まどか「二人でなら」
2作目です。
よろしくお願いします。
ピピピピピピとけたたましくアラームが鳴り響く。
「うるさいわね、今日は休みなんだから寝さてよね」
突然の様に二度寝をする私。
…ん?ちょっと待って休み…?休み……
「あっ!今日はまどか達と初詣だったの忘れてたわ。どうしょう…」
ひとまず落ち着きましょう私。
まず何で大事なまどかとの用事を忘れてたのかよね。
私は昨日の一連の出来事を瞑目して思い出してみた。
「昨日は確か…まどか達との約束をメールで聞いてウッキウッキで爆弾を作って…」
ちょっと待つのよ。
何か確実に可笑しかったわよね。
爆弾…?
あ、そうだった。
私はまどかを救うためにループしている時に作っていた爆弾がいつの間にか趣味と化したのよね…
はあ…普通の女子中学生の趣味では無いわね。
作り過ぎて感覚が麻痺してたのね…
…っといけない支度をしなくちゃね。
「えっと…確か晴れ着だったわよね?」
まどかがメールで送ってくれた内容を少しずつ思い出して自分の部屋に向かった。
引き出しを引いて中に入っていた晴れ着を出した。
その晴れ着はビニール袋に包まれていて見る者を寄せ付けない美しさがあった。
「まさかこれを着ることになるとはあの時は思いもしなかったわね」
晴れ着を裏返しセロハンテープで張り付けられていたほむらへという手紙。
3年前入院を繰り返し学校にも行けず、もし行けたとしてもすぐ他の病院に行くのを繰り返していた。
その内に、内気だった私はより内気になり弱虫になった。
そんな自分が情けなかった、嫌だった。
そんな情け内容姿を家族に見せたく無かった、だから私は一人暮らしを始めた。
その一人暮らしを始めた直後に
母がこの晴れ着を送ってきた。
その時の私は至極同情という行為が嫌いだった。
同情は形を変えただけの嫌がらせの行為なのよ。
だから私は自分の部屋の引き出しに閉まった。
母への気遣いがうっとおしく思えた。
だから手紙は読まなかったし、晴れ着も着なかった。
「でも、まあこれも何かの縁なのかもしれないわね…」
私は決心し、その手紙を開けた。
---ほむら元気にしてますか?
ほむらが一人暮らしすると聞いた時は心底驚きました。でもそれも貴方が色々考えた結果でしょうと思います。
話は変わりますがもうすぐ正月ですね。
正月にはお友達と一緒に晴れ着を着て楽しんで欲しい限りです。----
私はひどく後悔した。
母は何も同情なんてしてなかった。
単に一人暮らしをすると決めた私が心配だったのだ。
親が子を心配するのは当たり前のこと。
「そんな当たり前のことも分からないなんて本当馬鹿ね…」
時間も迫っているので早く晴れ着を着ようとした時、もう一枚の手紙を落ちた。
それには
---頑張れほむら---
と書いていた。
「本当不器用なんだから母さんは…
でもありがとう頑張るよ母さん。」
これまでの私は親についてなに一つ分かっていなかったんだと思う。
ううん、分かっていたけど見て見ぬ振りをしていたんだわ。
それも今日で終わり。
明日からはちゃんと電話をしよう、休みの日には久々に実家に帰ろう。
これからは親ともっと触れ合おう。
ピーンポーン。
その考えを打ち消すようなチャイムが鳴ったのを気付き慌てて時計を見、約束の時間から大分経っていることに気づいた。
もう一度チャイムが鳴った。
「ほーむーらー!遅いぞー!何やってんの」
煩いくらいにドアの前でさやかが叫ぶ。
私はそれに答え
「待ちなさい準備するから」
「エヘヘ約束の時間から結構経ってるから皆で来ちゃった!」
この声はまどか!
