2020-12-17 07:17:23 更新

概要

女提督とデ・ロイテルの話です
重たい話ではないので、イベントの入渠中にどうぞ
タイトルは思いついたら変えます


#1 プロローグ


こんにちはー。

わたし、ここで提督をやってる人です。今は出撃してもらってる艦隊の帰りを待ってるとこです。え?なんで女なのに提督してるのかって?それには深い深い、とってもふかーい事情があるのです。

…ウソです。ノリでなっちゃいました。というのもですね…

ここの前任提督、実はわたしのおじいちゃんでした。去年のお正月ぐらいにオーストラリア方面で展開された大規模な作戦があったんですけど、おじいちゃん疲れちゃったらしくて。引退したがってたんですよ。

そこで白羽の矢が立ったのがわたしってわけです。ん?はしょりすぎって?もっと他に候補がいただろうって?

ふふふ…でも事実なんですよ。わたしはおじいちゃんが提督してたときに、秘書をやってたんです。けっこう優秀だったんですよ!

おじいちゃんはわりと高齢だったからわたしがサポートしてたの。

で、引退するってなったんですけど、まぁ物凄く唐突だったわけです。後任候補もいなかったわけじゃないんです。でもここはおっきい鎮守府ですから、引き継ぎ量が尋常じゃなくて…それなら秘書やってた孫に任せればよくね?ってなったっぽくて。

いやいや、冗談じゃないんですよ!わたし、優秀でしたから!…なーんて、そんなことじゃないんですけど。要するにですね、引き継ぎの必要が無くて、それなりに艦娘や周りの方とも面識がある、まあまあ実績もあるっていう、都合のいい存在だったんです。だから、やらかしたら即解任です。艦娘のみんなのサポートが無かったら1週間でクビとかになってたかもですね、ふふふ。

もちろん偉い人から反発はあったらしいですけど、そこは元帥さんとおじいちゃんがなんとかしてくれました。おじいちゃんはなんだかんだ偉かったから…しかも元帥さん達とも仲良かったし。なにやって黙らせたんでしょうね?まったく、老猾なおじいちゃんです。なーんて。ふふふ♪

そんな感じですかねー

あ、そろそろみんなが帰ってくる時間です!

楽しみだなー♪





ノックの音がしました


『ていとくー入っていーい?』


いいよ、って返事をします。

ドアが開かれて入ってきたのは6人の艦娘。みんな無事で、まずはよかった。


「第一艦隊、ただいま帰投しましたー!」


先頭に立つ朱色の髪と金色の瞳の女の子、デ・ロイテル。この子がわたしの秘書艦ちゃんです。


「おかえりなさい。んーと、報告は後でいいから先にお風呂行ってきてくれる?」


みんなには先に入渠してきてもらいます。

しょーじきわたしは戦果を重視してません。切羽詰まった状況じゃないし…無理しすぎはよくないよね!ってことで。先にお風呂入ってもらうのも毎度のことなのでみんなわかりきってます。形式上来てる感じかな?長門さんにはたまーに怒られちゃいますけど。

ロイテルちゃん以外が執務室から出ていきました。…あれ?


「私は無傷だったし行かなくていいでしょ?」


さすがロイテルちゃん!かっこいい!

みんなにもおっきなケガとかなかったっぽいよね?うんうんおっけー♪


「じゃーあ提督、残りのお仕事終わらせちゃいましょー!」


おーっと、やる気ですねー

で・も♡

わたしはそんなに仕事したくないのです。えへへ…


「…ねぇロイテルちゃん。一緒に休憩しよ?」


そう言ってさっき間宮さんのところで買ってきたショートケーキを取り出します。絶品です。ぜっぴん!

甘酸っぱいイチゴの匂いが広がって…やば。よだれ。


「あ、それ…!マミヤさんの!」


ふふふ…食いつきました。こうなったらこっちのものです!


「ね?一緒にたべよーよ」


「そだね!食べる食べる!dank je!」


やったぁ!懐柔に成功しました!ちょろいです♡

それでは取り分けて…ロイテルちゃんにはコーヒーを入れてきてもらいます。彼女のコーヒーもとってもおいしいんです。じゅるり。






「いっただっきまーす♪」


んん〜おいひい♡

やっぱり間宮さんのケーキは最高です!しあわせだなー♪


「ん、おいしいけどさ。提督?」


んー?なぁに?



聞くと、わたしたちだけケーキ食べてていいのか。とのことでした。ふむふむ、さすがロイテルちゃん。優しいです。でもでも、心配はご無用です!ちゃーんとみんなの分の間宮券も買っておきました!あとでお風呂上がりにプレゼントします。ふふふ。


「えー!やるじゃん提督!やっばーい!」


ロイテルちゃんに褒められちゃった。やったー♪

ふふ、うちはこんな感じでまったり仕事が出来ちゃうんですが、これには理由があります。それは単純で、わたし…たちが仕事に慣れてきたからです。もう1年ちょいやってますからねー

しかもあの時は鎮守府に来て間もないロイテルちゃんを秘書艦に選んじゃったから、もうマジで大変で…あはー、なんとかなったんですけど。

秘書艦補佐とかいう役職まで出来ちゃったんですよ…長門さんとか加賀さんとか妙高さんとか…こわかったぁ…

まぁ、基本みんな優しいからいいんです。

え、なんで仕事慣れてないのにロイテルちゃんを秘書艦にしたかって?うーん…

それはおいおい、ということで!

わたしは美味しいケーキを味わいます!











幕間の小話:キングス・デイ

「Goedemorgen!おはよー提督!」


ロイテルちゃんが来てくれました。今日も元気ですね、うんう…ん?


「おわぁ…なんていうか…今日は一段とオレンジだね」


ロイテルちゃんと言えば赤毛の派手めな女の子。

でも今日の彼女は全身オレンジ色。明るくて目が痛いかも。それでもオシャレなのはさすがです。


「あ、これ?もしかしてびっくりしちゃった?わかるわかるー。実はね…」


ふむふむ、どうやら今日はオランダの王様の誕生日だそうです。みんなオレンジの服着てお祭りをするんだとか

なにそれすっごい楽しそう!最強のバースデーパーティじゃん!戦後の夢がまた1つ出来ちゃいました。ぜったい行きたい。


「と、言う訳で!とっととお仕事終わらせて、パーティーしよ!ABDAのみんなも呼んでね!」


「おっけー♪」


さぁ今日も頑張りましょう!



















#2 進水日デート


「ロイテルちゃーん!進水日おめでとー!」


「ひゃああ!?」


今日はロイテルちゃんの進水日。執務室の近くで待ち伏せして、ぎゅーってしてみました。ロイテルちゃんったらかわいい声出しちゃって♪

…あと柔らかいです。むにゅむにゅ。

さてさて。わたしは進水日と誕生日が同じようなものだと考えています。なんとなく、ですけど。去年は一緒に遊んでみたんだけど、すっごい楽しかったんです。ロイテルちゃん喜んでくれてましたし!だから今年もなにかしたいなーって思って。

1日お休みにして外に遊びに行きます!デートです。デート!


「まじ?やっばーい!アリガト提督!」


ふふふー。喜んでくれました。かわいいです。美人なのにかわいいってズルいですよね。ロイテルちゃんはスタイルも良いですし。…おっぱいも、まあまあありますし…ぐすん。

そ、そんなことは良いんです!

デート行くんです!

名残惜しいけどロイテルちゃんから離れて歩きはじめます。

そう、デートって言っても特に行き先決まってないんですよ。どーしよ。まぁなんとかなります!

とりあえず出かけてみましょうか。準備して1時間後に正門前集合ね!







ちらっ。ロイテルちゃんの今日の服は、大人な感じです。めっちゃかわいい。クリーム色のフレアブラウスにオリーブグリーンのボックスプリーツ(超ミニ)、黒にオレンジのパンプス、カチューシャと三つ編みその他で髪がキレイにまとまってるし、おっきい部分にある3色と合わせたバックもオシャレ。背高いからモデルさんみたい…ていうか背高いのにハイヒールってずるいよね、ただでさえロイテルちゃん脚長いのにもっと長く見えるもん。

太ももつぅーってやりたい。あ。ごめんなさい、欲望が。ふふ。

わたしはおっきいニットにデニム、スニーカー。あと帽子。知らなかったけどこれキャスケットって言うんだって。それとてきとーなショルダーバッグ。今回はリュック自重したんだよ。

…子供っぽい?よく言われます。でもでも、今日はそこそこ頑張ったんだって!ふだんはパーカーにジーパンにランシューだよ?たぶん中学生から高2ぐらいにはランクアップしたもん!

ってまぁ服装はどうでもいいんです。男の人とデートって訳でもないですし。デートに気合い入れるかって言われたらたぶんそんなこと無いんだけどね。

もっと大事なのは…行く場所決まってないってこと。さっきも言ったんだけど、まじで決まってないの。候補すらないの。どうしよう…うーん…

そうだ!

ロイテルちゃーん、どこか行きたいとこありますかー?ちょっと聞いてみます。こーゆーときはこれが1番!


「んー。私、朝ごはん食べてないからとりあえずなにか食べたいな」


わ、たしかに。そういえばまだまだ朝早いですね。じゃあカフェとか行って食べちゃいましょう!実は行ってみたいところがあるんです!






座席についてメニューを眺めます。ここは最近できたオシャレ目なカフェなんです。ずーっと来たかったんだけど…1人じゃ入りづらくって。こんなお仕事してるから友だちとも疎遠になっちゃいましたし…え?まったりしてるように見えてもけっこう忙しいんですよ。まったく。

まだそこそこ朝早いから店内は空いてます。木が多めの内装で、照明眩しすぎないし落ち着きますねー♪

わー、自家焙煎のコーヒーが飲めるんだって。いいんじゃない?

これとぉ…お?ストロープワッフルだ。ロイテルちゃんのも美味しいですけど、ちょっとお店のも食べてみたい。わたしはこれにしよーっと♪すみませーん!



注文しました。なんかロイテルちゃんに睨まれてた?見つめられてた?ような気がします。

ほら、ほっぺがぷくーってなってます。どしたの?


「…べつにー!」


えー、なんか怒ってるのかな…

むむ…まあいっか、ご飯来るまでお話タイムです。






「ねぇねぇ、ずーっと気になってたんだけど」


「んー…なーにー?」


「提督ってさ、vriendje…あー…彼氏とかいないの?」


「へっ?」


「なんかお休みの日もあんまり出掛けてないじゃん?」


「そうかも」


「友だちは…」


「いる!!!」


「うんうん…でー、提督ってめっちゃかわいいじゃん?」


「えへへ…褒めてもなんにも出ないよー♪」


ロイテルちゃんにかわいいって言われちゃった♪ここは奢ってあげよー♪…ちょろい訳じゃなくて、誕生日だからですからね!


「けっこうモテそうだし」


「んん?そんなことないよ。みんな友だちって感じ」


「Echt waar?」


「まじまじ。ほとんど恋愛対象外だよ」


「えーじゃあさ、例えば…俳優さんみたいな人達見て、かっこいいとか好きとかないの?」


うーん…俳優さんってかっこいいよね…でも、なんか好きとは思わないかも。なんでだろ。かっこいいと思うんだけど…あれかも、そもそも今は誰かと付き合いたいとか思ってないのかも。ん、かもかも。


「ふーん…」


なんか不思議そうな顔してます。でもわたしも考えたこと無かったから説明できません…

ていうかロイテルちゃんはどーなの?それこそめっちゃモテそうじゃん。


「へ、私?」


「うんうん!」


「私ぃ…は…ホラ、出会い無いからさ」


なるほど。たしかにそーゆーのは無いかもしれない。普段うちに出入りしてる男性なんて憲兵さんしかいないもんね。しかもちょー愛妻家な方。あと彼女さんとめちゃくちゃラブラブな方。お2人共すごいいっぱい写真見せてくれるの。楽しそうでいいなーとか思うんだけど。他の人はあんまり喋らないからよく知らない…あ、でも皆さんパートナーさんはいるみたい。リア充ってやつですね、うんうん。

そっか、艦娘のみんなのためになにか…例えば合コンみたいなの企画してあげたほうがいいんでしょうか。


「いやー…そういうのはいいや…」


「そうなの?」


「ん、提督と一緒であんまり興味無いのかも。今はみんなで遊んでた方がいいかな」


そっかそっか…まあ一応戦時中ですしね!そういうことは後にしましょうか!

そんなこと言ってたら注文したのが来ました。ふふふ…お店のストロープワッフルはどんな味なのかなー♪


「いただきまーす♪」


んー!おいひい!おいひいですよこれ!もぐもぐ。サクサクとろとろ!んふふ、何回食べても飽きないですねー♪

…あれ?ロイテルちゃんがこっち見てる。欲しいのかな?ちょっといる?


「う、ううん!大丈夫!ありがと提督」


うーん…なーんかさっきから変な感じしてるんだよね。なんでだろ?

まぁいいや、たぶんこれだけじゃお腹空いちゃうから、もっと頼んじゃお!とりあえずこのサンドイッチとぉ…








ふー美味しかった♪けっこー食べちゃいました。ふふふ…そして、残しておいたストロープワッフルを食べてみます。あー…ん♪んん!おいしいです。さっきとは違ってしっとりねっとり!キャラメルがいい感じ♪もーこれホントすごいです。食べ方でぜんっぜん食感変わっちゃうんだもん…

ロイテルちゃんおすすめのコーヒーカップに乗っけて食べる方法は、しっとりして…でもあったかいから中のキャラメルはとろとろなの!あとは、これ凍らせて食べてもおいしかったりするんだって…むむむ、奥が深いです。

私は今のところロイテルちゃんの食べ方が好きかなー?


「ホント!?」


わああ!?ロイテルちゃんが急に体を乗り出してきました。びっくりした…今日イチのリアクションだったかもしれません。


「あ…ごめんね」


「どうかしたの?」


「ううん!なんでもないから気にしないで!」


そ、そっか…

うーん。なんか露骨に機嫌良くなった気がします。うーん?まあいっか。ごちそうさまでした!













さてさて。ご飯食べましたし次のところに行きたいんですけど、なんにも決めてないからなぁ。どーしよ。うーん…こーゆーとこ直さなきゃなんだよね…優柔不断ってやつ。そう、カフェはさっき頑張って考えたのね。


「ねぇねぇ提督!ちょっと行きたいところあるんだけど!」











「わー♪やっぱ日本のブティックもオシャレだね♪」


ロイテルちゃんが行きたかったのは洋服屋さんでした。んー、やっぱりオシャレな人はこういうとこ行くんですねー

店員さんもお客さんもみんなオシャレ。…大丈夫かな、わたし場違いじゃない?


「こっち来てー!新作出てるよ!」







「ふっふっふー♪私がここに来たかったのはねー…もちろん自分の新しい服も欲しかったんだけど。それより、提督を着せ替えしたかったからなの!」


「…え?わたし?」


「そう!今だけ!今だけ私のお人形さんになって!」


お人形さんねー

うーん…まぁいっか、誕生日だし。わわ、引っ張らないでよー!







