることができないほど。



『ハハッ・・・アハハハハッ!!』



私の中は真っ黒な絶望で埋め尽くされていた・・・。






榛名「っ・・・・!!!」ガバッ



気付けば、勝手に体が飛び起きていた。



榛名「はぁ・・・はぁ・・・っ」



背中の嫌な汗を振り切るように、私は浅い呼吸を繰り返し思考を逸らす。



榛名「また・・・この夢ですか・・・。」



意味もなくそうつぶやき、ゆっくりと立ち上がり窓の外に視線を移す。



外はまだ少し暗い、日の光が差し込むまでにはまだ少しだけ時間がある。



榛名「・・・」



それを確認した私は、少し急いで身支度を済ませ部屋をでる。



鎮守府は静寂に包まれており、まだ誰も起きていないという事がわかる。この状況は好都合だ。



そんなことを考えているうちに私の足は工廠の前で足を止め、中にいるであろう人物に声をかけていた。



榛名「明石さん・・・起きて、いますか?」



明石「・・・ええ、起きていますよ榛名さん。今日も、行くのですか?」



榛名「はい。」



明石「そうですか・・・、わかりました。艤装のメンテナンスは済ませてあります。どうか・・・ご無事で。」



榛名「ありがとうございます。」



当り障りのない感謝の言葉をかけ、足早に去ろうとする。



明石「あの、待ってください・・・。」



しかし、明石さんのその一声に私は足を止め振り返る。



榛名「・・・なんでしょうか?」



明石「何故、皆さんに秘密で・・・一人で出撃を繰り返すのですか?」



・・・そんな事か、決まっている。



榛名「私はもう誰も、私の目の前で失いたくないんですよ。」ニコッ



この願いはあの日から変わっていない。あの日から私はこんな『どうでもいい理由』に捕らわれている。



私の答えを聞いて少し呆けている明石の視線を振り切り、私は艤装を身に着け海に出る。



榛名「私はいつになれば・・・いつに、なれば・・・っ」



歯を噛みしめ、私は独りで戦場へ赴いた。



これは許されざる後悔の記憶、決して忘れてはならない罪の記憶・・・。



ー少し離れた海域ー



榛名「・・・こんなものですか。」



顔に付いた返り血を袖でふき取り、今日の戦果を確認する。



榛名「駆逐艦6、軽巡4、重巡2・・・そして」



そして今回の一番の獲物を仕留めた事に口の端を歪めつつ、確かめるように声に出す。



榛名「戦艦タ級・・・1っ!ふふふっ・・・」



榛名「みなさん・・・!見ていてくれましたか!?私やりましたよ!!!皆さんの仇を!敵を一人で屠って見せました!!!!!」



ボロボロになった体なんてお構いなしに空に向かって叫ぶ。嗚呼・・・っ!本当にいい気分だ、爽快だ!



勝利の余韻に酔いしれていると、日が高くなり始めていることに気づく。



榛名「・・・そろそろ帰らないと、提督にバレると面倒臭いですしね。」



すっかり気分の冷めた私は、できるだけ早く鎮守府に戻る為に上り始めた日を背にして進み始めた。



工廠



明石「・・・榛名さん」



この場にはもう居ない彼女の名前を呟く。



榛名さんは、毎朝遠くの海域に一人で出撃している。今まで見てきた限り、私が来る前も同じことをしていた。



私がこの鎮守府に来て、初めて榛名さんのこの行為に気づいた時を思い出すだけで身体が震えてしまう・・・。



ボロボロの艤装に、返り血と彼女自身の血で真っ赤に汚れてしまった服。それを気にしないほど生気のない顔をしていた榛名さん・・・。



そんな彼女の姿を見たくないという自己中心的な考えで、私は彼女に力を貸すと申し出た。



最初は渋られたが、提督に絶対に内緒にするという約束をしたことで、今では艤装のメンテナンスや服の新調を任せてくれている。



明石「・・・でも」



榛名『私はもう誰も、私の目の前で失いたくないんですよ。』ニコッ



それも、もう終わりだ。彼女の痛々しい笑顔が・・・どうにも忘れられそうにない。



明石「もう、あんな顔で笑ってほしくない・・・ですね。」



口に出して、自分に勇気を出すように促す。・・・幸い、身体を襲う震えはもう止まってくれていた。



明石「あの人なら・・・提督ならきっと、きっと榛名さんも救ってくれるはずです。」



最後は結局人頼みな自分に嫌気がさしながらも、私は執務室に足を進めた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ー鎮守府港ー



提督「よっ、待ってたぞ。榛名。」



榛名「・・・」



帰ってきた私を待っていたのは、明石さんでも静寂でもなく・・・陽気に釣竿を片手に持ち、こちらに笑いかけてくる提督だった。



榛名「・・・バレてしまいましたか。」



提督「ああ、明石から全部聞いた。全く、不甲斐ないな。」ギリッ



少し、怒気をはらんだ声でそう言った提督の顔は今まで見たことないほどに苦渋に満ちていた。



・・・当然だ、提督からの任務をすべて断った挙句に独断行動で海域に出撃して、勝手に資材を使われていたのだ。気分のいい話ではないだろう。



榛名「では、私を罰しますか?」



気休め程度に、今後の私の処遇について尋ねる。



榛名(大方、解体当りが妥当ですかね・・・まぁ、そうなればこの提督を殺せばいい話ですが・・・。)



