2020-07-23 13:51:42 更新

概要

今はもう退役したとある提督と艦これの世界の生まれから今現在へ至った歴史を現実の出来事を踏まえ、史実を踏まえ、振り返りながら、懐かしみながら語るお話

http://sstokosokuho.com/user/info/3157
前アカのSSをある程度読んでおくとさらに物語を楽しむことができると信じて話を作っていきます


前書き

この物語はある提督と艦娘たちの歴史をたどる物語
なぜ奴らが生まれたのか、なぜ彼女たちじゃなければだめなのか
なぜ、どうして、その疑問を時にリアルに時にSFに解き明かしていく物語となる


始まり


2012年11月某日


この世界に新種の魚類が発見された。それは機械の鱗を身にまとい漁船の網を破壊していった

けれどそれらが姿を現すのは浅瀬に鮫が現れる確率よりも低かった

被害は少なく人々は次第に忘れていった


12月某日


遂に初の犠牲者が出てしまう。それらは突如現れ近くを航行していた漁船にとびかかり乗組員事その胃袋に入れてしまった

軍はその一報を受けそれらの殲滅に動き出す

けれど並の重火器では奴らの鱗を破ることはできず一度目の攻撃はダメージを与えられず敗北する


何度目かの交戦ののちついに群れの一匹をしとめることに成功する。解剖の結果奴らは魚ではなく今まで見たことのない組織で体を構築した機械に近い何かということが発表された


前回の交戦の結果、歩兵の火器では奴らの装甲を破ることができないという結論が出た。

歩兵の飽和攻撃で何とか一匹を倒したもののやつらは日に日に数を増やしている

軍は護衛艦を使い奴らの掃討を始めた

結果多少の犠牲は出るものの遭遇から1時間もたたずに殲滅にすることに成功する


12月末


しばらく快勝を続けていたが時期に異変が始まる

なんと鎧魚に新種が現れたのである

それは全身に軍艦の砲塔を生やした化け物で何よりも恐ろしいのが体の半分がデカい顎上の形をしており顎の上部から人に酷似した何かが顔をのぞかせている

突如現れた新種は鎧魚を守るように立ち回り護衛艦を次々と沈めていったのである

条約などが絡みそのすべての性能を発揮できない護衛艦はなすすべもなくつぶされて行ってしまう

軍の会議により全面的に武装の解除を行い新種を撃破することに成功する

だが、奴らの手はそこで緩むことはなかった


12月末日


ついに恐れていたことが起きた。前回の会敵以来何とか優勢を維持できていた人類

けれど、その均衡はこの日壊された

今までは半漁人もどきと鎧魚で形成された群と戦っていた軍隊

その日2回目の戦闘の時にまたしても新種が現れたのだ

それは人間の少女の見た目をしていた。決定的に違うとすれば両腕から鎧魚のようなモノが生えておりそこから半漁人もどきとは比べ物にならない火力の砲撃を繰り出してきたのだ

その日人類は初めて決定的な敗北をしてしまう


2013年2月


幾度となく交戦し劣勢を虐げられながらもなんとか制海権を維持していた人類

過去の歴史を頼りに最新鋭の爆撃機や戦闘機などをフル稼働させ少女の化け物たちからの侵攻を抑えていた

ある時軍上層部の発案により燃料機化爆弾が作戦海域に落とされることになった

化け物たちを一か所に押し込みそのタイミングで投下したのだ

結果、敵群体を壊滅させることに成功する。けれど、環境への影響は多大なものとなってしまった

追い詰められた時の切り札としてそれは使われるようになっていった


3月某日


またしても。またしてもそれがやってきてしまう

そう。新たな新種がまたしても表れてしまったのだ

そいつは少女の体に珍妙な蛸に酷似した帽子をかぶっていた

軍はそれを発見次第即時機化爆弾を落とすよう命令を下した

が、そいつは蛸の口を開け艦載機とも思えるものを飛ばしてきた

敵艦載機は徐々に高度を上げていき爆撃機を瞬く間に撃墜していく

開戦当時から戦闘機に乗っていたエースパイロットによる決死の突貫で何とか爆弾を命中することに成功する

が、爆風が晴れた後には傷一つないそいつが悠然と立っていた

結果その日人類は完全なる敗北をし、以降制海権を奪われ続けていた

のちに長い戦いの相手となる敵の名前が決定する

深海棲艦。それがやつらの総称となった

突如海の中から現れる姿からついた名だ


4月中旬


人類はなすすべもなく追い詰められていったのである

一度は核を落とす決断を下すがもうまともに戦えるパイロットは残ってはいなかった

そして敵の艦載機は練度を上げていきもはや人類に勝てるビジョンは存在しない


そんな時彼女たちは現れた

それは旧日本海軍の軍艦が沈んでいる場所から突如現れた

船の艤装を身に着けた少女たちは近海にいる深海棲艦に突撃した。時に単独で、時に複数で攻撃をして制海権を取り戻していったのだ

ある程度戦ったのち彼女たちは軍の上層部に暗号通信を送ってきたのだ。それは第二次世界大戦時の大日本帝国が使っていたものであった

その内容は軍の指揮下に入り深海棲艦と戦わせてくれとのことであった

軍は何日も考えたのちにある男を”提督”として担ぎ上げ彼女たちの指揮にあたらせた

何とか近海の制海権を取り戻した彼女ら達だが次第に数が増えていき”提督”一人では手に負えなくなってしまう。

そして軍がとったのは一般から提督を募集し自らの傘下に入れたのち教育、育成し日本のために戦わせることだった

のちに彼女たちは艦娘と呼ばれるようになる


ここまでが一般に入手可能な情報である


そして月日は流れ7月某日


キャスター「昨晩また深海棲艦の侵略がありました。近くの鎮守府の提督により被害は最小限に抑えられました」


もう何百回と聞いたニュースだ

キャスターも機械のように感情もなく読み上げている

後に提督となりそう呼ばれる男性は携帯のテレビでニュースを見ていた


提督「いつになったら終わるんだろうな。提督なぁ……俺もそれになれたらこのくそみたいな会社ともおさらば出来るんだがな……」


当時の提督はまだ会社人であまり馴染めていなかった

元々の性格も影響して会社での居場所が徐々になくなって言っていたのだ

提督、艦娘というのはニュースで知っているが詳しくは知らない

街を歩いて帰宅しているとふと広告が目に入る


提督「なになに?提督募集?そんな簡単に募集するもんか?」


目に付いた広告には「新規提督募集!あなたもこれから提督に!!」という文字と住所が書いてあった


別に何かが変わるわけがないと思い提督はその住所に向かう


大きなビルの中に小さな事務所があり、人はいないが端末が置いてある

適当に端末をいじると様々な白地の名前が表示される。が、どれを触ってみても反応はない


提督「まぁそうなるな。簡単になれたら誰でも提督だわな。泊地?なんだそれは」


何も出来ないことがわかると提督は家に帰りすぐに床に就く


8月某日


それからひと月たち毎日ストレスを抱えながら提督はすごしていた

職場から帰宅中にある広告が目に入る


提督「これは……この前の広告か?」


それは先月目にしたものと同じ広告だった。違いがあるとすれば住所が違うのと書体が変わり目につきやすいようになっていた


提督「どうせ無理だろうが行ってみるか」


直ぐにその住所に移動する提督

今度はある程度の人がいて顛末に数台の空きがある

提督は端末の前に立ち前回と同じ手順で操作をしていく


提督「ん?ここだけ他と色が違うな…」


リンガ白地の文字が他の白地とは違い薄く青く光っていた

物は試しと提督はそこをタッチしてしまう


端末「新たな提督が着任しました!」


突如端末から音声が流れ提督はそれに驚いてしまう


提督「!?!?」


提督「な、なんだ?どういうことだ?」


何が起きたか分からない提督

しばらくすると端末にウインドウが出てくる

そこには簡単な個人情報(名前、性別、年齢、連絡先等)を入力する所がある

提督は細かいことを考えずそれらを入力していく

次は日時を指定することとなり空いてる日時を指定し登録が完了してしまう


提督「こ、細かい説明も見ずに何も考えずに登録してしまったけどどうするんだ?」


自分が愚かなことをしたと気がつく

状況を理解するために周りを見渡し受付にいる女性に声をかける


提督「す、すみません・・・。細かい説明とかが乗っている洋紙貰えますか?」


女性は馬鹿を見るめで睨んだ後、分厚い紙束をわたしてくる

それを手に家に帰り自分の部屋で読み進めていく

悲しいことにその紙束は細かい説明が乗っているのではなく登録した後のことが書いてあったのだ

その中で一番怪しい文字を見つける


「あなたはこれから艦娘という軍艦を指揮して新たに現れた深海凄艦という脅威と戦ってもらいます」


提督「あー・・・あかん奴や・・・」


当時の提督は仕事を辞めようにも周りへの迷惑のことを考えてしまい簡単に踏み出せずにいた。

しかし、今回の件はある程度の給料、そして衣食住が支給され秘書艦というものが付くということが分かった


提督「秘書艦?秘書官じゃなくて?艦。これは軍艦などの船に使われるほうの漢字だな」


読み進めていき気になったワードを検索し、調べていく

権限などが関係して調べられる限界があるがそれでも調べていく

深海棲艦についてはニュースでしか知らなかった提督は一般解放されている情報を読んでいく

軽はずみで選択してしまったことを後悔し、自分の今後を考える


提督「なるほど。で、軍を指揮するものが提督と呼ばれると。」


調べていくうちに事の重大性に気がつく


提督「これは俺が指揮をするということか?できはなくは・・・できないね。ゲームでも指揮や戦術組み立てる事なんてできないし俺ってコミュ損だろ?それが原因で職場の空気悪いわけで・・・」


提督「あーどうするんだよ!!ん?この文字は・・・」


資料を読み解き調べ自身がうかつに何に登録したのかを知る

そして最後のページに「徴兵令」という文字を見つける


提督「徴兵令?拒否権ないって?てか俺に死ねと!?」


徴兵令とは軍から直々に来るものでありそれを拒否することは理論上できない


提督「ま、まぁこれは確定じゃないはずだ。断れば・・・あれ?徴兵令って強制だよな!?はは・・・この人生面白いこと何もなかったしその時はその時だ。まともに彼女さえ作れなかったし(いたにはいたよ・・・)お国のためにわが人生捧げますか!!」


細かい説明は行ったときに聞けがいいと能天気に考え床に就く


数日後

登録した番号に電話がかかってきて詳しい面接の日程が決定する


提督「二日後の14時に指定された住所の三階に身分証を持って行けと」


後日指定された場所に行き面接を受けた。

登録した理由やいきさつなどを聞かれると思っていたが帰ってきた答えは予想外の答えだった


面接官「君みたいな若い子が来るのを待っていたのだよ。ちょうど前任の奴が問題を起こして艦隊が解体されてしまってね。場所が空いたんだよ」


話を聞くと前任者が艦娘に手を出して憲兵?というものに連行されたそうだ


提督「え?理由とかなんかを聞くのではないのですか?」


面接官「ん?登録した時点で君は提督という職業に努めることになってるよ?」


予想はしていたが拒否権はないようだ


提督「え!?やはり拒否権はないと?それと会社にどう説明すればいいんですか?」


面接官「そこはこちらに任せてください。軍のものが直接会社に話を通す段取りになってますので」


提督「軍の人がですか・・・軍!?」


面接官「ええ。私はこういう面接とかの雑用がメインですがこれでも軍属ですよ?」


そういうとテレビでしか見たことのない海軍のバッチを見せてくれた


提督「すみません。話が呑み込めないのですが・・・」


面接官「まぁここからは私も詳しくないので専門の方に代わってもらいますね」


「ここからは私が話します。あなたは下がっていいですよ」


提督は声をしたほうを向くが姿が見えない


妖精さん「あ、ここですよ」


声は下からする。視線を下げると30㎝ぐらいの後に妖精さんと呼ばれる小人がそこにはいた


面接官「では私はこれで失礼します」


面接をしてくれた人は足早に部屋を出て行ってしまう


提督「小人とは・・・」


妖精さん「今から説明。と行きたかったのですが時間があまりないので移動しながらにしましょうか」


提督「え、どういうことですか・・・?」


妖精さん「話は長いんですよ。そのあと移動してたら遅くなってしまいますので」



情報開示

妖精さん

艦娘と共に現れた未知の生命体だ

艦娘たちの話を聞くと目が覚めるとそばにいて今の状況を説明してくれたそうだ

その話を元に各自行動に移し人類の危機を救った

その技術力は未知数で現代科学から数段階、下手すると100年単位で上をいっている

主に艤装の整備や戦闘の補助、そして鎮守府の管理を任されることが多い

体長は30と小さいがその力は強く鉄骨などを1人で軽々と運ぶことが出来る、がサイズの関係で複数人で運ぶ



提督は妖精さんのあとをついていき軍の車に乗って移動をする

フルスモークされた場違いの車に乗った提督は生きた心地がしなくなっていく


車の中で妖精さんが説明をしてくいく

軍の指揮経験があろうがなかろうが始めは妖精さんの仲間が手取足取り教えてくれるそうだ

提督としてやることは主に鎮守府近海の警備にあたることだ

力をつけてくると長距離の海域の制海権の維持などを任される

場所はリンガ白地にある小さな鎮守府。別にシンガポールにあるわけではなくて白地を作ったときに分けるための名称だそうだ

呉、佐世保、横須賀、舞鶴と規模のでかい鎮守府にはそれぞれ大多数の提督が配備され、それが第1陣となりこれから提督が配備される場所は第2陣となり死角を無くすために新規で建造された鎮守府となり、新人1人につき第1陣からいる練度の高い提督3人が近くに陣取り成長するまでの間守るという形となる

規模としては初めは小さいが戦果をあげていくうちに徐々に大きくなる

人によっては今回見たく転属して新人のフォローに回る人もいる

そのために周辺の土地を買取新規で鎮守府を建造しているのが今の現状となる


妖精さん「あと1時間ほどで到着しますからね」


長々と説明していた妖精さんは一息付きながら後どれぐらいで到着するか伝えてくる


提督「は、はい。ここまで何時間かかってます?暗くなってきてますが」


車に乗ったときは明るかった空だが今では黄昏時に入り暗くなってきている


妖精さん「そうだね。車の町を離れて大体5時間ぐらいかな?」


提督「えぇ!?ご、5時間!?あれだけ説明してもらって5時間!?」


途中お茶などを飲みながら説明を聞いていたが相当の時間が経っていたのだ


妖精さん「あれでも4割ぐらいだけどね。戦果をあげていくうちに取得できる情報を開放していくからそれを抜けば7割といったところだね」


妖精さん「それと荷物は大丈夫?」


提督「あ・・・」


妖精さん「親御さんには事情説明は既にすましてあるから大丈夫。荷物は明日に部屋の中身全部届く手はずになってるから」


提督が話をする前に軍の方が先に話を通していた


提督「中身すべて・・・非常にあかん奴だ・・・」


妖精さん「大丈夫。個人情報に触れるようなことは何もしない。PCの中身なんて特にね」


提督「ひぃ・・・」


提督「さらば我が家。もう会うことはないでしょう」


妖精さん「有給上げるからたまには帰りなよ。親が心配するぞ」


提督「うぇ・・・。了解です・・・」


妖精さん「っと。話が脱線しすぎたね。では初めに秘書艦を選んでもらいたい」


妖精さんは手に持っていたリストをめくっていきあるページを開き見えるように渡してくる


妖精さん「叢雲、漣、吹雪、電、五月雨この5人の中から好きな娘を選んでくれ」


底には5人の女の子の写真が載っていたので


提督「この娘達からですか?あー思い出しました。昔の軍艦の装備を身に着けた女の子・・・そういうことですか」


何かを察する提督


妖精さん「あ!今私たちのことを幼女を戦わせる変態と思ったでしょ!!」


提督「(´・ω・`)違うんですか?」


妖精さん「違いますよ!この子たちは駆逐艦です。えー軍艦の種類はわかりますか?」


提督「(´・ω・`)NO!!」


提督「軍艦=戦艦。OK?」


それが提督にとっての全てである

実際は駆逐艦、巡洋艦、空母、戦艦と詳しく別れている

軽巡と重巡は日本のせいで別れたとか軽空母と正規空母の違いとかを無茶苦茶手取り足取り全力で軍艦について教えられた


妖精さん「はぁ・・・はぁ・・・。理解できましたか?」


提督「(´・ω・`)なんとか」


妖精さん「いい加減その仮面は外してください」


ある時から使っていた顔文字

いつしか気に入り、仮面として作ってしまう始末

結構お気に入りで使い込んでいたりするMY装備豚のペルソナ

提督はかなりそれを気に入っている


提督「で、この娘たちは性能的に大きなちがいがあるんですか?」


妖精さん「特にないですね?強いて言うのなら趣味?好み?ですかね?」


提督「えぇードン引きですわー」ジトー


妖精さん「徐々に提督君の性格を理解してきましたよ?それに初めから戦艦や空母などになると最悪艦娘に殺されますよ?」


提督「(´・ω・`)あっはい」


艦娘といえど性格や人格、好みなどがある

気に入らなければ敵視することもあれば最悪提督を殺害することもある

過去何件か事案が発生している


妖精さん「では決まりましたか?」


妖精さんは焦らせるようにしゃべり始める。いつしかなんども腕時計を確認している


提督「ふむ。性能に大きな違いがない。か。ここは趣味か?だがなぁ・・・」


手に持ったリストをもって考え始めるていとく


提督(吹雪は丸顔であまり好きじゃないし・・・(偏見)叢雲?漢字がすごくて読めないし頭のファンネルっぽいの気になるけど目つき怖いん((((;゚Д゚))))


漣は・・・活発そうだけどなんか違うんよなぁ。電は。ないなぁ・・・。ここまで幼いとないなぁ・・・。となると五月雨?髪綺麗だなぁ。優しそうな顔してるし)


提督「五月雨ちゃん可愛いなぁ・・・」


妖精さん「五月雨ですね」


提督「あ、ちょ!声に出てたの恥ずかしい!!」


妖精さんは携帯を取り出して連絡を始める


妖精さん「ええ。私です。新任の提督の件です」


妖精さん「ようやく決まりましたよ。え?1時間遅いって?まぁまぁそこを何とか」


妖精さん「彼を任せる秘書艦は五月雨にお願いします」


妖精さん「え?彼が危ない?それは彼自身の責任でしょう?」


電話の相手と何やら物騒な話をし始める


提督「話が読めないのですが」


妖精さん「ああ。すみません」


ひとしきり話し終えた妖精さんは提督に目線を向け答え始める


妖精さん「秘書艦を鎮守府に配備したんですよ」


提督「そんな簡単に済む話なんですか?」


妖精さん「ええ。もともと5人は待機してましたから」


提督「あ、森を抜けましたね。あそこに光っているのが私が勤める鎮守府なんですか?」


森を抜けるとサーチライトで照らされ光り輝く港が見えてくる


妖精さん「はい。今は規模が小さいですけどね。鎮守府に着いた後は秘書艦の指示に従ってください」


じきに規模が拡張されるのと初めは初期艦の指示に従うよう指示される


提督「ここまでありがとうございました。勉強になりました。そしてさらに勉強して早く提督として成長したいです」


妖精さん「模範解答みたいでなんか嫌だね。でも君がやりたいことを見つけてそれに全力を注ぐといいよ」


少ししてから鎮守府の敷地内に入り車から降りる


五月雨「五月雨っていいます! よろしくお願いします。護衛任務はお任せください!」


そこには写真より少し幼い五月雨?という娘がいた


妖精さん「では私は設備のチェックをしてきますね」


そういうと妖精さんは工廠のほうに歩いて行ってしまう


情報開示

工廠(こうしょう)

艦娘と建造や装備の開発他には整備などを行う場所

権限が解放されていくと装備の回収や大型建造などが可能になる


提督「・・・。君が五月雨っていうのね」


妖精さんの後ろ姿をある程度見たあと提督は五月雨と向き合う


五月雨「はい!提督!よろしくお願いします!」


空のように澄んだ髪の女の子がいる


提督「ん~まだ提督って呼ばれるのなれないな」


その後、五月雨ちゃんにいろいろと艦隊の指揮の方法を教えてもらった


提督「俺の部屋は提督室から二つ隣か」


今の鎮守府には3階建ての本部となる場所と各艦種の艦娘の寮、そして工廠がある

そしてそこの2回の真ん中に提督室がありそこから2つ隣に提督の寝室が用意された

部屋からすぐ指示が出せるようにと提督の身の安全のためである

提督の寝室には電子ロックとアナログの鍵のロックのふたつがあり簡単に侵入できないようになっている


五月雨に案内されて提督室に移動する

道中何度か躓く五月雨を支えていく


提督室に入る2人

中はダンボールが積み上げられていて机みたいになっている

他には何もない


五月雨「お疲れ様です。わからないことはないですか?」


提督「今のところすべてがわからない。が、今日はもう遅いから続きは明日にしようと思う」


五月雨「では、おやすみなさい」


五月雨と別れた提督は自室に入る

鍵とパスワードは妖精さんと別れるときに貰っている


提督「ここが自室・・・」


ベットとテーブルしかない部屋

備え付けのキッチンと並みのサイズの浴槽があるよくある部屋だ


提督「明日荷物届くんだろ?どう配置してやろうか」


しばらく考えて簡単に図面に起こして寝る準備を整えていく


提督「俺が提督かぁ・・・」


ぼんやりとベットに腰かけていたらドアがノックされる


五月雨「あのぉ・・・いいですか?」


声の主は先程見送った五月雨だ


提督「どうした?」


提督は扉を開ける。そこには枕を持った五月雨がいた


五月雨「一人きりで寝るのが寂しくて・・・」


話を聞くとこの鎮守府には駆逐、軽巡、重巡、戦艦、空母の寮があり、それぞれの艦種はそこで過ごすそうだ

規模は前から大きく徐々に小さくなっていく


提督「バカでかい館の中で一人で寝るのは怖いよな」


五月雨「べ、別に怖いとかじゃなくて!」


提督「今うちには俺と君しかいない。怖いのは仕方ないよな」


五月雨「提督って自分のこと俺っていうんですね」


提督「これでも公私は使い分けてるぞ?まぁ立ち話もあれだし入りなよ」


入口で話しても埒が明かないと考え五月雨を部屋に招き入れる


提督(うわぁ・・・初日に女の子を部屋に入れちゃったよ。てかこの流れは一緒に寝るのか!?)


