2015-06-22 22:30:58 更新

概要

違うシリーズを出してみました。作ってる方から終わらせてやれって話ですよね。すいません。

遅筆です。こればかりはホント勘弁してつかぁさいよ


前書き

この話は、最近考えたことなんですが、敵の中で一番誰が好きなのかを考えたところ妄想という妄想が膨らみ続けて書いてみようかな?という軽い気持ちでやり始めたものです。ぶっちゃけ、プロローグに地の文入れてみましたがどうでしょうか。いっときは入れるつもりはないですね。じゃあ、すんなよと言う話ですが。

でもまず、始めることができるくらいには話もまとめられているはず......客観的に見て面白くなければ批判してください。自己判断はあまりいいものではないと思っていますので


プロローグ





男の子『待って!』タッタッタッ


女の子『なぁに?』


男の子『引っ越しするなんて聞いてない......』


女の子『だって......言いたくなかったもん......』


男の子『でも、言ってくれても......』


女の子『言いたくなかったもん!』


男の子『じゃあ......なんで僕にだけ言ってくれなかったの?』


女の子『だって......だって言ったら悲しくなるもん......』ポロポロ


男の子『......急に居なくなった方が悲しいよ......僕、君のこと好きだったのにぃ......』


女の子の父親『ほら、姫乃、別れを言いなさい。それとごめんね、伝えてなかったみたいだね......ホントは連れて行きたいけど......』


女の子の母親『ごめんなさい......ほら、ひめちゃんも』


女の子『うん......うんっ......またね......うっ......うぅぅ』


男の子『僕、忘れないから!だから......また会おうね!』ポロポロ


女の子『うん......着いたら手紙送るね』





「ん......んむぅ」ノソッ


ある一室で目を覚ますと昨日の午前中までいた士官学校の寮ではない。


鳥の鳴き声をうるさいだけの目覚まし時計ではなく心地いいBGMの目覚まし時計の代わりに意識を覚醒させていく


「また......この夢か......」


そう呟いた。女々しい、未練がましいと自分でも自覚はしている。しかし、その思いを忘れないでいれたから今、こうしてこの場にいることが出来ている、と考えることにした


「今日から鎮守府に着任か......まぁ、なんとかなる?だろう」


と、独り言を吐き着替えるために立ち上がったとき1枚の写真が目に入った。今まで大事にしてきた物だ。


(頑張るよ、姫乃......)


心の中で届くはずもないと分かりながらも思ってしまうのは人の性なのかもしれないな、とそう思いながら着替え始めた。


「軍刀か......こんなものまであるとはな......至れり尽せりじゃねーか?てか、最初旗艦も俺だけ軽巡洋艦と言う」


本来は新人の待遇なんてそんなにいいものではない。ただ、この新人の提督が士官学校歴代主席でダントツで卒業したからだった。しかし、甘くても軍は軍。この提督の階級は新人にしては十分なくらい階級である中佐(まぁ、最初からそれも甘すぎるが)だ。


閑話休題とするが、ともかくこれから新しいスタートに立った提督は部屋の扉を開けた。





本編スタート





提督「ここがこれからの執務室か......」ガチャ


提督「ん?......あれ?那珂か?」


那珂「え?あ、もしかして君が新人君?まぁ、そんな気はしてたよ。って言うか、やっぱり呼び捨てなんだね......」


提督「別にいいだろ?こだわりなんてなかったんじゃねーのか?」


那珂「一応先輩なんだけどなぁ......」


提督「まぁ、那珂が最初の艦娘で良かったよ」


那珂「えっ?......それってどういう?」


提督「ん?そりゃあ、お互い知ってる方が変に気を使わなくていいし連携が取りやすいからな」


那珂「......」


那珂「うん......期待した那珂ちゃんが悪かったと思うよ、うん」


提督「どうしたんだ?」


那珂「もう、いいよ」


提督「まぁ、そういうなら......さて、頑張っていきましょかー」


那珂「はいはい」ムスッ





──────────────────





那珂「......早すぎでしょ」


提督「疲れた......那珂ぁ」


那珂「何?」


提督「蜂蜜ないか?」


那珂「あるわけ無いでしょ」


提督「なら砂糖」


那珂「あるよ。これをどうするの」コトッ


提督「よいしょ......と」ムクッ


提督「モム......モムモム......ゴホォォエェェ!ゴホッゴホッ!」


那珂「ばばば、バカじゃないの!?なんで粉の方の砂糖をまるまる食べてるわけ!?」


提督「いや、な。脳みそを人がフルで使える上限を超える力で考えたりしてるからでかい数のカロリーと糖分が必要なんだよ」


那珂「......今までも?」


提督「うん。そうだ、那珂、久しぶりに飯作ってよ。好きなんだよなー、那珂の作る飯」


那珂「......ハァ、分かったよぅ。めんどくさないなぁ......」


那珂(もしかして......脈アリ?キャハ☆)


那珂「じゃあ、ちょっと待っててね。」


提督「おーう」





提督「おっ、キタキター。1年ぶりくらいだよ、もう一つ楽しみが増えたわ。那珂、飯宜しくね」


那珂「......え?毎日?まぁ、いいけど?じゃあ、毎日那珂ちゃんかわいい!って言ってね」


提督「別にいいよ。客観的な事実だし?それにうまい飯が食えるなら何の苦にもならないしな」


那珂「......やっぱり言わなくていいです///」


提督「そうか?分かった。」


提督「そうだ、工廠とかこの後行けるのか?デスクワークも終わったし色々見て回りたい」


那珂「おっけー、じゃあ案内してあげる」


提督「うん、頼んだわ」





──────────────────





那珂「ここだよ。こっんにっちわー!」


提督「つぁー」


那珂「全く挨拶変わってないね......」


提督「だって挨拶なんて何言っても変わんねーだろ」


那珂「......」


主任妖精「すまんすまん!って、那珂ちゃんじゃねーか!......って、そっちは?」


提督「今日からこの舞鶴鎮守府に着任した新人だ」


主任妖精「コイツが......噂の歴代最高主席君か?さほど真面目っぽくなくて俺的には好印象なんだが」ボソボソ


那珂「優秀とかの問題じゃないですよ。武術、指揮、理論、筆記に留まらず全てにおいて規格外ですから。因みにさっき、砂糖をそのまま30g摂ってました。」ボソボソ


主任妖精「......1日分の糖分摂取目安量じゃねーか」ボソボソ


那珂「マジですって」ボソボソ


那珂「って、あ!」


提督「んー?何?」クルッ


主任妖精「あぁ、それか?それは俺が開発しようとしてた最新の電探だよ。理論上ではかなりの機能上昇が見込めるんだがな」


那珂「まぁ、そういうのはザラだもんね」


主任妖精「まぁな」


提督「んー、これ何ヶ所か間違ってるけど?」


主妖・那「は?......え?」


提督「コンセプトとしては、従来より遠距離から尚且つ素早く正確に......だろ?」


主任妖精「まぁ......」


提督「そんなら、この回路はこっちに持ってきた方がいいな。そしたら、ここからそこまでの回路は省けることになる」


主任妖精「んん......本当だ。そしたら、二世代前のを繋ぐことが出来る......マジでか」


提督「ここだけしか行っていないのにわかるとは......俺の周りにはいなかったんだが」


主任妖精「いやいや、ほんとに助かったよそれにしても見ただけで......」


那珂「ね?」





──────────────────





那珂「出撃だね」


提督「あぁ、俺も行く」


那珂「了解」


提督「さて、行こうか」


那珂「私1人でもいいのにね」


提督「今、どのくらい動けるのか、周りの環境とかを見ておきたい。それに1人で行かせるのは心配だ」


那珂「......反則だよ///」プイ





提督「那珂、2体だ。イ級とロ級だ」


那珂「は?......は?」


提督「片方は2時、もう片方は9時の方向だ。距離ともに3000」


那珂「え?え?」


提督「早く」


那珂「わ、分かった!」ドンドン!




ドドォォォォン!




提督「おーおー、いいねぇ......2体とも沈んだよ」


那珂「ふふーん、なっかちゃんすごいでしょー!」


提督「流石は、前年度主席さんだな」


那珂「提督に言われても嫌味にしか聞こえないんだけど、ねぇ......」


那珂「まぁ、いいや。帰ろ♪」


提督「その前に貸して」ヒョイ


那珂「え?」


提督「......」ドン!


