2016-08-20 15:26:31 更新

前書き

半分作者の妄想半分は作者の体験です。


春香「漏斗胸ですか?」P「……ああ」



今日はプロデューサーさんとプールに来た。

ふふ、今日の為におめかしいっぱいしたんだからね!

あ、言って間にプロデューサーさんが着替え終わったみたい。

普通男の人って早く終わるものじゃないのかな…?

まあ、いいか

「プロデューサーさん!プールですよ!プール!」


「わーってるよ!大声出すなって…バレたらどうする気だ…」


一方でプロデューサーさんはため息を吐く。

ふとプロデューサーさんを見て気づいたジャケットのようなものを羽織っていた。

これは怪しい…亜美風に言うなら事件の香りがしますね〜んっふっふーかな?


「ぶー、今日は泳ぎに来たんですよ!怒られに来たんじゃないのになぁ……」


上目遣いでプロデューサーさんを見る。


「あー、もう分かったよ!!怒らない怒らないから!」


「ぶー言葉だけなら何とでも言えますよねー」拗ねたふりをする。


「じゃあ、どうすればいいんだ?」


「そうですね…そのジャケットを脱いでください!」

その言葉を言った途端プロデューサーさんは露骨に嫌な顔を一瞬したが直ぐに何時も通りの顔に戻った。


「……なんでジャケットを脱いで欲しいんだ?」プロデューサーさんは笑って聞いた。けれど目は笑っていなかった。


「あ、いや…その…別に嫌ならいいんですけど……」普段見たことのないプロデューサーさんの顔にしどろもどろになる私。


「…まあ、いいよ。言おう言おうとして先延ばしにしていたしな。」

一呼吸おいてからプロデューサーさんは言う。


「春香にとっては何ともないことだろうけど俺にとっては結構なことなんだ…」

目線は私に向いているのにどこか違うの所をみているそんな表情だった。


「…ここは人が多い。何処か場所を移そうか」


「…はい!」

思った以上に深刻な話だったのかもしれない。私はその話を出したことを後悔した。

プロデューサーさんが連れられて来たのは、ホコリが少し溜まったベンチだった。


「わあ、プールの中にこんな所あったんですね!」


「…まあ、調べたしな」

呟くようにボソッとプロデューサーさんは言った。


聞き返そうとした瞬間プロデューサーさんの言葉に遮られた。


「ここなら誰もこないし、聞かれる心配もないしな。さて、本題に入ろうか春香見てくれ」

そう言いながらプロデューサーさんは羽織っていたジャケットを脱いだ。

そのプロデューサーさんの身体はマッチョとは程遠いぐらいガリガリだった。

そしてその中央ちょうど胸の真ん中に野球ボール一個入りそうなぐらいおっきな溝があった。


「わぁ…おおっきい…」


「…さすがにその反応は傷つくなぁ~」

私は慌てて口を抑えた。


「す、すいません!そんなつもりじゃあ…」

必死に弁解しようとする私をプロデューサーさんは静止した。


「いや、いいよそれが普通の反応だし」


「へ?」


「ああ、別にそういうのには慣れてるからいいんだよ。問題は身体的な話でね」


「え、じゃあさっき傷つくって言ったのは?」


「ん?ああ、嘘だよ」

思わず面食らった。


「え、ええええ!?」


「大声出すなって…一応フォローしとくと春香が最初だからな漏斗胸を言ったのは。

普通の春香に言うのが一番気が楽かと思ってな」


「まあ、褒め言葉として貰っておきます」


「ああ、そうしてくれると助かる」


「あ、それと…」


「ん?なんだ?」


「漏斗胸って…その胸へこみのことなんですかね?」

遠慮がちに言う私。


「…ああ、そうだ」


「実は言うとな今日春香と俺オフ重なってるじゃないか?

