機動偶像ガンライブ!第一話「ファーストライブ」
サン●イズを代表するロボットアニメの金字塔とスクールアイドル達の謎のコラボ第二弾!
荒廃した欧州を舞台に繰り広げられるバトル、彼女達は生き延びることが出来るか…
ジェノサイド、グロ、キャラ崩壊、ドンパチ成分が含まれます、苦手な方は至急退避を推奨します。
前回のガンライブ!
激化する地球連邦軍とジオン公国軍との戦争、欧州の方では連邦軍による反攻作戦が始まろうとしていた。一方、地球連邦軍士官学校の劣等性、コウサカ・ホノカは第九機甲大隊長のアヤセ・エリ少佐のスカウトにより第九機甲大隊『μ's』に配属される。
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 機甲大隊司令部―
彼女―コウサカ・ホノカ准尉―は、着任の挨拶の為に司令部ビルを護衛の小銃を提げた二等兵と共に執務室へ向かっている最中だ。司令部ビル、と言っても配管やケーブルがむき出しの質素な建物だ。
「随分シンプルな建物みたいだけど…」
「ここはマシな方です。東南アジアの方なんかは雨が降るたびに兵、下士官は当然、士官や司令までバケツリレーに駆り出されるって噂ですから。」
ホノカの率直な感想に二等兵のボヤキが帰ってくる。
「そう、大変なんだね…。」
「はい、大変なんです。…っと、着きました。ここが執務室です。」
「ありがとう、ここまでで大丈夫だよ。」
「はっ、失礼します。」
敬礼をして二等兵が歩き出す。ホノカは緊張した面持ちになってドアをノックする。
「コウサカ・ホノカ准尉、入ります。」
ドアを開ける。
そこには想像を絶する光景が広がっていた。ホノカがフリーズしているとホノカの存在に気づいた女性士官が声をかける。
「よく来てくれたわ、コウサカ・ホノカ准尉。私が第九機甲大隊長のアヤセ・エリ少佐よ。」
「は、はあ…」
ホノカが返答に詰まる。無理もない。その部屋は『執務室』というより『喫茶店』に近い内装をしているからだ。本来応接用のテーブルとソファがあるべき場所には丸いテーブルと明らかにクッション性に乏しい椅子が四脚。執務用デスクがあるべき部屋の奥、窓付近には何故かカウンターがあり高めの椅子が数脚並んでいる。書類が入っていそうな棚にはグラスやカップ、コーヒーメーカー、ティーポット(エリ曰く『割と高級なもの』らしい)、コーヒー豆等が入っている。
「立ち話もあれだから座って。」
「え?あ、はい。」
ホノカにカウンター席を勧めるとエリはカウンターに入り流れるような手際で紅茶を入れる。
「お待たせ。」
エリはティーカップをホノカの前に置き、カウンターを挟んで向かい合う形で椅子に座る。
「いまだに現状が呑み込めてないとでも言いたそうな顔ね。この部屋の装飾とラテアートに関しては趣味だから安心して。」
『何を安心しろと?』とツッコミを入れる者はこの空間には存在しない。
「さて、本題に入る前に戦況について説明しておきましょうか。私たちは現在、ジオン軍とは膠着状態にあります、たまに威力偵察を行うだけ。この基地にはモビルスーツ二個小隊、戦車大隊、迫撃砲中隊、高射砲中隊、歩兵三個大隊、整備大隊、警備中隊、輸送中隊、通信中隊、ホバートラック五輌、ビッグトレー一基、補給科が配属されています。海洋戦力が絶望的なのがネックだけど。あなたには第一モビルスーツ小隊の小隊長になってもらうわ。機体は陸戦型ガンダムに乗ってもらいます。」
エリが一通り説明し終えたところでドアがノックされる。
「入るでー。」
ドアを開けて副官と思しき士官が一人の士官と二人の下士官を連れて入ってくる。
「初めまして、准尉。ウチが大隊副官のトウジョウ・ノゾミ大尉や、よろしゅうな。それで、こっちがソノダ・ウミ中尉、この二人が部下のニシキノ・マキ曹長とホシゾラ・リン軍曹や。」
「ニシキノ・マキ曹長よ。ふーん、これが次の小隊長ってわけね。」
「ホシゾラ・リン軍曹です、期待してるにゃー。」
「ソノダ・ウミ中尉です。本来は第二小隊長兼大隊付狙撃手ですが、当面は第一小隊の支援に入ります。階級は私の方が上ですが小隊の指揮は貴女が執りなさい。」
それぞれ挨拶する三人のパイロット。
「不躾ですが准尉殿、実機操縦は何時間ほどですか?」
「実機は九百二十三時間、シミュレーターで三千二十時間です。」
「そうですか、ではこの後少々お時間頂けますか?小隊長歓迎のセレモニーを行う風習が我が隊には存在します。付き合っていただけますか、准尉殿?」
マキがその話題を出した瞬間エリはおもむろに電話機を取りどこかへ連絡、ウミは呆れたような表情でマキを、リンとノゾミは憐れむ様にホノカの方を見つめていた。ホノカだけが状況を把握できずにいた。
―二時間後 地球連邦軍欧州方面ライプチヒ・ベース 演習場 渓谷エリア―
「どうしてこうなったの…」
機上の人となったホノカの呟きはコックピット内に響くことなく吸い込まれた。
