2016-03-01 21:46:59 更新

概要

クソみたいな少年とクソみたいに可愛い球磨のおはなしです。

初投稿です。

語彙力が無いので暖かい目で見てください。

2016-02-27 公開


*1


「はぁ……」



吐くため息が目に見えるある寒い冬の日。



こんなクソ寒い日に僕は


クソみたいな学校の


クソみたいな制服を着て


クソみたいな道を


クソみたいな顔で


クソみたいに歩いている



「……こんなクソみたいな世界なんて死ねばいいのに」



これが僕の口癖だ。


だって仕方ないだろう?


第一志望の学校に落ちて


クソみたいな滑り止めの学校に合格して


クソみたいな学校に通って


クソみたいに勉強ができない奴らと同じ空間に軟禁されて


クソみたいな奴らに


クソみたいに勉強ができて


クソみたいにムカつくからというだけで


クソみたいにいじめられて


クソみたいな学園生活を送っているのだから。



「どっかクソみたいにいいとこねぇかなぁ……」



僕はいつも『クソみたいにいいとこ』を探すことを生きがいに生きている。


今日も『クソみたいにいいとこ』を探して街中をこのように歩き回っているのだ。



「…あ……。」



ふと、歩みを止めた。


僕がまだ『クソみたいにいい人生』を送っていた時に通っていた児童館のあったビル。



「…このビル無くなんのか……」



児童館がビルにあるだなんて、少し変わっていたな、と今は思っている。

だがここで過ごした時間は僕の人生で1番輝いていたと思う。



そのビルが鉄の足場と、大きく『解体中』という赤文字と『はいってはいけません』と御丁寧に平仮名で書かれた幕で囲まれている。


それなのに入口は、入ってくれとでもいうように大きな口を開いて通行人を待っているようだ。


「…入っちゃいけないなら入口くらい閉じとけよ……」


僕は再びそのビルに向かって歩み始めていた。


『クソみたいにいいとこ』を探して。





*2




「……うっわぁ……結構ボロかったんだな…」


児童館にいた幼少の頃には気にならなかったが、少し成長しただけでこんなボロくなるなんて。


解体中なのもあると思うが、僕が通っていた児童館は跡形もなくこのビル--僕の視界からは消えていた。



「……そうだ、屋上はどうなっているんだろう」



滑り台などの遊具があった屋上。


屋上では沢山の友人が思い思いの事をして遊んでいた。


毎日のように遊具を取り合う喧嘩が始まり、僕が仲裁に入り、皆で仲良く遊ぶのだった。


体内の水分が一斉に吹き出るほど遊んだあとに、僕らを照らす橙色の綺麗な陽と世界を一望出来るほどの景色を見るのが僕は大好きだった。



「……遊具は、ないよな…。」



屋上へと続く階段を登り、

踊り場の扉を開け、

慣れ親しんだ遊具の有無を確認した僕は振り返り今来た道を戻ろうとした。


刹那


橙色の陽が僕を照らす。



嗚呼


ここは僕が望む


『クソみたいにいいとこ』


だ。


僕のクソみたいな人生を終えるに相応しい。


僕の人生を



終焉の美で飾ろう。



