2018-08-18 20:44:15 更新

概要

とある辛い、辛い秘密を抱えた提督と、
艦娘達のお話(ざっくり)。

前書きは呼んでくださいね。

3000pv超え、本当に感謝です!

少し野暮ではありますが、
後書きに若干の解説を加えました。


前書き

どうもです。
駄文の申し子、黄鼬狐でございます。
2作品目となります。

前回同様、自分の好みにより、
視点がコロコロ変わる上、
視点切り替え案内はありません。
この作風は、変えるつもりはありません。
はっきり言って、非常に読みづらいですし、
混乱を招くような作風となっていますので、
苦手な方は、お引き取り頂いて構いませんよ?
ご容赦いただけると幸いです。
(通常文は1行間隔
台詞、効果音、場面転換、時間経過、
の前後では2行間隔
視点切り替え時には4行間隔に変更しました。)

さらには、今回は回想シーンが多く入ります。
(〜、=、ーの順に回想が強くなります。)

また、設定は本家艦これの設定と一部準拠していない部分がございます。ご了承ください。

ご理解頂けたのでしたら、どうぞ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



目を覚ました時に、


目に入って来たのは、火...、火...、火...。


僕の住んでた家が崩れて真っ赤に燃えて、


その下で、お父さんとお母さんが........。


それを見た僕は、我を忘れて大粒の涙を


流しながら、只々火の中を必死に走っていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ある日、僕たち家族が、


一家団欒をしていると、


いきなり外で大きな音がした。


付けていたテレビから


大きなサイレンが鳴った。


見ていたアニメの画面が変わって、


ニュースの大人の人たちが、


忙しそうにしている映像が映った。


その人の言っていることは


よくわからなかったけど、


それを聞いていたお父さんが大急ぎで


荷物をまとめ始めたから、


何かあったのだろうと思った。


僕がお母さんに聞くと、


"怖い生き物"が海からやって来て、


日本を襲っているのだと教えてくれた。


すぐに、お父さんが部屋に戻って来て、



お父さん「準備ができたから逃げるぞ!」



と言ったので、


僕たちは家の外へと出ようとした。


玄関に着いた直後、


家の扉の前で爆発が起こって、


視界が暗くなった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



走りながら、僕は必死にある人を探していた。



僕「......暑いよ。...ねえ?

......どこ?.........どこにいるの?

......お姉ちゃん...?」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



目を覚ました俺は、体を起こして


軽く伸びをする。


時計を見ると、6:00を指している。


ベットから立ち上がって、洗面台へ向かい、


冷たい水で顔を洗う。


カレンダーを見ると、


日付は11月9日になっている。


着替えを早急に済ませ、俺は自宅を出発した。



.........................................

呉鎮守府・正門



今日から俺は、呉の鎮守府の提督に就任する。


いろんな試験云々を通過して、


ようやくなることができた。


俺は、新しい生活への門を開けて、


鎮守府内へと入っていった。



.........................................

呉鎮守府・執務室



さて、何から始めるのがいいだろうか。


身の回りのものも片付けて、


大本営から届いた書類の整理は済ませた。


じゃあ、次はやはり建造だろうか。


そういえば、大本営から


初期艦が送られてくるはずだったよな。


もうそろそろだろうか。



コンコン



おっと、噂をすれば、来たみたいだ。



俺「どうぞ。入ってくれ。」



ガチャ



???「失礼します。こちら憲兵です。」



俺「.......え?」



.....憲兵が初期艦?


.....絶対に嫌だ。


むさ苦しいから取り替えてくれ。


《艦娘》だよ?《娘》だよ?


《男》じゃ無いんだよ?


仮にそうでないならば、


俺は何かやらかしたのだろうか?


知らない間に、


何か事件でも起こしたのだろうか?



俺「......何かあったのか?

まさか、着任早々提督業解雇、

とかではないよな?」



憲兵「そんなわけないじゃ無いですか。

郵便受けに、このような書類が速達で

届いていたので、渡しに来ただけですよ。

では失礼します。」



なんだ、そんなことか。


ああ、よかった。びっくりしたよ。ほんと。



俺「ああ、ありがとう。」



俺はホッと胸をなでおろした。



憲兵「失礼しました。」ガチャ



俺は受け取った書類を読み始めた。



『前略、呉鎮守府提督殿

大本営から貴方へと送られる予定だった

初期艦の件において、大本営の艦の不足、

及び不手際により、見送りとする。

つきましては、初期搬入資材の

通常数倍の搬入により、

建造で戦力補強を行うよう。

大本営 元帥書』



......What?



......つまり、俺に初期艦は無いってことか?



大丈夫なのかな?大本営さん?


まぁ、どっちにしても、


艦が居てくれないことには


どうしようもないか...。



俺「仕方ない、とりあえず工廠へ行こう。」



..........................................

呉鎮守府・工廠



俺「来たのはいいが、

どうすりゃいいんだろ......。

こっちのやり方は知らなかったからな....。」



???「アレ、提督サン、ドウシタノ?」



何処かで聞き覚えのある声がしたような...。


振り向くと、そこには小人のような


生き物が浮かんでいた。



俺「え、えーと。

確認だけど...、君たちが妖精さん?」



妖精「ソウダヨー。ハジメマシテー。」



この子たちは《妖精》と言われている。


建造や入渠など、鎮守府運営において、


居なくてはならない存在である。


一般人ならともかく、


提督を勤めている者でさえ、


見えない者も多いと言う。


しかし、妖精と認知こそしていなかったが、


その存在を見ることができたというのが、


俺が提督になることを勧められた


理由の一つでもあった。


....まあ、その原因はわかっているんだけど...。



妖精「ソレデ、何スルノ?建造?」



彼女に声をかけられて、我に帰った。



俺「あ、ああ。そうだよ。」



妖精「資材ノ量ハ、ドウスル?」



俺「ごめん。俺、着任したてで、

配分とかはよくわからないから、

今回は君たちに任せるよ。

資源はたくさんもらったから、

好きに使って。」



妖精「ワカッタヨー。

ソレジャ始メルネー。」



建造時間 05:00:00



俺「この時間って、うろ覚えだが、

確か戦艦だったよな。

いきなりでかいのが来たみたいだな...。」



妖精「ソウミタイダネー。

修了シタラ呼ブカラ、好キニシテテー。」



俺「分かった。そうさせて貰うよ。」



.......................................

呉鎮守府近辺・高台



俺は妖精さんの言葉に甘えて、


鎮守府から少しだけ歩いたところにある、


海を見渡せる高台の崖に来ていた。


青い海の方から、潮風が吹き付けている。


ふと、昔のことが思い浮かんで来た...。



俺「......懐かしいな。あの時も、ここで....。」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



火の海を彷徨っていると、突然手を引かれた。



⁇?「どこにいたの?!早く逃げるよ!」



僕「お姉ちゃん!

お父さんと、お母さんが!」



お姉ちゃん「わかってる。

でももうだめなの....。

二人とも、私が目を覚ました時にはもう......。

だから、私たちだけでも生き延びるのよ!」



僕「そんな、そんな!嫌だよ!嫌だよ!

それに逃げるってどこに逃げるの!?」



お姉ちゃん「どこって...、わからないけど、

とりあえずここから離れるのよ!」



そう言って、お姉ちゃんはまだ心が


整理できない僕を引っ張って、


海沿いの崖の上の高台へと連れて行った。



........................................



お姉ちゃん「ハァ、ハァ、ここまでくれば...。」



幸い、そこには火の手が回っていなかった。


そして、そこへ逃げる最中で


僕もお父さんとお母さんを助けることは


無理だったのだと子どもなりに


理解をつけていた。


僕「ハァ、ハァ、お姉ちゃん。

僕もう疲れたよ。

ねえ、お姉ちゃん....。

もうわかったよ....。お父さんとお母さんは

本当に助けられなかったんだね....。」



お姉ちゃん「そうね...。でも大丈夫よ。

必ず、必ずすぐにここにも助けが来るから

それまで、頑張って。

私が父さんや母さんの

代わりにあんたの面倒見るから。

大丈夫だから。ここにいれば大丈夫だから。」ダキッ



お姉ちゃんはそう言って僕を励ましてくれた。


その時......、



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



⁇?「......サン?テートクサン?」



俺「.........。」



妖精「提督サン!!!!」グイッ



突然何者かに耳を引っ張られた。



俺「いででで!耳引っ張んないで!

何するのさ妖精さん?!」



妖精「イクラ呼ンデモ、

返事シテクレナイカラダヨ!

何、提督サンソノ歳デ、難聴ナノ?」



俺「そんなことないんだけどなぁ?

