2016-01-05 23:40:41 更新

概要

艦これ煙草SS
AQさんのSSに触発されて執筆
艦娘が煙草や飲酒をしています
また、CP要素ありです
更新は一週間に一~二回程度。


前書き

このSSでは艦娘が喫煙、飲酒等を嗜んでいます。
提督、もしくは男キャラは一切登場しません。
またCP要素があり、主な登場人物の中では天龍×響となっています。
それらを了承した方のみ閲覧お願いします。
全艦娘を把握しているわけではないので、口調などに違和感を覚えるかもしれません。
そして煙草やお酒の知識は偏りがちなため、修正点があれば気楽にご指摘ください。


【腹黒響】


響「やあ、響だよ」


響「Верныйでもあり、府内ではヴェルとも呼ばれているよ」


響「……ここはどこかだって?」


響「なに、ただの空き部屋さ」


響「まあ、空き部屋ではあるけれども、喫煙所として使われてもいるんだ」


響「だから煙草を嗜む艦娘は自然と出入りが多いよ」


響「私かい? ああ、勿論吸うよ」


響「昔は私と同じ名前の銘柄もあったらしいけれど、既に製造されていないからね」


響「私が吸っているのはこれさ。PALL MALLの赤」


響「聞いたことがないかい? まあ、マイナーな部類ではあるかな」


響「ちなみにこの銘柄は、アニメや漫画の世界で有名なとあるキャラクターが吸っていることでも知られているんだ」


響「世界を股に掛ける大泥棒。その右腕でもある、凄腕ガンマンのことさ」


響「……知らない? そうか、それは済まない。次からはもっとわかりやすい例えを用意しておくよ」


響「それより、そろそろいいだろうか。煙草の話をしていたら私も吸いたくなってきてしまってね」


響「では、お言葉に甘えて……」


 キーン、シュボッ


響「ふぅー……」


響「Хорошо……最初のこの一口は堪らないね」


響「ここにコーヒーがあれば最高なんだけれど……」


???「……なんでこっちを見てるのよ」


響「いや、コーヒーがあれば最高だと思ったのさ、暁」


暁「嫌よ」


響「まだ何も言っていないじゃないか」


暁「言わなくてもわかるわよ!」


暁「それより、さっきのはなんなのよ」


響「さっき、とはなんのことだい?」


暁「明後日の方向向いて一人ずっと喋ってたじゃない」


響「ああ、あれか。あれは画面の向こう側に話していたのさ」


暁「は? 画面の向こう側? どういうこと」


響「暁は知らなくてもいいことさ」


響「それより、コーヒーはまだかな?」


暁「だから嫌だって言ったでしょう」


響「そうか……一人前のレディというのはコーヒーの一杯も淹れることができないのか」


響「……仕方ない自分で――」


暁「いいわ。そこまで言うのなら淹れてくるわよ」


響「おや、いいのかい? さっきまで頑なに拒んでいたというのに」


暁「ふん、丁度私もコーヒーが飲みたいと思っていただけよ。響のはついでなんだから」


響「そうか。ならせっかくだし、お願いしようかな」


暁「当然よ。感謝しなさい」


響「ああ、それとコーヒーにはウイスキーを混ぜておいてくれるかい」


暁「注文が多いわね……まあ、わかったわ」


 スタスタ、バタン


響「やれやれ……」


響「暁との押し問答で煙草を全く吸えなかったよ」


 キーン、シュボッ


響「ふぅ……」


響「いや、それにしてもあれだ」


響「……レディはチョロいな」




【天龍はカッコイイ。これ重要】



響「ふぅ……」


 キー、バタン


響「おや、お姉ちゃんじゃないか」


???「誰がお姉ちゃんだ」


響「天龍は第六駆逐隊を引っ張ってくれる存在だから仕方ないさ」


天龍「だからってお姉ちゃんはねえだろうが。普通に天龍って呼べ」


響「なら天龍ちゃんと呼ぼうか」


天龍「そりゃ龍田だ」


響「全く注文の多い……仕方ない、天龍と呼ぶよ」


天龍「ったく、最初からそう呼べってんだ」


響「ふぅ……」


天龍「……」


響「……そんなに見つめられると吸いにくいんだが」


天龍「ん? ああ、すまん」


響「天龍も吸いに来たんだろ?」


天龍「まあ、ここに来る理由なんてお前に会うか吸いに来るかの二択しかないからな」


 カチッ、カチッ


天龍「ちっ、火をくれ」


響「んっ」


天龍「そっちかよ……仕方ねえな」


響「……どうだい、私の火は」


天龍「ふぅ……ああ、旨い」


響「シガーキスもだいぶ慣れたね」


天龍「自分の火があるくせに毎回せがんでくる輩がいるからな」


響「ほう、そんな輩がいるのか」


天龍「お前だろうが、響」


響「はて、どうだったかな」


天龍「ったく……ふぅ……」


響「それより、さっきはなんだったんだい?」


天龍「んー? ああ、見てたことか」


響「そうさ。それなりの理由があると思ってね」


天龍「いや、ただお前は珍しい持ち方をしてんだなって思っただけだよ」


響「なるほど。それは確かにだ」


天龍「俺の知っている限り、中指と薬指で煙草を挟むやつなんてお前ぐらいだよ」


響「だろうね。私もそうだと思ってこの挟み方にしているのさ」


天龍「どういう意味だよ」


響「他人と同じなのが嫌なだけさ。数に流されるような生き方、マニュアル通りの生き方っていうのが気持ち悪いんだよ」


天龍「煙草の握り方ぐらいでそこまで考えるやつなんてお前ぐらいだろうな」


響「Спасибо……私には褒め言葉さ」


響「それより、また煙草を変えたのかい?」


天龍「ん? ああ、まぁな」


響「見たところMarlboroだね」


天龍「fusion blastってやつだ。フィルターにカプセルが二つ入ってる」


響「それは珍しいね。普通のメンソとはどう違うんだい?」


天龍「スーッとするのは変わらねえけど、柑橘系の主張が多い感じだな。メンソの中でも吸いやすい部類だな」


響「確かに、紫煙もそんな臭いがするね」


響「それにしても、本当に浮気症だね」


天龍「元々ニコチンを摂取するために吸ってたわけじゃないからな」


天龍「色んな味や香りを楽しみたいんだよ」


響「そうか……その理由からするとそろそろ私もそうなのかな?」


天龍「は?」


響「煙草もころころと変わる。なら、女も同じじゃないかなと思ってね」


天龍「ふっ……くっ……あは、あははっ――ゲホッ、ゴホッ!?」


響「ああ、そんな吸いながら笑うから咽るんだよ」


天龍「……はぁ、はぁ、はぁ……誰のせいだ、誰の」


響「私のせいだとでも?」


天龍「当たり前だ、馬鹿」


響「馬鹿とは心外な」


天龍「馬鹿なんだから仕方ない」


天龍「それと、耳の穴かっぽじってよーく聞け」


響「んっ……ああ問題ない」


天龍「……本当にかっぽじる奴は初めてだよ」


天龍「まあ、いい。確かに煙草は一週間、下手すりゃ数日で変わるさ」


天龍「けどな。大事な女を変えたいなんて一度たりとも思ったことはねえよ」


響「……」


天龍「……」


響「……すまない。よく聞こえなかった」


天龍「おい、こら」


響「もう一度はっきりと大きな声で言ってくれるかな」


天龍「ふざけんな。あんなこっ恥ずかしい台詞、そう何度も言えるか?」


響「できれば大事なという部分を大好きな響に変換して欲しいんだが」


天龍「ちゃんと聞こえてるじゃねえか!」


響「はい、どうぞ」


天龍「どうぞ、じゃねえだろ!」


響「ふふふ、君は面白いな」


天龍「誰のせいだ、誰の」


響「すまない、すまない。ところで天龍……」


天龍「あん、なんだよ」


響「その気持ちはこれからも変わらないかい?」


天龍「ふぅー……」


天龍「当たり前だろ」


響「……なかなかの直球だね」


天龍「俺はなんたって天龍様なんだからよ」


響「Хорошо……自信過剰だね」


天龍「否定はしない」


響「ふむ、だが嬉しいよ」


響「今夜、どうだい?」


天龍「お前は本当、見かけによらず甘えたがりだな」


響「ああ、私も否定はしないよ。で、どうだい」


天龍「……明日、起きれなくなっても知らないからな」


響「そうか。それは、覚悟しておこう」




【雷電姉妹】



雷「電! 緊急会議を始めるわ!」


電「突然どうしたのですか?」


雷「突然もなにも、最近の響に関してよ」


電「響がどうかしたのですか?」


雷「だって響、ここ最近は喫煙所にしかいないじゃない」


雷「最初こそは頑張っていた暁でさえ、今じゃ諦めてるわ」


電「んー……確かにそれは由々しき事態なのです」


雷「でしょう? だからここは私達、雷電姉妹が一肌脱ぎましょう!」


電「……ちょっと待って下さい」


雷「何よ。いきなり話の腰をおるつもり?」


電「いえ、その件に関しては大いに賛同しますが……なんですか、雷電姉妹って」


雷「私と電の名前を並べたらそう読めるでしょう?」


電「それはそうですが……」


