2021-05-31 10:30:31 更新

概要

由比ヶ浜結衣との同棲生活が始まって二年目になる。
結衣の誕生日が近付いて八幡はプレゼントに悩んでいた。
果たして、八幡は結衣が喜ぶプレゼントを買えるのか?


[誕生日プレゼント大作戦]


結衣:「八幡、明日、バイト休みなんだよね?久しぶりにどこかに遊びに行かない?」


八幡:「あぁ、悪りぃその日はちょっと用事があって無理だな・・・すまん」


結衣:「えっ、八幡に用事なんかあるんだ!!」


八幡:「俺にだって、たまに用事の一つや二つはあるぞ。」


結衣:「え〜っ、だって高校の時も一緒にその・・・住むようになってからも無かったし・・・」


八幡:「ちょっと、その少し恥ずかしそうにするのやめて〜こっちも照れてくる。」


結衣:「あっ、ごめん・・・」


八幡:「いや、いいけどよ・・・とにかく明日だけは無理だ。」


結衣:「・・・用事があるなら仕方ないね。じゃあ、今度必ず埋め合わせしてね!!約束!!」


八幡:「ああ、約束だ」


結衣:「うん!!じゃあ、お風呂入ってくるね。」


八幡:「りょーかい」


とは言ったもののどうしたもんか・・・由比ヶ浜の誕生日が近いからプレゼント買いに行こうと思ったのだが、何を買えばいいかわからん。去年は引っ越した

ばかりで大したことできてないし、一昨年はお互い受験勉強で忙しかったからまともに誕生日祝えてないし、『こう言う時どうすればいいか八幡わからない』とか馬鹿なことやってるわけにも行かんな・・・とりあえず、小町にでも買い物付き合ってくれないか電話してみるか。


小町:「お兄ちゃん?どしたの?」


八幡:「小町〜、少しお願いがあるんだが・・・」


小町:「なに?」


八幡:「急で悪いんだが明日暇か?ちょっと買い物に付き合って欲しいんだが・・・」


小町:「なんで?結衣さんに付き合って貰えばいいじゃん。」


八幡:「いや、それはちょっと・・・」


小町:「ん?あっ!!なんだ〜そう言うことか憎いね!!おにぃちゃん!!結衣さんの誕生日もうすぐだもんね。誕生日プレゼント買いに行きたいけど何を買えばいいからわからないから小町にお願いしてるわけだ。」


八幡:「お、おう、そう言うことだから来てもらえたら助かる。」


小町:「手助けしたいのはやまやまなんだけど、小町、明日は生徒会の仕事で予定がいっぱいなの。だから、ちょっと無理かなぁ。ごめんね、おにぃちゃん・・・でも、結衣さんならおにぃちゃんからのプレゼントだったらなんでも喜ぶと思うから大丈夫だよ!!あっ、今の小町的にポイント高いかも♪」


八幡:「はいはい、悪いな無理言って・・・」


小町:「小町もお力になれなくてごめんね。それじゃあ、またね!!お兄ちゃん、結衣さんにもよろしく!!あ、後、お母さんが結衣さん連れてうちにいらっしゃいだって。」


八幡:「お、おう。また、結衣に言っておく。」


小町:「うん、わかった!!楽しみにしてるね」


さてとどうしたもんかな・・・他に頼めそうなやつはと・・・雪ノ下はこう言うの得意じゃないし、戸塚?は遠い大学に通ってるから無理か。他は・・・っていないな。しかし、こう考えると本当知り合い少ないな。ん待てよ、あいつなら・・・いやでも気乗りしないなぁ。でも、結衣のためだやむを得ないか・・・


翌日、俺は千葉駅前でとある人物を待っていた。待ち合わせ時間は13時に千葉駅前なのだがすでに時計は13時10分くらいを指している。

遅い・・・このまま放置プレイさせられるのかしらと不安になりそうになった時、ようやく今日のお相手が現れた。


いろは:「先輩〜!!お待たせしました。」


俺が気が進まないが呼び寄せたのは一年後輩の一色いろはだ。彼女ならこういうの得意だろうと言うことで呼んだのだが良かったのか少し不安になる。


八幡:「ようやく来たか。」


いろは:「来て早々そう言う態度ですか・・・まぁ、いいですけど・・・で?」


八幡:「で?って」


いろは:「はぁ・・・折角お洒落してきたのになんかないんですか?」


八幡:「いや、特には・・・」


いろは:「まぁ、期待してませんでしたけど」


とぷくっと頬を膨らませる。相変わらずあざとい!!

