2018-11-18 22:30:31 更新

概要

ある日、店に鉄血鎮守府と言う場所から”着任依頼”が届き・・・


前書き

※前書いていたのを消去して新しく書きました。


キャラ紹介、

提督:元提督、今は村雨と一緒に店を切り盛りしている。

村雨:駆逐艦の女の子、今は店の女将をしている。

プリンツ:元提督に依頼書を出した女性、何か解決して欲しい事情があるようだが・・・

ヒッパー:プリンツの姉、言動が荒く仲間に対しても容赦ない。

ライプツィヒ:大人しそうな女の子、よく体調不良になるらしい。

シャルンホルスト:戦艦の女性で夜は1人酒をしている、口数が少ない?

指揮官:前にこの鎮守府に着任していた責任者、プリンツの回想と物語後半に現れる。

他に何人か出る予定。


※村雨は「提督」と呼び、プリンツたちは「指揮官」と呼びます。


提督「ここのはずなんだけど・・・」


提督が地図を見ながらある建物を探している、


提督「おや、あのマーク・・・あそこかな?」


目的の場所を見つけたようで、提督はその場所に歩いて行く。


・・・・・・


数日前の事、


村雨と一緒に店で営業している中、1通の手紙が届く。


提督「誰からだろう?」


開けてみると内容は、



”助けて欲しい、貴方の力が必要なの!”