つい先ほどパイロット詰所に顔を出した途端クラッカーによる紙テープの雨を浴びたついでにパイが顔にクリーンヒットしたと思ったらパイロットスーツに着せ替えられていて陸戦型ガンダムのコックピットに収まっていた。
『準備はいい?ルールは簡単、私とリンを相手に模擬戦をしてもらうわ。一対一を二戦でね。弾はペイント弾、ビームサーベルは殺傷力がないレベルまで出力を下げてある。通信は常時オープン。』
マキから通信が送られルールが説明される。さらに別の通信。
『オペレーターのミナミ・コトリです。管制を担当します。よろしくね。』
『よろしく、コトリちゃん。』
『挨拶は終わった?始めるわよ、まずはリンが相手。五秒前!4・3・2・1…作戦(ミッション)開始(スタート)!』
マキの合図で戦いの火ぶたが切って落とされる。ホノカがフットペダルを踏み込む。瞬間、シートに叩きつけられる感覚がホノカを襲う。
「何これぇぇええっ!?」
今までのGM練習機とは比べ物にならない加速、急制動で機体を止める。だがその機体制御の動作でも急停止の為、身体が投げ出されそうになる。最新鋭機であるこの機体は練習機のようにフットペダルを蹴り飛ばすように踏まなくても十分に反応するのだ。
「敏感すぎる機体…でも、これなら!」
シビアな機体であることが分かり、ホノカ軽くフットペダルを踏む。今度はスムーズに動いた。
「敵機は何処…?」
ホノカはセンサー類に目をやる。反応あり。識別はリンの陸戦型GMだ。光点が高速で向かってくる。陸戦型GMのカタログスペックを遥かに凌駕しているような機動性だ。
「速い!?」
リン機を目視で確認、銃口を向けた時にはすでに視界から消えていた。
「何処!?」
『遅すぎるにゃ!』
アラートが鳴り響く。上、左、上、右、鳴り止まない。
『にゃぁっ!』
後方から衝撃、リン機がホノカ機にタックルしたのだろう。為す術もなくホノカの陸戦型ガンダムは地面に倒れる。
「うわぁっ!」
そしてまたアラート。銃声が聞こえるより早くそのまま横転がって回避。
「危なかった~。」
断崖絶壁で仰向けの状態で止まり、起き上がろうとしたところでリンの陸戦型GMが馬乗りのように重なる。
「う…重い…何か武器は…あった、胸部バルカン!」
リン機がビームサーベルを抜き振りかざす。
『また、つまらぬ物を斬ってしまっ…』
「いっけぇえええええ!」
『にゃにいいぃいいいいい!?』
ビームサーベルを振り下ろすより早くバルカンを発射する。
リン機はやむなく防御体勢をとる。
「この出力なら!」
ホノカ機が無防備なGMの脚を掴んで崖の方に放り投げた。
「よし!成功!」
陸戦型ガンダムの出力があって初めて為せる業だ。
『そんな馬鹿にゃぁあああああああっ!』
しかし、そのまま終わるリンではない。対岸の崖を蹴り、戻ってきた。
『危なかったにゃー…もう、死ぬかと思ったにゃ!』
両機が向かい合って仕切り直し。
「次はこっちから行くよ!」
『え、ちょ、待つにゃ!』
今度はホノカが攻撃を仕掛けた。円を描きながら動きつつ、中心にいるリン機に100㎜マシンガンを発射した。
『そんな攻撃!』
リン機は垂直跳びで回避、空中でビームサーベルを抜く。
『とぉおおおおっ!』
着地と同時に振り下ろす。
『外した!?』
ギリギリ回避したホノカもビームサーベルを抜きリン機に切りかかる。
「お返しっ!」
『腕を潰せば怖くないにゃ!』
リン機がシールドでホノカ機の腕を弾く。それにより、軌道がずれてビームサーベルは空を切った。体勢を立て直し再度向き合う両機。
「ここで決める、てやぁぁあああっ!」
『させないにゃぁあああああっ!』
両機が全速力で突撃する。
ビームの刃がぶつかり合い、火花を散らす。それが三度続き、四度目の突撃。
一瞬の攻防。
砂煙が晴れるとそこには片膝を突いた陸戦型ガンダムと振り返り、止めを刺そうとする陸戦型GMの姿があった。ビームサーベルを振りかざす。
『よく頑張ったけど、お仕舞いにゃ!』
振り下ろしかけたところで陸戦型GMがパワーダウンを起こした。先のバルカンによって動力系を破損した(と判定された)ようだ。
『そんなのないにゃー!』
「え…勝ったの?」
『ホシゾラ機、行動不能、勝者、コウサカ・ホノカ准尉。両機、整備と補給のため、帰投してください。』
コトリの声が結果を告げる。装甲が所々へこんでいる陸戦型ガンダムと真っ青に染まった陸戦型GMは格納庫へ戻って行った。
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 格納庫―
「にっこにっこにー!」
『『『にっこにっこにいいいいいいいい!!!』』』
「あなたのハートににこにこにー♪笑顔届けるヤザワ・ニコにこー♪にこにーって覚えてラブにこー♪」
「…。」
変な熱気に圧されてホノカはまたも硬直する。
「あれがここの整備班長、ヤザワ・ニコ技術大尉よ。」
弾薬の入った木箱の上で声を上げる少女を指さしエリがホノカに声をかける。
「班長ですか、あんなに小っちゃいのに偉いですね。」