「さーて…さっきも言ったけど、提督ってめっちゃかわいいじゃん?でも、なんて言うの?あのね…うーん…そう、シンプルな服好きでしょ?」


「んー…たしかに。動きやすそうな服選んじゃったりするね」


「でしょでしょ!で、それってもったいないと思うの!VIONのお肉を焼いただけみたいな感じ!」


「ごめんロイテルちゃん、わたしそれ全然わかんない」


「えー?うーん、じゃあ、美味しいお米を炊いてそのまま食べる感じ?」


「それさいこーじゃない?」


「それな、言ってて思った。日本のご飯で1番好きかもだし。んー…なにが言いたいかっていうとね、かわいいのにもったいないってこと!わかる?わかるわかる?な・の・でー♪私がKoken!しちゃいまーす♪」







「やっばーい!こっちでもめっちゃかわいいじゃーん♪」


うぅ…かるーい気持ちでおっけーしたのはよかったけど…けど…!こんなにずーっとやるなんて聞いてないよぉ…

でもロイテルちゃん楽しそうだし、楽しそうなロイテルちゃんかわいいし、なんも言えないなぁ。はぁぁ…かわいい…ホント、かわいいってずるいよね。やば、わたし今日ずるいしか言ってないかも。


「あ、これこれ!例えば今のニットとチュールスカート合わせて…わぁ!いい感じ!」


「うぅぅ、こんな大人っぽい服わたしには似合わないってぇ!」


「えー?そんなことないって!ほら、鏡見てみてよ!提督スタイルいいからなんでもいけるいける、なにごとも経験だよー♪」


そんなこと言われても目の前の鏡に映るのはすっごい背伸びした学生さんです。せいぜい高校生。服と顔が合ってないって言うか…うーん、やっぱりこういうのって元々の顔つき体つきで八割ぐらい決まっちゃう気がします。自分で言うのもアレだけど、わたし童顔だから…


「て・い・と・く♪いま、なんか違うなーって思ってたでしょ♪だいじょーぶ、あとでメイクして小物も揃えてカンペキにしちゃうから♪」








洋服を選んで、お昼ご飯食べて、靴とか小物見て、また服を選んで…いつのまにかもう暗くなってきました。いっぱい買ったよ。ほんとに。フリルなブラウスとかトップス…パンツにスカート…わたしの分だけで上下5セットぐらい買ったかもしれない。お金はいいんですけどね、2人で持ってもしんどい…量が多い…


「ねー提督?提督ってさ、わりと派手目な色好きでしょ。赤とか黄色とか」


「好きかも。よく着てるよねわたし」


「でしょでしょ、そういうイメージ強いんだー♪派手な色のシンプルな服!だからさ、今度は元気な服買いに行こうね!」


「うん!」


「…ねえ、提督?今日はありがとね。楽しかった。また、一緒に。これからも一緒に、お出かけしたいな」


少し前を歩く彼女がこちらへ振り返り、にこりと笑います。夕焼けより少しだけ暗い髪がなびく。オレンジの光、髪、白い肌、黄色琥珀なウルフアイ。それらのコントラストは、思わず息を呑んでしまう美しさで、どちらかと言えば幼い顔立ちの彼女から、美しさが顕れたような。

あぁ、わたしもずーっと一緒にいたい。たくさんお出かけしたい。来年も、再来年も、その先も、ずっとずーっと!














幕間のお話:イメチェン


「ちーっす提督おはよ…っ!?誰!?」


執務室で書類探してたら後ろで鈴谷の声がしました。誰って誰…?振り返るとやっぱり鈴谷。どしたのかな。


「へ…ぁ…え?うっそ提督?」


「う、うん…」


「まじかー…えー…まじ?」


「まじだよまじ」


ひっどいなーもー。わたしはどっからどー見てもていと…くじゃない、かも。そう、実はさっきロイテルちゃんにメイクしてもらったんです。前買ってきた服と合わせて。そっか。そうだよね。ふだんスカートとかぜんっぜん履いたことないし上もパーカーとかTシャツの時が多いから、わかんないのわかるかも。ふふふ。


「あはは、まじかよちょーウケる!」


「ちょ、写真撮らないでよ!」


「いーじゃんかわいいんだし♪なーに?彼氏とか出来たのかなー?ひひひっ♪」


「違うし!あのね…」





「あっはぁ…デロかぁ。なるほどねー」


「うん。ロイテルちゃん以外に見られたのはじめてなんだけど…どうかな?」


「にひ♪そ・れ・はぁ…これぐるちゃに送ったらわかるんじゃね?」


「ダメ!!!恥ずかしいじゃん!つーか消してよそれ!」


「どーしよっかなー♪あ、そうだ。鈴谷これから行くとこあるんだけど、着いてきてくれたらいいよ♪」










「そーいえば熊野はどうしたの?」


「なんかレディーの会とか言って暁とか金剛さんとかスパ姉とかとお茶会してる」


「アレ定期開催だったんだ」


「そうみたい。で、鈴谷はちょっと飽きちったからデロと提督と遊びに来たの」


「なるほどー。ロイテルちゃんは明石さんに呼び出されちゃったよ。艤装にちょっとだけ改修するんだって」


「へー。まぁ今日は提督だけで許してあげよっかな」


「それはどーも」


鈴谷は今でこそこんな感じでロイテルちゃんと仲良くしてくれてるんですけど、ABDAのみんながうちに来た時のギクシャクっぷりはホントに凄かったんですよね。

PerthとHoustonは切り替えてくれてたから積極的にコミュニュケーション取ろうとはしなくとも早めに馴染んでたんですよ。Atlantaも荒療治みたいな感じで夕立と暁が引っ張ってくれて、あと比叡ががんばってたからまあまあ馴染むの早かった…かな。たぶん。

ロイテルちゃんはねぇ…あんなだけど結構トラウマ凄かったっぽくて…今はもう那智さん羽黒ちゃんとも喋れるんだけど。ちょっと前までは、日本の重巡に後ろから急に話しかけられたりするとびっくりして肩が浮く感じだった。

鈴谷がいなかったら…うーん。時間かかっただろうなー。すごい喋り方上手くてさ、天賦の才ってこういうこと言うのかなとか思ったもんね。鈴谷、いい人なんです。


「で、どこ行くの?」


「んーと…とりあえず鎮守府1周しよっか」


「え…なんで?」


「そりゃーもちろん提督のそのカッコをみんなに見せるタメでしょ♪」


「なんで!?やだやだやだ!」


「にひひ…抵抗しても無駄だし!観念しな!あ、青葉じゃーん!」


ヤーーーー!!!!!




前言撤回!もう鈴谷の事信じないから!やめてー!!!



















#3 汗をかいたあとは


「あっついよぉ…溶けちゃうよぉ…」


みなさん、いかがお過ごしでしょうか。うちは、地獄です。






「て、提督?あとちょっとだから、がんばろ?ね?」


7月の終盤になりました。今年はちょっと暑いなーとか思ってたんだけど。最近まじで暑くなってきて、エアコン使ってたんです。そう。「使ってた」んです。午前の分終わって、ご飯食べて、執務室に戻って来たら…エアコンが壊れてて…

汗ダラダラで書類のお仕事。紙にくっつかないように気をつけながら丁寧にやります。お腹タプタプになるぐらい飲み物飲んだけどぜーんぶ出ていくし。服もぐっちょぐちょ。あーもー!











「終わった…!」


「まじ!?こっちも!」


ついに全部の書類に目を通しました!途中で追加とかされなかったから助かりました。やったー!どちらともなくお互いに抱きつこうとして、ギリギリで踏みとどまります。あれ、わたし今めちゃくちゃ汗臭いんじゃね?ロイテルちゃんもぴたっと止まってます。お部屋で2人っきりで汗だくなのってなんかえっちだね。うるさいわたし。


「あ、はは…えーっと…とりあえず…あの、お風呂いこっか」


「leuk…そだ、一緒にはいろ?」


「ん…おっけー」




お風呂場に行く前に明石さんのところに行きます。エアコン直してもらわなきゃ…会う前に着替えるのも考えたんだけど、服が2枚も汚れちゃうのアレだしとりあえず汗だけ拭いてそのまま行こう。どうせ工廠も油と機械の臭いしまくってるからいいよね!






「明石さんいるー?」


「はいはい、どうしましたか提督」


「あのー、お願いがあって。執務室のエアコン壊れちゃったっぽいから見てほしいんだ」


「うわ、この時期にですか…それは大変ですねー。了解、じゃあ少しだけ準備してきますね」


「お願いしまーす」


工廠ね、カッコイイよね!わたしも頭良かったらこういう機械系のことも勉強してみたかったなー。なんかいいよね、この感じ。ロボットとか作ってみたいもん。でも夏場ヤバそう。さっきの執務室並に暑いかもここ。どっちかって言うと熱いかも。


「おまたせー…って!よく見たらなんか提督びしょびしょじゃない?どうかしたんですか?」


「え、だから、執務室に居たから…暑かったし汗すごいの」


「なんで執務室で仕事続けちゃうんですか!自殺行為だよ!他のエアコンついてる部屋で仕事出来るでしょ!?」


その手があったか!!!くっそー、暑すぎて頭回って無かった…もっと早く気づけばあの地獄は無かったのに…はあぁ…


「もー。ちゃんと水分取りました?それだけじゃなくて塩分も取らないとですよ!そうだ、アクエリ取ってくるから待ってて!」


「わー大丈夫大丈夫!そこはほら、わたし運動部だったからね、ちゃんとやってたよ!」


「それならいいんだけど…ちゃんとお風呂行って身体の汗流しといてくださいね、風邪ひきますよ!」


「はぁい」


ふふふ、明石さん優しいなー♪お礼考えなきゃ。なにがいいんだろーね。間宮さんのお食事券とかがいいかな?まぁ後でいいや

とりあえずお願いはしといたから、大浴場に向かいます。ふだんは遠征の子とか出撃終わりの子が入ってて結構賑やかなんだけど、今日はおやすみだからたぶん人がいないです。まだ3時だしね!お風呂は自由だから誰かいるかもだけど、その時はお話し相手が増えるだけ♪










ロイテルちゃんと合流して、お風呂に入ります。今は他に誰もいないみたい。ちょっと残念。

頭と顔と身体洗って湯船に!

ふああ〜気持ちいいー♪


「ねね、提督。一緒にお風呂入るの久しぶりだね?」


んー。かもしれないなー。わたしは執務終わったあと遊びまくってそのグループで入るか部屋のお風呂に入るかで、あんまりロイテルちゃんとお風呂行かないんだよね。ふふ、秘書艦してくれてるのにね。ロイテルちゃんってふだん誰と入ってるの?


「私?私はねー。ABDAで入るのが多いかも。なんか待ち合わせとかして」


「んー、やっぱりそこは仲良いね」


それにしても…

ヨーロッパの、ちょっと北の方の人。は、あんまり化粧しないみたいなの聞いた事あるんだけど、ロイテルちゃんもそんな感じなのかな。すっぴんがふだんと変わらない。ちょっと触ってみよ。


「ひゃ!…もー、ひっくりしひゃ」


むにむに。むむむ。

すべすべで柔らかいお肌です。かわいい。それは違うか。えいえい。もちもちつるつる、気持ちいいなーこれ。ずっと触ってたいかも。ふふふ。


「へぇーひょく…いつまれやってんのー」


おっと。触り心地良すぎてついつい触りすぎちゃいました。ごめんねロイテルちゃん。

じー。

…でも、もうちょっとだけ。


「ひゃあん!?」


お腹もすべすべ…もー全部好き。柔らかいけど、ちゃんと筋肉あるんだよねロイテルちゃん。腹筋がちょうどいい感じ。


「ん…ふっ…ぁん」


かわいい声してる♪

えへへ、ちょっとイタズラしちゃおっかなー♪そーれこちょこちょー♪


「ひゃあ!?提督、ちょっ、やめ、あはははは!」







「んぅ…はー…ふー…んっ」


あら。楽しすぎてやりすぎちゃったかもしれない…なんかピクピクしてる。かわいい…じゃなくて。ロイテルちゃん、大丈夫?


「ん…ふふ…」


「えっ」


な、なんかがしって掴まれちゃいました。


「ふふふ…いーっぱいくすぐってくれたじゃん。もちろん私もやっていいんだよね?提督、Ben je er klaar voor?」


あー…これ、やっばーい…










ついついのぼせちゃうぐらいまでお風呂しちゃいました。ロイテルちゃんのすべすべお肌も堪能出来たし、いやーな汗も流せたから大満足です♪笑いすぎて腹筋痛いけど…うぅぅ。

そしてそして、お風呂上がりにはやっぱり牛乳だよね!すっごいおいしい。ふふふ。


「あーやばーい!約束の時間だ!」


「どしたの?」


「ABDAでホーショーさんのところ予約してたの!行ってくるね!」


「そっかそっか。行ってらっしゃーい。また明日ね!」


「うん!お疲れ様!じゃね!」


行っちゃった…

なんか…ちょっとだけ、モヤモヤします。うーん、なんでだろ。

まぁいっか、わかんないし。












幕間のお話:キャナルパレード


「提督!みてみて!これ、すっごいから!」


ロイテルちゃんが動画を見せてくれました。動画っていうかLIVE配信かな?これはなんだろう。華やかでキレイなボートと楽しそうな音楽。どこかのお祭りみたいです。


「これ、キャナルパレードって言うんだよ!」


ふむふむ。やっぱりオランダのお祭りっぽいですね。プライド・アムステルダムっていうやつのプログラムだそうです。LGBTプライド・パレードとも言うらしいですね。その名の通り元々は同性愛者の方々の権利をアピールする感じだったらしくて、それがだんだん発展してきたって感じなのかな?

ふーん、楽しそうじゃんこれ。

そういえばオランダって世界一同性愛に寛容だ…というか優しい国みたいなのを聞いた事あります。初めて同性婚が許容された、とか。

同性婚かぁ…例えば、例えばだけど、私とロイテルちゃんが結婚できる…ってことなのかな。

いや、いやいやいや。例えば。例えばだから…私の恋愛対象はたぶん男性だもん…学生のときは彼氏いたし、ロイテルちゃんは友達だから。うん。

でも、ロイテルちゃんと結婚したら…楽しそうかも。かわいいし。いや、ないんだけどね。余計なこと考えるのはやめましょうか、残りのお仕事やっちゃおう!











#4 嫉妬とシット


「おつかれさまー!」


今日はお仕事が早く終わりました。涼しくなってきてから効率が上がった気がします。書類もスラスラ見終わって、完璧ですね。んーと、遠征に行ってもらってた子達も帰ってきましたし…この後は特に何も無いから、今日は完全終了です。やったー!


「じゃあ提督、私行ってくるね!ばいばい!」


はいはい、いってらっしゃーい。

ロイテルちゃんはABDAでお茶会するみたいです。私も参加しようかな…とか思ったんだけど、なんとなくやめときました。いっつもお邪魔してたらさすがにね。ホントに近しい人達だけで話したいこともあるだろうし。

でも、パースとかと一緒にいるロイテルちゃんはすっごいリラックスしてて、柔らかい表情で…羨ましいな…なんて思ったり…

なに考えてるんだろわたし…

執務室にはわたしひとり。


さっきまでおしゃべりしてたはずなのに、そこに誰もいないだけでずっと1人だったように感じてしまう。彼女が座っていた椅子に触れ、まだ微かに残る温もりで先程までの穏やかな時間を再確認する。あれは、幻想ではなかった。確かに、ここにいた。


なんでだろう、なんでこんなに寂しく感じるんだろう。なんだろう、この感覚は、なんなんだろう。





窓に当たる風の音にびっくり。ちょっとぼーっとしてたみたい。そうだ、せっかく早く仕事が終わったんだ。どうせなら遊びに行こう!

とりあえず中庭に行ってみようかな!あ、グラーフいる!