まだ取り払われていないフェンスを飛び越え


たった30センチ程の幅に立ち


僕は一言呟いた。


「さよなら、ありがとう。僕のクソみたいな人生。」


橙色の陽に身を投げようとしたその時



「何やってるクマ!早まるなクマ!」


「うわっとぉ!?」



この世界からいなくなることができなかった。


先ほど僕が開けた扉から大きな声で叫んでいる女の子が見えた。

栗色のロングヘアー。

バネのような特徴的なアホ毛。

ミントグリーンと白のセーラー服。

クマとかいう変な語尾。

どこかで見たことがある気がする。


「早くこっちに来るクマ!」


「あっ……はい……」


その迫力に押され、僕はあっさりとフェンスを跨ぎ彼女のいる方へと歩いていった。


すると彼女は

先ほど出会ったばかりの

ロクに喋っていない初対面の男の頬を






平手打ちした。



「命は大切にするクマ!」



そう言って彼女は来た道を戻っていった。



並大抵の女の子の力ではない、ずっしりと重い平手打ちだった。


僕は何が起きたのか分からず、漫画のように頬を押さえ、頭の中に『?』が浮かべながら、ただただ去りゆく彼女を見つめていた。


はっと我に返ったとき、もう死のうなんて気持ちは無く、ただただ足元を見つめると


「……ん?」


熊を描いたパスケースが転がっていた。


先ほど彼女が僕を平手打ちした時に落としたものだろう。


パスケースを手に取り、裏返す。


そこには免許証のような、先程の彼女の顔写真入りの証明書が入っていた。




「佐世保鎮守府所属 球磨型軽巡洋艦 1番艦 球磨……?」




そうか


あの少女は


広い海で深海棲艦から僕らの生活を守ってくれている


『艦娘』なのか。


巷では彼女らのことを『兵器』と罵る奴らが多いが


僕はそうとは思えない。



「…明日にでも届けに行くか……」


僕はパスケースを乱雑にポケットに突っ込み、代わりにスマートフォンを出した。


「佐世保鎮守府って…どこだっけ……」


Go●gleマップを開いて、音声検索で『佐世保鎮守府』と呟いた時にはもう空が暗くなりかけていた。


黒く塗られた空を背に僕は『クソみたいにいいとこ』をあとにした。





*3


「……クマーーーー!?!?!?!?」


海沿いのレンガ調の建物の一室から少女の悲鳴が建物全体に響き渡る。


その声を聞いた個性の強そうな少女たちが何事だと思って部屋の前にゾロゾロと集まりはじめた。


扉の向こうの気配にげっ、と小さく呟き、3センチほど開けた扉から手を出して、先ほどの悲鳴よりできるだけ小さな声で扉の向こうの少女たちにこう告げた。


「何でも無いから大丈夫クマ!シッシッ!」


追い払うようにして手を振り、少女たちをその場から退散させた。


「〜ッアアア……やらかしたクマ……!」


ハァ、とひとつ大きなため息をつき、


先ほど青いコンビニで買った、

友人の『鹿島』の写真が大きく印刷された箱とユ●ケル、同じく友人の『阿賀野』、『能代』、『矢矧』、『酒匂』がコンビニの商品を持って可愛くポーズをとっている写真が印刷されたクリアファイルと大量のお菓子が詰め込まれたレジ袋をひっくり返す。


