2016-10-13 22:57:45 更新

概要

ある艦娘に命を救われた戦闘機乗り、救われた彼が恩返しをしていくそんなお話です


前書き

ss初投稿です/ミリタリー知識はにわかなので所々変な表現あるかもしれませんが
大目に見てもらえれば幸いです
後はご指摘、感想など頂ければ励みになります
よろしくお願いします


~とある海戦で~

一機の戦闘機が黒煙を上げている

計器類が異常を示し、アラートが鳴り響く

二発あるエンジンの内、片方は既に息をしていない


操縦士「どうしてこんな事に…」


8機いた編隊は今となって僕一人になってしまった

そんな僕も墜落しかけの機体を持ちこらえるので

精一杯だ


いつもと同じ迎撃任務のはずだった


しかしいつもと違かったのはこちらの兵装が

全く通用しなくなっていたんだ


つい先日の出撃では敵艦載機を機銃で落とし

空母を爆撃し圧倒していた


だが今日は違っていた

彼らは...そう深海凄艦は度重なる人類との戦闘で

現代兵器に耐性をを得たということなのか


僕は目の前で起きた事態を受け止めると

近場にいた敵空母に目を向けた


操縦士(どのみちもう逃げられない... 

隊長も部下も皆逝ってしまった

せめてあの一隻だけでも連れていく!)


僕は鳴りやまないアラートを無視してエンジンの

出力を上げ特攻を掛ける


しかしもう少しと言う所で

もう片方のエンジンも止まり海上に墜落していく


操縦士(そんな...)


墜落の衝撃で頭を計器にぶつけヘルメットの

シールドが砕け破片が左目を抉る

激痛で開けられない片目で狭まった視界で

風防から外を覗くと目の前に迫る

深海棲艦達


操縦士「これで終わりなのか…何もできずに...仲間の仇さえ討てずに...」


脱出しようと思えば出来たのだろう

たが脱出した所で海上だ自ら死ににいくだけだ

僕は風防を開け空を見上げた


操縦士「隊長、皆ごめんな...」


怖いほど澄み渡った青空の下、僕は終わりを待つ

遂に深海棲艦が目と鼻の先まで迫った時

轟音と水しぶきを上げ深海棲艦が消し飛んだ


操縦士(何が…?)


???「榛名さん、そこの墜落機にまだ人が!」


榛名?「榛名が一番近いですね、救出します!神通さん援護を!」


神通?「了解しました!」


背中に艦砲のような物を背負った女性が

数人海上を滑るように移動し

深海棲艦を駆逐していく


そして榛名?と呼ばれていた女性が

僕が乗っている墜落機に接近する直前

墜落機すぐそばに敵の砲撃が落ちる

その衝撃で僕は頭を強打する

遠のく意識の中、長い黒髪の凛とした女性が

声を掛けて来るのが見えた


操縦士「き…みは…?」


榛名?「大丈夫ですか!あなたは榛名が絶対にお守りします!」


敵の砲撃の最中、僕を安心させるように笑顔で言うと

僕の機体を庇うように前に出て反撃を始めた


そんな彼女の後ろ姿を眺めながら僕は意識を手放した…







~1年後 館山航空隊基地~



僕の話しをしよう

僕が提督になった経緯は少し変わってる

普通提督になるには海軍大学校とかを経て

士官になり出世したりしないとなれないのだろう

それを踏まえて僕はと言うと元戦闘機乗りだ

一応海軍所属だけど畑違いと言えるだろう


最初、辞令を受けた時何かの間違えと思ったよ

その頃僕は1年前の深海棲艦との戦闘で負った

怪我で戦闘機乗りとして復帰が難しくなったんだ

それからと言うもの一応は対深海凄艦戦闘で

それなりに戦果を挙げていたこともあってか

飛べない身ながらも教官として軍に残ることが出来た


しかし教官としての戦技教導も今となっては

意味がないのだろう

1年前のあの日を境に航空兵器以外にも人類が

保有するほぼ全ての通常兵器が深海凄艦に

通用しなくなったのだから


だが今だ人類が深海凄艦に苦戦しながらも

生きながらえているのは何故かというと

詳しくはわからないが海軍が新たに導入した

新兵器による物だという現状その兵器のみが

唯一深海凄艦に通用する物だそうだ


あの日朦朧とする意識の中、見た彼女達が

ふと頭の中を過る

そんな事を考えていた時だった


通信兵「風見大尉、基地司令がお呼びです」


風見「僕をかい?わかった」


僕は呼ばれた理由を考えつつもいまいち

ピンと来ない中基地指令室に向かった


風見「失礼します」


入室と同時に敬礼をする


基地司令「お疲れ 風見大尉、楽にしてくれたまえ」


基地司令「急にすまないな、だが大事な話なんでな」


風見「いいえ、問題ないです それでご用件の方は」


基地司令「風見大尉、また前線に戻る気はないかね?」


風見「前線にですか?しかし自分はもう...」


基地司令「あぁ、すまない言葉が足りなったようだ兵士としてではなく指揮官としてだ」


風見「自分が指揮官ですか?」


基地司令「君は対深海凄艦の航空隊として最強

とまで言われた部隊で主任操縦士を務めていた

そうじゃないか」


風見「ですがそれは過去の話です、隊長も部下も

誰一人守れなかった...それに通常兵器が通用しない

現状で自分が航空隊の指揮をしたところで...」


基地司令「まあ、待ってくれ 君には航空隊の

指揮をして貰うんじゃないんだ」


風見「と言いますと?」


基地司令「君も噂は耳にしているんじゃないか、

我々海軍が唯一深海凄艦に通用する兵器が

あるという話を」


風見「一応は」


基地司令「君にはその兵器の指揮をしてもらいたい」


風見「兵器を指揮? ですか」


基地司令「ここから先はまだ開示されていない

極秘事項でな受けてくれるなら

詳細を話そう、そうでなければ悪いがここまでだ」


僕は考えた、兵器を指揮すると言う話

基地司令と話をする前に考えていた事を

思い出す

やはり彼女達がそうなのか

あの日僕を救ってくれた彼女達は深海凄艦を

撃破していた

もしそうなら、もう一度あの綺麗な黒髪の彼女に

会えるなら僕は...


