2023-05-22 23:52:14 更新

概要

山田君から貰った同人誌を巡って、苗木くんのことが大好きな78期生がわちゃわちゃするだけのお話です。


前書き

ごめんなさい。最後まで書くことが出来ませんでした。


※ダンガンロンパ1、2のネタバレあり。NOコロシアイ学園生活。


前回→




……希望ヶ峰学園 図書室


十神「苗木の部屋の同人誌をグラビア本に変える……?」


腐川「はい!昨晩の女子会であのチチデカが提案してました!」


十神「なに、朝日奈が?」


腐川「いえ、江ノ島です」


十神「……金輪際、貴様とは口を利かん。その前に事実だけを全て話してから消えろ」


腐川「!?!?ももも、申し訳ありません白夜様!!!!!」


十神「誰が謝罪をしろと言った?昨日何が起きたかを話せと言ったんだ」


十神「お前を女子会なんぞに潜入させたのも、女どもの動きを報告させるためだったはずだが?」


腐川「は、はい!報告させていただきます!」


腐川「昨晩開かれた女子会では78期の女子全員が参加していました」


腐川「女子はメンバーの部屋のどれか一つを選んで集会所にしているようで、今回はセレスの部屋でした」


腐川「恐らく、集会に使う部屋と入室時の合言葉は毎回変えていると思われます」


十神「そこはいい。女どもは何を話していた?」


腐川「まず私が苗木のことをどう思っているか尋ねられました。女子会でする話のほとんどがあいつの話題だからだそうです」


十神「それで、お前の答えは?」


腐川「も、もちろん白夜様には遠く及ばないと答えました!白夜様の完璧なお姿に比べたら、パーカーを着た苗木なんてわかめ王子です!」


十神「ふん……続けろ」


腐川「し、しかし私以外の女子は概ねあれがよく見えるようで、今度は江ノ島が苗木のことをどう思っているかを話し始めました」


腐川「そのとき江ノ島に見せられたビデオが前後編だったのですが……」


腐川「前編は苗木が江ノ島に悲恋の情を抱いているという内容の紙芝居で」


腐川「後編はその……盗撮映像でした」


十神「はっ、あの女らしい軽薄なビデオだな……」


十神「…………」


十神「……盗撮映像だと?」


腐川「は、はい。絶望マーケットがあった日に戦刃が苗木の部屋に侵入して撮った映像でした」


十神「……脱いだのか?」ボソッ


腐川「えっ?」


十神「なんでもない。早く続きを言え」


腐川「それが、その……」


十神「なんだ?脱いだのか!?」


腐川「いえ!ビデオに映っていたのは……苗木が山田の描いた本を読みまくる場面でした」


腐川「しかもギャルものの……」


十神「なんだと……!?」


腐川「え、江ノ島はそれを自分に構われないのが辛くて現実逃避してるんだと言っていました」


十神「腐川、俺は事実だけを伝えろと言ったはずだよな?」


腐川「じじ、事実です!」


腐川「あ、でも江ノ島の話はたぶん嘘です……」


十神「はっきりしろ!!」


腐川「ひゃい!ビデオを見終わったあと霧切が推理をして、江ノ島のビデオの前編は、後編の盗撮映像を補完するために作られたものだと判明しました」


十神「つまり前編は、後編のためのカバーストーリーだったというわけか」


十神「なら後編の盗撮映像もフェイクだな?」


腐川「あ、それが事実で……苗木はいま同人誌にハマっているそうです」


十神「どういうことだ説明しろ苗木!!!!」


腐川「お、おいたわしや白夜様」


十神「黙れ!!いや、黙るな最後まで説明しろ!!」


十神「苗木のやつが同人誌などというくだらないちり紙に現を抜かしているとして、それで女どもがグラビア本を見せる理由はなんだ!?」


腐川「その、江ノ島がいうには……女子が自分のグラビア本を苗木に見せることで、あいつが現実の女に興味を取り戻したら……」


苗木『この本は君との絆のカケラだよ』


十神「!!!!」


腐川「苗木との仲が深まり、将来に縁付いた際の思い出の品になるそうです」


腐川「も、もちろん私はそんなことしませんが、その場にいた女子は全員持っていたので恐らく実行されるかと……」


十神「…………」


腐川「で、でも白夜様さえよろしければ私と絆のカケラを……」


十神「く、くっくっく……」


腐川「わ、笑ってる……白夜様が笑っていられるわ!」


腐川「これは、つまりそういうことですね!?」


十神「なるほど、江ノ島のやつもなかなか意地が悪い……」


十神「女子を団結させるようなことをして、その腹はめちゃくちゃに引っ搔き回すつもりか」


腐川「白夜様!い、いえ、旦那様!!これが貴方様と私の絆のカケラです……ご査収ください!」


十神「要らん。それより、報告が済んだのなら口を閉じろ。二度と話かけるなと言ったのを忘れたか?」


腐川「…………!!」


十神「ちっ……それに風呂に入って歯を磨け。貴様の悪臭が原因で周りの視線が集まっている」


十神「折角の読書も台無しだな……続きは寮で読むとするか」


腐川「……」


十神「そうだ、腐川。最後に一つだけ俺の質問に答えろ。そのために喋ることを許可する」


腐川「!」


十神「そのグラビア本を用意したのは江ノ島か?」


腐川「そ、その通りです……あっ、ただ江ノ島は山田に作らせたと言っていました」


十神「あのデブか……よし、口を閉じろ。これでもうお前と話すことはない」


腐川「…………」


十神「だが、チャンスをやらんこともない」


腐川「!!!」

 

十神「ふっ、当然だがやる気のようだな?ならこの俺が命令してやろう」


十神「今日中に山田を見つけて俺の部屋を訊ねるように伝えろ。それと身体を清潔にして次の女子会にも誘われるようにしろ」


十神「そうすればまた報告することを許可してやる」


腐川「……!!」コクコク


十神「分かったのならさっさと行け」


腐川「……」コクリ


スタスタスタ…


十神「……ふん。俺もそろそろ出るか」


十神「おい、この本を借りるぞ」


図書委員「ダメです。というかあなた騒ぎすぎなんで出禁です」


十神「」


図書委員「図書室の規則は知ってますよね?」


十神「喋るなといっただろう腐川ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」





――――――――――――――――――――――――


……希望ヶ峰学園 男子寮内



山田「……それで、図書室を出禁になった十神白夜殿が何の御用ですかな?」


山田「希望ヶ峰学園の図書室には拙者の同人誌は置いておりませんが」


十神「ほう、出過ぎた口をきくほどこの世から消えたいのか。それなら貴様の身内共々地獄に送ってやる」


山田「すみませんでした」ドゲザ


十神「ふん……俺の流言をどこで聞いたかは知らんが、死にたくなければ今すぐに忘れるんだな?」


十神「それと、姿勢はそのままでいい。愚民は頭を下げて話を聞くべきなのだからな」


山田「(あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は十神白夜殿の部屋に呼ばれたと思ったらいつの間にか土下座させられていた)」


山田「(な、何を言っているのか分からねーと思うが、俺も何をさせられているかわからない……)」


山田「苗木誠殿はこれをどう攻略したのか……」ボソッ


十神「苗木が何だって?」


山田「いえ、なにも」


山田「(な、なんちゅー地獄耳……苗木という音に反応する精度は霧切響子殿、いや戦刃むくろ殿レベル……)」


十神「なら口を閉じていろ。今からお前の使っていい体の部位は耳と首だけだ」


山田「はい……?」


十神「いいか?俺の質問をよく聞いて、イエスなら首を縦に、ノーなら首を横に振れ」


山田「…………」


十神「どうした?頭を踏まれないと頷けないか?」


山田「(顔を横蹴りされる前に縦に振ろう……)」コクリ


十神「よし、最初の質問だ。お前はここ最近、江ノ島に頼まれて何かしたか?」


山田「(どきぃ!なぜ御仁から江ノ島盾子殿との取引のことが!?)」


山田「(はっ!まさかあのときの現場を見られていた……?)」


十神「言っておくが隠し事をしようなどと思うなよ?江ノ島に聞けば分かることをお前にも聞いてるだけだ」


十神「この十神に二度手間をさせるとどうなるかぐらい想像できるだろう?」


山田「(と、とりあえず正直に答えておこう……口留めとかも特にされていませんし)」


山田「」コクリ


十神「やはりか。それは同人誌とやらを描くことか?」


山田「」フルフル


十神「なに?それ以外でお前に話しかけることがあるとは思えんが……」


十神「……待てよ。おい、江ノ島の頼み事は苗木のことか?」


山田「」フルフル


十神「なら、クラスの女どものことか?」


山田「」コクリ


十神「まさか……」


山田「(なんか、アキ○ーターみたいですな。たぶんそうとか答えるときは首をどう振ればいいのやら……)」


十神「最近、グラビア本を撮ったか?」


山田「な、なぬー-!?な、なぜ十神白夜殿がグラビア本のことをー-!?」


十神「喋っていいとは言っていないが……やはりそうか」


十神「だがなぜお前が?たしか一つ上の学年には超高校級の写真家がいたはずだが……」


山田「あのー-正確には撮ったわけではなくてですね」


山田「たわしが描きました」


十神「なに、描いただと?」


山田「はい。ほんっっとー--に大変でした……」


山田「拙者は三次元は対象外なのにクラスの女子全員分のグラビアを描かせるとかそれなんてクソゲ……」


山田「しかも写実風とかいう超高校級の無茶ぶり。いま思い返してもクソデカ溜め息が出ますぞ……」ハァ……


十神「腐川のを見てまさかとは思っていたが……女どもが持っているグラビアは自分が写っているものだったか」


十神「しかし分からん。苗木の悪癖を治すのに現実の女を見せるのはいい……」


十神「だがそれでなぜ、お前にグラビア本を描かせることになる?」


十神「撮ればいいだけのはずだろう……」


山田「あっ」


十神「なんだ?」


山田「そういえばクラスの女子全員を描いたと言いましたが……一人だけ描かなくてもいいと言われて描きませんでしたな」


十神「なに?女子は全員、自分の分を持っていたと腐川は言っていたが?」


山田「いやいや、それはありえない。拙者は〆切までの一週間、一日一人のペースで描いておりました」


山田「したらば作った本も7冊です」


十神「なら、お前が描いてないそいつは……一体誰だ?」


山田「えーっと、月曜日はセレス殿、火曜日は舞園さやか殿、水曜日は朝日奈葵殿で、木曜日が霧切京子殿、金曜日が戦刃むくろ殿で、土曜日が腐川冬子殿、そして日曜日が大神さくら殿でした」


十神「つまり貴様が描いていないにも関わらずグラビア本を持っていたのは……」


山田「はい」



山田「江ノ島盾子殿です」



十神「…………」


山田「……もし、十神白夜殿?拙者を呼んだのはそれを聞くためでよろしかったですかな?」


山田「でしたらもう土下座というか正座を止めたいのですが。デブが正座すると太腿とふくらはぎが邪魔して足がくっつかないんです……」


十神「山田、お前に命令する」


山田「……は?命令??」


山田「(同級生に命令……?王様ゲームならまだしも、素面で命令…………?)」


山田「一応聞きますがこのまま正座で二時間とか言われたら流石に帰りますからね」


十神「凡百らしいくだらん発想だな。ふっ……苗木でももう少し言うぞ?」


山田「いや惚気とかいいんでさっさと言ってくだしあ。このあと女性陣から呼び出しもかかってるのではやく帰りたいんですが」


十神「なら心して、この選ばれし人間の用向きに預かれる光栄を噛みしめろ」


十神「そして聞け。貴様に仕らせることがある」


山田「(はいはい。どうせ下らないことですな……)」



十神「この俺のグラビア本を描け」



山田「…………なんですと?」



――――――――――――――――――


翌日


……希望ヶ峰学園 第一グラウンド



桑田「おい聞いたかオマエら!十神の奴が図書室で騒いで出禁になったんだってよ!!」


葉隠「そんなもんとっくにみんな知ってるべ。どうせ桑田っちも学年新聞で見たクチだろ?」


不二咲「それって昨日のことだよね?ボクも見たけどびっくりしちゃったな」


大和田「俺も久しぶりに腹抱えて笑ったぜ。ありゃ永久保存版だな」


石丸「前々からクラスの協調性を乱す人物だとは思っていたが、まさかあのような奇態まで起こすとは……」


石丸「苗木くん、彼はそろそろ粛正するべきだろうか?」


苗木「(粛正って……将来、彼に日本を任せて大丈夫だろうか)」


苗木「さすがに何か事情があるんじゃない?だってあの十神君だよ?」


桑田「だとしたらおめーだな」


苗木「え、ボ、ボク?」


大和田「おー、あったあった。新聞にもたしか苗木の名前を叫んでたって書いてたぜ」


不二咲「あ、ボク覚えてるよ!『どういうことだ説明しろ苗木』って言ってたんだよね?」


苗木「どういうことだよ十神君……ボクの方こそ説明して欲しいよ……」


葉隠「ま、どうせ苗木っちがなんかやらかしてんだべ」ダーベッベ


葉隠「それよりはやくサッカーやろうぜ。俺の占いでは、はやくしないと苗木っちが大変な目に遭うと出てるべ?」


桑田「つったって十神と山田がまだ来ねーんだよ。男子のグループチャットにも既読つかねーしよ」


不二咲「苗木くん、どう?」


苗木「あ、うん。ボクも送ってみたけどやっぱり見れてないんじゃないかな?」


大和田「もーいいだろ。苗木が送っても駄目ってこたぁ不参加だな」


石丸「残念だ……今日は男子全員で苗木君と遊ぶせっかくの機会だというのに」


苗木「あはは……今度またみんなで遊べたらいいね」


ガラガラガラ……


葉隠「ん、いや二人組がきたべ!」


大和田「なんだ来たのかよ」


不二咲「そ、そんな言い方しちゃダメだよ大和田くん」


石丸「うむ、なにはともあれ男子全員が集まったのだ!遅れた二人のことも責めないであげようではないか!!」


石丸「しかし、十神君はキーパーだ!!」


苗木「(め、めちゃくちゃ目の敵にしてる……)」


ナエギクーン!


