2015-01-09 11:52:19 更新

概要



前書き

にこまきです。


高校を卒業してもう10年……。


今でも、あの三年間は充実した三年間だったと思う。


特にスクールアイドルをやっていた……あの一年間は、奇跡と言っても過言じゃない。


だって実際に、奇跡だったもの普通の少女たちが、学校の廃校を阻止したのよ? 奇跡としか言い様がない。


μ’sが解散した後のアイドル研究部は、後輩アイドルの育成を主な活動になったわ。


最初は、音の木坂だけだったのが、気づいたらUDXや他の高校の娘まで居たわね。


海未が肉体面を、穂乃果がメンタル面を、ことりは……何か色々とマネージャーをやってて。


穂乃果たちが卒業した後は、凛が海未を、花陽が穂乃果を引き継ぐ形になったわ。


えっ、私? 私は……やめたわ……アイドル研究部を……


別に勉強に集中したいとかじゃなく、心の整理をするために……


あそこに居ると、どうしても彼女の顔が浮かんできて、自分の中の感情が抑えきれなくなりそうで……だからやめた。


最初は止められたけど、凛と花陽に訳を話したら引いてくれた……凛は少し納得がいかなくて……


それで、あの二人喧嘩したわね……私の気持ちのことなのに……あの仲の良い二人がこんなに言い争うなんて思っても見なかった。


それから一週間くらい二人共、お互いに口も聞かなかったりして……仲直りさせるのが大変だったわね……


でも、すごく嬉しかった、だって私のことなのにまるで自分たちのことみたいに、一緒に悩んでくれたもの。


この二人に出会えて本当に良かったと心の底から思ったわ……本人たちには言ってないけど……


それから私の勉強漬けの日々が始まった……


一年生の最初の頃に比べて、私の成績はやはり少し落ちていた……


このままでも多分狙える圏内だとは思ったけど……間違っても落ちてスクールアイドルをやっていたせいと言われたくなかったから……


私の奇跡の一年間を、誰にも馬鹿にされたくなかったから……だから私は必要以上に勉強した。


まぁ、勉強のやり過ぎて試験をトップで合格して……さらにトップで卒業したりもして……


医大卒業した後は、パパの病院ではなくパパの知り合いが医院長してる病院に、研修医として入り4年目になる。


外科医を希望したが、この3年間はとにかく怒涛の日々だった。


パパから話を聞き、ある程度覚悟はしていたけど……研修医としての最初の2年間は、何度も心が折れかけた。


そのたびに、凛や花陽に愚痴を言ってたわね……


3年目からは、脳神経外科を専攻することに決めた、えっ? 何でってそれは、パパが脳外科医だったから……


そんな理由で決めちゃったけど、不思議と楽しかったわね……相変わらず大変だったけど……


まぁ、そんなので4年目慣れて少し落ち着いたけど……


今日、私は一人の患者を看取った……


末期がんの患者さんだったけど、とても明るく周りの入院患者さんまで笑顔にしてしまうような人だった。


まるで彼女みたいな人だった。


男「西木野君、明日から夏季休暇だね、予定は決まってるのかい?」


真姫「そうですね、前半は実家に帰ろうかと思ってます。この1年戻って無かったので」


彼は私の指導医をしてくれてる脳神経外科の先生、歳は35歳だが性格も良く未婚で院内ではかなり人気がある。


男「その言い方だと、後半の予定は決まってないのかい?」


真姫「えぇ、そうですね。特には……」


男「だったら、僕と出かけないかい?」


真姫「ヴェエエエェ!?」


こ、これって所謂デートのお誘いよね……


男「駄目……かな?」テレテレ//


真姫「……考えておきます」


男「わかった、決まったら教えてくれ!」パァ!


デートなんて、最後にしたのは何時だっけ?


多分、彼女と高校の春休みの時以来ね……今でも、思い出したくない最悪のデートだったけど。


さて、明日は久しぶりにパパとママに会えるわね。


凛と花陽も会えると良いのだけど、多分仕事でしょうね……


穂乃果と海未は、多分穂むらに行けば逢えるでしょう、あの二人は卒業してからもベッタリだろうし。


ことりは……海外にデザイン関係の会社に入ったって聞いたわね。


絵里と希は確かOLやってるって聞いたわね。


あと、彼女は……どうなったのかしら、アイドルになってあの後…


まぁいいわ、今日はもう寝ましょう。



次の日


真姫「わざわざ、迎えに来なくても…荷物もそんなに無いのに」


執事「それだけ、お嬢様の帰りを楽しみにしてるのですよ」


真姫「まぁ、ありがたいけど…」


執事「秘蔵のワインも開けると言って、昨日はとてもご機嫌でした」


真姫「……」(そんなにワイン好きじゃないだけど)


正直、ジントニックとかカシスソーダの方が美味しいと思わない?