風見「受けます」


基地司令「そうか、受けてくれるかでは詳細を話そう」


基地司令「君には艦娘と呼ばれる兵器を

指揮してもらいたい

いや兵器という言い方はよくないな」


風見「艦娘... それはもしかして自分が1年前の海戦で命を救われた...」


基地司令「そうだ、君が選ばれた理由の一つが

彼女達と出会った事があるからというのもある

こういう事は言いたくないが彼女達は未だ

秘匿されているそれを知った君の処遇は難しくてな」


基地司令「上層部の一部は君を亡き者にしようと

考える者もいた、だが仲間を失い

自らも傷つきながらも国のために空を

飛び続けた君にはひどい仕打じゃないか」


基地司令「私は上層部に君を私の監視下に

置くことを条件に処分を取り下げるよう頼んだ

この基地に教官として異動して

貰ったのはそのためだ

騙すような事をしてすまなかった」


風見「いいえ、そんな事情があったなんて

むしろこちらが感謝するべきです」


基地司令「そう言って貰えて助かるよ

話は戻るが艦娘という存在は過去の大戦中に

我々海軍が主力としていた軍艦が

何らかの要因で人の姿を得た

存在といわれている」


風見「そんなことが...話だけ聞いていたなら

信じられませんでしたが

実際に彼女達を自分は見ました

それが事実なんですね」


基地司令「そうだ、今人類はそんな彼女達の力で

なんとか生き延びている」


基地司令「上層部の一部は彼女たちをただの

兵器として非人道的な扱いをしている

無論私はそれには反対だどんな形にしろ

彼女たちは生きている」


基地司令「それを踏まえてだ 我々が現在いる基地

から少し離れた所に鎮守府があるのは知っているな」


風見「ええ、ですが最近、深海凄艦の襲撃を受けた

と聞きましたが?」


基地司令「そうなんだ、その襲撃時に司令官が死亡した」


基地司令「あまり大っぴらには言えないが死亡した

司令官は先程話した彼女達をただの兵器と

考えていた人物でな」


基地司令「ろくな休息も与えず連戦を繰り返し

傷ついてもお構いなしに出撃させていたそうだ

疲弊した状態で敵の迎撃も満足に

行なえないだったろう」


基地司令「報告によると基地司令は襲撃時

艦隊が苦戦を強いられるのを見て

指揮を放棄し逃亡を図ったそうだ

そこを流れ弾に被弾し死亡したそうだ」


基地司令「司令無き状況で損害は被りながらも

旗艦の機転でなんとか耐えしのいだらしい」


基地司令「だが彼女達は傷ついている

日頃から酷な扱いを受けていたとは言え

窮地で司令官が逃亡し取り残されたんだ

さぞかしショックだったろう

だが彼女たちに命を救われた君なら前任者の

ような間違いは起こすまいと後任として

君を推薦したんだどうか

彼女達を救い導てくれないか?」


風見「司令、自分は仲間が散って逝ったなか一人

のうのうと生き延びてきました

このまま生きている意味はあるのかと

何度も考えましたが、その度にあの海の上で

見た彼女の姿が頭に浮かぶのです

彼女にせめてもう一度会うことが叶うなら

お礼がしたいと」


風見「現に今、彼女やそれに近い人たちが苦しんで

いるというならそれを救うのが自分の生きる意味なのでしょう」


基地司令「君を選んだのは間違いではなかったようだ」


基地司令「風見大尉、本日付けで航空隊教官を

解任する 特別昇進として少佐に昇進と同時に

館山鎮守府司令に任命する」


基地司令「彼女達を頼んだぞ風見提督」


風見提督「その任、謹んでお受けいたします」


僕が提督になった理由はこんな感じだったんだ

ただ後々考えると僕が着任する鎮守府に

僕を救ってくれた彼女がいるかなんて解らない

んじゃないかって


でもそれは杞憂だったみたいだ

いい意味でも悪い意味でもね

僕が彼女と再会した時、嬉しい反面

とても悲しい現状がそこにあったんだ

再会の場面はもう少し先の話になる...








~館山鎮守府~

館山鎮守府は館山航空隊基地から10キロ程

離れた所に位置しているんだ

司令からの辞令を受けてから数日後

僕は航空隊基地から鎮守府に向かっていた

君もこれからそれなりの身分だ

送迎を付けようかなんて言われたけど

断ることにしたよ

代わりに自分の車を持ち込んでもと聞いたら

君が責任者なんだそれくらい遠慮しなくていいさ

との事だったんで現在僕は愛車を走らせてる

愛車はブルーパールのS2000だ

ルーフをオープンにして青空の下

海風を感じながら鎮守府へ向かう


30分ほどで鎮守府の目の前に到着する

最初に目に入ったのは襲撃の傷跡か

建物が所々被弾し損壊している

だがその光景を見て疑問に思う

襲撃が起きたのは数週間前だ何故

全く復旧作業がすすんでいないんだ?


とりあえず僕は正門から入り

玄関近くに車を停める


中に入ると昼間とは思えない程、薄暗かった


風見提督(誰もいないのか...?)


取りあえず僕は鎮守府内を捜索することにした

中の状態も所々被弾の痕がある


そんな中、医務室とプレート掛かっている部屋を

見つけるだがその部屋の前は違う意味で

ひどい状態だった床やドアが血で

真っ赤になっていたんだ


だんだん近づくと中から誰かが苦しんでいる声が聞こえる


???「痛いのです...」


幼さの残る女の子の声がする


???「大丈夫?電ちゃん ごめんねもうお薬も無くて

何もしてあげられなくて...」


???「神通さんこそ、ずっと私たちを見てくれてありがとう

なのです でももういいのです...」


???「そんな事言わないで下さい!榛名が何とかしますから!」


???「榛名さん無理をしないであなただってもう限界のはず!」


???「榛名は大丈夫です... 薬探してきますね」


聞き覚えのある声が聞こえてきた

医務室のドアが開く部屋から女の子が

出てこようとした時その子の身体が

崩れ倒れそうになる


???「榛名さん!」


それを見た僕は彼女に駆け寄って抱きとめる


風見提督「大丈夫かい?」


???「っ あ...あなたは誰ですか?」


抱きとめられた彼女は憔悴しきった顔で

怯えるようにこちらを見上げる


風見提督「僕のことより、ひどい怪我じゃないか

それに中にも怪我人が?」


???「はい...」


風見提督「医療物資は無いのか?ならすぐ医療班の手配を...」


???「待ってください... 人のお医者様じゃ私たちは...」


風見提督「君たちは艦娘だね?」


???「どうしてそれを?」


風見提督「そんな事よりどうすれば君たちを救える?」


???「私たち艦娘はこの鎮守府にある入渠という

施設を使えば傷を癒す事が出来ます

しかしその施設を使うには提督の承認がなければ

施設を稼働できません」


???「その提督も私たちを見捨てて...」


風見提督「そこまですぐ案内してくれないかい?」


???「でも、提督はもう...」


風見提督「大丈夫だから そこの子動けるようなら

特に怪我のひどい子から連れてきてくれないか?」


僕は大きい緑色のリボンに薄紅色の服を着た

女の子に声をかける


???「は、はい」


風見提督「君はこのまま掴まっていて」


そう言って僕は腕の中の女の子を抱き上げる

お姫様抱っこってやつかな


???「え あ... すいません」

抱き上げた女の子顔を赤くしてうつむく


入渠施設につく


風見提督「どうすれば稼働するんだ?」


???「提督がお持ちのキーをそこの端末に

認証させれば再稼働できますが...」


風見提督「キー?これかな」


僕は懐から一枚のカードを取り出す

基地司令から辞令の後、渡された物だ

鎮守府内施設を管理するのに重要な物と

言われたことを思い出す

試しにカードをスキャナーに通すと


端末ガイド「認証、管理者権限を更新します・・・

本部ネットワークに接続・・・

館山鎮守府提督、風見蒼也少佐認証・・・

新管理者として当施設並びに当鎮守府の

全施設の管理権限での使用を許可します・・・」


???「うそ...まさか あなたは...」


風見提督「これでいいのか さあ早く入渠へ」


僕も入渠へ入ろうとすると


???「あのすいません...この施設は衣服を

脱がないといけないので男性の方は」


風見提督「え? ああそうなのか すまない

じゃあ僕は他の子たちも運んでくるよ」


そう言って僕はそそくさと医務室へ戻る


医務室に戻ると先ほど電と呼ばれていた

女の子と同じセーラー服を着た

女の子が三人ほどベッドに寝かされていた


風見提督「よし、次は君たちだ」


僕はまず銀髪の子を抱き上げようと

近づくと...