中庭から鎮守府の中まで、いろんなとこをうろうろしてたら艦娘達とたくさんお話出来ました。何個か約束も増えちゃったし、みんなとのんびり話す機会も最近は無かった気するから良かったかも♪

わ、鈴谷がいる。なんか黄昏てるなー。ふふふ、話しかけてみよ♪おーい!


「んー?お、ちーっすてーとく!」


「なにやってんのー?熊野とかは?」


「ヒマすぎてぼーっとしてた。熊野はまたレディ会してるってさ」


「あーそれさっき誘われたかも」


「まじ?行かないの?」


「ん、行く気になったら行くって言っといた」


「あはは、提督らしいね」


「へへー♪ね、ヒマしてるなら一緒にバスケとかしない???」


「おーいーじゃん。久しぶりにやっちゃいますかー!」







「ねーえーすずやー」


「はーい」


「キミさー、またおっぱいおっきくなったでしょ?」


「うっわーセクハラ。憲兵さんに通報しちゃおっかなー」


「いーじゃんいつもの事なんだから」


「よくないし。触る?」


「触る」


えい。むにゅう。えいえい。むにゅむにゅ。悔しいけど、鈴谷のが1番触り心地いいかもなんですよ。柔らかくて、でも押し返される…んー、ハリがあるって言うの?やばいです。最近だとアトランタのも結構良かったけど、やっぱり鈴谷かなー

つーかこれ男性がやってたらまじでセクハラで訴えられちゃうよね、危ないあぶない。ふふふ。


「いやいや、女でもセクハラはセクハラよ?」


「な、なんでわかったし…」


「そりゃーもう何年も一緒にいるんだから、顔みたらなに考えてるかぐらいわかるさ」


「むー…」


「こーゆーことしてるからガンビーに避けられてるんだって」


「ベイちゃんのは事故だもん!」


「はいはい。で、詳しくはなに考えてたの?」


「誰のおっぱいが1番触り心地いいかなって…そんな目で見ないでよ!」


「まじで通報しようかなとか思った」


「アトランタと僅差で鈴谷が1番だからあんし…待って!そのスマホ1回おろそっか!」


「はー…提督、今日はちょっと度が過ぎてる」


「うぅ…ごめん」


「なんかあったなら聞くよ?」


「んーん、大丈夫!ありがと!」


「ならいいけどさ…てか、この際だから聞いちゃおっか。提督っておっぱい触る時どんな気持ちなの?」


「えっちな気持ち…は、もちろんあるんだけど。なんか揉んでて気持ちいいからみたいなとこあるかも。えっちなのは抜いてもね」


「あは、自分には無いもんねー?」


「うっ…うるさいもん!鈴谷だってうち来た時はそこそこあるかなーぐらいだったじゃん!なにこんな食べたらこんなおっきくなるのさー!」


「やぁん、揉みすぎー♪食べたエネルギー全部こういうことに使っちゃってるから栄養行かないんじゃないのー?にひひ♪」


「だ、だったら鈴谷だって…その、栄養が…身長とおっぱいに行ってんじゃないの!」


「へー、そーゆーこと言っちゃうんだね。じゃあ…えいっ」


「むぐッ!?」


「大好きなおっぱいに埋もれちゃいなー!体育館着くまで離さないかんね♪」


「んー!んー!」


「つーか栄養が身体に行くのってめちゃくちゃ普通じゃね?提督ってホント悪口下手だよね」


確かに…じゃなくて!はなせー!










「終わった?」


「もうちょっと!」


Hi there!オランダ軽巡、デ・ロイテルだよ!今はお仕事のラストスパート中。ホントはねー、のんびりやっててもいいんだけど、この後ヒューストンとパースとお茶する約束してるの。


「ところで提督、ホントに来ないの?」


「んー!今日はいいかな、楽しんでおいで!あとちょっと、がんばろー♪」


来ないのにすっごい急いでくれてるの、まじ優しい…

そう、お茶誘ってもたまーに来てくれないことがあるんだよね…うー…ちょっと寂しい…かも。

提督は書類に向かってシンケンな表情。ふだんはどっちかっていうとカワイイ顔してるのに今はちょっとかっこいい。かっこいい…


「ロイテルちゃーん?おーい」


はっ!?

やっばい、ぼーっとしてたみたい。


「どうしたの?わたしのことじーっと見て。あ、もしかしてわたしに見とれちゃったー?んふふ、いいよぉ見てても♪」


ズボシなんだよね…

向こうはジョーダンで言ってるんだろうけど。


「見とれてるのはいいんだけどー、ちょっとその書類取ってくれる?」


やば、お仕事お仕事!はいどうぞ!







「おつかれさまー!」


お仕事終わった!時間は…おやつの時間がちょっと過ぎたぐらい。こんなに早く終わるなんて…

私がこの鎮守府に来た時は1日とかそれ以上かかっちゃったのになー、お互い慣れてきたんだよね。そう、まさか着任してスグ秘書艦やることになるとか思わないじゃない?まじで、ホントにまじでびっくりしたし、たいへんだったんだよ。ナガトとかやばかった…こわかった…

Waarom?…って思うでしょ。わかるわかる。私も思ったから聞いてみたんだよね、そしたらね…


『ロイテルちゃんを秘書艦にした理由?そりゃー気が合いそうだったからね!実際そうでしょ?』


やっばいぐらいテキトーな理由で選ばれちゃったっぽいのね。で、ホントにそれ以外に無かったみたいでさ、まぁ仲良くなれたからよかったよ。仲良く、ね…


「んーと、とりあえずファイルに全部しまったし、大淀さんに渡す準備もおっけー…あ、ロイテルちゃんは適当に終わってねー」


うーん、提督は結局来てくれないみたいだなー

Heel spijt...まぁしょうがないかぁ。

じゃあ行ってくるね!バイバイ!


「はーい、いってらっしゃーい」


今日の待ち合わせ場所は鎮守府2階のラウンジ。マミヤさんのところからちょっと離れてるんだけど、そこで注文して食べることも出来るんだ。中庭見渡せる感じの場所にあって窓も開くから景色も風通しもよくって、お茶するのには結構いいの。普段はわりとみんないる気もするけど、おやつの時間は過ぎてるからどうなんだろう。混んでるかな。


「Hey De Ruyter!こっちよ!」


あ、HoustonとPerth…Atlanta?珍しいかも。ラウンジは空いてるね。


「Hello!みんな早いねー」


「そっちこそ。You finished working earlier than usual,right?」


「そー。提督が急いでくれてさ。それにしても、Atlantaがいるの珍しいねーいっつも誘っても来てくれないのに」


「………の」


「なぁに?聞こえないよー」


「…Nightmareから隠れてるの」


「Nightmare...Hmmm......あー、ユウダチ?あはははは、Atlanta、まだ苦手なの?」


「う、うっさいし…」


「ん、お話はあとにしよっか。私注文してくるよ!みんななにがいい?」










「そー、でさ、提督がさー」


グーテンモルゲーン!


「…あれ。あれ、提督さんじゃない?」


え?Atlantaが指さしてるのは中庭の方。提督、なにやってんのかな。見てみると、提督がグラーフさんに話しかけてる感じ。ここって結構中庭の声が聞こえてくるんだよね。


「それは「おはよう」だ、Admiral」


「あはは、そっかそっか♪こんにちはってHalloなんだっけ」


「あぁ。こんにちは」


「ねーねーグラーフ、今暇?」


「む…これから訓練を行うところだが」


「そっか、なるほどねー。じゃあさ、今度またドイツ語教えてよ。ね?」


「っ…良いだろう。今度、な」


「やった、ダンケダンケ♪またねー!」




「…提督って基本的にキョリが近いのよね。PerthとAtlantaはいつもタジタジしてるもの」


「な、そんなこと…」


「…ない…し」


そうそう、ホントに人とのキョリが近くって。パーソナルスペースってあるじゃん?提督にはそんなの通用しないの。ホントに。それなのに嫌な気持ちにさせたりって聞いたことないから、やっぱりそこら辺の調節は上手いんだろうなー

…さっきも、グラーフさんとすっごい近くて。もうキスしちゃうんじゃないかってぐらい顔近づけて。

…なんか、ヤダな。なんか、なんだろこれ。モヤモヤする。






その後も、提督はたまに中庭に来て色んな人とたくさんお話ししてた。そう、たくさん…







提督って、あんなだけど意外といろいろできちゃう人なんだ。例えば私はオランダ語が母語で、英語はABDAの関係で喋れるでしょ?あとはホラ、日本語もまあまあ話せるじゃん。って感じで一応3ヶ国語話せるんだけど、この鎮守府にいるみんな日本語喋れるから日本語出来れば最低限のコミュニケーションは取れるの。

なのに提督は勉強熱心っていうかBenieuwd…好奇心旺盛っていうのかな、日英独仏西の5ヶ国語話せるの。単純にやばくない?

さっきのグラーフさんみたいに教えてー!って行って、教えてもらってる感じ。てかたぶんさっきのはわざと間違えてるもん、だってグラーフさんとかオイゲンちゃんとか私が来るより先に鎮守府に居たもん。間違えるわけ無いじゃん。あーやって距離詰めていくの、ホント手練の技ってやつだよね。しかもかわいいのにモテないわけないじゃん。彼氏いないとか絶対ウソじゃん。

うー…




「もぐ…あれ、また提督さん…がヘッドロックされてる」


なにそれ!?

んー…と、提督がスズヤに捕まってる。おっぱいに押し付けられてる。どーやって歩いてるんだろ、あれ。後ろ歩き?やっばーい。


「アンタはあっち行かなくていいの?」


「ん…うん、今日はいいかな」


ホントはちょっと行きたいけど。


「あら、そうなんだ。行くかと思った」


「え?」


「I thought so too.De Ruyterは提督のこと大好きだから、鈴谷にシットでもしちゃうかしらって思ってたのに。ふふふ」


「えええ!?ど、どうしてそう思うの!?」


「Because...ここ最近あなたと話すと、ほとんど提督の話題なんですもの」


まじか!え、うっそ…


「そ、それはぁ…あの、やっぱり私秘書艦だから、提督の話題が一番増えるから…」


「ぷ…くくく…」


「あーちょっとAtlanta!なに笑ってんのさ!」


「ふふ…だってねぇ…」


「日本語では丸わかり、って言うらしいわね。Written all over your face.」


「あーもーPerthまでー!」


「図星ってところかしら、De Ruyterったら本当にわかりやすいわね。顔真っ赤よ…ふふふ♪」


うぅ…はっずい…

でも。

私、やっぱり提督のこと好きなんだ。友達として、ううん、それ以上に。そっか…好きなんだ…













「ぷはぁっ…!はぁ…はぁ…」


「どーお提督?柔らかかった?」


「死んじゃうかと思ったよ!もー!」


やっと!やあっと解放されました!自由に息ができます!空気っておいしいなぁ…

まじでおっぱいで死ぬかと思ったんだから!


「あっはは、おっぱいで死ぬってなによ」


「息できなかったの!幸せだったけど♪…とにかく、わたしはちょっと疲れたからボール持ってきてよね!」


「はいはーい」




なんか一緒にバスケしてくれる子がいっぱい来てくれました。んーと、鈴谷のおっぱいに挟まれてたのが結構見られてたっぽくて着いてきてたんだって。嬉しいけど…フクザツ。え、なんでって、だってこっからめちゃくちゃ広がっちゃうかもしれないでしょ?そしたらこれから「鈴谷のおっぱいに顔うずめてたヘンタイ」みたいな扱いに…事実なんですよね…うぅぅ…

いいです!訂正のしようがないのなら、もうそのままで行きます!


「提督、安心しな!お前がヘンタイなのは艦隊中のやつらが知ってるからよ!」


うっさい摩耶!






「アーイーオーワー!ずーるーいー!」


「アハハハハ!Admiralがsmallなのがイケナイのよ!So cute!」


「むー!」


「ねね、川内、あれ見てあれ」


「なーにー瑞鶴?お、提督がぴょんぴょんしてる」


「んね。別に提督もそんなちっちゃい訳じゃないのにアイオワさんマジ背高すぎ。スタイル良すぎ。うらやましい」


「それな…なに食ったらあーなるんだろーね」


「アンタはまず夜寝ないとじゃん」


「ヤダ。瑞鶴こそ提督に揉んでもらったら胸大きくなるんじゃね」


「はあ!?」


「ホラ、鈴谷は大きくなったっしょ?」


「う…確かに。てゆーかそんなことよりそろそろ提督さん助けてあげた方がいいんじゃない?川内、行ける?」


「とーぜん。行ってくるね」





くっそー!アイオワ背高すぎ!手足長すぎ!全然届かないんだけど!!!

ってアレ…後ろから川内が。


「What!?」


「へっへー!提督ばっかり見てると取られちゃうよー!」


「ナイス川内!そのまま決めてきちゃってー!」


「Oh!NINJA!So クール!Hey,Wait!」


「忍者じゃないっつーの!」


テンション高い川内ってちょっとレアかも。あいつ華奢に見えて案外筋肉あるんだよねー

元々身体能力すごい方だったから…あ、ほら。ちょージャンプしてダンク決めちゃった。すごい。


「てーいとく!」


「わ、びっくりしたー!もー、どうしたの鈴谷」


「提督ってさぁ………ううん、なんでもない。バスケ楽しいね」


「ん、うん。そうだね」


ん??

それだけ?

ってそうだ!鈴谷に相談したいことがあったの!


「ねぇねぇ鈴谷、ちょっといい?実は…」


















幕間のお話:シンタクラース


「シンタクラース?」


「そー!わかる?」


「えー…んーと…あ!サンタクロース?!」


「んーおしいっ!」


むむ…

聞いてみると、シンタクラースはオランダの伝承…昔話の1つらしいです。

シンタクラースのお祭りは、11月の半ばぐらいから12月6日までの結構長い期間やるんだって。

スペインから来たシンタクラースさんとお供のズワルトピートをお迎えして帰るまでの間ってこと…かな。

シンタクラースは日本でも有名なあのサンタさんの原型で、白いお髭で赤い服のおじいちゃん。ズワルトピートは顔を黒塗りにした派手なピエロの格好してるひと。

で、いい子はお菓子もらえるんだけど、悪い子はスペインに連れていかれちゃうの!なんかちょっと日本のなまはげに似てない?似てないかなー

スペインから船に乗って到着したその人達は、馬に乗り換えて道路歩きながらお菓子を配るんだって。オランダとベルギーはこれをテレビで中継してるらしいよ。おもしろそう…

12月の5日の夜、オランダの子どもたちは靴にニンジンと角砂糖をいっぱい入れて寝るんだって。朝起きると入れてた物の代わりにプレゼントが入ってるの。クリスマスみたいじゃない?

