2014-08-09 12:34:39 更新






  ・・災厄の死者の足音が聞こえてくる・・




未来から来た少年トランクス ベジータと

ブルマの息子である彼が示した運命の日である

三年後まで後一年となったある日 遂に

その日は訪れた



トランクスの予言通り孫悟空が突発性の

心臓病により倒れ意識不明となったのだ



二年前の全てを知ったあの日から家族は

バラバラだった 牛魔王とチチは孫悟空から

自然と距離を取る様になり自分から近づく事は

なくなった



勿論あからさまに暴力を振るったり口汚く

罵ったりはしていないが どの様な形であれ

繋がりがある分ある意味それの方がまだ

マシだったかもしれない



牛魔王とチチは孫悟空に対して 有り体に

言わせて貰えれば 想いが冷めてしまった

のであった



今まで孫悟空の美点だと思っていた所が

真実を知った後ではどうしようもなく

醜く写ってしまった



今まで子供っぽくて素敵に感じていた所も

蓋を開けてみれば 大人になっても子供の頃の

純粋な心が残っていたのではない 子供の頃

からその心は少しも成長する事無く何時まで

たってもその心は罪を罪と感じる事が出来無い

正真正銘の子供だったのだ



それからは家族の会話は減り暖かかった

家族から笑顔がなくなった 最早チチ達に

とっては孫悟空と一緒に居る事は苦痛でしか

なくなっていた



そんな状況でも牛魔王とチチが孫悟空と一緒に

居た理由は只一つ息子の孫悟飯の存在であった



生来の純粋な心持ちの孫悟飯は人を憎む事が

出来ない性格であった そんな優しい心の

持ち主である孫悟飯は真実を知っても

孫悟空を憎む事が出来無かった



今までずっと大好きで慕い続けていた

父親の事を憎む事が出来なかった



そんな孫悟飯の身を案じて牛魔王とチチは

孫悟空とあの日から二年間ずっと一緒に

居たのだ



そしてそんな彼等の傍らでは神様と一つとなり

本来の力を取り戻したピッコロが孫悟空を

ずっと見ていた



・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・



孫悟空「がはぁああ!!・・うあ・・

はあ・・ぐる・・・じ・・・はあ・・・い」



孫悟飯「お父さんしっかりしてっ お願い

死なないでお父さん!!」



牛魔王「心配すんな悟飯・・・・(本当に

これで良いんだべか)」



チチ「さっき薬を飲ませたから直ぐに

良くなるだよ・・・(本当は薬何か飲ませたく

無かっただよ)」



ピッコロ「体内の気の流れも落ち着いて

きているから時期に目覚めるさ・・・

(だが目覚めるのは果たしてどちらだ

孫かそれとも災厄の使者か)」



今孫悟空はベッドに寝かされ心臓病の

痛みと戦っている



先程薬を飲ませたので時期に症状は落ち着く

だろう



しかし彼等は本心ではこの薬は飲ませたく

無かったのだ 出来る事ならこのまま

死んでしまった方が世界の為だったのかと思う



しかし悲しんでいる孫悟飯を見ると薬を

飲ませずにはいられなかった



三人の頭の中にその時の記憶が甦る 

真実を知ってから暫くしても反省した様子も

無く何時もと何も変わらない孫悟空を見て

ある日チチが孫悟空に聞いたのだ



殺してしまった人達にこれから先一体

どう償っていくつもりなのだと



そうしたら孫悟空は少しも躊躇う素振りも

見せずにこう言ったのだ



  ・・(「悟空さずっとこのままでは

いられねぇだぞ  チチの言う通りだべ

罪はちゃんと償わなきゃならねぇ  

貴様はどうするつもりだ孫よ  確かに

悪いとは思ってけどよ でも死んじまった

もんはしょうがねぇからなぁ・・まあ

死んだら死んだであの世の生活も結構

楽しいもんだぞ きっと死んだ奴等もあの世で

楽しくやってるさ あはははははは!!

  本気でそう思ってるだか  はへ?

  本気でそんな馬鹿な事考えてるだか!!

  本気って言われてもなぁオラ別に変な事

言ってねぇぞ  もう何を言っても無駄だか

・・こんなのって・・こんなのってあんまり

だべ!!  チチっ待つだべ!!・・

今度と言う今度は本当に愛想が尽きただぞ

悟空よ・・もうチチには近づくてねぇぞ!!

  行っちまった・・なぁピッコロ何で

あの二人はあんなに怒ってんだ?  

さあな・・今の貴様に言ってもわからん

だろうさ・・ドラゴンボールは人々の夢

  んあ? 突然何言ってんだピッコロ

  わからんか? 夢は夢のままでいるから

美しいんだ・・だがその夢が当たり前に

なってしまったら人間はどうなってしまうと

思う?  さぁオラ頭使う事は苦手だからなぁ

  その答えが今の貴様だ 夢に向かって

努力する事を忘れ己の欲望に魅入られて

しまった哀れな奴よ・・俺達の知っている

孫悟空も又儚い夢だったと言う事だ  

おいピッコロ!! オラに分かるように

説明してくれ!!  現実から逃げ出した

貴様と話す事はもう何もない・・精々

夢の中で王様気分に浸っているが良い」)・・



その日の夜はチチも牛魔王も一晩中泣き続けた

ピッコロもその日の晩だけは姿が見えなかった



そして薬を飲ませて三日後遂にその時が訪れる



・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・



   【目覚めろ】



   「オラは誰だ?  消えろ俺の

邪魔をするな」



   【そうだ お前の邪魔をする奴等は

全て殺せ】



   「オラの名前は孫悟空  紛い者は

消えろ 俺の身体を返せ」



   【そうだ我等が兄弟よ 今こそ目覚めろ】



   「オラの名前は孫悟空だ  虫けらが

ほざくな俺の名前は孫悟空等ではない!!」



   【そして地に蠢く虫ケラ共を全て

殺すんだ】



   「ならオラの名前は一体  教えてやる

俺の名前は」



   【今こそ目覚めろカカロットよ!!】



   「そうよ俺様の名はカカロットだ!!」



   【そうだそれで良いのだカカロットよ!!

