2017-06-16 08:14:19 更新

概要

ただの短編集(にしようと思っています)

真面目に書こうとしたのが久しぶりなのでたぶん色々ヘンですがご了承ください

批判も大歓迎です


前書き

※読みやすくするために微調整しただけです


ある鎮守府の一日




それは、都会でもなければ田舎でもない、普通の街の鎮守府。


ある朝、俺は強烈な眠気と共に目を覚ました。

午前4時何分か。まだいける。


ある朝、俺は首を縛り付けるような首の痛みと共に目を覚ました。

午前5時56分。まだいける。


ある朝、俺は生乾きの粘土を割るような音を首から鳴らしながら起き上がった。

午前6時19分。まだいける。


ある朝、俺は俺を呼ぶ不機嫌そうな声を無視できずに起き上がった。

午前7時26分。まだいける。


・・・そう思って布団に入った瞬間、

俺は床から吹っ飛ばされた。



「司令官!!」



脳震盪になりそうなほど強く床に打ち付けられた頭に、ぼんやりと声が入ってくる。

これは吹雪の声か?



「・・・もう少し優しく起こしてくれないかな」


「優しくしたら起きないじゃないですか!」


「まあそうなんだけども」


「分かってるなら黙って起きて下さい!」


「えー・・・今何時・・・」


「もう7時ですよ!艦娘はもう皆起きてます!早く食堂に行ってください!」



すでにここまでは毎日の日課になっている。


吹雪に引きずり回されている状態で見る限り、ほとんどの艦娘は食堂に集まっていた。

が、やはり起きたばかりなのか話し声はかなり少ない。




本来は総員起こし6時の後、その日の用意を済ませて7時に朝食を食べるのだが、

俺の朝礼があまりにも遅いのでここは実質7時起床、7時半朝食となっている。

そのうち7時に起きるのは2割ほどだろう。




(訓練が8時からなので、できれば急いで下さい)


(おう、分かった)


そんな微妙な空気に包まれた空間で、俺は朝礼として白紙の原稿を読み上げる。これも日課の一つだ。

話した内容なんぞ覚えているわけがない。




朝食の後は訓練の視察、面白ければ参加。

いつものように元気のいい声が聞こえてくる。

書類?ああ、やったかな、そういえば。



「司令官は仕事の処理は速いのに、どうして余った時間で次のことをしないんですか」



秘書艦ということで、同じく視察に回っている吹雪からの質問だった。



「他のことの方が楽しいからな」


「おかげで秘書艦は仕事がないんですよ」



最近は深海棲艦の殲滅も進み、処理する書類の量も減ってきたこともあり、

もともと仕事の効率の良かった俺は秘書艦の助けが無くても仕事が進むようになってしまった。

(先月までは秘書艦に手伝ってもらっていたが彼女たちに申し訳ないのでやめた。)



「平和なのはいいことだろう」


「ええ。このまま出撃もなくなればいいんですがね」


「そいつはしばらく無さそうだ」


「そんなぁ」




くだらないことを吹雪と話しながら、俺の頭は昔の記憶を思い出していた。

平和じゃなかった頃は、俺も皆も相当地獄を見た。


まだ俺が兵士だったころ。艦娘なんてものが無かったころ。

今思えば、よく生きて帰ってこれたものだ。


あいつは今元気だろうか。

あいつは墓は立ててもらえただろうか。

あいつは家族に会えているだろうか。

あいつは今生きているだろうか。

あいつは今どこにいるだろうか・・・




俺がそんなことを考えていると、威勢のいい訓練終了の声。

隣の吹雪がよだれを垂らしている所を見ると、俺は相当長く考えこんでいたらしい。



「はひゅっ⁉︎」



突然の大声に驚いた吹雪が素っ頓狂な声をあげて飛び上がる。

寝ぼけていたのか、俺の真横で凛々しい敬礼を披露してくれた。



「・・・」


「・・・」








「吹雪」


「・・・」


「もうそろそろこっち向いてくれないかな」



昼過ぎ。あの時から彼女が何も話してくれない。

何とか話そうとはしているんだが、



「俺、お前に何かしたか?」


「・・・」



正直心当たりがない上に本人がこのざまではどうしようもない。

一体どうしたものか・・・



「・・・見たんですよね」



初コンタクト。しかしというかやはりというか声が不機嫌そうだ。



「ああ、敬礼だろ?誰だってたまにはやらかすんだ、気にすんなって」


「・・・わっ、私のパンツ、見たんですよね⁉︎」


「・・・は?」



とつぜんの どなりごえだ!