そうこうしてるうちに着いたわね。


元々、そんなに離れてるわけじゃないからすぐ着くのよね。


久々の実家だけど、変わってないわね…当たり前だけど。


真姫「ただいまー」


真姫母「あら、お帰りなさい真姫ちゃん思ってたより早かったわね」


真姫「ただいま、ママ だって元々そんなに離れて無いもの」


真姫母「そうよねぇ、なのにあの人ったら真姫ちゃんが帰ってくると聞いた日からずっとソワソワしてるのよ、まるでクリスマス前の子供みたいに」


真姫「パパ…」


少し恥ずかい気もしたけど、それよりも嬉しかった。


スクールアイドル活動で揉めた時期も有ったけどやっぱり親というものは大きな心の支えになる


一番、私を愛してくれてると肌で感じることが出来るから


真姫母「パパが帰って来たら食事に行きましょ、それまで部屋でゆっくりしてなさい」


真姫「さて、ゆっくりしなさいと言われたけど」


真姫「そんなに疲れてるわけじゃないのだけど」


チラッと時計を見る、11時半…パパが帰ってくるのが多分、夕方6時位だから…


真姫「暇ね…」


そう言ってベットに倒れ込む、久しぶりなのに昨日までこのベットを使ってたような不思議な感触…何ででしょうね。


明日、凛と花陽にでも連絡を取ろうかしら…合えるかしら。


あと、先生の返事どうしようかしら。


暇を持て余すよりかは、良いかもね………


真姫母「真姫ちゃんお昼どうって、あらあらやっぱり疲れてたのね」


真姫母「ゆっくりお休みなさい」


真姫「Zzz…」




?「ゴメン、真姫ちゃん…私達別れましょ」


真姫「何で!? どうして!?」


?「だって、私達女の娘同士よ」


真姫「そんなの、関係って言ったのはアナタじゃない!」


?「あはは…そうだったニコ?」


真姫「誤魔化さないで、私は…私は…」


?「ごめんなさい、でも私達じゃ子供は作れない、結婚も出来ない」


真姫「そんなの、関係…」


?「有る!!……有るのよ…」


?「だから、ごめんなさい。真姫ちゃん…」


真姫「……わかった」


?「真姫ちゃん……」


真姫「わかったからもう、私の前に現れないで」


?「……!」


真姫「この、大嘘つき!!」


……うぅ、最悪な目覚めだわ。


今更、この夢見るなんて……


大学卒業してから、見なくなってたのに……


ところで、何時かしら……ってまだ1時か……


小腹空いたわね……下に行けば何か有るかしら。


真姫母「あら、真姫ちゃん起きたの?」


真姫「うん、ねぇママお昼有る?」


真姫母「BLTサンドなら有るわよ」


真姫「BLTサンド! 食べる!!」


真姫母「ふふっ、真姫ちゃんったらすっかり子供に戻っちゃってるわね」


真姫「うっ、ごめんなさい」


真姫母「いいのよ、真姫ちゃんここはあなたの家なのだから」


真姫母「ここでは、目一杯甘えていいのよ」ギュッ


真姫「ママ!…………ありがとう」


ママに抱きしめられたのって何時以来だろう? 小学生の時かしら……でもすごく落ち着く。



さて、お昼も食べたけど……まだ1時半なのよね。


出かけようかしら、穂むらにでも行ってみようかしら、穂乃果居るかしら?


