2023-03-25 05:51:41 更新

概要

山田君から貰った同人誌を巡って、苗木くんのことが大好きな78期生がわちゃわちゃするお話です。
初投稿ですので至らないところがたくさんあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。


前書き

江ノ島「苗木を倒したい、という気持ちは、他の生徒以上のものだと思う」


※ダンガンロンパ1のネタバレあり。NOコロシアイ学園生活。


会場アナウンス「あー、あー。えー、マイクテス、マイクテス」


会場アナウンス「オマエら、おつかれさまです!」


会場アナウンス「これにて絶望マーケット11037回を終了します。こんなきつい汚い臭いの3kイベントが次回もあるなんて絶望的ですが、私さまは待っているわよ人間ども! あなたたちのような希望にあふれた人間を! 」


会場アナウンス「というわけでオマエら、五時までには家に帰ってとっとと次の同人誌を描いてこい!あ、ちなみにぃー会場で頒布した紙袋は底に切れ込みを入れておいたんだ! 帰り道でまき散らしてぜっつぼーしてね! 」キャルン☆


フザケンナコラー!!!ダベエエエエ!!!


苗木「あはは、最後まで凄い盛り上がりだね」


山田「それはもう!絶望マーケットは希望ヶ峰学園で一万回以上も続いている格式高いイベントですからな!」


山田「年に数回だけ学園の内外から様々な趣味嗜好を秘めた同士たちが一堂に会し、同人即売会、ライブ、作品展示など・・・超高校級の生徒たちのイベントで盛り上がる、まさに才能のフェスティバル!」


山田「ただ、あのようなマイクパフォーマンスをするようになったのは今回からですが」


苗木「そうなんだ? ボクは今回が初参加だから知らなかったや。運営の人が変わったのかな? 」


山田「噂によればあのようなパフォーマンスをしているのも超高校級の生徒だそうですな・・・と、それはともかく苗木誠殿!今回は本当にお疲れ様ですぞ!! 」


苗木「うん、山田君もお疲れ様!相変わらず凄い人気だったけど無事に終わってよかったね」


山田「いえ、今回の成功は拙者の力のみならず。苗木誠殿のご尽力の賜物ですぞ?」


山田「なんせモデル、アイデア、トーン貼り、ペン入れの協力に始まり、今日の即売ではコスプレをして売り子までやっていただきましたので!」フンス


苗木「ボクもできればひらひらのスカートじゃなくて男の恰好がしたかったな・・・これ、山田くんの本に登場するキャラのだよね? 」


山田「その通りですが拙者の同人誌に出てくる男は服を着ませんから、今より過激になりますぞ? 」


苗木「待って、僕をモデルにした本もあったよね? それも服を着てなかったの!? 」


山田「ドキィッ! うぅ・・・許してくだされ苗木誠殿・・・! これは僕の意志ではないのです・・・!!」


山田「苗木誠殿においては、ただでさえ放課後に一緒に過ごす権利を賭けて血みどろの争いが起きるほどのお方。そのような乱世の人を、この山田一二三が独り占めした代償で、ああするほかになく・・・」


苗木「そ、そうなんだ? 言ってる意味はよく分からないけど・・・でもボクも、久しぶりに山田君と過ごせて楽しかったよ」


山田「苗木誠殿・・・」


苗木「それに、ボクたちで一生懸命描いたこの本にボクの名前も載せてくれたよね?それもすっごく嬉しいな」


苗木「だってこの本の表紙を見てるとさ、制作中に山田君とした色々な作業や会話のことを思い出すんだ。それってボクと山田君が力を合わせて頑張ったことの何よりの証明だからだと思う」


苗木「だから・・・こちらこそありがとう山田君。ボクにとってこの本は君との絆のカケラだよ」


山田「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ苗木誠殿!幸運!希望!希望殿!超高校級の希望殿!!!!! 」


苗木「あはは、なんてまたクサイことを言っちゃったかな? 」



???「まったくだよ!!」



苗木「うわぁ!・・・ってお前は確か!」


モノクマ「そうです、ぼくモノクマ。絶望マーケットの平和と規律を重んじる未来のクマ型ロボットです」


山田「よろしい。ならば戦争だ」グフフ


モノクマ「おやおや?平和を愛し、泣く子の声を聞くぼくの耳が物騒な声を聞いたよ?」ジロッ


苗木「や、山田くん!ちょっと落ち着いて漫画のセリフ言うのやめよう!?モノクマの顔が赤くなってるから・・・って、物騒な爪を出すなよ!」


モノクマ「キャー山田君やめてー!!」


苗木「モノクマだよ!」


モノクマ「モノクマはぼくだよ!」


苗木「知ってるよ!!」クルッ


苗木「・・・ってあれ?モノクマが後ろにいる・・・?」


モノクマ「うぷぷ。どうしたのかな苗木クン? やっほー」


モノクマ「やっほー」


苗木「やまびこか・・・じゃなくて、前にも後ろにもモノクマがいる。モノクマって一体だけじゃなかったんだな?」


モノクマ「失礼な!ボクを数えるときは一体じゃなくて一匹だよ。それにボクのスペアが複数体存在することはちゃんと教えてあげたはずだよ?」


苗木「自分だってスペアとか複数体とか言ってるじゃないか・・・あっ、もしかして一人一冊までの山田君の同人誌を何回も買いに来てたとき!」


モノクマ「しょぼーん・・・ボクはちゃんと機体番号も見せて別個体だって証明したのに、冷やかしだと思われたんだよね。結局買えたのはモノクマと姉妹で合わせて3冊だけ」


モノクマ「あーあ。この夏は買い占めた同人誌を競売にかけて、冬眠の時期に美味しいものを食べるはずだったのになー」


苗木「追い返して正解だったよ」


モノクマ「でもさ。あの残念なら姉ならともかく、このぼくがわざわざ本丸を飛び出して並ぶなんてさ。しかもあんな男子便所の待機列みたいな野郎まみれのくっさい列に・・・」


モノクマ「うぷ、うぷぷぷぷ。久々に最高の絶望を味わったぜぇ!!」ズギャーン!!


苗木「ほら、山田君。もうそろそろ段ボールの片づけしないと間に合わなくなるよ」


モノクマ「しかも今みたいに苗木くんに無視されましたしね・・・そりゃたしかに変装はしていたさ。でもぉ、あの残念な姉ですら気づいてもらえたの、に、なー----」ギュウウウウウウウウウ


苗木「痛い痛い痛い痛いっ!!!!!なんで!?なんでボク、モノクマ二体にサンドウィッチみたいに抱きかかえられてるの!?」ジタバタ


モノクマ「だから匹で数えろっつってんだろがぁぁぁぁぁ!!おらぁ、とっとと会場から出ろ!!そんで次来るときまでに平凡な男子生徒がクラスメイトの超絶美人ギャルに弄られる話描いて持ってこい!!!!」ポーイ


ウワアアアアアア.......


モノクマ「・・・まったく」


モノクマ「君との絆のカケラ、ねぇ」


モノクマ「もしそれのせいでみんなの関係が崩壊したら・・・うぷぷ! 苗木クンのいい顔が見れるかな?」ハァハァ・・・


山田「苗木誠殿ー!!拙者一人にこの量の片付けは死ねる!プリーズ、カムバック!!ヘルプミー!!」


モノクマ「コラ、そこ。考えごとしてるのにうるさいよ!もう・・・」


モノクマ 「5時までに出ていかないとオシオキね」


 山田「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?」




――――――――――――――――――



苗木「ただいまー・・・」ガチャ


苗木「って言ってもボクの部屋に帰って来たんだから返事なんてないけどね。ふー、よいしょっと」ドサッ


苗木「あー、疲れ切った体にベッドが染みる・・・・・・・・んー、やばい。今完全に瞬きするの止めてた」


苗木「まだ18時か・・・汗もかいたし、このまま寝るのはダメだよな。ボクの形の汗染みが魚拓みたいにうつったシーツなんて見たくないし」


ソレハチガウヨ!