八幡:「でも、まぁ、似合ってるんじゃないか・・・」


いろは:「ふぇっ?はっ!!もしかして口説いてるんですか!!確かに少し先輩のこといいなぁと思っていますけど結衣先輩のことも大好きなので修羅場になるのは嫌なのでお断りさせていただきますごめんなさい!!」


八幡:「いや、口説いてないから・・・今日はその急に呼び出して悪かったな」


いろは:「あっ、いえ、大丈夫です。結衣先輩の誕生日プレゼント買いに行くんでしたね。何かお目当てのものとかあるんですか?」


八幡:「ネックレスとかだな」


いろは:「なるほど、わかりました。でも、どうして私を呼んだんですか?お米ちゃん呼べばよかったと思うんですが・・・」.

 

八幡:「小町にも頼んだんだが生徒会の仕事が忙しいからと断られたんだ。」


いろは:「なるほどです。じゃあ、一人で行けばよかったのでは?」


八幡:「いや、一人で行こうとレディースコーナーに行くと何故か店員にかなり警戒されてしまい逃げてきた・・・」


いろは:「ああ、未だに警戒されるんですね。それで、私に白羽の矢が立ったと言うわけですか。」


八幡:「そんなところだ」


いろは:「結局は風除けみたいなもんですね。まぁ、いいです。それでは早速いきましょう。」


と言いながら何故か腕を絡めてくる。やめて!!誰か見られた浮気者だと思われちゃう!!


八幡:「あのー、いろはすさんこれは?」


いろは:「折角のふたりきりのデートなんですからこれくらいいいじゃないですか〜。」


八幡:「流石に誰かに見られたらまずいだろ。万が一、由比ヶ浜になんかに見つかってみろ。修羅場だぞ、修羅場・・・」


いろは:「それはちょっと面倒ですね・・・わかりました。」


そう言うと絡めていた腕を離してくれた。ふぅ、寿命が縮まったぜ・・・


??:「おーい、八・・・」


んっ?今、結衣の声が聞こえたような・・・


八幡:「なぁ、一色・・・今、由比ヶ浜の声が聞こえたような気がするんだが・・・」


いろは:「えっ?何も聞こえませんでしたけど・・・ちょっと先輩怖いこと言わないでくださいよ〜。って、それより、未だに結衣先輩のこと苗字で呼んでるんですか?」


八幡:「いや、二人の時は名前で呼び合っている。外だと恥ずかしいから苗字で呼んでだけだ・・・」


いろは:「はぁ、そう言うもんですか。どうでもいいですけど・・・」


八幡:「どうでもいいんなら話を振らないでくれ・・・んじゃ行くか」


いろは:「はい、行きましょう」


俺たちは商業施設の方に向かって歩き始めた。


いろは:「でも、先輩がネックレスをプレゼントにしようとしてるのは少し意外でした。なんか、もっと適当な物プレゼントしそうなのに・・・」


八幡:「まぁ、去年は引っ越したばかりでお金なかったから大したもの上げられなかったし、一昨年は一昨年で受験勉強やらなんやらでプレゼントも買えてないからな。今年くらいは二年間の分も込めてプレゼントしてあげたかったんだ」


いろは:「へぇ〜、意外としっかりしてるですね。」


八幡:「意外って何?俺はこう見えてそう言うことはしっかりするタイプだ。それに、以前由比ヶ浜とデートした時にたまたま入ってアクセサリーショップで由比ヶ浜が欲しそうにしていたしな。」


