ドラゴンボール IF 第3話 そして地球からは奇跡の力が喪われ 彼の者は帰るべき故郷を永遠に喪った
それは気の遠くなる程の長い時を生きてきた
儂にとって素晴らしい出会いじゃった
皆に出会えた事で儂の人生は生まれ変わった
のじゃ
皆のお陰で儂は人間に戻れたのじゃ
あの子達は儂の息子の様なものじゃ
それは何物にも代えられない人生の宝じゃ
誰にでも言える何度でも言える 皆儂の大切な
家族じゃと
初めて海ガメの背に乗って悟空の奴が
儂の所へ来た時の事は今でも昨日の事の様に
思い出せる
背中に儂が授けた孫悟飯の如意棒を背負って
溢れんばかりの笑顔で儂に強くなりたいと
挨拶したな その笑顔を儂は信じたのじゃよ
信じられたのじゃよ
その直ぐ後にクリリンの奴が来たのじゃな
そして二人は兄弟の様に一緒に修行に励み
強くなっていったのじゃったな
そして天下一武道会で儂はジャッキーチュンと
名を変えてヤムチャと戦った その時に儂は
初めてお前が大猿に変わるのを見た
その時大猿に変身したお主に微かな胸騒ぎを
覚えながらも何も調べる事もしなかった
自分自身の迂闊さを今となっては後悔する
ばかりじゃ
その後も瞬く間に時は流れていった
天津飯達との出会い その後には信じても
いなかったピッコロ大魔王の復活 今では
良き相談者と言うのが何とも可笑しな
ものじゃの
それをお主は仲間との絆で見事に打ち倒したの
それからもお主は多くの出会いを繰り返した
皆お主の人柄に惹かれてお主の周りに
集まってきた それからもお主はどんどん
強くなっていった
強く強く何処までも強く誰も手が届か無い程
強くなっていった 本当にお主は強くなった
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
武天老師「その結果・・強くなり過ぎて
命の価値が分からなくなる程にのぅ」
海ガメ「・・・亀仙人様」
普段着から戦いに赴く時に着用する胴着に
着替えながら武天老師は無表情で呟く
その隣では長い月日を武天老師と一緒に
暮らしてきた海ガメが心配そうな表情で
見ていた
武天老師「ふぅ・・のぅ悟空よ 皆が皆
おの主ように強い訳では無い なのにもし
命を蔑ろにするような発言をするならば
・・その責任は儂がとらねばならん・・
儂がお主を討つ」
そして考えるのはドラゴンボールの事
ドラゴンボールで生き返る事が出来るのは
一度だけ しかし神様の力があればそんなもの
は幾らでも変える事が出来る
武天老師「最も神様もそんな事はせん
じゃろうがな・・じゃが悟空は間違いなく
ドラゴンボールの事を考えておるじゃろう
・・じゃがなそれでは駄目なんじゃよ
命を落とさないように精一杯生きる事が
大切なのじゃ」
・・孫悟空が間違い無く考えているで
あろう事・・
・・死んでもドラゴンボールで生き
返らせれば良い・・
・・それは自分が強くなり過ぎた事による
他人の命への価値観の違い・・
戦いの胴着に着替え終わると武天老師は
海ガメに話し掛ける
武天老師「ではの海ガメ 暫しの間留守を
頼んだぞ」
海ガメ「亀仙人様無茶です勝てっこありません
どうか考え直して下さい」
海ガメの武天老師を案じる言葉に彼は
安心させる様に口を開く
武天老師「心配するでない 今回は奴の覚悟を
確かめるだけじゃ」
そう呟くと武天老師は目を閉じ仲間達の事を
考え出す 恐らくはピッコロやヤムチャ
或いはベジ—タも同じ考えじゃろう
今はまだ戦うべき時期ではない
・・真の決着をつける時期は 場所は・・
武天老師「それは三年後・・南の都じゃろう
その為に手紙で国王には今のうちから
避難を呼び掛けておるからのう」
・・そう呟くと武天老師は飛空挺に乗って
亀ハウスを後にした・・
海ガメ「亀仙人様・・お辛いでしょう」