苗木「えっ?」


シーン・・・


苗木「今なにか聞こえたような気がしたんけど・・・ 外の声かな?でも寮ってたしか防音だったような・・・」


苗木「まぁ、いっか。とにかくシャワーを浴びたら食堂に行こう。あ、ランドリーにコスプレの衣装も出しにいこう」


苗木「そしたらちょうどみんなが食堂に来る時間になるだろうしね。あー、みんなが絶望マーケットでなにしてたとか聞きたいなぁ。今回ずっと山田くんといたし、全然回れてなかったや」


苗木「そういえば・・・」チラッ


パンパンに膨らんだボストンバック「」ギチギチ


苗木「山田君の同人誌・・・今日のお礼とかいってくれたけど、こんなには置いとけないんだよなぁ・・・」


苗木「どうしよう・・・男子で誰か貰ってくれる人いないかな・・・」チラッ


パンパンに膨らんだボストンバック「」ギチギチ


苗木「・・・・・・・」


苗木「どうせだし荷解きもついでにしちゃお・・・っと」





???「・・・・・・・」ジーッ・・・




――――――――――――



食堂「」ガヤガヤ


苗木「(つい同人誌を読んでいたら19時になっちゃた・・・腐川さんの小説もだけど、超高校級の人の作品って読み出したら止まらないんだよなぁ)」


苗木「それにしても、相変わらず夕方は混んでるなー」キョロキョロ


十神「! 騒ぐな貴様ら!苗木が来たぞ!」


ナエギダト!? ナエギーオソイゾコッチコイー!ナエギクン!ナエギッチ!マタセオッテ・・・ 


苗木「あれ、クラスのみんなが集まってる席がある!やった、みんなまだ食べてたんだ!」


苗木「ご飯を選ぶ前に、先に挨拶してこよう」テクテク


「ばか、呼ぶ前に隠しておけ!」


「すみません・・・」


「うぷぷぷぷ・・・」


苗木「みんなー」


前園「こんばんは苗木くん!!」


苗木「こんばんは舞園さん。なんか、夜なのにすごい元気だね?」


舞園「ふふ、どうしてだと思います?」


苗木「(どうしてだろう?)」


舞園「秘密です」クス


苗木「もう、また心読んでるし・・・舞園さんには敵わないなぁ」


舞園「エスパーですから♪」


苗木「あはは・・・」


苗木「(かわいい・・・ってまた心を読まれる前に席につこう)」


苗木「あ、桑田君。隣に座るね」


桑田「んな言葉要らねーって!来いよ」


苗木「うん!」


苗木「あ、でもご飯をまだ貰ってないや」


桑田「まじかよ。お前どんだけオレの横に座りたかったわけ?」


苗木「それは違うよ!」シャキーン


桑田「はっきり言うな、傷つくわ!」アポ!


苗木「ご、ごめん・・・いつもの癖でつい」ホッペカキカキ・・・


苗木「(桑田くんも話してて楽しいな)」


セレス「あら、でしたら私の隣はいかがでしょう?」


舞園「!」


苗木「あ、セレスさん。こんばんは!」


セレス「こんばんはです、苗木くん。それで、返事を伺ってもよろしくて?」


苗木「あ、うん・・・でも、セレスさんの隣にはもう山田君と葉隠くんがいるよね?」


葉隠「どうした、苗木っち?俺の席に座りたいんか?それなら親友価格の4万円で譲ってやるべ!」


セレス「余計なことを言わないでくださる?心配に及びませんわ、苗木君」パンパン


セレス「山田君、苗木君に譲ってあげてください」ニコッ


山田「ははっ、なんなりと」ササッ


苗木「や、山田君!いいよ、そんなことしなくても!」ガタッ


山田「止めてくださるな、苗木誠殿・・・!これもまた拙者が絶望マーケットのために支払った代償ですので!」


苗木「いやそうじゃなくて、土下座のことだよ!?」


山田「拙者のことを思うなら、どうか・・・」ドゲザ-


葉隠「苗木っち!俺からも頼む!」


苗木「葉隠くん!・・・もなんで土下座してるの!?」


葉隠「いやな・・・本当なら今ごろは絶望マーケットで荒稼ぎした金で大儲けしてた・・・はず、なんだべ」


葉隠「でもいざ当日になるとなんでか客が来なくてよ・・・途中から流石にヤバい気がして商いを変えたんだべ」


苗木「まさか・・・」



葉隠「で、その売り物を仕入れるための資金をセレスっちから借り入れたんだべ」ダベ-



苗木「・・・ああ、うん。大体わかったよ」スッ


葉隠「ちょっ、なに座り直してんだべ!?人の話聞いてたんか!?」


舞園「・・・」フンス


セレス「おい」


葉隠「ちょ、ちょっと待て!そもそも元はといえば苗木っちが俺の誘いを蹴って、山田っちについたのが悪いんだぞ!?苗木っちの集客効果があれば、俺は返せた・・・いや大儲けしてたはずなのに!」


苗木「(あはは・・・セレスさんは相変わらずって感じかな。葉隠くんも、まあ・・・相変わらず、うん)」


苗木「(あ、対面の席に江ノ島さんがいる)」


江ノ島「・・・うぷ」


江ノ島「うぷ。うぷぷ。ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!! なになに!?デブとクズが土下座してる!しかもクズの方は逆切れしてるしぃー!あー、笑いすぎてお腹痛い!!」


戦刃「じゅ、盾子ちゃん・・・あんまり笑ってあげたらかわいそう・・・」


江ノ島「はぁー?なにあたしに意見してくれちゃってんの?残姉のくせに生意気よ」キリッ


江ノ島「てかそんなに言うならお姉ちゃんが止めれてくれば?かわいそうだと思うくらいには情があるんでしょ?」


戦刃「えっ」


江ノ島「ま、行かないか。だって本当にかわいそうだと思ってるんならアタシじゃなくて向こうを止めてるはずだもん。てことはお姉ちゃんもほんとは、どうでもいいと思ってんでしょ? 」


江ノ島「なのに口ではクラスメイトが心配なフリをしてー・・・それってさ、誰の真似なわけ?」


苗木「それは違うよ!」ビシィッ!


戦刃「! 苗木くん・・・」


江ノ島「はぁ、出た出た。ていうかぁー違うってなにがー?」キャルン


苗木「戦刃さんのことだよ。そもそもこれはボクが原因で起きていることなんだから、彼女が責められる謂れなんてどこにもない。それに戦刃さんがクラスのことを思ってる優しい女の子だってこともみんなちゃんと知ってるよ」


苗木「(たまに見せる笑顔が素敵だし)」


苗木「だから山田君もそろそろ顔を上げて・・・お願いだから」


苗木「(あ、良かった。立ち上がってくれた)」ホッ


戦刃「・・・」///


江ノ島「~~~~~~もう!ほんっとにあんたって邪魔くさいわね!喋ってるとマジでムカつくわ」


江ノ島「でもそうだよね!苗木くんが来たせいでクラスメイトが土下座するなんて光景が生まれたんだもんね!」


江ノ島「苗木よ、褒めて遣わす。なかなかの絶望じゃ。」エッヘン


苗木「うっ・・・」


苗木「(江ノ島さんは・・・正直よく分からない。少なくとも嫌われてはないみたいだ)」


大和田「おうコラ、こいつのせいなわきゃねーだろ」ビキビキ


苗木「わっ、大和田君!いつの間に後ろに来てたの?」


大和田「ったく、しっかりしろよ苗木!おめーが不甲斐ないツラぁ見せやがるから飛んできてやったんだろーが!」


石丸「うむ、兄弟の言うとおりだ」ハッハッハ


苗木「! 石丸く・・・ん?」クルッ


石丸「むっ、どうしたのだい苗木くん?ずいぶんと歯切れが悪いようだが、人に何かを言うときはもっとはきはきとした言動で・・・」


苗木「いや、どうして石丸君は椅子を持ってきてるのかなと思ってさ。あと大和田君も」


大和田「・・・詳しいことは兄弟が話す」


苗木「えっ?」


大和田「俺はただ兄弟の覚悟を尊重して、ケツを持ってやるだけだ」


苗木「(大和田君は頼れるなぁ)」


石丸「さて、いいかね諸君!苗木先生の近くでご飯を食べたいと思うのは構わない。しかしそうでなくても僕たちは同じ釜の飯を食べる学び舎のよき同胞だ。争い合わずとも苗木先生とご飯は食べられる!私心を起こして、苗木先生を困らせるようなことはやめたまえ!」ビシィッ!