何かを悟り始める提督

そしてテーブルを挟むように2人は座る


五月雨「それでですね・・・今日ここで寝ていいですか?」


モジモジしながら五月雨は話し始める


提督(まじだよ)


提督「べ、別に構わないぞ?俺も一人が寂しかったところだし」


提督「てか布団は一つしかないぞ?」


五月雨「ふぇ!?」


そんな簡単なことを考えていなかった五月雨はその一言で見てわかるぐらいに顔を真っ赤にしてしまう


提督「まぁ今はそんなに冷えるわけじゃないし俺は床で寝るからベット使ってくれ」


そそくさと提督は押し入れから毛布を取り出す


五月雨「それなら仕方ないですね。じゃないですよ!」


一瞬納得しかけた五月雨はツッコミを入れる


提督「あれか?一緒のベットで寝たいというか?今日会ったばっかの異性と」


五月雨「・・・」


一瞬考えた後に更に顔を真っ赤にする

気のせいか頭の上に煙が見える


提督「俺はもう寝る。タンスにしまってあった毛布にくるまってな。脳が処理しきれないんだよ……」


五月雨「お、おやすみなさい・・・」


五月雨は提督のベット(になる予定)に、提督は床で毛布にくるまる


あまりにも情報量が多く提督の脳では処理しきれなくなった

これから始まる提督という職務のことを考え、艦娘との付き合い方を考え、悩み始めたところで眠りについていく


五月雨(やっちゃったよ……)



1章


次の日


提督「……」


8時すぎに提督は目が覚める


提督「遅刻!!!」


携帯の時計を見て飛び起きた提督


提督「あ…れ……?」


飛び起きたが見慣れない部屋で混乱する


五月雨「な、なんですか!?」


提督のベットで寝ていた五月雨は飛び起きた提督に驚き目を覚ます


提督「誰?」


五月雨「五月雨です!昨日会ったはばかりですけど忘れないでください!」


提督はしばらく考えた後思い出す


提督「あー……。大体思い出した。仕事辞めたんだった」


五月雨「もう……脅かさないでください」


突然起こされて五月雨は胸を撫で下ろす


提督「ええと……おはよう?」


五月雨「おはようございます。提督」


ベットの上で正座した五月雨は朝の挨拶を返してくる


提督「礼儀正しいのね。何すればいいか分からないから教えてくれる?」


五月雨「はい!まずは建造をしましょう!工廠に行きましょう」


提督「了解。とその前に。着替えようか」


お互いに寝巻きのままだったのを思い出し着替えるよう促す


五月雨「へ……?」


水色の水玉模様のパジャマのままの五月雨は自分の格好を理解する


五月雨「わわわわわわ。す、すぐ着替えてきます!!」


昨日寝る前に提督は浴室に移動して五月雨に寝巻きに着替えるよう伝えていた

五月雨は慌てて着替えを手に浴室に駆け込んだ


提督「俺がそこで着替えるんだがなぁ……」


提督は前日に支給されていた提督服に着替える

身だしなみを整え帽子をかぶる


提督「帽子苦手なんだがなぁ……。似合うかな?」


提督は着替え終わって出てきていた五月雨に問いかける


五月雨「似合ってます!」


提督「ありがと。んじゃ案内お願い」


その後部屋を出たふたりは本館を出て工廠へ移動する


五月雨「それでは今日は艦の建造・・・についてやっていきましょう!」


提督「ええと。艦の建造にはあらかじめ支給されている資材を使うと」


前日に手続きを行った時にある程度の初期資材を貰っている


妖精さん「あ、提督さんいらっしゃい。説明入りますか?」


昨日と服装が違う妖精さんが工廠で出迎えてくれた


提督「始めからすべてお願いします」


妖精さんは提督たちを奥にある怪しげな機械がある場所へと連れていく


妖精さん「ではそうですね。支給されている資材をここに投入してください。量はお任せします」


情報開示 建造

建造とは。工廠にあるポットに一定量の燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトを投入して艦娘を建造する

こことは違うところにある集合意識体から特定の意識をトレースし、それに合う肉体をポットの中で錬成する

投入し材料に応じて駆逐艦から戦艦までの艦種の艦娘が建造されることである


提督「今ある資材はそんなに多くないから適当でいいか」


提督はポットの上の投入口に25/3/20/3をそれぞれ投下して建造を開始する


妖精さん「4日ですか。待ってくださいね。今調べますから」


手に持ったリストをめくっていく


妖精さん「軽巡洋艦ですね。隣もあるのでそれも使っちゃってください」


同じ量を隣のポットに投下すると5日間と表示される


もとになる建造時間を4倍してそれを日数と見てます

軽巡なら1時間だから四倍して4時間。4日となります


妖精さん「っとこれは重巡洋艦クラスですか」


それぞれ軽巡と重巡が確定する


提督「やはりかなりの日数がかかるんですね」


日数を見た提督はそうボヤいてしまう


妖精さん「あ、別に私に敬語を使わなくてもいいですよ。今回は特別ですが高速建造材を使ってみましょう」


妖精さんは手に持ったバーナーで容器をあぶっていく


情報開示 高速建造剤


バーナーの見た目をした道具

これでポットを炙ることで中の時間を進めて建造の時間を一気にゼロにする


提督「なんかすごいことし始めたぞ」


先に建造を始めたほうが終わり、扉が開くと中から煙が漏れ出す

煙の中から少女が出てくる


天龍「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」


提督「おぉ~。眼帯」


片目に眼帯をし、ショートボブの少女が中から出てくる

片手に槍を持っているのが気になる提督


天龍「お前が俺の提督か。よろしくな!」


提督「おまけに俺っ娘と来たぞ」


五月雨「天龍さんですか」


天龍「お、五月雨じゃねぇか。元気してたか?」


五月雨「はい!天龍さんもお元気そうで!」


2人は再会を喜ぶ


妖精さん「次はこっちですね」


残ったほうのポットの扉が開き中から女性が出てくる


愛宕「ぱんぱかぱーん!私は愛宕。提督、覚えてくださいね。」


中からは凄いスタイルの女性が出てくる

金髪で肩までの長さの出るとこが出まくっている


提督「おおぅ・・」


五月雨「提督!どこ見てるんですか!!」


今まで見た事なかった女性を前に硬直する提督と提督の目の前で手を振り回す五月雨


提督「っとこれは失礼。ええと……天龍さんと愛宕さんでいいんだっけ?」


天龍「おう。さんはいらないぜ」


愛宕「私もよ~」


提督「昨日できたばっかの鎮守府だけどこれからよろしくな」


提督はそう言うと深くお辞儀をし2人を迎え入れる


妖精さん「まだ資材は残ってますけどどうしますか?」


2回の建造を行うが多少の資材が残っている


提督「今は少しでも戦力がほしいから建造しますか」


まだ提督として始まったばかりの提督は指揮をすることも出来ない。ので、残りの資材を全て建造に回す

日に一定量の資材は支給されるため多少無理をしてもマイナスにはならない


同じ資材量を入れ1日と4日半と表示される


妖精さん「ええと片方は駆逐艦でもう片方は・・・これは運がいいですね」


リストを見ていた妖精さんは運がいいと伝えてくる


提督「まぁ運がいいとか悪いとかじゃなくて今は戦力がほしい」


駆逐艦と軽巡と重巡と建造ができたがまだまだ戦力としては心もとない


妖精さん「では高速建造材がないので時間を待ってください。私は他の艦娘の艤装の整備を済ませますので」


妖精さんは新規で建造された艦娘の艤装の最終調整と整備に取り掛かる


提督「艤装はまだないんだっけ?頼む」


提督「んじゃ歓迎会でもしますか」


天龍「いきなりだな」


提督「昨日提督になったやつにいきなり指揮とれって無茶だろ」


愛宕「そうねぇ~。提督は料理は作れるの?」


提督「なんとかな」


五月雨「わ、私も作れますよ!!」


提督「ここにはまだ料理担当がいないから今いる奴でどうにかしないと」


4人はまだ稼働してない食堂に移動する


提督「んじゃ二人は食堂で待っててくれ。俺と五月雨ちゃんで作れるもの作るから」


1番近い席に2人を座らせると提督と五月雨は厨房に移動する


天龍「あいよ~」


提督たちは分かれて準備に取り掛かる


五月雨「で、何を作るんですか?」


提督「ん~。実は俺ほとんど作れないんだよ」



五月雨「えぇ!?」


提督「いや初対面の女性に見栄をはりたいのが男でしょ?で、五月雨ちゃんは?」


見栄だけで嘘をついた提督

まともな料理すら作れないこの男に料理ができるものか


五月雨「わ、私もそこまでのものは作れませんが・・・」


提督「カレーでいいよな。ルーはここに置いてあるし」


冷蔵庫を開いて中身を確認してカレーの材料があることがわかる

というか何故かそれ以外のものを作る材料がない

毎週食材が支給されるがまだその日まで日がある


五月雨「ではカレーを作りましょうか」


しばらく二人で格闘しながらカレーを作っていく


五月雨「うええん。うまくできないですぅ」


少し前から泣き続けている五月雨


提督「玉ねぎの大きさはでたらめ。ニンジンは無茶苦茶」


包丁をまともに握ったことがない提督は大きさをでたらめに切っていた


五月雨「水の分量は間違えました」


鍋には並々に湯が張っておりルーが溶けだして色が少し変わっている


提督「おまけに五月雨は包丁で指を何度も切りかけると来た」


途中交代した五月雨は何度も指を切りかけたまらず提督が包丁を握ることとなった


天龍「はぁ・・・いつまで経ってもできないと思ったら・・・」


愛宕「提督は料理が苦手だったのね。初めに言ってくれたら私たちが変わってあげたのに」


あまりにも遅いため二人が様子を見に来てしまう


提督「そこは俺に見えを張らせてくれよ」


天龍「で、これはなんだ?スープか?」


提督「カレーだよ!!」


天龍「はぁ・・・俺たちに任せて二人は座ってなって」


そうして二人にキッチンを奪われて提督たちは渋々椅子に座ることになった


提督「あいつら料理できたのかよ」


<愛宕。水がある程度飛ぶまで鍋を頼む。俺は足りない材料を切りそろえておく

<は~い。私はその間に味付けでもしようかしらぁ。ルーも入れなおさないとだわ


五月雨「私としたことが・・・」


提督「はぁ・・・。皿の準備だけでもするか」


提督は立ち上がりそれに五月雨がつづ


五月雨「わ、私も。うわぁ!」


こうとしたら足を躓いて倒れてしまう

すんでのところで提督が抱きかかえる


提督「だ、大丈夫か?」


五月雨「(優しい手・・・)だ、大丈夫です!!」顔真っ赤


提督「顔が赤いぞ?」


五月雨「な、なんでもないです!」


提督「…」


五月雨「…」


天龍「提督先に皿出してお……何してんだ?」


五月雨を抱き抱えたまま2人とも思考停止して固まっていた


天龍「はぁ……。いちゃつきたいのはわかるが後にしてくれ」


ため息をついた天龍は見なかったことにして厨房に戻ってしまう


五月雨「は、恥ずかしいので離して下さい!!」


やっと動けるようになった五月雨は提督の腕の中で暴れ始める


提督「すすすすすすまない!!!。抱きとめたまでは良かったがそのあとのこと考えてなかった。ほんとうに申し訳ない」


五月雨「わ、私がバランスを崩したのが悪いですし提督は悪くありません……」


提督「うぅ……。そ、そうだ!皿出さないと!」


やっと本題を思い出した提督は暑くなった顔を手で仰ぎながら五月雨に見られないようにせっせと皿を出していく


提督(うわぁ……。とっさとはいえあんな大胆なことしちゃったよ……。彼女に悪いことしたなぁ……)


五月雨(凄く暖かくて優しかった……)


顔を真っ赤にしたまま五月雨は動けずにいる


提督「ど、どこか痛めたのか!?」


皿を並べ終えた提督は五月雨を心配して声をかける


五月雨「い、いえ!その「おう!カレーできたぞ!」」


愛宕「あらあらぁ」


鍋を手に持った天龍と炊飯器を手に持った愛宕は見つめあっている2人を見つけてしまう


提督「お、おう……」


愛宕「2人はぁそういう関係なのぉ?」


五月雨「そ、そういう!?」


一瞬考え意図を理解した五月雨は耳まで真っ赤になってしまう


提督「はぁ……勘弁してくれよ……。昨日初めてあったのにそんな関係になれるかよ。それよか腹減ったから飯にしようぜ。俺のせいで遅れてるんだし」


天龍「っち。面白くなると思ったのによォ」


察していた天龍は肩を落とす


愛宕「水気も飛ばして具材も入れ直したからこれで食べれるわ」


天龍「おう。誰かさんたちがめちゃくちゃなの作ってくれたから整えるのに手間取ったぜ」


提督「すまなかったって。じゃいただきます」


スプーンを持った提督はカレーをすくい口に運ぶ


提督「んぐっ!!?」


五月雨「て、提督!?」


口に入れてすぐむせる提督


天龍「んあ?もしかしてお前辛いの苦手なのか?」


愛宕「これぐらいのは辛いとはいえないわよ」


提督「わ、悪かったな!辛いの苦手なんだよ!」


五月雨「か、かりゃい……」


五月雨にも辛かった


天龍「あ、はははは。こいつは傑作だ。あはははは」


腹を抱えて笑い始める天龍と水を飲む2人


愛宕「そんなに笑っちゃ悪いわよぉ。はい。蜂蜜でも入れなさい」


提督「ありがとう。辛いのは置いといて美味いぞこれ」


愛宕「ありがとう。作ったかいがあるわ」


その後談笑をし食事を終える4人


五月雨「片付けは私がやりますね!これ以上2人に迷惑をかけていられません!」


提督「俺も手伝うぞ。それぐらいしか出来んし」


皿を机の上で重ねて運ぶために立ち上がる2人


五月雨「はわわわわ!」


だが、予測通り五月雨はバランスを崩して倒れてしまう


提督「なんか分かってた、よっと」


倒れかけた五月雨の手を掴んで抱き寄せる


天龍「あのなぁ……わざわざ見せつけるんなって」


愛宕「あらあらぁ」


提督「これで4回目だ」


五月雨「は、恥ずかしいのでいい加減離してください!!」


なんだかんだ言って抱きしめたままの提督だった


天龍「早く片付けしろよな」


そう言い残して天龍と、愛宕は部屋を出て割り振られた自分の部屋に行ってしまう


提督「本当に済まないな。けどケガしないように気をつけてくれ」


提督「君に怪我されると色々と困るんだよ」


五月雨「すみません……」


その後テキパキと片付けをする提督と結局2回ほど転倒する五月雨


五月雨「ふぅ。やっと終わりました」


提督「誰かさんがドジらなければもっと早く終わってたぞ?」


五月雨「提督!何度も謝ってるじゃないですか!それに提督もその度に抱きしめてましたよ?」


提督「あ、あれは……。君に怪我されると困るから……」


五月雨「本当は私目当てですよね?」


提督「うぐ……。ああもう!片付けも終わったし執務に移るぞ!何も分からないけど」


顔を少し赤くした提督は誤魔化すように話を切り替える


五月雨「只今の時刻はヒトゴウマルマルですので……」


提督「ひとご……なんだって?」


今まで普通に生活してきた提督にはその独自の読み方を理解できなかった


五月雨「えー……っと15時です」


提督「あー、そーいう?ヒトゴウで15か」


頷きながら納得する


五月雨「では提督室に向かいましょう。私も詳しくは無いですが書類仕事などがあるんですよ」


提督「うえぇ……」


ニガい顔をする提督とその手を引っ張る五月雨は執務室に消えていく


数時間後


天龍「邪魔するぜー」


やっと書類仕事に慣れてきた所でドアがノックされる


提督「天龍さんか」


天龍「おう!さんはいらないぜ。お前が頑張ってるって聞いたから夜食作ってやったぜ」


五月雨「夕食ですね」


時計の針は19時を指していた


提督「なんか済まないな。天龍ちゃ「あ゛?」ひぃ」


天龍「さすがの提督でもそれは許されんぞ?」


提督「怖い……」


五月雨「提督を怖がらせないでください!」


提督「いや……俺が悪かった……。で何を作ってくれたんだ?」


手に持ったままそれを見せるタイミングを失っていた天龍


天龍「カレーだな」


提督「また……?」


天龍「文句あるならやらんぞ?」


提督「あ、ありません!」


結局辛かったカレーを完食した提督はその後1時間かけて全ての作業を終える


提督「やっと終わった……。今後の艦隊活動の申請に資材の配分や使用の報告書、それに新規で建造された艦娘の報告ほかには……」


五月雨「増えた人数分の食料の供給量アップや艤装の申請それに」


提督「周辺の提督に挨拶を含めたメール」


相当量の作業を何とか終えた提督はクタクタになっている


五月雨「もうフタヒトマルマルなので今日は休みましょう」


提督「まさかまた俺の部屋に来るのか?」


五月雨「明日には新しい駆逐艦の娘が来ますけど……」


提督「はぁ……何とか布団を調達したから今日で最後だぞ?」


五月雨「いいんですか?」


提督「なんかもう気にしなくなってきた」


五月雨「変なことしないでくださいよ!?」


提督「するわけないだろ!」


軽く言い合ったあと別れて提督は自室に戻った


提督「やっと一人の時間だ……。いや?違うか」


提督は届いている荷物をにほどいていく


五月雨「し、失礼します。提督いますか?」


ドアをノックして外から五月雨が声をかけてくる


提督「んあ?五月雨か。今開けるから待っててくれ」


ダンボールを開きっぱなしのままドアの鍵を開けて五月雨を部屋に招き入れる


五月雨「散らかってますね」


提督「昼間届いてたみたいだからな。やれるだけやっときたいからくつろいでいてくれ」


だが部屋はダンボールが広がっていたり荷物が拡がっていたりで足の踏み場もない


五月雨「くつろげませんよ?」


提督「来るのはやすぎるんだよ」


改めて五月雨の格好を見て察する


五月雨「あ、あまり待たせてもあれだと思ったので……」


手にパジャマを持っているが髪はまだ水気を持っている


提督「はぁ……。髪、乾かしてこい」


持ってきていたドライヤーを五月雨に押し付けると浴室に五月雨を押し込む


提督「なんでそうなるのかなぁ……」


その後ドライヤーの音と途中櫛を要求してくる五月雨を他所に提督はやれるだけの荷物を片付ける


提督「まさか一緒に寝たいとか言わないよな?」


五月雨「言ったら……どうなります?」


提督「どうもこうも追い出す」


五月雨「冗談です。明日新しい駆逐艦の娘が来るのでこれで最後ですし」


提督「怖いこと言うな。まだ日は浅いがお前のこと信頼してるんだぞ?」


五月雨「ありがとうございます!嬉しいです!」


提督「夜更かしもあれだからもう寝るぞ」


話を終わらせて部屋の電気を切って提督は床の布団に潜る


五月雨「おやすみなさい」(やっぱり気づいてくれないかぁ)


五月雨の思い、提督の思い鈍感な彼にはそれが分からない


翌日


提督「7時……ちこ……!くじゃないな」


時計を見て慌てかけたところで落ち着く


五月雨「おはようございます……」


うっすらと開けた目を擦りながら五月雨が声をかけてくる


提督「起こしちゃったか。んじゃ活動開始と行きましょうか」


目覚めが良かった提督はすぐに身支度をしていく


五月雨「ふわぁ……」


ベットの上で五月雨は大きな欠伸をしている


提督「はぁ……。女の子なんだからはしたないでしょ。早く着替えてきなさい」


変えの制服を五月雨に手渡し浴室に押し込む


提督「可愛いとは思うけど恋愛感情は何か違うんだよなぁ……」


軍服に着替えて帽子をかぶると五月雨が浴室から出てくる


五月雨「……のこ……ださ……」


提督「ん?なんて?」


耳まで真っ赤にした五月雨は声を振り絞っている


五月雨「さっきのことは忘れてください!!」


提督「さっきのって?乱れた服のまま挨拶してきたことか?あくびの事か?」


五月雨「ッ!?」


目に見えて真っ赤になった五月雨は涙目で提督を睨んだ後提督の腹に全力のストレートをお見舞する


提督「ッヴ!」


そのまま提督はうずくまって意識を失う


五月雨「あ……れ?て、提督!?」


数時間後


天龍「はぁ……なんだ朝っぱらからお前たちのイチャイチャを見せつけられなきゃいけないんだよ……」


五月雨の叫び声で駆けつけた天龍は倒れている提督をベットに運び五月雨に説教をしていた


天龍「いくら恥ずかしい姿を見られたとはいえ上官を殴るとか最悪どうなるかわかるよな?」


五月雨「はい……」


天龍「お前に悪気がなかったことはわかるしこいつにデリカシーがないこともわかる」


天龍「まったく……ついてないぜ……」


提督「済まないな……」


目を覚ました提督は天龍に謝る


提督「何とか動けるから建造される……」


立ち上がろうとすると腹の虫が鳴る


天龍「く、はははは!こいつはお笑いだな!!」


腹を抱えて笑い出す


提督「し、仕方ないだろ!」


天龍「んじゃ朝食にしますか。五月雨は愛宕を呼んできてくれ」


五月雨「はい!」


天龍「提督は俺のあとをついて来い。どうせ迷子になるだけだ」


提督は極度の方向音痴で昨日五月雨と別れたあと提督室に戻れなくてウロウロしてる所を天龍に見られている


提督「すまんな」


その後食堂に移動した4人は少し遅めの朝食を食らう


愛宕「天龍ちゃん美味しかったわ。私はこの後重巡寮の掃除をしたいから抜けるわね」


提督「了解。んじゃ2人とも行きますか」


天龍「先に行くなよ。また迷子になられたら困る」


提督「そう何度も迷子になってたまるか。それにしても2人の料理は美味かったぞ」


天龍「逆にお前が出来なさすぎだぞ」


提督「うぐ・・・」


五月雨「新しい仲間を迎えに行きましょう!」


妖精さん「いいタイミングで来ましたね。では、開けますね」


タイミングよく妖精さんが現れる。機械をいじると左の容器の扉が開き中から少女が出てくる


響「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ」


中からは五月雨より少し幼い銀髪の可愛らしい少女が出てくる


提督「これは駆逐艦?でいいのかな?」


響「そうだね。暁型2番艦の響だよ。司令官よろしく頼む」


提督「ここにきて司令官呼びか・・・ややこしくなりそうだな」


響「嫌だったかい?」


提督になりそう呼ばれるのには多少慣れてきていたがここに来て新しい呼び名が出てきて困惑する提督


提督「君の好きに読んでくれたまえ」


五月雨「響ちゃん!!」


今まで静かだった五月雨が突如響に飛びつく


響「ああ。五月雨か。元気してたかい?」


五月雨「うん!」


提督「俺はこれから妖精さんに指揮について詳しく説明してもらうからみんなはゆっくりしていてくれ。もう一つの容器が開いたら一度海域に出ようかと思う」


提督「それまでにやれることをやっておきたいんだ」


容器には3日と記されている


五月雨「じゃぁ私の部屋いこ!ここには駆逐艦は響ちゃんと私しかいないから」


響「そうか。っと引っ張らないでくれないか」


提督「お前の部屋って言っても初日以降俺のへっが!!」


提督が余計なことを言い切る前に五月雨は提督の脛を蹴り飛ばして黙らせる


響「大丈夫かい?」


五月雨「大丈夫ですよ。そういう人だから。行こ」


五月雨は響を引っ張る形で駆逐艦寮に走っていく


天龍「そうなると俺は暇になるな」


提督「お前も一緒に勉強するか?」


天龍「そうだな。お前が寝ないように監視してやるぜ」


提督「こりゃきつい」


会議室に移動して妖精さんの元で指揮についてを1から勉強していく


駆逐艦寮


響「ここが五月雨の部屋か。何もないね」


五月雨「うん。だってまだここにきて三日だから」


3日間提督の部屋で寝たということを内緒にする五月雨とそれを察する響


響「なら響は他の娘たちが来るまではここで寝るとするよ」


五月雨の心境を察した響は一緒に過ごすことを宣言する


五月雨「うれしい!」


その言葉を聞いた五月雨は響に飛びつき抱きしめる


響「こら。抱き着かないでくれ。抱き着かれるのなら暁がいいんだよ」


五月雨「え?」


突然の発言に理解できない五月雨


響「こほん。聞かなかったことにしてくれ。司令官はいい人か?」


五月雨「提督?うん。すごいやさしくていい人だよ」


顔がにやけてると言いかけて飲み込む響


響「パッと見ただけでいい人だってわかったよ」


五月雨「今夜は夜更かししちゃおっか。私たくさん響ちゃんと話したいの」


響「ははは。あと三日は暇なんだろ?話すことなくなっちゃうよ?」


五月雨「大丈夫!提督のことたくさん話すから!」


響「これは面白くなりそうだ」


その日二人が床に着いたのはフタサンマルマルを過ぎていた


次の日


提督は朝から昨日の続きをしながら復習も兼ねて天龍相手に練習する


天龍「腰が座ってないぞ!シャキッと声出せ!」


人見知り気味の提督には指示を出すなど難しいこととだ


提督「わかってる!だから付き合ってくれ」


五月雨「何やってんだろ?」


会議室の前を通った五月雨と響はその光景を目にする


響「邪魔しちゃだめだよ」


五月雨「うん。ご飯食べたら部屋に戻って話の続きしよ」


昨日の夜から付き合っている響は少し疲れているが五月雨のにやけた顔と嬉しそうな顔を見てそれを楽しんでいる


響「ちなみに今どれぐらい?」


五月雨「んー6割?」


響「参ったな今日の夜には話すことなくなっちゃうね」


五月雨「そしたらお互いのこと話せばいいじゃん



2人は談笑しながら駆逐艦寮に帰っていく


その後提督は徐々に力をつけていく


そして2日が経つ


提督「大体の指揮系統は理解した」


天龍「まさかノート冊にわたってメモするとは思ってなかったぞ」


提督「俺は昔から気になったことは調べないと気が済まないタイプでな」


提督は常にメモを取ったノートを持ち運んでいる

そこには2人に教えてもらったことから自分なりに調べたこと、そしてそれを応用することなどが書き込まれている


提督「俺の不備で君たちを沈めてしまっては目覚めが悪いというか俺が死にたい」


天龍「まぁその時はその時だろ。あんまり思い込むなよ」


響「眠たい・・・」


五月雨「ご、ごめん・・・」


工廠に集まった4人

愛宕は未だ来ていない間宮の穴を埋めるために料理などに専念している


提督「二人は打ち解けてるみたいだな」


眠気まなこの二人を見て微笑む提督


天龍「まぁ毎日23時まで起きてればな」


妖精さん「あと5分です」


提督「今ある資材は2000以上。開発資材もそれなりにある」


提督が考えていると扉が開き少女が出てくる


夕張「はーい、お待たせ?兵装実験軽巡、夕張、到着いたしました!」


緑髪のショートボブの少女は夕張と名乗る


提督「駆逐艦か」一部を見ながら


夕張「あっていきなりそれはひどくない!?」


天龍「ああ。俺もそう思うな」獲物をのどに突き付けながら


五月雨「ほんっとデリカシーないですよね!」


提督「じょ、冗談だって。天龍はそれをしまいなさい」


不備の事態に備えて天龍は自分の獲物である槍を常に携帯している

本来、艤装は鎮守府内での装備は禁じられているがそれはあくまで艤装であって獲物などの携帯はある程度許可されている


夕張「ふむふむ。軽巡1、駆逐2、それにぴぴっときました。重巡が1ですか」


空を見上げて右手でこめかみを抑えて艦隊を当てていく


提督「電波少女?」


夕張「違いますって!電探で調べたんですよ。わたしにやることはありますか?」


妖精さん「それでは艤装のチェックをお願いします。あいにくとできたばっかの鎮守府なので人手が足りてないんです」


夕張「なら夕張さんにお任せあれ」


妖精さんは艤装が格納されている部屋に夕張を案内する


提督「高速建造材も一定数ある。戦艦を作ってみたい。お前たちはどう思う?」


天龍「いきなり戦艦は荷が重いだろ。というか俺たちを戦わせろ!」


提督「そういうと思った。俺の中の作戦もいい感じに仕上がっててな」


五月雨「出撃ですか?」


提督「ああ。鎮守府近海の制海権を取り返すぞ」


響「腕が鳴るね」


天龍「いよっしゃ!!世界水準を軽く超えてる天龍様の実力見せてやるぜ!」


提督「戦艦を建造に挑戦して完了するまでに近海の制海権を取るという作戦で行くが異論はあるか?」


誰も口を開かない


提督「なら建造させてもらう。一度きりだがな。残った資材で攻略していくだけだ」


40/3/60/3を投入する

表示には20日と映し出される


妖精さん「これは戦艦ですね」


中にはうっすらとシルエットが見える


提督「いよっしゃ!!あとは彼女が出来上がるまでに近海を制圧。そして艦隊の練度を上げていくぞ!」


全員「おー!」


提督の掛け声にみんなが答える


そして鎮守府近海、鎮守府正面海域に響、五月雨、天龍、愛宕の4名で出撃する

夕張は艤装のチェックなどがあり待機している

提督は艦隊の後方数百メートルで船に乗って着いてきている


五月雨「すぅ……はぁ……」


艦隊の旗艦は五月雨である


天龍「肩の力をぬけ、お前一人で全てを背負わなくていいんだ。周りを見て指示を出せばいい」


その手のことに慣れている天龍だが提督が五月雨を旗艦にしたことで補佐を買ってでた


提督「あー聞こえるか。聞こえてるなら答えなくていい。これより第1次作戦を始動する。近海を警戒しながら敵深海棲艦を索敵。見つけ次第倒してくれ。みんなまだ練度が低い。練度上げも含めてここを反復出撃する。五月雨はその間に感を掴んでくれ」