………………。


店構えは全然変わってないわね


真姫「御免下さい」


雪穂「いらっしゃいませーって真姫さん!」


真姫「こんにちは雪穂ちゃん、穂乃果居るかしら?」


雪穂「お姉ちゃんなら奥に居ますんで、ちょっと待って下さい」


雪穂「おねーちゃん、真姫さんが来てるよー」


穂乃果「えーっ! ホント!?」


雪穂「ホントだよ! ここ変わるから行って来なよ」


穂乃果「ありがとう、雪穂」


奥の方から元気な声が聴こえる、相変わらず仲が良いわねこの姉妹は。


穂乃果「ホントに、真姫ちゃんだーっ! 久しぶり―っ!」


真姫「ホントに久しぶりね、3年ぶりかしら?」


穂乃果「お医者さんになったんだっけ? すごいなぁ」


真姫「まだ研修医よ、医者なんてまだ言えないわ」


穂乃果「研修医? お医者さんとは違うの?」


真姫「簡単に言うと、医者見習いって感じかしら」


穂乃果「へぇ~、大学卒業したらお医者さんになれるんだと思ってたよ」


真姫「医師免許は持ってるわよ、でもちゃんとした医者になるには、経験を積まないといけないの」


穂乃果「車の免許で言うと、仮免って事?」


真姫「ちょっと違うような……って穂乃果、車の免許持ってるの?」


穂乃果「うん、配達する時とかに便利だからね」


真姫「……どれ位で取れたの?」


穂乃果「うーん、3ヶ月くらいかなーどうして?」


真姫「いえ、なんでもないわ」


3ヶ月……やっぱり高校時代に取っておくべきだったわ。


真姫「はぁ……」


穂乃果「あれっ、真姫ちゃん元気ない? あっそうだ! 海未ちゃんを呼ぶね」


穂乃果「多分、この時間帯なら道場に居るだろうし、ちょっと待ってて」ピポパッ


真姫「あっ、ちょっと違うの、別に落ち込んでわけじゃ……」


穂乃果「あっ、海未ちゃ~ん。今ね真姫ちゃんが来てるだ~」


穂乃果「うん、うん、わかった、待ってるね~」ピッ


穂乃果「海未ちゃん来るって」


真姫「別に呼びださなくても……」


穂乃果母「穂乃果、お客さん? あらっ! 真姫ちゃんじゃない久しぶりね~」


真姫「お久しぶりです、おば様」


穂乃果母「お医者さんになったんだってね~すごいわ~」


……流石親子ね、反応が全く同じだわ。


穂乃果母「ここじゃなんだから、上がりなさいな」


穂乃果母「ほらっ、穂乃果もお茶出して」


穂乃果「あっお母さん、後で海未ちゃんも来るから」


穂乃果母「はいはい」


この部屋に来るのも、久しぶりね……


うーん、少し片付いたのか少し広く感じるわね、んっ? あれは……


真姫「μ'sの写真……ラブライブ優勝したときのやつね」


穂乃果「懐かしいよね、あれから12年だっけ? あっお茶どうぞ」


真姫「ありがとう、そうね気づいたらもう28よ」ズズッ


真姫「穂乃果は、結婚とかしないの?」


穂乃果「うーんとね、何度かお見合いとかはしたんだけど、なーんか違うっていうか……」


穂乃果「こうピンと、来る人いないんだよね」


穂乃果「あぁでも、にこちゃんは……」


海未「穂乃果っ!!」


真姫・穂乃果「ビクッ!」


穂乃果「あっ! 海未ちゃん、早かったね」


海未「真姫が来てるのですから、急いできました」


海未「真姫、久しぶりですね」


真姫「海未……久しぶりね、ところで穂乃果さっき……にこちゃんって……」


穂乃果「あぁ、あのねにこちゃんね……」


海未「穂乃果」ギロッ


穂乃果「あっと、えーとっ、何でもないよ」


真姫「嘘言いなさい、にこちゃんがどうしたの」


穂乃果「あぅ……えーとね……」チラッ


海未の方を見る穂乃果、彼女に一体何があったのよ。


海未「はぁ……全く穂乃果は……私が話します」


海未「真姫、今から私の言うことは、とてもショックを受けるかもしれません」


海未「それでも、よろしいですか」


真姫「構わないわ、話して頂戴」


海未「にこは……にこは結婚してます」


真姫「知ってるわ」


穂乃果・海未「えっ!!?」


真姫「いつの話よ、雑誌でもニュースでも言ってたじゃない」


真姫「6年前には、子供も生まれたって聞いたわよ」


真姫「全く、あんまり真剣な顔するものだからどうしたのかと思ったわよ」


海未「ショックでは無いのですか? 恋人だったんじゃないのですか!」


少し海未が声を荒げる。


真姫「だって、付き合ってたのはもう10年以上前で、しかも振ったのはあっちの方よ!」


真姫「今更、未練なんて無いわよ」


海未「そう……ですか……」


真姫「そうよ」


真姫「はいはい、この話は終わりにしましょう」


真姫「ところで、ことりはどうなったのかしら?」


穂乃果「ことりちゃんはね、今海外に居るよ」


真姫「海外!? デザインの会社じゃなかったの?」


穂乃果「うん、その後に海外の支社を任されたんだって、すごいよね」


真姫「えぇ……でも大丈夫なの? 彼女あまり自分一人でアレコレ決めるの苦手じゃ無かった?」


穂乃果「うん、なんでもすごく気の合うパートナーが居るらしくて、その人と一緒にやってるみたいだよ」


真姫「へぇ~ところで海外のどこに居るの?」


穂乃果「え~とっ確かね……あのっあそこだよ」


真姫「あそこって何処よ……」


海未「イギリスです、忘れないでください」


穂乃果「あはは、ごめんごめん……」


真姫「イギリスか……結構遠いわね」


穂乃果「うん、でも丁度明日帰ってくるって言ってたよ」


海未「なんでも、重大発表があるそうです」


真姫「ことりの重大発表って何でしょうね」


穂乃果「でも、悪いことではなさそうだよ、なんだかすごく上機嫌だったし」


海未「また、皆で集まれれば良いのですが、中々そうはいかないですね」


穂乃果「うん、みんな忙しそうだもんね」


それから、暫く思い出話に盛り上がった。


合宿時の話や、μ'sとしてメンバーが全員揃った時の話などとても語り尽くせないほどだった。


真姫「あら、もうこんな時間、私もう帰らないと」


気づいたら、もう5時を回ろうとしていた。


穂乃果「えっもう?」


真姫「えっもう? じゃないわよ」


海未「つい、話し込んでしまいました」


穂乃果「また、会える?」


真姫「そうね、この1周間は居るから会えると思うわ」


穂乃果「そっか……今度は、もっと色んな人に声を掛けてみるね」


真姫「いいわよ、皆暇じゃ無いだろうし、じゃあまた」


穂乃果「またねー」


海未「お気をつけて」


さて、急いで帰って出かける準備をしなきゃ。


真姫「お邪魔しました」





………………。


穂乃果「今の感じだと、真姫ちゃんあの事知らないみたいだね……」


海未「そうですね、子供が出来てからは、あまりテレビや雑誌に出なくなりましたし……」


穂乃果「やっぱり、教えた方がいいじゃない?」


海未「にこに言わないようにと、言われたのを忘れたのですか?」


穂乃果「うぅ、でも……」


海未「今は、まだ言うべきではありません」


穂乃果「じゃあ、何時言うの?」


海未「それは……真姫が自分の気持ちに気づいた時です」


穂乃果「そっか……よし! 今から皆に連絡してμ'sの同窓会をしよう!」


海未「また、あなたは突然ですね……でも良い機会ですからね、やりましょう!」


穂乃果「よーし、やるぞー!」


……………………


真姫「ただいまー」


真姫母「お帰り真姫ちゃん」


真姫「パパは?」


真姫母「うーん、まだ帰ってきてないわね、でももうすぐ帰ってくるでしょ」


真姫父「ただいま」


真姫母「あらっ丁度ね、お帰りなさい、あなた」


真姫「お帰りなさい、パパ」


真姫父「おぉ、真姫帰ってきたか」


真姫「うんただいま、パパ」


真姫父「どうだ、後期研修のほうは?」


真姫「うん、まぁまぁかな」


真姫父「そうか……まぁ、大変だろうが、お前なら大丈夫だ真姫!」


真姫母「あなた、急いで支度しないとお店予約したんでしょ?」


真姫父「おお、そうだった」


真姫母「真姫ちゃんも支度しなさい」


真姫「うん、ママ」


パパったら少し、老けたかしら? まぁもう、初老はいってるものね……


でも、そう考えるとママはすごいわね。


パパとそんなに歳は変わらないはずなのに……後でお肌のケアどうしてるのか聞こう……


真姫母「真姫ちゃ~ん、準備出来た?」


真姫「もうちょっと~」


その後、久しぶりに行くレストランで家族での食事を楽しんだ。


真姫父「どれくらい、こっちに居るんだ?」


真姫「1周間よ」


真姫父「そうか、どうだ久しぶりに帰ってきた感想は?」


真姫「意外と変わらないものね、まるで今までずっと居た感じかしら」


真姫父「そうか、まぁ実際大きく変わったとこは無いしな」


真姫「でも逆に、その方が安心するわ」


真姫父「ところで、研修が終わったらどうする予定だ?」


真姫「そうね、実は今の病院に、このままスタッフ医師に為らないかって言われてるのよね」


真姫「でも、家の病院も継ぐこと考えると……」


真姫父「真姫、お前が家を継ぐのはまだまだ先の話だ」


真姫父「今は、家の事など考えずに、お前のやりたいようにやれ」


真姫「パパ……ありがとう」


ヴーヴー


んっ? 穂乃果? どうしたのかしら ピッ


真姫「もしもし、穂乃果どうしたの?」


穂乃果「あっ! 真姫ちゃん明日空いてる?」


真姫「えぇ、空いてるけど……どうして?」


穂乃果「じゃあ、明日夕方の5時に家に来て」


真姫「突然ね……まぁいいわよ」


穂乃果「じゃあ、よろしくー」ツーツー


真姫「あっ、ちょっと」


もーいきなり何よ……夕方の5時か……何かしら? そういえば、ことりが帰ってくるからそのパーティーでもするのかしら?