苗木「石丸君・・・」ジーン


苗木「(石丸君がいるだけで安心感が凄いよなぁ)」



石丸「・・・ただ、僕としても出来ることなら苗木先生の近くで食べたい!」



苗木「ん?」


舞園「そうですよね」


桑田「まあ、な」


戦刃「・・・」コク


石丸「しかし円卓を囲むとなると苗木くんの近くに座れるのは隣り合う二人だけとなってしまう!」


セレス「その通りですわ」


江ノ島「ま、争いの発端もそこだしねー」


苗木「石丸君?」


大和田「兄弟・・・」ジーン


石丸「ゆえに!僕は提案する!苗木先生の近くで食べたいものは・・・」



石丸「苗木先生の背後にも座りたまえ!!」ビシィッ!



苗木「」


大和田「・・・つーわけだ。苗木のケツは兄弟が。で、兄弟のケツは俺が持つ」


舞園「えっ?」


セレス「は?」


戦刃「ずるい・・・」


石丸「君たちもあとに続きたまえ!」


桑田「だはははは!!!」ゲラゲラ


江ノ島「コントかっつーの!!」ゲラゲラ


苗木「(ほんと、賑やかなクラスだな・・・)」


腐川「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


苗木「えっ、腐川さん?」


腐川「あ、あんたたちサウナの行き過ぎで脳みそが蒸発してるんじゃない!? 」


大和田「んだとこの野郎!?」ビキビキ


腐川「ひぃっ!?だ、だってそうでしょ!あんたらの言う通りに並んだとしても、結局は後に続くほど苗木から遠ざかってるじゃない! 」


腐川「ど、どうせ私や山田みたいな根暗を末席に送ってあんたらが苗木に近づきたかっただけなんでしょ!?」


腐川「だいたいあんたたち、さっきからケツだとか持つだとか変態じみた発言しすぎなのよ!」


大和田「なっ」///


腐川「兄弟兄弟ってまさか穴兄弟?と、とんだ風紀の紊乱ね・・・淫乱よ!」グギィイイ!


苗木「(腐川さんもよく喋るようになったなぁ。でも相変わらず言ってる意味が分からない)」シミジミ・・・


十神「それくらいにしておけ、腐川」


苗木「十神くん・・・」


腐川「も、申し訳ありません白夜様!」


十神「黙れ。いま俺と喋っていいのは苗木だ。次に許すまで口を開くな」


腐川「・・・・・・」


苗木「いや流石にご飯は食べてもいいと思うよ腐川さん」


十神「おい・・・貴様もだぞ、苗木。愚民風情がこの十神白夜を差し置けるつもりか?」ギロッ


苗木「ご、ごめん。それでどうしたの?」


十神「なに?」


苗木「えっ・・・十神君に話しかけられたから、なにか用でもあったかな?」


十神「くっくっく・・・何を言い出すかと思えば、この俺が愚民相手に用だと?」


十神「馬鹿にしているのか苗木。愚民風情と話すのに一々つくるわけないだろう」


十神「むしろ用をつくって持ってくるのが貴様らの役目だ」


苗木「えっと・・・それじゃあ聞くけど十神君は腐川さんの話を聞いてどう思った?」


十神「知らん。というかお前が俺の隣に来い。それで何もかも片が付く」


苗木「(彼ともすっかり友達です)」


朝日奈「ほんと、十神って苗木バカだよねー」


苗木「朝日奈さん!・・・晩ご飯もドーナツなんだね・・・」


朝日奈「うん!絶望マーケットで売れ残りが出ちゃってさ。せっかく作ったのに捨てるなんてできないじゃん?」ハグハグ


朝日奈「だってこんなに美味しいもん!」


十神「おい、ドーナツ馬鹿。この俺が苗木のなんだって?」


朝日奈「もー、バカバカ!苗木と話してるのに突っかかってこないでよ!」


十神「ばっ・・・」ガーン


朝日奈「てか、それよりも苗木!あんたまだご飯食べてないの?」


苗木「え? あ、そうだった!みんなと話しててすっかり忘れてた!」グゥー


朝日奈「なにそれー、苗木は体細いんだからちゃんと食べないとダメだよ!」ニパー


朝日奈「ほら、苗木にもこのドーナツあげる!揚げたてじゃないけど美味しいよー」


苗木「あはは、ドーナツはデザートに貰おうかな・・・」


苗木「(愛食もここまで高じると才能なのかもしれないな)」


大神「それなら我のプロテインはどうだ?」


苗木「大神さん・・・も相変わらずだね。いつ見ても和食とプロテインの容器が並んでいる光景に驚くよ」


大神「見苦しいところを見せてすまぬ」


朝日奈「ちょっと苗木!」


苗木「あ、そ、それは違うよ!」ビシィッ!


大神「ぬぅ!?」


苗木「あ、ごめん。またくせでやっちゃった」ホッペタカキカキ・・・


苗木「でも大神さんにとってきっとその組み合わせが最強なんだよね?ボクもたまにご飯中にジュースを飲みたくなることがあるから分かる気がするよ。


苗木「ほら、バイキングでもついお茶以外を飲んじゃわない?」


大神「フっ・・・相変わらずお主は優しいな」


朝日奈「えへへ、さすが苗木だね!でも本当に貰ってもいいんだよ?」


苗木「うん、ありがとう・・・でも、やっぱり気持ちだけ貰っておくよ」


大神「なぜだ。遠慮せずともプロテインはまだあるのだぞ?」


苗木「い、いやそうじゃなくて・・・大神さんから貰っちゃうとその」



苗木「女の子と間接キスになっちゃうから・・・」///



大神「ぬぅぅぅ!?!?!?」///


舞園「なっ!?」


セレス「あら・・・」


朝日奈「うわぁぁ」///


江ノ島「・・・」ゲシッ


戦刃「い、痛いよ盾子ちゃん・・・」


腐川「・・・・・・!!」


十神「そうだ、喋るなよ腐川?」


苗木「(やっちゃった・・・しばらくは大神さんの顔を見れないよ)」


不二咲「あの、それならぼくのを貰ってくれないかな?」


苗木「えっ、不二咲さん・・・じゃなくてごめん、不二咲くん!!」


不二咲「ううん、気にしないで苗木くん。ぼくがみんなに性別のことを打ち明けたのって最近だし、まだ呼びなれてなくて当然だよ」


苗木「でも不二咲くんが勇気を出して話してくれたことなのに・・・うん、やっぱり悪いよ。」


苗木「はやく呼び慣れるようにするね」


不二咲「心配しなくても、苗木くん今ちゃんと呼んでくれてたよ?」


苗木「あっ」


不二咲「えへへ・・・それで良かったらなんだけど、ぼくもうお腹いっぱいでこれ以上食べられくて、苗木くんにこのおかずをお願いしてもいいかなぁ?」


苗木「う、うーん・・・でも」


不二咲「だ、大丈夫。このおかずほとんど手つかずだし」



不二咲「それにぼくたち、男同士だもん!」



桑田「おぉ、いった」


葉隠「おいおい・・・」


山田「キタコレ―――!!」


石丸「」モグモグ


大和田「不二咲・・・男になりやがって・・・」


十神「くっくっく・・・おいどういうことだ?説明しろ苗木」



苗木「・・・え?」



舞園「苗木君、不二咲さんの食べ止しを貰うんですか?」ニコッ


不二咲「だ、大丈夫だよ?だって、男同士だし」


セレス「でも苗木君は不二咲君をまだ、さん付けで呼んでましたよね?」


戦刃「まだ女の子扱いしてる・・・」ジーッ・・・


朝日奈「さくらちゃんのときは断ったのに」


大神「ぬぅ」


大和田「だから不二咲は男だって言ってんだろ!?」


江ノ島「でも不二咲って女装してるじゃん?」ニヤニヤ


苗木「(ど、どうして!?クラスのみんなと話してただけなのに、どんどん会話が荒れていく・・・!?)」


苗木「(なんで? 本当なら今日は石丸君や舞園さん辺りが幹事をして、絶望マーケットの打ち上げだーみんなおつかれーって雰囲気になってるはずだよね? え、不二咲さんのご飯を貰う話で、なんで男子と女子が争ってるの?)」