いつから呼んでた?」



妖精「結構前ダヨ。

ナンカブツブツ言ッテタネ。」



俺「あー...、ごめん。

ちょっと考え事しててね。」



妖精「フーン。マァ、イイヤ。

モウ建造ガ終ワッタカラ、工廠二来テネ。」



俺「ああ。分かった。

ありがとう。すぐ行くよ。」



.......................................

呉鎮守府・工廠


俺が工廠に着くと、そこにはかの有名な


ある戦艦の魂を宿した艦娘が立っていた。



俺「.........マジで?」



妖精「MAJIデ。」



⁇?「長門型戦艦一番艦の長門だ。

敵戦艦との殴り合いなら任せておけ。」



俺「マジで...あの長門が来てくれたのか?」



長門「なんだ?何か不満でもあるのか?」



俺「いやいやいや、

不満だなんてとんでもない!

寧ろ、俺みたいな新米のもとにビッグ7と

呼ばれた艦娘を置いていておくことが

恐れ多いくらいなんだが..。」



長門「何を言ってるんだ。

私たち、艦娘と呼ばれている存在

については先程妖精達から聞いた。

そして、こうして貴方に呼ばれたのも

何かの縁なのだ。

存分に武を振るわせてもらおう。」



俺「ほんと、有難過ぎる言葉だな...。

分かった。これからよろしくな、長門。」



長門「ああ、こちらこそよろしく頼むぞ、

提督。」



こうして俺たちは握手を交わして、


これからの戦いを向けて互いの意思を


確かめ合った。





私が最後に見たのは、


物凄い強い光線と大きな火の玉だった。


海が激しく荒れて、周りに浮かんでいた艦が


次々と沈んでいく光景が焼き付いている。


そんな中で、私は生き残った。


耐え抜いた。.....はずだったのだがな...。


......................................


....目を覚ますと、そこは海の底ではなく、


懐かしくも、目新しい光景が映った。


私が初めて艦としてできた時の


光景ではあったが、今回は少し違った。


私は、人の体を有していた。


....なんの因果なのか、


私は《艦》から《人》となったようだ。


当然、そんなこと


すぐに受け入れられるはずもなく、


ひどく当惑していると、


どこからともなく小さな人型の生き物が


飛んできた。



???「君ガ戦艦長門ダネ。

コレカラお世話ニナルヨ。」



長門「なんだ?お前たちは?」



⁇?「アァ、ソウダネ。

ミンナカラハ妖精ッテ呼バレテルネ。」



長門「妖精だと?

そんなものが実際にいるのか?」



妖精「......ソノ辺を突ッ込ムト

キリガ無イカラナー...。

マア、実際ニ私達ハコウシテ居ルワケダシネ。

事実ガ目ノ前ニ有ルンダカラサ。

ハイ、コノ話ハオシマイ。」



長門「あ、あぁ。

じゃあそういうことにしておくよ。」



なんだかいいように言いくるめられた


ような気がしないでも無いが...


まあいいだろう。


それから、


その妖精達から私達《艦娘》という


存在について聞かされた。


十数年前に突如として現れ、


各国へ攻撃を始めた《深海棲艦》という、


謎の生命体群に対抗するために


生まれたのが、世界大戦時代の軍艦の


魂を有した私達《艦娘》という


存在なのだという。


《艦娘》は各地鎮守府に配属され、


そこの指揮の下、艦隊を組んで、


戦いに赴くこととなるらしい。


また、《艦娘》は基本的に人と異なるような


点は無く、同じようにものを考えたり、


感情を持ったりすることができるそうだ。



長門(これは、

軍艦だった時にはできなかったことだな...)



そう少し期待で胸が膨らむような気がした。



妖精「ソレジャ、提督サンヲ呼ンデ来ルカラ、

チョット待ッテテネー。」



そう言うと、


彼女らはどこかへ飛び去って行った。



長門(提督か...、どんな者なんだろうか。)



期待とともに、少し不安も覚えた。



.....................................



しばらくすると、


妖精達が一人の男を連れてやって来た。


彼がおそらく此処の提督なのだろう...。



提督「これからよろしくな、長門。」



そう言う彼に私も応えた。



私「こちらこそよろしく頼むぞ、提督。」



私たちは、お互いの意思を確かめ合って、


握手を交わし、


これからの戦いに向けて誓い合った。


....だが、


この体にまだ慣れていないからだろうか...。


私は、彼に対して、


どこか違和感を覚えた.....。





........................................

呉鎮守府・執務室



俺(うーん.....どうしようかな。

でも、初めはやっぱり鎮守府近海の方が

安全だよな.....よし。)



俺「長門。」



長門「なんだ?提督。」



俺「今から、出撃に出てもらおうと思う。

場所は、鎮守府正面海域だが、

それでもいいか?」



長門「ああ、問題ない。

では、出撃準備に入ろう。」



.......................................

呉鎮守府・母港



俺「準備はできたか?」



長門「ああ。万全だ。」



母港には、


艤装を身につけて海に立つ彼女と、


それを見送る俺がいた。



俺「よし。それじゃ頑張ってきてくれ。

弱い敵が多いとは言え、初陣だからな。

油断はしないでくれよ。」



長門「ああ、勿論だ。

誰に向かって言ってるんだ?

油断などするわけあるまい。

さて、では、行ってくるぞ!」



そう言って、彼女は海の上を進んで行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



あの轟音が近づいてくるのがわかった。


次の瞬間、僕とお姉ちゃんがいる崖を囲む


茂みに一気に火がついた。


そして、その中から


あのバケモノたちが出てきた。


何体も何体も出てきて、


遂に僕たちの逃げ道が無くなってしまった。


そして、ソイツらが僕たちに向けて、


銃口を一斉に向けた。


瞬間、今まで僕を庇うように、


強く抱いていたお姉ちゃんが、


僕を離して海の方へ強く押し出した。


その時、お姉ちゃんが



お姉ちゃん「あんたは、

これから何があっても

強く....、強く生きなさいよ.....!」


と涙を浮かべ、微笑みながら、


叫ぶ姿を見たのを最後に、


僕の体は海へと落ちて行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



⁇?『........い!』



俺「.....ん.....?」



長門『おい!!』



大きな声に意識が引き戻された。



俺「うわっ!!ビックリした。」



俺は、母港の埠頭の上に立っており、


手に持つ無線機から彼女の怒声が


飛んできたのだった。



長門『もうすぐ会敵すると言っているのに、

返答がないからビックリしたぞ!』



俺「.....悪い。

少し考え事していて

聞こえなかったみたいだ。」



長門『....全く。

私に油断するなと言ったのは誰だったかな。

.....まあいい、次は気をつけてくれよ。』



俺「...ああ。分かった。済まなかったな。」



長門『もういいさ。

さあ、もう数分で会敵するぞ。

指揮は頼んだぞ!』



俺「ああ。任せろ!」



........................................

呉鎮守府・母港



今回は、彼女の肩慣らしの意味を


含めたものだったため、


正直結果は気にするつもりはなかったのだが、


雑魚敵ばかりということと、


彼女の強さも相まって、


当然の完全勝利だった。


帰ってきた彼女に声をかけた。



俺「お疲れ様、お帰り長門。」



長門「ああ、ただいまだ、提督。」



俺「どうだった?

艦娘として初陣だったわけだけど.....」



長門「そうだな.....。

自分の意思で、思い通りに海を進む

というのは新鮮な感覚だったな。

自分の意思に従って、

また国のために役立てるというのも

嬉しいものだな。」



俺「そうか...。それは良かった。

今日はもうそろそろ日も暮れそうだし、

出撃の疲れもあるだろうから、

ゆっくり休んでくれ。」



長門「了解だ。

では、また明日だな、提督。」



そう言うと、


彼女は自分の寮へと歩いて行った。



..................................

呉鎮守府・提督自室



俺は、自室に戻ってベットの上で、


一人心配事をしていた。



俺(もし、彼女や、これから増えていく

艦娘たちに、俺の真実が知られたなら、

どうなってしまうんだろうか....)



そんなことを考えていると、


なかなか眠る気にはならなかった。





..................................

呉鎮守府・艦娘寮



今日の出撃、提督の指揮は


雑魚敵相手とはいえ、


細かな文句の付け所もないぐらい完璧だった。


とても信頼できる提督であるだろう。


....だが、今日、彼の言っていた、


"考え事"とはなんなのだろうか.......。


彼の出会った時の違和感とは何か


関係があったりするのだろうか....。


色々気になるところではあるが....、


あまり、人の領域や秘密に


踏み込みすぎるのもよくないからな....。


これから、じっくり見定めていこう。


そう心に決めて、私は眠りについた。





....................................

呉鎮守府・提督自室・翌朝



ジリリリリ.......



俺「.........ん、んー、もう朝か....。」



俺は目覚まし時計の音に目を覚ました。


時計は05:00を指している。


総員起こしまでは、まだ時間があるので、


俺は一通り朝の支度を済ませて、


軽い早朝ランニングへと


向かおうとしていた。



俺(まあ、総員起こしといっても、

まだ、長門しかいないけどね...