しかし まったく みに おぼえがない!



「わ、私が、立ったとき、に、てて、提督が、下、下から、私の、ぱっ、ぱっ、ぱっ、ぱぱぱぱぱぱぱ」


「⁉︎ふっ、吹雪⁉︎」



何かが吹っ切れたように騒ぐ彼女。言いたいことは分かるがこれでは弁明もできない。

っていうか吹雪の目とか体がガタガタ揺れてるんだがこれ大丈夫なのか?



「ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ」


「吹雪!落ち着け!おい!」



大丈夫じゃなかった。



「ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ





〜しばらくお待ちください〜





「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」


「・・・吹雪、一旦落ち着いて話そうか」


「・・・はい」









午後3時。これからの計画を秘書艦と練り直す時間・・・のはずなんだが今日は二人とも黙って期限がはるか先の書類を片付けている。



「・・・司令官」


「なんだ」



吹雪が気まずそうに頭を下げたまま呟く。



「その・・・申し訳ありません。変な言いがかりをつけてしまって」



提督としては彼女を励ましてやらねばならないのだろうが、正直どうフォローしていいのか分からない。


何言っても気を使われそうだし。


ていうか、実際パンツ見えてたんだよね。興味ないけど。



「・・・えっと、気にすんな」



20秒弱考えたにしては、あまりに少ない言葉。



「いえ、いいんです・・・司令官に大変なご迷惑をお掛けしてしまいましたし」



そして結局気を使われましたとさ。めでたしめでたし。




・・・じゃなくてだな。吹雪にはいつものテンションに戻ってもらわないと困る。

このままだと遠征から戻ってくる他の雪共に何言われるか分かったもんじゃない。


仕方ない。あの手を使うか・・・



「吹雪。後で一緒にメシ食いに行かねーか?」


「!」



うん。やっぱり吹雪にはコレが一番効く。



「・・・司令官の奢り、ですよね?」(少し遠慮がちに)


「もちろん」



本当は金は使いたくないけど仕方がない。

さて今日は乗ってくれるのか吹雪?



「いいんですか?」(笑みを抑えながら)



☆ 勝 ち 確 ☆



「いいんですよ」


「分かりましたッ喜んで!」




この妙な切り替えの速さとその度見せるこの笑顔も、彼女の魅力の一つなのだろう。




「さて、それじゃいつk」


「今日行きましょう!今夜!」


「おう」


「じゃあ、準備しないとですね!」



よし、何とかなった・・・・

けど何か忘れてる気がする・・・


!!



「ま、待て吹雪!」


「どうしました?司令官」


「・・・来週でいいか?来週で。な?」



よく考えたら来週給料日なのに奢れるわけないだろ!何考えてんだ俺は!

とりあえず今週はまずい・・・!