那珂「あっ......」


提督「偵察......かな?」


那珂「......何でもありだね」





──────────────────





提督「......」ペラッ


那珂「......」トコトコ


提督「那珂......」


那珂「コーヒーでしょ?......って、どうしたの?」


提督「いや、何も言ってないのによく分かったな」


那珂「だって、士官学校の時から本を読んでる時はコーヒー飲んでたでしょ?しかもだいぶ渋めの」


提督「よく見てるんだな......コーヒーありがと」


那珂「どう致しまして」ニコッ


提督「......あぁ」


那珂「どうしたの?」


提督「......似てたんだよ」


那珂「聞かないでおこうか?」


提督「......いや、話しておこうかな。どうせ、知られるなら早いか遅いかの話だろ」


那珂「私も飲み物入れてくるね」


提督「話が早くて助かるよ」クスッ





提督「まぁ、この話はさ、俺がなんで提督になったかの理由にもなるんだけどね。」


那珂「ふーん」


提督「10年くらい前のことだよ。俺が一番仲が良くて想いを寄せていた子がさ、急に引越しするっていうからその時にお互いの想いを伝えて、手紙を出す、また会おうって約束して、お別れさ。船での引越しだったらしくてさ......その日だったんだよ。出てきたのが」


那珂「......」


提督「深海棲艦がさ、船を襲っている映像が何日も何日も流れただろ?あれだよ。そしてその家族みんなおさらばだ。」


提督「あれでよく沈まなかったよな......船の中で書かれた手紙が家に届いてさ、読んだらまたすんごい涙が止まらなくてさ。だって、『心配しないでね』とか、もうそんな状態じゃねーだろってな」


提督「だからさ、もうそんな悲しみを他の人にしてもらいたくないんだよ」


那珂「そっか......でも似てるってどういうこと?」


提督「まぁ、小さかった時のその子に笑い方が似てるなって。別に那珂とその子を重ねているわけじゃないよ。ただ、似てるから思い出すんだよ」


那珂「だから私と仲良くしてたの?」


提督「未練がましい、とは思ってるけどね。忘れてしまいたくないし、この思いは絶対ほかの人にはさせたくないというのも本当だ」


提督「でも、本当に重ねて見てるわけじゃあない。どんなことがあっても明るい調子を崩さない那珂はすごいと思うし、辛いことを抱えすぎて暗くなってるところを見るとこっちも暗い気分になるからさ。それなりには気にかけてるんだよ」


那珂「......///」


提督「で、那珂は?」


那珂「ええ!?このタイミング!?ハァ...まぁいいや」


那珂「私ね......最初、アイドル目指してたんだよ。明るく気丈に振る舞えるように。中学の時かな?父さんが倒れちゃったの。お母さんは男グセが悪くてね、父さんに男で1つで3人育てられたの。」


提督「川内と神通か」


那珂「やっぱり呼び捨てなんだ......で、卒業式の日父さん来れなくてさ、入院のお金とか治療費とか払うために働き口を探そうってしてた時にお姉ちゃんたちにさ士官学校のこと聞かされて、通いながらお金をくれるって言うからさ、勉強してたから何とか金額全部負担してくれるっていうことで通ったんだ」


提督「んで、父親は?」


那珂「治ったよ。今は1人で趣味に明け暮れててると思う。私たち感謝され倒されたけどね」


提督「そりゃそうだ」ハハハ


那珂「たまに帰ってきてくれーって言われるから最近、3人で帰って行ってあげた」


提督「......いいな、そういうの」


那珂「親とかは?」


提督「親って何?誰のことを言ってるの?って環境だったからさ」


那珂「よくまともに育ったね......」


提督「そのこの親がね、大体泊めてくれたりしたんだよ」


那珂「って、話し込んじゃったね」


提督「そうだな......眠くなってきたよ」


那珂「じゃあ、寝よっか」ニコッ


提督「一緒に寝るか?」


那珂「な、なな何言ってるの!?寝言は寝て言ってよ!///」


提督「へーへー、お休みー」


那珂「ふー......ふー......ふん、お休み......」





提督「今日はなかなかに濃い日だったな......」


提督「那珂には結構きわどいこと言っちまったしな......」


提督「まぁ、いいや。寝よう」





──────────────────





「あ...あぁぁ......あぁぁぁぁぁ......あぁぁぁぁぁぁぁ!」


今起こった惨劇に恐怖するしかない。感情はある一定以上のレベルを超えると意識と神経を感覚的に切り離してしまう。


それもそうだろう。目の前で最愛の家族が殺された。いや、より厳密に言うのであれば喰いちぎられた。目の前で化け物が大きな口を開けた。そこで意識は途切れた。





次に目を覚ましたのは暗く、冷たく、寂しい場所だった。


「......ここはどこ?」


周りを見ても青みがかった暗さが辺り一面に広がる。下を見ると砂から泡が出てきた。ここは水の中だと分かる。自分の姿を見るとネグリジェのような黒く、薄い服だった。水流によって靡く。後ろを見ると自分の首の後ろから何かとても大きな質量体に繋がっている。そういえば、と2つの存在を確かめるために呼びかける。しかし、返事はなかった。今度はもう1つの存在を確かめようとすると頭が締め付けるように痛んだ。何も思い浮かばない。ただ、そこにあったはずの何かが痛みとなって、違和感となって染み込む。


後ろの方で気配が生まれる。誰何を問うも返事はない。ただ、あの時恐怖したはずの存在があった。それなのに今では心地いい感覚がある。その存在は喋らないと思ったが意識に直接響く


『姫、御命令を』


どうやら自分は今、この生物たちの姫であることが分かった。


仰ぎ見ると目障りな存在が6つある。


「私、1人でいいよ」


『......ご存分に』


なぜこんなに落ち着いていられるのか分からない。それとは逆に上にあがれば自分を攻撃してくるであろうことは分かっていた。しかし、今は意識全体がハッキリとしていない今はこの違和感の原因を突き止めたいと思った。


(上に上がれば何かわかるかもしれない)


「終わったら私は行くよ。貴方たちは着いてくるの?」


『......』


返事は無かったがこれは無言の肯定だと分かった。


「ふふ......待っててね」


そういい、水上に浮き上がって行った





──────────────────





提督「はぁ、分かった。あぁ......じゃあな」ガチャ


那珂「誰?って、もしかして......?」


提督「いや、そうじゃない新しい深海棲艦の出現報告。ただ、様子がおかしいらしいがな」


那珂「おかしいって言うと?」


提督「偵察をしてたらすんごい大きくていろんな深海棲艦を無理矢理合体させた感じのを後ろに控えたている人型の深海棲艦がいたらしい。そんでその見た目の凶悪さからここで叩いていた方がいいと判断して1体に対して6人で総攻撃......」


那珂「今こうして連絡が来たということは効かなかったの?」


提督「効かないだけならまだ良かったかもな。全員大破の返り討ちだったそうだ」


那珂「そっか......」


提督「確かにそれはおかしいんだよ。徹底的に潰すのではなくて今回は全員大破させたら興味なさげにまた海の中へ、だったらしい」


那珂「......なんで?」


提督「俺が知るかよ......っと、もう1つ」


那珂「?」


提督「『邪魔をするのなら容赦はしないですよ』、らしい」


那珂「『邪魔』と言うからには目的があるのかな?」


提督「まぁ、俺たちが考えたところでなぁ......」


那珂「そうだねー、最近は超絶優秀君が舞鶴に着任したことでおっさんたちが躍起になって手柄を立てようとするんじゃない?」


提督「はん、興味ねーよ。腰の重いおっさんたちなんてハナっから仲間なんて思っちゃいねーよ。どうせ、今の地位がうまいから終わらす気もねー腐れ野郎共がほざいてろってな」


那珂「辛口だねー。まぁ、ぶっちゃけ私もおんなじ考えだよ」


提督「それより早く仕事終わらせようぜ」


那珂「うん」





コンコンコンコン




提督「ん?誰だ?」


那珂「......あっ!しまった、伝えるの忘れてた!」


提督「......開けていいよ」ジロッ


那珂「あははは......はは......ハァ」


??「気合!入れて!失礼します!」バァン!