軍規だからやらないといけないけど.....)



そんなくだらないことを考えながら


歩いていると、


ふと郵便受けに一通の便りが入っているのが


目に入った。


それを取り出して、中身を見た。



『前略、呉鎮守府提督殿

先日の初期艦の不手際、心より陳謝する。

また、大本営の艦娘の確保が完了したため、

そちらへ任務艦娘、大淀を含む数名を

11月10日に着任させることとする。

大本営 元帥書』



......マジですか。


資源もいっぱい頂いたのに、


艦隊まで頂けるのか?


良いのかな、頂いてしまって...?


.....良いのか。


そう自己解決したのだったが、



俺(って、まてよ。11月10日って...)



俺(.......今日じゃね?)



それに気づいた俺は、大急ぎで執務室に戻り、


少し早めで、一人だけの総員起こしをかけた。



.....................................

呉鎮守府•執務室



ガチャ



長門「おはようだな、提督。

どうしたんだ?まだ総員起こしの

時間ではなかったはずだが?」



執務室に長門が入ってきた。



俺「おはよう、長門。

そうなんだけど....、

ちょっとこの書類を見てくれ。」



俺はそう言って、今朝の紙を彼女に見せた。



長門「ほう。つまり、大本営から私のような

艦娘が、数名来ると言うことなんだな。

それで、日付が11月10日....。」



どうやら彼女も気づいたようだ。



長門「今日ではないか!

どうするのだ提督。

恐らく、歓迎会などを開かないといけない

のではないか?」



俺「だから、

こうして早めに起こしたんだよ。

今から始めれば、少なくとも、

昼前には終わるだろ。」



長門「そう言うことだったのか。

よし、分かった。

早急に取り掛かるとするか。」



俺「おう。そうするか。

でも、流石に二人だけだとキツイな。

ちょっと、悪い気がするが、

憲兵さんにも手伝いお願してみるよ。」



長門「了解だ。私は先に始めているぞ。」



俺「ああ、任せた。」



そうして、俺は憲兵寮に、


長門は食堂へと向かった



...........................................

呉鎮守府・食堂



その後、


憲兵達の多大な協力も得て、


無事、到着に歓迎の準備を


終わらせることができ、


俺たちは、食堂で宴を開いていた。



俺「ここの呉鎮守府の提督だ。

みんなの着任、心より歓迎する。

明日から早速任務に当たってもらおうと

思ってるから、今日は存分に楽しんでくれ。」



艦娘達「はい!」



挨拶の後、着任した艦娘の子達と


テーブルを囲み、食事を楽しんでいると、



???「あの、提督?」



と、横から声をかけられた。



俺「ん?君は確か書類に書いてあった.....。」



???「はい。軽巡洋艦、大淀です。

今後は、大本営からの任務等の管理に

努めさせて頂きます。」



俺「そういえば、世の提督は君と同じ艦娘が

その役についてるんだっけ.....。

だから、憲兵さんが

書類を持ってきたりしてたのか。」



大淀「はい、着任が遅れてしまい、

申し訳ございませんでした。

憲兵さんにも後で、お礼を言いに行きます。」



俺「別に、謝ることでもないだろ。

不手際があったのは、大本営な訳で、

君たちのせいじゃないし。

せっかく楽しい雰囲気なんだから、

君も楽しめばいいんじゃない。

さあ、自分のとこに戻りな?」



大淀「はい、ありがとうございます、提督。」



そう声をかけて、彼女は自分の席に戻り、


俺も食事を再開した。


その後も、大淀に続き、


俺のとこに今日着任した艦娘達が


次々と挨拶に来て、会話を楽しんだりして、


歓迎の宴が終わった。



......................................

呉鎮守府・執務室



宴も終わり、食堂の片付けも済ませ、


みんなはそれぞれの部屋へと戻っていた。



俺(さて、明日からこの鎮守府も、

本格的に始動するわけか。

俺も、みんなも、頑張らないとな。)



そう、気を奮い立たせつつ、


明日に控えて、今日の鎮守府は夜を迎えた。





...........................................

呉鎮守府・執務室



ガチャ



私は、執務室の扉を開けた。



私「おはよう、提督。」



机で資料を眺めていた提督が顔を上げた。



提督「ああ、おはよう長門。」



そう返すと、彼はその資料を持って、



こちらに歩いて来た。



提督「君や、着任して来た艦娘達に

ついての情報を見てみたんだが.....、

簡単に言ってしまったら、

君達は多分どんな海域でも十分戦える、

と言うことが分かった。

もちろん、経験はまだ足りないとは思うが、

それはこれから補って行ってくれ。」



私「そうか。そんなこと言って

もらえるとは、嬉しいものだな。

承知した。これから尽力させてもらおう。」



そう言葉を交わし、私は新しく組まれた


艦隊の旗艦として、今日の出撃に向かった。





.........................................

???・



私「.....艦隊、帰投したよ.....。」



私達は、提督机に踏ん反り返っている司re....


....アイツへの報告に上がっていた。



???「フン、そうか。それで、結果は?」



私「.....ボスには、到達できませんでした.....。」



その後のことは決まりきっていた。



???「.........フッザるなぁァ!!」



バキッ!!



私の頰に強烈な痛みが走った。



私「ぴゃッ!!くぅ.....ッ!」



???「あれだけ失敗するなと言ったのに!

また失敗したのか?

資源だって使ってやってんのに、

無駄にするなよなぁァ!!」



ガンッ!ガンッ!



アイツは、殴られて倒れ込んだ私に


容赦なく暴行を加えて来た。


周りに立つ仲間達も、今は私だが、


次は自分たちも暴力の対象になると


怯えているように見える。


でも.........



私(この程度、

あの子が受けたものに比べれば.....)



と思い、必死に耐え続けた。



私(あの子は、元気にしてるのかな.....)



そう考えている間も、


アイツの暴行は長い間止むことなく続いた。





.........................................

呉鎮守府・母港



私「艦隊、帰投したぞ。」



出撃していた私達は、母港へと帰っていた。


そこにあるのは、一つの人影。



提督「お帰り、長門、みんな。」



彼が、迎えに来ているのだった。



私「ああ、ただいま、提督。」



提督「で、どうだった?」



私「みんな、大破こそ免れられたものの、

やはり苦戦を強いられる場面が

いくつかあったな。」



提督「でも、あの敵艦相手にあそこまで

やれるのはすごいと思うけどなぁ。

まあ、これからも実践を積んで行けば、

問題ないと思うよ。」



私「....そうだな。気遣い感謝する。」



提督「気にすんな。

さあ、長門もみんなも早く入渠して、

休んでおいで。」



艦娘達「はい。提督(司令官)。」



私「では、失礼する。」





......................................

呉鎮守府・執務室



その夜、俺は、今日の任務も終え、


今日長門達が出撃してくれた海域についての


書類を整理していた。



俺「あと、もうちょっとだったなぁ....。

今度、新しい装備も作ってもらって、

再出撃も検討するか。」



なんてことを考えていた。



================================



目を覚ましと、白い天井が見えた。



僕(ここは何処だろう....?)



と思っていると、



ベットの横から一人の顔が覗き込んだ。



???「目が覚めた?」



その女の人が聞いてきた。



僕「あ、うん....。あなたは....?」



???「あ、まだ言ってなかったね。

艦娘の阿賀野型軽巡の酒匂だよ。

よろしくね。」



僕は彼女の話が全くわからなかった。



僕「艦....娘?」



酒匂「あ、そっかそこからだね。」



僕は《酒匂》と名乗った彼女の話を


聞かされた。



.....................................



彼女の話によると、


日本、そして僕たちを襲ったあの化け物たちは


どうやら《深海棲艦》と言うらしく、


世界中の偉い人たちが、


早く対策をとろうと悩んでいたらしい。


そんな時に彼らの中の


一部の人間の前に突然現れた、


《妖精》と言う生き物が、


彼女達のような《艦娘》と言う存在を


昔の日本の軍艦の船霊と言うのを元にして、


生み出したのだそうだ。


そして、各国は鎮守府と言う軍施設を


再び置いて、深海棲艦と様々な海で


戦っているのだそうだ。


そんな時に、ある海域で、


意識を失って流れている僕を見つけ、


彼女達のいる鎮守府へと連れてこられて


今に至っていると言われた。



酒匂さん「それで.....。」



僕「? 何ですか?」



酒匂さん「....君はどうして、

あんなところに流されてたの?」



そう彼女に聞かれた。




............................