苗木「(というかこういうとき石丸君が止めるんじゃ・・・)」


石丸「」モグモグ


苗木「(いやいつまでボクの背後で食べてるんだよ!!)」


十神「ピーピーさえずるなカナリアども。いいかげん、貴様らのそういうところが苗木に避けられるとわからんのか?」


江ノ島「は?苗木がいつ私さまを避けてるつったよ? くっくっく・・・むしろ避けられてるのはこの俺、十神の方か」メガネクイッ


十神「哀れだな。そんな未就学児以下の猿真似でこの俺を騙ったつもりか?」


十神「だが不愉快だ。今すぐ消してやる」ギロッ


戦刃「盾子ちゃんになにするつもりなの?」ゴゴゴゴ


舞園「喧嘩じゃないですか?」ニコッ


大和田「喧嘩なら不二咲のときに始まってんだよ」ビキビキ


苗木「(なんだよこれ、なんでみんな喧嘩するんだよ・・・)」


苗木「(ボクはいったいどうすれば・・・!!)」



霧切「食べなさい、苗木くん」コトッ



全員「!」


苗木「き、霧切さん!?えっと、これって・・・」


霧切「カップラーメンよ。あなたが喋っている間に作っておいたの」


セレス「あら、どうして苗木君の分をつくっていたのですか?」


霧切「簡単なことよ。あなたが苗木君に席の交換を提案した辺りでそれを良しとしない者が現れると分かってた。そうしたら必ず言い争いが起きてお人好しの彼が止めるじゃない」チラッ


舞園「なっ、今日はまだ何もしてませんよ!」


苗木「今日は、って・・・え、いつもあんな感じなの・・・?」


舞園「ち、違うんです苗木君!いつもはもっと仲良しですよ!?」アセアセ


桑田「そ、そうだぜ苗木!今日はちょっとはしゃいでただけだって!」アポアポ


苗木「そうなんだ・・・」ジロー


霧切「ほら、そうやって色々な人に突っかかるから食べれないのよ。苗木君あなた分かってるの?」


苗木「あ、はい。その通りです霧切さん・・・」ズーン


戦刃「(落ち込んでる顔もかわいいな)」ザンネン


江ノ島「やーい、苗木クン怒られてやんのー!チョーウケる!!」


霧切「あなたもよ江ノ島さん? いくらなんでも苗木君のことをいじめすぎじゃないかしら?」


江ノ島「うわ、苗木を絶望させようとしたらアタシまでガチ説教を貰いました・・・絶望的です」エノシマキノコ・・・


江ノ島「つーか、アタシと苗木のことじゃん。なんで霧切が口を挟むわけ?」


霧切「探偵だもの」


苗木「探偵だもの・・・」


江ノ島「ま、いじめは否定しねーけどな!」ズギャーン‼


苗木「そこは否定してよ・・・」



桑田「・・・ところでさ、お前どーすんの?」



苗木「えっ?どうするって・・・何が?」


十神「とぼけるな。その女から貰ったラーメンを食うのかと聞いているんだ」


苗木「・・・え?」


苗木「えぇぇぇぇ!?まだ終わってなかったの!?」


朝日奈「アタシのドーナツは断ったじゃん!」ジトー


苗木「ド、ドーナツはデザートに食べるから?」汗ダラダラ


大神「プロテインは・・・」


苗木「・・・間接キス」


大神「ぬぅぅぅぅぅぅ!?」////


苗木「もう見たよそれ!!」


不二咲「や、やっぱりぼくのおかずを」


山田「ちーたんのおかずですと!?」


不二咲「あぅぅ・・・」


大和田「山田、ゴラァ!!不二咲が引っ込めちまったじゃねーか!」


苗木「(もしかしてこれ、ボクが決断するまで続くのか・・・)」


霧切「いいえ、不二咲くんのも無理ね」


苗木「!」


石丸「どうしてかね!?不二咲くんとは男同士だ!問題ないと判断する!」


霧切「だってそれ、もう冷めてるわ」


不二咲「あっ」


葉隠「だべ。いくら腹ペコの苗木っちでもあったけーもんが食いたいよなぁ。つーわけでそれはオレが貰うべ」ヒョイ


セレス「葉隠くん、不二咲さんに土下座なさい。借金を増やしますわよ?」


セレス「けれど、それはそれとしてグッジョブです」ニコッ


葉隠「」ダベエエエエ


十神「ええい、いいかげんにしろ貴様ら!葉隠、お前はあとで始末するとして・・・苗木だ!苗木に喋らせろ!!」


舞園「苗木君!霧切さんのラーメンを食べるんですか!?」


霧切「食べるわよ」


舞園「苗木君に聞いてます!」


霧切「あら、苗木君もきっと同じことを言うはずよ?」


霧切「だってこの場にはもう、私のつくったカップラーメンの他にすぐに食べられる出来立ての料理はないでしょう? 」


舞園「くっ・・・」


霧切「というか舞園さん。私たちは同じ女子のはずだけど?」


舞園「だ、だって、それとこれとは別なんです」アワアワ


大神「女子も一枚岩ではないからな・・・」


霧切「そう・・・まぁ、いいけれど」



霧切「それよりも、ねぇ苗木君・・・ここまで言えばわかるわよね?」キリッ



苗木「」



苗木「」



苗木「(山田君の同人誌、帰ったらどれ読もうかな・・・)」



苗木「」チョンチョン



苗木「?」


戦刃「苗木くん、これあげる・・・」


苗木「い、戦刃さん!?これって・・・」


霧切「・・・・・・えっ?」


戦刃「う、うん。霧切さんの話を聞いてね、思い出したんだ」


戦刃「すぐに食べられる出来立ての美味しい料理・・・私も持ってた」


山田「おや・・・」


十神「ほう・・・?」


舞園「あー・・・」


セレス「まさか・・・」


江ノ島「残姉のやつ・・・うぷぷ!」



レーション「」ドッサリ



戦刃「ね?こんなにいっぱい・・・すごいでしょ? 」


戦刃「苗木くんなら好きなだけ食べていいよ!」ランラン




戦刃「・・・・・・あれ?」




全員「」ゴゴゴゴゴゴゴ



山田「やってしまいましたな苗木誠殿・・・」


桑田「オメーこの二択はしんどいぜ?」


セレス「朝日奈さんや不二咲くんの食べ止しのときとは違い、100%苗木君のためですからね」


十神「くっくっく・・・断り方によっては修羅場、なんてこともあるだろうな?」


江ノ島「きゃはー-!さっすがアタシの苗木だね!!どうやってこんな絶望的な状況を狙ってるのか盾子ちゃんにも教えてよ!」トローン


苗木「ま、待ってよみんな!ボクはやっぱり自分で」


霧切「食べるわよね苗木君?ラーメンが伸びたらどうするの?」


舞園「頭から被ればいいんじゃないですか?」


霧切「いいセンスね舞園さん。そのときはあなたにあげるわ」


石丸「待ちたまえ君たち!食べ物で遊ぶようなことをしてはいけない!」


苗木「石丸君!」


石丸「・・・ので、やはり苗木くんが食べるべきだろう!!」


大和田「オメーはどっちの味方だよ兄弟・・・お、おい!苗木が凄い面してやがる!?」


不二咲「か、顔が紫色になってるよ!?」


葉隠「なんつーか・・・大型のプレス機で潰されそうなときの顔だべ」


朝日奈「もう、そんな酷いこと言わないでよ! 苗木ー!ドーナツ食べて元気出そ!?」


戦刃「れ、レーション・・・」


霧切「ラーメン」


大神「プロテイン・・・ぬぅぅぅぅぅぅ!?!?」//////


十神「いいから、さっさと決めさせろ!」



全員「苗木!どっちにする!?」ンダベ!



