マニラの惨劇(前編)
劣勢が続く世界で、覇権を狙い大国は争う。
艦娘は人間を理解しようとするが人間はあまりに愚かすぎた。
その一部似すぎないが、艦娘に多くの影響を与えた出来事を。
:バットエンド注意
:キャラ崩壊
1923年
世界は深海棲艦による侵略を受け、半永久的な休戦に合意し抵抗していた。
しかし、共通の敵が存在していてもなお人類は争うことをやめなかった。
帝国率いる『鋼鉄結束同盟』
合衆国率いる『自由民主連合』
連邦率いる『第五インターナショナル』の三陣営は深海棲艦と戦いつつ、軍事・経済で新時代の覇権を求めた。
そんな中、列強でありながらいずれかの陣営に属さずにいた国があった。その名は『皇国』である。
極東に位置するこの国は合衆国や連邦と因縁を抱えていたが新興国として現れた帝国を警戒し、和解。
皇国はフィリピン等の東南アジアの管理権を譲歩され一大勢力圏を築いた。
しかし、そんな勢力圏は今、崩壊しようとしていた。
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【1928年 フィリピン自治共和国・首都 マニラ】
皇国の支配下に置かれるフィリピンでは独立の動きがあった。
そのような動きを消すべく派遣された部隊がいた。
横須賀鎮守府所属の第9水雷戦隊だ。
神通を旗艦としたこの部隊はマニラ独立運動を阻止すべく本土よりやって来た。
その部隊を率いる男の名は松川勝和(以降、提督)。
彼らをマニラの人間を優しくは迎えなかった。
「提督、鎮守府より伝令です。マニラに潜む反乱分子は跡形もなく片付けよ………」
神通は淡々と伝える。それは彼女にとって、とても小さな反抗であった。
普段の彼女は真面目であるが目に光が常にあった。
しかし、今の神通にはその光がない。
兵器のようにただ命令されたことをやるだけであった。
そんな神通に目を向けずに二階から見える街を見る提督。彼もまた、本土からの命令を実行するために心を殺す。
「憲兵より北部にて蜂起の予兆ありと伝わっている。お前たちは北部沿岸を中心に巡回を実行せよ」
はっ、と感情のない返事と共に扉が音を鳴らす。
彼らにとって感情はいらない。これから、そんな感情など微塵も必要ないからだ。
上陸から一週間過ぎた。あれほど予兆ありと言われていた反乱も微塵も感じない。
それは占領前と同じようであった。
【マニラ海軍基地】
駆逐艦が並ぶ軍港に、似合わない少女たち。
彼女たちも同じ駆逐艦と呼ばれていた暁型駆逐艦の暁・響・雷・電である。
4人は小さな体で大きな荷物を運んでいた。軍属である彼女たちにも任務は必ずやってくる。
「暁・響・雷・電、ちょっといいか?」
提督に呼ばれた4人はなんだろうと心を踊らす。
彼女らにとって今回が初任務であった。
「クラベリアで反乱だ。直ちに向かい、鎮圧せよ」
それは初めてにしてはあまりにも重すぎた。
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悲鳴と炎に包まれたクラベリア。
地獄をつくったのは暁・響・雷・電であった。
暁は意識を失い、
響は現実から逃れる為に目を背け、
雷は泣き崩れ、
電は地獄と化した町を見続けた。
自分がやったんだ。
幼い子供にはあまりに重すぎる責任。
いったい何人を殺めたのか。
町は燃え続ける。それはまるで彼女らに怒っているように。
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私は無力だ。もちろん分かっている。提督も同じなんだと。でも、許せない。なぜ従い続けるのか。
少しは反抗してはどうかと。
だから私は提督の背中を押せない自分も許せない。
きっと、この思いは一生抱え続けるだろう。
「提督、私はどうすればいいのでしょうか………
何もできないことに心を痛める神通。
彼女が思うより事態は悪化する。
《説明》
『松川勝和』
階級は大佐。父が大本営海軍部のお偉いさんの為、歯向かえずにいる。母を幼い頃に流行り病で亡くす。
『第9水雷戦隊』
鎮圧を目的として再編された部隊。
高練度艦を除いたこの部隊は事実上の囮でもあった。
横須賀鎮守府提督に嫌われている松川を遠ざける目的も少なからずある。
『クラベリア』
ルソン島北部の町。
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