??「......あら?ここの提督は?」モグモグ


??「失礼しまーす、あれ?おぉ!これはこれは!あっ、写真撮ってもいいですか?」パシャパシャ


??「早く挨拶するっぽーい!」


??「ふふ......怖いか?」


提督「......待ってて、すぐ戻るから。那珂、来い」


那珂「......はい」





──────────────────





那珂「ごごごごごめんなさいいいい......昨日の夜、伝えようと思ったら長話になっちゃったから」


提督「つまり、主任がお世話になったお礼として艤装を自己負担で造ってくれたと?そして、今日来ることを忘れていたのか......でも、今更だな。お前うっかり多いんだった」


那珂「むぅ......それはそれで嫌だな」


提督「ってか、キャラ濃すぎだろ!」


那珂「私の同級生もひどかったなぁ......」


提督「最初に入ってきたやつは初っ端からドア破壊して入ってきたし次のやつは日本昔話よりこんもりしたホカホカ白米食ってるしその次は許可してくれっていいながら無断で写真撮ってるし最後二番目は語尾おかしいだろ......もっと自分に自信持てよ。一番正しいのお前だよ」


那珂「あれ?最後は?」


提督「はぁ?暖かい目で見ようぜ。あいつ厨二だろ?」


那珂「充分でしょ......」





提督「すまん、任せたな」


那珂「じゃあ、自己紹介していくね」


那珂「私はぁ、艦隊のアイドル!なっかちゃんだよぉ!よっろしくぅ!」


提督「俺は昨日着任したばかりの提督だ。お手柔らかに頼むよ」


??「那珂のあれに頭を痛めないとはな」


那珂「ちょっと、天龍うるさいよ。厨二は黙っててよ」


天龍「ほざきやがれ」


??「天龍ちゃん、うるさいですよ」


天龍「青葉、おめぇも人の事言えねぇよ。行動がうるせえよ」


青葉「そんなことないですよ。ねぇ、夕立ちゃん」


夕立「どっちも静かにするっぽい。夕立は夕立っぽい」


??「気合!入れて!自己紹介??「比叡、うるさいわ。食事に集中できない」モグモグ


比叡「比叡で。あ、こちらは加賀さんです」


??「あなたが......もぐもぐ......私の提督......ゴキュゴキュ......なの?それなりに期待......おかわり」


提督「......自由だな」


那珂「頑張ってね?」


提督「人事じゃねーよ」





──────────────────





提督「1人1人の能力は高いな」


那珂「どうまとめるかが鍵だね」


提督「ただ、まぁ天龍の1人で突っ込んでいくのは危険だな。次からはやめてくれ」


天龍「あぁ?俺の戦い方にケチつけんじゃねーよ」


提督「いや、これは個人の戦いじゃないからさ」


天龍「うるせーな、歴代主席だからって舐めてんじゃねーぞ、あぁ?」


提督「なら死ねよ」


比・加・夕・青・天「は?」


提督「これは艦隊だ。『隊』だ。1人の身勝手な行動で全員を死なすこともありえる。それは本意ではないだろう。それとも、自分が死ぬまで戦う方がいいに決まっている。なんて、クソみたいなこと考えてねーだろうな?そうなりゃ俺が一番迷惑被るんだよ。1人なら好きにしろ。俺の関知するところじゃない」


天龍「......ちっ」


提督「こっちは命預かってんだ。俺に迷惑はかけんなよ」クルッ


提督「っと、そうだ。全員もう上がっていい。風呂に入りたいやつは入って来い。この後は自由に過ごせ」





提督「......」カリカリカリカリ


コンコンコンコン


提督「どうぞ、みなさん......っと、終わった」トントン


那珂「ごめんねー、みんながさ。必要ないって言ったんだけどね」


比叡「どうしてあんなこと言ったんですか?」


提督「普通に言って直ると思うか?」


加賀「言い方、というものがあったはずです」


提督「頭に血が上りきって茹だってる状態のやつにか?」


夕立「あれじゃあ、ひどすぎるっぽい!」


提督「......ん?」


那珂「?」


提督「いや、何でもない。とにかく言っただろ?迷惑をかけるなって。あいつが死んだら遺族に対してなんて言えばいい?俺と同学年にいた妹にはなんて伝えればいい?悲しい顔を見なきゃならないのは誰だ?そんな人の顔なんざ見たくねーんだよ。そんな思いを他の人にさせないために今ここにいるんだ。始まってすぐ逝かれちまったら俺はどうすればいい?」


青葉「......その意味での1人だったんですね」


那珂「だから言ったでしょ?考え直さないといけないのは向こうなんだよ。はい、行った行った」バタン


提督「那珂、ありがとう」


那珂「むふふ、どういたしまして」


那珂「ほら、もう今日は休も?」


提督「そうだな。風呂も気持ちよかったし飯は美味いし幸せだわ」ガチャ


那珂「ふふーん、そうでしょそうでしょ?......ん?どったの?」


提督「何で俺の私室に入ってきてるんでしょうかねぇ?」


那珂「一緒に寝よ?」


提督「なんだ、そんなことか。別にいいよ。床でねるからお前ベッド使っていいよ。あ、毛布取って」ゴロン


那珂「私は何を掛けて寝ればいいの......」





比叡「天龍、提督に聞いてきまし」


天龍「聞いてた。あいつのところに行って中に入ろうとした時聞こえちきたよ。あれ、聞いてさ......言い方はぶっきらぼうでもちゃんと考えてくれてんだなって思って」


加賀「そう、良かったわね。今回は期待できそうね」


夕立「あの提督、きっと本当は優しいっぽい。目がそうだったぽい」


青葉「そうですね。何かあの人を助けてあげれればいいですね」





──────────────────





提督「えっ!?ちょっ!はぁ!?ちょっ待て......ハァ......」ガチャ


天龍「どうした?」


提督「俺の2個上......お前ら1つ上か同級生にクソバカな奴いたじゃん?あの人が『今そっちに向かってるから演習しようぜ』、って......」


加賀「あぁ......あのうるさい人ですか。苦手というか嫌いなんですよね」


比叡「性犯罪者が......」


青葉「て言うかあの人司令官になれたんですねぇ......驚きです」


夕立「那珂ちゃん知ってるっぽい?」


那珂「夕立知らないの?あのバカの話」


提督「艦娘候補生に喧嘩売ってボッコボコにされた話したか、その寮の風呂覗きやがって憲兵見習いにしょっぴかれた話とか寮長にいたずらがバレて寮に一週間入れてもらえなかった話とか」


加賀「喧嘩は私です。かわいい後輩をバカにされたので」


比叡「覗かれたのはわたし達四姉妹です。1人ずつ殴らせた後に憲兵に」


青葉「寮長に用事があり部屋に向かっていたところいかにも挙動不審だったので詰め寄っておど......脅したところ白状してくれまし」


提・那・天・夕(なぜ言い変えようどしたのだろう......)


提督「全部お前ら絡みかよ......」


那珂「仕方ないよ」


天龍「そうだな」


<おーい!おぉぉい!うおぉぉぉぉい!


提督「そうだ、いいこと考えた。」ガチャ


提督「憲兵さーん、外で騒いでるバカやっちゃってー」


<うぉぉ!?な、なんだ!おまっ、嘘だろ!