雷「それに電が否定しても、皆は私達姉妹の事をそう呼んでるわよ」


電「知らなかったのです……」


雷「発信源は青葉らしいけれど」


電「大体想像がついてはいたのです……それで、具体的に何をしますか?」


雷「そりゃもう、本陣に突撃あるのみよ!」


電「……前途多難なのです」




【喫煙所の重鎮】



響「ふぅ……」


暁「本当、響の煙草は煙草って感じね」


響「煙草としてはMarlboroに近いね」


響「暁のそれはPIANISSIMOかい?」


暁「んー? ああ、これね。そうよ」


響「PIANISSIMOはメンソールだと思っていたんだけれど、香りはそうでもないね」


暁「ふぅ……まあ、そうね。この煙草イコール、メンソールって連想するのは普通よね」


暁「けど、これはメンソール煙草じゃないの」


響「PIANISSIMOなのに?」


暁「そ。precia temore oneっていう、地域限定のノンメンソール」


暁「でも、ノンメンソールだけれどカプセルが付いてるのよ」


響「ふぅ……それは珍しいね」


 キー、バタン


天龍「おう、響はいるか」


天龍「って、聞くまでもねえな」


響「やあ、天龍。それと、今日は龍田もいるんだね」


龍田「あらー? お邪魔だったかしら?」


響「そんなことはないさ。賑やかなのは嫌いじゃない」


龍田「うふふ、ありがとう。暁ちゃんもお邪魔するわね?」


暁「別に構わないわ。それより、何か飲む? 丁度喉が乾いてきたところなの」


響「ウイスキーのコーヒー割り、ホットで」


天龍「俺、コーラ」


龍田「なら、私は紅茶でお願いねー」


暁「昼間からお酒なんて……響の今後が心配だわ」


響「心配いらないさ。私の身体はお酒と煙草でできているからね」


暁「中毒者の発言ね」


暁「とりあえず、少し待ってなさい」


龍田「暁ちゃん、持ってくるの大変だから私も手伝うね」


暁「ありがとう。それじゃ、お願いするわ」


 キー、バタン


天龍「あー二人か」


響「不満かい?」


天龍「なわけねーだろ」


響「それはよかった」


天龍「にしても、ウイスキーのコーヒー割りなんてあるんだな」


響「まぁね。正式名称もあるんだけれど、ウイスキーのベースによって名称が違うんだ」


天龍「ふーん。例えば?」


響「代表的なのだとアイリュッシュ・ウイスキーをベースにしたアイリュッシュ・コーヒー」


響「英国産のスコッチだとゲーリック・コーヒー」


響「ジャガイモが主原料のアクアビットだとスカンジナヴィア・コーヒー」


響「フランスのカルヴァドスなら――」


天龍「ストップ、ストップ!」


響「なんだい?」


天龍「……どれだけあるんだよ」


響「……銘柄の数だけかな? 私も全ては把握してないよ」


天龍「とりあえず、あれだ。カクテルは奥が深いってことだな」


響「まあ、まとめてしまえばね」


 ドタドタ


天龍「あん? やけに外が騒がしいな」


響「大体、予想はつくけれどね」


天龍「わかるのか?」


響「なんたって姉妹だからね」


 バーン


???「たのもー!」


???「な、なのです」


天龍「お、雷電姉妹か」


響「ほらね」


電「天龍さんまで……」


雷「ほら、私が言ったとおりでしょ!」


天龍「あの二人は何を言ってんだ?」


響「天龍が二人を雷電姉妹と呼んだからじゃないだろうか」


天龍「なんだよ、カッコイイじゃねえか雷電」


雷「やっぱり天龍はわかってるわね!」


響「けれど、電はどうも恥ずかしいみたいだね」


電「うぅ……その通りなのです」


天龍「恥ずかしいなんてあれだ、煙草と一緒で慣れれば気にしなくなるさ」


響「それで、二人はどうしたんだい? その様子だと、煙草を吸いに来たという感じじゃなさそうだが」


雷「それよ、響! 最近の響は喫煙室に入り浸ってまともに外に出てないじゃない!」


響「ふむ、察するに雷は寂しいわけか」


雷「そうよ!」


天龍「からかったつもりがそのまんま返されたな」


響「……ああ、こういうのはからかった側が恥ずかしくなるから困る。やはり電に言うべきだったよ」


電「それで、どうにかして響を動かせないかと二人で少し考えました」


響「と言っても、私はそう簡単には動かないよ」


雷「なんでよ。別に煙草なんて外でも吸えるじゃない」


響「外は日差しがきついのさ。まあ、曇った日や雨の日なら外に出て吸うよ」


天龍「湿度が変わって煙草が旨くなるからな」


響「わかっているじゃないか、天龍」


電「自分の部屋では吸わないんですか? それなら私達もここまで往復する手間は省けるのです」


響「自室だと家具に煙草の臭いやヤニが付くから基本吸わないね。やはり煙草は喫煙場所で吸うのが一番さ」


天龍「でもお前、俺の部屋では普通に吸うよな」


響「天龍が部屋でも吸っているからね。部屋の主が吸うのなら私も吸うよ」


天龍「まあ、俺も別に気にしちゃいねえけどな」


雷「ああ言えばこう言う……」


響「暁も同じように言ってきた事があるけど……どうだい? 諦めるという選択肢を選んだ方が楽だと思うよ」


雷「そうはいかないわ! 雷電姉妹はちょっとやそっとじゃ諦めないんだから」


響「……なんだかやけに自信満々じゃないか」


雷「今にわかるわ」


電「あわわ……」


 トコトコ、キー


響「やぁ、おかえり……どうしたんだい?」


暁「いやね……戻る途中でこんな張り紙が鎮守府内に貼られてたの」


龍田「途中まで数えてたんだけれど、多すぎて諦めちゃったわ」


天龍「龍田、それ一枚くれ」


龍田「はい、天龍ちゃん。後、コーラね」


天龍「おう、サンキュー」


響「天龍、何が書いてあるんだい?」


天龍「ここの喫煙所に関してだな」


響「……鎮守府内にある空き部屋の有効活用。現在、鎮守府内にある空き部屋を喫煙所として設けています」


天龍「しかし、空き部屋を喫煙所として使うだけでなく、もっと有効活用できないかという意見が挙がっております」


響「そこで工作艦の明石に協力を依頼。バーカウンターの設置や調理器具の配備……へーそれはいいことじゃないか。ますます入り浸っちゃうよ」


暁「響、その先をよく読んでみてから言うのね」


天龍「えーっと……また、空き部屋の管理に関してですが、多数の艦娘から駆逐艦響にとの声が挙がっております」


響「……なんだい、それ」


天龍「いや、まだ続きがある……えーっと、喫煙だけでなく、飲食も楽しめる空間。しかし、それだけでは単なる喫茶店と何ら変わりありません」


天龍「そこで、管理人候補にある駆逐艦響の相談室として、空き部屋を改装したいと計画しております」


天龍「空き部屋、喫煙所としての呼称はなくなり、今後は『響の部屋(仮)』として運営していきたいと思っております」


天龍「今後は相談窓口や、口では言い難い事を便箋で受け取る投函所の設置。勿論、普通の喫煙所としても開放予定です」


天龍「今回、このような案を出していただいた駆逐艦暁、同じく響、雷電姉妹の四名には、今後の進展について随時連絡を致します」


天龍「……重巡洋艦青葉、だとさ」


暁「……言っとくけど、私は初耳だからね。全部この二人だからね」


雷「電がどうしてもって言うからやったのよ!」


電「えっ!? 雷が言い出したことじゃないですか!」


龍田「あらあら……でも、なんだか楽しそうね」


天龍「だな。まぁ、これを通すには響が頷かなければならないけれどな」


響「……」


雷「どうよ。これなら響もここに入り浸る気は失せるでしょう」


電「……胃が痛くなってきたのです」


龍田「大丈夫?」


電「ありがとうなのです……」


雷「で、どうするの響。部屋にこもるだけじゃなく、ちゃんと外に出ることを考えてくれれば、この案は撤回するわ」


暁「たまに雷が怖いわ……」


電「他人のために尽くす精神は、ある意味脅威なのですよ……」


響「……」


天龍「響、どうする?」


響「――いよ」


天龍「あん?」


響「いいよ。やろうか」


雷「あ、あれ?」


響「別に問題はないだろ。過ごしやすくなるんだ。相談に乗ってあげるくらい安いものさ」


雷「……うー」


響「それと、受けるにあたって部屋を拡張させようかと思う」


天龍「なんだ、もう構想してるのか?」


響「いや、プライベートルームさ。寝室を……四人が寝れるくらいの部屋を一つね」


電「響、それは……」


響「これで、一緒に過ごすことができるだろう? どうだい、雷」


雷「うぅ……うがー!」


龍田「あらあら……雷ちゃん恥ずかしがっちゃって」


雷「違うもん! 違うもん!」


天龍「とりあえずあれだ。一本吸ってけ」


暁「あら、天龍の煙草がまた変わってるわ」


天龍「今度はJPSだ」


暁「ボックスの黒と金文字が天龍と合うわね」


天龍「だろー?」


 シュボッ


龍田「でも、天龍ちゃんからもらったけれど口に合わないのよ」


