独提督「さあ日本へ行きなさい」
ドイツ艦が日本に来る前のかなり短い小話。
これまたあんださんの絵をみてふと思い浮かんだ話。
穏かな生活感を描きたい。
組織とかはよくわからんので割愛。
海外艦ユーちゃん以外持ってないのが哀しいかな。
エピローグはちょっと付け足し程度なので、見たい人だけどうぞ。
どこかの市場
レーベ「ええと、じゃがいもにトマト。アスパラガスは....あった!」
マックス「パンは買ったかしら?」
レーベ「あ!忘れるとこだったよ。」
マックス「しっかりしてよね、粗食のアドミラルからパンを取ったら何が残るの?」
レーベ「ごめんごめん、僕たちが振舞える最後の昼食だからね、しっかりしないと。」
マックス「ええ、そうよ。......レーベ、お肉は?」
レーベ「....あ、しまった.....」
マックス「はあ....」
ドイツ海軍基地 執務室
独提督「gut....書類は纏め終わったな。ビスマーク!レーベ達は帰ってきたか?」
Bis「もうすぐ帰り着くそうよ。それより部屋のプレートは変えたの?」
独提督「ああ、忘れるところだったよ。やれやれ、ここはドイツだというのに何故英語のものを使わねばならんのか。」
彼は独語で"執務室"と書かれたプレートを外し、英語で書かれたそれに替える。
Bis「明日からここは欧州連合海軍の隷下になるのよ、仕方が無いわ。」
独提督「まあ、私はこれで退役するから、口を挟む義理も無いのだけどね。」
Bis「40手前で余生を過ごせるなんて、こんなご時世なのに、羨ましい限りね。」
独提督「ははは、どうせ半年もしたらどこかの事務所でまた書類仕事でもさせられてるよ。」
Bis「海軍大将が何を言ってるのかしら。せっかくの手腕がもったいないわよ?」
独提督「明日になれば"元"だよ。おや、レーベ達が帰って来たようだね。」
レーベ「ただいま!昼食を作るから少し待っててね。」
食堂
独提督「おお!今日はパンにソーセージまであるじゃないか!奮発したね!」
マックス「あなたと囲める最後の食卓だもの。奮発のうちに入らないわ。」
「.....嗜好品が代用コーヒーなのは頂けないけれど」
独提督「なに、今はこれしかないが、君達が頑張ればいずれはこの国にもコーヒー豆が届くさ。ハワイのコナコーヒーとかね!」
Bis「それ、あと20年は掛かりそうよ?戦争が終わるのと同じかしらね。」
独提督「いや、私の予想だと15年だ。君達が日本に加わるからね。」
Bis「ふふ、それは誉めの言葉として頂いておくわ!もっと褒めてもいいのよ?」
独提督「そうだな、まずはブルーマウンテンが届くようになったら謝辞の手紙を送るよ。」
レーベ「ブルーマウンテンって。南米は日本の管轄なの?」
独提督「日米合同艦隊にも期待してるって意味さ。」
レーベ「アメリカとも仲良くしないといけないわけかー。多国籍ってかんじだね。」
独提督「どの国とも協力してやってかないとこの闘いは終わらないよ。」
レーベ「向こうの艦娘はどんな顔してるのかなー?」
独提督「可愛らしい子が多いと聞くよ。どちらにせよ、仲良くやるんだよ。」
レーベ「もちろん僕はそのつもりだよ。」
Bis「lecker.....さ、あなた達、食事が終わったら荷物を纏めましょう。」ガタッ
独提督「おっと待ちたまえ。」
Bis「?.....なにかしら?」
独提督「日本に住むんだ、向こうの文化をしっかり受け入れることが大切だよ。」
マックス「そうね、出来る限りの努力をすべきね。それがどうしたの?」
独提督「ああ、食後だからね。それじゃあ皆、手を合わせて?...ご馳走様でした。」
「ごちそうさまでした」
夜 駆逐2隻の部屋
レーベ「日本か、どんなところだろうね?」
マックス「私はスシが食べてみたいわ。」
レーベ「マックスは食文化にこだわるね」
マックス「もちろん。食だけは期待していると言っても過言ではないわ。」
レーベ「あんまり期待してないよねそれ。」
マックス「あなたはどうなの?」
レーベ「僕は日本のお洒落を楽しみたいな。それに向こうの艦娘は可愛いって聞くし、服もそうに違いないよ。」
マックス「レーベは服に"だけ"期待してるわけね。nacht.」
レーベ「え?!そんなことないよ!マックスも向こうに着いたら沢山楽しもう?!」
マックス「ちゃんと着いたらね。Nacht...」
レーベ「うん。gute nacht...」
早朝 港
独提督「これより遣日艦隊作戦を開始する。」
独提督「君達はこれから日本海軍に所属する艦娘と成りに行く。君達は日独の協調を示し、共に闘うこととなる。」
独提督「私はこの作戦の発令をもって提督の任を解かれるが、私がいなくても、この作戦は君たちを守り続けるだろう。」
独提督「貴艦らの幸運を祈る!」ビシッ!