「えーと、コウサカ准尉?勘違いしてるようだけど彼女、私やノゾミと同年齢よ。」
「はい?」
「いや、だから同い年。本人の前ではくれぐれも間違えないようにね。」
「努力します…。」
自信なさげな返事を返すのがやっとだった。
「彼女自身も腕は一流だし、従来風紀が乱れがちで士気も低いことが多い整備班だけど、ああいうパフォーマンスのおかげで高い士気を保っていられるわ。」
「すごいんですね~。」
「そうよ、この部隊は腕前に関しては一流の兵士ばかり集めたんだから。ん?こっち来るわね。それじゃ、私は執務室に戻るわね。」
エリが足早に逃げるように去っていく。入れ替わりでニコがホノカの下にやってくる。
「にっこにっこにー」
「に、にっこにっこにー」
「甘い!手の角度は…こう!この上ない笑顔で!」
「にっこにっこにー!」
「動きを滑らかに!指先まで神経を配って!恥じらいを捨てなさい!」
「にっこにっこにー!」
「う~ん、60点!いきなりで合わせられたのは誉めてあげる。でもまだまだ甘いわ!これからみっちりコーチしてあげるから覚悟しておきなさい!」
「はい!」
「いい返事ね、それじゃ!」
ニコはホノカに背を向けて歩き去ろうとするがすぐ戻ってきた。
「本題を忘れていたわ。アンタ、動きに鋭さがないわ。性能の半分も活きていない。この機体ならもっと動けるはずよ。」
「はい…」
「お説教は終わり!少しマイルドに調整しておくから次も頑張りなさい!」
「はい!」
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 演習場 荒野エリア―
『それでは、両機指定ポイントへ移動願います。』
コトリの誘導に従って陸戦型ガンダムと陸戦型GMがそれぞれの指定されたポイントへ動き出す。同時に各部異常がないかのチェックも行う。
「コウサカ機、オールグリーン、指定されたポイントに移動完了。」
『ニシキノ機、オールグリーン、いつでもいいわよ。』
『了解、両機、戦闘(ミッション・)開始(スタート)!』
同時に、砂煙を上げて陸戦型ガンダムが飛び出す。
「鋭く、速く…」
先程に比べて大分スピードも出ていて安定もしている。両機ともにいまだに射程外のはずだ。
マキはコックピット内でそんなホノカの様子を観察していた。
『射程外だと思ってのこのこと、いい的ね!』
マキが狙いをつけて標的との距離、相対速度、風向き等すべてを計算する。それらの読みが完璧なら80㎜マシンガンであっても狙撃まがいのことは可能だ。
『さようなら、素人サン!』
マキがトリガーを引く。
ホノカの陸戦型ガンダムのコックピット内にアラートが鳴り響く。
「アラート!?間に合って!」
ホノカは急加速とサイドステップを組み合わせる回避運動を取った。
弾道計算も完璧、放たれた弾丸は一撃で陸戦型ガンダムのコックピットに突き刺さるはずだった。
『やったか!?』
マキが手ごたえを感じて声に出す。砂煙に隠れて効果は確認できない。
砂煙が晴れて、陸戦型ガンダムが姿を現す。
「一発もらったか…でも、まだ動く!」
コックピット周辺にペイント弾のインクは付いているが動きが鈍る様子はない。つまり効果なしということだ。
『無傷!?そんな…馬鹿じゃないの!?」
一撃で決まると思い込んでいたマキは焦っていた。取り回しのよい80㎜マシンガンを選んだのが悪かったのだろうか、と自問自答を繰り返す。
『嘘…どうして今ので効果が無いの?相手の反応と装甲がこちらの想定を超えていたということ?でも、装甲の継ぎ目を狙えば!』
マキが再度狙撃を試みる。今度は二発発射。一発は誘いで回避した先の二発目で仕留める算段だった。
「また撃ってきた!?」
だがホノカはあえて回避せず、一発目をシールドで受けとめた。自分でも驚くほどに冷静に戦えている。
「早く接敵しないと…」
ホノカはさらに強くフットペダルを踏み込んだ。
―同時刻 地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース近郊―
「連邦のモグラ共の新しいオモチャってあれですかい?」
「どうやらそのようだ、性能は…低くはないようだが、パイロットが今一つだ。機体に振り回されている。」
基地の近郊で二人のジオン兵が偵察を行っていた。一人はたたき上げのベテラン、もう一人は若手の下士官だ。
「すごいッスね少尉、そんなところまで見れるなんて。」
「フッ、伊達に同業者(パイロット)やってるわけじゃないさ。」
「このことは情報部に持ち帰りますか?」
「正しいのはそれかも知れないが、お前は血が騒がねえのか?」
「どういうことです?」
「奴を倒してみてえと思わねえのかよ、あの基地はヒトモドキと白いヤツ以外は雑魚ばかりだ。おまけにアイツを鹵獲でもしてみろ、こんな辺境、おさらばして本国で一生遊んで暮らせるぜ。」
「さすがにそこまでではないとは思いますが、やりましょう。第二分隊に連絡を取ります。」