たったそれだけの一言しか書かれていなかったが、


「助けて欲しい」の言葉に、提督は動いたのだ。


・・・・・・


提督「? おや?」


建物の入り口付近で何か揉めている姿が、


?「ライプツィヒ! またこんな所で時間潰して!!」


?「す、すいません。 ヒッパーさん。」


体調が悪いのか、地面にうずくまっている女の子と、それが気にくわないのか怒声を浴びせている女の子。


ヒッパー「それで? 頼んだ品物は買ってきたわけ? ・・・はぁっ!? 頼んだのと全然違うじゃない!!」


買い物を頼んでいたようだが、品物が違ってより言動を荒げる。


ライプツィヒ「すいません、売り切れだったので違うのを代わりに・・・」


地面にうずくまる女の子は何度も謝るが、


ヒッパー「あんたがちんたらしてるから売り切れたんでしょ! 本当に使えないわねぇ!!」


ライプツィヒ「・・・・・・」


提督が2人を見つめる中、言動の荒い子が提督に気付く、


ヒッパー「ちょっと、ここは部外者は禁止よ。 勝手に敷地に入って来ないで!」


怒りの矛先が提督に行く中、


提督「いや、このオレに”着任依頼”が届いてね~。」


提督は着任依頼書を見せる。


ヒッパー「この筆跡・・・あいつ、何のつもりよ、姉の私に何の許可もなく!」


着任依頼書を見て更に不機嫌になり、


ヒッパー「オイゲン! 出てきなさい、オイゲン!」


彼女が建物の中に入っていく、


提督「大丈夫か?」


地面にうずくまる女の子に近づく提督。


ライプツィヒ「あ、すいません。」


提督が手を出し、彼女は手を支えに立ち上がる。


提督「何と言うか・・・災難だね。」


今の状況を見て同情をするが、


ライプツィヒ「いえ、いつもの事ですので・・・」


女の子は何も言わず、建物内に入る。


提督「・・・・・・」


提督も中に入っていく。


・・・・・・


建物内に入るなり、


ヒッパー「オイゲン! あんた一体何のつもりよ!!」


彼女は今度は別の女性に怒声を挙げている光景、


ヒッパー「姉の私に何の許可も無くどこの馬の骨も分からない人間に着任依頼を出して!」


彼女の怒声は相変わらずだが、相手の方は冷静に、


?「別にいいでしょ? 貴方と私の考えが違うんだから?」


挑発的な態度で接するもう1人の女性。


ヒッパー「あんたねぇ、今この鎮守府で一番上はこの私よ! だったらまず最初に私に許可を貰うのが先でしょ!!」


彼女の言い分に、


?「一番上? 一体いつからそんな急昇進したのかしら?」


彼女の態度は崩れず、


ヒッパー「ちっ、覚えていなさいよオイゲン!」


彼女はその場から去る。


?「申し訳ないわね、見苦しい所を見せてしまって。」


女性は提督に近づき、


プリンツ「貴方に着任依頼書を出したのはこの私、”プリンツ・オイゲン”よ・・・よろしく。」


提督「ああ、よろしく。」


軽い挨拶をする2人。


プリンツ「ライプツィヒ、指揮官を部屋に案内してくれる?」


ライプツィヒ「あ、はい。 分かりました。」


先程、地面にうずくまっていた女の子が「こちらです。」と言って提督を部屋に案内する。


・・・・・・


部屋に着き、鍵を開けるライプツィヒ。


ライプツィヒ「ここが指揮官さんの部屋になります、後執務室はこの廊下の突き当りを右に・・・」


提督「そうか、ありがとう。」


ライプツィヒ「いえ・・・また何かありましたらお呼びください、これからよろしくお願いします。」


そう言って、ライプツィヒは去る。



しばしの休憩後、執務室に全員招集のアナウンスが流れ、提督は執務室へと向かう。


提督「え~っと、この鎮守府に着任することになった・・・よろしくね。」


提督は一応挨拶をするが、


ヒッパー「ふん! あんたが何でここに呼ばれたか知らないけど、おかしなことをしたらタダじゃ置かないわよ!」


プリンツの姉と言われた女性は罵声だけ言って去って行く。


?「・・・あまり会話は好きでない。 夜は食堂にいるから、用があるなら呼んでくれ。」


軽い説明をしてまた1人、また1人とその場から去って行く。


提督「おやおや、本当に同じ屋根の下で生活している関係なのかな~?」


明らかに各人間毎に仲が良さそうに見えない状況、提督は「う~ん」と悩み始める。


Z23「Z23です! よろしくお願いします、指揮官!」


しかし、全ての人間の性格に難があるわけではなく、駆逐艦や軽巡の子達は重巡や戦艦たちと比べると好意的だ。


提督「ああ、よろしくね。」


「話し相手がいて良かった~」と胸を撫で下ろす提督。


提督「それじゃあ解散、各員任務を全うしてくれ。」


そう言って、皆と別れ執務室で書類整理を始める提督。


・・・・・・


夕方になり、


提督「大体終わったな・・・少し鎮守府内を見回すか。」


提督は執務室から出る。


提督「・・・・・・」


鎮守府内を回って見るが、


提督「どう言う事だろう、誰1人と姿が見えない。」


出撃と委託を除くと、鎮守府内に5人程いるはずなのだが、まだ1人も見かけない。


提督「もしかしたら、食堂にいるのかも。」


そう思って、食堂に向かう。



食堂に立ち寄ると、


提督「・・・誰もいない。」


夕方になればたくさんの人だかりが出来ているはずだが、そもそも人の気配がない。


?「誰だ? 何だ指揮官か?」


振り返ると、ビールを片手に飲んでいる女性を見つけて、


?「どうだ? お前も一杯付き合わないか?」


飲みの誘いを受ける、


提督「ふむ、では少しだけ付き合おうかな。」


提督はグラスを受け取り、注がれたビールを飲み干す。



?「指揮官は戦争をどう思う?」


ビールを一気飲みしつつ、女性は提督に問う、


提督「戦争? そうだな・・・」


提督は少し考え、


提督「ある者は愛する人のために戦い、ある者は国のために戦う・・・何かを、もしくは誰かを守りたい


   気持ちがあるから戦う物だと思う、両者ともにね。」


?「・・・・・・」


提督「戦争には恨みなんてものは無い、結局勝つか負けるかそれだけ。 いちいち恨んでも仕方ないし、勝ちたいのなら


   強くなるしかない、残酷だろうがそれが戦争と言うものだと思っている。」


?「・・・指揮官の話を聞く限り、まるで「自分は戦った事がある」と言っているように聞こえるが?」