・・後には海ガメの言葉が亀ハウスの中に
虚しく響いていた・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
神様「返す言葉もないな・・武天老師よ
お主の言う通りじゃな・・やはり儂は
ドラゴンボール等創ってはいけなかったの
かもしれん」
ここは天上界 ここでは今神様が地上を
悲しげに見下ろしていた そしてその横には
彼の従者であるミスターポポが控えていた
神様が視線はそのままにミスターポポに
話しかける
神様「のぅポポよ こう言ってはなんだが
儂は悟空が人を殺した事を怒っている
訳ではない」
ミスターポポ「はい 神様」
ミスターポポの頷きに神様は先を続ける
神様「儂が悲しんだり怒ったりしているのは
武天老師が言ったように悟空が人の死に対して
無頓着になってしまったからじゃ」
ミスターポポ「良く分かります 悟空は何でも
ドラゴンボールに頼りすぎ・・でもドラゴン
ボールはもう」
ミスターポポの意味深な発言に神様は
若干躊躇った後に話を続ける
神様「・・その通り ドラゴンボールはもう
人を生き返らせる事は出来ない」
ミスターポポ「ドラゴンボールは人々の
願いの結晶 でも悟空達がドラゴンボールを
使い過ぎた影響で負のエネルギーが溜まって
いる・・人を生き返らせるなんて凄い
エネルギーを使うからそんな事に使ったら
神龍が邪悪に染まる」
神様「ふぅ・・悟空よ・・もう奇跡は
二度と起こらん お前は強くなりすぎた
力に取り憑かれてしまった その結果
人の命に対して無価値になってしまった」
ミスターポポ「孫悟空は光を呼び寄せる一方で
闇を呼び寄せる とんでもない邪悪を」
神様「フリーザが良い例えじゃな・・
そして今や孫悟空が第二のフリーザに
なろうとしている」
・・神様とミスターポポは憐れみの表情で
地上を見下ろしていた・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
再び場所は変わりここは国王の居る世界の中心
キングキャッスル 此処には国王の元へ
武天老師からの手紙が届いていた
国王「ほぅ・・ふむ・・不確定要素で
申し訳ありませんが三年後南の都に恐ろしい
敵が現れる可能性がある その為市民が
混乱にならないよう今のから避難をお願い
しますか・・成る程」
衛兵「・・如何いたしましょうか国王様」
手紙を読み終え考えに更けっていた国王に
側に控えていた国王親衛隊の隊長が声を掛ける
何しろ武術界にその人ありと言われた
武天老師からの手紙だ悪戯や気のせいだと
思う訳にはいかない
暫しの後考えがまとまったのか国王は口を開く
国王「・・そうじゃな 市民に不安を与える
訳にはいかんから 市民には当日は大規模な
演習の為に怪我をするといけないので
避難をお願いしますと今の内から呼び掛けて
おいてくれ」
衛兵「わかりました お任せください」
国王の言葉に衛兵はそう返事をして部屋を
出て行った 部屋に一人になった国王は
小さく呟く
国王「ふぅ・・何事もなければ良いが
・・今回も君の力を借りるかもしれんのう
頼んだぞ孫悟空君」
まさか国王は当のその孫悟空こそが恐るべき
敵になるかも知れ無いとは思いもよら無かった
のであった
・・国王はまだ 真実を何も知らない・・
一人物思いに更けっていた国王の下に
先程退室したばかりの衛兵が戻ってきた
衛兵「国王様出ていったばかりで引き返して
来て申し訳ありませんが国王様お客様です」
国王「ふむお客さんとは何方かね・・
もしやこの手紙を送ってきた武天老師殿かな」
突然の自分に会いに来たと言う来客に
国王は手紙の主の武天老師かと思い衛兵に
そう尋ねるが帰ってきた答えは思いもよらない
ものだった
衛兵「いいえ 相手はカプセルコーポ
レーションの娘さんのブルマさんです