フハハハハハハハハハハハハハ!!】



   「ヒャハハハハハハハハハハハハ!!」



  ・・災厄の使者が遂に目覚めた・・



・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・



   「くかか・・はは・・・ふはは

・・・良い目覚めだ」



  ・・その男は長き眠りから目覚めた・・



   「最っ高だぜ!! くはははははは!!」



  ・・そしてそれをその男は家の外から

確と見ていた・・



ピッコロ「・・・(遂に目覚めたのか

奴の抑圧されていたサイヤ人の本性が・・

どうする今この場で殺るべきか)・・」



  ・・ピッコロの瞳が見据える先に映るのは

果たして誰なのか・・



  ・・ピッコロの瞳が鋭く光る・・



  ・・今直ぐにでも部屋に飛び込び込まんと

身構える・・



  ・・しかしそうはならなかった・・



孫悟空「うぅうっ・・ぐうっ」



ピッコロ「ふぅ・・・(どうやら気を失った

ようだな・・兎に角この事を一刻も早く

皆に伝えなければ)・・」



薬の効果が残っていたのか 或いは体力の

消耗からか孫悟空は気を失ってしまった



それを確認したピッコロはこの事実を

仲間達に伝える為にその場を後にする



  ・・しかし それは・・



孫悟空「かははは・・くくくくく・・・

間抜けが」



  ・・その男に全て見抜かれていた・・



  ・・そして次の瞬間 災厄の使者は

その場から忽然と姿を消していた・・



  ・・目覚めた人物は孫悟空か それとも

カカロットか・・



  ・・そして意識の中でカカロットに

語り掛けた声は一体誰だったのか・・



  ・・全ては一年後の運命の終着点の日・・



  ・・即ち南の都で明らかになるだろう・・














  ・・その日彼女は隠されていた真実を

知った・・



  ・・しかしそれは余りにも遅すぎた・・



  ・・何もかも遅すぎたのだ・・



・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・



人造人間によって滅ぼされた可能性未来



そんな世界において比較的被害が少なかった

南の都の外れに在るドクターゲロ研究所跡地に

彼女は居た



彼女はトランクスの母にして惑星ベジ—タの

王子ベジ—タの妻ブルマであった



しかし何時も勝ち気な彼女の表情からは

生気が抜け落ち顔面蒼白であった



ブルマ「嘘でしょ・・そんな・・そんな事って

・・これが真実だったって言うの」



信じられない信じたく等ない そんな言葉を

発する彼女の表情は驚愕に彩られており

そんなブルマの手には二冊の日記帳があった



ブルマ「そんな残酷な事って無いでしょう

・・それじゃあ皆は何の為に死んだのよ

ピッコロはベジ—タは天津飯は餃子は

クリリン君はヤムチャは それに悟飯君は

皆は一体何の為に死ななきゃいけなかったのよ」



  ・・一冊目の作者はドクターゲロ・・



  ・・二冊目の名前にはホープそして

スピアとそう書かれていた・・





ブルマ「だからなのね・・ヤムチャあんたは

最初から気が付いてたのね だからあんたは

あの時人造人間の攻撃を避けないでその身に

受けたのね」



二冊目の日記には下に小さい文章が書かれていた

自分達が殺してしまった最愛の兄へ 

素敵な名前をありがとう



ブルマ「こんなの酷すぎるわよ・・・

ねぇ教えてよ・・あんたはどれだけの罪を

犯したの・・ねぇ答えてよ孫くうぅぅぅん!!」



・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・



ここは未来の世界 人造人間によって

世界中が壊滅し平和が消え去った世界



残った人々は人造人間の目を逃れてひっそりと

暮らしていた しかし平和を取り戻す為

人造人間に立ち向かう者がいた



  ・・若者の名前はトランクス・・



トランクス「それじゃあ母さん行ってくるよ」



ブルマ「しっかり頑張んなさい 前回あんたが

渡した薬でもう孫君の病気も治ってる筈だから

孫君と協力して人造人間を倒して来なさい」



  ・・今は亡きベジータとブルマの

息子である・・



トランクス「ありがとう それじゃあ

行ってきます」



荒廃した未来にたった一人残された希望の戦士