そうかんがえ、少し身を構えた。



提督「・・・いや、なぜ俺がそんなことをしなくちゃいけないんだ?むしろ、罰を受けるのは俺のほうだ。」



しかし、帰ってきた返答は自分が思っていたものとは全く違っていた。



提督「すまなかった。隠さなければならないような状況を作ってしまって・・・」



榛名「・・・何故、提督が謝るのですか?この場合、落ち度があるのは私のほうだと思いますけど。」



提督「違うんだ、それは違うんだよ榛名。俺は君の事をよく知らないのに勝手に戦う意思がないと決めつけてしまっていたんだ。」



榛名「それが、なにか?」



提督「だからこれから、腹を割って話そう。榛名の事を教えてくれ。俺も・・・自分の事を話そうと思う。」



真剣な顔で、釣竿を見せてくる提督・・・はぁ、本当に面倒臭い。



榛名「お断りします、私にそれをする理由がありません。」



きっぱりと断る。別に私の事を知ってもらおうとは思わないし、提督の事を知りたいとも思えなかった。



提督「なら、これは罰だ。いいから、一緒に行こうぜ榛名。」ニコッ



・・・気が変わった、この男に私の辛さをすべてぶつけてやろう。そうすればもう私に話しかけてくることもなくなるはずだ。



榛名「わかりました・・・罰というのなら仕方がありません。」



提督「よし来た、とっておきの場所があるんだ。そこで話そう。」



差し出された釣竿を掴み、ゆっくりと歩き始めた提督の後ろについていった。



ー古びた桟橋ー



提督「ここだ。」



榛名「・・・こんなところ、あったのですね。」



この周辺には用がないため訪れる機会はなかったが、少し新鮮な気分になる。



提督「ああ、俺が初めてこの鎮守府に来たときに散歩してたら偶然見つけたんだ。」



榛名「そうですか。」



提督「そうなんだ、ここ鎮守府からも少し離れていて考え事をする時とかによく使っている。」



聞いてもいない話をしながら、提督は桟橋に腰を降ろした。



榛名「・・・」



私もそれに倣い、提督から少し離れたところに腰を降ろす。



提督「じゃあ・・・始めようか。」ヒュッ



提督が釣竿を振り、水面に波紋が広がったのを合図に私は忌々しい過去を語り始めた。



榛名「・・・私は、仲間を死なせてしまったんです。」



提督「死なせてしまった・・・?」



榛名「いえ・・・実際私が殺したようなものです。どちらにせよ、彼女たちを死へと追いやってしまいました。」



提督「・・・」



話しながらチラリと提督の顔を見る、予想通り提督の顔はつらそうな顔をしていた・・・いい気味だ。



榛名「以前の鎮守府は、戦果が命でした。・・・戦艦や空母ならともかく、軽巡や駆逐艦はその大義の前では風前の灯のような命です。」



榛名「様々な作戦で盾として使われ、捨てられるのも当たり前。盾にすらならなかったら即解体。言葉通りの地獄でした。」



なるべく表現が大げさになるような言葉を選び、提督を揺さぶる。



提督「なんて、酷いことを・・・っ。」



やはり、いい反応をする。もう少し話そう・・・



榛名「・・・それでもですね、当たり前になってくるんですよ。生きるために、私は偽りの忠誠を捧げ続けました。」



辛かった日々を自ら掘り起こしていく苦痛が襲ってくる。



榛名「そんな日を過ごしていれば、誰も必要最低限の言葉以外交わさなくなりました。」



榛名「当たり前ですよね、仲良くなってしまえば・・・沈んだとき、後悔だけが残ってしまいますから。」



そうだ、仲良くなってしまってもどうせ後でいなくなる。なら、最初から親しくなどしなければいい・・・けれど



榛名「それでも、ある日・・・ある駆逐艦の子が私に喜々として話しかけてきたんです。」



榛名「その子は私に憧れている、尊敬していると言ってくれました。でも、私は上手く言葉を返すことができていなかったと思います。」



榛名「それでも、その子は駆逐艦の友達を何人も連れてきて私のところへお話をしに来てくれました。」



あの子たちはちがった。私に、仲間といる楽しさと安心を教えてくれた。冷たくあしらった私をずっと気にかけて尊敬してくれていた。



榛名「あの鎮守府の中ではそんな私たちは目立ってしまいました・・・そこの提督に目を付けられるほどに。」



自然と拳に力が入る、そうだ・・・アイツが、アイツが私の幸せを・・・あの子たちを奪った。



榛名「私たちは風紀を乱す存在と一方的に咎められ、ある海域に出撃させられ、ました・・・」



・・・いやだ、いやだいやだ・・・思い出したくない・・・あの子たちの散り様なんて思い出したくない・・・



榛名「その後は・・・その後・・・に・・・」



だめだ・・・言葉がまとまらない・・・こえに、だせない・・・



榛名「その後は・・・もう、言いたく・・・ないです。」ニコッ



でも泣いてしまっては、みんなの死の苦しみを流してしまうような気がして流せなかった私は言葉を殺して笑うことしかできなかった。



提督「わかった・・・もういい、もういいよ・・・榛名。」ギュッ



榛名「・・・っ!?」



気付けば、提督が私を抱きしめていた。



榛名「い、一体何を・・・?」



なれない人の温かさに困惑しながらも行為の真意を提督に問う。



提督「辛いことを聞いてしまった、救われない話をさせてしまった・・・本当にすまない・・・!」



榛名「・・・提督、困りますよ・・・こんなこと、されても・・・」



・・・本当にずるい人だ。本当は傷つけるはずだったのにこんなことされたら・・・もう何も言えなくなる。



提督「わかっている、これは俺の自己満足だ、本当に榛名にも迷惑をかける・・・。」



榛名「全くですよ・・・もう、なんで私よりも・・・提督のほうが泣きそうなんですか。」ギュゥ



私はゆっくりと提督の背中に手をまわし、すこしだけ力を込め抱きしめ返す



・・・優しい、彼の本当の姿が少しだけ見えた気がした。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


提督「じゃあ・・・俺の話も、聞いてもらおうかな。」



榛名に回した腕を離しながら、俺はまた釣竿を拾い直し先ほどの位置まで戻って腰を降ろす。



榛名「・・・ええ、まぁいいですけど。」



提督「あはは、ありがとう榛名。」



不承不承とは言った様子だが、俺の話を聞いてくれるようだ。・・・心なしか、座る位置は先ほどより近くなった気がする。



提督「榛名、俺がここに来るまで何してたと思う?」



榛名「え・・・?そ、そうですね・・・曲りなりにも提督になれるぐらいですから・・・」



少し意地悪な質問をしてしまったが、榛名はそれを気にしていないのか真剣に考えてくれているようだ。



榛名「やはり、海軍の中でもそこそこ優秀な人として働いていたのでしょうか?」



そこそこ、ね。答えをあえて曖昧にすることで俺に気を使ってくれたのか・・・こんなところに飛ばされてるくらいだからな、そりゃあいい扱いをされていたとはいいがたいだろう。