内容はどうやら武天老師殿の手紙の内容と
同じ事のようですが」
国王「ほうカプセルコーポレーションの
娘さんとはのぅ・・分かった話を聞こう
中に入れてくれたまえ」
衛兵「分かりました ブルマさんどうぞ
お入り下さい国王様がお会いになられる
そうです」
国王は僅かな沈黙の後そう答えた そして
衛兵に案内され部屋に来客が訪れる
ブルマ「失礼します カプセルコーポ
レーションのブルマと申します 国王様
突然の訪問申し訳ありません」
・・ブルマの訪問は国王に何をもたらすの
だろうか・・
ここは周りを山々に囲まれ町からも程よく
離れた所に在る孫悟空の実家
ここで孫悟空 孫悟飯 ピッコロは来るべき
戦いの為に日々厳しい修行をしていた
しかしピッコロは自身の胸に秘めた戦うべき
相手は人造人間では無い事を理解していた
そして孫悟空の実家では修行をしてお腹を
空かせて帰って来るであろう孫悟空
孫悟飯 ピッコロの為に孫悟空の奥さんの
チチが腕に拠りを掛けて沢山の食事を
作っていた
チチ「おとん そろそろ出来るからお皿を
並べてくんろ」
牛魔王「おう 任せとけい」
[カランカラン]
その隣では父親の牛魔王が食事の準備を
手伝っていた そんな和やかな雰囲気の最中に
突然の来訪者が訪れる
チチ「おやお客さんかい ドアは開いてるで
遠慮せんで入ってくんろ」
武天老師「お邪魔するぞい おや食事の準備中
じゃったか 邪魔してすまんのう」
牛魔王「なんと!? 武天老師様ですか!!
ご無沙汰しております!!・・武天老師様
どうして胴着なんか?」
チチ「なんだ武天老師様かいな ちょうど
これから食事にするけに遠慮せずに一緒に
食べてってくんろ」
武天老師「これはこれは 態々すまんのう
・・《牛魔王大切な話があるんじゃ
出来れば二人っきりで話したい》・・
折角じゃから御呼ばれするとしようかのう」
訪ね人はなんと武天老師であった 一緒に
食事を勧めてくれるチチを気遣い話を合わせた
武天老師はチチに聞かれない様に小声で
合図を送ると牛魔王は何か訳ありだと直ぐに
気がついた様だ
牛魔王「!?・・《余程大切な話の様ですね
わかりました》・・チチよすまんが悟空達を
呼んで来てくれるかのう儂はもう歳じゃからな
動くのが辛いんじゃよ」
チチ「全く仕方ねぇなぁおとんは それじゃあ
直ぐ呼んでくるからちょっとまっててくんろ」
そして牛魔王は機転を利かせてチチに
孫悟空達を呼びに行かせて二人きりになる事に
成功する
二人になると武天老師の表情は先程までと
違って悲しみに満ち溢れていた
武天老師「ふぅ・・・」
まるでこれから話す事を躊躇っている様な
悔やんでいるような なんとも居た堪れない
表情だった
それを見て牛魔王は自分達に途轍もない
悲しい話だと気がついた様だが覚悟を決めて
先を促した
ゴクリ
牛魔王「武天老師様・・話して下さい
一体何があったんですか」
武天老師「うむ・・・話すべきかどうか
迷ったんじゃが・・やはりお主にだけは
話しておこうと思っての」
・・そして武天老師は牛魔王に全てを話した・・
・・孫悟空の嘗ての罪とこれからあり得る
恐るべき可能性を・・
・・武天老師の話が終わった時には
牛魔王は両手で顔を覆い隠していた・・
・・流れ出る涙を堪える様に悲しく
項垂れていた・・
・・武天老師も只只溜息をついて
項垂れるばかりだった・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
そして暫くして皆が戻ってきた
チチ「皆呼んできただぞ さあご飯にするべ」
孫悟飯「あはっ お腹すきました わぁあ
いらっしゃい武天老師様」
孫悟空「いやあ お腹ぺこぺこだあ
早く飯にしようぜ おうじっちゃん久しぶり
だなぁ どうしたんだ胴着なんか着て」