トランクスは 人造人間を倒す為再び

過去へと遡った



  ・・何も知らない彼はそれが正しいと

信じて・・



トランクスを見送ったブルマは先程から

どうにも拭えない違和感の正体を探していた



思えば前回の心臓病の特効薬をトランクスに

渡した時からだった



ブルマ「どうしてこんなに不安になるのかしら

・・何も心配する必要ないわよね・・

あの薬があれば心臓病だけじゃなくどんな病も

治るんだから・・・あら?」



そこでブルマは自分が言った言葉の違和感の

正体に気がついた



ブルマ「どんな病も治す・・どんな病も

・・そう言えばまだ皆が生きてた時孫君の

お葬式でヤムチャが変な事言ってたわね」



ブルマは思い出す 彼は確かに言ったのだ

何か大切な言葉を



ブルマ「あっ・・そうよ思い出したわ

・・確かこう言ってたわ・・もしかしたら

彼奴はこのまま死んだ方が良かったのかも

しれない・・そうだよなゲロじいさん

・・どういう事?・・どうして・・どうして

ヤムチャがドクターゲロの名前を?」



確かにそう言っていた たった一度だけの

か細い声だったけどヤムチャは確かに

そう言っていた



ブルマ「ぅんと・・・そう言えばヤムチャの

様子が可笑しくなったのは ナメック星の

ドラゴンボールで生き返ってからだったわね」



その後からヤムチャとプア—ルは皆と

距離を置くようになった 只天津飯と餃子とは

頻繁に会っているようだった



ブルマ「最初の戦いで只一人生き残った

悟飯君がプア—ルに一緒に暮らさないかって

言った時も変な事言ってたわね・・確か

・・悟飯さんに罪が無いのは分かってますけど

八つ当たりしそうな自分が嫌なんですって

・・それっきり姿を見せなくなったのよね

・・一体ヤムチャとドクターゲロ そして

孫君との間に一体どんな蟠りがあるのかしら」



ブルマは思考を巡らし考えに考える 

そしてある答えに辿り着く 恐らくは

全ての謎が解けるであろう場所 それは



ブルマ「ドクターゲロ・・・・南の都だわ!!

・・きっとそこに何かある筈だわ 真実への

手がかりが」



  ・・南の都 ドクターゲロの研究所・・



  ・・・全ての真実を知る為ブルマは

危険を承知で南の都へ向かった・・南の都へ

向かったブルマはドクターゲロの研究所が

残っていないか懸命に探した しかし

意外な事に研究所跡地は直ぐに見つかった



他の地域に比べてここは綺麗なままだったのだ




ブルマ「都は破壊されているのにどうして

此所だけはこんなにも綺麗なのかしら?」



訝しみながらもブルマは研究所跡地へ

入って行く そこで彼女は全ての真実を

知る事になる



  ・・今まで自分達が信じていた全てが

覆る恐ろしい真実を・・



ブルマ「ここは地下室?・・隠し部屋

なのかしら・・・・あら 日記帳があるわね」



地下室へ降りていったブルマは研究所の

最奥にある小さな部屋から二冊の日記帳を

見つけた



部屋の入り口には鍵がかっていたが機械いじり

が好きな彼女には簡単な事だった



しかし日記帳の裏の名前を見たブルマは

困惑した



ブルマ「うぅん・・ドクターゲロは分かると

してもホープとスピアって・・ホープは

希望よね スピアは恐らく平和を逆さ読み

したのかしら・・・・それにしても自分達が

殺してしまった最愛の兄って」



困惑しながらもブルマは一冊目のドクター

ゲロの日記帳から読み始めた



  ・・しかしそれは・・



ブルマ「ふぅん ドクターゲロって始めは

北の都に住んでたんだ サム君か生きていれば

私と同じ位の歳かな・・え?・・・満月の夜?

・・村を襲い村人を皆殺しにした巨大な大猿?」



  ・・直ぐに驚愕と後悔と絶望に変わる・・



ブルマ「ちょっ・・は・・はは・・何よこれ

・・何の冗談よ・・・え?・・嘘でしょこれ

・・子供はサム君だけ助かった・・ドクター

ゲロの孫?・・・冗談でしょう?・・・

じゃあ・・じゃあ・・ヤムチャはドクターゲロの」



  ・・日記には全てが書かれていた・・



ブルマ「どうして・・レッドリボン軍は

生き残ったドクターゲロのお兄さんが作った?

・・孫君を殺す為に?・・将来必ず目覚める

筈の孫君の本性から世界を守る為に?

・・どうしてよ孫君・・そしてドクターゲロは

瀕死の重傷だったお孫さんを助ける為に

自分の身体を実験台にして人造人間にした?