いろは:「しっかり見てあげてるんですね。なんでその時買わなかったんですか?」


八幡:「値段がな・・・」


いろは:「なるほどです。・・・もし、私が先輩の彼女だったとしてもそのように考えてくれますか?」


八幡:「お、おう・・・多分だけどな。知らんけど・・・」


いろは:「そうですか・・・あっ、着きました。早速行きましょう!」


軽く頬を染めているように見えたが気のせいだろ


八幡:「でどこから見たらいいんだ?」


いろは:「・・・先輩の買い物なのに丸投げですかぁ」


八幡:「あまり行くことがないもんだからな。」 

いろは:「この間一人で行ったとか言ってませんでしたかー?」


八幡:「それはまた別のところだ」


いろは:「はぁ、そうですか。でしたらこのフロアから回りましょう。一階だけでも結構あるんですよ?」


八幡:「そうなのか?」


いろは:「ざっと、このフロアだけでも五件くらいはあります。」


八幡:「そんなに似たようなところがたくさんあるのか・・・」


いろは:「はい、一言にネックレスと言っても沢山ブランドがありますから。結衣先輩と見に行った時のブランド名わかります?」


八幡:「さっぱりわからん」


いろは:「はぁ〜、そんなことだろうと思いました。では、まずは私のお勧めブランドから行きましょうか?」


八幡:「悪りぃ、助かる」


そのまま特に知り合いと遭遇することなく、目的の場所に着いた。店内をぶらぶら見て回っていると色々な種類があることに気づく、ハートのチャームのやつや犬のチャームが付いたやつなどかなりの種類がある。


