2016-03-23 23:34:35 更新

概要

トラック泊地シリーズ。




――提督…………


――……提督っ!!



――どうして信じてくれないんですか、提督!?私達ならあなたを救えますッ!!


――命じてください、提督!!「逃げるな」と!!「死ぬまで戦え」とッ!!!



今、この時を以て……ラバウルは第一艦隊を放棄する。


残存戦力は、全速力でこの海域を離脱せよ。



――嫌だ……否だぁッ提督っ!!私は……私はっ……!!!



……なぁ、天龍


俺は……お前を信じていない訳じゃない。



俺は、お前達を誰よりも信じている。

そして、俺自身の選択を信じている。


だから……


行ってくれ、天龍。



お前が終わるべきはここじゃない。

お前が向かうべきは、こっちじゃない。



――離せよ、龍田ッ!!私はあの人の秘書艦だッ!!死ぬまであの人の隣にいなきゃならないんだッ!!!

――龍田……龍田ぁぁあああッッ!!!



――第二艦隊、了解っ……旗艦天龍、以下六隻!!これより帰投しますッ!!!!




(…………トポン…………)



駆逐艦ならば斬り伏せられたが……さて。


この刃、戦艦にも通るかどうか…………試すと、するか…………












北方棲姫「…………」


タ級「あ……お早うございます、姫様。」


北方棲姫「……ああ……ユウ、か。おはよう……」


タ級「……? いかが致しましたか?何やら、顔色が優れないようですが」


北方棲姫「なんでもない。……ただすこし、寝覚めが悪かっただけだ」


タ級「……左様でございますか。」


北方棲姫「心配させて悪かった。すぐに出る」カチャ


タ級「今日は、葉巻と煙草、どちらで?」


北方棲姫「煙草だ」シュボッ









北方棲姫「…………」フーッ……


北方棲姫(最前線に出て艦隊指揮を行い、背中には無線機を背負い、武装は刀一本……)


北方棲姫(最期には艦隊が壊滅、己が身ひとつで随伴艦隊の離脱の時間を稼ぐ、か)


北方棲姫(……夢とはいえ……滅茶苦茶な司令官もいたものだな……)


北方棲姫(しかし、あの時……あいつは何か、小さなものを海に捨てていたが……あれは)


