提督「裏切られても、信じたかった」
提督さんは裏切られました。
これより、艦隊の指揮を放棄します。
少将「...久しいな、大佐」
大佐「えぇ。何年ぶりでしょうか」
少将「もう二年になる。あの時から、大忙しだったものでな」
大佐「お察しします。大規模作戦の失敗は事後処理が大変ですから」
少将「本当にその通りだ。...前線の基地が潰れたとなれば、さらに書類が回ってくる」
大佐「要するに、面倒くさがりの中将から書類を押し付けられたわけですね」
少将「そうかもしれん。ただ、こうして料亭の美味いご飯が食えるならそれで良い」
大佐「...では、今日ここに呼んだのは料亭で楽しく食事でもするためですか?」
少将「まさか。ただの食事なら、中華料理店に行くさ」
少将「...本題に移ろう」
大佐「はい。できれば手短にお願いします」
少将「分かっている。...では、単刀直入に言わせてもらう」
少将「大佐。君には、もう一度提督として艦隊を指揮してほしい」
大佐「...少将。貴方の頼みといえど、それだけは難しいお願いだ」
少将「...」
大佐「貴方も理解しているでしょう。私は艦娘を嫌悪している。そんな人間が提督なんて、一日も持ちません」
少将「理解はしている。だが、この件は私ではなく元帥閣下からのご命令でな」
大佐「...」
少将「大佐も知っての通り、深海棲艦は日に日に勢力を拡大している。優秀な指揮官を放っておくほど、余裕はない」
少将「この国を守るには、大佐の力が必要だ」
大佐「私の力が、ですか」
少将「あぁ。元帥閣下も、そう仰っていた」
大佐「...逆らえば極刑は免れないでしょうね」
少将「だろうな。いままでの事例から見れば、命令に背くことは極刑以外有り得ない」
大佐「...酷い話だ」
少将「仕方あるまい。それが我々、軍人だ」
大佐「...」
大佐「軍人なんて、目指さなければよかった」
少将「もう遅い。...あぁ、秘書艦の件については心配しなくて良い」
大佐「...もしかして、彼女が?」
少将「そうだ。あちらに着いた後は彼女を頼ってくれ」
少将「...時間だ、大佐。既に送りの車は手配してある」
大佐「はっ。これにて失礼します」
大佐「...あとで、物資の手配をお願いしますよ」スッ...スタスタ
少将「たんまりと送ってやるさ」モグモグ
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大佐「...」
運転手「大佐、空港に着きました」
大佐「有難う。...あぁ、そうだ。少将に伝言をお願いしたいんだが」
運転手「はい、なんでしょう?」
大佐「いつか高級中華をご馳走になりますので、覚悟しておいて下さいと」
運転手「...中華、昔からお好きですね」
大佐「あぁ。特に麻婆豆腐がな」
運転手「少将の行きつけなら、いつでも連れて行ってもらえるはずですよ」
大佐「それでも良いが..」
大佐「少将、激辛の店ばかり選ぶんだ」
運転手「あの人、結構激辛好きですからね...」
運転手「分かりました。きっちり伝えておきます」
大佐「...頼んだぞ」
運転手「おまかせを。...では、これで失礼します」
大佐「本当に、激辛だけは勘弁だ」
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大佐「...」ペラッ
大佐「...元帥閣下、何を考えているんだ」
大佐「まだ他の鎮守府なら良いものを、よりによって佐世保とは」
大佐「しかも配属されている艦娘も昔と同じ...」
大佐「...」
大佐「辞めよう。考えるだけで嫌になる」
大佐「あぁ、本当に嫌になる」
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「ねぇ、新しい提督が着任するってほんとかな?」
「確か今日だったはずだよ」
「どんな人だろうね?」
「きっと良い人さ。前任の司令官みたく、優しくしてくれる」
榛名「皆さん、そろそろ提督が鎮守府に着く時刻です」
北上「じゃ、予定通り迎えいくよー」スタスタ...