苗木「それは・・・」



苗木「それは違うよ!!!」



全員「!?」


苗木「たしかにボクは恥ずかしがってみんなからご飯を貰わなかった。でも今になってようやく気づいたんだ」


苗木「朝日奈さんも、大神さんも、不二咲くんも・・・男子とか女子とか関係なく、みんな」


苗木「ボクのためを思って分けようとしてくれていたんだ!」


朝日奈「苗木・・・」


大神「うむ・・・」


不二咲「苗木くん・・・」


苗木「・・・だからボクは」


苗木「霧切さんの好意も、戦刃さんのくれた好意も無駄にしない・・・ボクは二人の優しさを背負って」


苗木「両方ちゃんと食べるよ!!」イタダキマス‼


苗木「希望は前に進むんだ!!」



全員「苗木・・・・・・」



苗木「(これで、これで良いんだ!これでもうみんな争わない!)」




舞園「じゃあ私、デザート持ってきます♪」スタスタ


苗木「」


桑田「つーかさ、インスタントだけじゃ足りなくね?俺もなんか貰ってきてやるよ」スタスタ


苗木「」


セレス「ならわたくしも花村君に頼んで美味しい餃子を焼いて貰いますわ」スタスタ


苗木「」


山田「せ、拙者はコラ・コーラぐらいにするのでよければ・・・」セレスドノー!


苗木「」コクコク


石丸「なら僕は、スタミナのつく肉丼だ!」スタスタ


苗木「イシマルイシマルイシマルイシマル」


大和田「な、苗木!俺も食ってやるから!!な!?兄弟を責めねーでやってくれ!!」マテ、キョウダイ!


苗木「」コクコク


不二咲「ぼ、ぼくもなるべく胃に優しいのを選ぶよ」スタスタ


苗木「ソレナラクウキガタベタイナ」


朝日奈「じゃ、あたしはデザートのドーナツとって来る!」スタスタ


苗木「」


大神「我もプロテインを取ってこよう」ヌゥゥゥ///


苗木「オオガミサン、ソロソロテンドンダヨ」


江ノ島「えーなにぃー苗木クン天丼が食べたいの!?わかった!持ってきてあげるー♡」ノコシタラオシオキナ!!!


苗木「」


葉隠「俺の占いによると刺身を食べさせれば苗木っちの肝臓がフォアグラになるべ!これでセレスッちの借金を返せるべ!」スタスタ


苗木「ハガクレハガクレハガクレハガクレ」


十神「ふん・・・断り方によっては修羅場になると言っただろう? お前にあんな言い方をされては、あいつらも好意とやらを示したくなるに決まってるだろ。お人好しめ」


苗木「」


十神「これに懲りたら人付き合い・・・特に女には気を付けることだな。まぁ、もっとも・・・お人好しだからこそお前らしいともいえるがな」


十神「さて、俺も何か持ってきてやるか」スタスタ


苗木「」


苗木「」


苗木「」ドウシテコウナッタ


霧切「苗木君・・・その、ごめんなさい」


苗木「」首フルフル


戦刃「ほ、本当にごめんなさい・・・その、私も出来るだけ食べる・・・」


苗木「」コクコク


苗木「(そうしてボクは考えるのをやめた・・・それからはただ、箸を上下して料理を口に運ぶ機械と化してこの先の地獄を待ち受けた)」


苗木「(それでも、ボクはやっぱり嬉しかった。超高校級の才能ある生徒のみが入学を許されたこの希望ヶ峰学園に、才能のないボクは抽選で入った。そんなボクでも、クラスのみんなは受け入れて仲良くしてくれている。それが、本当に・・・嬉しくて・・・)」


苗木「」チョンチョン


苗木「?」


腐川「な、苗木。そこのコショウと、あとご飯ちょっとよこしなさい」


苗木「え?」


腐川「なによ・・・あ、『あいつ』に代わって食べさせるって言ってるのが分からないわけ?」


腐川「・・・言っとくけど、そんなには食べられないからね」


苗木「大好きだよ腐川さん」


腐川「なっ・・・!?」


十神「喋るなと言っただろう腐川ー---!!」


腐川「ひぃっ!?申し訳ありません!!」



苗木「(ボクはやっぱり、クラスのみんなが大好きだ)」



――――――――――――――――――――――――




山田「ふひぃー-今日は散々な目に遭いましたな・・・」


山田「でもこれでようやく絶望マーケットも終わったことですし、まずは溜めてたアニメの消化活動から始めますぞー-!!!」


江ノ島「あ、いたいた。山田くーん♪」


山田「ヒえッ!?え、ええ、江ノ島盾子殿・・・」


江ノ島「うん、盾子ちゃんです」


山田「・・・・・・・」


江ノ島「・・・・・・・」


山田「・・・拙者急いでますのd」


江ノ島「山田、このクラスの女子全員のグラビア本描いて提出な。あ、アタシは除く。〆切は一週間厳守」


山田「は、はぁぁぁぁぁぁ!?!?何言っとるんですかあなたぁぁぁ!?!?!?」


江ノ島「あとグラビア本は限りなく写実っぽく描くように!」


山田「で、できるわけねーだろーが!!この山田一二三は生粋の同人作家ですぞ!!」


山田「というか、3次元の時点でアウトオブアウツ!!ここはぜったい譲れない!」


江ノ島「やーまーだー」


山田「お、脅しても無駄ですからね!最近だってボストンバックいっぱいにギャルものの同人誌を・・・」


江ノ島「ランドセル背負った苗木の写真」ピラッ


山田「・・・・・・・」


江ノ島「欲しい?」ピラピラ


山田「欲しいです、凄く」


江ノ島「だよねーショタ本描きたがってたもんねー?」


江ノ島「・・・で?」


山田「・・・・・・・はい」



山田「一週間後にまた会いましょう・・・」



――――――――――――――――――



絶望マーケットから一週間後・・・



舞園「・・・」キョロキョロ


時計「」カチカチカチ


舞園「午後11時59分・・・女子寮廊下、人影なし」


時計「」カチ


舞園「午前0時・・・」キョロキョロ


シーン・・・


舞園「アイドルの耳にも異音なし」


舞園「(えーっと、今夜の女子会はセレスさんの部屋だから・・・ノックは5回でしたね)」


コンコンコンコンコン


舞園「(合言葉は確か・・・)」


舞園「セレスさん、お迎えに上がりました」


ガチャ


舞園「ふふ、お嬢様直々にお出迎えですか?」


セレス「いいからお入りなさい。他期生の女子に見られますわよ」



――――――――――――――――――



舞園「こんばんは♪」


大神「むっ。来たか・・・」


舞園「はい、私がカギ閉めです。全員揃ってます?」


戦刃「うん。早い人は30分前から来てる・・・」


舞園「5分おきに1人が来るやり方だとそうなりますよね。あ、霧切さん」


霧切「こんばんは。揃ったのならもう始めてくれて構わないわよ」


朝日奈「響子ちゃんはまたそんなこと言ってー。さやかちゃんも来たばっかなんだし、もう少しふつーの女子会も楽しもうよ!」


霧切「私は必要なことさえできればそれでいいの」


腐川「というか、ふつーの女子会ってなによ・・・わ、私は、友達同士で好きな人の暴露をしたり、それで意中の人が被って『あの人のことは好き。けれど、友達を裏切るなんてこと私にはできない・・・!』とかそういうことするって聞いたけど?」


