2016-03-24 02:43:31 更新

概要

朝チュンココチノ


「んぅ……朝……?」


窓から射す朝日の光と、小鳥のさえずりで目が覚めました。


時計を見ると、ただ今の時刻は午前6時。


この生活が始まってからだいぶ経つけど、朝起きるのだけはまだちょっと苦手かなぁ……。


「……寒い。」


毛布から出ようとして、ようやく、今私は何も着ていないことに気が付きました。


昨日は確か……そうだ。


昨日の朝、珍しくチノちゃんからキスしてきて、それに仕返しをしたらヘンに盛り上がっちゃって……それから1日中えっちなことしてたんだっけ。


日付が変わる直前ぐらいまでの記憶はあるんだけど、疲れていつの間にか寝ちゃったみたい。


「……すぅ。」


すぐ横でスヤスヤと眠っているチノちゃんを起こさないように、私はそっとベッドから抜け出して、とりあえず机の上に


脱ぎ散らかしていた服を着ることにします。


「よいしょっと。」


1日放置していた服はかなり皺になっていたから、一先ず防寒のためにシャツだけを羽織ることに。


……今の私は、所謂『裸ワイシャツ』という恰好。


チノちゃんが見たらどんな反応をするかな?


ちょっと興味あるかも。


そんなことを考えながら、眠気を吹き飛ばすためにうんと一伸び。


よしっ!ココアパワーの準備完了♪


「うーんっと……何からしようかな?」


開店までの時間を考えると、あんまりのんびりしている暇はないよね……。


でも、もうちょっとだけチノちゃんは寝かせておいてあげたいから、起こした後のことから考えようかな。


「朝ごはんは……トーストと目玉焼きでもいいよね。お風呂はシャワーにすればそんなに時間もかからないし……。あとは……洗濯かぁ。」


そういえば昨日はずっと雨だったなぁ、と思って窓を開けて外を見ると、今日の空には雲一つなく、まさに絶好の洗濯日和。


よしっ!これならシーツと毛布を洗濯しても問題ないよね!


と、開店までにするべきことの一通りの目途が立ったので、いよいよ(主に私が)お待ちかねの、チノちゃんを起こす作業に取り掛かかります……!


「そっと、そおっと……」


できるだけ物音をたてないように、忍び足でベッドに近づきます。


そして両手と片膝をベッドにつけて、チノちゃんを起こそうと―


「……私は、いいと思うんだけどなぁ。」


「……。」


覗き込んだチノちゃんの寝顔は、まだあどけなさが残る可愛らしい顔で。


前にそのことを本人に言ったら『……子供っぽくみられるので私は嫌ですよ。』なんて言われちゃったけど。


私はチノちゃんの可愛い顔、好きなんだけどなぁ……。


……それよりも。


「……チノちゃん、起きてるでしょ?」


「……っ」


あ、目は瞑ったままだったけど、ちょっとピクッてした。


「じーっ。」


「……。」


それに、よーく見てみると耳がちょっと赤くなってるし……もしかして恥ずかしがってるのかな?


私たちがこういう関係になったのはずいぶんと前のことだけど、チノちゃんは未だにそういうことに慣れてないみたい。


キスなんかは勿論、じっと見つめたり、それに『大好きだよ』って言っただけでも照れちゃうもんね。


……まぁ、だからこそ酔った時とか、チノちゃんがたまに大胆になったりすると、おおっ!って思っちゃうんだけど。


昨日もそれでヘンなスイッチが入っちゃって……って、今はそんなことどうでもいいか。


「チノちゃん、本当に寝てるの?」


「……。」


むむっ、今日のチノちゃんはなかなか強情だね……!


でも……いいのかな?


私、逃げるウサギは追い詰めたくなっちゃうんだ♪


「それじゃあ10秒経っても起きなかったらキスします!10、9……」


「っ!?」


あ、またピクッってした。


「8、7、6……」


それにも構わず、私はカウントをとり続けます。


私はキスするのも、チノちゃんが恥ずかしがる姿を見るのも、どっちも楽しいからね♪


「5、4、3……」


うーん、ここまで無反応ってことは……キスしてもいいってことなのかな?


それじゃあ遠慮なく……


「2、1……」


カウントダウンが終わるよりも少し早めに、スッと目を閉じて。


いざ、チノちゃんの唇を奪おうと顔をグッと近づけ―


「……?」


「……。」


あれ。顔を近づけてるハズなのにキスできない?


っていうか、なんか鎖骨のあたりを押し返されているような……。


パチッと目を開けると、果たして、そこにはジト目で私を見ているチノちゃんの顔が。


「……おはよう、チノちゃん♪」


「ココアさんのえっち。」


酷い挨拶だなぁ……。



……ところで今、私とチノちゃんの顔の距離は十数センチしかありません。


そして、私たちはお互い見つめあっています。


ここから導き出される答えは1つ!