「待って今すぐ行くわ待ってねまどか!」
つい、興奮気味に言ってしまった。
「なんか私の時と反応違うんですけどー」
さやかが納得しないというような声で唸っている。
「あら、何で猿がここにいるのかしらね」
「なんだとぉー私は猿じゃないやい!」
「いつからそこは動物園になったのかしらね」
「ほむら…屋上へ行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…」
「ええ、構わないわよ。」
「すいませんでした!出来心だったんですぅー!」
とまあ何時ものようにさやかと軽口を叩いていた。
「むぅ…ほむらちゃんさやかちゃんと仲良いよね。」
顔は分からないが声からして怒っているみたいね。
「いえ、まどかこんな猿といつから仲良くなったの。まどかの目は節穴なの私はまどかが一番の友達なのに…よよよ」
謝罪したつもりで私は言った。
「むぅー!それだよそれ!それが仲良いって言うの!」
まどかには謝罪の意味と受け取ってもらえなかったようだ。
「でも、これが何時も通りだから…まどか私はどうしたら…」
私の言葉に対してまどかは期待に反した言葉を返してきた。
「ううん、それでいいんだよ。
ただちょっとさやかちゃんとほむらちゃんが羨ましいっていうか…
私も二人みたいに軽口叩いてみたいななんて…」
「まどか…もう甘えたなんだから。
第一私がまどかに軽口を言えるわけないじゃない」
「さっき私の目は節穴かって言ってきたよね…」
しまった…軽率だった。
軽はずみな発言がこんなところに出てくるなんて…
「い、いえあれは言葉の綾というかなんというか」
「ううん大丈夫もう気にしてないからそれにほむらちゃんが私のこと大事にしてくれてるって分かっただけでも嬉しいよ」
「まどかにそう言われると私も嬉しいわ…」
「あー熱いわー、今日寒くなるってニュースでも言ってたのに熱いわー
ピンポイントにここだけ熱いわー」
早く支度して来いと言っているのだろう。
「分かったわ、早く支度して来るわね」
「そういうことじゃないんだよなー………ほむらってさ恋愛に関しては疎いんだね」
馬鹿にされた感じがするわね。
「なっ…私はねこう見えてモテモテなのよ!テクニックも凄いのよ!」
「あー、はいはいいから支度するんだぞー。」
何かスルーされた気がするわ。
まあ、さやかの言ったことは間違ってはいないのよね。
恋愛なんて一度もしたことないからどんなものなのかもよく分からないわ。
知っているとしても本に書いてあった知識だけ。
それもよく分からなかったけれど。
そう恋愛について考えながら晴れ着をビニール袋から出し着替えようとした。
「あれ、これどうやって着るの…?」
本にはこんな知識書いてなかったわね。
「まあ適当にすれば出来るでしょう!えっと確か晴れ着って下に何も着ないんだったわよね…」
それから晴れ着と格闘をして10分。
「はあ、はあ、どうして出来ないの…」
帯が絡まって身動きが取れなくなってしまった。
「ほーむーらーまだかー?」
待ちくたびれたのかさやかの声が聞こえてきた。
「ちょっと待ちなさい…」
うっ…帯を閉めれば余計苦しくなるわね。
ここでまどかを呼ぶか、さやかを呼ぶか…さやかを呼んだら絶対揶揄されるわ。かと言ってまどかだと恥ずかしいし。
二者択一ね…。
………やっぱりまどかかしらね。
「まどかちょっと来てもらってもいいかしら?」
「うん!いいよ!さやかちゃんはここで待っててね。」
「ちぇー仕方ないなー」
「…?さやかも入るだけならいいわよ寒いだろうと思うし。」
「はぁー…あんたってホント馬鹿ね…鈍いにも程があるよ」
呆れたようにさやかが言った。
言ってる内容はよく分からなかったけれど恩を仇で返された気分だわ。
「よく分からないけれど寒いでしょ風邪引くわよ。」
「大丈夫!馬鹿は風邪引かないから!」
「自覚はあったのね…まあいいわそこで待ってるなら待ってなさい。」
「なんか上からだなぁ…まあいいけど、じゃあまどか行って来な。」
「うん、ありがとさやかちゃん」
そういい終わると同時に玄関からガチャリという音がしまどかが入って来た。
「ほむらちゃん!あけましておめでとう!」
「ええ、おめでとう…」
その言葉を言った後に私は俯いてしまった。
まどかの晴れ着がどうしょうもなく綺麗でそれでいてそれを感じさせない振る舞い。
そんなまどかを直視していると眩し過ぎてそして可愛過ぎて見つめていたら顔が真っ赤になってしまいそうで俯いてしまった。