多分、そんな所でしょ。


真姫父「高校時代の友達か?」


真姫「えぇ、そうよ」


真姫父「高校か……確かスクールアイドルをやってた時だな」


真姫「ちょっとパパ! 思い出さなくていいわよ」


真姫父「恥ずかしがる事は無いんじゃないか、大切な思い出だろう?」


真姫「思いっきり、反対したくせに……」


真姫父「あの時は、俺も頭が堅かったんだ、許してくれ」


真姫「ふ~んだ」


真姫父「大切にしろよ、心を許せるほどの人は、この先多分会えないぞ」


真姫「……うん」


こんなにパパと喋ったのは初めてじゃないかしら、普段余り喋らない人なのに……


やっぱり、久しぶりに会うと色々と話したくなるのかしらね。



次の日


真姫「ママ、今日は友達と食べるから夕飯はいらないから」


真姫母「わかったわ、真姫ちゃん」


真姫「じゃあ、いってきます」


真姫母「いってらっしゃい」


時刻は夕方4時、今から穂むらに向かえば余裕ね


全く、穂乃果ったら会った次の日に呼び出さなくてもいいじゃない


まぁ、ことりが帰ってくるから、そのパーティーなのでしょうけど


んー何か手土産でも買っていこうかしら、確かこの辺にチーズケーキの美味しいお店が在ったと思うけど、まだ有るかしら?


あっ! 在ったわ!