艦娘一同 ビシッ!!
作戦前夜 執務室
独提督「よーし、空っぽだな。引継ぎというには明け渡しに近いな。まったくだ。」
コンコンコンコン....
独提督「ああ、入りたまえ。」
Graf「失礼する。」
独提督「ああ、グラーフか。何か用事か?」
Graf「......あなたはこれで良かったのか?」
独提督「何の話だ?」
Graf「我々を日本に送って良かったのかという話だ。」
独提督「....過ぎた話だ。私の決断は間違いではなかったと願うのみだよ。」
Graf「あなたの戦略は正しいと思う。でも、それは独断だった。」
独提督「君達が合理主義の欧州連合海軍に使い潰されるよりはよっぽど、日本のほうがいい。」
Graf「それはとても感謝している。しかし、あなたは先方の怒りを買ってしまった。」
独提督「問題ないよ。その怒りが君達に向けられることはない。」
Graf「しかしあなたはどうなる。」
独提督「もちろんアドミラルの席を降ろされるだろうね。老後と言うにはいささか早いが、穏当な生活が出来ると思うと嬉しいよ。」
Graf「それで私を誤魔化したつもりか?」
独提督「レーベ達を誤魔化せればそれでいい。あの子達が知るには少し酷だ。」
「君もあの子たちには黙っていてくれないか。」
Graf「あなたが願ったことは、いつでも叶えてきた。今回もそうするだろう。」
独提督「はは、さすがは私の秘書艦だ。日本に渡してしまうのは少し勿体無かったな。」
Graf「なぜそう死にたがる。どんな道であれ生きることは可能だ。」
独提督「これが私なりの責任の取り方だ。亡命という選択はないんだよ。」
Graf「とても.....残念だ。しかし、この礼は決して忘れない。」
独提督「そうしてくれるとありがたい。君も向こうで向こうの友と、仲良くしたまえ。」
Graf「どんなに忙しくとも、つきに1度は手紙を送る。」
独提督「ははは!良いジョークだ。これなら心配ないな。さあ、明日は早い、君も寝るといい。」
Graf「....gute Nacht...」
作戦当日 港
独提督「.....無事行ったようだな。私も、私の余生を過ごすとしよう。」
「お迎えにあがりました。どうぞ、ご乗車ください。」
独提督「ああ、助かるよ。」
車内
独提督「.......」
運転手「........」
独提督「.......陸軍の高級士官殿が直々に私を送迎ですか。幸甚の至りでありますな。」
将校「なぜ忠告を受け入れなかった?」
独提督「彼女たちを欧州連合海軍に引き渡せば、彼女等はもう人じゃいられなくなるだろう。忠告のつもりか、話にならなかったよ。」
将校「兵器を他国に無償で手放すなぞ、狂気の沙汰だ。」
独提督「兵器だと?我々ドイツ人はそこまで行き過ぎた合理主義をもった民族だったのか?」
「いつから軍は女子供を兵器と見做すようになった。正気とは思えんな。」
将校「すべて安全保障の為だ。見た目はどうであれ、あれは船の魂とかいうオカルトな概念が入った人形でしかない。」
「貴様程の技量を持った男がそんな物に魅入ってしまったのは遺憾としか思えんよ。」
独提督「物だ、オカルトだ。一体その目で何を見てきた。」
将校「我々には過ぎた動物愛護にしか見えなかったぞ。」
独提督「......それが上の見解か。」
将校「ああ。だが不覚にも我々は、貴様がそれを手放すことを許してしまった。なんという失態だ。」
「その手際の良さを連合海軍のもとで発揮するべきだったよ。今となってはもう遅いがな。」
独提督「ああ、すべて完了したよ。今頃日本で上手くやっているさ。戦争の終結も早まっただろう。」
将校「たとえその功績があろうとも、ドイツ国の国防を脅かした責任は果たしてもらう。」
独提督「はなからそのつもりさ。さて、私はどの別荘で穏当に過ごせばいいのかな。」
将校「......はなからそのつもりなんだろう?」
助手席の将校は私に銃口をむけた。
独提督「.......ああ、ヴァルハラか。」
Fin......
実際、欧州連合海軍があってもそんな倫理観が破綻するとは到底。
今回のSSはほぼセリフのみで頑張りましたが日常の生活感を出すって至難ですね。
多少説明不足でも口調をやわらかくしたほうが良かったかもと思いました。
かなり短い話ですが、書いてて楽しかったです。 Tscheus!
心にジーンと来ました!
おもしろかったです!