男「俺のバイクが世界一可愛い件」
俺のバイクが世界一可愛い
男「あっちぃ…………」シャワワ
男「…………ま、綺麗になったかな?」
男「よし、拭き上げするかー」フキフキ
男「うんー、綺麗になって良かったねー」ギュウッ
男「擽ったい?我慢我慢」フキフキ
男「ほれほれほれほれー」フキフキフキフキ
男「よし、ざっとエアも掛けたし、必要な所に油刺して……」
男「ワックスかけて……」ヌリヌリフキフキ
男「チェーンの張り調節して……」カチャカチャ
男「よし!洗車とメンテナンス終了!」
男「綺麗になったなぁ……」
「ん、いつもありがとね」
男「いやいや!どういたしま」
男「ん?」
「……なによ」
男「……誰?」
「誰って……葵葉だけど……」
男「は?」
葵葉「なによ、なにか文句ある?」
男「……………………」
男「葵葉がこんな美人なわけが無いだろいい加減にしろ!!!!!!」
葵葉「……………………は?」
男「こっ、こんな……黒髪ショートちっぱいの清楚系美人なわけがないだろ!!!!」
葵葉「……いや、私、あなたの妄想からこの姿になったんだけど」
男「……はっ……そういえばそんな妄想もしたような……」
葵葉「はぁ……。……相変わらずね」
男「……まあな、別にお前が葵葉だというなら俺は信じるぞ。……さっきの反応はノリだから忘れろ」
葵葉「だと思ったわ。男が私を…………NS-1を、葵葉って呼ぶのを知っているの、私と男だけだものね」
男「それでもう確信したよ、コイツは葵葉なんだなって。それにしても、なんで人の姿なんだよ?」
葵葉「……よく分からないわ。気がついたらこの姿、……チェーンの張り調節してる男がいたのよ」
男「そっかぁ……。でもまあこうしてお話出来て嬉しいよ」ナデ
葵葉「…………いつも、私に話しかけてきてくれたわよね」
男「え。いやあのそれは……」
葵葉「嬉しかったわ」
男「え?」
葵葉「嬉しかったのっ!……ほら、お出かけするんじゃないの?もうすぐで10時になるわよ」
男「え、あっ!もうこんな時間!!」
葵葉「友くんとお出掛け、だったかしら。気を付けて」
男「……葵葉も来る?」
葵葉「……私はいいわ。留守番してる」
男「そ……っか!じゃあ家の鍵ここに置いておくね!」チャラッ
葵葉「あ、うん……」
男「じゃ!行ってきます!」
葵葉「怪我するんじゃないわよ」
男「大丈夫だよ!じゃあね!!」
葵葉「はいはい…………」
葵葉「……男…………」キュッ
男「ふぁぁぁああ、ただいまー……」
葵葉「あら、おかえりなさい。随分と遅いおかえりだこと」
男「……ゴメンナサイ」
葵葉「……ちょっとぐらい2人でお出かけ出来ると思ってたんだけど……さすがに21時じゃ怖いわよね……」
男「…………ん、じゃあ行こうか」
葵葉「……へ?」
男「ん?行かない?」
葵葉「あ……い、行きたい!」
男「ん、じゃあ行こうか」
葵葉「……うんっ」
ベベベベベベベベベ
男「うるさいバイクだなあ」
葵葉「うるさくしてんのは誰よ」
男「俺だっ」
葵葉「はぁ……」
男「……なんだよ」
葵葉「ストリート用でいいものをこんなサーキット用のチャンバーにして……まったく。」
男「そっちのが……2stらしいじゃん?」
葵葉「……まあそうだけどさ。でも騒音とか……」
男「……い、一応純正チャンバーもあるから……」
葵葉「…………ん、そこそこ温まってきた」
男「夏は暖気に時間がかからないからいいね」
葵葉「渋滞ひっかかるとしんどいけどね」
男「水温が……」
葵葉「ラジエーター大きくないしね……」
男「でもCBR125のラジエーター買ってあるから、届いたらつけような」
葵葉「……ええ、ありがとう」
男「じゃあー、そろそろ行こうか」
葵葉「ん、そうね」
男「そういや、どうやっていくんだ?タンデム出来ないぞ?」