ピッコロ「っ・・武天老師・・(そうか
・・そうなのだな・・来るべき時が来たのか)
・・良く来たな」
武天老師「うむ・・(ピッコロ) ・・
お邪魔しておるぞ」
そうして彼等は和やかに食事を始めた
チチや孫悟飯 孫悟空は何も気がつかず食事を
始めるがピッコロは気が付いていた
武天老師と牛魔王の間に流れる哀しい空気を
何よりも武天老師が胴着を着ているその意味を
決意の現れを理解していた ついに来るべき
時が来たのだと そう理解した
そう来るべき時だ つまりは決別か否か
それを確かめる時が来たのだ 集まった皆が
何事もないように楽しく食事をしている
ピッコロも武天老師も牛魔王も普段と
変わらないような何気ない態度を装っている
そんな中食事の手を休め武天老師が何気なく
口を開く
武天老師「ところで悟空や今度の戦いは
どうじゃ 相手はかなりの使い手と聞くが
対策は出来ておるのか それに場所は
南の都じゃ まさか街中で戦う訳には
いかんじゃろう 仲間にも都の人々にも
多大なる犠牲が出るじゃろう ドラゴンボール
は一度死んだ人間は生き返らす事は出来んの
じゃぞ」
・・彼等は話をしていた・・
孫悟空「えっ・・いやぁ別に何も考えて
ねぇけど・・まあ仲間達だったらナメック星の
ドラゴンボールがあるし 都の奴等なら
地球のドラゴンボールで大丈夫だろうし
・・まあ いざとなったら神様に頼んで
願いの内容変えて貰おうかなぁなんてよ
なはははは それによ死ぬのも結構良いもん
だぞ」
・・ブルマは直接出向き国王に今の内から
避難を呼びかけて貰っている・・
・・武天老師も既に手紙で同様の事を
頼んでいる・・
武天老師「そうか・・(悟空よ最早遅いのか
やはりお主はそうなのか)・・ドラゴンボール
は万能では無いぞい それに頼りっきりに
なるのは何処様なものかのう」
・・ピッコロもベジ—タも過去に己がした
事を国王に謝罪した・・
・・それだけでなく自ら世界中を回り
皆に謝罪していた・・
・・国王もそれを信じて世界中に
お触れを出していた・・
孫悟空「心配症だなぁじっちゃんは
心配すんなってオラが何とかしてやっからよ」
・・過去の罪は 過ちは決して消える
事は無い・・
・・だからこそ償おうとする心が
明日への希望となるのだ・・
武天老師「そうか・・(悟空よ それがお主の
真実なのか お主は本当にそう思って
おるのか)・・そうか悟空よそれがお主の
答えか」
・・ならば己の罪さえ知らない者は・・
・・己の罪を考えようともしない者は・・
・・果たして断罪されるべきなの
だろうか・・
・・それとも否か・・
武天老師「ふぅ・・(儂は悟空の教育を
誤ったのか 悟空よ何故命の大切さが
分からんのじゃ)・・そうか残念じゃ・・」
ピッコロ「・・・(憐れだな孫よ 今のお前は
あまりにも憐れだ)・・・」
牛魔王「・・・(なんと言う事を・・
悟空よ・・お前はなんと言う事を)・・・」
武天老師もピッコロも牛魔王も平静を
装いながらも力に取り憑かれ変わり果てて
しまった家族に仲間に弟子に 心の中で涙を
流していた
その時ピッコロと武天老師は何者かの気配を
感じていた そしてその気配の持ち主を
二人は良く知っていた
ピッコロ「ぬぅ!?・・そうかお前も来るのか」
武天老師「もしや・・来るのかピッコロよ」
ピッコロ「うむ・・奴だ」
そして事態はさらに状況は混迷を極める
突然何者かがテレポートで家の中に入ってきた
神様「問おう・・孫悟空よお前は一体何を
望んでおるのだ」
・・来訪者の神様は孫悟空に問い掛ける・・
・・果たして孫悟空の返答や如何に・・
此処は孫悟空やピッコロ達の居る場所のほぼ
真裏に位置する場所
広大な砂漠とそれに比例するかのような
広大な山脈に囲まれ所々には水と豊かな緑が
存在するこの場所 滅多に人が寄り付かない
