今
提督だった人と艦娘だった人のお話。
悲しい過去は誰だってある。
悲しい未来もいつかやってくる。
でも、今を輝かせるのは自分だけだ。
この主人公は君かもしれない。
ほぼほぼ初となるssの投稿です。
誤字脱字等の可能性がありますが、暖かい目で見てやってください。
それでは、お楽しみください。
クローゼットを掃除してみると、くたびれた軍服が大事そうに仕舞ってあった。
「あー……また懐かしいものが……」
「……」
「うぉぉぉなっつかし〜」
ちょっとした出来心で袖を通してみた。
鏡に映るのはあの頃よりも幾分か歳をとった自分。
懐かしさと共に、思い出が溢れてくる。
嬉しかったこと、悲しかったこと。
いい歳して目から何か零れそうになる。
「……ゴホン」
「総員!発射よぉい!」
叢雲「何してんのよ」
「てーぇぇぇえい!?」
叢雲「掃除サボって何遊んでんのって聞いてるんだけど?」
「いやあと残すところクローゼットだけで掃除してみたら懐かしいものが出てきたから」
叢雲「……言うことはそれだけ?」
「……さーせん」
叢雲「よし」
あの頃からコイツには敵わない。
提督になって最初にコイツを選んだ時点で、この運命は決まっていたのだろうか。
「……なぁ」
叢雲「何?」
「なんかこの流れで言うことじゃないかもしれないけどさ」
「ありがとうな」
叢雲「……うん」
叢雲「……さ、さっさと片付けちゃいなさい。私もそろそろ終わるから」
「おう」
叢雲「……あ、それと」
叢雲「私の制服はあったのかしら?」
「……え?」
叢雲「ふふん」
青みがかった銀髪の娘が鏡をまじまじと見つめている。
叢雲「案外入るものね」
「成長してないだけじ」
叢雲「何か言ったかしら?」
「……なにも」
叢雲「あ、そう。それと、掃除していて昔の槍も見つけたのだけど」
「マジすんませんでした」
やっぱりこいつには適う気がしない。
尻に敷かれるとはこういう事なんだろう。
叢雲「ちょっとそれ着てこっち来なさい」
「ん?軍服?いいけど」
叢雲「ん」パシャ
ツーショットを撮られた。
ちょっと待ち受けにしたいから後で送って貰えないだろうか。
「ちょっとそれ」
叢雲「懐かしいわね、みんなに送ろ」
自分のスマホからグループチャットの通知音が鳴る。
恥ずかしい気持ちもありながら、みんなの反応が気になり見てみる。
『提督老けたな〜』
『懐かしいっぽい!』
『懐かしいね〜』
『ご主人様老けました?』
『草』
懐かしい3割、老けた7割、草1割と言ったところか。
草ってなんだ草って。何が草なんだ。失礼な。
「なんか恥ずかしいな……」
叢雲「アンタ老けたわね」
「俺に味方はいないのか?」
こいつもかよ。
別に髭そればまだまだいけるし。若いし。
写真を確認してみる。
……髭剃ろう。
「そもそもお前らが変わらなさ過ぎなんだよ。元艦娘は艦娘をやめても老けないのかよ」
叢雲「ある意味後遺症みたいなものね。安心なさい、寿命は同じだから同じ墓に入れるわよ」
「急に悲しいこと言うなよ。泣いちゃう」
叢雲「悲しまなくても長生きしてやるわよ、アンタも私より先に死んじゃダメよ?」
「……わかってらい」
確実に来る少し悲しい未来の事を考えると、胸の辺りがキュッとなるのを感じる。
ちょっと目の前の最愛の人を抱きしめてみる。
叢雲「わっちょっとアンタ……」
「……」
「……愛してるからな」
叢雲「……知ってる」
ちょっと声が震えた。
今日の俺はダメかもしれん。
叢雲「……落ち着いた?」
「……あぁ、ダメだな、涙腺がイカれてるかもしれん」
過去の事と未来の事。
対極に位置するもののはずなのに、似ている。
鮮明に思い出せる過去なのに。
ぼんやりとした未来なのに。
叢雲「……私は、未来とか、過去とか。正直そんなものはくだらないと思ってるの」
叢雲「だってそうでしょ?私達は常に未来に向かってる。じゃあ今を楽しまなきゃ損じゃない」
叢雲「悲しい未来も、悲しい過去も、忘れないだけで十分よ、たまに思い返してあげればいいわ」
叢雲「思い出なんて、あの頃、あんな事もあったわねって、笑い合えばいい」
叢雲「未来なんて、いつかあんなことしたいわねって、話し合えばいい」
叢雲「ね?楽しいでしょう?」
「……いいね」
あぁ、つくづく思う。
俺はなんて最高の嫁を持ったのだろう。
楽しかった、あの頃。