八幡:「なんかかなり種類があるな・・・」


いろは:「はい!これでも一部だけなんですよ。まぁ、この辺りのやつはぶっちゃけしょぼいので無視でいいです。」


八幡:「店内でそんなこと言っていいのかよ・・・」


いろは:「レジ前のショーケースを見に行きますよ」


八幡:「無視ですか。まぁ、いいけどよ」


一色は真剣な眼差しで一つ一つ商品を確認していくと何か思いついたように手をポンと叩いた。


いろは:「そう言えば、予算ってどのくらいなんですか?それでだいぶ変わってくるんですが・・・」


八幡:「5万円までくらいだな」


いろは:「結構マジな額ですね・・・」


八幡:「由比ヶ浜に喜んで貰いたいからな」


いろは:「うーん、結衣先輩は金額とかじゃないと思いますけど・・・では、これとかどうですか?」


と一色が指さしたのハートのデザインに中央にピンクのスワロフスキーがあしらわれた可愛らしいデザインのネックレスだ。


いろは:「結衣先輩に似合うと思うんですけどどうですか?」


八幡:「なんかイメージしてるのと違うんだよなぁ」


いろは:「そうですか?じゃあ、こっちのはどうです?」


お次はシンプルな板方のネックレスで真ん中に同じくピンクのスワロフスキーが埋め込まれている。

八幡:「近付いては来ているがすこし違うんだよなぁ」


いろは:「はぁ・・・先輩はどんなのをイメージしてるんですか?」


八幡:「ああ、シンプルな感じでその・・・ペアのやつをだな・・・」


いろは:「はい?なんでそんな重要な事先に言わないんですか・・・」


八幡:「少し恥ずかしいと言いますか・・・」


いろは:「なんと言いますか・・・相変わらずですね・・・それよりペアのネックレスを買いに行くのに他の女の子と行くとか何考えてるんですか」


八幡:「うぐっ、それを言われると痛い・・・」


いろは:「まぁ、ここまで来たら最後まで付き合いますけど・・・とりあえず、行きますか」


そう言うとツカツカと一色は歩き始めた。俺は追いかけるように早足で歩く。

しばらくすると目的の店に着いたのかそこで止まった。


いろは:「ここならペアのネックレス色々揃ってますよ。あっ、これとかいいと思いますよ」


と一色はショーケースにある一つの商品を指さした。

シンプルなデザインで合わせるとハートになる模様になっていて、こちらも真ん中にスワロフスキーが埋め込まれている。


八幡:「うーん、なんかハートが半分になってるのって離れていると半分に割れてるみたいでなんか嫌だな・・・」


いろは:「・・・面倒くさっ。じゃあ、これはどうですか?」


次に指差したのは少し捻りを加えられたデザインで女性用の方にはチャームの先にスワロフスキーの石が付けられていてワンポイントになっていて中々良いデザインだった。


八幡:「これいいな」


いろは:「じゃあ、取り出してもらいましょう。すみませーん、これ見せてもらえませんかー?」


店員:「こちらの商品でございますね。少々お待ちください」


と手際よく商品を取り出してくれた。


いろは:「ありがとうございまーす。」

と受け取ると何故か自分の首元に着ける


いろは:「先輩ー、どうですか?」


八幡:「いや、なんでお前がつけるんだ?」


いろは:「先輩が結衣先輩がつけた時のことイメージしやすいようにです!でどうです?似合いそうですか?」


一色に結衣を重ねて想像してみる。うん、いいな。結衣によく似合いそうだ。


八幡:「これにするわ。」


店員:「ありがとうございます。折角なのでサービスで名前の刻印をしているのですがどうしましょうか?」


八幡:「お願いします・・・」


店員:「かしこまりました。では、こちらの紙に刻印したいお名前をお書きください。」


八幡:「はぁ、わかりました」


いろは:「先輩ーどうせなら私が書いてあげます♪先輩のセンス期待できないですし」

と俺の答えも聞かずに一色が紙に名前を書き始める。

『Iroha♡Hachi』


八幡:「一色、ちょっと待て。なんでお前の名前になってるんだ」


いろは:「チッ、バレましたか」


八幡:「バレバレだから・・・やっぱり俺が書くわ。」

俺は紙に名前を書いた。


店員:「では、1時間ほどで出来上がりますのでご用意できましたらこちらのお電話番号にお電話させていただきますね。」


八幡:「お願いします・・・」


いろは:「私のおかげでいいのが買えましたね!」


八幡:「そうだな。助かった。」


いろは:「と言うことで出来上がるまで時間がありますので何かご褒美ください!!」


八幡:「まっ、それくらいいいけどどうする?帰る?」


いろは:「はっ?帰りませんよ。てか、出来上がるの待たないといけないじゃないですか!」


八幡:「わかったよ・・・行きたいところあるの?」


いろは:「私、甘い物食べたいじゃないですか〜」


八幡:「いや、知らんよ」


いろは:「むぅ、あっ、そうです。あそこ行きませんか?ほらフリーペーパー作った時に行ったお洒落なカフェ」


八幡:「ああ、あそこか。いいんじゃねぇか。時間潰すのにちょうどいいし・・・」


いろは:「じゃあ、先輩の奢りですね!」


八幡:「付き合ってもらったからな。それぐらい出すよ」


いろは:「はい、ありがとうございま〜す♪では、早速行きましょう!!」


そう言って、一色はズンズン進んでいく。前に通った道を進んでいくと木目パネルの外装、外光を取り入れるためか大きな窓などあの時に見た風景が目の前に飛び込んできた。一つだけ違うところがあるとするならば黒板にチョーク書きのメニューが違うところぐらいだろう。