「嫌です」


「ゑ”ゑ”ゑ”⁉︎」


「来週長期遠征だって言ってたの覚えてますからね!ごまかしても無駄ですよ!」


「あっ」



まさか自分で立てた計画にここで邪魔されるとは・・・

なんて今更後悔してもどうしようもない。



「司令官、今日でもいいですかね」


「・・・分かった(´;ω;`)」


「本当ですね⁉︎ありがとうございます司令官!」



・・・へそくり、どこやったっけな・・・




午後5時。

規定では自由行動(これも実質ただの自主練)中の艦娘たちの監視が提督の任務なのだが、

もちろんこの鎮守府では本当の自由時間と化している。



「提督ー 大富豪しよぉー」


「いいぞ、今度も負けないからな」


「じゃあ早く、神通も那珂も待ってるから!」



とまぁ、こんな感じ。てか廊下走ってくるな川内。




「・・・っと、やべっ、もう6時だ」


「用事でもあるの?」


「吹雪と外食の約束したからな」


「ああ、行ってらっしゃい」


「モンブランでも買ってきてやろうか?」


「いいの⁉︎よろしく!」



アイドル業や駆逐艦の監督に忙しい妹とは逆に昼間ずっと暇なせいか、

川内型の三姉妹の中でも川内は特に俺に絡んでくる。

おかげで神通や那珂と話すのもけっこう苦労させられるんだなこれが。



「・・・」


「そんな目で見るな神通」


「・・・」


「那珂もかよ」




午後6時半。夕食兼自由時間の時間帯。



「この海鮮丼と、この海鮮丼と、この海鮮丼ください!」



目の前の悪魔によって、今俺の財布が轟沈されようとしていた。



「あれ?司令官ほとんど何も頼んでないじゃないですか。食欲でもないんですか?」



悪魔が不思議そうな顔をして尋ねる。



お ま え の せ い だ バ カ



「あ、これ美味しそう♪すいませーんこれもくださーい!!」



弾んだ声で俺の財布を破壊しにかかる悪魔。

少しぐらい俺のことも考えてくれ。



「吹雪のその食欲はどこからくるんだ」


「え?さぁ・・・いつもお腹が減ってるわけじゃないんですけど・・・

なんででしょうか」


「・・・」




「・・・8万4326円になります」


「くぁwせdrftgyふじこlp」


「司令官?司令官⁉︎」




「ただいま帰着しました!」


(夜だからあまり大声出すな)


(あ、すみません)