そう、さっきも言ったけど実は私たちが知ってるサンタさんはシンタクラースから派生したんだよ!もっと正確にいうと…

聖ニコラス→シンタクラース→サンタクロースって感じ。聖ニコラスはみんな知ってるよね、教会にお金あげたおじさん。はしょりすぎ?それはちょっと自分で調べてください。

その聖ニコラスの日が12月6日。お祭りが終わる日だね。ん?ってことは…


「オランダってクリスマス無いの?」


「そう思うじゃん?わかるわかる…実はね」


え、それホント?いーなーうらやましい。オランダはシンタクラースの日とクリスマスで2回パーティするんだって!いいなぁー

なんかさ、誕生日とそういうのが重なった時って一緒にされちゃったりしない?例えば…わたし誕生日3月4日なんですけど、絶対ひな祭りと一緒にされちゃうんですよ。ね、だからクリスマスもそんな感じなのかなって。起源一緒だし。へー…オランダ、いいな。


「ねね、提督!今日は12月5日だよ!ね!お仕事さっさと終わらせてさ、2人で!一緒にご飯食べよ?」


「おっけー♪」















#5 思い出とアルバムと疑惑


うー。

今日はお休みの日。朝からずーっとベッドでダラダラしてます。いっつもいっぱい動き回ってるわたしだけど、たまにはこういうお休みもいいと思うんだ。最近ね、お仕事以外にいろいろやってるんです。ちょっと死にかけかも。まぁなんとかします。えへへ…


「提督?入るよー?」


「えっ…あ。ロイテルちゃん。もー、ノックぐらいしてよ」


「したよー。したけど反応無かったから」


「うっそ」


「ホント。でね、間宮さんが「提督がご飯食べにこない」って心配してたよ。だからほら、これ。作ってくれた」


あー、そういえばご飯食べてないやわたし。

なんかたまにあるよね、お腹空いてない感じ。でもいざ目の前にあると急に食べたくなるやつ。間宮さんのご飯美味しそう…じゅるり。


「お休みだからってご飯は食べないとダメだよ?」


「ごめーん、ありがと」


「…それでね?あの…もうちょっと一緒にいても…良い?」


「ん?んー…いいよー」


やった!ってロイテルちゃんはガッツポーズしてる。そんなおもしろい部屋じゃないと思うんだけどな。おじいちゃんも使ってた提督室?っていうのかな、提督用のお部屋は広すぎて落ち着かないからわたしが秘書してる時から使ってるお部屋なの。もう5年目ですね、すっかりわたしのお家。1LDKでお風呂トイレ別。艦娘のみんなと同じ間取りです。そー、ウチはだいたい個室なのね。あ、さすがに一部の駆逐の子とか海防艦ちゃん達は一人部屋じゃないし間取りも違うよ。あの子たちに一人暮らししろとかなかなか酷だもんね。

だからロイテルちゃんのお部屋ともそんなに変わんないはずなんだけど…めちゃくちゃ見てます。まあ見られてマズイものは無いしいっか。


「提督のお部屋来るの久しぶりだから色々見ちゃった♪でね、でね!これ!albumだよね!見たい!見ていい!?」


「もぐもぐ…ん、いいよ」


「ありがと!じゃあ早速…アレ?」


「どうしたの?」


「なんか違う人の写真混ざってない?ホラ、これ」


えー?そんなはずないと思うんだけど。

ロイテルちゃんから受け取ったアルバムにはちっちゃい頃のわたしの写真がありました。めっちゃ懐かしいねこれ。ふふ、かわいい。

でもでも、特に間違ってる写真はありません。

ホラ、これわたしだよ?


「えっ…え?これ?この子が提督?ウソでしょ?」


「ホントだよ?」


「えっ…うっそ…やっば…提督、めっちゃ変わったんだね」


「そ、そう?」


「だって!ホラ、ロングだし!色も黒だし!色白だし、お嬢様みたいな服着てるし、お淑やかそうな雰囲気だし」


「そんな今は違うみたいな…」


「今とは全然違うでしょ!」


うぅ…そんなストレートに言われると傷付くなあ

つーかわたし元々お嬢様だからね!所謂いいお家ってやつだよ???小学校中学校はお嬢様学校に行ってたんだから。もー。そんなびっくりした顔でこっち見ないでよロイテルちゃん。

髪は…切ったのはバスケ始めてジャマだったからで、黒いのは黒染めしてたから。あれ言ってなかったっけ、わたし地毛茶髪だよ?あのー、隔世遺伝ってやつかな、ちょっと待ってね…うーん、あ、これ!これわたしの母方のおばあちゃんの写真。茶髪でしょ?ね、こっからきたっぽい。

でもほら、お嬢様だから。黒髪ロングで清楚じゃなきゃいけないって家族に言われたの。

あは、ウソ。そこまでは言われてないけど親が黒染めしろって言ってたみたい?


「言ってたみたいってどーゆーこと?」


「2人とも忙しくてさー、あんまり会ってないんだよね。さっきのはお手伝いさんに聞いたの」


「お手伝いさんってことは…日本だし、ホントにお嬢様だったってこと?えーなんか信じられない。まぁいっか、どんどん見てこー。これは、林間学校。あれ5年生?急に飛んだね」


「…そうかな」


「次は6年生の修学旅行…卒業式?もう小学生終わっちゃった」


「まあまあ、そんなこともあるよ」


「ふーん…中学校の入学式。まだ雰囲気変わんないね…ふむふむ…アレ?もう終わっちゃったよ?」


「そ、そう?…残ってなかったのかな」


「こーいうのってさ、お父さんとかお母さんとかいるんじゃないの?入学式とかさ。提督しか写ってなくない?」


「うん…あー、さっきも言ったじゃん、ほら、ウチの家族忙しかったから」


「ふーん、そっか。そういうこともあるよね。わかるわかる。次は軍の学校の入学式…わ!急に今の提督みたいになってる!ほらほら!急にピースしてる!」


…あ、そうそう、この時期から一人暮らし始めたの!

地毛なら茶髪でも怒られなかったから色全部落として、どーせなら楽しもうかなって。あとこの日おじいちゃんが来賓挨拶に来てて、その後一緒にいてくれたからちょっとテンション高かったかも。これ撮ってくれたのおじいちゃんなんだよ!


「ほーほー。すっごい一気に写真増えてるね。これは、あ、バスケ部って書いてある。こっちは学園祭かぁ。こっちは………っ!」


「そー、そこら辺でスマホ買ってもらったから写真増えたのかも」


「…提督。この男の子だれ?」


「んー?あー!懐かしい!この子わたしの元カレくんだよ!へー、写真残ってたんだーふふふ♪」


「…は?」


「なんかね、体育祭終わったあとぐらいに告られてね、断る理由も無いしとりあえずおっけーしたの!」


「なにそれっ…デートとかしたの…?」


「んーん、その後わたしが友達と遊んだりとか部活とか、あとここのお手伝いとか忙しくて学校以外で会わなくなったから別れてもらった。なんか悪いし」


そうなんだよね、あの子にはちょっとだけ悪いことしたなーって思ってます。ちょっとだけ。うん、しょーじき名前も覚えてなかったりする。顔はギリ覚えてた。で、もし同じことしちゃったらアレだしそれ以降誰とも付き合ってないのね。お断りしてた。そっかそっか、ロイテルちゃんには話してなかったんだっけ。鈴谷とか川内は知ってるんだけど。え?隠してたわけじゃないよー、話すタイミングがなかっただけ!こんなの隠しててもメリット無いし。

そりゃー鈴谷とかは秘書のお手伝い期間も含めて…ずーっと一緒にいるんだもん、ロイテルちゃんとはさすがに知り合ってることも違うって!

え?違う違う、別にそれで変な贔屓とかしないから!


「…じゃあ私のことはどう思ってるの?」


「もちろん、ロイテルちゃんも大好きだよー♪」


ねえねえそんなことより見て見て!これ2年の学園祭でお化けやったときの写真!めっちゃ本気でお化けメイクしたの!いいでしょ、怖いでしょ!ふふふ♪

こっちはバスケで関東大会ベスト8まで行った時の!やー、すっごい頑張ったんだよわたし!

あ、これ!修学旅行で奈良と京都行ったやつ!でっかい大仏の写真とかも…ほらあった!いつか一緒に行きたいねー♪

これはぁ…


「待って。まってまって」


「ん?なぁに?」


「さっきからの写真さ…提督が他の人に近すぎる気がするんだけど」


「ん?んー。そうかな?」


「そうだよ!普通こんな近づかないって!」


「うーん、この時はね、ロイテルちゃんとか鈴谷にやる程にはくっついて無かったよ。ゆーて榛名ぐらいな感じ」


「提督ハルナにも抱きつくじゃん!…まさか男の子にもそんなことしてないよね?」


「し、してないしてない!たぶん。たぶん…」


「まさか…提督…Teef…」


ろ、ロイテルちゃん…?冷たい目で見られるならともかく目を合わせてくれないのはさびしいなーって。あの、ほら、ね?わたし、ほら、アレだから。まだしょじょ…あのー、Maagdelijkheid!ビッチじゃないの!ね?!小声で言ってても聞こえちゃってるから!あの、とりあえずこっち向いて?!


「…提督。何人と付き合ったの?」


「へ!?1人!1人だよ?!信じてロイテルちゃん!」


「じゃあ何人に告白されたの?」


え、え、なにこれ!どう答えるのが正解なの?!

ロイテルちゃんめっちゃ怖いんだけど!なんかニコニコしてるのにつめたーい空気が流れてるんですけど!?何人、なんていちいち数えてないし…えー…1人とか言う?

ま、まって、ここでウソついたら火に油を注ぐ感じになっちゃうよね?雰囲気冷たいけど!なんかもっとヤバい気がするの!こ、ここは正直に言おう!


「え…えーっと…えー…覚えてない…かな…」


「覚えてないほどされたってこと…?」


「はいぃ…たぶん…」


「…はぁ。そりゃそうだよ、だってクラスメイトに抱きついたりなんてしないもん。だって提督カワイイモン…こんな子にそんな事されたら勘違いするよ………はっ!?」


ロイテルちゃんがブツブツ言いながらずーっとこっち見てる…わたしの回答間違ってたのかなぁ…やっぱり少なめに言っといた方が良かった?でも絶対バレちゃうよね、なんかあのロイテルちゃんの目に見つめられたらわたしの中身全部引きずり出されちゃいそうだったもん…


「提督!!!」


「ふぇ!?」


「提督さ!?まさかアレ触ったりしてないよね!?ウチらのおっぱい触るみたいな感じで!」


アレ?アレってなに?

キョトンとしてると、ロイテルちゃんが手を動かしてお股の前に持っていきました。へ、そこ?そこの…男性の…アレ…ちんちっ…!?

さ、さささ触ってないよ!?ソレはもうおっぱい触る感覚とは絶対違うからね!?まってロイテルちゃんわたしのことなんだと思ってんの!?


「…ヘンタイ」


そ、それは否定出来ないけど!違うから!

わたし、まだキスもしたことないからっ!!!



















#6 ワールドワイドなクリスマス


今日は!待ちに待ったクリスマス!まじすっごい楽しみだったんだー!1ヶ月前から準備してたからね、いーっぱい楽しむよ!


「ちーっす。てーとくおつかれー」


「おつかれー。みんなもありがとね、準備手伝ってくれて。おかげでカンペキだよー♪」


ウチいま240人ぐらい人いるし、さすがにわたしだけで企画とか準備するのキツかったから、鈴谷とかリシュリューさんみたいにこういうの得意そうな人に手伝ってもらったんです。去年はみんなでパーティとかしなかったから、はじめての試みってやつですね。せっかくいろんな国から来てくれてるってことで、その国っぽいやつデザインしてもらいました。わたしも日本エリアで料理とか手伝ったんですよー!ふふふー!

日本以外にドイツ、イタリア、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア!スウェーデンとオランダとオーストラリアは1人ずつしかいなくて大変だったから、この3つでまとまっちゃいました…んー、ちょっと残念。来年はそこの子もっと増えるといいなー

くんくん…いい匂いしてきましたね。

よーし、じゃあ回っていこー!

実はみんながなにやってたのかあんまり見てないんです。楽しみ♪

あとはね、サプライズも用意したんだよ。しかも2つ!みんな喜んでくれるといいな…ふふ、さてさてそろそろ準備完了です。しゅっぱーつ!





へへー、結構回ってきました。ついでにいっぱい食べてきたからお腹いっぱいかも。まじすっごいご馳走ばっかりでさー、ついつい食べすぎちゃったんだよね。明日からちゃんと走らなきゃ。

次は…うーん…オランダ・スウェーデン・オーストラリアの合同エリアに行こっかな!そろそろロイテルちゃん成分補給しないと限界です。ふふふ。

合同エリアは1人ずつしかいないから負担すごいだろうし、1ヶ国1つ美味しい物をお願いしときました。あとは水上機母艦の会のメンバーが手伝ってくれてるそうです。さすが日向…

スウェーデンってたしかいーっぱいパンがあるんだよね。パンかぁ…お腹に溜まっちゃうなー

オランダは前にシンタクラースやったときロイテルちゃんに色々作ってもらったからなんとなくわかるけど。今日はなんだろう?オーストラリア…オーストラリアはマジで全然わかんない…んー…中学生のとき地理で牛肉が有名!とか習ったような。

うーん、考えても仕方ないですね!早く行きましょう!






「やぁ提督。キミも食べに来たのかい?」


「やっほー日向。わたしは食べに来たんじゃなくて様子を見に来たんだよ」


「ふむ、なるほどな。もしも食べに来たのであればこの瑞雲もオマケにつけようかと思ったんだが」


「あーごめん、ぜんっぜんいらないわ」


「…あとで工廠裏に来てもらおうか」


「はいはーい、あとでね。ところで日向はなにしてるの?」


「見て分からないか。ここの手伝いをしているんだ」


「ふーん…みんなに瑞雲押し付けちゃダメだからね」


「む…」


「ホラ図星だった!ちょっと!伊勢とかいない?」


「なにー?誰か呼んだ?あ、提督。って日向!?なんで瑞雲持ってんの!?さっき没収したのに!」


「こ、これは提督にあげようと…」


「こんなのパーティー中にもらったら迷惑でしょ!ったく、どこに隠してたのよもー!」


「…じゃあ伊勢、ちょっとよろしくね」


「はーい!ホラ、それ貸して!」






「あー!提督やっと来てくれた!」


「ロイテルちゃーん!会いたかったよー!」


ぎゅー!

会えなかった分ロイテルちゃんを堪能させていただきます。すっごいいい匂いするよロイテルちゃん。好き。

この服前来てた服じゃん!オシャレ!好き!

あぁんもー全部好き!


「ふふ、2人とも仲良いのね」


「あ、ゴト!」


「God kväll♪実はね、提督が色んなもの食べてそろそろ口直ししたいところかなって思って…これ!用意したの」


「なにそれ?なんかかわいいね」


「Ischokladっていってね、うーん…簡単に言うとチョコアイス」


「マジで!?ちょっとそれはハグとかしてる場合じゃないんだけど!」


「ぁ…」


「ゴト!それ欲しい!ください!」


「そんなに急がなくてもアイスは逃げないよ、もー♪はい、どうぞ」


「ありがと!」


わああ…冷たい…

ちっちゃくてかわいい…なんて言うの、百均で売ってるおかずカップみたいなのにチョコのアイスが入ってます…アイスっていうかホントに冷たいチョコレートみたいな感じかな。

甘くておいしいです…幸せ…なにが入ってるんだろう?


「チョコとココナッツオイルだよ」


え、それだけ?