葵葉「ん?携帯の中に入れるからそれで……」
男「そんなの出来るの?」
葵葉「まあ……ね。」
男「……もう何があっても驚かなくなってきた」
葵葉「ま、まあそうなってもおかしくないわね……」
男「てか、なんでスマホに入れるって知ってるんだよ」
葵葉「……いや、気が付いた時にはスマホの中だったから……」
男「……あぁ〜…………」
葵葉「インカムでもイヤホンマイクでもあればお話できるわよ」
男「便利だなぁ」
葵葉「まあ……貴方とお話するためにこの姿になったんですもの」
男「そうなの?」
葵葉「んー……そんな気がするわ」
男「そっかぁ、じゃ行こうか」
葵葉「……ええ、そうね。」シュンッ
男「あ、消えた」
「男、こっちよ」
男「俺のスマホが喋ってる」
葵葉「失礼ね……」
男「うそうそ、すごいね」
葵葉「まあ、そうね。我ながらすごいと思うわ」
男「スマホをタンクバッグにいれて……」ゴソゴソ
男「そんで、インカム繋げば…………」ポチポチ
男「よし、聞こえるかなー」
葵葉『聞こえるわよ』
男「おおお、」
葵葉『そんな驚く程の事でもないと思うけど』
男「ツーリング行く時基本一人だから誰かと会話するってのが新鮮なんだよ」
葵葉『……そ、そう……。…………ごめんなさい』
男「やめて」
葵葉『え?』
男「謝るの……やめて……。悲しい……っ!!!」
葵葉『え。あ。…………うん……その……ごめんね……?』
男「めっちゃ悲しい!!!!!!」
男「ついた、夕映えの丘」
葵葉『ちょ、ちょっと……こんな遠出して大丈夫なの?』
男「んー?大丈夫だよ、まだ燃料半分近く残ってるし」
葵葉『そういう問題じゃなくって』
男「どういう問題よ」
葵葉『いや……明日のバイトの問題よ』
男「そんなのどうにかなるだろ。それに、11時からだし大丈夫だよ。」
葵葉『……そう』
男「心配してくれてんの?可愛いなぁ!」
葵葉『う、うっさい。可愛い言うな!』
男「おー照れてる照れてる」
葵葉『まったく……』
男「……そろそろ携帯から出てきたら?」
葵葉『…………そうするわ』
シュッ
葵葉「ふぅ……んぅぅぅー……」ノビー
葵葉「はぁ……やっぱりこっちのがいいわね」
男「お疲れ様。はいこれ」
葵葉「ん?缶コーヒー……」
男「まあ飲めよ、休もうぜ」
葵葉「…………ん、ありがと」
男「どいたましてー」カコッ
葵葉「(あったかい……)」ギュ
男「どした?」
葵葉「あ、ううん。なんでもないわ」
男「そっかー」
葵葉「あ、ねえ」
男「ん?」
葵葉「男はさ」
男「なんだよ」
葵葉「なんで私だったの?」
男「んー?どういう意味よそれは」
葵葉「いや……ほら、なんでボロの私にしたのかなぁと」
男「あぁー……。そりゃ目の前にいたからかな」
葵葉「私はバイク、バイクといえども所詮原付。……解体屋に転がってた私を、貴方は直して、大切にしてくれた」
葵葉「すごく嬉しかった」
男「……そっか」
葵葉「少ない整備知識をサービスマニュアルで補い苦戦しながらもなんとか形に出来た腰下、どうせならとポート加工してヘッド面研して圧縮上げた腰上。」
葵葉「最初の慣らしはきっちり1,000km、オイルは慣らしをしてる時を覗いてちゃんと3,000でしてくれた。」
葵葉「2stオイルも、純正の安いやつでいいのにわざわざ青缶なんか買って……」
葵葉「ここまで大切にされた事が無かったから、すごく嬉しかった」
男「一目惚れだったから」
葵葉「ボロの私が?」
男「うん、一目見て、『ああ、治して乗ってあげよう。前のオーナー以上に大切にしよう』って思ったの」
葵葉「……そう」
男「走るために生まれたバイクが走れないまま放置されてたのが見ていられなくて。あと、なんか、他に無い「何か」を感じた」