提督「ん~、半分あたりで半分はずれかなぁ。」



榛名「なんですか・・・ソレ。」



呆れたような声で俺を少し睨んでくる。そんなことをされても少し困る・・・本当のことなのだから。



提督「俺はね、海軍お抱えの『殺し屋』だったんだよ。」



榛名「・・・・は?」



割りと本気で驚いているような声が帰ってきた・・・そうだよな、当たり前の反応だ。



提督「笑えるだろ、人を殺すのが生業の俺が人を守るためにここにいる。・・・出来の悪いブラックジョークにも程がある。」



釣竿を握っていた左手が無意識に胸ポケットを目指していることに気が付き、なんとかそれを堪えて釣竿へと戻す。



榛名「それは・・・ほんとうの、本当ですか?」



余程信じることができないのか、榛名は念を押すように確認してくる。



提督「ああ、本当の事だよ。・・・実際にもう何人も殺してしまっている。」



提督「海軍のお偉方に指示されるまま、殺して、殺して・・・気付けば、真っ当な感覚なんて消え失せていたよ。」



榛名「今の提督を見る限り、とてもそうは見えませんけどね・・・それに、海軍が殺し屋を抱え込む理由が見つかりませんし。」



榛名は尚もあり得ないと言っているが・・・それは彼女たちの無知からくる純粋さなのだということを今一度再認識させられた。



提督「なに、簡単な話だよ・・・敵は海の向こうにいる奴さんたちだけじゃないってことさ。」



榛名「どういうことですか・・・?」



提督「軍の秘密を外へ持ち出そうとするもの、職権を不当に行使しようとするもの、艦娘の力を使って反旗を翻そうと企んでいるもの・・・数えればきりがないな。」



榛名「でも、待ってください・・・。それぐらいなら、何も殺す必要までは無いんじゃ・・・?」



提督「『疑わしきは罰せよ』だ、本当に日本は怖い国だよ。・・・可能性があるってだけで排除したがるのさ。」



言葉にするだけで体が鉛のように重くなってしまう、いつから俺は・・・こんなにも弱くなってしまったのだろう。



目が少しだけ鋭くなってきている感覚があるが、俺はまだ話をやめるわけにはいかなかった。



提督「当然、そんな海軍を快く思わない奴は出てくるだろう。そいつらが、海軍に打撃を与えるには・・・一体だれに協力を仰げばいいと思う?」



榛名「・・・陸軍、ですか?」



これは流石にわかるか、わざわざ本土の問題を提示したのはこの答えを彼女自身から聞きたかったからだ。



敵は深海棲艦だけではない・・・海の敵ばかりを追いかけていては背後から撃たれてしまう。



・・・そんな可能性がある『これから』の事に対処していけるようになってもらう為に。



提督「正解だ。陸と海は仲が悪いわけではないが、陸軍は最近の海軍の待遇の良さは不満に思っているはずだ。・・・仕方のない事だとわかっているだろうがな。」



榛名「それじゃあ・・・提督は、その・・・陸軍の人たちも・・・?」



榛名は勘付いてはいるのだろう、問うてくる声は微かだが震えていた。



提督「・・・ああ、もちろんだ。」



榛名「そう・・・ですか。」



提督「だが、そんな行為の重さを思考を止めていた俺は理解することができなかった。」



今度は、ダメだった。左手は気づけば煙草を握りしめ、封を開けていた・・・右手はそれを止めることをしなかった。



提督「海軍はそんな俺と、その所業を秘匿する為に・・・俺を殺す事にした。」



榛名「ひどい・・・、今まで散々殺させておいて・・・」



この少しの間で、大分榛名の心情は変わっているようだ。やはり、お互いに苦しい境遇を語り合っていることが大きいだろう。



・・・たとえ、度合いの大きさの違いには目をつむっていたとしても



提督「ありがとう、榛名。・・・でもね、どうであれ俺は人の命を奪ったんだ。そんな終わり方ができるなら、それが本望だった。」



提督「・・・だが、そんな願いも叶うことはなかった。上層部は死体の有効活用だと言って、俺をこの鎮守府に連れてきた。」



提督「海軍に『この鎮守府』で死ぬことを義務付けられた、それが俺がここにいる本当の意味なんだよ。」



榛名が息を飲むのを横目で見届けてから、いつか明石に言った時の真意を煙と共に吐き出した。



提督「此処は・・・この鎮守府はね、『俺が救われない為』にあるんだよ。」



・・・そう、此処は俺の墓標。暗殺者の俺はもうこの世には存在していない。そんな奴、遠の昔に死んでいる。



此処にいるのは普通の『俺』、ただの死者の成れの果てだ。そんな俺が幸せになれるなんてことは・・・絶対にない。



榛名「そんなことないです!」



・・・そうです、そんなことはない。絶対にあってはならない。



提督「・・・榛名」



榛名「私は提督に話を聞いてもらえて、その・・・っ、少しですが楽になりました」



なんで提督がこんな目にあっているのでしょう?何人も殺したとはいえ、何も知らない子供にナイフを握らせるような行為をしたのは大本営の連中だ・・・



提督「だが、俺は無理やり榛名から話を「それでも・・・っ!」・・・」



駄目だ、ここで提督の考えを肯定してしまえば・・・きっと提督も『あの子達』のようになってしまう・・・っ!



榛名「私は初めて人のぬくもりが知れたんです!こんな私が、急にこんなことを言っても何言ってるんだって思うかもしれませんが・・・それでも・・・」



それだけは阻止しなければ、なにも知らなかった提督を・・・守らなくちゃ・・・



『あの子達』は守れなかったけれど・・・提督は、提督だけは・・・



榛名「貴方に少しでも希望を、幸せをもってほしいんです。・・・ほかでもない、この鎮守府で。」



提督「榛名・・・ありがとう」



榛名「いえ・・・私の勝手な我儘、なのですけどね」フフッ



この鎮守府でずっと・・・ずっと・・・迷わないように・・・守ってあげなくちゃ・・・



◇ ◇ ◇ ◇ ◇




あの話し合いから早数日、榛名とお互いの秘密の一部を話したことにより少し・・・いや、かなり距離が縮まった。



更に正確に言うと、俺に対する榛名の対応が劇的に変化した。



まだまだ突き詰めて説明すると、その姿をみた他の艦娘はみんな目を丸くして驚くほど変わった。



・・・言ってることがおかしいのはそれだけ驚いていたという認識で頼む。



榛名「・・・その、提督。お茶を入れてみたのですが・・・・」モジモジ



提督「えっ・・・?あ、ありがとう、いただくよ。」ズズズッ



榛名「・・・」ドキドキ



提督「ん、おいしいぞ。わざわざありがとう。」



榛名「本当ですか?よかったです!」ニコッ



提督(だいぶ丸くなった気はするが・・・なんかこう、おかしな感じがするんだよなぁ・・・)



榛名「?どうかしましたか、提督。」



提督「いやいや、なんでもないよ。あははは・・・」



提督(今日は加賀が来る日だっていうのに・・・この調子じゃ先が思いやられるなぁ。)ポリポリ



コンコン



提督「おっと・・・もうきたか。入ってくれ。」



電「失礼します、なのです。司令官さん、島の港に本土からの輸送船が到着しました。」



提督「そうか、報告ありがとう。じゃあ、ちょっといってくるよ」



榛名「あ・・・私もご一緒に・・・」



提督「いや、それには及ばないよ。榛名は電と一緒に、食堂にみんなを集めておいてくれ。集合時間は30分後ぐらいでいいから。」



榛名「わ、わかりました・・・。提督がそうおっしゃるならそのように。」



電「では、行きましょうなのです!榛名さん!」



榛名「ええ・・・電さん。」



提督(・・・さて、俺も行きますかね。)