天龍「ふぅ……まあ、11ミリだからな」


電「実は電も同じ銘柄なのです」


 シュボッ


天龍「……今日一番の驚きだ」


暁「この子、意外ときついやつ吸ってるわよ。前はバット吸ってたし」


天龍「マジかよ……」


響「ほら、雷もどうだい?」


雷「……貰うわ」


響「火、着けてあげるよ」


 キーン、シュボッ


雷「ん……ありがとう」


 キーン、シュボッ


響「ふぅー……」


響「さて……今後は忙しくなりそうだな」



【響の部屋(仮)】



???「よしっ……これにて完成です!」


響「Хорошо……ありがとう、明石」


明石「いえいえ。こちらこそ普段とは違う事ができて楽しかったですから」


響「そうか、それは何よりだ」


響「どうだい、一服していくかい?」


明石「そうですね。室内の説明を兼ねてお邪魔しますね」


 カランカラン


響「ドアベルがあるだけで、だいぶお洒落だね」


明石「そうですね。この音を聞くと別の世界に入ったみたいです」


響「床は敢えて何も手を加えていないんだね」


明石「最初はワインレッドの絨毯を敷き詰めようと考えていたんですが……ちょっとここを踏んでみてください」


響「ここかい?」


 ギッ……


響「板が軋むね」


明石「そうなんですよ。高級感を醸し出す絨毯が軋むのはちょっと……」


明石「そこで敢えて床板の木目を晒し、壁や家具の色もシックなものに揃えてみました」


響「この軋みもインテリアの一つという訳だね。うん、嫌いじゃない」


響「照明も電球色だね……暖かみのある落ち着いた色だ。部屋にマッチしてるよ」


明石「ありがとうございます。後、喫煙場所に関してはカウンターの他に四人がけのテーブルが二つ」


響「この灰皿……全部が木製だね。なんだかどっしりとしている」


明石「それは色のせいですね。ウォールナット色、チェリーウッド色、マカボニー色かで迷ったんですよ」


響「この色具合だと……ウォールナット色かな?」


明石「博識ですね。響さんも言ったとおり、どっしりとしたものにしたかったんです。灰皿は置くものですから」


明石「最初はガラス製を検討していたんですけど……どうもしっくりこなくて作っちゃいました」


響「Хорошо……明石、君は家具職人になれるよ。木の加工は鉄よりも難しいと聞くしね」


明石「あははっ、世辞でも嬉しいです。それじゃ、早速ですが吸ってみますか?」


響「ああ、こんな素晴らしい灰皿を前に吸わないのは失礼だからね」


明石「では、私も失礼して……」


響「ほう……ソファーの硬さも丁度いいね。これなら長時間寛ぐことができる」


明石「とりあえず、一人用のソファーだけ作りましたが……どうします? 複数人が座れるものも検討しますか?」


響「そうだね。複数人用は各テーブルに一つは欲しいかな」


 キーン、シュボッ


明石「そういえば、響さんと煙草を吸うのって初めてですね」


 カチッ、カチッ、シュボッ


響「んっ……ふぅ……そういえばそうだね。基本、私は外を出歩かないしね」


明石「ふぅ……私ももっぱら工廠ですからね。ここの喫煙所だと少し歩きますから」


明石「それより、少し気になったものがあるんですけど、いいですか?」


響「っふぅー……なんだい?」


明石「響さんのオイルライター見せてください」


響「ああ、そんなことか。いいよ」


明石「ありがとうございます……おお、ずっしりとしてますね。ケースの厚さと重さから察するにアーマーですか?」


響「流石だね。やはり重みがあったほうが、手にした時に馴染むんだ」


 キーン、カシャ、キーン、カシャ


明石「ふぅ……透き通ると言うべきなんでしょうか……この蓋を開けた瞬間の音がなんとも言えないです」


響「んっ……小振りの雨の日なんかはその音を聞くととても心地いいよ」


明石「でしょうね……後、この狼のデザインは浮き彫りですね……相当手間がかかっています」


響「シルバーをくっつけただけだと安っぽいからね」


明石「カッコイイです。狼の遠吠えの瞬間もそうですが、私はこの毛並みの表現が素晴らしいと思います」


明石「敢えて大雑把に彫った事で、まるで火のように表現されていますね」


響「ふぅ……ライター一つでそこまで語ってくれるとはね……持ち主の私としても嬉しいよ」


明石「いやー職業病なんですかね。こういう作り物を見るとつい反応しちゃいます。あっ、どうもお返しします」


響「ん……ありがとう」


明石「ちなみにヒンジ部分が歪み始めていたので、交換する際は持ってきてもらえば修理しますので」


響「本当、流石だよ君は。それと、私も気になることが一つ」


明石「あ、もしかして煙草ですか?」


響「ああ、HOPEを吸う人は周りにいなくてね。実際のところどうなんだい?」


明石「見た目はレギュラーサイズの煙草に比べてやはり短いですよ。けれど、これ見てください」


響「ふぅー……微妙だけれど太めに巻いてあるのかな?」


明石「ええ、そうなんです。後はフィルターも短いですね」


響「喫煙時間はさほど変わりは無いってことか……それにしても14ミリか」


明石「結構多いですよね。でも、吸いやすい部類だと思いますよ」


明石「矛盾していますが、強いけど重さは控えめですかね?」


明石「吸った感じは煙草の味がガツンと来て、若干甘みを感じます」


響「確か……はちみつの香料だかなんだかを使用しているんだったかな」


明石「はい、そうです。と言っても、BLACK DEVILとかの甘さに比べたら負けますがね」


 カランカラン


天龍「よっ、響……と、明石」


響「やぁ、天龍。いらっしゃい」


明石「どうも、天龍さん」


天龍「へー……だいぶ様変わりしたな、おい」


響「明石が腕を振るってくれたおかげさ」


明石「皆さんには悪いですが、艤装とかよりも夢中になっちゃいました」


天龍「おいおい、頼むぞ工作艦。いやーそれにしても、色々とすげーな」


明石「カウンターにはキッチンと大型冷蔵庫を配備しています」


明石「ビールサーバーも検討していましたが、流石に管理が大変になるので導入はしない方向に決めました」


響「まあ、それは仕方ないさ。私もそこまで手が回らなくなるだろうし」


天龍「おい、見ろよ響。カウンターの上にでっけぇ角が飾ってあるぞ!」


響「ああ、ここからでもその大きさがわかるよ。ワツシの角かい?」


明石「響さんは何でも知ってますね……その通りです」


天龍「ワツシ? 牛か?」


響「ああ、アフリカ原産の牛の呼称だよ。横に伸びた太い角が特徴的だね」


明石「最初は鹿の角でも飾ろうかと思っていたんですけど、なんだかありがちでしたからこっちにしてみました」


響「なかなかインパクトがあっていいと思うよ」


天龍「にしてもあれだな……カウンターがやけに近く感じるんだが」


響「そうなのかい?」


天龍「ああ、ちょっとこっちに来てみろよ」


響「どれ……ああ、確かにその通りだね。カウンターがコの字型に固定されているせいかな」


天龍「明石、これ狭くて不便になんねぇのか? まあ、ここに立つのは響だから問題ねえとは思うが」


明石「その作りはわざとそうしてるんですよ」


天龍「わざと?」


明石「ええ。コの字型にカウンターを配置する事で、席の皆を見ることができます」


明石「また、敢えて狭くすることで、バーテンと接しやすくするといった配慮があります」


明石「単なる飲みの席、喫煙所ではなく、触れ合いを大事にしていただけれたらと思いまして……」


響「……これはあれだね。責任重大だね」


天龍「ああ。お前、大丈夫か?」


響「まあ、やれるだけやってみるよ」


明石「そんなに気張らなくてもいいと思いますよ。気楽にやりましょう、気楽に」


響「Спасибо……そう言ってもらえると助かるよ」


天龍「で、オープンはいつ頃を予定してるんだ?」


響「ああ、とりあえず一週間後。キッチン周りも一度使ってみないといけないからね」


天龍「酒もねえしな」


響「私の好みだと偏りそうだ……青葉に頼んで各艦娘の好みを聞いてもらおうか」


明石「では、それは私が手配しておきますよ。この後、青葉さんのところでインタビューを受けることになってるんです」


天龍「インタビュー? 一体、なんのだよ」


明石「まあ、この空き部屋の改築にあたってどのような工夫をしたかどうかとか、後は宣伝も兼ねてですかね」


響「今回は本当にありがとう、明石」


明石「いえいえ、さっきも言いましたが、普段できなかったことができて楽しかったですから」


響「オープンの際には明石も呼ぶよ」


明石「わかりました。楽しみにしてますね。では、私はそろそろいきますんで」


天龍「おう、またな」


 カランカラン


天龍「……ところで、この部屋の名前ってどうなってるんだ?」


響「……ああ、すっかり忘れていた。確か、青葉の記事には『響の部屋(仮)』と書かれていたね」