苗木「えっ?」


苗木「(今聞こえたのって女子の声?)」


桑田「……おい、ブーデーと十神じゃねーぞあれ」


大和田「……マジじゃねーか。なんであいつらが来るんだよ」


不二咲「な、何か用事があるんじゃない……?」


石丸「だが、それでも後にするべきだと思うがね。こんなことをされては食堂で見たシフトの意味がないではないか!」


苗木「シフト?」


桑田「ばっ……!」


葉隠「あー苗木っち!!俺の占い通りになるなこりゃ!!!」


苗木「えっ、そうなの?」


石丸「…………」


葉隠「お、おうとも!俺の占いは3割当たる!!あの二人が来たからには苗木っちは大変な目に遭うこと間違いなしだべ!」


苗木「(そこまで言われると誰が来たか気になるな……)」クルッ


苗木「…………」


苗木「……あー、うん」


苗木「なんとなく分かった気がするよ……」


ガラガラガラ……


霧切「あら?奇遇ね、苗木くん」


舞園「あっ、ほんとだ!偶然ここを通りかかったらまさか苗木くんがいるなんて!」


苗木「う、うん……二人ともこんにちは」


苗木「(な、なんでリアカーを押してるんだろう……?)」


苗木「(というかグラウンドのど真ん中で偶然って……ツッコんだら怒られるんだろうなぁ)」


舞園「もう、ほんとに偶然なんですよ?」


苗木「!?も、もしかして顔に出てた……?」


舞園「ふふっ、苗木くんのことならなんでもお見通しです♪」


舞園「エスパーですから」ニコッ


苗木「(…………)」


霧切「思考を放棄するなんて助手失格よ、苗木くん」


苗木「なっ、霧切さんまで!?」


霧切「当然よ。私は探偵であなたはその助手なのだから、助手の思考ぐらいお見通しよ」


霧切「……あっ、探偵だもの」ドヤァ


舞園「無理やりすぎます!というか私の真似しないでください!!」


霧切「いいじゃない、あなただけ苗木くんとお決まりのやりとりがあるなんてずるいわ」


舞園「霧切さんだってあるじゃないですか。ほら、苗木くんのくせに生意気よとか、ここまで言えば分かるわよね、とか」


霧切「そういうのじゃなくてもっと心を知ってる感じのやつが欲しいの!」


舞園「だからってそれは譲りません!」


苗木「(何しに来たんだこの二人……)」


石丸「~~~いい加減にしないかね君たち!!」ビシィッ


霧切 舞園「!!」


石丸「とつぜん来たかと思えば要件も言わずに騒ぎ始めて、傍若無人にもほどがある!」


石丸「君たち女子はどうしていつも男子の和を乱してくるのかね!?」


桑田「い、いいんちょ落ち着けって!」


石丸「いいや、限界だね!今日という今日は言わせてもらう!」


石丸「だいたい苗木くんに用があるなら夕方以降が空いて、むがっ!?」

苗木「……?」


桑田「だーからそれがマズいっつってんの!つか、舞園ちゃんたちも悪気があったわけじゃねーんだろ!?」


舞園「は、はい……あの、はしゃいじゃってごめんなさい」


霧切「でもここに来たのはたまたまよ?」


大和田「んなわけあるかゴラァ!!グラウンドのど真ん中だろうが!?」


不二咲「お、大和田くんも落ち着いて……!」


大和田「なんでだよ!?オメーもずっと苗木と遊びたがって、おあっ!?」グラッ


葉隠「ふ、不二咲っちが体当たりしたべ!?」


不二咲「それは、ぜったい、言っちゃダメ……!」


大和田「わ、わーった、俺が悪かった!!もう二度と言わねぇ!!」


大和田「だからグラウンドポジションは解いてくれ!ここグラウンドのど真ん中だからぁぁ!!」


大和田「色んな奴に見られてるぅぅぅ!!!」


苗木「うわぁ……」


苗木「(まただ……ボクの目の前でまた、男子と女子が言い争いになっている……)」


苗木「(ボクが誰かと一緒にいるとそこに違う誰かがやってきて……)」


苗木「(今みたいに男子と女子が言い争いを起こしたり、ときには同性同士で同士討ちが起こったり……)」


苗木「(思えば絶望マーケットが終わってからこっち、1週間ずっとこんな光景を見てきたな……)」


苗木「(ボクはまたみんなには仲良くして欲しいのに……いったいどうすればいいんだろう?)」


ワーワーギャーギャー


苗木「(そういえば一度だけ、3日間みんなからの誘いを全部断って一人きりになったこともあるけど……あれは失敗だったなぁ)」


苗木「(ボクがいるせいで言い争いが起きるなら、ボク抜きで交友を深めて貰おうと思ったんだけど……)」


苗木「(江ノ島さんと十神くんからは『避けるな』って言われて追いかけ回されたし)」


苗木「(戦刃さんと腐川さんもその二人の命令で二日目からずっと迫ってきた……)」


苗木「(放課後になると大和田くんは不二咲くんを後ろに乗せてバイクで校内を走り回ってて)」


苗木「(その二人にバレないように校門から出ようとすると石丸くんが見張りをしていて見つかるし)」


苗木「(仕方なくプールに逃げ込んで朝日奈さんと大神さんに匿って貰ったら)」


苗木「(その晩にドアの下から『金返せ!』とか『臓器求む』とか『山田とは二週間過ごしたのに』とか達筆で書かれた書面を葉隠くんに何枚も入れられた)」


苗木「(その中には舞園さんのサイン付きで部屋に来るように催促したメモもあったっけ)」


苗木「(でも心を鬼にして部屋から出ないでいたら、叫び声を上げる桑田くんがチャイムを何度も押してきた)」


苗木「(3日目になると、廊下のあちこちに山田君の同人誌が落ちているのを見かけようになった)」


苗木「(まるでドミノを倒したみたいに一列になって落ちているそれを拾っていくと娯楽室の前に辿り着いて)」


苗木「(扉を開けると霧切さんとセレスさんがいたから、邪魔しないように閉めて)」


苗木「(追いかけてくる二人から逃げ出した)」


苗木「(…………)」


苗木「(そうやってボクは3日間、みんなから距離を置き続けた)」


苗木「(でも……その間にみんなが交友を深めることは結局としてなかった)」


苗木「はぁ……男子と女子の仲が深まるような、そんな方法はないのかなぁ」


霧切「あるわよ」


苗木「えっ、霧切さん?」


霧切「そういえばまだ言ってなかったわね」


霧切「私たちがここに来たのは、苗木君のその悩みを解決するためよ」


苗木「えっと……あ、クラスでなにかイベントをするってこと?」


霧切「いいえ、そんなこと考えたこともないわ」


苗木「考えたこともないんだ……」


舞園「でもそのために来たのは本当なんですよ?」


桑田「マジ?てことは女子も混ざって玉遊びしちゃう的な!?」


舞園「いえ、それは考えたこともなかったです」


桑田「アポォ……」


苗木「(な、仲良くなれるのか……?)」


霧切「だから、少しの間だけ苗木くんを借りれないかしら?」


苗木「え、でも……」


舞園「苗木くん、男子と女子が仲良くするために少しだけお願いできませんか?」


苗木「い、いや……ボクもみんなには仲良くなって貰いたいから、ちょっとだけならいいんだけど」チラッ


石丸「…………!!!」


苗木「(うわぁ……白目まで充血して仮面○イダーみたいになってる……)」


大和田「ったく、しゃーねーなー……」


大和田「おい、苗木。兄弟は俺が見といてやるからさっさと行って来いよ」


苗木「えっ?」


大和田「あ?奇数でサッカーできんのかよ!?」


苗木「そ、そうじゃなくて……」


苗木「……ううん。ありがとう、大和田くん」ニコッ


大和田「お、おぅ……仲良くすりゃあいいんだろ……」


大和田「……今回だけだからな///」


不二咲「あはは、大和田くん顔真っ赤だよぉ?」


大和田「なっ、み、見んじゃねぇぇ!!」


霧切「ふふっ、感謝するわ大和田くん」


大和田「いいからオメーもはやくいけ!」


霧切「ええ……じゃあ苗木くん、私たちと一緒に行くわよ」


霧切「それと代わりにリアカーを押して貰ってもいいかしら?」


苗木「(何のために持ってきたんだよ……)」


苗木「別にいいけど……行くってどこに連れてくの?」


舞園「それは……ちょっと耳を借りますね♪」


苗木「あっ……」


苗木「(耳元で舞園さんの声がする……///)」


舞園「~~~……」ゴニョニョ……


苗木「……えっ?」



苗木「ボクの部屋?」



――――――――――――


…………希望ヶ峰学園 男子寮前



霧切「本当にこれで全部なのよね?」


苗木「はい……」


舞園「隠してもあとで分かるんですからね?」


苗木「本当にそのボストンバックにあるだけで全部です……」


霧切「そう……これならリアカーを持ってこなくても良かったわね」


舞園「山田くんのことだからもっとたくさん渡してるのかと思ってました」


苗木「(男子寮に着くと、二人はボクに持っている本を全部出すように要求してきた)」


苗木「(男子と仲良くなるためにその趣味を知る必要があるからと言っていたけど……)」


苗木「(どういうわけか二人とも、ボクが山田くんに同人誌を貰ったことを知っていて、それも明け渡すように言ってきた)」


霧切「それで、苗木くんの私本はどれかしら?」


苗木「そういうのは買ったことないです……」


苗木「(山田くんには悪いけど、とても女子受けするような内容じゃないし、最初はボクも断った)」


苗木「(でも、だからこそ男子のことを知れるのだと論破されて……あと、なんかすごい脅されて)」


苗木「(結局渡すハメになった……)」


苗木「あの、本当にこれで男子と女子が仲良くなるの?」


霧切「勿論よ。苗木くんのおかげで、男子(苗木くん)と女子は仲良くなるわ」


舞園「そうですね。これからは男子(苗木くん)も女子のことを見直して親密な付き合いができますよ!」


苗木「そ、そうなんだ……?」


苗木「でも、できればそのボストンバックの中身は見ない方がいいと思うんだよなー……」


霧切「心配しなくても苗木君に幻滅したりしないわ」


霧切「これは山田くんを理解するのに使うもの」


苗木「(大丈夫かなぁ山田くん……)」


霧切「…………」


霧切「だってそれ、読んでないんでしょ?」


苗木「えっ?」


霧切「あら?そういうの買ったことないって言ってたから、てっきり読まないのかと思ったのだけど」


舞園「えっ、読んだんですか苗木くん?」


苗木「いや、あーっでも、山田くんの本を描く手伝いとかしてるから目に入ることはあるかなー……」


苗木「そういう意味では読んでない、こともなくはなく……」


舞園「そういうのじゃなくて、読みました?」ジトー


苗木「(ま、まずい……!舞園さんなんか怒ってる……!?)」


苗木「(というか女子にこんなこと聞かれるなんてどんな拷問だよ……!!)」


苗木「よ……ヨンデナイヨ……」


霧切「……」


舞園「……そうですよね!苗木くんはそういうの読みませんよね?」


苗木「ウン、ボクハ、ヨマナイヨ」


舞園「ふふ、必死に否定する苗木くんも可愛いですね♪」


舞園「じゃあこれ、江ノ島さんとかとも読みますね」


苗木「いや江ノ島さんには見せない方がいいんじゃないかな」


苗木「あっ」


舞園「……」


霧切「苗木くん、どうして江ノ島さんには見せない方が良いのかしら?」


苗木「そ、それは……」


舞園「知ってるからですよね?そのボストンバックの中身がギャルものの同人誌でいっぱいだって」


苗木「ど、どうして舞園さんがそれを!?」


舞園「エスパーですから」


苗木「エスパーだから!?」


舞園「あ、いや……山田くんから聞いたんです」


舞園「苗木くんは絶望マーケットを手伝ったお礼にポニテギャルの同人誌を貰ったんですよね?」


苗木「いやツインテールばっかりだったよ」


舞園「つまり、読みまくったということですね……」


苗木「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


霧切「まったく……探偵に隠し事をしようなんて苗木くんのくせに生意気よ」


舞園「まあでも良かったです。苗木くんがそういう本を読んでいることに後ろめたさがあると知れたんですから」


舞園「まだ更生の余地はありますよ」


霧切「そうね。もし恥ずかしげもなく愛読を公言していたなら……」ジロッ


舞園「はい、あれは使えなかったかもしれませんね」ジィーッ


苗木「うぅ……どうしてボクがこんな目に……」


舞園「苗木くん。恥ずかしいかもしれませんが、どうか男子(苗木くん)と女子の未来のために分かってください」


苗木「う、うん……だったら、一つだけお願いしてもいい……?」


舞園「あふっ」


霧切「上目遣いでお願いされて断れるわけないでしょ何でも言いなさい」


苗木「(すごい早口だな……)」


苗木「他の子たちにはその本を読んだことを秘密にしてて欲しいな」


苗木「クラスの女子全員に知られでもしたら、ボクの未来が絶望的になるよ……」


霧切「…………」


舞園「…………」


苗木「(あ、あれ?二人とも顔が真っ青だぞ……)」


苗木「あの、任せてもいいかな……?」


霧切「え、ええ。もも、ちろん大丈夫よ」


苗木「霧切さん!?めちゃくちゃ声が震えてるよ!?」


舞園「ふふっ、きりきりさんては、はりきりさんなんたから」


苗木「舞園さんも濁音がはじけ飛んでるよ!二人とも本当に大丈夫なの!?」


霧切「と、とにかく私たちはもう行くわ」


霧切「ほら、午後の3時だし。リアカーもおやつの時間だわ」


苗木「食べさせるの……?」


舞園「そういう日もあるんです!」


苗木「えぇ……」


舞園「それじゃあ苗木くん!また夜ご飯のときに会いましょう!」


舞園「あ、返すときは山田くんにお願いしますので、ちゃんと中身の確認もしてくださいね!!」


舞園「ほら、行きますよ霧切さん!」


霧切「ちょっと、帰りはあなたがリアカーを引く番よ!」


ガラガラガラ……


苗木「…………」


苗木「なんか……大変な目に遭ったなぁ……」


苗木「はやくサッカーしに行こう……」




「うぷぷ……」



江ノ島「本番はこれからだよ、苗木」



――――――――――――――――――


翌日


……希望ヶ峰学園 3F廊下



苗木「誰も切り捨てないー なにも捨てはしないー」トコトコ


苗木「絶望を染めるように~」トコトコ


山田「やや、苗木誠殿。こんなところにおられましたか……」


苗木「あっ、山田くんおはよう。昨日は会わなかったね?」


山田「おはようございました……」


苗木「(あぁ、アニメキャラの挨拶か……)」


苗木「ってえええええ!?!?山田くん、その顔どうしたの!?」


山田「どうかしましたか?山田の顔はいつも通りのはずですが……」ゲッソリ


苗木「いや、その……顔つきっていうか作画っていうか……」


苗木「……ちょっと瘦せた?」


山田「なんと、山田は痩せたらしいです。まぁ、心当たりはありますが……」


山田「なにせここのところ山田は昼も夜も休むことなく働いておりますから……」


苗木「そ、そうなんだ……?」


山田「あぁ、勤労感謝の日が待ち遠しい……」


山田「山田を甘やかしてください……」


苗木「(本当に何があったんだ……!?)」


苗木「と、とりあえず保健室に行く……?」


山田「いえ、それは大丈夫です。山田は用を済ませたら、親指を立てながら油芋とコーラに沈んでいきますので……」


苗木「(ター○ネーター……!?)」


苗木「ほ、ほんとに大丈夫?もしかして昨日サッカーに来なかったのも大変な状態だったとか……?」


山田「いえいえ、本当に大丈夫です。ただちょっと、いつものように修羅場が続いただけですから……」


苗木「それでも山田くんが心配だよ……倒れてからじゃ遅いんだからさ」


苗木「今度また大変そうだと思ったらボクを呼んでよ。絶望マーケットのときみたいに、いつでも手伝ってあげるから」


山田「ほほほ、苗木誠殿は本当にお優しい方ですな……」


山田「それではさっそくですが、その優しさに甘えてもよろしいですかな?」


苗木「うん!なんでも言ってごらん!」


山田「(かわいすぎんだろjk……)」


山田「でしたらこれをお納めください」ズイッ


苗木「これは……ボストンバックだね……」


山田「はい、朝食の後に女性陣から返却するよう頼まれましたので」


苗木「噓だろ……まだ一日も経っていないのにもう返って来るのか……」


苗木「……あっ、やっぱり読まなかったのかな?」


山田「いえ、ちゃんと揃っているか確認して貰うようにとも言われました」


苗木「てことは見られたんだね……」


苗木「(霧切さんと舞園さんはちゃんと黙っててくれたかな……?)」


山田「なんでしたら今ここで確認しましょうか」


苗木「えっ、いや……さすがにこんな人通りのある場所では見れないかな……」


ドゲザー!