腐川「そこのまんまるピンクのコピーアイドルが来るまでただお菓子を食べてただけじゃない・・・」


舞園「そういえば腐川さんは女子会初参加でしたね。ふふ、そういうのもちゃんとやりますよ♪」


朝日奈「そうそう!というわけで腐川ちゃんもお菓子も食べる!はい!」


腐川「あ、あたしに優しくしてんじゃないわよ!」


セレス「まったく、文字通り姦しいですこと。みなさん、ここはわたくしの部屋だということをお忘れで?」


セレス「それよりも江ノ島さんの姿が見えませんが」


戦刃「盾子ちゃんならシャワー浴びてるよ」


セレス「おぃぃぃ!!!人の部屋だっつってんだろうがよぉぉぉぉぉ!!!」


セレス「てか一瞬、目離しただけだろうがぁぁぁ!!」


ガチャ


江ノ島「それが私様なのよ!!」


戦刃「盾子ちゃんもう上がったの?まだ1分も経ってない・・・」


江ノ島「私様ともなれば烏が行水する間にシャンプーリンスからボディの洗身までこなせるのじゃ」エッヘン


霧切「夜時間はシャワーが出ないはずよ?」


セレス「なに人のバスローブつかってんだてめぇぇぇ!!」


大神「ふっ・・・今夜も騒がしくなりそうだな・・・」



――――――――――――――――――



江ノ島「はじめに、今回初参加の腐川女史のために簡単なチュートリアルをさせていただきます」メガネクイッ


江ノ島「腐川さん」


腐川「な、なによ・・・」


江ノ島「ぶっちゃけ、苗木のことどう思ってるの?」


腐川「は、ははは、はぁ!?!?なんであいつが出てくるのよ!?」


霧切「ここでするのがだいたい苗木くんの話だからよ」


腐川「と、年頃の女が集まって何するかと思えば・・・ゴビ砂漠くらい不毛な話ね」


腐川「他の男の話はしないわけ?」


セレス「もちろんしてくれても構いませんわ。ただその場合、苗木くんの話よりもさらに不毛な会話になりますわよ?」


腐川「砂漠より不毛って焦土じゃない」


朝日奈「最近だと腐川ちゃんの好きな十神の話もしたよ!」


腐川「びゃ、白夜様の!?!?な、なんだ、やっぱり年相応に盛ってるんじゃない・・・なに話したか聞かせなさいよ!!」グフフ


江ノ島「はいはい、その話はまた今度ねー。ま、でも今のでだいたい分かったわ。十神よりは下ってことね。」


腐川「当たり前でしょ。白夜様より高貴なるお方なんてこの世に存在しないわよ。テーブルマウンテンに宝石を乗せたぐらい、玉石混交に差があるもの」


腐川「ま、まぁでも・・・」


江ノ島「おっ」


腐川「あいつが白夜様を除いた他の男子よりもマシなのは確かよ。私の小説を読んでわざわざ感想を聞かせにくるし・・・バカにするかと思えばやたらと褒めてくるし」


大神「ふっ・・・あやつはやはり優しいな。我も心に決めた相手がいるが、そやつに劣るかと言われれば頷きはしないだろう」


大神「今は朝日奈の恋路を応援しているが」


朝日奈「さ、さささくらちゃん!?みんなの前で言わないでよ!!」


舞園「うぅ・・・どうしてこんなに色々な人に好かれて・・・苗木くんはアイドルなんでしょうか。」


舞園「はっ!アイドルといえば私、私といえば根黒六中・・・」


霧切「マジカルバナナで結ばれたって意味がないわよ?」


舞園「ちょ、ちょっとやってみただけですよ!」


セレス「あら、楽しそうなことをしていますわね?でしたらわたくしも苗木くん→幸運→ギャンブラー→セレス・・・」


霧切「私だって誠→誠実→探偵→響子よ」


舞園「アイドルだって誠実です!というかそれ、名前呼びしたかっただけですよね?」


霧切「そ、それは違うわ」///


戦刃「(アイドル、探偵、ギャンブラー、スイマー、文学少女、格闘家・・・うぅ、ライバルが多いなぁ)」


戦刃「(軍人の才能も恋愛には全然使えないし・・・)」


戦刃「そういえば盾子ちゃんはどうなんだろう・・・」


江ノ島「なにー?アタシが苗木のことどう思ってるか気になるの?」


戦刃「こ、声に出てた・・・」ザンネン


江ノ島「というか息の臭さで気づきました」


戦刃「は、歯磨きしたのに・・・」ガーン


朝日奈「あ、でも私も気になってたんだよねー」


戦刃「あぅぅ・・・」


朝日奈「ち、ちがうのむくろちゃん!そっちは全然気にならないよ!!」


大神「朝日奈が言いたいのは江ノ島が苗木をどう思っているかの方だろう」


舞園「そうそう、私もじつはそれ聞きたいなって思ってました」


舞園「江ノ島さんってなんだかんだ苗木君に絡んでること多いですよね?」


セレス「あら?普段の言動からして、てっきり嫌っているものかと思っていましたけど」


セレス「あといい加減バスローブ返しなさい」


腐川「というよりもあんたって普段何してるわけ・・・?そこの絶壁軍人と一緒にクラスにいないこと多いじゃない」


戦刃「絶壁軍人・・・」ズーン


江ノ島「・・・」


霧切「・・・まぁ、あなたが何を企んでいるかは知らないけれど、女子会だし置いておくとして」


霧切「それよりも聞かせてくれないかしら?あなたこそ苗木君のことをどう思っているの?」


江ノ島「・・・うぷぷ。うぷぷぷぷ!!」


江ノ島「(向いている・・・この部屋にいる全員の目が私様に向いている)」


江ノ島「(好奇心、興味、疑問、嫉妬、羨望、不安、そして否定)」


江ノ島「(形は違えども、銘々の感情を宿した目が一点を見つめて待っている)」


江ノ島「知りたい?ねぇねぇ知りたいの?好奇心は猫を殺すって言葉、知ってる人も多いでしょ?」


江ノ島「ま、それでもオイラは言うけどな!!」


江ノ島「(絶望が訪れる瞬間を♪)」


江ノ島「残姉、プロジェクター」


戦刃「あ、うん」ゴソゴソ


ピッ ウィィィィン・・・


舞園「えっと・・・江ノ島さんがリモコンのスイッチを押した途端に天井からスクリーンが降りてきました」


セレス「」


朝日奈「た、大変!セレスちゃんが気絶しちゃってるよ!!」


大神「江ノ島よ・・・人の部屋で勝手しすぎではないか?」ゴゴゴゴゴゴゴ


江ノ島「終わったらちゃんと取り外すってー。それよりほら、スクリーンに注目よ!」


パパパパ、パパパー


腐川「なによこのガチャガチャコーナーで流れてそうな音楽は・・・それにタイトルの、『5分で分かる苗ノ島の関係』?」


霧切「苗ノ島は苗木と江ノ島の二つをくっつけたものじゃないかしら。苗霧のように」


舞園「なにさりげなくオリジナルアピールしてるんですか。それよりほら、始まりますよ!」


ナレーション『あるところに二人の男女がいました。』


朝日奈「あ、これってアニメなの?」


セレス「いえ、絵が動きませんし紙芝居のようですね」


ナレーション『一人は江ノ島盾子さん。容姿端麗で才色兼備かつ超高校級のギャルと称されるほどそのカリスマ性は高く、彼女は十代を中心に世の女性に影響を与えまくっていました』