・・ドクターゲロのお孫さん・・ヤムチャの

弟と妹・・自分達が殺してしまった最愛の兄

・・なんて事なの」



世界の平和を真に願っていたレッドリボン軍は

想い虚しく孫悟空の手によって壊滅し

兄も助かる事無く志し半ばにして死んでしまった



  ・・そして日記の最後にはこう書かれて

いた・・




接触する事が出来た孫悟空の仲間達に

何とか説得を試みたが信じては貰えんかった

最早戦いは避けられんじゃろう



だが儂は孫悟空と違って破壊者になる

つもりは無い 孫悟空とその仲間達を殺したら

二人の孫と一緒にひっそりと暮らそうと思う



そして儂は信じている 何時かきっと

もう一人の孫であるサムと一緒に家族四人で

陽の当たる世界で平和に暮らせると 

そんな日が来るとそう信じている



  ・・そしてドクターゲロの日記は終わっていた・・






ブルマ「どうしてなのよ孫君!!・・

こんなんじゃ例え人造人間を倒しても

誰も報われないじゃない・・皆平和に

暮らしたかっただけじゃない それなのに

どうしてこんな事になっちゃったの」



溢れ出る涙が止まらなかった 何故ならば

これが真実なら




ブルマ「本当に悪かったのは孫君だったのね

・・そしてそれを知りながら誰にも言わなかった

孫君のお祖父さん・・孫悟飯さん」



何も気が付く事が出来なかった自分に激しい

懺悔の念に囚われながらもブルマは日記を

読み続ける



ホープとスピアの日記は涙で滲んだのだろうか

字が最初からぼやけていた



ブルマ「っ!?・・お兄さんの事本当に

愛していたのね・・孫君の仲間を殺して

兄さんと四人で平和に暮らす為に心を鬼にして

目の前の人間達を殺す・・そう思っていた

・・だから最初に此方を向いたまま動こうと

しない男を十八号と二人で殺した・・・

ヤムチャやっぱりあんたは知ってたのね

だから人造人間の攻撃を避けないでその身に

受けたのね・・それがあんたに出来る

唯一の罪滅ぼしだったんだ」



しかしその男の胸を貫いた瞬間その男は

俺達を力一杯抱きしめてきた



俺達はその男が俺達を道連れにする為に

何かをするのかと思い更に力を加えた

けどその時男が薄れ行くか細い声で言ったのだ



ブルマ「ヤムチャ・・あんたって人は

・・助けてやれなくてゴメンな・・お前達に

何もしてやれなかった情けない兄ちゃんを

許してくれ・・そんな俺がお前達に出来る事は

一つしか無い・・お前達に名前を送るよ

人造人間としてじゃないお前達が胸を張って

生きて行ける人間の名前だ希望と平和

胸を張って明日を生きて行ける名前だ

ホープ スピア 幸せになれよ・・さようなら

・・ヤムチャ・・・あんたはこんな辛い思いを

一人で抱え込んで・・・馬鹿よあんた

お人好しの大馬鹿よ」



それからの事は何も覚えていない 最愛の

兄さんをこの手で殺してしまった自分達の

心から光が消えてしまった



気がつけば周りには誰一人残っていなかった

自分達は兄だけで無くお爺ちゃんまでも

殺してしまった もう自分達はこれから

何をすればいいのかわからない



ブルマ「残酷な仕打ちよね・・幸せに

なりたかったのね二人共」



今日殺した人間の母親が子供を抱き締めていた

子供は母親の胸の中でとても暖かそうに

眠っていた私達にもあんな暖かな時が

あったのかな




温もりってなんだろう 僕達も人間を

力一杯抱き締めれば優しくなれるのかな

人間になれるのかな 幸せになれるのかな



やっぱり私達は化け物なんだ人間には

なれないんだ 今日人間を力一杯抱き締めたら

身体が千切れて死んでしまった 周りにいた

人間達から化け物と言われた もうどうすれば

良いのかわからない お爺ちゃんサムお兄ちゃん

お願いだから側に居てよ 私達を力一杯

抱き締めてよ



僕達はあれからずっと世界を破壊し尽くしている

本当はこんな事したくない お爺ちゃんや

兄さんが望んだのはこんな事じゃないって

分かってる でも二人はもう何処にも居ないんだ

二人の居ない世界なんか 僕達から愛する

人達を奪った世界なんか消えてしまえ



ポタリ ポタリ

ブルマ「くぅうっ・・・そしてこんな事を

考える自分達こそがこの世界から消えて

しまえば良いんだ・・誰か僕達を殺して下さい

・・お爺ちゃん兄さんごめんね僕達も二人の事

愛してたよ・・さようならもう二度と会えない

愛しい家族達・・・・そうね」



日記は余りにも悲しく救いの無い終わり方だった

ブルマは日記を静かに閉じると想いを馳せる




  ・・(「馬鹿なっ ヤムチャ何故避けん!!

  ヤムチャ!! 己ぃ人造人間共めがああ!!

  ヤムチャさあぁぁぁん!!  まさか・・サム・・なの・・・・か  

弟と妹って・・!? 天さんあの言葉!!

  兄弟子の言葉か!? それではこいつ等は

ヤムチャのあの言葉の意味はそう言う事

だったのか!? 皆止めろおおお!!

こいつらは敵じゃ無いっ止めるんだあ

あああ!!  何を言っている天津飯!!

  ヤムチャさんが殺されたんだぞ 

許せるもんかよ!!  兄・・さ・・・ん

うああああああああ!!  いかん二人共

落ち着くんじゃあ!!  あああああああ

ああああああ!!  皆あ!! 戦いを

止めて下さああぁい!!  どう言う事だ

天津飯!! 餃子!!  ヤムチャさんの仇だ

お前等皆消えろおおお!!  ああああ

ああああああああ!!  止めるんじゃ

あああああ取り返しのつかん事になるぞ

おおおお!!  皆もう止めてくれ 

戦いを止めろおおおおおおおお!!  

うわああああああああああああ!! 

皆居なくなれぇええ!!  止めろおお

おおお!!  止めるんじゃあああああ!!

  ああああああ!! 兄さあああああ

ああああああん!!  ぐぅわあああああ

あああああああああああ!!」)・・



兄弟子とは恐らくは桃白白の事だろう

桃白白が二人に何を言ったのか あの時

天津飯と餃子が何に気がついたのか 

私には何一つ分からない



でもこれだけは言える 二人はあの時

一番真実に近い所に居たのだろう



でも私達は皆その言葉に耳を貸さなかった



  ・・それは私達の中で孫君の存在が

余りにも大き過ぎたから・・



  ・・だから孫君には間違い等無いと

彼の事を神格化してしまった・・



  ・・それこそが私達の罪・・



ブルマ「ごめんね・・・罪を犯したのは私達

・・・ごめんねホープ君 スピアちゃん

本当にそうよね あなた達の言う通りだわ

・・貴方達から幸せを奪ったこんな世界なんて

消えてしまえば良い」



そしてブルマは過去へ遡った息子に深い

祈りを捧げる



ブルマ「トランクス早まった真似をしちゃ駄目よ

その目でしっかりと見定めなさい・・真実を」



  ・・過去は未来へと想いを繋ぎ 

未来は過去へと想いを馳せる・・



ブルマ「孫君・・・現実から逃げちゃ駄目よ

・・自分が犯した罪は自分で償うしか無いのよ」



  ・・そして運命の日が訪れる・・













こちらがカカロット暗躍バージョンです














  ・・(「止めろフリーザァアアアアア!!

  弾けろ虫けらめが!!  悟空ぅうううう!!