僕は彼女に全部話した。


奴らに襲われたこと。


お父さんとお母さんが亡くなったこと。


そして.....、


お姉ちゃんまでもが、


僕を庇って死んでしまったこと...。


彼女は僕が話す間、何も喋らないで、


ただずっと僕の話を黙って聞いていた。


僕が話を終えると、


突然彼女に抱きしめられた。



酒匂さん「......辛かったんだね。

ごめんね、嫌なこと聞いちゃって....。」ダキッ



彼女は僕の頭を撫でながらそう言った。



僕「....ううん、僕はお姉ちゃんに

「強く生きなさい」って、

言われッ、たんだ。

だから、これ、ッくらい大丈ッ、夫...。」



とは言ったけど、


僕は知らないうちに泣いていた。


僕が泣き止むまで彼女は


ずっと僕のそばにいてくれた。



.......................................



僕が泣き止んだとき、


彼女は僕にまた聞いてきた。



酒匂さん「それで、君はこの後どうするの?

今はまだ少しの数が残っててここに

いられるけど、治ったらどうするの?」



僕「どう.......しよう.......。

僕のおじいちゃん達は僕が生まれた時には

もう居なかったし、僕はこの後、

どこに行けばいいんだろ.......。」



そうボソリと呟いた。


それを聞いた彼女が、



酒匂さん「じゃあさ、

ここにずっと居られるように、

何とかアイt...司令に頼んでみるよ。」



僕「いいの?ここに居ても?」



酒匂さん「司令がいいと言えばだけど、

きっと許可してくれると思うよ?」



僕「...ありがとう。

いえ、ありがとうございます。」



酒匂さん「いいよ、いいよ。

それじゃちょっと司令のところに

行ってくるよ。」



そう言って、彼女は部屋から出て行った。


その時、彼女の腕に残った


痣のような跡が嫌に目に残った。





私はあの子がどこにも行けずに


野垂れ死んでしまわないように、


ここに留まれるようなことを


言ってしまったけど、


あの子にとって、本当に良かったのかな?


.......もしかしたらこっちの方が本当の地獄で、


私はそこにあの子を引き込んでしまった


のではないかと言う思いが頭の中を


ぐるぐる巡る中、


司re....奴のいる執務室へと向かった。





=================================



???「.........ろ。」



俺「........ん?」



長門「おい起きろ。」パシッ



俺「ん.....、長門....?」



長門「お、目覚めたか。

おはよう、提督。」



俺「おはよう、長門。」



俺はどうやら昨日、資料を読んでいるうちに


眠ってしまったようだった。


時刻は05:30で、


総員起こしまでまだ少し余裕があった。



長門「いや、

疲れていたようだったからな...。

総員起こしが近づいて来たから、

秘書艦として執務室を訪れたのだが、

貴方が机に伏して寝ているのが見えたから、

ギリギリまで寝かせておいて置こうと

思ったのだ。」



俺「そうか...。

悪いな、気を遣わせてしまって。」



長門「いや、大したことではないし、

気にするな。」



俺「ああ、ありがとう。」



長門「しかしだな....。」



長門が続けて、



長門「寝ている貴方が....、

不快な顔をしていたのだが....、

何か嫌な夢でも見たのか?」



と言った。


....俺は言っていいのか迷った。


言ってしまったら、


全て終わってしまうのではないかと


心配したからだ。


そう言いあぐねていると、



長門「....やはり、何か言いづらいことを

貴方は抱えているのではないか?」



と言われた。


....正直ドキッとした。


感づかれているとさえ思わなかったから。


......それでも彼女は、



長門「まあ、人には色々な事情や過去が

あるからな...。

今ここで無理に詮索はしないさ。

でも、話すべき時が来れば、

....必ず話してくれよ?」



と言って、


それ以上聞いてくることは無かった。



俺「........ああ。分かったよ。

いずれ....話そう。」



と、彼女の心遣いに感謝しつつ、


俺たちは今日の任務の準備を始めた。



.......................................

呉鎮守府・母港



俺は無線が通じない遠い海域へと出撃する、


長門たちの指揮を執るための船への


乗船の準備を終わらせ、


彼女らの到着を待っていた。


しばらくすると、長門率いる艦隊が、


鎮守府から出てきた。



長門「待たせたな、提督。」



俺「いいや、俺も今終わったところだ。」



長門「そうか。ならよかった。

では、出撃命令を。」



俺「よし。では、呉鎮守府第一艦隊、

出撃せよ!」



艦娘たち「了解!!!」



そうして、


俺たちは目的の海域へと出発した。



.....................................



出撃から数日後、


いよいよその海域へと突入し、


会敵する可能性が出てきた。



俺「そろそろ敵が現れてもいい頃だ。

周りの警戒をより強くするように。」



長門『了解だ、提督。

ん....?!右前方、敵性反応有り!

こちらにゆっくり向かってきているようだ!』



俺「わかった!

艦隊、直ちに迎撃に向かって来れ!」



艦娘たち「はい!!」



彼女らの返事を聞いたあと、


俺は敵艦を把握するため、


望遠鏡を手にとって、そちらの方を見た。


敵は駆逐・雷巡・戦艦が数隻ずつ、そして....、


軽巡と思われる深海棲姫が一隻組まれていた。



俺「深海......棲姫......。」



.....その言葉が出てくると、


急にひどい頭痛に襲われた。



俺「....また、これか!

今度こそは、ちゃんとッ、指揮を、

取らなきゃッ、いけないのにッ!」

ズキンズキン



そんな言葉とは裏腹に、容赦無く頭痛が


頭を締め上げて、俺はまた過去の記憶へと


フラッシュバックに引き込まれた....。



=================================



医務室のベッドの上で休んでいると、


彼女が戻ってきた。



酒匂さん「ぴゃん。

アイt..司令がここに居てもいいってさ。

......良かったね。」



僕「ほ、本当ですか?

ありがとうございます!」



酒匂さん「それでね....、

司令が部屋まで来て欲しいって。」



僕「そうですか。

でも、これじゃ歩けないんじゃないですか?」



僕の足には、逃げる時にできた


足の怪我のため、包帯が巻かれていた。


ベットから立ち上がろうとした僕は


フラフラと転びそうになった。



酒匂さん「大丈夫だよ。

私が執務室の部屋まで支えてあげるから。」



そう彼女は言い、僕の腕を取って、


ふらつかないように支えてくれた。



僕「あっ、ありがとう...ございます。」



酒匂さん「....ううん、いいよ。

じゃあ、行こっか...。」



そして僕たちは此処の鎮守府の


提督という人の部屋に向かった。


でも...、僕を支えながら歩く酒匂さんの顔は、


どこか、暗い影が差す感じがした...。





私は心中で後悔していた....。



私(....あの時は思わず、「良かったね」

と言っちゃったけど..、

本当は....この子にとって見れば、

やっぱりこっちの方が、

本当の地獄だったなぁ....。

そして、此処に留めたのは私なんだから...。

この子に何があっても、私が守らなくちゃ....!)



彼を支えて、司re..アイツの部屋に向けて、



廊下を歩く中、私はそう強く心に決めた。





..........................................

???・執務室



コンコン



ドアをノックして部屋に入ると、


白い軍服を身につけた男の人が立って居た。



???「やあ、初めまして。

私が此処の鎮守府を運営している提督だ。

酒匂から聞いたよ....。辛かったね...。

でも大丈夫。今日から君は此処の仲間だ。」



そう彼は笑顔でそう言って、


僕の頭をワシワシと撫でてきた。


こんな風に頭を撫でてきたのは、


今はもう居ないお父さんくらいだったから、


ちょっと懐かしくて泣きそうになったけど、


なんとか我慢した。


でも......その笑顔や頭を撫でられた感覚は、


....何となく、寒気も感じさせた....。



................................



怪我が治った僕は、


秘書艦という役に就いている酒匂さんの


補佐としてお手伝いすることになった。


亡くなったお父さんの英才教育のお陰で、


ある程度の読み書きができた僕は、


書類の整理や移動などを主に手伝っていた。


そして今日も、いつものように、


書類の整理をしていると、



ドギャッ‼︎



執務室の方で、大きな音がした。


何があったのかと、急いで廊下を走って、


そちらに向かっていると、


執務室の中から、


提督さんの罵声が聞こえてきた。



提督さん「何で失敗してんダヨォ‼︎

あれだけミスるなって言ったのニナァ‼︎」



どうやら、


彼は遠征で帰ってきた艦隊の艦娘達を、


叱りつけているようだった。


でも、罵声が聞こえるだけで


さっきの大きな音の原因は分からなかった。


すると中から、



提督さん「おい....、

だから聞いてるのかって言ってんだッ‼︎」



ドゴォ!



と、彼の罵声とともに、


壁に大きな音と衝撃が響いた。


その音にビックリして中に入ると、


彼が遠征で旗艦を務めていた酒匂さんを


蹴り飛ばしたような光景が目に入った。



僕「ちょ、何をしているんですか⁉︎」



提督さん「ああ?君か....。

何って、"お仕置き"に決まってるだろ?」



と、彼は何食わぬ顔で言った。



提督さん「失敗したやつには、

罰が必要だろ?

