2016-02-15 21:45:39 更新

「それで…どうすりゃ、アイツをオラの中に閉じ込めておけるんだ?」


ここは、医者の家の中。

外は既に、夕日は落ち、闇がすべてを支配していた。

その中に月だけが、辺りを照らしていた。

窓から差す月明かりだけが、頼りだった。

悟空はベッドに座り、机の上で肘をついて、悩み更けている医者に問いかけた。


「その方法は…。」

「と…閉じ込めると、言うより、消滅させる…

と言った方が…合っています…。」

「それは…。」


「……。」


「お…おい…。どうしたんだよ?それで、その方法教えてくれよ…。」


「……。」


ーーー…。


「チッ…!」

「おい。カカロット。」

「さっさと、教えやがれ!あるんだろ!ヤツを消し去る方法がっ!」


ベジータは、黙って悟空の話を聞いていたが、いきなり黙りこくった悟空に苛立ち怒鳴り散らしていた。


「それは…。」


「オラが…。」「悟空さんが…。」


「「“消える”ことだ…。です…。」」


「な…何…?」


ーーー…。


「な…なぁ。今…なんて?」


悟空は医者が言ったことが理解できずにいた。

無理もない事だ…。

いきなり、自分に“消えろ”と、言われているようなものなのだから…。


「悟空さんが“消える”ことです…。」ポタッ


医者の瞳から一粒の涙が流れた。

医者にとって嫌な瞬間は、おそらくこの時だろう…。


患者に余命の時間を報告するとき…。

薬でも手術をしても、どうしようもならないとき…。

患者に、辛いことを伝えなければならないとき…。


これ程、患者も己も辛いことはない…。


「は…はははっ。そっか…。分かった。」

「でも…オラはもう死ねないんじゃあ…。」


「大丈夫です…。私が作った、装置であなたの中にある微かに残った“気”で爆発させます。」

「そうすれば、おそらく奴は、消えて無くなるでしょう…。」


「オメェさ、何でそんな自信無さげなんだ?

失敗する事もあんのか?その方法だと…。」


「はい…。」


「えっ?本当か?」


「はい。本来なら、爆発した後、自然に消えるのですが失敗すると、そのまま奴は残ったままです…。」


「そ…そうか…。」

「なんか…オラ…今、自分の運命を恨みそうだ…。何でこんな風になっちまったんだ。ってさ…。」

「でも、恨んでもしょうがねぇのにな…。」


悟空は優しいような、悲しいような笑みを浮かべた。

医者はその表情に胸を痛んだ。


「それで?どこにあるんだ?その装置?」

「あ…あぁ。こっちです。着いて来て下さい。」


医者は、床にある扉を開け、中にある階段を下りていった。


「気を付けて下さい。薄暗いので。」

コツ…コツ…。

「うひゃ~。すげぇな。まさか、地下があるなんてよ。」


医者と悟空はひたすら螺旋になった階段を下り続けた。

すると…。

先に小さな明かりが見え始めた。

その明かりの中に入ると、そこには巨大な張り付けの装置があった。


「これが、その装置です。」

「こ…これが…。」

「ここの十字架に張り付けの状態になってもらい、後は、わたしが爆発させるきっかけを与えればあなたは自然に爆発します。」


「そうか…。」

「思ったより、簡単だなぁ…。」


悟空は、そう言いながらも、心の底から震え上がっていた。

フリーザに挑む時の方が、まだまだ可愛い方だった。


「じゃあ…試してみっか…。」コツ…。


そう言いながら悟空は、台の上に立った。

そして、深い深呼吸を1つした。


「よし…。いいぞ。」

「では、行きます…。」カチッ


医者はスイッチを入れた。

そして…。


バリバリバリ!!


「ぎゃあああぁぁぁ!!」

「ふ…ぬぐうううぅぅぅ…!あああぁぁ!!」

「ご…悟空さん…。」


医者は、悟空の方向に目を向けられなかった。

それは、あまりにも残酷な光景だったから…。


そして悟空は…。


どごおおおおぉぉぉん!!!


内側からの“気”で大爆発を起こした。

跡形もなく、塵1つすら残っていなかった。

そして問題の奴の存在は…。

医者は振り返り、確認した…。が…。


そこには、未だ眠り続けている奴がいた。


要するに…。


「は…ははは…。失敗…ですか…。」

「ま…しょうがないですね…。」

「本当に…しょうが…な…。」


「う…うぅん…。チッ。ここはどこだ?」


奴は、睡眠薬の支配から解放され、目を覚ました。

そして、周りの状況を確認した。

隣には地面に膝を着き、涙している医者の姿があった。

そして、自分が縛られていることも…。


「クソッ!この俺がこんな薬と縄で拘束されるとはなっ…!」

「頭に来るぜ…!!」

「こんな縄、ふっ飛ばしてやる!!」

「はあああ…!!」シュイン!シュイン!