「それでどうしたのほむらちゃん。」
まどかが俯いた私に向かって顔を向けてくる。
私はいつも通りを装いながら答えた。
「晴れ着が上手く着れなくて…手伝ってくれるかしら?」
まどかは満面の笑みでいいよと答え帯を結び直してくれた。
「ほ、ほむらちゃんなんで下着着てないの?」
まどかは顔を赤く染めていた。
「え、晴れ着の下って何も着ないんじゃないの?」
「ほむらちゃんそれ浴衣と勘違いしてるよ…浴衣でも下着着けないのは珍しいんだけどね」
まどかからその言葉を聞かされた時私は顔が熱くなり思わず顔を逸らしてしまった。
「そう…だったの私そういうのには疎くて…ごめんなさい」
俯きながらそう言った。
「ううん、大丈夫だよ。
と、取り敢えず下着着ようかほむらちゃん。今の格好は見てるこっちも恥ずかしいよ」
見ると晴れ着がはだけて透き通った白い肌が丸見えになっていた。
「……ごめんなさい着替えてくるわね」
とてつもなく恥ずかしい。
顔が熱くて焼け死にそうだ。
「ふふ、ほむらちゃんって以外と乙女さんなんだね」
「え…?それってどういう」
「あ、いや馬鹿にしてるとかじゃないんだよ。ホントだよ。」
まどかは滔々と話し出した。
「ただほむらちゃんにも女の子っぽいところあるんだなぁって思ってね。
ほら、ほむらちゃんってさ私を助ける為に何回も繰り返したって前言ってくれたじゃない?あの時のほむらちゃんはまるで王子様みたいで…
見てるとこっちまで引き込まれそうなクリッとしたお目目をしていたの。
でも今ではすっかり女の子だね。
ほむらちゃん。」
また顔が熱くなってきた。
「ほらそんなところとかすっごく女の子だよ。」
そう言いつつまどかは後ろを向いていた私の前にぴょこっと出て来て手を後ろにしてくるくる回っている。
「そんな駄目かしら…私のその…性格というか…」
恐る恐る手をもじもじしてまどかの方を見て聞いたのだが返ってきたのはあっけらかんな言葉で答えた。
「ううん私は過去のほむらちゃんも今のほむらちゃんも全部まとめて大好きなんだよ。
もちろん未来のほむらちゃんだって絶対好きになるよ。
過去も今も未来も全てを私が包みこむよ。だってほむらちゃんだもん!」
それから数秒ただ単純に何て返事をすればいいのか分からなかった。
立ち尽くしていた。
いや違う返す言葉は分かってるけどそれを口にしたら何かが変わってしまう。いつもの日常が壊れてしまうという恐怖感が先に出て答えが出せない。
答えを知ってしまうのが怖い。
そうだ、私はいつだって逃げていた。
なら今回も逃げようそれがまどかの為になるなら。
私はなるべく平静を装い返事を返した。
「ええ、そうねありがとう。
過去を否定したところで何も変わらないしそれを否定したら今の自分も否定したことになるってことになるわね。まどかはそう言ったことを伝えたかったんでしょ?」
そう半ば強引に返答した。
だけどまどかは私の返答に納得いかないというような顔をしている。
分かっているわよ…
そこまで鈍くないわよ私も…
そう言いたかったそう答えたかった。
でも止めた。
何かが変わってしまうから。
「まあ…そうなんだけどね…取り敢えず下着着ようかほむらちゃんここで待ってるから着てきてね!」
「ええ、分かったわ。」
そう短く言い自分の部屋に着替えをしに行った。
「はぁ…勇気出して言ったんだけどなぁ…ほむらちゃんホント鈍いんだもん」
今でも心臓がバクバクしてる。
ドキンドキンと脈打っている。
「もっと大胆にいった方がいいのかなぁ…」
ため息をつき考えを巡らせていると
目の前にはほむらへと書かれた手紙が落ちていた。
「なんだろ…これ?ほむらちゃん宛?ちょっとだけならいいよね?」
そう自分に言い聞かせて私は手紙を開けた。
自分の部屋で着替え終わった私は晴れ着を着せてもらう為にまどかの元へ急ぐ。
「まどか着替え終わったから晴れ着を教えてもらっても……まどか?貴方何をしてるの?」
「ご、ごめんほむらちゃん見る気は無かったんだけど落ちてたからその見たくなって…」
「見る気がないのなら落ちてるそれはほっとくのが正解なんじゃないの?」
私は睥睨としていた。
まどかにそんなことはしたくはかったのだけど過去の自分を見られてる見たいで嫌なのだ。
過去は否定はしないけどあまり好きな思い出ではないからどちらかと言えば嫌いの部類に入るわ。
あわよくば忘れたい思い出ね…。
「本当にごめんほむらちゃん。」
まどかは小さい子リスのように縮こまっていた。
「あ、いやまどか怒っているわけではないの。ただまどかに幻滅されたく無かったから。」