夕立「バカに慈悲はないっぽい」





──────────────────





??「ふぅ......酷い目にあった」ガチャ


??「バカだから仕方ないクマ」


??「バカ提督さん、助けてあげたんだから貸し1つね」


??「なぁ、瑞雲はまだなのか?付いて来たらくれるって言ったじゃないか。瑞雲と言わずに晴嵐でもいいんだぞ?ん?」


??「寝よーぜぇ......ふあぁ」


??「雨降らないかな......こんなバカを忘れることができるくらいの」


??「不幸だわ......こんな提督」


舞鶴s「......バカだ」


バカ提督「え?一言目がそれ?」


提督「球磨、久し振りだな」


球磨「クマ!?那珂も夕立もいるクマ!」


那珂「久し振りだね、時雨も」


時雨「そっかぁ......ここの提督になったのか。那珂と夕立が羨ましいよ。そういえば天龍、ちゃんと厨二してる?」


天龍「ほざけ」


夕立「快適っぽーい!」


加賀「瑞鶴、久し振りね。最近どうかしら?」


瑞鶴「あ、加賀先輩!この提督がいる限りバカが移りそうで」


比叡「日向も山城も、久し振りだね。気合い!入ってる?」


日向「うむ。このバカさえいなければ気合いは入るんだ」


山城「あぁ、ここの鎮守府にずっといたいわ」


バカ提督「......ひどい」


提督「で、何の用?あ、そういや早く金返せや」


バカ提督「は?お前あれだいぶ前じゃん。もういいだろ」


提督「みんなー聞いてくれー。このバカさー、士官学校の時に俺に金借りていかがわしいゲームをモガモガ」


球磨「そんな時からかクマ......前に鎮守府の一室にたくさんあって黙ってるつもりだったけど人のお金返さないやつはクソだクマ」


時雨「土に還るといいよ」


加賀「瑞鶴、何もされてない?」


青葉「あのー、1人寝ていらっしゃるのだけど」


加古「Zzz......」


バカ提督「......泣いていい?」


球磨「突然お邪魔して悪いけど演習頼みたいクマ」


提督「分かった。こっちはお前たちの胸を借りるつもりでやらせてもらおうかな」


提督「そんじゃお前ら、準備してきてくれ。球磨たちも早速で悪いが頼んだ」


球磨「分かったクマ」


バカ提督「置いてけぼりなんですが」





──────────────────





提督「始まる前に少し言っておこうか」


提督「まず天龍。『1人で』突っ込むのは無しだ。頑張って来い」


天龍「るっせぇよ......へへっ、でも、あんがとよ」


提督「夕立、お前の動きで攪乱してやれ。相手の位置と自分の位置を交互に入れ換えさせろ」


夕立「その作戦久々っぽい!頑張るっぽい!」


提督「加賀、お前は好きなように動け。もともと前衛ではなく後援タイプだ。力強く柔軟に、な?」


加賀「期待には応えるわ」


提督「比叡、どっしりとしていろ。戦艦が2人いようが関係ない。お前は慌てる癖があるから落ち着いて行動しろ」


比叡「はい!」


提督「那珂、俺はお前に全幅の信頼を寄せている。演習で負けても揺るがないくらいのな」


那珂「......うん!」


提督「まずは初めての演習だ。楽しんで来い!」





球磨「向こうは闘志全開クマ。こっちの提督とは格が違うクマ」


時雨「作戦なしであそこまで闘志を上げることができるなんてね......」


瑞鶴「まぁ、諦めずに頑張るだけ頑張ろう」


日向「提督ハゲろ」


山城「提督不幸になれ」


加古「両隣怖い......」


バ提・提『開始!!』


加賀「任せて」ヒュンヒュンヒュン


比叡「偵察機飛ばします!」


夕立「相手の偵察機が来たっぽい!」


那珂「任せて!」ドドドドド


天龍「うおぉぉう......さっすが。夕立!」


夕立「今から突撃するっぽい!」


青葉「球磨さんと時雨さんが来ます!気をつけて!」





球磨「行くクマー!」


時雨「僕も行くね!」


瑞鶴「外から決めたいね!」ヒュンヒュンヒュン


日向「比叡か......懐かしいな」


山城「今度こそ越えてみせるわ」


加古「牽制にするぜー」ドォンドォン!


加賀「那珂、危険を承知でお願いするわ。少しの間対空任せていいかしら」


那珂「加賀さんがそう言うということは動くんです、ね!」ドドドドド


加賀「すぐよ」ギリギリギリ


那珂「真上?って、早く終わらせてくださいね......ってうわぁ!」(中破)


加賀「ごめんなさい、もういいわ」ヒュンヒュンヒュン


青葉「瑞鶴さん、随分成長しましたね。数が多いとは言え那珂さんに中破まで持っていくなんて」


比叡「牽制を撃ってきましたね。私も打ちます!」ドォン!


那珂「圧巻と言うか何と言うか......」





瑞鶴「くぅ......那珂を舐めてるわけじゃないけど、中破しかさせれないなんて......今のは全力だったのに!」


加古「そろそろあたしも行くわー」


日向「比叡のやつの偵察機はどうなった?」


山城「分からないわ。でも、撃ってきたけど手前で落ちるわ」




ドオォォォォン!




日向「腕が落ちか?」


山城「そう願いたいけど無理そうね」





天龍「よっと......危ねぇ」ヒョイ


球磨「そんなもん持ちながらよく動けるクマ」


天龍「まぁ、な!」ブン!ドォン!


球磨「そっちは当たらないクマ」


天龍「刀を振るったのはブラフ。お前をその位置からどかすため。砲撃したのは後ろのやつに当てるため......こんなにうまく行くとはな。夕立やっぱすげーな」





時雨「この前は決着つかなかったね」ドンドン


夕立「別にそんなのこだわらないっぽい」ピタッ ヒュンヒュン


時雨「凄いね......いつ見てもそれは驚くよ。トップスビード→ストップ、その逆も行うのが早すぎるよ。動きが予測つかないよ」


夕立「そっちの砲撃は正確過ぎて......うわわっ!」グラッ


時雨「もらった!」ドン!




ドオォォォォン!




夕立「イッタタタタ......」(中破)


時雨「嘘だよね......普通大破する




ドオォォォォォン!




時雨「ど......こから?」(大破)


夕立「天龍、さっすがっぽい!」


天龍「早く夕立来てく球磨「なぁめぇるぅなぁくまぁぁぁぁぁ!」


天・夕「っ......」ビリビリ


天龍「よく......でっけぇ超えでるな」


夕立「お腹に響くっぽい」


天龍「こうなったら無傷は無理だ」





瑞鶴「くっ、それなら狙いを青葉さんに変えるしかっ......」ヒュンヒュン


日向「やはり手強いな」


山城「向こうは少しずつ距離を修正してるわね」


瑞鶴「加古さんに戦力を向けるわ」


日向「解った」


山城「先に行くわ」





青葉「加古......もしかして完全に目を覚ましちゃいました?」


加古「うーん、ごめんね。勝ちに行っちゃう」ドォン!


青葉「こっちこそ」ドォンドォン!


加古「譲らない、よぉ!」サッサッ


青葉「......うわぁ、マジっすか」


加古「あ、瑞鶴の艦載機だ。そろそろ仕留めろってかぁ?」


青葉「あなたが狼である私を、ですか?」


加古「そうだよ。狼が狩るほうじゃないのさ。私たちが狩る番だ!」


青葉「遠吠えって知ってますか?」


加古「知ってるけどそれが何か?」


青葉「それなら覚えておいた方がいいですよ?......っと艦載機が水面に!」




ドドドオォォォォォン!




青葉「くっ!周りが......っ!」グラァ


青葉「波が荒れてっ......」


加古「しゅーりょー」ドォン!




ドオォォォォォン!




青葉「覚えておくといいですねぇ......」(大破)





加賀「今ね......」


那珂「え?」


加賀「さっき瑞鶴に対してはなった艦載機で後ろから攻撃するのよ」


那珂「自信はいかほど?」


加賀「落とすわ」


那珂「流石ですね」


加賀「あなた程ではないわ」クスッ


比叡「そろそろ牽制の意味もなくなってきましたね。加古さん狙いますよぉ!二連射ぁ!」ドンドォン!





瑞鶴「おかしいわ......相手の艦載機が少ない......」


日向「いや、変わらなくないか?」


瑞鶴「最初に比べたらよ」


日向「ふむ、そうか」ドォン!


瑞鶴「何故かし




ドガアァァァァン!




日向「瑞鶴!?」


瑞鶴「うし......ろ?もしかして......あの時......?」(大破)


日向「くっ!仕方ない......って加古!」





天龍「......ちっ、先にこっちをやるべきだったな」


夕立「分かってるけど夕立は少し被弾したら大破になるっぽい」


球磨「そこクマ!」ドンドン!


天龍「うお!水柱作りやがった!」


夕立「やばっ!波が荒くてうまく機関部が効かないっぽい!」


天龍「くそっ!」


夕立「っ!天龍、危ないっぽい!」


天龍「っ!」ドン!


球磨「クマァ!」ドン!




ドドオォォォォォン!




天龍「くっそがぁ......」(大破)


球磨「まさか、自分も当てられるとは思わなかったクマ」


夕立「同じ状況なら負けないっぽい!」ドン!


球磨「それが違うだなクマ!」ドンドン!


球磨「夕立の悪い癖クマ。周りを見ることも大切クマ」




ドオォォォォォン!




球磨「遅かったなクマ」


加古「無茶言うなよ......」


球磨「加古!?危ないクマ!」


加古「は?」クルッ




ドドオォォォォォン!




球磨「向こうの戦艦!?」


加古「くっそぉ......油断してたぜ」(大破)





比叡「私は山城と当たります!」


那珂「私は球磨を相手にしてきます!」


加賀「必然的に日向、ね......」


那珂「ここまで来たら勝ちましょう!」


比叡「御武運を!」





山城「今回こそ、倒して見せるわ」ドォン!


比叡「私だって、負けません!」ドォン!


山城「いいわねぇ......戦艦同士の撃ち合いわ」ドォン!


比叡「それではお互い悔いのないように!」ドォン!


山城「私たちはあなたたちより半年も前にスタートしたの......負けるわけにはいかないわ!」ドォンドォン!


比叡「なっ!?」




ドオォォォォォン!




山城「身を寸前でひねるなんて......下手したら転覆よ?」


比叡「くぅ......イタタタタ......一発でもまともに喰らっちゃうと大破ですからね」(中破)


比叡(私に執着している今は......これしか!)


山城「終わりよ......」ガシャン




ブロロロロロロロロロ......




山城「艦載機!?......って、偵察機じゃな......っしまっ比叡「このタイミングで!」ドォンドォン!


山城「くっ!こうなったら道連れよ!」ドォン!




ドドドオォォォォォォォォン!




比叡「相打ち......ですか」(大破)


山城「悔しいわ......勝つつもりだったのに」(大破)


加賀「向こうは決着がついたようね」ヒュンヒュン


日向「そうみたいだな......って、普通よけながら艦載機飛ばせるのか?......また人間離れしたな」ドォンドォン!


加賀「あなただって、三式弾と主砲の1度に2方向放つなんてね」


日向「負けたくないからね」サッサッ


加賀「しまったわね......艦載機が無くなってしまったわ......」


日向「ははは、加賀らしくないな」


日向「でも、容赦はしない!」ドォン!




ドオォォォォン!




日向「勝ったな」


加賀「そう......かしらね?周りを見ることをおすすめするわ。もう遅いけれど」(大破)




ブロロロロロロロロロ......