ー港ー



まず目に入ったのは、大きな輸送船だった。そして、その周りには駆逐艦らしき少女たちが海に浮上している、おそらくあの輸送船の護衛艦なのだろう。



そんな中、一人の男が煙草をふかしながら船の中から降りてきた。服装から察するに大本営直属の憲兵だろう。



提督「こんな辺境まで、わざわざご足労いただきありがとうございます。私が直接お迎えに行ければよかったのですが・・・」



階級が下とはいえ、俺は上辺だけの身分だ。とりあえずは腰を低くして接するほかない。



憲兵「・・・仕事だからな。それに、お前を本土に入れるわけにはいかん。」



提督「そうですね、仕方のないことを言ってしまいました・・・。それで、本題の娘はどこに?」



なんとも思ってなさそうな口調でそう返されるが、いつもの事なので軽く流しておく。そんな事より、加賀の事だ。



憲兵「今、船の中で拘束具を取り外しているところだ。じきに降りてくるだろうよ・・・。」



面倒臭そうに加賀の状況を説明してくるが、納得できないところが一つある。



提督「・・・拘束具、ですか。そんなに、加賀は信用できませんか?」



今まで、俺が引き取ってきた艦娘の中には確かに暴力的な娘もいた。だが、拘束具を付けられていたことなんて無かったはずだ・・・



憲兵「信用できるかできないかの問題じゃない。そういう決まりだからだ。艦娘の扱い方なんて俺の知ったことじゃない。」



男が、なんともないように吐き捨てた言葉を聞いた周りの駆逐艦たちが俯いた・・・。



コイツ・・・どこまで彼女たちを愚弄するつもりだ・・・っ!



提督「っ!?そんなことを平然と言わないでください・・・!護衛で来てくれた駆逐艦の子達が聞いているんですよ!?」



憲兵「人殺しのお前に言われたくないね。それに、あんなのを人間扱いしろと?ふざけるな、ただの人間があんな力を出せるものか。」



憲兵「化け物だ、深海棲艦と変わらない化け物なんだよ。こいつらはさ・・・っ!?」



気付けば俺はコイツが逃げられないように後頭部を掴み、そのよく出た喉仏に指をあてていた。



・・・限界だった、これ以上彼女たちが貶されるのを黙って聞いていることなんてできない。



提督「お前・・・それ以上言ってみろ、ただじゃおかないぞ。」



憲兵「き、貴様・・・!自分が何しているかわかっているのか・・・!?」



わかっている、自分がどれだけ馬鹿なことをしているかなんてそんなの言われるまでもなく・・・だが



提督「わかっていないのはお前のほうだ。何故、彼女たちがそこまで言われなければならない?何故、お前の心無い言葉に涙を流さなければならない?」



そんなの知ったことではない、俺がどれだけ傷つこうと構わない。ただ、彼女たちが貶されるのは許せない。



憲兵「知るか・・・!!!お前も!艦娘も!黙って俺たちに支配されてりゃいいんだよ!『ゴミ捨て場』所属の分際でよぉ!!!!」



未だに訳のわからないことを喚き回っている男を黙らせようと、徐々に指に力を入れ始めたところで凛々しい声が聞こえてきた。



「もうそろそろ、その茶番を終わらせてほしいのだけれど。」



輸送船から、悠然と降りてきた女性は片方に結んだサイドテールを揺らしながらこちらに歩み寄ってくる。



その姿は、以前みた書類の写真で見た通りの女性・・・加賀だった。



提督「・・・君が加賀か。」



加賀「ええ、そしてあなたがここの提督ですか。・・・予想以上に、酷いですね。」



あからさまに顔を顰め、俺に目をやる加賀に少し頭を痛めながら、話を続けるために憲兵の拘束を解き向き直る。



提督「ああ、すまない。みっともない所を見せてしまったな。」



そりゃあ、今から自分の長官となる人間が幾ら悪口を言ったとはいえ、他者に暴力をふるっているところを見れば気分も悪くなるか・・・



とりあえず取り繕うように笑って両手を軽く上げてみるが、加賀の表情は変わらない。



加賀「そういうことではありません・・・純粋な艦娘達に自分を重ねるなと言っているのです。正直、とても不愉快です。」



・・・は?



提督「そ、それはどういう・・・?」



加賀「・・・自覚もないのですか、輪をかけてたちが悪いですね。貴方は歪み過ぎている、その自覚を持ったほうがいいと思いますよ。・・・手当たり次第に周りにかみつくよりも、先に。」



それだけ言うと加賀は鎮守府のほうに歩きだした。・・・俺が彼女たちに自分を重ねている・・・?



憲兵「ゲホッ・・・!ゴホッ・・・!く、くそ!俺にこんなことしやがって・・・!!!報告だ・・・!元帥殿に報告してやるからな!!!こうなればお前も確実に終わりだ!!」



提督「・・・」



加賀が去っていった後に残ったのは、疑問と煩い喚き声だけだった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



食堂へ向かう足取りが重い、喉は乾きっぱなしで手は汗ばんでいる・・・心なしか頭痛のような痛みさえ感じ始めた。



原因は間違いなく、加賀の一言だ。・・・だが、それだけではない。



きっと俺は、心のどこかで加賀の言葉を肯定してしまっているのだろう。だから、こんなにも苦しいんだ。



自分の想いを否定された事は何度もあった、けれどこんなにも落ち込んだのはこれが初めてだ。



提督「重ねている・・・か。」



もう一度自分に問いかけるように、言葉を口に出す。



確かに俺は彼女たちに肩入れをする事で何も知らないが故の過ちも、傷も彼女たちに押し付けていたのかもしれない。



だが・・・それでもそんな事実が気にならなくなるくらい彼女たちからの感謝の念は美しかった。



既に告げられた自身への死刑宣告を忘れられるほど・・・心地が良かった。



提督「・・・ははっ、加賀の言う通りだ。俺は歪んでいる・・・・」



彼女たちに手を差し伸べていれば。いつか自分も彼女たちに救ってもらえると、身勝手に思い込んでいた。



提督「あの時、俺が怒ったのは彼女たちを貶されたからじゃない。・・・俺自身の願いが否定されたからだったんだな」



落ち込んでいるのも同じ理由なのだろう、自分が生きていてもいいという証明になる存在を否定されたからという自己中心的な考えからくる疲労だ。



わかっていたって、立ち向かう術なんて知らない。教えてもらっていないことはわからない・・・



提督「違う・・・術を知らないわけじゃない・・・立ち向かう『勇気』が無かっただけだ・・・っ」



いつまでもこんな思考停止を繰り返しているから、大事なものを取りこぼしてきた・・・数え切れないほど、零して、溢して・・・最終的には自分の存在さえ殺してしまった。言葉に出すことさえも怠っていた俺に救いなんてあるはずがない・・・