天龍「名前は大事だからな。俺も適当なのを考えておいてやるよ」


響「Спасибо……あまりカッコイイ名前にはしないでくれよ。恥ずかしいから」


天龍「おい、それはどういう意味だ」


響「さあね」



【プレオープン】



 キーンシュボッ


響「ふぅ……」


響「夜は静かだね……」


響「こう漂う紫煙を見つめていると時間の感覚を忘れてしまう」


響「そんな風に考えるのは私だけだろうか」


響「……独り言が多いね」


響「どうやら緊張しているみたいだ」


響「んっ……」


響「ああ、そろそろだね……」


響「ふぅ……」


響「さて……やるとしますか」


 カランカラン


天龍「よう、来たぞ」


響「ああ、待ってたよ。いらっしゃい」


龍田「あらーお洒落な店内ね」


電「ほえー……開いた口が塞がらないのです」


暁「ふ、ふん。こんな事で驚いているようじゃ電もまだまだレディには程遠いわね」


雷「響もいつもとは違うわね。どうしたの、その服?」


響「これかい? これは鳳翔さんからのご厚意で頂いたものなんだ。似合ってるかい?」


電「とってもカッコイイのです!」


龍田「でも、どこかで見覚えがあるデザインね」


響「ああ、デザインの根本は陽炎型の制服を真似ているらしいからね。多分、そのせいだろう」


天龍「なんつーか、バーテンって感じだな」


暁「本当に大丈夫かしら……雰囲気と見た目だけじゃないの?」


響「そうならないように気をつけるさ。さて、立ち話をしているのもあれだろう。席にかけなよ」


雷「私はここー!」


電「なら、私は雷の隣に座りますね」


暁「私はここにするわ」


天龍「んじゃ、暁の隣は俺な」


龍田「天龍ちゃん、隣失礼するね」


響「さて、早速だが何か飲むかい?」


天龍「んじゃ、コークハイ。あ、灰皿使うぜ」


龍田「天龍ちゃんが飲むのなら私も……モヒートをお願いするわ」


暁「カシスオレンジ」


雷「私、シャンディガフで!」


電「生中をお願いします」


天龍「電ってなんだかあれだよな……」


響「まあ、天龍が思うこともわからなくはないよ」


電「へ?」


天龍「いや、なんつーか中年親父みたいな?」


雷「あははっ!」


龍田「あらーそんなストレートで言うなんて天龍ちゃんも酷いわ」


暁「変化球で追い込む龍田の方がよっぽど酷いと思うわ」


電「まあ、自覚はしているのであまり気にはしないのです」


響「そういえば電。バットにまた戻したのかい?」


電「ええ、一度これにハマるとやはり他のでは満足できなくて……」


暁「そんな辛いのよく吸えるわね……」


天龍「Golden Batって、実際にどう吸うんだ? フィルターが無いやつは吸ったことねえからな」


電「まずは片端を平坦な場所でトントンと何度がぶつけて、葉っぱの隙間を無くします」


電「そうすると隙間を埋めた分だけ空白ができるので、その部分を咥えるのです」


電「ただ、これだけでは吸い込んだ時に葉っぱが入ってくるので、空白部分の紙を織り込んで蓋にします」


電「これで完成ですが、咥える時は深く咥えないほうがいいのです」


電「なるべく唇の先端で優しく包み込むようなイメージで吸えば大丈夫です」


天龍「なんか色々と面倒だな……」


雷「天龍、実はそれだけじゃないのよ」


天龍「あん、何がだ?」


雷「電の煙草を持つ指先を見てみてよ」


龍田「あら、もしかしてこれはヤニ?」


暁「電はかなりのヘビーだからね……しかもフィルターなしのなんて吸うから煙が直接指にあたってるのよ」


天龍「ほぼ茶色に染まってるじゃねえかよ……落ちるのか?」


暁「爪やすりで表面を削ったら落ちたって前は言ってたわ」


天龍「普通に洗っただけじゃ落ちねえのかよ……」


電「まあ、こればかりは仕方ないのです」


響「さて……皆が話に夢中になっている間に作り終わったよ」


雷「ありがとう!」


天龍「やっぱカクテルもコーラだよな」


龍田「天龍ちゃん、コーラが本当に好きね」


暁「煙草の時もコーラを飲んでるわよね」


電「コーラと煙草って合うのですか?」


天龍「意外と合うぜ。ていうか、カフェインが含まれているものは基本的に合うな」


響「天龍の部屋の冷蔵庫はすごいよ。コーラしか入ってなかったから」


響「さて、飲み物も行き渡ったところだし、乾杯といこうじゃないか」


天龍「響は何飲むんだ?」


響「響だよ」


天龍「いや、そうじゃなくてさ」


響「だから、響だよ」


天龍「あん?」


龍田「ふふふ、天龍ちゃん。響ちゃんと同じ名前のお酒があるのよ」


天龍「なんだよ、それならそうと早く言えよ」


響「だから言ったじゃないか」


雷「もう、いつまでグラス持たせるのよ。早く乾杯しましょう!」


響「ああ、すまない。では、改めて……」


響「雷と電の発言から始まった『響の部屋(仮)』だが、任されたからには精一杯務めるつもりだ」


響「皆の憩いの場となれるよう、これからもよろしく頼む」


響「では、皆のために――」


響「――За здоровье……乾杯」


「「「「「乾杯!」」」」」



【青葉通信】


  皆さんこんにちは。


  今週もやってまいりました青葉通信です。

  

  さて、最近の話題についてこの紙面を通じて皆さんにお知らせしたいと思います。

  

  喫煙者の方々が利用されていた空き部屋。


  そこの重鎮でもある暁型駆逐艦、響さん。

  

  そんな彼女が一部の艦娘と共に空き部屋を改装し、憩いの場として部屋を改装。

  

  『響の部屋』として、先週末よりオープンされました。

  

  私も取材を兼ねて一度訪問してみましたが……いや、すごいのなんの。

  

  段ボール箱や使わなくなった機材が転がっていたあの部屋はどこへいったのか。

  

  工作艦、明石さんにより、お洒落で少しアダルティな空間へと変貌していました。

  

  ポールでも設置してみたらどうか、と私が冗談で質問したところ――

  

  「いいね。その日の戦績最下位の艦隊には裸で踊ってもらうというのもありだね」(響)

  

  ……と、とんでもない発言を耳にしました。

  

  「ああ、他人が恥辱に悶える姿というのはなんとも言えない高揚感を味わえるね」(響)

  

  ……さすが府内最高練度なだけあって、発言レベルも高いです。皆さん、怒らせないようにしましょう。


  さて、話を戻しまして、実際どのような変貌を遂げたのか、工作艦の明石さんにお伺いしました。

  

  「とりあえず、今回は本当に楽しくやれました」(明石)

  

  ――それは何よりです。

  

  「普段はちょっとサボる艤装の開発ですが、今回は最初から最後まで本気でしたよ」(明石)

  

  ――今、とんでもない爆弾発言を聞きました。これ、記事になりますからね?

  

  「テーマとしては皆が寛げる空間。照明や家具も暖かみのある色合いで揃えてみました」(明石)

  

  ――私もそう思います。家具の制作も全て明石さんが行ったとも聞いています。

  

  「まぁ、でも最初は問題ありましたよ。部屋の広さが圧倒的に足りなくて」(明石)

  

  ――そうですよね。あそこまで広くはなかった筈ですが……。

  

  「なので扶桑型戦艦のお二人の部屋をぶち抜いて部屋を拡張しました」(明石)

  

  ――すごい軽いノリで言っていますが、とんでもない事ですよ。ちなみに居住場所を失ったお二人は現在どちらに?

  

  「響さんの部屋に住んでるらしいですよ」(明石)

  

  ――それ、解決になっていないですよね? 響さんの部屋がないじゃないですか。

  

  「響さんは天龍さんの部屋か、喫煙所に設けたプライベートルームで生活すると言っていました」(明石)

  

  ――薄々は感づいてはいましたが、やはりあの二人はそういうご関係なのですね。次回の記事に利用させていただきます。

  

  「それで、広くなった分はカウンターを配備して、お酒や軽食を摘めるように改装しました」(明石)

  

  ――これ、本当に喫煙所ですか? 逆に入りにくいでしょう。

  

  「そんな事を気にする艦娘がいると思いますか?」(明石)

  

  ――……それもそうですね。我が物顔で入り浸っている姿が想像できます。

  

  「それと、相談窓口の設置。鎮守府内にもポストを設置しました」(明石)

  

  ――これなら直接相談できない事も気軽に相談できますね。

  

  「ちなみにポスト内の回収は長門さんが立候補してくれましたよ」(明石)

  

  ――……あの人は本当に駆逐バカですね。駆逐艦のためなら死ぬんじゃないですか。

  

  「そういえば、名前はまだ決まってないんですよね」(明石)

  

  ――『響の部屋』ではないという事ですか?