 〔グワッチャアアアア!!〕 クリリィイ

イイイイン!!・・〔プッツン〕・・

許さねぇ許さねぇぞフリーザ ぶっ殺して

やるうううううう!! ウゥオオオオァアア

アアアア!!・・ククク・・クハハハ・・

アァアッハハハハハハハハハ!!」)・・





闇の中で二人の男の激しく言い争う声が

聞こえる



   「おめぇこれ以上悪さすっと許さ

ねぇぞ!! 良い加減オラの身体を返せ!!」



   【フハハハハ 貴様もしつこい奴だな

未だ抵抗する力が残っているとは大した者だ】



   「ふざけんなっ オラの身体で

散々悪さしやがってっ これ以上オラの

仲間達を傷つけたら許さねぇぞ!!」



   【彼奴等も憐れな者よ 全てが

俺の掌の上とも知らないですっかり騙され

おったわっ クハハハハハ!!】



一人は孫悟空であった そして驚くべき事に

もう一人も孫悟空であった



だが雰囲気はまるで違う 一人は光に包まれ

どんな邪悪にも立ち向かう意志の強い瞳を

しているのに対し もう一人は邪悪な光に

包まれその瞳は全てを飲み込まんばかりの

禍々しい漆黒の光を放っていた



否邪悪な光に包まれた悟空は悟空ではない

この者こそがピッコロや武天老師達が

密かに恐れていた災厄の使者カカロットで

あった



そして彼の口から放たれた先程の言葉は

一体どう言う意味なのか



二人の不吉なやりとりは尚も続く



   【奴等の絶望を堪える顔は見物だったぞ

この俺様をすっかり貴様と勘違いしてやがった

本当に馬鹿な奴等よ 三年前からこの身体を

支配していたのは俺だと言う事にも気付かな

かったのだからな!!】



   「おめぇが邪魔しなけりゃオラは

とっくに警察に自首して罪を償うつもり

だったんだぞ!! それなのにおめぇは

いってぇ何が望みなんだ!!」



   【何が望みだと? 今更何を言う

そんな事決まっているではないか この宇宙

全てを死と退廃の恐怖に包み込み銀河全てを

破壊するのよ!!】



   「そんな事させねぇ!! 彼奴等の

幸せはオラが絶対守ってみせる!!」



これはなんと言う恐ろしい会話なのだろうか

あぁあぁあぁあ!! この会話が本当なら

この会話が真実ならピッコロのベジータの

ブルマの武天老師の彼等の涙は決意は一体

何だったのだろうか



そう そうなのだ 孫悟空は己の罪を

理解していなかった訳ではない それ処か

全ての罪を一身に引き受けて自首する

つもりだったのだ



それが証拠に先程の言葉のように彼の瞳には

確かな力強い理性の光が宿っている



だがそれなら何故こんな事になってしまった

のだろうか



   【今更どう足掻いても無駄さ 

もう貴様にもわかってるだろう孫悟空よ

貴様は俺の存在を知った時に直ぐ俺を

消すべきだったんだ だが下手な情けをかけて

俺を消さなかった事が貴様の敗因だ・・

俺はベジータやピッコロとは違う俺は絶対に

改心等しない何故なら俺は貴様とは真逆の

存在なのだからな!!】



確かに奴等の考えは明確に的を得ている

本来の自分を隠したままでは何れ精神の

成長は止まり壊れてしまうだろう



だが何事にも例外は存在するそれが俺達だ



貴様は嘗てアクナマイト光線を受けても

何も変わらなかった 今の奴等はそれを

貴様が精神異常者だからと思っているだろう



だがそうではない 貴様は光なのだ 

どんな絶望にも負けず全ての命を背負い

皆を導く存在それが貴様だ



貴様は命の尊さを誰よりも知っている

どんなものにでも心を開きそして笑顔で

受け入れる事の出来る貴様は神龍から聞いて

ドラゴンボールの変調に気が付いていた



故に貴様はナメック星に向かう宇宙船の中で

決めていた



ドラゴンボールを使うのはもうこれで最後に

しようと どんなに辛く哀しい別れが

待ち受けていようともそれを受け入れて

希望を持って生きていこうと 全く信じられ

ないくらいの善人だよ貴様は



過去の様々な歴史を見ればわかるように

聖人君子と言う者は確かに存在する



そのような者は存在そのものが正義であり光だ



   【だがな孫悟空よ弁えていたか?

光が強ければ強い程闇は濃くなるのだ】



   「ぐそっ身体がっ」



   【最早その身体は貴様の自由には

動くまい だがそれも当然の事よ今や貴様は

異分子として排除されつつあるのだからな】



   「オラは偽物なんかじゃねぇ!!