カランコロン


店員「いらっしゃいませー」


内装は少し変わったような……いや、変わってないか


さて、チーズケーキっと


真姫「すいません、このホールのチーズケーキ1つ下さい」


店員「はいかしこまりました、少々お待ち下さい」


時刻は4時半、ここから15分位で付くから余裕ね。


カランコロン


?「すいません、チーズケーキ1つ下さい」


店員「はいかしこまりました、少々お待ち下さい」


?「あっ、そっちの方じゃなくて、パーティーに使うやつで」


店員「ホールケーキの方ですか?」


?「あっ、それにゃ」


ん? 今『にゃ』って……


店員「申し訳ございません、ホールケーキの方が売り切れてしまいまして……」


?「これは、売れないんですか?」


店員「すみません、こちらはあちらのお客様がすでに購入されてまして……」


?「えぇ、何とかなりませんか? 今日、大切な友達が帰ってくるので、どうしてもここのチーズケーキをプレゼントしたいんです」


店員「そういわれましても……」チラッ


店員さんが困った表情でこちらを見る。


まぁ、穂乃果もチーズケーキ用意してる可能性もあるし、ここは譲ろうかしら……


代わりに、フルーツタルトでも買って行けばいいわよね。


真姫「いいですよ、そちらの方に譲っても」


?「本当ですか!? ありがとうございますって真姫ちゃん?」


真姫「えっ! って凛!?」


?2「凛ちゃん、どうしたの? ずいぶん遅いけど……」


真姫「花陽まで!」


花陽「えっ!真姫ちゃん!?」


凛「真姫ちゃん、久しぶり~何時帰ってきたの?」


真姫「昨日よ、そういえば伝えてなかったわね」


花陽「でも、こうやって会えたんだから良かった」


凛「真姫ちゃんも、穂乃果ちゃんに呼ばれたの?」


真姫「そんなところよ」


店員「あの~すみません、チーズケーキどうされますか?」


真姫・凛・花陽「あっ!」


………………


凛「いや~でも、こんなところで会うなんて」


真姫「私もびっくりしたわよ、でも考えることは一緒ね」


花陽「真姫ちゃんも、ことりちゃんにチーズケーキを買おうとしてたんだね」


真姫「えぇ、ことり好きだったものね」


最終的には、三人でチーズケーキとマカロンを買うことにした。


さすがにホールケーキ2つも買うと食べきれない可能性もあったし、マカロンなら帰ってからも食べられるって事でこのチョイスにした。


真姫「二人共、仕事は大丈夫だったの? 穂乃果ったら、いきなり呼び出したじゃない」


凛「あはは~実は、会社に無理言って休んだんだ~」


真姫「大丈夫なのそれ?」


凛「まぁ、一日くらいならなんとかなるよ」


真姫「花陽は?」


花陽「私は、実は一昨日から夏休みだったの」


真姫「あらそうなの?」


花陽「うん、だから丁度良かったんだ」


真姫「じゃあ、明日何処か出かける?」


花陽「いいよ、どこ行こうか?」


凛「あ~、二人共ずるいにゃ~凛も行きたい~」


真姫「明日、休み?」


凛「……仕事にゃ」


真姫「じゃあ、諦めなさい」


凛「う~、凛の休みは明後日から何だにゃ~」


真姫「じゃあ、その時に皆で遊べばいいでしょ」


花陽「そうだよ、凛ちゃん」


凛「うぅ〜、わかったよ」


真姫「さて、今何時かしらって! もう5時じゃない!」


凛・花陽「えっ!」


マズい、ケーキ屋さんで時間を潰し過ぎた。


真姫「凛、花陽急ぐわよ」


凛「あっ待ってよ、真姫ちゃん」


花陽「置いてかないで〜」


………………。


穂むら


真姫「御免ください」ハァハァ


穂乃果「あっ、真姫ちゃん遅かったね〜」


真姫「ごめんなさい、ちょっと寄り道をしてたら遅くなったわ」


凛「真姫ちゃん、凛ケーキ持ってるんだから走れないのに〜」ハァハァ


花陽「…………」ハァハァ


穂乃果「あっ! 凛ちゃんと花陽ちゃんも来た! 3人共一緒だったの?」


真姫「えぇ、そうよ。たまたま、同じケーキ屋さんで会ってね」


穂乃果「そうだったんだ、それより上がって上がって!」


真姫・凛・花陽「はーい」


?「一年生組が一番遅かったなぁ」


真姫「希!?」


希「後5分遅かったら、わしわしやったな」


凛「希ちゃん、ごめんにゃ…」


希「謝る相手は、うちじゃなくてことりちゃんやろ」


ことり「あはは、いいよ、いいよ、全然気にしてないから」


ことり「久しぶりだね、みんな」


真姫「久しぶりね、ことり。イギリスの支社任されてるんだっけ、すごいわね。あっこれお土産、3人で買ったの」


ことり「そんな事ないよ、一緒にやっている、パートナーが居なかったらことり1人じゃ何も出来ないもん」


ことり「あっ、チーズケーキとマカロンだぁ、ことり、ここのチーズケーキすごく食べたかったんだ。後で皆んなで食べよう」


花陽「これで全員?」


ことり「ううん、海未ちゃん達が飲み物を買い出しに行ってるよ」


花陽「私も何か手伝える?」


穂乃果「じぁあ、料理の盛りつけるの手伝ってくれる?」


花陽「うん、わかった」


凛「凛もやるよ」


真姫「じぁあ、私も」


穂乃果「あはは…流石にそんなに要らないかな」


穂乃果「うーんと、凛ちゃんと真姫ちゃんはお皿の準備をお願いしていいかな?」


凛「任せるにゃ〜」


真姫「わかったわ」


凛「真姫ちゃん大丈夫? お皿割ったりしない〜」ニヤニヤ


真姫「ば、馬鹿にしないでよね!、これでも1人暮ししてるんだから」


真姫「おまけに飲食店でバイトだってした事あるのよ」


花陽「真姫ちゃんがバイトってちょっと想像出来ない……」


凛「お母さん達、仕送りしてくれなかったの?」


真姫「して貰ったわよ、でも最低限の生活費だけにしてもらったわ」


真姫「流石に、自分の遊ぶお金ぐらい自分で稼がないとね」


穂乃果「じゃあ、このお皿とあとこっちの小皿もお願いね」


真姫・凛「はーい」


全く、皆んな私を馬鹿にして、いつまで経ってもお嬢様のまんまだと、思わないでほしいわ。


でも、結構この皿多いわね、何枚あるのかしら……1、2、3……8、9枚? えっ? 9枚ってまさか……


真姫「あっ」ツルッ


パリーン


やってしまった……あんな事言ったそばから……


真姫「ご、ごめんなさい、痛っ!」


凛「なっ! 大変、真姫ちゃんから血が出てる!」


ことり「えっ! ど、どうしよう」


希「う、うち絆創膏持って……」


?「落ち着きなさい、あんた達!!」


心がドクンと一気に心拍数が上がるのがわかる「彼女」声だ。


少し幼いが強く凛々しいその声は、あの頃と変わっていなかった。


真姫「にこ……ちゃん!」


にこ「ほら、ちょっと見せなさい」


にこ「そんなに深くは切ってないわね」


自ら取り出したハンカチで私の傷口を抑える彼女は、最後に会ったあの日から殆んど変わって無かった。


にこ「穂乃果、救急箱有る? 有ったら持って来てちょうだい」


穂乃果「うん、確か有ったと思うからちょっと待ってて」


にこ「凛は掃除機とガムテープを持って来て」


凛「わかった」


にこ「全く、医者が怪我したら世話ないわよ」


真姫「うるさい……」


穂乃果「救急箱あったよ」


にこ「ありがとう、あと凛と一緒に割れた皿の片付けをお願い」


穂乃果「オッケー!」


にこ「ほら、手当するから手を出しなさい」


真姫「いいわよ、自分でするから」


にこ「怪我人は、黙ってなさい」


そう言って彼女は、ささっと手当をしてくれた。