提督「だから・・・こんなことになってるんだろうが・・・っ!」



結局、俺はあの頃から・・・何一つ変わっちゃいなかった。



ー食堂ー



榛名「提督、遅いですね。もう加賀さんも来ているのに・・・何かあったのでしょうか?」



睦月「大本営の人たちとお話ししているのではないですか?」ギュッ



文月「・・・」ギュゥ



電「でも・・・さすがに遅すぎる気がするのです・・・」



島風「もうっ!まってられないよぉ~!私、ひとっ走りして探してくる!」



明石「ちょっと、島風ちゃん!入れ違いになってらどうするの?もうしばらくここでまっていましょう?」



島風「う~・・・、わかった・・・」



明石「よしよし、もう少しで来るはずだから。」ナデナデ



島風「えへへ、そうだね。・・・・でも、提督は加賀さんを迎えに行ってたんだよね?なら、加賀さんなら何か知ってるんじゃないの?」



明石「えっ・・・?」



榛名「確かに、加賀さん。なにか知りませんか?」



加賀「さぁ、私も深くは知りません。」



榛名「そうですか・・・」



加賀「・・・ですが、もうすぐ来ると思いますよ。もうそろそろ、『切除』し終わってるはずですから。」



榛名「『切除』・・・?なんのことです?」



加賀「いえ、なんでもありません。いずれ知ることでしょうし、別段深い意味はありません。」



榛名「・・・?」



ガチャ



提督「遅れてすまない、準備は・・・できてるっぽいな。」



榛名「て、提督!もう、なにわらってるんですか!心配したんですからね?」



提督「あはは、すまない。少し、憲兵さんと話し込んでしまってね。」



島風「ええ~!ずるぅ~い!私も提督といっぱいおはなししたぁ~い!」ピョンピョン



電「し、島風ちゃん、我儘をいっては司令官さんが困っちゃうのです・・・!」アセアセ



提督「大丈夫だよ、それぐらいならいつでも付き合うさ。それよりも、今日から新たに鎮守府に加わる仲間への歓迎会が先だろう?」ニコッ



加賀「・・・いえ、お構いなく。私は部屋の場所さえ教えていただければ後は勝手にしますので。」



提督「そう固いことを言わないでくれよ、ほら、軽い自己紹介だけでもいいから。」



加賀「はぁ・・・。」



加賀「一航戦、正規空母の加賀です。ここでは好きにさせていただくので、そのつもりで。」



提督「だそうだ、みんなこれからよろしくしてやってくれ。」



榛名「はい、わかりました。」



島風「島風だよ~!よっろしくぅ!」



電「よ、よろしくおねがいします。なのです!」ペコリ



睦月「よろしくおねがいしますね。」ペコッ



文月「・・・・」ギュゥ



明石「あはは、やっぱりここの皆さん個性的ですねぇ~。よろしくお願いします。」



加賀「全く・・・暢気なものね。それで、私の部屋は?もう休みたいのだけれど。」



島風「ええ~!もういっちゃうの~!?はっや~い!」



提督「まぁそういうな島風。加賀も長旅で疲れてるんだろう、今日はゆっくりしてもらおうじゃないか。」



加賀「そういうことです。・・・なので、また今度お話ししましょうね?」



島風「は~い!楽しみにしてるね~!」



提督(なんだ、あんな顔もできるんだな。やっぱり問題なのは上司のほうだったんだな。)



提督「じゃあ部屋までは俺が案内しよう、ついてきてくれ。みんなはもう解散していいぞ。」



電「で、では皆さん今日のお夕食は少し豪華にしたいと思うので食料調達を手伝ってほしいのです・・・」モジモジ



島風「もっちろんいいよ~!私お魚釣りたぁい!」



睦月「じゃあ睦月と文月ちゃんは畑でお野菜を収穫してくるね。いこ、文月ちゃん?」ギュッ



文月「・・・う、うん・・・っ。お姉ちゃん、頑張ろう、ね?」



明石「では私と榛名さんは台所の準備をしてきますね~!」ギュッ



榛名「え!?で、でも私は提督と・・・!あ、ちょっ、明石さん!?」



明石「はいは~い、その話はあとでききますからね~」ズルズル



加賀「・・・」スタスタ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


提督「どうだ、にぎやかなところだろう?加賀も気に入ってくれるといいんだがな。」



少し、不機嫌そうに後ろを歩いている加賀に声をかける。これから仲間になるのだから不満は今のうちに聞いておきたい。



加賀「それはどうですかね、あの明るさにも裏があるはずです。・・・あなたと同じように。」



提督「またその話か・・・」



加賀は俺の心中をかき乱すような話題しかしてこない・・・上司に対する反抗的な態度の片鱗なのだろうか。



加賀「耳が痛いと感じるのなら少しは逃げずに考えてみたらどうですか?」



提督「っ、逃げちゃいない。ちゃんと考えたさ。だが、俺にはまだやらなきゃいけないことがある、答えを出すよりも先にな。」



そうだ、今の俺には大切な使命がある。俺が彼女たちを立ち直らせて、元の居場所に返すという大切な・・・使命が・・・



加賀「・・・また、嫌な出来事を『切除』したのですか?」



瞬間、時が止まったのかと錯覚してしまった。・・・今、なんていった・・・?



提督「なっ・・・そ、その言い方、一体どこで・・・?」



提督(どういうことだ・・・?俺の病気の事を何故、加賀が知っている・・・!?)



加賀「本土で聞いてきました。・・・あなたはもう少し自分が厄介者だと自覚するべきです。一介の艦娘である私にも情報が伝わってくるほどまでに、あなたは大本営に警戒されています。」



自分が厄介者だというのはとっくにわかっている・・・だからこそ、俺は殺され此処にいる。・・・そんな俺が未だに警戒されているなんて、信じろというほうが無理な話だ。



提督「そんな大袈裟な、俺はもう殺されているようなものなんだ・・・・ぐっ!?!?」



言葉を言い終わる前に加賀に襟首を強くつかまれ、上へと持ち上げられる・・・殺気や敵意に敏感な俺でも反応ができなかった・・・今更ながら、艦娘の強さを認識しなおさせられた。



加賀「殺されているようなもの?・・・やはり、あなたは何もわかっていない。」ガシィ



提督「か・・・が・・・っ!な、なにを・・・!」



怒り、悲しみ・・・そして、なによりも焦燥を強く感じさせる声で加賀は俺を責めたてる。



加賀「あなたは上手く行っているように思っているのでしょうけれど、本当に彼女たちを救いたいのならもう少し考えて行動を起こすべきだと言っているのです。」ギギギッ




本当に救いたいのなら・・・?当たり前だ、何故いまさらそんなことを言われなくてはならない・・・!




提督「そんなことはわかっている・・・!俺が此処にいる限り、彼女たちの不幸を俺が背負っていけるってな・・・!それの何が悪い・・・!?」



加賀「私は、そう考えているあなたの在り方が気に入らない・・・っ!『切除』で捻じ曲げた想いを堂々と騙るな。それは、私たちを貶めている行為に他ならないのだから」



提督(貶めて・・・いる・・・?)