夢のある、未来。
そして最高の、今。
「……せっかくだし今日1日これ着て過ごしてみるか」
叢雲「私は脱ぐけどね」
「あってめ俺がめちゃくちゃはしゃいでるやつみたいになるだろ」
叢雲「実際そうでしょ?」
「こいつ……」
ピンポーン
「誰だ?」
叢雲「あ、多分鳳翔さんだわ」
「どうして?」
叢雲「今日野菜届けてくれるらしくて、でついでにお茶でもと思って掃除してたのよ」
「それならここまで念入りにやる必要なかったんじゃ……」
叢雲「ついでよついで、それに鳳翔さんならうちの掃除もしかねないわ、はーい、今でまーす」
確かにありえる、あの人は根っからのお母さんだ。さすが空母の母。空母でもう母なのにさらに母だ。ビックマムだ。違うか。
ガチャ
叢雲「鳳翔さんに……龍驤さん!?その格好で来たんですか?」
龍驤「せや!どや?懐かしいやろ?」
鳳翔「探してみたらありまして……これどうぞ」
叢雲「あ、野菜も……どうぞ上がってください」
「久しぶり〜あ、龍驤ちゃんも、懐かしいな〜」
龍驤「おー!司令官!どやー?かわええやろ?」
「叢雲には負けるかなぁ〜?」
龍驤「なにおぅ!?」
叢雲「こいつらは……」
鳳翔「ふふ、賑やかですね」
叢雲「主にアイツがですけどね」
龍驤「一応あったから艦載機持ってきたで!」
「動かせる?」
龍驤「どやろ……」
「やってみてよ」
龍驤「ぐぬぬ……ふぬぬ」
スーッ
龍驤「動いた!?」
「残念俺が息吹いて動かしました〜」
龍驤「お前ホンマに……シバくで?」
ちょっと待ってよ。
ちょっとした出来心じゃん!
何その拳下ろして?
「ちょっとまっ」ピロン!
突如なる通知音。
「誰だ?」
ピロンピロン
鳴り止まない。
グループチャットからだ。
『制服探したらありました』
『取っといてるもんだね』
『着てみたっぽい!』
『ご主人様ー?可愛いでしょー?』
『私よくこんなの着てたね…変態じゃん…』
『案外、入るものだな。』
『お腹がちょっとキツイんだけど……』
『↑痩せなさい』
「おぉ、みんなも」
ピンポーン
鳳翔「はいはい」
夕立「来たっぽい!」
時雨「急でごめんね」
叢雲「夕立!時雨!」
「おお!しかも制服!」
夕立「どうっぽい!可愛いっぽい!?」
時雨「仕舞っておいて良かったよ。思い出だからね」
夕立「マフラーもあったっぽい!」
金髪の犬と黒髪の犬……ゴホン。
可愛い女の子2人が懐かしい姿で立っていた。
「おーいいね!いっその事みんな呼じゃうか!」
鳳翔「じゃあご馳走が必要ですね!」
叢雲「誰か買い物に行かせるわね」
「飲み物は紅茶バカが持ってくるか」
龍驤「いや紅茶オンリーはキツイやろ」
ガチャ!
金剛「誰が紅茶バカネ!いくら提督でも言っていいことと悪いことがありマース!」
比叡「姉様!落ち着いて!」
榛名「榛名も来ちゃいました!」
霧島「ちゃんとコンタクト外してメガネで来ました!キャラなくなりますから!」
「そういう事言うもんじゃありません!」
叢雲「よく考えたら入り切らないわね」
鳳翔「あ!そうです、私の店に来ますか?」
「採用」
夕立「さんせーっぽい!」
時雨「大丈夫かい?100人近くいるけど……」
鳳翔「大丈夫です!間宮さんと伊良湖さんも居ますから!」
時雨「いや場所的な問題……」
龍驤「あそこなら大丈夫やで、宴会場があったはずや」
「よし!決まりだな!」
『鳳翔さんのお店集合!全員制服!無いやつは私服で構わん!』
『了解!』
『了解』
『り』
『あいよ〜』
『了解した』
『ん』
『え?スク水着てくんでちか?』
金剛「よし行くネー!」
比叡「待ってください姉様ー!」
榛名「榛名は大丈夫です!」
霧島「あなたそれ言いたいだけでしょ」
夕立「GOっぽい!」
時雨「楽しみだね」
ゾロゾロ
「……なぁ叢雲」
叢雲「……なによ」
提督「俺、今最高に楽しい」
叢雲「……奇遇ね、私もよ」
如何だったでしょうか?
深夜テンションでパパパッと書きあげた割にはいい感じにまとまったのではないでしょうか?
お楽しみ頂けたら幸いです。
もしよろしければ、面白いと思ってくれた分の評価、コメント、オススメのほどよろしくお願いします。
それではまた、いつかのお話で。
はい神作
はい最高
最高です、初投稿でこれは名作…
うぁりがとうございまぁす!
この同窓会感すこ
ちな1番目のコメは私
神作ですねこれは...