???「待ちな、その子たちをどうするつもりだい」


さらに奥のベッドで寝ていた子が目を覚ます

その子はさっき会った緑色のリボンをした子と

似たような服装をしていた


風見提督「警戒しないでくれと言うのは無理かも

知れないが僕は敵じゃない君たちを助けに来たんだ」


???「助けに?」


???「川内姉さん起きたの?」


緑のリボンの子が戻ってきたみたいだ


???「大丈夫よ 姉さんこの人は」


???「神通...」


風見提督「とにかく事情は後で話すよ君も

入渠へむかってくれ」


誤解されそうになったけどなんとかなったようだね

取り合えず怪我をした子たちの入渠をなんとか

済ますことが出来たんだ


その後僕は皆を作戦会議室に集めた


風見提督「紹介がまだだったね僕は今日から

この館山鎮守府に着任する事になった

風見蒼也、階級は少佐だよろしく」


皆は驚いたり戸惑いを見せたりとしていた


風見提督「良ければ君たちの名前を教えて

くれないかな?」


???「分かりましたでは、私から」


最初に返事をしたのは僕が抱きとめたあの子だった


榛名「当鎮守府で艦隊旗艦並びに秘書官を務めて

いた金剛型高速戦艦3番艦榛名と申します」


風見提督「そうか、榛名と言うのか」


先ほどの憔悴した表情からあの時僕を

救ってくれた時のような凛々しい顔をみて

僕はふと笑みを浮かべた


榛名「あの、何か?」


僕が急に見せた表情に疑問を浮かべる榛名


風見提督「いやなんでも無いんだ、僕の前任者が

いなくなってからは君が代わりを?」


榛名「はい」


風見提督「君自身も傷ついている中よく頑張って

くれたね、それに助けが遅れてすまなかった」


榛名「いいえ、提督は私たちを見るなり

必死になって救護してくれましたそれだけでも」


風見提督「そんなのは当たり前じゃないか

だが前任者の話は聞いているよ彼の行いで

君たちが苦しんでいた事は僕達の責任だ

皆すまなかったな」


僕は皆に頭を下げた


榛名「いいえ提督は前の方と違います

だから頭を上げて下さい」


榛名はあせって僕に言う


風見提督「そうか、すまないね 

自己紹介を続けてくれないか?」


???「次は私が」


救護の時手伝ってくれた緑のリボンの子だ


神通「水雷戦隊で旗艦を務めさせて貰っている

川内型軽巡洋艦2番艦の神通です」


風見提督「さっきは協力ありがとう助かったよ」


神通「いいえ、当然のことですから」


榛名「神通さんは駆逐艦の子達の教官も

やっていて先生であると同時にお姉さんの

ような存在なんですよ」


そう榛名が言う


風見提督「そうなのかとても立派じゃないか」


神通「はい... ありがとうございます」


恥ずかしそうにする神通


???「神通の次は私だよ」


次に来たのは先ほどの医務室で一悶着あった

彼女だった


川内「川内型軽巡の一番艦、川内だよ

提督さっきはごめんね勘違いしてたよ私」


川内は申し訳なさそうに言った


風見提督「いや、急に知らない男が幼い子を

連れて行こうとしたんだ勘違いもするだろう

あ、でも僕にそういう趣味はないから

その辺も勘違いしないでくれよ」


川内「はは 提督おもしろいね、

妹の神通も信頼してるみたいだし私も信じるよ

私は夜戦が得意だから夜戦の時は任せてね」


風見提督「ああ、夜戦の時は頼りにさせてもらうよ」


???「次は私たちね」


幼い女の子の声がする


暁「私は暁型駆逐艦一番艦暁よ」


響「二番艦響だよ」


雷「三番艦雷よ司令官」


電「四番艦電なのです」


風見提督「君達が駆逐艦の子たちか

元気になったみたいでよかったよ」


暁「さっきは助かったわありがとう司令官」


風見提督「ちゃんとお礼も言えてしっかり

してるね」


暁「子ども扱いしないでよね司令官、暁は

立派なレディなんだから当たり前よ」


風見提督「それは、すまなかったね」


暁ちゃんはなかなかおませさんみたいだね


響「司令官が私を運んでくれたんだってね

スパシーバ」


風見提督「パジャールスタ(どういたしまして)」


響「ハラショーだ司令官」


昔本で読んだロシア語の日常会話の知識が

役にたったようだね

ただ、なんでロシア語?