「はああああああああぁぁぁ!!!」ブチッ!

「ふぅ…。軽くなったぜ…!」


「さて…。」ジロッ


奴は、医者を冷たい目付きで見下ろした。


「次は…貴様が死ぬ番だ!」ガッ!


奴は医者の胸ぐらを掴み、自分の鼻先が当たる数センチまで引き寄せた。

そして、奴は医者にパンチを繰り出し…。


バキィッ!!


「……。」

「おい…。少しは反抗したらどうだ?」

「…様を…。…おす…。」

「あ…?」


「貴様を…倒す!!」


「貴様が…この俺を?」

「フンッ!嘘もまともな事を言え…。」

「貴様が、この俺を倒せるはずがなかろう!」

「俺だってバカじゃねぇさ…。」シュン!


奴は医者の後ろに周り…。


「…ブツブツブツ…。」

「ハッ!」バシュッ!


奴は、医者と同じあの呪文を唱えた。

だが…。


「私の呪文だ…。掛かる訳なかろう…!」バッ


医者は飛び、その攻撃を余裕でかわした。

そして、医者の攻撃…。


「まさか、あなたが私の呪文を真似して退けるとは驚きましたがね…。」

「ですが…。」

「私の方が…実力は上です…。」

「ブツブツ…。」

「はあああぁぁぁ…んんんんん…!!」


ブウウウウゥゥゥン…!バチバチバチッ!!


「な…何だ…?あの手の輝きは…。」


「覚悟して下さい…。私も、威力の調節が出来ないもんでね…。」


バチバチッ!


「でやあああぁぁぁ!!」ズバッ!

「くっ…!!」サッ!


奴は医者の攻撃をかわしたが、その攻撃は曲がり、奴の体に直撃した。


そして…。


奴の体は、徐々に縮んでいき…。


小さなメモリーチップになった。


「が…はぁはぁ…。は…。」ポタッ…。


医者の顎から大量の汗が流れ、木の床に小さな水溜まりができた。

この縮小の呪文は、自らの寿命を大量に削り落とさなければ唱えられない呪文だった。


「はぁ…こ…これで…。」


医者はそのチップを机の上に置き、作業に取りかかった。


「で…出来た…。」


医者の、目の前には“気”で爆発したあの悟空の姿があった。

どこからどう見てもあの悟空そのものだった。


ただ、1つだけ違うのは中身が“生身”ではなく“機械”である事だけだった。


「こ…これを…この頭の部分にはめれば…。」

「コレは完成する…。」カチャ…。


医者は震えた手で、そのチップをはめた。

すると…。


ブウウウウゥゥゥン…。


それは、鈍い音を放ちながら青白い光を纏い、

医者の目を眩ませた。


医者は目をこすりながら、ゆっくりと目を開いた。

そこには…あの悟空がいた。


「だ…大丈夫ですか?悟空さん…。」

「ん…。何だ?オメェは…?」

「あ…。あの医者かぁ!思い出したぞ!」

「良かったです。もう忘れられたのかと…。」



今の悟空には、今までの記憶はインプットされていた。

そして、自分の中にアイツがいる事も…。

悟空は医者の研究室を出て、自分が乗ってきたポッドに乗り込み、その星から脱した。


その後は、みんなも知っている通りである…。



ーーー…。


「以上だ…。ベジータ。」

「そうか…。お前は俺が闘った時のカカロットではないという訳か…。」


「……。」


「よし…。分かった。とりあえず俺たちがしなければならないのは“アイツを倒す”…。」

「そういう事だな…?」

「あぁ。頼むぜ。ベジータ。オラにはもうほとんど気が残ってねぇんだから…。」


「任せろ。カカロット。」

「ははは。本当にベジータは頼りになるぜ。」

「よしっ!行くかっ!!」


ーto be contenued…。


後書き

ようやく過去編がおわったあーー!!
もうこの時点で疲れました…。
これから、バトル編へと進めていく訳ですが…。
またこれも、長くなったらどうしよう…と焦りがいっぱい、いっぱいです…。

ーーー…。

今回もここまで読んでくれた皆様、本当にありがとうございます。
では、次のお話で…。


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