一色いろはのバレンタイン
できるだけキャラ設定は本編の通りです。一色いろは視点(?)で書いてます
もうすぐ待ち合わせの時間、やっぱり緊張して、落ち着かない。もし受け取ってくれなかったら?もし手作りチョコが重いと言われてしまったら?いや、大丈夫なはず。
葉山先輩の性格的にそんな事はあるわけないのは分かってる。でも、やっぱりその『もしも』ばかりが頭の中をぐるぐる回っている。
だんだん不安になってきたけど、もう葉山先輩を呼び出してしまったから、絶対に後には引けない。深呼吸をするけど、さっぱり落ち着かない。
………深呼吸全く効果ないじゃん
「ごめんいろは、遅くなった」
後ろを振り向くと、そこには葉山先輩がいた。
まぁ自分が呼び出したので当然なんだが、やはり緊張のせいか、かなり驚いた。
「いえ、時間ピッタリですよ〜葉山先輩」
もしかしたら声がうわずってるかもしれない。口の中がだんだん乾いてきた。
「で、ようって何かな?」
葉山先輩の爽やかな声を聞いて、緊張が増す。でも、その緊張を顔に出さないようにして、言う。
「葉山先輩、好きです。このチョコレートを受け取ってください」
…沈黙。葉山先輩からの返事がない。まさか、受け取ってもらえないのだろうか?焦りで頭が真っ白になるころ、ようやく葉山先輩が、口を開いた。
「君がそのチョコを渡したいのは、本当に僕なのかな?」
え?わたしが唖然とする中、葉山先輩は続ける。
「君はその言葉と、その手作りチョコを、本当は比企谷にあげたいんじゃないのかな」
そんなわけないじゃないですか!すぐにそう返そうとしたのに、不思議と言葉は出ない。
「そのチョコは、僕に渡していいのかい?本当に好きな人について、君はもう、我慢しなくていいと思うよ」
その言葉で、気づく。わたしは、比企谷先輩の事が好きで、でも、雪乃さんや結衣さんには敵うわけがないからと、諦め、葉山先輩が好きだと、思い込んでいたんだ。
「……」まだ声は出ない、でも、また頑張らなくてはいけない。
「ごめんなさい葉山先輩。このチョコ、やっぱり葉山先輩には渡せません」
「そうか」
なんて無責任な台詞だろう、自分でも笑ってしまいそうになる。しかし、今は時間がなくなった。
「すいません葉山先輩、少し行くところが出来ました」そう言って、走り出す。もしかしたら先輩は、もう帰ってしまったかもしれない。
「いろは!」
「すいません!今は時間が」
「比企谷なら、一階の自販機の前にいるはずだ」
なぜ葉山先輩がそんな事を知っているのだろうか、という疑問は、この時は全くなかった。
「ありがとうございます葉山先輩!」
言い、自販機に走る。もうすぐ太陽が沈みそうで、屋外の部活動は片付けを始めている、そして、自販機に近づくにつれて、人は少なくなり、自販機の前にいるのは、1人だけ。
「先輩!」
「一色?」
先輩が驚いた顔をしている、その顔が面白かったのでつい笑ってしまいそうになる。だけど、今は言う事がある。
「その…先輩、私、今までずっと葉山先輩の事が好きだと思っていました」
「お、おう」
「でも違ったんです。私は実は、その正反対のひとが好きだったんです。だけど、私は、それを押さえ込んでいた。だって、結衣さんや雪乃さんには敵うはずがないから。私がどれだけ頑張っても、絶対に、手にする事が出来ないから…だけど、葉山先輩に言われて、気付いちゃったんですよ。こんな気持ち、気付いちゃったらもう、抑えられませんでした!だって、初めて、本気で人を好きになって、それが自分でも信じられないくらいに強くて…」
あれ?私今、何を言ってるんだろう。これでも、叶わないことを知っていて、次から次へと涙が溢れてくる。走ってきて髪はくちゃくちゃだし、服はかなり乱れている。いつもの私なら、許せない格好だった。
「絶対に叶わない夢だってわかってる、だけど先輩、あなたのことが好きです。付き合って欲しいとは言いません!だから…だからせめて、このチョコ…受け取って貰えませんか?」
言いきることができた。これで良い、気持ちが伝えられただけでも、充分だ。後で葉山先輩にはお礼を言わないといけない。先輩は驚いた様子で、無言でチョコを受け取った。
「では、私は帰りますね」
涙を拭いて、校門に向かう。もう涙は止まったようで、ぼやけていた視界がいつの間にか綺麗になっていた。
「なぁ、一色」
先輩が呼び止める。私が振り返ったとき、先輩は、少し照れたように、言った。
「俺と付き合って欲しい」
続ききになります!
改行した方がいいと思う
これはひどい