響ちゃんは不思議な子だね


雷「姉妹がお世話になったみたいね、

ありがとう司令官」


風見提督「ああ」


雷「何か困った事があったら私を頼ってね

司令官」


風見提督「心強いね、何かの時には頼むね」


連番だからそうかと思ってたけど

この子たちは姉妹みたいだね

雷ちゃんは献身的な性格みたいだ


電「い、電なのです 助けてくれて

ありがとうなのです」


風見提督「部屋に入る前、君の苦しそな声が

聞こえたから心配してたけど元気になって

良かった」


電「はいなのです」


電ちゃんは恥ずかしそうに返事をした

人見知りの末っ子って感じだね


神通「皆、幼さは残りますが水雷戦隊として

高い練度を重ねています、4人とも信頼の

置ける子達ですよ」


風見提督「そうか」


こんな幼い子達にまで頼らなければ

いけないなんてね、本来は僕達が

守らなければいけないだろうに

とても複雑な気持ちにさせられたよ


???「やっと私達の番じゃん熊野」


???「鈴谷少しは落ち着きなさい」


鈴谷「提督、さっきはサンキューね

最上型三番艦航空巡洋艦鈴谷だよ」


熊野「わたくしも最上型四番艦航空巡洋艦

熊野ですわ、提督感謝致します」


風見提督「気にしないで、航空巡洋艦だっけ

君達は他の子達と違うみたいだね」


航空と聞いて元戦闘機乗りとして反応して

しまった


鈴谷「提督、いいとこに気がついたね~」


熊野「わたくし達は通常の巡洋艦に比べ

多くの水上機を搭載、運用できるように

改装された艦種なのですわ」


風見提督「成る程ね」


現行のヘリコプター搭載護衛艦とかに近い

コンセプトなのかな


風見提督「そう言えばこの鎮守府には空母の子は

いないのかな?」


???「提督こっちこっち」

後ろの方から若草色の道着を来た女の子が

声を上げた


???「ほら大鳳も私たちで最後だよ」


???「わかったから引っ張らないで瑞鳳」


道着の子が黒い服を着た子の手を引いて

前に来た


瑞鳳「提督、祥鳳型軽空母二番艦瑞鳳です

助けてくれてありがとね」


大鳳「私は大鳳型航空母艦一番艦大鳳

私も感謝します提督」


風見提督「君たちが空母なのかい?」


なんか想像してた姿よりだいぶ

可愛らしい容姿をしているんだね

大人の女性をイメージしてたけど


瑞鳳「提督、思ったより子供っぽいなとか

考えたでしょ」


大鳳「そうなんですか提督」


二人に問い詰められてしまう

勘が鋭いね、まいった


風見提督「そんな事はないよ、想像より可愛らしい

容姿をしているなって思っただけさ」


瑞鳳「か、かわいい?」


大鳳「え、私たちがですか」


風見提督「ああ」


瑞鳳「そ、そういうことなら許してあげる」


なんとか乗り切ったようだね

女性の扱いは難しい


風見提督「さて、これで全員みたいだね、思いの外

少人数の艦隊なんだね」


榛名「はい、私たちの館山鎮守府は元々

横須賀鎮守府に近いこともあって

その補佐的な役割を与えられています

なので横須賀や他の地方の鎮守府に比べて

配属艦が少なくなってます」


風見提督「なるほどね、あと気になっていたんだが

この鎮守府への深海凄艦の襲撃は確か数週間前に

起きたはずだ君たちの救援もそうだが復旧作業が

進んでないのは何故なんだ?」


榛名「それはいくつかの要因が考えられます

まず前任の提督が亡くなった事で鎮守府の

全機能が停止しました、それにより外部との

通信が出来なくなりました

また近場の横須賀鎮守府の方にも

襲撃があったそうでこちらに余力を

割けなかったのでしょう」


風見提督「すぐ近くにある館山航空隊基地に

救援要請は出来なかったのかい?」


榛名「私たちの存在は秘匿されています、

あの基地で事情を知っているのは基地司令のみ

ですので仮に要請しても実際に救援

を受けるのは難しいかと」


風見提督「そうか

そうしていつ来るか分からない救援を

待ち続けるしかなかったと」


榛名「はい...」


風見提督「そう言えば仮に設備が使えなくても

高速修復剤という物があると聞いたんだけど」


榛名「修復剤は全て、無くなりました

襲撃の数日前まで前任の提督は上層部の

評価を得るため鎮守府周辺海域に連日

出撃命令を出されました、消耗しようと

損傷しようと修復剤が尽きるまで」


風見提督「そんな事が、彼は本当に君たちを

物としてしか見てなかったようだね」


榛名「それにあの人は最期には私たちを

見捨てました...」


会議室の全員が暗い表情を見せた


彼の行いは司令から聞いた以上に酷い物だった

民間人や国のための行いであったなら

まだ彼女達も浮かばれるだろう、しかし実際は

出世のための道具として彼女達を酷使していた

あまつさえ、襲撃の際は傷つき消耗した彼女達を

置いて逃げたというじゃないか


風見提督「君達は兵器でもましてや物でもない

そんな考え僕は認めない

僕は君たちを裏切らないよ

僕は自身が果てるその瞬間まで

常に君たちと共にある」


榛名「提督...どうしてそこまで榛名達の事を?」


風見提督「僕の目を見て」


僕は榛名に顔を近づけた


榛名「て、提督///」


急にどうしたのでしょうか?

あれ右と左で目の色が違う?


風見提督「1年前に戦場で左目を失くしたんだ

片方は作り物さ、だが目は失くしたけど


命は助かった、僕を救ってくれた子がいるんだ


基地に生還してからは仲間を失くして目を失って

戦えない事に絶望もしたけどね


その度に僕を救ってくれた子の姿が頭に浮かぶんだ


もし、その子に恩返しができるなら


ましてや苦しんでいるというなら


それを救う事が生かされた


僕の使命じゃないかってね」


榛名「提督...あなたはあの時の?」


榛名の言葉を遮るように僕は言う


風見提督「なんか柄にもなく真面目な話に

なっちゃったね

取り合えず皆病み上がりだし今日の所は

解散にしようか」


あの時あの場所にいた榛名と神通は何か

言いたそうな顔してたけど


風見提督「じゃあゆっくり休んでね

僕は執務室にいるから何かあったら呼んでくれ」


二人から逃げるように会議室を後にした

別に避けてる訳じゃないんだ

ただ変に格好つけたせいで恥ずかしく

なったというかね


しかしこの後さらに恥ずかしい思いをするとは

予想できなかったよ


~執務室~

皆に休むようには言ったけど皆の部屋は

大丈夫なのか?

だけど直ぐ戻るのもなんかあれだし少し

時間を置いて様子を見に行こうかな

取り合えず僕は執務室に向かった


榛名「提督...」


神通「榛名さん、行かなくていいんですか?

あの日助けて直ぐ救護の方にお願いして

それきりだったじゃないですか」


榛名「そうですね、榛名行ってきますね」


執務室に着いた僕は早速、中に入ってみると

棚の本や書類がいくらか、床に散らばっていたが

部屋自体はほとんど損傷を受けていないようだ


風見提督「取り合えず片付けようかな」

上着を脱いでシャツの袖を巻くって

動きやすい格好になり片付け始めようとした時


コンコン


ドアをノックする音が聞こえた


風見提督「誰だい?」


榛名「榛名です、提督少しよろしいですか?」


榛名か、正直一番顔を合わせずらいけど

彼女とはちゃんと話をしておきたかったしね


風見提督「大丈夫だよ、入って」


榛名「失礼します あら?」


さきほどより少しラフな格好になった僕を

見て、不思議そうな顔をする榛名


風見提督「ああ、この格好かい

少し散らかっていたからね片付けようとね」


榛名「私もお手伝いします」


風見提督「でも、用事はいいのかい?」


榛名「ちょっとお話がしたくて

お手伝いしながらでもよければ

聞いて頂けますか?」


風見提督「構わないよ」


二人で片付け始めて少し

榛名が呟いた


榛名「提督、提督はあの日榛名が助けた

操縦士さんですよね」


それを聞いて一瞬黙ってしまう僕

少し間を空けて返事をする


風見提督「そうだよ」


風見提督「ずっと榛名「ずっと」


お互いの声が重なる


風見提督「ああ、ごめんね

榛名からどうぞ」


榛名「いいえ提督から」


風見提督「いいや、榛名からで」


榛名「提督からどうぞ」


そんな押し問答しているうち

二人して吹き出してしまった


風見提督「はは、僕の負けだよ

じゃあ僕から言わせて貰うね」


榛名「はい、どうぞ」


笑顔で返す榛名に僕は


風見提督「ずっとね、君にお礼を

言いたかったんだ

あの時はありがとう榛名」


榛名「そんな榛名は当然の事をした

だけですよ」


風見提督「いいや、僕がお礼を言いたいのは

あの時のことだけじゃないんだ」


榛名「どういうことでしょうか?」


風見提督「知っての通り僕は戦闘機乗り

だったんだ、あの時榛名達が来るまで

仲間達と戦っていたんだだけどね...