天龍「さまになってんな。んじゃ行きますか」


五月雨「はい!複横陣で移動しながら索敵してください」


愛宕「りょうかーい。索敵行くわよ」


電探を起動して索敵していく


愛宕「前方10キロに適性反応。反応からしてイ級だわ」


提督「了解。陣形を単横陣に変更。射程に入り次第砲撃を始めてくれ」


砲撃戦とは

敵と抜擢して打ち合いを始めること

各艦種ごとに射程が決まっていて長いものから先制して攻撃する

その後雷撃戦に行こうし魚雷を装備している艦種が魚雷を放つ。相手が生存していた場合夜戦へと移行する


提督は手に持ったノートを読み練習の成果を見せていく


愛宕「主砲、うてぇーい!」


愛宕の主砲が火を吹き複数の弾が発射される

イ級に命中するが致命傷にはならない


天龍「っち。俺も続く!」


そう言うと槍を横なぎして砲撃する


提督「っおま!それ砲撃機能ついてんのかよ!!」


普通の槍だと、肉弾戦や近距離専用の護身具だと思っていた提督は度肝を抜かれる


天龍「うっさい!」


命中はしたが角度が悪くダメージが伸びなかった


天龍「お前のせいで集中が切れただろ」


深海棲艦は特殊なフィールドを持っている


情報開示 フィールド


深海棲艦は特殊なフィールドを所持している

イ級クラスなら対人兵器の飽和攻撃で破ることが出来るがサイズがでかくなるとその出力も上がる

人類が敗北した一番の原因とも言える

これにより基本的な武装は全部無力化されてしまう

けれど艦娘にも同じものが備わっている

彼女たち曰く精神力や気力で貼るという

このフィールドはお互いに敵対する場合鑑賞しあって消滅する

その結果艦娘と深海棲艦はお互いを攻撃することが出来る


五月雨「だったら!」


すかさず五月雨が砲撃する


イ級「ピィィィ」


機関部に直撃し爆発とともにイ級は海に沈んでいく


響「敵、轟沈を確認したよ」


提督「お疲れ様。初めての戦闘だったがどうだ?」


愛宕「カンが鈍ってるわ」


五月雨「運が良かっただけです」


提督「なるほど。引き続き警戒しながら索敵してくれ」


その後駆逐艦3隻の編成と戦い1度帰還する


天龍「ふぅ。みんな無事に帰ってきたぜ!」


響が小破した以外は誰も被弾していない


響「やられたよ。雷撃まで敵が残るね」


提督「そうだな。今は練度上げがメインだからもう一度出撃してくれ。同じように戦ったら帰投して昼休憩だ。そのあとは2回ほど出撃して今日は終わりだ」


天龍「おう!もっと強くなってやるぜ!」


その後出撃をし案の定響が大破する


響「派手にやられたよ。司令官いいかい?」


提督「なんだ?」


響「恨んでいい?」


提督「なんで!?」


天龍「小破とはいえ被弾してるんだ。それで出撃する奴がいるか」


提督「あー……すまない……」


響「あの程度を避けれなかった響が悪い。別に本心じゃないから安心して」


提督「安心できるか。次からは気をつけるからな」


提督「んじゃ昼食にするか」


響を入渠させ1時間後に昼食を取る


提督「カレーか」


天龍「嫌ならお前の昼飯は抜きになるぞ?」


提督「そうじゃない。他には無いのか?」


天龍「無いな。材料がこれしかないからな」


備蓄はカレーか肉じゃがを作るしか無い

次の補給日は明後日である


提督「スパイス気かけせて味の変化欲しいんだよなぁ……」


同じカレーを3日間連続で食べている

間に肉じゃがが入るが基本夜はカレーのみであった


天龍「それが届くのが明後日だろ」


提督「分かってるって!なんだかんだお前の味好きだぞ?」


天龍「ッバ!い、いきなり何いいやがる!!」


突然顔から火を噴く天龍とそれに驚き理解できない提督


五月雨「ほんっっっとこの人は……」


響「最低だね」


提督「お、俺が悪いのか!?」


天龍「そ、そんなに俺の味が好きなら今夜覚悟しとけよ!!!」


顔を赤らめた天龍は提督を指さすと宣戦布告する


提督「え?殺されるの!?」


響「もういいや。カレー食べるね」


2人がワーワー言い争ってる間に他のみんなはカレーを食べることにした

その後長い休憩の後2回ほど出撃してその日の出撃は終わる

そして夜のカレーは天龍の宣言通り辛口が出され提督は泣きながらそれを食べることになった


天龍「おらおら!!俺の味が好きなんだろ?だったら残すんじゃねぇぞ!!」


提督「た、助けて……」


何故か提督のカレーだけが辛口でほかのカレーは今まで通りだった

そして昼の1件もあって誰も提督に助け舟を出すことは無かった


次の日


提督「昨日は散々な目に……」


提督室で職務に当たっている提督は目が腫れている


五月雨「あれは提督が悪いですからね?」


提督「なんでだ?俺何か変なこと言ったか?」


五月雨「はぁ……。ほんとこの人は……。もういいです。今夜も辛口になるよう天龍さんに陰口言っときますね」


提督「なんでだ!?」


五月雨「提督はご自身の発言に責任を持ってよく考えてから言うようにしてください」


提督「なんでかなぁ……」


五月雨「はぁ……」


五月雨は自分の思いも含めて発言していくが提督はそれに気がつくことは無い

そのあとはやれる書類仕事を終わらせて出撃することなくその日を終える

その後は日に4回ほど出撃し艦隊の練度と新規の艦娘を抜錨していく


提督「建造されるまで後4日」


それなりの艦娘を抜錨していったが艦隊の編成は大きく変えてなかった

様々な性格の艦娘に困惑しながら何とか提督としてやっている


五月雨「楽しみですね」


五月雨は練度を上げていっている

天龍たちもそれなりに練度が上がっていて製油所地帯沿岸までの海域まで制海権を取り戻している


提督「お前たちも強くなったよな」


上がった練度をパソコンの画面を見ながら提督は確認する


五月雨「まだまだですけれど提督のお役に立ちます!」


その日は3回ほど出撃して終える


夜、提督室にて


提督「やぁーと今日が終わった……」


制服も脱がずにベットに倒れ込む


提督「毎日毎日色んな艦娘と話して出撃してくれ指示出して書類仕事こなしてだ。精神的に参ってきたわ」


元々素のスペックが高くない提督は提督の職務をこなすだけで手一杯で毎日をギリギリに過ごしていた


提督「なんにしても弱ってる姿は見せられない。それだけは俺が嫌うことだからな」


周りに心配させないよう、自分の意思を弱らせないよう意識を固くしていく


制服を脱ぎ洗濯し、風呂に入り寝巻きに着替える


???「提督今よろしいでしょうか?」


髪を乾かすためにタオルで拭いてる時にドアがノックされる


提督「こんな時間に誰だ?」


立ち上がりドアに向かいロックを外す

今の時間はフタフタサンマルを回っている

扉を開けると五月雨が後ろに手を組みながら立っていた


五月雨「やぶにすみま……きゃう……」


提督の格好を見ると五月雨は手で顔を隠して後ろを向いてしまう


提督「ど、どうした?」


今の提督はシャツと半ズボンに肩からタオルをかけている姿だ


五月雨「あ、いえ……」


手で顔を隠しながら隙間からチラチラとこちらを見る五月雨


提督「あーだらしない姿ですまない。筋トレした後に風呂はいってたからな」


五月雨「そ、そうだったんですね……。なんか新鮮です……」


顔を少し赤らめながら五月雨は提督の自室に入っていく


五月雨「汗の匂いが……」


提督「うおあ!い、今換気するから我慢してくれ!」


五月雨「……」


提督「……」


窓を前回にしたあと2人は机に向かい合って座って黙ってしまう


提督「そ、そのどうした?」


五月雨「えっと……色々起きすぎて忘れちゃいました……」


下を向いた五月雨はか細い声でそう答える


提督「えー……」


五月雨「というかなにもなしに来ちゃ……ダメですか……?」


上目遣いで五月雨がみてくる


提督「ダメじゃないけど……」


提督「というかそういう仕草とか発言とかむやみに使うなよ。俺だからいいけどほかの男だと何されるかわからんぞ?」


五月雨「て、提督だからやってる……」ッボソ


提督「なんだって?聞こえなかったわ」


五月雨「な、なんでもないです!あ、思い出しました!」


五月雨「もし、もしですよ?艦娘に恋愛感情を含めた告白を受けたら提督はどうします?」


五月雨は自分の感情や思いもおりまぜながら発言していく


提督「んーどうだろうな。俺自身モテないの知ってるし俺なんかにはもったいないし。その気持ちは有難いけど受け取れないって言って断るかな」


五月雨「そ、そうですか……」


それを聞いた五月雨の表情は暗くなっていく


提督「それに仕事に私情を持ち込むのは俺の主義じゃない。でもまだ全ての艦娘と出会ったわけじゃないからもしかしたらがあると思うし」


五月雨「……」


五月雨(やっぱり……。私の気持ちは伝わらないしあの人には分からないんだ……)


提督「どうした?それを聞きに来たんだろ?」


五月雨「は、はい……」


提督「んん?もしかしたらこの話ってさみ「違います!!」」


五月雨「ち、違いますから!」


目の端にうっすらと涙を貯めた五月雨は提督の話をさえぎる


提督「まぁそうだよな……結構仲良くなってきたと思ってたけどやっぱり上司と部下だもんだ……」


提督「思い込みとかほんと最低だよな……すまない……」


五月雨「な、なんで泣きそうなんですか……」


提督「昔ちょっとあってな……。本当は女の子と話すの怖いんだよ……」


五月雨「え……」


提督「仕事と割り切ってるから話せれるけどプライベートになると辛い」


五月雨「すみません……。答えてくれてありがとうございました。もう寝ますね」


提督「こっちこそすまんな。まぁ五月雨は可愛いから告白とかされたら受けるかもな。ははは」


五月雨「!?」


その発言を聞いた五月雨は音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にする


提督「まぁでも見た目もあって犯罪臭するからつきあえないけどな!……っがぁ!!!」


顔を見られないように下を向いていた五月雨は突然提督の膝を蹴り飛ばし溝打ちに膝蹴りを入れ、そのまま提督の足を払い部屋から飛び出していく


提督「う……が……」


声にもならない悲鳴をあげながら提督は気絶する


翌朝


天龍「起きてるか?遅刻してんぞー」


普段提督が起きてくる時間になっても起きてこないので天龍が起こしに来る


天龍「返事がないか。まだ寝てんのか?そんな疲れるようなことしたか?」


ここ連日のことを思い出して寝坊するようなことがないのを確認する


天龍「はぁ……。おれがおこすの、あれ?」


鍵がかかっているであろうと思いながらドアノブを回すと扉が開く


天龍「おいおい。三重だか何重だかか忘れたが鍵あんじゃねぇの……おい!!」


扉を開けると床で提督が蹲り気絶している


天龍「おい!大丈夫か!!誰にやられた!!まさか敵襲か?いやそんな気配は電探には……」


提督を揺さぶりながら電探の反応を探す天龍


提督「うぐ……」


天龍「しっかりしろ!くそ!」


埒が明かないと考えた天龍は提督を抱き抱え医務室まで走る


医務室


天龍「はぁ……はぁ……」


さすがの天龍も大の大人の男性を運べば息も切れる


提督「いっつ!」


ベットに横たわらされた提督はしばらくして目を覚ます


天龍「やっと起きたか。誰にやられた!覚えてる限りでいいから答えろ!」


提督「こ、こは……天龍……?」


天龍「俺だ。お前の自室で倒れてたのを見つけてここまで運んだんだ」


提督「倒れ……五月雨……」


倒れる前の記憶を思い出し五月雨の名前を口にする


天龍「五月雨?あいつもやられたのか?いや朝あってんぞ?」


提督「いや、あいつに……」


天龍「話がおかしいぞ。詳しく聞かせろ」


昨日の出来事を細かいところを伏せながら天龍に伝えていく


天龍「く、ははは!あははははは!」


それを聞いた天龍は腹を抱えて床をころげ回る


提督「その反応は酷くないか!?殴られたんだぞ?!」


天龍「はははは!これは面白い。どう聞いてもお前が悪いわ。はははは!」


目に涙を浮かべながら天龍は提督が悪いと伝える


提督「俺が悪い!?何もしてないのに……いつつ」


全力で殴られた胸をさすりながら心当たりがないと答える提督


天龍「ほんとお前って最低だよな。あいつの気持ちも考えないで。これ以上は俺は答えないからな!」


笑いながら天龍は足早に部屋から出ていく


提督「あいつの事なぁ……。俺への気持ちは理解してる。けれどあの見た目じゃ純粋に犯罪なんだよ。それに彼女と言うよりは娘とかそういう風に見ちまうんだよなぁ。結婚してないけど」


ベットに横たわった提督は誰に言うことなく天井に語り掛ける


五月雨「やっぱり気がついてたんだ。でもそんなことじゃ諦めきれないですよ……」


ドアの外で中に入ろうとしていた五月雨は提督の独り言を聞いてしまう


五月雨「だったらいつか振り向いてもらうためにもっと頑張らなきゃ!」


そう決心して医務室から離れていく五月雨。そして遠くで盛大にすっ転ぶ


提督「俺だって馬鹿じゃねぇぞ?」


そこまで聞き取れてないものの内容はある程度聞いていた提督


提督「このままじゃいかんな」


痛みに耐えながら立ち上がり天龍が持ってきた制服に着替え提督室に向かう


提督「すまない。ちょっとあって遅刻した」


何も知らないという顔で部屋に入り掃除をしていた五月雨に謝る


五月雨「お、おはようございます……」


提督「声が小さいぞ?朝食はちゃん食べたか?」


提督「昨日のことは俺が悪かったから機嫌を治してくれないか」


五月雨「……」


提督「無理もないか。仕事しますか」


その後沈黙が続く中書類仕事をしていく


五月雨「お茶入れました」


しばらくすると五月雨が後ろに手を組みながらお茶を入れてくれる


提督「すまないな」


五月雨「昨晩はすみませんでした……。錯乱してて……」


提督「殴ったことか?蹴り飛ばしたことか?」


五月雨「全部です!提督に手を出してしまいました……。上官に……。私はどうなりますか?」


提督「あー天龍に聞いたわ。どうしたいんだ?」


五月雨「……やです……」


提督「ん?」


五月雨「解体は嫌です!」


提督「ぷ、はははは」


突然提督は笑いだしてしまう


五月雨「え……?え……?」


提督「誰もそんなことしないわ。別に俺は怒ってなんかないぞ?」


提督「それにあれは俺が悪いと言ってるだろ?それかアレか?バツが欲しいとかか?」


五月雨「そうだけどそうじゃないというか……」


提督「だったら今日は俺の部屋で寝るか?いっその事二人い……」


天龍「ええ。はい。うちの提督が艦娘に手を挙げて。はい。もうすぐ?わかりました」


冗談を言っていたつもりの提督は話を聞いて電話をしている真顔の天龍と目が合う


天龍「よかったな。これから憲兵が来るってよ」


提督「へ?」


天龍「五月雨を見ろよ。うずくまって泣いてンぞ?」


今まで黙っていた五月雨の方を見るとうずくまって小さい声が聞こえる


提督「あー……。あー……」


全てを察した提督は


提督「本当に申し訳ありませんでした!!」


すごい勢いで土下座をする


提督「今のは俺の失言だし悪いのは俺でしかない。何度も何度も申し訳ない!!」


頭を何度も地面にたたきつけなから五月雨にあやまる提督


五月雨「……」


天龍「ふふふ」


それを見ている天龍はバレないように笑いをこらえている


提督「多分謝れるのはこれが最後になると思う。俺はこれから捕まるし戻ることはないと思う」


五月雨「……はは……」


提督「だからゆるし……あれ?」


うずくまったままの五月雨は肩を上下させて笑いをこらえている


天龍「も、もうむり……はははは!」


後ろでは天龍がまた転げ回っている


提督「な、なんだ?」


五月雨「やった。やった!」


顔を上げた五月雨は目に涙を浮かべながら笑っている


提督「どういうことだ?」


五月雨「はははは!ほんと提督は面白いですね!ははは」


女の子座りをしている五月雨はお腹を抑えながら声を上げて笑っている


提督「天龍ゥ!!」


察した提督は天龍の方を見るがそこには誰もいない


提督「あの野郎逃げやがったな!」


五月雨「あーあほんと面白い。これで懲りましたか?」


提督「あ、ああ。完全にセクハラだわ」


五月雨「殴られるより効きました?」


提督「思いっきりな」


五月雨「これに懲りたらセクハラまがいの発言は控えてくださいね」


提督「控えるよう努力するけど君もだぞ?」


五月雨「へ?」


提督「俺に対しての発言の数々、無防備な姿それらを気をつけろってことだ」


提督「俺だって男だ。恋愛対象にならなくても溜まるもんはあるぞ?」


五月雨「まーた言った」


提督「うっそやん」


五月雨「ふふ。冗談ですよ。それに提督にだけですよ?」


提督「なにがだ?」


五月雨「何がでしょうねぇ?」


いたずらっ子っぽく笑った五月雨はそのまま仕事に戻る


提督「んん?」


意図を理解できない提督も仕事に戻る

その後やることをやりながら3日が経つ


提督「ふわぁ……」


眠たい目を擦りながら提督は提督室に移動している


五月雨「昨日は提督が寝かせてくれないから……」


その横を五月雨が歩いている


提督「仕方ないだろ。資材管理や他のことが重なりすぎて俺一人じゃ手に追えなかったんだから」


ここ数日の出撃や練度上昇の資材消費量上昇など色々と重なり資材管理が追いついていなかった


五月雨「別に次の日にやれば……ふわぁ……」


手で口を抑えてはいるが大きく欠伸をしてしまう


提督「羞恥心とか無いのか?」


五月雨「ありますよ?でも提督じゃないですか」


提督「どういうことなのよ……」


五月雨「朝ごはん食べたら新しい艦娘を迎えに行くんでしょ?」


提督「おう。ここまでながったな色んな子を抜錨できたけど戦艦はまだだからな」


五月雨「食材もやっと入ってきましたし何食べます?」


提督「朝は白米と味噌汁に限るだろ。あ、君には作らせないからな」


五月雨「な、なんでですか!!」


提督「昨日任せたよな?指切ったよな?」


五月雨「っは!」


五月雨は右手に絆創膏をしている。そして後ろ手に隠す


提督「むしろ豆腐切るだけで指切るやつに任せたくないわ」


五月雨「作りたかったのになぁ……」


天龍「毎日毎日イチャイチャして飽きないのか?」


2人「!?!?」


いつの間にか二人の横を歩いていた天龍に驚く


提督「おっまいつから!」


倒れかける五月雨を支えながら大声をだす提督


天龍「いつからも何も途中で目に付いたから横を歩いてたぞ?」


五月雨「べ、別にイチャついてなんて!」


体制を建て直して提督の手を払い除けた五月雨が否定する


天龍「お前たちはそう思ってても俺達にはそう見えるぞ?」


にやにやしながら天龍がみてくる


提督「はぁ……。隣にいるということは朝食作ってくれるのか?」


天龍「毎日作らせておいてよく言えるよな」


ここ数日は愛宕と天龍が日替わりで食事当番をしている

朝食を食べた後工廠に移動する


提督「鎮守府近海の制海権はある程度は取り戻すことに成功した」


移動しながらこれまでのことをまとめ始める


天龍「艦娘も着々と抜錨してきてるしな」


五月雨「この鎮守府も大きくなってきましたね」


何度も出撃していくうちに艦隊は大きくなっていた

大本営からはようやく間宮、伊良湖、大淀、明石の四名が派遣されることが決定した


提督「駆逐艦は・・・白露型がそれなりに来てほかにも多数。軽巡は由良型?だっけかが幾数人は来たな。重巡は・・・ほとんど来てない」


あれから五月雨を秘書艦として天龍を補佐に艦隊運営を行っている

五月雨の能力は申し分ないが如何せんドジなため天龍がその後片付けをする形になっている


提督「んじゃお披露目と行きますか」


三人は工廠の建造エリアに到着する

端では夕張が明石に引き継ぐ準備をしながら装備のチェックをしている


五月雨「新しい仲間ですね♪」


扉が開き煙が流れ出てその中から女性が現れる


榛名「高速戦艦、榛名、着任しました。あなたが提督なのね?よろしくお願い致します。」


榛名「提督・・・」


煙の中から現れた女性は巫女服?のような服を着ていてうっすらと白みがかった髪を腰までの長さまで伸ばしている

頭には独特の形のカチューシャをしている

そして中から出てきた榛名と名乗った女性は突如泣き出し


榛名「提督ぅ!!」


提督に飛びついてくる


提督「ふぁ!?」


榛名「提督!会えてうれしいです!榛名は・・・榛名はぁ!!」


顔を見た瞬間に抱き着かれたため提督は思考停止して完全停止してしまう


提督「あばばばばば…」


五月雨「ちょっと!!離れてく、ださい!!」


それを見ていた五月雨はふくれっ面で全力で榛名をひきはがす


榛名「ああ!すすすすみません!!!」


引きはがされた榛名は提督の顔を見て深々とお辞儀をする


提督「あああ・・・いい匂い。柔らかい。優しい声。ふつくしい・・・」


焦点の定まらない目で虚空を見ながらつぶやく提督を


五月雨「むぅ~提督なに見とれてるんですかぁ!」


提督の目の前で手を振るが反応がない


五月雨「て、い、と、く!!」


五月雨は頬を引っ張る。ついでに膝に蹴りも入れる


提督「あだだだだだ。な、なんだ!?」


提督「今一瞬サンズリバーが見えたぞ…」


榛名「さ、先ほどはすみません。榛名、取り乱してしまいました」


提督「ええと。高速戦艦榛名・・・戦艦!?」


榛名「ええ。金剛型高速戦艦その三番艦榛名です」


提督「念願の戦艦を手に入れたぞ!!」


提督「それに・・・」


提督は榛名の全身をなめるように見渡す


榛名「て、提督??」


提督「(ああ。すごい美しいし、可愛い。俺が今まであった中で一番の女性だ。)好きだ」


抱きつかれたことを抜きに体に電撃が走り提督は榛名に一目惚れする


榛名「ふぇ!?」


五月雨「はぁ・・・声に出てますよ?」


提督の発言にあきれる五月雨と面白くなると思い笑いを堪える天龍


提督「うぇ!?またか!?」


榛名「ええと・・・。あってすぐ好きと言われたら榛名なんて言ったらいいのか・・・」


流石の榛名も困惑している


提督「でも榛名さんはあってすぐ抱き着いてきたよね?」


榛名「あ、さん付けはいいですので。それは・・・その・・・」


榛名「榛名は軍艦の時、国を、提督を守ることができなかったんです。今度はそれを守れると思ったらつい・・・」


提督「歓迎しよう。うちで初めての戦艦だ。しばらくは戦艦を含め戦い方を考えねば・・・」


そのあとは榛名の歓迎会をして戦艦を入れた艦隊運営を勉強していく


榛名が来てしばらくしてから

提督は空いた時間で軍艦榛名。高速戦艦榛名について詳しく調べることにした


提督「なるほど・・・金剛型最後の船で沈むことなく終戦を迎えれたと。でも副砲、高角砲、機銃の大半が外された状態で最後の戦いになったのか。そして呉の大空襲の時に敵編隊隊長機を砲側標準のみで吹っ飛ばしたという逸話ねぇ」