だからこうして、

私が直々に罰してやってるのさッ!」



バキッ!バキッ!



そう言いながら、彼は伏している酒匂さんに


さらに蹴りを入れた。


....僕は見るに堪えかねて、



僕「お仕置きなんて必要ないでしょう⁉︎

失敗なんて、する時は誰でもするものです!」



と、僕は彼に食ってかかった。


提督さんはその歪んだ目を


僕に向けてきたが....、



提督さん「....チッ。分かったよ....。

....おい、お前ら。

今回はこの子に免じて、

これくらいで許してやる。

各自、早急に部屋に戻れ.....。」



と、"お仕置き"とやらは止めたが、


提督さんは彼の手による傷は勿論、


遠征による傷の手当てをせずに、


遠征組を各部屋へ帰そうとした。


書類の整理をしているうちに、


艦娘達は人で言うところの、湯治の様な、


《入渠施設》という特殊な風呂に入ることで、


大抵の傷を癒すことができると知っていた。


でも、たった今提督さんは、


それを行わずに部屋に帰るよう指示したのだ。



僕「なっ、何で入渠させないのですか?!

遠征よる傷だってあるでしょうに!」



と再び彼に強く言った。だが....、



提督さん「何でって、傷が治ったら、

せっかく私がした"お仕置き"の証が、

無駄になってしまうではないか...。」



ニタリと不気味に笑いながら、そう言った...。


そして.....



提督さん「本当に...アイツら、

すぐ癒てしまうんだよ。何て勿体無い....。

....ああ、そうだ....‼︎いるじゃないか...‼︎

"お仕置き"の証が消えることのない奴が....‼︎」



彼がそう言った後、



僕「何を言っt.....ウッ!」バシッ!



突然後頭部に激痛が走り、


僕は気を失った。



....................................



僕「......ん......ここは?」



目がさめると、僕は暗い部屋の中にいた。



僕「ここは......牢屋?」



よく見ると、


僕は鉄格子の内側にいることがわかった。



僕「......何でこんなところに......。」



まだ意識がボヤッとしていて、


何があったか思い出せずにいると...、



コツ.....コツ......



???「やあ、目を覚ましたかい?」



憎たらしい笑みを浮かべた提督さんが、


石段を降りながら、こちらに歩いてきた。


その人の姿を見て、僕は思い出した。


....僕がこの人に殴られて、


気絶させられたことを....。


そして、それを思い出して、


僕は頭に血が昇ってくるのを感じた。



僕「なぜこんなことをしたんですか!

早くここから出してください!!」



そう詰め寄ったが、



提督「何でって、

おかしなことを言うんじゃねぇよ。

お前を嬲って、痛めつけて、

楽しむに決まってるじゃないか。

ックク。」



....提督はニヤニヤしながら


鉄格子の扉を開け、牢の中に入ってきた。



僕「冗談じゃないです!

僕が反抗しないとでも思って!

...って...あれ?」ガシャ



抵抗しようとした僕だが、


手足に異様な重さを感じた。


見れば手足に鉄の枷が嵌められていた。



提督「ハハハッ!

バカだなぁ、私がそんな易々と

反抗させるわけないだろう!

さて....、

さっきはよくも私に反抗した上に、

言い返してくれたなぁ‼︎」



ドガッ!



そう言うや否や、


提督は、僕のお腹に蹴りを入れた。



僕「ガハッ!」



まだ体の小さい僕は、


簡単に吹き飛ばされそうになったが、


鉄枷によって引き留められ、


その場に叩きつけられた。



提督「アハハハハ!

おもしれぇ‼︎たまんねぇ‼︎

サイコーだよォ‼︎‼︎」



狂ったように高笑いしながらも、


僕を痛めつけることは止めなかった。



提督「アイツらにいくらやっても、

入渠すればすぐに治っちまって、

張り合いがねぇんだよ!」ドガッ!ドガッ!



蹴られて息を乱しながらも僕は言い返した。



僕「ハッ、ハッ......‼︎

悪いことッ、を悪いと言ったッ、

僕の何ッ、がいけないと、言うんですか...‼︎」



.........再び提督の目が曇った。



提督「......ッチ。

だから....、言い返すなって.....、

反発するなって.....、

言ったんだろうがよォ‼︎」



提督はまた怒声をあげ、


今度は腰から取り出した、


長い金属棒状のもので僕の頬を殴りつけた。



バシン!



突然のその痛みに耐えられず、


僕はまた倒れた。



提督「お前は私が拾ってやったんだ。

だったらお前は私の物だ。

私の所有物を私が何をしようと、

私の勝手だろ?」ニヤニヤ



不気味に笑いながらそう言った。


提督は今度は口に燻らせていた煙草を取って、


倒れていた僕の腕へと押し付けた。



僕「ああああああああ‼︎」



皮膚が焼け焦げるような鋭い痛みに襲われ、


自分でもびっくりするような悲鳴をあげた。



提督「アッハハハハハハハ‼︎

いい声で鳴くなぁ、君は‼︎

....今日はもう満足だ....。

....もう少しこのままにしておくよ?

反省してしばらく経ったら

出してあげようかな......。」ニコッ



さっきとは打って変わって、


寒気がするほど不気味に優しい口調で言うと、


提督は笑みを浮かべたまま牢から出て、


石段を登って去って行った。


残された僕の全身には、


いつまでもいつまでも痛みが目紛しく走り続け


しまいには僕はまた気絶してしまった。





..........................



僕「......ん?」



ズキン!



目を覚ました僕は、


まだ残っていたお腹や腕の痛みを覚えた。



僕「イッ、タ!!」



その激痛に耐えていると......、



コツ..... コツ...



また石段の方から足音が聞こえてきた。


....僕は、


また提督に何かされるのではないかと


怯えたけれど....、



???「やっぱり...

こうなっちゃったね......

......ごめんね...........。」



そこには、酷く申し訳なさそうな


顔を浮かべた酒匂さんの姿があった。



僕「酒匂......さん?」



僕は酒匂さんがこの牢へ来たことよりも、


さっきの酒匂さんの言葉が気になった。



僕「やっぱりって......どう言うことですか?」



酒匂さんはその顔を上げて...、



酒匂さん「アイt...司re........もういいや。

アイツは......本当は......、

提督という役職や立場を盾にして、

私達艦娘に、"お仕置き"という名目で

事あるごとに殴ったり、蹴ったり、

酷い時はそれ以上のことまでする

......外道だったんだよ....。」



と、告げた......。


それで、僕はあの時酒匂さんが言ったことを


疑問に感じた......。



僕「......じゃあ、どうして....、

僕をここに留めようと言ったのですか...?」



酒匂さんはその質問にゆっくり顔を上げると、



酒匂さん「......じゃあ君は、

何処か行くところがあったの...?

孤児院だって、前の襲撃でほとんど

残ってなかったのに....?

君はまだ小さいんだよ?

一人で生きて行くなんて、

......無理だよ。」



僕「それは....。」



....言われてみればその通りだった。


....僕なんて、英才教育のお陰で、


少しばかり物を知っているだけの、


ただの4歳児に過ぎなかった....。



酒匂さん「それに....。」



酒匂さんが続けた。



酒匂さん「でもね....、

アイツも...もしかしたら、

ヒトの君になら、普通に優しく

接するんじゃないかって思ったの....。

でも....、違った。

アイツはやっぱりアイツだった....。」



僕「.........。」



あれは、酒匂さんに出来た、......いや、


せざるを得なかった、


残された唯一の選択肢だったんだ......。



酒匂さん「うッ、うッ、ごめんね......。

でも、私にはこうするしか、なかったの...。

君を守りたいと思った、

けれど、そうしたら私達のように、

アイツの"モノ"になっちゃうかもしれない......。

....そして、もう君はそうなってしまった...。

本当に...ごめんね......。」



泣きながらそう誤る酒匂さんの姿を見ると、


僕まで辛くなって来た。



僕「.....酒匂さんは悪くありません。

そうするしかなかったのでしたら、

それが僕の運命だったのでしょう......。

だから、貴女はちっとも悪くないですよ...。」



と、以前酒匂さんに慰められた様に、


今度は僕が酒匂さんに慰めかけた。



酒匂さん「うッ、....うッ、

.....ありがとね。」



そして僕は続けて、



僕「それに....前に言ったみたいに、

僕はお姉ちゃんに、

「強く生きなさい。」と言われています。

だから....僕は強くなって、

いつか貴女達を守れる様になりたいです....!」



と言った。


酒匂さんはその言葉に驚いた顔をしたが、


すぐに微笑んで、



酒匂さん「....君みたいな子が

司令だったなら、

私も、私達も、大歓迎だよ....。

だから、いつかその日が来るまでは、

私が....、私達が、君を守ってあげるから....。」



と、鉄格子を通して僕の頭を撫でながら、


そう語りかけた。



酒匂さん「....それじゃ、

アイツにバレたらまずいから、

そろそろ私は戻るね....。」



コツ....コツ....