皆落とされたんだ僕以外皆ね...」


榛名「提督...」


つらそうに話す僕を見て榛名は

悲しそうな顔をする


風見提督「僕は何も出来なかった

基地に生還してから何度も悔やんだよ

死のうとした事もあった」


榛名「そんな...」


風見提督「でもねいつも最後には

君の姿が頭に浮かんだんだ

君が榛名が救ってくれたこの命を

無駄にしていいのかってね」


榛名「提督」


榛名の表情が少し明るくなった


風見提督「だからね僕にとっては

あの時だけじゃなくて榛名にはずっと

助けて貰ってた訳なんだよ」


榛名「そんな事が、榛名もずっと

心配していました

本当に無事でよかったです

それに榛名を皆を助けてくれました」


風見提督「当たり前さ会議室で言った通り

君に救われたこの命は君たちのために

使うってね、だからこれから覚悟するように

嫌と言っても君たちから離れるつもりは

ないからね」


榛名「まあ、提督ったら

こちらこそよろしくお願いしますね」


お互いに笑い合うさっきの思い空気は

もうどこにもない


風見提督「よし、一通り綺麗になったね」


いつの間にか片付けも終わったようだね


榛名「はい、お疲れ様です提督」


風見提督「お疲れ様、休憩にしようか

お茶でも入れたいとこだけど

流石に鎮守府がこの状況じゃ無いか」


榛名「すみません、提督」


風見提督「榛名のせいじゃないから

謝らないで、そうだ車にクッカーを積んで

あるんだ、インスタントだけど

お茶とコーヒーもあるはずだから

取りにいこうか」


榛名「はい、お供します」


そうして榛名を連れて執務室を出ようと

ドアに手を掛けた瞬間


川内「あ、ヤバ 提督来たよ」


ドアを開けるとそこには


川内「や、やあ提督」


鈴谷「て、提督さん、ちーす」


瑞鳳「提督さん!?」


神通「姉さんだからやめた方がいいって」


川内「なんだよー神通だって気にしてた

じゃんかー」


神通「そ、それは...」


ドアを開くと会議室で別れた皆がいた


風見提督「皆何してるんだい?」


今までの会話全部聞かれてたのか,,,


榛名「えっ皆さん?」


今の提督との話、聞いていたのですか?


二人で赤くなってしまった


川内「勝手に聞いてたのは謝るけど

来ていきなりとは、提督も隅に置けないね」


川内がにたーとした顔でそんな事を言ってくる


瑞鳳「むー、提督はやっぱり榛名さん

みたいな子がいいのかな?」


後ろで瑞鳳が何か言ってるけど

誤解されちゃこまるなあ


風見提督「榛名には部屋の片付けを手伝って

貰ってただけで何も無いんだ」


榛名「何もないですか...」


榛名なんでそこで悲しそうな顔するんだい


鈴谷「提督と榛名さんどうも訳ありっぽいし

往生際悪いよ提督」


鈴谷おもしろがってるな


風見提督「いや、榛名は秘書艦だし

訳ありも何もね」


榛名「へ、榛名が秘書艦ですか!?」


僕の言葉に驚く榛名


風見提督「僕が来る前から秘書艦を務めて

いたんだよね、よければ引き続き僕の

秘書艦として傍にいてくれないか」


榛名「てっ提督 その///榛名でよければ...」


真っ赤になる榛名

どうしたんだろ?


神通「提督大胆です...」


何か神通まで赤くなってるし


川内「提督やる~僕の秘書艦だって」


川内の一言にはっとする僕


風見提督「いや榛名そう言う意図で

言ったんじゃないからね」


焦って言葉を返したけど


榛名「僕の秘書艦...僕の秘書艦」


だめだ聞こえてないみたいだ


鈴谷「あきらめなよ提督」


瑞鳳「提督やっぱり榛名さんの事が」


いやまいったね

この後散々弄られたけど

皆と打ち解けられたしまあいいか


こんな感じで僕達は再会と出会いを

果たしたんだ


次はそろそろ鎮守府の復旧を考えないとね

取りあえず今日は休もうか




~館山鎮守府工廠~

執務室での一件の後、鎮守府の損傷に

ついて再度聞いてみたんだ


外から見ると結構、酷く見えたんだけど

どうやら内部はそこまででも無いらしい


心配していた皆の居住区や主要設備は

執務室のように敵の砲撃による震動で

物が落ちたりした程度で済んだようだね


とは言うもの損傷した場所をそのままに

する訳にもいかないから

修復の相談をするため僕は工廠に

向かう事にした


風見提督「そう言えば榛名、工廠には

普通の整備兵はいないんだっけ?」


榛名「そうですね、代わりに妖精さん達が

いますね」


先日、正式に秘書艦をお願いした榛名に

案内を頼んだんだ、工廠までの途中

工廠について聞いてみた


風見提督「妖精さんね、資料で名前だけは

聞いていたけどイメージ湧かないな」


榛名「とても可愛らしい外見をしてますが

とても頼りになる方達なんですよ」


風見提督「そうなのか」


いまいちピンとこないな


榛名「提督着きましたよ」


妖精さんの話をしているうちに

着いたみたいだね


風見提督「さて、妖精さんはどこかな?」


工廠を見渡して見るがそれらしき姿が

見当たらない


榛名「あ、提督いましたよ、班長さん

こんにちは」


榛名が班長さんと呼び掛けた方へ

目を向けると、そこには手の平に

乗りそうな大きさの小人がいた


班長「榛名さんですか、御無事で何よりです」


榛名「班長さんこそ、他の皆さんは?」


班長「皆、無事ですよ 皆集まって下さい」


班長さんがそう呼びかけると

もう5人程、妖精さんが出てきた


榛名「皆さんもこんにちは」


皆、榛名を知っているようで榛名を見て

敬礼する者、飛び跳ねて喜ぶ者など

まちまちな反応を示している

だが班長さんのように喋る人はいないみたいだ


班長「ところでそちらの方?」


榛名「紹介が遅くなりましたね、この方は…」


風見提督「ああ、僕から言うよ榛名、

僕はこの鎮守府に司令官として着任した

風見蒼也少佐だよ、よろしくね」


班長「新しい提督さんでしたか、これは失礼、私はこの工廠で一応、責任者を務めさせてもらっている者です、皆からは班長と呼ばれているので提督も宜しければそのようにお呼び下さい」


