三人の提督(執務提督編)
遥か昔の有名な三人のおじさんとは関係ないです。執務専門の提督と龍鳳と時々プリンツのお話。
*設定改変注意
*ちょいちょい崩壊するキャラ
*史実ネタはありますが史実要素はほとんどないです。
*提督は三人います。それぞれ
作戦指揮担当(指揮提督)
艦隊編成、管理担当(管理提督)
執務担当(執務提督)(今回のメイン)
となります。
追記、執務提督について、まだ10代の超女顔な提督さんです。むしろこの子がヒロインかもしれないです。
[プロローグ ]
建造技術の向上によって、それまで建造困難であった大和型戦艦や海外艦、装甲空母を始めとした艦娘が次々に建造可能となった。
その結果、鎮守府ごとの艦娘の保有数が増加、それまで一般的であった1T1T(1鎮守府1提督)体制では管理が難しくなり、必然として一つの鎮守府に複数の提督が配属される場合が多くなっていった。
この鹿屋鎮守府もご多分に漏れず、1T3T体制を取っている。
これは、そんな鎮守府の日常の記録である。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・まっ、この位でいいですかね。」
私はそうつぶやいて、書類の上にボールペンを置きました。え?万年筆?そんな高価なものを使っている余裕は、私にはないのです。最近のは安いものでも書き味がよいのです。これぞ文明の利器です。
そんなことを考えていたら、コンコンとノックの音が聞こえてきました。
「提督、お昼の用意が出来ました。」
扉を開いたのは、私付きの秘書艦、龍鳳です。我が鎮守府でもぶっちぎりの出撃の少なさで、私も仕事柄(執務全般)極端に外に出ませんので、ニートコンビと揶揄されることもあります。
「今日のお昼はなんですか?」
私は尋ねます。我が鎮守府では、基本的に間宮さんと龍鳳が入れ替わりで厨房に立っています。
「今日は間宮さん特性・・・」
「間宮さん特性?」
「・・・オムライスです!!」
龍鳳はたっぷりと溜めてからそう告げました。ひゃっほう。
「なんと、それは素晴らしいですね。」
実は私、卵料理に目がないのです。特にオムライスは大好物です。
「ええ、とっても美味しそうでしたよ。(喜ぶ提督かわいい・・・)」
龍鳳も心成しか嬉しそうに答えます。
「それでは食堂に急ぎましょう。」
「あっ、ちょっと待ってくださいよ〜」
【1章:間宮食堂にて〜管理提督登場〜】
〜間宮食堂〜
「失礼いたします。」
「は〜い。あら、いらっしゃい、執務提督さん。龍鳳ちゃんお迎えご苦労様。」
間宮食堂ののれんを潜ると、間宮さんが出迎えてくださいました。席に行こうとすると気の抜けた声が、
「ん?執務じゃーん!暫く振りー!調子どう?」
この軽薄そうな人は管理提督です。この通りノリは軽いですがコミュニケーション能力が異常に高く、艦娘同士の友好関係なんかの把握はお手の物なのです。
「こんにちは、管理さん。今日は秘書艦はどうされたんですか?」
基本、ここの提督三人は秘書艦と行動していることが多いので、疑問に思って聞いてみました。
「加賀さん?加賀さんは、というか正規空母部隊はー、最近出撃ばっかだったしー休暇中だよー」
「今頃はショッピングでもいってんじゃないかなー」
休暇ですか、なるほど。そういえば龍鳳にはしばらく休暇を与えていませんね・・・
「お待たせしました。今日のメニューは間宮特製、海老と帆立のホワイトソースオムライスです。」
そんな話をしていたらオムライスが出てきました。ホワイトソースととろとろの黄色い卵が輝きを放っています。
「いただきます」
さっそく一口いただきましょう。・・・中身はバターライスなのですね。ふわりとした塩気が卵とソースの甘さにとても合っています。つまり、とても美味しいです。
「・・・なんですか?」
気付くと管理さんに顔を凝視されていました。しかもなぜかニヤけ顔です。特別いい顔だとも思っていませんが、さすがに失礼だと思います。
「いやー、執務が笑ってんの始めてみたからさ、てか笑えたのお前。つーかクッソ可愛いなオイ」
いつの間にか頬が緩んでいたようです。もう色々と失礼です。最後のはこの際無視するとしても。
「私だって、笑うことくらいありますよ・・・」
不機嫌そうに答えましたが、よく考えると執務室以外で笑ったことがない気がして来ました。そもそも食事と会議以外で執務室から出ないので誰かの前で笑う機会なんてそうありません。
「提督は執務室内ですとこう見えて表情豊かな方なんですよ。」
龍鳳、余計なことを言うのはやめて下さい。管理さんの交流の広さだとどこから漏れるかわからないじゃないですか。そもそもあれは龍鳳だから安心できるのであってですね・・・
「おぉ、こわいこわい。それじゃご馳走様、今日も美味しかったよ、間宮さん。」
私がジト目で睨んでいる内に、管理さんは食べ終わってしまったようです。そしてさらっと感想を言ってしまうあたり驚異的なコミュニケーション能力です。間宮さんも笑顔で、
「お粗末様でした。夕餉も楽しみにしていて下さいね。」