ふむふむ…わたしでも作れるかも。

ゴトによると、元々ドイツのお菓子だったんだって。それがいつの間にかスウェーデンとかデンマークに移ったそうです。クリスマスのお菓子ってことで季節的にもわたし的にもバッチリです♪


「いやー、やっぱりゴトは気が利くねー♪もーホント大好き!」


「…むむむ」


「ふふ、ありがと♪まだまだたくさん作ってあるから遠慮しないで食べてね」


「やったぁ!」


「あら、提督。来ていたのね」


「お、パース。こんばんはー」


「Good Evening」


「アレ、3人居ちゃってるけど前は?」


「Seaplane carrier group...あー、水上機母艦の会?がやってくれているわ」


「なるほどなるほど。だからさっき伊勢日向が居たのね。いい感じじゃん?」


「…そうね」


「てゆーかちょっと気になったんだけど、水上機母艦の会になんで日向とかいたの?」


「んーと…水上機母艦の会って最初はミズホが考案してミズホとかニッシンがいたらしいんだけど、水上機扱うの得意な人がどんどん入っていって…」


「あー、ゴトも誘われてたもんね」


「そうそう。そのあと瑞雲会?っていうグループと半分合体したの」


「…あれか」


「そう、アレ」


「うーん…まぁちゃんとやれてるならいっか…そうだ、ゴトがアイス作ってくれたの!パースも一緒に食べよ!」


「ええ、頂くわ」


んーもーマジでおいしい…♪

パーティーっていっぱい人が集まって熱気がこもっちゃうからあっついんですよねー

だからこの冷たさがサイコーなんです!


「むー…提督!こっちも見てよ!」


「わああ!?も、もー、どうしたのロイテルちゃん…びっくりしたぁ…」


「私だって提督のために用意したんだから!」


「ん、まぁわたしのためには作る必要はないんだけど…」


「いいから!ほらこれ!いいでしょ?」


用意してもらったのはストロープワッフル。定番ですね。むかしロイテルちゃんもオランダで1番有名なお菓子って言ってた。

はむ。うん、安定の味です!


「ね?ね?いいでしょ?ね?」


「うん、おいしいよ!」


「でしょー!?ていと…このエリアではみんなにお菓子食べてリフレッシュしてもらおうとおもったんだー!」


「…っ!?」


「そうなんだー…ってアレ、パースどうしたの?」


「Säkert.全然喋らないね?」


「い、いえ、なんでもないわ」


「そーお?なら良いけど。そうだ、わたしオーストラリアのも食べてみたいな!」


「う…あ、あなた、これまでもたくさん食べてきたんでしょう?You'll eat too much.」


「食べ過ぎ?大丈夫大丈夫!気になるなー教えてよー♪」


「わ、わかったわよ…」


たしかにちょっとお腹キツいけど、たぶんお菓子なら食べられます!それに、夜はひと仕事ありますから。栄養取らないと…ふふふ。










「な、なにこれ…?」


わたしの目の前にあるのはえっぐいステーキ。え、何グラム…?キロ行くんじゃね…え…?

わたし、わたしが想像してたのってティムタムみたいなかわいい感じのつまめるお菓子なんだけど…


「だから言ったじゃない…」


ん…言ってたけどさ!だってこの流れで来たらお菓子かなって思うじゃん!胃に優しいエリアだと思ってた!


「Ah,なるほどね。提督、ウチらそこまで話し合いしてないの」


「えっ?」


「もちろんなにを出すーって言うのとか装飾なんかは話してたけど、特にテーマを決めたとかは無くて」


「そーそー、だから私とGotがお菓子になったのも偶然っていうか」


「つまり提督、あなたの早とちりよ」


「えー?さっきPerthも「そうすればよかった!」みたいな顔してたでしょー?」


「う…ま、まぁそうね…さっき回った時に肉が過多だなと思ったわ。それならAustraliaもお菓子にすれば良かったとも」


「ねぇ、それよりこれ食べるの手伝ってよ…カロリーで死んじゃう…」


「いいよー♪お皿取ってくるね、待ってて♪」








みんなに手伝ってもらって、なんとか食べきりました…ちょっとお口直しにガム噛みます。はむ。

うーん、ステーキ美味しかったんだけどね。なんか朝からずーっと運動してお腹空いた夜ご飯に食べたい感じ。

パースって体の線細いじゃん?あんな細い体からこのステーキ出してくるのホントに想定外だったの。ホントに。

…いや、アレを食べてるからあんなにおっぱいがおっきくなるのかもしれない。むむむ。


「…あなた。どこ見てるのかしら?」


「ふふ、ナイショ!そだ、わたしはそろそろ行くね!」


「Eh... al...?」


「あら、もういくの?」


「うん。実は準備してたのがあるんだー」


「変なものじゃないでしょうね」


「安心していいよ♪お仕事終わったらまた来るねー…あ、鹿島さん!アレ、手伝ってー!」


「あん♡もう、提督さん♪びっくりしちゃいますから♪うふふ♪」


「…っ!」


「De Ruyter.そんなに見つめてるなら提督について行けば良かったじゃない」


「もー、ホントそうだよ?こういうのは自分から動かなきゃ!」


「だってぇ…」


さあ!クリスマスといえば!ケーキです!

ケーキの無いクリスマスはクリスマスじゃありません!ということで、おっきいおっきいケーキを用意しました!

やっぱりショートケーキがクリスマスの定番だと思うんです。丸いヤツ。だからちゃんと丸く作りました!

鹿島さんと他何人かにも手伝ってもらいました。選んだ理由?なんかヒマそうだったから…

鹿島さんにはついでに用意も手伝ってもらいます。駆逐ちゃん達にも懐かれてるからちょうどいいよね。あとは伊良湖ちゃんと鳳翔さんにも応援頼んでおきました。完璧!


「提督さん、準備OKですよ!」


「こっちもです」


「こちらも大丈夫です、提督」


「ありがとみんなー!わたしも準備出来たし、そろそろお披露目だね!」


「そういえば提督さんはパーティーの監督役をされてるんですよね?」


「うん。そだよ伊良湖ちゃん」


「それ、終わったんですか?」


「んーん、まだ」


「そうなんですね…それでしたら、私達が切り分けてみなさんに配るので提督さんはそちらに向かうのはどうでしょう?」


「えっ?」


「それいいかも!提督さんも早くお仕事終わればもっと楽しめますもんね!ふふふ♪」


「うーん…嬉しいけど3人だけにやってもらうのはなぁ…たぶん大変だし」


「大丈夫ですよ提督。私達、こういうことには慣れてますから。せっかくのパーティーです、あなたにも楽しんでもらいたいわ」


「そっか…それならみんなに甘えさせてもらうね。ありがと。じゃあそろそろ行こっか!」










「みなさん!メリークリスマス!楽しんでくれてますかー?パーティーも中盤になりました。そこでもっと楽しんでもらうために…トクベツな物を用意したの!はーいカーテンオープン!」


「へへー!すごいでしょこのケーキ!クリスマスといえばケーキ!どう?どう?すごいと思ったら拍手くださーい!」


「そう、で、これをみんなに食べてもらいたいので…こっちで鳳翔さん達が切り分けて配ってくれます!お代わりもある程度おっけー!ちゃんと鳳翔さん達にお礼言って受け取ってね!」


「それでは!まだまだたのしみましょー!」









#7 酒癖悪いタイプ

わたしがさっきから言ってた「アレ」はケーキのことでした!まぁでも、駆逐ちゃん海防ちゃんにはもうひとつサプライズ用意したんだけどね♪

さて。切り分けやってもらうことになったので、わたしは最後の国に向かいます。ドイツ!ドイツは1番最初に来てくれた海外の子達で、すごい良くしてもらってます。

いい子たちばっかりなんですよー

人数もそこそこいますし大丈夫かな?

「い…いらっしゃいませー…」


あ…アレ?わたしの目の前の光景は…夢なのでしょうか。

ビス子ちゃんがサンタさんの格好して接客してる…!顔真っ赤にしてぷるぷるしててかわいい…♡

こ、これはイタズラするしかないですよね…?むしろしないと失礼ですよね…?いきます、わたし、いきます!


「ビースー子ちゃん!」


「きゃあああ!?」


「こんばんわぁ…今日はかわいいね…ふふふ」


「揉むなバカッ!んっ…」


「えー?でも、顔真っ赤だよ…?」


「こ、これはっ!こんな格好で恥ずかしいからよっ!」


「そうなんだぁ…かわいいね、ふふふ…♡」


「やめっ…♡」


「おいコラやめろしこのヘンタイ!」


「いったぁ!?す、鈴谷!?なに?」


「なに?じゃないんだけど。ちょっと裏まで来てもらうから」


「うぅ…ごめんなさい」


「謝って許されるんだったら警察はいらないでしょ?大人しくこっち来てよね。あ、人手足りないからビス子はそのまま接客してて!」


「ビス子って言うな!…じゃなくてこのまま置いていくなぁー!」







裏に行くとオイゲンちゃん、グラーフさん、レーベとマックスがいました。つめたーい視線感じます。えへへ…


「Admiral.鈴谷に連れられているということは、そういうことなんだろうな。はぁ…まあ予想は出来ていた」


「だってよ提督。予想出来てたって。恥ずかしくないの?」


「まぁわたしこういうキャラだし…」


「キャラとかの問題じゃないし」


「あのね、提督?僕はキミのこと結構好きだけど、そういうところは直した方がいいと思うんだ」


「んぅ…めっちゃ正論…」


「で、提督…あなたがBismarckにセクハラするに至った経緯。教えてくれる?」


「経緯って程じゃないけど…ドイツのとこに来たらビス子がサンタさんの格好しててちょー恥ずかしがってて…イタズラしたいなぁって」


「完全に犯罪者の思こ…」


「わかりますっ!!!」


「ちょっとプリンツ!?」


「わかりますよAdmiralさん!私もあのお姉さま見たらガマン出来なかったもん!ヤバいよねアレ!!!」


「え、えぇ…?」


な、なんでこんなに食いついてるのプリンツ…

アレ、わたし普通にすっごい怒られる覚悟決めてたんだけど…

わぁめっちゃキラキラしてる。犬のしっぽとかついてたら千切れそうなぐらい振ってるんだろうなって感じ。なんか全身からハートマーク出てる。


「ね、ね!Admiralさん!私ももう1回イタズラしたいです!一緒に行きましょ!ね?!」


「は!?え!?」


「Warten Eugen!あーもうまたか!」


「はーなーしーてー!」


「Admiral!見ていないで手伝ってくれ!」


「う、うん!」







「んー!んー!」


全員で協力してなんとかプリンツを縛り付けました。グラーフさんと鈴谷の目が怖い…

なんだろ、なんかあったのかな?


「Admiral.協力、感謝する」


「うん、それはいいんだけど」


「実はな…」


事の発端はパーティーの途中だったそうです。

ビス子ちゃんは料理とか準備をしないから、口車に乗せてユーちゃんの相手をしてもらってたんだって。でもそれじゃなんとなーくおもしろくないねってことで、なにかさせてみようって話になったらしくて。

ちょうどそこに来たのが鈴谷。サンタさんの衣装、間違えて3つ買っちゃったって聞いてたんだけどここで使ったんだね。で、ビス子サンタが完成したの。

他のところ回ってたプリンツが帰ってきて…お酒入ってたから自制出来ずにわたしと同じ感じでセクハラしちゃった…犯罪者みたいなことしてる…人のこと言えないけど。てかわたし素だったしもっとヤバいかも。

それをなんとか抑えたあと、鈴谷が「プリンツでこうなるならあいつも絶対やる!」って残ってたみたい。

あは、予想的中したね…


「あれ、てことはビス子がセクハラされたのってさ」


「あぁ、Admiralで2回目だ」


「…ごめん、ちょっとマジで謝ってくるっ!」







すごい謝ってきました。

プリンツも落ち着いたみたいですし、そろそろ案内してもらおっかな。でもでも、ビス子ちゃんの格好が刺激的すぎるのもいけないと思うんだよね!ちょっとなんとかしてほしいです。まったく。


「なーに責任転嫁してんのかな提督?」


「わわぁ!?じょ、冗談だから!怒んないで!」


「まったく…鈴谷しばらくアンタの監視役するからね!」


「よろしくお願いしまーす…」


気を取り直していきましょう!

ドイツといったらやっぱりじゃがいも!お肉!あとは…保存食っぽいやつ多いですよね。それと日本と違ってお昼にたくさん食べるって。今日はいろんな国の食文化を学べた気がします。すっごい楽しかった。あ、レーベとマックスはほかのとこ回るの?いってらっしゃーい。


「さぁではAdmiral.まずは主食に相当するものだな」


「お肉とお魚の料理かー。なんかわたし、ドイツってお肉ばっかり食べるイメージだったかも」


「それな。鈴谷もそう思ってたわ、ソーセージとか」


「んね。あ、ソーセージいっぱいある。10種類ぐらい?あるのかな、ドイツのソーセージってすごい」


「ふっふっふっ…Admiralさん、甘いですよっ!Wurst…ソーセージは…なんと!1500種類あります!!!」


「1500!?」


「はい!今回はその中でも美味しいのを用意しました!紹介していきますね…まずこれ!Nürnberger Rostbratwurst!たぶんみんな知ってるやつです!」


「Nürnberger Rostbratwurst.これはドイツでも最も有名といっても過言ではないだろう」


「このパンとかザワークラフトと一緒に食べるんでしょ?鈴谷知ってる!」


「ほう…ならこれは…」







「…こんな感じですね!どうでしたか?」


「うんうん、おいしかったし楽しかったしすっごいよかった♪ダンケダンケ!」


ドイツも見終わりました!これでわたしの仕事もとりあえず終わりです!

みんな色々やりながらで大変だったのにこんなに頑張ってくれてホントに感謝しかないですね!

やー…ちょっと疲れたなー


「Admiralさん!おつかれみたいだし、ここで休憩しませんか?」


んぅ…そうさせてもらおっかな。

鈴谷もどっか行ったから騒がしい人はいないし、ちょっとのんびり出来そう…


「やったぁ!じゃあとりあえずアイス持ってきますね!予算余ってたからさっき買ってきたんです♪」


「ありがとー」


「Admiral.少しいいか?」


「んー?どしたのグラーフさん」


「私達がここに来てから。あなたとあなたの祖父のおかげで、少なくとも鎮守府にいるうちはとても穏やかな気持ちで過ごせている。今日は特にそうだ。こういった企画を考えてくれて、本当にありがとう」


「あは、やめてよもー。わたしはただ考えただけだし、みんながいっぱいやってくれたからパーティー出来たんだもん。こっちこそありがとね」


「…そうか」


「うんうん♪それにこういうパーティーってわたしもしたこと無かったからすっごい楽しいんだー」


「ん?そうなのか?」


「へっ?」


「いや…あなたの…その、明るい?性格なら、こういったことは友達や御家族とたくさんしているのではないかと思ってな」


「あーそういう?全然だよ全然。うち中学校まではちょー厳しかったからホントこういうの縁なかったし、高校…っていうか軍の学校は一人暮らししてたからパーティーとかしてる余裕無かったしぃ」


「厳しい…?Streng?」


「Streng…厳格、うん、そんな感じ」


「いや、すまない。まったく想像出来ないんだが」


「え、うっそ。マジ?ホラ、わたしの性格って厳格な家庭育ちそのものって感じじゃない?」


「冗談はよしてくれAdmiral」


「ひっどーい…まぁ厳しい家だったのはホントだよ。別におもしろい話じゃないから話さないけどね」


「ふむ…」


「Admiralさん!アイス持ってきましたよ!あと、さっき紹介し忘れたBierも!」


「うぇぇビールかぁ…おいしくないっていうか…苦手かも。苦い…」


「Bierニガテ…?そんな人いるの…?」


「あ、あー、プリンツ?なんかぷるぷるしてるけど大丈夫?」


「Admiralさんっ!!!」


「わぁぁ!?」


「いまから私がBierの美味しさを教えてあげますからっ!逃がしませんよぉ!」


え…ええぇ…

うーん…まぁでも今日は頑張ったし、ご褒美として久しぶりにお酒頂こうかな♪

ちょっとぐらいなら大丈夫、だよね…?












