2020-05-03 23:23:56 更新

概要

オリジナルss 突然の襲撃。


クレハ「お世話になりました」


十分休憩をした私はそろそろ動くべく串焼き屋を後にしようとしていた。その際にバンダナのおじさんにお礼を述べる。


「いいってことよ、また来てな!」


クレハ「はい、ぜひ」


串焼き屋さんを後にして、再び人混みに紛れて移動をした。さっきよりは人が少ない気がしなくもないが、これでも多いと思ってしまう。


クレハ「もう、部屋に戻ろうかな…」


流石にこれ以上疲弊するのを考えるととても不安になった。よし、今日はもう戻るとしよう、うん。


クレハ「あっ、とと、ごめんなさい」


「……」


人混みの中軽く肩がぶつかってしまった。すぐに謝ったのだがぶつかった人は特に気にすること…というかほぼ無視して歩いていってしまった。


でもあの格好、騎士さんだったような…でも騎士さんだったら流石に無視しないだろうし、見間違えかな?


クレハ「うーん…まぁいいか。早く戻ろ…ん?」


男の子「うぅ…ひぐっ…」


そう決めて王城への道を歩み始めたのだが、道の途中でなにやら泣いているであろう幼い男の子を見かけた。


クレハ「あの、どうしましたか?」


その男の子に駆け寄り、優しく尋ねた。すると男の子は涙を拭い、こちらに顔を向けてきた。


男の子「お母さんと…ひぐっ、迷子で…1人…うぅ」


不安で上手く話せないのか言葉になってはいないが言いたいことは伝わった。

お母さんとはぐれて迷子になってしまったのだろう。


しかし困った…私にはぐれたこの子のお母さんを探す能力はない。なぜなら…


クレハ「……うぷっ」


この人混みの中から探すとなると、私自身も泣いてしまいそうになるからだ。


クレハ「我ながら本当に情けないですね…」


でも正直このままというわけにもいかない。なにかいい解決策がないものだろうか…


クレハ「……」


そういえば騎士団ってこの街を守る組織だったはず…それならば。


クレハ「私について来てください、歩けますか?」


男の子「ぐす…うん」


男の子の手を優しく握り、歩幅を合わせゆっくりある場所へと歩いていく。


私よりこの子の方が不安なんだ、私がこの程度の人混みで挫けるわけにはいかない。



ーーーーー



しばらく人混みの酔いと格闘し、なんとか目的地へとたどり着いた。


その目的地とは…王城の門前である。


クレハ「あ、いました」


門前に騎士さんを見つけ、近づいていった。騎士さんもこちらに気づいたのか声をかけてきた。


騎士「クレハ様、ですよね?どうかしましたか?」


クレハ「えっと、この子が迷子みたいで…」


男の子「ぐすっ…」


騎士「なるほど、そういうことですか…」


私の一言で察したのか、門前にいるもう1人の騎士さんとなにやら話をし、再びこちらへと戻ってきた。


騎士「クレハ様、後はこちらで対応いたします。連れてきてくださりありがとうございます」


クレハ「いえ、当然のことです」


良かった、これで少なくともこの男の子の安全は保証される。これで私もお役御免だ。


男の子「っ…」


クレハ「あ、あの…」


騎士さんに任せて立ち去ろうとしたのだが、何故か男の子が手を離してくれなかった。


男の子は涙ぐんだ目でこちらを見上げる。


男の子「お母さん来るまで…一緒にいて?」


クレハ「えっと…」


なんと、引き止められてしまって。この短い間に懐かれてしまったのだろうか。


けれど…まぁ、特に用もないし…いいか。


クレハ「わかりました。騎士さんも、いいですか?」


騎士「ええ、一緒で構いませんよ。では我々はこの子の母親を捜索してきますね」