提督「まぁね、昔はある所属の特攻部隊だったよ、今もしぶとく生きているがな。」


?「ふふ・・・」


彼女は再び提督のグラスにビールを注ぐ、


シャルン「指揮官とは話せそうだ、私はシャルンホルスト! 今夜は一緒に飲み明かそう!」


提督「う~ん、まぁいいだろう。書類整理は明日でもやれるか。 よし、今夜は付き合うぞ!」


提督とシャルンホルストは朝まで飲み明かす。


・・・・・・


プリンツ「おはよう、昨日はよく眠れたかしら?」


プリンツが執務室にやって来る、


提督「いや、ほとんど寝ていない。」


プリンツ「あら、いつもと違う環境で落ち着かなかったかしら?」


提督「いや、実を言うとな。」


提督は昨日シャルンホルストと朝まで飲み明かした旨を伝える。


プリンツ「シャルンホルストと? ああ、だから今日は「二日酔いで休む」と言っていたわけね。」


納得するプリンツ。


提督「休日届はオレが書いたから、わざわざ彼女に伝えなくていいぞ。」


プリンツ「・・・そう言う指揮官は、朝まで飲み明かして体調は大丈夫なの?」


提督「うん、オレはこれでも体は丈夫なんでね。」


プリンツ「そう、ならいいわ。 書類整理、よろしくね。」


そう言って、プリンツは執務室から出る。


プリンツ「あの酒豪のシャルンホルストを差し置いて、平然としていられるなんて流石ね。」


プリンツはそう呟きながら廊下を歩いて行く。


・・・・・・


提督「さてと、書類整理は終わった・・・もう深夜か、風呂に入って寝ようかな。」


そう思い、執務室から出ようとして、


プリンツ「書類整理は終わったかしら、指揮官?」


プリンツが再び入室する。


提督「ああ、この通り。」


提督は整理し終えた分厚い書類を見せる。


プリンツ「・・・5日分の書類を1日で終わらせたの!? ちゃんと内容は見たわけ?」


提督「ああ、明日から約1週間の出撃海域情報の詳細に、最近解禁された委託場所の把握、そして今月の鉄血の戦績も全て


   目を通したが?」


プリンツ「・・・・・・」


「どうやらズルをしていない」と感じるプリンツ。


プリンツ「流石、あなたの噂は本当だったわけね。」


提督「? オレの噂?」


提督は首を傾げる。


プリンツ「この鉄血の拠点はあなたが働いている場所からかなりの距離があるでしょ?」


提督「うん、数100kmはあるね。」


プリンツ「この世界は広いから、別の拠点での活躍や実績がこの拠点にも情報として届くわけ。」


提督「ほほぅ。」


プリンツ「大抵は平凡な実績や昇進報告位で興味をそそられないけど、あんたの実績を見たら驚いたわ。


     他と全く類を見ないから。」


提督「・・・もしかして、オレを呼んだのはそれが理由か?」


提督の質問に、


プリンツ「半分正解、でも答えは教えないわ・・・今教えたら帰ってしまいそうだからね。」


提督「・・・・・・」


プリンツ「話を変えるけど今夜は予定ある? 私、今とても寂しい気分なの・・・分かるでしょ?」


胸をちらつかせて誘惑するプリンツ。


提督「悪いけど、オレには嫁さんがいるから・・・お断りする。」


そう言って、部屋に戻る提督。


プリンツ「私の誘惑を断るなんて・・・ふふ~ん、流石指揮官ね♪」


断られたはずなのに、何故かにやけているプリンツ。


・・・・・・


翌日、


約1週間分の書類を1日で終えてしまい、数日間は何もしなくていい状態になり、鎮守府の皆との


交流を図ろうとする提督。


ヒッパー「はぁっ!? 誰があんたなんかと話すもんか!」


プリンツの姉であるヒッパーは余裕で断り、


グナイゼナウ「申し訳ありませんが、私は予定がありますので姉さんにでも頼んでください。」


シャルンホルストの妹であるグナイゼナウにも断られる。


提督「はぁ~、どうしてこうも会話を拒む事やら・・・」


ため息をついて廊下を歩いていると、


ライプツィヒ「あ、指揮官さん・・・お疲れ様です。」


いつも体調が悪そうなライプツィヒと会う。


提督「お疲れ様、今日は元気だね。」


ライプツィヒ「はい、最近は倒れなくなりました。」


「・・・・・・」


「いつもは倒れるって事?」と心配になる提督。


ライプツィヒ「あ、すいません。これから昼食を摂りに行くので・・・」


提督「おや、もうそんな時間か・・・オレも食堂へ行こう。」


一応ライプツィヒにも許可を貰い、一緒に食堂へと向かう。


・・・・・・


ライプツィヒ「少しお待ちくださいね。」


カウンターで調理を始めるライプツィヒ。


提督「鎮守府の人間は留守なのか? 人の気配がまるでないけど?」


提督の質問に、


ライプツィヒ「部屋で皆待機していますよ。」


提督「? 皆?」


ライプツィヒ「はい、出撃や委託の際も”行きたい人間”が行く方針なので・・・」


提督「・・・・・・」


ライプツィヒ「ヒッパーさんのように交流をしない人はあまり出撃や委託をしませんし、オイゲン姉さんみたいに


       活動的な人は進んで出撃や委託に参加しますし、人によってバラバラなんです。」


提督「そうなのか、それでよく生活が成り立つね。」


ライプツィヒ「本営から何度も改正指示が出ておりますが、未だに見通しが付かずそのうち監査が来るとかで・・・


       ヒッパーさんも何か策を講じているらしいですが。」


そう言っている内に調理が終わり、


ライプツィヒ「こんなものしか出せれませんが・・・良ければ、どうぞ。」


そう言って出してきたのは、


提督「おおっ、サラダの盛り合わせか。」


多種類のサラダを盛っているが、それ以上に、


提督「添え方が芸術的だ、君はもしかして料理が好きとか?」


提督の質問に、


ライプツィヒ「はい、一応独学で本を読んだり、調理を工夫したりしています。」


提督「成程。これなら店を開いてもいいレベルだな。」


店を出している提督からすれば彼女を働かせてもいい位な気持ちな言葉だったが、


ライプツィヒ「初めて褒めて貰えた・・・あ、ありがとうございます。」


ライプツィヒは思わず礼をする。


提督「? 初めて?」


ライプツィヒ「はい、皆、用がある時以外はほとんど部屋に籠っているので、私みたいな病弱の声に耳を傾けてくれません・・・」


「・・・・・・」


ライプツィヒの言葉を聞いた提督は、