真姫「……手際良いわね」


にこ「まぁね……子供がよく怪我をするから」


真姫「そう……なんだ……」


凛・穂乃果「掃除機持ってきたよー」


にこ「じゃあ、掃除機でそこをかけて、で終わったらガムテープでペタペタして頂戴」


凛・穂乃果「は~い」


海未「ただいまもどりました」


?「あらっ、何かあったの?」


穂乃果「あっ、海未ちゃん、絵里ちゃんお帰り~」


絵里「ただいま、で一体どうしたの?」


にこ「真姫が割れた皿で指を切ったのよ」


絵里「あら、大丈夫なの?」


にこ「少し切っただけよ」


絵里「そう、良かった。 真姫、凛、花陽久しぶりね、元気にしてた?」


真姫「まぁね」


凛「凛も元気だよ、仕事はキツイけど……」


花陽「あはは……、絵里ちゃんは?」


絵里「うーん、まぁまぁかな?」


海未「これで、全員揃いましたか?」


穂乃果「そうだね、いや~何年ぶりかな、こうやって皆で集まったの」


希「全員揃ったのは、もう10年くらい経つんやない?」


絵里「そんなに、経つんだっけ?」


希「そうやね~、集まっても誰か一人二人来なかったからね、主ににこっちと真姫ちゃん」


にこ・真姫「うっ」


絵里「まぁまぁ、それより早く始めましょ、準備はどう?」


凛「バッチリ!」


絵里「じゃあ、始めましょう、皆席に付いて」


真姫「席って決まってるの?」


穂乃果「んーん、テキトーだよ」


真姫「じゃあ、ここで」


しまった、にこちゃんの隣に座っちゃった。


絵里「じゃあ、穂乃果乾杯の音頭をお願いね」


穂乃果「えぇ! 私!?」


絵里「だって、穂乃果が皆を集めたんでしょう?」


穂乃果「うー、えぇと今日はことりちゃんのお帰り会とμ'sの久しぶり会です」


穂乃果「いきなり、呼び出してごめんね、でも私ずーっと皆に会いたかったんだ」


穂乃果「だからその……上手く言えないけど、今日はホントにありがとう」


穂乃果「えーとっ、そんなわけで……乾杯!」


全員「乾杯!」


穂乃果「う~ん、やっぱりこういうの苦手」


ことり「でも、感謝の気持ちは伝わってきたよ」


にこ「でもことりのお帰り会は、ともかくμ'sの久しぶり会って何よ」


穂乃果「えへへ、良いネーミングが出てこなかった」


にこ「全く……」


穂乃果「じゃあ、にこちゃんが考えてよ」


にこ「えっ! うーんとμ's同窓会とか?」


穂乃果「あんまり変わんないじゃん」


にこ「あんたのよりマシよ」


わいわい、がやがや


久しぶりに集まったせいか、パーティー? はすごく盛り上がった。


まぁ、内容の半分は思い出話と仕事の愚痴だけど……


パーティーもそろそろお開きに近づいてきた。


希「ねぇ、皆は結婚せえへんの?」


にこ以外全員「えっ!」


にこ「……」


希「いやほら、うちらももうすぐ30やん」


希「結婚とか考えてるのかなーって」


凛「うーん、正直仕事が忙しくて彼氏作る余裕もないにゃ」


花陽「私は、何人かと付き合ったけどどれも頼りないっていうか、すぐに別れちゃうんだよね」


絵里「それわかるわー、なんて言うか、もっとリードしてくれる人がいいんだけど、中々そんな人いないのよね」


絵里「海未は?」


海未「わ、私ですか!? ……実は父や母に結婚を勧められてまして」


海未「今度、お見合いをする事になったのです……」


穂乃果「えっ! 何それ? 聞いてないよ!」


海未「穂乃果には関係無いじゃないですか!」


穂乃果「うっ……、そうだけどさ……一言くれてもいいじゃん」ボソッ


海未「何か、言いました?」


穂乃果「何でもない……希ちゃんは?」


希「えっ? あぁ、今付き合ってる人と結婚しようかなーって思うとる」


絵里「えっ!! 何それ希聞いてないわよ!!!」


希「あれっ? 言うとらんやったっけ?」


絵里「聞いてない!!!!」


希「そんな怒らんでも、心配せんでもちゃんと結婚式には呼ぶから」


絵里「知らない!!!!!」


希「まぁ、あくまで予定やから」ニヤリ


今、希の口元が歪んだような……気のせいかしら……


希「真姫ちゃんは?」


真姫「凛と同じで、そんな暇ないわね」


そういえば、先生とのデートの話忘れてたわ……後で連絡いれよう。


希「ふ~ん、にこっちはどうなん? 結婚生活」


にこ「……別に、普通よ」


希「なんや、普通って」


にこ「普通ったら普通よ、こ、ことりはどうなの?」


ことり「う~んとね、実はその事なんだけど」


ことり「私ね、今度結婚します」


全員「えぇ!!」


穂乃果「じゃあ、重大発表ってまさか……」


ことり「うん、この事」


絵里「相手は?」


ことり「イギリスで一緒に仕事している人」


海未「でも、あの方は確か女性では?」


ことり「うん……だから同性婚になるね」


絵里「ご両親は、知ってるの?」


ことり「うん、実は1年前に一度紹介もしてるんだ」


ことり「で、今回はその報告で来たんだ」


海未「そうだったんですか……ご両親はなんと?」


ことり「ことりの決めた人なら大丈夫だろうって喜んでくれたよ」


真姫「ん? 国籍はイギリスになるのかしら?」


ことり「ううん、結婚して永住ビザを取るから国籍は日本のままかな」


希「国際結婚の上に、同性婚とはやるな、ことりちゃん」


穂乃果「じゃあ、ことりちゃんの結婚を祝ってもう一度乾杯しよう!」


凛「それいいね!」


花陽「うん!」


穂乃果「じゃあ行くよ」


穂乃果「ことりちゃん、結婚おめでとう、乾杯!」


全員「乾杯!」


ことり「ありがとう!、皆!」


その後は、ことりとそのパートナーの話だった。(ほぼ惚気話だけど)


凛「あっもうこんな時間……明日仕事だから、凛そろそろ帰らないと……」


絵里「あら、ホント。私も帰らないきゃ」


穂乃果「じゃあ、お開きかな」


海未「そうですね、ことりもそろそろ帰らないと、相手の方が心配するでしょう」


穂乃果「じゃあ、皆また、いつか集まろうね!」


全員「うん!」


希「次は誰の結婚発表かな?」


にこ「あんたじゃないの? さっき言ってたでしょ」


希「おっと、そうやった」


にこ「……?」


花陽「あっ、穂乃果ちゃん片付け手伝うよ」


穂乃果「あぁ、大丈夫だよ、私と雪穂と海未ちゃんで片付けるから」


花陽「でも……」


穂乃果「大丈夫、そんなに散らかって無いし、それに元々私が呼び出したんだから」


穂乃果「今日はもう遅いし帰った、帰った」


花陽「うん……わかった、また遊びに来るね」


穂乃果「うん、いつでもおいでよ、ここで待ってるから」


絵里「じゃあね、皆」


希「またなー」


凛「かよちん、一緒に帰ろ」


花陽「うん、真姫ちゃんは?」


真姫「じゃあ……」


にこ「真姫ちゃん、この後付き合える?」


真姫「……ごめん花陽、二人で帰って」


花陽「……うん」


穂乃果「みんな、またねー!」


海未「穂乃果、こんな時間に大きい声をだすと迷惑です!」


穂乃果「ご、ごめん」


海未「全く、あなたって人は……」


穂乃果「……お見合いするんだ」


海未「……はい、今度は本格的に結婚まで持って行こうとするでしょう」


穂乃果「そっか……じゃあ片付けしよう! 海未ちゃん!」


海未「えぇ、そうしましょう」



………………。


バー


にこ「こうやって、二人きりになるのは何時以来?」


真姫「さぁ? そんな昔の事忘れたわ」


にこ「あっそ]