そう言うとまどかは首を傾げ不思議そうに言った。
「幻滅…?」
「そうよ幻滅。この手紙から見て取れるように私は弱いのよ。私は出来る限りまどかに弱いところを見せたくないのだから過去はあまり好きではないの。あの頃の私は一人暮らしすることでしか親に反抗する術を知らなかった子供だったから…まあ今も子供だけどね。」
そう自嘲気味にまどかに言い聞かせた。
「それは違うと思うよ。ほむらちゃん。ほむらちゃんが過去をどう思ってるなんかは私にはわからない。
けどねその手紙からは暖かさがあったよ。ほむらちゃんのお母さんの暖かさがあった。それは間違いなんかじゃないんじゃないかな。それに一人暮らしなんて私には無理それが出来るほむらちゃんは強いよ私なんかよりずっと強い。」
そうだった。
あれは暖かかった。
まどかの前で変に強がったせいで卑屈な考え方に至ってしまった。
そんな自分がまた情けなくなった。
けれどそんな私をまどかは強いと言ってくれた私はその言葉を信じていいのだろうか。
数多の世界をループして来た私には信じることが怖くなっていた。
もう一度手を握ることが出来るだろうか。
「一歩踏み出そうよ。ほむらちゃん!私がほむらちゃんを支えてあげるから。何度挫けたって私が支えてあげるだから手を伸ばして。」
まどかがまるで私の思っていたことを予測したような。
まるで魔法少女のテレパシーのような。
まどかが魔法少女になってしまったかと一瞬危惧したがそれはないと頭から取り払う。
そうこれはテレパシーでも何でもない人の…まどかの力なんだ。
そして私をまどかの手を取った。
「ありがとうまどか。ありがとう…」
「えっと…うん…その…ほむらちゃん嬉しいんだけどその姿で抱きつかれるのはちょっと恥ずかしいなぁ…」
私は興奮していたせいか場の雰囲気からはわからないけど私はまどかに抱きつきていた。
下着姿で。
「…………忘れてちょうだい。」
やってしまった。
ループしていた時まどかに抱きついていた時の癖がこんな時に出てくるとは思ってもいなかった。
「あの…ほむらちゃん…?」
まどかは困惑気味に私を見つめた。
「何も言わないで……忘れてお願い…忘れて…恥ずかしい…」
私は手で顔を隠して顔が見えないようにした。
心の中で渦巻いていたのは何で一番の友達にこんなことをしてしまったのという後悔だった。
こんな時にさやかがこの空気を壊してくれたらと思って玄関を見つめて期待したが反応は無かった。
「で、でもねほむらちゃん…私はその…嫌じゃなかったよ…?恥ずかしかったってだけで」
上目遣いで頬を紅く染めたまどかが見つめてくる。
心臓がドキンドキンと締め付けられたように痛む。
これはオッケーってサインなの…?
わからないわ…。
そう頭の中で思案していたところまどかが私の顔を隠している手を取払った。
「ねぇ、ほむらちゃん私我慢出来ないよ。ほむらちゃんがいけないんだよ?何も答えてくれないからこれはお仕置きなんだよ?」
そういいまどかは私を押し倒されなすがままにされそうになった。
「だ…駄目よまどかこういうのはもっと段階を踏んでから…」
「段階って何?私はずっと我慢してたんだよ。ほむらちゃんが鈍いのも仕方ないと思ってたの。でももう我慢出来ない。これは私をこんな気持ちにさせたほむらちゃんの罰なんだよ。」
私の瞳に映ったまどかは何時もは一味も二味も違うまどかで少し色っぽかった。
まどかがそんなことを思っていたなんて初めて知った。
言葉って思ってる以上に口にしないといけないものねと思った。
まどかが私の体に重ねたと同時に玄関の扉が開き晴れ着姿のさやかが現れた。
「もぉ〜!遅いよぉー!二人ともーお…?」
さやかは目をパチクリさせ目の前の状況に戸惑っているようだ。
その状況に私達も把握するのに少し数秒かかり一瞬でまどかは私から離れて座り私は起き上がり座った。
まどかも私も気恥ずかしいようだ。
するとさやかが裏返った声で言った。
「ごごごご、ごめん先に行ってるね!何も見てないからっ!」
と言い出し飛び出して行った。
「あはは…じゃあ準備して私達も行こうかほむらちゃん…」
まどかは俯き頑なに私の顔を見ようとしない。
「ええ、そうね…じゃあ晴れ着お願いできるかしら?」
今の私もまどかの顔を見ても気まずくなるだけだと思うし。
「え、あ…うんじゃあこっちに来てもらえる?」
さっきの間は多分私を押し倒すので精一杯になって晴れ着を着させてること完全に忘れてる間だわ。
なんで分かるかって?