提督「皆に自分の料理を食べさせたいんだな?」


提督の質問に、


ライプツィヒ「はい・・・そしたらまた皆で食堂で話せるんじゃないかなぁ~っと思いまして。」


ライプツィヒには皆とまた一緒に過ごせる願いを持っていた。



理由は不明だが、何故この鎮守府の皆が部屋に引き籠るようになったのか。


提督「まだ次の仕事まで時間があるな・・・よし、ちょっと調べてみるか。」


提督はライプツィヒに「ご馳走様」と伝えて、資料室に向かう。


・・・・・・


提督「ふむふむ・・・」


資料室に入った提督は過去の報告書を読み始める。


提督「この鎮守府には・・・過去5回に渡って提督が着任退任を繰り返している・・・しかも、近年で?」


更に深読みしていくと、


提督「原因はヒッパーや戦艦(巡洋戦艦)の世話が手に負えず退任が後を絶たなかった・・・」


確かに暴言を吐くし、態度は大きいが決して悪い人間には見えないが、


提督「これを報告した人間は・・・プリンツ?」


本営の報告欄にはっきりと”プリンツ”と自筆で掛かれていた。



プリンツを呼んで、事情を聞くと、


プリンツ「ええ、確かにあの報告書を上に提出したのは私よ。」


素直に認めるも、


プリンツ「でも、事実よ。 ヒッパーたちの言動は悪いし、やるべき事は全くしない。


     それは私が何度も見ている。」


提督「でも、一応君の姉だろ? それを平気で上に報告するなんて・・・」


提督の言葉に、


プリンツ「指揮官の判断に任せるわ、もう過去の事だから。 それに今更蒸し返したって今の状況は全く変わらない、


     ・・・これで分かったでしょ? あんたを呼んだ理由が?」


提督「・・・・・・」


プリンツ「あなたにこの鎮守府に来てもらって”治安を改善して欲しい”と思ったの。 私では手に負えない位に


     悪化してしまったから。」


提督「・・・・・・」


プリンツ「失望したかしら? ごめんなさい・・・でも、私はこういう女だから。」


そう言って、プリンツは執務室から出て行く。


提督「どうしてあんなに虚勢を張るのだろうか?」


プリンツの心境を読み取る提督。


提督「プリンツの過去に何かあったのか? もう少し過去を遡る必要がありそうだな。」


そう言って、また資料室へと向かう提督。


・・・・・・


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは暗い部屋で1人立ちすくんでいる。


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは昔の事を思い出す。


・・・・・・

・・・



プリンツ「指揮官、今日行う書類を持って来たわ。」


プリンツが書類を持って来る。


指揮官「おおっ、助けるよ。プリンツは本当に頼りになるよ~。」


指揮官からの誉められるプリンツ。


プリンツ「そんなに褒めたって何も出ないわ、ほらさっさと仕事に取り掛かって。」


秘書艦だったプリンツは次の作業のために執務室から出て行く。



毎日が忙しい、仲間への出撃と委託依頼、秘書としての役目。多忙な故、休みもほとんど取れなかったが、


それでもプリンツの表情は笑顔だった。



プリンツ「今日の任務は上場、戦績も上下無し・・・今日も達成ね。」


報告書に記載しながらプリンツは机に座って報告書を書いている。


指揮官「お疲れプリンツ! 毎日無理をして悪いな。」


出張会議から指揮官が帰還した。


プリンツ「おかえりなさい、いいのよ。 私は秘書艦、指揮官の側で仕えるのが仕事なんだから♪」


プリンツは指揮官に近づき、


プリンツ「今日は疲れたでしょ? 私も今日は頑張ったし、ご褒美が欲しいかな~♪」


そう言って、胸をチラ見セすると、


指揮官「分かった分かった、じゃあ早く終わらせて部屋に行くか。」


指揮官とプリンツはすぐさま仕事を進める。



プリンツは指揮官に恋をしていた、今まで恋すらしたことのない彼女にとって、普段より胸がドキドキする。


プリンツ「これが”愛”って言うのね・・・言葉ではよく聞くけど、実際に経験すると恥ずかしい物ね。」


プリンツが多忙な中、頑張っているのは指揮官のためである。


プリンツ「女は愛する者のためならどんな辛い事でも耐えられる・・・確かにそうね、忙しくても指揮官ために、って


     思えば全然苦ではないわね。」


全ては指揮官のため、更なる昇進を目指してプリンツはより一層指揮官のために頑張り続けた。


・・・・・・


ある日の事、


指揮官「ヒッパーや戦艦クラスの言動が荒い、何とかして欲しいよ。」


指揮官が愚痴を漏らすと、


プリンツ「それは我慢して、言動は悪いけどやるべきことは、きちんとしてくれるから。」


プリンツは姉たちを気遣うが、


指揮官「しかし、上官相手にあの態度・・・これは上司に対してふさわしくない。」


そう言って、手に取ったのが上への報告書。


プリンツ「指揮官、そんな書類を出して何をするつもり?」


指揮官「何って、ヒッパー達の傲慢な勤務の報告だが?」


プリンツ「だから、ヒッパー達の言動は悪いけど戦果はきちんと取ってくれて・・・」


指揮官「知ってる、でもあの言動だけはどうしても許さない。」


プリンツの願いも空しく、指揮官は報告書を書き始める。


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは敢えて止めなかった、指揮官の言う通り言動に難があるのは承知の上で、上への報告で少しは改善されるなら


それでもいいかな、と言う程度に思っていた。


指揮官「よし、後は秘書艦であるプリンツが読んだ確認としてここに自筆で記入してくれ、明日本営に提出するから。」


プリンツ「・・・分かったわ。」


プリンツは抵抗があったものの、自分の名前を記入。



・・・ここから状況が一変する。


ヒッパー「ちょっと、どう言う事なのプリンツ!! 私たちが左遷て!!?」


突然上層部から指示された”左遷”という言葉、ヒッパー達がプリンツに詰め寄る。


プリンツ「知らない! 私だって驚いているわ!」


プリンツは必死で考える、


プリンツ「! 指揮官が出した報告!?」


プリンツは思い当たる節があり執務室に向かう、


プリンツ「指揮官!!」


執務室には指揮官の姿が無い、本営に呼ばれたのか?