山田「そこをなんとか!!」


苗木「えええええ!?」


苗木「(なんで懇願されてるの!?)」


苗木「(というか、懇願するようなことなのか……!?)」


山田「お願いします……今ここで苗木誠殿と確認させてほしいのです」


苗木「ど、どうしてそこまで……別に一冊ぐらいなくてもボクは」


山田「一冊ぐらいだとぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!????」


苗木「ご、ごめん!やっぱりちゃんと確認しないと駄目だよね!」


山田「当たり前だろ!!こっちは一冊一冊人生懸けて描いてんだ!!」


山田「大事にしてくれないと怒っちゃうゾ!!!」


苗木「(どんな情緒だよ……)」


苗木「じゃあ、バッグを開けるよ?」


山田「はやくしろっ!!間に合わなくなっても知らんぞー--っ!!!」


苗木「(えーっと、ここのチャックだな……)」


ジィーッ……


……パサッ


苗木「…………えっ?」


苗木「な、なんだこれ……?」


山田「…………」


苗木「(パンパンに膨らんだボストンバックを開けると、中からは大量の同人誌……だけでなく)」


苗木「(男性向けのグラビア本も出てきた)」


苗木「や……」



苗木「山田くんの同人誌がグラビア本に変わってる……!?」



苗木「(いや、よく見たらこれ……ただのグラビア本じゃない!)」


苗木「(どうしてバッグの中に『クラスの女子のグラビア本』が紛れているんだ……!?)」


苗木「舞園さん、セレスさん、霧切さん、朝日奈さん……戦刃さんと大神さんのまであるの!?」


苗木「(どうやら一人につき一冊あるみたいだけど……)」


苗木「山田くん。これ、バッグの中から出てきたんだけど……」


山田「おや、なんですかなその本は?見たところ写真集のような装丁ですが」


山田「あいにくとこの山田一二三の専門は二次元限定。そのような本は知りませんな!」


苗木「そ、そうだよね……なら貸してるときに間違えて入ったのか……?」ゴソゴソ


苗木「(バッグの中を一通り見ても、腐川さんと江ノ島さんのグラビア本は入ってないな)」


苗木「(でも、まさかあの江ノ島さんが撮ってないはずはないだろうし……)」


苗木「もしかして女子全員の分があったりして……」


山田「そ、それはわかりかねますがねー??」


苗木「(否定疑問文……?)」


山田「しかし、少なくとも女性陣のものであるのは確かでしょうな」


苗木「ということは……」


苗木「……えっ、まさか」


山田「ぐっふっふ。入手したアイテムを持ち主に渡すまでがお使いゲーですぞ?」


苗木「…………」


山田「おお なえぎまことどの!しんでしまうとは なにごとだ!」


苗木「生きてるよ」


山田「しかたのない やつだな。おまえに もう いちど きかいを あたえよう!」


山田「勇者英雄殿!」


苗木「ひでおって名前なんだ……」


山田「同人誌の方は拙者が責任をもって預かっておきますので、貴君はそのグラビア本を六軍王の下へと届けるのです!」


苗木「六軍王って……女子に聞かれたら怒られるよ?」


山田「なに、拙者はもうリレミトで脱出しますので心配することはありません!」


山田「ですから、あとのことはすべて苗木誠殿にお任せしてー……」


山田「山田はここで寝るとします……」


苗木「そ、そうだった……山田くんは死にかけてたんだった……!!」


山田「思い出したよ……僕は……みんなと出会う前から……みんなと出会ってたんだね」


山田「あと……パトラッシュ、僕はもう疲れたよ」


苗木「(死に際の言葉が二つも!?)」


苗木「し、死んじゃだめだ山田くん!!!」


山田「」


苗木「へ、へんじがない。ただの しかばねのようだ……」




――――――――――――――――――


……希望ヶ峰学園 保健室



苗木「本当に、山田くんを助けてくれてありがとうございました」ペコッ


罪木「そそ、そんな!苗木さんが私なんかに感謝する必要はないですよ!!」


罪木「わ、私は保健委員として当然の御奉仕をさせて頂いただけなんですからぁ……」


苗木「いえ、ボクの力だけじゃ山田くんをその場で助けることも、保健室に運ぶことも出来ませんでした」


苗木「だから罪木さんが来てくれて本当に助かったし……」


苗木「嬉しかったです」ニコッ


罪木「…………!!!」ポロポロ


苗木「(えっ!?いきなり泣き出した……!?)」


苗木「ご、ごめんなさい!なにか気に障るようなこと言いました……?」


罪木「ち、違うんです……!罪木にそんな優しくしてくれる人がいるのが嬉しくて……!!」


罪木「だって、苗木さんが人生で3人目だからぁぁ……!」


苗木「(い、今ので3人って嘘だろ……?)」


苗木「(…………)」


苗木「(でも、本人がそう言ってくれるなら……)」


苗木「あの、よければ連絡先を教えてくれませんか?」


罪木「れ、連絡先……ですか?」


罪木「いいですけど……ど、どうしてでしょう?」


苗木「その、今日はボクが困っているところを罪木さんに助けてもらったので……」


苗木「明日はボクが罪木さんが困っているところを助けたいと思って……」


罪木「!!!」


苗木「う、うまく言えないんですけど……とにかくいつか今日の恩返しをさせてください!」


苗木「ボクになにかすごい才能があるわけじゃなくても……手伝えることがあればなんでも協力しますから」


罪木「…………」


罪木「ふゆぅ……苗木さんは本当にいい人なんですね」ニコッ


苗木「そ、そう……なのかな?」


罪木「はい。日向さんや『あの方』と同じです♪」


苗木「(よかった……泣き止んでくれたみたいだ)」


苗木「(でも、その二人っていったい……?)」


グイーッ


江ノ島「いつまで話してんだこのへぼアンテナ」


苗木「痛たたたたたっ!?!?」


苗木「(か、髪の毛が引っ張られている……!?)」


罪木「あっ、あなたは……!」


江ノ島「あれ、知り合いだっけ?」


罪木「そ、その……何度かお話したことがあるのですが……」


江ノ島「…………」


罪木「い、いえ……人違いですぅ……」


江ノ島「だよねー?アタシの知ってる罪木先輩って人も、もう少しお淑やかだったはずだしね」


江ノ島「お淑やかすぎて、保健室で男を泣き脅すとかマジありえない人だったわー」


苗木「えっ、江ノ島さん……」クルッ


江ノ島「なに?出会ってすぐ女の連絡先を聞くすけこましの苗木クン」


苗木「す、すけこまし……)」


苗木「別にやましい理由で聞いたわけじゃないよ……」


苗木「というか、そのときから後ろにいたんだね?」


江ノ島「は?何言ってんの?」


江ノ島「たまたま廊下を歩いたらアンタと倒れてる山田を見つけたから、連絡先を知ってたアタシが罪木先輩を呼んでー」


江ノ島「起き上がった山田を保健室に運ぶまでずーっと後ろにいましたけど?」


苗木「あー……」


苗木「(そう、山田くんが倒れたとき……慌てふためくボクの前に江ノ島さんは現れた)」


苗木「(彼女はたまたま遭遇したにも関わらず、罪木さんへの連絡やグラビア本の隠匿など……)」


苗木「(状況への的確な分析と処理で、ボクの手助けをしてくれた)」


苗木「(まるで最初からそうなると知っていたかのように……)」


苗木「そ、そうだね……その節はありがとう」


江ノ島「うむ♪」


苗木「でも、そのあとは保健室の前で待ってたよね?」


苗木「ボストンバックを持って……」


江ノ島「だーかーらー、苗木がぜっんぜん出てこないから呼びに来たの!」


江ノ島「待ちぼうけとか5秒で飽きちゃった!」


苗木「(あぁ……そういえば、こういう人だった……)」


江ノ島「……そしたら、アタシを待たせてる間に他の女としけ込んでた」


苗木「……はい?」


江ノ島「私様は、飼い犬がドッグランで交尾してたときぐらい絶望的な気持ちです……」


江ノ島「どうしてアタシというものありながら、避妊を否認する非人になってしまったというの……?」


江ノ島「発情期の苗木クン」


苗木「そ、それは違うよ!!」


江ノ島「えっ、どこが?」


江ノ島「ま、まさか発情期を凌駕して欲情期に……!?」


苗木「じゃないよ!」


苗木「諸々がだよ!!」


苗木「ボクは罪木さんと普通に話してただけなんだよ!!!」


江ノ島「うぷぷぷ!もー冗談だってばー!」


江ノ島「そんなカワイイ顔して怒んないでよー」


江ノ島「なーえーぎ♪」グイッ


苗木「あだだだだだっ!!」


罪木「な、苗木さん!?」


苗木「(む、無理やり手を繋がされた……!?)」


江ノ島「それじゃ、罪木先輩まったねー」


江ノ島「苗木は貰っていくけど、代わりにそこのデブは好きにしていいよー!」


苗木「ま、待ってよ江ノ島さん!」


江ノ島「やーだー待つのはもう飽きたー」


江ノ島「このまま女子の所に行くよー!」


ガラガラガラ……ピシャリ!