真姫「……」


にこ「……」


真姫「何か、注文する?」


にこ「……じゃあ、カルーアミルク」


真姫「すみません、カルーアミルクとジンバックを1つ」


店員「かしこまりました」


真姫「カルーアってにこちゃんらしいわ」


にこ「どういう意味よ!」


真姫「そのまんまの意味よ」


にこ「……ふん」


真姫「…………遅くなって大丈夫なの?」


にこ「ん? なんで?」


真姫「子供いるんでしょ、後旦那さんも心配するんじゃない?」


にこ「あぁ、子供はこころに預けてきたから問題ないわ、後旦那とは別れたわよ」


真姫「はっ? 別れ……た?」


にこ「えぇ、もう半年経つわ」


真姫「なんで!? どうして!!」


にこ「ちょっと、真姫! 大声出さないで!」


真姫「あっ、ご、ごめん……」


店員「おまたせしました、カルーアミルクとジンバックです」


真姫「…………」


にこ「…………乾杯でもする?」


真姫「どうして、別れたのよ」


にこ「…………はぁ」


真姫「ねぇ、どうしてよ!」


真姫「優しそうな人だったじゃない、あれは表面だけだったの?」


にこ「いえ、いい人だったわよ、すごく優しくて私のことすごく大切にしてくれた」


真姫「じゃあ……なんで? 私やっとにこちゃんのこと諦められると思ったのに」


真姫「やっと、自分の中の気持ちにケジメをつけられると思ったのに……」


自分でも気づかず泣いていた、何に泣いているかもわからずに……


にこ「ママがね……死んだの……」


真姫「えっ……」


にこ「ちょうど、去年の今頃ね」


真姫「そうだったの……知らなかった」


にこちゃんのママは、三人の子を女の手一つで育て上げた人。


あまり会う、機会もなかったけど女性として尊敬出来る人だった。


にこ「教えないようにって言ったもの、あの子達に」


真姫「私だけ……?」


にこ「あの時の私を、あなたには見られたくなかったから」


にこ「まぁ、それはいいわ」


にこ「葬儀が終わった後からね、結婚生活に疑問を感じるようになったの」


にこ「なんで、この人と一緒に居るんだろう、なんでこの人が隣にいるんだろう?って」


にこ「でね、気づいたのよ。私、ママに結婚した姿を見せたかっただけなんだって……」


真姫「…………」


にこ「旦那が居て、子供が居て、そんな幸せな家庭をママに見せて、安心させたかったんだって……」


真姫「…………」


にこ「私、最低よね……あなたを捨てて、旦那も捨てて」


にこ「そして、またあなたを呼び止めて、もう一度あなたに近づこうとしてる……」


両目に大粒の涙を抱え震える彼女は、初めて見た


真姫「…………」


にこ「ごめんね……もう、目の前に現れないでって言われたのに、現れたりして……」


にこ「帰るわね、ごめんなさいお金置いて行くわ」


真姫「待って!」


逃げるように、去ろうとする彼女の腕を掴んだ。


もう逃すものか……私の中で封じ込めた何かが爆発する。


にこ「きゃっ!」


その過弱い手を引き戻し、半ば強引に抱きしめ、理性もなくただ感情の昂ぶりを彼女にぶつける。


真姫「あなたは本当に最低な女よ!」


真姫「女同士じゃ、結婚出来ないとか、子供が出来ないとか」


真姫「そんな理由で勝手に振っといて、結婚して子供が出来たら旦那を捨てて」


真姫「そのくせ、また私に近づいて……ふざけんじゃ無いわよ!!」


にこ「…………うっ……うっ……」


真姫「でも……でもそれでも! そんなに最低なあなたでも私にとっては、これ以上にない最高の女なのよ!」


真姫「もう絶対に、逃さないんだから……」


にこ「ん! ……んんぅ……」


そして彼女の唇を強引に奪った、カルーアの甘さが口いっぱいに広がるのを感じながら……




………………。




痛た……、頭がガンガンする。


あと、なんかスースーするわね。


まるで、何も着てないみたいに……


ハッ!!


ここ何処よ!? 昨日にこちゃんとバーで飲んでてそれから……


ヤバイ、全然記憶ない……どんだけ飲んだのよ私……


と、とりあえず状況を確認しなきゃ……


ガチャ!


扉が開く、だ、誰?


にこ「あら、起きたの?」


真姫「にこちゃん……」


彼女の顔を見て少し安心する。


ここは彼女の家かしら?


にこ「あれだけ、ヤったからもう少し寝てるかと思ったのに」


真姫「えっ? やったって何を?」


にこ「はっ? あれだけヤって覚えてないの?」


真姫「………………」


にこ「うそ~、信じられな~い」


にこ「はぁ……とりあえず、下着くらい着けたら?」


真姫「……っ!」


彼女の言われて自分が裸なのに気づく。


えっ……裸ってことは……まさかヤったって……


言葉の意味に気づくと同時に、昨日の記憶が少しづつ蘇ってくる。


一気に顔が熱くなるのが自分でもわかる。


にこ「その感じだと、思い出したみたいね」


にこ「全く、いきなりキスされるなんて思ってなかったわ」


にこ「店に居た全員に見られてたわよ、メチャクチャ恥ずかしかったんだから」


真姫「もう、やめて!!」


火傷しそうなくらい、熱くなった顔を抑えながら叫ぶ。


にこ「何がもうやめてよ、こっちがやめてって言っても、やめてくれなかったじゃない」


真姫「あーあーあー聞ーこーえーなーいー」


にこ「なに子供みたいなことしてんのよ、お陰で朝、腰が砕けて動けなかったんだから」


真姫「ごめん、酔ってたのよ……」


にこ「ふ~ん、じゃああのキスと告白とエッチも、ぜ~んぶ酔ってたからなんだ~」


真姫「違う!!」


真姫「キスも告白もエ、エッチだって、全部本心よ! 私が望んだことよ!」


真姫「ただ……酔ってて、ちょっと理性が飛んだだけで」


にこ「ちょっとどころじゃ、無かったけどね……でも、嬉しかった。キスも告白もエッチも」


にこ「これは、にこの夢で目が覚めたら、隣に誰も居ないんじゃないかって思うくらいに……」


にこちゃんったら、一人称が昔に戻ってるわね。


でも、なんだかあの時に戻ったみたいでいいわね。


あの奇跡の一年間に……



にこ「真姫ちゃん……ん……」


真姫「にこちゃん……ん……」


にこ「……このまましちゃおうか」


真姫「うん……」


そして、もう一度お互いの唇を重ねる、彼女の体温を腕の中で感じながらブラのホックを外す……


息継ぎのため、名残惜し見ながら顔を離す。


頬を紅潮させながら、か弱く息継ぎをする彼女。


真姫(あっヤバイ、止められない)


にこ「真姫ちゃん……? て、うわっ!」


彼女をベットに押し倒し、今度は覆いかぶさるようにキスをする。


そのまま、彼女の胸に手を伸ばす。


にこ「ん……んん!……」


服の上からでは、あまり目立たなかったけど、思ってたより胸あるのね……子供が生まれたからかしら?


にこ「ぷぁ……ハァ……ハァ……真姫ちゃん……胸ばかりじゃなくて……下も触って……」


真姫「にこちゃん……ハァ……ハァ……」


ピンポ~ン


にこ「あれっ……誰か……来た?」


真姫「ほっときなさいよ」


いいとこなんだから邪魔しないでよ。


ガチャガチャ、ガチャン!


にこ・真姫「!!」


?「ママ~、ただいま~」


?「あっ! 舞ちゃん、走ったら危ないよ!」


にこ「マズイ、子供が帰ってきた!」


真姫「えぇ!」


にこ「とりあえず、そこの部屋に入って! はい! 服!」


舞「ママ、ただいま~」


にこ「お帰り、舞、良い子にしてた?」


舞「「うん! まい、いいこにしてたよ!」


にこ「えらい、えらい」


舞「えへへ~」


にこ「こころ、ありがとう」


こころ「どう致しまして、どうでした? 久しぶりに皆さんと会って」


にこ「行って正解だったわ、あの頃に置き忘れたものも拾うことが出来たし」


こころ「?……あぁ、真姫さんのことですか……」


にこ「何で……わかるのよ」


こころ「それは、お姉様の妹ですもの」


こころ「ところで、その荷物は? お姉さまのではありませんよね?」


にこ「えっ?」


にこ「えっと……それは……」


こころ「?」


スーッ


にこ「あっ、舞、駄目そっちの部屋は……」


舞「おばちゃんだれ?」


真姫「お、おば……」


にこ「あちゃ~」


こころ「真姫さん!?」


真姫「ひ、久しぶりね、こころちゃん」


こころ「お姉様、少し説明していただけませんか?」にっこり


にこ「こ、こころ笑顔が、こ、怖いわ。ほら、にっこにっこにー」


こころ「いいから、こっちに来てくだい!」


にこ「い~や~、真姫ちゃん助けて~」


そして、にこちゃんとこころちゃんは奥の部屋に行ってしまった。


にこちゃんごめん、あのこころちゃんには勝てる気しないわ……


真姫「…………」


舞「…………」


どうしよう、気まずい。


確か、舞ちゃんって言ったかしら……


とりあえず、自己紹介した方がいいのかしら……


真姫「あの……」


舞「おばちゃんがまきちゃんって人?」


真姫「えっ! えぇそうよ。あと、おばちゃんじゃなくてお姉さんね」


舞「まきおねえさん?」


真姫「そうよ、真姫お姉さんよ」


舞「わたしはね、まいっていうの!」


真姫「舞ちゃんね」


舞「うんっ!」


真姫「……舞ちゃんは私が怖くないの?」


舞「どうして?」


真姫「だって……いきなり、知らない人がお家に居たら怖くない?」


舞「ん~、だってママのこいびと、なんでしょ?」


真姫「!? だ、誰がそんなこと言ったの!」


舞「ママだよ! まきちゃんってひとはママのこいびとだったって言ってたよ」


真姫「そ、そう」


舞「ちがうの?」


“だった”てことは昔の話でもしたのかしら。


だとしたら……ふふふっ、子供に嘘教えるのは……良くないわよね?


真姫「ちがうわ、舞ちゃん」


真姫「“恋人だった”じゃなくて、恋人よ」


にこ「ぬわぁ~、真姫ちゃん子供に何言ってんのよ!」


にこちゃんが奥の部屋から飛び出してきた。


真姫「あらっ、本当のことを教えただけよ」


舞「ねぇ、どういういみ?」


にこ「舞は、知らなくていいの!」


真姫「舞ちゃんには教えてあげないなんて、可哀想じゃない」


にこ「う~なんて言えばいいのよ」


真姫「簡単じゃない、恋人の真姫って説明すれば」


にこ「できるか!」


真姫「どうして?」


にこ「どうしてってそれは……」


真姫「まだ、私を恋人に認めないつもり?」


にこ「そ、そういうわけじゃ……」


ヤバイ、ゾクゾクする、私って結構サドっ気あるのかしら。


真姫「じゃあどういうわけ?」


にこ「だから……」


こころ「二人共!、子供の目の前でなにしてるんですか!!」


このあと、みっちりこころちゃんに怒られました……正座で……


こころちゃんって結構怖いわね……


ところでにこちゃん今までどうやって、暮らしてたのかしら?


別れて半年経つって言ってたけど、貯金だけで生きていくには限界が在るでしょうし……だったら……


真姫「ねぇ、にこちゃん」


にこ「ん、何?」


真姫「もしよ、もし、にこちゃんが生活が苦しいんだったら……一緒に住まない?」


にこ「んー、別に生活は困ってないのよね、仕事もしてるし」


真姫「そ、そうなんだ……」


そうよね、にこちゃんその辺しっかりしてるものね……


にこ「まぁ、でも真姫ちゃんが、どうしてもって言うなら一緒に住んでも良いかなぁ」


真姫「なっ! ふざけ……そうよ、どうしても一緒に住みたい」


にこ「や、やけに素直じゃない」


真姫「言ったでしょ、もう絶対に逃さないって」


にこ「……っ! 何言ってのよバカ……」


こころ「………………」


舞「?]


何か、こころちゃんの視線がすごく痛い……そして、舞ちゃんかわいい♡


にこ「そうと決まったら、引っ越しするわよ」


真姫・こころ「はっ?」


にこ「だって、一緒に住むんだったら引っ越さないとでしょ?」


真姫「まぁ……そうだけど、そんなに急がなくたって」


こころ「そうですよお姉様、そんなに急がなくてもよろしいのでは?」


にこ「何言ってんのよ、善は急げって言うでしょ」


にこ「それに真姫ちゃんのことだし、結構広い部屋に一人暮らしじゃないの?」


真姫「……何で知ってるのよ」


にこ「だって真姫ちゃんだし」


真姫「何よそれ!」


舞「ふふふ~ママ楽しそう!」


にこ「舞……ねぇ舞、ママね真姫ちゃんと一緒に暮らそうかなって思うんだけど、どうかな?」


舞「いいよ!」


にこ「ありがとう……舞……」


舞「だって、真姫姉ちゃんと居るほうがママ、ニコニコしてるもん」


にこ「!!」


にこ「……舞は本当にいい子ね」


舞「えへへ」


こころ「えー、おほん」


こころ「少し真面目な話なのですが……引っ越しは来年の方が良いのでは」


にこ「どうして?」


こころ「舞ちゃんのことを考えると、小学校に入るタイミングで引っ越したほうが、いいんじゃないかなと」


にこ「そうねぇ、そう言われるとそうかも」


こころ「やはり、ちゃんと準備した上で引っ越しは行うべきです」


にこ「んー、真姫ちゃんはどう思う?」


真姫「そうね、私もいきなりは厳しいわね」


にこ「そう、じゃあ来年にしましょ」


にこ「真姫ちゃんの住んでる場所、近くに小学校とかある?」


真姫「えーとっ、どうだったかしら……在ったような、無かったような」


こころ「まぁ、そういうのも含めて、これから準備していきましょう。」


にこ「そうね……これから忙しくなるわね」


真姫「そうね、にこちゃん」


にこ「真姫ちゃん……これから、よろしくね」


真姫「こちらこそ、よろしく」


END






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3件コメントされています

1: マナ 2015-01-09 12:46:48 ID: NGA-9Ywd

続きがあるといいな

2: SS好きの名無しさん 2015-01-09 22:00:41 ID: eyv0S5E9

わかります

3: SS好きの名無しさん 2015-01-10 20:04:30 ID: ZddeqeSN


希の意味深な「まぁ、あくまで予定やから」ニヤリ
とは結局なんだったんだ(笑)


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