「結構だ、フフフ、連邦にモビルスーツは十年早いってことを教えてやるぜ。」
そして二人は作戦に移るべく撤収した。
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 演習場 荒野エリア―
マキの陸戦型GMから放たれる弾丸の雨を回避と防御でしのぎながらホノカはマキ機を射程に捉えた。
「有効射程に入った、当たって!」
ホノカは細かい照準をコンピュータに任せ発砲した。
『踏み込みが足りないのよ!』
マキは簡単に回避した。リンとタッグを組む上で後衛にいることが多い彼女も操縦技術は高い、むしろ天性のセンスと理論、繊細かつ大胆な戦術を駆使するマキの方が近接戦闘でも陸戦型GMの限界を引き出せると言われている。
『こっちならどう?』
マキ機は右手に持っていた80㎜マシンガンを捨てると、腰に装備していた100㎜マシンガンを右手で構えさせ、スラスターを吹かし、ホノカ機の側面に回り込むと同時に発砲、閃光が煌めき空薬莢が飛び散る。
横から数回にわたり殴りつけられる。
「まだ…負けられない。」
それでも尚、陸戦型ガンダムに大したダメージが与えられないという事実がマキを追い詰め、ある決断をさせた。
『近接戦闘でカタを突ける!こっち(インファイト)の方が得意なんだから!』
マキは自らホノカ機の懐へ飛び込んだ。
「く、来る!」
ホノカは突撃してきたマキに対抗すべくビームサーベルを抜き放ち切りかかる。しかし空振りに終わった。直前にマキは手近な岩を蹴り飛ばし機体を強引に下がらせていたのだ。
空振りによって姿勢が崩れた陸戦型ガンダムに対しマキは全力射撃を行った。
コックピット内部が強い衝撃に襲われる。
「くぅっ…まだまだ!」
損害状況を確認、近距離での斉射はさすがに応えたらしく、右腕、右脚に大破判定が下されている。
「足がやれれた…それなら、これで!」
ホノカはフットペダルを蹴り飛ばすように強く踏み込んだ。殺人的な加速に意識が飛びそうになる。
リロード中のマキにもその光景は異様に映った、撃破を確信した相手が突っ込んでくるのだ。
『なんて化け物なの、奴は…』
リロードが終了し再度射撃を行う。
『いい加減に…墜ちなさい!』
しかし、シールドで弾かれホノカ機には効果は無い。
『どうして墜ちないの!もう!意味わかんない!』
一切常識が通じない相手に二つ目の弾倉も使い切る。
『どうして弾が出ないの!止まれ…止まってよ!』
弾が切れてもマキは叫びながら、あるいは懇願するようにトリガーを引く。
だが、ホノカ機の突進は止まらない。
衝突コースでよけられないとマキが確信した瞬間の出来事だった。今までとは別種の警報が鳴り響く、エリから通信が入る。
『当基地東より敵襲!これは演習ではない、繰り返す、これは演習ではない!敵の規模を算出せよ!モビルスーツ隊、戦車中隊、出撃準備!模擬戦は中止!』
「聞こえた?実弾を取りに撤収するわよ!」
ホノカに通信を送りつつ、格納庫へ全速力で向かう。だがホノカからの応答はない。
『ジオンは……す。』
「ヴぇ?アンタ、何言って…」
ホノカからの通信はマキの予想を裏切るものだった。
『ジオンは…潰す!』
ホノカはそう言い捨てると格納庫とは真逆の方向、東へと飛び去った。距離的にも速力的にも追いつくすべはない。
「ちょっと!アンタバカ!?」
マキが叫ぶが返事はない。ホノカ機が通信エリアから消え去った。
―旧ドイツ東部 ゲルリッツ―
ポーランドとの国境近くに位置するこの街はスラヴ語で『燃やされた土地』という意味の名前を持つ。ジオン軍との戦争が起こる遥か前、交易により栄えた、ナイセ川の流れが美しい街だったが、今では疎開が進み、連邦とジオンの勢力圏の中間に近いため度々小競り合いに巻き込まれ人も活気も金もない廃墟街と化している。
そのゲルリッツのゲルリッツァー通りを三機のザクⅡJ型―一般的に『ザク』と言われたらこれをイメージするだろう―がライプチヒ目指し西進する。
『少尉!本当に連邦の新しいモビルスーツなんているんですか?』
『ああ、しかも奪うには今しかない。』
『何故です?』
『動きにぎこちなさがあった。』
『なるほど、で、我々のみで攻撃を仕掛けるのですか?さすがに同数のモビルスーツ戦で敵だけ支援攻撃があるという状況だと分が悪いですよ。』
『だから俺達の役目は囮だ。』
『囮…ですか?』
『そうだ、我々が先行してモビルスーツを誘い出す。適当なところまで後退したらあらかじめラーデベルクに配置してある伏兵との連携で仕留めるって寸法よ。』
『なるほど、行ける気がしますね。』
『そうだろ?では、進軍だ。』
『了解。』
三機のザクはさらに進軍速度を上げ、西へ進む。彼らの作戦を崩壊させるイレギュラーがいることに気付かぬまま…。
―旧ドイツ東部 カーメンツ郊外―
カーメンツ郊外を地響きを上げて駆ける一機のモビルスーツ。獲物を狩る獣のような攻撃的な機動だ。
「潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す……」