榛名「お願いします。では、提督が来るまで待機しましょう」
「...」
「みんな、提督に会ったら驚くだろうねぇ」
「まさか自分たちが虐げてた人間が戻ってくるとは思ってないだろうし」
「ま、あたしには関係ないからいいかな」
「...待ってるよ、提督」
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大佐「...ここか」
大佐「変わらないレンガの外壁、見慣れた建物」
大佐「何も、変わってない」
「...でも、提督は変わったでしょ?」
大佐「...」
大佐「人は変わるものだ。それはお前が一番分かっているんじゃないか?」
大佐「なぁ、北上」
北上「ありゃりゃ、バレちゃったか」
大佐「そりゃあ分かる。わざわざ声を掛けてくるとは思わなかったが」
大佐「...少将から話は聞いてるのか」
北上「聞いてるよー。提督、また佐世保に戻るからーって」
大佐「...」
北上「その様子だと渋々って感じ?」
大佐「当たり前だ。好き好んで艦娘とコミュニケーションなんて取りたくないからな」
大佐「...数時間前、元帥閣下からの書簡を受け取った。それで提督に復帰したんだよ」
北上「やっぱりね。提督、いまもすっごい嫌そうだし」
大佐「...顔には出てないはずだが」
北上「見た目無表情でも、目が鋭すぎるからさー」
大佐「...」
北上「ま、とりあえず鎮守府に行こっか」
大佐「...あぁ」
北上「今夜は楽しくなりそうだねぇ」
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北上「連れてきたよー」
榛名「ありがとうございます。...それで、提督はどちらに?」
北上「廊下で待ってるんだってさー。会議室の扉はあたしが開けるから」
榛名「分かりました」
榛名「...なんだか、絡みにくい方ですね」
北上「そうかな?...まぁ、会えばわかるんじゃない?」
榛名「そうですね。既にほかの方々は揃っていますし、始めましょうか」
榛名「... まず、 着任の挨拶から行いましょう」
榛名「北上さん」
北上「...」
榛名「北上さん?」
北上「...はぁ」
北上「...ていとくぅー、やっぱり面倒だから自分で開けちゃってよー」
「...仕方あるまい」
「全く、相変わらずここの扉は開きづらいな」ガチャ
榛名「...っ」
榛名「...北上さん、これは何かの間違いですか」
北上「ん、違うけど?」
榛名「...」
榛名「書類には、他の提督のことが書かれて...」
北上「あー、それ全部嘘。だってあの人が着任するってわかったら逃げるつもりだったでしょ?」
北上「ほかのみんなもさー、知ってたら逃げてたんじゃない?」
北上「ね、大井っち?」チラッ
大井「それは...」
北上「全員さ、提督にしたことから目を背けたくなっちゃうんでしょ?」
北上「でも、それって許されないことだよねー。散々提督のことを罵倒して、怪我させたんだから」
北上「そうでしょ?榛名さん」
榛名「...」
北上「榛名さん以外のひとも全員そうだから。自分のしたことから逃げられると思ったら大間違い」
北上「如何に許されない行為をしたか、振り返ってみたら?」
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彼女ら艦娘が、一体何をしたのか。
なぜ、北上だけが反論できるのか。
それには、過去を遡る必要がある。
全て本当で、事実。
艦娘たちがしたことを、許すなんてありえない。
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二年前 / 大佐 ( 提督表記 )
提督「...佐世保鎮守府」
提督「前任が事故で大怪我を負ったことで私が転属になった訳だが、いまいち理由がわからん」
提督「...」
提督「いや、今はどうでも良いことか」
提督「小さな泊地を任されていた私が、佐世保の鎮守府を任される」
提督「これだけで大出世なんだから、たとえ後釜でも構わん」
提督「さて、行くとするか 」
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提督「...」
提督「誰もいない、のか」
提督「提督が新しく着任するまでは出撃や遠征も無い...という話だったが」
提督「...」
提督「とりあえず、執務室に向かおう」
提督「道中艦娘に会えば好都合、この鎮守府の案内も任せられる」
提督「居なかったとしても、着任挨拶の後で誰かに案内してもらえれば問題は無い」
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提督「誰とも会わず執務室に着いてしまったな...」
提督「これじゃ道案内すら頼めない」
提督「...まぁ、案内は後でしてもらうとして」
提督「まずは執務室の掃除から、だな」
提督「...」
提督「こんな埃まみれの部屋じゃ、執務すらできん」
提督「...机に積もった埃」
提督「前任は執務室を使っていなかったのか?」
提督「彼が怪我を負ったのは数週間前、さすがにこの短期間で埃が積もるなんて」
提督「それに所属している艦娘ならば掃除もするはず...」
提督「...」
提督「なにか、おかしい」
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提督「...掃除用具を借りに来たのはいいものの、人気がない」
提督「鎮守府の敷地内に設置されたグラウンド、本当に使われているのか?」
提督「...」
提督「違う、な」
提督「今はそれを気にするよりも、掃除するために道具を取らなければ」