いろは:「そう言えば、あの時はちょうど書記ちゃんと副会長が出てきたんでしたっけ・・・」


一色は懐かしむようにぼそっとつぶやいた。


八幡:「そうだったな・・・」


いろは:「あれからもう随分経ちますね。なんか懐かしいです。あの時は卓球したり、ラーメン食べたりして結構楽しかったです。」


八幡:「まっ、採点は100点満点中10点だったけどな。」


いろは:「よく覚えてますね。」


八幡:「記憶力だけは自信があるからな」


いろは:「そうでしたね。では、入りましょうか」


八幡:「おう」


中に入ると奥の方にあるスタンダードなソファ席に案内された。


いろは:「少し、疲れました。」


八幡:「今日は悪かったな、付き合わせて」


いろは:「いえ、大丈夫です。それなりに楽しめましたので。でも、やっぱり彼女さんのプレゼント買いに行くのに他の女の子と行くと言うのはどうかと思いますけどね。」


八幡:「うぐっ」


いろは:「そんなんだといつか結衣先輩に愛想尽かされますよ。」


八幡:「それは大丈夫・・・だと思う。」 


いろは:「はぁー、なんで少し自信なさがなんですか?そこは、大丈夫だってビシッと言って欲しかったです・・・・じゃないと諦められなく・・・」

と語尾が弱まり聞き取れなかった。


八幡:「なんか言ったか?」


いろは:「なんでもないです!!あっ、来ましたよ♪」


これで話は終わりとばかりにとりわけ明るく答えた。


八幡:「そうか・・・」


その後は一色の他愛もない話に相槌を打ったりしていると携帯にお店から連絡が入った。


八幡:「出来たみたいだし、そろそろ行くか」


いろは:「あっ、私はここで帰ります。受取りくらい一人でできますよね?」


八幡:「ん?そうか、じゃあ、駅まで送るわ」


いろは:「ありがとうございます!」


カフェから出ると来た道を引き返し駅前まで向かった。


いろは:「では、私は帰りますね。先輩、今日は楽しかったです。ありがとうございました。」


八幡:「いや、付き合ってもらったのは俺のほうだから、今日は助かった。さんきゅな」


いろは:「はい!また何かあったらお手伝いしますね。ただし、次はちゃんと結衣先輩に言ってからにしてください。修羅場になるのは嫌ですので」


八幡:「んっ、悪かったな。」


いろは:「あっ、先輩」

とちょいちょいと手招きされたので一色に近づいた。するとグッと服の裾を引っ張りちょうど俺の耳元に一色の顔が近づくとぽしょぽしょっとした声でこう囁いてきた


いろは:「もし、結衣先輩に愛想尽かされたら先輩の彼女になってあげてもいいですよ。」


そう言うとパッと手を離して数歩ほど距離をとって、悪戯が成功した時の子供みたいな笑顔を向けられた。俺は少し照れ隠しのためにそっぽを向きながら

八幡:「へっ、愛想尽かされることなんかねぇーよ」


いろは:「そうですね・・・結衣先輩ならきっと先輩を嫌いにならないと思います。では、先輩、また大学で!」


八幡:「気をつけて帰れよ」


別れの挨拶を交わすと一色は駅のホームへと向かった。少し距離が空いたところで不意にくるりと振り返り一色が小さく手を振ってきた。俺はそれに軽く手を上げて応え、一色に背を向けて商業施設施設の方に向かった。


日が沈みかけた帰り道を歩きながら結衣の誕生日プレゼントをどうやって渡そうかなどを考える。まずは当日までの隠し場所は本棚にでも置くか。となると渡し方だなぁ。普通に渡すかサプライズ的なことをやるか・・・うむぅ、悩みどころだ。などと考えていると自宅マンションの近くに着いていた。ふと、自室の方を見ると薄暗くなってきているのに明かりが付いていないことに気づく


八幡:「結衣のやついないのか?」


ぽそりと独りごちる。

まぁ、夕飯の買い出しにでも行っているのだろうと特に気にかけず鍵を開けようとドアノブに鍵を差し込む。普段ならカチリという手応えがあるのだが今日はなかった。


八幡:「ったく・・・鍵閉め忘れて出かけたのかあいつは・・・ただいま」


ドアを開け、薄暗い狭い廊下を歩きリビングに向かい、電気をつける。


八幡:「うおっ、居たのかよ。部屋にいるなら電気くらい・・・どうしたんだ、目が真っ赤だぞ?」


そこには泣き腫らしたのか目を真っ赤にしてテーブルに突っ伏している結衣の姿があった。


結衣:「八幡・・・おかえり」


弱々しく結衣が答えた。


八幡:「お、おお、それよりどうしたんだよ」


それから数秒ほど間があり、沈黙に耐えかねで何か言葉にしようと口を開きかけると不意に結衣が口を開いた。


結衣:「今日の用事って・・・なんだったの?」


八幡:「それは・・・その・・・」


思わず口をつぐむ


結衣:「言えないようなことなんだ。そうだよね・・・私のデート断っておいて・・・」


そこで、結衣は一つ二つと軽く呼吸をしてから少し震えた声で言葉を紡いだ


結衣:「私のデート断っておいていろはちゃんと・・・いた・・・もんね」


八幡:「っ、それはだな」


結衣:「聞きたくない!!どうして、どうしてなの!!最近ずっと忙しいからとかバイトでとかでなかなか一緒にいる時間なかった、もしかして、それもいろはちゃんとデートしてたの!!私よりいろはちゃんの方がいいの!!」