恨み言を漏らすが感情が先走っているのか文になっていない。
更にホノカは強くフットペダルを踏み込む。機体が浮かび上がり加速する。街を一つ超低空飛行で飛び越す。着地した街道の路面にヒビが入る。モニターに目をやる、レーダーに感あり、もうすぐ接敵する。ホノカは不敵な笑みを浮かべる。
「ジオンワ、コロシテヤル……」
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース格納庫―
「実弾持ってきて!100㎜マガジン3つ!」
「リミッター外した?補給は?まだ?急いで!」
「急ぐにゃー!」
「もたもたしない!バルト海に放り込まれたいなら話は別にこ!」
二機の陸戦型GMが帰還するや否や整備士は作業を始める。こんな時ばかりはニコも班長の顔になり指示を飛ばし、部下を激励(?)する。
その作業を本来ならオペレーターのコイズミ・ハナヨ伍長も手伝っていた。
「動力系、チェックお願いします。」
『うぃーす。』
通信機に向かって指示を伝える。そこにソノダ・ウミ中尉が声をかける。
「ここの部署は他に任せて、貴女には別の仕事があります。」
「はい?」
ハナヨはロクでもない仕事を頼まれるのだということを確信した。そして拒否権がないことも分かりきっていた。
ウミはハナヨを連れて早速別の格納庫へ向かった。
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 機甲大隊指揮官執務室―
『どういうことだね、アヤセ少佐ァァァ!!!』
「ですから、先程説明したとおりです中将。」
執務室ではエリが基地司令の中将と通信でやり合っている。かれこれ十分以上この調子だ。
『あんな説明で納得できるか!何故!陸戦型ガンダムは帰投していないのだ!』
「現場の判断です。陸戦型ガンダムが殿を務めることで敵の目は引きつけられます。陸戦型GM二機も補給が済み次第援軍に向かわせます。」
『もう一つの小隊は何をしているか!』
「ハンブルク、ブレーメン方面にパトロール中です。」
『話は戻すが陸戦型ガンダムは非ッッッッ常ォォォに貴重な機体だ。ここで失われるわけにはいかんのだ!分かって…あたた、頭痛が。』
中将は毛の一本もない見事なスキンヘッドを抱えて部下に頭痛薬を持って来させる。
「中将、怒鳴りすぎるとまた血圧が上がって禿げますわよ。」
『大きなお世話だ!誰のせいだと思っている!そ・れ・と・…ハゲではないわああああああああっ!』
中将は顔を真っ赤にして怒鳴った。血管が浮き出て見えるほどだ。
「落ち着いてください、中将。あの機体はそう簡単墜ちるよう機体ではないのでしょう?丁度いい実戦テストではありませんか。」
エリがティーカップを片手にさらりと言う。当然、といわんばかりの様子だ。
『う、むむむむ…は、話は以上だ!』
中将は何も言い返せず、逃げるように通信を切った。
―地球連邦軍欧州方面軍ライプチヒ・ベース 第二格納庫―
薄暗い格納庫に灯が点る。そして露わになるカーキ・グリーンに塗装され、巨大な銃を抱えた陸戦型GMの姿。トレーラーの荷台に立膝という状態だ。
「今回の作戦はこれを使います。」
ウミが唐突に説明を始めた。
「このジムスナイパーは見ての通り巨大な砲を持つ狙撃型の機体です。しかし、排熱やエネルギー供給の関係で専用設備にパイプ・チューブで繋がれています。今回の貴女の任務はこれを運ぶことです。本当ならビッグ・トレーで戦場まで運んでもらって護衛と援護というのが一番いいパターンなのですが。今回はそうする余裕がないので、トレーラーに専用設備は載せてあります。」
「え、あの…」
ウミは問答無用でハナヨを運転席に放り込むとあっという間にジムスナイパーのコックピットに滑り込んだ。「どこまで用意周到なんですか!?ていうか、誰か助けてええええええ!!」と、ハナヨのツッコミと悲鳴が聞こえた気がするが完全にスルーする。
「ハッチ解放、ソノダ機、ジムスナイパー出撃します!」
ハッチが開ききる。だがトレーラーは動く気配が無い。
「…どうかしましたか?戦時特例で大特は不要のはずですが?」
ウミはトレーラーの運転席に通信を送る。
『それが、機体が重すぎるみたいで…』
「とりあえず、トップギアで踏み込んでみては?」
ウミは明らかに見当違いのアドバイスをする。モビルスーツに関しては専門家並みの知識を誇る理論派だがその他のことは武道以外あまり知らないらしい。
『…?…待ってください、中尉…これって、もしかしてこの前私とニコちゃんが遊びで魔改造した車なのかなぁ?』
運転席の機械類を見回していたハナヨがある事実に気づく。
『やっぱりそうだ、理論上でも荷台が空ならF1マシンと張り合えるようにした車だ。ここのスイッチでスーパーチャージャーに火が入って…』
突如、今までのエンジン音とは明らかに違う数倍力強い音が響き渡る。
『これなら、いけます!』
「では、出してください!」
『はい!』
ハナヨがアクセルを踏み込む、元のエンジンの振動に加え、Gがかかる。
基地内の道路を突っ走るトレーラー、幸いゲートまで曲がる必要はない。
『ゲート開けて、早く退避してくださいいいいいいいいい!!あと30秒でそっちに着きます!』
今更ながら正門警備の兵に連絡を入れる。
「了~解、ははは、30秒なんて、伍長もジョークが…なんじゃありゃ!!!」
かなり長い直線の向こうからモビルスーツを搭載したトレーラーが突っ込んでくる。警備兵は相方と協力して全力でゲートを開ける。
『止まりませえええええええええええええええん!』
ハナヨが暴走トレーラーの運転席でブレーキを踏みつつ叫ぶ。現状、ブレーキが意味を成さないようだが。前方では警備兵二人がゲートを開けている、この距離でもわかるほど必死だ。
「死にたくねーよぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「うわーん、かーちゃーーーーーーーーーん!!!」
警備兵二人が最後の力を振り絞りゲートを開ける。トレーラーが通れるか通れないかギリギリの幅だ。直後、トレーラーが通過する。左サイドミラーがゲートにぶつかり、脱落するが他はどうもしない様子だ。
「俺達、助かったのかな…」
「ああ、そうみあいだ…」
………………………………
「「生きてるって素晴らしいな!」」
二人が肩を組み終戦を迎えたかのような喜びを爆発させる、これから戦争は激化していくというのは何かの皮肉だろうか。
そんな安心もつかの間、サブフライトシステムのコルベット・ブースターを装備した陸戦型GMが低空をフライパスした。彼らはたまらず、風に煽られる。
「うおぁ!?…ほぇー、びっくりしt…」
警備兵が立ち上がろうとするともう一度轟音と共にコルベット・ブースターを装備した陸戦型GMがフライパス。またも風に煽られ飛ばされそうになる。
「基地内では吹かすなあああああ!」
警備兵の叫びは空に吸い込まれる。当然パイロットに届くはずもなかった。
―同時刻 ライプチヒ・ベース周辺―
上空には先程基地を出たばかりのウミと合流すべく陸戦型GMを飛ばす。リンがあることに気づいた。
「あ、マキちゃん!後ろ、下のほう見て!警備兵の人たち手を振ってくれてるにゃ!」
『そうね、彼等の期待に応えないとね。』
彼らは低空をフライパスした彼女達に文句を言っているのだが、妙に好意的に受け取ってしまったらしい。そのため二機は特に気にする素振りを見せず東へ向かった。
マキ機は100㎜マシンガン二丁に、ハイパーバズーカ一丁、予備マガジン二つ、シールド、ビーム・サーベル一振という装備だ、対してリン機は100㎜マシンガン一丁、予備マガジン三つ、シールド、ビーム・サーベル一振のみだ。
「リン、そんな軽装備で大丈夫?」
『そういう、マキちゃんこそ重すぎないかにゃ?』
「もともと私は後衛でしょ、それに…准尉の分の武器も持たないといけないし。」
『それに…の後、何て言ったのかにゃ?聞こえなかったから、もう一度言ってほしいにゃ~。』
ニヤニヤしながらリンはマキに返す。
「な、何も言ってないわよ、イミワカンナイ!」
動揺したのかマキの声の調子が外れた。同時に機体も少しフラついた。
『あれあれ~、マキちゃんもしかして動揺してるのかにゃ?』
「そ、そんなわけないでしょ!」
『リン、知ってるよ、マキちゃんさっき、小隊長のためにって言ったんだよね。』
「ヴぇ!?ち、違うわよ!そんなわけ…」
マキが顔を赤くして反論した。さらに大きく機体が揺れる。
『大丈夫、ほかの人には言わないから。』
「そ、そう…」
マキはようやく冷静さを取り戻した。
『それで、何が大丈夫なのですか?』
突如二人のコックピット内の通信ウィンドウにウミが映される。
「ヴぇ!?青鬼中尉!」
『誰が青鬼ですって…?』
ウミが引きつった笑顔を浮かべる、
『みんなのハート、撃ち貫くぞーッ!』
リンが小声で言う。
『ラブアローシュート!バーン!』
ウミが条件反射で反応する。同時に貼り付けたような笑顔と弓矢を思わせる手の形を浮かべる。
「リン、ナイス援護!」
『えへへ~』
リンが照れくさそうにしていると突如下からロックオン警報。
『見・ま・し・た・ね・・・・』
ウミのジムスナイパーが起動し、手に持った大口径ライフルをリン機に向けている。
「リン!謝りなさい、早く!」
『マキちゃんも同罪だにゃ!』
ライフルの銃口にビームの粒子が少しずつ集まっていく。
「駄目よ、これ洒落にならないやつだから!」
『じゃあ、一緒に謝ろう!』
「いいわよ、抜け駆けしないでよ!」
「『すいませんでしたーーーーッ!』」
二人同時に謝る。そして機体も同時に土下座しつつ着地、見事なシンクロを見せた。そしてリン機へのロックオンは解除された。
『二人とも、帰ったらわかっていますね?』
ウミが満面の笑みを浮かべて言う。
「『はい…』」
『その前に作戦の確認です。走りながら聞きなさい。』
二人は機体を起こしトレーラーに置いて行かれないよう必死に機体を走らせる。
簡単なブリーフィングを終え、リンとマキは各々機体を離陸させる。
「全く、再教育が必要ですね。」
ウミが自機のコックピット内でぼやいているとハナヨから通信。
『あ、あのー、あまり荷台で暴れないでほしいのですが…』
冷静さを取り戻したウミは機体の体勢を戻す。
「申し訳ありません。」
『無事に帰って来ますよね、みんな…。』
「安心しなさい、三人とも、私が死なせませんから。」
『…はいっ!』
不安気だったハナヨの顔に笑顔が戻る。ウミは頬が緩みそうになるのを抑えて再度、気を引き締めた。
「行きますよ!飛ばしなさい!」
『はい!』
トレーラーはさらに加速する。
「(私が着くまでに死んだら許しませんよ。それまで、耐えるのです。)」
―旧ドイツ東部 カーメンツ―
大地を震わせてホノカの陸戦型ガンダムは走り抜ける。一瞬だけレーダーに反応した敵機を追いかけている最中だ。
「ドコニ…ニゲタッ!」
ホノカはセンサー類をフルに稼働させて探す、僅かに熱源反応がある。ホノカはそれがザクのものだと確信して躊躇なく飛び出した。
「獲物が網にかかりました!!」
「よし、逃がすなよ、ここで捕縛する!」
「了解!」
ジオンの歩兵たちが隊長と思しき人物の命令でそれぞれの持ち場についた。
「狩りを始めるぞ!」
「「おぉーーーっ!!」」
「連邦のモグラに目にもの見せてやるぞおおおお!」
「ヒャッハー!汚物は消毒だー!」
歩兵たちの返答が帰ってくる。士気は高いようだ。
陸戦型ガンダムがザクに突撃してシールドのスパイクを突き付ける。同時にザクは破裂し一拍遅れて爆発が起こる。ダミーバルーンを使っていたようだ。
「!?」
ガードする間もなく爆炎に包まれる陸戦型ガンダム。更に背部にロケット弾が突き刺さり爆発を起こす。
「もう一丁!」
ジオン兵が叫びもう一度ロケット砲を発射する。10m程度の距離で同じ場所に直撃させた。普通のモビルスーツなら行動不能に陥っていただろう。そう、「普通の」モビルスーツなら。ジオン兵が気づいた時には鉄の壁とコンクリート製の壁に挟まれ、体中の骨が砕けるような感覚を味わっていた。即ち、二発ロケット弾を撃ち込んだはずモビルスーツの拳が彼のボデイを壁越しに捉えていたのだ。
「うわあああああああ」
「もうダメだ、おしまいだーーー。」
「ヒャッハー汚物は消毒だああああああ!!」
一瞬にしてジオン兵達は恐慌状態に陥る。一部平常運転の者もいるが。
「落ち着けバカ共!こんなの想定内だ!撤退して体勢を立て直す!逆転の道はまだある!」
歩兵部隊長が部下達を一喝する。それでも混乱は収まらない。
「マトメテ…ツブレロッ!!!」
ホノカがコックピット内で叫び手当たり次第に建物を破壊していく。本人も気付かないだろうが錯乱状態にある。
「総員退避!」
部隊長の指示が飛ぶ兵達は武器を捨て走りさろうとするが瓦礫に阻まれ、ある者は更に崩れる瓦礫の下敷きとなり、ある者は鋼の拳に叩き潰され、鋼鉄の足に磨り潰された。誰の目から見ても明らかな虐殺である。歩兵部隊長も死を覚悟したとき、複数の弾丸が連邦の白いモビルスーツの動きを止めた。
「キタカ、ソダイゴミドモッ!」
ホノカが陸戦型ガンダムをザクのいる方へ走らせる。そして手に持った模擬戦用のペイント弾が装填されたマシンガンを放つ。
「うぉおおおっ!?って、ペイント弾だと!?舐めるな!」
ザクのパイロットは実弾で撃ち返す。重い銃声の後に陸戦型ガンダムの装甲に当たり甲高い音が響く。
「クタバレ!!」
ホノカ機はザクに肉薄、コックピットに正拳突きを見舞った。すぐにザクの給排気用チューブを掴み、引き倒す。
「こんな、パワーがッ…」
転倒した仰向けのザクのコックピットをホノカは執拗に踏みつける。ザクはマシンガンを乱射し、抵抗したが、直に沈黙した。コックピット周辺が原型を留めていなかった。
「ふふふっ、抵抗するからそうなっちゃうんだよ?痛かった?苦しかった?抵抗しなければ楽に殺してあげることができたんだよ?」
少し落ち着いたのか、ホノカは今は亡きザクのパイロットに語り掛ける。突如、左腕部に砲弾が直撃、歩兵のものとは比べ物にならず、陸戦型ガンダムはバランスを崩し、瓦礫の山に突っ込む。そしてまた錯乱状態になる。
「マダイタノカ…スベテケシテヤル…」
『ええい、なんということだ、生存者は誰かいないのか!…全滅だと!?糞が!あの白い奴の仕業か、各機、兵装使用自由!あの白い奴だけは生きて帰すな!残虐非道な連邦軍を倒せ!!』
『『了解!』』
状況を把握したらしい小隊長の男が指示を出す。
『いいな、格闘戦は仕掛けるな!』
三機のザクはそれぞれザクバズーカを構えて発射する、後に三方向に散開、包囲して討つという使い古された戦術だがそれだけに効果は高い。
「ソノテイド!」