提督「他にも「着底したのだからもう沈まない」と言って士気が高まる・・・泣ける話ではあるが搭乗していた兵士たちは素直にかっこいいと思う。最後まで戦い抜いたのが本当にかっこいい!あぁ!すばらしい!本当に素晴らしい!」

調べていくうちに声が大きくなっていく


提督「俺が感じた電波はこれなのかもしれない。勇敢にたたかった人たちの思いを受け継いだ船。ゆえに俺はすごいと感じそしてそれに惚れたと。なるほどね」


提督「たぶん俺はあの人に恋をしたのだろう。今までで何回かはした気がするけど今回はマジみたいだ」


提督「でもなぁ・・・。俺じゃなぁ・・・」


過去のことを思い出し高嶺の花と感じる提督


提督「悩んでても仕方ないし練度上げをするか」


提督は主力艦隊を集めて鎮守府近海の警戒作戦をすることにする


提督「以上だ。何かあるものは?」


提督の目の前には五月雨、響、天龍、夕張、愛宕そして新たに加わった榛名がいる


天龍「出会ったやつ全部たたけばいいのか?」


提督「話をした限りではそうなるが、違うな」


天龍「んじゃどういうことだよ」


提督「規模が小さいやつらはそのままにある程度の艦隊をつぶしていってもらいたい。6隻で一隻を囲んでも弾薬の無駄になる」


夕張「行ってることはわかるんですけどそれだと敵が集まった時どうなるんですか?」


提督「それは追々だ。今は新しく来た榛名の実力を見たいと思う」


榛名「提督のご命令であれば榛名なんでも致します!」


五月雨「心配だなぁ・・・」


そして榛名、響、夕張、天龍、五月雨、愛宕の6隻で鎮守府近海を反復出撃する


榛名「勝っては!榛名が!許しません!」


全砲門で敵を攻撃し一撃で轟沈する


天龍「やっぱすげえな」


今まで雷撃戦まで持ち込んでいた敵艦隊を砲撃戦で殲滅することが出来た


五月雨「すごい……」


五月雨「あ、ええと……。周りを警戒しながら進撃しましょう」


少しづつではあるが五月雨の余裕がなくなってくる

その後は射程ギリギリから先制攻撃しながら敵艦隊を撃破していく


提督「ある程度榛名の練度も追いついてきたか」


戦艦の射程は長く他の艦娘より遠距離から攻撃することが出来る

結果MVPを取りやすく練度が上がりやすい

ある程度の出撃の後状況確認のために五月雨を提督室に呼び話を聞く


五月雨「次は南西諸島海域に出撃しますか?」


鎮守府近海はある程度制圧できている

よって次の目的が決まる


提督「その予定ではあるが、もう少し練度をあげておきたい」


提督「すまないが少し走ってもらえるか?」


五月雨「なんでしょう」


提督「来週の初めに南西諸島海域に進出しようと考えているからそれを伝えてきてほしい」


五月雨「わかりました」


五月雨は他の艦娘のところに走っていく


提督「あ、こげ・・・たぞ」


離れていく五月雨は何度かよろけながら見えなくなる

それから数日出撃して二日の休暇を与える


五月雨「い、いよいよですね」


進出まで残り二日となる


ここ数日のことを提督自室で考える


提督「榛名の練度はすぐに追いついた。射程もあってMVPは比較的取りやすい。だが……」


ひとつ懸念することが生まれてしまう


提督「五月雨ちゃんの指揮に余裕がなくなってるのがなぁ……」


中が深まりちゃん付けしている提督

五月雨は索敵から雷撃まで全てを見て予測して提督に変わり指揮を出している

今まではほぼ近い射程の仲間に指示を出していたから余裕はあった

けれど今は戦艦の射程が加わり彼女自身のキャパを超え始めている


提督「本当は嫌だけど榛名に秘書艦を任せるか?」


榛名は周りを見て指示の補佐をしながら戦っている

天龍が始めしていたが榛名にいつの間にか変わっていたのだ


提督「考えてても埒があかんな。1度変えて見て様子を見るか」


時間もあり提督室に移動し、無線で五月雨を呼び出す


提督「五月雨ちゃんちょっといいかな?」


五月雨「はい。なんでしょうか?」


少し口篭りながら呼び出した五月雨に話をしていく


提督「俺もいろいろ考えた末なんだがさ。榛名を秘書艦にしようと思う」


五月雨「え・・・」


提督「べ、別に君が頼りないとかじゃないからな!駆逐艦である君に戦艦も含めた目線で戦ってもらうのは荷が重いと思ってだな」


実際全てを見ながら戦う五月雨に余裕が無いのが伝わってきている


五月雨「え、ええ。確かに・・・私は榛名さんに的確な指示を出しきれてなくて・・・」


徐々に五月雨の声が震えていく


提督「う・・・(下を向いているがたぶん泣いているだろうな。ばれないように必死に我慢して・・)」


五月雨「わ、私より榛名さんのほうが戦力になれますし指揮もうまいです。私は榛名さんが秘書艦でいいと思いますよ」


下を向いていた五月雨は顔を上げ目の端に涙を浮かべながら笑顔でそう答える


五月雨「わ、私はこれで!榛名さんを呼んできますね!」


逃げるように走り出そうとした五月雨はバランスを崩してしまう


提督「っぶない!」


倒れるギリギリで提督は五月雨を支える

二人の視線が合い数秒が経つ


五月雨「は、離してください!!」


提督の手を乱暴に振りほどいて立ち上がる五月雨


五月雨「あぅ・・・!。うぅ・・・」


バツの悪そうな顔で提督を見るとすぐに走り去ってしまう


提督「あーまぁそうなるよな。半月という期間ではあるが共に過ごしてきたわけなんだし」


提督「わかってる。彼女には酷いことをした。けれど彼女には荷が重いんだ……」


しばらくしてから榛名がやってくる


榛名「高速戦艦榛名参りました!提督。榛名が秘書艦とのことなのですが、本当に榛名で大丈夫でしょうか?五月雨ちゃんのほうが向いてるとは思うのですが・・・」


榛名「というよりいいに来た五月雨ちゃんの声が震えてたのですが・・・」


提督「あー五月雨には私から直接話してある。まぁ・・・彼女はすこしドジなところがあるが確かに秘書艦としての腕はある」


榛名「なら断然榛名より」


提督「駆逐艦に戦艦も含め戦いを考えて指揮を出すのは荷が重いだろ?」


榛名「えぇと・・・。おっしゃってる意味がよくわからないのですが・・・」


榛名を前にして緊張してしまい何が言いたいかわからなくなってしまう


提督「・・・・。はぁ・・・」


榛名「え!?提督大丈夫ですか!?榛名何かひどいことをしてしまったのでしょうか!?」


提督「あ、いや違うんだ!僕が悪いんだよ。僕の人生で榛名・・・榛名さんみたいに美しい人を身近で見たことがなくて・・・その・・・緊張しているんだよ」


榛名「は、榛名が美しいなんて。榛名より金剛お姉さまのほうがもっと凛々しくて美しいです!」


提督「あ、いやすまない。まだその金剛?には会ってないもので」


榛名「はい。ぜひ会ってもらいたいものです!だって金剛お姉さまはーーーーーー」


そのあと無茶苦茶金剛について説明された

具体的に言えば昼食を取り始めてから夕食を食べ終わるまでの時間ずっと

金剛の勇志、他の姉妹艦のことをじっくりと


榛名「っは!?もうこんな時間!提督すみません!榛名、お話に夢中でつい!」


提督「いや大丈夫よ。いやぁ金剛のことになるとここまでしゃべる娘だったんだって知れてよかったよ。」


榛名「あぁ榛名の印象が・・・提督にいいところをお見せしようと思ってたのに・・・」ッボソ


提督「ん?何か言った?」


榛名「あ、いえ何も。こんな時間までしゃべってしまったんですね。時刻はフタフタマルマルです」


提督「フタフタ?ごめんまだその呼び方慣れてないんだよね。五月雨ちゃんにも言われたけど」


榛名「では、榛名と一緒にこれから覚えて慣れていきましょう」


提督「うん。これからもよろしくね榛名」


榛名「??。榛名。と呼んでくださる時と榛名さん。と呼んでくださる時があるのですが、それはどういう意図があるのでしょうか?榛名、このままでは混乱してしまいます」


提督「ん~深い意味はあまりないかな?まだ出会って間もないし俺の中の葛藤、かな?提督として上に立たなければいけない俺と美人で年上のお姉さんに敬語を使わなければいけないという自分自身のね」


提督(本当は・・・)


榛名「そうなんですね。でも提督は私たちを指揮するものですから。敬語などは使わないほうがよろしいかと」


提督「ん~そこなんだよね。難しいところだよねぇ~。まぁそのあれだ・・・これからもよろしく榛名」


榛名「はい!榛名にお任せください!!」


その日はフタサンマルマルに話を終え解散となる


駆逐艦寮


五月雨「うえええん!!!」


未だ姉妹艦が抜錨していない2人は一緒の部屋で過ごしている


響「い、いい加減泣き止んだらどうだ?ココア入れたからこれ飲んでさ」


部屋に入ってすぐ泣き出した五月雨を見て響はココアを入れてくれる


五月雨「ありがとう響ちゃん・・・ぐす・・・」


響「話は大体はわかった。榛名さんが秘書艦になって五月雨が用無しと思ったわけか」


五月雨「そう・・・」


響「それは違うんじゃないかな?司令官は五月雨に負荷をかけないようにしようとしてだと思うよ」


五月雨「え・・・?」


響「だって五月雨は一生懸命榛名さんにも指示を出してるわけだし。横から見てても余裕がないのが見て取れるよ?」


五月雨「うぅ・・・でも私はあの人の隣にいたい。だって・・・」


響「あの人のことが”好き”だから。でしょ?」


五月雨「ふぇぇ!?なんでわかるの!?」


響の的を得た答えに耳まで真っ赤にしてしまう


響「いや露骨すぎでしょ・・・司令官が見てないところでじっと見てたり、あとをついて行ったり四六時中ずっといようとしたりしてればさすがにね」


五月雨「私がどんなにアピールしてもあの人は・・・」


響「それは仕方ないんじゃないかな?」


五月雨「それはあの人が榛名さんが好きだから?」


響「ん。そうだね。それと五月雨みたいな娘は恋愛対象にしてないようにも見えるよ」


響「妹か。それか娘みたいな目で見ているのかな?」


五月雨「あの人もそんなこと言ってた」


響「正直言って羨ましい。だから危険な目に合わせたくないんだと思うんだよ」


五月雨「そう・・・。娘か・・・」


響「もう遅いから寝よう。明日じっくり話を聞いてあげるから」


五月雨「響ちゃんごめんね。ありがとう好きだよ」


響「やめてくれ。暁に好きって言われたらうれしいけど五月雨に言われたら何て言ったらいいかわからないじゃないか」


五月雨「響ちゃんってたまにおかしなことを言うよね」


響「き、気のせいさ。作戦まであと二日。英志を蓄えようじゃないか」


五月雨「おやすみなさい」


そうして駆逐艦寮は寝静まった


<ぽーーいいいい!!!

<君は犬か!いや犬か?


次の日

提督は空いた時間で資材の調整をしていた


提督「戦艦を艦隊に入れると戦略の幅が広がるな。ただ資材消費が駆逐艦の比じゃないからそこを考えないといけないし」


榛名「提督。さっきから画面をにらんで何をなさってるんですか?」


提督が執務室にあるパソコンとにらめっこをしていると榛名がやってくる

昨日、秘書艦を交代したことを思い出す


提督「あぁ。榛名か。これは簡単に言えば家計簿みたいなものさ。その日の資材消費量や今日以降の供給量などを見ているんだよ」


榛名「なるほど。となると戦艦である榛名が原因で資材が大幅に消費されてませんか?」


榛名は的を得たことを言ってくる


提督「ん~否定したいのにできないのがつらい・・・」


榛名「別に榛名は大丈夫なので艦隊から外してもらっても構いませんよ?」


提督「そうしたいんだけど・・・ねぇ?」


榛名「外せない理由でもあるんですか?先ほどおっしゃっていた戦略の幅が広がるというのに関係しているのでしょうか?」


提督「それもあるんだけどね。一番の理由は榛名。君だ」


榛名「は、榛名ですか?」


提督「そう。今、私の艦隊の中で一番練度が高いのは誰だ?君ならわかるはずだ」


榛名「五月雨ちゃんじゃないですか?提督の一番初めの秘書艦ですし。それか重巡の愛宕さんですか?」


提督「惜しいがどれもはずれだ。というよりなぜ自分だと言わないのだ」


榛名「は、榛名が一番だなんて考えられないです」


提督「ところがどっこい君がナンバーワンだ。艦隊のせいでもあるがね。戦艦の火力と駆逐、軽巡の火力では差が大きい。そして射程でも差がある。駆逐、軽巡は中距離砲撃がメインだが戦艦は切込み役でもあるため遠距離からの砲撃の頻度が多い」


提督「ということは戦艦が必然的に一番戦果を稼ぐことになる」


榛名「榛名はもしかしなくても他の人たちの迷惑になっているのでしょうか」


提督「逆だよ逆。駆逐艦の娘からよく聞くんだよ。今までだったら雷撃まで持たなかったり雷撃で初めて倒せる相手を榛名さんが倒してくれるって」


榛名「それは榛名がお役に立ててるということですね!!」


提督「故に資材消費が多くても使わなければならない。これに関しては私が上に認めてさえもらえれば供給量が増えるということを最近知ったからその点は私がどうにかするさ」


榛名「あまり無理はなさらないでくださいね。提督に倒れられると艦隊活動、それ以前の問題で鎮守府全体の機能が止まってしまいます」


提督「心配ご無用。私は昔から無駄に耐久力はある方でね。昔、まぁ学生時代の時だがね。4時間睡眠を半年続けてそれでいて運動やバイトとかをやっても倒れなかった人間だ。ここで無理をしても多少は融通が利くはずさ」


榛名「提督が大丈夫でも榛名が大丈夫じゃありません!寝る時は寝る!頑張るときはがんばる!日常のメリハリをちゃんとしてください!このまま提督を放っておくといつか大事になりかねないので榛名が提督を見張ります!」


提督「えぇ・・・四六時中見張られても私にもプライバシーというものがあってでね・・・」


榛名「その点はご安心ください。提督が寝る時間を榛名が指定します。その時間以降起きているようであれば寝るまで榛名がそばにいます。提督が夜更かしをしないようにするためにはこれが一番です♪」


提督「寝るまで?」


榛名「はい。寝るまでです」


提督「俺寝つき悪いよ?」


提督(というかこんな女性に寝るまでって・・・。寝れるわけないだろ!!!)


榛名「榛名は大丈夫です!」


提督「そういう問題かなぁ」


榛名「そういう問題です」


提督「・・・」


榛名「・・・」


提督「は、話を変えよう。そうだ。そうしよう。明日の件はわかっているな?」


この空気に耐えられなくなった提督は話を切り替えようとする


榛名「はい。明日はかねてから考えられていた作戦の日ですね」


提督「あぁ。鎮守府近海の制海権は取り返した。明日からは南西諸島海域の警戒、可能なら敵の鎮圧、撃破をしてもらう」


提督「これまでは私も後ろから駆逐艦に守られながら遠巻きに戦況を見て指示を出していた。だが、これからはそれができない。理由は簡単だ鎮守府近海は敵はさほど強くない。そして数も少なく最低限の数でも対処ができたからである。」


提督「そこを離れればどこに何がいるかわからない。よって提督本来の席であるここ。提督室から旗艦の情報を頼りに戦況を分析。指示を出していく」


榛名「なるほど。となると旗艦は誰にしますか?やはり慣れている五月雨ちゃんですか?」


提督「彼女には荷が重い。今までであればよくて戦艦クラスが1体いる程度だったがこれからどうなるかわからない」


提督「故に榛名にしようと思う。君であれば戦況を分析して各人に的確な指示を出すことも可能だろ?」


榛名「榛名ですか・・・?ええ。榛名にお任せください!!提督のご期待に応えられるよう全力でやり遂げます!!」


提督「くれぐれも無理はしないように。危険だと思ったらどんな状況でも撤退するように。これは五月雨に初めに出した指示だ。我が身大事。味方大事で行け。誰一人かけることなく戻ってくるのを優先しろ」


榛名「はい!!」


書類仕事をあらかた片付けて解散する


五月雨「榛名さん!!」


提督室から出た榛名を待ち構えていた五月雨


榛名「どうしました?」


五月雨「わ、私負けませんから!」


榛名「え?え……?」


なにがなんだかわからない榛名を他所に五月雨は逃げるように走り去る


その日の夜

駆逐艦寮


五月雨「き、緊張してきた・・・」


響「明日だね」


作戦を明日に控え2人とも緊張している


五月雨「私さ。今まで響ちゃんと一緒に寝れてうれしかったよ」


響「な、なんだよ藪から棒に」


五月雨「ここができてすぐ響ちゃんがきて。それ以降ずっと一緒に寝てるんだもん」


響「そうだね。初めは響も寂しかったけど五月雨と一緒でよかったと思うよ」


五月雨「ありがとう。私ね。明日作戦が終わったら告白するの」


響「え・・・?」


何やら不振なことを五月雨が口にしていく


五月雨「あ……。べ、別に愛の告白とかじゃないよ!?」


響の反応を見て熱くなった顔を扇ぎながら五月雨が続ける


五月雨「なんて言ったらいいのかな・・・今まで通りでもいいけど娘として扱ってほしいっていうか・・・。あー!うまくまとめきれない!」


響「はぁ・・・そんなことか。素直に伝えればいいと思うよ。彼も多分わかっているはずだから」


五月雨「そうだけど・・・。でも今は目の前の作戦だね!終わってみないとわからないし」


響「ん。もう遅いから寝ようか」


五月雨「おやすみ」


五月雨「あ、それと明日作戦が終わったら間宮行こ!私が奢るから!」


あれから鎮守府には間宮、大淀、明石、伊良湖が派遣されている


五月雨「響ちゃん今までありがとうね。私響ちゃんのおかげで踏ん切りがついたよ」(ボソッ)


響「ふむ」


そして二人は床につく


次の日


提督「各自準備は済んだか?」


提督「戦艦榛名を旗艦に重巡愛宕、軽巡夕張、天龍、駆逐艦五月雨、響の編成でカムラン半島の哨戒作戦を始める」


榛名「はい!勝っ手は榛名が許しません!」


提督「それと五月雨ちゃんいいかな?」


出撃前に五月雨をよびとめる


五月雨「なんでしょう?」


提督「なんか胸騒ぎがするんだ。頼むから無茶なんてしないでくれよ?」


五月雨「え……?」


提督「君は大切な部下でもあるが俺の大切な人でもあるんだぞ?」


五月雨はその発言に五月雨は耳まで真っ赤にして提督の目が見れなくなってしまう


五月雨「そそそそそれって!!?」


提督「あ、いや勘違いしまでくれ!いやなんだろう……」


提督「その……」


五月雨「もういいです。帰ってから聞きますから!」


耐えれなくなった五月雨が先に逃げてしまう


提督「行っちゃったよ……。なんか嫌な予感がする……。頼むぞ榛名……」


榛名「任せてください」


提督「い、いつからそこに!?」


いつの間にか横にいた榛名


榛名「五月雨ちゃんが離れたあたりからですね」


提督「そうか。ならもう一度言わせてくれ。五月雨の事頼んだぞ」


榛名「榛名にお任せ下さい!」


その後提督の指示の元、艦隊が編成される

そしてカムラン半島へと移動を始める


提督「執務室からの指示はあまり経験がない。普段より負荷をかけるかもしれないと思うがみんな頑張ってくれ」


ついていくことのできない提督は各艦とつないである無線を頼りに指揮をすることになる


榛名「みなさん。これより敵の海域となりますので警戒を怠らないように。念のために天龍さんは偵察機を飛ばして索敵してください」


天龍「おうよ!俺に任せな!」


天龍は装備されている偵察機を飛ばし周辺の索敵をしていく


提督「映像がないのがつらいところだな・・・中破艦が出たら撤退するようお願いするよ。まぁいつもと変わらないがね」


天龍「偵察機の情報では敵影は見えないぞ。どうする?」


提督「なら前進してくれ。今回はこの海域の全域を確認するのを優先してくれ。どこに敵の補給場所があるのかを把握しておきたい」


榛名「敵影がなくても各自、警戒を怠らないでください。敵はまだ未確認の部分のほうが多いので慎重に行きます」


提督「今までだと敵と遭遇するぐらいなのだが場所が違えばこうも違うというのか?」


近海ならすでに会敵しているはずだ


榛名「提督どうかなさいましたか?」


五月雨「!?。今何か聞こえたような!」


榛名「五月雨ちゃんどうかしました?」


電探に耳をすましていた五月雨は小さな音を拾う


五月雨「今2時の方向から何かが聞こえた気がしたんです」


榛名「電探には反応がありませんが」


提督「音・・・・海上ではないとしたら。ん?艦種はまだあったような・・・戦艦に空母・・・空母!?やばい!これは――――」


榛名「気のせいとは言えないので2時の方角の警戒をしながら進んでください」


天龍「榛名!いいか?」


榛名「はい。天龍さんどうしました?」


天龍「さっきから偵察機から反応が返ってこないんだ。憶測だが撃墜された気がする」


提督「空母だ!俺の鎮守府にはまだいないが空母に違いない!」


過去に数回だけ空母とは戦闘したことがある

ただその数回も敵と遭遇した後に発艦された艦載機を相手にしたものであって相手が先に飛ばしてきたということはこれが初めてである


榛名「空母ですって!?失念してました!ということはさっきの音というのは!」


榛名が気づくと同時に上空にまで接近していた敵艦載機が急降下しながら爆雷を放つ


榛名「各自散会!対空砲火打ち方始めてください!」


五月雨「ってぇー!!」


提督「敵艦載機を放っている個体がいるはずだ!索敵してくれ」


響「いたよ!3時の方角!音が聞こえたって言っていた場所よりさらにおく。距離にして15km!」


榛名「っ!敵艦隊、島影から出てきました!」


3時の方向には島がありその陰から敵艦隊が姿を出す

艦載機を先に飛ばし索敵、攻撃をしてから本体を送り出すというよくある作戦をやられてしまう


提督「編成は!?」


五月雨「あ、あれは!?」


提督「どうした!?っく!うまく聞き取れない!電波が悪いのか!」


徐々に音声にノイズが入っていく。後でわかったことだが鎮守府近海以外の海域の深部での戦闘では特殊な電波が発生して通信などができなくなる


榛名「提督!?聞こえますか敵は空母ヲきゅ―――――」


提督「通信が切れた!?くそ!」


提督「空母ヲ級?最近聞いた気がするぞ。資料をあさってみるか。大丈夫だと思うが通信はこのまま切らずにこの場で敵の情報を探ろう。みんな・・・無事でいてくれよ・・・」


通信をONしたまま近くの資料を探していく


情報開示


空母ヲ級

そう呼ばれる個体は後に重巡クラスに認定された深海凄艦が姿を現してからしばらくしてから現れた個体である

珍妙な帽子をかぶった人型の深海凄艦であり、帽子は空母の甲板と見立てそこから艦載機が放たれる

当時、深海側にも空母はいた。が、それを凌駕する力を持っていて人類の戦闘機を凌駕し制空権を奪われる

それの登場により人類は艦娘が現れるまで敗退を繰り返した


提督「なるほどな。近海で姿を見ないわけだ。勢力を広げてきているのか?それとも初めから後ろにいただけなのか?」


「・・・く・!てい・・!・・・聞こえますか!提督!」


提督「!?この声は榛名か!」


榛名「提督!?ようやくつながった!」


時間として40分。調べているうちにそれだけ立っていた

無線から榛名の声が聞こえてくる

戦闘が終わったということか?