ドドドドドドオォォォォォォン!




日向「瑞鶴で終わったはずじゃあ......別けてたのか?」(大破)


加賀「......そうよ」





那珂「球磨、勝負ね」


球磨「那珂とはやりたくなかったクマ」


那珂「私だってそうだよ」


球磨「そう......負けないクマァ!」ドォン!


那珂(波を起こせば良い......落ち着けばできる)


那珂「こっちも同じだよ!」




ドドオォォォォォン!




球磨「動かな......」


那珂「イッタタタタタタ!掠っちゃったな......」


那珂「でも、動ければ撃てないからね!」ドンドォン!


球磨「周りに波が!狙いが定まらないクマァ!」


那珂「チェック・メイト、だよ!」ドォォン!




ドォォォォォォン!





──────────────────





提督「......勝ったな」


バカ提督「......ハァ、お前マジかよ」


提督「今回は俺の勝ちだ。次は分からん。ただ、もうお前のところとはしたくないな」


バカ提督「......勝ち逃げは赦さねぇからな!」


提督「勝ったのは俺じゃない......あいつらだ」


バカ提督「負けたのは俺の責任......だよな」


提督「あぁ、そうだな。勝てば自分の勝利じゃない、あいつらの勝利だ。負ければあいつらの責任じゃない、自分の責任だ。厳しいことだがな」


バカ提督「......そうだな」


提督「さて、みんなを労いに行こうとしよう。そうだ、今日は少し休んでいくといい。疲れてるだろうからな」スクッ


バカ提督「......そうだな」





提督「みんなお疲れだな」


那珂「勝ったよー!」ダキッ


提督「うおっ!?」ドタン!


夕立「夕立もするっぽーい!」ダキッ


提督「ぐえっ!」


青葉「私もー!」ダキッ


提督「んがぁぁ!?」


天龍「......ハハッ、俺もやる!勝ったぜー!」ピョン


比叡「では私も!」ピョン


加賀「流れに乗らなくては......」ピョン


提督「えっ!?嘘!ちょっ、まっ、やめっ、んぎゃあぁぉぁぁぁ!?」





バカ提督「お疲れ......すまん。俺の指示の出し方が悪いのが原因だ。本当にすまん......今度は勝てるようにするから」


球磨「今日は今まで1番力を出してたクマ。もっと強くなりたいクマ」


瑞鶴「もっと強くならないと超えられないから」


山城「勝つつもりでいたけど引け分け......あの頃じゃ考えられないからそれだけで嬉しいわ」


日向「私も悔しいな......」


加古「悔しすぎて今日は寝れないかも」


時雨「......僕もだよ」


バカ提督「今日は提督が泊まっていけとのことだ」


球磨「お前の指揮も磨けよクマ」


瑞鶴「ホントね。いつまでもバカのままでいないで欲しいわ」


バカ提督「最後の最後までひっでぇなおい」





──────────────────





何度目だろう......なぜそうまでして邪魔をてくるのだろう。私は最初に戦った相手に言ったはずだ。『邪魔をするなら本気で潰します』と。その次に来た相手には『あなたたちと矛を交えるつもりはない』とも言った。なのに攻撃をしてくる。


「私にはあなたちに害を与えたくないのに」


そう、聞こえるように言った。すると、驚いたことに攻撃は止んだ。こんなことは初めてだと思った。初めて理解してくれる相手がいたと思うと少し嬉しく感じる。


しかし、何をバカなことを......と聞こえた瞬間に私を嘲笑うが如く砲弾の雨が降り注ぐ。


もう、いい。私も容赦しない


「......沈みなさい」


今度から手を抜くのは辞めよう。どうせ結果が同じなら叩き潰される前に叩き潰そう、そう思った。


自分に砲撃をしていた相手から悲鳴が上がる。どれだけ泣き叫べば気が済むのだろうか。私はもう聞き飽きたと言いたげに主砲を向けた途端に頭を硬い何かで殴られたようなあの痛み。


「なん......で?なんで止めるの......?」


相手は統率を取れていない。狙うなら今なのに動くことができない。自分についてきた存在が迎えに来る。


『姫......体に負担が掛かっています。無理をなさらずに』


「ありがとう......ございます」


そういいまた海の底へと帰っていく。また、自分の中で『人間』に対しての悪意が増えて行く。最近は人間だった頃を忘れるようになってきている。そして、『悪意』がとても心地よく感じる。最初は違和感が何かを見つけ出すため、自分に付いてきている存在を助けるために動いたのに今ではどんどん人間から遠ざかる気がする。しかしそれを違和感が人間の方へ引き戻そうとする。


「次こそは......」


その違和感が何かを自覚することなく眠りに着いた





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元帥「まだまだ3週間と少しだが戦果は本当にベテランと比べても何の遜色もないな......階級を上げてやろうか?」


提督「いや、そんな地位だけの奴になりたくないからな」


元帥「何故だ?」


提督「......あんたがどうかは知らんが本当にほかの奴らはこの戦争を終わらす気があるのか?俺には今の地位に執着しずっと続けばいいと思ってるようにしか見えないんだがな」


元帥「これは厳しいな......まったくもってその通りだ」


提督「まぁ、いいさ。そんなやつらも使える奴らは使えるんだろう?仕事をしてくれさえすればいい。弱みはもうすでに握ってあるからな」


元帥「......相変わらずだな。でもまぁ、気に入ってるんだ。話を戻すけど階級は上げておく。君の考えが昔から変わっていなければ利用できるものは利用する、だったな。今さっきの言い方で分かるか」


提督「......ふん。好きにしておけ」


元帥「じゃあ、はいこれ。大佐の階級だ。そこにつけておけ」


提督「......わーったよ。それじゃあな」スクッ


元帥「もう1つ......いいか?」


提督「何だ?」


元帥「新種の深海棲艦についてだ」


提督「好きにしておけよ。こっちが手を出さなきゃ向こうは手を出さない。簡単じゃねーか。なんだっけ?『戦艦棲姫』だったか?」


元帥「......それが1つの鎮守府が潰された」


提督「は?......おいおい、冗談は休み休み言えよ?しかも笑えねー冗談いいやがって」


元帥「いや、確かな情報だ。状況はその鎮守府近海に出現して『害を与えるつもりはない』、と言ったそうだ。それを無視して攻撃命令が下り攻撃したところ相手の逆鱗に触れ一瞬のうちに艦娘は無力化、そして鎮守府は大部分が崩壊だそうだ」


提督「......どこのだ?」


元帥「横須賀だ」


提督「......なぜそんな詳しいことが分かる?」


元帥「艦娘の命は取り留めたからだ。」


提督「......そうか。それならいい。艦娘の奴らが無事ならな」


元帥「......那珂たちはどうするんだ?」


提督「佐世保のバカに任せる」


元帥「そういうことを言ってるんじゃ


提督「なぁ、覚えてるか?俺はあんたに助けられた時に言ったはずだろ?自分を犠牲にして他の奴が助かるなら俺はそうするって」


元帥「......くっ!」


提督「自分を責めんなよ。これでも感謝してるんだ」


提督「じゃあな」バタン





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「はぁっ!......はぁっ!」


勢い良く部屋へ飛び込み思い切りドアを閉める。大きな音が部屋中に響く。


聞いてしまった。知ってしまった。彼が現在、自分たち軍の中で1番危険な状況の中にいる。元帥のところへ向かう途中聞いてしまったのだ。その鎮守府の提督は砲弾の直撃によって死亡したと。最悪な状態になる可能性とそれを聞いたことで未然に防げるかもしれない可能性。この二つは両極端でどちらにしてもとても危険な選択肢だ。


彼はもうすぐ帰ってくるだろう。きっとそんな感情を自分に悟らせないように恐怖をおくびにも出さずに。


「何で......何でっ!せっかくこれから......一緒に入れると思ったのに!」


廊下から普段通りの彼の靴音が聞こえる。逆にそれがとても怖くなった。扉が開く音がし扉の反対側へ顔を背ける。


「おーい、那珂ー、荷物まとめ終わったらさっさと帰んぞー。あいつらに土産の約束もしちまったしな」


顔は見なくてもわかる。いつも通りの顔、いつも通りの声音。なのに、自分だけが恐怖しているこの状況が嫌だった。


「......お疲れ様」


恐怖をぬぐい去ったつもりでもまだ声が震えている。


「......らしくないな。どうしたんだ?」


そんな状態だったからだろう。彼から心配した声が掛けられる。自分のほうが心配をかけるような立場にいながらも。


「......大丈夫なの?」


普通の人ならもう出てもいいのか、と捉えるが1年会ってなくても士官学校時代に2年という短い時間でありながらもそれ以上に濃い時間を過ごしてきた2人だ。言いたい意味はしっかり把握できる。それは向こうも同じ。


