球磨型の日常
球磨型のちょっとした日常。
これは球磨型五姉妹の日常を淡々と書いたものです、過度な期待はしないで下さい。
自由でありたい。
だが、自由にする権利を得てしまうと
それはめんどくさがり屋の私には負担になる
であるならば結局、自由を求めている"今"が
1番いいのかもしれない。
昔から私はそうだった。
結果を求めるくせに結果を得てしまうと
それにはなんの興味も湧かなくなる。
これは、星の数ほどある艦娘達の物語のほんの一部。
けれども確かにそこにあった、生きた証である。
朝ごはんを食べに食堂に行く途中―。
「待ちな。」
通路を防ぐ黄色の影。
とても綺麗な前髪。
私と北上さんの通行を阻むのは軽巡『阿武隈』。
曰く、「私と阿武隈が仲良く?ないない!1+1が
3になるくらいありえないって」
曰く、「北上さんと私が仲良くですか?絶対無理ですっ」
とにかくこの2人は仲がよろしくない。
ってか、待ちなってあんただれよ。
「ここであったが100年目ぇぇっ!!」
「売られた喧嘩は買わなきゃね!」
朝から2人を怪我させるわけにもいかないし、
私しか止める人はいないし。
ゴンッと鈍い音が二回響く。
「さぁ、行きますよ!」
私はふたりを引きずって食堂まで連れていく。
2人には仲良くして欲しい。
(意地を張ってるだけだと思うんだけどなぁ。)
「私が先に日替わり定食にしようとしたんだけど」
「はぁ?私は起きた時から今日は日替わりの気分でしたー!!」
「な!?だったら私は昨日から!」
「だ、だったら私は…っ!!」
「はい、そこまで。」
「ここは食事の場ですよ、2人とも。」
気がつけばまたあの2人は喧嘩してる。
って、あー鳳翔さんおこだし。
「まだ喧嘩するつもりなら私がお相手しますが?」
「すみません、鳳翔さん私から注意しておきますので。」
「すみませんでした。」二人も頭を下げる。
「で、結局注文は何にするんですか?」
「3人とも日替わり定食でおねがいします」
かしこまりましたと言って鳳翔さんは厨房に入っていく。
ここの食堂は間宮さんと鳳翔さんが切り盛りしている。
そして、夜になると鳳翔さんが趣味でやっている
居酒屋へと変わり、飲んだくれの集会となる。
私達は適当に空いている席を見つけて座った。
「…悪かったよ」
「え?」
「だから、悪かったって、ごめん。」
「あ、いや…私こそ意地張ってごめんなさい。」
2人が仲直りするなんて珍しい。
「いや、私が謝ってんだから謝らなくていいって」
「いやいや、北上さんこそ謝らなくていいですよ」
「何をー!」
「何さー!」
雨降って地固まらず、ね。
ため息をつきながらも
これはこれでいいのかもしれないと思った。
北上さんがこうやって感情を出すことができる
友達ができたというのはとてもいい事だし。
なんだかんだいい関係なのかもしれない。
……前言撤回。鳳翔さんが弓持ってこっち来てる。
「あなた達、いいかげんにしなさい!!」
ーーーーーー
「疲れた…。」
今日は本当ならオフで1日ゆっくりと部屋で
ゴロゴロするつもりだったが、
北上さんと阿武隈が喧嘩なんかするから
一日中演習だった。それも鳳翔さんと
あの人、前線を退いた癖になんであんな強いのよ。
布団に横になってウトウトしかけていると
トントンのドアを叩く音がした。
ドアを開くと北上さんと阿武隈が立っていた。
手には包のようなもの。
「大井っちー!演習付き合ってくれてありがとねっ!」
「大井さん、これ羊羹です!」
あぁ。この人達は本当に―。
「うっ、ひっく……」
嬉しくて、涙が止まらなかった。
そうだ、この2人は喧嘩ばっかりするけど
こうやって、時々
不意打ちのように息を合わせてくるのだ。
思わず2人を抱きしめた
「大井っちー苦しいよう~」
それから3人で羊羹を食べた。
その時、結局また喧嘩を始めたのは別の話。
「球磨型会議を始めるクマ」
会議はこういう球磨姉さんの思いつきで始まった。
球磨姉さんと多磨姉さんと俺の部屋に
北上姉さんと大井姉さんが来てる。
せまい。かなりせまい。
「で、議題はなんですか?」
「今回の議題はこれだクマ!」
ご丁寧にボードまで用意して出した議題は―。
『球磨が長女だということを皆忘れている件』
「あぁ…」
「あー」
「にゃあ」
「はあ」
それぞれ多様なリアクションをしているが
思っていることはおそらく
「やっぱりか」と言った具合である。
「そのリアクションはなんだクマ!!」
「姉ちゃんはもっとお前らに甘えて欲しいクマ!」
うがーと爪を立てるがそんなに怖くない。
「大井っちのほうが包容力があるってだけで
球磨姉をないがしろにしてる訳じゃないよ?」
「クマァ!」
「痛てぇ!?」
突然殴ってきたんだけど、この人。
やっぱ怖いわ。
「大体、大井がおかしいクマ!」
「私ですか?!」
「もっとレズレズしろクマ!クレイジーサイコレズはどこいったクマ」
無茶言うなよ。まぁ、球磨姉さんとしても思うとこがあったんだろ
姉としてのプライドというか威厳というかそういうことかねぇ。
難儀なもので。
「れ、レズって…。わ、私が、き、北上さんとっ」
大井姉さんほんとピュアだなぁ。
明日もあるし、早く寝たいんだが
あ、多磨姉さん寝てるし。
「じゃあ、怖い話対決するー?一番怖かった人が勝ちってことで」
話の論点変わっちゃってんじゃん
姉がどうとかそういうのはどうなったの?
「じゃあ、私からだよ~」
そうやって怖い話大会が始まり、
お開きとなったのは日付が変わった頃となってしまった。
勝者は多磨姉さんだった。
感情の無い声で話すから余計に怖い。
「なんか忘れてないクマ?」
思い出されるのもめんどくさいので
「そうか?もう寝ようぜ姉さん」と言うと
明かりを消しすぐ寝た。
その夜。
こっそりとドアを開ける音がして誰かが入ってきた。
俺は夢と現実の間でうとうとしながら
ただ耳をすませる。
そいつは球磨姉さんの方へ行き、小さな声で
「姉さん、姉さん」と身体を揺すった。
「んーっ…んー、大井かクマ」
「あの…おトイレついて来てもらえませんか?」
「しょうがないクマ……」
そこで俺は完全に睡魔に負けた。
朝。
昨日の夜のことを
球磨姉さんや大井姉さんに聞いても
知らないそうだ。やっぱり夢だったのだろうか。
そうだろうな、あの大井姉さんがホラー苦手だなんて…
馬鹿な事考えてないで演習行こ。
「球磨姉さん、昨日はありがとうございます」
「さぁ、球磨には何のことだかさっぱりクマ」
「ふふっ、そうですか。」
「そんなことよりも、今日の出撃頑張るクマー」
「……やっぱり、姉さんには勝てませんね」
中野唯です。
こちらの不手際でアカウントが消滅致しました。
なので、新しく作り直しました
御手数ですが、今後は新しい方で活動していきます。