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは指揮官の机にあった報告書を開く、


プリンツ「!? 嘘!? 何よこれ!!?」


プリンツは目を疑う、それもそのはず。



報告書の内容には、ヒッパー達の暴言に関しての改善要求かと思っていたのが、内容は鉄血部隊の左遷要求。


ヒッパー達の傲慢な行動、言動を酷く書かれており、挙句に鉄血の誰かが金を使い込んでいるとの内容まで・・・



プリンツ「何で? 私が確認した時はこんな内容なんかじゃ・・・」


動揺していると、ヒッパー達が執務室に入って来て、


ヒッパー「どうなってるのよオイゲン!」


錯乱していたヒッパー達がプリンツの持っていた報告書を奪って内容を読むと、


ヒッパー「何よこれ? 私の言動が最悪・・・オイゲン! あんたが報告者って、一体どういうつもりよ!!」


ヒッパーの怒りの矛先はプリンツに向けられる。


プリンツ「知らない、私は昨日指揮官に名前を記入しろって言われただけ・・・」


プリンツは説明するが、


ヒッパー「じゃあこの左遷要求って言葉を知らなくて記入したわけ!? 悪かったわね、言動が悪くて・・・態度がデカくて!!」


ヒッパー達の怒りが治まらない。



結局、鉄血部隊は全員端にある鎮守府へと左遷、明らかに指揮官に嵌められたのだが、


当の指揮官は行方不明で、全てプリンツの勝手な報告が原因と判断され、仲間との間に亀裂が生じてしまう。


・・・・・・


その後、指揮官は違う鎮守府で昇進をして、艦船と婚約したとの発表を受ける。


指揮官はプリンツを愛していたわけではない、昇進のために利用されただけだった。


プリンツ「ははっ・・・」


それを知った時にはどうにもならない位に絶望していたプリンツ。


プリンツ「皆、私の事を恨んでいる、指揮官は私を利用しただけ・・・そして私は用無し。 好きになったのは


     私の勝手な思い込み・・・はははっ。」


何もやる気が起こらず、次第に生きる気力すら失せて行くプリンツ。


プリンツ「死にたい・・・もう、私は・・・死んでしまいたい。」


そう思ったプリンツは海辺へと走って行く。


・・・・・・

・・・



プリンツ「・・・う~ん。」


寝ていたようで暗い部屋の中、彼女は目覚める。


プリンツ「・・・また昔の事を思い出していたわね。」


過去を思い返していたプリンツ。


プリンツ「・・・今何時?」


時計を確認すると、


プリンツ「もうこんな時間、そろそろ新しい仕事が入ってくるはず。」


すぐに着替えをして、執務室に向かうプリンツ。


・・・・・・


提督「おっ、どうしたプリンツ。 そんなに慌てて?」


執務室に入ると、提督とライプツィヒにZ23がいて、


プリンツ「ライプツィヒ? どうしてここに?」


プリンツは状況が読めていない、


ライプツィヒ「はい、今日からのお仕事が入って来たので、プリンツさんの部屋をノックしたのですが、返事が無かったので


       代わりに私とZ23ちゃんと一緒に指揮官さんのお手伝いをしていました。」


そう言って、書類を整理しながら提督に書類を渡して行く2人。


提督「ずっと秘書艦をしてくれていたから疲れていたんだろう? 今日は2人がいるからプリンツは


   ゆっくり休んでいろ。」


プリンツ「・・・そう、なら指揮官のお言葉に甘えるわ。」


そう言って、自分の部屋に戻るプリンツ。


・・・・・・


翌日、


プリンツ「指揮官、頼みがあるんだけど。」


プリンツからの頼み、それは「休日許可」で、


提督「ああ、構わないよ。」


あっさり認める提督。


プリンツ「ありがとう、ちょっと行きたい場所があるから後は頼んだわよ。」


一応、仲間に伝えた後、鎮守府から出るプリンツ。



提督「・・・と言うわけだから、プリンツの代わりに出撃を頼むね、ヒッパー。」


ヒッパー「はぁっ!? 何で私がプリンツの代わりに出撃しないと行けないわけ!?」


今日はプリンツが休日を取っており、前衛部隊の枠が1つ空いたことで急遽ヒッパーを入れる事にしたのだが、


ヒッパー「私は部屋でのんびり過ごしたいわけ! 別に1人いなくてもいいじゃない!」


提督「そうも行かん、それにヒッパーに出撃して欲しいのは別の理由があるからなんだ。」


ヒッパー「・・・・・・」


提督とヒッパーの言い争いが続く中、


ヒッパー「はぁ~っ、いいわよ、出ればいいんでしょ! この借りは必ず返してもらうわよ、バカ指揮官!」


散々暴言を吐いた後、渋々出撃することにしたヒッパー。


・・・・・・


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは店の扉の前で立ちすくんでいる。


プリンツ「確かここよね・・・」


プリンツは深呼吸をして店の扉を開ける。


村雨「いらっしゃいませ~♪ あら、初めての方ですよね?」


店の女将である村雨がプリンツを席に案内する。


村雨「ご注文が決まりましたらお呼びください~♪」


そう言って、女将は次の客の注文を承りに向かう。


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは女将を凝視して、


プリンツ「あれが、指揮官の奥さん、か。」


しばらく見続けているプリンツ。


・・・・・・


ヒッパー「作戦完了! ほら、損傷した人間は修理して! ほら早く!」


旗艦だったヒッパーが仲間に各指示を行う。


提督「ふむ・・・」


提督はヒッパーの行動を見ている。


提督「確かに言動は悪いが、命令と出撃はきちんとやってくれている・・・ただ言動が悪いだけ、か。」


そう思っていると、


ヒッパー「指揮官、そんなところで何突っ立ってるわけ? 暇なら手伝ってよ!!」


確かにヒッパーの言う通りで、


提督「悪い悪い、では手伝うとしよう。」


提督も彼女たちの輪に入り、手伝いを行う。


・・・・・・


村雨「あらあら、わざわざそんな遠い場所からここまで?」


店内には村雨とプリンツしかいなく、会話をしながらビールを飲んでいるプリンツ。


プリンツ「この店を続けて長いの? いつも1人で切り盛りしているの?」


プリンツの問いに、


村雨「いいえ、旦那様がいて手伝ってくれますよ、ただよく出張に行くことが多いので、混雑したら


   仲間を呼んで手伝ってもらっています~♪」


プリンツ「ふ~ん。」


”仲間”と言われて思い詰めるプリンツ。


村雨「それで、提督はプリンツさんのいる鎮守府できちんと仕事していますか?」


プリンツ「!? えっ?」



プリンツは提督の事を一言も言っていない、何故女将は気づいたのか?



村雨「直感で分かるんです、わざわざ遠くから来たことも含めて何か事情があると察っしますし、


   入店以降ずっと私を見ていますよね? 提督ではなく私に用があるのですか?」


プリンツ「・・・・・・」


村雨「ずっと気になってましたけど、何か思い詰めた表情をしていますよね?