それぐらい常識よ。
まどかは一度決めたことを突き止めるとそれ以外は見えなくなる性格だからね。
そしてしばらく私は無言で晴れ着を着させてもらった。
同じくまどかも終始無言だった。
教えてもらう時以外は全くと言っていいほど喋らなくなった。
まあ、私も今だにさっきのことが頭に過ぎってとてつもなく恥ずかしいんだけど…。
うわあああああああああ
やっちゃった!やっちゃったよぉ…
ほむらちゃんを押し倒しちゃったよ…ほむらちゃん駄目だって言ってたのにやっちゃった…。
まあ、でもあそこでさやかちゃんが来てくれたのは僥倖かな。
いや、全然僥倖じゃないよぉ…
恥ずかしくてほむらちゃんを直視出来ないよ。
ほむらちゃん絶対私のこと軽蔑してるよ…。
さやかちゃん達には悪いけど初詣バックれちゃおうかな…。
もう何もかも悪い方向に向かってる気がするよ…。
「まどか、前もお願いできるかしら?」
ほむらちゃんがこっちを見て聞いてきたので思わず目線を逸らした。
「う、うんじゃあするね。」
うわあああああああ
ほむらちゃん怒ってる絶対怒ってるよぉ…
もう駄目だ私…
「まどか、私は別に怒ってはいないのよ?」
え、嘘…ほむらちゃんエスパー?
魔法少女ってそんなことも出来るの?
「まどか一応言っておくけど魔法少女はエスパーじゃないわよ?」
「ほむらちゃん凄いね、何で分かったの?」
絶対エスパーだ!白状するんだ〜!
「何か楽しんでない?まどか?まあそれはともかくとして、まどかって顔に出やすいのよ。
いちど突き止めたら周りが見えないんだから…」
ほむらちゃんが私のことをギュッと抱き締めてくれた。
それはとても暖かくて、優しい気分にしてくれました。
「ほむらちゃんはさ、やっぱり凄いよ。私があんなことしたのにあっさりと許しちゃうなんて…」
このままずっとほむらちゃんの体温を感じていたい。
ずっと…
「さすがに最初はびっくりしたけどね。でも何か理由があってしたんでしょ?それはなに?」
ほむらちゃんが問い詰めるような声で聞いてくる。
「それは……」
それは…私にも分からない。
なんでほむらちゃんを押し倒したのか。なんでほむらちゃんに対してあんなことを言ってしまったのか。
理由なんてあるのかな。
私はただほむらちゃんを私のものにしたかっただけなんじゃないかな。
「言いたくないなら言わなくても良いわまどかが選んだ道だもの誰も文句も言わないわ。」
「でも、もしその道が間違ってたら…」こわごわと聞いてみた。
「そうね…一人ならずっと間違ったままかもしれない。でも私達は二人よ。」
ほむらちゃんはその優しい声と暖かな微笑みをくれた。
その声と笑顔で私を護ってくれる。
ああ、そうか私はほむらちゃんを私のものしたいんじゃなくほむらちゃんを護りたいんだ。
今日ほむらちゃんの女の子してる姿を思い浮かべた。
あんな姿見せられたら庇護欲も出るわけだと一人で納得した。
「ほむらちゃん…ありがとう…」
小声でほむらちゃんには聞こえないように言った。
「何か言ったかしら?」
「ううん何でもないよ!晴れ着の着付けも終わったしじゃあ行こっか!」
「ええ、そうね、行きましょう」
私達は近くの神社に向かって歩き出した。
まどかとは一応仲直りはしたのだけれどさっきの出来事がすぐには忘れれることもなく気恥ずかしさを残して神社に着くまでは私達は終始無言だった。
それからしばらくし私達は鳥居の前に着いた。
随分と立派な鳥居で年月が経っているせいか所々が剥げていて赤いペンキで塗り直しているのが目に見えて分かる。
それだけでどれだけの価値がある鳥居なのかも。
ピロリンと言う音がまどかの携帯から流れ出て携帯の画面を確認した。
「あ、さやかちゃんからメール来てた。」
「なんてきてたの?」
「えっとね、杏子ちゃんがお腹空いたから二人で屋台巡りしてるってさ。あ、二人ともお参りはもう済んだんだから私達で行って来てだってさ」
画面を見ながら説明してくれるまどかを見ているとさっきまでのことが夢に思えてくる。
「ふふ、杏子らしいわね。じゃあ私達だけでお参り行こうかしら。」
でも夢じゃない。
「う、うんそうだね…」
まどかの目を見て話そうとしてもまどかが目を逸らしてしまう。
まどかも恥ずかしいのかそれとも…
やめましょう今こんなこと考えるのは。
お参り所まで少し歩き長蛇の列に並んだ。
「ね、ねぇほむらちゃん。ほむらちゃんはさお賽銭箱に何円入れるの?」勇気を振り絞って言ってみた。
「そうね、大体30円くらいかしらね。お賽銭はお金じゃなく心なのよ。」
心か…優しいね。
ほむらちゃんの芯の通った声質はいつ聞いても私を奮い立たせる。
強い気持ちにさせてくれる。
「ほむらちゃんはさ凄いよね。私には言えないことや出来ないようなことを平気でやるんだもん。」
俯き加減に話していたら突然ほむらちゃんが私の手を握ってきた。
「でも私の出来ないことをまどかは平然とやってのけるわ。
要はそういうことじゃない?」
ほむらちゃんの言いたいことは分かるでも…でも…
「まだ納得してないみたいね…ならこうしましょうお参りの時に祈った言葉を二人とも言い合うってことでどうかしら?」
それとこれとどう繋がりがあるの?
何かよく分からないよ。
「まだ納得してない?大丈夫私を信じて。」
ほむらちゃんの真剣な瞳に呑まれそうになる。
「うん!あまりよく分かんないけど信じるよ!」
「ありがとうまどか。ほらもう順番が来たわよ。」
「わわ、もう?早いねさっきまであんなに並んでたのに」
時間ってあっという間だなぁ…
「そうね、時間ってあっという間なのよね…」
そのほむらちゃんの言葉は私と言ってる言葉は同じだけど意味は大分違うような気がしました。
何故ならその時のほむらちゃんの横顔が悲しそうに見えたから。
…っとお祈りする内容考えないと。
私に出来ないことをほむらちゃんが出来て、ほむらちゃんが出来ないことを私が出来る。
多分これに関することだと思うんだけど……
これだけじゃあ分からないよ。
情報が少な過ぎる。
でもほむらちゃんが信じてって言ったんだもん。
信じなきゃ!
「まどか、私は祈る内容が同じだといいわね。」
そのニッコリと笑った笑顔で私は思い出した。
私はこの笑顔に沢山の勇気や力をもらっていたことを。
そうだった。
なんでそんな大事なこと忘れるんだろうやっぱりほむらちゃんには敵わないなぁ…
私は決心した。
お祈りの内容も決めた。
お財布からお賽銭代を出しお賽銭箱に入れると気持ちいいぐらいに賽銭の音が響いた。
私の願いは、祈りは-------
私達はお参りをし終わった後高台のベンチまで座っていた。
「ねぇ、まどかは何て祈ったの?」
演技のように白々しく言い放った。
「ふふ、可笑しなほむらちゃんさっき言い合おうって言ったのにその様子だと普通に疑問に思ってることをぶつけてるだけじゃない」
直球に言われた。
まあ、それはそうよね。
ここまできて逃げるのはさすがの私でもしないわ。
でも…この関係がもし壊れてしまったら…
「ほむらちゃん大丈夫だよ。」
まどかは私を安心させるように言ってくれた。
さっきまで立場が逆ね。
「ええ、ありがとうまどか。まどかは強いわね。」
そう言うとまどかはきょとんのした顔で言った。
「違うよ。私はねさっきほむらちゃんが信じてって言ってくれたからだよ。そう言ってくれなかったら今でもビクビクしてたと思うよ。だからほむらちゃんのおかげなの。」
これも言葉の力なのかしらね。
魔法でもなく奇跡でもないこれが人の力なのかしら。
「そう…だったの。それでも私は貴女のことは強いと思うわ。」
「ほむらちゃんってさホント頑固だよね…」
しらっーとした目でまどかが私を見てくる。
ああ、やめてそんな目で私を見ないで!照れてしまうわ!