この身体はオラのもんだ!!」



此処は二人の身体の精神の中つまり精神の

強さがその勝敗を決める



そして黒い影災厄の使者カカロットに

抵抗しようとする孫悟空の光は今にも

消えそうな程にか細くなっていく



一体二人の間でどんな戦いが繰り広げられて

きたというのだろうか



   【確かに貴様は主人格たるに相応しい

精神の強さと光を持っている だがそれでも

俺という人格がいる時点で貴様の敗けは

決まっていたのだ それが証拠に未来の

ブルマが作りトランクスが持ってきた薬は

貴様を排除すべき対象者として選んだ】



貴様は以前から自分の中に己とは違う

もう一人の自分が居る事に気が付いていた



そしてそれがどれ程危険な存在なのかも

無意識の内に気が付いていた筈だ



だが心優しい貴様は俺を排除しようとはせずに

心の奥底に封じ込めていた



確かに貴様が負の感情を欠片も持たない以上

そのままだったら俺は何れ力を失い消えて

いたかもしれん



だが俺達にとって予想外の事が起きた

そうだろう



そうその予想外の事とはナメック星での

フリーザとの戦いによるスーパーサイヤ人

への変貌だ



スーパーサイヤ人とは普段よりも己の

凶暴な面が強調される ましてや初めて

変身したのなら尚更だ



貴様はあの時仲間達に言ったな俺が俺で

あるうちに早く逃げろと



スーパーサイヤ人とは純粋な心を持ちながらも

強い感情によって変身する



あの時貴様の中にあったのはフリーザに対する

明確な怒りと憎しみ凄まじいまでの殺意

その狂暴な程の負の感情が貴様の精神を

支配した



その今まで持った事の無い激しい負の感情が

眠っていた俺の覚醒を一気に促してしまった

そして俺達は入れ替わった



それに気がついた貴様は余程焦った事だろう

そして今更ながらに自分の見通しが甘かった

事に後悔した



先程も言ったように俺達は真逆の存在

俺は絶対に改心等しないし情に流される

事もない



そして闇というものは光が強ければ強い程

その力を大きくしていく



そして今やその力は貴様程度では止められん



   【しかしベジータも随分と腑抜けに

なったものよ 力などに支配されず人間を

愛し守るだと? クハハハハハハハ!!

これは傑作だっ よもやサイヤ人の王子たる

者が蚊トンボのような人間と同じレベルに

成り下がるとはなっ 神の言葉を聞いて

笑いを堪えるのに苦労したぞ フハハハ

ハハハハハハハ!!】



   「何が可笑しい!! 人を愛する事が

そんなに可笑しい事かよ!!」



   【愛しているさ俺だって人間を

愛しているとも・・・腸を喰い破って

ぶちまけてやりたいくらいになあ!!

クハハハハハ!!】



   「てめぇって野郎はぁあああ!!

許さねぇ絶対に許さねぇぞ!!」



   【これが笑わずにいられるかよ

しかももう直ぐその幸せをそれ以上の

哀しみと絶望に変えられるかと思うと

益々笑いが止まらんわ!! なぁ孫悟空よ

滑稽だとは思わんか 漸く再会出来た家族が

その目の前でその命を絶たれたらその時奴等は

どんな命の輝きを見せてくれるだろうなぁ

それが今から楽しみでたまらんぜヒャハハ

ハハハハ!!】



   「そうはさせねぇ!! 例えオラの

存在と引き換えにしてでもてめぇはこの場で

倒す!! それが世界中を混乱に陥れ

ヤムチャの幸せを奪ったオラに出来る

唯一の償いだ!!」

ゴゥウォオオオオオオ!! ブワァアア

アアアアア!!



   【ほぅ・・未だこれ程の力が残って

いたとはな驚きだ】



   「てめぇは刺し違えてでもオラが倒す

オラと一緒に道連れだぁああああ!!」

シュバァアアアアアアア!!



カカロットの許されざる悪行に孫悟空の全身が

凄まじいまでの光を放出する それは

孫悟空の命の炎





全てを愛し全てを受け入れる残酷なまでの

善人である孫悟空の最後の命の灯火



   「(ヤムチャ・・おめぇには何て

謝ったら良いのか言葉も浮かばねぇ・・

でももう何を言ってもおせぇよな本当に

すまなかった・・でもようこんな情けねぇ

オラだけど・・でもよオラにとっては

おめぇは初めて出来た友達だったんだ

・・だからおめぇの幸せはオラか守ってやる)

オラのダチは殺させねぇ!! ヤムチャの

幸せをてめぇなんかにゃ壊させねぇぞ

ぉおおおお!!」



   【・・・・・フン】



悟空の脳裏にこれまでの様々な思い出が甦る



多くの仲間達に出会った 罪深い己には

勿体ないくらい幸せな日々だった



多くのものを奪ってきた自分だがそれでも

せめて最後くらいは仲間の為に消えていこう



仲間の為に愛する家族の為にそして全ての命を

育んでくれた地球の為に孫悟空は己の命を

燃やしカカロット諸とも消え去ろうとしていた



暗闇に包まれていた辺りの空間が光に

包まれ始める それ程の光の奔流を受ければ

如何なカカロットとはいえ無事では済まない

だろう



だが彼はこの期に及んでも不敵な笑みを崩さず

この場には似つかわしくない余りにも

意外な言葉を口走った



   【クククク・・・ヤードラット星

・・瞬間移動・・覚えているか?】



   「何?・・・てめぇ突然何を?」



   【何をって俺達が瞬間移動を身に付けた

星の事さ・・さてここで質問だ 俺は一体

誰から瞬間移動を教わったでしょうか】



   「誰ってヤードラット星人だろうが」



   【残念でした まぁ尤も貴様の意識は

その時既に俺の精神の奥深くで身体を

取り戻そうと必死だったから知らない

だろうがな】



   「おめぇ・・一体何が言いてぇんだ?」



   【未だわからないか? ならヒントを

教えてやろう 奴等は確かに多種多彩な能力を

持つが瞬間移動なんて高度な技術は知らない

・・それ程の高度な能力を持っているのは

宇宙広しと云えども二つの種族しかない】



   ゴクリ

   「二つの種族・・それは一体」




   【一つはフリーザ達の種族・・

そしてもう一つは・・・ナメック星人さ】



   「何っ!? そりゃ一体どう言う

事だ!!」



カカロットの口から飛び出した余りにも

意外な言葉に孫悟空は愕然とした表情になる



そんな悟空に嘲るような視線を向けながら

カカロットは尚も言葉を続ける



   【俺は其処で宇宙船の修理の為に

その星を訪れていた二人の男と出会った

仲間意識なんぞ持たない俺達だが不思議と

ウマが合ってな まぁその二人がどうして

知り合ったのかは知らんし俺も知るつもりも

ないが恐らくは俺と同じ理由だろうさ

それに三人の目的も一致していたから

協力する事にしたのさ・・全宇宙に蠢く

虫けら共を殺し全てを支配すると言う

目的の為にな!!】



   「三人だと!? なら後の一人は

一体誰だ!?」



   【そのナメック星人は瞬間移動の技術は

身につけていたが相性の都合で使えなかった

らしくてな それで適正の合った俺が

譲り受けたという訳さ】



   「良いからオラの質問に答えろ!!