と返します。なんとも健全かつ爽やかな関係でしょうか。ともかく、やっと食べることに集中できます。それでは改めて、いただきます。・・・あ、ダメです。頬が緩んでしまいます。
「ご馳走様でした。」
結局龍鳳にニヤニヤされながら食べることになりました。これは何時ものことなので気にしません。
「お粗末様でした。この後夕餉の仕度があるので、龍鳳ちゃんを少し借りてもいいでしょうか?」
夕飯は二人掛かりですか、間宮さんもさることながらウチの龍鳳も料理の腕はなかなかのもので、これは楽しみです。
「大好物です。」
「大好物?」
食べ物の事を考えていたら変なことを言ってしまいました。
「あ、いえ、大丈夫です・・・あのっ、とても、美味しかったです・・・」
お礼を言うだけでこんなに恥ずかしがるとは、我ながら恩知らずなものです。
「それではっまた夕飯の時間になったら、龍鳳を寄越してくださいっ、失礼しますっ」
思わず早口で逃げてしまいました。あとずっとニヤけてた龍鳳は後でお仕置きです。
【執務室にて】
執務室に戻ると、どうやら誰かいるようです。
「おかえりなさい。Admiralさん。」
そう言って来たのは、この鎮守府唯一の外国艦、Prinz Eugenもといプリンツ・オイゲンです。
「私に用事ですか?」
「特に用事という訳じゃないんだけどね?Admiralさんとお話したいな〜って。」
特に何かした覚えはないのですが、どうも懐かれてしまったようです。
この鎮守府では指揮提督や管理提督に懐く艦娘が多いので、私はこういった事に慣れていないのです。
しかし現時点では、この鎮守府にはドイツ艦は彼女だけなので、とても邪険には出来ないのです。
「・・・書類仕事をしながらでよければ応じましょう。コーヒーくらいは出しますよ。」
「Danke!Admiralさん!!あと出してくれるなら冷た・・・」
「ビールは駄目です。」
「いコーヒーを頂きますね。あははっ、流石にこんな昼からビールは飲みませんよ〜」
どうもわざとらしいです。お酒、ダメ、絶対。もちろんこの執務室には、ビールは置いていません。
コーヒーとは思ったよりも入れるものが多いんですね・・・砂糖とミルクはわかりますが、シロップ?クリープ?知らない子ですね。まあ、入れてしまいましょう。
「どうぞ、冷たいコーヒーですよ。」
私はコーヒーよりも紅茶派なので、コーヒーなんてほとんど淹れたことがないのですが、大丈夫でしょうか。
「Dankeです。それでは頂きま。」
バタリ、その音がした時にはもう遅かったです。目の前には倒れたプリンツ、状況が把握できない私は、ただ立ち尽くすしかなく、時間だけが過ぎました。
「・・・Admiralさん?」
あっ、起きました。
「大丈夫ですか?気分は?」
「大丈夫・・・だけど・・・あれ?私なんで倒れちゃったんでしたっけ?」
味に関して危惧はしていましたが、ここまでの被害になろうとは・・・世の中には知らないほうがいいこともあるのです。私は事実を伏せることにしました。
「このところ遠征が多かったですから、疲れていたのでしょう。」
さしあたって最もらしい事を言って誤魔化しましょう。
「そう?私はまだまだ大丈夫だよ?」
「いえ、自分では大丈夫だと思っていても、疲れはあるのです。気付いた時には手遅れではいけないのです。少し休んではどうでしょう?」
「そうなのですか?それじゃあ、」
「なんでしたら布団を貸しますので此処で寝て貰っても構いませんよ?」
さらにダメ押しです。日本の至宝、フトンの前では眠る以外の選択肢なんて無いに等しいのです。
「!フトンですか!!噂は聞いています。ぜひお願いします!!」
プリンツは布団で寝たことがないのでしょう、効果は抜群です。
「ええ、それでは用意しますので、少し待っていてください。」
そういいつつコーヒー(闇)を回収します。さて、布団を出さないといけませんね。
「お待たせしました。布団ですよ。」
布団を簡単にセッティングしてやります。始めての布団を前にプリンツは目を輝かせています。
「プリンツ、横になっても大丈夫ですよ。」
「え?ああ、うん。それじゃあ少し寝かせて貰うね。」
プリンツは布団に入ると、すぐに目を閉じました。
「Gute Nacht・・・」
適当に言ったことではありますが、実際疲れていたのでしょう、すぐに寝息が聞こえて来ました。プリンツは年齢は私と同じ位だと思いますが、こうして寝顔を見ると、いつもよりも幼く見えます。守りたい、この寝顔。
「さて、」
いつまでも和んでいるわけにも行きません。そう思い書類の山と向き合います。
「おや?」
書類の中のひとつが目に止まりました。その内容は、
【指令:ドイツ国との交流を図るため、彼の国より適合者を召還する。至急ドイツ艦建造準備を整えよ。】
とのことです。遂に我が鎮守府にも2人目のドイツ艦です。プリンツも喜ぶでしょう。そう思いながら、書類にサインをします。何処か喪失感があった気もしましたが、、それは私の持つべき感情ではないと、そう理解しました。
そう...【××××】なんて...