クレハ「よろしくお願いします」


騎士さんは他のみんなを呼びかけ、街へと行ってしまった。私にももう少し人酔い耐性があれば手伝うんだけど…こればっかりは気持ちと身体がついていかない。


これからのためにも、人酔いは克服しなければ。



ーーーーー



あれから一刻ほどが過ぎた頃、無事男の子の母親は見つかったようで、迷子の件はひと段落した。


なんでも買い物の途中で逸れてしまったみたいだ。見つかってよかった。


あれだけ人が多いと子どもだけではすぐに迷子になってしまうのも頷ける。事実私も他の人と一緒に来たら逸れてしまう妙な自信がある。これだけは確信できる。


クレハ「さてと、私もそろそろ部屋に…ん?」


王門を潜ろうとすると、数人の騎士さんたちがなにやら話をしていた。


「まったくあいつはどこいったんだ」


「サボりじゃないですかね?」


少し盗み聞きという形になってしまい少々罪悪感が芽生えたが続けて聞いてみることにした。


「勤務中にサボるとは…後で訓練メニュー追加だな」


「うへぇ…あいつドンマイだわ」


どうやらお仕事中にどこかの騎士さんがサボりにいったみたいだ。不真面目な人もいるんだなぁ…


それくらいここは平和なんだろう。事実あの聖堂襲撃の件以前は大きな事件などなかったらしいけど。


でも聖堂襲撃の件があって尚サボるなんて行為をするだろうか…カイゼルさんの話だと騎士団のみなさんはとても真面目な人たちばかりだと聞いていたんだけど…


クレハ「なにか…嫌な予感がしますね」



ーーーーー



翌日、昨日は何事もなく終わり、朝が来た。


ベッドから起き上がり、窓の外を見る。

今日はなにをしようか…昨日は人混み酔いのせいでほとんどなにも出来なかったからなぁ…


今日は人通りの少ない方へ行ってみようかな。


そう予定を決めて、身支度を整え始める。部屋にいるよりもやっぱり外に出たほうが幾分か楽になるかもしれない。


クレハ「…よし」


部屋から出て王城内の通路を進んで行き、大庭を通って王城門前へとたどり着く。


クレハ「…?」


門前にはなにやら騎士さんたちが集まっていた。集まっているといっても2、3人程度だけど…


クレハ「どうしたんですか?」


気になり声をかけてみた。すると騎士さんたちはこちらに気付き、一礼する。


騎士「おはようございますクレハ様。それがですね…昨日の任に着いていた1人がまだ帰ってきていないらしく…」


クレハ「昨日のって…」


騎士さんたちが話してたサボってた人かな?まだ帰ってないんだ…


騎士「どこかで遊び呆けているんでしょう、帰ってきたら訓練メニュー倍ですね」


クレハ「あはは…」


お仕事をサボっちゃってるんだから当然だけど、なかなか厳しそうな罰だなぁ。


騎士「クレハ様はお出かけですか?」


クレハ「はい、多分すぐ戻りますけど…」


騎士「わかりました、お気をつけて」


騎士さんは再び一礼し、その場を後にしていった。

さて、私も街へと出かけよう。


クレハ「…あ」


そういえばもらったお金部屋に置いてきてしまった。普段お金を使うことがなかったからすっかり忘れてしまっていた。


取りに戻るべく引き返そうとすると、先ほどとは違う騎士さんが王門へと近づいてきていた。


「あ、お前!ようやく戻ってきたのかよ!」


門前を警備している騎士さんがそう声をかける。この言い草からするとあの騎士さんは昨日のサボってしまった人だろうか。


「……」


サボり騎士さんは特に悪びれる様子もなく無言のまま門前の騎士さんの前へと来る。無口な人なのかな?


…あれ?あの人もしかして昨日ぶつかった騎士さん?