加賀「だからこそ、言わせていただきます・・・『いい加減にしろ』と。」パッ



提督「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



提督(訳が分からない、なんで俺が彼女たちを貶めているんだ?『切除』のなにが悪いのか・・・わからない)



加賀「・・・いいですか、あなたが思っているほど私たちは弱くありません。」



そんなことはない、彼女たちは確かに強いけれど心は何処か不安定だ。俺が支えてあげなくてはならない。



加賀「ですから、あなたはまず自分の問題と向き合ってほしいのです。・・・それが巡り巡って私たちの為にもなるのですから。」



そもそも・・・なんで俺は『なくてはならない』と感じてしまうようになったのか。



提督「俺の・・・問題・・・」



加賀に言われたからかもしれないし、・・・もしかしたら『切除』を無意識に行使していたからかもしれない。



提督(・・・大本営と自分の罪から逃げて此処にきた。『本当に殺された』のは殺し屋だった頃の俺だったのか・・・それとも・・・)



・・・だが確かに、俺は自身の過去に目を向け始めていた。



ー艦娘寮ー



提督「ついたぞ、この部屋だ。家具は備え付けのものがある、好きに使ってくれて構わない。」ガチャ



加賀「・・・私一人が使うにしては広すぎるような気がしますが?」



提督「あはは、実は一人部屋はもうすべて埋まってるんだ。残っている部屋と言ったらもうこういう部屋しか残ってなくてね。」



加賀「全て埋まっている・・・?おかしいですね、ここ以外にも沢山部屋があったはずですが、この鎮守府に所属している艦娘の数と一致していないのでは?」



提督「ああ、あの部屋はこの鎮守府から他の鎮守府へと戻れた艦娘が使っていた部屋なんだよ。今も彼女たちの私物が残っているんだ。」



加賀「何故、そのままにしているのですか?」



提督「彼女達の希望でな、『いつか、この鎮守府に戻ってきた時のために』って押し切られちゃって・・・」ポリポリ



加賀「そう、ですか。」



提督「おかしな話だろ?彼女たちを元居た場所に返してやるはずが・・・今では、送り出す側になってそのことに感傷さえ覚えているんだ。」



加賀「・・・いえ、おかしくはありませんよ。彼女たちは、自ら此処が自分の帰るべき場所だと決めたのですから。」



提督「加賀は優しいんだな・・・。」



加賀「優しいわけではありません、私は思ったことを言葉にしているだけです。」



提督「・・・そうか、じゃあ今日はゆっくり休んでくれ。夜ご飯は、皆が用意してくれるらしいから出来次第呼びに来るよ。」バタン



加賀「・・・」



加賀「私は、優しいわけではありません・・・私は『正しく在りたい』だけなんです。」ボソッ



息をつくように溢れた一言は、広い部屋に静かに溶けた。



ー鎮守府内廊下ー



提督「・・・・」スタスタ



提督(大本営との決着をつける前に、まずはこの鎮守府の問題から解決していかなきゃな。)



提督(それ以外にも、『切除』・・・コイツも俺の目的を歪ませる危険性がある。追々どうにかしなくてはならない時があるはずだ。)



提督「はぁ、問題は山積だな・・・。」



「あ・・・え・・・あ・・・・おね、ちゃ・・・」



提督「・・・?なんだ、今声が聞こえたような・・・」



「ど、どこ・・・?おねえちゃん・・・っ」



提督「っ!」



提督(今度はきちんと聞こえたぞ・・・っ!文月の声か・・・!)



提督「くっ・・・!」タッタッタ



提督(失敗した!二人が離れてしまわないように気を付けるべきだった・・・!)



提督「間に合ってくれっ!」タッタッタ



ー鎮守府裏の畑ー



提督「はぁ・・・はぁ・・・」



提督「文月!睦月!どこだ!」



文月「・・・おねがい、ふみつきを・・・すてないで・・・おねえちゃんおねえちゃんおねえちゃん・・・」



提督「文月、そこにいたのか!睦月はどうした?」



文月「おねえちゃんおねえちゃんすてないでふみつきのおねえちゃんふみつきだけのおねえちゃん」ブツブツ



提督(やはり会話はできないか、こうなれば睦月を自力で探すしかない・・・・!)



提督「文月、立てるか?一緒に睦月を捜しに行こう。」ギュッ



文月「あっ・・・」



提督(睦月が文月と離れてまで行きそうな場所と言ったら何処だ?工廠?港?桟橋?)



提督「考えていたって埒が明かない!全部回るぞ、文月!」タッタッタ



文月「・・・・」タッタッタ



ー工廠ー



提督「睦月ーっ!」



提督「・・・返事はなしか。」



文月「・・・・うぅ・・・あ・・・・」



提督(まずい、また発作が起こってしまうかもしれない・・・!)



提督「大丈夫だよ文月、すぐに睦月と会える。」ナデナデ



文月「あ・・・う・・・・」



提督「だから、もう少し一緒に探してみよう。」ギュッ



文月「・・・」コクリ



提督(よかった、まだどうにかなりそうだ。だが、そろそろ他を探さないと・・・次は何処に・・・!)



提督「港に行ってみよう、文月。」タッタッタ



文月「・・・」ギュッ タッタッタ



ー港ー



提督「はぁっ、はぁっ・・・!睦月!」



提督「ここにも・・・いないのか・・・っ」



文月「おねえちゃん・・・おねえちゃんおねえちゃん・・・」ブツブツ



提督(まずい・・・文月がこれ以上耐えられる保証はない・・・。)



提督「大丈夫だ・・・次で会える。きっと次で・・・」ナデナデ



文月「もうっ、もういや・・・!」パシッ



提督「っ・・・」



文月「なにがだいじょうぶなの!?なんでおねえちゃんにあえないの!?!?」



文月「おまえがおねえちゃんをかくしたんだ!いっしょにさがすふりしてふみつきをおねえちゃんからとおざけたんでしょ!!!」



提督「違う!俺は睦月を隠してなんかいないし、俺だって睦月が心配なんだ!」



文月「うるさい!うるさいうるさいうるさい!みんなふみつきからおねえちゃんをとろうとするんだ!!」



提督「文月・・・っ!」ギュゥ



文月「っ!!はなして!はなしてよ!おねえちゃんをかえせ!」



提督「落ち着け・・・!落ち着くんだ文月!」



文月「はなしてっていってるでしょ!!」ドゴッ



提督「ぐぅ・・・っ!」ユラッ



文月「おねえちゃん・・・いまいくからね・・・!」タッタッタ



提督(あ、危ない・・・!油断していたら意識を持っていかれるところだった・・・!)



提督「ぐ・・・っ文月・・・まってくれ・・・!」タッタッタ



提督(なんで、こうも上手く行かないんだ・・・!)