俺の右手にはモンブランの入った袋と、無重力状態の財布。左には悪魔。


鎮守府内に入ると、俺は悪魔を置いて真っ直ぐ川内たちのいる部屋に向かった。



「川内ー、いるかー?」


「いないよ〜」



テレビを見ている那珂の声。即答だった。



「そうか、じゃあモンブランはここに置いておくよ」


「は〜い」


「・・・」


「・・・」



またこの空気か・・・どうしよう・・・



「・・・那珂、那珂の誕生日は今週末だったよな?」


「・・・そうだけど」



今週末は視察で東京に行くしなぁ・・・

そうだ、これでやってみるか。



「俺が鎮守府のどこかに那珂の誕生日プレゼントを隠した。

誕生日までに見つけたらプレゼントをやる」


「本当?」


「本当だとも」



那珂、だいぶ眠そうだな・・・

取り敢えずこれで関わる機会を増やして・・・



「それじゃあ、まずその手提げ袋の中見せて!提督!」



あっ



「」


「・・・え?」


「」



ま だ 隠 し て な か っ た ん だ っ た\(^o^)/



「ちょっ、冗談のつもりで言ったんだけど⁉︎」


「」


「えっ、う、嘘だよね⁉︎」



笑いと驚きが混ざったような顔で那珂が袋の中を覗き込んだ。


袋の中には、那珂がずっと欲しがっていた少し高めの髪飾り。

せっかくだから持ってきたへそくりで買った。



「・・・」



その直後、崩れた笑いを浮かべている俺の顔を見たかと思うと、



「ん、ぷす、はははっ、はははは」


「あははははははははっ!!あっははははっ!!!ははははっははは!!!!」



軽巡寮中に響き渡るような声で腹を抱えて笑いだした。



「ひぃ〜wwwwwwちょっとまってwwwwwwしぬwwwwwwwwwしぬwwwwwwwww」



そんな彼女の笑いにつられてか、自分自身をおかしく感じたのか、俺も途中で吹き出してしまった。




「・・・ありがとう、提督」



笑い疲れた那珂が、息を荒げたまま続ける。



「提督って意外と面白い人なんだね」


「それ喜んでいいのか?」



完全に彼女の眠気は吹き飛んでしまっているようだ。



「・・・くすっ」


「訓練とか出撃の時は外せよ」


「もっちろん!」



やっぱり恥ずかしいけど、那珂の笑顔を久しぶりに見られたから良しとしよう。




「神通姉さんの誕生日もそれやるの?」


「やるわけあるかっ!」








「何があったんですか?こっちまで笑い声が聞こえてきましたよ」



予想通り吹雪はまだ執務室で待機している。



「まあな。待たせて悪かった、秘書艦の仕事は終了だ。おつかれさま」


「・・・失礼しました」



少しの間の後、吹雪が微妙に締まらない表情で扉の向こうに消えていった。

そりゃあんだけ食えば眠くもなるだろうよ。



「・・・」


「さて、寝るか」



ばっさばっさと布団を広げながら、俺は誰もいない提督の部屋で一人つぶやく。



布団の中で考え事をするのも俺の日課の一つだ。


今日は今週どう生活していくか考えないとな(´;ω;`)




later Birthday




「さっさと起きなさいったら、このクズ!」



今日は爽やかな朝だ。真上に空が見える。

あれ?天井あった気がするんだけど・・・

布団も硬い・・・



「お き な さ い ! !」



・・・知ってた。




「何も外にまで放り出さなくてもいいじゃんかよ」


「あんたが起きないのが悪いのよ、さっさと準備しなさい!」



今日の秘書艦は霞かー・・・

めんどくせえ・・・



「ほら、制服!チンタラしない!」


「寒い・・・」



昔は寒いぐらい平気だったんだが・・・

平和ボケしたかな・・・


まあ、愚痴ってもしょうがない。

今日一日、頑張りますか。




「・・・?」



今日の朝礼は、なんだか様子がおかしい。

いつもは寝ぼけているみんなが、今日は背筋をぴんと立てて起きている。

今日は来客のある日だったっけ?



「なあ霞、昨日の夜何かあったのか?」


「あるわけないでしょ、たまたま早寝でもしたんじゃない?」


「いや、一日の半分くらい寝てる奴らに限ってそれはない」


「あんた何気にひどいわね」




「おい、イビルジョー」



用事を忘れていたらまずいので前の秘書艦だった吹雪に聞いてみる。



「何ですかそれ」


「http://dic.pixiv.net/a/%E3%82%A4%E3%83%93%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC」