  

  「はい。今のところは『響の部屋(仮)』だそうですよ」

  

  ――なるほど。では、私も紙面上ではそのように表記をさせていただきます。

  

  「皆さん、『響の部屋(仮)』をよろしくお願いします」

  

  ――以上、明石さんでした。

  

  さて、喫煙所が大きく変貌し、喫煙者以外にも寛げるような空間『響の部屋(仮)』。

  

  管理人である響さん始動のもと、航空母艦の鳳翔さん。給糧艦、間宮さんも手伝うそうです。

  

  普段の疲れを癒やしに一度、お立ち寄りしてみてはいかがでしょうか。(記事・取材担当、わかば吸いの青葉)



【空白の一ヶ月】



暁「そういえば、今日ね」


天龍「そうだったか?」


暁「あら、響の相手にしては冷たいわね。退院の日を忘れるなんて」


天龍「周りがギャーギャーと騒ぎ過ぎなんだよ。たかが虫垂炎だろ? 治って当然だっての」


雷「天龍ひっどーい」


電「響が可哀想なのです」


雷「そんな天龍には雷電姉妹のくすぐり攻撃よ!」


電「な、なのです!」


天龍「だー! 寄るな――って、ちょ、そこはやめ――」


龍田「ふふふ、でも天龍ちゃんこの一ヶ月の間、全く寝てないのよ」


暁「へーそれは興味深いわね。ちなみにだけれど暁に詳しく教えてちょうだい」


龍田「まず天龍ちゃんの煙草の量が倍以上に増えたわ」


暁「ふむふむ」


龍田「入院してる響ちゃんの部屋に泊まろうとして追い出された事もあったわねー」


暁「へーそれは初耳ね」


龍田「面会時間が過ぎても、外の窓を伝って響ちゃんに会いにも行ったわ」


暁「暁の記憶が正しければ、響の病室は五階にあった気がするんだけど」


龍田「占いとかの類は信じないくせに、響ちゃんのために千羽鶴も折ってたわね」


暁「千羽鶴? どう見ても千羽鶴をゆうに越していたわよ」


龍田「それら一連の天龍ちゃんの行動をまとめるとー」


暁「と?」


龍田「天龍ちゃんは響ちゃんが心配で心配で仕方がなかったのでした」


暁「なるほど」


雷「ここね? ここがいいのね!」


電「なのです! なのです!」


天龍「ちょ、マジで勘弁して――あはははっ! ひっ、あはははっ!」


暁「……さて、三人は置いて迎えに行きましょう」


龍田「そうねー……天龍ちゃん、先に行ってるねー?」


天龍「お、おいっ!? こ、こいつらをなんとかしてくれー!!」


雷「うりゃー」


電「ですー!」



【響の復活、天龍の暴走】


青葉「ども、恐縮です、青葉ですぅ! 一言お願いします!」


暁「うるさいのに出くわしたわね」


龍田「青葉ちゃん、こんにちわ~」


青葉「どーもでーす! いやー、それにしても当時は驚きましたね」


暁「まぁ、確かにね。まさかバーカウンターで倒れるとは思わなかったわ」


龍田「オープンしてすぐだったわね」


青葉「でも、アレですね。そこまで重い病気でなくて良かったじゃないですか」


暁「まあね。けど、後一歩で腹膜炎だったらしいわ」


龍田「響ちゃんは口に出さないから」


暁「ホントよ! そこら辺も含めて色々とお説教してあげるんだから!」


青葉「あれ? そういえば天龍さんはいらっしゃらないんですか?」


暁「なんで、天龍限定なのよ」


青葉「そりゃ、響さんの旦那さんなんですから当然です!」


暁「……青葉に知られたんならもう鎮守府内で知らない人はいないわね」


龍田「そうねー」


 ガラガラ


響「おや、皆してどうしたんだい?」


暁「さらっと出てきたわね……感動も涙も無いわ」


龍田「ふふふ、響ちゃん退院おめでと~」


青葉「恐縮です、青葉ですぅ! 響さん、一言お願いします!」


 パシャパシャ


響「煙草が吸いたい」


青葉「ありがとうございます!」


暁「ホントに一言ね……」


龍田「響ちゃんらしいわ」


 バタバタバタッ


暁「ん?」


龍田「あらー?」


青葉「む?」


響「ほう」


 バタバタバタッ


天龍「響っー!!」


 ガシッ


響「――」


 ――ハラショー


暁「……響が天龍に誘拐されたわ」


龍田「あらあら」


青葉「青葉取材、……いえ出撃しまーす!」


 バタバタバタッ


暁「騒がしいわね」


龍田「元気があっていいじゃない」


雷「――はぁ、はぁ……つ、疲れたわ」


電「な、なのです……」


暁「お疲れ様。まあ、何となく事情は察するわ」


雷「天龍が突然、俺の電探がどうたらこうたらって……」


電「いきなり走りだしたのです……」


龍田「あらー? 天龍ちゃん、まだ病気が残っているのかしら~?」


暁「病気って?」


龍田「中二病~」


暁「ああ、痛々しいあれね」



【青葉、見ちゃいました】


 皆さんこんにちは、青葉です。


 先月、急性虫垂炎にてお休みされていた響さんが無事に退院されました。


 鎮守府内でも喜びの声が挙がっており、改めて響さんの人徳の高さが伺えます。


 そんな響さんですが、退院と同時に軽巡洋艦の天龍さんに拉致されてしまいました。


 以前からお二人の関係性について気になることもあり、私の取材魂が二人の後を追わせました。


 ……そして青葉、すごいものを見ちゃいました。


 もしこの事を記事にしようものなら、年齢制限を設ける必要があるでしょう。


 いや、響さんが女になるところを初めて見て、青葉の鼻血が止まりませんでした。


 しかし、そんな興奮状態であっても青葉、ちゃんと盗s……取材をしてまいりました!


 閲覧制限ギリギリのお二人の姿をバッチリとカメラに残してあります。


 そんなお二人の写真はこちr――(これより下の記事は空白であったため、今回の青葉通信は以上となります)