あれって律子と俺で調整したんだ。

ああ、でも律子には漏斗胸は言ってない。

春香をプールに誘いたいって言ったら手伝ってくれたよ」


「え…ってことは…」


「ああ、全部俺が仕組んだことなんだ。

すまん。」


予想外の言葉に呆然とする私。


「この場を借りて言いたかったんだ。

俺の事を。……長くなるけどいいか?」


「….はい」


「漏斗胸ってのは見て分かる通りへこんでる。ただへこんでるだけならいいが心臓を圧迫するんだ」


「ええ!?圧迫ですか!?大丈夫なんですか?」


「ああ、軽度の漏斗胸なら軽いへこみで済むのだろうけど俺はあいにく重度の漏斗胸だった」


知らなかった私。プロデューサーさんがそんなものと戦っていたなんて…

「……」


「漏斗胸の原因は遺伝とか色々言われてるが実際のとこはわかっていない」


「原因はわからない…」


「ああ、だが日常生活を送る上では問題ないみたいなんだ。」


「お医者さんに行ったんですか?」

プロデューサーさんは首を振った。


「…いや、健康診断だ。学校とかでよくあるだろ?あれだよ。」


「じゃあ、一度も病院には行ってないんですか?」

プロデューサーさんに詰め寄って聞く私。


「…ああ、一度も行ってない」


「なんで行かないんですか!心臓を圧迫されているなら尚のこと行かないと!」

私は初めてプロデューサーさんに檄を飛ばした。


「もし、行って失敗したらどうする?」



「え…いや、その実践をあるところで…」


「たとえ実践があっても絶対失敗しないと言い切れるのか!」

見た事もないプロデューサーさんの顔だった。

悔しさと悲しさを混ぜたような顔だった。


「すいません…でもプロデューサーさんには!」


「ああ、分かってる。俺の方こそすまない。」


「でも俺は…!怖いんだ!もし、失敗してお前らをトップアイドルに出来なかったらどうしょうって思うと怖くて怖くて仕方ないんだ…」

プロデューサーさんは泣いていた…


「変だよな…何時もはお前達に頑張れーって言ってるのにこんなに惨めだ…大の大人が…」


「でも、ありがとうございます。

プロデューサーさん。

思ってた吐き出してくれて

私嬉しいです!」


「いや、まだ一つだけ言ってない事がある…」涙を流しながら言った。


「漏斗胸は…日常生活を送る上で支障はないと言ったが俺の体質のせいか慣れない空間や重い物を持つと戻してしまうんだ…」


「765プロに入社してまた名もない頃、環境に順応してないせいだろうな何回も何回も戻したんだ。」

辛そうな顔で言うプロデューサーさん。


「苦しかった、何回も辞めようと思ったよ…

でも踏みとどまった。それは何故だと思う?」

いつの間にか涙が乾いていたプロデューサーさん。

そんなプロデューサーさんは私に問いかけてきました。


「えっと…無難に笑顔ですかね?」

小さく言った。


プロデューサーさんは小さく笑った。

「それもあるけどな

オーデションだよオーデション。」


「オーデション…ですか?」


「ああ、オーデションに落ちたことが逆に俺を踏みとどませたんだ。もっと頑張らなきゃってな…

逆に受かっていたら俺をプロデューサーを辞めていたかもしれない」


「そんな事言わないでください!プロデューサーはプロデューサーだけです!」


「……そう言って貰えるとここまで頑張ってきた甲斐があるよ」

天井を見上げるプロデューサーさん。


「…プロデューサーさんは誰にも言わなかったんですか。

その…漏斗胸のこと」

目線をこちらに戻すプロデューサーさん。


「ああ、誰にも言ってない。

もし誰かに言ったら俺はそれに甘えてしまいそうだから言えなかったし、漏斗胸を言い訳にしたくなかった。」

力強い言葉で私を見据えるプロデューサーさん


「強いですね、プロデューサーさんは」


「強くなんか…ない現にこんな卑怯な手を使って春香と話してるし」


「プロデューサーさんは不器用なんですね…

辛い時は辛いって言っていいんですよ。

一人で溜め込まずにいいんですよ。

もっと私達を頼ってもいいんですよ。」


「うっ…ぐっ…その言葉は卑怯だろ…」


「プロデューサーさんも卑怯です…

そんな姿みたら独り占めしたくなっちゃいます。」


「それも…いいかもな…」


「プロデューサーさん」

プロデューサーさんの手を持つ私。


「今まで一人でよく頑張りましたね。でもこれからは一緒に頑張りましょう。」

我慢出来なくなったプロデューサーさんの涙が流れ出た。


「ありがとう…俺はその一言だけを…言って欲しかったんだと思う……ありがとう春香」


そしてプロデューサーさんはわんわん泣き出した。


数分後、プロデューサーさんの目は泣き腫らしていました。


「もう一つあったよ俺が踏みとど待った理由

。春香のそのバカみたいに前向きなところ。」


途端私は顔は赤くなりました。


「なあ、春香…俺事務所に帰ったら皆に言うよこの身体のこと。

そして手術の日程も決めようと思う。」


「プロデューサーさん…」


「俺も前に進まなきゃな…」

その時のプロデューサーさんの笑顔は今まで見た事のないぐらい無邪気で嬉しそうでした。



後書き

ありがとうございました。
漏斗胸をもっと知って欲しい思いで自己満足で書きました。


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