2018-06-03 23:12:42 更新

概要

小説形式です。 
横須賀のおとなりの、小さい泊地のお話。オールディーズ好きな司令は、今日もレコードをかけながら部隊を運用します。


前書き


《明日に架ける橋 シリーズ》
【艦これ】叢雲/司令「明日に架ける橋」【1】
【艦これ】叢雲/司令「明日に架ける橋」【2】
【艦これ】叢雲/司令「明日に架ける橋」【3】

《章ページ内リンク》
 幕開    終幕

《注意》
 実在の人物や団体との関係はありません

 二次創作
 SSどころでない地の文量
 オリジナルキャラ(提督に名前あったりとか、別基地の人とか、陸の人とかパンピーとか)
 いろいろ独自設定
 公の場であまり使われなくなった単語(気違い、びっこ、メクラ、カタワなど)
 軍事知識なぞない

 好き勝手解釈してる部分あり。
 SSの投稿の場なのに、こんな真っ黒な画面を作ってしまってすみません。

《》
 熊野のワイシャツを洗濯してあげたいです。

《所属艦娘 兼 編成》

 旗艦は改行されている艦娘

【富津泊地】
■第一駆逐隊
 叢雲 
 三日月 曙 春風
■第二駆逐隊
 初雪 
 夕立 朝潮 
■第三駆逐隊
 秋月
 島風 涼月
■第四駆逐隊
 浦風
 卯月 涼風 山風 
■第一水雷戦隊
 神通
 第一駆
■第二水雷戦隊
 那珂
 能代 第三駆
■第三水雷戦隊
 川内 
 木曾 第二駆
■第四水雷戦隊
 夕張
 第四駆逐隊
■第一重巡戦隊
 古鷹
 青葉 足柄 熊野 摩耶 酒匂
■第一航空戦隊
 千歳 
 千代田

▲呉鎮守府所属艦娘(一時富津配下)
 明石

★第一艦隊  (旗・神通/補・叢雲)
 第一水雷戦隊
★第二艦隊  (旗・古鷹/補・那珂) 
 第二水雷戦隊
 第三水雷戦隊
 第一重巡戦隊
★第三艦隊  (旗・千歳/補・夕張)
 第四水雷戦隊
 第一航空戦隊

長くなるので別基地は省略します。

ご指導ご鞭撻、以下略。


幕開

『― ―上、報告終わりー。ちゃんと通話できてよかったよ、じゃ、あたしらはしばらく駐留するから、何かあったらすぐ連絡ちょうだいね』

「泊地了解。すぐに作戦を立案するからな、泥のように眠ってくれ。お疲れ様」

 メモを取っていた手を休め、A4用紙五枚に及ぶ偵察の結果をもう一度流し読んだ。裏表使った上でだ。

 八丈島防衛戦に参加できなかった三水戦は、小笠原諸島への偵察任務を全て任せてくれなきゃストライキを起こすと言った。三夜連続で行われたこの任務、危険度は未知数の上、距離もあった。被害がゼロ、とは言わないが、大きな事故なくやり遂げられたのは、ひとえに川内たちの士気の高さによるものだった。攻撃重視の三水戦、夜戦専門の部隊。想定されていたよりも敵陣深くに切り込んでくれたおかげで、より詳細なデータがもらえた。

 煙草を吸おうと一本くわえたところで、顔の横からマッチを擦る音が聞こえた。

「ふふん、どうです、私が開発した無電は。電波の指向性もバッチリですから、これぐらいの距離なら傍受される確率は数パーセントまで抑えられますよ」

 差し出されたマッチで火をつけ煙を吐き出す。よその鎮守府所属艦娘とはいえ、正式に泊地を預かっている身分。気を使ってくれるならありがたく受け取っておく。

 呉鎮守府所属・明石。

 八丈島に補給基地を作るためにしばらくこちらに駐留することになっているが、一時的に清水の指揮下に入るというのは、二時間前に森友からの電話で初めて知らされたこと。

「申し分ない。こいつは便利だぞ、深海棲艦の電波妨害に引っかからないとはな。問題は……」

「量産はできません、はい」

 艦娘、それも工作艦である明石にしか作成できない機械。この技術を一般化できれば、せめて国内だけでも往時のように戻せるとはいえ、この無線機は艤装と言って差し支えない。妖精を宿らせているからだ。よって妖精と意思疎通のできる司令官クラスにしか扱えないし、そんな人間はわんさかいるわけでない。使用条件が限定的すぎる。

 だが、八丈島までわざわざケーブルを引く必要がなくなったし、その分の工期や護衛戦力を全て攻撃に回せるようになったのだから御の字。国内では明石の関わる数基地しか使っていない貴重品だった。