【指揮提督】
鹿屋鎮守府は、数ある鎮守府の中でも辺鄙な位置にあります。鹿児島県は大隅半島、直近では岩川鎮守府がお隣さんに当たります。特攻隊の基地跡などもあり、大戦中はかなり重要な拠点であったようですが、今となっては地方の寂れた街です。
そんな場所ですから、都市部の鎮守府と比べると、そもそも深海棲艦の出現数が少なく、それ故に出撃回数も少なくなりがちです。そんな現状に不満を持つ男が一人。
「つまらん!つまらんぞ!!執務よ、どうにかならんか!!」
そう、指揮提督です。彼の仕事は、出撃時における艦隊指揮及び作戦立案。つまり戦闘のスペシャリストなのですが、あまりにも出撃が少ないため、彼の仕事はここ2週間ほど、「待機」です。特段好戦的ではない指揮提督もこれには痺れを切らし、出撃はできないかと執務室に聞きに来たようです。
「ですから、出撃は大本営からの指令がないと出来ませんと言っているでしょう?」
「そこをなんとかできない?ほんの近海でもいいからさ。この人司令室でもずっと言ってるんだよ?」
彼女は指揮提督の秘書艦、瑞鶴です。この鎮守府に所属している空母のエースで、姉の翔鶴とともに数々の修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の勇士。他の艦娘からの人望も厚く、鎮守府のリーダー的存在です。
彼女のコンディションに支障が出てからでは遅いので、指揮提督のストレスを発散するための解決策を提案してみます。
「出撃はいけませんが・・・特別休暇を認めますので、市街地にでも出て羽を伸ばして来てはいかがでしょう?」
ホワイト鎮守府を目標とするこの鎮守府には、通常の休暇や有給休暇とは別に、特別休暇が存在します。その名の通り、特別な理由がある場合や、誕生日など特別な日に利用できる休暇で、艦娘は、提督2人以上の同意、提督でも取ることが出来、その場合は自分以外の提督1人の同意がそれぞれ必要になります。
「特別休暇はありがたいがのだが・・・ふむ、市街地か、特に行きたい場所もないのだが・・・」
指揮提督は市街地にはあまり興味がない様子。私が内心で焦っていると
「提督、航空母艦、龍鳳ただいま戻りました。」
夕飯の支度を終えたらしく、龍鳳が戻って来ました。私が、今の状況を説明すると、なにやら思いついた様子で、指揮提督に耳打ちを始めました。
しばらくすると、指揮提督は納得した様子でこちらへ向き直ります。
「執務提督よ、特別休暇、ありがたく賜ろう。休暇にあたって貴殿の秘書艦を一日お借りしたいのだが、よろしいか?」
いったいどういうことでしょう。龍鳳を借りたいそうです。個人的には複雑な気持ちですが、執務役としては特に問題はないので
「ええ、構いません。ですが、秘書艦がいないのも困りますので、瑞鶴さんをその日はお借りしても?」
とりあえずは了承。そして瑞鶴さんを借りることにしました。別に龍鳳になにかあったときの人質とか思ってません。そこの空母「げっ」とかいわない。
「ああ、構わんぞ。瑞鶴、いいよな?」
さきほどからなにやら機嫌のいい指揮提督、そんな彼を尻目に
「えっ、うん、いいけど・・・」
少し苦い表情の瑞鶴さん。敬愛する指揮提督にトレードまがいの提案を容認された上に、鎮守府で最も激務と噂されている私の秘書艦という仕事、書類仕事になれていない彼女からすれば、そこはもはや地獄のような場所でしょう。
「それでは、続きは夕食でも摂りながら話しましょうか」
「そうだな。瑞鶴、その前に少し耳を貸せ。」
それにしても、この龍鳳と指揮提督、何を企んでいるのやら。
やっと更新。
次回は、提督からストーカーにジョブチェンジします。
現在鋭意執筆中
4月4日:スタート
4月5日:1章開始
http://kancolle.clu.st
艦これSSまとめwiki様にて同時進行中。私のもの以外にも素晴らしい作品がたくさんありますのでぜひ!!
このSSへのコメント