早速キスを―


「ココアさん邪魔です。退いてください。」


「はーい。」


……うん。やっぱりチノちゃん、ちょっと不機嫌になっちゃった。


からかい過ぎたみたいだね。反省反省♪


でも、これ以上からかうと後が怖いので、おとなしく撤退することにします。


チノちゃんは、私が離れたのを確認するとようやく警戒を解いて、ベッドから起き上がろうと布団を―


「~~~~っ!」


畳もうとしたところで、ようやく今の自分の恰好に気が付いたみたい。


トマトみたいに真っ赤になっちゃった。


……って、そんなに全力で隠さなくても。


さっき一瞬だけどほとんど見えちゃったし、今更隠す必要もないと思うんだけどなぁ……。


「チノちゃん、そろそろ準備しないと。お店間に合わないよ?」


「わ、分かってますよそんなこ……って、ココアさん!?なんて格好してるんですか!?」


あ、無反応かと思ってたけど、今気づいたんだね。


その驚いた顔が見られただけでも満足かな……?


……いや、もうちょっとだけ欲張っちゃおう。


「どう?チノちゃん、この格好?興奮した?」


「こっ……!?そんなことするわけないじゃないですか!」


ありゃりゃ。冷たい。


「バカなこと言ってないで、早くシャワーにでも―」


「んっ」


「っ!?」


何か言ってるチノちゃんを無視して、不意打ちのキス。


キョトンとしてる顔も可愛いなぁ。


さて!やることはやったし、早くシャワーを浴びて朝食も作らないとね!


「じゃあ、先にシャワー浴びてくるね。チノちゃんも準備終わったら来ていいよ。」


「……っ!ココアさんのバカー!」


そんな怒声を背中に浴びながらも、今日の私はルンルン気分です。


チノちゃんパワーも充電できたしね♪


さぁ!今日も1日頑張るぞー!









「はい、朝ごはん。」


「……ありがとうございます。」


2人ともシャワーを浴び終わって朝食の時間。


表面上はいつも通りのやり取りだけど……。


「……。」


「……。」


わぁ……『ぷくつーん』って音が聞こえてきそうな顔してる……。


やっぱり、チノちゃん完全に拗ねちゃったみたい。


さっきも一緒にシャワー浴びてくれなかったし、それからも必要最低限のこと以外話してくれないし……。


うーん、ずっとこのままっていうのは嫌だから……どうしよう?


「チノちゃーん……謝るからさっきのことは許してー……。」


「……別に、怒ってなんかないです。」


絶対怒ってるよね……?


「じゃあ、なんでも1つ言うこと聞くから!」


「なんでも?」


「うん!なんでも!」


これならどうかな……!


私が出せる最高の条件だし、それに、チノちゃんの言うことだったらどんなことだって―


「それじゃあ、今日は私に抱き着くのは禁止です。」


「……それは難しいかなぁ。」


「なんでもって言ったじゃないですか……はぁ。」


うっ……呆れられてしまった……。


でも、それはあんまりにもあんまりだよ!


チノちゃん成分を補給できないと、私死んじゃうから!


「なんでもとは言ったけど、できれば他のことがいいなぁって。」


「……はぁ。」


ま、またため息つかれちゃったよ……。


さすがに、ちょっと反省。


チノちゃんが可愛いから、ついイタズラしちゃったけど、これからは控えた方がいいのかなぁ……。


「……いいですよ。別に、本気で怒ってたわけではないですし。」


「チノちゃん……。」


「……だから、そんなに悲しそうな顔しないでください。確かに、突然キスされるのは困りますけど……別に嫌というわけではないですし……。


それに!……ココアさんは笑顔の方が似合ってます。私は、そっちのココアさんの方が好きですよ。」


「チノちゃん……!」


「~~~っ!この話はもうおしまいです!早くご飯を食べて、お店の準備を始めますよ!」


「うん!」


私がしょんぼりしてると、いつもチノちゃんはこんな風に励ましてくれます。


……こういうところ、本当に好きだなぁって思っちゃう。


すごく恥ずかしがり屋なのにね。ふふふっ。


「ねえ、チノちゃん。」


「なんですか?早く食べないとお店の準備が―」


「私、チノちゃんのこと大好きだよ!」


「……っ!……私だって、ココアさんのこと大好きですよ。」


「えへへー。」


「なんなんですか、もう……。」


そんなことを言いながらも微笑んでくれるチノちゃん。


なんだか、手のかかる子供を見守る母親みたいだね?


……でも、チノちゃんが笑ってくれるなら、それでもいいかな。


どんな表情のチノちゃんも好きだけど、やっぱり私も、笑顔のチノちゃんが1番好きだもんね。


「ココアさん、手が止まってますよ。」


「はーい。」


そんな感じの、いつも通りの朝。


でも……今日はいつもより、ちょっぴり幸せかな?