「手が空いたらこちらの艦娘さんの通信艤装も弄らせてもらいますね。指向性は落ちるとはいえ、長距離で無電を使える便利さと安定性はあちらで保証されていますので、効率はグンと上がりますよ。暗号化については、ただいま民間の情報技術者と協議を重ねているらしいです」

「助かる、頼むぞ」

「了解です、司令官。それじゃ、私は島に戻りますね」

 これだけのためにわざわざ島から来てくれたのだ。「メシでも食っていくか」清水が言うと、「まだ余裕がありませんので」と断られてしまった。

 見送りのために外に出ると相変わらずの寒風にやられてしまい、外套を羽織って体を縮こまらせた。冬の大三角形が燦然と輝き、ほかの明かりは一切ない。八丈島まで戦線を押し上げ、近海へちょっかいを出しに来る敵もここ数日全く見なくなったとはいえ、海岸沿いの灯火管制がなくなることは、深海棲艦との戦争が終わらない限りありえない。緩和されることはあるかもしれないが、眠らない色街のような灯りを焚いていた人類は、未だ息苦しい日々を強制されている。

 食堂を通りかかって、「ちょっと待っててくれ」と声をかけた。テーブルに置いてあった荷物をひっつかみ、急いで明石の元に戻る。「甲斐甲斐しいですね」と茶化す明石の尻を引っ叩いてやった。

 人類は弱い。

 四百万年のあいだ地球の頂点にあぐらをかいていた栄光は、一年も経たないうち、新たに顕れた捕食者に奪われた。海沿いの歴史ある街も、国の象徴たるモニュメントも、人が繁栄するのに必需の施設も、ほとんど破壊された。抵抗できるならまだ救いがあった。海から顕れた『深海棲艦』、奴らに人が研鑽を重ねてきた武器は、一切通じなかった。銃弾を撃ち込んでも、砲弾を撃ち込んでも、ミサイルをぶつけても、小型の核を頭上で爆発させても、奴らの進撃を止めることはできなかった。海が奪られ、艦載機のような化け物に空も奪られ、奴らの顕現と同時に起きた地球全体を覆う電波障害は、島国日本に史上最大の危機をもたらした。受動的な鎖国状態、輸入に頼って膨れ上がった人口を養える能力などない。大衆が暴動を起こすのには十分な条件だった。日本の高潔なモラルは情報時代である現代で希薄になっている。膨大な知識を得て、狭窄した視野での正義が横行する国内は、思想家が群雄割拠し、家も意思もなくなった大衆を扇動して大きな運動が巻き起こっていた。このままでは国が崩壊する。深海棲艦のような人類が太刀打ちできないものを敵とするから混乱するのだ。ならばどうするか。大衆が戦える敵を作ればいい。

 新たに興された新生日本軍は、国内の風紀を厳しく統制することによって大衆が戦える敵となり、奇妙な形ではあるが、一時的な安定がもたらされた。しかしこのままでは外と、いつか爆発する内からの暴力で潰れる。軍が潰れたらもう大衆は弾けたゴム球のように予想がつかない跳ね方をする。どうする、玉砕覚悟で深海棲艦に反抗するか。武器を持ち、無駄に死んでいくのが正しいことなのか。悩みに悩み、玉砕に向かう作戦が話し合われるほどの窮地に立たされた時、彼女が現れた。