「おい、聞いてんのか?今までどこ行ってたんだよ?」


「……」


クレハ「…?」


まるで無視しているかのように無言を貫き、騎士さんは門前の騎士さんをじっと見つめたまま動かないままでいた。


…なにかおかしくないか…?無口な人だったとしても頷くなりなにか反応するはず。


クレハ「…!」


無口?な騎士さんを見るとなにやら"魔力"を感じた。いや、人には少なからず魔力を持っているんだけど、そうではなく…魔法を使ったときに感じる魔力だ。


一体何故あの人からはそんな魔力が…


「てめぇ、いい加減に…」


「………!!!!!!」


「は…?」


門前の騎士さんがそう言いかけた瞬間もう1人の騎士さんが突如異様なまで膨らみ…



…爆発した。



クレハ「ぐ…!?」


少し離れていた私でさえも爆発の余波に圧されてしまった。


目を開けて爆発したであろう門前を見てみると、爆発した際に地面が焼き焦げていて…その横には先ほどの騎士さんが無残な姿で倒れていた。


いや…もはや人の形を保っていない…肉塊だ。


クレハ「うっ…」


そう状況を理解した途端、吐き気がこみ上げてきた。とても立ってはいられず、その場にしゃがみ込む。


なんで…どうしてこんなことに…一体なにが起きているの…?


カイゼル「クレハ殿!」


クレハ「…!カイゼル、さん…」


さっきの爆音を聞きつけてきたのか、カイゼルさんが駆けつけてきてくれた。


カイゼル「これは…どうなっているんだ」


この惨状を見てカイゼルさんに焦りと戸惑いを感じた。当然死体にも目を向けているだろう。


クレハ「騎士さんが…いえ、騎士さんの姿をしたなにかが急に爆発したんです」


カイゼル「なんと…」


カイゼルさんは爆発した跡に近づき、焦げた地面に手を触れる。


カイゼル「これは炭…それに火薬の臭い…」


クレハ「多分魔法です。魔法で騎士さんに化けたんだと思います」


カイゼル「魔法…人の姿に化け、その体内に爆薬を仕込んでいた…というところか」


人の姿を造れ、体内に爆薬を入れることができ、おそらく遠隔操作してるであろう魔法…一つ思いつく。


クレハ「土人形…ゴーレムですね」


土の上級魔法、土人形生成。魔力を込めた土で造ったゴーレムは術者の思い通りに動かすことができる。イメージとしては糸で繋いだ人形を動かす感じだ。


それ故に操作するのには近くにいないとできないはず…そうしなければ魔力の制御が効かなくなってしまうからだ。


近くに潜んでいる…?でもさっきのゴーレムからは魔力の糸が"見えなかった"。

まるで個人で自立して動いているかのように。


カイゼル「…!?」

クレハ「…!!」


そんなことを考えていると今度は遠くから爆発音が響いてきた。それも何箇所から畳み掛けるようにと。


確実にさっきと同じゴーレムを使ってのことだろう。これで確信した…これは誰かの襲撃…!


カイゼル「くそっなんてことだ…!敵はどこからきたんだ!?」


騎士「団長!」


カイゼル「お前たち…!」


他のところにいたであろう騎士たちが集まってきた。想定外の事態に皆、戸惑っているのがわかる。


カイゼル「皆よく聞け、敵の奇襲を受けた。各自爆発音がした場所に赴き、住民を避難させろ!」


「「了解!」」


騎士さんたちはそれぞれ爆発音がした方向へと向かっていった。

私もなにかしないと…!


カイゼル「クレハ殿は戻ってくれ。王城内なら結界が張ってあるので大丈夫だ」


クレハ「あの、私もなにか」


カイゼル「ダメだ、クレハ殿はここに残ってくれ」


クレハ「でも…」


わかっている、私が行ったところでなにもできないことぐらい…

私が着いていっても邪魔になるだけ…いいえ、むしろ悪化してしまうかもしれない。


そう考えると…これ以上口が開けなかった。


クレハ「わかり、ました…」


カイゼル「…すまない」


カイゼルさんはそう一言告げて、街の中へと走り去っていった。


ーーーーー


1人取り残された私は、かつてのことを思い出す。


聖堂襲撃の際…私は見ているだけしかできなかった。それも大神官さまの言い付けを守るという言い訳で…大神官さまを目の前で死なせてしまった。


私はまた同じ過ちを繰り返そうとしているのではないだろうか?また目の前で、私のせいで命が奪われてしまうのではないか?


でも…なにもできない。私には全てを覆す力がない。カレンの様な…圧倒的な力がない。


ただ立ち尽くすことしかできない。本当にこのままでいいのだろうか。そんな考えが頭の中でごちゃごちゃになる。


一体私は…どうしたらいいの…?



後書き

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