……シーン


罪木「い、いっちゃいました……」


罪木「せ、せっかく『あの方』ともお会いできたのに、お話も出来ませんでした……」


罪木「…………」


罪木「あは……うふ、うふふふふ……!」


罪木「あの方があんなに不機嫌な顔で罪木を睨んでくるなんて……」


罪木「苗木さんがそんなに大事なんでしょうか……?」


罪木「連絡先を交換することすら許して貰えませんでした……」


罪木「……でも」チラッ


山田「zzz……」


罪木「また会えますよね……?」


罪木「罪木はいま、希望しています……」



――――――――――――――――――――――――



……希望ヶ峰学園 第78期生教室前



江ノ島「現着~!」


苗木「あれ、教室に入るの?」


江ノ島「コラ、ただの教室じゃないよ!ちゃんと78期生のクラスプレートだってあるでしょ?」


苗木「う、うん……ボクたちの教室だね」


江ノ島「そうそう!そうやって持ち主が誰かをちゃんと言わなきゃ大変だよ」


江ノ島「苗木クンは家に帰るとき、とりあえず目についた家のドアを開けるの?」


江ノ島「お宅はどこ○もドアじゃないんだよ!?」


苗木「思うわけないだろそんなこと……」


苗木「それより江ノ島さん」


江ノ島「ん、どしたの?」


苗木「保健室で君は女子の所に行くって言ってたよね?」


江ノ島「もーだから誰の女子?」


苗木「(誰の……?)」


苗木「この教室にいるってことはたぶん78期生のだよね?」


江ノ島「……はい」


江ノ島「その通りです……」シクシク


苗木「な、なんで落ち込むの!?」


江ノ島「だって、『女子はみんなボクのものだよ』って苗木が言わなかったから……」


苗木「言ったら喜んでたのかよ……」


江ノ島「んーん、絶望してた!!」


江ノ島「だってー気持ち悪いほど前向きでーどうしようもないほど平凡で―」


江ノ島「生理的に受け付けないレベルでお人好しの苗木にそんなこと言われるなんて」


江ノ島「最っっっっっ高に何様って感じじゃん!!」


苗木「そ、そこまで言うかなぁ……江ノ島さんはボクのことが嫌いなの?」


江ノ島「うん!大っ嫌い!」


江ノ島「アンタと話してるだけで腸が捻じれて吐いちゃいそう」


苗木「じゃあいいかげん手を離してよ……」


ギュッ


江ノ島「ヤダ」


苗木「(さ、さっきより強く握られた……)」


苗木「なんで?」


江ノ島「だって苗木と手を繋ぐの好きだし」


苗木「き、嫌いな相手と手を繋ぐのが好きなの?」


江ノ島「はぁ?アタシが十神とか葉隠の手を握ってるとこ見たことある?」


苗木「(えぇっ……その二人嫌いなの!?)」


苗木「な、ないけどさ……じゃあなんで?」


江ノ島「苗木ぃ、なんでなんで言い過ぎー」


江ノ島「あ、なでなでして欲しくて甘えてるの?」ナデナデ


苗木「してないよ。あと撫でないで」


江ノ島「いいから黙って愛撫させろよー」


江ノ島「苗木とアタシの仲じゃん?」


苗木「だから……その仲が分からないって言ってるの!」


苗木「江ノ島さんはボクのことはなんだと思ってるの!?」



江ノ島「苗木はアタシのものだよ」



苗木「…………」


苗木「……えっ?」


江ノ島「えっ?」


苗木「いや、なんで江ノ島さんが驚くのさ」


江ノ島「だって、アタシたち出会ってからもう1年と4ヶ月になるよね?」


苗木「うん。入学してからだよね、それ」


苗木「78期生はみんなだよ」


江ノ島「でも、二人で色んな思い出つくったじゃん!」


江ノ島「ほら、苗木を拉致ってハッピーシュガーラ○フとか、ストックホルムごっことか……」


苗木「見事に監禁ばっかだね」


江ノ島「うぷぷ、絶望した?」


苗木「希望は誰にも奪えないよ」


苗木「ってたしかに何回も言ってたね……」


江ノ島「うん、苗木のそれめちゃくちゃウザかった」


江ノ島「でも、アンタは何回監禁しても不思議と飽きなかったわー」


江ノ島「しみじみ」


苗木「いや、しみじみじゃないよ。思い出したよ」


苗木「監禁生活を終わらせるために、毎回ボクがどれだけの犠牲を払ったか……」


江ノ島「あーそういえば一個楽しい奴があったねー」


江ノ島「たしか100ポイント貯めないとドアのロックが解除されないようになっててー」


江ノ島「日数がかかりすぎると先に冷蔵庫の食料が無くなって二人とも死んじゃうんだよねー」


江ノ島「そうそう、苗木とピク○ン3で遊んでた時に思いついたやつだ!」


江ノ島「でさー」


苗木「い、いいよそこまでで」


江ノ島「ええー、なんでー?」


苗木「だってそれ、ボク覚えてるよ」


苗木「君にされた監禁の中でも特に大変だったから……」


江ノ島「そう?」


江ノ島「ポイントのために苗木とアタシが一緒のベッドで寝た話とか良くない?」


江ノ島「あっ、ごめん。言っちゃった……♡」


苗木「あーあーあー!!だからいいって言ったのにぃ!!」


江ノ島「うぷぷぷぷ!!思い出した?ねぇねぇ思い出しちゃった??」


江ノ島「アタシの用意した絶望に打ちのめされる自分、思い出して泣いちゃった??」


苗木「泣かないよ!それにボクは江ノ島さんの言う絶望に勝って、ちゃんと脱出したじゃないか!」


江ノ島「うん。苗木はやっぱり何をしでかすか分かんないのが良いよねー」


江ノ島「あのときも、まさかあんな結末を迎えるなんて盾子ちゃんにも予想外」


江ノ島「あーあ、絶望させたかったなー逃がした希望は大きいなー」


苗木「もういいよ。それ以上は別の機会にするとして……」


江ノ島「するとして?」


苗木「……そういえばなんの話だっけ、これ?」


江ノ島「は?おいおい、しっかりしてくれよ」


江ノ島「苗木がアタシのものだって話でしょ!!」


江ノ島「てか、こんだけ説明してまだ分かんないなんて、鈍いどころじゃないよ……」


江ノ島「絶縁体だよ……」


苗木「なんだそれ……いや、そうじゃなくてさ」


苗木「そもそもボクたちはなんで教室の前に来たんだっけ?」


江ノ島「それな!」


苗木「そ、それな……!?」


苗木「江ノ島さんが連れてきたんでしょ……!?」


江ノ島「いやー、アタシもなんか大事な用があったなーとは思うんだけど……」


江ノ島「苗木と話すのが楽しくてどーでもよくなったみたいです」


苗木「(えぇ……そんなことある……?)」


江ノ島「ま、とりあえず入ったら分かるっつーことで扉の方を開けちゃいまーす」


苗木「あ、待って江ノ島さん」


江ノ島「ん?」


苗木「入る前に、その……トイレに行ってきてもいい?」


ガラガラガラ


苗木「」


江ノ島「そんな下手くそな言い訳を真に受けてさ。手放すわけないじゃん」


江ノ島「アタシのものはアタシの手で持っておきたいタイプなの」


江ノ島「…………あー」


江ノ島「そういえばオマエラにも言ってなかったね!」


苗木「えっ、『オマエラ』……?」ヒョイッ



舞園「」コゴゴゴゴゴゴゴ……


霧切「」ドドドドドドドドド……


セレス「」オオオオオオ……


戦刃「」ギギギギギギ……


朝日奈「」プクー


大神「」シュインシュインシュインシュイン……


苗木「う、うわぁぁ……!!」


苗木「(そ、そうだ……思い出した……!)」


苗木「(教室には女子がいるんだった……!!)」


苗木「(そして……)」



山田『同人誌の方は拙者が責任をもって預かっておきますので、貴君はそのグラビア本を六軍王の下へと届けるのです!』



苗木「ろ、六軍王……」


苗木「(江ノ島さんのおふざけのせいで恐怖と化した存在……)」


苗木「(そんな鬼気迫る様子の彼女たちに……)」チラッ


パンパンに膨らんだボストンバック「」ギチギチ


苗木「(ボクは、グラビア本を返しにきたんだ……!!)」



――――――――――――――――――――――――



……希望ヶ峰学園 保健室



ガラガラ……


「こんなところにいたのか……」


山田「zzz」


「やまだ……おい……」


山田「ん、んんー……」


「やまだ……いつまで寝てる気だ……」


山田「誰ですかな……僕を呼ぶのは……?」


山田「拙者はもう残機がゼロでコンテニューできません……」


山田「どうかこのまま安らかに眠らせてください……」


十神「ふん。軽口をいう元気はあるみたいだな?」


十神「なら口ではなく目を開けろ。両方とも二度と開けなくなる前に、な」


山田「……チッ」


山田「…………」パクパク


十神「おい……!目と口を剝き出したまま押し黙るな!」


十神「ボビーオ○ゴンか貴様!」


山田「……何の用ですかな、十神白夜殿」


山田「拙者は今、貴殿の物言いに付き合えるほど元気ではないのですが?」


十神「くっくっく……その様子だと、どうやら君命は報われたようだな?」


山田「ああ、そういうこと……例の本を取りに来たわけですな……」


十神「なんだ、お前にしては話が早いじゃないか」


十神「いつもの愚鈍さは顔の肉ごと落ちたのか?」


山田「…………」パクパク


十神「……分かった。もう何も言わないからその顔はやめろ……」


十神「いや、やめてくれ……」


山田「ふん……」ゴソゴソ


山田「どうぞ。これが貴殿に頼まれていたものです」


十神「ほう、この封筒の中に……」


山田「ええ、十神白夜殿のグラビア本が入っておりますが……」


山田「確認しますかな?」


十神「愚問だな……と普段なら言ってるところだが、今度ばかりは信用してやろう」


十神「ふっ……開けさせる楽しみもあるしな」


山田「では、拙者はもう寝落ちしてもよろしいでしょうか?」


十神「構わん。養生しろよ」


十神「報酬の話も起きてからにしてやる」


山田「ぐふふっ……それはもう考えただけで夢見心地ですな……!」


十神「ふん……じゃあな。これ以上、貴様と話すこともない」


十神「俺はこれからこのグラビアで……」


十神「女子どもの企みを潰しに行く!!」



「た、大変よ……」


腐川「白夜様のグラビアがこの世に存在したなんて……!!」



――――――――――――――――――



……希望ヶ峰学園 78期生教室内



ペラ……ペラ……


苗木「…………」ペラ……


戦刃「…………」


苗木「…………」チラッ


戦刃「よそ見」


苗木「なっ……!?」


朝日奈「えっ、苗木いまよそ見した?」


戦刃「うん」


戦刃「今ので1回目」


霧切「あら。一人目でもうペナルティなの?」


セレス「堪え性のない殿方ですこと」


苗木「そ、そんなこと言われても……!」チラッ


戦刃「2回目」


苗木「ぐぅ……!?」


大神「ペナルティになってしまったな……」