「......」


彼のいつもの癖だ。


「聞いてたの気付いてたでしょ?」


「お前の姉たちは無事だ」


はぐらかされた。ここが我慢の限界だった。


「そうじゃないよ!そうじゃないよぉ......」


大粒の涙が頬を流れる。それでも言いたいことは留まるところを知らない。


「いつもいつも私たちばかりを心配して......自分のことは後回し......もっと自分を大事にしてよぉ」


こんなに人のことで泣いたのは初めてだった。確かに自分勝手な思いもあるけど本心であることの方が遥かに大きい。


すると、急に柔らかい衝撃に包まれる。


「......すまん」


「うぅ......うあぁぁぁぁ」


彼に抱きしめられていた。それでも涙は止まらない。


「ありがとう」


彼はそう礼を言い、胸を貸して泣かせてくれた。





時間にしてみれば10分くらいだが2人の間にはその10倍にも20倍にも感じられた。それでももう少し続いて欲しいと願ったのは欲張りなのだろうか、とお互いに思ってしまった。そう思うと、落ち着いてきたのと同時に2人の間には気恥ずかしい雰囲気が漂う。


「ごめん!」


「う、ううん......」


袖も名残惜しそうにする2人はどう見てもそれそのものだった。


「......帰るか」


「......うん」


これでいっときは大丈夫だ。彼は自分の事を考えてくれるだろう。そう思い帰路につくのだった。





──────────────────





加賀「お帰りなさ......どうかしたの?」


提督「うぇ!?な、何が?」


那珂「な、な何かあったっけ?」


加賀「?......そう、ならいいけれど」


加賀(なぜにお互い頬を染めてるのでしょう......)


提督「ふぅ......そうだ、みんなを集めてくれないか?」


加賀「分かったわ」





提督「さて、良い話と悪い話を持ってきた。どっちを先に聞きたい?」


加・青・天・夕「悪い話」


比叡「良い話」


全員「......」


提督「......普通さ、悪い話からじゃない?」


那珂「これはひどいね」


加賀「この空気はどうすればいいのかしら」


天龍「アホだぜ......プヒッ」


夕立「......ゆう、だち......堪えるの必死......ぽいぃ」プルプル


青葉「おー、ここまで真っ赤になる人なんて始めてみました!記念に」パシャパシャ


比叡「......じゃあ、悪いはな


提督「まぁ、そっちでもいいけど?」


提督「じゃあ、いい話からな。俺の階級が上がりましたー。よって、明日から間宮と伊良湖が来まーす」


那・加・比・青・天・夕「やったァァァ!!」


提督「おい、一人だけ普段のでは考えられないテンションやついるぞ!」


加賀「だって、『あの』間宮さんと伊良湖さんですよ!?」


提督「お、おう......って、『あの』ってつくことは有名なのか?」


加賀「知らないんですか!?ハァ......」


比叡「加賀さん、落ち着いて!司令引いてる引いてる」


加賀「はっ......失礼しました///」


夕立「それで?悪い話って?」


提督「横須賀の鎮守府が潰された」


青葉「......最近よく聞く『戦艦棲姫』、ですか?」


提督「そうだ。ただ、艦娘たちは無事だ。誰一人として沈んじゃいない」


青葉「無事......ですか。良かったぁ......安心しました」ガクン


加賀「赤城さん......良かったわ......」ドサッ


天龍「......ちょっと待ってくれ!」


那珂「?」


天龍「今さっき『艦娘』は、つったな?......そこの提督はどうなった」


那珂「そ、それは!」


提督(那珂と夕立たちと絡んでる時点で知能が低いわけ無いのに言動と行動のせいで台無しだな......)


提督「死んだよ?屑だと言われていたそいつは死んだ。今までの所業のせいだな。死に方はホントに哀れだったらしいぜ」


加賀「それって......」


青葉「......まさか」


夕立「提督が危ないっぽい」


比叡「そんな!」


提督「あくまで可能性だ。ま、だからと言って俺は死ぬつもりなんて一切ない。那珂にさっき叱られちまったしな」


那珂「うっ......ふ、ふん!///」


提督「もし撃ってきてもこれで斬るさ」チャキン


提督「ま、今日はもう遅い。すまんな集めて。明日に備えて休んでいいぞー」





那珂「いじわる」


提督「すまんって......なぁ、那珂」


那珂「......何?」


提督「こっち来てくれよ」


那珂「むぅ......それでなっ」ビクゥ!


提督「すまん......少しこう、させてくれ」ギュッ


那珂「......うん。初めてだね。弱音吐くのは」


提督「ぶっちゃけ、怖くはないんだ。ただ、お前たちと離れるのが嫌だ」


那珂「......」


提督「安心して弱音を吐けるのは那珂だけだな」


那珂「そう?......ふふ」クスッ





──────────────────





提督「那珂ー、これ頼んだー」


那珂「あぁ......他のみんなは任務で不在かぁ」


提督「仕方ない。要請があったんだ。んー、あと30分くらいか?」


那珂「今は楯突く場面じゃないと?」


提督「そうだな。あちらさん方も伊達に艦隊司令の座にはついてない」


那珂「1人でも潰せるのにねー」


提督「おっとぉ、それは言わない約束だ。壁に耳あり障子にメアリーだ」


那珂「おっさん......」


提督「っ!?」ビクッ


那珂「どうし......




ビーーー!ビーーー!ビーーー!




提督「チッ!くそ、こんな時に来たのか!」


那珂「え!?待って!これって......」


提督「......出るぞ」


那珂「そんな無茶な!」


提督「俺も準備する!」


那珂「刀1本でなんて無理だよ!」


提督「俺にはぎそうなんて使えない。俺にできるのは飛んでくる弾を切り落とすだけだ。前には出ない」


那珂「でも......」


提督「那珂、安心しろ。死ぬ気なんて一切ない。お前がそう思わせてたんだ」


那珂「......分かった」コク





戦艦棲姫「頭の痛みの出方について分かって来ました」


イ級『体にお障りにならないように......』


ヲ級「そうですね」


ヨ級『2人だけ......です』


戦艦棲姫「......そう。もう諦めましょうか。私には新たな目的できました。前の目的は止めにしました」


ル級「それは?」


戦艦棲姫「あなたたちの元いた場所にいる海軍を倒すことにしましょう」


リ級「......大きく出ましたね」


戦艦棲姫「私にも個人的な恨みがあるんです......さぁ、始めましょう」





那珂「っ!いきなり!?報告は嘘だったの!?」


提督「那珂、本来の使い方とは違うが本営と佐世保に偵察機を向かわせて報告させろ」


那珂「うん!」


提督「チッ!俺たちは敵さんに愛想つかされたみたいだな......無能なおっさん共が余計な事しゃーがって」


那珂「これじゃあ、提督が危ないよ!」


提督「そのための軍刀、だ!」キィン!


那珂「妖精さんたちは!?」


提督「安全な場所に避難させた!」


那珂「加賀さんたちがいれば......」ドォドォン!


提督「タイミングが悪いな......」





リ級「......は?あの人間砲弾を切った?しかも海の上に立ってるのか?」


ヨ級『いえ......あれは妖精の力を感じ......ました』


ヲ級「1発でダメなら数で押し切りましょう」


ル級「私が行きましょうか?」


戦艦棲姫「......何故か頭が痛みますね。ですが、面白いものを見せてくれた代わりに俺に私も見せて上げましょう」ドォォォォン!


ル級「外れ......ましたね」


戦艦棲姫「わざとですよ」




ドゴォォォォォォォォォン!




提督「......は?」


那珂「......嘘でしょ?」


提督「人がいないところに落ちたから良かったものの......今のは威嚇にしちゃやりすぎだろ」


那珂「砂浜にでっかいクレーター......」


提督「前見ろ!」


那珂「え?うわぁ!」(小破)


提督「だ......らぁ!」ズバァ!





戦艦棲姫「......2人相手に被害が......10人もの犠牲ですか......私が命令して出てしまった被害。ごめんなさい。しかし、あちらも消耗している筈です」


ヨ級『状況は向こうの艦娘は......現在中破、人間の方は......かすり傷多数、爆風による火傷多数......です』


ル級「交戦から15分......なかなか粘りますね」


ヲ級「敵艦載機の気配は、ありません」


戦艦棲姫「それでもタイムリミットはあります。私が狙います」


ル級「ハイ。ヨ級、引かせろ」


ヨ級『御意』チャプン......


戦艦棲姫「殺そうと思えば痛みますから......当てることだけを考えれば......」ドォォォォン!





那珂「くっ、しっつこいなぁ!しつこいのは嫌われちゃうよ!」ドン!ドォン!


提督「那珂!深追いするな!」


那珂「分かった!すぐ戻る!」ドォン!


那珂「ふぅ......」クルッ


提督「っ!那珂ぁ、危ねぇ!」


那珂「えっ?」


提督「くっそがぁ!」ザッ




ドゴォォォォォォォォォン!