そのナメック星人は誰だ!! もう一人の

男ってのは一体誰だ!!」



   【クククそんなに知りたいなら

教えてやろうなぁ兄弟よ】



   ボヤァアアア

   【クハハハハハ!! 随分と派手に

やっているようだなカカロットよ!!

  クククク暴れるのは構わんが俺達の分も

残しておいてくれよ】



   「何だと!?・・ピッコロ?・・

それにおめぇは・・おめぇは・・・まさか

・・・まさか・・・そんな筈は・・だって

あの星の生き残りはもうオラとベジータだけの

筈だ・・おめぇは・・おめぇ等は一体誰だ!!」



孫悟空の絶叫に応えるようにカカロットが

背後の空間にチラリと視線を向けると

其処に二人の人影が現れカカロットには

親しげな視線を孫悟空には嘲りの視線を向ける



そしてそれを見た孫悟空は今度こそ絶句した



何故なら悟空はその二人の事を誰よりも

知っていたからだ





   【どうだ驚いたか? 例え遠く

離れていても波長が合えばこのくらい簡単

なのさ これもそのナメック星人のお陰さ】



   【フフフフフ】



   【ククククク】



一人は緑色の皮膚に頭から飛び出た二本の触覚

それはまさにナメック星人に他ならなかった



そしてもう一人ある意味悟空にとっては

此方の人物の方が驚きであった



逆立った黄色の髪の毛にその圧倒的な存在感

それは正しく超サイヤ人に他ならなかった



何よりもその顔その顔を見ていると悟空の

記憶が刺激される



あれは己が未だ産まれたての赤ん坊だった頃

その時に自分と目の前の男は出会っては

いなかっただろうか



そんな悟空の表情が面白いのかその人物は

カカロット同様に不適な笑みを浮かべて

悟空に軽口を叩く




   【どうした俺の顔がそんなに珍しいか】



   「おめぇは・・おめぇは一体誰だ!!

サイヤ人の生き残りはもうオラとベジータ

だけの筈だ!!」



   【貴様がそれを知る必要はない

もう消える貴様に語る必要もなかろう

なぁあ孫悟空よ!!】



   【貴様は我等の計画にとって一番

邪魔な存在だ】



   【この場で完全に消え去るがいい

孫悟空!!】


   ググゥウウォオオオオオ!!


   「ぢぐしょおおおお!! うが

ぁあああああああああ!!」



   【消え行く貴様に餞別代わりに

教えてやろう こいつらは今地球に向かって

いる・・到着は凡そ一年後だ】



   「何だと!?」



   【俺が教えた瞬間移動で直ぐに

地球に行く事も出来るがそれでは楽しみが

ないからなぁ そんな訳で俺達は付近の

星々を破壊しながらゆっくりと地球に

向かっている最中さ そうそうもう一つ

言わせて貰えば二年前そいつがナメック星に

跳んだのも俺の助言さ・・地球のドラゴン

ボールを消す為とナメック星との繋がりを

絶つ為にな 同じナメック星人だ奴等の

考えは良くわかる】



   「それじゃあ!? あの時ナメック星に

デンデを迎えに行ったのは!?」



  【そうさ最初からデンデを運ぶつもりは

なかった 全ては俺達のシナリオ通りさ

おまけに貴様の無能さを演出する事も出来た】



   「畜生!!」



   【地球に着いたら真っ先にお前の家族を

皆殺しにしてやるよ なぁ孫悟空よ嘸や

嬉しかろう もう直ぐあの世で再会出来るん

だからな】



   「てめぇらはぁあああ!! 止めろ

ぉおおおお!! そんな事させねぇぞ!!

うがぁああああああ!!」    



もう話す事はないと言わんばかりに新たに

現れた二人の精神と同調する事によって

威力を増したカカロットの精神波が悟空を襲う



その闇の奔流に必死に耐えようとする

悟空であったが薬の影響で今にも消えようと

しているその身体では耐えられる筈もなく

彼は奮闘虚しく闇の奔流に飲み込まれていく



   「ぐぞぉお・・駄目だ・・もう

身体が動かねぇ・・済まねぇ済まねぇ

・・

〔ポタリポタリ〕・・何も出来なくて本当に

済まねぇ」



悟空の脳裏に今一度様々な思い出が甦る



仲間達に家族に非難され罵倒される事など

己はちっとも悲しくはない



全ては自分自身が蒔いた種だ罪深い己は

喜んで地獄に堕ちて逝こう



それでもそれでも己は皆が大好きだった

太陽が星の輝きが命を育んでくれた地球の

暖かさが大好きだった



そんな全ての命を守りたかった 何時までも

何時までも愛し続けていたかった



なのにそれすら出来ない己が憎らしい程に

情けない



どうか皆には何時までも幸せで在り続けていて

ほしい 何時までも笑顔で在り続けて

いてほしい



己の身体が消えていく この世から跡形もなく

消えてゆく



   シュウウウ

   「ヤムチャ幸せになれよ 最後まで

精一杯生きるんだぞ・・誰か誰でも良い

・・・こいつを殺してくれ・・・ピッコロ

頼む・・・オラを・・・・オラを・・・・

・・・オラを・・・・・・殺してく・・・

・・・・・・・れ」

   ウウウウゥゥゥ



そして最後まで仲間の幸せを望みながら

一人孤独な戦いを続けた正義と光を背負った

男は誰にも看取られる事無くこの世から

消え去った



悟空が消えた空間ではカカロット達の

狂笑が辺り一帯に響き渡っていた



   【ヒャハハハハ!! 消えたぞ

孫悟空の意識は完全に消えやがったっ

これでこの身体は俺様のものだ!! 