「De Ruyter.そっちは終わったかしら」


「うん!」


パーティーが終盤になってきたから、私たちNederland,Australië,Zwedenの合同グループは終わりに向けてちょっと準備してるんだ。材料は使い切っちゃったしあとは残った料理を並べてきたらおしまいかな。駆逐の子達がだいたい寝ちゃうぐらい時間経ったし、大人の時間だね。

そだ、水上機母艦の会の人達にもお礼行ってこなきゃ。





…それにしても。

提督、来てくれなかったなぁ…

お仕事終わったら来てくれるって言ってたのに…


「ねぇねぇ、HoustonとAtlantaが来てくれたよ。De Ruyterのこと呼んでる!」


「ありがとGot、すぐいくね!」






…ウソツキ。








いつものABDAのメンバーに、Gotと水上機母艦の会とAtlantaが混ざって…ちょっと不思議な光景かも。ここに来るまでまさか日本の重巡と仲良くするなんて思わなかったし…申し訳無いけど、ホントに怖かった。なんか…なんだろ…やっぱり提督のおかげ…


「あら、提督」


えっ!?


「んふふ♪みんなぁこんにちわぁ」


「ちょ、ちょっとあなた、大丈夫なの?そんなにふらふら…チドリアシ…顔真っ赤よ?」


「えへ〜♪大丈夫だってぇ…あ!ロイテルちゃ〜ん♪見つけたよぉ♡」


「へ?」


「ちょ、あなた、そんな状況で走ったら危な…」


「むふふ…つかまえたぁ♡」


「ひゃああ!」


て、提督に抱きつかれ…アレ。なんかすっごいお酒臭いんだけど。それと…なんか提督とは違う臭いも…

んっ、そこ触っちゃダメっ…!


「ね〜え〜ロイテルちゃ〜ん♪ちゅーしよ〜ちゅー!」


「Wat!?」


「…んふふぅ、ダメって言われてもしちゃうんだけどね〜♪ロイテルちゃんかくごぉー!」


ぷにっ。

わ、わ、私のほっぺに、ぷにっとした柔らかいモノが…え、なにこれ…提督の…お口…?


「提督なにやってんの!?ちょっと来て日向!止めるよっ!」


「なんだ?…なんだ」


「なに何事も無かったかのように戻ってんのよ!」


「提督がセクハラするのはいつものことじゃないか。そんなことより…」


「いやいつものことっ…そ、それはそうだけど!だって「あの」提督が酔ってるんだよ!?なにするのかわかんないじゃん!」


わ、私のほっぺ…

提督のキス…やっばい…ひゃぁん!?そこはダメっ…!

ま、まだっ!そこはまだ早いって!

や…ダメっ…んっ…

…?なんか急に大人しく…あ、ほっぺから離れちゃった…


「んふふぅ…ロイテルちゃぁん…んぅぅ…」


ね、寝た?寝たの?

はぁぁよかったぁ…Zaak wordt afgehandeld.

でも…なんかちょっともったいない…


「ほーらー提督!離れなさ…アレ?寝てる。アレ?もー、さっきまであんなだったのに…もー…ふふ、ほっぺぷにぷに♪ロイテル、提督はいつ寝たの?」


「ん…ついさっき、かな」


「ふんふん…なーんか提督ってさ、ふだんすごいうるさいのに寝顔は結構お嬢様っぽいよねー♪」


「お嬢様…あー、わかるわかる!」


「でしょ?ロングにしてワンピースとか着てたら絵になると…」


「あー!提督いたー!!!」


「っ!?なんだ、鈴谷か。提督今寝てるから静かにしてあげて」


「寝てるんですか!?まじで何考えてるんだろ…あ、デロ、こいつになにかされてないよね?」


「Hoi...う、うん…されてないよ…」


なんかスズヤがすっごい怒ってる。わりとホントに怖い…目が本気だもん。やっばーい…


「何も無いならよかった…」


「すずやぁ…んっ♡ちょっとまってぇ…」


お?Eugenが来た…けど、なんか変じゃない?顔真っ赤だしフラフラしてる。

…嫌な予感。


「で、どうしたの?提督探してたっぽいけど。というかそもそもうちらがどうしたのか聞きたいんだよね、千鳥足でこっち来たと思ったらほら、ロイテルに抱きついて…」


「は?」


ひぃっ…!やばいやばいやっばい…スズヤの目が急に怖くなった…人の目ってこんなに怖くなれるもんなの!?


「伊勢さん、それ詳しく教えて貰えますか?あとデロ、提督貸して。そいつホントにキツくお仕置きしないとわかんないみたいだから」


「だっ…ダメ!酷いことしちゃダメだから!」


「はぁ…いいんだよ、庇わなくて。つーか提督の為にもしっかり言わなきゃなんだって。アンタもプリンみたいにセクハラされたんでしょ?」


「へ…Eugenもって…?」


「あー、プリン、説明するけどいいよね?まー元はと言えばプリンが悪いんだけどさ…」


Duitslandでお話ししてて、提督がBierニガテって言ったらEugenのスイッチ入っちゃって…Duits bierの美味しさを教える!って飲ませて…酔って…


「そう。こいつポーラと同じぐらい酒癖悪いんだよ。まじで。ベクトルは違うけど。つかデロさ、それこっちに寝かしときなよ」


ん、そっか、よいしょ…

Eugenが気づいた時には遅くって、身体中触られたって…まだピクピクしてるし相当まさぐられたって事なのかな…うぅ…

そういえば提督とご飯食べてる時はお酒飲んでるところ見たこと無かったかも。案外自分の悪酔癖にも気づいてたりするんじゃないの?


「ん…まぁ一応うちらも伝えてたんだ。どんな感じだったかって。でもほら、記憶一切無くて、映像みたいに実際に観せられるやつも無かったから、完全には伝えきれてなかったのかも知んない」


「あーね。てゆーかなんでスズヤは提督のお酒事情知ってたの?」


「提督が20歳になった時にさ、お祝いしたんだ。鈴谷と提督、あとは…川内と瑞鶴も居た」


ふむふむ…提督がよく遊んでる人達だ。仲良いんだよね、ちょっと…ううん、だいぶ嫉妬しちゃう。ていとく…


「成人だからさ、お酒解禁したらさ…提督が、さ…///」


「…は?なんで顔真っ赤にしてんの?え、なんかあったの?もしかして、そういうこと?ねえ、答えてよ。ねえ。教えて?早く」


「ひっ…!?」


「ねえ。なんで黙ってんの?ほら、早く、ねえ、聞いてる?早く詳しく教えてよ。ねえ?」


「ちょ、ロイテル、ストップストップ!今のアンタさっきの鈴谷より怖いから!」


「…やば。ごめんね、つい…でも。ねえ。早く話して?」


「あの…鈴谷たち3人とも、今日のプリンみたいに、あー、全身を触られたってゆーか、そのー」


「誤魔化さないでくれるかな?」


「っ…!わ、わかったよ!あの時うちら全員足腰立たなくなるまで弄られたの!…それどころか…モニョモニョ…されたの!」


「…は?」


「うっわ…噂には聞いてたけど。実際に聞くと生々しいね。そういえばなんでそれ通報とかしなかったの?普通に怖かったでしょ」


「いやもう…された後はそれぐらいの気力すら無かったんですよ…しかも朝起きたら何事も無かったかのようにニコニコして…」


『あ、みんなおはよー♪あとちょっとでご飯出来るよ!てゆーかもーさ、なんで3人とも裸で寝てんのさ。風邪引いちゃうからやめてよね!』


「…とか言ってて。瑞鶴と提督は記憶曖昧だし、川内は「気持ちよかったし良いんじゃねー?」って。もちろん通報も考えたけど、もし提督を拘禁したとして…その後社会復帰したらこのままだから…絶対に繰り返すから…鈴谷がなんとかしなきゃって…ソレトウチラガイッキノミサセタシ…」


「まったく。鈴谷は変なとこで正義感強いんだから…ね、ロイテル。これで全部っぽいよ?」


「そだねイセ…でも、スズヤはあとでお話だから。それで…次はEugenの番ね?ずーっと黙ってるけど…ね?」


まだちょっとぴくぴくしてる。スズヤの話聞いた感じジゴージトク?ってやつだよね、きっと。Eugen、お酒のせいもあるかもだけど顔赤くして、息も乱れて…シた後みたいな。

提督のバカ。バカバカバカ!うー!

…って!?

まさか私みたいにKusされたりしたの!?


「ふえぇ…キスぅ…?それはさすがに…」


「っ!それならスズヤたちは!?」


「わああ!?う、うちらもされてないよっ!!されてたらさすがにぶっ飛ばしてるから!」


ブットバス…?ふーん、なーんかひっかかるなぁ…

えへ…それよりも…えへへ…

スズヤたちにもEugenにもしてないってことはぁ…えへ、さっきのアレ、Eerste zoen...ファーストキスってことだよね…?

私も提督も初めて…えへへへへへへ…


「…ねぇなんかロイテル変じゃない?恍惚っていうか…すごい顔してるじゃん…あれかな、お酒入って情緒不安定なのかな。それだけじゃない気もするけど」


「ほ、ホントですね…っていうかなんとなくAdmiralさんが危ない予感がしますぅ…」


「で、デロがあーなってるうちに部屋に避難させよっか…じゃあ鈴谷が気ぃ引いてくるよ」


えへへへへへへ。提督のちゅー。

幸せ。幸せ。幸せしあわせしあわせしあわせ…


「ねぇデロ!ちょっといい?」


「ひゃあっ!?…ん、なーにスズヤ。もしかしてオハナシ、したいの?」


「お、お話…ね。それはまた今度…それよりさ」


ふむふむ。ふーん。

提督が駆逐の子達にプレゼント用意したんだって。提督優しい好き。

サンタさんの代わりみたいな感じで、みんな寝た後に配る予定だった…うんうん、そっか、子どもの夢壊さない提督大好き。うん、それで代わりに配らないかって?

やるに決まってんじゃん!提督のためになるならなんでもやるもん!今日は提督ずーっと動いてくれてたもんね!

よーし、いっくよー!!!


「ちょっとデロ!!!あんた実はめちゃくちゃ酔ってるんじゃない!?危ないからちょっと待って!」




















んむ…んんん…ん?

…あれ?朝…あれ…わたしなにやってたんだっけ…昨日はクリスマスパーティーしてて…いっぱい遊んで…あれ、クリスマス…


「…あーー!!!!!」


やっばいクリスマスプレゼント!どーしよどーしよせっかく用意したのに…!それよりも駆逐ちゃんたちサンタさんすっごい楽しみにしてたのに…!

今はっ…!?8時…!みんなさすがに起きてるよねっ…ごめんなさいみんな…


はらり。


…ん?これは…


『提督へ。お疲れ様、ありがとう。楽しかった。こんなに楽しいことが出来るなんて…うん、改めて頑張ろうって思った。そうそう、提督が駆逐の子に用意してたプレゼント、私達で配っといたよ。きっとみんな喜んでるからゆっくりした後に会ってあげて。伊勢』


わぁぁ…伊勢…ありがとぉ…

良い人すぎホント…ぐすっ。やっばい、泣いちゃう…えへへ。


『P.S.鈴谷、プリンツ、ロイテルの3人とはちょっと話しといた方がいいかもよ』


へ、なんで?

…うーん。

まぁ別にいっかなー。

うん、なにかあったら向こうから来るでしょ!

それより駆逐ちゃん達に会いに行かなきゃ!










幕間のお話:願い事


「んー!いっぱい人居たねー!」


「ねー。まぁ、こんなに大変なら寝正月でもよかったかなーとか思っちゃうけど。わざわざ神社来たのうちら2人だけでしょ?あ、ちょいはぐれないように気をつけて」


「…私は、提督と2人っきりで楽しかった…よ?」


「んふ、そう?わたしも楽しかったよ♪でも、せっかくの新年なんだからみんなで居たいよねーって思うんだ。急いで帰って新年会の準備しなきゃ!」


「あ、ま、まって!」


「ん?なーに?」


「あ、あの…その…ソウダ!提督は初詣のお願いなににしたのかなーって」


「お願い?わたしはね、みんなが無事に帰ってこれますようにーって」


「そっか…」


「一応提督だからね!ちゃーんとみんなのことお祈りしてるんだ。人事を尽くして天命を待つって言うし!」


「そだね、ありがと…」


「ふふーん♪そだ、そういえばロイテルちゃんはどんなお願いしたの?」


「私?私は、その…て、提督とずっと一緒にいられますように…って」


「なるほどなるほど、なるほどねー。でもさ、それダメなんじゃねって最近思うんだよね」


「えっ…?」


「ほら、うちらは一応戦争終わらせないといけないわけじゃん、こんなお仕事してるんだし」


「うん」


「でー、戦争終わったら…私はなにするかわかんないけど、ロイテルちゃんオランダ帰りたいっしょ?」


「えっと…」


「きっとみんなそうだとおもうんだぁ。だから、とっとと戦争終わらせてみんなに里帰りしてもらう!っていうのが私の目標なの。あ、もしそうなったらちょくちょくLINEとかしよーね」


「わ、私はっ…!」


「つーか人多すぎて話すのムリ!私の声あんまり聞こえてないでしょ?私もロイテルちゃんの声聞こえてないしっ!もー早く抜けちゃお!」


「あ、て、手…わぁぁ!?ひっぱらないでー!」














#8 トクベツなチョコ


今日はバレンタイン!

おいしいチョコのお祭りです♪

この日のためにいーっぱい友チョコ準備してきたんです!みんなも用意してるみたいで最近は鎮守府中があまーい匂い…幸せですねー♪

わたしも何個かもらえたらいいな…ふふふ。

さてさて。楽しい楽しいバレンタインですが、1つだけ問題があるのです。それは…人が多いこと。いっぱいいると楽しいんだけど、配るのが大変なんです。うちいま200人とかいるかんね。

まぁダッシュで渡しちゃうのも早いし良いかもしれないです…が!私はついでにお話しもしたいんです!人が多いとなかなかみんなと話せるタイミングって無いですから、こーゆー機会は活かさなきゃですもん!ふふふ。

ロイテルちゃんに工廠でのお仕事任せちゃってるからそれが終わったらスタートかな。うん、移動はダッシュでいいかもね。

んー、ロイテルちゃんとは普段いっぱい話してるし渡す時のお話しは抑え目にしよ。気をつけないと無限に喋っちゃうから…





「ただいまー!」


わ、ロイテルちゃん帰ってきました。

うんうん…お仕事もカンペキです!さすがロイテルちゃん!

異常…無し!よし、終わり!

じゃーあー…これをプレゼント♪


「ありがと!」


「特別なチョコだからおいしく食べてね!」


「トクベツ…!?」


「そー!いつも仲良くしてくれてありがと、これからもよろしく!ってやつ。ふふふ」


「…そっか」


「じゃあわたしみんなに渡しに行ってくる!じゃあねー!」







そうそう、そういえば何個か特別なチョコ作ったんです。まぁ区別するのは提督としてどうかとも思ったんだけど。

ロイテルちゃんとか、鈴谷とか、個人的に仲良い人にはやっぱりあげたいなって思って。普段は全然特別なこととかしてないし…これくらいなら贔屓にはならないよね?