結衣はそのまま声を出して泣き始めた。


八幡:「そんなことあるわけないだろ!!」

思わず語気が強くなってしまった。

ビクッと結衣が肩を震わせ縋るような問いただす俺を見てきた。


結衣:「じゃあ・・・なんで・・・今日、私に内緒でいろはちゃんと・・・」


八幡:「うっ、それは・・・」


結衣:「やっぱり言えないんだ・・・私に」


そこには諦めに似たような感情が入り混じっていた。

俺はどうしたもんかと次の返答を探していた。その間結衣も何も喋らず気まずい沈黙が流れた。数秒か数分か分からないがその沈黙が何時間も続いてるような錯覚に襲われる。

すると結衣が立ち上がった。


結衣:「もういい・・・私、八幡に嫌われたくないから苦手な料理も頑張った。家事もしっかりした。でも・・・」

とまた結衣は大粒の涙を浮かべた。


結衣:「こんなに八幡のこと好きなのに、八幡はいろはちゃんと・・・」


八幡:「結衣・・・本当に一色とはなんともないんだよ・・・」


結衣:「そんなのに信じられないよ・・・今日のこと話そうとしない癖に信じる方が無理だよ」

と言い部屋から出て行こうとする。


八幡:「待てよ!!」


と思わず結衣の手首を強く握ってしまう。


結衣:「痛い!!」


八幡:「あっ、悪りぃ。ああ、もうわかったよ。理由教えるからちょっと目をつぶってくれ・・・でそこに座ってくれ」

とソファーを指さす。


結衣:「うん・・・わかった」


案外素直に従ってくれた。


はぁと軽くため息をつき頭をガシガシかく。そして、カバンにしまってあった箱を取り出し、ネックレスをつまみ上げる。


そのネックレスを結衣の首元につける。


八幡:「もういいぞ・・・」


俺は照れ隠しのためにそっぽを向いて頬をかいた。

結衣は何事かと目を開けて自分の胸元に目をやった。


結衣:「これって・・・」


八幡:「少し早いけど誕生日おめでとう・・・」


結衣:「ふぇっ?えっ、えっ、もしかしてこれを買うために!!」


八幡:「そうだよ。折角誕生日にサプライズしようと思ってたんだがな。こうなったら仕方ない・・・」


すると結衣は顔を真っ赤にしながら


結衣:「わーっ、わーっ、八幡ごめんね。私、ものすごい勘違いしてた。そ、そうだよね〜、八幡が浮気する度胸も甲斐性もないよね〜あはは、私、なんか恥ずかしくなってきた」


八幡:「なんか、さりげなくディスられた気がするが・・・これでわかってくれたか」


結衣:「うん、ありがと、八幡♪」


八幡:「どういたしてまして・・・」


すと結衣が立ち上がり、夕日が差し込む窓を背にしながら聞いてきた。


結衣:「その・・・似合うかな?」


俺は結衣の胸元に下がったネックレスと結衣の顔を見合わせながら答えた


八幡:「ああ、よく似合ってるよ」


結衣:「えへへ〜、ありがとう。」


八幡:「それと裏見てみろ」


結衣:「裏?」


結衣がネックレスの裏を見る。そこには

『YUI♡HACHI』

と刻印がなされている


結衣:「わぁ、これって、えへへ〜、ありがとう、八幡。大好き!!」

と俺に抱きついてきた。


八幡:「お、おう。俺も、結衣のこと・・・大好きだよ」


結衣:「知ってる〜」


八幡:「そうかよ。その・・・なんだ。心配かけて悪かったな」


結衣が抱きついた姿勢のまま顔をだけ上げて恨み節をぶつけてきた。


結衣:「本当だよ!本当、不安で不安で仕方なかったんだからね!!次からは絶対にやめてね。本当、昔からそういうところ変わらないんだから少しは私の気持ちと考えて行動してほしいな」