戦刃「それじゃあ約束通り……」


戦刃「苗木くんに読み聞かせ」


苗木「よ、読み聞かせって言われてもこれ……」


苗木「絵本とかじゃないよ……?」


戦刃「知ってる」


江ノ島「むしろエロ本だけど?」


苗木「ちょ、江ノ島さ!」


ギューッ


苗木「いででででで!」


戦刃「3回目」


戦刃「よそ見しすぎ」ムスー


苗木「ご、ごひぇん……!ごひぇんなひゃい……!!」


戦刃「なら貸して」


苗木「ひゃい!ど、どうじょ……!」


戦刃「うん……」


苗木「いてて……」サスサス


戦刃「……苗木くんが見てたのはこのページ?」


苗木「う、うん……」


戦刃「じゃあ、これはなに?」


苗木「それは、その……」


苗木「戦刃さんのグラビアです……」


戦刃「合ってるけど……そうじゃない」


戦刃「見て。このページのここ」チョンチョン


苗木「(うっ……さっきよそ見した、下着姿の戦刃さんが膝立ちで胸を寄せ上げてる写真だ)」


苗木「(でも、彼女が指を差したのは、その谷間に挟まってる……)」


苗木「えっと……剣?」


戦刃「剣じゃないよ。これはマチェット」


苗木「えっ、マチェット?」


戦刃「そう」


戦刃「ラテンアメリカ人が農業や林業で使う山刀を軍事転用したもので、熱帯雨林や密林での作戦でよく使う」


戦刃「元々が草藪を刈り払うために作られてるから携行性、軽量性ともに優れてて、振り回しても肉体的疲労はかなり少ない」


戦刃「軍用はその上、殺傷能力も高くなるように改良されてるし、リーチも長いから対人戦でも重宝する」


苗木「へ、へー。そうなんだ……?」チラッ


戦刃「……あと、このページ」ペラッ


苗木「(う、うわっ……!戦刃さんのキス顔……!!)」


戦刃「……の、口に咥えてるこれ」チョンチョン


苗木「(そっち……?)」


苗木「だ、弾丸かな?」


戦刃「そう。22ロングライフル弾」


戦刃「世界で最も売れている弾丸で色んな銃に使われる」


戦刃「低コスト、低威力、低反動、おまけに発射音が静かで撃ちやすく」


戦刃「初心者の射撃訓練や害獣駆除、オリンピック競技に暗殺と、使われる用途もかなり広い」


戦刃「ベストセラー」


苗木「(カタログ紹介になってるな……)」


戦刃「…………」


戦刃「ごめんなさい……」


苗木「えっ?」


戦刃「読み聞かせ、やっぱりやめるね……」


苗木「な、なんで……?」


戦刃「…………」


戦刃「私の身体……筋肉がついてて女の子らしくないし、胸だってみんなより小さい」


戦刃「見てても楽しくないんじゃないかと思って、お話でなんとかしようとしたけど……」


戦刃「武器のこととか豆知識とか……そういう話しか出来なかった」


戦刃「私が、超高校級の軍人だから……」


苗木「…………」


苗木「それは、悪いことじゃないよ」


戦刃「で、でも……女の子らしく出来なかった……」


戦刃「私は、もっと……」チラッ


江ノ島「……」


戦刃「苗木くんにはもっと、そういうふうにしたかった……」


苗木「…………」


苗木「……それなら、ちゃんと出来てたよ?」


戦刃「えっ……?」


苗木「戦刃さんがボクを楽しませてくれようと読み聞かせしてたとき……」


苗木「ちょっとだけボク、よそ見したんだ」



戦刃『軍用はその上、殺傷能力も高くなるように改良されてるし、リーチも長いから対人戦でも重宝する』


苗木『へ、へー。そうなんだ……?』チラッ



戦刃「……誰に?」


苗木「戦刃さん」


戦刃「わ、私……!?」


苗木「あはは、やっぱり気づいてなかったんだ?」


戦刃「う、うん……」


苗木「なら、そのときに何を見たか教えるね」


苗木「女の子の顔だった」


戦刃「!!!」


苗木「戦刃さんの知識や経験は、たしかに普通の女の子にはないと思う」


苗木「でも、君はそれを普通の女の子がするように、楽しそうに、ボクに話してくれたでしょ?」


苗木「そんな君を女の子らしくないなんてボクは思わない」


戦刃「苗木くん……」


戦刃「ありがとう」ニコッ


サワッ……


苗木「い、戦刃さん!?」


戦刃「苗木くん。さっきよそ見したんでしょ?」クスクス


戦刃「4回目はほっぺを撫でる、にした……」サワサワ……


苗木「あ、あー……そうなんだ……///」


苗木「(女の子にしては、やっぱり大きくて硬い手だけど……)」


苗木「(なんだか安心するような、とても優しい手つきだ……)」


ピピピピピピ


江ノ島「終了―」


戦刃「えっ、もう5分……?」


江ノ島「はい、経ちました」


江ノ島「なので、さっさと景品から手を離さないとおしおきしますよ?」


江ノ島「苗木をな」


戦刃「そ、それはダメ」パッ


苗木「いやなんでボクがされるのさ……?」


江ノ島「うぷぷ。ウチのお客さんは初物が食べたいわがままさんでねー?」


江ノ島「疵物は無価値だからだよ!」


苗木「坂口安吾がブチ切れそうなことを言う……」


江ノ島「ま、アタシはそんなの関係なく美味しく食べれちゃうけどねー♪」


江ノ島「なんならちょっと味見でも……」


ガタッ


舞園「江ノ島さん」


舞園「交代してください」


舞園「今、私は冷静さを欠こうとしています」


苗木「ひぃっ……!?」


江ノ島「ごめんごめん!二番手は舞園か」


江ノ島「じゃあ苗木の隣にいらっしゃーい!」


苗木「(……そうして、『それ』はまた始まった)」


苗木「(目の前にある横列の椅子から舞園さんが立ち上がり)」


苗木「(麻雀牌を一つ拾って、配牌を交換するように)」


苗木「(ボクの隣にいた戦刃さんは、その列の自分の椅子に戻る)」


スタッ……


舞園「苗木くん」


苗木「(そして、ボクの隣の席に舞園さんが座り)」


舞園「これ、読んでください!」


苗木「(彼女のグラビアを読まされる……)」


苗木「(読んでるときによそ見をすればペナルティ)」


苗木「(ボクが5回以上よそ見をしたら、女子は失格になるからだ)」


苗木「(これをあと、舞園さんも含めて……)」


霧切「…………」


セレス「…………」


大神「…………」


朝日奈「…………」


戦刃「~♪」ポケー


苗木「(五回戦……)」


苗木「(ボクは、その五回戦が終わるまでグラビア本を読み……)」


苗木「(その中で一番良かったと思う本を最後に決めさせられるという……)」


苗木「(それが、この謎の余興)」


苗木「(グラビアを全部読むまで逃げられない)」


苗木「(略して、グラゼニだ)」


苗木「(でも、ボクが景品っていうのは一体……?)」


ハーイ ヨーイ スタート


苗木「…………」


苗木「舞園さん」


舞園「はい♪」


苗木「……本当に読んでもいいの?」


舞園「ふふっ、遠慮してるんですか?」


苗木「そ、そりゃするよ!」


苗木「舞園さんのグラビアといえば、ネットオークションでも何十万の値がするんだよ?」


苗木「ボクなんかが見るのも恐れ多いというか……」


舞園「もう。いつもの前向きさはどこに行っちゃったんですか?」


苗木「ま、前向きさとは関係が」


舞園「あります!」


苗木「!」


舞園「……だって」


舞園「戦刃さんのときは読んで、私のときは読んでくれないなんて……」


舞園「そんなの……私の気持ちにぜんぜん前向きじゃないですよ……」


苗木「……舞園さんはずるいよ」


苗木「ボクが一番言われて困ることをいつも知ってるんだから」


舞園「……ふふっ」


舞園「エスパーですから♪」


江ノ島「……イチャついてるとこ悪いけど、あと4分な?」


舞園「な、苗木くん!はやく読んでください!!」


苗木「う、うん!」


ペラ……ペラ……


苗木「…………」


舞園「…………」


苗木「…………」ペラ……


苗木「(戦刃さんのはピンナップっぽかったけど、流石に舞園さんのは正統派だな……)」


苗木「(というか、読んでるとこめっちゃ見られてる……)」


舞園「……ふふっ」


苗木「な、なに?」


舞園「いえ、大したことじゃないんですけど……」


舞園「なんだかふと懐かしいなー、って思ったんです」


苗木「懐かしい……?」


舞園「はい。実は、二度目なんです」


舞園「私のグラビア本を読む男の子……」


舞園「その横顔を見つめるの……」


苗木「へ、へー……」


苗木「そうなんだ……」チラッ


舞園「よそ見」


苗木「うっ……!」


舞園「そんなに気になるんですか?」クスクス


苗木「い、いやべつに……」


舞園「ウソだ」


舞園「よそ見するぐらい知りたいんですよね?」


苗木「…………」


苗木「……少しだけ」


舞園「ふふっ、苗木くんは素直ですね♪」


舞園「じゃあ少しだけヒントを出すと……」


舞園「苗木くんの知ってる人ですよ」


苗木「ぼ、ボクの知ってる人……?」


舞園「はい♪」


舞園「私は昔、放課後に廊下を歩いていて……」


舞園「教室扉の隙間から見えた、その人の横顔を見つめました」


苗木「(……もしかして)」


苗木「それって、この学校で?」


舞園「いいえ」


苗木「じゃあ前の高校のとき?」


舞園「それもはずれ」


苗木「…………」


苗木「となると、あとは……」



苗舞「「根黒六中」」



苗木「…………まさか」チラッ


舞園「……ふふっ♪」


舞園「見つめるのも、そしてよそ見するのも」


舞園「これで二度目ですね」


舞園「苗木くん」


苗木「み、見てたんだ……」サササ……


舞園「あはっ!苗木くんの顔、真っ赤っ赤♪」


苗木「う、噓だ……」


苗木「本で隠してるから見えないよ……!」


ボソッ


舞園「耳……」


苗木「ひゃっ……!」


舞園「あのときと同じですよ……?」


舞園「まっ」


舞園「かっ」


舞園「……か♡」


苗木「ま、舞園さん……!」ススス……


舞園「こら、本を動かさない……」


苗木「で、でもこれじゃ読めないよ……!」


舞園「ダメです。これはペナルティなんですし……」


舞園「それに、記録なんてもういいんです……♪」


苗木「そ、それで……耳打ち……?」


舞園「はい……♪」


舞園「だって、目と口はどれだけ近づいても塞がれてしまうけど……」


舞園「この特別な距離に来たら、耳を塞ぐものはありません……」


苗木「あっ……」


舞園「だから、あなたの耳にだけなら……」


舞園「アイドルとして世間の耳には言えないことも……」


舞園「私の声にして届けられる……」


苗木「それって……」


舞園「……ふふっ」

 

舞園「なんだと思います……?」


ピピー!!