ー鎮守府裏の畑ー



文月「おねえちゃん・・・!」タッタッタ



睦月「・・・・およ、文月ちゃん戻ってきたんだ。」



文月「っ!おねえちゃぁぁん!」ギュゥゥ



睦月「あはは、痛いよ文月ちゃん・・・。よしよし」ナデナデ



文月「やっぱりあいつがおねえちゃんをかくしてたんだ・・・もうぜったいにはなれないよ・・・?おねえちゃん・・・」



睦月「コラ、司令官をあいつなんていっちゃだめでしょ?」



文月「ご、ごめんね・・・おねえちゃん。」



睦月「・・・もう、本当にごめんなさい司令官。」



提督「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



睦月「文月と一緒に私のことを探してくれていたんですよね?」ナデナデ



提督(・・・確かに、引っかかるところは幾つもあった。)



提督「ああ・・・そうだな。」



睦月「ふふっ・・・ありがとうございます。」



だけど、信じたくはなかった。



睦月「さ、文月ちゃん。榛名さんたちもまってるだろうから早くいこっ?」ニコッ



目の前で優しく微笑む少女が、この騒ぎの元凶だという事実を・・・



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



睦月「・・・私と二人きりでお話ししたいことってなんですか?」



睦月は人懐こそうな笑顔でそう問いかけてくるが、その仕草一つでさえも白々しく感じてしまう。



提督「少し、聞きたいことがあるんだ。」



睦月「聞きたい事、ですか?」



息を吸い込み、言いたくもない質問を少女に向かって投げかけた。



提督「・・・なんで文月から隠れたんだ?」



睦月「・・・。」



言ってしまった。・・・もう、後戻りはできない。



睦月「・・・ばれちゃってましたかぁ。ふふっ・・・そっかそっかぁ・・・」クスクス



いつもの姿からは想像出来ないほど歪に笑う睦月に気圧されてしまいながらも、俺は話を続ける。



提督「文月の不安定さは君が一番分かっているはずだ。・・・どうしてこんなことをしたんだ?」



そう、俺には動機が分からない。お互いがお互いに依存しているはずなのにも関わらず、どうして自らそのバランスを崩すような真似をしたのか



睦月「文月ちゃんが不安定・・・?あははは・・・っ!」



睦月「はははっ・・・ふぅ、もう何言ってるんですかぁ~!」



睦月「文月ちゃんはこの鎮守府で一番まともな子ですよ?本当に司令官は何もわかってないんですね。」クスクス



この言葉を聞いた瞬間、俺は自分自身の過ちに気づかされてしまった。



俺は文月が一方的に睦月に依存し、睦月はそれに付き添うこととなりここに来たものとばかり思っていた・・・いや『思い込まされていた』



この情報はあくまで書類上で見ただけだ、それを鵜呑みにして接していたのは確かに俺自身だ・・・だが。



睦月「それにしても文月ちゃん可愛かったなぁ~あんなに涙なんて流しちゃって~♪」ニコニコ



目の前の少女は『忠実に』その書類に書かれた役を演じていた・・・?



俺が睦月に少しでも心を開くように、そして・・・文月に注意がそれるように・・・



提督「なんでこんなことをしたのかって聞いているんだ・・・っ!答えろ睦月!!」



身勝手ながらにも裏切られたと感じた俺は、八つ当たりとわかっていても声を荒げてしまう。



彼女の笑い声を聞いているだけで、黒い気持ちが腹の底からあふれ出て止まらなくなる



睦月「そんなに怒らないでくださいよぉ、そうですね~強いて言うなら・・・趣味?」ニコッ



提督「睦月ぃ!!!!」ガシッ



気付けば俺は睦月の肩を掴み、叫んでいた。



我慢なんてできるわけがない・・・目の前の少女は文月の涙の重みをわかってはいないのだから



睦月「っも~!痛いじゃないですかぁ~、いくら艦娘とはいえ痛いものは痛いんですよ?」ニコニコ



余裕の笑みは俺の怒りを加速させていく



提督「お前は文月をなんだと思っているんだ!?文月はお前のことをあんなにも・・・!!」



睦月「・・・随分と、あの子の肩を持ちますね?」



提督「お前が文月を弄ぶような真似をするからだろう!?あんな純粋な子にお前は・・・!」



睦月「司令官、自分が滅茶苦茶なことを言っている自覚・・・ありますか?」



提督「何を言っている!滅茶苦茶なのはお前のほうだ睦月!!!」



次の瞬間、肩を掴んでいたはずの睦月の姿は消え失せ、頭に鋭い痛みが走ってから俺は睦月に倒されたという事に気が付いた



提督「がっ・・・!?」



睦月「守りたいと言う癖に、大本営に歯向かって立場を危うくさせたり、元の鎮守府に戻すとかいっておきながら症状を悪化させてみたり・・・・・あなた、本当に何がしたいんですか?」



光のない目で俺を見下ろしながら、睦月は先ほどとは比べようにない程言葉に棘を含んで容赦なく俺に吐き捨てる。



だが、その言葉はきっと的を射ていた。それでも俺は睦月の言葉を真っ向から受け止めることができない。



提督「・・・睦月・・・・」



睦月「・・・貴方は文月の事を子供だと思っているのでしょうが、私から言わせればあなたのほうが子供です。」



ああ・・・俺はまた間違えたのか・・・・



睦月「皆の為と謳うのであれば、自分の行動に責任を持ってください。」



確かにそうだ、加賀に喝を入れられたばっかりだっていうのにな・・・だからこそ



睦月「私にはできませんでした・・・それでも・・・あなたなら、司令官ならまだ間に合います。ですので、ファイト、ですよ?」ニコッ



・・・君が何で俺の為に『そんなこと』をしてくれたのかがわからない。



なんで自分を悪者に仕立ててあげてまで・・・・俺の過ちに気づかせてくれたのかが・・・わからないんだ・・・



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



提督「・・・ああ、いってなぁ。畜生・・・」



頭を押さえながらゆっくりと立ち上がる、腰にも強い痛みが走るが歩くことには支障なさそうだ。



提督(腰も頭も強くぶつけちまった、立つのもやっとだ)



提督「今日一日・・・色々傷ついちまったなぁ、アイツ等遠慮なしで痛い所ついてきやがって・・・全く。」



だが、得られたものも多かった。『切除』なんかで捨ててはならないものばかりだ。



提督「俺にもこんな考え方ができたんだな。本当に・・・恵まれている。」



提督(頭も冷えたことだし、責任をもって問題解決に動くとしようか・・・)



睦月からの厚意を裏切るわけにはいかない、睦月は俺に何故文月の状態を放っておいたのかと暗に教えてくれたんだ



提督「・・・ありがとう、睦月。」



ポツリとこぼれた感謝の言葉は夜の風に凪いで消えていった。



ー鎮守府内廊下ー



睦月「・・・あ~あ、思えば睦月っていっつも損な役回りばっかにゃしぃ~」



意味もなく独り言を呟いてみる。ま、帰ってくるのは睦月の足音ぐらいなんだけどね



睦月「司令官ったら、あんなに怒っちゃって・・・もうっ、怒りたいのは睦月のほうだよ。」



文月ちゃんの事もそうだが、榛名さんの事だけはいただけない。



まだしばらくは、安静にしていてほしかったのに・・・司令官が変に曲げちゃうから榛名さんもおかしくなっちゃって・・・



睦月「この調子じゃ、いつ元の鎮守府に戻れることやら~」ポリポリ



そこまで考えて、私は自分もその心配事を助長させた可能性があることに気が付く。



睦月(司令官、気づいてくれたかなぁ・・・ていうか、気付いてくれなきゃ睦月の立場危なくない!?)