もちろんみんなにあげる用のチョコだって手抜きした訳じゃないですよ!出来るだけ好みに合わせてみたんです。例えば…長門さんは意外と甘いの好きだからこっそり甘くしちゃった。ふふふ。

よーし、配るよー♪












提督のために作ったchocola.

受け取ってくれるかな…

ううん、まず私が渡せるのかな…

はぁぁ…やっばい、心臓バクバクしてる…去年は普通に渡せたのに、うぅぅ…絶対にそんなことありえないのに、もしもいらないって言われたらって考えちゃう…

し、執務室で待ってたら帰ってくるよね?








ガチャ。

ドアが開く音。提督が、帰ってきた。


「よい…しょ!ふー」


ドサドサドサッ。ってすごい音!

なにあれ…あんなにいっぱいもらったの!?


「重かったぁ…アレ?ロイテルちゃん居たの?」


「へ!?あ、う、うんっ」


「そっかー。いやーわたしはね、執務室戸締りしてないじゃん!って戻ってきたんだー」


「へ、へー…ねぇ提督?それさ…」


「ん、このチョコ?いいでしょーいっぱいもらったんだ♪これでおやつには困らないね。ふふ」


「…たしかに1ヶ月ぐらいは持ちそう」


「まぁ実は部屋にもいっぱい運んでるから…1日1個なら半年ぐらいは持つのかな」


半年!?

ってことは単純計算180個ぐらい?やっぱり提督人気だなぁ…うぅ…そんなにいっぱいもらったならやっぱり私からのチョコは迷惑…?やだよそんなの…やだ…

…決めた!

Een zijdelingse pas zal het probleem alleen maar uitstellen, niet oplossen!

今しかないよねっ!


「1日3つぐらい食べないと傷んじゃうよねー…なんとか、なるかな?……?ロイテルちゃーん、どうかした?」


「提督っ!私からもチョコあげる!いっぱいあって困るかもだけど、私のが、きっと、いっちばんおいしいから!私の、トクベツ!」


言った…!言った、言った、言っちゃった…!

提督お願い!受け取って!

おねがいっ!


「わーホント!?すっごい嬉しい!ありがとー♪」


「ぁ…!」


「それじゃあ早速いただこーかな。んー…開いた。わーオシャレ!」


「食べて…くれるの?」


「うんうん、当たり前じゃーん♪あ、そぉだ、ロイテルちゃんも一緒に食べよ?はい!いただきまーす」


んー!おいしい♪

そう言う提督は、とても成人している人とは思えないほど屈託の無い笑顔で。

かわいい。かわいい。かわいい。

好き好き好きすきすきすき…


「ふふー、すっごい美味しかったよロイテルちゃん!ありがとね♪」


「どういたしまして…」


「あとでゆーっくり食べさせてもらうから♪」


「わっ…!?」


ち、近いっ…提督の顔っ…


「ふふ、じゃーねー」


やっばい…やっばいよぉ…

顔近くて…いい匂いして…ニコッて…

し、心臓がバクバクする…










んっふふーロイテルちゃんにチョコもらっちゃったー♪

えへ、特別なチョコだって♪

ん?チョコになにか書いてある…なになに?

『Ik vind het geweldig!』

うーん、ダイスキ!って感じ?

ロイテルちゃん…わたしも大好きだよ♪













#8 アウンの呼吸


「あ、提督ー!一緒に食べよーよ!」


「わー蒼龍飛龍!ありがと!」


今日はお仕事が早く終わったので、ロイテルちゃんと一緒にご飯食べに来ました。ロイテルちゃんから誘ってくれたの、まじ嬉しい!

そー、最近あんまりマトモなご飯食べてなかったんですよ。理由はチョコ。まさかこの歳でチョコばっかり食べてご飯食べなくなるなんて思わなかったの。ふふ、だってわたし来月で23歳だもん。まあ美味しいしいいかなぁって。だから最近ランニング始めたの、そろそろマジに栄養取らないと体調狂っちゃうし。測ってみたら7キロ1時間でした。バスケ部のときより全然遅いね。どーでもいい話しちゃった。ふふふ。

で、二航戦の2人と会いました。この2人は、戦力としては最高クラスなのにめちゃくちゃ話しやすい楽しい人達で。ほら、ホンワカしてるじゃん?本気の時はそりゃービシッとした雰囲気だけど、それでもなんか一航戦のアレとは違う感じ。なに言ってんだろわたし。でもさ、わかる人には分かると思うんだ。わかる?あは、脇道それまくりかも。


「お、デロちゃんもいるじゃん。ちょうど2人分席あるよ!」


「ホント?Dank je!」





わたしね、二航戦と言えば阿吽の呼吸だと思うんだ。ほら、今も特になんにも言ってないのにハンバーグにかける粉チーズの受け渡ししてる。なんかいいよね、背中を預ける相棒ってやつ?ベストパートナーってやつ?憧れちゃう!家族とか親友みたいな、深ーい関係。良いなー


「ねぇねぇ、ヒリューとソウリューって凄い息合ってるじゃん?」


「ん?そう?」


「そう!日本語であったよね…えーっと、アウンの呼吸ってやつ!でさ、2人とも息ピッタリなのに、演習とか出撃だとたくさん声掛け合うじゃん。ずっと気になってたんだけど、なんでかなーって」


「声掛け合う…そうかな、飛龍?」


「デロちゃんに言われてるならそうなんじゃない?なんでかーうーん。まぁウチらも意識してるのはあるかも」


へええ、そうなんだ!

なんか「そっちは任せた!」「おう!」みたいにやってるのかと思った。かっこいいバトル漫画的な感じで。


「そんなんやるわけないじゃん、死ぬし。そーね、理由は3つあるかな」


「3つ?」


「そう。1つは提督にも言ったけど死ぬから」


「ほら、例えば私が飛龍にそっちは任せた!ってやるとするじゃん?それが伝わってなかったらヤバいじゃん、後ろガラ空きだもん。わかるでしょ?」


「わかるわかる、やっばいかもそれ」


「まぁピンチには分かりあってるとありがたいんだけど、あんまり過信したくないなって。次は…これも死ぬからなんだけど。付き合い短い人にやらないように、だね」


「ま、また死なないようになんだ」


「そうそう。死ぬお仕事だからね。で、ウチは息長い艦隊だからさっきの「任せた!」「任せろ!」ってやつも出来ちゃうのよ。蒼龍とか空母以外でも初期メンは…まああとついでに提督も」


「ついでとか酷くない?」


「それこそ阿吽の呼吸とは行かないけど、まぁ近海の迎撃殲滅戦ぐらいなら出来ちゃうし。でもほら、例えばABDAの子達とは無理じゃん?あ、これって仲良い悪いの話じゃなくてね?」


無視すんなし!

…まぁ言いたいことはわかるよ、昨日知り合った人と意気投合することはあってもその人を一日でわかるか?とは別の話になっちゃうもんね。むしろ何年来の付き合いでそれなりに仲良いってぐらいの人の方が知ってることもあるし。


「そういうこと!でさ、例えば私がロイテルちゃんと仕事してるときにそれやっちゃったらヤバいじゃん、飛龍風に言ったらどっちか死ぬでしょ?」


「そうそう、理屈でわかってても普段からやってたら咄嗟に出ちゃうんだ、わかる?だからそれやりたくないよねー、みんなと仲良くキレイに終わりたいしーってことで普段気をつけてる」


「Dat is logisch.わかるわかる!」


「あとは普段からやってた方がいざと言う時行動出来るって言うのもあるね!声出しとか」


なるほどなるほど?

1つ目、「阿吽の呼吸」はあまり信用しちゃいけない。少なくとも普段からそれに頼った動きはしないようにって感じ?

2つ目、命のやり取りでは咄嗟に出る行動で自分も周りも危険に曝されるから、どんな人と組んでも普段通り行動出来るように…か。

ふむふむ、二航戦もちゃーんと喋ればかっこいいじゃん。ふふふ。

ラストは?気になる!


「かっこいいのはいつもだから。うーん、最後はね、結局話さなきゃ伝わんないからって感じかな」


「Wat bedoel je?」


「いくら仲が良くてもお互いの考えてることを完璧に理解するって不可能じゃん?脳みそが繋がってるわけじゃないんだし。私は蒼龍のこと全部は知らないし」


「私も飛龍のことはそれなりにしか知らない。人よりは知ってるけど。「ある程度」知ってるって、実はものすごく厄介だと思うんだよね」


だって違うかもしれないことが、お互いに知らないかもしれないことが、どんどん出てくるんだもん。深く知れば知るほど、知らないものが際限なく大きくなって、きっとそれは、お互いに全く知らない人同士よりの「それ」よりずっとずっと大きいんだ。

だから、その人の為にやったことが望んでることと違うことだった〜なんて言うのも十分起こりうるでしょ?良かれと思ってやった事だから気まずい微妙な雰囲気になっちゃう。

最初は気まずい変な雰囲気で済んだとしても、将来取り返しのつかない大きな溝になる可能性も否めないじゃん。お互いがお互いに伝えあってればそんな事無かったかもしれないのに。

もし片方がガマンして表面上はなにも問題なく過ごしてたとしても、それっていい関係とは違うものでさ。自分のためと思ってやってくれた事が嫌で嫌で仕方なくて、でも伝えられなくて。そんなの想像しただけで最悪じゃない?

そう、それってどんなに仲が良くても関係が深くても…例えば家族ですら起こりうる事だと思うんだ。

ウチらは今こんな身体を手に入れて、意思なんかも手に入れて、船だった時には無かったこんな悩みが出来ちゃったわけだけどさ、裏を返せば誰にでもやりたいことを伝えられる、共有出来る手段…「話す」機能を手に入れたって言えるじゃん。こんな便利な能力、フル活用しないともったいないと思わない?


そうやってかわるがわる話す2人は、長年一緒にいた中で1番良い顔をしてるように感じました。言わなきゃ伝わらない、この身体は「話すことが出来る」。当たり前すぎて、忘れていたわたしたちの一番大事な能力。2人がお喋り大好きなのも、大事なところではビシッと引き締まるのも、なんとなくわかったような気がします。


「ってことで言わせてもらうけど蒼龍、私今日のハンバーグはチーズかけない気分だったんだよね!代わりに部屋のポテチ貰うよ!」


「はあ!?全部食べてから言うのズルくない!?」


やっぱ仲良いね、ふふふ♪

おっと、たくさん喋ってたらいつの間にかご飯食べ終わっちゃった。今日はちょっと用事があるんです。おじいちゃんが電話するって言ってたの。なにかなー、久しぶりに話すかも!

というわけで、わたしはお暇させていただきます!

じゃあねー3人とも!











「ねぇねぇ、ソーリュー、ヒリュー」


「ん?どしたのロイテルちゃん」


「…あのね、私好きな人が出来たの」


「まじ!?」


「うん。まだ言いたくないんだけどね、明るくって、優しくって、かわいいんだ」


「へー、いいじゃん」


「…ね、オウエン、してくれる?」


「もちろん!」


「あ、でもウチの憲兵さん達はダメだよ?みんなパートナーさんがいるからね?」


「うん。わかってる」


「提督には言ったの?」


「ううん、まだ」


「へー…なんか意外。真っ先に言うかと思ってた。まぁウチらは口堅いからね、安心していいよ!」


「…言わなきゃ伝わらない…よし」















もしもーし!こんにちはーおじいちゃん!うん、そー!そろそろ誕生日なのー!え、今年で?そうそう、23歳になる!うん、うん…そだね、普通の人なら来月から社会人2年目って感じかも?わかんないけど。うん。それがどうしたの?へ、お見合い?やだぁ…えっ?…お父さま…が…はい。はい。わたしのため…はい。結婚…辞めるっ…?それはっ…はい…家に入るもの…そうですね。えっ…3月…たんじょう…いえ。5月まで…ありがとうございます。はい。失礼致します。
























幕間のお話:エイプリルフール


「ちーっす提督。最近元気無いじゃん?」


「え、そ、そんなことないよっ!」


「そう?それならいっか。誕生日断られた時はマジでびっくりしたけどね」


「あはー、ごめんね、ちょっと人と会ってて」


「え、まじ?提督ってウチらより優先する関係持ってたんだ」


「うん…ねぇ鈴谷。もしわたしが提督辞めるってなったらどうする?」


「なにそれーエイプリルフール?さすがに露骨すぎておもしろくないって」


「あは…そっか」


「まー鈴谷はともかく、もし辞めたらデロがどうなるかわかんないね」


「へ、ロイテルちゃん?」


「あいつ提督大好きだし。そだ、その話してて思い出した。提督さ、最近なんか変だなって思うっしょ?」


「え、別に」


「マジ…?ウチらからしたら異常にキョリ近いんだけど」


「ん、んー…まぁ確かに最近ロイテルちゃんから近づいてきてくれるかも」


「あーアンタも距離感ぶっ壊れてるの忘れてた。もうそれはいいや。ね、提督。デロの事なんだけど」


「うんうん」


「提督さ、そろそろ襲われちゃうかもよ」


「なにそれ、謀叛ってこと?」


「違う違う、性的にってこと」


「なにそれうける。てかロイテルちゃんなら大歓迎だよー」


「は?ウソでしょ???」


「んふー♪それ、エイプリルフールでしょー?もっと上手くやんなきゃダメだよ鈴谷♪じゃあそろそろわたし行くねー、バイバイ」








"ウソじゃないよ、1番最初から"

"むしろウソであって欲しいのはこっちの方なんだから"













#8 黄色いチューリップ


「ロイテルちゃーん、誕生日おめでとー」


「わ…ありがとー」


今日は5月11日。ロイテルちゃんの誕生日です。そっか、一緒に服買いに行ったのもう1年も前なんだ。そっか…

今年はお出かけ出来ないけど、お祝いはしたいなって。

はい、これあげる!


「お花?黄色のチューリップ…タイガーリリー…」


「チューリップってオランダのお花らしいじゃん。そういえばあげたことないなーって、日本のチューリップもキレイでしょ?」


うん。これで終わり。

後でおじいちゃんに電話しよう。それで軍を離れるんだ。お見合いも受けて…

ロイテルちゃんもきっと素敵な人と出会えるよね。

軍を離れたら友達のままでいるってことは難しいかもしれないけど…それはそれで、そう、きっと運命なんだ。

あとはこのお花を笑って受け取ってくれたら、切り替えられるから。

最後のプレゼント…受け取って欲しいな…


「…っ!?提督。今なんて言ったの?」


「え、チューリップがオランダの…」


「違うっ!最後のプレゼントって…!」


「え?あは、声に出ちゃってた?」


「笑い事じゃないんだけどっ…!ねえどういうことなの?説明して?」


わぁ、ロイテルちゃんこわーい。

そんな睨まなくても…

…うん、わかったよ、言うよ。

実はね、わたし、今月で提督辞めるんだ。わぁぁ!?なに、もー。こっちがびっくりしちゃうからそんな驚かないでよ。

辞めてどうするのって…

…あはは、どうしよっかなぁ。

5月なんて中途半端な時期だし、1年ぐらいのんびりしよっかなぁ…ん?この時期に辞めるのはおかしい?