そう言って、


酒匂さんは石段を登って、帰って行った....。



.....................



それから半日ぐらいした後、


満足したのか、アイツは僕を解放した。


その後、彼女や他の艦娘達による治療の末、


僕は普段通り秘書艦である酒匂さんの


お手伝いの仕事へと戻った....。



.............................



その日を境に、


アイツは何か気に入らない事があるたび、


僕を牢に無理矢理入れては、


"お仕置き"で楽しむ様になった。


酒匂さんや他の艦娘達が、


その後に治療してくれているとはいえ、


消えない傷がいくつか残ったりもした。


更にはアイツの気分によって、


数日間も牢に閉じ込められる事すらあった。


それでも、僕がそれから出た時は


彼女達は自分達がアイツに痛めつけられる


危険を顧みずに、僕を大切にしてくれた....。


....だから僕も、


牢の外に出られているときは、


アイツが常に渋っている高速修復剤を


報告の数を偽って密かに手渡したり、


彼女達が回収した資源の数をバレないように


本当の数より多めに報告したりと、


少しでも彼女達が、


アイツに傷つけられないような策を弄した。


....いつしか、こんな状況だからこそか、


僕等には互いに支え合う絆ができていた。



....................................................



........そして、そのような生活が


もう14年近く経っていた....。


あいもかわらずアイツは俺や酒匂さん達に


"お仕置き"をする毎日を続けていた。


アイツからはろくな量の食事が与えられず、


俺達はかろうじて当たる食料を少しずつ


分け合って生活していたため、


栄養が不足することは日常茶飯事だった。


艦娘は元々成長はほとんどないが、


その食事の件もあってか、


俺も体が成長することはほとんど無かった。


....そして今日も、俺は力無く牢に入れられ、


丸2日が経とうとしていた時だった。



コツ....、コツ....、



隣の牢に、アイツが誰かを連れてきた。



提督「オラッ!こっちへ来い!....

ホラッ!さっさと入れ!」ガシャン!



アイツはその人を乱雑に牢へ入れると、



提督「やあ、元気か?

今日からこの深海棲艦、えぇと?

軽巡棲姫だっけ?も、お前らと同じ、

私のおもちゃの仲間入りだ。

仲良くしてやってくれよ?

もっとも、その前にコイツに

襲われなければいいがな!

アハハハハ!」



いつものように憎たらしい笑いをして、


アイツは去っていった。


俺は隣の牢を見た。


すると、その軽巡棲姫と呼ばれた人も、


こちらを見ていた。


....その姿を見るや否や、


俺は心の底で沸々と怨みのようなものが


煮えたぎるような感覚を覚えた。


恐らくはコイツら、深海棲艦に、


俺の両親や、姉を殺されたと言う事実に


よるものだろうと思った。


そんな黒い心を抱えた目で彼女を見ながらも、


内心....、俺は怯えていた。


アイツの言った通り、


此処で殺されてしまうかもしれないからだ。


幾ら戦闘によって満身創痍だからと言って、


彼女らも立派な艤装を携えている。


生身の人間が喰らえばひとたまりもなかった。


....だが、いつまでも彼女は俺を見るだけで、


攻撃の素振りは一切見せなかった。


すると彼女が突然、



軽巡棲姫「....アナタハ、ドウシテ、

ソンナニ傷ツイテイルノ?」



と尋ねてきた。


..........俺は驚いた。


聞けば、深海棲艦は例外なく、


人間に対して恨みを持っているはずなのに、


その人間を心配するような質問だったからだ。



俺「.......どうして、人間である俺を

心配するような質問ができるんだ?

貴女達深海棲艦は、

人間を恨んでいるのじゃないのか?」



すると彼女は答えた。



軽巡棲姫「....私達ニダッテ情グライ有ル。

今ノアナタハ、傷ダラケナンダカラ、

コレ以上傷ツケヨウトモ思ワナイ。」



....予想外だった。


深海棲艦は只々募る恨みのままに


人間を脅かすものだとばかり思っていたから。



軽巡棲姫「サア、今度ハ私ノ質問ニ答エテ。

アナタハ、ドウシテソンナニ傷ダラケナノ?」



....俺はそこで意を決して、


今までの経緯を話すことにした。



=================================



???『...........い!!』



意識の遠くで声が聞こえた。



長門『おいっ!!』



無線機から長門の怒号が響いた。


俺はまた、やってしまっていた....。



俺「ッ!またやっちまったのか....。

あぁ、....本当にすまないな。

そうだ、それよりも敵はどうなった?」



長門『心配は無用だ。

代理で貴方の船に同乗していた大淀が

指揮を取ってくれたからな。

流石に普段の貴方ほどまでとはいかないが、

なんとか勝つことができたよ。』



俺「....そうだったのか。

ありがとな、大淀。」



俺は、船室の隅で控えていた大淀に


感謝を述べた。



大淀「いえ....、

このくらいは何ともありませんよ。」



彼女は少し照れくさそうに返した。


すると、無線機から長門の声が再びした。



長門『......なあ、提督?

まだ......話してはくれないのか?』



俺「.................。」



彼女は続けて、



長門『貴方の普段の指揮の高さは

私も、他の艦娘達も認めている。

が、しかし、いつまた先日や今日のように、

指揮が取れなくなってその時の敵が、

運悪くより強かった場合、

....安心して戦えない。』



彼女の主張は尤もなことだった。


戦うのは彼女達で、俺はその命を預かる提督。


提督がこんなザマでは、


彼女の達が不安になるのも仕方がない。


それでも.....、


....こんなに信頼されていても、


....いや、信頼されているからこそ、


俺は真実を打ち明けるのが怖かった。



俺「......すまない。

まだ、心が準備できていないんだ....。

今はまだ打ち明けることができない....。」



そう答えざるを得なかった。


しかし、



長門『......了解した。

....だが、いつかは本当に、必ず話してくれよ。

貴方のそれを聞くまでは私は、私達は

沈むわけにはいかないからな。』



と了承してくれた。



俺「本当にすまないな....。

納得がいかないであろうというのに、

俺の我儘を聞いてもらって..........。」



そう呟いた俺に、



長門『....こんなもの、我儘でも何でもないさ。

私達は"仲間"なのだからな。

仲間のことの一つや二つ、

信じてやらなくてはやっていけんさ。』



とフォローを入れてくれ、


少し気持ちが楽になった。



俺「..........ありがとう、長門。」



長門『ハハッ....。構わんさ。

では切るぞ。数十分後そちらの船に戻ろう。

近づいたらまた連絡するから、

その時に乗船口を開けてくれ。』



俺「ああ、わかった」ピー



そうやりとりを交わして、無線を切った。


俺は彼女達という"仲間"を持てたことを、


改めて幸せに感じていた。


....そして同時に、そんな"仲間"になら、


もう話してもいいかもしれない........


と徐々に思い始めていた....。





........................................

呉鎮守府・母港



私達は無事乗船を終えた後、


私達の鎮守府へと帰投した。


鎮守府へと入る際、


少し先を歩いていた提督を追い越した。


......その時の彼は俯いており、


目の中に暗い影を落としながらも、


うっすらと心に何か決めたような表情だった。





....................................

呉鎮守府・執務室



それから数週間が過ぎ、


普段通りの任務、出撃をこなしていた。


あの時に比べて、


艦娘達のレベルも格段に上がり、


団結力も高まって来ていたそんな時だった。



コンコン



ドアがノックされた。



俺「? どうぞ。入ってくれ。」



大淀「失礼します、提督。

本日このような書類が届いていたですが。」



そう言うと、彼女は一枚の紙を渡して来た。



俺「.........合同演習?」



大淀「はい。

異なる鎮守府同士が、艦隊を模擬戦闘させて、

互いの弱点や改善点を見つけると言うもので、大本営も推奨しているものではあるのですが

.........。」



俺「相手は....へぇ、

佐伯湾泊地の提督率いる艦隊か....。」



大淀「そうなのです。

比較的、所属している鎮守府も

近くにあるので、

恐らく実施日は遅くとも3週間になるかと.....。」



俺「分かった。

お受けするとあちらにお伝えしてくれ。」



大淀「了解しました。

それでは失礼します。」ガチャ



と、彼女は退室した。



俺「さて、やると決まったからには、

全力でお応えしなくてはな。」


そう一人呟くと、


俺は合同演習に向けて、


長門達をより強化できるように、


装備の開発・改装や、艦隊の編成、


それに応じた戦略や陣形などの調整や計画を


始めていった......。





.............................

