柊の拠り所
以前、書かせていただきましたSSの続編を期待されている方々がいらっしゃる中
新規SSを投稿致しますが、ご了承下さい。いつか、必ず続きを書き上げる予定です。
また、沢山のご指摘、アドバイスを寄せていただきまして、誠にありがとう御座います。
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ピーン、ポーン……
百夜優一郎(以下、優と表記します)「ん、ふあぁ……朝早くに誰だよ……?」……むくっ
気だるい寝起きの身体を起こしながら、寝床の近辺に置いてある、目覚まし時計を目視で確認する。
優「……まだ7時か。今日、なんかあったかな。でも、与一は昨日何も言ってなかったし……」
ピーン、ポーン……
優「あ、まず……出んの忘れてた。」
ドタドタ……ガチャ
??「優さん、遅いですよ。可憐で美少女の私が……」
優「ん、あれ?シノアか、どうした?」
柊シノア(以下、シノアと表記します)「釣れない返事ですねぇ……まぁ、優さんですし……」
優「いや、お前。乗ったらすぐからかう癖あるじゃん。で、なんかあったの?」
シノア「ああ、はい。……本日の演習が延期になりました。代わりに10時予定で、グレン中佐が私達に鬼呪装備の新たな使い方を教授してくれるそうです。」
優「え、ようやくグレンが教えてくれる気になったのか! 今度こそ、強くなって見返してやる!」
シノア「優さん、目的が変わってますよ? 先ほど、各隊の部隊長あてにそれぞれの予定を隊員達に伝えるよう、伝達がありましたのでこちらに来たんです。」
優「そっか。朝早いのに、ありがとな。」
くしゃくしゃ…
優さんは、当たり前のように私の頭を撫でて。その瞬間、幸福感のようなものが彼の手を通して、心に伝わって来ました。
シノア「……、……」//
優「シノア? ……おーい。」ずいっ
シノア「! きゃっ」ぱっ
優さんの顔が随分近くに迫った辺りで、私は小さく声を上げて離れました。
優「ぼっーとしてるなんて、シノアらしくないな。体調でも悪いのか?」
シノア「あ、その、そういう訳じゃないんですが、ちょっと今日のことについててですね……」
優「んー、そうだ。まだ、集合時間には時間あるし、上がって飯食べてけよ!」
シノア「え、でも……」
優「飯食べれば元気出るって!ちょっと前だけど、君月に作り方習ったし、味は保証するぜ!」
シノア「……いいんですか?それじゃ、上がらせて貰いますね。」
優「家族なんだから、遠慮すんなって!」ニコっ
シノア「っ……そういうとこ卑怯ですよ、優さん……」ぼそっ
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優さんの家に入って、リビングまで歩いて高めのテーブルにたどり着いたとこで、とある問題が発生しました。
シノア「……優さん、まさかとは思いますが?」ぷるぷるっ
優「え? シノア、なんか言った?」ニヤニヤ
シノア「もう、あの時の仕返しですか?全く子供なんですから、んっ……」
高めのテーブルの時点で、予感はしていました。ですが、座る椅子がそれ用のカウンターチェアだなんて……
案外、優さんにも茶目っ気なところが、と思った時でした。
優「ははっ、いや、ごめん。冗談だって。」だきっ、ちょこん。
ふわっ……
なんとか座ろうとした私を、なんと優さんは背後に手を回し、両脇を支えながら抱えたのです。私は、流れるまま椅子に着席していました。
シノア「……、ゆ、優さん! 突然すぎます!ビックリするじゃないですか……」//
優「ちょっと、仕返しにって思ってたけど、ごめん。やり過ぎだったよ。」
シノア「う……別に大丈夫ですけど、えーっと……気を付けて下さいね?」
素直に、真っ直ぐ謝るだなんて、ずるいですよ。んー、彼の専売特許ですね。
優「悪い、悪い。ってか、さっき、シノアすっげぇ軽かったけど、ホントに飯食べてるか? 今、作るけど食いたいもんあれば言ってくれ。」
シノア「……! そうですね、私が大きくなれる料理が食べたいですね!」
優「んー、でも、シノアは今ぐらいが丁度いいと思うけど。ま、美味しいって思えるようなもん作るから、待っててくれ。」スタスタっ
シノア「あ、はい……。」
あらら……皮肉だったんですが、通じなかったようですね。でも……今ぐらい、か。
シノア「(ふー、そう言えば優さんの家に上がるのは、久し振りですね……)」キョロキョロっ
辺りを見回して。ぱっ、と目に入ったのは、優さんそっくりの小さい子供と隣に白髪の子供が並んで。
その他、大勢の子供が寄り添っている姿を写し出している写真立てでした。
……真っ先に頭に思い浮かんだのは、家族、という存在。私にも家族はいました。
でも、姉はーー……あまり思い出したくもない感情を押し殺し、私は、視線をはずしました。
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次に、良い匂いがする方向に目を向け、視界に映ったのは、優さんの後ろ姿でした。
よく見ると、後ろ髪が跳ねてて。くすくすっ、起きたばっかりでしたし、仕方ないですね。
それより、印象的だったのはーー
……入隊後、見る見るその後ろ姿が大きくなっていくことで。最初は、連携、協力、そういった協調性に欠ける人だと思っていましたけど
今や、仲間の為に全力で助け合うようになって。頼れる存在に成長して……
コトっ…
優「……シノア? 大丈夫か……?」すっ……
シノア「え……はい。あ、すみません。」
感傷に浸っていた私は、いつの間にかテーブルに出来上がった料理を並べている優さんに、気付けませんでした。
優「いや、別にいいけど。ん? シノア。顔に……」さっ
シノア「ふぇっ」びくっ
急に手を伸ばしてきた彼に、私は咄嗟に目を閉じてしまい。私の目元を指が沿って、なにか拭っていきました。
優「涙、流れてたから。辛いことあるなら言ってくれ。協力する。」
シノア「あ……ーー」//
悲しみが私の中を去り。言い表せない気持ちが込み上げていました。
シノア「ーーふふ。本当に優さんはお人好しですねぇ。いつか、騙されちゃいますよ?」
優「それでも。シノアは、俺を騙そうとしないし安心出来る、家族だから。なんかあったら、俺のことも助けてよ。」
シノア「はい、前向きに協力します。」
優「うん、ありがと。よし、せっかく作った料理が冷めるし、早く食べようぜ!」
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シノア「ーー……作っていただいて、恐縮ですが、思ったより美味しかったです。また、都合がいい時にご一緒しましょう。」
優「ああ。うまそうに、料理を食べてくれるシノアを見てたら、作りがいがあったし。これぐらい、いつでも作るよ。」
シノア「楽しみですね……さて、まだ9時ですが約束の時間には間に合うよう、集合場所に来てくださいね。」
優「おう、シノアも遅れないようにな。辛い時は、いつでも頼れよ!」バタンっ……
ーー
シノア「……」トテトテっ……
ドアが閉まって、踵を返すと先ほどまでの何気ない、優さんとのやり取りが心に響く。かつての私にはなかった感情で。
知らず知らずの内に、私が求めているもの。それは、優さんに巡り会えてから芽生え始めた。
空虚な心が、彼とふれあう中一つ一つ満たされていく。ああ……そう、ふと想い返しては、感傷に浸る。
貴方と出逢えてよかった、とーー
もう少し長編が良かったです…………………………………………………
もう少し長編が良かったけどおもしろかった!!