ふふ、さすがロイテルちゃん。隠してても全部バレちゃいそう。

そう、辞めるのはね、一身上の都合ってやつ?お父さんがね、辞めろって。うん、そう。だからホントは3月で辞める予定だったんだ。待ってもらったの。最後にロイテルちゃんの誕生日お祝いしたいなぁって思ったからさ。

ん?いやー、もう会えないんじゃないかな。わたしは民間人になるし、みんなは軍人だし。んふふ…改めて言うと寂しいね…

え、そもそもなんで辞めるのって?

それはね…


「お見合いしろって言われたの」


「オミアイ?」


「そー。ほら、わたしもう23だからさ、結婚してもいい頃なんだってさ。知らないけど」


「…提督はそれでいいの?」


「ふふ、わたしはね、こう見えてお嬢様なの。そうなっても仕方ないなーって」


「それでいいの?」


「っ…そだ、あとで引き継ぎの資料つくるの手伝ってよ!」


「それで、いいの?」


「あーそうだ、もうロイテルちゃんに言っちゃった事だし、みんなにも連絡しなきゃだよね!ちょっと行ってくる!」


ダメ、もうこれ以上ここに居たら…

うわぁ!?


「ねぇ…質問に答えてよ」


あはー、ロイテルちゃんに捕まっちゃったぁ…さすが軍人さん、抑えるとこがカンペキ。

振りほどけ…ない。えへへ。


「提督はそれでいいの?本当にいま辞めてお見合いして結婚するの?」


「それはっ…仕方ないもん…」


「仕方ないじゃないの!私は提督がどうなのか聞きたいの!あなたが、どうしたいのか知りたいの!」


「それ…は…親の言うことは守らなきゃだから…」


「わかんないよ!ぜんっぜんわかんない!なんで自分のやりたいことより親の言うことを優先するの!?もう大人でしょ?」


「おとな…」


「いっつもそうじゃん!いっつもいっつも!どっちか選ぶ時は絶対自分から選ばないよね!提督が優しいっていうのもあるかもだけど、本当は選べないからなんでしょ?」


「そんなことっ」


「私はやだよ!提督と離れるなんて絶対やだ!提督がいてくれたからみんなと仲良くなれたんだもん!提督がいてくれたから私はここが大好きになれたんだもん!せめてっ…せめて提督の気持ち聞くまでは逃がさないからっ…!」


えへ…そっかぁ…答えなければ離れないでくれるんだ…

そっかぁ…

ロイテルちゃんのかわいいお顔が近くって、わたしを捕まえてる手は優しくて、あったかい…

あれー、さっさと伝えていなくなるつもりだったのに…最後までヘラヘラしてるはずなのに。あれぇ…


「…もし、提督が辞めたくて辞めるなら…私、頑張って諦めるから…」


「ロイテルちゃん…?」


「ねぇ提督。あのね…私、あなたのことが好き。大好きなの」


「えええっ!?」


「ごめんね、ずるいよね。でも…言いたいこと言えないまま提督がどこか行っちゃうなんてゼッタイヤダもん」


ぽたっ。ぽたっ。って、私の服に雫がこぼれ、生暖かい染みが出来ます。不定期に、少しずつ。

ロイテルちゃん、泣いてるんだ。

隠れた顔と震える肩と、侵食するように広がるその染みを、わたしは眺めることしか出来なくて。


「好き…すきだよっ…上司とか友だちとしてじゃなくてliefde…恋とかそういう意味で好きだったのっ!」


ロイテルちゃんに押さえつけられた腕がいつの間にか動くようになってる。その気になれば抜け出せるはずなのに、早く逃げ出したかったはずなのに、なぜだか動かないわたしの身体。


「日本じゃ同性同士って珍しいから、告白したら避けられて一緒にいられなくなっちゃうかもって…!」


掴まれてる腕からぷるぷるぷるって感覚が伝わります。ロイテルちゃんの手が、肩が、小刻みに。

力の入らない身体を支配するわたしの頭に湧き上がってくる想いがありました。それは、今出てきたようでずっとずっと隠してたのかもしれないもの…


「いなくなっちゃうかもしれないならそんな事気にしてる場合じゃ無いし!私はぁっ…提督が好き!提督はどうなの?!」


ロイテルちゃんにまた迫られて、わたしの身体は抑えが効かなくなっていきました。

ここを出ていくのなら絶対に言っちゃいけないはずのその言葉が、気づいた時には漏れ出していて。


「わたしも…好き…」


あぁ…言ってしまいました。一度出てしまったらもう止まりません。わたしの口からはとめどなく言葉が溢れ…目からも温かいものが零れ落ちています。

止めることが出来ないそれは、わたしの意思に反して…いえ、わたしの意思は元々これだったのかもしれません。必死で押さえつけていた仮面が剥がれただけなのでしょうか。


「わたしも好き…ロイテルちゃんも…この鎮守府も…!すっごい楽しくて…みんな優しくて…かわいいし…」


…でも、わたしは辞めなきゃなんだ。だってお父様とお母様に言われたんだもん。だって親の言うことは聞かなきゃだもん。

だって…だって…

わたしはずーっと従ってきた。両親は所謂エリートだから、恵まれた環境で育ててもらったと思う。そりゃそうだよね、おじいちゃんは海軍の最高級の権力者で、お父様は海軍のそれなりに高い地位の人、お母様はその秘書。全然話してくれなかったの。2人ともあんまり家にいなかったしね。きっと男の子が欲しかったんじゃないかなーって思うんだ。跡継ぎってやつ?だってそんな素晴らしい家系だったら後世に残していきたいみたいな。あるじゃん?そういうの。

そう、だからさ、なんとなーくそうなのかなーって…感じちゃったからさ。うん。だから、言われたことはとりあえずやってきたの。お勉強とかね、習い事とか。女の子に産まれちゃったから、せめて言うこと聞いとかないとって…提示されたことは全部やった。あは、さっきロイテルちゃんも言ってたね、わたしが優柔不断だーって。わたし、自分で大事な何かを選んだことなかったからさー。たぶんそういうことなんだ。

え?優秀ならわたしが跡継ぎになればいい?んー。

どうなんだろうね、それ。日本ってさ?ずっと嫁入りが基本だったんだよ。なんでかはわかんないけど。まぁこれも多様性だからそれはそれでいいとは思うよ。うん、だからどっちかと言うとそういうところは男性優位って感じなんだ。あーいや、もちろん最近は普通の人は全然気にしてないと思うけどね?

ウチはまぁ、結構古い家柄だし…ん?

うん、そうそう、もちろん婿入りもあるよ。そう。

…あはは、気づいた顔してる。

そう、良い家に女の子しか産まれなかったときとかに、男の人と結婚させて跡取りにするってやつ。

このお見合いもそれっぽいんだよ。ほらほら、この人なんだけどね、かっこいいし、なんかすごい優秀な人らしいし。

きっとウチの跡取りとして申し分無い人。


「提督は、どうなの?」


どうなんだろうねー

たぶん素晴らしい人だよね。普通にかっこいいし、勉強もスポーツも出来ちゃって家柄もすごいだろうから、きっと幸せな生活になるんじゃないかな。

なによりお父様とお母様が言ってることだし。ほとんど言われたままの人生で、こんな良い人生だったんだから、今回もきっと。

…でも。


「わたしは…わたしだってヤダよ」


生まれて初めての、両親への反抗の言葉。

わたしを覗き込む、吸い込まれるような…そして貫くような金色の瞳に引きずり出されたそれは、喉の奥を抉るんだ。

そうだ、最初っから気持ちは決まってた。でも、それでもわたしには無理な理由があるの。4半世紀も歯向かうことを知らなかったわたしの口は反抗する言葉を知らないから。


「それでも言わなきゃいけないんじゃない?」


「え…」


「だって私、提督がなに考えてるのかわかんないもん。提督も、私の心の奥はわかんないでしょ?」


誰だってそうだと思うんだ。

彼女はそう言ってニコッと笑うんだ。


「そのせいで、とか。察そうとしたらすれ違いになってケンカしちゃうとか悲しいじゃん。だから私はさっきから聞いてるんだよ、提督がどう思ってるのか」


息継ぎをして、ロイテルちゃんはさらに続けます。


「つまり…言葉にしないと伝えられないってこと。本当に大事なことからは逃げちゃダメ!」


そっか…そうだよね。

言わなきゃ伝わらない。本当に何かしたいなら、意志を伝えなきゃいけない。ちょっと前に二航戦の2人から教えてもらった、わたし達にしかない能力。今まで両親とほとんど話さなかった記憶が蘇ってきます。本当はお話ししたかったのに、2人とも忙しそうだったからってガマンして。そのせいで跡継ぎがどうとか勝手に想像して、勝手に負い目を感じて、もっともっと話せなくなって。

そんな話、一度も聞いた事はなかった。わたしが逃げてただけだった。そうだ、わたしは…

気持ちを伝えるなら言わなきゃ。もしそれでダメだったら…

ううん、きっと、なんとかなる。なんとかする!いつものわたしで、本当のわたしで!


「ロイテルちゃん!わたし、言ってみる!」


「ホント!?」


わたしの選択を伝えると、ロイテルちゃんの顔がぱあっと明るくなりました。この太陽みたいな笑顔にずっとずっと救われてきたんです。

わわ、ロイテルちゃんが急に抱きついて来ました。わたしもお返しにぎゅーってしちゃいます♪細くて折れちゃいそうなのに柔らかいこの身体を抱いてると、長い腕で抱かれてると、すっごい安心出来ちゃうの。

結婚したいなーとか、男の子だったら即プロポーズするだろーなーとか、さっきまでメンタルぶっ壊れそうだったわたしの心は、こんなに変なことを考えられるまで復活しました。

くだらないそれをなんとか追い出そうとしてると、わたしに抱きついたままロイテルちゃんが話し出しました。表情は見えません。


「ねぇ提督。どこにも行かない?」


「た、たぶん。頑張ってお願いしてみる」


「…ねぇ提督?私、提督のこと好きだよ」


「うん、わたしもロイテルちゃんのこと好き」


そう答えると、急に抱擁がとかれました…アレ?

ちょ、ロイテルちゃん???

彼女の顔は、さっきまでの優しいものじゃなくなって、怪しい笑みを浮かべています。アレ??

潤んだ瞳と、少し上気した顔、荒れた息遣いに蛇みたいに動く舌…


「へへ…提督、私のこと好きって言ったよね?」


「ろ、ロイテルちゃん?一旦離して???」


「やだ」


「へ…あの…」


「ずーっと狙ってたんだぁ…こんなタイミング。ね、ちゅーしよっか」


「なんでっ!?」


「だって、好きな人を押し倒してるんだよ?目の前にこーんなにかわいいお顔があるんだよ?お悩みは解決して、いい雰囲気だよね…もうガマン出来ないからっ」


「ろ、ろろロイテルちゃん!?落ち着こっか!?ダメだよこーゆーのは…えーとー、ソウダッお互いの同意がなきゃっ!」


「セクハラばっかりしてた提督がそんなこと言っても説得力ないよ」


「あはー…わかるわかる…」


それ言われたら言い返せないわー…

じゃなくて!やっばいどーしよどーしよ!だ、だって女の子同士じゃん!わ、わたしも…好き…かも…しれないけど…その…えー…あーうー…


「一応言っておくけど、もう提督には拒否権無いからね?そーだなぁ…提督にセクハラされた回数終わるまでは、絶対逃がさないから♡」


わー…やっばーい…








エピローグ


ちーっす!鈴谷だよー!

最近ね、いろいろあったんだよ。まじで。ん、まぁ鈴谷達の生活が大幅に変わったかーって言われるとそうでも無いんだけど。

まずは…提督が鎮守府に残ることになりました!

しょーじき、鈴谷も一連の流れ聞いてホントにびっくりしたの。だってさー、別にヤラカシとかなかったかんね、あの人あー見えて仕事はちゃんとやってたし。理由聞いたらお見合いって…あの提督がお見合いとかまじウケるよね。

そー、鈴谷も提督のご両親に会ったことあるの。たしか1回だけ…うーん、まだ司令官がおじいちゃんだったとき、かな、その時に会ったことあったんだけど。まぁウチらの前ではホントに喋んなくてさぁ。なんかこわーい人達だなとか思ってた。

ん、そうそう。それでね、鈴谷も提督の実家についていって後ろから見てたんだけど…もーさ、まじ面白かった。衝撃の事実ってやつだよね

あ、ごめんごめん、ちゃんと話すよ。えっと…提督のご両親は、なんていうのかなー…あ、コミュ障ってやつ!そう、うん。娘にコミュ障ってなんだよって話なんだけど。

ただでさえ話せないのにお2人とも仕事で忙しくて全然提督と喋らなかったんだって。落ち着いた頃には結構育ってて、話したくても話せなかったーって。もうこの時点で提督ポカーンとしてたよね。まじあの時の顔ほんっとに面白かった。いひひ…

で、たくさん勉強しとけばとりあえず幸せになるんじゃね?自分たちみたいに。つって勉強させてたらしいよ。鈴谷も提督の卒アル見たことあるけど今と雰囲気違いすぎてダレ?ってなったもんね。あは、どーでもいっか。

それでね、提督のご両親はお見合いで会ったらしいの。馴れ初めってやつ。うん。あんなにイケメンと美人な人達なのにお互い恋愛経験ゼロだったらしいよ。やーもう逆に天才じゃね?とか思うんだけど。

お2人のお見合いは大成功で、それはもうシアワセーな生活をおくりました。めでたしめでたし…とはならなくて、提督もお見合いしたら幸せだーって思っちゃったらしくて。そう。まぁアレだよね、すっごい提督のことを大事に思ってたんだと思う。ただ、経験値が少なすぎたんでしょ。たぶん。

ん、今回のでちゃんと親子で話せるようになったっぽいし、今度こそめでたしめでたしー。

おぉう、もちろんまだあるよ!

提督の!セクハラが!無くなりましたー!

やーまじ、これいっちばん変わったことじゃん?鎮守府みーんなの悩み…いやそれはそうでもないかも。

とにかく、なんか触って来なくなったんだよ。まぁじ鈴谷とか瑞鶴とか、あと妙高さんとかが言っても直んなかったのに何があったんだろうね?

お風呂でおっぱい見せても触って来なくなったのはいい事…なんだけど…なんか寂し…ち、違うし!そんなこと思ってないかんね?!

あとはぁ…うーん、デロと提督の距離が異常に近くなった…前よりもっともっと近くなってる。2人とも距離感おかしかったんだけど…それじゃないっていうか、なーんか提督顔赤いしモジモジしてるしぃ…普段は無い胸張って歩いてるのにね?


「すーずーやー!」


んぉ?

お、提督に呼ばれてる。じゃあ鈴谷行こっかな、ばいばーい!







エー!?

ケッコンスルノ!?

ダレガ!?

フタリガ!?ハアアア!?





おしまい


後書き

2020年1月に書き始めて2月には出す予定でした
様々な事情が重なりましてここまで遅くなってしまいました、申し訳ないです
活動報告の方に今後の活動について記載しています
要点だけ取ると
1.今までのSSを一旦非公開にします
2.Twitterとpixivのアカウントを作成しました
3.更新が大幅に遅れます
4.今後出すもののタイトルをネタバレ公開します
となります。よろしくお願い致します。
※既にお気付きの方もいらっしゃると思いますが、冗長になった場所を乱雑にカットした部分があります。特にクリスマス。pixivで供養しました。良ければどうぞ。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14276127


このSSへの評価

1件評価されています


SS好きの名無しさんから
2020-12-17 07:15:44

このSSへの応援

1件応援されています


SS好きの名無しさんから
2020-12-17 07:15:46

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください