ブラック鎮守府を作った男
すみません、一度失踪しました。
しかし、もう一度投稿し続けてみようと思い再開いたしました。もし今なお待っていてくださった方がいらっしゃいましたら本当に申し訳ありませんでした。
不定期投稿になりますがよろしくお願いします。
誤字脱字、設定おかしくない等ございましたらコメントよろしくお願いします。
男は無能だった。
艦これというゲーム自体は好きだったが、ゲームシステム、特に道中大破には業を煮やし、罵詈雑言を画面に言い放つ絵に描いたような癇癪持ちだった。
もちろん遠征はエンドレス周回させ、うかっりで艦娘を6隻も轟沈させるというとんでもない間抜けだ。
そんな彼がいつものように艦これを開くと目の前に広がったのは...
その日、俺はおもむろにパソコンを開いた。そして、D○Mのロゴの元に艦これを起動した。その日の俺は上機嫌だった。艦娘をあと少しで改二のレベルに到達するからだ。しかし、俺は画面上でスタートボタンを押した瞬間に意識を虚構へと押しやられた。
瞼を開ける。
目の前には見慣れない机とその上に積み重なっている見たこともない書類の束があった。
俺は余りにも突然のことだったため驚くに驚けなかった。
徐に自分の服を見てみると太陽に照らされ、白く光るどっしりとした布に、輝く金色のボタンがついているいわば制服を着ていた。服に疎い自分でもよい生地を使っているとわからせるほど着心地が良かった。
しかし、その温もりとは裏腹に俺の背中は冷や汗でびっしょりと濡れていた。
俺は理解した。
否、理解してしまった。
ここはいわば鎮守府と呼ばれる施設で俺は艦娘を付き従えている提督であると第五感、第六感をも使いその事実を体全身が強要してくるのが分かった。そして、俺が艦娘に行った余りにも酷い仕打ちが瞬時にフラッシュバックし悔いざるを得ないほどの罪悪感に襲われた。そして、それを理解してしまった時には俺の体は既に恐怖で体全体から汗が噴き出していた。
どうしてそこまで心と体が理解をすんなり受け入れてしまったのかは分からない。しかし、何か強い力が自分に関与したことは体が確信していた。
そして、俺は少しずつ先回りした脳と体へ感情を追いつかせた。思わず声に出てしまう。
提督 「理解は出来てる。でもあえて言わせて貰う。
えええええええええええええええええええ!
いや、あり得ないだろどう考えても非現実的すぎる。絶対に夢だ、夢に違いない!いや、しかし!いや~...
てかこのままだと俺ワケわからない状態で殺されるとまでは言わないが絶対に仕返しをされるんじゃ...」
俺は感情をある程度抑え、しかし溢れてくる言葉を最低限に口から吐き出した。
提督「俺、死ぬのかな...
いや、しかし俺の制服や周りの状態を見る限り特に変な痕跡があるわけでは無さそうだし今までは大丈夫だったのだろうな ...今までは...」
俺はなんとなく、なんとなくだが俺が"外"からやって来たことは絶対に艦娘に知られてはいけないと感じた。
まだ状況を漠然としか理解できていない俺に一番聞きたくない音が、ドアをノックする音がした。
俺は咄嗟に返事をしようとした口を両手で抑えた。
よく考えろ...、俺はまだこの世界の提督について知らない。ここの提督は人格があるのかないのかすら分からない今迂闊に返答もできないのではないだろうか。
するとドア越しから声が聞こえた。
? 「提督~、いらっしゃらないんですか~?」
しめた!どうやらここでは返事をするようだ!
...って、俺は何でこんな当たり前のことに喜んでいるんだ...。
と、とりあえず提督らしい口調で返事をするべきだろうか...いや、するべきだろう...。
提督 「い、いるぞ。入ってくれ。」
ガチャリという普段なら心地よいといえるほどのドアノブの音は俺へ地獄への扉が誘っているのではないかと感じさせた。
?「では、失礼します。って司令官どうなされたんですか?」
目の前には腰まで伸びた赤紫色の髪をし、少し磯の香りのする小学生後半くらいの少女が少々困惑した表情を浮かべてドアから半身出していた。
俺はなぜ少女が困惑した表情を浮かべていたのか最初は理解できなかったが自分の額や頬、脇、背中を伝わる冷えきった汗を感じ、納得した。上官が全身汗まみれになっていたら誰だって驚くだろう。しかも冷房の効いた部屋でだから尚更である。
う~む、まずいな...最初から不審に思われてしまっているぞ...いや、ここからなんとか巻き返す!きっと艦娘達は俺のことは微塵も好いていないだろう。さっきのフラッシュバックで確信した。だから俺が自分自身の体調を偽ろうがなにしようが執務に影響がなければ言及してこないはずだ。それなら!
提督「い、いや、何でもない。
それより、なにか用があって来たんじゃ
ないのか?」
?「えっ、そうですか...了解しました。遠征結果についての報告書をお届けに参りました。」
提督「うむ、ご苦労。では、補給後艦娘寮へ帰っていいぞ。」
?「え?よろしいのですか。まだ午後4時ですが...。」
提督「ん?...あっ...そうだな...。」
やっべええええまたやらかしたあああ。
よく思い出してみろ俺は遠征が帰ってきしだい補給して再出撃させてただろう...まずいな...いつもと違うことは絶対にしてはいけないってのになにしてるんだ俺は...クソッ...
いや、落ち着け...ここでさっきの命令は無しだと言えば更に怪しまれる。何とかしてやり過ごさなければ...まずい!
提督「う、うむ...。まあ多少は休息も必要だと思ってな...。しかしこれ以上は、俺の機嫌 が変わらない内に帰るべきだと思うぞ。」
とりあえず、いまは普段通り、つまりこの艦娘の言動から察するにブラック提督として接するべきだ...。多少言葉尻に語気を強めても怪しまれまい...。とにかく今はこれ以上艦娘と関わりたくはない。ボロが更に出てしまう。
するとその少女は不安そうな顔をしてドアノブに手をかけこう言った。
?「はあ、了解しました。では失礼します。」
パタンという音を最小限にした木のドアに俺はまるでたちの悪い不良から解放されたかのような安心感を感じた。
ふぅ...
いや~しかし
カワ、コエエエエ
いざ目の前で見るとその容姿には惹かれるが今までの自分の言動を考えれば返答しだいで俺の命に関わるやもしれない相手なのだ。
油断はできない。
というか今は午後4時か...どうやら元の世界での時間軸とは同じようだな。
てかさっきの艦娘って如月...だよな。
俺の遠征部隊の旗艦そのままだ。
ということはまだ情報は圧倒的に足りないがさっきの如月の反応を見る限り俺の艦隊ということで間違いはないようだな。
さてどうしたものか...。
一番大切なのは俺が元の世界に帰れるかだ。
どうにかしなければな...どうにか。
しかし、動こうにも情報が足りなさすぎる。
今の最善の策は迂闊に動かずに様子見と情報収集に全力を注ぎつつ、普段通りに動くことだ。
っていってもまだこの世界の俺のイメージがはっきりしないからどうしようもないな...。
一体俺はどんなやつなんだろうな...。
てか今は目の前の書類の束を片付けなければな...。
うわぁ...なんだこれは...。
カタカナと漢字が混ざっててめちゃくちゃ読みづらい...。めんどくせぇ...。
しかし作業効率を落としたらそれはそれで不審に思われかねないし、こちとら命かかってるんだしやるしかねえよな...。
はぁ...。
書類に手をつけ初めてから15分程度だろうか...。俺はある異変に気がついた。どう考えても書類を捌くスピードが少しずつだが速くなっているのだ。確かに人は何事にも慣れるだろうが。たった15分で読むのも困難だった書類を、読みこみ捌く時間が短縮できるだろうか。否、明らかに適応しすぎている。
そう冷静に、しかし動揺しながら書類を片手に考えているとまたもやあの聞きたくもないドアをノックする音が聞こえた。
また、先程出た冷や汗が背中から沸きだすのが嫌でも分かった。
苦虫を噛み潰したような顔で俺は腹をくくり、どうぞと一声かけた。
すると約5秒ほどの間を置いてドアの木と木の擦れる音と同時に青い鉢巻を頭に巻いたサラリーマンのような制服を綺麗に着こなした少女が失礼しますと聞き心地の良い声で喋り、入ってきた。初霜である。
初霜「提督、遠征結果について報告書です。」
提督「うむ、ご苦労。結果は...、大成功か...。良くやった。今日はもう補給後は艦娘寮へ帰っていいぞ。」
初霜「了解しました。如月さんから聞きましたがあえて質問させて頂いても宜しいでしょうか?。」
提督「如月に言った通り...まあ気が変わっただけだ。」
初霜「そうですか... 。ではその気が変わった理由は教えて頂けませんか?」
俺はこの質問の意図が初めは分からなかったが徐々に理解してきた。彼女は俺のようなブラック提督に茶を濁された答えを出されたら普通はそれ以上は暴言を吐かれかねないから問わないはずだ。ならなぜ危険を分かっていながら質問をしたのか。それは、彼女にそうさせるほどの理由が存在し、彼女の性格上使命感により質問を行ったに違いないからだ。恐らく不審に思った如月に相談されたのだろう。
提督「それを君に話す義理が俺にあるのか?いいか、これ以上はもう質問するな。」
初霜「いいえ、それでもどうか教えてください。この初霜、身を滅ぼそうとも答えを聞かせてもらうまではここで待たせていただきます。」
まずいな...。初霜は一度決めればなかなか折れなさそうだしな...。怒鳴り散らそうが殴ろうがこの場を離れまい。
ん?しかしなぜ俺はあの時如月に休ませようとしたんだろう...。いや、理由は分かる。ただ信じられないだけか...。俺にほんのすこしの良心が残っていたことを。あの時の俺は無意識の内に補給後再出撃なんて可哀想だと思い、声に出していたんだろう。それか恐怖のあまり相手に媚びうるために言ったかだが。あの時は確かに恐怖はあったが休めと言ったときに若干の心の乱れを感じた。それがこの良心なんだろう。
しかしいざ目の前にしてそう思うとなると俺は本当に救いようがないな...。
俺はそう自分自身の憐れさを噛み締めながら納得した。
ただしかし、それよりかは今は目の前の初霜をどうやって自分の正体を隠し欺き通すかが重要だ...。
どうする............どうする......。なら...クッ...。
提督「そうか...。いやな、なに、簡単なことだ。これからはもう少し遠征のペースを落としても限定海域で資源が枯渇する可能性が無くなることがない程度の量を確保できたからだ...。
それを踏まえお前達の遠征の数を減らしてやろうと思っていたのになぁ。俺の好意を無下にしやがってなぁ。
誰かさんのせいで気が変わっちまったよそんなに遠征したいならお望み通りさせてやるよ。
初春型も総動員してなぁ。ええ?」
初霜「えっ...そ、そんな。あ、あの本当にすみませんでした。提督の好意を踏みにじったのはこの初霜だけです。罰はどうか私にだけ、私にだけお与えください。姉妹艦にだけはどうか、どうか。」
提督「とはいってもなぁ、軍隊は連帯責任だからそうはいかないぜ?貴様は俺の機嫌を損ねたんだからなぁ。罰は与えなくちゃなぁ。」
初霜「どうか罪は私だけに背負わせてください。私は命令とあらば自害しても良い覚悟です。ですからどうか、私にだけ罪を、どうか...。」
初霜は90度に腰を曲げて俺に懇願してきた。やはり仲間を守るということが一番大切な彼女にとって周りを巻き込むのは一番したくないことだろう。しかも自分のせいで姉妹艦に被害が及ぶなら尚更だ。
読みは当たったがどうにも胸の奥が苦しい。こんな経験は初めてだ。これも良心か...。
ん?そうだ...この性格をを利用にすれば!
提督「おい。」
初霜「はい...。」
提督「貴様の自己犠牲の精神と仲間思いの根性は見上げるものがある。
今回は、特別にその心に免じて許してやる。
だが、この俺にこれ以上無駄な時間を費やさせることになったら...次はないぞ。 分かったな?」
初霜「は、はい。分かりました。本当にありがとうございます。提督のご好意を、優しさをもう絶対に裏切りません。」
初霜はそう言い顔を上げた。頬には涙、鼻からは鼻水が垂れており顔面びしょ濡れだった。俺はさすがにこれ以上は見てられなかったため、初霜の顔を自分のポケットから出したハンカチで拭った。すると初霜はなにやら驚いた顔で感謝の言葉を言い。失礼しましたと深く頭を下げて部屋を出ていった。
しっかし、またやっちまったな...。どう考えても理由も納得いかないものを言い、姉妹艦へ意識を向けさせることで擬装させたが後々から考えれば頭の切れる初霜のことだ疑問も浮かんでくるはずだろう。しかし、これ以上は質問できないだろうしとりあえずは解決したな...。
はぁ.........心臓に悪い。また背中はびしょびしょになってやがるしこの1時間ちょいで本当に疲れた。
さて、書類整理をするか...。
そう思った途端にまたもやドアをノックする音が聞こえた。俺がどうぞと言うと同時にドアを開けて彼女は入り、今あまり見たくない艦娘3人衆の一人であった。
?「司令官...初霜になにしたのよ...。」
フレンチクルーラーのようにツインテールにまとめた稲穂のような色の髪を持つその少女の名前は満潮。如月、初霜同様に改二の服装を纏っている彼女は悲しそうな顔で話しかけてきた。
提督「...。ただ脅かしただけだ。」
満潮「それであんな顔になるわけないでしょ。下らないこといってないでさっさと答えて!」
提督「まあまあそうがっつくな。本当にちょいと奴の姉妹艦をエサに脅しただけだ。」
満潮「なにがちょいとよ...。ふざけるのも大概にしてよ!」
彼女が大声を出した数秒後、帰ったはずの初霜が戻ってきた。
初霜「満潮さん、少し待ってください。悪かったのは私です。ですからどうか提督を攻めないでください。」
満潮「はぁ?どういうことよ。それに何で戻ってきたの?」
初霜「それについては私が後で説明します。
あれだけ大きい声を出せば廊下に響いて気づきますよ。ですから今はここで帰りましょう。」
満潮「はぁ...分かったわよ。今回は初霜に免じてこれ以上は言及しないでおくわ。次また艦娘を泣かせたら地獄の底までついていって絶対に理由を吐かせるから覚悟しててよね。」
おお~艦娘の眼光ってやべえな...。ちょっと漏らしちまった...。だがここで弱気になったらだめだ...。
提督「ち、なにが地獄の底までついていくだ。そこまで俺に執着してくれるとは嬉しいものだ。だが俺としては貴様の言動は鬱陶しい限りだ。次また反抗するようだったらもう2度と出撃させないからな。分かったら金輪際俺に口出しするな。」
満潮「な、なによいちいちうるさいわね。うざいのよ!」
提督「ちっ、ガキはこれだから嫌なんだ。さあ散った散った。」
満潮「くっ。」
初霜「満潮さん、もう帰りましょう?
提督、私のせいでこのような事態になって申し訳ありません。どうかご容赦ください。」
提督「ふん...。俺が今不機嫌なのはお前の後ろのバカのせいだ。ちっ、どうせ満潮は遠征の報告書出すために来たところ初霜を見かけたんだろ...。
ったく...おい満潮、とっとと補給して初霜と帰れ。」
満潮「なっ、あんた「満潮さん!」...ちっ。分かったわよ。帰ればいいんでしょ、帰れば。」
初霜「それでは提督、失礼しました。」
バタン...。そう音がした時には先程までの喧騒はもう無くなっていた。
はぁ...。もう本当に疲れた。駆逐艦の癖に迫力有りすぎだろ。冷や汗待ったなしだったよ畜生。まだ書類も終わってねえのに...。なんでこの1時間半でこんなに濃いんだ。
とりあえず書類やんなきゃなぁ...。
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ふぅ~、終わったああああああああ
うわ~疲れた~
いつもこっちの俺はこんな仕事を毎日してたのかよ。すげえな...。しかし、初めてやったのに意外に早くできたな。まあ...こういう書類は今までに論文作りで何回か見たことあるしな。それに字が綺麗だったから尚更やり易かったんだろう。
しかし...腹が減った。
こっちの世界でも腹は減るもんか。あれからもう3時間も経ってるしそろそろ飯でも食うか。って、ん?よくよく考えたら俺ってどこで食えばいいんだ?食堂なんて絶対に行きたくないし、鎮守府の外がどうなってるかなんて知らないし...。なにか資料はないかな...。
俺は徐に机を漁り、鎮守府の図面らしきものを発見した。
ふむ。どうやらこの建物は2階建てで別の建物に食堂やら艦娘寮があるのか。執務室から階段で一階に降りて艦娘寮とは反対の方向に 出口...か。まあこれなら注意して進めば艦娘に気付かれずに外に行けるな。その後は、正門まで気付かれずに行くってくらいか。
よし、行くか!腹が減っては戦もできぬしな。
やってやろうじゃねえか!っとその前に正装のままでは街で目立つしな、ドアの近くのクローゼットを漁るか...。
中には茶色のトレンチコートが3着あり俺はその中の1つを選び、制服を脱ぎ、シャツと黒いズボンを来て上から羽織った。
そして俺は制服のズボンのポケットに入っていた、3万円ほど入っている財布から身分証を取り出して、確認した。
ふむ、どうやら名前も顔も元の世界の俺と一緒か...。あまりどたばたしすぎて気が回らなかったな。まあこれでとりあえず、準備は整ったし、行くか。
俺は緊張しながらドアを開けた。遠征部隊は全員帰ってきたためその心配は無かったが一応周囲を警戒した。そして、足音を立てずになんとか自分の司令部のある建物から出た。
しかし、またしても物事は上手くいかないようだ。若々しく騒がしい声、恐らく駆逐艦の声が近くから聞こえてくるじゃないか。
そしてその声はどんどんと近付いて来ていることが分かった。
?「ねえ如月ちゃん?なんで今日は遠征がもう無くなったの?睦月は如月ちゃんと一緒に休める時間が増えてうれしいな!」
如月「私もよ、睦月ちゃん。司令官が指示したのよ。」
睦月「え?提督が?」
如月「ええ。たまには休息も必要だからって言ってたわ。」
睦月「えええええ!?
あの提督が?おかしいにゃしぃ。絶対裏があるよ!」
如月「そういえば、初霜ちゃんが理由について詳しく聞いてみたら怒られちゃったんだって。」
睦月「ますます怪しいにゃしぃ...。」
う~んこれはまずいな。
俺の出したボロがまるで穴が広がっていくみたいに着々と俺に対する疑惑の念を増加させていっているようだ。艦娘達のなかで広がると厄介だな。ここは飯を諦めてでも 釘を刺す必要が有りそうだな。
提督「ふ~ん...。睦月はそんなに人の好意を疑うんだな。」
睦月「そりゃあそうにゃしぃ。あの提督が善意で動くことなんて...って提督うううううう!?」
提督「そうかそうか君はそう日々思っていたのだな。」
睦月「そっそんなことな、ないでありますにゃしぃ!」
如月「睦月ちゃん、混ざってるわよ口調。」
睦月「あわわわ。て、提督、ごめんなさい。すみませんでした。」
提督「ちっ、まあ貴様が俺のことをどう思うかどうかは自由だから謝るもなにもない。
だから俺は貴様にはなにもしない、安心しろ。まあもしかしたら敵海域に単独襲撃させる特別任務を与えるかもしれないがな。」
睦月「ご、ごめんなさいにゃしぃいいいい!」
そう言うと睦月は走り去っていった。
提督「まったく、あいつのバカさは改二になっても治らんか。馬鹿は死んでも治らないとはよく言ったもんんだ。
ん?如月、睦月の後は追わないのか?」
如月「え?追いますけどその前に...。
司令官はどこか行くのですか?」
提督「まあな。街にちょっとな。」
如月「へえ、珍しいですね。」
提督「今日は気が変わっただけだ。それより、俺なんかと話していてもつまらんだろ、さあ散った散った。」
如月「でも司令官?外出には艦娘が最低1隻同行しなければなりませんよ?誰を選ぶのですか?」
な、なにいいいいいいいいいいいいいいい!?
お、俺の計画が...。考えてみたらそりゃそうか...。だって軍の重要人物を一人で行かせるわけないもんな。まずいな...。どうするか...。
提督「ああそうだったな。あまり外出していなかったから忘れていた。ありがとう。まあぼちぼち考えるさ。」
如月「でもこの時間帯だとみんな食堂で食事してますよ?そこで、なんですけど...この如月を選びませんか?」
提督「はあ?なぜそうなる。普通誰かに押し付けないか?俺との食事なんて...。
まあ俺はそれでも構わないが睦月はどうするんだ?」
如月「一緒に来てもらいます。
それに今日の司令官はなんだか別人みたいに優しいですから。」
あああああああ気づかれてるうううううう!?
嘘だろぉ、おい!クソッあれだけ演技してもこれかよぉ、畜生!ま、まあ落ち着け。まだバレたと決まったわけではない。慎重になれ...。
でも、よくよく考えてたら結構ボロが出てるしマジで気を付けていかないと...キャラが定まっていない人間ほど怪しく見える者はいない!
提督「ふ、ふん。俺は俺だ。」
如月「あれぇ?もしかしてぇ、動揺してます?司令官は照れ屋さんですね?」
提督「う、うるさい!あまり調子に乗るな 。
行くなら早く睦月を連れてこい!俺は正門で待ってるからな。早くしろよ。」
如月「はぁい。じゃあ司令官逃げないで待っててね。」
逃げたいよこんな所からはな!なんだかことごとく心を読まれているような気がするが気のせいだろう。ソウニチガイナイ。
てかなんかいきなりタメ口になってない!?
提督「誰が逃げるか!
口を動かすよりまず足を動かせ!」
俺はそう叫び出口へと体を反転させ、歩いた。
歩いている途中であることを思った。
あれ、なんか如月がゲーム内での素を若干見せてないか?う~ん、普通嫌いな相手に素なんか見せないはずだしな...。
もしかして、なんか好感度が上がってないか?
まあたぶんあれだな。偶然不良が子猫を拾ったのを見てしまった時みたいなやつだなきっと。
はぁ...もう少しわがままな振る舞いの方がいいのか?分からん...。
気が付くともう正門前まで来ていた。
5、6分程度歩いただろうか、そこで少し立っていると後方から声を掛けられた。
?「司令官?お出掛けですか?」
そこには黒い髪をそのまま下ろした小学生後半か中学生くらいの少女が敬礼してたっていた。もう午後8時のため暗くてあまり顔が見えにくいが朝潮であると推測される。
ってかなんか駆逐艦にしかあってない気がするな。まあ...たまたまか。
提督「ああ。朝潮は...門番か?」
朝潮「はい。司令官は誰と行くのですか?」
提督「如月と睦月とだが?」
朝潮「そうですか。では門限は12時なのでそれまでには帰ってきてください。」
提督「分かった。ありがとう。真面目に仕事しているようだし土産でも買ってきてやろう。どれ、なにが欲しい?言ってみろ。」
朝潮「えっ、そんなの朝潮には勿体無いです。それに他の艦娘達に申し訳ないですし。」
提督「まあそう言うな。提督命令だ、言え。」
朝潮「で、ではその、あの...ケ、ケーキをお願いできないでしょうか?」
提督「おう、いいとも。「しれいかーん?」
...じゃあ頑張れよ。」
朝潮「はい。このご恩はこの朝潮、一生忘れません。」
提督「それは貰ったときに言え。
如月!遅いぞ。
睦月もぶうたれた顔をするな!」
睦月「なんで睦月も行くことになったにゃしい...。」
如月「あら、でもさっきまでは私と一緒に居たいって言ってたでしょう?」
睦月「それは如月ちゃんとだけ居るときの話にゃしい...。」
提督「なんだ?俺は邪魔だとでも言うのか?
さっきから散々言ってくれるじゃないか。
ええ?」
睦月「う、口は災いの元なのね...。少し静かにしておくにゃしぃ。」
提督「うむ、お前はその方がいいだろうな。
まったく、喋らなければ絵にもなるというのにお前は...。」
睦月、如月「え?」
提督「ん?あっ...。い、今のは忘れろ。
ふ、ふん!とっとと行くぞ。」
もうやだ...。さっきの朝潮にもなんか優しくしてしまったし、今は本音が漏れたし。盛大にやらかしまくっている。どうしよう...。わりともう取り返しのつかないところまでキャラ崩壊してるような気がするがま...。ま、まだだ、まだ諦めないぞ。なんとしても隠し通してやる。
如月「良かったわね睦月ちゃん?」
睦月「今日の司令官はなんだか本当に変にゃしい。」
提督「なにか言ったかぁ?」
睦月「な、なんでもないです。」
そして俺達は夜の街へと歩いていった。
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あれ~おかしいな~なんか南国に居るみたいだぞ~。なんかヤシの木も生えてるし5月だって言うのにじめじめしてクソ暑いしここってもしかして...あああああああああ忘れてたあああ!?
俺の鎮守府のサーバーってリンガ泊地じゃねえか!どうすんだよおい!しかもど田舎とかいうレベルを越えてるし、娯楽施設やレストランってたしかシンガポールにくらいにしか無かったよな...。だから朝潮はわざわざ門限まで教えてくれたのか。
提督「なあ?そういえばシンガポールまで行くのにどれくらい掛かるんだ?」
如月「え?シンガポールって何?」
またやっちまった。しかし、重要なことが分かった。この世界では恐らくまだシンガポールが建国されていないのだ。または、建国自体が何かしらで中止になったか...。
提督「いや、何でもない。この近くの住民が住んでいるところは?」
如月「え~と、確か1時間くらいね」
やはりそれくらいは掛かるか...。てかやっぱりタメ口は聞き間違いではなかったのか...。大丈夫かな...これ...。まあ如月や睦月に関しては遠征くらいでしか関わってなかったから一応まだ関わろうと思えば関われるくらいいいほうなのかな?う~ん、分からん...。
提督「やっぱり結構掛かるもんだな~。
なあ、そういえば艤装着けて最大戦速で行くとどれくらいの時間で行けるんだ?」
如月「そうね~、私達なら30分程度ね。」
提督「ちっ、速度が取り柄の駆逐艦と言えどもそのくらいか...。」
睦月「なっ、30分も短縮できるのはすごい方にゃしい!」
如月「そうよ司令官、なんなら私がおんぶして行きましょう?うふふ!」
提督「あ~あ、島風連れてきた方が良かったかもなぁ。」
睦月「そんなに言うなら体で分かってもらうしかないにゃしぃ!」
提督「は?お前はどういう意味だ?っておい何をする!?」
ガシッと俺は睦月にホールドされかと思いきや艤装付きの如月の背中におぶられ、如月が最大戦速で海上を走り始めた。
は、はやいいいいいいいいいいいいいいいいい
か、顔が歯茎が風でめくれるめくれるうううう
うそやろ、なんでこんな早いんだよ!てかなんかボイラーがケツにあたってめちゃくちゃ熱いし煙突からの煙が顔に直撃する。
如月「さあ司令官、いっくわよ~!」
睦月「にひひ、提督、赤ちゃんみたい!いつもの姿とは思えないにゃしぃ!」
こ、こいつ的確に俺の嫌なところを言ってきやがる!
提督「ちょ、調子に乗るなああああああ!」
如月「ちょ、ちょっと司令官暴れないで!落ちちゃうわよ!」
提督「知るかああああ!うわっ、落ちる!」
すんでのところでギリギリ落ちずにすんだ。
如月「ほら、言わんこっちゃないわ!
ちゃんと捕まっててね司令官ちゃん?」
提督「き、貴様ああああああああああああ!」
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地獄の航行から30分、ようやく島が見えてきた。浜辺に着き、コンガリ焼けた(白目)の尻を背負わされていた艤装からどかし、よろよろと立った。幸い、暗い色のズボンのためあまり目立たなかった。浜辺からでも人の声が聞こえてくるため、何やら賑わっているようだ。
提督「やっと...着いた。」
如月「司令官、乗り心地はどうだった?」
提督「最悪だったよ。」
如月「あら残念。でも帰る頃には鎮守府行きの船の便はもうないわよ?」
提督「」
睦月「あはは、提督の顔面白いにゃしい!」
提督「貴様は本当に口が減らないな。」
睦月「にゃしいいいいいいいいいい!」
俺は睦月の頭に拳をぐりぐりと押し付けながら灯りと喧騒のある方へと向かった。
提督「おお、明るいな。」
浜辺から森を道に沿って抜けるとそこそこ立派な建物の並ぶ街があった。そこには現地人と思わしき人々と、日本人も結構いた。どうやら混在して生活しているようだ。
俺は早速その中の日本伝統のThe居酒屋な店へと入ろうとした。
だが、その前に...。
提督「睦月、如月、一応確認したいんだがお前達睦月型はあまり国民には有名では無いんだよな?」
如月「まあ、そうね。悔しいけど、広報担当は駆逐艦だと第6駆逐隊が有名で、他はあまり知られてはいないわ。」
提督「ふむ、そうか...。ならばここでは俺は身分を隠したいからお前達は俺の妹という設定で艦娘であることを隠して欲しい。それと、これから俺がやることには一切口出しするな。これは提督命令だ。」
俺がそう言うと二人の顔は急に真面目になり、その切り替えの早さにやはり軍属なのだと実感させられた。
提督「...じゃあ、入るぞ。」
睦月、如月「了解。」
ガラガラっと戸を開けると店員がやって来た。
店員「何名ですか?」
提督「3人です。」
店員「では奥の席にお座りください。」
俺は、言われた席に行き3人で座り、品書きを手に取った。すると横から酔ったオヤジが声を掛けてきた。
オヤジ「おい兄ちゃん、見かけない顔だな。」
よしきた!
俺が街に行こうとした理由は飯の他にももう一つ理由があった。それは、情報収集である。主に自分自身のことを街の人がどう思っているのか知りたかったためわざわざこの街にまで来たのだ。
提督「いえ、最近妹達と引っ越してきたもんでして。」
オヤジ「おう、そうかそうか。ここは良いところだろう?自然は豊かだしべっぴんな現地人もいっぱいいるし二つの意味で最高の眺めだ!
ガハハ!」
提督「ハハ、そうですねここに来る途中も綺麗な海と人をたくさん見てきました。良いところですねここは本当に。」
オヤジ「そうだろう、そうだろう。それで、そこの嬢ちゃん達はさっき言ってた妹さんかい?これまたべっぴんさんだ。」
如月「あらあら、誉めても何も出ませんよ、
うふふ。」
提督「妹の幸子と美智子です。実は東京から来たもんでしてここのことを全然知らないのですが教えてもらえませんか?」
オヤジ「ああ、いいけどよ、その前に飯は頼まないのか?」
提督「ああ、そうでした。ハハハ、一つのことに集中すると周りが見えないのが僕の悪い癖でして、気を付けます。では、すみませ~ん!」
店員「はーい!ご注文はお決まりですか?」
提督「はい、とりあえずウーロン茶を1つとオレンジジュースを2つ、あと焼き鳥塩6本と健康サラダをお願いします。」
店員「はい、分かりました。では、少々お待ちください。」
オヤジ「で、お前さん何が聞きたいんだ?」
提督「ではまず、ここってどんなところなんですか?」
オヤジ「そうだなぁ、まあさっき言った綺麗な海と人がいて、日本人も結構住んでて、道も舗装されてて多少は電柱も通ってるから住むのには苦労はしないな。それに、深海なんとかもに海軍さんの基地が近くにあるから滅多に姿は表さないな。」
提督「へえ、結構住みやすいんですね、一応した調べはしたんですがやっぱり現地の人に聞いてみないと分からないので、安心しました。あとその海軍の基地ってどんなところですか?」
オヤジ「あ~あの基地はな、艦隊は強くて頼もしいんだが、艦娘達がかわいそうでかわいそうでなぁ。」
提督「はあ...それはまたなんで?」
オヤジ「いやなあ、どうやらあそこの提督って野郎は人を人とも思わない極悪非道で、艦娘達もそんな奴の元にいるからみんな元気が無さそうでなぁ。そいつは傲慢で意地っ張り、人の意見を聞かずにいつも艦娘に暴言を言ったり、酷いときには殴ってたそうだ。っていってもこれは一部の艦娘達が言ってたことを聞いただけだから本当かは知らないけどよ、もし本当なら人間を守ってくれている艦娘によくもまあそんなことができるもんだと本人に言ってやりたいね。」
如月「ねえ、今のフレーズって睦月ちゃんがいい始めたやつじゃない?」
睦月「ギクッ!そんなのし、知らないにゃしい...。」
そう小声で喋る睦月を睨み付けながらも話を最後まで聞いた。どうやら、ここの世界での俺は元の世界での欠点や傲慢さ、意地悪さを増幅させ、さらに人の言うことは一切聞こうとしないという典型的なクソ上司というか最低野郎らしい。これはますます命の危険度が上がっている気がする。思ったより深刻そうだ。
提督「へ、へ~そうなんですね酷い人もいるもんですね~ましてや艦娘にそんなことするなんて許せないですね。」
店員「お待たせしました、ウーロン茶とオレンジジュース、焼き鳥塩と健康サラダです。」
提督「あ、どうも。」
俺は渡された焼き鳥を3人で分け、一つ頬張った。
くぅ~旨い!良い鳥だ。
しっかし思ったより厄介なことになってたな.。
オヤジ「でもよぉ、俺達はその提督に生活を守られているということもあるから何もできねえのさ...。悔しいが俺達には艦娘達にせいぜい慰めたりすることしかできねえ。はぁ...。
ああ、暗い話はやめだ!今度はこっちが聞くぜ!」
あっ、やべえこうなるとこっちの情報を話さなくなっちまう。どうにかして、話を合わせなくては...。
オヤジ「どこに住む気なんだ?」
提督「まだ決まってないんですが、ここら辺の空き家を借りるつもりです。」
オヤジ「そうか、兄ちゃん結構見た目に反して行き当たりばったりなんだな。まあ俺はそういうやつは好きだが妹達を泣かせるなよ?」
提督「もちろんです。妹達は俺が守りますから。」
よくもまあこんな台詞を白々しく言えたものだと思った。
オヤジ「そりゃあ頼もしいな。ガハハハハ!」
気がつくと皿は空になっており、更になにか頼もうとしたとき、店のドアが勢いよく開かれたと思ったら40代後半くらいの女が話していたオヤジの目の前に仁王立ちした。
女「ちょっとあんた今日は早くかえって来なさいと言っただろう!それに、若い人にも絡んでたみたいだし、人様に迷惑かけてんじゃいよ!」
オヤジ「お、俺は別に聞かれたことを答えてただけだよ...なあ兄ちゃん?」
提督「えっ、あっ、はい。そうですね。」
女「またそうやってあんたは人に答えさせて!」
オヤジ「そ、そんなわけ、いてて。耳を掴むなって痛い痛い。」
女「うるさい!とっとと帰るわよ!うちの主人がお騒がせしてすみませんでした。では失礼します。さあ、とっとと行くよ!」
オヤジはその女房に連れられ、店を出ていった。
危なかったあああああ!これ以上いるとボロが出かねないからな。ナイス奥さん!
その後、俺は追加の注文をして、腹をいっぱいにしてから店を出た。
提督「ふう~食った食った。旨かったなぁ~あの焼き鳥。」
睦月「お腹いっぱいにゃしい!おいしかった!」
提督「そうかそうか。良かったな。でもさっきのオヤジが言ってたフレーズについては教えてもらうからな?覚悟しとけよ?」
睦月「にゃ、にゃしい...。」
如月「それにしても、司令官やけに上機嫌ね。さっきまで自分の悪口を言われてたのに。」
提督「まあな、元々俺が街ではどう思われていたか知りたかったから若干苛立ちはしたがまあ目的は達成したから良かった。」
如月「あらそうなの?てっきりあんな風に言われてたら司令官なら胸倉つかんでたと思ってたのに。内心ずっとヒヤヒヤしてたのよ?」
提督「ふん、さすがに分別はつく。それに民間人に手を出したら立場も危うくなるからな。」
如月「私達にだってそうしてくれたら良いのに。」
提督「ふん、誰が貴様らみたいな生意気なやつに...。俺はな人間には優しいんだよ、人間にはな...。」
とさすがにこれは言い過ぎたか...。如月達の顔を見るとやはり悲しそうだ。本来ならこのままにすれば良いのだが...クソッ演技は突き通せないか...。
提督「まあ、戦果を上げればその分少しは考えてやっても構わんがな ...。
ふぅ...、じゃあ朝潮への土産でも買うか...。」
すると少しだけ表情が明るくなった ようだ。
睦月「えっ?土産なんて今知ったにゃしぃ。どういうこと、提督?」
提督「うん?ああ言ってなかったか、門番を頑張っている朝潮にケーキを買ってやろうと約束したからな。」
睦月「えええ!そんなの朝潮ちゃんだけずるいよ~!睦月達にも買ってよ~!」
提督「ちっ、うるさいやつめ。まあ財布に余裕があったら買ってやらんこともない。」
睦月「やったぁ!良かったね如月ちゃん!」
如月「そうね。うふふ、司令官、好きよ?」
提督「現金なやつらめ。それと如月、そういうのは気軽に言うな!」
如月「あれ~司令官ってば顔が赤くなってるわよ~!」
提督「ちょっと、酔っただけだ。」
如月「でもさっきはウーロン茶しか飲んでなかったでしょう?司令官の照れ屋さん!」
提督「うるさい!とっとと買いに行くぞ!」
俺は朝潮型全員と睦月型全員にケーキを買って帰った。帰りはさすがに最大戦速だとケーキが原型をとどめかねないため、強速で帰ったため門限ギリギリになり朝潮に注意されたのは言うまでもない。
そして俺は朝潮と如月にケーキを持たせ、部屋に帰ろうとした。
すると...
如月「提督、今日はありがとうございました。」
提督「別にいいさ。たまにはこんな日があってもな 。」
如月「あの、もしよかったら今日のような提督のままでいてくれませんか?」
提督「そうなるかどうかはお前達次第だと言っておこう。まあ心には止めておこう。」
如月「そう...ですか分かりました。」
提督「今日はもう遅いから早く帰れ。まあケーキもあるからすぐ寝ろとは言わんが静かにしてろよ。」
如月「はあい。じゃあおやすみなさい、司令官。」
睦月「おやすみにゃしい!」
提督「ああ。明日に響かないようにな。」
如月「はい。」
そう答えた如月達を俺は見送り、自室と図面に書かれている部屋へと向かい、そこで風呂に入り、床に伏せた。
ふぅ...、今日は本当に濃い1日だった。
というかそもそもここにいることがおかしいから濃いのも当たり前だが、本当に疲れた。もしかしたら明日目が覚めたら、元の世界にいるかもしれないな...。まあ今考えても未来は分からないか...。この世は本当にワケわからないことだらけだ。
そう俺は疲れきった脳を懸命に動かし、適当なことを考えたが結局意識は微睡みの中へと落ちていった。
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なんだ...眩しいな...。
俺は目がつぶれるくらいの真っ白い空間に寝転んでいた。
夢...か...
?「そうです。ここは夢です。」
提督「...誰だ?」
?「私は鎮守府で大きな役目を背負っている者...とでも言っておきます。」
提督「ほう...で、なにが目的だ?なにかあるからわざわざこんな所まで来たんだろう?」
?「結構すんなり状況を受け入れるのですね。少しつまらないです...。」
提督「もうこの世界に来てしまったからにはもう何が来たって驚かんさ...。」
?「では、私の姿を見てもですか?」
提督「ん?」
まさしくポンッという擬音語に丁度ぴったりの音と同時に目の前に小さな手のひらサイズの女(?)の子が仁王立ちで現れた。
提督「お前はっ!?」
現れたのは全提督の敵と言っても過言ではない忌ま忌ましい妖精が不敵に笑っていた。
そう...エラーを呼び込む最悪の猫を手にもつヤツである。
妖精「フフッ、驚きましたね。そうです。私です。」
提督「そ、そうか...。
で...用件はなんだ?」
妖精「もっと良いリアクションは無いんですか!?」
提督「うるさい。とっとと話せ。」
妖精「はあ...連れない提督さんですね。ではお望み通りお話しましょう。
まず、貴方をこの世界に招いたのは私です。」
提督「ふむ、何となくだが分かっていた。こんなことするのは運営と関わっているであろうお前くらいだろうからな...。しかし、どうやって?」
妖精「それは言えません。企業秘密ですから。」
提督「ふざけたことを!」
妖精「ふざけたことを艦娘達へ行ったのはどこの誰ですか?」
提督「くっ...。」
妖精「フフッ、素直な"人"には好感が持てますね。」
提督「貴様に言われても嬉しくはない。」
妖精「そんなに目の敵にしないでくださいよ~。そんなんじゃ教えられる情報も教えられませんよ?」
提督「嘘をつけ。教えないならばわざわざここにまで出向いてこなかっただろう。」
妖精「はぁ...提督さんは冗談が通じないですね。まあ良いです。話のつづきをしましょう。
なぜ私が貴方をここに呼び寄せたか、わかりますよね?」
提督「察しはつく。」
妖精「...実は艦娘達から依頼されたんですよ。」
提督「なにぃっ!?」
なん...だと...。じゃあ俺の演技は意味なかったというのか...。
妖精「まあ、依頼してきたのは高練度の一部の艦娘達だけですから。貴方の茶番は一応意味はありましたよ。」
提督「で、依頼してきたのは誰だ?」
妖精「それもプライバシーの保護のため言えません。まあでも、ヒントとしては今日会った子も含まれますね。」
提督「ほう...では言動からして初霜だな?」
妖精「それはお答えしかねます。」
提督「まあいい。では、多分もうあいつは俺の正体を感ずいているのか?」
妖精「まあ、そうですね。しかし、貴方がここの世界の貴方を知らないようにここの艦娘達も向こうの世界の貴方も知りませんので変わりように驚いたんじゃないですか?」
提督「なに...?」
妖精「だってここの貴方はいつも艦娘達へ暴力を振るってましたし、人格否定をしているような暴言を日々行っていたクズでした。ですから、今日貴方がきつい言い方だと思っていたことはまだまだ序の口でしたし、もし今日ここにいたのがここの世界の貴方だったら初霜さんは顔が腫れて、満潮さんは身体中アザだらけで寮に帰っていたことでしょう。」
提督「なん...だと...。そこまでやっていたのか、俺は?」
妖精「ええ。ですから今の貴方への艦娘達からの評価は最悪です。まあ、好感度はほんの少しだけ上がりましたけど。」
提督「まさか、朝潮か?」
妖精「初霜さんと如月さんもですよ。」
提督「なぜ、あの二人が?如月はまあともかく初霜はなぜ?」
妖精「まあ、前が最悪でしたから少し希望が見えてきて嬉しくなったんじゃないですかね?満潮さんに責められたときも、提督を守ったのは提督が変わったかもしれないから、その嬉しさが理由の大半ですね。あと、初霜さんのあの涙は姉妹艦に手を出されるかもという恐怖もですが、提督がもしかしたら変わっているかもしれないという希望での嬉し涙も入っていたんですよ。」
提督「そこまで...そこまで艦娘達は追い詰められていたのか...。」
妖精「そうです。」
提督「ならばもう、演技なんてせずに優しく接するべきかもしれないか...。」
妖精「いいえ、それはやめたほうが良いでしょう。」
提督「なぜだ?」
妖精「だって、昨日の演技で既にあんなに驚かれてたのにこれ以上変わってしまったら艦娘達は頭が追い付けなくなりますよ。
それに、貴方を恨んでいる艦娘だっているんですからそんな軽率な行動はするべきではないですね。
まあ、したいならばせめて昨日の演技をしながら徐々に優しくしていくべきですね。」
提督「そうか...。分かった。そうしよう。
だが俺には一番聞かなくてはいけないことがある。」
妖精「分かってますよ。どうすれば帰れるかですよね?
そうですね...まあそれはお答え出来ませんが少なくとも今ではないですね。」
提督「...分かった。」
妖精「おや、てっきり噛みついて来ると思いましたが。」
提督「まあ、今までこっちの俺がやって来たことを考えれば当然か...。」
妖精「......そうそう、あと最後に1つだけ補足説明したいと思います。ここの世界の貴方は向こうの世界の貴方、つまり今私の前にいる貴方の欠点や悪さを全て増幅させた性格を持ち合わせています。ですから、もし自分はここの俺とは違うから責任は無いなんてことを言えませんよ。
おっと、そろそろ時間ですね。それでは快適な提督ライフを~」
提督「なっ、待て!まだ話は終わってないし、それに俺は泣いてなんか!」
そう言い終わる頃には俺の意識は引き上げられ、言葉を置き去って行った。
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チュンチュンという小鳥の鳴き声は多分ここでは聞けないだろう。なぜか漠然とそう思っていた俺は重い瞼を開けた。
気だるい...。
最初に思ったのはそんなことだ。思った通り知らない天井から、ここは俺の元の世界ではないと分かったからだ。
今日も艦娘に会わなくちゃいけないのか...。
それは面倒臭さと申し訳無さが混ざっている矛盾した感情であり、自分に呆れた。
しかし、昨日の夢の通りだと一部の艦娘達は俺の正体に若干気付いているだろうけど特に接触してこなかったことからするとあちらもまだ完全に確信したわけではないのだろう。それか何か話せないわけでもあるのかもしれないが。
それにまだ他の大勢の艦娘達には気付いていないだろうから演技は続けなくてはならない。
まあとりあえずは朝食でも食べに行くか...。
といっても朝っぱらからシンガポールに朝食を食べに行っていたら流石に怪しすぎるからな...。
腹を括るしかないな...。
俺は正装に着替え、食堂へと重い足取りで向かった。
いざドアの目の前に来ると本当に緊張する。朝から背中びっしょりだ。だが、人間悩むと時間を浪費し、立ち止まっていても仕方ないため俺はドアを開けた。
図面には提督専用の食事ができる場所なんて無かったからもうここしかないのだろう。
そして、昨日の話を聞くには艦娘達から俺は憎まれているようだからドアを開ければそこはもう本当に居心地の悪い場所なんだろう。
カラカラッと本当に最小限の音を出し、そろりそろりと中に入っていった。
どうやらまだ誰にも気付かれていないようだ。
と思っていた矢先に後ろから声を掛けられた。
?「司令官!おはようございます!」
とっさに振り替えるとそこにはキリッとした眼差しで俺を見つめる朝潮が敬礼して立っていた。
提督「ああ、おはよう。」
朝潮「はい。司令官!昨日はケーキを頂いて本当にありがとうございました!朝潮型一同より感謝いたします!」
朝潮がそう言ったとたん、周囲の目が朝潮へと一瞬で雨のように注がれた。
提督「なんだ、そんなことか。何、昨日はたまたま気分が良かっただけだ。」
満潮「へぇー。初霜を泣かせたのに気分良かったんだ~。」
朝潮「ちょっと、満潮!」
提督「...じゃあな朝潮、頑張れよ。」
朝潮「えっと...はい!この朝潮司令官のご恩に報いるため尽くさせていただきます!」
満潮「ちょっとちょっと何無視してんのよ!」
提督「ちっ、朝っぱらからピーピーうるさいガキだ。...はぁ...で、ケーキはどうだった?」
満潮「ふん、あんたに貰ったケーキなんて食べてないわよ!」
荒潮「あら~?でも昨日わざと満潮ちゃん用に残していたケーキが朝には無くなってたわね~?」
満潮「し、知らないわよそんなの!」
提督「まあなんでも良い。荒潮はどうだった?」
荒潮「そうね~とても美味しかったわよ~。」
提督「そうか、そりゃあ良かった。じゃあな。」
荒潮「はぁい。」
俺は足早に間宮の所まで向かった。
提督「秋刀魚定食一つ。」
間宮「はい、かしこまりました。少々お待ちください。」
俺は艦娘達から離れている空席に座った。
はぁ...艦娘達からの視線が痛い。見ないようにしながら若干見ているのがさらにメンタルにくる。
そんなことを考えているとまた声を掛けられた。
?「提督?お隣座ってもよろしいでしょうか?」
提督「...ああいいぞ。」
銀髪で"可憐"と言う言葉が一番似合うであろう女性が立っていた。
提督「なんでまた俺の隣なんかに座るんだ、翔鶴?なにか用事でも?」
翔鶴「いえ、最近お話していなかったのでどうかと思いまして?」
よくもまあこんな白々しい嘘をつけるものだ。
こいつは完全に黒だな。初霜があの後話したんだな。依頼してきた二人目が特定できたわけだ。...しっかし、こいつの笑った顔は怖いな。
さて、どう出て来るか...。
提督「ふん、そうか。で、何が話したくて来た?」
翔鶴「まあそう警戒なさらないで下さい。
最近というか...昨日から突然別人みたく変わりましたよね、提督?」
おそろしく早い目の変わりよう、俺でなきゃ見逃しちゃうね☆
...やべぇ...ちょっと漏れた。
てかコエエエエエエエ、何なんだその目は!?
俺は蛇ににらまれた蛙のようにその場で硬直した。だが、その数秒後には俺は体をなんとか動かせるようになった。
金縛りか?それとも本当に命の危険を感じてたからか?
俺にはそのたった2、3秒が10分程度に感じた。だが、返事をしないわけにもいけないため俺はぎこちなく口を懸命に動かした。
提督「...何を言っている。俺は俺だ!変なことを聞くな!そんなことを聞くためにわざわざ隣に座ってきたのか!?不愉快だ、立ち去れ!」
やってしまった。気が動転していたとはいえ声を荒げてしまうとは。これじゃあ相手に自分は自分じゃないですよと言っているようなもんだ。
翔鶴「...すみません、口下手なもので何から話して良いか分からなくて...。いきなり変なことを聞いてしまって申し訳ありません。本当はただお話ししたかっただけなのですが私が悪かったです。失礼します!」
提督「な、ちょっと待て!
俺も突然の事だったから気が動転してしまってな、すまない。そこまで言うつもりではなかったんだ。だから、ここに座ったままでいてくれ。」
翔鶴「え?わ、分かりました。ではお言葉に甘えて。」
あんなに悲しい顔をするなよ...。まさか
さっきまでの恐怖心が嘘みたいに消えるとはな...。咄嗟に席に座れといってしまったがいまだに俺の脅威であることには変わりない。気は抜けんな。あと、確実に感情のコントロールが昨日からだが、下手になっている。一体どういうことなんだ...。
提督「まあ俺と話したいと思ってくれているのにむざむざ返すのは上官としての名が廃るからな。で、さっきの話だが...まあ昨日はたまたま機嫌が良くてな。ただそれだけだ。」
翔鶴「そうだったのですね。それでは何がそんなに提督の機嫌を良くしたのですか?気になります!」
提督「そうだなぁ...まあ...何、実を言うと村雨の練度が向上してきたこともあってな。そろそろ改二になれるんじゃないかと思っててな。俺の鎮守府の戦力が着実に増築されていくのが嬉しくてな...。」
とまあ本心を述べてみたがどうだろうか?こっちの俺も艦娘達への育成自体は行っているようだしこういう理由を言っても可笑しくはないはずだ。
翔鶴「まあ、そうなのですね!駆逐艦にもきちんと目を向けてくださるなんて随伴艦さん達が頼もしくなってくれて私も心強いです!提督、ありがとうございます!」
提督「まあ駆逐艦も艦隊において重要な存在であることには変わりないからな。あと、そういうお世辞は今後あまり言うな。おだてられているみたいで嫌だ。」
翔鶴「分かりました。以後気を付けます。
しかし、そういえば提督、ではなぜ昨日は演習や出撃を行わなかったのですか?」
うぐっ!痛いところを突かれたな。う~ん...なんて答えればいいかな...。ならここは本心を伝えてみて、様子を探るか。相手もこっちのいうことを全て本心だとは思わないはずだ。上手く行けば裏をつけるかもな。
提督「昨日は少しばかり慣れないものを多く体験してな。あまり仕事に身が乗らなくて、演習どころではなかったんだ。」
さあ、どう出る?
露骨な探りを入れてみるが...。
翔鶴「あら、そうだったんですね。もし手伝えることがあったら私にもやらせてくださいね?」
提督「ああ、そうだな。まあもしかしたら頼るかもしれないな...。」
翔鶴「職務の負担が大きいのなら私が秘書艦になりましょうか?」
提督「いや、結構だ。心だけでも有り難いと思うよ。」
翔鶴「即答なんですね。少し悲しくなっちゃいます。」
提督「翔鶴もそんな冗談が言えるようになったんだな。」
翔鶴「ウフフ、今のは本心ですよ。」
提督「ふん...バカを言え。」
丁度その台詞を言い終わると同時に間宮が料理の出来上がりを知らせてきた。
探りは上手いように流されたようだ。
提督「...っと、悪いが俺は食事時は黙って食べたい性分なんでな、今からは話しても返事は帰ってこないぞ?」
翔鶴「そうでしたね。提督はいつも食事中は全然しゃべっていませんでしたし、それではお邪魔にならないように失礼しますね。」
提督「ああ、悪いな。じゃあな。」
翔鶴「はい、提督も職務で無理しすぎないで下さいね?」
提督「分かった、ありがとう。」
どうやらここでの俺はやはり俺の癖などがまったくそのまま元の世界の俺と同じようだ。
しかし、翔鶴と話しただけで胃がキリキリするとはな...情けない。
俺はそう思いながら、運んできた秋刀魚定食に手をつけ始めた。
旨いな...。
そう心の中で一人呟いて朝の一時は終わった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は朝食を済ませた後、朝の業務をこなそうと執務室へと向かった。そしてドアを開けて、机に座り何気無く天井を見ると、そこには逆さまで胡座を掻いている忍者のような黒い影があった。
アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
憲兵呼ばなきゃってこの世界にいるのかそもそも!?
提督「お、おおおおおお前は誰だ!?」
?「やだなぁ、提督。いつも私はここにいるでしょ?」
何?どう言うことだ?いつも...だと?あり得ない。この世界での俺はこんなことをいつも許すほどの器は持っちゃいないはずだ。いや、もしかしたら贔屓にしている艦娘がいても可笑しくはないのか...?それとも嘘かだ。ではなぜ嘘をついているだ?カマかけているということだろう。しかし、ここでグズグズ考えていたら正体明かしているようなものだ。博打に出る!
提督「バカいってないでさっさと降りろ...川内。」
な~んてな、ここで馬鹿正直にああそうだったなとか嘘をつけなんて言ったらそれこそ相手の思う壺だ。それならその2択外から話し掛ければこっちはローリスクだ。
川内「提督はお堅いね~。」
提督「うるさい。とっとと用件を話せ!用が無いなら今すぐ帰れ!」
川内「なにさ、こっちは提督のこと心配して秘書艦になってあげようと思ってたのに。」
提督「そんな上から目線の秘書艦なんて要らんわ!」
川内「ひどいな~提督。勇気を出して言ったのにそんなに邪険にするなんて。」
提督「分かった分かった。じゃあその心意気は評価してやる。だから今夜は夜戦の許可出してやる。」
まあそもそも出撃も演習もどう指示すれば良いか分からないんだけどね☆
川内「やったあああああ、今夜は待ちに待った夜戦だああああ。」
提督「朝っぱらからうるさいやつだ!もういいだろう?さあ帰れ、今すぐ帰れ!」
川内「え?それとこれとは話が別でしょ?夜戦も秘書艦も両方するよ!」
提督「はぁ?そんなの駄目に決まってるだろう!いいからとっとと帰れ!」
川内「なんでそんなに秘書艦にさせてくれないのかなぁ?」
提督「当たり前だろ!お前なんかがいて職務が進むわけなかろう!」
川内「ふ~ん、鎮守府内で仕事の早さ1位、2位を争うこの私にそんなこと言うなんて随分と舐められたものだね。」
提督「ほう...じゃあいい、気が変わった。良いだろう、お前を今日1日秘書艦として働かせてやる。だが...もし書類仕事が午後12時までに終わらなければ、これから3ヶ月の間の夜戦禁止だ。いいな?」
川内「じゃあそれまでに終わったら秘書艦と夜戦やらせてくれる?」
提督「ああいいぞ。何だったら鎮守府所属艦娘全員に間宮でもなんでも奢ってやるよ。」
川内「今の録音したからね。」
録音機「ナンダッタラチンジュフショゾクカンムスゼンインニマミヤデモナンデモオゴッテヤルヨ。」
提督「な、お前なんてことを。まあいい、どうせ終わらないのだから言質でもとれば良いさ。さあ始めるぞ!」
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川内「...私の勝ちぃ!」
提督「なん...だと...。そんな馬鹿などうせ手を抜いてやったに違いない。どれどれ...何ぃ!全部達筆かつきちんとしているだとぉ!?」
川内「約束は忘れてないでしょうね、提督?」
提督「ああ~腹へったな~、そうだ!俺は飯を食いに行ってくるからお前もう帰っていいぞ!お疲れさん、じゃあな!」
川内「おっと、逃がさないよ。」
後ろから目にも止まらなぬ早技で俺はガッチリホールドされてしまった。
あ、胸当たってるやっわらか~い!
って、そんなこと考えてる場合じゃねえ!このままでは俺の財布が死ぬ!しかもこいつとこれから一緒に職務を全うしなければならないなんて絶対にまずい!どうせこいつも黒なんだろいい加減にしろ!
川内「さあ提督~、うやむやにしようなんて絶対に許さないわよ!」
提督「クソッ、離せコラ!離せや!お前みたいな小娘なんかに負けるわけないだろ!」
川内「人間が艦娘に勝てるわけないでしょ!観念しなさい!」
それから10分程度攻防を続けていたが俺は息が荒くなっていたが川内は汗一粒かかず、涼しい顔でいた。
川内「さあ、そろそろ観念したらどう、提督?」
提督「クッ、殺せ!じゃなくて、分かったよ...降参だ。持ってけ泥棒!」
川内「はい!さらなる言質頂きました!」
提督「はぁ...はぁ...分かったよもう完全降伏だ。もうほどいてくれ。」
川内「はいよ。」
やっと解放されたが、川内の胸が離れたのは若干悲しかった...じゃねえよ!馬鹿か俺は...。
提督「はあ...もう本当に腹が減ってきた。約束は守るからもう行っていいか?」
川内「いいよ、提督。」
提督「じゃあな。」
川内「何言ってるの秘書艦なんだから私も行くよ!」
提督「分かった、分かった。じゃあとっとと行くぞ。」
川内「はーい。じゃあ食堂に向かって突撃ぃ!」
突撃したらいかんだろ。そう言おうとして言っても無駄だと分かっていた俺は言葉を呑み込みまた食堂へと向かった。
てかなんかいきなり艦娘達が馴れ馴れしくなったな。ん~なんでいきなり警戒心が薄れるんだ?普通今まで蹴る殴るしてきたような奴にここまで警戒心が溶けるか?何か裏があるよな~また別の理由で。全然今は見当もつかない...。まだまだわからないことだらけか...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
食堂に入ると朝と同じように艦娘達からの痛い視線が刺さる。
提督「こうも見られちゃあ食事もできやしねえな。」
川内「みんな気になってるんだよ、提督の様子が変わったのが。」
提督「さっきも言われたよ。そんなに俺は変わったか...いちいち過剰なやつらだ。」
川内「まあしょうがないよ、私だって提督の変わりようには驚いてるし。」
提督「お前もか。まあいい、とっとと飯を食うぞ。お前のせいで腹ペコだ。」
川内「それは提督が暴れたからでしょ。」
提督「うるさい...。」
川内「あっそうだ。
お~い!みんな~提督が私との勝負に負けたから全員に間宮を奢ってくれるって!
それに言質もあるよ!」
提督「このバカッ今言うやつがあるか!」
と俺は川内の頭を軽く叩いた。
川内「あいた!何するのよ提督!」
提督「やかましい!何故今俺が居るときに言う!馬鹿かお前は!」
川内「別にいいでしょ!どうせ皆には知られるのに!」
提督「そうじゃない!俺が居ないときならまだこそこそして終わってただろうが今言ったらパニックとまではいかないが皆が混乱するだろうが!」
翔鶴「まあまあ、提督そうかっかしないでください。川内さんも悪気があったわけでは無いようですし。」
提督「だからこそ質が悪いんだろう。状況予測ができないとなると戦場でもそれは重大な欠点になるはずだ!......とさすがに熱くなりすぎたな...すまない翔鶴。」
翔鶴「...本当に驚きました。いつもなら絶対に川内さんを殴って、仲介に入った私も勢い余って殴られてもおかしかったのに。本当にどうしたんですか、提督?」
はぁ...やはりそこまでここの俺は理性を制御できていなかったのか...。
提督「はぁ...こんなことで争っていても時間の無駄だと分かったからな。」
俺はそう言って無言で厨房へと足を運ぼうとすると収まりそうになった事態を翔鶴がぶち壊した。
翔鶴「でも、さっきの言葉は本当なんですよね、提督?じゃあ今頂いてもよろしいですよね?」
こいつううううう最高にいい笑顔してやがる!
やっぱり腹黒いじゃねえか!?クソオオオオ一杯食わされた!おめでとうお前は今俺の中で一番警戒しなければならない艦娘になった!
提督「お前もう一生信じないからな!」
翔鶴「あらあらなんの話でしょうか?」
提督「やるにはやるが今はまだ間宮券を購入していないから無理だ!今は諦めてくれ!」
翔鶴「うふふ、では楽しみに待ってますね。」
提督「分かった分かった。いい加減飯を食わせてくれ。...じゃあカツ丼一つ!」
間宮「はい!かしこまりました!」
提督「はぁ...昼から疲れすぎだ...。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は飯を食べた後、しぶしぶ川内と執務室に戻った。とはいっても、書類仕事は完全に無くなってしまったため、何もすることができなくなり川内と一緒にいるだけという時間を過ごしてしまうためなんとかそれだけは避けようと考えていた。
う~ん...。どうしたものか...何もすることがない。今の俺には何ができる?普段と同じことで、怪しまれることのないこと...。ここはリンガ泊地で俺は大将という階級で...ん?そういえばここは史実だと石油と燃料が豊富にあって人が少ない場所...ということは秘密裏に様々なことが行えた...?それこそ大和型もここに停泊したという記録もあるしな、なら思う存分演習でもなんでも遺憾無く力を発揮できたはずだ。演習...?
あああああああああ忘れてたあああああああ!?
そうだよ!ここは艦これの世界だろ!やることならいくらでもある!出撃、演習、遠征、開発、建造、任務消化、少なくと6つはやることができる。
そして今の俺にできることは、恐らく経験不足というか艦隊指揮なんて知らないから出撃と任務消化以外は全てできる。しかし、開発も建造も今は必要ない。ということはあとは演習と遠征が残る。しかし、遠征は一回出したらすぐ終わってまた逆戻りする。ということは艦隊指揮の練習もかねた演習が一番最適か...。
とはいえ、この世界の演習システムは謎が多い。 迂闊には動けんな。う~ん、もし俺が几帳面か面倒なものをそのままにする性格ならば多分演習心得的な資料がワンチャン残っているかもしれないし、探してみるか。そのためにもまず川内をこの執務室から追い出さなければ。
提督「おい、間宮券をこれから買ってきてくれないか?金は渡す。釣りは好きに使っていいぞ。」
川内「え~、提督がいけばいいじゃ~ん。」
提督「なら釣りを多くしてやる。」
川内「別にお金に困るほど提督と違って貧乏じゃ無いんだよね~。」
提督「はぁ...じゃあ何が欲しい?」
川内「別に何も要らないよ。ていうかなんでそんなに必死なの?」
やはり一筋縄では行かないか。というかまた的確に痛いところを突いてきやがる。どうせ嘘言ったところでバレそうだし、試しに本音を言ってみるか。
提督「...少し一人になりたいんだ。」
川内「ふ~ん、そんなに私と一緒に居たくないんだ。」
...ここは突き放さないとな...。
はっきり物を言われるよりこういう場合は沈黙の方がメンタルに来るだろう。
提督「...。」
川内「...そう、分かった。じゃあ買ってくるから...。」
バタンッと川内が部屋を出ると同時にドアが勢い良く閉じらた。
やはり、辛いな...。
しかしこの苦しさを無駄には出来ない。
とっとと探すか。
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俺は適当に戸棚を探すこと15分、それらしき資料を見つけ、中身を拝見していた。
ほうほう...演習は提督が自分より階級の高い提督、または同じ階級の提督へと挑戦するような形式なのか。ということは俺は大将だから挑戦が来るのは大将以下というわけか。で、その挑戦を受けるも断るも自由という訳か。
一々電話を使用して挑戦のアポを取るらしく、同じ相手には1ヶ月の間一度しか挑戦できないようで、しかも暗黙の了解としてノルマがあるらしくなかなか面倒なシステムのようだ。それを達成しなければ階級を1カ月ごとに更新するD○Mのシステム上、階級審査に響くこともありサボる者は少数というかほぼいないようだ。
ということは、挑戦されるか 挑戦しない限り俺ってこのまま行くとやばくないか?
とりあえず、昔対戦した提督の名簿でも探しに資料室と地図に書いてある部屋に行くか。
俺は地図の場所にたどり着き、ドアを開けると本特有のいいにおいが鼻腔をくすぐった。そこは資料室というよりも小型の図書館といったものであり、落ち着けるような雰囲気だった。
しかし、その雰囲気にそうような艦娘達もおり、心は落ち着かなかった。。
一人は本の虫を自称してるだけのことはある伊8と、もう一人はアイヌ民族風の衣装の補給艦の神威だった。伊8は分かるが、神威は何故だろうと思った矢先、二人は俺の姿を見たと同時に背を伸ばし、敬礼をした。
伊8「提督、お疲れ様です。何かご用でしょうか?」
ん?なぜ聞いてくる?別にここの管理を任されているというわけでも、ってあれ?なんか腕に資料係って書いてある腕章に書いてあるってことはもしかして本当にここの仕事を任されているのか?
提督「ああ、ご苦労。...ちょっと、演習相手の記録表がないかと思ってな。」
伊8「記録表ですか?それなら提督専用の資料室がありますがそこの鍵はお持ちでしょうか?」
提督「ん?ああそうだったな 。
...これでいいか?」
俺はズボンを漁り、鍵束が入っていることを確認して見せた。これは、部屋で机の引き出しに入っていた物だ。
伊8「はい、これで大丈夫です。こちらへどうぞ。」
提督「うむ。」
俺は伊8についていき、その部屋の前まで行くと、伊8が少し微笑みながら聞いてきた。
伊8「提督、なぜいきなり演習名簿を探そうと思ったのですか?今まで演習では挑戦を受けているだけだったのに。」
俺はうざい上司の武勇伝を部下が聞かせられるというようなシュチュエーションを意識して話した。
提督「俺の武勇を何となくだが今見たくなってな。」
伊8「え?でも前は敗者に向ける目など無いとおっしゃっていませんでしたか?」
提督「敗者に目を向けるのと己の功績を称えるのとでは似ているようで違うものだ。そのような多少の差に気が付けるかどうかで論理的思考は磨かれていくのだ。」
と偉そうなことをスラスラ言える俺すげえだろ的な上司を演技しながら部屋へと向かった。
伊8「…論理的思考が磨かれるかどうかは知りませんが、ここが資料室です。では、私は職務に戻りますので。」
提督「あ、ああ。ありがとう。」
伊8は俺に対しての興味を失くし、噂に聞いていた変わったであろう提督はいつもと変わらない提督と同じであることを認識して、そそくさと資料室の前から立ち去り、その背中からは俺とはあまり関わりたくないという様な雰囲気があふれ出ていた。
しかし、どのように資料が収納されているのかを聞きそびれてしまったため、片っ端から漁るしかないようだ。
提督「これか...。」
演習記録と旧字体で書かれた本を見つけた俺は最初から読んでみることにした。
そこに書いてあったのはいつどこで誰と誰の艦隊が演習を行い、勝敗および両艦隊の演習での大破や中破などの模擬結果が事細かに書かれていた。戦績としてはざっと目を通してみたところ7割はくらい勝利しているようでまあ悪くはない戦績だった。しかし、勝利した相手は新任の提督が多いことから相手を選んで演習を行い、勝率を上げてきたようだ。まあしょうもない戦略ではあるが、現実世界の俺も同じような選択を行っていたため特になにも思うことはなかった。
提督「まあ今まで通りに行うなら前に演習を行ったことのある新任の提督に演習相手になってもらうか...」
そんな独り言を言って資料室から出ると伊8がドアの開閉音に気がつき、読んでいた本からこちらへ目線を向けたかと思うと何も見なかったかのように再度本へ視線は下がった。
おいおい、いくらなんでも態度変わりすぎだろ...と困惑しながらも資料室の鍵を閉めて部屋から出ようとドアに手を掛けたその時、腕を突然捕まれた。
伊8「提督、やっぱり変わりましたよね?普段でしたらさっきのような態度をしたら必ず殴りかかって来ましたよね?どうして今日は、いえ昨日から変わってしまったんですか?というか貴方は誰ですか?提督は、あの人はどこへ行ったんですか?」
俺は完全に思考がフリーズした。
い、一体どういうことなんだ。完全にバレたのか?そりゃぼろだしまくっていたから怪しまれてると思っていたけどこんなにも早く捕まってしまうなんて。というか変わってしまったってなんでネガティブな表現をしたんだ。一体...
川内「おおっと、そこまでだよ。」
どこからともなく川内が現れ、伊8の手を振り払った。
提督「せ、川内!?どうしてここへ!?」
川内「そりゃあピンチの時にはヒーローが現れるってもんでしょ、まあ悪いけど眠っててもらうよ。」
なぜ川内がここにいるのかはこの際どうでもいい。とりあえずこの危機的状況を脱するにはこの場を離れなければ。
そんなことを考えながらドアを開けて廊下へ出ようとすると首に突然衝撃がきた。その直後意識が薄れ始め、地面が目の前へと迫った。
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目が覚めると少し薄暗い狭い部屋で俺は椅子に縛られていた。目の前には川内が腕を組んで立っていた。
提督「...眠ってて貰うって俺に向けての言葉かよ...。」
川内「悪いね、提督。いえ、影武者さん。」
提督「な、なんのことかな...とは言っても意味ないか。まああれだけボロだしてたらバレるよな...。しかし、行動が早いな。もう少し泳がせて貰えるかと思っていたが。」
川内「伊8が先に提督捕まえちゃこっちも困るからね。」
提督「そのいいようだと最初は数日は泳がせるつもりだったが計画が伊8によって変えられたといったところか。ということは、今朝やってきた翔鶴はどういうつもりで...。」
そう言い終わる前に川内の後ろの扉から髪を靡かせて翔鶴が入ってきた。
翔鶴「さっきぶりですね。提督。まさかこんなに早く貴方と再開するなんて。」
提督「お前達はグルってことか。」
翔鶴「今朝の茶番は楽しかったですよ。あれだけ馴れ馴れしい態度だったら普段は殴られてましたし、そもそも食堂で提督がご飯を食べたことなんてありませんでしたよ。いつも秘書艦が執務室へ持っていきましたし。」
提督 「何もかも計算外れ、というか普段とは真逆なことばっかしてたわけか...。」
川内「引き継ぎの時に何も聞いてなかったみたいね。まああの提督のことだしそんなことだと思ったわ。しっかし、本当に仕事が雑ね貴方もあのクソ野郎も。」
そう話す川内は呆れと怒りが混ざりあった言い方をしながら俺を汚物を見るかのように見下した。
あっ、これ目覚めそう...じゃなくて!もうバレちまったことはしょうがないとしてどうやら川内達は俺がこの世界の提督の影武者をやっているのだと勘違いしているようだ。
本当のことを話すべきか、それとも影武者だったと嘘をついて見逃して貰うか。
川内「で、あのクソ野郎はどこへ行ったわけ?答えないとまずは爪一枚ね?」
そう言うと川内は指を俺の左手の爪に手を掛けてきた。
提督「まじで言ってる?」
川内「うん。」ブチッ
返事と共に俺の爪は根本から剥がされた。
提督「っ、ふぅっ。ああああああああああああああああ」
その強烈な痛みは想像を軽々しく超え、俺は人生でこれまで出したことのないような声を出した。
川内「これで本気だって分かった?艦娘ってすごいよね~素手で簡単に拷問できて。さあ答えて、そうしないと次は人差し指だよ?」
翔鶴「手の爪がなくなったら次は足ですよ~。」
昼に会った彼女達の全ては演んじられた姿だったのだと認識させられた。思考することなどできない痛みは返答を送らせる。
川内「あれー質問してるのに答えられないの?さっきまで喋ってたのにー?どうした...のっ!!」ブチッ
提督「ああああああああああああああああああ」
提督「あ、あ、あ...。ま、待ってくれ。待ってくれ...頼む...頼むよ...。」
翔鶴「あらあら、汚いですよ提督。」
川内「あ、ほんとだ。漏らしてんじゃないわよ!汚いな~。」
なんでこんなことに、どうしてこんな目にあうのか、理由は分かっていても甘んじて受け入れられる痛みではなかった。
提督「ごめんなさい。ごめんなさい。許してください。お願いします。なんでもします。だから、どうかもう...許してください。」
川内「だーかーらー、質問に答えなさいって!」ブチッ
提督「ああああああああああああああああああ」
翔鶴「...さすがに何回も聞くとうるさいですね。川内さん、提督と同じ顔だからって力が入りすぎですよ。これでは話が聞けません。」
川内「...はぁ~。まあ少し冷静になろうかな。なんだか楽しくなっちゃってさ。」
翔鶴「私も結構楽しかったですよ。しかし、今は事情を聞かないと。」
提督「はぁはぁ...。何でも話します...。だから、これ以上は...。」
我ながら小便漏らして命乞いしている今の姿はなんとも情けないが、ここまで尊厳を地に貶めなければ今の俺に発言できる環境はまわってこなかった。本当のことを言って信用してもらえる確率より爪を剥がされる確率の方が断然高いことは明らかなこの状況ならば多少現実味のある嘘の方が良いはずだと判断してすぐさま口を動かした。
提督「私は提督殿に顔と声が似ているということでしばらく影武者として任務を授かった只の部下です...しかし、私の任務は提督殿がお帰りになられるまでに提督を演じろという内容で目的も期限も聞かされておらず、提督としての業務内容も一切知らなかったのです...。ですから...私を拷問してもこれ以上情報は出ません。」
川内「本当に...?」
提督「ほ、本当です...。」
川内「これで嘘ついてたら...今度は腕を折るからね?」
提督「は、はい...。」
バレたら死ぬな...。
翔鶴「それにしては、提督の演技が多少似てましたよね?」
提督「そ、それは提督殿とは付き合いがありましたからなんとかその時の印象を演じました...。」
翔鶴「そういえば貴方の所属と名前、階級を聞いてませんでしたね。教えてもらえます?」
ま、まずいそこまでは頭が回っていなかった。
でたらめでも言わなければ...。
提督 「横須賀鎮守府所属加藤武少尉であります!」
翔鶴「貴方の所属と名前と階級が存在するなら一応貴方がスパイではないことが分かるから、今の情報を大本営へ妖精へ頼んで電話して問い合わせてみるわ。それで存在していない場合は貴方を軍法会議にかけて正式に処分します。それでは妖精に頼んできます。」
そう言い終わると翔鶴は部屋から出て階段をコツコツと上がる音と共に遠ざかっていった。
川内「さあ、どうなるかしらね。これで違っていったらこれから腕が使えなくなる折り方するからね?」
提督「...。」
今のところ提督と同じ顔という認識しかされていないにも関わらずとんでもなく恨まれている。
しかし、もう終わりだろう。どうにもならない。実際にそんな人物は存在せず、名前がもし引っ掛かっていても階級まで同じ人間がいる確率はとんでもなく低い。さらに、その人物の現在の居場所など聞かれたら本当にどうしようもない。
俺は肉食獣に喉元を噛みつかれた草食動物が如く大人しく全てを諦めて翔鶴の帰りを待っていた。
しばらくすると階段をコツコツ下がる音が聞こえてきた。死へのカウントダウンといっても過言ではないその音に俺は汗を垂らした。
ドアが開き翔鶴が入ってきた。
翔鶴「...。」
川内「どうしたの翔鶴?」
翔鶴「あ、いえ...。どうやらちゃんと存在しているみたいです。」
提督「...!?」
俺はえっ、という声を死ぬ気で押さえて静かに聞いていた。
一体どう言うことだ。なぜでっち上げた人物が存在するんだ?さっぱり分からない...。
翔鶴「あ...でも一つだけ違うことがあったんですよ。階級が大尉だって聞きましたけどこれは一体どういうことですか?」
提督「え、それは...。」
何?そこだけ違うのか...?それなら大人しく肯定しておくか。階級の変化があったが忘れていたと...。
しかし、そう思った瞬間何故かとんでもない悪寒が走った。
いや、待てよ...あの翔鶴のことだ何か裏がある質問なんじゃないか?
提督「いや、私は少尉のままのはずです。大尉になっているのであれば私が知らない間に昇進したのでしょう。」
翔鶴「そんなことありえます?」
提督「提督殿が進言してくださったのかもしれません。そんなことより、私は任務としてこの鎮守府で提督殿の代理を勤めなければならないのです。貴方達の目的はなんですか?」
川内「こいつ急に強気になったわね。もう一枚いっとく?」
翔鶴「これ以上の拷問は無駄です。やめましょう。私たちの目的は提督の姿をしたスパイであると判断したので貴方の行動を監視、そして保護しました。任務とあれば仕方ありません。これまでの無礼失礼しました。」
川内「ちょっと翔鶴、本当にこいつ信じるの?しかも謝ったりしたら私のやったことの方が逆に軍法会議ものじゃん!」
翔鶴「スパイでしたらここまで仕事が雑だとは思えません。あと、貴方のやったことはスパイだと想定して行ったことなのでスパイは国際法の適応外なので加藤少尉が告訴しなければ問題にはなりませんよ。」
川内「ま、まじで...。か、加藤さん...ちょっと顔がにてるから気合いはいっちゃって...ごめんね。」
提督「...爪3枚剥がれてるんですけど...。」
川内「あ、あはは...ちゃんと処置はするからさぁ。それに私達が一応貴方のことは任務遂行中は守るからさ...それでチャラにしてくれない?」
提督「...まあ、今軍法会議なんて開いたらそれこそ任務がパーになってしまうからできないけど...埋め合わせはしてもらいますからね。」
翔鶴「加藤...提督、それでは医療処置がすみ次第業務に戻ってもらいます。私達への敬語はもうやめてください。あと、提督の真似をするならば私と川内が教えます、秘書艦は私達二人でローテーションを組んで行いますのでそのつもっりで。」
そう言い終わると翔鶴は医療箱を持ってきて川内に処置を行わせた。
提督「い、痛い痛い...。」
川内「男なんだから我慢しなさいよ。」
提督「お、お前...絶対許さねぇ。」
許されない行いをしていたのは俺の方だと思っていると、処置が終わり、もう仕事へ復帰できそうだった。幸いやられたのは左指だったため右利きの俺は作業ができる。
そうして俺はなんとか部屋から出て執務室まで戻り服を着替えた。
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続きが気になります
こういうの好きです♪
更新頑張ってください(*´・∀・)ノ
1コメさん、2コメへ
感想ありがとうございます。不定期ですが更新していきますのでよろしくお願いします。
面白かったです。う~んお節介かもしりませんが、たとえば提督、[何々]です。てやった方良いと思う。読者の中には、分からないかもしりませんから
すみません。頑張ってやったのにでも、本当に面白かったです。続き楽しみにしてます♪
4コメさんへ
アドバイスありがとうございます!
つまり、「」の前に人物名を書いた方が見やすいということならそうさせていただきます。これからもよろしくお願いします。
4です
いえいえ、一生懸命考えたのに横からすみません。でも本当に面白かったです続き楽しみにしてます♪
面白そう、
今後に期待!
(面白く)読める!読めるぞ⁉
6コメさん、7コメさん、8コメさんへ
そう言って貰えると本当に嬉しいです。ありがとうございます。
とても面白かったです。
ですが、改行をもっとした方が見やすくなるかなと。
台詞と台詞の間を一行空けるだけでも見やすさは変わりますよ。
10コメさんへ
少し改良を加えてみました。
感想、アドバイスありがとうございます。
4です
久しぶりの投稿遅れてすみません。読みやすくなっています♪ブラック鎮守府の提督面白かったです優しいですね。
これからも応援しています。頑張って下さい
4コメさんへ
感想ありがとうございます。
12です
艦娘の名前が増えてるここから面白くなっていくんですね。応援しています。♪
12コメさんへ
面白くなるかどうかは分かりませんができるだけうまくやってみようと思います。楽しみにしてくださっている読者がいるというものは本当に嬉しいものですね。
14です
本当に面白い物だと誰だつて応援したくなります。だから頑張って下さい。応援します。♪
艦娘達にバレるかバレないか、展開が楽しみです。頑張って下さい!
16、17コメさんへ
応援本当にありがとうございます。
出来るだけ早めに更新できるよう善所します。
すみません、フレンチクルーラーがフレンチクルラーになってます(ボソッ)
19コメさんへ
指摘ありがとうございます。
文章を見たとき思わず少し笑ってしまいました。(笑)
誤字脱字無いように努力します。💦
ブラック鎮守府を題材にしたSSは多くなりましたが、これまた新しいモノですね...
期待大です。更新頑張ってください
21コメさんへ
コメントありがとうございます。
私としては新しくジャンルを開拓するための布石になれれば幸いです。
頑張ってください!続き待ってますよ!
23コメさんへ
応援ありがとうございます。
出来るだけ更新していくつもりです。
がんばえ~♡
25コメさんへ
応援ありがとうございます。
頑張って下さい。
[壁]¦д°)/ハァーイ
こんな、感じで、応援してます!
27コメさんへ
応援ありがとうございます。
絵文字で結構和みました(笑)
元気をくださりありがとうございます!
6です
久しぶりに読みました。面白かったです。内容も良いです。提督もいわゆるツンデレですね♪この先慌てないで頑張って下さい応援します。
29コメさんへ
応援ありがとうございます。
当初はあまりツンデレのように書こうと思っていたわけでは無かったのですが提督をツンデレっぽく書くことにしないとなかなか書きづらかったこともあり、結果的にツンデレみたくなりました。
ええやんけ!ブラック鎮守府作っていく物語かと思ったら全然違ってイイ!期待してます!
31コメさんへ
コメントありがとうございます。
期待に添えるよう善所します。
29です
やはり、提督ツンデレですね♪この先、楽しみにしてます。提督のツンツンデレ読んで見たいです。楽しみにしてます。♪
33コメさんへ
コメントありがとうございます。
男のツンデレって需要あるのかなと思っていましたが、どうやらあるようですね(笑)引き続きやっていこうと思います。
33です
更新、お疲れ様です。この先ツンツンデレ提督は、どうなってしまうだろう。?この先楽しみにしてます。
この悪評を提督は如何にして捌くか
興味深いです!
毎時投稿やりますねぇ
頑張って下さい
35、37コメさんへ
応援ありがとうございます!励みになります!
36コメさんへ
この先はまだまだ考えてる最中なのでまだ私にもどうなるかわかりません(笑)
少ない脳をひねって考えてみます。
壁|ョ・ω・`o)ガンバッテッ♪
39コメさんへ
応援ありがとうございます!
すごく和みます(笑)
更新もテスト勉強も出来る限り頑張って!
41コメさんへ
返信遅くなりすみません。
テストは...日本史以外は手応えがなくて剥げそうです。
テスト乙です…。スッゴい面白いので楽しみにしてます!
お疲れ様...結果は聞かないでおくよ...続きを1日毎に投稿して♡
43、44コメさんへ
応援ありがとうございます。
テストは...まあ察してください。総合で取り返さなくては(使命感)。
1日毎は...まあ出来るだけ...。
おもしれぇからよ…!自分のペースを守って、止まるんじゃねぇぞ…!(オルガ)
毎日投稿おつかれナス!
46コメさんへ
応援ありがとうございます。
まさか、かむかむレモンさんからコメントが来るとは...。
実は艦これSS書こうと思うようになったきっかけの一人なので今滅茶苦茶感動しています。一所懸命にやりたいと思います。
あぁ~^いいっすねえ~^
面白いからもっと投稿して?
もっと投稿してどうぞ。お前大好き(はあと)
48、49コメさん
コメントと応援ありがとうございます。
投稿が遅くなり申し訳ありません。
少しずつでも投稿していきたいと思います。
なぜ下書きに・・・・・(´;ω;`)ブワッ
投稿はよー(祈願)
古き良きブラ鎮ものですな