呉鎮守府・廊下



私達は遂に、待ちに待った合同演習の当日を


迎えた。


この日のため、


提督達とともに凡ゆる場面を想定し、


それに合った編成、戦略も練り上げてきた。


最早どんな艦隊が相手だろうと渡り合える


だけの自信に満ち溢れていた....。


早朝のうちに演習の準備を済ませていたので、


あとは演習相手の到着を待つのみであった。


私は、その演習相手が気になっていた....。


どんな鎮守府運営をして、


どれだけの戦果の挙げ方をしているのか、


等といったところであるが....。


そこで私は、もしかしたら演習の際の


いい戦略材料になるかもしれないと思い至り、


彼の待機している執務室へと向かった。



.......................

呉鎮守府・執務室



コンコン



提督「どうぞ。」



ガチャ



私「失礼するぞ、提督。」



提督「おお、長門か。

どうしたんだ?もう準備は終わったのか?」



私「ああ、もう既に済ませている。

少し気にになることがあったのだ。

今日の相手になる佐伯の提督が、

普段どんな戦い方をしているのかなと。

もしかしたら今日の演習に、

活かせるのでは、と思ったのだ。」



提督「そういうことか。

俺も詳しくはよく知らないけど、

大本営からの視察隊に拠れば....、」



と言いつつ、


彼は引き出しから資料を取り出して言った。



提督「かなり強引な攻め方をしているようだ...。大破寸前の状態にあっても、否応無しに進撃させていて、何度も厳重注意がなされているみたいだ....。」



私「何と...。」



提督「まあ、多少はそれに見合った

戦果も挙げてはいるみたいだな....。」



私「....いいご身分な提督だな、

ソイツは....。」



提督「そうだな....。

まあ、恐らく演習でもそのようにかなり無茶な

攻撃をするかもしれない。

前に組んだ耐久、回避向けの編成、陣形で

対処できるだろう。こんなところかな?

何か参考になったか?」



私「十分になったとも。

それに、その提督とやらも気に食わん。

コテンパンにしてやりたくなった。」



提督「おお、スイッチが入ったみたいだな。

その心持ちで今日は頑張ってくれよ。

っと、そろそろお出迎えの時間だな。

長門、さっき行った編成のメンバーを

読んで集めてくれ。」



私「了解した。」



そう言って、私達はその場を分かれた。


私はメンバーに集合をかけた後、


玄関へと向けて廊下を歩いていた。


そこで、


執務室でのやり取りの中のことを思い出した。


資料を見ていた時、


彼は凄く暗いな表情をしていた。


勿論、佐伯湾提督のやり方に対して


でもあるだろうが........、


私はそれ以外にも何か嫌なものを感じていた。



................................

呉鎮守府・玄関先



私は提督や艦隊のメンバーと共に


演習相手の到着を待っていた。


すると、


向こうからエンジンの音が近づいてきた。



ブロロロロロロ



キキッ



軽快な停車音を響かせて、


演習相手の提督たちが乗る車が到着した。


そして、



佐伯湾提督「いやぁ、お待たせしました。

私が佐伯湾の提督です。

今日はよろしくお願いします。」



年の比較的若い此処の提督とは違い、


中年期の男がそう挨拶をした。



提督「いえいえ、

こちらこそよろしくおねg

........えっ?」



提督も挨拶を返すのかと思いきや、


何かに引っかかったようだった。



提督「何で....貴方が....」ボソリ



私「どうした提督、何か言ったか?」



佐伯湾提督「そうですよ、

どうかされましたか?」



あちらの提督も疑問に感じたようだ。



提督「....あっ、いえ、何でもありません。

こちらこそよろしくお願いします。

それでは佐伯湾の皆さんは長門の案内に従い、

待機していてください。

....じゃあ、よろしくな長門。」



私「....ああ、任された。

では、こちらへ来てください。」



提督の指示通り、


私は佐伯湾の提督や艦娘達を


鎮守府内の控え室への案内へと移った。


.........その時、私が背を向けた提督の方から、


強烈な寒気が走ったような感じがした....。





....よりにもよって、


なぜ、どうしてアイツが相手なんだ....。


....今までだって、


只でさえあの記憶のせいで、


まともな指揮が取れなくなってしまった


ことだって多いというのに.........。


.........俺は心底自分の運を恨み、


嘗て、深く支え合った人たちと、


最も憎悪している人を横目に、


長門以外の残った艦娘達と共に


演習場へと向かった........。



...............................

呉鎮守府・演習場控え室



俺は先ほど長門と共に決めた作戦を


今日のメンバーに伝え、


今は長門の戻りを待っている所だ。


........まだ、


みんなには気づかれていないとは思うが、


そろそろ時間の問題だよな........。


でも、せめて....、せめて........、


この演習だけは....、この戦いだけは....、


負けるわけにはいかない。


....そう密かに心に決めていると


廊下から足音が聞こえて来た。



コンコン



長門「戻ったぞ、提督。」



案内を済ませた長門が帰ってきた。



俺「ご苦労様、長門。

それじゃあ、演習に向かう前に、

各自もう一度、最後の確認をしようか。

........」



俺はメンバーに自分の動きや配置を


再確認するように促した。


かく言う俺自身も、


"アイツにだけは負ける訳には絶対いかない"、


という狂気にも近い執念を胸に秘めつつ、


今日、戦ってくれる長門達の為にも


万一、先のように"あの記憶"が蘇ってきても、


彼女達に指示を出せるようにと思い、


動きや配置を再確認し、脳に叩き込んだ....。



丁度確認を終えたその時、



ピンポンパンポーン



演習場集合の合図であるチャイムが鳴った....。


俺は....、


遂にその時間を迎えてしまったのだった....。



...........................

呉鎮守府・演習場



大淀「それでは!

呉鎮守府と佐伯湾泊地との

演習試合を開始します‼︎」



ブーーー‼︎



大淀の号令と大きなサイレンとともに、


遂にアイツとの演習が幕を開けた。


演習場は海の一部分を区切って


設けてあることもあり、かなり大きい。


俺は遠くの対岸上の指揮櫓に立つ


アイツを睨みつけた。


アイツはまだ、俺の正体に気づいていない。


いくら憎悪しているとはいえ、


周りを巻き込みたくは無かった。


........もしかしたら、


........アイツも変わっているかもしれない....。


あれから、もう9年も経っているのだから......。


もしそうならば、もう水に流してしまっても、


いいかもしれない....。


....そんな淡い期待も出始めていた時、



長門『提督、相手艦隊発見したぞ!』



無線機から長門の声が聞こえた。


....そうだ、今は勝たなくちゃいけない。


勝負の後で、その云々を決めればいい。


と思い至った。



俺「よし!各自先ほど伝えた陣形に移り、

先制攻撃を仕掛けろ!」



長門『了解した!みんな、行くぞ!』



長門がメンバーに声を掛け、


相手艦隊へと接近していった。


直後、砲撃音が響き渡り、


相手艦の数名が被弾した。


すると、遠くの対岸から....、



佐伯湾提督「何をやっているんだァお前ら‼︎

どうしてすぐ被弾するんだヨォ‼︎

また"お仕置き"されたいってのかぁ‼︎⁇」



耳にこびり付いた....、アイツの声が届いた....。


.........先程、淡い期待を抱いた俺が馬鹿だった。


やはり、アイツはアイツのままだった。


すると、また頭痛が襲ってきた。



ズキン!ズキン!



俺「クソッ!何度も何度も!

しつこいってんだよッ!ッ!

何なんだよ、このポンコツ脳!」



そう自分に悪態をついていると、



長門『........提督、またか?』



と、長門に聞かれてしまっていた。



長門『まさかここで指揮離脱などと

言うのではあるまいな?』



俺もそれを懸念したが、


"アイツに勝つ"と言う執念によるのだろうか....、


頭痛からフラッシュバックへと


引き込まれることは無かった。



俺「大、丈夫だ!

頭痛がひどくなるが、指揮はとってみせる!

だから、任せてッ、くれ!」



なんとか長門へ返事を返した。



長門『........分かった。大丈夫なんだな....!

よしっ!では、任せたぞ、提督!』



長門もそう返すと、戦闘へと戻っていった。



..................................



そして........、アイツの罵声が耳に入るたび、


頭痛に襲われながらも、指揮を執り貫き、


小一時間に渡る激戦の末、この合同演習は、


俺たちの、呉鎮守府の、大勝利に終わった。





..................................

呉鎮守府・控え室



アイツ「なんで負けたんだよォ‼︎」ガシャーン



控え室では、


アイツが手当たり次第に物に当たり、


悔しがっていた。



私(なぜ負けたのかって....?