風見提督「了解したよ、よろしく班長さん」


挨拶を済ませたけど

やはり妖精さんと言う存在を目の前にして

疑問は尽きないね

取りあえず本人に聞いてみようか


風見提督「気になったんだけど、班長さん以外は話せないのかな?」


班長「ええ、私を含めごく数名しかこうして人と会話する事ができません」


風見提督「そうなのか、失礼を承知で聞きたいんだけど、君達がどういう存在なのか教えて貰ってもいいかい?」


班長「構いませんよ」


風見提督「よろしく頼むよ」


班長「提督は榛名さん達、艦娘がどのような存在かご存知で?」


風見提督「確か過去の大戦中に実際にあった艦船に留まった想いが人の形を成したと聞いてるけど」


班長「そうですね、大戦当初、それぞれの船には沢山の人が乗っており、その人々の色んな想いを受けて艦自身にも魂が宿ったのでしょう」


班長「ただ、魂が宿ったのは艦だけでは無かったようです」


風見提督「と言うと?」


班長「彼女達の誕生から戦で傷ついた時、時代が進につれ、それに合わせて彼女達を改め見守って来た人達や場所があります」


風見提督「当時の港やその作業員の人達だね」


班長「そうです、彼女達が艦の想いが集まった存在なら、私達は港やそこで働いていた人々の想いが集まった存在なのでしょう」


風見提督「班長さん…」


班長「その中でも、特に強く想いを受け継いだ者達が、私を含め、人と会話をする事が可能なようです」


風見提督「貴重な話しをありがとう、班長さん、あなた達は今も昔も彼女達を支え続けて来たんだね」


班長「そんな大層な事では無いですよ、私にとって彼女達は可愛い娘みたいなものですから」


榛名「班長さん…」


話しを一緒に聞いていた榛名の目は潤んでいた


班長「どうやら風見提督は良い人のようだ」


風見提督「僕はそんな」


班長「榛名さんを見れば解ります」


榛名「そうですよ、提督は良い人です」


班長さんに合わせて榛名もそう答えた


班長「一介の技術者が言っていいことではありませんが、前任の提督の横暴は許し難い物でした」


風見提督「ええ」


班長「そんな提督に虐げられる彼女達に私達が

出来た事と言えば、ただ無事を祈って艤装を万全な状態に仕上げてあげる事だけでした」


榛名「そんな、班長さん達が整備してくれた艤装は一度だって不具合が起きなかったです、そのおかげで皆今まで無事、戦い抜く事が出来たんです、だから皆感謝してますよ」


班長「そう言って貰えてとても嬉しく思いますよ、ありがとうございます」


風見提督「班長さん、前任者から無理な要求も沢山合ったろうね、そんな中でも彼女達を守ってくれてありがとう」


班長「提督まで、当たり前の事ですよ」


風見提督「これからも彼女達の事よろしく頼むよ」


班長「ええ、任せてください」


班長さん、僕なんかよりあなたの方が

ずっと良い人ですよ


班長「話が長くなってしまいましたね、提督は何かご用時があるんですよね?」


風見提督「ああ、鎮守府の復旧についてね、主要施設の損壊は免れたけど所々損傷があるから、その修復をお願いしたいんだ」


班長「それならお任せ下さい、提督が施設を起動してくれたので各施設にいる私達の仲間が目を覚ましているはずです」


風見提督「君達は施設と繋がりがあるのかい?」


班長「その通りです、先ほど話した通り、私達は港やそれに属する想いの集まり、港やそれに関連する設備が停止していれば、私達も眠りに着きます」


風見提督「なるほどね」


班長「ですが施設が稼働し続ければ私達はいつでもそこにいます」


風見提督「頼もしい限りだね、じゃあ早速力を貸して貰えるかな」


班長「了解しました」


こうして僕はこの鎮守府を運営する中で

居なくてはならない人と出会ったんだ


班長さんの努力もあってか

復旧は数日中には終える事ができた


それからと言うもの

復旧の為に資材をほぼ消費してしまい

遠征や資材集めに奔走する事になったんだ

それも皆の努力で乗り切り


やっと落ち着いた頃、各鎮守府の統括とも

言える横須賀鎮守府に出頭命令が下ったんだ



~横須賀鎮守府~

工廠での出来事から半年ほど経過して

館山鎮守府もだいぶ変わったね

もちろん、いい方向にね


ただ変わったのは鎮守府だけじゃないんだ

世間の方も、今まで秘匿されていた艦娘の

存在が公表されたんだ


深海凄艦も日に日に勢力を増していて

一般人に秘匿するのも難しくなって来たんだろう


世間の反応はまちまちだった


彼女達を受け入れ応援する者


人の姿をした兵器に嫌悪感を持つ者


また若い女性の姿をした者に戦わせ

自分達は安全な場所から、指示を出す

だけなのかと軍を批判する者などね


幸いといっていいのか分からないけど

館山は軍事施設が多い事もあってか

公表初期から艦娘を受け入れてくれる

傾向にあったんだ


そんな事もあって艦娘である彼女達にも

ある程度、自由が許されることになった


艤装等の完全に武装解除した状態なら

鎮守府から指定された範囲の外出が

許可されるようになったんだ


僕達の鎮守府は人員が少ないから

交代ではあるけど休暇には自由に

外出させてあげることにしてる


大きく変わったことと言えば

それくらいかな


そうだね後もう一つ

僕達の鎮守府に新しい仲間が増えたんだ

彼女の名前は霧島、榛名とは双子の姉妹

になるそうだ


施設が復旧後、間もなくして横須賀鎮守府から

通信があって向こうの提督さんから

救援が遅れてしまった謝罪を受けたよ


お詫びに支援物資を頂いたんだけど

その物資の護衛で随伴していたのが

霧島だったんだ


館山鎮守府は元々、戦艦が榛名だけ

だったんだ、そこで横須賀鎮守府の提督の

計らいもあって、姉妹艦である霧島が

戦力増強のために異動となったんだ


横須賀鎮守府所属だった事もあって

練度も榛名に引けを取らない実力の

持ち主だった


あの日の榛名はとても喜んでいたっけ


榛名「提督、支援物資を載せた船が到着したようですよ」


風見提督「了解、今いくよ」


横須賀鎮守府の提督の厚意もあって

資材の支援を受ける事になったんだ


着任時に支給された資材は全て

鎮守府の修復に当ててしまい

正直、身動きの取れない状況だったんだ


そして、ちょうど今、資材が届いたようだね


船着場に向かおうと執務室を出ようとした時


神通「あっ、提督」


神通と川内が部屋の前にいたんだ


風見提督「ん?二人ともどうしたんだい?」


川内「資材届いたって聞いてさ、搬入に人手がいると思ってね」


風見提督「そうかい、悪いね助かるよ」


神通「いいえ、お気になさらず」


風見提督「じゃあ、行こうか」


僕と榛名と神通、川内の4人で向かう事にした


船着場に着くと輸送船から見覚えのある服装をした