冗談はさて置き、約束を果たす時だ。
「じゃあまどかどっちから言う?」
「んーー、じゃあ私から!」
元気良く右手をピシッと上げている姿はまるで授業中のまどかみたいだわ。
まどかは滅多に手を上げないんだけどね…
するとまどかは息を全力で吸い込み大きな声で言った。
「私は、ほむらちゃんと一緒に、ほむらちゃんの隣にいたい。それが私があそこで願った祈りだよ。」
まどかの頬は少し紅に染まっていた。
やっぱりまどかは私と『同じ』答えだった。
「ほむらちゃんが言いたかったのはこういうことだったんだね。納得したよ!」
「そう…ならよかった…」
本当によかった。
「待ってよほむらちゃん一人で納得しないでまだほむらちゃんの口から聞いてないよ。」
人差し指を私にビシッと向け言った。
…ホント頑固なんだからとそう思った。
「私は…まどかと一緒にいたいずっと」
うん、これでよかったのよね。
「そうそれが聞きたかったよ。」
まどかも安堵したように言った。
「でもほむらちゃん。ほむらちゃんはホントにそれでいいの?」
私は驚いた。
まどかから疑問の言葉が投げかけられるとは思っていなかったからだ。
「どうしてそんなこと…?」
「ほむらちゃんの祈りは本物だと思うよ。でもねほむらちゃん泣いてるんだよ心の中でずっとずっと泣いてるんだよ。」
私は分からなかった。
どうしてまどかがそんなことが分かっているのかが分からなかった。
「なんでそう思うのよ!それに私は泣いてなんか…」
歯を食いしばって言い返した。
「今も泣いてるよ凄く泣いてる。私ほむらちゃんの事ならなんでも分かるんだよ。私の最高の友達だから!
だから…もう人の好意から逃げるのはやめて」
まどかは分かっていた。
分かっていて分からない振りをしていたのだ。
私は目に涙を溜めて立っているまどかを見据えて言った。
「でも何かが変わるかもしれないわ。それにこの日常だって壊れるかもしれない…」
どうして私はこういう時の否定ばかり入るのだろう。
自分が嫌になる。
「壊れないよそんな簡単に壊れるものじゃないよそれは。
それに変わるのは当たり前なんだよ
人はいつの間にか変わっていく変わらないでいられるなんて出来ないんだよ!」
変わらないものはない。
まどかは変わった。
さやかもマミも杏子も
それならまだ変わってない私は…?
「ならまだ変わってない私はどうなるのよ!」
「少しずつでもいい変わっていければいいんだよ。だからさあ手を伸ばしてほむらちゃん後は私が手を取る。一人じゃ出来ない事も二人なら出来るから…」
まどかは私が手を伸ばすのを待っている。
ああ、そうか今までもずっとまどかは私が手を伸ばすまで待っててくれたんだ。
そして私はまどかに手を伸ばし手を取ってくれた。
「一人で出来ないことも二人でならね。」
私はそう言い終わると同時にまどかに抱き締めた。
「ありがとう…まどか…これからも私の隣でいてね。」
「もちろんだよ。」
当たり前でしょっと言った凛々しい顔で答えるまどか。
「やっぱりまどかは最初から分かってたのね。私が無理をしてたのとか」
「ううん全然分からなかったよ。」
思わず目をパチクリした。
「ならどうして分かったの?」
手にこめかみを抑え考えるまどか。
「うーんどうしてだろ?あ、でも性格に分かったのは列に並んでる時にほむらちゃんと手をつないだ時かな。そこからほむらちゃんの心とか全て伝わってきたの信じてもらえないかもだけど」
不安そうに見つめるまどかに間髪入れず答えた。
「信じるわ。まどかが私のこと信じてくれたのよなら私も信じなきゃね。それにこの世の中には不思議なことは沢山あり過ぎるから」
まどかはいかにもといった風に嬉しそうにしている。
表情がコロコロ変わって面白いわ。
見てて飽きないわ。
まどかと一緒だとなんだって出来ちゃいそうね。
刹那、物陰からゴソゴソという音がしたかと思うとそれはいつの間にか足音に変わりそして…
「あー、お二人さん夫婦喧嘩は終わりましたかー?」
目が死んでいるさやかとたい焼きを口に咥えてる杏子が佇んでいた。