これで5回もこの行為を繰り返している。



「っはぁ…こんなに探しても見つからないなんて…『艦娘証明書』どこいったクマー!返事してクマー!」


生命を持たないものが返事をするわけもなく、彼女は落としたと気づき、黒枠のガラス窓へと目を向ける。


外は黒いペンキをぶちまけたようで、光が反射して自分の顔が見え、時折鉄塔の赤い光が点滅していた。とてもじゃないがこの状況では探しには行けないだろう。


彼女は諦めたようにスクッと立ち上がった。


「うぅ…とりあえず提督に相談クマ…!報・連・相クマ!」


彼女が勢いよく開けた扉の外には先程の少女たちの姿は見えなかった。


栗色のバネのようなアホ毛を揺らし、彼女は長く続くフローリングの床を大急ぎで駆けた。



*4



「ついたクマー!」


『室務執』と書かれたプレートと金色のドアノブがついた茶色く大きな扉の前に立った彼女は、安心したようにふぅっ、と大きく息を吐いた。


「ん…そういえば今日の秘書艦は誰クマ?」


ドアノブに掛けられた『艦書秘の日今』と書かれたホワイトボードに目をやり、彼女は石のように固まってしまった。


「神通さん……クマ!?」


軽巡洋艦、神通。


普段はオドオドとしており、大人しく可愛い子なのだが、戦闘、遠征、秘書艦となると話は別だ。空母や戦艦のお姉さん方も頭が上がらない-そんな噂を耳にしたことがある。


彼女は恐怖でなのか、頬を何かがつたうのを感じた。

1度は報告せずに逃げ出そうと思ったが、ここで逃げたら妹たちに合わせる顔がない…彼女は意を決して深呼吸をし、目の前の大きな扉をコンコンコンと3度ノックした。


「はーいどーぞー」


聞き慣れた男性の声。だが中には鬼がいるかもしれない。


彼女はドアノブに手をかけ、


「失礼するクマ!」


-大きな声とともに目を閉じてドアを思い切り開けた。


「ハハッ、神通ならいないぞ、目を開けてご覧」


男性の声を聞いて恐る恐る目を開くと、恐れている主はおらず、窓付近で観葉植物に水をあげている白い軍服の男性のみだった。


「神通は資料室で資料の整理をしてもらってるよ、こわくなーいこわくなーい。んで?いきなりどしたの、『球磨』?」


球磨と呼ばれた彼女は、フッと我に返った。


「て、提督…あのね、球磨、『艦娘証明書』…何処かに落としちゃったクマ…あれが落としちゃダメなことはちゃんと分かってるクマ!ご、ごめんなさいクマ!」


提督の手がピタッと止まり、球磨のほうへと視線を移す。

球磨も深々と礼をして、反省の気持ちを全力で表現した。


「そっか…。『アレ』は確かに落としてはいけないものだね。でも間違いなんて誰でもあるだろ?今日はもう暗いけど、明日探しに行こう。俺も手伝うからさ。もちろん神通には内緒でね(笑)だから顔上げて?」



彼女は思った。


「提督が…球磨の提督でよかったクマー!」


声に出ていたし思わず抱きついてしまった。


「うわっと。よーしよーし。」


提督も球磨の頭を撫でようと手を回した



その時



「提督、資料の整理完了致しまし……はっ!?」


神通だった。


「えっ……あっ……神通、違うんだ、これは誤解だ、だからその15.5㌢三連装砲をな……」


「5回も6回もあるかこのクソ提督」(低音)


「神通さん!それは違う艦娘になってるクマ!…ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?!?」



この後、どうなったかは言うまでもない。


後書き

初めまして、伊呂波(いろは)と申します。

フォロワーさんの素敵なssに憧れて初めてみたもののどうしてもうまく書けませんね。

頑張って書こうとするとフォロワーさんのssに似てきてしまいます。

オリジナリティのあるssを目指して頑張りますので暖かい目で見てやってください。

作品要素なんだろうこれ……一応シリアスにしておきますね……

沢山お時間頂きますが続きます。


伊呂波(いろは)


このSSへの評価

4件評価されています


SS好きの名無しさんから
2018-08-29 23:11:27

しらこさんから
2017-01-05 23:09:44

万屋頼さんから
2016-02-27 16:07:18

SS好きの名無しさんから
2016-02-27 15:33:45

このSSへの応援

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SS好きの名無しさんから
2018-08-29 23:11:31

万屋頼さんから
2016-02-27 16:07:21

SS好きの名無しさんから
2016-02-27 15:33:47

しらこさんから
2016-02-27 15:32:06

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: しらこ 2016-02-27 19:44:09 ID: aOCU6cpr

SSらしい簡素さと精密な情景描写の見事な融合+二次創作と相性のいいべたな展開+区切りが早く読みやすい文章=球磨尊い。

2: 伊呂波 2016-02-27 20:19:51 ID: VGxLFmC0

しらこさん
ヒィ勿体ないお言葉ありがとうございます…!嬉しいです…!
初めてssというものを書くので指先震えながら書いております…w
球磨は可愛い。そして尊い。わかってくれる方いらっしゃって嬉しいです!


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