アァアッハハハハハハハハハハハハハハ!!】



   【クククク これで我等が最も

恐れていた一番の邪魔者は消えたな】



   【それにしても救いようのない

愚かな連中だ ほんの少しの切っ掛けを

与えただけで疑心暗鬼に陥って最後まで

自分達を守ってくれた男を見捨てちまうん

だからな】



   【ククク 伊達に何十年も彼奴と一緒に

過ごした訳じゃないからな彼奴になりきるなど

簡単な事さ・・兎に角お前等が来る後一年の

間は俺は今暫く孫悟空を装う事にする】



   【うむ では一年後に会おう】



   【ベジータは俺が殺る 楽しみは

残しておいてくれよ】


   ボワァアアアア



そして一年後の再会を約束し二つの禍々しい

気配も空間から消えていった



それと同時にカカロットの身体も薄靄に

包まれ始めてゆく



   【どうやら目覚めの時のようだな

クククク 彼奴等が来るまで只待っているのも

暇だからな折角だから少し遊んでやるか】



何を思いついたのか楽しそうに笑うその言葉を

最後にその空間からは誰も居なくなった



  ・・そして目覚めの時が訪れる・・



・・・・・・・・

  ・・・・・・・・






   「くかか・・はは・・・ふはは

・・・良い目覚めだ」



  ・・その男は長き眠りから目覚めた・・



   「最っ高だぜ!! くはははははは!!」



  ・・そしてそれをその男は家の外から

確と見ていた・・



ピッコロ「・・・(遂に目覚めたのか

奴の抑圧されていたサイヤ人の本性が・・

どうする今この場で殺るべきか)・・」



  ・・ピッコロの瞳が見据える先に映るのは

果たして誰なのか・・



  ・・ピッコロの瞳が鋭く光る・・



  ・・今直ぐにでも部屋に飛び込び込まんと

身構える・・



  ・・しかしそうはならなかった・・



孫悟空「うぅうっ・・ぐうっ」



ピッコロ「ふぅ・・・(どうやら気を失った

ようだな・・兎に角この事を一刻も早く

皆に伝えなければ)・・」



薬の効果が残っていたのか 或いは体力の

消耗からか孫悟空は気を失ってしまった



それを確認したピッコロはこの事実を

仲間達に伝える為にその場を後にする



   「(行くなピッコロっオラを・・

殺し・・早く!!)」



ピッコロ「孫!? 今の思念は孫か!?」

ガバァアア!!



だがその時ピッコロの脳裏に悟空の声と

思わしき思念が聞こえてきた



その余りにも切羽詰った今にも消え入りそうな

意味深な思念にピッコロは驚愕の表情で

窓を覗き込む



その声から感じる波動は正しく己が目標とし

背中を預けるに相応しかった孫悟空の

暖かさだったからだ



ピッコロ「むぅ・・・息苦しそうに眠っている

だけだ・・どういう事だ?」



しかし窓から覗き込んだ孫悟空は先程と

同じように息苦しそうに眠っているだけで

起きた雰囲気はなかった



それでもその様子を暫し眺めていたピッコロで

あったが軈て己の中で結論を出す



ピッコロ「ふむ・・どうやら寝言を思念と

勘違いしたようだな・・兎に角今は仲間に

伝える事が先決だ」



些か後ろ髪を引かれながらもピッコロは

今度こそ後ろを振り返る事なくその場を

後にした



そうその場をにしてしまった しかし彼が

もう少し注意深く中の様子を伺っていれば

或いはこの先の悲劇は防げたかもしれない



彼が立ち去った後悟空の口が弱々しく

言葉を発っしていた



孫悟空「済まねぇ・・済まねぇ・・・・

みん・・・な・・・生きて・・・くれ

・・・・・・カハハハハ・・ククククク

・・・間抜けが最後のチャンスを自ら

不意にしやがった」



次の瞬間孫悟空・・否カカロットは力強く

目を見開き歓喜に身体を震わせる



   「全く孫悟空の野郎っ 最後の最後まで

しぶとい野郎だったぜ だがこれで完全に

彼奴の意識は消えた最早俺を止められる者は

誰も居ない・・ヒャハハハハハハ!!

漸く始まるぜ最高のパーティーが!!」



  ・・そして次の瞬間 災厄の使者は

その場から忽然と姿を消していた・・



  ・・遂に完全なる目覚めを果たした

災厄の使者カカロット・・



  ・・その魔手が今まさに動き出そうと

していた・・



  ・・そして意識の中でカカロットに

語り掛けた声は一体誰だったのか・・



  ・・全ては一年後の運命の終着点の日・・



  ・・即ち南の都で明らかになるだろう・・















つまりはこれまでの孫悟空の余りにも子供っぽい

可笑しな言動はこう言う事だったんです



通常のバージョンでの孫悟空は間違いなく

孫悟空本人ですがここでもやはり

カカロットの暗躍があります



真相は第1部のエピローグで明らかになります



第1部の後半の流れは変わりませんが第1部のエピローグと

第2部の展開が大きく変わってきます



カカロットを含めた3人の敵も変わってきます 

殆んど答えに近いヒントですが 暗躍バージョンでは

緑の野菜の人ですが通常バージョンでは神精樹の人に

変わります(勿論設定もオリジナルのものとなります)



それでは第1部後半でお会いしましょう



後書き

ここで謎の一端が明らかになりました


やっぱり悟空はまごうことなきヒーローだった訳です


そしてカカロットを含めた謎の三人組の怪しげな会話の中に総ての謎を解くヒントが隠されています


次回からは第一部後半戦の始まりです


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2015-05-09 16:03:33

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