この場所には一体誰がつけたのか定かでは
無いが大昔から伝わる名前があった
人々はこの場所をこう呼んだ ユンザビット
高原と そんな滅多に人が寄り付かない
この場所にクリリン天津飯 餃子の三人が居た
クリリン「でも驚いたよ まさか天津飯達も
この近くで修行していたなんてな」
天津飯「ああ お互い丁度砂漠を挟んだ
山の反対側で修行していたようだな
ここは都からは離れているが修行するには
うってつけの場所だらな」
餃子「砂漠にはオアシスも在るし山を越えれば
小さい村も在りますからね」
思いもよらなかった再会に三人は暫しの
談笑を楽しむ
クリリン「人造人間がどれだけ強いか知らない
けどさこっちには悟空が居るんだ 絶対に
負けるもんか」
天津飯「全くだ彼奴の強さは底が知れんからな
【良いか天津飯よあの孫悟空とか言う
小僧には絶対に気を許すな】 はっ!?
またあの時の言葉が蘇ってきた まさか
そんな筈は無い 何故俺はあの時の言葉が
こんなにも気になるんだ」
餃子「・・天さん どうかしましたか?
・・あれ?あの鳩は確かブルマさんの」
話の途中で突如甦ってきた嘗て兄弟子である
桃白白に言われた言葉に天津飯は困惑する
そして黙ってしまった天津飯を気にする
餃子であったが そんな彼等の下に一羽の鳩が
飛んできた そしてその鳩は三人の周りを
旋回すると口に咥えていた手紙をクリリンと
天津飯に渡すと再び飛び立っていった
クリリン「このマークはカプセルコーポ
レーション・・それじゃあブルマさんからの
手紙か」
天津飯「ふむ・・一体何が書いてあるのか」
餃子「さぁ・・近況報告でしょうか」
・・何でも無いと思っていた只の手紙・・
・・しかしその期待は大きく裏切られる
事になる・・
・・そして彼等は 否彼は悩み苦しみ
苦悩する事になる・・
・・そしてこれが後の悲劇の切欠と
なるのであった・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
本来ならば儂は地上の事に関与するつもりは
無かった
どの様な理由であれ地上の事は地上に住む
人々が解決しなければいけない問題だからだ
しかし今回ばかりはそうも言っていられない
儂は見定めなければならない ドラゴンボール
を作りこの地上にばら蒔いた張本人として
その責任を取らなければならない
儂は今その為に孫悟空の前に立っている
ミスターポポの言った様に今の悟空は
ドラゴンボールに頼りすぎている
だが本来ならドラゴンボールは一度願いを
叶えたらその後数十年たたないと 願いを
叶えた代償の負のエネルギーが消えないのだ
儂はこれから悟空に最後の問い掛けをする
その結果次第では儂も覚悟を決めなければ
ならない
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
いきなりこの場に現れた地球の神様に
流石にチチと孫悟飯も何やら不穏な空気を
感じたらしく固唾を飲んで二人を見ていた
対するピッコロや武天老師に牛魔王は
これから起こる事を見逃すまいと耳を
そばだてていた
ピッコロ「神・・(そうか 遂にこの日が
来たのだな神よ審判の時が その答え次第では
俺も決意を固めねばなるまい)・・」
対する孫悟空は事ここに至ってもまだ状況が
飲み込めていない様だった そして事も
あろうに神様に楽しそうにお願いをしてくる
孫悟空「うへぇ神様じゃねぇか 丁度良かった
オラも話しがあったんだ実は 「孫よ質問は
一つだ」 よって神様?」
孫悟空の言葉を遮る様にして話し出した神様に
孫悟空は訝しげな視線を送るが 神様は只
その質問をする
孫悟空の仲間達にした様に そして同じ様に
迷い無く答えてくれると信じて
神様「・・悟空よお前が望むものはなんだ?