   気づいていないでしょうけど、悲しそうな目をしていますし・・・何か悩みでもあるんですか?」


プリンツ「・・・・・・」


自身の心境を読み取られて驚くプリンツ。


村雨「お待たせしました~、ビールですね~♪」


プリンツ「・・・ありがとう。」


渡されたグラスを片手に一気に飲み干すプリンツ。


プリンツ「女将さん、あなたは・・・」


プリンツは女将に語り掛ける。


・・・・・・


提督「さてと、状況を整理すると・・・」


提督は鉄血鎮守府での出来事をまとめ始める。


提督「プリンツがオレに”この鎮守府の治安を改善して欲しい”との依頼をしてきて・・・」


得た情報を次々と読み上げる。


提督「ヒッパー達の言動や態度が悪くて上の報告書を出した、と。 しかし、実は”左遷手配”で


   名前の欄には”プリンツ”の自筆が・・・」


最後まで読み続け、


提督「実際は確かに言動は悪いが、命令すれば素直に従ってくれるし戦果は悪くない。


   何か報告書と実際の状況が違う気がするな・・・おや? よく見たら・・・」


提督は何かに気付き、


提督「成程、それでプリンツの態度が・・・」


提督はこの鎮守府の事情を悟る。


・・・・・・


深夜、


プリンツ「遅くなってごめんなさい。」


プリンツが執務室に来て謝罪する。


提督「別に構わないよ、仕事も任務もそんなに急ぎって程でもないから。」


提督は相変わらずマイペースである。


提督「そうそう、プリンツがオレを呼んだ理由、この鎮守府の治安を改善して欲しいって言ってたね?」


プリンツ「・・・ええ、そう言ったわ。」


提督「どうやら目途が立ちそうだよ。」


プリンツ「! どうして、何をしたの?」


提督の言葉に驚くプリンツ。


提督「何もしていない、そもそも”治安が悪いわけじゃなかった”って事だ。」


プリンツ「・・・一体何を言ってるの?」


プリンツは提督の言っている意味が分かっていない。


提督「ついて来い、その答えを教えてやる。」


そう言って、提督はプリンツを連れて執務室から出る。


・・・・・・


着いた場所は、食堂。


プリンツ「ライプツィヒ? 何をやっているの?」


プリンツが見た光景、ライプツィヒとZ23が食堂で調理している光景。


ライプツィヒ「あっ、おかえりなさい。 オイゲン姉さん。」


そう言いつつ、皿にスープを流し込むライプツィヒ。


ライプツィヒ「寒かったですよね? これは”コトコト煮込んだコンソメ野菜スープ”です。 指揮官さんにレシピを教えて貰って


       試しに作って見ました、さぁどうぞ。」


プリンツの前に温かそうなスープが置かれて、


プリンツ「ライプツィヒ、あなた料理が得意だったの?」


どうやらそのことすら知らなかったらしいプリンツ。


ライプツィヒ「え~っと、得意って程では・・・独学です、はいっ。」


照れくさそうに顔を赤くするライプツィヒ。


プリンツ「・・・頂くわ。」


出されたスープをスプーンですくって口に運ぶ。


プリンツ「うん、温かくて美味しい。」


ライプツィヒ「そうですか、良かったぁ~♪」


ライプツィヒは笑顔だ。


プリンツ「ライプツィヒが料理好きなのは分かった、でも治安が悪くなかったとはどう言う意味なの?」


プリンツの質問に、


ヒッパー「ライプツィヒ! 私にもスープを頂戴!!」


ライプツィヒ「あっ、はい。 ヒッパーさん!」


急いでスープを皿に注ぐライプツィヒ、


ヒッパー「遅いわね~、そんなんじゃスープが冷めちゃうじゃない!!」


相変わらず言動が悪いヒッパー、


ライプツィヒ「すいません、ど、どうぞ。」


すぐにヒッパーの元に持って行くライプツィヒ、しかし、よく見ると・・・


プリンツ「? いつもだと罵倒されて不安な表情なのに、どうして笑顔なの?」


ライプツィヒの表情は何故か微笑んでいる、


提督「実はあの2人・・・仲が悪いわけでは無いようでな。」


プリンツ「・・・・・・」


スープを飲むヒッパーに、それを見守るライプツィヒ。


ヒッパー「ふん、あ、味は悪くないわ。 わ、私が飲めるんだからひとまず合格ね!」


ライプツィヒ「本当ですか? 嬉しいです!」


ライプツィヒは喜ぶ、


ヒッパー「何よ、少し褒めた位でそんなに盛り上がって! バカじゃないの! ほら、さっさと次持って来てよ!」


ライプツィヒ「は、はいっ。今すぐに~」


そそくさとカウンターに戻るライプツィヒ。


提督「まぁ、要はヒッパーは単にツンデレ、ライプツィヒは良心的な世話好きだね。」


プリンツ「・・・・・・」


プリンツは無言のままだ、


提督「あの報告書に書いてあった内容とは全く違うから最初は疑問に思ったけど、よくよく考えたら


   あの報告書、プリンツが書いたなんて有り得ないんだよね。」


プリンツ「? 何を言ってるの? あれは確かに私の自筆で・・・」


プリンツが口を開いたところで、


提督「おっ、来たな。 指揮官殿。」


プリンツ「!?」


プリンツたちの目の前に、報告書を提出した指揮官が現れた。


指揮官「これは一体どういう状況だ?」


呼ばれた指揮官は状況を理解できていない。


ヒッパー「! お前は!!」


真っ先にヒッパーが駆け寄る、


ヒッパー「この! 何で私たちを左遷に、左遷にしたのよ、ふざけないで!!」


胸ぐらを掴んで、問い詰めるヒッパー。


指揮官「何をする、上官に失礼だぞ、このガキが!」


ヒッパーを払いのけて、


指揮官「報告書を書いたのはお前の妹のプリンツだ、オレは知らん。 オレは無実だ!」


自身の無実を訴える指揮官、それに対して、


Z23「嘘です! そもそもあの報告書の筆跡がプリンツさんじゃないですから!」


駆逐艦のZ23が叫び、


Z23「報告書の提出条件として、”報告記述と報告者名は同一人物でなければならない”でしたよね?


   ならどうして報告者にはプリンツさんの自筆が記入してあるのに、報告内容がプリンツさんの自筆では


   ないんですか?」


指揮官「うっ・・・それは。」


急に無言になる指揮官。


Z23「導き出される結論は、指揮官さんが事前に私たちの左遷要求を書いていて、プリンツさんに嘘の報告書を書かせた後、


   プリンツさんの報告者部分だけを事前の左遷要求に移し変えたって事ですよね?」


指揮官「・・・・・・」


ライプツィヒ「それでも、本営さんが気づかない時点でおかしいですけど、指揮官さんの事ですからお金で賄賂したのではないですか?