 のちに艦娘と呼ばれる『貧民窟の少女』。

 日本は、彼女のおかげで未だ国の体をなしている。

「ん、もういいの?」

 出撃する艦娘たちの詰所に入ると、真ん中に置かれたダルマストーブの前で、叢雲が鼻を赤くしていた。

「済んだ。すまないな、とんぼ返りになってしまって」

「任務だもの、文句なんてないわ。いい加減私たちの運用に慣れたらどう?」

 困ったように微笑む叢雲に持ってきた袋を投げて渡す。「……あら、お漬け物かしら」外からでもわかる糠の匂い。二重にしたビニール袋じゃ防ぎきれなかった。

「保存が効くし持ち運びやすいからな。たくさん入れておいたから、カーペンターズの皆さんにもお分けしてくれ」

「渋い差し入れですね。ま、おつまみになりますし。あの人たち、毎晩飲んで騒いでるんですよ、うるさくって眠れやしません」

 三日月が早速きゅうりをひとかじりした。「くっ、しょっぱ! 漬けすぎじゃないですか」それを聞いてわらわらと一水戦の面子が集まってきた。

 叢雲、三日月、曙、春風。それから神通。

「忙しくてぬか床を世話する時間がなくてな。四日ものだ」

「四日! ひとくちでお茶碗半分いけそうじゃない、三日月、ひとくち……しょっぱ!」

「はむ……あら、わたくしはこのぐらいの方が好みです」

 あっという間にきゅうりの半分がなくなり、最後に神通が小さくかじって言った。

「お茶の一杯も飲んで行きたいところですが、そろそろ準備しましょう。提督、ありがたく頂戴していきます」

「おすそ分け忘れるなよ。叢雲を見張っておいてくれ」

 むこうずねを思い切り蹴られて飛び上がった。

 各員艤装展開、神通が声をかけると、花々しい女の香りは鉄と火薬の匂いに変わる。狭い詰所が余計に狭くなる。明石も艤装を展開し、武将のような鎧をまとった。

「皆さん、復路もどうかよろしくお願いします」

「明石を頼んだぞ」

 全員が足を踏みならして同意した。艤装を展開して人間離れした力を発揮しているから地面が揺れる。ダルマストーブが細かく震え、金具がカチャカチャと音を立てた。

「一水戦、護衛任務承りました。.……時刻二◯◯◯、進路を八丈島に向け、富津泊地を発ちます」

「うん。出撃日誌は書いておくから、気をつけて行ってこい」

 詰所からつながるドックへの扉を開けてやると、潮風がストーブの火を揺らす。春風がスイッチを切り、暖房がなくなった詰所は急激に冷え込んで行った。ドック内に照明は点いておらず、緑色の発光塗料が儚げに海と陸の境目を示している。

 全員が海に入り、塗料の塗られた陸側ギリギリに清水が立った。

「戻っていいわよ。寒いでしょ」

 槍のような(マストらしいが)艤装の一部で胸をつつかれても首を振って「あと数分ぐらい待たせてくれよ。またしばらく会えなくなるんだし」と清水が言う。

 曙が口を挟む。

「惚気ないでくれる?」

「曙に会えなくなるのも寂しいなあ。ちょっと抱きしめさせてくれ。ほら、こっちこい」

 人間は海に浮かべない。さすがに真冬のこの時期に海に入るのは遠慮したい。「ふざけんなクソ提督ッ」大きな音を立てて蹴り上げられた海水が清水に向かってきた。が、一歩下がるだけで飛沫は届かない。鼻で笑ってやると、曙の悔しそうな唸り声が真っ黒な海から聞こえてきた。

 敵が日本の領海に戦力を集める前に作戦を立てなければならない。戻って関係者に連絡し、決まればすぐにでも八丈島に待機している攻撃部隊に命令を下す。作戦遂行まで、遅くて一週間。こちらの攻撃が開始されたと同時、南側では沖縄への漸減作戦、北では北海道への足がかりをつくるため、長年悩まされてきた敵の基地を壊滅させる作戦が始まる。八丈島への基地建設作戦は成功の狼煙を上げ、《湊川作戦》と銘打たれた、人類の反抗が開始される。

「二◯〇〇、一水戦、護衛任務開始します」

 神通が静かに宣言し、「よろしくお願いします!」明石が全員に頭を下げて、先行する神通に着いていった。

「行ってくるわね。ちゃんとお留守番しているのよ」

 叢雲が後に続き、「体だけは気をつけなさいよ」と曙が吐き捨てて行く。「ぼのさんのデレ、かわいいですよねえ。行ってきまーす」三日月がぶんぶん手を振って、「行ってまいります、お漬け物、向こうでも楽しませていただきますね」柔らかい物腰で春風が最後尾に着いていった。

 真っ黒海に溶けていった彼女らの姿はすぐに見えなくなった。煙草に火をつけ、ついでに日誌に書き込むため黒い布をかぶせた電灯をつけて、大きく煙を吐き出す。

 もうノートが一冊終わってしまう。一行ずつ書かれた文字はここに所属する多数の艦娘が書いている。崩れた字、整った字、大きな字、小さな字、丸っこい字に尖った字。落書きだって多数ある。大半が卯月かもしれない。一ページ丸々使いやがって、最初のページから見返して行くだけで一本吸い終えてしまった。

 いつもと変わらない潮騒がドックの中に響いている。 


後書き

〔更新履歴です、一言お願いします!〕
6/3 4話開始


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SS好きの名無しさんから
2018-06-05 23:04:01

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2018-06-05 23:05:15 ID: fvLRKPPg

4話始まりましたね、今回はどんな物語になるのか楽しみです

2: んなちぃ 2018-06-05 23:53:49 ID: 3RNrXLNi

うっす、毎度どうもです。

私も半ばぐらいまでは何も考えずに書いているので、どんな展開になるか楽しみです。
ご贔屓にどうぞ。


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