女の子が降りて来た


榛名と同じ巫女服のような衣装にショートヘアに

メガネを掛けた知的な印象の子だ


その姿を見て、隣にいた榛名が声を上げた


榛名「まさか、霧島!」


霧島「榛名、久しぶりね」


榛名「どうして、霧島がここに?」


霧島「この輸送船の護衛のためよ、それより榛名助けが遅れてごめんなさいね」


榛名「榛名は大丈夫、提督がいてくたから」


霧島と呼ばれた子は僕の方に顔を向けて


霧島「風見提督ですよね?」


風見提督「うん、僕が風見蒼也少佐だよ、良ければ君の事も教えて貰っていいかな」


霧島「失礼しました、ご紹介が遅れましたね、金剛型高速戦艦4番艦霧島と申します」


風見提督「金剛型の4番艦と言うと君は榛名と...」


霧島「ご察しの通り、私と榛名は姉妹になりますね」


風見提督「なるほどね」


榛名「霧島、お姉さま達は?」


霧島「今も横須賀で健在よ、あちらもまだ事後処理の最中だから」


榛名「そう、無事で良かった」


風見提督「横須賀も襲撃を受けたと言うのに、此方を支援して貰って本当に助かるよ」


霧島「いいえ、お互い様ですから」


榛名「榛名も感謝します、そう言えば霧島は、すぐ横須賀に帰るのですか?」


霧島「いいえ、当分帰りませんよ」


風見提督・榛名「え?」


僕と榛名の声が重なる


風見提督「それって、どう言う事かな?」


霧島「横須賀鎮守府の提督とお姉さま達から榛名を支えてあげてと言われましたので」


榛名「お姉さま達が...」


霧島「こちらに正式な令状もあります、なので、本日付で霧島は横須賀鎮守府から館山鎮守府に異動になりますので、よろしくお願いしますね提督」


僕は霧島から令状を受け取り確認した


風見提督「確かにそのように記載されているね、だけどいいのかい?慣れ親しんだ鎮守府を離れて僕達の方に来ても」


霧島「ええ、正直、榛名や他の艦娘が、前任の館山鎮守府提督から、酷い扱いを受けていたと言う話は横須賀にまで届いていました

しかし、横須賀鎮守府の提督も簡単に口出し、出来る問題じゃなかったのです」


風見提督「そうだったのか」


霧島「私やお姉さま達は榛名の事をとても心配していました、ですが風見提督、あなたを見て安心しました」


風見提督「僕を見てかい?」


霧島「ええ、前任の提督がまだいらした頃、一度だけ、横須賀に前任の提督と榛名が会議のため出頭したのですが

榛名はとても辛そうにしていました」


榛名「霧島...」


当時の事を思い出したのか榛名の表情が暗いものになる


霧島「ですが今、あなたの横にいる榛名はとても幸せそうです、そんな大切な姉妹を救ってくれた、

あなたの下でなら喜んで力になります」


風見提督「そこまで言われたら断る理由は無いね、これからよろしく頼むよ霧島」


榛名「き、霧島~」


榛名は泣きながら霧島に抱きついた


霧島「もう、榛名、一応あなたがお姉さんなんだから泣かないの」


霧島は榛名の頭を撫でながらそう言った


風見提督「そう言えば、榛名の方がお姉さんなのに呼び捨てなんだね、他のお姉さん達みたいに、お姉さまって呼ばないのかい?」


霧島「ああ、私達は双子なんですよ、あの大戦時に同じ日に竣工されたんですよ」


風見提督「なるほどね、艦娘にも双子がいるとは驚きだね」


霧島「ところで提督、後ろのお二人も紹介して貰っていいですか?」


川内「提督、私達の事、忘れてたでしょ~」


神通「まあまあ、姉さん、榛名さんも姉妹と久々の再会なんですから」


文句を言う川内を神通がなだめていた


風見提督「ごめん、ごめん 紹介するよ二人はこの鎮守府で水雷戦隊に所属してる神通と川内だよ」


神通「水雷戦隊旗艦を務めさせて頂いている、神通です」


川内「同じく水雷戦隊所属の川内だよ、よろしくね」


霧島「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」


風見提督「さて、挨拶も済んだし、物資を運び込もうか」


霧島「お手伝いします」


風見提督「来て早々済まないね、助かるよ」


とまあ霧島との出会いはこんな感じだったんだ


元々、僕らの鎮守府は遊撃任務がメインの

艦隊だったけど、流石に主力の戦艦級が榛名だけ

と言うのは負担が大きくてね

霧島が来てからは、榛名の負担もだいぶ減ったみたい


それに彼女は事務作業なんかも得意みたいで

パイロット上がりの僕からすると、そっちの方面でも

とても助かっているよ


そんなこんなで霧島も鎮守府に馴染み始めた頃

横須賀鎮守府から出頭の辞令が来たんだ


まあ、別に何かやらかしたとか言う訳では無いんだ

年に何度か定例会議のような物があるらしく

ちょうどその時期になったみたいなんだ


この会議では提督である僕以外に一人

艦娘も連れて来ていいことになってるみたいで

僕は迷わず彼女を選んだよ


榛名「榛名が提督と一緒に横須賀にですか?榛名でいいのでしょうか?」


ちょっと自身なさそうに榛名がそう言うと


風見提督「ああ、榛名がいいんだ、一緒に来てくれるかい?」


榛名「はい///そこまで、仰ってくれるならお供します」


霧島「あらあら、提督も大胆ですね」


鈴谷「提督と榛名さんデートかぁ、ずるーい」


風見提督「まあ、遊びに行く訳じゃないけど二人きりだしね」


霧島と鈴谷の冷やかしに乗っかって

榛名にそう返すと


榛名「へっ?提督!?」


真っ赤になってこちらを見てくる榛名

そんな榛名の反応を楽しみつつ


風見提督「まあ、そんな訳だから留守の間頼むね、霧島」


霧島「はい、お任せください」


風見提督「神通も僕のいない間の訓練や遠征の指揮、頼むよ」


神通「了解しました」


取りあえず運営関係は普段から仕事を手伝って貰ってる

霧島に僕の代理として任せて

艦隊の指揮に関しては皆からの信頼の厚い神通に

頼むことにしたんだ


川内「提督、お土産よろしくね~」


風見提督「はは、何度も言うけど遊びじゃないから、まあそんな期待しないでね」


そんなこんなで出発の朝、本当は横須賀から

迎えを出そうかと、誘われたけど

自分の車で行くことにしたよ


僕も不謹慎かも知れないけど榛名と二人きりになれると

考えたら妙に嬉しくなっちゃってね


榛名「提督、お待たせしました」


そこには私服姿の榛名がいた

いつも着けてる電探の役割をしているヘアバンドも

外してどこから見ても普通の女の子にしか見えないね









後書き

10/8
読んでくれている方、皆様に楽しんで頂けていれば幸いです
書き始めてそこそこ経って自分のペースも掴めてきたので
最低、週1か余裕がある時は更新の頻度増やすかと
思いますのでこれからも応援や意見や感想等頂ければ
励みになります、よろしくお願いします