力か家族か お前が守りたいものはなんだ?
尽きる事の無い闘争心か愛すべき者か
・・さあ答えられる筈だ悟空よ」
これは神様からの孫悟空に対する最後の
慈悲であった
ピッコロ「・・・(孫よ これが神からの
最後の情けだ 頼むお前を信じさせてくれ
これ以上俺達を失望させるな)・・・」
武天老師「・・・(悟空よ お主は何と
答えるのじゃ)・・・」
・・しかし孫悟空は・・
孫悟空「は?・・いや・・・いきなりそんな事
言われてもよう」
・・答える事が出来無かった・・
ピッコロ「!?・・・・(そう・・か
・・そうなんだな・・そうなのだな孫よ
・・それがお前の答えか・・・見損なったぞ
孫よ)・・力に取り憑かれたか」
武天老師「何と・・・(悟空よ・・この
馬鹿者が・・お主には分からんのか・・
直ぐに答えられ無い事のその意味を)
・・この馬鹿弟子めが」
牛魔王「悟空・・・(何故だ悟空よ
何で何も言ってくれねぇんだ)・・・悟空っ」
・・答える事が出来ない それ即ち
それこそが嘘偽りの無い明確な答えだった・・
神様は心の中で泣き叫んだ そして今更
ながらに孫悟空に嘗て未来を託した事を
後悔した
力のみが成長し心も成長する事をしなかった
憐れな子供
・・神様は判定する事を決めた・・
神様「何故答えられんのだ孫悟空!!
お前には分からんのか直ぐに答えられない
その意味を!! 本当に分からんのか
悟空よ!!」
孫悟空「ちょ!! ちょっと落ち着けよ神様
こんな質問位で何怒ってんだよ!!」
状況の理解出来ない孫悟空は神様を落ち着かせ
ようとするが彼は何も理解してはいなかった
自分を見つめる皆の視線が驚く程に冷えきって
いた事を
その中には遅蒔きながら漸く状況が飲み込めて
きたチチと孫悟飯の視線も含まれていた事を
尚も神様の悲しみと憤りの無い咆哮が続く
神様「お前以外の皆は直ぐに答えられたぞ!!
ここに居るお前以外の全員が!! ヤムチャが
天津飯が餃子がクリリンが皆素晴らしい答えを
示してくれた!! あのベジ—タさえもだぞ!!
殆どの皆が家族を守りたい弟子を守りたい
そう言っていた そんな中でベジ—タや
ピッコロは両方選ぶと言いおったわ!!
力等に支配されずにこの力で守り抜いて
みせると その姿は誇り高く素晴らしい者
だった 儂は嬉しかった ピッコロが
これ程までに人間を愛してくれた事が
なのに何故貴様は選べんのだ!! 両方選ぶと
力等に支配されず愛する者を守ると・・
何故言えんのだ孫悟空!!」
孫悟空「い・・いや・・・突然そんな事
言われてもよう そんな意味のねぇ質問に
なんか」
・・尚も状況が理解出来ず言い訳を
しようとする孫悟空に・・
・・審判の答えを得た地球の神は
己の答えを示す事となる・・
神様「もうよい・・・悟空よ」
何時の間にか神様の周りにはドラゴンボールが
浮かんでいた そもそもドラゴンボールは
神様が作り出した物だ 従ってテレポートで
自分の元に呼び寄せるのは簡単な事であった
孫悟空「おほっ ドラゴンボールじゃねえか!!