ナレーション『もう一人は苗木誠クン。趣味も特技もこれといってないごくごく平凡な高校生の彼ですが、幸運なことに江ノ島さんと同じ希望ヶ峰学園に入学することになると』


ナレーション『江ノ島さんのことを意識するようになりました』


舞園「は?」


セレス「は?」


霧切「ちょっと?」


朝日奈「え?」


戦刃「待って」


大神「むっ」


腐川「なによこれ・・・」


ナレーション『とうぜんカリスマギャルの江ノ島さんとしては、苗木クンのことなんてぜっんぜんマジでこれっぽっちも好きなはずがありません』


ナレーション『しかし一方で苗木クンは江ノ島さんのことを絶望的に執着しており、この報われない思いの日々を諦めることが出来ませんでした』


ナレーション「そして、第11037回の絶望マーケットが終わったその日の夜・・・」


苗木『ただいまー・・・』


舞園「苗木君!!」


セレス「しっー!聞こえませんわ!」


苗木『って言ってもボクの部屋に帰って来たんだから返事なんてないけどね。ふー、よいしょっと』


霧切「おかえりなさい苗木君」


朝日奈「響子ちゃんも!映像に言っても聞こえてないよ」


朝日奈「というかあれ・・・実写になってるよ?」


苗木『あー、疲れ切った体にベッドが染みる・・・・・・・・んー、やばい。今完全に瞬きするの止めてた』


苗木『まだ18時か・・・汗もかいたし、このまま寝るのはダメだよな。ボクの形の汗染みが魚拓みたいにうつったシーツなんて見たくないし』


戦刃『それは違うよ!』


苗木『えっ?』


江ノ島「おいこら残姉」


大神「・・・ビデオの方から聞こえたな」


戦刃「ごめんなさい、つい言っちゃった・・・」


苗木『苗木「今なにか聞こえたような気がしたんけど・・・ 外の声かな?でも寮ってたしか防音だったような・・・」』


腐川「というかこれ、あんたが撮ったの?」


戦刃「うん」


腐川「よく男子寮に入れたわね・・・」


戦刃「頑張った」


苗木『まぁ、いっか。とにかくシャワーを浴びたら食堂に行こう。』


舞園「シャワーシーン来たー---!!」


セレス「江ノ島さん?このビデオの映像を賭けてギャンブルをしませんか??わたくしからはそのバスローブを出します」


江ノ島「要らねーよ!つかシャワーシーンねーし」ゲシッ


戦刃「の、覗きは犯罪だもん・・・」グスッ


霧切「盗撮だって犯罪よ」


苗木『あ、ランドリーにコスプレの衣装も出しにいこう』


霧切「ちょっと手袋を洗濯してくるわ」


舞園「泥棒も犯罪ですからね?」


苗木『あー、みんなが絶望マーケットでなにしてたとか聞きたいなぁ。今回ずっと山田くんといたし、全然回れてなかったや』


朝日奈「苗木ってやっぱり凄いんだね。これを素で言っちゃうんだ」エヘヘ


大神「うむ・・・本当に見どころのあるやつだ」


江ノ島「うぷぷ。一番の見どころはこっからだけどね・・・」


苗木『そういえば・・・』


腐川「なによあれ・・・ボストンバッグ?」


苗木『山田君の同人誌・・・今日のお礼とかいってくれたけど、こんなには置いとけないんだよなぁ・・・』


苗木『どうしよう・・・男子で誰か貰ってくれる人いないかな・・・』


腐川「ふ、ふふ不潔だわ・・・はっ!? まさか白夜様に渡すんじゃないわよね!?!?」


腐川「というかあんなデブの描いたエロ本よりアタシのあげた小説を読みなさいよ!!!」


大神「お、落ち着くのだ腐川よ。苗木も読むとは言ってはないだろう」


苗木『どうせだし荷解きもついでにしちゃお・・・っと』


大神「苗木も・・・読むとは・・・」


苗木『・・・・・・』



苗木『なんか・・・ギャルものばっかりだ』///



大神「」


舞園「」


セレス「」


霧切「」


戦刃「・・・」


朝日奈「」


腐川「」


ナレーション『・・・苗木クンはギャルものの同人誌を読みふけり、寂しさを慰めましたとさ』


江ノ島「はい、ということで『盾子ちゃんに聞いてみた!ぶっちゃけ苗木はアリ?ナシ?』でしたー」


霧切「待って。いや待ちなさい」


江ノ島「どしたん?話聞こか?」


霧切「タイトルが変わってるじゃない。それに前半の紙芝居・・・ほぼ捏造でしょ、これ?」


朝日奈「そ、そうだよ!苗木があんなこと思ってるわけないじゃん!」

 