そりゃ、ろくに戦略も立てずに強引な攻撃を

仕掛けたからに決まってるでしょ....。

その上、毎日毎日の"お仕置き"のせいで、

士気なんてあるわけがないでしょ....。)



口に出しすと、すぐこちらへ飛び火するため、


私はそう心の中で毒を吐いた。


ふと、演習の時の相手の艦隊が思い出された。



私(それにしても....あっちのみんな、

仲が良さそうだったし、楽しげだったなぁ....。

私たちも、あんな風にやりたかったなぁ....。)



そんな叶いそうもない思いを抱いていると、


いつもの如く、こちらへと矛先が向けられた。



アイツ「というか....、

なんでお前はあそこで被弾したんだよ!!

あんな弾、サッと避けるぐらいしろよ!!」



戦艦の高威力の弾相手に何を言っているのか...。


本当に、絵に描いたような外道だわ.......。


そんなことを思っていると、


今となってはもう見慣れてしまった特殊警棒が


アイツの腰から抜き出された。


何度も....、何度も....!何度も........!!


私達は痛めつけられてきた。


頑張って抵抗しようとした時もあったが、


その時はさらに酷くなり、


あの子のように、


地下牢へ入れられることもあった。


以来、私達はどんなに酷かろうと、


耐え忍ぶことにしてきた.....。


アイツの望み通り、


消えなかった傷もいくつもできた....。


.....そうだ、あの子は今、どこにいるのかな?


あの時交わした"約束"、


まだ覚えていてくれたりするのかな........?


....私は、アイツの暴行の餌となり、


痛みに耐え続ける中で、


あの子との事を懐かしんでいた........。





..................................

呉鎮守府・廊下



俺は演習後の挨拶をしに、


アイツがいる控え室へと向かっていた。


控え室が近づいてきた時、


その中から大きな声が聞こえてきた。


.....その声はあの時のものと


全く同じように聞こえた....。


俺は思わず勢いよく扉を開いた。



ガチャン!



....そこにはやはり、


あの時と同じ光景が広がっていた....。



俺「........何をしているんですか?」



俺は限界が近い理性を保ちながら尋ねた。


アイツは答えた。



アイツ「おや、提督殿。ご苦労様でした。

それで....、何をしているかと聞きましたか?

それは勿論....、

負けた"お仕置き"をしているのですよ。

あんな簡単に負けるなんて....、

まだまだ足りなかったという事ですよ。」



そう言いながら、


手を上げ続けるアイツを見ていると........。


....演習の時は何とかなったが、


大勝利を収めた後で少し気が緩んだのか、


例の頭痛が再び襲い始めた....。



=================================



.....俺は彼女に今まであった事を全て話した....。


両親、そして姉を失った事、


ここの鎮守府に拾われて


アイツから酷い暴行を受け続けている事、


それを聞いていた彼女だったが、突然、



軽巡棲姫「....!アナタ....イエ、アンタハ.....。」



何かに引っかかったような反応を示した。



俺「........何か?」



軽巡棲姫「.....ハッ!イ、イイエ....。」



俺の気のせいだったのかな....。


そんな事を案じていると、


彼女の後ろから触手のような手が伸びてきた。


そして、鉄格子越しに俺の体の傷口に触れた。



軽巡棲姫「少シ、痛イカモシレナイケド、

我慢シテネ....。」



そう言うと、その手から瘴気の様な靄が出て、


傷がみるみると癒えていった。


痛みはほんの少ししか感じなかった。


そんなことよりも、


なぜ人間である俺を助けるのか不思議だった。


先程の怪我しているから手を出さない


と言ったことはまあわかるが、


怪我を癒す事には繋がらないと思ったからだ。


俺の表情からそれを察したのか、彼女は....、



軽巡棲姫「........タダノ気紛レヨ....。」



とだけ言った後も、


俺の傷を癒してくれるだけだった。



.......................



....それからと言うもの、


アイツの暴行を受けてはここ入れられるたび、


彼女は進んで俺の傷を癒してくれた。


その時に、気の紛らわし程度に


ちょっとした会話も交わす様になり、


初めは恨んでいた深海棲艦の一員である


軽巡棲姫の彼女に対し、


何故が初めて会った様には


感じなかったこともあってなのか、


無意識に次第に心を開いていった....。



.......................



そして、彼女がこの牢入れられて、


数ヶ月近くが経った頃だった。


その日も、俺は午前中に"お仕置き"を食らって、


牢に入れられて、


彼女の治療を受けていた時だった。



.......カツ......!コツ..!カツ!



石段を降りる音が、


いつもよりも激しく聞こえ出した。


そして、姿を現したアイツは、


顔に怒りの表情を浮かべていた。


その勢いのまま、牢の扉をこじ開けるや否や、



アイツ「テメェ‼︎ふざけるんじゃねぇよ‼︎」



バキン!



いつも以上に太い金属棒のようなもので、


殴られた。


痛みに悶絶仕掛けている俺に対し、



アイツ「テメェ....。

修復材の数が知らぬ間に減ってるじゃねぇか。

それに、資源資材の数も報告より少ない...。

お前...、私を騙してたな...?」



と言った。


俺は痛みに耐えつつも、


アイツを嘲笑するような顔で、


無言の肯定を示した。


むしろ、気付くのが遅かったくらいだ。


それだけ艦娘や鎮守府に対して


傲慢、無頓着だということか...。


そんな態度を示していた俺に対してアイツは、


何かを閃いたかのように、ニヤリと笑い、



アイツ「ハハッ!

そうかそうか、お前は艦娘と仲良しごっこが

したかったわけなんだな?

人間なのに、艦娘と...!ククッ!

それじゃあ...、これはどうかな?

仲良くアイツらにしているのと、

同じことをしてやるよ!!」



そう言うと、


アイツは腰からいつもの特殊警棒ではなく、


匕首のようなようなものを抜き出し、


俺の体のいたるところに突き刺した。


今までとは比べものにならない激痛が


全身を襲った。



俺は「がああああああああ!!」



アイツ「ハハハハハ!!

やっぱりお前はいい声で鳴くなぁ!

もっと聞かせろよ、オラ!オラ!」



なおもアイツはやめなかった。


すると突然その手が止まり...、



アイツ「.....おい、何睨んでるんだよ..。」



アイツが隣の牢の軽巡棲姫に目を向けた。


彼女はずっと監禁されているためか、


酷く衰弱しているようではあったものの、


仮面の下で、アイツを睨む目には、


強い殺気が篭っていた。


それに構わず、アイツはそちらの牢へと移ると、


今度は彼女に対してもその凶刃を向けた。


しかし、やはり深海棲艦のその体には、


なかなか効かないようであり、


アイツがイライラし始めているのが


目に見えてわかった。



アイツ「くそッ!

待ってろよ...。今すぐ痛めつけてやるかなら!

お前らには、ありとあらゆる"オモチャ"を

使ってやる!せいぜい楽しみにしてろよ!」



ダダダダ.......



アイツは駆け足で石段を登り、


"オモチャ"とやらを取りに行った。


.......そんなことよりも、今の俺の体は、


十分に傷だらけで、最早瀕死に近かった...。


息が酷く乱れ、


やっとの事で意識を保っている状態でいると、


隣の某の彼女が、触手を伸ばし、


俺の服を脱がせ始めた。


俺は乱れた声のまま、



俺「なっ、何をッ、しているんだ!」



と声を荒げた。しかし彼女は、



軽巡棲姫「ソンナ傷ジャア、

長ク保タナイデショ‼︎」



と同じように強く返して、傷を治し始めた。


...が、その表情がだんだんと曇り、



軽巡棲姫「デモ、コノ胸ノ傷ノジャアモウ...。

....イヤ、私ハモウ、カナリ弱ッテイル....。

ソレニ、アイツハドノ道、

私達ヲ殺スツモリダ...。....ダッタラ....。」



独り言のように呟くと、


彼女は突然、自分の胸に触手を突き刺した。


そして、そこから黒い塊を抜き出した。


そこで彼女の息も次第に乱れ始めてきて、



軽巡棲姫「ハア、ハア....、

アンタノソノ傷ダト、

コノママナラ助カラナイワ....。

ダカラ....、

私ノコノ心臓デ、アンタノ心臓ヲ補強スルワ!」



俺は驚いて声が出なかった。


しかし彼女は続けて、



軽巡棲姫「モシカシタラ、ソレニヨッテ

アンタモ私達、深海棲艦ノヨウニ、

恨ミノ感情ガ増幅サレテシマウカモシレナイ...。

デモ...、コレハアンタヲ生カス為ナノ...、

ゴメンネ.....。」



そう悲しげに言うと、


その心臓を俺の胸の傷口から押し込んだ。


刹那、そこから以前の黒い靄が


大量に出てきて俺を包み、


残された傷が癒えだした。