ダイワスカーレットから1番を奪ってみた結果ー別編ー
はっぴーえんど
↓前回
https://sstokosokuho.com/ss/read/21675
私はみじめだった
1番を捨て、実家に帰り半年が過ぎた
今日はその半年の間を書き記そうと思う
○月×日 ダイワスカーレット
〜半年前〜
私は学園を去ったあと、実家に帰り家の家業をしばらく手伝った
最初は学園からこっちに来て良かったと思った
みんな優しくしてくれるし、私も居心地が良かった
だけどときが経つにつれて不安が大きくなっていった
私はこれからどうなるのだろう、ずっと逃げ続けていいのか、っと
そう思い始めた頃からだった
外が怖くなったのが
もしも私の元の姿を知っている人がいたらどうしよう
もしもその人が私の元ファンだったらどうしよう
だとしたらこんな惨めな私を見てほしくない
怖い、助けて
そう思い始めた
私はだんだんと外に出る回数が減り、家に引きこもるようになっていった
しばらくして、私は外に出なくなった
ママは私のことを咎めなかった
そればかりか気づけなくてごめんね、っと謝られた
胸が痛い、苦しい
私は自殺を考えた
自分で縄を用意し、天井に吊るし、あと一歩踏み出せば死ねるという状況になった
しかし死ねなかった
死ぬ勇気がなかった
怖かった
もしも私が死んだら”ダイワスカーレット”を覚えていてくれる人はいなくなるのではないか、という思考が頭をよぎったせいだ
私は泣いた
そんな理由で死ねないだなんて、どこまでいっても惨めだって
私は泣いた
ここから先の私は自暴自棄になっていた
外が怖い、話し声が怖い、目が怖い
なにもかもが怖かった
私はしばらくしてネットの世界に入り込むようになっていた
自分より下の存在を探すようになっていた
ときどき乾いた笑い声がした
自分を周りに認知してほしくて”ウマTuverになった
売れなかった
乾いた笑い声がした
ウマTuverのエロ放送をした
売れた
乾いた笑い声がした
私はしばらくしてウマTuverをやめた
認知されるのが怖くなって垢も消した
時々ママが部屋に来て話しに来るけど何も頭に入ってこない
ママはいつも悲しそうな顔をしていた
胸が痛い
乾いた笑い声がした
私はネットである記事をみつけた
なんでも負けたウマ娘の会だそうだ
私はそれに参加した
顔を隠して
結果から言ってしまうとそこは宗教の勧誘だった
私は会場を途中退室した
今思えばあのとき宗教に入っておけば、私はこの先なにも考えずに過ごせたのかもしれない
そう考えたらなんだか笑えた
私の性格はどんどん荒れていった
ママに反抗し、子供の声に敏感で、叫んだりもした
そのたびにママは悲しそうな顔をしていた
もう胸は痛くなくなった
あるとき一通の手紙がきた
トレーナーからだった
話がしたい、だそうだ
私はその手紙を破り捨てた
しかし手紙は何通も何通もきた
トレーナーの近況報告、私の心配、学園のこと
色々なものが来た
私はトレーナーに会ってみたくなった
トレーナーが私を救ってくれる、そう思ったからだ
しばらくしてトレーナーが家に来た
いざ会うとなると私は唐突に怖くなった
トレーナーはそんな私に配慮してか扉越しに話しかけてきた
簡略にまとめると部屋から出てまた一緒に1番を目指そう、ということだった
しかし私はその言葉に答えられなかった
1番が怖い、またあのような思いをするのは怖い
怖い
私は惨めで臆病だ
トレーナーはたびたび私の家に来て話をしてくれた
私はただ黙ってその言葉を聞いていた
扉越しに
トレーナーはいつまでも優しい声で話してくれた
私はそんな声に少し救われていた
今そのことを思い返すと、私はただ溺れていたかったのだとわかった
私はトレーナーと顔を合わせて見たくなった
トレーナーの顔を見て安心したかった
トレーナーに会って、気を紛らわせたかった
私は勇気を出してトレーナーと会ってみた
私は絶句した
トレーナーは、トレーナーの顔は痩せこけていた
優しそうな顔の面影はあるが頬は痩け、目元は寝ていないのかクマがあった
私はなんだか悲しい気持ちになった
私は心のどこかで少し期待していた
この扉を開けたらあの頃に戻っていて、最高のトレーナー、最高のライバルがいて、一緒に生活ができるのではないかと
しかし私が扉を開けた先にあったのは、私が作り上げた悲惨な現実だった
私はトレーナーに謝った
ごめんなさい、ごめんなさいっと何度も謝った
トレーナーはそんな私を優しく抱きしめて頭を撫でてくれた
トレーナーの手は優しく、トレーナーの体はあたたかった
私は泣いた
惨めで臆病な私を許してほしくて
泣いた
私は部屋に飾ってあったティアラを手にとった
ティアラは少し埃が付いていた
私はその埃を取り、もとの位置に戻した
私はママに謝った
久しぶりに見たママの顔は少し老けていた
私は土手に出て少し走った
苦しくて、吐きそうで
でも不思議と足は軽かった
私は学園の前に立ち叫んだ
様々な感情をぐちゃぐちゃにしながら
トレセン学院のばかやろーっと
私は笑った
久しぶりに心の底から
家に帰るその足は最初よりも軽かった
私の名前はダイワスカーレット
常に1番を目指して来たウマ娘だ
だけど私はもう1番はいい
結果だけの1番はいらない
私は、私の1番がほしい
だから私はその1番を追い求めてこれからも走ろうと思う
○月☓日 ダイワスカーレット
〜レース場〜
ダイワスカーレット「トレーナー、見てなさい!私の1番を!」ッビシ
トレーナー「」ッグ
ダイワスカーレット「…っねぇ、トレーナー」
トレーナー「?」
スカーレット「トレーナーは私なんかのためにここまで付き合ってもらってるけどいいの?」
トレーナー「…」
スカーレット「っなんてね、忘れて!じゃあ行ってくるわ!」
トレーナー「」ッグ
スカーレット「…そこは"いいよ"、っていいなさいよ…バカ」
『やって参りました有馬記念!』
『今回も若き精鋭達が勢揃い、それでは各ウマ娘をご紹介していきます』
『1番人気ゴールドシップ、2番人気…』
『そして最後の16番人気、ダイワスカーレット!しばらくのブランクがありますが大丈夫でしょうか』
『私が1番期待しているウマ娘です、頑張ってほしいですねー』
『それではまもなく始まります』
『今!スタートが切られた!』
なんかハッピーエンドだと気持ちが悪いのでバットエンド書いてくる
っヒェ