提督「榛名!無事か!?」


榛名「っ!は、榛名は無事です・・・」


提督「ならよかった・・・じゃない!榛名は無事でも他は!?」


榛名「報告・・・します。榛名は小破です。天龍さん、響ちゃんが中破。愛宕さんが大破、夕張さんは無傷です」


提督「被害はデカいが最悪な事態に・・・え?今なんていった?天龍、響、愛宕、夕張、榛名・・・一人足りなくないか?五月雨は?五月雨はどうしたんだ!?」


榛名の報告に五月雨の名前がない

提督は嫌な予感を感じる


榛名「うぅ・・・五月雨ちゃんは・・・五月雨ちゃんは・・・」


普段の彼女からは想像できない声が帰ってくる


天龍「いっつ!この程度なんてことないからここからは俺が話すぜ。提督。これは榛名には荷が重すぎる」


反応がなくなった榛名の代わりに天龍が答える


提督「っ!ということはやっぱり五月雨は!」


天龍「ああ。提督との通信が途絶えてすぐ――――――」


天龍は通信が途絶えてからのことを話し始める

五月雨に何があったのかすべて


榛名「敵は空母ヲ級です!至急指示を!繰り返します!敵は空母ヲ級です!提督!!聞こえますか!?」


響「これは・・・敵の妨害電波で通信が切れたようだね」


徐々にノイズがひどくなりついに通信が遮断されてしまう


榛名「なんてこと!そういえば前、提督が・・・」


榛名は提督にもしもの時のことが起きたときの指示を受けていた


提督「もしも俺から指示が受けれない状態になった場合は各自で行動するのではなく旗艦に全ての指揮権を渡す。旗艦に負荷がかかるかもしれないがやみくもに戦うよりましだと俺は思う」


榛名「思い出しました。各自に通達!提督からの指示が受け入れない状態になったのでこれより指揮権は榛名に移りました!私の指示に従ってください!」


榛名「ええと・・・。響ちゃん!敵の編成は!?」


響「了解だよ。敵の編成はヲ級を旗艦に空母ヲ級、軽母ヌ級、重巡リ級、駆逐ハ級、駆逐ハ級だよ!」


榛名「空母が三隻ですって!?敵の艦載機の攻撃をよけながら響ちゃんと五月雨ちゃんは対空砲火に集中をしてください!夕張さんと愛宕さんは敵の重巡、駆逐を狙ってください。天龍さんは駆逐艦に砲撃が行かないように守ってください!榛名は空母の注意を引きながら敵を撃ちます!」


五月雨「でも、それって!榛名さんに敵の全艦載機が集中しますよ!?」


今までの経験もあり的確な指示を出していく


榛名「はい!それでも榛名は大丈夫です!ですから五月雨ちゃんたちはそっちに行った艦載機を叩いてください!二人が砲撃に集中できるように!」


指示を出していく榛名の顔は今まで見た事もないぐらい真剣だ


響「わかった。不死鳥の名は伊達じゃない」


夕張「くれぐれも無茶はしないでよね!」


天龍「はぁ!?俺がこいつらのおもりだぁ!?しゃぁねぇな!しっかり俺が守ってやるよ!」


愛宕「そっちは任せるわよぉ。こっちを早く終わらせて援護に行くまで頑張ってね!」


五月雨「無茶はしないでくださいね!」


榛名「わかってます!では皆さんお願いします!」


榛名「撃ち方・・・はじめぇ!!」


榛名の掛け声を合図に戦闘の火蓋が切って降ろされた

敵はすでに展開していた艦載機は榛名たちに向けて放ち、空母を後ろに前を重巡たちが守る複単陣を組む


榛名「少しでも響ちゃんたちの負担を減らすためにもここは榛名が艦載機の数を減らさないと!三式弾装填!てぇ!」


空を覆いつくすような数の艦載機の中心に向かい三式弾を放つ

三式弾の中に山なりを描くように徹甲弾を織り交ぜ空と海を同時攻撃する


榛名(この光景・・・。私が軍艦だった時に見た呉の大空襲と同じ・・・でも!あの時も今回も守るものがあるから!榛名は負けるわけにはいきません!」


響「敵艦載機数を減らしながらこっちに来るよ。榛名さんの頭上に数40。残りの30機はこっちに向かってきてる。やれるね五月雨」


五月雨「わかってます!やるしかないでしょ!」


響「空は私たちに任せてみんなは敵機をお願いするよ」


2人は対空砲をフル稼働して敵艦載機を攻撃していく


天龍「おうよ!って俺はお前たちの援護か。対空砲弾幕切らすなよ!」


夕張「大丈夫!私たちも守るから!」


榛名を先頭に駆逐艦を守るように輪形陣を取り、砲撃戦を始める


榛名「他の皆さんは・・・大丈夫みたいですね。妖精さん対空砲をお願いしますね。榛名は敵空母を狙います!」


対空砲の妖精さんに対空射撃を任せ榛名は三式弾を撃ちながら距離を詰める


響「榛名、敵の攻撃を躱しながら敵に接近してるよ。私たちは空に集中しないといけないから愛宕さん達は援護射撃をお願いするよ」


愛宕たちの援護射撃が始まり軽母ヌ級を中破させ、そして駆逐艦を大破と轟沈までダメージを与えた

敵も一筋縄ではいかず愛宕が中破、天龍、響が小破してしまう


榛名「これなら!」


大破してる駆逐と無傷の重巡に向かって全門一斉射撃をし、駆逐を轟沈させ重巡を中破まで追い込むことに成功する


五月雨「榛名さん!2時の方角から魚雷来ます!」


敵の動きを見ていた五月雨は榛名に魚雷のことを伝える


目の前の敵に集中していたため右舷から接近する艦載機に反応が遅れてしまう


榛名「っ!?油断した!」


敵の魚雷が命中するがダメージが小さく小破で済む


榛名「五月雨ちゃんありがとうございます!そっちの数はどうなってますか?」


一度敵から距離を取り艦載機部隊の迎撃に力を入れる榛名


五月雨「こっちはあらかた片づけた、といいたいんだけど。残ってた艦載機がヲ級の護衛に戻ったの」


弾を撃ち尽くしたのか、敵の指示なのか敵艦載機群が全て撤退している


榛名「一度合流してから再度攻めましょう!と言いたいんですけど敵機艦載機もう一度来ます!」


一度母艦に戻った敵艦載機が補給を済ませ再度発艦して榛名に向かっていく


響「敵さんは榛名さんが危険だと認識したみたいだよ。残ってた艦載機の半数以上が榛名さんのところに向かったよ。私たちはどうする?援護に行った方がいい?」


榛名「いえ、この程度榛名は大丈夫です!それよりも敵空母の殲滅をお願いします。長くはもたないので!」


天龍「やっと俺の出番だぜ!世界水準軽く超えてる俺の力を見せてやるぜ!」


夕張「私もいるって!っておいてかないでよぉ~!」


中破している愛宕を守るように天龍、夕張は敵に肉薄していく


響「皆行ったようだね。私たちも行くよ」


五月雨「でも榛名さんが心配!」


響「彼女なら大丈夫だと思うけど。でも念のために行ってあげて」


五月雨「はい!」


返事を聞きながら榛名の元に向かっていく


天龍「おらよ!」


天龍、愛宕、夕張の飽和攻撃で敵に少しずつ被害を与えていく


夕張「敵は残り4隻よ!一気に畳みかけましょう!」


榛名「敵艦載機、残り30!三式弾の残りは5発・・・やれる限りやるまでです!もう二度とあんな悲しいことは繰り返したくはないから!」


五月雨「榛名さん少しずつ焦ってるの?今助けますから!」


榛名に近づく五月雨は彼女が焦っているのがわかる


榛名「はぁ・・・はぁ・・・残弾は残りわずか・・・。提督すみません・・・」


体力が限界に達し片膝をついてしまう榛名

そこを狙ってか敵艦載機が直上から爆撃体制に入る


五月雨「榛名さぁん!」


すんでのところで五月雨が敵艦載機を撃ち落し榛名を救う


榛名「五月雨ちゃん!?なんでこっちに!」


五月雨「えへへ。榛名さんが危なかったから助けに来たの」


榛名「五月雨ちゃん・・・そうよ!榛名はまだ負けられません!」


三式弾を発射し避ける艦載機を2番砲塔の砲側照準で狙い撃破する


榛名「勘はまだ衰えてない!榛名はまだやれます!」


その一瞬の油断を見逃さなかった敵は榛名の後ろから接近し魚雷を落としていく


五月雨「榛名さん危ない!」


カバーしていた五月雨はそれに気づくがすでに遅かった

避けれないと察した五月雨は最大速力まで機関を加速させ榛名に突進して無理やり回避を試みる


榛名「え・・・なんで・・・」


五月雨「榛名さんは提督の大事な人です。私は提督の悲しむ顔を見たくないんです。だって私は提督のことがーーーーーーーーーーー」


榛名に抱きつき距離を稼ぐが五月雨の足に魚雷が直撃してしまう

その胸の中で五月雨は目の端に涙を浮かべながら笑顔でそう言う

そして五月雨の足を中心に爆発が起き2人をさらに遠くに吹き飛ばしてしまう


榛名「五月雨ちゃぁぁん!!」


五月雨が直撃したのと同じとき天龍達は空母ヲ級の撃破に成功する

指揮官を失った深海艦載機はそのまま海へと落下していく

倒したヲ級が敵の最後の生き残りで戦いが終わる

天龍、響中破、愛宕大破、夕張無傷で何とか戦闘を終える


榛名「なんで・・・。なんで私をかばったんですか!私は戦艦ですよ!?あなたは駆逐艦!かばわなくても!」


五月雨の両足は膝より下が吹き飛びグチャグチャになってしまっている。それを見た榛名の声は震え、戦場に響き渡る


五月雨「ダメ・・・なんですよ。それじゃ・・・榛名さんは提督にとって大事な方なんです。あなたに万が一があっては・・・ダメなんです」


榛名「ですが!あなたは一番初めから提督を支えてきたんですよ!?提督はあなたを失う方がもっと悲しむんですよ!!なんでそれがわからなかったんですか!!」


五月雨「!?っはは・・・。そう・・・ですよね・・・。榛名さんに自分の場所を取られた。もう自分はいらないんだとそう思ってたんですよ。最後は提督の大事な人を守ろうって思ったんですよ……」


響「え・・・五月雨が・・・沈む・・・?」


敵を撃破した響たちだが、それと同時に榛名の声が聞こえたから急いで戻ってくる

戻ってみるとうずくまっている榛名と榛名に抱えられ足が無くなっている五月雨を目にする


天龍「おいおい・・。それってあんまりだろ・・・」


榛名「だから……だからって!」


五月雨「あーあ……。こんな姿なの人に見せたくないなぁ……」


痛みに耐えながらそれでも笑顔を壊さなかった五月雨だが提督のことを思うと泣き始めてしまう


榛名「まだ……まだ修理すれば……」


五月雨「多分ダメなんです。もうこのまま沈ませてください……」


榛名「ダメです!あの人に想いを伝えるんでしょ!?」


五月雨「っ!?あーやっぱわかりますよね。でもあの人鈍感でアピールしても反応してくれなかったんですよ・・・」


五月雨「榛名さんがきて、私が秘書艦から降ろされて、でもそれでも・・・」


五月雨は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらそれでも続ける


榛名「話してる時間が惜しい!今から陸に戻ってあなたを修理します!」


五月雨「もう・・・遅いんですよ・・・。船が沈むということはあなたもわかっているはずです」


榛名「でも!まだ間に合うはずです!」


五月雨「もう間に合わないんです!!」


榛名「!?」


五月雨「榛名さんすみません。最後まで守れずに・・・これからはあなたがあの人を・・・私たちの暮らす場所を守ってください」


榛名「な、なにを言ってるんですか?あなたも一緒に行くんですよ!?あなたがいないと・・・うぅ」


榛名は懸命に止血をし、沈まないように抱き抱えている

榛名が言い終わる前に五月雨は意識を失ってしまう


榛名「さ、五月雨ちゃん!?五月雨ちゃん!!」


力いっぱい揺するが意識を取り戻すことはなく呼吸が浅くなっていく


響「榛名さん・・・。もう楽にしてあげよ・・・」


状況をやっと飲み込んだ響が隣に来て榛名に話しかける


榛名「ダメです!まだ・・・まだ助かるんです!」


天龍「お前はぁ!!」


五月雨を必死に支える榛名に痺れを切らせた天龍は榛名を掴み上げそして殴り飛ばす


天龍「っ!!お前は・・・!お前はなんでわかってやらないんだ!!五月雨の気持ちがぁ!!」


榛名「わかってます!!」


五月雨を落とさないように立て直した榛名は五月雨を抱きしめながら天龍を強く睨みつける


榛名「わかってるんです!!彼女の気持ちも!それでも!!」


天龍「ならなんで楽にしてやらないんだよ!!」



榛名「私にはわかるんです!!大破着底して終戦を迎えた私には!」


胸ぐらを掴んでくる天龍に怯むことなく榛名は強く怒鳴りつける


榛名「彼女の意識はまだここにある!沈みたくないと叫んでるんです!あの人の元に戻りたいと!」


榛名「ですから!ですからここは榛名に任せてください!」


五月雨を抱き抱え帰路に着く榛名その後ろ姿は誰も今まで見た事ないほどに悲壮感が漂っている



天龍「その後、妨害電波の影響の無いところまで移動したあと榛名がお前に連絡を入れた。という訳だ」


天龍はことの結末を五月雨の気持ちを隠して提督に報告する


提督「さ、五月雨が……」


耐性がない提督は少し吐き気を催してしまう


天龍「つらいと思うが耐えてくれ。お前は俺たちの指揮官だ」


提督「あぁ。わかっている!!すまない・・・。大破している愛宕と榛名を中心に陣を組み警戒体制のまま鎮守府に戻ってくれ。戻り次第入渠をし各自休んでくれ。俺はその間五月雨についている」


天龍「了解。通信終わり」


天龍からの通信が切れ提督は徐々に現実に戻っていく


提督「五月雨が・・・か。な・・んで・・・だよ。なんでだぁ!!!」


両手を机にたたきつけ、そのまま机に伏せて泣き始める。五月雨と出会い、新しい艦娘に出会い、五月雨との楽しかった思い出を思い出しながら提督は泣き続けた


天龍たちはその後敵の襲撃もなく鎮守府に帰還する

愛宕と被弾した艦娘たちを入渠させ榛名は自分のダメージを無視して明石の元に向かう


榛名「明石さん!!」


工廠のドアを蹴り破って榛名が部屋に飛び込む


明石「あ、え、なにごと!?」


装備の調整をしていた明石は榛名の登場に驚き椅子から転げ落ちてしまう


榛名「五月雨ちゃんが!五月雨ちゃんがぁ!!」


榛名は抱えている息も絶え絶えの五月雨を明石に見せる


明石「う……。こ、これはひどい……」


五月雨を見る明石。彼女の足は榛名の服で止血されているものの色が黒くなってきている


明石「わ、私に出来る限りのことはやります!」


五月雨を受け取ると机の上のものを叩き落として止血用の服を剥いていく


明石「ここからは私の仕事です!!榛名さんは見ないでください!2時間後に提督に来るよう伝えてください!」


榛名「わ、わかりました……」


明石に追い出されるように部屋から出ると提督室に足を運ぶ


提督「くそ……」


あの後ずっと泣いていた提督は泣き疲れて椅子に深く腰掛けて天井を見ていた


提督「無事に帰ってこいって言っただろが……」


提督「まだまだ伝えたいことあったんだぞ……」


誰に話すでもなく天井に語り掛ける


榛名「て、提督……」


ドアの前まで来た榛名はノックをすることなくドア越しに声をかける


提督「なんだ」


榛名「すみません……彼女を守りきれなくて……」


部屋に入ってきた榛名

その姿は服の袖はなく白く輝いていた制服は赤黒く染っていた


提督「その姿は……」


榛名「き、着替える余裕がなくて……」


提督「そうじゃない!五月雨の血だろそれは!」


榛名「っひ……」


今まで見た事なく提督の気迫に榛名は小さく悲鳴をあげてしまう


提督「それだけ血を流してたら普通は……」


察した提督は部屋にあったバケツに胃の中身をぶちまける


榛名「て、提督!?大丈夫ですか!?」


いきなり嘔吐した提督に驚くがすぐに背中をさする


提督「あ、ああ。で、用件はなんだ?」


榛名「は、はい。明石さんに五月雨ちゃんを預けました。2時間ほどしたら来るよう伝えてくれと……」


提督「そうか……。最期を看取るのか……」


提督「どうにかなると信じているがならなかった時のことを考えておかないとな」


提督「あとは俺が引き継ぐから君は部屋で休んでてくれ。負担をかけたな」


榛名「い、いえ!榛名もお供「休んでろ!」」


榛名の言葉を遮る提督


提督「2度も言わせるな!俺にさらに大事な人を失えと言うのか!?」


榛名「え……榛名が大事!?」


提督の発言とは裏腹に榛名は顔を赤く染める


提督「あ、いや……ちが……なんでもいい!部屋で休んでろ!」


思わず口にしてしまった提督だが五月雨のこともあり榛名を部屋から追い出す


提督「っち。イライラしてると言わなくていいことも言っちまう」


提督「準備もあるしやれる限りのことをやるか」


提督はパソコンを開き資材などを見ていく

資材を管理を済ませ上に今回の作戦のことを文書で伝える


提督「もしもの時・・・いや続けられる自信なんてない・・・」


やれることをすべて終え、提督はあるものを書き始める


そのころ工廠にて


明石「や、やれる限りのことはやった……」


顔面蒼白の明石はひと仕事終えたところである

担ぎ込まれた五月雨の治療を行った

壊死した足を切り落とし皮膚を伸ばして結合

血液が足りなくなってたので輸血

他にもかなりの事をやった


五月雨「……」


目の前にはベットに横たわり点滴を受けている五月雨がいる

浅くはあるが呼吸が戻っている


明石「あとは目を覚ませば……でも……」


普通ならここから義足にするなりがあるが彼女は艦娘である

通常、戦えなくなったら近代化改修に回されるか解体しか選択肢がない


明石「どうにかしてあげなきゃ……」


いまの明石の技術力では到底五月雨を戦線復帰させることはできない

半月ほど五月雨を見てきた明石は彼女が提督をどう見ていたかを知っていた


明石「ひと休みしよ……提督が来るまであとすこし……」


手術も含め施せることを全部やり終えたら2時間以上たってしまっている


提督「何から何まですまないな・・・・」


ドアの外ですべてが終わるのを待っていた提督が部屋に入ってくる


明石「へ?提督!?」


明石は提督の予想外の登場に驚いてしまう


提督「時間通りに来たらせわしなく動いていたから建物の外で待たせてもらったぞ」


明石「びっくりさせないでくださいよ。五月雨ちゃんは見ての通り山場は越えました。でも・・・」


提督「わかってる。彼女に戦う力はない。すまないが二人きりにしてくれないか?」


明石「まさかこの状態の五月雨ちゃんに何かすると?」


提督「そんな変態じみたことできるか。目が覚めるまでそばにいてやりたいしそのあと話がしたいだけさ」


明石「わかりました。意識を持って初めての施術だったので疲労がやばいので眠らせてもらいますね。何かあったら起こしてください」


大本営から来た明石といえどほかの艦娘と同じ

違う点があるとすれば知識と記憶を大本営の明石から引き継いでいるという点だけである

よって知識だけでここまでやり遂げた明石には相当の疲労がたまっていることになる


提督「すまないな。あとは任せてくれ」


榛名から明石と二人から引き継ぐ


提督「本当に両足が・・・」


彼女の下半身を布団ごと観察した提督は本来足があるべき場所が盛り上がってないことを確認する


提督「なんでなんだろうな。お互い話したいことが、伝えたいことがあるのにいざ伝えようとするとうまくいかない」


その姿を見て泣きそうになるのをこらえながら寝ている五月雨のほほを触る


提督「そばにずっといたのにこうやって触れることもなかった。事故はあっても故意はない。お前の気持ちをわかってやれなくて済まない」


聞こえてないのはわかっていても伝えられずにはいられない


提督「気づいていたが踏み込めなかった。俺は失うのが怖かったんだ」


今までまともに触れたことがなかった五月雨の髪を手で梳いてみる


提督「これじゃ俺が変態みたいじゃないか!」


自分の行いに気が付いた提督は五月雨から手を放し備え付けの椅子に腰掛ける


提督「いつまでたってもこれだ。まともに女性と接することもできない」


提督「目が覚めるまでそばにいてやるからな」


五月雨の手を握ると黙り込む


五月雨は夢を見ていた


提督「お前の気持ちわかってやれなくて済まない」


五月雨「て、提督は悪くありません!悪いのは伝えられない私ですから!」


提督「俺はお前を失うのが怖いんだよ」


五月雨「私はどこにも行きませんから!おいていかないで!」


目の前の提督が徐々に遠ざかっていく


五月雨「まって!おい・・・うぅ・・・」


追いかけようとするが地面を踏み込めず倒れこむ

そして足を見てしまう


五月雨「わ、私の足が・・・」


今の自分の状況を理解してしまう


ベットで寝ていた五月雨が小さくうなり声をあげる


提督「目が覚めたのか?」


五月雨「足が!!いやぁぁ!!」


目の焦点が定まらない五月雨が突如叫びだす


提督「混乱してるのか?!」


提督「たぶん完全には目が覚めてない!五月雨ちゃん!」


暴れる五月雨を抑えるため振り回される腕をよけながら提督は五月雨を抱きしめる


提督「五月雨ちゃん!落ち着くんだ!!」


五月雨「いやだ!あの人においてかれたくない!!見捨てられたくない!!」


提督「俺はここにいる!だから目を覚ませ!!」


暴れる五月雨を強く抱きしめる


五月雨「あ・・・・」


提督「目が覚めたか?」


腕の中で暴れる力が弱くなったのを感じ目が覚めたと感じる


五月雨「わ、たしは・・・」


提督「おはよう。今の状況は理解できるかな?」


心情を察せられまいと優しく声をかける


五月雨「私は榛名さんを守るために魚雷を・・・」


提督「ああ。そして足を失った。頼むから暴れないでくれよ?」


五月雨「意識がはっきりとして痛みもあるのでわかってます」


提督「意外と冷静なんだな」


五月雨「腐っても軍人ですから」


五月雨「これから私はどうなりますか?」


震える声でこの後のことを予測して答えを求めてくる


提督「正直無理だと思う。義足で戦うにも両足だときついし今の技術力ではそこまでは・・・」


五月雨「そう・・・ですか・・・」


わかってはいた。わかってはいたがその答えを聞いた五月雨は泣き出してしまう


五月雨「やだなぁ・・・提督にこんな姿見せたくなかったのに・・・・」


今のひどい状態を提督に見られ五月雨は大声を出して泣き出ししまう

提督はそっと抱き寄せて五月雨が泣き止むのを待つ


五月雨「ありがとうございます」


提督「どうする?足が無くてもやれることはあるぞ?」


五月雨「何があると?戦うこともできない。歩くこともできない。こんな私にやれることがあるっていうんですか!?」


提督「すまない・・・」


五月雨「謝らないでください・・・」


しばらく沈黙が続く


五月雨「解体か近代化改修してください」


提督「それは嫌だ」


五月雨「何でですか!!私にこれ以上生き恥を晒せと!?」


五月雨「好きな人にこんな醜い姿を見せて行けというんで・・・あ・・・」


提督「君の気持ちには気がついていよ。答えられずすまない……」


五月雨「ほんと私ってバカ。こんな最低なことってないよ・・・」


五月雨「いいんです。今の提督には榛名さんがいるじゃないですか」


提督「君がいないとだめだ」


提督「君がいたから俺はここまでやってこれた。君以外じゃダメなんだよ」


五月雨「でも提督前に言ってましたよね?私に恋愛感情は沸かないって」


提督「あの時のこと聞いてたのかよ・・・」


五月雨「そして彼女とかというより娘って」


提督「そこまで聞いてたのかよ!!!」


五月雨「ふふ。お互いにすれ違ってばっかでしたよね」


提督「本当にな。どうしてもだめなのか?」


五月雨「何度も言わせないでください。それにこんな私を見ていたいですか?」


布団をめくり包帯がまかれ膝より下がない足を見せつける


提督「いや・・・」


五月雨「だったら私の気持ちを理解してください」


提督「君を・・・失いたくない・・・」


今までどうにかこらえていたが提督は泣き出してしまう


提督「それに君を失うのなら・・・」


提督は胸ポケットから封筒を取り出す


五月雨「それは・・・」


封筒には大きく”辞表届”と書かれていた


提督「これは俺の失態だ。君を失ったあとやっていける自信がないしやっていきたくない」


五月雨「ダメです!あなたは提督ですよ!?」


提督「だからこそだ。責任はちゃんと果たす」


五月雨「榛名さんが・・・」


提督「それも仕方ないと思う」


五月雨「お互いに意志は固そうですね」


提督「脅してるわけじゃないがな」


五月雨「はぁ・・・」


五月雨は大きくため息をつき何かを考え始める


五月雨「私のわがまま・・・聞いてくれますか?」


ほほを赤くした五月雨が小さくつぶやく


提督「なんだ?やれることならやってやるぞ?」


五月雨「なら・・・なら耳を貸してもらえますか?」


提督「別に二人しかいないから聞かれる心配はないけどな・・・んむ!?」


提督が顔を近づけると待ってましたと言わんばかりに五月雨はネクタイをつかむと力いっぱい提督を引っ張る

そしてそのまま五月雨と提督の唇が重なってしまう

状況を理解しきれないまま固まってしまう提督と手に力を入れたまま目を強くつぶる五月雨


提督「ぶ・・・はぁ!!いいいいいいいきなりなんだ!!!」


息を止めていた提督だが限界を迎え五月雨を押しのけて離れる


五月雨「な、なにって!言わせるんですか!?」


今まで見たことがないぐらいに耳まで真っ赤に染めた五月雨が目の前にいる


提督「はぁ・・・はぁ・・・」


何が起きたか理解するが処理しきれない提督は深く息を吸い込む


五月雨「わ、私の初めてですよ!?何か言うことはないんですか!?」


提督「何かって・・・ごちそうさま?」


五月雨「ああもう!ほんとこの人は!!」


恥ずかしさのあまり目を合わすことができない五月雨


提督「俺の心臓を止める気か。俺だって初めてだわ!!」


五月雨「そうだ。響ちゃんに私を近代化改修してください。彼女に私の遺志を継いでもらいます」


五月雨「それに提督は提督です。ここで逃げても何も始まりませんよ?」


提督「わかってるが・・・」


五月雨「あーあ。恋人は無理でも娘みたいにもっと扱ってほしかったなぁ・・・」


両手を上げてベットに倒れこむ


五月雨「未練なくいこうと思ってたけど無理そう・・・」


提督「キ、キスまでしといてまだ未練が・・・・いやすまない・・・」


五月雨「私の分まで響ちゃんをよろしくお願いします」


提督「あ、ああ。不甲斐ない提督で済まないな」


五月雨「いえ。私にとっては最高に尊敬できる提督でした!」


ベットから起き上がった五月雨は笑顔でそう言う


提督「あとは明石に任せる。いいだろ?」


ドアの間から見ていた明石に声をかける


明石「気が付いていたんですね」


提督「普通に見えてるわ」


明石「いやぁ・・・寝てたんですけどのろけ話や他のことでうるさくてぇ・・・」


提督「何度もすまないな。あとのこと任せていいか?」


明石「ええ。提督はどちらに?」


提督「五月雨ちゃんが轟沈したことを鎮守府全体に伝える」


厳密には沈んではいない。ただ戦う能力を失った彼女にはこの鎮守府には居場所がないのだ

よって轟沈したということにして近代化改修に回すのだ


五月雨「・・・」


明石「私は近代化改修の準備もありますので」


明石は五月雨のベットを動かすと奥に行ってしまう


提督「俺も行くか」


そして提督は放送室に向かう


提督「あーあ。マイクテスト。聞こえてるかな。よし!通達。先ほど駆逐艦五月雨の轟沈が確認された。明石が手を施してくれたが無理だった・・・。最後はちゃんと看取ってやれた。各自黙祷を。戦艦榛名に伝令。フタフタマルマルに提督室に来るように。以上」


その声は震え、提督は涙を流しながら冷静にことを伝える


提督「はぁ・・・まだ時間があるな・・・」


疲れ切っていた提督は提督室に戻り机で仮眠をとる


工廠にて


明石「あれでよかったんですか?」


五月雨「何がですか?」


明石「もっと残したいことあったんでしょ?」


五月雨「あ、あるにはありますけど・・・・あとは榛名さんに任せます」


提督と最後にキスもできた。他にもやりたいことがまだまだあるが五月雨は自分の足を見て不可能だと悟る


明石「そうですか・・・。まだやれることは残ってるのですが一つ賭けてみますか?」


明石「今新しく開発中の機材がありまして。高速修復剤の濃度を高めてカプセルに入れたものがあるんですよ」


五月雨「修復剤を?」


情報開示

高速修復剤、通称バケツ

一般的に艦娘は入渠をして傷をいやす

受けた傷に応じた時間修復剤の風呂につかることで傷を治すことができる

ある程度の損傷なら直すことが可能である

指が飛ぶ程度なら1日つかれば直すことも可能出る


五月雨「でも両足ですよ?直すのに何日・・・いや何か月浸かれと?」


どう考えても五月雨の負傷は治るレベルではない


五月雨「それにこれは治るレベルではないはずでは?」


明石「そこです!濃度を高めそれを特殊な機械で温めることで建造されたとき・・・違うな。ここの鎮守府に記録されている万全な状況に戻すことができるはずなんです!」


五月雨「ば、万全な状況!?治るんですか!?」


予想外の答えに五月雨は声を荒らげてしまう


明石「確実にとは言えません。試作段階の機械ですし内容が内容なのでテストもできてません」


五月雨「でも……さっきの放送で私は死んだことに・・・」


明石「この機械は提督にはまだ伝えていません。それでもかけてみる価値はあるはずですよ!」


五月雨「あそこまで言ってあの人になんて顔で会えば・・・」


自分の想いを伝え、もう一緒にいられないことを伝え、別れを済ませた五月雨


明石「それはその時に考えましょう。どうせこの後響ちゃんに改修されるのでしょ?だったら失敗しても変わらないですよ」


五月雨「それもそうだけど・・・」


明石「成功すれば大好きな提督のもとに戻れますよ?」


五月雨「!?」


その一言で耳まで真っ赤にする五月雨


明石「善は急げ。あとのない五月雨ちゃんは藁にも縋る思いでした」


五月雨「わ、わたしはそんなこと・・・・!」


五月雨「でもあの人のもとに・・・陽のもとに戻れるのなら・・・・」


提督の元に戻れるという明石のコトバに揺れ動く五月雨


明石「交渉成立ですね」


五月雨と話をしていた明石はなんだかんだ言いながら機械のもとに向かっていた


五月雨「これが・・・」


目の前には大きなカプセルがある


明石「じゃぁ服は脱いでくださいね。効果が減っては意味がありませんから」


そういいながら五月雨の服を剥ぐ


五月雨「じ、自分で脱げますから!」


何も着るものがなくなった五月雨

足の包帯のほかにやけどの跡、そして右わき腹にも包帯がまかれていた


明石「右わき腹もえぐれてます。むしろよくここまで弱ごとを吐かず、痛いと叫ばずにいられましたね」


五月雨「もう痛みもないんですよ。肌の感覚もほとんどないですし」


試しに足を握ってみるが何も反応がない

そんな五月雨を抱きかかえるとそっとカプセルに寝かせる


明石「濃度は高いですけど修復剤です。浸かるというよりかは潜る形になります。呼吸器を」


カプセルの内側から呼吸器を外し五月雨に手渡す


五月雨「治りますか?」


明石「わかりません。次目を開けたら歩けるようになってるはずですよ」


五月雨「そう・・・何から何までありがとうございました。無理でしたら・・・」


明石「わかってますよ。扉を閉めますね。そしたら中は液で満たされるので。呼吸器から麻酔が送り込まれたのちそれが生命維持装置になります」


説明を終えて扉を閉める。そして機械をいじり電源を入れる


五月雨(緑色の液体が・・・。提督のもとに戻りたいけど・・・)


五月雨(戻れる!そう信じよう!)


そっと目を閉じた五月雨はそのまま眠る


明石「まる一日。足の回復が始まらなければ機械を止めて響ちゃんに近代化改修しますね」


カプセルの中で浮いている五月雨にそっと声をかける


提督「五月雨が・・・か。な・・んで・・・だよ。なんでだぁ!!!」


提督室に戻り仮眠を取ろうとした。だが眠れる訳もなく五月雨などの思い出を思い出す

そして両手を机にたたきつけ、そのまま机に伏せて泣き始める。五月雨と出会い、新しい艦娘に出会い、五月雨との楽しかった思い出を思い出しながら提督は泣き続けた

涙が枯れ、時間を見ると3時間以上も泣いていたということを知る

だが、五月雨のことを忘れられずまた泣いてしまう


榛名「提督・・・」


予定より1時間も早く来てしまった榛名は提督の声をドアの外でじっと黙って聞くことしかできなかった


提督「・・・」


泣き疲れじっと固まった提督。時計を見るとさらに30分も泣いていたことになる


提督「そろそろ・・・・約束の時間・・・準備しなきゃ・・・」


席を立とうとしたとき扉の向こうからかすかな声が聞こえる


提督「こんな時間にだれが・・・って榛名しかいないよな・・」


相手に聞こえないようか細い声で呟き、慣れない手つきでお茶を二人前入れる

準備ができたらドアの前に行き榛名に声をかける


提督「予定より少し早いな。まぁいい入ってくれ」


榛名「気づいて・・・。いらっしゃったんですね・・・」


提督「女の子の泣く声を聴いて無視はできないさ」


榛名「榛名は泣いてなんて・・・」


提督「4時間前に泣いた跡が今も残ってると思うか?」


榛名「うぅ・・・」


部屋の入り口で泣き出してしまう榛名


提督「やめてくれ。泣かないでくれ。こっちだって泣きたくなる」


榛名「提督はお強いんですね。榛名は仲間を失った悲しみでもう・・・」


提督「俺は強くなんてないさ。船を沈めるなんて提督として失格だよ。まぁ座ってくれ。お茶でも飲みながら話をしよう」


榛名「はい・・・」


提督は榛名をソファに座らせてお茶を飲ませる

自分は提督用の椅子を反対側に運びそこに座る


榛名「聞いていいですか?五月雨ちゃんは最後何を伝えましたか?」


提督「そうだな。何から話そうか……」


考えをまとめるために目をつぶる

榛名はそれを見てじっと待つ


提督「まず君の心配だ。自分のことを背負わないかとか色々な。それと告白……?いやあれは違うな。でもそれに近いこともされたよ」


榛名「提督は彼女の気持ちわかってたんですか?」


提督「あぁ。彼女が私のことが好きということまでな。ドジで頑張り屋だった。一生懸命アピールもしてた。だが、私は応えてやれなかった。答えられなかったんだよ。船としての年齢ではそっちが上、見た目で見ればこっちが上。どうやればいいかわからなかったんだよ」


榛名「・・・」


提督「それに俺はもう裏切られたくないんだ。誰かを信じた時。それを裏切られた時の衝撃、辛さを俺は知っている。だから」


提督「でもその辺は最後に話し合った。彼女の気持ちには応えられたはずさ」


榛名「……」


提督「それに……俺は・・・俺は彼女が好きだった。恋愛感情とかじゃなく娘を見る意味で、だ。結婚なんてしてない。相手さえいない。だが、それでもだ。娘ができたらこんな風に育ってほしいなと思った。こんな娘が娘だったらいいなと。榛名が来たとき俺は一目惚れをした。そこで夢を抱いたんだ」


榛名「夢・・・ですか?」


提督「ああ。夢と言ってもちっぽけだがな。おままごとみたいなもんさね。私が父親、榛名が母親、そして五月雨が娘という夢だ。そんな幸せな世界を願ってしまった。それが結果として五月雨を沈める原因になっていたとは…」


榛名の前ということで無理にでも泣くのを我慢していた提督。すでに榛名は泣いていてずっと声は震えている。それでも無理やりにでも平然を装っていた

だが、榛名からの告白、そして自分の思いの告白。それは涙腺を崩壊させ、涙の雨を降らせるには十分だった


提督「私は・・・俺は・・・僕は・・・彼女にひどいことをしてしまった・・・うぅ・・」


そのままうずくまるように泣き始めてしまう。自分の好きな人の前で泣いてはいけないという自分ともう何も気にせず泣きたいという自分との葛藤があったが、それは一瞬で終わってしまう


榛名「提督・・・提督はそこまで思っていたんですね・・・。私がちゃんと五月雨ちゃんと話していれば・・・」


そしてすでに泣いていた榛名は提督の涙に影響されさらに泣いてしまう

泣きじゃくり嗚咽交じりに声を上げる提督を榛名は優しく抱きしめる

その晩、鎮守府全体を涙で震える声が支配する。

初めて仲間を失った者はそれぞれの場所で泣き続けたのであった


駆逐艦寮


響「あぁ・・・五月雨が・・・」


部屋に戻った響はまだ五月雨が沈んだことが信じられない


響「そうだよね。彼女はもう・・・」


隣にいない彼女、普段なら優しく語り掛けてくれる声が聞こえてくる

耐えきれなくなった響は帽子を深くかぶり涙を隠す

誰に見られるわけでもないのに


響「うん。わかってるさ」


部屋にはだれもいないのに響は独り言をしゃべり始める


響「君の思いは”私”が引き継ぐさ」


響の目が、表情が泣きながら少しづつ変わっていく


響「君が果たせなかったこと。やり遂げれなかったこと。すべて私が引き継ぐ」


響「だから・・・今は思いきり泣かせてくれ・・・」


響は昨日まで五月雨が寝ていた布団に倒れこみ泣き始める

提督と同じで建造されてから今までずっと過ごしてきた

自分が信頼していたひとりが居なくなったのだ

嗚咽混じりで五月雨に文句を言いながら一晩中泣き続けた


泣けば疲れて寝つけると思った

けれど目は冴えて寝ることすら許されなかった


響「もう飲んでしまってもいいよね……?」


そういうと部屋の引き出しの奥からある瓶を取りだした


翌日


提督「・・・」


提督(俺は・・・泣きながら寝てしまったのか・・?昨日泣きまくったから瞼が重い・・・そして後頭部に柔らかい感触が・・・!)


昨晩榛名とともに泣き続けた提督

しばらくして泣き疲れたのか、または安心したのか榛名の胸の中で眠りについてしまったのだ

榛名はそんな提督をそっと抱きしめたのち自分の膝の上に乗せそのまま眠りに落ちていた

一日に起きる情報量としてはあまりにも多く、そして激しい戦闘は彼女を眠りに落とすのには十分だった


提督(あかん・・・あかんねん・・・これどういう状況や・・?)


中途半端に眠りから覚めてしまったため瞼は重くそして窓から入る日差しがまぶしいためほとんど目が見えない

目が見えたのはその数分後でその数分で物事を理解していく

目がようやく見え恐る恐る目の前を見る


提督(!?目の前にあるのは足?誰の?まぁ榛名しかおらんわな・・・ふぁ!?あばばばば!!お、俺!俺今膝枕されとるのか!?)


ようやく自身の状況を理解した提督


提督(あぁ・・・やわらかいんじゃぁ^~・・・じゃぁねぇよ!!まぁそうだけど!てか俺なんでこうなっとるんだ?)


榛名「ん・・・っは!?もしかして榛名寝てた!?あ、あのまま!?ということは!?」


提督(あー・・・寝たふりしよ)すぅ・・・」


眠りから覚めた榛名は一瞬動揺し提督を起こさないよう動こうとする


榛名「よかったぁ・・・。まだ寝てた・・・・起こさないように・・・って今、榛名の膝の上には提督がいるから榛名は動けないのでは?どどどどどうしましょう!!」


提督(起こさないようにってそれだけ騒いで揺らされれば誰でも起きることね?)


榛名「っは!騒いでは提督を起こしてしまいます!し、静かにしなければ!い、一度深呼吸をしましょう・・・すぅ・・・はぁ・・・」


提督(ぬ~。今の一連の動きで横を向いていたのに仰向けになってしまったではないか・・・っは!もしや!今榛名の胸の下にいるのでは!?)


恐る恐る目を開ける提督。そこには正面から見るものより大きい山がそびえたっている


提督(わぁ~い大きいお山が二や」


榛名「!?」


提督「!?!?」


榛名「て、提督。もしかして起きてます?」


提督「( ˘ω˘)スヤァ」


榛名「・・・」


提督「( ˘ω˘)スヤァ」


榛名「気のせいですね」


提督「気のせいですよ」


榛名「!?」


提督「( ˘ω˘)スヤァ」


榛名「こほん。・・・これは独り言です。提督が寝ている今のうちに榛名は思いを伝えます。提督は優しい方です。榛名にもいろいろしてくださいました。他の皆さんにもそれぞれ注意を向けて一生懸命頑張っていました。五月雨ちゃんはそれをいつも助けてましたね。私が来てからは提督は私のことを見ていましたね。五月雨ちゃんの変化には気づいていませんでしたし」


提督「・・・」



榛名「榛名は悪い子です。提督には五月雨ちゃんがいるのに。榛名は提督に見てほしいと常に頑張ってました。その結果が彼女を死なせてしまうとは知らずに・・・」


徐々に声が震え泣き始める


提督「ふむ・・・」


榛名「榛名は・・私は悪い子なんです・・・」


提督(俺のほほを伝うもの・・・それは彼女の涙・・・か)


榛名「うぅ・・・」


提督「はぁ・・・聞くに堪えない・・・辛すぎる」


榛名「提督・・・」


提督「お前が起きる前から起きていた。面白そうだから寝たふりをした。今は反省している。確かにお前は悪い。だが、何よりも悪いのは俺自身だ」


榛名「いえ提督は悪くありま――――」


提督「悪いのは俺だ。君が何と言おうともな。榛名。君がすべてを背負う必要はない。提督である俺自身に問題があるのだよ。指揮もまともにできないで提督、か・・・。提督失格だな」


榛名「・・・」


提督「あ~やめだやめ!このままじゃ永遠と続くぞ。しばらくは出撃は控える。いいな?」


榛名「榛名・・・待機命令了解です・・・え?榛名に罰はないんですか?」


提督「罰?あるとでも?君は仲間のため最後まで戦いとおした。勲章ものだぞ?それに」


榛名「それに?」


提督「罰ならすでに受けているはずだぞ?」


榛名「え?すでに?」


提督「おう。膝枕だ。俺はこれで十分だ。」


榛名「はわわわわ・・こ、これでよろしいんですか?」


提督「俺がいいと言ったらいい。今日の午後開けておけ」


榛名「出撃がなければ基本あいてますが・・・金剛お姉さまたちがいないからティータイムは開けないし。それと提督。榛名の膝の上でかっこいいこと言っても締まりませんよ?」


提督「ぐぬぬ」


榛名「ふ、ふふふ」


提督「やっと笑ったか。やはり君には涙より笑顔のほうが似合う」


榛名「ですから、膝の上では・・・ふふふ・・・し、締まらないですから・・・ははは」


提督「そうだな。ありがとな」


榛名「何のことでしょうか」


提督「昨日の晩だよ。君に抱きしめられていたとき暖かく、そして安心した」


榛名「あ・・・////あ、あれはですね////」


響「ん~いい加減いいかな?」


提督、榛名「!?!?」


響「かれこれ10分は二人のイチャコラを見せられても困るのだが」


榛名が泣き始めたあたりに響は提督室に来ていた

部屋に入る空気ではなかったため外で待機していたが我慢の限界が来て入ってきたのだ


提督「っえ!」っば!


榛名「!?」っが!


いきなりの響の登場で焦った提督は自分の状態を考えずに起き上がる

当然ながら楽しく榛名と談笑していたためその頭上には榛名の顔がある

いい音を出しながら思いっきり頭と顎をぶつけてしまう


提督「あがががががが・・・・・」


榛名「うにゅぅ~・・・・・」


頭を押さえながらのたうち回る提督。そして顎を抑えながらうずくまる榛名


響「はぁ・・・五月雨を失った後だというのに暢気なものだよ”提督”」


提督「いつつ・・・ん?泣いているより笑っている方がアイツのためだろう響。で、どういう要件だ?」


違和感があるが分からない提督


響「まぁ昨日の報告だよ。あの後話が終わってるだろうと思って提督室に行ったら中から二人の鳴き声が聞こえたんだ。邪魔しても悪いと思って部屋に戻ったんだ。報告を忘れてね」


響(いろいろと聞いちゃったし、あの空気に割って入れるほど私は強くはない)


提督「なるほどね。まぁ確かに泣いてたから話は頭に入らなかったな。そして響」


響「なんだい?提督」


提督「目が腫れてるぞ?一晩中君も泣いてたんだろう?帽子があるのだからせっかくなら隠せばいいのに」


響「!?////み、見たね?」


提督「見てない。帽子を深くかぶってたからそう思っただけだ。もしかして当たってた?」


響「・・・」


提督「あ・・・無言でこっちに来ないで。小さくても怖いから・・・え?小さいで怒こった?やめて!痛い!痛いから!本気でたたかないで!あ、髪の毛引っ張るのやめて!抜けるから!あ・・・抜けていくぅ・・・」


響「提督の馬鹿!馬鹿ぁ!!毛根全部引っこ抜いてやる!」


提督「うん。響は可愛いな」


榛名「・・・」ごごごご


提督「あかん・・・殺気が飛んできてる・・・提督命令だ!鎮守府内での艤装装備を禁止だ!」


提督と響のやり取りを見ていた榛名が無言で艤装を展開しようとしていたのをすんでのところで提督が止める


榛名「っち」ッボソ


提督「おぉ……こわいこわい……」


響「まぁいい。報告書はそこに置いておくから。あとは榛名さんとよろしくやっているといいさ提督」


そのまま響は逃げるように部屋から出ていってしまう


響(娘・・・か。それも彼女の望みなんだろうか・・・いいや。たぶんこれは私の望みだ)


部屋から出た響はドアの外で中の様子をうかがいながら考え始める


提督「・・・」


榛名「・・・」


提督「工廠に行こう。船を作るぞ」


重たくなった空気を提督が話を変えることで終わらせる


榛名「え?出撃しないのにですか?」


提督「ああ。君の姉妹艦を作ろうと思う。君も今のままでは寂しいだろう」


榛名「ということは金剛お姉さまに会えるんですね!!」


提督「ああ。そうだ。といっても演習で何度かあってるみたいだがな」


榛名「ですが、あれはよその金剛お姉さまです」


提督「ああ。この鎮守府の金剛を建造する」


色々と調べ提督がまとめたものである

艦娘は個々の鎮守府で建造される。大元となる集合意識体から意識を体にトレースする

ここだけ聞けば全ての艦娘は同じ性格となるはずだ

各鎮守府で過ごすことにより提督の性格などから影響され少しづつ自我と人格が形成されるのだ

よって他の鎮守府の艦娘は姉妹艦であっても赤の他人であり話はしても他人の空似となる


提督「これで金剛型のティータイムが開けるな」


榛名「はい!」


満面の笑みを向ける榛名。それを見た提督は・・・提督はただ見つめかえし、笑ったのであった


そして場面は工廠に移る


明石「足の再生が……」


半日経つがほとんど足が再生していない


明石「濃度を上げて……いやもう最大濃度だ……」


明石「このままじゃ五月雨ちゃんが……」


目に涙をうかべ最悪の事態を想像する


明石「五月雨ちゃん!!聞こえますか!?聞こえてなくても聞いてください!あなたの意識が強くないと治らないんです!治ると信じて思い込んでください」


耐えきれなくなった明石はカプセルの中の五月雨に声をかける何度も

途中カプセルを叩いたりもした


五月雨(こ……れ……は……誰の……こえ……?)