江ノ島「アウト―!!」


舞園「えっ!?」


江ノ島「舞園さん、あなたを反則行為で訴えます!!」


舞園「なんでですか!?」                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              


セレス「あら。理由はもちろんお分かりですわよね?」


霧切「あなたが苗木くんをセクハラで誑かし、ルールに違反したからよ」


苗木「(ジョルノ○ジョバーナ……?)」


舞園「い、言いがかりです!」


舞園「セクハラもルール違反もしてません!!」


大神「……ルール?」


朝日奈「えー、さくらちゃん知らないの!?」


朝日奈「守んないといけない約束のこと!」


大神「いや、そうではなくてだな……」


苗木「(失礼だよ……)」


大神「我の目には、舞園が耳打ちをしていただけに見えたのだが……」


舞園「そ、そうです!反則なんてしてません!!」


舞園「私はちゃんとルール通り、苗木くんにグラビア本を見せました!」


舞園「『あっち見て』と言ってよそ見を無理強いしたわけでもないし」


舞園「苗木くんに触れたのもペナルティのときだけです!」


舞園「耳打ちだって、グラビア本以下のアプローチじゃないですか!!」


朝日奈「た、たしかに……舞園ちゃんはルール違反なんてしてないよ!?」


江ノ島「ドキィッ!?」


苗木「(えっ。君が驚くの!?)」


舞園「となれば、やはり言いがかりの方に問題があるとしか思えません!」


舞園「霧切さん、セレスさん」


舞園「あなた方を、逆に名誉棄損で訴えます!」


霧セレ「!?」


舞園「あなたたちは、裏も取らず!根拠もなしに!」


舞園「あたかも私がルール違反したかのような内容に作り上げました!」


舞園「そして、司会の江ノ島盾子!!」


舞園「あなたのことも即刻、名誉棄損で訴えます!」


苗木「(ま、松居○代も出てきたぞ……)」


苗木「(一体どうなるんだこれ……?)」


江ノ島「……うぷぷ」


江ノ島「根拠があればいいんだね?」


舞園「…………えっ?」


江ノ島「お姉ちゃんスイッチ、『だ』!」ポチッ


舞園「お、お姉ちゃんスイッチ……!?」


ガタッ


戦刃「ダメです。これはペナルティなんですし……」


戦刃「それに、記録なんてもういいんです……♪」


舞園「」


江ノ島「お姉ちゃんスイッチ、『だ』……」ポチッ


戦刃「だって、目と口はどれだけ近づいても塞がれてしまうけど……」


戦刃「この特別な距離に来たら、耳を塞ぐものはありません……」


舞園「」


江ノ島「お姉ちゃんスイッチぃー……『だ』ー!」ポチッ


戦刃「だから、あなたの耳にだけなら……」


戦刃「アイドルとして世間の耳には言えないことも……」


戦刃「私の声にして届けられる……」


苗木「それって……!」


戦刃「うん。二人の会話……」


戦刃「集音マイクで聞いてた」


舞園「」


セレス「因みに私はギャンブラーの直感で」


霧切「私は苗木くんを観察して気づいたわ」


霧切「ふふっ、たんてーですから」ドヤァ


舞園「」


江ノ島「うぷぷ!一見普通に見える仕草でバレずに口説こうとするなんて……」


江ノ島「さすがは超高校級のアイドルって感じだね!」


江ノ島「でも、こんな露骨なアピールは認めません!」


江ノ島「じゃないと暴力、脅迫、銃で脅す……なんでもありになっちゃうでしょ!?」


舞園「うぅ……」


江ノ島「それと、お前」


苗木「えっ?」


江ノ島「次、グラビア本で目隠ししたらおしおきな」


江ノ島「まぶた引っ張って読ませるから」


苗木「」


江ノ島「というわけで、舞園さんの記録はゼロですが……」


江ノ島「ま、結果ばかり見てても仕方ないし、気を取り直して次の人ー!」


江ノ島「苗木の隣にいらっしゃーい!」



――――――――――――――――――



……10分後



江ノ島「おい」


江ノ島「オマエら、話聞いてたか?」


葵さく「話?」


江ノ島「いや、大神と朝日奈はいい」


江ノ島「そこの2人。オマエらだ」


セレス「お呼びで?」失格


霧切「なにかしら?」失格


江ノ島「……なんで失格になってんだ?」


霧切「あら。あなたが言い出したのだけど?」


江ノ島「そうじゃねーよ!」


江ノ島「ルール!!」


セレス「ルール?」


江ノ島「そう!グラビアを見せろっつったよね?」


セレス「見せましたわ」


江ノ島「じゃあ、あのふざけた真似はなに?」



……10分前



パラ……パラ……


苗木「えっ、セレスさん?」


セレス「なんですか、苗木くん?」


苗木「これ、本に挟まってたんだけど……」ピラッ


セレス「ああ。それなら、しおりです♪」


苗木「うそでしょ……!?」


苗木「一万円札をしおりにしてるの……!?」


セレス「ええ」


セレス「いつでも手元に何枚もあるので、よく挟んでますわ」


セレス「西洋の画集をどれだけ買っても、しおりはついてませんもの」


苗木「い、一般人のボクには想像もつかない感覚だ……」


セレス「ふふっ、欲しいですか?」


苗木「いや、いいよ……しおりならたくさん持ってるし」


苗木「そうだ、良かったらボクのしおりをあげようか?」


セレス「まぁ!苗木くんのを?」


苗木「うん!」


苗木「ウチには妹がいるんだけど、それがまた漫画好きでさ」


苗木「実家ではよくあげてたんだけど、寮暮らしでできなくなっちゃって……」


セレス「でしたら、そのお金で全部買いますわ♪」


苗木「い、いいって!ただのしおりだし!」


セレス「そうですか……」


苗木「(なんで残念そうなんだ……)」


パラ……パラララララ……


苗木「うわぁぁぁ!!セレスさん!?!?」チラッ


セレス「苗木くん。一々叫ばないでくださる?」


苗木「だ、だってこれ!!」



万札まみれのページ「」ドーン



セレス「あぁ、それは……」


セレス「コラージュです♪」


苗木「ま、万札のコラージュなんて聞いたことないよ!!」


苗木「というかこれ、ページの隅々に貼ってるね!?」


セレス「うふふっ。心配なさらずとも、テープを剝がせば読めますわ」


セレス「それに、もしその本が気に入ったのであれば……」


セレス「わたくしのグラビアが一番良かったと言うだけでお持ち帰りも可能です♪」


江ノ島「賄賂じゃねーか!!」



…………



セレス「うふふ。剝がしたり脱がしたりは、殿方の趣味でしょう?」


江ノ島「だからって諭吉でデコんなよ」


江ノ島「しかも貼りすぎてクーポン冊子になってたわ」


霧切「…………」


江ノ島「あと霧切もハッチャケすぎ!!」



……5分前



パラ……パラ……


苗木「…………」


霧切「…………」


苗木「……ここ?」


霧切「違うわ。一つ後ろのページよ」


苗木「うん……」パラ……


苗木「…………」


霧切「どうかしら?」


苗木「どうって、えーっと……」


苗木「真っ白なウェディングドレスを着て、ブーケも持ってて……」


苗木「素敵、だと思うよ……?」


霧切「……ありがとう」


霧切「でも、感想が欲しかったわけではないの」


苗木「えっ?」


霧切「苗木くん」


霧切「どうして私がこのページを見せたか分かる?」


苗木「も、もしかして推理しろってこと?」


霧切「そうよ」


苗木「…………」


苗木「このページだけ、他のページと違う……とか?」


霧切「ふふっ。流石は私の助手ね?」


霧切「正解よ」


苗木「(めっちゃ喜んでくれてる……)」


苗木「でも、どこが違うかまでは言えないんだけど……」


苗木「霧切さんは教えてくれないの?」


霧切「……無理ね」


霧切「それを私から言うことはできないわ」


苗木「(真剣な顔つきになった……)」


苗木「(ということは……)」


苗木「…………」チラッ


戦刃「!」ニコッ


苗木「…………」チラッ


霧切「なに?」


苗木「ごめん。二回もよそ見しちゃった……」


苗木「たしか、ペナルティだったよね……?」


霧切「…………」


霧切「真面目にやりなさい」


苗木「(…………なるほど)」


苗木「(霧切さんはペナルティになっても耳打ちをしてこなかった……)」


苗木「(それに指差しもなかったということは……)」



戦刃『うん。二人の会話……』


戦刃『集音マイクで聞いてた』



苗木「(言えないんじゃなくて、聞かれてはいけないということ……)」


苗木「(そして……)」


苗木「…………」クルッ


江ノ島「うん?」


苗木「(背後で見ている江ノ島さんに、知られてはいけないということ……)」


苗木「(つまりそれは……)」



ピピー!!


江ノ島『アウト―!!』


舞園『えっ!?』


江ノ島『舞園さん、あなたを反則行為で訴えます!!』



苗木「(ルール違反……?)」


霧切「…………」


苗木「(で、でも……)」



セレス『あぁ、それは……』


セレス『コラージュです♪』


苗木『ま、万札のコラージュなんて聞いたことないよ!!』



苗木「(霧切さんのグラビアは、特におかしなところはなかった……)」


苗木「(それにこの本の全ページに目を通したけど……)」


苗木「(ルール違反になりそうなものなんて……)」


江ノ島「……?」


苗木「(…………待てよ)」


苗木「(たしかにボクは、この本を普通に読んでいた)」


苗木「(ということは、霧切さんの言うルール違反も、既に目にしたはずなんだ……)」


苗木「(それなのに、ルール違反にはなっていない……)」


苗木「(いや、そう判断されるのは……)」


江ノ島「……あと2分~」


苗木「(霧切さんがボクに教えたと、江ノ島さんが知ったとき……)」


苗木「(なら、教えられる前と後で何かが変わることがタブー……?)」


苗木「(それって……)」


閃きアナグラム開始!


ん し き に


き に し ん


に ん き し


に ん し き


『認識』


苗木「そうか、分かったぞ!」


江ノ島「!?」


苗木「(教えられる前と後で変わるのは、ボクの認識だ!)」


苗木「(つまり、霧切さんが知る何かにボクも気がついて)」


苗木「(このグラビア本の見方が変わること……)」


苗木「(それがルール違反……)」


苗木「(江ノ島さんに知られてはいけないのは)」


苗木「(ボクが何かを知ることだ……!)」


霧切「……ふふっ」


パラ……パラ……


苗木「(……とは言っても、その認識を変えるような何かって……?)」


パラ……


プニッ


苗木「き、霧切さん!?」


霧切「ふむ……」プニップニッ


苗木「な、なんで頬っぺたぷにぷにしてくるの……?」


霧切「あら、ずいぶんと忘れんぼうなのね?」プニッ


霧切「ついさっきよそ見をしたじゃない」プニップニッ


苗木「(あー、ペナルティだったんだ……)」


霧切「それにしても、これは中々ハマるわね……」プニップニッ


苗木「ちょっ、変な趣味に目覚めないでよ……?」


苗木「(まぁこっちも手袋の感触が気持ちいんだけど……)」


苗木「……あっ!」


霧切「……」


江ノ島「…………」


パラ……パラ……


苗木「(……そうか、そうだったんだ!)」


苗木「(他のページの霧切さんはちゃんと『手袋』をしてるのに……)」


苗木「(この、ウェディングドレスの霧切さんは……)」


苗木「(素手……!)」


苗木「(ブーケで隠れて、気付かなかったんだ……!!)」


苗木「……霧切さん」チラッ


霧切「ふふっ……気づいたみたいね?」


苗木「(そう……)」


苗木「(霧切さんは、常日頃から手袋をしている)」


苗木「(それは、彼女の両手全体に火傷の痕があるからだ)」


苗木「(だけど、写真の手にはそれがない……)」


苗木「(加工?)」


苗木「(いや、それはない……)」


苗木「(だって、霧切さんは人前で手袋を外さないと言っていた……)」


苗木「(つまり、この本は……!!)」


苗木「にせ……」


プニッ


苗木「……!?」


苗木「(唇をつままれて喋れない……!?)」


霧切「それ以上はダメよ、苗木くん」プニップニッ


苗木「!」


苗木「(そ、そうだ……!)」


苗木「(ごめん、霧切さん……!)」


苗木「ぐ、んふにふあん……!!」


霧切「フフ……んふにふあんってなによ……?」プニップニッ


苗木「(い、いやぁ……)」


苗木「ん、にゃぁ……」


霧切「フフ……あなたって本当にいい反応するわね?」プニップニッ


江ノ島「…………」


霧切「どうせなら私も、唇で塞げば良かったかしら?」プニップニッ


霧切「そうすれば、もっといい反応が見られたかも……」プニッ


苗木「!!」チラッ


ピピ―!