葵葉「他に無い……ナニカ……?」
男「なんだろう。こう……………………放っておけなかった」
葵葉「どういう意味よ」
男「……んー、なんて言えばいいんだろ!こう……運命?みたいな何かを感じた」
葵葉「ふーん……」
男「でもまあ、解体屋のおっちゃんが売れるだろうと思っておいて置いたけど2ヶ月近く残ってるからそろそろ捨てようかと思ってたって言ってたから」
男「まあ、俺は葵葉の命の恩人ってとこかな」ドヤ
葵葉「……そうね。もう一度私に、走る事を教えてくれた人、ね……」
男「……嫌じゃなかった?」
葵葉「全然」
男「本当?」
葵葉「自分で言ったじゃない。走るために生まれたバイクが〜って」
葵葉「…………感謝してもしきれないわ」
男「そっか」
葵葉「ここまで大切にしてくれた人いなかったわ」
男「そうなの?」
葵葉「私が生まれた時代も時代。レプリカ全盛時代だったからね」
葵葉「慣らしが終わった娘の殆どは。最速を夢見る走り屋の子達に峠道に駆り出されたわ。もちろん私も」
男「…………」
葵葉「走りに必要なメンテナンスはしても、ワックス掛けてくれたり、洗車なんていったメンテナンスをしてくれたのは。男だけよ」
男「そう」
葵葉「まあ、走り屋の子達が悪いかと言われたら、そうとも言いきれないんだけどね」
葵葉「…………その時代に生まれてしまったから…………それが最大の理由かしらね」
男「葵葉は悪くないよ、走るために生まれたんだから。外見のメンテナンスなんてのはほぼほぼ自己満足みたいな所あるからね。」
葵葉「……そう」
男「ま、時代が悪いのかな……」
葵葉「最初、ヘッド面研されて、ポート加工された時はまた無茶やらされるのかと思ったわ」
男「俺はただ2stを楽しみたいだけだ」
葵葉「そうね。初めは普通に怖かったわよ」
男「う……ごめん」
葵葉「ま、2stに乗るということはそういうこと。なんだけどね」
男「なんだよ『そういうこと』って」
葵葉「パワーバンドを楽しむ人よ」
男「あぁー」
葵葉「好きでしょ?」
男「もちろん、大好き。葵葉も好きでしょ?」
葵葉「ええ、大好きよ。……て、何の話しの事かしら?!」
男「パワーバンドの話でしょー」
葵葉「え、あぁ、うん。もちろん好きよ?自分の能力をフルに発揮出来るんだもの」
男「ふーん。ちなみに俺は?」
葵葉「大好き」
男「…………おう」
葵葉「な、なによ」
男「いや、嬉し恥ずかし……」
葵葉「き、聞いといて照れないでよ……恥ずかしくなってくるわ」
男「お、おう……」
葵葉「うん…………」
男「…………」
葵葉「…………」
男「………………」
葵葉「……」
男「か、帰るか」
葵葉「そ、そうね!帰りましょう!」
男「(気まづい……)」
葵葉「(とても気まづい……)」
男「はぁ、ただいま」
葵葉「……おかえり」
男「もう02:00だ」
葵葉「夜遊びは不良の元よ」
男「誘ったのは誰なんですかねー」
葵葉「…………あ、あははー……誰でしょう……」
男「……」ジトー
葵葉「はい、私です……」
男「はぁ……とりあえず……寝ますか」
葵葉「そうね、寝ましょう。疲れたわ」
男「じゃ、俺床に布団敷いて寝るから葵葉ベッド使いなよ」
葵葉「駄目よ」
男「何故」
葵葉「……一緒に寝ましょ?」
男「……な、なぜ」
葵葉「…………いつも夜一人で寂しいから……」
葵葉「……一緒に寝れるなら、一緒に寝たい……」
男「うちのバイクが可愛い件」
葵葉「……なによ!」
男「可愛いなあお前。よし、寝るぞ」
葵葉「う、うぅ……」
男「ほら、隣おいで」
葵葉「……」コクリ
男「はいいい子」ナデ
葵葉「……もっと撫でて」
男「ん」ナデナデ
葵葉「……ぎゅー」
男「ん」ギュッ
葵葉「ちゅー」
男「ん」
葵葉「まってまってまってまってまって!!!本当にするの!!?!?」