睦月「あ~!やっぱりストレートに言ったほうがよかったかも!でもそれはそれで司令官が受け止められないだろうしなぁ・・・」



きっと、司令官も何か問題を抱えている。だから、言動が食い違ったりするのだろう。



睦月「・・・って!文月ちゃんを放置したままだった!お野菜渡したから食堂にいるはずだよね!?」タッタッタ



文月ちゃんに必要とされるのはうれしいけど、今の文月ちゃんは全部わかっててあの調子だからなぁ・・・ちょっとフクザツ・・・



睦月(ま、後は司令官に任せよう~!加賀さんがいい感じに諭してくれてたみたいだし、あんなにお節介してあげたのにここで潰れるようならそこまでだったってことで~!)



『無責任』は百も承知だ、けれどこういう生き方で私は私を形作ってきた・・・人の事なんて言えないけれど、それもまた私なのだから。



ー食堂ー



明石「・・・っと、こんなものでしょうかね。」



電「はわわ~!おいしそうなのです~!」キラキラ



島風「すっごぉい~!早く食べたい食べたぁ~い!」キラキラ



榛名「・・・」



明石「榛名さん?どうかなされましたか?」



榛名「明石さん・・・お料理すごく上手なのですね・・・」



明石「えへへ、実は前の鎮守府で間宮さんに教わっていたんですよ!」



榛名「そうですか・・・」



榛名(どうしましょう・・・このまま提督の胃袋を明石さんが掴んでしまえば・・・私は提督から・・・)



明石「さ、机に配膳しに行きましょう?電ちゃん、島風ちゃんも手伝ってください」



電「なのです!」タッタッタ



島風「りょ~か~い!」タッタッタ



明石「ふふっ、元気でいいですね。」ニコニコ



榛名「提督・・・」



榛名(提督には榛名が、榛名だけがいればいいはずなのに・・・っ)ギリッ



ー食堂前廊下ー



文月「・・・」



睦月「ちょっ、文月ちゃん!?なんでまだここにいるの!?」タッタッタ



文月「あ、あ!おねえちゃん!ま、まってたよ?」ギュ



睦月「まってたって・・・暖かいって言ってももだまだ夜は冷えるんだから、こんなところにいたら風邪ひいちゃうよ?」ギュゥ



文月「う、うん。ごめんね・・・?おねえちゃん」



睦月「いいの、でももうこんなことしないでね?おねえちゃん、心配しちゃうから・・・。」



文月「うん・・・」



ー食堂ー



睦月「ごめんなさい、遅れてしまいました!・・・・もうお料理つくり終わっちゃった感じですか?」



文月「・・・」ギュッ



明石「待ってましたよ睦月ちゃん、文月ちゃん。お料理はもう出来上がったんですけれど、睦月ちゃんたちのお野菜はサラダにしようと思っていたので大丈夫ですよ!」



睦月「そうですか、よかったですぅ・・・」ホッ



文月「・・・よ、よかったねおねえちゃん」



明石「では、お野菜預かりますね~♪」



睦月「あ、はいよろしくお願いします!」



文月「・・・」ペコリ



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


後書き

提督の心情がバラバラだったり、情緒不安定だったりするのは仕様です(震え声)


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1: Abcdefg_gfedcbA 2018-04-06 16:13:55 ID: QZNDfxqj

名作の予感...期待大です

2: 志貴 2018-04-07 05:15:28 ID: Ad_vI3Nt

1≫ほ、本当ですか!?ありがとうございます!頑張ります!

3: SS好きの名無しさん 2018-04-13 21:03:08 ID: okxPeLMZ

面白い、応援してるザマス!!

4: 志貴 2018-04-14 07:51:48 ID: 1Z6W83iE

3≫ありがとうございます!コメントを頂けるだけで中々モチベーション上がります( *´艸`)

5: SS好きの名無しさん 2018-04-19 18:59:06 ID: ZD3oSoas

あぁ~続きが気になるんじゃ~。

6: 志貴 2018-04-22 02:42:19 ID: T6Nl6Q2a

5≫コメントありがとうございます!少々設定の調整をしていたので遅れてしまいました・・・頑張って早く続きを書けるように努力します!

7: ポテ神提督 2018-04-22 11:47:19 ID: BKmvf4Kz

続きが気になります!

更新頑張ってください!!

8: 志貴 2018-04-24 01:10:57 ID: 7jrz5Z_6

7≫ありがとうございます!まだまだ未熟ですが頑張りますね!

9: ㈱提督製造所 2018-04-28 11:55:04 ID: NA2fcCaV

思わず「お気に入り作者」に登録してしまったwこれからの作者の健闘に期待します

10: 志貴 2018-04-29 13:51:41 ID: d9Dez8ye

9≫作者自身をお気に入り登録ですか・・・っ!?ありがとうございます!が、がんばりますね!(緊張)

11: SS好きの名無しさん 2018-04-29 17:53:36 ID: rpLPLg5r

スーパードラマTVとかAXVのドラマシリーズのような展開に期待

12: 志貴 2018-04-30 09:08:58 ID: zM53LkuL

11≫すみません、自分はあまりテレビをみないのでわからないのですが・・・展開は一応二通りくらいは考えています(ドヤッ)

13: SS好きの名無しさん 2018-05-01 20:04:56 ID: htBRY0PV

頑張って下さい!

14: 志貴 2018-05-02 00:52:27 ID: 62AimNgd

13≫コメントありがとうございます!頑張りますね!

15: CQC中毒 2018-05-08 06:40:35 ID: yjnSXQrO

シリアス展開を書き続けられるなんて
羨ましい限りです!
応援してます(*´・∀・)ノ

16: SS好きの名無しさん 2018-05-08 08:39:06 ID: PKDB3rEq

とても面白いと思います!更新頑張って下さいね!

17: 志貴 2018-05-09 00:35:45 ID: 6hStDibm

15≫ありがとうございます!自分的にはもう少し柔らかく行きたいんですけど設定が許してくれないんです・・・w

18: 志貴 2018-05-09 00:36:21 ID: 6hStDibm

16≫ありがとうございます!頑張りますね!

19: SS好きの名無しさん 2018-05-15 11:35:02 ID: lEN20-w6

名作の予感!続き待ってるぞ〜

20: SS好きの名無しさん 2018-05-20 20:21:52 ID: fvmibvKj

面白いです!続き待ってます!

21: 志貴 2018-05-21 01:43:36 ID: MVfvc-pB

19≫ありがとうございます!最近、忙しくてあまり更新できてませんけど細々とやっていきたいです・・・

22: 志貴 2018-05-21 01:44:13 ID: MVfvc-pB

20≫ありがとうございます!続き早く書けるようにがんばります!


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