神様気が利くじゃねえか!! 流石神様だ!!」
・・自分勝手に解釈し嬉しそうな
孫悟空を尻目に・・
・・地球の神は自分の周りに浮いている
ドラゴンボールを・・
神様「奇跡はもう二度と起こらん・・
ドラゴンボールは今此処に完全に消え去る」
パッリイイイィン!!
・・念導力で粉々にした・・
孫悟空「な!?・・何馬鹿な事してんだよ
神様!! ドラゴンボールと神様が協力して
くれれば何度死んでも生き返ったんだぞ!!」
一人驚き喚きたてる孫悟空に構わず神様は
ゆっくりとピッコロの元に歩み寄る
その瞳には強い決意が表れていた
対するピッコロも全てを理解した様な表情で
それを受け入れていた
神様「我が魂の半身よ・・ピッコロよ
後は任せる」
ピッコロ「ああ分かっている・・遂にこの日が
来たのだな」
・・そして二人は最後の会話をした・・
ふと何か思い立ったのか 神様は視線は
ピッコロに向けたまま話し出す
神様「今から二十五年程前ある一つの村が
恐ろしい怪物によって滅ぼされた・・
生き残りは数える程しか居なかった
その中には当時五歳になったばかりの
男の子が居た」
孫悟空「はへ?・・それが何の関係が?」
いきなり話し出した神様に訳がわからない
顔をする孫悟空や訝しげな表情をするチチと
孫悟飯を横目に見ながら神は言葉を続ける
ピッコロ「・・(孫よ これが貴様の罪だ
・・済まん悟飯 お前を悲しませてしまうな
許してくれ)・・」
武天老師「・・(悟空よ己の罪を知るが良い
そして目を覚ますのじゃ)・・」
牛魔王「・・(悟空 いい加減目を覚ますだ
チチや悟飯を悲しますでねぇ)・・」
全てを知っているピッコロ達は孫悟空には
鋭い視線を浴びせチチや孫悟飯には痛ましげな
視線を浴びせていた
神様「その生き延びた五歳になったばかりの
子供は目の前で両親を殺され 生まれた
ばかりの双子の弟と妹を無残にも傷つけられ
心に余りにも痛ましい傷を負った少年は
・・少年はその後記憶を失い・・彼を慕い
愛してくれた小さな生き物と共に・・
砂漠の盗賊となった・・その日はとても
綺麗な満月の夜だった」
孫悟空「は?・・・え?・・・神様何を?」
孫悟飯「!?・・まさか・・砂漠の盗賊って
・・満月の夜って」
チチ「大猿か!?・・何て事を・・・
おめえは何て事を・・・何て事をしただ
悟空さ!!」
神様の言った言葉が理解出来ない孫悟空と
言った言葉を理解してしまったチチと孫悟飯
しかし悲しみの連鎖はまだ続く
神様「そして生き残った村の人々は復讐の為に
そして怪物から世界を守る為に少年の祖父の
兄がリーダーとなり軍事国家レッドリボンを
作り出した 人々から誤解され非難され
ながらも只一身に世界の平和を願い続けた
そして少年の祖父は瀕死の重症だった双子の
孫を助ける為に人造人間とする決意を固めた
・・これが真実だ悟空よ」
全てを知ったチチと孫悟飯は驚愕し怒り
悲しげな表情で孫悟空を見ていた
孫悟飯「お父さん・・ヤムチャさんを
・・それに人造人間って」
チチ「悟空さの馬鹿・・この大馬鹿野郎が!!」
孫悟空「だ・・大丈夫だってドラゴンボールが
あるし・・あっ・・そうだナメック星の
ドラゴンボールを最長老様に頼んで何人でも
生き返らせられるようにすればいいんだよ!!