男「して欲しいんじゃないの?」
葵葉「じょ、じょ、冗談に決まってるでしょ!ばかっっ」
男「そっかー……俺はしたかったんだけどなぁ……」
葵葉「う…………ううううぅぅぅー!!!」
葵葉「……」チュッ
葵葉「…………おやすみ!」ゴロッ
男「……………………おやすみなさいませ……」
葵葉「ーっ///」
男「(すげえドキドキいってるなぁ葵葉)」
葵葉「(うぐぐぐぐ……このどきどき聞こえてなければいいなぁっ)」ドキドキ
男「(ま、可愛いからいっか)」ギューナデナデ
葵葉「………………………………」
葵葉「(ね、寝れない……!)」
葵葉「……結局朝まで寝れなかったし……」
男「……zzZ」
葵葉「まだ寝てる……今日確か出勤11時からよね……まだ時間はあるわね……」
葵葉「んー……今から寝ようにも寝る訳にはいかないし……」
葵葉「……お掃除してようかしら……」
葵葉「男、起きて」ポンポン
男「…………」
葵葉「男ー、朝よ、起きなさい」
男「あと5分……」
葵葉「だーめ。早く起きて5分使って暖気しなさい」
男「んええええええぇ…………大丈夫だよぅ……」
葵葉「雨降ってるんだから、今日の通勤は車でしょ?」
男「ぅえ……?あめ……?」
葵葉「そうよ、雨が降ってきたの。車で行くんでしょ?」
男「…………愛灯ちゃん暖気しなきゃ……」のそのそ
葵葉「バイトの制服出しておくから。行ってらっしゃい」
男「んー……」
男「……ただいま」
葵葉「おかえりなさい。朝ごはん出来てるわよ」
男「……わあ、ひさしぶりにたべる」
葵葉「味は保証出来ないけどね。朝はそんなに入らないんでしょう?おにぎりとお味噌汁作ったからゆっくり食べなさい」
男「んー……でも時間が」
葵葉「大丈夫よ。今9時半だから」
男「…………は?」
葵葉「9時半だから」
男「…………」
葵葉「9時半よ」
男「ぬおおおおおおおお……?!……めっちゃ早起き……」
葵葉「貴方いつも朝弱いじゃない、ボケっとして。そんなんじゃいつか事故るわよ?」
男「……はい」
葵葉「それにいつも遅く起きて慌ててるんだから、たまには朝ゆっくりしなさい」
男「……はい」
葵葉「まったく、本当にわかるってる?」
男「はい、わかってます……」ズズズ
男「あ、うまい」
葵葉「そう?貴方この前赤味噌が好きみたいな話してたからコンビニ行って赤味噌にしたんだけど……良かったわ……」
男「……炊きたてのご飯でおにぎりだ」
葵葉「熱くて手が真っ赤になっちゃったけどね……」
男「無理しなくてもよかったのに」
葵葉「あなたにちゃんとご飯食べてもらいたかったのよ」
男「……ごめん」
葵葉「謝られるより御礼を言われたいわ」
男「…………ありがと」
葵葉「ん。どういたしまして」
葵葉「男はいっつも自分のことは後回しで私とか愛灯の方優先してるもんねー」
男「そりゃあ2人が大事だからな……」
葵葉「……嬉しいけど、私は貴方が不健康でいることの方が嫌よ」
男「……ちょっと生活見つめ直すよ」
葵葉「ん、そうして?」
男「……(何この良妻……)」モグモグ
男「ご馳走様でした」
葵葉「お粗末さまでした。制服はそこのソファの上に靴下と一緒に置いてあるわ」
男「お、ありがとうー」
葵葉「……まだ9時45分ね」
男「家出るまでまだ30分ちょっとある」
葵葉「早めに行ったら?今日休日だしもうすぐ10時だから道混み始めるんじゃないかしら」
男「んー……ま、そうだね。それにアイドル放置してたら愛灯ちゃん拗ねカブりしちゃうしね」
葵葉「拗ねてカブってるんじゃなくてただ不調なだけじゃ」
男「拗ねるからカブるんじゃないの?」
葵葉「……まあ、私はそうだけどさ……ほら、車とバイクって違うじゃない」
男「んー、俺には一緒に思えるけどなぁ……」