「は?」



どうも吹雪にはこれは通じないみたいだ・・・

いや、そんな事はどうでもいい。



「今日って何か用事のある日だったか?」


「え?」



しん_____とあたりが静まり返る。

一斉にこちらに向けられる目線。



「あれ?何かあったのか?」



ざわ・・・ざわ・・・

音をつけるならマジでそんな状況なんだが、全く身に覚えがない。


吹雪もすごい反応に困った顔してるし。

って古鷹さんそんな哀れみの目でこっち見ないでください。



「はぁ・・・」



後ろでじっと立っていた霞が突然口を開いたと思うと、



「行くわよ」


そのまま俺を引っ掴んで執務室に引きずり込んだ。

首筋に触れた霞の手は、思ったより暖かかった。


・・・思ったより、な。








「・・・」


「・・・」



今日の執務室は一段と静か。霞と仕事するといつもこうだ。

霞は何かとめんどくさいので中々話しかけづらく、近頃は必要事項を伝えるだけになっている。

お陰様で話す内容が思いつかない。


しかし、



「・・・霞、一回大型艦建造していいかな?」



この俺の一言で平穏は終わりを告げた。



「駄目!この前したばっかじゃない!もう忘れたの⁉︎」


飛び上がるように立ち上がり机を叩いて怒鳴る霞。


「ボーキサイト30000以上あるじゃねえかよ!」


「燃料6582の分際で何言ってるの⁉︎それに航空基地隊の分も考えて!馬鹿じゃないの⁉︎」


「任務報酬があるから少しぐらいいいんだよ!」


「そう言って燃料400000以上消し飛ばしてイベント参加出来なくしたの誰だったかしら⁉︎」


「回していいっつったのお前じゃねえか!」


「あそこまで回せなんて言ってないわよ!」



口喧嘩する二人の声が跳ね回る執務室に、扉をノックする音が鳴り響く。



「提督さん、今日の


「はいこちら箱崎鎮守府迷子センターでございます!」


「えっ?あっ、あの」



神通だ。どうせ訓練の終了でも伝えに来たんだろう。



「あなたと保護者の氏名をどうぞ」



だが、こっちは暇なんだ。残念だが付き合ってもらおうか。



「わ、私は神通で、お母さんは神通です!」



顔を真っ赤にしながらしどろもどろに話す神通。乗ってくるとは思ってなかったので正直驚いた。

なんだか霞がずっとこっちを見てる気がする。



「おいくつですか?」


「17歳です!」


「・・・」



言われてみれば、神通は17歳に見えないこともない。

後ろで霞がすごい睨んでるのはきっと気のせい。



「お母さんとはどこではぐれましたか?」


「駄菓子屋さんです!」


!?



・・・神通の中の駄菓子屋は近くのイオンモール並みに広いのだろうか。



「了解しました。結果が出るまで2、3年お待ちください」


「あの・・・」


「はい?」


「報告、もうそろそろしてよろしいでしょうか?」


「よろしいです」


「司令官、お話してもよろしいでしょうか?(優しい声)」


「よろしいです(´;ω;`)」




午後5時。なんだか艦娘の様子がおかしい。


だいたいいつも走り回ったり執務室に駆け込んだりしている駆逐艦、軽巡勢が今日は全く騒がない。廊下を見ても誰もいない。


しかも探しに行こうにも霞が許してくれない。


「今みんな忙しいから」って言うのに、「じゃあ俺が手伝う」って言ったら

「あんたは仕事しなさい」って・・・


俺 は 暇 な ん だ ! ! !



「なあ、みんな何やってるんだよ・・・本当に俺は関係あるのか?」



さすがに腹が立ってきたので若干声を尖らせて聞いてみる。



「・・・そもそも、あんたにしか関係ないわよ」



呆れたような顔で霞が返す。



「っつっても、俺って今日何かあったか?誕生日は昨日だったし・・・」


「・・・え?」



しばらくの沈黙のあと、愕然とした表情で聞き返す霞。

明らかに動揺している。



「昨日、なの?」


「そうだけど?」



いや、まあだいたい事情は察しましたけど。

取り敢えず、具体的にどうなってるのかを知らないことには何もできない。



「・・・司令官」


「どうした?」


「先に伝えておきたい事があるから、ちょっと来て」





「・・・それで、伝えておきたい事というのは」


「その、今みんなが『司令官の誕生日をサプライズで祝っちゃおう作戦』っていうのを駆逐艦たち主導でやってて」



どうせそんなこったろうとは思ったけど、名前ストレートすぎない?