       昇進して金回りも良くなったと聞いているので・・・」


普段は体調が悪くて休んでいるライプツィヒも、この時はしっかりと意見を主張する。


プリンツ「何で? 何で皆それを?」


プリンツは驚く、


提督「それはな。」


提督が口を開く、


提督「皆がプリンツを最後まで信じていたからだ。」


プリンツ「!?」


提督「報告書の内容を皆に聞いてみたら・・・」


提督はプリンツが鎮守府を留守にしていた時の事を説明する。


・・・・・・

・・・



提督「この報告書なんだけど・・・」


皆を会議室に集めて報告書を見せる提督、


提督「確か、報告書って”記入者と名前が同一人物でないといけない”はず、なのに報告者がプリンツなのに、


   記入したのが別人の筆跡ってどう言う事?」


提督の言葉に、


ライプツィヒ「この筆跡は、前にいた指揮官さんのです。」


ライプツィヒは秘書艦の経験をしていたので、指揮官の筆跡を覚えていた。


提督「じゃあ前いた指揮官がお前たちを”左遷させるために、プリンツを利用した”って事なのかな?」


提督の質問に、


ヒッパー「でも、証拠がないからどうしようも無かったの!」


ヒッパーが答えて、


ヒッパー「報告者にオイゲンの自筆があったから、最初はあいつに当たったけど、よくよく見たらおかしい事に気付いたわ、


     でも、あの指揮官は消えて既に別の鎮守府に再着任していたのよ!」


恨んでいるのだろうか、拳をわなわなと震わせている。


シャルン「確かに、あの時は指揮官にまんまと嵌められた、と思ったけど、退役させられるわけでもなく、左遷だけだったし


     少しは私たちの態度にも問題があったと自覚して受け入れたわ。」


シャルンホルストは口を開く。


グナイゼナウ「でも、指揮官。この問題はもう終わった事ですよ。 今更過去の問題をほじくり出して一体何がしたいのです?」


提督「いや、実はプリンツが・・・」


プリンツがこの事について、未だに責任を感じている旨を伝えて、


グナイゼナウ「そうですか、同じ屋根の下にいながら仲間の悩みに気付けないなんて・・・」


グナイゼナウが反省する。


ヒッパー「はっ! 思い込み過ぎよ! あの時は当たったけど、別に今は恨んでなんかいないし!!」


「ふんっ」とヒッパーは口を鳴らす。


提督「・・・はっきり言うが、お前らはコミュニケーション不足なんだよ。」


提督が口を開き、


提督「”何も言わなくても伝わる”と思っているようだが、人と人の間にはやはり会話や報告が必要なんだ。


   だからこれからは面と面を合わせて内容を伝えて欲しい、出来るかな?」


提督の言葉に、


グナイゼナウ「分かりました、なにぶん癖のある人間の多い部隊なので・・・指揮官の言う通り、次からは対話で


       自分の気持ちを伝えます。」


グナイゼナウは返事をする、


他の皆も提督の意見に賛同し、


ヒッパー「私も!? 私は対面するのが苦手で・・・(恥)」


提督「まぁ無理にとは言わない、ドア越しでもいいから報告位は各皆に伝えて欲しい。」


提督の必死の願いに、


ヒッパー「わ、分かったわよ、やればいいんでしょ!」


渋々受け入れるヒッパー、


提督「今まで見た中で一番のツンデレだなぁ~この子はw」


何故かにやける提督。


・・・・・・

・・・



プリンツ「・・・・・・」


プリンツは聞き終えた後、


プリンツ「何よ、私は勝手に思い込んでいただけ? ふふっ、とんだバカね。」


「ははっ」っと笑い始めるプリンツ。


ヒッパー「バカ指揮官! このままタダで帰れると思ってるわけ!!」


再び胸ぐらを掴むヒッパー、


指揮官「そんな事! それにもう過ぎた事だ! 本営はもうプリンツが出したと宣言してるし、今更過去をほじくり返して


    何がしたいんだお前らは!」


悪いと自覚しておらず、挙句に開き直る指揮官に、


提督「もういいだろヒッパー、放してやれ。」


提督がヒッパーを制止させる、


ヒッパー「はぁっ!? こんなもんで私の恨みが晴らせるわけ・・・」

 