私は幸せを噛みしめつつ、朝食を食べすすめます。


よーし、今日は張り切って仕事しちゃうぞー!









「さ、さすがに疲れたよ……。」


「今日は珍しく張り切ってましたもんね。お疲れ様です。」


「うん。チノちゃんもお疲れ様♪」


夜です。


お店を閉めて、夜ごはんとかお風呂とか家事とか、しなきゃいけないことがようやく全部終わったので、やっと寝室に戻ってこれたというわけです。


「はふぅ。あったかーい。」


「そんな、ベッドに飛び込むなんて……はしたないですよ?」


「チノちゃん以外見てないからいいのー。」


「そういう問題ではないんですが……はぁ。まったく、しょうがないココアさんですね。」


朝のことがあったからいろいろ頑張ってはみたけど、やっぱりお昼寝しないと疲れちゃうよね。


でも、外で干した布団とシーツはあったかくてモフモフで、これはこれで幸せかも。


そのまま、しばらくはベッドの上でゴロゴロしてたけど……うーん。


「チノちゃん、ちょっとこっちに来て?」


「……何が目的なんですか?」


酷い言われようだよ……。


「別に……何もしないよ?」


「それならいいんですが……。」


チノちゃんは椅子に座って読んでいた本を机に置いて、トコトコこっちに歩いてきます。


……よし。


「えいっ。」


「っ!?こ、ココアさん……!?」


ベッドのそばまで来たチノちゃんの手首をグイッと引き寄せて。


やっぱり、チノちゃん軽いから簡単に押し倒せちゃうね。


「……何にもしないんじゃなかったんですか?」


「うん、だから何もしないよ?」


「なら、この体勢を早く―」


「んっ」


「っ!?」


チュッと啄むような軽いキスを1つ。


やっぱり私、チノちゃんのこと大好きだなぁ。


想いが勝手に溢れてきちゃって、全然止まれないや。


そしてチノちゃんはというと、私の服の裾をギュッと掴んで、頬を上気させて潤んだ瞳で私のことを……


「……。」


「……あの、ココアさ―んんっ!?」


我慢できなくなって、さっきより少し長めのキスをもう1つ。


今のは不可抗力だね。うん。仕方ない。


「こ、ココアさん……今日も、するんですか?」


どこか期待しているような、そんな目でチノちゃんが質問してきたけど……うーん。


「えいっ。」


「わぷっ!?」


その質問に口では答えずに、私はベッドに寝転んでチノちゃんを抱き寄せました。


そして……


「ココアさん?あの……どうしてモフモフしてるんですか?」


「んー……チノちゃんは、えっちなことがしたかった?」


「~~~っ!」


痛い痛い痛い。


今のは私が悪かったから、腕をつねるのはやめてほしいなぁ。


って、普通にお願いしても聞いてくれそうにないので、理由を説明することにします。


「今日はね、感謝デーなの。」


「……感謝デー?」


「うん、感謝デー。こんな私と一緒にいてくれて……好きでいてくれてありがとうって。」


「ココアさん……。」


背後からチノちゃんを抱きしめたままの体勢だけど、それでよかったのかも。


いくら私でも、さすがに顔を合わせてこんなことを言うのは恥ずかしいからね……。


「だから今日は……」


「……はい。」


「寝ます!」


「えっ?」


「おやすみなさい!」


言うが早いが、私は寝ることにします。


これは……そう、戦略的な撤退だよ!


「ちょっとココアさ……解けない……。」


そりゃあまだ私起きてますし。


それに、チノちゃん小っちゃいから、私が腕ごと抱きしめたら抜け出せないんだね。


……でも、今日は疲れたから。


なんだか、もう眠くなってきたよ……。


「……ココアさん、もう寝ちゃいましたか?」


「ぅん……。」


微睡みの中で、聞こえた声にとりあえず反応している私と、どこか冷静に考えている私がいます。


……なんだか、変な感じだなぁ。


「私だって、毎日感謝してるんですよ……?一緒にいてくれるだけでうれしいですし……それに、好きって言ってくれると、もっと嬉しいですし……。


私は感情を表に出すのが苦手だから、もしかしたら伝わってないのかもしれないですけど……私はずっと、ココアさんと一緒にいたいです。」


「……。」


「……って、寝てる人に言ってもしょうがないですよね……。はぁ。直接言えたらいいんですが……。」


……ううん、チノちゃん。チノちゃんの言葉は、ちゃんと伝わってるよ?


眠くて体が動かないのと、あと、今喋っちゃうと泣いちゃいそうだから何もできないけど……。


でも……そっか。


やっぱり私、チノちゃんのことを好きになってよかったよ。


そんなことを考えながらも、目蓋はどんどん閉じていきます。


もうちょっと起きて、この幸せを抱きしめたかったけど……もう限界かな。


……明日からはまた、チノちゃんが好きな、笑顔の私に戻るから。


今日だけは……そう、おやすみなさい。


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