・・・いや、そんなことはどうでもいいか。



「それでみんな起きてたのか」


「みんなが食堂で準備してるの。朝からずっと」



朝からか・・・それだけやって本人にあの反応されたら、ああなるのも仕方ないな。



「だからさ、嘘でもいいから喜んでやって」


「・・・俺は嘘がかなり苦手だから、期待はするなよ」


「それでもいいから、あの子たちの努力を無駄にしないで」



事実、俺は嘘は尋常じゃないほど苦手だが、こうなった以上やるしかない。








夜遅く、執務室にノックの音が響いた。



「司令官、みんなが呼んでいるわ」



さっきとは全然違う、いつもの霞がいる。

さっきとは全然同じ、演技できるのか不安な表情を浮かべた俺は、霞にはたかれながら食堂へ向かった。



食堂は電気も消えていて、全く先が見えない。

そこかしこから艦娘の気配がするあたり、どこかにバラバラで隠れているのだろう。


霞に引っ張られながら中を進んでいると




突如食堂の電灯が点いた。そして飛び交う紙吹雪、クラッカーの音。それに続いて、



「司令官、誕生日おめでとうございます!!!」



の声と共にどこからともなく艦娘たちが出てくる。




霞が横で脇腹を小突いてきた。しっかりやれ、という合図だろう。

とはいえ、さすがにすぐに笑顔を作るのも怪しい気がする。



「どうしたんだい司令官、司令官の席はあっちだよ」



どうしようかと迷っている間に、響たちにいつもと違う来客用の椅子に座らされた。



「さあさあ、今日はめでたい提督の誕生日!パ〜ッと呑んじゃおうよ!」



隼鷹が一升瓶を抱えて食堂にやって来る。歩き方からして既に酔っているようにも見えなくはないが・・・


・・・案の定、持ってきた日本酒は自分たちで飲み干している。



「こら、駆逐艦もいるんだぞ!」



すかさずやってきた長門が隼鷹らの頭を乱暴に揺さぶった。



「いいじゃんかよぉ〜一年に一回なんだからさ〜」


「だからといって節度というものがあるだろう!」


「うるさいなぁ〜長門ものめよ〜」



一年に何回も見る光景だ。またか、と思わず笑みがこぼれる。




「それにしても、提督もこれで25歳か、逞ましくなったな」



一通り絡み終わった長門が、俺の隣に立って言った。


長門は、3年前にやってきた一番最初の戦艦だ。

昔よく第一艦隊の旗艦にしていたのでその関わりは深い。



「出会った頃はよく私に泣きついてきたな、『仕事が終わらない〜』って」


「その話はもういいだろっ!」



実際、あのときは頼んだ長門も何も出来ないまま締め切りを迎えることになった。

それでも何とかしようと夜遅くまで無理に起きた挙句にぶっ倒れて、

そのことを綺麗に忘れている。



「何だ提督、何がおかしい?」



そのときの長門の姿を思い出していると、笑いが止まらなくなった。



「な、何なんだ提督、一体何がおかしい!」



顔を赤くして迫る長門。その表情にはまだあの時と同じ子供っぽさが残っている。



「提督さん、ケーキ切るよー!」


「・・・呼ばれているぞ、行ってこい」



置かれていたグラスにオレンジジュースを注ぎながら長門が言う。



「分かった、じゃあな」









「どうでしたか?司令官のためにみんなで用意しました!」



パーティーが終わった後、吹雪が弾んだ声で話してくる。表情は得意げだが、少しの不安も見えた。

やはり今朝の俺の態度が気にかかっているのだろうか。



「いや、こんなことしてくれるとは思っていなかった(いろんな意味で)から・・・

すごく嬉しいよ。ありがとう」



実際、みんなが祝ってくれることを知ったときは嬉しかった。

本当に自分の誕生日のように楽しんだことも事実、吹雪を励ますように不自然でない最高の笑顔を見せる。



「本当ですか⁉︎やったー!」



周りの艦娘にも喜びの表情が広がった。

やっぱり自分の艦娘の笑顔を見るというのは喜ばしいものである。


改めて、この鎮守府に来て良かったと思う。







と、いうのが去年の話。


あれから俺は、管理上の誕生日を全部1日書き換えた。彼女らに知られて傷ついては欲しくなかったから。


上層部にはそれなりに叱られたけど、別に1日遅れて困る訳でもなし、今年もその日に何があるかと期待していた。




誰か人に聞いたんだろうな。


しっかりと元の誕生日で祝って下さいました。




昨日誕生日パーティーで、今日同僚が祝いに来る予定なんだが・・・


どうしよう(´;ω;`)




これを読んでる提督の皆さん、誕生日は毎年艦娘に伝えておいて下さい。本当に。

俺は言ったからな。どうなっても知らんぞ。


後書き

こんなSSを最後までお読みいただき有難うございます

訂正してほしい点など、コメントは大歓迎です

次回予告は事故の元なのでやめます


このSSへの評価

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SS好きの名無しさんから
2024-11-15 21:23:49

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2018-01-21 14:48:35

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このSSへのコメント

1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-07-09 06:01:26 ID: S-i6SEgX

よかった。次回作に期待してる


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