江ノ島「失礼な!ボクは脚色はしても捏造なんてしないクマー!」


腐川「信じられるわけないでしょそんな話! ・・・こ、この分だと後半の映像も怪しいわね」


舞園「それなんですけど・・・私が苗木君にあげた模擬刀が映像にも映っていたのでたぶん・・・」


戦刃「うん、ちゃんと苗木くんの部屋で撮った映像だよ」


戦刃「前半は・・・知らない」プイッ


江ノ島「おやおやー?お姉ちゃん怒ってんの? 」


戦刃「・・・怒ってない」


セレス「・・・」


セレス「一つ、よろしいでしょうか?」


江ノ島「ん?ビデオなら前半部分はあげるよ?」


セレス「それはスクリーンごと処分してください」


セレス「それよりも、江ノ島さんはどうしてわざわざこんなビデオをつくって見せてきたのでしょう?」


舞園「それは・・・ほら、あれですよ」


大神「すまぬ。あれとはなんだ?」


舞園「・・・お願いします霧切さん」


霧切「・・・良くってよ」


朝日奈「(なんだかんだ二人とも仲いいなー)」


霧切「そうね・・・まずこのビデオで考えられる疑問は二つある」


霧切「一つ。戦刃さん、あなたはどうして苗木君を盗撮していたのかしら?」


戦刃「それは盾子ちゃんが撮って来いって・・・痛っ!?」


江ノ島「なにさらっと白状してんだよ!お前それでも軍人か!?」


戦刃「ごめん・・・」


霧切「なるほど。映像を撮らせたのも、そして私たちに見せてきたのも江ノ島さんということは・・・」


霧切「このビデオは『私たちに見せるために撮られた』ということね」


霧切「そしてここからが二つ目の疑問。それならこのビデオは何を見せたかったのか?」


舞園「それは・・・ほら、あれですよ」


大神「舞園よ・・・」


舞園「こ、今度こそちゃんと言いますから!」アセアセ


舞園「そう!江ノ島さんはきっと苗木君が自分のことを好きだって誤解させようとしたんですよ!」


霧切「たしかにそんな世迷言を前半の紙芝居で見せてきたわね」


セレス「まぁこの女子会ではいつも起こることですわ」


朝日奈「あはは、今回のは久々に凄かったねー!」


腐川「な、なによそれ!?意味が分からないわ・・・!そんなの次の発言から信用されなくなるだけじゃない!」


霧切「ええ、そうよ。だから普通はしない」


霧切「でも、それをしてきたということはそれなりの目的があるんでしょ?」


江ノ島「・・・うぷぷ。一応聞くけど、前半のプレゼンが真実だって可能性は?」


江ノ島「それに私様を本当に好きだからこそ苗木はあんな同人誌を読みまくってたんじゃないの?」


霧切「それなら前半も、後半と同じように実写で証拠を撮るはずよ。仮にも真実ならわざわざ疑われるように見せる必要がないもの」


江ノ島「ま、そういうことにしてあげてもいいけどさ」


江ノ島「(・・・思った通り、ここまでは順調ね♪ )」


江ノ島「ならその見せたいものってなんだろうねー?」


腐川「本人が言いなさいよ!」


舞園「まあまあ、腐川さん。折角ですし霧切さんの推理を見届けましょう♪」


セレス「させたのはあなたですけどね」


霧切「・・・妄言と思われても仕方のないような紙芝居を入れてまでビデオを見せてきた理由」


霧切「江ノ島さんは後半の盗撮映像を私たちに見せるために撮らせた。つまり見せたいものは後半の映像中に登場する」


霧切「そして後半の映像に登場するものといえば・・・」


・苗木の汗が魚拓のように染みついたシーツ


・苗木がクラスのみんなのことを思う


・苗木がギャルものの同人誌を読みふける←ピッ


苗木『なんか・・・ギャルばっかりだ』///


霧切「」イラッ


霧切「そういうことね・・・江ノ島さんが私たちに見せたかったのは」



霧切「苗木君が同人誌にハマっているという問題ね?」



江ノ島「大っ正解ー--!!!!」


舞園「」


セレス「」


朝日奈「」


戦刃「」


大神「」


腐川「」


江ノ島「そうなのです・・・みなさんの好きな苗木クンはいま同人誌に夢中になっています」エノシマキノコ・・・


江ノ島「これからは二宮金次郎が如く、同人誌を読み歩く学友の姿を廊下で見かけることでしょう・・・」


朝日奈「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!そんな苗木ぜったいイヤ!!!」


大神「お、落ち着くのだ朝日奈よ!!!」


朝日奈「だって、落ち着いてらんないよ!」


朝日奈「さくらちゃんはいいの!?苗木が苗木じゃなくなるんだよ!?」


大神「う、うむ・・・されど、苗木自身がそれを望んだというのであれば、受け入れてやるのもまた友人の責務ではないか?」


セレス「・・・山田君のようなキモオタになってもですか?」



苗木『おっほ、さくらたん!!ご機嫌はいかがですかな?ww』



大神「苗木を更生するぞ」


朝日奈「さくらちゃん!」


セレス「ご理解いただけたようなによりです。わたくしとしてもナイトが悪道に走るのは見過ごしておけません」


セレス「もちろん、みなさんも同じですわよね?」


腐川「ま、まあたしかに・・・本にハマった人間ほど外向的な活動が減るものね」


戦刃「・・・どういうこと?」


腐川「~~~~~苗木があんたらと会話しなくなって本ばっか読むって言ってんの!!」


腐川「そんな奴まともじゃないでしょ!?」



苗木『・・・ちっ。なに、戦刃さん?読書してるのが見えないの?』



戦刃「十神君みたい」


腐川「ぐぎぃぃぃ~~~~!!!!!!」


戦刃「ご、ごめんなさい・・・でも、それは困る。苗木くんは今のままがいい」


舞園「それならやっぱり苗木君から同人誌を取り上げるべきですね」


霧切「・・・どうして?」


舞園「あのビデオでも言ってたじゃないですか。苗木君の部屋には同人誌の置き場所がないから男子にも受け取って貰おうって」


舞園「それを助長してあげるんです」ニコッ


舞園「それに腐川さんの言うように、受け取った男子がみんな本にハマって苗木君と会話しなくなれば・・・」



苗木『舞園さん、放課後どこかに行かない?・・・うん。最近、女の子といる方が楽しいんだ』



舞園「女子だけで苗木君を独占できますよ♪」



女子「「それに賛成だ!!!」」



霧切「・・・と、言いたいけれど恐らく無理ね」


舞園「なっ、どうしてですか!?これ以上の案なんて他にないですよ!?」


舞園「今すぐ苗木君の部屋に行って同人誌を回収するべきです!」


霧切「それは違うわ!」ビシィッ


舞園「!?」パリーン


霧切「舞園さん、そもそもどうして苗木君は同人誌にハマってしまったのかしら?」


舞園「それは・・・たしかビデオ前半の紙芝居で、苗木君が江ノ島さんに惚れているとか意味のわからないことを言ってて・・・」


舞園「あっ!江ノ島さんに気持ちが伝わらない寂しさを埋めるためでした!・・・絶対違うけど」


霧切「ええ、そうよ。絶対違うわね」


霧切「でもいくら山田君が超高校級の同人作家とはいえ、普通の人が見ただけで依存をするほどハマるなんてありえないわ」


舞園「まさか・・・」


霧切「そう。苗木君の同人誌を男子に渡しても、苗木くんは女子のものにならないのよ!」


セレス「どっひゃー---ー」


舞園「そ、そんな・・・!!じゃあ一体どうすればいいんですか!?」



江ノ島「そこでオマエらにプレゼントがありまーす!!」ジャジャーン



舞園「そ、それは・・・」



舞園「えっ、私のグラビア本!?」


朝日奈「うそ!?」


セレス「い、いえ・・・舞園さんだけではありません。ここにいる女子、全員分がありますわ!」


腐川「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!てことは私のもあるってことじゃない!?」


戦刃「あれ、盾子ちゃんのだけちょっと違う?」


江ノ島「この手のプロだからねー」


大神「待て。そもそもグラビア本とは何のことだ?」


霧切「写真集のことよ。グラビアという製版法で印刷した写真は微細な濃淡まで表現できるの。その方法で人物・・・主にアイドルの写真を印刷して本にしたのがグラビア本」


朝日奈「それで肌の色とかこんなに明るくなるんだ・・・」///


大神「し、しかし我はこのような写真を撮った覚えがないのだが」


江ノ島「ほっほっほ、そうであろう!なぜならそれは山田が描いた写実本じゃからのぅ・・・」


舞園「そ、そうですよね。こんな場所で撮った覚えがありませんし・・・」


霧切「・・・たしかに。背景は少し違和感がするわね」


戦刃「すごい・・・探偵だからかな?私には本物にしか見えない・・・」


朝日奈「うん・・・山田ってこんなに絵が上手かったんだ・・・」ペラ


江ノ島「うぷぷ、気に入ってくれたみたいだねー?」


セレス「ここまでクオリティが高いとさすがに感心するしかないですもの」


セレス「しかし、山田君はどうしてこれを?」


江ノ島「うぷぷ・・・ま、絶望マーケットが終わるまで苗木を独り占めしてた代償だと思ってよ♪」


江ノ島「それよりさ」



江ノ島「これ、うまく使えば苗木クンの目を覚ませるんじゃない?」



女子「「!!」」


霧切「・・・なるほどね。それがあなたの目的なのかしら?」


江ノ島「ちがうよー!ボクはただ純粋にみんなを応援してるだけなのさ!」


江ノ島「それに苗木が同人誌にハマっているのは事実だし」


朝日奈「そこだけは嘘であって欲しかったな・・・」


江ノ島「そーそ。アタシもちょっと困ってるんだよねー」


霧切「だからって他にやり方がないわけじゃ」


江ノ島「うぷぷ。要らないならそれでもいいんだよ?」


ズイッ


江ノ島「でも霧切が後手に回ってる間にも他の奴らは着実に一手ずつ進んでるよ?」ボソッ


霧切「っ!」


江ノ島「いいの?」ボソッ


霧切「・・・耳元で変なこと言わないで頂戴」


江ノ島「じゃあどうすんの?」


霧切「・・・使うわ」


江ノ島「・・・うぷぷぷぷ!霧切は使うって言ってるよー?」


霧切「ちょ、ちょっと!」


舞園「わ、私も使っていいですか?」


江ノ島「いいぜ!そのために持ってきたんだしな!!」


朝日奈「そ、それなら私も使っちゃう・・・かなー」


セレス「わたくしだけ使わないのも変ですわね」


大神「・・・新たなる発見があるやもしれぬ」


腐川「・・・」


戦刃「でも、どう使えばいいのかな?」


江ノ島「はい。初心者の方におススメしている方法は同人誌に紛れさせることですね」


江ノ島「手渡しの際に必要とされる事情や勇気、そういったものを準備をする必要がないのでスムーズに事が運ぶかと」


江ノ島「うまくいけば同人誌の山から取り上げた時点でそのグラビア本の人物に興味を抱くかもしれません」


戦刃「さすが盾子ちゃん・・・!」


江ノ島「うぷぷ、そこからは各自の頑張りに委ねますが・・・傾注!」


戦刃「!」ビシッ


江ノ島「もしもまた、オマエらの誰かが苗木クンに実物の魅力を気づかせることができた暁には・・・」


戦刃「あ、暁には・・・?」


ポチッ


苗木『ボクにとってこの本は君との絆のカケラだよ』



女子「「!!!!!!!!!!!」」


江ノ島「青春のよき1ページとして、将来の二人の大切な思い出になるでしょう」


江ノ島「(まさか絶望マーケットでモノクマのレンズ越しに撮った隠し撮りビデオがこんなところで使えるなんて・・・アタシってほんと最高だわ!!!)」


江ノ島「(いつでも聞けるように切り抜いて携帯に入れてて良かったー-!!)」


江ノ島「じゃ、話したいことも話せたしあたしはもう帰るわー」


江ノ島「あとはお若い六人でよろしくやっちゃってくださいー」


江ノ島「おら、行くぞ残姉」スタスタ


戦刃「わ、私も?」


江ノ島「えー、お姉ちゃんなのに可愛い妹の見送りもしてくれないの?」


戦刃「する!」


江ノ島「うわ、マジですんのかよ・・・」


戦刃「あ、みんなおやすみなさい。今日は誘ってくれてありがとう・・・」


戦刃「またね」


ジュンコチャン マッテー・・・ ウルセーダマレ! ゴメン・・・


霧切「行ったわね」


舞園「なんか、静かになりましたね・・・」


セレス「あいつ、結局バスローブ着て帰りやがった・・・!!」


セレス「スクリーンも外してねーぞおぃぃぃぃ!!」


霧切「また明日言うしかないわね」


朝日奈「な、なんか続きって雰囲気でもないね。私たちも帰ろっか」


大神「うむ。我もそろそろおねむの時間だ・・・」


腐川「私もそうするわ・・・」


舞園「あ、そうだ腐川さん!初参加の感想はどうでした?」


腐川「あ、あんたたち毎回こんなことやってんの?こっちはもう頭が痛くて倒れそうよ・・・」


霧切「大丈夫。初めはみんなそう言うわ」


舞園「腐川さんも慣れますよ♪」


腐川「な、慣れてたまるもんですか!あんたたちみたいなジャンキーになるのはごめんよ!!」


腐川「・・・でも、誘ってくれて嬉しかったわ」


朝日奈「えへへーかわいいなー腐川ちゃんは」ニパー


舞園「またやりましょうね♪」


セレス「ええ、またいつかやりましょう・・・違う人の部屋で」


大神「ふっ・・・今宵も楽しい女子会であったな」



霧切「じゃあ」



霧切「おやすみなさい」


朝日奈「おやすみー」


腐川「お、おやすみ・・・」


セレス「おやすみなさい」


大神「おやすみ」


舞園「おやすみなさい」



「また、明日」



――――――――――――――――――



絶望マーケットから一週間と数日後・・・



苗木「・・・・・・」


苗木「山田くんから貰った同人誌がグラビア本に変わってる・・・」



前編 終




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