霧切「…………えっ?」


江ノ島「おい」


江ノ島「オマエら、話聞いてたか?」



…………



江ノ島「あのね、ペナルティって意味わかる?」


江ノ島「苗木がグラビア本を読んでないときにおしおきしろってことだよ?」


江ノ島「サボってる奴には飴じゃなくて、鞭を与えて痛めるの!」


江ノ島「それをオマエらは、自分がイチャイチャするために使ってさ……」


江ノ島「ボクはね、怒ってるんだよ!!!」


霧切「…………」


江ノ島「あら、無視ですか。虫の居所が悪ですか?」


霧切「そうよ。納得いかないもの」


霧切「たしかにペナルティで多少は彼に触れたけど……」


苗木「(多少……?)」


霧切「でも、ルール違反はしてないわ」


霧切「どうして失格なのかしら?」


江ノ島「…………」


江ノ島「あら、ずいぶんと忘れんぼうなのね?」


霧切「……なに?」


江ノ島「うぷぷ!苗木のよそ見した回数は?」


霧切「!」チラッ


苗木「ご、ごめん霧切さん……」


霧切「……」


霧切「……そう」


霧切「5回以上よそ見してたのね」



苗木『(読んでるときによそ見をすればペナルティ)』


苗木『(ボクが5回以上よそ見をしたら、女子は失格になるからだ)』



江ノ島「あーあ、霧切ちゃんまで失格かー」


江ノ島「しかも、今回は苗木のせいでねー」ニヤニヤ


霧切「……そうね」


霧切「本当に、落ち着きのない人だわ」


苗木「ぐっ……」


霧切「思ってることはすぐ態度に出る」


霧切「良くも悪くも素直すぎるのよ」


苗木「うっ……」


霧切「感情は推理の妨げになると、以前教えたわよね?」


霧切「もう少し冷静さも保ちなさい」


苗木「はい……」


江ノ島「うぷ……うぷぷぷぷ!!」


江ノ島「なーんだ、やればできるじゃない!!」


江ノ島「そうそう!ペナルティもそれくらいギスギスやってよねー!!」


苗木「(うぅ……霧切さんめちゃくちゃ怒ってるよ……)」


苗木「(まぁでもそうだよね……)」


苗木「(ボクが失格にさせたんだし……)」


霧切「……でも」


霧切「ちょっとだけ、探偵の助手らしくなったわね」


苗木「……えっ?」


霧切「…………だから」


霧切「推理力が着実についてると褒めたのよ」


霧切「ちゃんと、一人でも答えに辿り着けたじゃない」


苗木「き、霧切さん……!」パァァ……


霧切「ふふっ、また顔に出てるわよ?」


江ノ島「…………」


江ノ島「……え、なにそれ?」


江ノ島「さっきまでのギスギスは?」


霧切「……?」


舞園「あー、もしかして見たことないですか?」


セレス「あれが俗に言うツンデレ、というやつですわ」


霧切「なっ……!?」


朝日奈「えー、響子ちゃんツンデレなのー!?」


戦刃「……ツンデレ?」


大神「知らぬか?」


大神「最初は素っ気ない態度をとるが、そのあとで優しくすることだな」


戦刃「へぇ……」


戦刃「じゃあ私もツンデレだ」


大神「クーデレだ」


苗木「(なんでそれは語れるの……?)」


江ノ島「…………」


江ノ島「え、じゃあもしかしてさっきの全部ツン?」


舞園「ええ、ツンですね。ラー油と同じで鼻にきましたし」


霧切「ちょっと……!」


セレス「でしたら、最後のあれもデレというより……」


霧切「も、もういいでしょその話は……!」


霧切「ほら、グズグズしてると男子が来るわ」


霧切「閑話休題よ」


江ノ島「うぷぷ!たしかに、ちょっと長話しすぎたねー」


江ノ島「じゃあそろそろ次の人にお鉢を回そうか!」


霧切「ええ……」


霧切「というわけで、朝日奈さん」スタッ


朝日奈「うん。苗木の隣、交代だね!」


苗木「あはは……ほんとに全員やるんだね……」


苗木「(でも、いよいよあと2人……)」


苗木「(それも女子の中ではかなりフレンドリーな、朝日奈さんと大神さん)」


苗木「(これでようやく山場は超えたかな……)」


霧切「そうだ」


霧切「今度、彼がよそ見をしたらペナルティはきつくお願いね」


苗木「…………えっ?」


霧切「苗木くん」


霧切「いい機会だし、あなたのその落ち着きのなさを鍛えなさい」


霧切「いいわね?」


苗木「ちょ、ちょっと」


霧切「 い い わ ね ? 」


苗木「ア、ハイ……」


苗木「(予想以上に怒ってた……)」


朝日奈「えへへー、そういうことなら体育会系に任せてよ!」


朝日奈「苗木、よそ見したら泣かすからね!」



――――――――――――



大神「ではいくぞ」


苗木「いやだー!!いやだぁぁぁぁ!!」


苗木「死にたくないーー!!死にたくなぁぁぁぁ!!」


バ コ ン ! !


苗木「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」コヾ(:3ノシヾ)ノシ!!!


江ノ島「ぎゃはははははははは!!!」


舞園「だ、大丈夫ですか苗木くん!?」


苗木「脳がぁぁぁぁーーーー!!!!脳が燃えるぅぅぅぅぅぅ!!!」


霧切「あれほど言ったのに、まだよそ見をするとはね……」


セレス「しかもその罰が、大神さんのデコピンとは……」


戦刃「前頭葉まで消し飛びそう……」


大神「す、すまぬ……これでも抑えた方だったが……」


苗木「」ゾクッ


苗木「うわぁぁぁぁぁぁん……!!」ボロボロ


大神「ぬぅぅ!?」


舞園「こ、怖がらせてどうするんですか!?」


セレス「ギャン泣きですわね……」


戦刃「トラウマになったんだと思う……」


江ノ島「あー泣いてる苗木かわいぃ……」●REC


江ノ島「待ち受けにしよ!」パシャパシャ


霧切「やめなさい」


苗木「ひっっぐ……ぇぐ……」


朝日奈「な、苗木……」


苗木「ぐすっ……なに……?」


朝日奈「ごめん……」


苗木「うぅん……朝日奈さんは悪くないよ……」


朝日奈「わ、悪いよ……!!」


朝日奈「だって、苗木にグラビアを見られるのが恥ずかしくなって……」


朝日奈「無理やりよそ見させたんだし……」


大神「いや、ペナルティを担ったのは我だ」


大神「ゆえに、これは力の制御を見誤り、傷つけた我の責任だ……」


朝日奈「!!」


苗木「お、大神さんもよしてよ……誰も悪くないんだって!」


苗木「ほら、デコピンなんて誰のでも痛いんだしさ!」


苗木「それにほら、もうへっちゃらだよ!」


大神「ぬぅ……」


苗木「(だめだ……カラ元気だと思われてる……)」


苗木「(今はそっとしておくしかなさそうだ……)」


苗木「じゃ、じゃあ今度こそ、よそ見せずに読むね!」


朝日奈「…………」


苗木「(とにかく、もう二度とペナルティは受けないぞ……)」


苗木「(される側だけならまだしも、する側も悲しむ罰なんて……)」


苗木「(そんなことしちゃダメなんだ……!!)」


朝日奈「……ま、待って苗木!」


苗木「ん?」


朝日奈「……お願い」


朝日奈「もう一度だけ、よそ見して!」


苗木「」


苗木「」ジワッ


朝日奈「……えっ?」


舞園「あ、朝日奈さん……!」


霧切「たしかに、厳しくするよう頼んだけど……」


セレス「自分からいくのはリンチでは……?」


朝日奈「あっ、ち、ちがうの!!」


朝日奈「よそ見をしてほしいのは、苗木をいじめたいからじゃなくて……!」


朝日奈「…………」


朝日奈「今度はちゃんと見せられるように頑張りたいから、だよ……」


戦刃「それって……」


朝日奈「うん……」


朝日奈「私も、むくろちゃんみたいに読み聞かせをしたいんだ……!」


苗木「!」


朝日奈「だって、恥ずかしくて苗木によそ見させたり、さくらちゃんにペナルティをやらせたり……」


朝日奈「私……自分勝手な気持ちで迷惑かけて……」


朝日奈「二人を悲しませちゃったから……」


苗木「朝日奈さん……」


朝日奈「だ、だから、今度は私が読み聞かせして……」


朝日奈「苗木のことを喜ばせたい!!」


苗木「!!」


朝日奈「あとでさくらちゃんにも謝って!」


朝日奈「一緒にドーナツを頬張りたい!」


大神「!」


朝日奈「……それを、させて欲しいんだ……」


朝日奈「私が迷惑をかけちゃった分、二人には喜んで欲しいから……」


朝日奈「なんて……また、自分勝手かな……?」グスッ



苗木「それは違うよ!」



朝日奈「!!」


苗木「朝日奈さんのその自分勝手は、ちゃんとボクたちのことを考えてる」


苗木「それなら、もう自分勝手とは言えないよ」


苗木「だって、誰かのためになるんだもん」


朝日奈「それじゃ……」


苗木「うん!」


苗木「朝日奈さんの自分勝手は……」


苗木「朝日奈さんの思いやりだよ!」


朝日奈「な……」


朝日奈「苗木ぃ……」ポロポロ


大神「…………ふっ」


大神「さすが、我の見込んだ男だな」


朝日奈「さ、さくらちゃぁぁん……!」


大神「ふふ。涙を拭くのだ、朝日奈よ」


大神「我はもう、悲しみに暮れてなどおらぬ」


大神「苗木が励ましてくれたおかげもあるが……」


大神「お主と食べるドーナツが楽しみだからな……」


朝日奈「うん……うん……!」


大神「では、もう落ち込まぬな?」


朝日奈「うん……!!」


大神「よし。ならば、我のことはもういい」


大神「次は、苗木を喜ばせてやろう」


朝日奈「さくらちゃん……苗木……」


朝日奈「二人とも、本当にありがとう!!」


苗木「あはは、元気になって良かったよ」ニコッ


苗木「(良かった……いつもの二人に戻ったよ……!)」


苗木「じゃあ、よそ見をしてもいい?」


朝日奈「あっ、それなんだけど……」


苗木「うん?」


朝日奈「えっとね、よそ見のついでにね……」


朝日奈「もう一つ椅子を持ってきて!」


苗木「えっ、椅子を……?」


朝日奈「うん!」


朝日奈「必要なことだから!」


苗木「(い、いったい何に使うんだ……?)」


苗木「(というか、離席してもいいのかな……?)」チラッ


江ノ島「苗木はん、全然ギスギスしーひんなー」ニコニコ


苗木「(でもまぁ、ジャッジの物言いはなさそうだし……)」


苗木「(言われたとおりにしておくか……)」


ガタン……ヒョイ……スタ スタ スタ ……


苗木「も、持ってきたけど……」


朝日奈「ありがと!」


朝日奈「じゃあ、苗木の座ってた椅子とくっつけて!」


苗木「うん……」


苗木「(新幹線みたいな3人席になった)」


苗木「これでいい?」


朝日奈「うん!」


朝日奈「じゃあ次は……」


苗木「(……あっ、もしかして)」


苗木「(大神さんを呼んで、3人で一緒に見るのかな?)」


朝日奈「……い」


朝日奈「椅子の上に寝転んで……」


苗木「…………」


舞園「…………」


セレス「…………」


霧切「…………」


江ノ島「…………」


戦刃「…………」


大神「……ふふっ」


ガタン……ゴロン……


苗木「…………」


朝日奈「あっ、ネコみたいに丸まっちゃダメ……」


朝日奈「ほら、ここ……」ポンポン


朝日奈「ここに頭を乗っけるように……」


朝日奈「もっと、こっちにおいで……」


苗木「…………」


モチッ


朝日奈「あっ……///」


苗木「…………」


朝日奈「グ、グラビアを……」


苗木「…………」ヒョイ


朝日奈「あ、ありがと……」


朝日奈「じゃあ、頭を横にして……」


苗木「(……これは)」ゴロン


苗木「(まさかあの……)」


プニッ


苗木「……!!!!」


朝日奈「ど、どうかな……?」プニッ


朝日奈「私が見たドラマだと、カ、カップルがよくやってて……」


朝日奈「男の人がすごい喜んでたんだけど……」


朝日奈「……ひ」


朝日奈「膝枕で読み聞かせ……///」プニッ


苗木「…………」


朝日奈「…………」


朝日奈「ちょ、ちょっと、なんで喋らなくなるの!?」プニップニッ


苗木「…………」


朝日奈「もしかして、私じゃ嫌だった……?」プニッ


苗木「…………」


朝日奈「ねぇ、苗木ってば!」


ムニュゥ!


苗木「あっ……!!」


ピピーー!!