じゃっちょっと行ってくるから待ってろよ!!」
・・そう言って己の罪を認めようとしない
憐れな男は謝罪の言葉すら浮かばずテレポート
で消えていく・・
・・しかしそんな事は誰も望んでは
いない・・
・・偉大なる龍族が一子がそんな命を
軽んじる真似は許さない・・
神様「愚かな・・悟空よこれ以上お前の
好き勝手にはさせんぞ」
ピッコロ「うむ・・奴の暴走を止めねばならん」
そう言って神様は最後にお互いに頷き合うと
手を伸ばしお互いの身体に触れた
その瞬間ピッコロの中に凄まじい力の奔流が
流れ込んでくる
神としての知識 経験 そして目覚める
ナメック星人屈指の龍族の超能力
・・そして二人は一つになった・・
・・一つなったピッコロからは凄まじい
迄の神々しい神気が溢れ出ていた・・
・・そうして彼は両手を頭上に翳し
力ある言葉を述べる・・
ピッコロ「龍族が子息ピッコロが命ず!!
我が命名において我以外のナメック星人の
地球への干渉を禁ず!! 龍族が一子
ピッコロが命ずる!!」
・・そして力ある言葉は言霊となり
地球全土を包み込む・・
ピッコロ「・・(去らばだ我が故郷よ)・・」
其所へ何も知らない笑顔の孫悟空が帰って来た
孫悟空「へへん 皆安心しろデンデが地球で
新しいドラゴンボールを作ってくれるってよっ
これでもう何回死んでも大丈夫だ・・・
あれ? デンデ?」
しかし孫悟空の後には誰も居ない 誰も
来る事が出来ない 地球に干渉する事も
出来ない そしてそれは同時に地球から
ナメック星への干渉をも失う事であった
・・地球上から奇跡の力は永遠に
失われた・・
・・そして偉大なる龍族の血筋は
永久に帰るべき故郷を失った・・
・・何も状況が理解出来ない孫悟空を
皆が冷たく見下ろしていた・・
牛魔王「チチ 悟飯 外に風に当たりに行くべ」
チチ「そっだな・・行くぞ悟飯ちゃん」
孫悟飯「う・・・うん」
武天老師「ふぅ・・・・儂も帰るとしよう
お邪魔したのう」
ピッコロ「近くまで送ろう・・(達者で
暮らせよ我が故郷の民達よ)・・」
そして皆其々の場所に散って行った
それでもと彼等は思う これは一体誰の罪
なのか
罪を罪と知らずに更なる罪を重ね続けて
しまった罪深い男の罪か
それとも罪を罪と知りながらそれを咎め
ようともせずに更なる罪を重ね続けさせて
しまった罪深い男の罪か
・・自分の罪にすら孫悟は空気付けない・・
【(クククク)】
・・しかし彼等も又気付いてはいなかった・・
【(クハハハ・・クカカカカカカカカ!!)】
・・その者は闇の中で不気味に狂笑していた・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
一方ここは占い婆の宮殿 ここは人間界で
唯一死後の世界と繋がっている場所である
この宮殿の中なら霊は自由に行動出来る
この宮殿に今二人の老人が居た 一人は
この宮殿の主の占い婆
もう一人はその表情に後悔と懺悔の念を
刻こんだ老人だった その老人に占い婆が
皮肉の籠った声を掛ける
占い婆「のぅどんな気分じゃ お主の
蒔いた種を孫に押し付けるのは お主に
取っては嬉しい限りじゃろうなぁ・・・・
のぅ孫悟飯よ」
孫悟飯「違っ・・儂はそんなつもりは
・・儂は只・・くうっ」
占い婆「罪を自覚させずに無かった事にする
・・それこそが罪なのじゃよ」
孫悟飯「くぅうっ」
占い婆「・・・・ふん」
・・言葉に詰まる孫悟飯を占い婆は
何の表情もない瞳で見下ろしていた・・
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