葵葉「…………そこはあの子本人じゃないと分からないわね。ま、気を付けて行ってきなさい。」
男「ん、安全運転で」
葵葉「あ、これ足りるか分からないけどお弁当と水筒。…………って言ってもおにぎりとちょっとしたおかず詰めただけだけど」
男「おおお!ありがとう!葵葉はいいお嫁さんになるなぁ……」
葵葉「…………き、気をつけてね」
男「ん?……おう、んじゃ行ってきます」
葵葉「……………………ーーーっ!!///」カアァァ
葵葉「…………ばーか」
男「……ちょっと出だしがもたついたな。やっぱり拗ねてる?」
「拗ねてないよー」
男「……ん?」
「拗ねてないってばー」
男「わかった、携帯から声が聞こえることとそれと会話ができることについて説明を…………」
男「あ、まさか」
「お、察しがいいねぇ」
男「……愛灯?」
愛灯「そうだよー、おはよう男」
男「お、おはよう。」
愛灯「今日は葵葉さんじゃないんだね」
男「……雨だからね」
愛灯「男は雨の日しか乗ってくれないんだもん、そりゃあねえ、身体が鈍っちゃうよー」
男「だからもたついたのね」
愛灯「……雨降ったの通勤通学の時しか乗ってくれないから男とお出かけ出来たことないし……」
男「あ……あはは、明日休みだから明日お出かけしような」
愛灯「……いいの?!やった!」
男「……葵葉がなんて言うかわからないけどな……」
愛灯「あー……なんだかんだ葵葉さん嫉妬深いからなぁ……」
男「やっぱり?」
愛灯「すごいよー。まあでも男のこと大好きだからね。なんでも言うこと聞くと思う!」
男「なんでも?」
愛灯「うん、なんでも。」
男「脱げって言ったら?」
愛灯「あ、脱ぐんじゃない?ジト目で「変態……」とか睨みながら脱いでくれると思うよ!」
愛灯「というか、男……変態……」
男「……う、うっせぇ。こんなオーナーの所に来た己を恨め!」
愛灯「私が望んできたわけじゃないもん!ボロ中古を現車確認しないで買ったのは男でしょう!」
男「あまりにも汚いから掃除するの大変だったわ!」
愛灯「……男、すごい綺麗好きなんだね」
男「綺麗好きというか、自分のモノである以上汚れたままってのがイヤなだけだよ」
愛灯「メンテナンスもちゃんとしてくれたし」
男「メンテナンスしないのが原因で不調になるのはゴメンだからね」
愛灯「……葵葉さんが男に惚れる理由がわかったよ」ボソ
男「そうかい」
愛灯「……聞こえてた?」
男「そりゃな」
愛灯「くっ、だいたいこういう時は鈍感難聴ってのが基本でしょ!」
男「いや、俺察しは良い方だし耳も目もめっちゃ良いから」
愛灯「頭は」
男「悪い」
愛灯「ぷふっ……」
男「なんだいなんだいこのやろう」
愛灯「ふふふ……いやぁ……なんでもないよ」
男「……そうかい」
愛灯「うん。……はー、私のオーナーが男で良かった」
男「葵葉も似たような事言ってたぞ」
愛灯「優しいし、大切にしてくれるからね」
男「これが普通だ」
愛灯「じゃあその普通が出来る人は一体何人いるんでしょうかー?」
男「さあ?思ってるよりいるんじゃね」
愛灯「……そうかな」
男「そうだよ」
愛灯「……そうだといいな」
男「うん。」
愛灯「普通が出来ない人、沢山いるからね」
男「そういう人たちみたいになりたくないから頑張って維持してるんですぅー」
愛灯「んふふ、頑張って」
男「じゃあ愛灯は雨の日要員で」
愛灯「ぅえええーっ?!」
男「お疲れ様ですー」
愛灯「お仕事終わり?」
男「ん?……ああ」
愛灯「どうしたの?」
男「いや、美人だからつい見とれてしまったというか」
愛灯「……年下に見とれた?」
男「うん。すっごい美人。」
愛灯「どういう所が?」
男「ボンキュッボン…………じゃなくて。烏の濡れ羽色っていうのかな。すごい綺麗な艶のある長い黒髪に吸い込まれそうな瞳……かな」