【その後の天龍と響さん】



響「んっ……」


 ゴソゴソ


天龍「……なんだよ」


響「寒いのさ」


天龍「この季節に真っ裸で寝るからだ、アホ」


響「裸にひん剥いたのは誰だっけ?」


天龍「ノリノリだったのは誰だった?」


響「……まあ、どちらでも構わないよ。すまないがもう少し近寄ってくれ」


天龍「ったく、ほら」


 ゴソゴソ


響「できれば抱きしめてくれると嬉しいな」


天龍「注文多いな……これでいいか?」


 ギュッ


響「文句を言いながらも要望にちゃんと答えてくれる……天龍は優しいね」


天龍「優しくなんかねぇよ」


響「キミがそう言うのならそうしておこう」


響「……むぅ」


天龍「どうした?」


響「この双璧が顔を圧迫してくるんだよ」


天龍「蹴り飛ばすぞ」


響「これが軽巡? 戦艦の間違いじゃないのかい?」


天龍「揉むな。犯すぞ」


響「ふむ……寒さを紛らわせるには丁度いいね。やろうか」


天龍「ったく……冗談だよ。さっさと寝ろ」


響「なんだい。やらないのかい?」


天龍「疲れた。もう少し寝かせろ」


響「そうか。それはすまない」


天龍「別に気にしちゃいねぇよ。ほら、お前もさっさと寝ろ」


響「そうだね、ではもう一度眠るとしようか」


天龍「ああ」


響「……天龍」


天龍「なんだよ」


響「呼んでみただけさ」


天龍「そうかよ」


天龍「……なぁ、響」


響「なんだい」


天龍「呼んでみただけだ」


響「そうかい」


天龍「おやすみ」


響「ああ、おやすみ」



艦隊のお艦



 カランカラン


響「やあ、久し振りだね」


鳳翔「あら、響さん。退院おめでとうございます」


響「Спасибо(スパスィーバ)」


鳳翔「御身体の具合はどうですか?」


響「今のところは問題はないよ。それにしても、入院中はお店を任せっきりで済まない」


鳳翔「困った時はお互い様です。それよりどうされます? お酒でも飲みますか?」


響「ウイスキーのホット。銘柄は任せるよ」


鳳翔「はい。では、退院祝いということで……」


響「ふむ、山崎の25年ものだなんて……いいのかい?」


鳳翔「ええ、だって退院祝いですから」


響「そうか。有り難く頂戴するよ」


 キーンシュボッ


鳳翔「響さんが煙草を吸う姿も久し振りですね」


響「まあ、日中のほとんどを喫煙所で過ごしてるようなものだからね」


鳳翔「その赤いパッケージも久しぶりに見ました」


響「ふぅ……PALL MALL(ポールモール)を吸う艦娘はいないからね」


響「それより、私だけ吸うのもあれだ。鳳翔も吸おうじゃないか」


鳳翔「よろしいんですか? カウンター内は禁煙の筈では?」


響「ここの主である私が許可したんだ。吸っても構わないさ」


響「それに、目の前で煙草を吸われて指を咥えているだけってのはなかなか辛いだろ?」


鳳翔「ふふ……確かにその通りですね。咥えるなら煙草を咥えたくなるのが喫煙者ですからね」


響「そういうこと。はい、灰皿」


鳳翔「ありがとうございます。では、失礼して」


 シュボッ


鳳翔「ふぅ……」


響「ああ……懐かしい。好きだね、このニオイ」


鳳翔「ふふっ、前も同じことを言っていますよね」


響「MEVIUS(メビウス)はとても優しいんだ。煙に癖がなくてとても落ち着く」


鳳翔「MILD SEVEN(マイルドセブン)なんて名称だったくらいですからね」


響「正直、名称の改名には反対だったよ」


鳳翔「そうなんですか?」


響「その煙とニオイだからこそMILD SEVEN(マイルドセブン)……ピッタリの名前だったんだ」


鳳翔「まぁ、確かにそうですね。今でこそ慣れましたが、やはり私も最初は違和感がありましたね」


響「そうそう、改名した直後はこんな呼ばれ方もしていたね」


響「……ウルトラマン・メビウス、ってね」


鳳翔「ぶふっ!」


響「鳳翔が盛大に吹き出すシーンを見れるとは……そんなにツボだったかい?」


鳳翔「い、いえっ……す、すいません……っ」


響「いや、まさかそこまでとは」


鳳翔「はぁ……はぁ……」


響「他の艦娘には見せられないね」


鳳翔「で、できればご内密にお願いしします」


響「ああ、鳳翔相手にそんなことはやらないさ」


響「……条件付きだけれどね」


鳳翔「……致し方ありませんね」


響「じゃあ、一緒に飲んでくれるかい? 丁度、沸き上がったみたいだし」


鳳翔「そんなことでいいんですか?」


響「ああ、構わないよ。というか、もともとそのつもりでもあったしね」


鳳翔「ふふっ、そんな回りくどい言い方じゃなくても、いつでも付き合いますよ」


響「すまない……こう見えて私は小心者なのさ」


鳳翔「そういうことにしておきましょう……はい、ではどうぞ」


響「Спасибо(スパスィーバ)」


鳳翔「では、響さんの退院を祝して」


響「ああ、乾杯」


 キン



【ビックセブン】



 ガランガラン


長門「Верныйはいるか!」


響「やあ、長門。それとできればもう少し優しく開けてくれ。扉が壊れてしまう」


長門「それはすまない。それと、退院おめでとう」


響「こちらこそすまないね。艦隊の方は問題はなかったかい?」


長門「ああ、お前の穴は長月と菊月、若葉が交代で埋めてくれた」


響「そうか、三人には今度お礼をしないといけないな」


長門「そうだな。それで、実は相談があってきたんだが」


響「なんだい? とりあえず一服しながらでもいいかな?」


長門「ああ、構わん。私も丁度吸いたいと思っていたところだ」


響「では、失礼するよ」


 キーンシュボッ


響「ふぅ……」


長門「むっ……」


 カチッカチッ


響「ほら、使いなよ」


長門「ああ、すまない」


 キーンシュボッ


長門「はぁ……」


響「そういえば、アメスピだったね」


長門「ああ、特にPerique Box(ペリックボックス)がお気に入りなんだ。アメスピの中でも煙草本来の味を楽しめるからな」


響「一度吸った事があるけど、とにかく長いという印象だったよ」


長門「葉が詰まっているからな。それに燃焼剤も含まれていないから、下手をすれば火種が消えてしまう」


響「アメスピを吸える人は喫煙が上手いらしいね」


長門「ただ、急いでいる時にアメスピを吸うのはおすすめしないな」


響「以前、遠征任務に行く直前に吸ったんだけれど、長すぎて収集時間のギリギリになった事があるよ」


長門「全く……お前は鎮守府の模範でもあるんだ。しっかりとしてくれ」


響「模範だなんてよしてくれ。私にその器は大きすぎる」


長門「謙遜するな。艦娘としての性能面では確かに劣るかもしれないが、長年の経験と技術は本物だ」


長門「お前に全戦全敗している私が言うんだ。そこは誇るべきだ」


響「世界のビックセブンにこうまで褒められるとは……いや、これは恥ずかしいね」


 ジュッ


響「さて……そろそろ本題に入ろうか。こんな事を話すためにここに来たわけじゃないだろう?」


長門「ああ、そうだ。実はお前に新規配属艦の研修監督をお願いしたいんだ」


響「ほう。しかし、駆逐艦の私なんかで大丈夫かい?」


響「長門に話がきているということは、新規配属艦は戦艦、もしくは重巡じゃないのかい?」


長門「だからこそだ。そういう艦種だからこそ、己の力に過信する」


長門「戦艦だから駆逐艦に負ける筈がない……私がそうだったようにな」


響「ほう……長門にもそんな時期があったんだね」


 キーンシュボッ


長門「何を言っている。その当時監督していたのはお前だっただろうが」


響「ふぅ、ああ、そんなこともあったようななかったような……」


長門「全く……で、どうだ? 引き受けてくれるだろうか?」


響「んっ……まぁ、別に構わないよ。入院していたお陰で、身体が鈍っていたしね。丁度いい」


長門「お前の好きなやり方で構わん」


響「ふぅ……ああ、そのつもりさ」



【駆逐艦の日】



菊月「菊月だ」


長月「長月だ」


若葉「若葉だ」


響「響だよ」


長月「そこは『響だ』、と合わせてくれ」


菊月「ああ、長月の言う通りだ」


若葉「うむ」


響「そうか、それはすまない。ではテイクツーといこうか」


長月「ああ、では菊月から頼む」


菊月「承知した……」


菊月「菊月だ」


長月「長月だ」


若葉「若葉だ」


響「響だ」




天龍「なんだありゃ」


龍田「ふふふ、天龍ちゃんも混ざってくればー?」


天龍「お断りだよ」




響「さて、本日三人に集まってもらったのは他でもない」


長月「何だ? 任務か?」


若葉「また、この手を汚せと言うのか……」


菊月「また強くなってしまう……」


響「いや、うん……とりあえず一旦落ち着こうか」




天龍「あの響が困ってるぞ」


龍田「珍しいこともあるのねー」




響「まず、私が病床に臥せている間、三人には迷惑をかけたようだね」


長月「別に気にするな」


菊月「ああ、当然の事をしたまで」


若葉「大変ではあったが……悪くはなかった」


響「そこで三人にはお礼をしたいと思ってね」


響「それと三人はお酒は飲めるかい?」


長月「煙草を吸いながらお酒を飲むほどに好きだ。菊月は洋酒が苦手だがな」


菊月「ワインはいける……赤だけなら」


響「若葉はどうなんだい?」


若葉「問題ない。とりあえずショットガンで頼む」


響「キミはあれだね……本当に自分を傷めつけるのが好きだね」




天龍「若葉って任務中に被弾しても、自分の傷や血を見て笑ってるんだよ」