提督「多分、倉庫か何かに雑巾やらバケツやら入っているはず」
提督「...ひとりで部屋を掃除するのは、少し骨が折れてしまうな」
提督「こういう時に秘書艦の存在が大きいわけか」
提督「...身に染みてわかる」
提督「前の泊地じゃ、彼女たちに助けられてばかりだったもんな」
提督「本当に、数日前が懐かしく思う」
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提督「...倉庫から雑巾とバケツを取ったは良いが、肝心の水場が分からん」
提督「...」
提督「困ったな」
提督「誰かに聞こうにも、人っ子一人いないわけだし」
提督「...」
「...目付き悪いけど、人柄は良さそう」
「大井っちには絡むなって言われたけど、別にアタシがそれを守り通すとは明言してないから」
「提督と絡むくらい、北上様の勝手でしょー」
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提督「...水場、何処にあるのか」
提督「探し回るよりも誰かに聞いた方が良いのは確かだが...」
「ん、なにかお困り?」
提督「...あぁ、水場を探していてな」
提督「執務室を掃除するため、こうしてバケツを持っているわけなんだ」
「ほー。じゃあ、アタシが案内してあげるよ」
提督「助かる。ちょうど、案内人を探していたところだったんだ」
提督「ありがとう、北上」
北上「別に気にしないでいいよー。案内くらい、いつでもできるし」
北上「それに暇だったから、ちょうど良い暇つぶしになるしー」
「...北上、さん?」
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提督「案内に次いで用具運びまで任せてしまったな」
北上「いいっていいって。バケツは重いだろうし、分担した方が良いでしょ?」
提督「...ありがとう」
提督「やっぱり、分担すると楽になるな」
北上「まーねー。でも重いものは持てないよ」
提督「分かっている。重いものくらい男が持つさ」
「...声」
「それも北上さんと会話してる、男の」
「...」
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提督「...やっと執務室、か」
提督「鎮守府ともなれば廊下も長いし、グラウンドから一苦労だ」
北上「だねー。...じゃ、早く掃除終わらせちゃおー」
提督「そうだな。すぐにでもそうしたいところだが...」
大井「...」
提督「どうやら、彼女は私に用があるみたいでな」
提督「...」
提督「君が、大井だな」
大井「...」
提督「...返答がないと、私としても困るんだが」
提督「大井、黙っていても何がしたいか分からない」
提督「口ではっきり、言ってくれないか」
提督「挨拶が遅れたことに腹が立っているなら────」
大井「そんなこと、どうでもいい」
大井「早く北上さんから離れろ、この下等種族めが」
提督「かっ...」
提督「大井、初対面早々その言葉は無いんじゃないか」
提督「もっとこう、普通の挨拶を...」
大井「黙れ。汚い口を開く前に、まず北上さんから離れなさい」
提督「...」
提督「もし、無理だと言ったら?」
大井「...」
大井「その時は、決まってる」
「邪魔者を始末する、ただそれだけよ」
期待。しでかした罪と報いを丁寧に描けば書くほどpv数増えそうな小説
後は艦娘の数次第
いいゾ~これ。こういうの大好き
1コメの方
ありがとうございます。私もまだまだ未熟者故、これからも丁寧に書けるよう意識していきたいなと。
艦娘は少なすぎてもあれですし、多すぎても把握しきれない...。既に執筆予定の艦娘がいるので、その娘たちを書いた後に決めたいと思います。
2コメの方
ありがとナス。お時間があれば、また読んでくださると。
更新はちょくちょく、遅すぎないよう気をつけますので。
提督対して虐待した後に平和ボケした屑艦娘か。貴様らは永遠の苦しみを味わえ。ブラックなっても問題無し
4コメの方
ブラック要素は後ほど。これからも閲覧してくださると嬉しいです。
さあ、早く過去を明らかにするのです。
楽しみにしているのです。
過去編書いている時って楽しい
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6コメのかた
わかる。でも書くの難しいよね。
無理せず毎分更新して
9コメの方
努力します
自身が苦しい目に合った、地獄を体験したからと言ってそれを何の罪も無い赤の他人、提督に強要したり暴力するのは最低の行い。艦娘だとか兵器だとかそれ以前の問題、皆苦しいのに自分だけが苦しいと粋がっているクソガキの独り善がりな主張に過ぎない。
虐待を受けた子供がいざ親になると同じ仕打ちを自分の子供にしてしまうようなもんですかね...。両者に共通して言えるのは酷く知能が低い事と感情的になる事。
また完結もせずに逃げ出した作品かと思ったら最近のやつか。
期待してます。
11コメのかた
気づいた時には、もう遅いってやつですかね
12コメのかた
失踪しそうでした。期待を裏切らぬよう、努力します
頑張って下さい
更新楽しみにしてます
まだ?
はよ!続きはよ!
こういう話大好きです。続きまってます。
続きまってます
待ってるよ...マッテルンダ...!!!
続きマダー?
出だしは凄くいい
話広げるここが一番難しいのも分かる いつまでも待ってるぞ
ゆっくりでいい、必ず完結してほしい。あなたのssが好きだから
あこれ廃れたやつや
お、そうだな
やる気ないならやめろや
続きまだー?