ザザザザザザザザ────────





──────────────────





「......あれ?痛くない」


最凶最悪の相手から放たれた砲撃は自分をしっかりと捉えていたはずだ。外れたのだろうか......とんだ命拾いだったな、と思う。そう言えば、私に危険を教えてくれた彼は?と思い辺りを見回す。それらしき人はいない。ただ、自分がいたであろう場所が海の色と混ざり紫色になっていた。


彼女の中で焦りが芽生える。


「嘘......だよね」


嘘でありますように。どうか、彼ではありませんように、と。心の中ではそう思っていても分かってしまった。見たくない、考えたくない、そう、思いたくない。


「てい......とく?」


「......だからぁ......背を向けんなってぇ......いって、ただろうが......」


呼吸が乱れかけ息が荒くなっている。また、火傷も酷かった。体の半分以上を熱風の被害を受けている。


しかし、それだけではなかった。深紅の体液が流れ周りが紫色に変わっている。それほどのケガだった。


彼の右腕がなくなっていたのだ。


「......那珂、もど...れ。そろそろ......かえって、くる」


「嫌だ!置いていきたくない!行きたくないよぉ!」


「那珂ぁ......はやく、し......


意識がなり、力が抜けた。


「──君!──君!」


泣きながら何度も彼の名前を叫ぶ。敵に背を向けることは如何に高慢であり、傲慢であり、命をかなぐり捨てるものかを体に叩き込まれてきた。しかし、那珂にそんなことを思い出すことは出来なかった。


そこに2体の深海棲艦が近づいてきていることを知らずに





──────────────────





敵に背を向けるなんてというのは前にも出した通りだ。しかし、それ以上に命を落とすことを分かっていながらも火の中に飛び込むなんてそれらにバカが付け加えられるほどの愚かな行為だ。


そして今も尚、庇われた人間が背を向け声をあげ泣き喚く。もう聞き飽きたのだ。主砲を向け「殺す」という意思を持たずに「当てる」ことだけを意識すれば結果は同じだが痛みは出ない。簡単なことなのになぜ思いつかなかったのだろう、と思う。


「さぁ......では、2人一緒にさよならですね」


そう言い主砲を向けた瞬間、向うにいる艦娘が何かを叫ぶ声が聞こえた。本当にげんなりとしてきた。そして、それが名前だと分かった瞬間に起こったのは例の痛み。


「あぁぁぁ!何で......?痛い......」


今までで一番強い痛みだ。どこかできいたことがあるというレベルではない。


その名前は自分が生きていた頃の仲の良かった友人。そして、別れを告げる際にお互いの気持ちを伝えあった瞬間的な恋人。


思い出してしまった。


「あぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁ!」


やってしまった。


撃ってしまった。


殺してしまった。


戦う前、彼は自分が呼びかけることを知っていて、呼びかけてきた。それなのに自分は戦いを仕掛けたのだ。責めるべきは自分自身。目を醒ました時、生まれた違和感を自覚したのと同時にそれを壊してしまった。


「姫!大丈夫ですか!?」


「駆逐艦!行ってこい!」


となりで自分の代わりに指示を出す声を静止できない。自分を恨む気持ちとそれが間違っていてもこのことを引き起こしたこの世界を恨む気持ちが急激に強くなっていく。


仲間に連れられ水底に帰っていくのだった。





──────────────────





ドォォン!ドォォォオォォォン!




青葉「那珂さん、大丈夫ですか!?」


天龍「那珂!」


夕立「那珂は大丈夫っぽい!?」


那珂「ねぇ!お願いだから死なないでよぉ!」


比叡「司令!?」


加賀「......っ、那珂、早く戻るわよ」


那珂「だって!──君が!」


天龍「てめぇ!早く戻るって


加賀「那珂、顔を上げなさい」




パァァァン!




那珂「......え?」


加賀「......提督はあなたを信用していのよ?あなたは提督のこと好きなんでしょう?助けたくないのかしら?」


加賀「私は助けたいわ。本当なら私一人で。士官学校時代から好きだったわ。あなたが助けないのなら私が助けて意識が戻ればなんでも言うことをきかせるわ。それでもいいのかしら?」


那珂「っ!」フルフル


加賀「嫌なら早くなさい」





比叡「加賀さん?......大丈夫ですか?」


加賀「ええ......軽い自己嫌悪よ。私って嫌な女ね」


比叡「いえ......正しいですよ。そして、強さも兼ね備えてますから」


加賀「ふふっ、ありがとう」


天龍「そう言えば、さっき提督のこと好きって......」


加賀「あら、本当のことよ。あなたたちは違うのかしら?」


比叡「ひえっ!?わ、私は普通ですけど......」


加賀「あなたには期待してないわ。お姉さんのことになるとレズっ気前回ですから」


比叡「ひどくないですか!?」


天龍「俺は......好き、かな?」


夕立「夕立も好きっぽーい!」


青葉「私も好きですよ?」


那珂「......」





──────────────────





バカ提督「大丈夫か!?」ガララッ!


球磨「バカ、落ち着くクマ」


加賀「......ハァ」


主任妖精「ギリギリだったな......」


軍医「えぇ......ただ、この施設じゃ足りないですね」


比叡「では、どこかへ移動ということですか?」


軍医「そうなります。本当に運が良かったですね。主任妖精さんが人間でも海上移動できるものを作っていなければ那珂さんを押し出した時に慣性が消されて直撃でしたよ」


主任妖精「掠っただけでもこの威力......酔狂なものを作っちまったと思ったが思わぬところで役に立ったか」


時雨「那珂、大丈夫だよ。君を責める人は誰もいない。君はごく普通なんだよ」


那珂「うん......うんっ」ポロポロ


天龍「ばーろぉ」ゴスッ


那珂「あいたっ!」


天龍「お前が泣いてっと提督、本当に逝っちまうぞ」


青葉「この人は悪戯好きでしたからね......ホントに死んで泣く姿を見られるかもしれませんよ?」


夕立「......本当にしそうっぽい」


瑞鶴「あの時もだったもんね......那珂ったら急に倒れた提督を


那珂「あーもう!ストップストォォップ!分かったからやめてよぉ!」


日向「静かに」


那珂「あっはい」


山城「ぷっ......」


日向「加古が寝てるんだよ」


加古「Zzz......」モゾモゾ


バカ提督「この状況で寝れるって尊敬するわ」


軍医「......まぁ、そういうことで提督さんは今日中に移動させますので」





バカ提督「あー、提督ん所のちょっといいか?」


加賀「はぁ?いいわけ無いでしょう」


比叡「そうですよ。くたばっててください」


青葉「いつお見舞いに行くか段取りを決めてるんですよ」


天龍「これだから......」


夕立「黙ってるっぽい」


那珂「慈悲はないよ」


バカ提督「うわぁぁぁぁん!くまえもぉぉん




パシィィィィ!




球磨「バカは触れるな。くまえもんとかふざけるな」


バカ提督「あっはい」


球磨「さて、元帥からの伝言があるクマ」


山城「辞令ね......」


球磨「今日を以て提督が快復するまで佐世保鎮守府に移動を命ずる、クマ」


天龍「語尾が戻った......」


青葉「さすがは木曾さんの姉ですね」


夕立「そんなことより、提督と離れるっぽい?」


バカ提督「いや、移動する場所を聞いたらうちのすぐ近くだ。あいつが元帥と俺に頼んだんだよ。自分に何かあったらお願いしますってよ」


バカ提督「感謝してやれよ」


加賀「待って欲しいのだけれど。ここを開けるということは危険ではないかしら」


瑞鶴「それは中央の第二位が来るらしいですよ?」


比叡「あの、エリートぶってる?司令のことを確か......」


青葉「敵視してるって聞きましたけど......」


時雨「エリートぶってるからこそそんな行動は取らないよ。安心していいと思う」


バカ提督「というわけで、俺にお世話になるわけだし俺と恋しちゃってもいいんだぜ?」


日向「自惚れるなよバカ」


山城「バカはどうあがいてもバカなんですよ?」


バカ提督「みんな俺に厳しすぎやしないでしょうかねぇ」





──────────────────





不思議な感覚だ。周りには何もない。ただ、白い靄のように霞みがかっている。


「どこだここ?」


呟いてみても返事はない。


向こうから声が聞こえる。霞んではっきりとは分からないが2人いるようだ。近付き、少し見ているとこちらに気付いたようだ。笑いながら寄ってくる。


「君たちは?」


笑いながら口を開いたが何を言ったのか聞こえない。そのうち1人が急に苦しげに散っていった。


呆然と見ていると左手を掴まれた。その方向を見るともう1人が何か一生懸命に喋っているようだった。こっちも消えかかっている。それでも、ただただ一生懸命に伝えようとしている。そこで初めて助けて欲しいのだと分かった。分かったのと同時にもう1人の方も消えていった。