このSSへの評価

13件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-08-23 10:12:02

Gauさんから
2017-01-16 00:32:27

赫音さんから
2016-10-02 11:34:13

fireflyさんから
2016-09-28 04:56:44

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2016-09-27 00:33:45

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2016-09-19 20:43:13

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2016-09-18 12:27:33

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2016-09-17 18:27:35

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2016-10-26 21:58:07

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2016-09-16 18:29:39

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2016-09-16 16:02:01

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2017-08-23 10:12:02

赫音さんから
2016-10-02 11:34:12

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2016-09-28 06:27:16

fireflyさんから
2016-09-28 04:56:40

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2016-09-19 20:43:16

SS好きの名無しさんから
2016-09-19 02:54:06

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2016-09-17 18:27:19

SS好きの名無しさんから
2016-09-16 21:44:10

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SS好きの名無しさんから
2016-09-16 18:29:42

Sh1Gr3さんから
2016-09-16 16:02:02

SS好きの名無しさんから
2016-09-16 12:03:36

このSSへのコメント

20件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-09-16 21:48:16 ID: opIjjZYO

これから更新頑張ってくださいね!!・・・そういえば、双発の戦闘機で複数乗りということは月光とか極光みたいなのに乗っていたということですかね?

2: 雪風 2016-09-17 04:30:04 ID: 9UbKiuWs

コメントありがとうございます

世界観の説明をしていませんでしたが
序盤で主人公が乗っているのは
現代のジェット戦闘機を
イメージしてます
このSSの時代としてはほぼ
現代と考えてます

また日本は自衛隊では無く大戦後は
帝国軍から日本軍として再編された
設定でいこうかと思ってます

正直大戦時の航空機知識があまりないので苦し紛れに現代要素を混ぜようと
考えたとこもありますが
折を見て詳しい解説も書きたいと思います

それと大戦時の双発機は盲点でした
参考にさせて頂きます

更新は不定期になってしまいますが
見ていただけたら幸いです






3: SS好きの名無しさん 2016-09-17 18:27:13 ID: EIbvFdi8

更新をわくわくしながら待ってます。

4: SS好きの名無しさん 2016-09-17 22:51:33 ID: m1HFi27T

更新ご苦労様です。すみません、とんだ勘違いを・・・これからの更新楽しみにしてます!!頑張ってください!

5: 雪風 2016-09-18 03:09:34 ID: _e4UlS_e

3
見て頂きありがとうございます

4
投稿初期から応援ありがとうございます
こちらの説明不足もありすいません
これからも見ていただけたら幸いです

6: SS好きの名無しさん 2016-09-19 21:56:50 ID: t8AgASAM

更新お疲れ様です!艦娘からの第一印象は上々のようですね。中には信頼度がマイナス状態で始まる話も多いので、新鮮な感じです。他にはどんな娘が出てくるのか楽しみにしてます。これからも更新を頑張ってくださいね!!

7: 雪風 2016-09-20 04:14:32 ID: x48wLDJd

6
見ていただきありがとうございます
期待にお応え出来るよう頑張ります

8: SS好きの名無しさん 2016-09-20 21:49:58 ID: D_wiriJK

更新お疲れ様です。今回は六駆と鈴熊ですか。これからの戦いでどんな活躍をしてくれるのか、ワクワクしながら待ってます。
そういえば妖精さんはどういう設定になってますか?

9: 雪風 2016-09-21 04:13:14 ID: __bYTUvH

8
見ていただきありがとうございます
妖精さんについては艦娘が艦艇の生まれ変わり
みたいな設定なので大戦で船に乗っていた作業員の方の
生まれ変わりみたいな設定で登場させようかと思います
一応提督とは普通に会話出来る設定もつけようと考えてます
登場はもう少し先ですが今のところこの案でいこうかなと思います

10: SS好きの名無しさん 2016-09-21 21:25:24 ID: kNYl-7WK

更新お疲れ様です。また、質問にもお答え頂き有難うございます。これからも更新頑張ってください。応援しています。

11: SS好きの名無しさん 2016-09-27 22:12:18 ID: zBv-xsI1

更新お疲れ様です。1か所誤字があったのでご報告を「・・・さっきまでの思い雰囲気は・・・」>重い雰囲気
あと、文章がつながっていて読みにくいです。句読点を入れていただけると助かります。では、これからも更新頑張ってください。

12: 雪風 2016-09-28 00:10:50 ID: OmV0XBnz

11
ご指摘ありがとうございます
読みやすくなるよう努力させていただきます

13: SS好きの名無しさん 2016-09-29 22:48:39 ID: CvoQJoXe

更新お疲れ様です。だいぶ読みやすくなってます。有難うございます。今回はついに妖精さんが出ましたね、これからも更新頑張ってください。

14: 雪風 2016-09-30 02:40:28 ID: o4Iw3ccA

13
いつも見て頂いてありがとうございます
多少でも読みやすくなったとの事で何よりです
まだまだ至らぬ点あると思いますが
応援よろしくお願いします

15: SS好きの名無しさん 2016-10-03 22:01:41 ID: roYPHyfa

更新お疲れ様です!今回は霧島が出ましたか。そろそろ資材もたまってきて建造とか開発が始まるのかな?期待してます。これからも更新頑張ってください。

16: 雪風 2016-10-04 03:42:32 ID: JvD3jBxP

15
応援ありがとうございます
先の展開はいろいろ考えているので
楽しみにして頂けたら幸いです

17: 雪風 2016-10-04 03:45:41 ID: JvD3jBxP

オススメコメント2
投稿初期はあまり深く考えず書いていましたが
確かに無理がありますよね

いつになるか分かりませんが
折を見て矛盾が無いよう改訂しようと思います
ご指摘ありがとうございます

18: SS好きの名無しさん 2016-10-08 22:27:47 ID: rw72F0-t

更新お疲れ様です。祝!霧島着任!!応援してますので更新頑張ってください!!!

19: 雪風 2016-10-13 22:59:57 ID: 2MA-I6nI

18
応援ありがとうございます
少しずつですが時間が取れる時は
更新していくので楽しみにして頂けると幸いです

20: SS好きの名無しさん 2016-10-14 22:09:22 ID: K4q2eMjd

更新お疲れ様です!榛名の私服姿・・・見てみたい!!
いつかmodで出てくれませんかねぇ・・・。
これからも更新頑張ってください。応援しています。


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1: SS好きの名無しさん 2016-09-20 21:59:59 ID: D_wiriJK

 元航空隊エースの新人提督(ロシア語も少しできる!?)が前任アホ提督のせいでボロボロの艦娘達と一緒に頑張るお話。
 台本形式で誰が何を言っているのかわかりやすく、設定も別に纏められているので読みやすい。一読の価値あり。

2: SS好きの名無しさん 2016-10-02 02:13:48 ID: Yto7glK3

墜落時にコクピットにいたら死ぬぞ
パラシュートで脱出とかなさらないんですか?


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