うっすらとした意識の中五月雨がその声を聞いていた


五月雨(眠い……起きてられない……)


けれど目を覚ますことなく眠りに落ちる


明石「頼みます……」


カプセルの上に覆い被さるように泣き出す明石


五月雨ははっきりとしない意識の中夢をまた見る


提督「俺は君のことが好きだ」


提督「君に居なくなって欲しくない」


提督「君がいなくなったら俺は提督を辞める」


昨日話したことを提督が話してくる


五月雨「ですが私はもう戦えません」


提督「何を言ってるんだ?君は歩けるはずだろ?」


五月雨「もう歩けないんです!歩く足が……」


提督「無くったっていいじゃないか。君は今どこにいる?願えよ。そうすればまた歩けるじゃないか」


提督だったものは口調を変え輪郭を変え語りかけてくる


???「歩けない?何を言う。思い込め。歩ける自分を。歩けないんじゃない。歩くのが怖いんだよ」


???「君が願えば足は生える。もう一度歩ける。大好きな提督の元に行ける。また肩を並べて歩けるんだぞ?」


それは人の形をしていた

それは人の輪郭は留めていた

それは飲み込まれるような黒色で人の形をしたこの世のものとは思えないものだった


五月雨「え……」


???「戦う力がないのではない。戦うのが怖いのだ。あの人の元からもう一度消えるのが」


五月雨「あ、あなたはなんなんですか!!私のことをわかったように!!」


???「私?私は私だよ。君自身だ」


それは五月雨の感情を受け五月雨を形取る


五月雨「わ、たし?」


???「別に君に変わって私が成り代わってもいい。だが、それは君が嫌だろ?」


五月雨「私は私です!あなたじゃありません!」


???「そのいきだ。思いを強くもて。貴様は今ーーーの中にいる」


五月雨「なんて?」


???「やはり発言できないか。いやなんでもない。今君は生死の狭間にいる。ここで諦めれば素直に死ねる。生きたいと願えば……分かるよな?」


それは元の黒色の人型に戻った


???「強く願えば足は再生しまた戦うことは出来るぞ?」


五月雨「でも……でもこういうのって対価が……」


そう。一般的にこれは契約だ。なにか対価を払うのが習わしだ


???「対価?そうか普通はそういうものを要求するのか」


???「それならもう貰っている。私が……いやなんでもない。深海棲艦と戦うのが対価だ」


五月雨「え……?」


???「生憎と私が何者かを伝える言葉は存在しない。だが信じてくれ」


五月雨「も、もう一度戻れる?」


???「ああ」


五月雨「あの人の隣に立てる?」


???「もちろん」


五月雨「なら……なら!」


五月雨「私は生きたいです!あの人の隣で!!」


???「契約成立だ。じき目が覚めるその時にここのことは忘れるだろう。だがもう一度歩くことはできるようになってるはずだ」


???「せいぜい俺を楽しませてくれよ」


ニヤリと笑ったそれ

それと同時に強い光に包まれいし気を失う



明石「五月雨ちゃん……生きて……」


カプセルの上で声を上げて泣いている明石


明石「え……なになに!?」


ふと目を開けてカプセルを見ると異常が発生している

カプセル内部が沸騰して大量の泡が吹き出していたのだ


明石「なんでなんで!?こんなこと起きないはずなのに!!」


慌てて端末をいじるがさして異常はない


明石「異常がない!?どう見ても異常じゃ……!?」


カプセルに近づき観察すると五月雨の足が少しずつ再生していた


明石「え……?再生してる!?」


明石「でもおかしい。ここまで何も無かったのに……いったい何が……」


明石「いえ!ここで動揺してちゃダメだわ!最後までやり遂げなきゃ!」


五月雨の強い意志と修復剤が感応し凄まじい速度で回復していく

だが、本来そんな機能は無い


明石「あと3時間!壊れないように!」


自分にやれることをやる明石


そしてその一時間後に提督が建造のために工廠に来る


榛名「こ、金剛お姉様に会えるのでしょうか?」


提督「分からない。確率の壁を超えれば建造できるはずだ……」


提督「明石がいない?」


工廠に入るが中に明石が居ないことに気がつく


夕張「明石さんなら今取り込み中ですよ」


提督「あー昨日の……お前は建造とかできるか?」


夕張「明石さんの補佐を務めてるので大抵のことならか」


話があった2人はお互いに情報交換をした後夕張が補佐をすることになった


提督「そういえばそうだったな。ならお願いしていいか?」


提督「前と同じで40/3/60/3 で頼む」


夕張「わっかりましたー」


資材を建造用のカプセルに突っ込むと22日と表示される


提督「榛名に近い時間……戦艦か?」


夕張「です。高速建造剤使いますか?」


ここ数日出撃と任務をこなして資材とアイテムはある程度は溜まっていた


榛名「……」ソワソワ


提督「頼む。隣から期待の目で見られてな」


榛名「は、榛名は別に……」


夕張「なら使いますねー」


盛大にカプセルを炙ると中からでかい艤装を身にまとった女性が出てくる


扶桑「扶桑型超弩級戦艦、姉の扶桑です。妹の山城ともども、よろしくお願い致します。」


礼儀正しくお辞儀をして挨拶をしてくる


提督「妹?の山城?はまだいないが……超弩級!?」


扶桑「え、ええ。大和クラスには負けますけど、それでも戦えます」


提督「金剛型じゃなかったな」


榛名「扶桑さんすみません……」


扶桑「不幸だわ……」


奥の部屋にて


明石「足の再生はほぼ終わった……あとは目が覚めれば……」


カプセルの泡立ちは収まり中には傷一つない五月雨が浮いていた

足も正常に生え、検査の結果万全な状態に戻ったのだ


明石「あれ?……カプセルの中じゃ目を覚まさないのでは?」


そんな当たり前のことすら気がつかないほどに明石は疲労していた。五月雨と別れたあとずっと付きっきりだったので仕方ない


明石「再生も完了してる1度出しますね!」


カプセルを開き中から五月雨を取り出す……

開けると同時に濃度の高い建造剤が五月雨に吸収されたのだ


明石「な、なんで!?」


そして機械からは煙が湧き出し小さな爆発とともに壊れてしまう


明石「待ってよ!!まだ完成してないしもう一度作れないんだよ!?」


頭を地面にたたきつけて絶望する明石。だがそんなことをしている余裕はなく出てきた五月雨を軽く拭きタオルで包む


明石「五月雨ちゃん?生きてますか?」


五月雨の胸に耳を当てる。心音は聞こえる

口元に手をかざす。息はしている


明石「いやまだだわ」


次に触診を始める

皮膚がただれていた部分を触る。柔らかい

えぐれていた右脇腹を触る。骨を確認。皮膚に異常なし

そして一番の問題の足を触る


明石「頼みますよ……」


そっと触れた。皮膚はちゃんとしていた。少し力を入れて掴む。肉を確認する。そして骨も確認する

一通り触って安堵する


明石「よかったぁ……」


枯れたはずの涙がまた流れてくる


明石「でも……」


もう一度足を触り血の流れを確認する。正常の足と代わりがない


明石「治ってる……?うん!柔らかくてピチピチしてますね!」


満足したのか足から視線を戻すと五月雨と目が合ってしまう


明石「五月雨ちゃん目が覚めたんで……五月雨ちゃん!?」


五月雨「そんなに触れば誰だって起きますよ?それに触りすぎです。変態さんですか?」


目が覚めた五月雨はヨダレを流しながら自分を触る明石を目撃してしまう

だが直ぐには声が出ず耐えるしか無かったのだ


五月雨「まさか明石さんにそんな趣味があるとは思いませんでした……」


憐れむような蔑むような目で明石を睨む五月雨


明石「あわわわわわ。良かったあぁぁぁ!!!」


五月雨が目を覚ましたことで安堵し、明石は強く抱きしめる


五月雨「いやぁぁぁぁ!!!!」


五月雨は抱きしめられると同時に明石の腹を全力殴る


だが明石に抱き抱えられていた五月雨

不幸にも下がった明石の頭が五月雨の頭に直撃する


五月雨「っが!!!」


明石「っだい!!」


そしてしばらく2人は悶え苦しむ


明石「いたたたた……」


五月雨「痛みを感じる……」


頭を抑えていた五月雨は痛覚を実感する


五月雨「わ、たし……生きてる……?」


明石「そうです!どうなるかと思いましたが無事!再生したんです!」


興奮しながら早口で何が起きたのがどうなったのかを五月雨に伝える


五月雨「なにか……夢を……?」


夢を見ていた。それは覚えているだが、内容を思い出すことは出来ない


明石「さて……提督になんと説明したものか……」


壊れた機械を見ながら言い訳を考える


五月雨「そうだ!提督は……!あの人はまだ提督なんですか!?」


明石「暴れないでください!まだも何もあれから1日ですよ?」


五月雨「いち……にち……?」


てっきり数ヶ月が経過したものと思っていた五月雨は現状を理解できない


五月雨「一日!?なんで!?数ヶ月だったんじゃないの!?」


明石「だから!暴れないでください!!」


腕の中で暴れる五月雨を抱きしめて抑えようとしてみぞおちを殴り飛ばされる


明石「う……」


五月雨「何度もやめてください!殴りますよ?!」


明石「も、もうなぐって……」


五月雨「あれ?ということは提督は私が生きてるって知らない?」


明石「まだ話してないですからね」


五月雨の目が覚めたばかりで報告はまだできていない


<不幸って……

<会ってすぐそれはあんまりやろ……


遠くから提督の声が聞こえる

工廠の奥とはいえ建造エリアから多少離れているだけで声は聞こえる


五月雨「て、提督の声だ!ええと……」


明石「私も一緒に話すのでいき……まって!」


明石が最後まで言い切る前に毛布を払い除けて五月雨が提督の方に走り出してしまう


明石「ああもう!何も着てないんだよ!?」


慌てて明石が後を追う


五月雨「提督!!」


榛名「あれ?今五月雨ちゃんの声が……」


提督「よ、よしてくれよ……」


遠くから叫ぶが声が届かない


五月雨「提督!私です五月雨です!!沈んでなんかないんです!!」


自分の姿もみずに提督の元に走りよる


提督「まただ……疲れてるのかな……」


榛名「いえ……榛名にも聞こえました……」


後ろから駆け寄り背中に声をかける


五月雨「生きてますから!!」


声に驚き後ろをむく


提督「さ、みだれ……?」


五月雨「はい!」


光の加減か一瞬髪の毛が白く見えてしまう


提督「あ……え……?気のせいかって五月雨!?」


榛名「提督?五月雨ちゃんは轟沈したのでは?というか……」


榛名は五月雨を観察する。そして裸なのを理解する


五月雨「ええと……なんていえばいいか分かりませんが生きてます!!」


提督「よかった……よかったぁ!!五月雨が生きてる!!」


五月雨の笑顔を見て提督は泣き出してしまう


提督「足もある!幽霊じゃない!生きてるんだ!生きててくれてありがとう!!」


嬉しさのあまり五月雨に抱きついてしまう


榛名「っちょ!提督それはダメです!!!」


提督「暖かい!体温を感じるしやわらかくて……え……?柔らかい……?」


思わず抱きついた提督は五月雨の体を触りまくってしまう

当然ながら五月雨は何も身につけていない


扶桑「あぁ……本当に不幸だわ……」


提督「あれ……?よく見たら五月雨何も着てな……」


言葉とは裏腹に初めて触る女性の柔肌に提督の腕や指は意志を裏切り五月雨の小さな体を触りまくる


五月雨「むぅ……」


腕の中で顔を上げて提督を睨む

その目は恥ずかしさと怒りに満ち溢れ目の端に涙を浮かべながら全力で提督を睨む


提督「ああああ!!!!すすすすすまないいい!!!むにゅ?」


慌てて手を離そうとして五月雨のおしりを掴んでしまう


五月雨「むぅぅぅ!!!触りすぎです!」


力を貯めて提督の腹にストレートを放つ


五月雨「嬉しくてもやりすぎですよ!!」


下がってきた頭に下から打ち上げるように頭突きをキメる


五月雨「ほんっっっとうに!セクハラなんですよ!!!」


仰け反った提督を蹴り飛ばす


五月雨「はぁ……はぁ……」


提督「あ……が……みえ……」


吹き飛ばされた提督は薄れゆく意識の中で五月雨の裸を目に刻んでしまう


五月雨「きゃぁぁぁぁ!!!」


そして散々殴りまくった五月雨は最後に体を抱いてうずくまり悲鳴をあげる


明石「はぁ……はぁ……五月雨ちゃん早すぎますって……はぁ……すぅ……服……持ってきたので着て……え?」


提督が吹き飛び五月雨がうずくまると同時に明石が駆けつける


榛名「はぁ……これはどっちが悪いと思います?」


遠くで見ていた榛名は隣りの扶桑に話しかける


扶桑「これは……裸で現れた彼女も悪いですけどセクハラをした提督も悪いですね」


榛名「ですね」


明石「え……?どういうこと……?」


何がなにやら理解できない明石

五月雨は明石から服をもぎとり


五月雨「なんで私裸なんですか!?」


明石「いや昨日最後に脱いだじゃないですか」


榛名「明石さんにそんな趣味があるとは……」


榛名も哀れみの目を向ける


明石「違いますから!治療のためなんです!ええと……提督が目を覚ましたら説明しますね」


提督「あ、はは……小さい星が消えたりついたり……」


鼻から血を流しながらうわ言を言う提督


榛名「扶桑さんは戦艦寮で待機しててください。後ほど提督と向かいますので。明石さんは提督を運ぶのでベットの準備を。五月雨ちゃんは……」


一連の流れを見ていたがなぜ五月雨が歩いているのかを理解できない榛名


五月雨「むぅ……提督のバカ……」


明石からもぎとった服に素早く着替え提督の元に向かう五月雨


五月雨「ほんっとお互いに伝えたいこと伝えないじゃないですか……」


昨日のことを思い出して泣き出す


榛名「なぜ五月雨ちゃんが歩いてるのかはこの際置いといて提督をここに寝かせておくのはいけません。私が運びますので五月雨ちゃんは明石さんの手伝いを……」


五月雨「いやです!私も手伝います!それと榛名さん!」


提督を持ち上げようとした榛名を静止する


榛名「なんですか?今は提督のことを……」


五月雨「私!榛名さんにら負けませんから!恋も勝負も!!」


提督を抱き抱えて引きずるように走り出す五月雨


榛名「え……?いえ待ってください!それでは提督が削れます!!」


慌てて走りよって提督を奪い取りお姫様抱っこするように運ぶ


五月雨「むぅ……」


ふくれっ面でそれを見ながら五月雨が後ろを着いてくる


2時間後


提督「こ、こは……」


明石の治療もあり早くに目を覚ます提督


明石「あ、無理はしないでくださいね。どこかの暴力少女のせいで今提督は肋骨が2本ほどヒビが入ってるんです」


五月雨「ぼ、暴力少女ってなんですか!?」


明石「あれぇ〜?誰も五月雨ちゃんとは言ってませんけどぉ〜?」


五月雨「むっかつく……」


榛名「大丈夫ですか?」


提督「痛みがすごいが夢じゃないのは実感した。で、だ。明石説明してくれるか?」


明石「ええと……どこから話したものか……」


提督「あの後……五月雨に何したんだ?温かいから生きてるのはわかるが足が再生するのはおかしくないか?」


榛名「提督……その言い方だと語弊が……」


五月雨「そうですよ。本当にセクハラで訴えますよ?」


提督「いやまぁ……言い方はあれだけどこの手で生きてるのは確認したんだしさ?」


榛名「提督……五月雨ちゃんが赤くなって黙りましたよ?」


提督「すまん。で詳しく説明してくれ」


明石「わかりました。あの後提督と別れたあとなんですが……」


明石は提督と別れたあと五月雨に何が起きたのか何をしたのかを説明した


提督「そんなことが……え?まって!?修復剤ってそんな危ないものなの!?」


話を聞く限りだと浸かるだけで重症を治す薬物と同じである


明石「私たちは艦娘ですよ?むしろこれぐらいじゃないと普通の人とかわらないじゃないですか」


提督「そ、そりゃそうだが……俺みたいに人間が浴びたらどうなるんだ?」


明石「んー実証実験はまだやってませんが多分細胞が異常活性化して死にますね!」


提督「怖いわ!」


明石「で、目が覚めたあとこの痴女は提督の元に向かったのでした」


五月雨「明石さんが虐める……」


あんまりの言い方に五月雨は泣き出し榛名の胸に埋もれる


提督「泣かすなよ」


明石「悪いの私ですか!?」


提督「明石だよな?」


榛名に同意を求める


榛名「客観的に見れば。でも、提督も悪いですよ?」


提督「それは分かってるやわらか……じゃない。こほん。五月雨いいかな?」


五月雨「はい?」


嘘泣きをしていた五月雨


明石「うっわ」


提督「生きていてくれてありがとう。だが……」


五月雨「私は除隊された身です。生きてても……」


提督「それは上と掛け合う……あれ?まだ申請してないじゃん!」


五月雨「え?!」


提督「そうだよ!昨日は色々ありすぎて五月雨の轟沈報告してない!!」


五月雨「なら!!」


提督「君は今で通りだ!」


五月雨「やったぁ!!」


提督と五月雨は手を取りあって喜び合う


提督「あ……」


五月雨「あ……」


2人して昨夜のことを思い出して赤くなる


榛名「どうしました?」


提督「どどどどどうもしないぞ?なななななぁ五月雨!?!」


五月雨「はははははい!!」


榛名「どう見ても動揺してますよ?」


提督「いや……別れの瞬間を思い出してな……」


提督は五月雨に視線を移す

すると五月雨は顔を赤くして下を向いてしまう


榛名「はぁ……五月雨ちゃんが生きててくれて良かったです」


榛名「二人で話したいことがあるのでしょう?行きますよ明石さん」


何かを察した榛名は明石の首を掴んで引きずるように部屋を出てしまう


提督「あの顔気づいてるな……」


五月雨「ふぇ!?」


提督「んーとどうしよう……」


部屋に取り残された2人


五月雨「私はあなたの隣にいていいですか?」


隣の椅子に座った五月雨が涙目で訴えてくる


提督(うぐ……この野郎わかってやがる……)


提督「轟沈もしてないし戦闘不可能でもない。まぁ今まで通り秘書艦は出来ないけどな」


提督「あー……。言葉足らずですまないな。君に秘書艦は任せられない。危なっかしくてみてられない」


提督「でもやらせないとは言ってないぞ?榛名の補佐をしてもらう。ただし戦闘関係は無しだ」


五月雨「あの……言い出す雰囲気じゃないと思って黙ってたんですが……いいですか?」


話を遮るように五月雨が口を開く


提督「どうした?」


五月雨「多分私はもう二度と戦えません。主機が……」


俯いた五月雨は右足をつねっている


提督「痛むのか?」


五月雨「つねってるのはそういう意味じゃ……。歩けはするんです。走ることも出来す。でも多分……」


提督「お前らしくないぞ?」


五月雨「おそらく海上に浮くことが出来ないんです……」


提督「なん……だと……」


五月雨「明石さんの検査で異常は出なかったんです。でも私にはわかります」


提督「そんなことか」


五月雨「そんなことって!!私にはそれが一番大事なんですよ!?」


五月雨「昨日も言ったじゃないですか!戦えない艦娘に価値はないと!!なのになんで!!」


提督「落ち着け。もう二度とお前を戦わせることは無い」


五月雨「それは……それは私が戦えないとわかったからですか?」


提督「違う。二度と君を失いたくないからだ」


五月雨「え……」


提督「その……なんというか……ああもう!」


自分の太ももを殴り付け決心をつける


五月雨「ふぇ!?」


提督「昨日わかったんだよ!お前がいないとダメだって。恋愛感情じゃないけど……その……そばにいて欲しい……」


五月雨「そこまで言って恋愛感情ないんですか……」


提督「お前なら俺の気持ちわかるだろ?」


五月雨「それは提督が榛名さんに惚れてるからですか?」


提督「まぁわかるよな……。いやまて昨日話さなかったか?」


五月雨「話しましたね!」


提督「ちくしょう……」


提督「そういう感情を抜きにお前にはそばにいて欲しいんだ」


五月雨「ふふ。それは告白と受け取りますね♪」


提督「ちがううう!!」


五月雨「分かってますよ。娘でしたっけ?欲しいですか?」


提督「欲しいって……。言い方考えろよ……」


五月雨「お父さん♡」


提督「……」


五月雨「だまってたらわからないじ……」


提督は鼻から鼻血を流しながら放心している


五月雨「やりすぎちゃった……」


提督が戻ってくるで五月雨は提督を眺めていた。鼻血は適当に鼻にテッシュを押し込んで止めている


提督「っが!な、なにが?!」


意識を取り戻した提督は混乱している


五月雨「な、なんでもないですよ?」


恥ずかしくて提督と目が合わせられず視線を外す


提督「んー……何かを忘れてるような……」


五月雨「わ、忘れてください!」


提督「おわっ!殴ろうとするな!」


五月雨「うぐっ……」


さすがに慣れてきた提督は五月雨の腕をつかみ押さえつける


提督「ええと……そうだ!色々あるから戦わせない


五月雨「わかりました。まぁ戦うこと出来ませんが……」


提督「傷が痛むが……」


ベットから降りて上着を羽織る


五月雨「あ、あれは提督が悪いのであって……。いえ、すみません……」


提督「悪かったって。俺だって男児だ抑えられるものも限界がある」


五月雨「きゃー。娘に手を出すー」


榛名「今……なんと??」


ドアを開けたところで榛名が出迎える


提督「いいいいいや???なななななんでもないぞ??」


榛名「ふむ……。まぁいいでしょう」


榛名「というかなぜ提督は歩いているのですか?」


提督「ちょっと放送をな」


五月雨「放送?」


提督「昨日のあれが誤報と伝えないと。今五月雨を他のみんなが見たらどう思う?」


榛名「亡霊と思いますね」


五月雨「ふぇ!?」


提督「轟沈した艦娘が鎮守府を歩き回ってるんだぞ?」


五月雨「あー……」


提督「だからだ」


榛名「肩貸しますよ」


提督「すまんな」


提督(うっはぁ……すっごいいい匂い)