「夫婦喧嘩だなんて…照れちゃうよさやかちゃん」
「あれー、おっかしいなー馬鹿にしたはずなのにこっちまでダメージきたんだけど…」
目が死んでいるを通り越して死んだ魚の目ね。
「ふふ、私とまどかの運命の赤い糸は切っても切れないのよ!」
「なんか腹立つなぁ…」
む、元の腹立つ目に戻ってしまったわ。
「ほ、ほむらちゃんそんな式の準備だなんて気が早すぎるよ」
まどか気が早いのは貴女よ…
「ねぇ、ほむらまどかさ…」
「やめて聞きたくない!そんな残酷な現実受け入れたくないわっ!」
ノリノリで言ってみた。
「あんたノリノリだろ…」
呆れ声で言われた。
「ええ、ノリノリよ!」
私はそれに対抗するためあえてノリノリで言ってみた。
「ノリノリなのかよっ!」
「ふふ」
思わず笑ってしまったわ。
まあ、でもこんな日常もいいかもね。
「おーいさやか寒いから下行こうぜ。」
「あ、そだねー…」
テクテクとたい焼きを持つ杏子に着いて行った。
なので私もさやかの後ろに着いて行った。もちろんまどかも。
……言っていいのかあれだけどこれドラクエのアレみたいね。
「あー寒いなー。」
「そうね、今年は寒波が来てるらしいからね。」
事実今年は一番寒い。
この神社にくる人は殆どコートを着ているしね。
「ほむらー。カンパってなんだ美味しいのか?」
寒波も知らないって世間的にどうなのよ…
「ええ、美味しいわよ。何ならさやかに食べさせてもらいなさい。」
返すのが面倒でさやかに丸投げした。
「あんたねぇ…よくもまあ面倒くさいことを…」
さやかが耳打ちをしてきた。
杏子に聞かれたくないということはそこまで面倒くさいとは思ってないってことね。
本当に面倒くさかったら本人前で言うしね。
「あら面倒くさいことは得意でしょ?」さも当然というように言ってやった。
「むぎーー!なんか気に入らねぇぜー!」
頭を掻き毟ってうがうが言っている。
「ほ、ほむらちゃんあんまりさやかちゃんを虐めないであげてね?」
キラキラとした瞳。
ああ、やっぱりまどかは天使だわ。
「ええ、分かったわ。」
くるっと方向転換をし答えた。
「さやかよかったわね。今から貴女を煽るのはやめてあげるわ」
「って煽ってたのかよ!」
「あははは、そういえばマミさん今日来てないよね。」
さすがまどかナイスフォローよ!
まどか、きゃー!大好きー!
「ああ、マミさん今日確か家庭教師?らしくてなぎさってこの家に行ってるらしいよ。」
家庭教師…マミが…
「マミが家庭教師なんざするんだねぇ。」
わあ凄い同じこと考えてた。
「まあマミさんらしいよね。」
「確かにな。」
すると杏子はあっさりと納得した。
納得するの早いわね。
杏子はさやかの犬か何かなの?
「でもさほむらちゃん来年も私達も受験生なんだよね…不安だなぁ…」
まどかは指をくねくねさせながら不安がっている。こんな時は安心させなきゃ。
「大丈夫よ、一人で出来いことも二人でなら出来るでしょ?」
まどかの教えをそのまま言ってみた。
「うんそうだったね。ありがとうほむらちゃん!」
効果はバツグンだ!
「こんな所でも惚気かよ…見てるこっちまで恥ずかしくなってくる。」
杏子が顔を少し赤く染めた。
不覚にも可愛いと思ってしまったわ。
「違いないね。私も恥ずかしいし…
それに二人の見ちゃったし…」
さやかアウトー!
なんでこのタイミングで言うのよ…
私達もは顔を見合わせたが朝の出来事を思い出し逸らしてしまった。
まあこれも時間が解決してくれるわよね。
そう思い今は何もまどかに声をかけなかった。
階段を降り鳥居をくぐる。
また来年ね。
素敵な思い出をありがとう神様。
願わくばずっとこの日常が続いてくれますように……
最後無理矢理に終わらせた感が出てるのは勘弁願います…
初詣に行ってイチャイチャするだけだったのですがいつの間にか案が膨れ過ぎてここまで長くなりました。
ほむほむの晴れ着ネタは即興です。
家族ネタを少し挟みたかったので…
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