ホノカは出力にリミッターが掛かっているビームサーベルを抜く。ホノカから見て右後ろに展開したザクに反転し、斬りかかる。それを読んでいたかのように二機のザクから集中砲火、小規模の爆発と共に右脚部に異常、陸戦型ガンダムは盛大に砂煙をあげ転倒、続いて背部に着弾。ホノカ機はほぼ動けない。更に何発かのザクバズーカが直撃、コックピットに振動が伝わり、システムがダウンする。完全に真っ暗になったコックピット内でホノカは気を失った。
『よくも、俺の部下たちをおおおおおお!』
小隊長が止めを刺そうとしたところに一条の閃光。気づいた時にはザクのコックピットに大穴があき、ヒートホークを振りかざしたまま静止していた。
『た、隊長ぉぉぉおおお!よくもぉぉぉおおおおっ!』
二番機のザクのパイロットが雄たけびをあげ突撃しようと、スラスターを吹かす。上空から一機のモビルスーツがビームサーベルを抜き、降ってきた。それを確認するころにはザクの胴体が斜めに切れていた。爆炎の中から陸戦型GMが姿を現す。
『あわわわわわわわわ…』
三番機のザクのパイロットがあまりの出来事に声を失う。次の瞬間には真上からの砲弾によって撃ち抜かれていた。
ホノカが目を醒ましたときにはサブシステムが起動し、薄暗いコックピット内は赤い非常灯で照らされていた。
「う…ん?ここ…は?」
まだ意識がはっきりしない。手元のレバーやフットペダルも動かない。
『…リン、あれ…じゃない?』
『待って…するにゃ……にゃ!』
『……ぐに、回……撤収…を…』
『了…』
途切れ途切れだが音声を受信している。砲声や銃声は聞こえない。戦闘は終了していた。
「コウサカ機、損害を受けましたが健在です。」
ホノカは自らの健在を示す通信を送る。
『やっぱり小隊長だにゃー!』
リンの陸戦型GMがホノカ機に駆け寄る。
『よし、回収作業に移ります。』
『了解!』
リン機がワイヤーを射出し、ホノカ機を引きずる。トレーラーの荷台のジムスナイパーと協力して引っ張り上げる。そのままジムスナイパーと共に荷台に固定して終了する。
『リン、あんたのブースターは拾っておいたわ。』
マキ機がリン機のブースターを抱えて降下する。
『マキちゃんありがとにゃー!』
『中尉、我々二機は先に帰投します。よろしいですね?』
『ええ、許可します。機体のセルフチェックを終わらせておくように。』
『『了解。』』
二機の陸戦型GMが飛び立ち、続いてトレーラーも出発する。
コウサカ・ホノカ准尉は初陣を生き残り、敵機も撃墜した、悲劇の中の伝説は始まりに過ぎない。
―ジオン公国軍オデッサ基地―
「そう、西部第四小隊が全滅したの。」
「所詮はデュースやトレイみたいなのの詰め合わせね。」
「だが、情報を手に入れるという仕事はした。」
「彼等の犠牲を無駄にはしないわ。」
「ゴッドスピード。」
「臨戦態勢完全にフルハウス♪」
「おお、ここにいたか、キラ中尉、トウドウ少尉、ユウキ少尉。」
「彼等の送ってくれた情報を基に作戦立案中です、大佐。」
キラ中尉と呼ばれた少女が応える。
「流石にデータが不足している。」
トウドウ少尉と呼ばれた少女が続ける。
「進捗はどうだね?」
大佐が問う。
「完全にフルハウス、むしろブラックジャック?」
「…言葉の意味はよくわからんがとにかくすごい自信だな。その調子で頼むぞ。我が軍のエースは君達…〈AーRISE(アライズ)〉なのだから。」
「お任せください。必ず、武勲をあげて見せます。」
「頼もしいことだな、フフフ、フハハハハハハ!」
彼女らの指揮官と思われる士官の高笑いが部屋中に響き渡っていた。
ということで第一話です。作品の都合上、モブに厳しい路線で行くことになると思います。モブといったら神モブ三人の出番はどこで回ってくるのでしょうか…
構想だとエリちゃんが完璧超人過ぎて主人公たちの立場を食っていく最強司令官というどこかで聞いたことある展開になりそうなので少し茶目っ気があるようにしてみました。余計完璧超人的になってしまいましたが。
それでは以下、次回予告をどうぞ。
コトリ「ラブアローシュート決まってたね~。流石軍の広報モデル兼スナイパーだよね。」
ウミ「え、コ、コトリ!?今は次回予告の…」
コトリ「広報官も納得のワンシーンだったからね~。」
ウミ「いや、だからですね?予告を…」
コトリ「何回も恥ずかしがってNG連発してたとは思えない表情だったよ?」
ウミ「条件反射でやるようになった自分が呪わしいです…。」
コトリ「衣装も可愛かったんだよ!セクシードレスで…」
ウミ「この話はもういいでしょう!予告をですね…」
コトリ「うん、分かったよ、でもその前に…みんなのハート撃ち貫くぞーッ!」
ウミ「ラブアローシュート!バーン!…何をやらせるんですか!」
コトリ「ごめんね、次は真面目にやるから。」
ウミ「頼みますよ?もう…///」
コトリ「次回、機動偶像ガンライブ!第二話『ワンダーゾーン』」
ウミ「そこの黒い小鳥を摘み出しなさい!」
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