「......助ける?誰を......」


独り言を呟いたのと同時にそこの景色は真っ暗な世界へと変わっていた。





「ん......ぐぅ......」


目の前が真っ暗だ。ここはどこだろうか、などと考えながら目を動かしていると瞼の裏だと分かった。少しずつ目を開いていく。まだボヤけている様ではっきりと見えない。何度か瞬きをするとやっと、視界が回復してきた。


「うぐぅ......つぅぅ......」


体中に激痛が走る。左手を見ると彼の秘書艦が手を握ってくれていたようだ。ここで部屋を見ると自分から見れば右側にドアがある。何故、ドアに近い右側に座っていないのだろうか、と訝しんで違和感に気付く。彼は考えるときは「右手」を顎に当て、如何にもなポーズを取る。違和感を確かめるために右手を見た。いや、この場では「右腕」があった方向を見た。


「あぁ......そうだったな」


普通の人なら驚いて泣くまではいかなくても声をあげるくらいはするだろうが彼は自分に関心がなかった。前に一度手を握ってくれている彼女から自分をもっと大事にして欲しいと言われ関心を持つようにしたがそんな急につくものでもない。


ただ、反応がそれだけかというとそうでもなかった。眉を顰めてとても悔しそうな顔をしたのだから。


もう、その時のように両腕で抱きしめることすら出来ないのかと思うと辛いようだった。


「......左手が残ってるだけマシか」


左利きだしな、と心の中で付け加えるが本心ではもっと別のことだ。


握られている手をそっと、解き寝ている彼女の頬を撫でる。


「ん......んむぅ......」


猫のように顔の位置を少しずらす。


「なにこれかわいい......」


そんなことを1人呟き引っ張ってみた。


「ん......むむ......んぶっ」


「あっ、やべえ」


摘んだものの手に力が入りにくく手が滑ってしまった。そのせいで彼女を夢の国から引き戻してしまった様で悪かったなと思った。


彼女は目を瞬かせている。


「......──君?」


「何?」


「起きたんだね?」


声が震えている。きっと我慢していたのだろう。


「──君!」


急に抱きつかれて痛みが無かったわけじゃない。それどころか所々に激痛が走ったがそれよりも嬉しさ、喜びの方が大きかった。


「ごめんだけど......」


相手にも伝わったようだ。片手だけしかない両腕で抱き締められないという意味が伝わったようだ。


彼女は首を振るだけで泣いているのか分からないがさっきよりも大きく震えていた。





時間が少し経って落ち着くと抱擁を解いて彼女は口を開いた。


「......見た?」


怒りによるものなのか羞恥心によるものなのか──きっと両方だろう──顔を赤らめて聞いてきた。幸いにも(?)「鬼のような」や「般若のような」といった形容詞とはほど遠い顔をしている上に恥ずかしさも滲んでいることが分かるためいくら凄んでもいつもの4分の1にすら満たないだろう。


彼は「あぁ、もうかわいいな」と、年上としては嬉しいのか嬉しくないのか微妙に判断が付きにくいことを思った。だが、口にしたのは別の言葉だ。


「見たよ。ありがとう......生きてて良かった。初めて親に感謝する。産んでくれてありがとう」


......殆ど同じ意味だった。


「もう!そこは普通見てないとか言うところでしょ」


少し怒ったように見せたが演技だということは言わなくても分かっている。


「まだ、お礼言ってないよね?助けてくれて......ありがとう。生きててくれて......ありがとう」


と、泣きそうになりながら笑みを浮かべ言った。


彼は泣いて欲しくない、笑っていて欲しい、と思う相手だからこそわざと軽口を叩いた。


「泣きすぎるとブスになるぞ」


「なぁ!?もう赦さない!今度からご飯作らないから!」


今度は彼が泣き付く番のようだ。


「すいませんでした!」


こうして朝を迎えていくのであった。





──────────────────





バカ提督「良かった......心配したんだぞ」


提督「すいません......お手数お掛けしまして」


バカ提督「......毎度毎度思うけどお前が敬語使うと『お前誰?』ってなるわ」


提督「腐れろ。人が真面目に言ってんのに」


バカ提督「やっぱそっちの方がお前らしいわ」


提督「はいはい。んで、要件はなんだ?1人で来たからにはそれなりの理由があんだろ?」


バカ提督「はぁ......やりづらいぜ」


提督「察しがいいと言ってくれないか?」


バカ提督「どちらにせよ今回のことに関してはマイナスの方向でな」ニヤッ


提督「違いない」ニヤッ


バカ提督「冗談はここまでにして手っ取り早く済ませよう。後では話せないからな」


提督「?」


バカ提督「元帥から情報が来た。まず写真だ。この姿で間違いないな?」スッ


提督「あぁ、間違いな......」


バカ提督「おい、どうした?」


提督「あ、ははは......はははははは......そんなわけ無い。違う。絶対に違う......」ガタガタ


バカ提督「おい!大丈夫か!?」


提督「はは、ははは......」ガタガタ


バカ提督「落ち着け、落ち着くんだ。深呼吸しろ」


提督「はぁ......はぁ......」


バカ提督「そうだ。ゆっくりでいい......慌てなくていいから」


提督「はぁ......すまん......」


バカ提督「いや、いいが......どうしたんだ?」


提督「似てるんだよ......そう、似てるんだ」


バカ提督「似てる?何に......っと、この話は一旦切ろう」




ガラガラガラガラ




球磨「クマ?もう目が覚めてたクマ?右手は残念だったクマな......だけど左手でぬいぐるみみたいにナデナデしていいクマ」


バカ提督「あれ?俺と扱いちがくね?」


時雨「一緒のように扱ってくれって......君は一体どれだけおこがましいんだい?久しぶりに僕にも球磨みたいにして欲しいな」


夕立「あの時は夕立も沢山してもらってたっぽい!」


提督「あのさぁ......俺より全員年は関係ないとして、一応俺より全員先輩だろ?」


比叡「......」キラキラ


加賀「......」キラキラ


日向「うわっ!眩しい......」


山城「尻尾があったら音がしてそう......」


瑞鶴「加賀さんの意外な一面......いいわね」


加古「布団あったかそう......入っていい?」


那珂「いや、ダメだよ!」


天龍「っていうか、せっかく食いもんとかの許可もらってんのに渡さないでどうすんだよ......ほれ」


バカ提督「はぁ......」


提督「わざわざすまんな」




ガラガラガラガラ




??1「お邪魔しまーす!」


??2「失礼します」


那珂「あれ?なんでこんな所に?」


??1「那珂!大丈夫だった!?」


??2「あの、提督さん、妹を助けていただき本当にありがとうございました。ただ、謝らせてください。本当に申し訳ございませんでした」


??「私からも謝るよ。本当にごめんなさい」


提督「あぁ、あんたらが川内と神通って言うのか......お礼は受け取れないな」


川・神「え?」


提督「あぁ、ごめん。そういう意味じゃなくて。えーと、まぁ、なんていうんだ?」


提督「守れて良かった、と思ってるし那珂じゃなくて他の奴だったとしても同じ行動を取るだろうからそれで怪我しても謝罪されるようなことじゃない。どちらかというと守れたという勲章みたいなもんかな?」


川内「またまたー、そんなこと言っちゃって。嘘つなくてもいいんだよ?」


バカ提督「あー、そいつはいつもそんな感じだよ」


神通「そうなんですか?......あら?」クスッ


川内「ん?あぁ、ふ〜ん?」ニヤッ


提督s「?」


神通「那珂の片想いの君、と言うのはあなたでしたか......これは反対する余地はありませんね」


那珂「なっ!?」


川内「そうだね。反対どころかこちらからお願いしたいくらいだよ」


那珂「......う、うわぁぁぁぁぁ!!」ガラッ!


球磨「やめるクマァ!ここは7階クマァ!」


那珂「死なせてぇ!恥ずかしすぎるぅ!」


川内「わぁー、照れちゃってかわいい」


神通「今からでもアイドルを目指せますよ」


那珂「......」ギロッ


川・神「あっ」


那珂「お姉ちゃんたちもなりたいって言ってたでしょうがぁぁぁぁ!」


川内「う、うわぁぁぁぁぁ!!///」


神通「や、やめてー!///」


バカ提督「......何ていうか」


球磨「まぁ......」


天龍「......」


山城「どうしようもないわね......」


加賀「この姉あって妹あり、ね」


日向「まぁ、そうなるな」


時雨「仲がいいと言おうよ」苦笑い


比叡「私たちのほうが仲いいですよ!」


夕立「夕立たちも仲いいっぽい!」


加古「Zzz......」


提督「うおっ!?いつの間に入ってきてた!」





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1: SS好きの名無しさん 2015-08-08 03:48:34 ID: v8AHimq2

続きはあるのか(゚∀゚ゞ)

2: matu 2016-01-28 01:47:19 ID: TGivnG1c

続きが気になる

更新がんばってください


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