八幡:「悪かったよ」

と頭をポンと叩き頭を撫でてやる


結衣:「えへへ〜、八幡のそれ好き〜」

とさっきより強く抱きついてきた。


八幡:「おお、そうだ。これ、実はペアネックレスなんだよ。ほれ」

ともう一つの男性用のネックレスを取り出す


結衣:「ペア?そうなんだ。えへへ、嬉しいなぁ。でも、八幡ペアは恥ずかしいからやめてくれって言ってなかった?」


八幡:「それは、お前が服見に行くごとにペアルックの服ばかり勧めてくるからだ。流石にそれは恥ずい・・・」


結衣:「むぅ、みんなしてるのに」


八幡:「ほう、そのみんなというのは誰のことだ?」


あっ、やばっと結衣が変なスイッチを入れてしまったとばかりに思ってしまい、話を逸らしてきた

結衣:「そ、そうだ〜!八幡、それつけてあげるよ!」

と俺の手からネックレスを受取りつけようとしてくれる


八幡:「いいよ、自分でやるから」


結衣:「いいからいいから」


結衣が抱きつくようにネックレスの留め具を外し首元に手を回してくる。結衣の顔が目の前に迫ってきて、高校の時よりも少し大きくなった胸が目の中に入ってくる。あまり凝視してはいけないと顔を逸らそうとしたが「動かないで」って言われてしまい渋々そのままで待機することになった


結衣:「よしっ、できた!!お揃いだね」

とそのまま首元に手をまわし、唇を重ねてきた。


八幡:「んっ!」


唇はゆっくりと離れて上目遣いで照れ笑いを浮かべている。反則だろそれ・・・可愛い過ぎる。結衣は名残惜しそうに手を離すと何かを思い出したように声を出した。


結衣:「あっ、ご飯作るの忘れてた・・・」


八幡:「ちょっ、まじかよ・・・今から作るとなるとだいぶ遅くなるな」


結衣:「あはは〜、ごめんね」


八幡:「仕方ない。今日は外に食べにいくか。その・・・今日、デートできなかったしな。今日は俺が出すよ」


結衣:「いいの?お金大丈夫?」


八幡:「それは心配するな。そのために働きたくもないのに必死で働いてお金を残しておいたからな」


結衣:「ん?じゃあ、バイトいっぱい入れてたのこのためだったの?」


八幡:「付き合い始めてからまともに誕生日祝えてなかったからな。今年は精一杯祝ってあげたかったんだ」


結衣:「八幡・・・」


うるうると瞳を涙で溜めながら答える結衣

八幡:「ちょっ、涙拭けよ」


と涙を拭ってやる


八幡:「俺はお前の笑顔が好きなんだよ」


やべっ、今めっちゃ恥ずかしいこと言ってしまった。


結衣:「ふぇっ?うん♪」

と結衣は大人びた中にもあどけなさが残る最高の笑顔を浮かべた。思わず俺はその笑顔を見惚れてしまった。多分、今まで見た中でも一番の笑顔だったように思う。


とまぁ、こんな感じで俺と結衣は今でも仲良く、時に喧嘩して仲直りしてと上手くやっていけている。

こんな関係がいつまで続くか分からないがただ人生で一番最高な時期は今なんだと言う持論はあながち間違っていないのかもしれない。

いや、多分少し違うだろ。結衣と付き合い始めるまでは過去も辛いことばかりだったが今ではこの子といる時間は幸せなものであるに違いないから過去も多少は幸せなのかもしれない。

未来に関しては不安だらけでしかないが過去は素敵な思い出もたくさんあるに違いない。

それに気づかせてくれたのは間違いなく、由比ヶ浜結衣と言う

『人の気持ちを思いやれてくれて優しく受け止めてれる強さを持っている』

彼女のおかげだろう。


fin.


後書き

はじめまして、光輝と言います。はじめてSSと言うものを書いてみました。まずはここまで読んでいただいた方本当にありがとうございます。文章についてははっきり雑で勢いだけで書いたような部分だけばかりで然程クオリティが高いものではなかったかと思います。
今回は由比ヶ浜結衣と比企谷八幡が同棲したら多分こんなこと起こり得るだろうなと言う思いで書きました。今回は八幡の視点で書きましたが結衣視点のやつも作ってみたいと思っていますのでもし、これを読んでいただいて少しでも面白かった楽しかったと言うのがあればそちらも読んでいただけると幸いです。
稚拙な文ではありましたが初めて書いて書き終えたのは良かった思っています。
まだまだ右と左も分かりませんがこれからも作っていけたらいいなと思っています。
それでは、読んでいただきありがとうございました


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