愛灯「ふーん……もっといろいろ褒めて欲しかったなぁ……」フニフニ
男「いやっ。いやいやいや、そういうのは……あ。そういや、愛灯の人になった姿、初めて見たなぁ」
愛灯「ふふふ、はじめましてー。男さんの愛車のRX-8の愛灯ですーっ」
男「あ、はじめましてー、RX-8のオーナーの男ですー」
愛灯「……」
男「…………」
愛灯「…………ぷっ」
男「あはははっ、なんだそれ!」
愛灯「ふふふふっ。わからない、ちょっと面白いね」
男「……だな。」
愛灯「………………帰る?」
男「ん、葵葉が待ってる」
愛灯「……うん」
男「どうした?」
愛灯「ちょっと。ドライブ行かない?」
男「……いいよ、行こうか」
愛灯「どこまで行く?」
男「どこまででも」
愛灯「じゃあ。二人きりでずっと、どこまでも。行き先のない旅に」
男「それはちょっと」
愛灯「なんで?」
男「葵葉が……」
愛灯「……ふふ、言うと思った。」
愛灯「ゴルフ場の、上の方の空き地に行きたい」
男「そんなとこでいいの?」
愛灯「うん、あそこなら二人きりになれるじゃん?」
男「……わかった。ちょっとだけだぞ?」
愛灯「……ん。ありがと」
【空き地】
男「はぁーっ朝は雨が降ってたけど、午後から晴れたなぁ」
愛灯「そうだねー。おかげで星空もキレイ」
男「……これが見たかった?」
愛灯「うん、男と二人きりで……ね。」
男「満足?」
愛灯「……本当は抱いてほしい」
男「…………ここで?」
愛灯「うん」
男「外だぞ」
愛灯「うん、見せつければいい」
男「捕まるわ」
愛灯「こんな時間にここに来るのはそれ目的の人ばっかだから」
男「なんでそんなこと知ってんだよ」
愛灯「調べた」
男「俺が仕事中に?」
愛灯「うん」
愛灯「男……意外とアレなプレイ、好きなんだね……///」
男「おい、何を見た」
愛灯「み、見てないよ!エッチなサイトの閲覧履歴とか検索ワード見たりとかしてないよ!」
男「見たんじゃないか……」
愛灯「だ、だってブラウザアプリ開いたらすぐエッチなサイトだったんだもん!」
男「…………あー、それは……悪かった」
愛灯「まったくっ!」
男「……したいの?」
愛灯「……うん」
男「なんだよ、誘ってきた割には乗り気じゃなさそうだな」
愛灯「……いや、私が葵葉さんより先にシちゃっていいのかなと……」
男「罪悪感?」
愛灯「……うん。」
男「…………愛灯」
愛灯「ん?なあにおと─…………んっちゅ……っ!?」
男「……愛灯」
愛灯「ふぁ…………///」
男「……」ギュ
愛灯「…………うぅ」ギュゥゥ
男「…………」ナデ
愛灯「……か、帰らなくていいの?」
男「帰りたい?」
愛灯「い、嫌っ」ギュウウウッ
男「でしょ」
愛灯「……うん……」
男「もう少し、こうしてようか」
愛灯「……ん」
~~~
愛灯「んふ、満足」
男「そう?良かった。じゃあそろそろ帰ろうか」
愛灯「うん、帰ろっ?」
男「そしたら明日はお出かけだね」
愛灯「本当にいいの?」
男「うん、いいよ」
愛灯「!!わーい!やったやった!!」ピョンピョン
男「(……たゆんたゆん)だ、だからほら、早く帰ろうか」
愛灯「うんっ!」
葵葉「遅い」
男「……はい」
愛灯「ご、ごめんなさい!わ、私が誘ったのが悪いの、だから男は悪くないの!」
葵葉「でも行ったのは男よね」
男「はい……」
愛灯「……ごめんなさい……」
葵葉「あのねぇ、別に帰り何処かに寄るのはいいんだけど。遅くなるなら連絡してくれないかしら?」
男「……はい」
葵葉「……すっごい心配したんだからね。馬鹿っ」ギュッ
男「…………うん。ごめんね」
葵葉「……ぎゅーしてよ」
男「うん」ギュ
愛灯「…………」
葵葉「………………はぁ、落ち着いた。」
愛灯「……」
葵葉「……ん?……えっと……愛灯ちゃんもくる?」
愛灯「…………いい……の?」
葵葉「ええ、いいわよ?」
男「(おうふ)」
愛灯「!!やったぁ!」ギュ-ッ
葵葉「ふふふ。こんな可愛い子に懐かれるなんて幸せ者ねー、男ー??」ニコニコ
男「あ、あはは……」
葵葉「……私が1番じゃないとダメだから。…………ちょっとメンヘラっぽいわね、ごめん」
男「……いいよ、言われなくても葵葉が一番だから」
愛灯「…………っ」
葵葉「…………。……愛灯ちゃんは?」
愛灯「っ!」
男「同じぐらい好きかな」
愛灯「…………え」
葵葉「ん?1番が2人?」
男「そうだねー。1番が2人」
葵葉「それ、一番でいる意味ないじゃないの」
男「二人とも好きなんだよ」
葵葉「ふぅーん……浮気者め」
男「……しょうがないだろ。好きなんだから」
愛灯「…………」
男「どうした愛灯?」
愛灯「……んーん。なんでもない」ニヘ
男「んー?そうかぁー……」
葵葉「(嬉しそう。)」
男「あ、葵葉。」
葵葉「ん?なぁに?」
男「明日さ、バイト休みなんだけど……」
葵葉「どこか出掛けるのかしら?」
男「あ、うん。愛灯とちょっと出掛けようかと」
葵葉「……そうねぇ。いいんじゃないかしら?」
男「……いいの?」
葵葉「いいわよ。それに、愛灯ちゃんがお家来てから1度も通勤通学以外で乗ってないじゃない?二人きりでお出かけとかしないのかとちょっと不思議に思ったぐらいだから別にいいわよ」
男「愛灯、いいってさ」
愛灯「……あ、葵葉さん。…………ありがと」
葵葉「気にしないで。ここ最近私ばっかりお出かけだったからちょっと休みたかったし。いいのよ、ゆっくり遊んでらっしゃい」
男「だって、良かったな。優しいお姉ちゃんで」
愛灯「……うん。ありがと!」
葵葉「(お姉ちゃん……)」
葵葉「男、夕飯は?」
男「ん?夕飯。ああ、今日の夕飯は?」
葵葉「男が食べれるものをあまり知らないから……取り敢えずカレーにしておいたわ」
男「お!いいね!俺基本なんでも食べれるよ!小豆を覗いてね」
葵葉「アレルギーだったかしら。まあそれはしょうがないわね」
愛灯「夫婦みたいだね」
葵葉「……ふう……っ!?///」
男「照れた」
愛灯「照れたね」
男「可愛い」
愛灯「顔真っ赤だ」
葵葉「……〜っ!!は、早く食べちゃって!片付かないでしょ!///」
男「可愛い」
愛灯「可愛いね」
男「食べよっか」
愛灯「うん!」
葵葉「くっ……///」
男「美味かった、ご馳走様」
愛灯「ちょっと香ばしかった」
男「隠し味にコーヒー入ってたんだよ。上手く隠れてたね」
愛灯「コーヒー?!……へぇー……そうなんだ…………」
男「他にも入ってたよ?」
愛灯「え、そうなの?」
男「うん。チョコとリンゴがね」
愛灯「はぇー…………よくわからないなあ」
男「まあカレーは隠し味の味を隠しやすいからね」
愛灯「ふーん。あれ、葵葉さんは?」
男「ああ、葵葉なら俺の部屋にいるよ」
愛灯「ん?なんで?」
男「いや、読みたい本があるって言って……」
愛灯「へーえ。読書家?」
男「そんなんじゃないよ。読むのが好きなだけ」
愛灯「読書家じゃん」
男「そうかな」
愛灯「ラノベとか?」
男「ううん。そして誰もいなくなった。とか怪人二十面相とかかな」
愛灯「また渋い所を」
男「友達に言われて読み始めただけだけどね」
愛灯「まあそれでも文字に触れるのはいいことじゃん」
男「そうなのかな?」
愛灯「そだよー」
愛灯「あ、お風呂入ろ!背中流したげる」
男「……いや、1人ではいる」
愛灯「えー」
男「なんだよ」
愛灯「一緒がいい……」
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