言い掛けた所で、


提督「指揮官と話がしたい・・・それからにしてくれ。」


ヒッパー「・・・・・・」


提督の真顔にヒッパーは素直に従う。


提督「まぁ、あんたには指揮官はふさわしくないね、今すぐに辞任届を出して鎮守府から消える事だな。」


指揮官「貴様、何を言っている? 私は上官だぞ、最近着任した下っ端が上官に偉そうに意見するとは!!」


指揮官が言い終える前に、提督の真顔に恐怖して口を閉ざす。


提督「部下を利用して昇進した後に簡単に部下を切り捨てるあんたに指揮官としての資格がない、と言いたいのだが?」


提督が悪魔の如く睨みつけ、


提督「艦娘(艦船)はな、常に上官の指示に従い、上官のために戦果を取って頑張ってくれているんだ。


   ただ座って書類を書いているだけの指揮官は戦場と言うのが何か分かっているのか?」


指揮官「・・・・・・」


提督「オレも昔はある部隊の特攻隊として戦っていたから、彼女たちと同じ視線に立って上官を務めていた。


   出撃と遠征をこなしてくれる彼女たちには常に”感謝”の気持ちしかない、それなのにお前は何だ?」


指揮官「・・・・・・」


提督「昇進のために彼女たちを踏み台にして、挙句にその責任を部下に押し付け雲隠れか? お前は


   指揮官どころか人間のクズだよ、このクズ指揮官!!」


指揮官「・・・・・・」


提督「この事実は本営に報告書として提出して置くから、彼女たちが進んで証人になってくれるだろう。


   今の内に辞表でも書いて置いた方が身のためだぞ?」


そう言って、提督は指揮官から離れる、


指揮官「き、貴様!! こんなことしてただでは済まさんぞ!! お前なんか今すぐにでも処罰することも・・・」


言い終える前に、ヒッパーやシャルンホルストが怒り顔で迫って来て、


シャルン「処刑されるのは、お前だろ? 元指揮官!」


ヒッパー「まだ私の復讐晴らしていないの忘れてない? 元バカ指揮官!」


グナイゼナウ「そうですね、地下に監禁して鍵でも閉めて置きますか?」


報告書に書かれたヒッパーと巡洋戦艦達が指揮官に報復しようとする、


指揮官「よ、よせっ! うわ、止めろ・・・うわぁーーーー!!」

 

提督「あっ、もう深夜だから騒ぐのは程々にね。」


そう言って、提督は食堂から立ち去る。


・・・・・・




その後、彼女たちと提督の報告書提出で、指揮官は実質の解雇。


しかしながら、彼女たちの左遷変更は取り消しには出来ず、本営側は謝礼を送ると言う形になる。




ヒッパー「謝礼って・・・一生遊べる額を送ってくるんでしょうね!!」


本営の態度に納得出来ないヒッパーだが、せめて謝礼金はと、今か今かと待ち詫びている。


提督「治安は悪くなかった・・・単にコミュニケーションが悪かっただけだ。」


そう言って、提督は荷造りを始める。


プリンツ「帰るのね、指揮官?」


提督「ああ、オレの用は終わった。後は戻って嫁さんの・・・」


そう言い掛けたところで、


プリンツ「ロイヤル鎮守府からの着任依頼書、あなたの着任を願っている人間がいるわ。」


提督「ロイヤル鎮守府? このエリアにはまだ他にも鎮守府があるのか?」



プリンツによると、鉄血・ロイヤル・ユニオン・重桜の計4つの鎮守府が存在するとの事。



提督「・・・まさか、全鎮守府に赴けってことは無いよね?」


そう思いつつ、


提督「やれやれ、とんだ災難だ・・・でも、断るわけにも行かないし・・・仕方がない。」


提督は渋々ロイヤル鎮守府に行く決意をする。


プリンツ「指揮官・・・」


プリンツは店の女将が言った事を思い出す。


・・・・・・

・・・



プリンツ「女将さん、あなたは指揮官の事が好き?」


プリンツの質問に、


村雨「もちろんです、私みたいな平凡で何の特筆する所も無い私を、提督は妻にしてくれたのですから~。」


プリンツ「そう・・・ビールご馳走様。」


勘定を済ませて店から出ようとした手前、


村雨「提督は既に気づいていると思いますよ。」


プリンツ「?」


村雨「鉄血でしたっけ? もう既に状況を把握して対策に乗り出していると思いますよ。


   あの人、その辺りは早いですから~♪」


プリンツ「・・・・・・」


村雨「後、私から言える事は・・・提督を怒らせない事ですね、怒るとあの人悪魔みたいに変貌するのでw」


プリンツ「・・・分かったわ、説明ありがとう。」


そう言って、プリンツは店から出る。


・・・・・・

・・・



ライプツィヒ「失礼します、指揮官さん。」


執務室にライプツィヒが入ってくる。


提督「おっ、どうした? 別れの挨拶でもしに来てくれた?」


提督の言葉に、ライプツィヒは目の前に立ち、


ライプツィヒ「いえ・・・もし、私で良ければ・・・せ、専属艦にして欲しい、です(恥)」


提督「? 専属艦? 何、それ?」


提督は分かっていない様子、


プリンツ「分かりやすく言えば、”指揮官専属の部下にして欲しい”ってことよ、指揮官。」


プリンツが説明してくれて、


提督「そうなの? まぁ、そこまで言うなら・・・構わないよ、これからもよろしく。」


ライプツィヒ「本当ですか、ありがとうございます! ライプツィヒ、指揮官さんが困ったときはいつでも駆け付けますので!」


提督「うん、ありがとう。 後、すぐに倒れないようにね。」


こうしてライプツィヒは提督の専属艦となる。


プリンツ「まぁ、本当は”結婚して欲しい”って意味だけど・・・」


既に嫁さんがいる提督には言うまいと、別の説明で分かりやすくしたプリンツ。


結局、プリンツもその後専属艦を要望、提督は許可し鉄血鎮守府を後にする。


・・・・・・

・・・



ここはロイヤル鎮守府、


門番「ネルソンさん、正門に部外者がいますが?」


ネルソン「部外者? すぐに追い払って! 今はそれどころではないわ!」


”ネルソン””と呼ばれた女性は指示するが、


門番「そ、それがこの施設への着任依頼を持っているようなんです。」


ネルソン「? この施設の着任依頼書を?」


・・・・・・


提督「開かない、さっき門番に説明したんだけど・・・」


少し待つが開く気配が無い、


提督「それなら帰るか、そして嫁さんの膝枕で一睡をして・・・」


そう思っていると、正門が音を立てて徐々に開いて行き、


提督「何だ、開いたか。 よし、さっさと用事を済ませて帰るか!」


そう言って、提督はロイヤル鎮守府へと入って行った。











「鉄血鎮守府に着任する」 終












続きは「ロイヤル鎮守府に着任した」にて。










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2019-07-17 18:22:33

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2018-11-20 01:56:10

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