龍田「ふふふ、私も血の色は好きなのよー?」


天龍「お前はスプラッターだよ。敵の駆逐艦を細切れにして楽しんでるような奴だ」


龍田「瀕死の相手の肉を抉った時の感触……お魚さんを捌くみたいで気持ちいいの」


天龍「ここにまともな奴はいないのか?」




響「乾杯」


長月「乾杯」


菊月「乾杯」


若葉「乾杯」


響「ほら、若葉。グラスを貸してごらん」


若葉「ああ、頼んだ」


 ドンッ


響「さぁ、早く飲むんだ!」


若葉「んぐっ!」


長月「いい飲みっぷりだ」


菊月「なかなかだ」


若葉「ふぅ……」


響「お味はどうだい?」


若葉「喉が焼けるようだ……だが、悪くない」


響「実際、そんなにすぐ喋れないからね」


若葉「ふ、まだ軽い方さ」




天龍「ちなみにショットガンの度数ってどんなもんだ?」


龍田「スピリタスを割って飲むから大体40度ぐらいかなー」


天龍「割ってその度数って……あいつは本当に駆逐艦か?」


龍田「でも、若葉ちゃんも響ちゃんには敵わないんじゃないかなー?」


天龍「……響もホント、おかしいやつだよ」




響「とりあえず、ショットガンはこの一杯にしてくれ」


若葉「む、何故だ?」


響「キミは煙草を吸うだろ? 引火させてここを爆破させるつもりかい?」


菊月「獄炎に飲まれて死ぬのはゴメンだ」


長月「たかがアルコールの灯火如きで沈む長月ではない」


響「キミ達はなんなんだい、ホント」


若葉「しかし、響の頼み。断るわけにはいかない。代わりにアブサンを頼む」


響「まぁ、スピリタスよりはマシか。ちょっと待っていてくれ」




天龍「アブさん?」


龍田「アブサン、よ。度数は40~70程度だったかしらー?」


天龍「やっぱりあいつらは駆逐の皮を被った何かだ」


龍田「天龍ちゃん、お酒弱いもんねー」


天龍「うるせぇ」




響「はい、どうぞ」


若葉「助かる」


長月「ふぅ……」


菊月「ああ……この紫煙はどこへ消えゆくのか」


響「空気中だと思うよ」


 キーンシュボッ


響「ふぅ……」


若葉「響は煙草が似合うな」


響「ありがとう」


長月「そういえば、今年から煙草がまた値上がりするそうじゃないか」


菊月「ああ、聞いている。旧三銘柄も対象らしいな」


響「バットを吸ってる電が嘆いていたよ」


若葉「私のワカバもそうなってしまうのか……」


響「鎮守府でワカバを吸うのはキミだけだからね」


長月「私のARK ROYAL(アークロイヤル)の白を吸ってる奴もいないな」


菊月「Gitanes(ジタン)もそうだ」


響「まぁ、値上がりは仕方がないさ。私が何とかしてみるよ」


若葉「そんなことができるのか?」


響「まあ、仕入れルートを変更するだけさ。間宮の協力も必要だね」


長月「私にも手伝えることがあれば使ってくれ。何かの役に立つはずだ」


菊月「私も共に行こう」


若葉「煙草のためならこの身体、くれてやろう」




天龍「増税の話からぶっ飛んだ話になってきたな」


龍田「でも、みんな賛成しそうだけどねー」


天龍「そりゃ、府内で八割の艦娘が吸ってるんだ」


龍田「健康に悪いなー」


天龍「てめぇも喫煙者だろうが」




長月「そういえば、次回の新規配属艦……その監督になったそうじゃないか」


響「なんだ、もう伝わっているのかい?」


菊月「長門さんから直接な。しかし、今回の配属艦は可哀想に」


若葉「私も当時、響が監督だったが……あれはとてもいいものだ」


響「まぁ、病床に臥せている間に鈍ってしまったからね。それも兼ねてさ」


長月「ちなみに響は指導する際に気をつけていることはあるのか?」


響「ふむ、これと言って考えた事はないが……しいて言えば――」


響「――潰れる限界まで追い詰めて、生かさず殺さずの瀬戸際を見て楽しむよ」


若葉「っ~~~」


長月「若葉……興奮するな」


菊月「仕方ないだろう。彼奴は特殊だからな」




龍田「響ちゃんとは色々と話が合いそうだわー」


天龍「そういや、お前もぶっ飛び枠だったな……」


龍田「でも、そんな響ちゃんをベットの上で転がす天龍ちゃんもなかなかだよー」


天龍「なんでテメェが知ってんだよ!」




響「さて、夜はまだこれからだ。呑むよ」


長月「勿論」


菊月「承知」


若葉「いいだろう」



【夜戦=川内=忍者】



川内「夜戦がしたい」


神通「はぁ、そう言われましても姉さん」


那珂「那珂ちゃん達にはどうすることもできないよ?」


川内「ふぅ……夜戦ができないから煙草が増える」


 グリグリ

 キーンシュボッ


神通「確かに……」


那珂「火を消してすぐに煙草に手を伸ばしてるね」


川内「ねぇ、勝手に海に出たら怒られるかな?」


神通「姉さん……聞かなくてもわかりませんか?」


那珂「懲罰房行きになるよね」


川内「はぁ……だよねぇ」


神通「今度、お酒でも飲みに行きましょう」


那珂「那珂ちゃんも行くー!」


川内「うん、楽しみにしているよ」


 …………

 ……

 …


神通「――と、前々から夜戦がしたいと」


響「我慢の限界だったんだね。しかし、まさかあんな風になるとは」


那珂「川内お姉ちゃん、危ないよー!」




 ブーンブーン


川内「夜戦だー! ヒャッハー!」




響「窓から飛び降りて原付きを乗り回すなんてね」


神通「あそこまで酔っ払った姉さんは見たことがありません……」




 ブブンブブンブーン


川内「うおりゃー!」




響「Хорошо(ハラショー)。酔って平衡感覚が無いというのに、ウィリー走行とはやるね」


神通「姉さん! 転んでしまいますよー!」


那珂「お姉ちゃん、危ないってばー!」




 ブーンブーンブーン


川内「ほ~し~ぞらの~したの~でぃ~すた~んす!」




 キーンシュボッ


響「ふぅ……『星空のディスタンス』か……嫌いじゃないね」


神通「どうしましょう……」


那珂「那珂ちゃん、踊ればいい!?」


響「那珂はとりあえず落ち着くんだ」


響「多少手荒くなるけど……まぁ、自業自得だね」


神通「やはり、それしかないですね……」


 …………

 ……

 …


響「今思うと三階の窓から飛び降りたんだね。流石は忍者と言われるだけあるよ」


神通「そういう響さんも普通に飛び降りているじゃないですか……」


響「二人も後を追って飛んできたじゃないか。神通はジャパニーズ忍者、那珂は……」


那珂「アイドルにはスタント、バラエティは必修科目なんです!」


響「なるほど。まぁ、改二になったのは伊達じゃないとしておこうか」


響「さて……そろそろ出るよ」


神通「……ちなみにどのような手段で?」


響「いや、これで一発」


 ガシャン


神通「何でサラッと主砲を取り出してるんですか!?」


那珂「お姉ちゃんが殺されちゃう!?」


響「心配しなくても直接は当てないさ。まぁ、爆風で転ぶだろうけど仕方ないよね」



 ブーンブーンブーン


川内「おおーい! 神通ー! 那珂ー! それとヴェルー!」




神通「姉さん! いい加減、危ないから止めてください!」


那珂「スキャンダルになっちゃうよー!」




 ブブブッブーンブーン


川内「あはははっ、なんて言ってるかわかんなーい!」




響「全く……」


 ドーン


神通「ちょっ!?」


那珂「きゃっ!?」




 チュドーン


川内「うおっと!?」


 キキー


川内「もう、いきなり何すんのさー……あ、そっか」


 ブブブッブーンブーン


川内「夜戦、だね!」




響「……上手く体勢を立て直したね。しかし、外したか……やはり鈍ってるね」


神通「当てるつもりだったんですか!?」


響「勿論」


神通「さっき直接は当てないって言ってたじゃないですか!」


響「戦場は刻一刻と動いているんだ。直前の判断が急に変わることもある」


神通「ここは戦場じゃありません!」


響「それに怪我をしたって問題ない。この鎮守府のバケツの在庫は潤っているよ」


神通「そういう問題ですか!?」


那珂「ちょ、それよりもお姉ちゃんがこっちに突っ込んでくるよ!?」




 ブーンブーンブーン


川内「うりゃー!」




響「まぁ、多少の怪我は我慢しなよ。悪いのは君なんだからね」


響「――さて、やりますか」


 ガチャン


 …………

 ……

 …


天龍「で、その後はどうなったんだ」


響「とりあえず主砲でバイクを破壊したよ」


天龍「それで川内は大丈夫だったのか?」


響「まぁ、擦り傷程度だったね。幸いにも爆風の勢いで海に落ちたから」


神通「あの時は心臓が飛び出るかと思いました……」


天龍「お前も大変だったな」


響「あれから川内の調子はどうだい?」


神通「ふぅ……はぁ……先程、那珂と一緒に見てきましたが至って元気でした」


天龍「ったく、それにしてもあいつはちょいちょい問題起こすな。主に夜だけよ」


神通「姉がご迷惑をおかけして申し訳ありません……」


響「けど、あれだけの騒ぎを起こしておいて独房に一週間放り込まれるだけなら良かったじゃないか」


神通「長門さんから聞きましたが、姉さんの処分に関して響さんが掛けあってくれたそうで……本当にありがとうございます」


響「さて、何のことかな」


天龍「バレバレなんだよ。お前以外にそんな事ができるのは長門ぐらいだろうが」


響「ふむ、それもそうか。そういえば那珂はどうしたんだい?」


神通「ふぅ……那珂は見舞いの度に自分の歌を披露するのが、ここ最近の日課になっているんです」