朝日奈「えっ!?」


江ノ島「お姉ちゃん、引きずり出せ」


戦刃「うん」グイッ


苗木「うっ、うわぁぁ!!」ズルーン


朝日奈「な、苗木が床に降ろされた!?」


朝日奈「い、いやそれより、まさか今のって……!!」


江ノ島「はい」


江ノ島「朝日奈さん、アウトーーーーー!!!」


朝日奈「え、ええええ!?!?」


大神「……どういうことだ?」


江ノ島「いや、どういうこともなにも、まんまだよ!!」


江ノ島「ふつーにグラビア読ませろよ!!」


江ノ島「オマエらほんと、ベタベタベタベタ苗木に触れて……」


江ノ島「そんなにセクキャバしたいのか!!!!」


朝日奈「せ、セクキャバ?」


セレス「セクシーキャバクラのことですわ」


大神「なんだそれは……?」


セレス「一般的なキャバクラは、女性従業員がお酒や会話で男性客をもてなします」


セレス「そしてその接客サービスに、女性従業員へのお触りを加えたものがセクキャバ……」


セレス「要は、女性の身体を使って男性を喜ばせる店ですわ」


朝日奈「」


大神「では、朝日奈がそのようないかがわしいことをしたと……?」ゴゴゴゴゴゴゴ


江ノ島「ええ、してましたね……」


朝日奈「し、してない!」


江ノ島「いいや、がっつりしてました!!」


大神「貴様……」ゴゴゴゴゴゴゴ


江ノ島「はぁ……じゃあこれ見てよ」


朝日奈「!」


戦刃「はい、おしぼり」


苗木「あ、ありがと……」ボタボタ


戦刃「上、向かない」


戦刃「それ当てて、ちゃんと鼻をつまんでて」


朝日奈「は、鼻血……?」


江ノ島「そう」


江ノ島「朝日奈さんが太ももとおっぱいでプレスするから……」


朝日奈「……えっ?」


江ノ島「苗木クンが鼻血ぶーしちゃったよ……」


朝日奈「…………あっ!?!?///」


苗木「……ご、ごめん」


朝日奈「~~~~~~っっ//////」


舞園「もしかして、急に黙ったのって……」ジトー


戦刃「……挟まれるのが良かったから?」シラー


苗木「そ、それは違うよ!!」


朝日奈「!」


江ノ島「は?べつに違わないでしょ?」


江ノ島「だって、男って挟まれるの大好きじゃん!」


戦刃「やっぱり……」


苗木「(しまった、発言を間違えた……!)」


苗木「(ボクに対するみんなの印象が悪くなったみたいだ……!)」♡♡♡♡ -♡


苗木「ってそうじゃないよ!!」


苗木「ボクが黙ったのは、その……」


苗木「い、言いにくかったからだよ……」


霧切「……つまり朝日奈さんを気遣ったということかしら?」


大神「!」


苗木「う、うん……気遣ったはちょっと違うけど」


苗木「ほら、朝日奈さんはそういう話題が苦手でしょ?」


苗木「それなのに、頑張ってるときにそんな話をされたら……」


苗木「嫌な気分になるじゃないか」


朝日奈「苗木……」


セレス「しかし、意識していながら黙るというのも、むっつりスケベではなくて?」


苗木「うぐっ!」


江ノ島「なーんだ、色々と耳障りのいいこと言ってたけどー?」


江ノ島「結局はスケベ心じゃない!」


苗木「そ、そんな……」


朝日奈「そんなことない!」


苗木「!!」


朝日奈「たしかに、男の子はいつも私のことをそういう目で見てくるし……」


朝日奈「苗木だってそうだよね……」


苗木「そ、それはその……」


朝日奈「ううん、誤魔化さなくてもいいんだよ!」


朝日奈「だって……」


朝日奈「苗木はそれだけじゃないって知ってるもん!」


苗木「!」


朝日奈「苗木は、私がそういう話題を苦手だって分かってて」


朝日奈「それでも私が膝枕と読み聞かせをしたい……」


朝日奈「迷惑をかけた分、喜ばせたいって言ったから」


朝日奈「黙ることで応援してくれたんだよね!!」


苗木「あ、朝日奈さん……!」


朝日奈「だから、苗木を悪く言わないで!」


朝日奈「苗木はスケベだけどスケベじゃない……」


朝日奈「スケベの紳士なんだから!!」


苗木「…………」


舞園「…………」


セレス「…………」


霧切「…………」


江ノ島「…………」


戦刃「…………」


大神「…………」


朝日奈「…………」


朝日奈「あれ、これって何の話だっけ?」


江ノ島「いいよもう、次に回すから」



――――――――――――



江ノ島「さて、スケベの紳士くん」


苗木「…………」


江ノ島「残るグラビアはあと一冊となりましたが、意気込みの程はどうでしょうかー?」


苗木「…………」


江ノ島「ふむふむ……」


江ノ島「おぉー、さすがは超高校級のむっつりスケベ!」


江ノ島「『御託はいい、さっさと見せろ!!』」


江ノ島「『なんなら今ここで撮り直しするか?w』」


江ノ島「とのことです!」


苗木「…………」


江ノ島「……うぇぇぇん、苗木がシカトするぅぅぅーー……!!」グスッ


大神「お主がダル絡みするからだ……」


朝日奈「おー、さくらちゃんでもダル絡みとか言うんだねー!」


大神「ふっ……ナウか?」


苗木「(ナウとか言ってほしくなかったな……)」


江ノ島「てか、次は大神の番だから、はやく隣に座ってよ」


大神「ああ、それなのだが……」


江ノ島「と、言いつつのー」ドサッ


江ノ島「どうも、大神盾子でーす!」


戦刃「え、えっ!?」


江ノ島「苗木の隣は頂いた」フンス


苗木「やりたい放題してるなぁ……」


江ノ島「あっ、ようやく喋ったなー苗木!」


江ノ島「よし、じゃあ黙って膝枕しろ!」ゴロン


苗木「(ほんとになんなんだこの人は……!?)」


江ノ島「……で、大神はまだ来ないわけ?」


江ノ島「そろぼち来ないと、棄権扱いになっちゃうよ?」


大神「…………」


朝日奈「呼ばれてるよ?さくらちゃん?」


大神「……ああ」


大神「やはり、我は辞退しよう」


苗木「えっ?」


朝日奈「えぇぇぇぇーーーーっ!?!?」


セレス「お、大神さんまで失格に……!?」


霧切「これで5人……というよりも、戦刃さん以外全員ね」


朝日奈「なんで!?なんでさくらちゃん!?」


大神「……思い出すのだ、朝日奈よ……」


大神「そもそも我らが苗木にグラビアを見せる理由とはなんだ?」


朝日奈「えっ?」


苗木「(ボクにグラビアを見せる理由……?)」


江ノ島「……大神」


大神「心配せずとも、言わぬ」


大神「ただ、それを思い出しながら……我は、みなと苗木のやり取りを見ていた」


朝日奈「…………」


大神「されど、やはり杞憂であったな……」


大神「苗木は平生と変わらず、誰に対しても誠実で、温かな人間であった」


大神「ならば、もはや更生の必要はないと気づいた」


大神「それが理由だ」


苗木「(……えっ、どういうことだ……?)」


苗木「(ボクがグラビアを見せられたのは、更生の必要があったから……?)」


苗木「(更生ってたしか、悪い状態から良い状態に変えることだったよな……)」


苗木「(……?????????)」


江ノ島「……あ、そう。ほんとにそれでいいんだね?」


大神「構わぬ」


大神「我は苗木の人徳を信じるが故に、このゲームを放棄する」


江ノ島「……ふーん」


江ノ島「誰に対しても誠実で温かな人間、か……」


江ノ島「これはまた大層な希望を抱いたねー……」


江ノ島「…………良かった!」


江ノ島「これで、全員クリアーだね!」


苗木「えっ?」


苗木「(大神さんがクリアーした?)」


苗木「(というか、ほとんどが失格者なのに全員クリアー……?)」


江ノ島「うぷぷ……」ニマニマ


苗木「(いったい何を企んでるんだ……?)」


江ノ島「じゃあ、大神はリタイアということでー」


江ノ島「ア、ア……」


江ノ島「…………」


江ノ島「飽きた」


大神「ぬぅ……!?」


苗木「アウトって言うだけだったのに……!?」


苗木「(いや、というかそれよりも……)」チラッ


戦刃「…………あっ」


戦刃「ということは……」


戦刃「わ、私が優勝に……!?」パァァ……!


全員「!!!」


苗木「(そう……このゲームは、全てのグラビア本を読んで終わりじゃない)」


苗木「(そのあとにボクが一番良かったグラビアを選び、優勝者を決めるはずだった)」


苗木「(でも、ボクが選ぶまでもなく、ほとんどの参加者が自滅した……)」


苗木「(結果、まともにクリアした戦刃さんの一人勝ちになるようだ)」


舞園「ま、待ってください!」\反論!/


舞園「苗木くんがグラビアを選ぶシーンを省くなんて、収まりが悪くないですか?」


舞園「ここは一つ、番組の盛り上がり的にも敗者復活戦をするのは――」


戦刃「ダメ!戦場には盛り上がりなんてない!」


戦刃「それに、死人が蘇ることも……」


舞園「くっ……!!」


戦刃「というか、みんなはルール違反で失格になったよね……」


戦刃「苗木くんと甘々したんだし、文句は言えないと思うけど……」


舞園「くっ…………!!!」


霧切「真実はいつも一つ!」\反論!/


舞園「!!」


霧切「あら、恋と戦争においてはあらゆる戦術が許されるのよ?」


霧切「つまり、このゲームにおいてルール違反に見えたもの……それらはすべて戦術よ」


霧切「よって私たちも選ばれる権利を持ってるわ」


戦刃「……盾子ちゃんの話を聞いてたよね?」


戦刃「それがまかり通るなら、暴力、脅迫、銃で脅す、なんでもありになっちゃうけど」


戦刃「それでも、いいの?」ギロッ


苗木「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて!」


戦刃「大丈夫……苗木くんには手を出さない」


霧切「くっ……………………!!!」


セレス「(厄介なことになりましたわね……)」


セレス「(今話してるお三方は特に、苗木くんにがっつく肉食系)」


セレス「(草食系バリバリの彼を手中にすれば、骨までしゃぶる雌豹たち)」


セレス「(それは苗木くんの知るところでもあったでしょうし、彼の性格から見ても……)」


セレス「(争いを避けて、大神さんが残っていれば、彼女を選んでいたでしょう)」


セレス「(あるいは、わたくしが舞園さんの脱落に浮かれて、コラージュなんてしなければ……!!)」


セレス「くっ………………………………!!!!」


苗木「えぇっ!?なんでセレスさんまで巻き添えを!?」


朝日奈「もーどうすればいいの、これ!!」



議論スクラム開始!



舞園「後生です。リタイアしてください……」<リタイア


戦刃「リタイアしたら意味がない……」リタイア>


霧切「苗木くんは私の助手よ」<助手


戦刃「助手じゃない時間もあるんでしょ……?」助手>


セレス「大神さんが残っていれば……」<大神


戦刃「大神さんとも戦うよ……でも、リタイアしてくれた」大神>


大神「そういえば、他にもグラビアはなかったか……?」<グラビア


朝日奈「あったけど……バックに入ってたグラビアはさくらちゃんのが最後だよ?」グラビア>


苗木「…………」<…………


戦刃「…………///」…………>


江ノ島「うぷぷ……そんなに嬉しいのー?」<嬉しい


戦刃「うん!すごく、嬉しいよ……!」嬉しい>


江ノ島「そっかー。でも……残念だなぁ」<残念


戦刃「えっ、ざ、残念って……?」残念>



江ノ島「絶望的な勘違いを、あんたがしてることがだよ」<絶望



戦刃「………………えっ?」   >



議論スクラム失敗……



苗木「ど、どういうこと?」


江ノ島「……はぁ」プイッ


苗木「……?」


江ノ島「……ゆとり」


苗木「えっ?」


江ノ島「だから、ゆとりって言ってんの!」


江ノ島「ちょっとわかんないだけですぐに先生に聞いちゃって……」


江ノ島「いいかげん教えるのも飽きてきたし、それくらい自分で考えな!!」


苗木「き、君が言い出したんだよね……?」


苗木「というか、江ノ島さんの考えなんて、ボクに分かるわけないじゃないか……」


戦刃「そ、そうだよ盾子ちゃん!」


戦刃「私にも、絶望的な勘違いの意味を教えて――」


江ノ島「お姉ちゃんスイッチ、『だ』」


戦刃「えっ、ま、また……!?」


戦刃「えっと、だ、だ……」


江ノ島「だまれ」


戦刃「」


苗木「(うわぁ……)」


江ノ島「オマエはゲームの進行を邪魔した挙句、みんなと揉め事を起こしたよね?」


江ノ島「そんな問題児はクラスに要らんのだ!」


苗木「い、戦刃さ―――」


パーカー グイッ


苗木「うわっ!」