榛名の肩を借りながら歩く提督は心の中で榛名の匂いを堪能する


五月雨「鼻伸びてますよ?」


響「え……」


提督たちが歩いていると提督を探していた響と出くわしてしまう


提督「1番会いたくないのと……」


提督「んーどうしよ」


五月雨「響ちゃん!!」


泣きながら五月雨は響に抱きつく


響「な、なぜ五月雨が!?」


提督「いい機会だ。詳しいこと話してやれ」


五月雨「はい!さ、響ちゃん行こ!詳しく話すから。それと心配させてごめんね」


2人は走って行ってしまう


榛名「邪魔者は消えました。行きましょうか」


提督「君ってたまにおかしいこと言うよね」


榛名「ふふ。提督のあんな姿を知ってるのは榛名だけですよ?」


提督「弱み握られたね?」


榛名「それは……ご想像にお任せします」


提督「はぁ……」


そして2人は放送室に向かう


駆逐艦寮 五月雨の部屋


響「詳しく話してくれ」


五月雨「うん。それがねーー」


五月雨は昨日鎮守府に戻ってなら何があったのかどうなったのかを響に伝えていく


響「なるほど提督にねぇ」


話を聞いてだいたい理解して察する


五月雨「待って。響ちゃんって司令官って呼んでなかった?」


響「バレたか。んーなんて伝えたらいいのだろうか……」


五月雨「わかった!私の意志を継ぐ気だったね?」


響「そこまでお見通しか」


五月雨「まあ……それは嬉しいんだけど……口調とかまで真似しなくても……」


響「すまない……」


五月雨「気にしてないからいいよ」


響「そっか。提督には告白したのかい?」


五月雨「ふぇ!?ええと……したというかなんというか……」


響「まぁ話さなくていいよ。別にそこまで聞きたいわけじゃないし」


五月雨「ごめんね。でもねあの人をからかうの面白いの」


提督「あーマイクチェック。よし聞こえてるな」


2人が話していると放送が流れ始める


五月雨「あ、提督の声だ」


提督「構えなくていい。緊急の内容では無いのでな。昨日の放送に誤りがあったことを伝える」


提督「すぅ……はぁ……。よし!昨日伝えた駆逐艦五月雨の轟沈は誤りだ。最期を看取ったと言ったがあの後色々あって生存が今朝確認された」


提督「が、だ彼女は深い怪我を負って海上に出ることが出来なくなった」


響「みたいだね」


五月雨の足を見て察する


五月雨「うん……もう浮けないの……」


提督「けれど俺にはかけがえのない部下だ。戦えなくても秘書艦の補佐としてそばに置くことを伝えておこう。戦えないからと言っていじったりしないようにな」


五月雨「今のってどういう意味かな……」


響「かけがえのない……ね。好かれてるねぇ」


五月雨「あの人たまに抜けたこと言う時があるからなぁ……」


提督「今日の夜に五月雨の帰還を祝して祝いの席を設ける。各自間宮亭に来るように。放送以上!」


鎮守府に来た間宮のために空き店舗を改築して店として機能させている

名前はまだ未定である


五月雨「だってさ。もう一緒に戦えないけどよろしくね」


改めて深々とお辞儀をする


放送室にて


提督「っかれた!」


マイクを置き椅子に深く腰かける


榛名「お疲れ様です」


提督「ほんとだよ。一気に起きすぎだわ」


榛名「夜まで如何しますか?」


提督「書類整理とか昨日からしてないから終わらせんと」


榛名「無茶はさせませんよ?」


提督「君がいるのにできるとでも?」


榛名「いえ?」


榛名に肩を借りて提督室に移動する


その夜間宮亭にて


提督「五月雨おかえり」


五月雨を上座に提督の主力艦隊が顔を出す


明石 榛名 提督 五月雨

愛宕 夕張 天龍 響 と座っている


夕張「ほんとですよ。驚かせないでくださいよ」


愛宕「初めは驚いたわよ」


天龍「やっぱもう戦えないんだな」


艦娘同士見てわかるものがあるのか五月雨を見て全員表情を暗くする


五月雨「ですが、これからは提督のお側にいられます!」


提督「はは……」


五月雨の隣に座っている提督は乾いた笑いをする


榛名「秘書艦は榛名ですからね?」


そしてその隣に榛名が座っている


提督「これが両手に花ってやつか」


榛名と五月雨に挟まれた提督は軽く笑うが目が笑っていない


提督「んじゃ始めますか。間宮さんお願いします!」


間宮「ええ。腕によりをかけて料理を作りましたので食べてくださいね」


全員が席につき談笑が始まると机に料理が運ばれる


提督「本当は俺も手伝いたいけどなぁ……」


胸を擦りながら五月雨を横目で見る


五月雨「あ、あれは!提督が悪いじゃないですか!!」


あの時のことを掘り返された五月雨は顔を真っ赤にして提督を睨みつける


提督「構えない構えない!」


天龍「んあ?またセクハラでもしたのか?お前」


竜田揚げを食べようとしていた天龍は提督の話に混ざる


提督「話だけを聞くと俺が悪いけど、ねぇ?」


五月雨「もう!忘れてください!」


五月雨「でもなぁ……提督は私の体を弄んだからなぁ」


天龍「っぶは!も、弄んだ!?」


食べならが話を聞いていた天龍は喉に詰まらせる

横にいた夕張がお茶を手渡し一気飲みをする


天龍「おい。さすがの俺でも今の発言は聞き捨てならんぞ?」


マジトーンで返してくる始末


提督「俺だって男児だ。目の前に裸の五月雨が……いやまてこのままだと俺は捕まる以外選択肢がないのでは?」


榛名「はぁ……。1度提督は口を閉じましょう。ここからは私が」


榛名「今朝工廠で扶桑さんを建造したあと突然裸の五月雨ちゃんが現れたんです。轟沈してないのを喜んだ提督は五月雨ちゃんの状況を考えずに抱きしめて体を触り倒したんですよ」


提督「待って。俺を助けるんじゃないのか!?」


榛名「悪いのは提督ですよ?でも元はと言えば五月雨ちゃんを止めれなかった明石さんが悪いんです」


明石「っうぐ!」


榛名の隣で食べ物を食べていた明石


明石「わ、私は止めました!そこの暴力少女が勝手に突っ走ったのが!……ひぃ!」


提督「殴られた俺が悪いが彼女を暴力少女と二度と言うんじゃねぇ」


何度も言われて腹が立ちマジトーンで明石を睨みつける


提督「はぁ……。お前の功績があったから五月雨が甦ったからこの席に参加させてるんだぞ?」


明石「あひはほうごはいまふ」


口にものを入れて明石が話す


天龍「何となくわかった」


提督「やっと分かってくれたか」


天龍「ああ。お前が小さい女の子に手を出す変態だってな!」


提督「違うぅ!!」


榛名「まさか提督……」


哀れみの目を向ける榛名


提督「やめて!?」


榛名「ふふ。冗談ですよ」


天龍「ほんとお前をからかうの面白いよな」


五月雨「わかります」


提督「ここに俺の味方はいないのか……」


提督「間宮さーん。ビールありますかー?」


なんか物足りないと思った提督は酒がないことに気がつく


間宮「ありますよ?」


提督「飲みたいヤツいるか?」


響「私ももらおうかな」


今まで食べることに集中しながら話を聞いていた響きが口を開く


提督「君はまだ幼いから飲めないでしょ」


響「今のは聞き捨てならないね!昨日はウォッカをショットで飲んでたんだよ?」


提督「いやまて。なんてもの飲んでんだよ」


響「私だってくるものがあるんだよ」


榛名「わ、私は遠慮しときます……」


天龍「俺もだ。どうにも酒ってやつは好かなくてな」


夕張「私は貰おうかしら」


愛宕「わたしは遠慮しようかしらぁ」


今まで提督の話を聞くか隣と談笑をしていたほかのメンバーが答えていく


明石「私は飲めません!」


提督「五月雨ちゃんはどうする?」


五月雨「わ、私は……やめときますね」


提督「間宮さんジョッキ3杯で」


間宮「わかりました。少し待っててくださいね」


しばらくすると3人の元にビールが届く

ほかのメンバーにはお茶やジュースなどが渡される


提督「待ってました!」


ビールを手渡されると我慢できずに半分ほど飲み干してしまう


提督「くぅぅ!!これだよこれ!」


提督になってからは余裕がなく酒を飲むことが出来なかった提督

元々そこまで強くはないがたまに飲むのを趣味としていた


五月雨「美味しいんですか?」


酒を飲んだことがない五月雨が聞いてくる


提督「いんや?めちゃ苦い」


五月雨「それ本当に飲み物なんですか?」


提督「あんまビールは好きじゃないけどね。でもこれがまた肉と合うのよ!」


疲れもあってかジョッキ半分でよってしまった提督


榛名「提督酔ってますよね?」


顔を赤らめた提督を見て榛名は呆れ顔で聞いてくる


提督「全然?こんなもんじゃないのか?」


天龍「どこからどう見ても酔ってるだろ。俺の知ってるお前はそんな上機嫌に話すやつじゃないぞ?」


提督「心外だなぁ。俺をなんだと思ってんだよ」


天龍「五月雨みたいな小さい女の子に手を出す変態だろ?」


提督「うっわ言い切りやがったよ。そこまで俺は変態じゃないですぅ!」


榛名「はぁ……」


夕張「え?提督もう酔ったんですか?さすがに弱すぎますよ?」


愛宕と話しながら3杯目のビールを飲み終えた夕張が上機嫌に話す提督に声をかけてくる


提督「お前飲むペース早すぎやろ」


夕張「言い忘れてましたけど私あまり酔いが回らないので。あ、間宮さーん日本酒あります?」


間宮「まだ数はありませんがありますよ?」


奥で次の料理を作っていた間宮が顔を出して答える


夕張「ラッキー。なら手頃なやつをロックでお願いしますね」


響「ウイスキーはあるかな?」


間宮「ありますよ。何で割ります?」


響「昨日は飲みすぎたからコーラかな」


間宮「コークハイですね少し待っててくださいね」


五月雨「みんなすごい飲んでる……」


提督「五月雨ちゃんは飲んだことないの?」


五月雨「酔うのが怖くて……」


提督「まぁ無理にとは言わないよ」


五月雨「はい……」


その後提督はビールを2杯飲んだ後ハイボールを頼む

しばらくして夕張は動かなくなってしまう


愛宕「提督ぅ?夕張ちゃん動かなくなったから部屋まで送ってきてもいいかしらァ?」


動かなくなった夕張を心配して愛宕が声をかけてくる


提督「まじかよ……。すまないが頼む」


響「情けないね。この程度で潰れるなんて」


コークハイを飲み干したあと物足りないと言ってウォッカをショットで飲み干していっていた響


提督「お前は飲みすぎだわ」


響「そうかな?」


五月雨「そうですよ」


提督「みんな箸も止まってきてるしそろそろお開きかな?」


食べる者、飲む者、話す者各々楽しんだ祝いの席は3時間を超えていた


榛名「あまり長居しても明日に響きますし」


提督「んじゃこの酒を飲み干したらお開きに……あれ?」


左手で酒をつかもうとしたがあるはずの場所に無かった

ふと横目で五月雨を見ると自分のコップとは違うコップを手に持って飲んでいた


五月雨「へ?どうしました?」


提督「俺の酒知らない?」


五月雨「お酒ですか?あれ?なんかお水とは違う味が……」


不幸なことにハイボールと水はそこまで色の違いがなかった

さらに水と思い込んで飲んだ五月雨はそれが酒ということに気がつくのが遅れてしまう


天龍「ドジったな」


五月雨「ふぇぇ!?これ提督のお酒ェ!?というか関節キスじゃん!?」


提督「お前昨日のこと……」


榛名「昨日の……なんですって?」


提督「あ、いえ……なんでもありません……」


五月雨「あ、でも好きな味かも」


そこで置けばいいものを残りの酒を飲み干していく


提督「いや飲み干すことないじゃん」


五月雨「す、すみません……」


ほんのりと顔が赤くなっていく五月雨


提督「はぁ……間宮さんスクリュードライバー最後にお願いします」


間宮「はーい」


提督「君には羞恥心とかないの?」


榛名「あったら今朝のようなことしませんよ?」


五月雨「なんで掘り返すんですか!!」


天龍「ほんとお前たち見てると飽きないな」


提督「どういう意味だ?」


天龍「さぁてな?」


五月雨「オレンジジュースですか?」


運ばれてきたスクドラを見て五月雨が聞いてくる


提督「まぁ近いようなもんだな。酒だぞ?」


手に持って匂いを嗅いだあと飲み始める


提督「なんで!?」


五月雨「あ、これ好きな味です!」


提督「はぁ……盗られちまったもんは仕方ない。俺はお冷でも飲んでますよっと」


榛名「止めないんですか?」


提督「もう飲んだもんは仕方ない」


五月雨「ありがとうございます。お父さん♪」


天龍「!?」


響「!?!?」


榛名「提督?」


提督「これもう完全にに酔っ払ってますね」


天龍「俺の聞き間違いじゃないよな?」


響「五月雨が提督のことをお父さんって……」


提督「はぁ……」


明石「あのぅ……私昨晩聞いちゃったのですが……」


提督「お前は黙ってろ」


明石「えー……」


天龍「俺達には聞く義務がある。続けてくれ」


明石「はい!昨晩提督と五月雨ちゃんに最後の時間として話す時間を設けたんです。私は寝てて途中からしか話は聞けてませんがどうも提督が五月雨ちゃんを娘にしたいとか」


提督「あーあ。2人だけの秘密にしようとしてたのにこのクソアマが。正確には娘みたいに見てたってことだ」


天龍「うっわ。言い切りやがったよこの変態提督」


響「さすがに今の発言は軽蔑するね」


榛名「憲兵を呼んでもいいですか?」


提督「だから言いたくなかったんだよ」


五月雨「お父さんを悪く言わないでください」


提督「五月雨ちゃん……」


五月雨「お父さんが変態なのは変わりませんが五月雨もそういう風に見て欲しかったんです」


提督「してはおめー敵だな?」


五月雨「あれ?提督がお父さんということはお母さんは榛名さんになるんですか?」


提督「あーえーいや……」


五月雨「それとも天龍さんなんですか?確かに提督とはよく一緒にいますが」


天龍「は、はぁ!?なんで俺なんだァ!?」


当然話を振られた天龍は顔を真っ赤にする


榛名「そういえば昨日そんなこと話してましたね。榛名は五月雨ちゃんが沈んで動揺しててうまく答えられてませんでしだが」


提督「はぁ……」


提督「五月雨は水を飲め」


五月雨のグラスを奪い取って自分のお冷を押し付ける


提督「ったくよ……」


そしてそれを一気飲みする


提督「だから言いたくなかったんだよ」


提督「そうだ俺は榛名が好きだ」


突然の告白


榛名「へ……?」


提督「君に初めて会った時に一目惚れした。初めは違うかと思った」


徐々に榛名は顔を赤くしていく


提督「だが、君といると心躍ることが多かったんだよ。五月雨ちゃんにも同じことがあったが違ったんだ」


榛名「え……?え……?」


天龍「いや待って欲しい。なんで俺たちはお前が告白するのを見なきゃ行けないんだ?」


提督「俺だってもっとムード作りたかったわ!!」


提督「お前たちのせいだぞ!すまない榛名!」


榛名「て、提督が榛名に好意を!?」


状況を理解したか顔を真っ赤にする


提督「正直五月雨ちゃんからそういう目で見られてたのはわかってた」


五月雨「……」


提督「でも榛名に初めて会った時に一目惚れした。五月雨ちゃんは見た目の差もあるし恋愛感情を上手く持てそうにないんだ」


天龍「体が痒くなってきた」


提督「付き合って欲しいとかじゃないけど……」


榛名「榛名感激です!!提督が榛名のことをそう思ってくれたのが!」


思わず抱きつく


五月雨「ぶー」


あからさまに頬をふくらませる五月雨


五月雨「私も抱きしめたいです」


提督「そろそろ限界だわ」


五月雨「何がですか?」


提督「意識保つ……の……が……」


冷静を装っていたが相当酔いが回っていた提督

酔いの影響もあり普段口に出来ない事まで口にしていたのだ


榛名「大丈夫ですか?……提督?」


榛名の腕の中で力尽きる


五月雨「寝ちゃいましたね」


榛名「いい時間ですし今日はもうお開きにしましょう」


天龍「賛成。最後に面白いもの見させてもらったわ」


響「へぇ。五月雨がねぇ……」


五月雨「わ、忘れて!」


五月雨「そ、そうだ!私今酔ってるからあることないこと言ってるかもだから!!」


明石「もう無駄ですよ。むしろ本心にしか聞こえませんでしたよ?」


天龍「正直お前たちの関係はここの全員わかってるぞ?」


五月雨「か、関係!?」


天龍「まぁ初めは付き合ってるのかと思ったが違ったがな」


榛名「五月雨ちゃんが羨ましいです」


五月雨「なぜです?」


榛名「提督に構ってもらえてるので」


五月雨「榛名さんはさっきの提督の話聞いてました?」


榛名「提督が私のことを好きということですよね?」


榛名「嬉しいですけどなんかこそばゆいんです」


五月雨「ならいいじゃないですか」


天龍「どうでもいいがそこで潰れてる提督を部屋まで運んでやらんのか?」


榛名「そうでした!榛名は提督を運ぶのでみなさんはもう休んでください」


間宮にお礼を言ってお開きとなる


響「今日はどうするんだい?」


五月雨「ど、どうって……」


響「お父さんのところで寝るのかな?」


五月雨をいじり始める


五月雨「お、おと!?そ、そうじゃないって!」


五月雨「響ちゃんは先に部屋に戻ってて私は夜風に当たってくるね」


響「はいよ。風邪ひかないようにね」


五月雨は走るようにその場を離れていく


響「正直君が羨ましいよ」


榛名は提督を担いで本館まで移動する


榛名「提督の部屋の鍵は……」


寝てる提督をかついでいた榛名は提督のポケットをさぐっていく


榛名「こ、これは……いえ今は鍵を優先しなきゃ」


何か違うものを触ってしまうが今はそれどころではなく鍵を探す


榛名「ありました。提督失礼しますね」


鍵を開けて部屋に入る


榛名「初めて提督の部屋に入りましたが殺風景ですね」


あの後模様替えを最低限にした後何もいじっていない


榛名「ベットは……あそこですね。寝かせますね」


榛名「ふふ。可愛い寝顔ですね。服は……さ、さすがに榛名はそこまでは……」


色々考えて顔を赤くする


榛名「今日はお疲れ様でした」


提督の寝顔を見てそっと頬に口付けする


提督(寝てると思って好き勝手しやがって……)


先程目を覚ました提督だが酔いもあって体を動かせずにいた

しばらくすると部屋から榛名が出て行く


提督(あーあ。言わなくていい事まで言っちまったよ。これからどう顔を合わせりゃいいんだよ)


提督(着替えは……もういいや寝よう)


そしてそのまま眠りについた


その頃五月雨は


五月雨「ちゃんと受け入れられてよかった」


響から逃げるように立ち去った五月雨

まだ部屋に戻るには昂りが治まっておらず鎮守府の港を歩いていく


五月雨「なんか昨日が嘘みたい……。でも私あの人にき、キスしちゃったんだよね……」


昨日のことを思い出して行き顔を真っ赤にする

手で顔を仰ぎながら夜の海を眺める


五月雨「というかそれ以上にやばいことをみんなの前で口走った気が……」


五月雨「もうやだ……。こんな恥ずかしい思いするんだったらあのまま……」


五月雨「ダメ!せっかく戻ってこれたんだから!」


気を引きしめるために自分の頬をはたく


五月雨「にしてもお酒ってあそこまでやばいものなんだ……」


五月雨「お父さんって……。多分本心なんだよね……?提督をからかうために言ったのにいつの間にか本気で……」


五月雨「でも……あの人に恋人みたいに見て貰えないのなら……それもありかな?」


五月雨「あれ……?」


海沿いを歩いていたはずが気がつくと本館の近くまで来ていた


五月雨「そうだ。あの人にちゃんと謝れてないしお礼も言えてないじゃん」


すれ違うばっかだった。ちゃんと自分の思いを伝えようと提督の自室まで足を運ぶ

提督の部屋のある階まで行くと反対側の階段をおりていく榛名が目に入る


五月雨「榛名さん……?ということは今提督は部屋に1人?」


ドアの前まで来て鍵がないことに気がつく


五月雨「いつも提督に空けてもらってるから入れ……あれ?」


開いてない。けれどもしかしたらと思いドアノブを回すと開いてしまう


五月雨「開いてる?」


3重のロックとはいえ鍵以外は中から締めないといけない

そして榛名は鍵を提督の横に置きそのまま部屋から出てしまったのだ


五月雨「提督ー?起きてますかー?」


そっとドアを開けて中を伺う


五月雨「いない……?いや隣の部屋のベットか」


前に何日か寝てたのを思い出しベットのある部屋を覗き込む


五月雨「いた。寝てる……?」


音を立てないように側までより寝息を窺う


五月雨「寝てるか。伝えるのは明日でいいか」


五月雨「あ、でも寝顔見てみたいかも」


1度は部屋から出ようとしたが寝顔を見るために近づく


提督「なんか肌寒い……榛、名……?」


寝ぼけてるのか五月雨の事を榛名と呼んでしまう


提督「もういいや」


何かを諦めたのか五月雨の腕をつかみ引き寄せる


五月雨「きゃぁ!!」


そのままベットに引きずり倒し抱きしめてしまう


五月雨「ち、ちょっと!!さすがにこれはダメですって!!起きてください!」


後ろから抱きしめられ上手く起こすことが出来ない


五月雨「あーもう!嬉しいですけどこれはダメなんです!!」


肘で叩くが目を覚まさない


提督「ちょうどいいサイズ……これでちゃんと寝れ……」


五月雨の頭の後ろに提督の頭があるのか寝息が聞こえてくる


五月雨「やだー!はーなーしーてー!!」


腕の中で暴れているとそれを煩わしく思ったのか足でがっちりとホールドされてしまう


五月雨「う、動けなくなった……でも完全に寝たら力が弱まるかも……」


しばらく待つが拘束が弱まることは無かった


五月雨「提督に抱きしめられてる……。でもこれは絶対に違うと思う……」


五月雨「ダメ……こんな時に寝たら……」


酒を飲んでいたのが影響したのか疲れか五月雨は徐々に睡魔に襲われていく


五月雨「これ目が覚めたら襲われる?いや寝てる間に……うぐぐ……」


何とか力を入れるが大人の男性に勝てる訳もなく諦める


五月雨「もう明日考えよ。起きたら……ちゃんと……」


そのまま眠りについてしまう


翌朝


提督「んあーよく寝た……」


提督「少し頭が痛……ん?」


目が覚めた提督。軽く二日酔いになってはいるがそれよりも気になることがある


提督「なんか柔らかいものが……俺の部屋って抱き枕なんてあったか?」


寝起きもあってまだ目が開かない

だが自分がなにか柔らかいものを抱きしめているのに気がつく


提督「すこしずつ……青い髪……?」


視界には青い髪が映る

手頃なサイズで柔らかいそれ


提督「これヤバいやつだよな……」


自分が何を抱きしめているかを理解する


五月雨「んん……ふわぁ……」


提督が逃げ出そうとすると運が悪いことに五月雨が目を覚ましてしまう


五月雨「あれ……私昨日……」


提督(今俺はどこに手を置いているんだ?)


そっと指を閉じると今まで感じたことが無い感触が帰ってくる


五月雨「ひゃっ!?」


五月雨「なんで提督が!?いやなんで私抱きしめられてるの!?」


五月雨「というかどこ触ってるんですか!!」


提督「もういっそ殺してくれ」


五月雨「悟り開いても無駄です!!触り続けないでください!!」


提督「正直溜まるものが溜まりすぎてるから殺してください……」


五月雨「腕に力を入れないで!逃げられない!いやぁ!!」


腕の中で暴れて殴れるもの叩けるものを無境に攻撃していく


提督「これ榛名に見られたらおわ「何を誰に見られたら終わるって?」」


提督と五月雨がいちゃついているとふと榛名の声が聞こえてくる


提督「っひ……」


五月雨「はなしてー!」


力が弱まったのを見逃さなかった五月雨は腕を振りほどいて提督から離れる


榛名「起きるのが遅いので見に来たら……まったく」


普段の時間から大幅に遅れていたので榛名が部屋まで向かいに来ていたのだ


提督「えっとこれにはワケが……」


榛名「聞きたくありません。どこからどう見ても五月雨ちゃんを部屋に連れ込んでみだらな事をしたようにしか見えません」


五月雨「べー!」


榛名の後ろに隠れた五月雨は舌を出してくる


提督「お願いだからもう殺して……。さすがに耐えられない……」


榛名「榛名だから良かったんですよ?他の人だったら大惨事ですよ?」


提督「うぐっ……」


五月雨「ええと……」


提督「正直昨日の夜のこと覚えてないんだ。五月雨ちゃん?俺は君を部屋に連れ込んだのか?」


五月雨「ち、違います!榛名さんが提督を部屋に送ったあと私が部屋に入ったんです……」


五月雨「その後提督に捕まって……」


榛名「じー」


五月雨の言葉を聞いて榛名が哀れみの目で見てくる


提督「えぇ……俺何かした?」


五月雨「沢山しましたね!私の体を触り倒しては、恥ずかしいところを……さ、触られて……」


榛名「もうこれは憲兵案件ですよ」


提督「みんなさよなら。私は旅に出ます」


五月雨「辞表を出さないで!!」


提督「こんなことをしたんだ。ここにいられないさ」


榛名「はぁ……」


榛名「今回のことは見逃してあげます。けれど次はありませんよ?」


提督「榛名……」


五月雨「お腹がすきました」


くぅと五月雨のお腹が鳴く


提督「く、はははは!!お前らしいや」


提督「遅い朝食になるが榛名も来るか?」


榛名「ええ。ご一緒させてもらいます」


五月雨「間宮さんのところで食べたいです」


提督「昨日も食べたでしょうに。んじゃ行きますか。五月雨ちゃん?ほい」


制服のシワを伸ばすと五月雨に手を差し伸べる


五月雨「へ?」


提督「もう周りもあまり気にしなさそうだし堂々と行こうや」


五月雨「は、恥ずかしいです……」


榛名「まったく。提督は少し自重してください」


そういうと五月雨の手を握る


提督「まぁその方がらしいか」


部屋の鍵を閉めて3人は間宮亭に向かう

1度は壊れた日常。だがそれは取り戻された

ここからまた3人の物語が始まるのだ


後書き

途中から五月雨生存ifルートに入ってしまった
まぁこれはこれでやりたいようにやれたね
残り7年分
時間かけて完結まで突っ走ります


このSSへの評価

1件評価されています


一飛曹さんから
2020-09-11 16:58:44

このSSへの応援

1件応援されています


一飛曹さんから
2020-09-11 14:59:52

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: 一飛曹 2020-09-11 16:59:27 ID: S:ew2EoJ

言葉選びだったり、五月雨ちゃん他登場人物の感情の暖かさなど、丁寧描写されてる素敵な作品でした!

これだけ丁寧作られた作品が、なぜ評価されないのか不思議…。

2: 一飛曹 2020-09-11 17:07:55 ID: S:GYls33

肉じゃが、カレー意外にも

シチュー
コロッケ
ハンバーグ

くらいなら作れそう!
私めのレパートリーではこれくらいが限界w


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