 グリグリ


天龍「おい、さっきから気にはしてたんだが、なんだよその煙草は」


神通「ふぇ、これれふか?」


 シュボッシュボッ


神通「ふぁ……これはGAULOISES CAPORAL(ゴロワーズカポラル)という銘柄の煙草ですが」


天龍「正直に言うとだな……それ、ものすごく臭いぞ」


神通「あぁ……そうかもしれませんね。製造過程で葉を発酵させてるんですよ」


響「私も天龍と同意見だね。なんというか……腐葉土? いや、牛舎のようなニオイだ」


神通「まぁ、実際そんな感じなので否定はできないですね……しかし、最近量が増えました」


天龍「一日でどれくらいなんだ?」


神通「ふぅ……前は一箱ぐらいだったのが、今は二、三箱ぐらい吸ってます……」


天龍「吸い過ぎだろ。その分、そのニオイを撒き散らしてんのか……」


神通「わかってはいるんですけど……最近はストレスが限界なんですよ」


響「神通は三姉妹の中で真ん中だからね。上も下も見なくちゃいけないから余計にストレスが溜まるんだろ」


天龍「ったく、しゃーねぇな……今日は俺の奢りだ。思いっきり食って飲め」


響「ふむ、なら私は鳳翔と間宮を呼んでこようか」


神通「ううっ……ありがとう、ごじゃいますっ」


天龍「泣くなっての」


響「まぁ、とりあえずお疲れ様だ」



【霧島組】



摩耶「おう、そういや今回の新規配属艦はどんな奴か聞いたか?」


夕立「私は聞いてないっぽい」


加賀「興味がありません」


摩耶「不知火。お前は知ってるか?」


不知火「何か?」


摩耶「何か、じゃなくてよ……」


加賀「今日の不知火に話題を振っても無駄よ」


摩耶「あん? なんでだよ」


加賀「貴方が無理矢理に引っ張ってきたからでしょう」


摩耶「なんだよ、まだ根に持ってんのか? 夕立を見習え。アタシが連れてこなくてもちゃんと毎日集まってんだぞ」


夕立「私、偉いっぽい? 褒めて、褒めて~」


摩耶「よ~しよしよし!」


夕立「ぽい~!」


加賀「……貴方も災難ね。彼女に振り回されるなんて」


不知火「全くです……今日、本当であれば不知火は陽炎と部屋でゆっくりと過ごす予定だったんです」


 ガリリ…ガリリ…シュボッ


加賀「ライターが壊れるわよ」


不知火「ふぅ……所詮おまけのものですから構いません。それより加賀さんは何故ここに?」


加賀「……何故、とはどういう意味かしら」


不知火「瑞鶴さんのそばにいなくてもいいのでしょうか」


加賀「……」


 ガリッ、ガリッ、バキッ


不知火「ライター壊れましたよ」


加賀「所詮おまけです。別に構いません」


不知火「よければ不知火のを使ってください」


加賀「感謝します」


 シュボッシュボッ


加賀「ふぅ……」


不知火「それで、瑞鶴さんと何かあったんですか?」


加賀「……あの子が煙草を吸わないのは知ってるわよね?」


不知火「ええ。良さがわからない、と聞いています」


加賀「そう。私が煙草を吸うこともあまり良くは思ってはいないの」


不知火「けれど、加賀さんは瑞鶴さんの前で吸っていますよね」


加賀「ええ。けれどあの子はそれを了承しているわ。嫌いだからと人の趣味嗜好にとやかく言うつもりはない、と」


加賀「けれど、そんな瑞鶴を怒らせてしまう出来事が起こってしまったの」


不知火「瑞鶴さんの部屋で煙草を吸ったとかでしょうか」


加賀「いいえ。もっと恐ろしいことよ」


不知火「もっと、ですか」


加賀「ええ……実は、瑞鶴のお気に入りの服に誤って煙草を落としてしまったの」


不知火「火は?」


加賀「真っ赤だったわ。服に汚い穴を残すほどにね」


不知火「それは……同じ服を買い直して、謝罪で何とかならないんでしょうか?」


加賀「それはできないわ」


加賀「汚した服はあの子の姉である翔鶴がわざわざ縫ったもの」


不知火「不知火が瑞鶴さんの立場でしたらキレますね」


加賀「しかも、この府内に配属されてから、初めて主力艦隊に配属された時の記念の服を、ね」


不知火「不知火でしたら、相手に根性焼きは避けられないでしょうね」


加賀「鎧袖一触とはこのことね」


不知火「意味が全然違います」


加賀「私もこの燃え尽きる灰のようになりたい……」


不知火「これは重症ですね」


摩耶「おい、お前ら二人で何を盛り上がってんだよ!」


夕立「仲間はずれは酷いよ~」


不知火「盛り上がるというより、消沈しています」


加賀「はぁ……瑞鶴……」


摩耶「おいおい、溜息なんか吐くなよ。こっちまで気分悪くなるぜ」


夕立「吐いていいのは煙草の煙だけっぽい!」


摩耶「後は飲み過ぎた時だな」


夕立「摩耶さん、今の上手いっぽい! 流石っぽい!」


摩耶「だろ~? 夕立はよくわかってるじゃねぇか! よ~しよしよし~!」


夕立「あははっ! くすぐったい! くすぐったいっぽい!」


不知火「全く……この二人は相変わらずですね」


摩耶「あ、そういや今日、天龍がいねぇじゃん」


夕立「今日は響とデートするって」


摩耶「ったく……アイツにも困ったもんだね。そう思いませんか、霧島の姉御」


霧島「……」


夕立「霧島さん、聞こえてないっぽい?」


摩耶「おーい、姉御ー!」


不知火「いや、そんなに叫ばなくても聞こえているでしょう」


加賀「眼鏡の向こう側の瞳はまるで私達を射抜こうとしているようね……はぁ、いっそのこと瑞鶴に射抜かれて死にたい」


不知火「加賀さん、キャラがブレていますよ」


霧島「……ねぇ、一つ質問していいかしら」


摩耶「お、なんだよ姉御。聞こえてんじゃねぇか」


夕立「質問、何っぽい?」


霧島「……なんであなた達は私の部屋に毎日のように集まるのかしら?」


摩耶「だってアタシら『霧島組』じゃん」


夕立「霧島組の鉄砲玉とは私っぽい!」


不知火「気付いたらここに連れ込まれました。後、目つきが気に入ったとそこの重巡に」


加賀「お前、ドライアイスみたいだな、と同様に連れ込まれました」


霧島「だ・か・ら……なんで私の知らないところでそんな組合ができているのよ!」


摩耶「そりゃ、霧島の姉御だからすっよ」


夕立「ぽいっ!」


不知火「だ、そうです」


加賀「元戦艦として、貴方に同情するわ」


霧島「はぁ……お姉様……助けてください……」



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このSSへのコメント

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1: AQ 2015-11-06 22:30:44 ID: VVouI97m

響渋いなぁ
天龍とのカプも良いものですね
個人的にはかげぬいがいつか出てくる事を期待して……
更新楽しみに待ってますね!

2: SS好きの名無しさん 2015-11-06 22:41:35 ID: pzBmI3Bo

AQさんのとこから飛んで来ました。
ハードボイルドな響が癖になりそうです。
ssのコラボはあまり見たことないので、余裕ができたらかげぬいとコラボしてほしいです(´・ω・`)

3: SS好きの名無しさん 2015-11-06 23:23:29 ID: I-BftkKQ

何だかんだで皆吸ってるんだね(´・ω・`)

4: SS好きの名無しさん 2015-11-07 03:00:14 ID: FD3gcUwE

喫煙艦娘とてんひびの珍しいCPと聞いて飛んできてみました

5: SS好きの名無しさん 2015-11-07 03:52:03 ID: wVe0oMc8

金鵄のことならバットかな?
バッドだと変なヤクみたいだw

6: ゆぅ@しょーとらんど 2015-11-09 06:37:41 ID: raWm9KPY

しょけんでし。電ちゃんがバットか・・・胸が熱いな と、AQ氏のとこにたまにコメ残すからコテは見たことあるかもですね

7: SS好きの名無しさん 2015-11-10 23:22:27 ID: wBSBC6ju

AQさんとこから
記念パピコ

8: Ayato 2015-11-11 12:19:47 ID: MXhXOTlR

>>AQさん
コメントありがとうございます。
AQさんのように毎日は更新できませんが頑張っていきます。
いつか陽炎型も出す予定ではいますので、楽しみにしていてください。

>>2さん
わざわざありがとうございます。
響は大人びた印象がありますから、こういうのもありかなと思っています。
コラボまではいきませんが、陽炎型は出す予定ではありますので、その時はどうぞよろしくお願いします。

>>3さん
中には嫌煙家の艦娘もいますが、どの艦娘にしようかは検討中です。

9: Ayato 2015-11-11 12:20:18 ID: MXhXOTlR

>>4さん
コメントありがとうございます。
私のお気に入りの艦娘をくっつけてみました(笑)

>>5さん
タイプミスですね。
指摘ありがとうございます。
確かにとても危ない感じな煙草ですね……。

>>ゆぅ@しょーとらんどさん
ギャップを狙ってみました。
電は第六駆逐隊の中では一番の苦労人のような印象があったので、少し渋めな煙草を選んでみました。

>>7
ありがとうございます。
更新は不定期ですが、頑張ります。

10: AQ 2015-11-13 01:33:32 ID: 2NH-r9bx

ようやく本格稼働ですね
全体的に煤けた格好良い雰囲気がとっても良い感じだと思います!
僕は全くお酒が飲めないので飲める子達が羨ましい限りなのです


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