飛行場姫「ぅやっほぉぉおおうっ!!あくたぁぁあああん!!!!」ガバッ


北方棲姫「近づくならもう少し静かに接近しろ、リコリス」スッ


飛行場姫「あっ避けられたっ!!?おっほ地面が迫って」《損害》








北方棲姫「で。南方の陸上施設が、ここに何の用だ?」


飛行場姫「相変わらずつれないのねぇ……いって……ここの床、三式弾詰まってない?」スリスリ


北方棲姫「詰まってたら歩くだけで俺も致命傷だろうが」


飛行場姫「それもそうか……って、んな話をしに来たんじゃなくって……」


飛行場姫「アクタン。貴女、本土に行くって本当?」


北方棲姫「………… 一応、極秘任務なんだが。その話、誰からだ」


飛行場姫「えーっと、タの字の子。夕日の夕でユウちゃんだっけ。心配してたよ」


北方棲姫「……ユウか。節介で機密をバラすとは……とんでもないな、あいつは……」


飛行場姫「いやいやいや、つったって深海棲艦でしょ、あんたも。陸の姫だから、多少は長持ちするったって、とんでもない負荷がかかるよ」


北方棲姫「何、この世の問題はすべて根性論でカタがつく。俺が自分で課したんだ、無理は承知の上さ」


飛行場姫「いや、カタつかないから。何あんた。根性で生きてる幼女とか超怖いんだけど」








飛行場姫「……結論から言えば……本土での人間の生活ぶりを知って、私らの影響がどれほど出てるかを調べる。……ってこと。」


北方棲姫「短絡的過ぎる発想、そして陸上では長く活動できんという致命的な問題から、誰もがやらなかったことだ」フゥゥ……


飛行場姫「そりゃそうよ。……そもそも私としては、貴女ほどの司令塔がノーガードで敵陣地に踏み込むなんて狂行、到底賛同しかねるけれど」


北方棲姫「お前の賛同など必要あるまい。そも誰にも知られずに結果だけを持ち帰るつもりだったが」


飛行場姫「それが心配なんでしょう、彼女は。深海の重要施設が無傷で敵中枢から帰還なんて想像つかないわ」


北方棲姫「…………。 そんなに信用ならんか、俺は」グリ……ポトッ


飛行場姫「信用云々の話じゃなくてね…… ……。 貴女、自分の姿を全面鏡か何かで見たことある?」


北方棲姫「いや。無いが」


飛行場姫「けど自分の背格好ぐらいは解るわよね。どっからどう見ても幼稚園児、小学生よ。貴女」


北方棲姫「…………」シュボッ……


飛行場姫「喫煙で老成ぶりをアピールしないで頂戴」








飛行場姫「わかった。わかったわよ、もう。煙たいな。……もともと、私がここに来たのも、貴女のソレを手伝うのが目的だし……」ぱたぱた


北方棲姫「なんだ、最初から協力的だったんじゃないか」ボフーー


飛行場姫「煙いっつってんだろ!!……まぁ、結論はね。司令塔とは言え、貴女自身の戦闘能力の高さも重々承知しているし……」


飛行場姫「……はい。」コロ……


北方棲姫「……?なんだ?ビー玉…………いや……艦載機か?」スッ


飛行場姫「私のだから、終わったら返してね。万が一貴女の身に危険が迫ったときに使って」


北方棲姫「……。懐刀というわけか。わかった、借りよう」グッ


飛行場姫「普通なら艦娘に艦載機だと気づかれるけど、そのタコ焼きは特別製よ。収納されてる状態なら叩き割られてもただのビー玉だから」


北方棲姫「……よくそんなものを作れたな。(タコ焼き……?)」


飛行場姫「飛行場の姫だからね、私。……今日明日で出発ってわけでもないでしょ?こっちでも手はずを整えておくから。……今日のところはそれくらいね」


北方棲姫「時間を食わせて悪かったな。協力に感謝する」






――――



北方棲姫「………………」……カチャ……カチャ


タ級『本土には、もっと安全で使いやすいライターがありますよ。取り寄せましょうか?』


北方棲姫「……あいつの言ったライターも気にはなるが……これ以外を使う気になれんな」カチンッ


北方棲姫(…………そも……生前の記憶がないのに、癖や口調、果ては拳の振り方に至るまで……何故、染み付いている?)


北方棲姫(……身長はこの体の数倍。腕も足も丸太のようで、適当に振り回すだけでもちんぴら程度は相手に出来た……)


北方棲姫(そんな気がする。……気がするだけだというに、妙な確信もある)



北方棲姫「……はぁ。だとしたら何故、こんな幼子の姿などになっているんだ。……わけがわからん」ゴロンッ


北方棲姫(………… ……このまま眠ったら…… ……またあの夢をみるのか?)



北方棲姫「………… ……………………――――」









――提督……?……これ…………


……すまない。箱を……用意できなかった


……い、言い訳をさせてくれ?その……こんな状況下だ。物資もまともに用意できない。……無茶に無茶をかさねて、なんとか指輪だけは――


――い、いいんですよ提督!?顔をあげてください……その


――……どうせ私、ずっとつけてますから……


天龍?……それは…………


――……はい。



――よろこんで……お受け取り致します。……提督。








――…… よう。提督


……龍田か………………


――その緊張ぶりだと上手くいったみたいだな。……あんた、表情には出さないが判りやすすぎるよ、全く


――姉さん……頼んだぞ。



……。


……嗚呼。俺は……絶対に、あいつに未来を届けてみせる







北方棲姫「………………」



……キラッ…………



北方棲姫「…… ん……指輪か。……棚から落ちたかな……」ス……


北方棲姫「…………指輪?」……ピタ



北方棲姫「…… 深海でこれを見つけたのはいつだ?…… あの夢を見るようになったのは……いつからだ?」


北方棲姫「………………」



北方棲姫「……指輪………… ……入れ物の無い、剥き出しの……」






――――



北方棲姫「…………。」


タ級「完璧です、姫様!これでどっからどう見てもただの綺麗なちっちゃい女の子です!!」


飛行場姫「おーおー、意外とできちゃうもんだね。うん、似合ってる似合ってる。もちろんヤニは持ってないよね?」


北方棲姫「…… ユウ。リコリス。……あのな。」



ル級「姫様に何かあったら、アタシが真っ先に陸に乗り込むんで!!どうかお怪我のないようッ!!!」


リ級「お夕飯までには戻ってくるよね!?大丈夫だよね!?一緒に食べようね!?姫様の食事の席は煙たいけど!!」


チ級「……いってらっしゃい…………かえってきてね……」


ヲ級「どうかご無事で……。姫様の柔肌にもしものことがあれば……わたし…………」プルプルプルプル


カ級・ヨ級・ソ級「…………」バイバイ



飛行場姫「あ、これ?いや、見送りはあったほうがいいかなって」視線逸ラシ


北方棲姫「俺は極秘任務と言ったはずだが。お前の耳と頭はどうなっている?」


タ級「い、いえ、私どももその、情報の漏洩には気をつかっていたんですが……その……どこからかあの人が聞きつけてきまして……」






港湾棲姫「あああああ……アクタンんんん……わたしを置いていっちゃうなんて…………うううううう……」ギュウウ


北方棲姫「……聞きつけた奴はこいつか。ああ、成る程…………」グニィイ


タ級「申し訳ありません……その結果が現状です」


北方棲姫「成る程。うん、成る程。……いや、今までおとなしかったのが恐ろしかったぐらいだ……かえって安心した」グニィィイイ


港湾棲姫「行くな……と……言っていた……のに…………うううううう」ギュゥゥゥゥゥ


北方棲姫「いい加減に離れろ爆乳要塞」ゴスッ


港湾棲姫「痛ぁい!?やめてよぉ………… …… ちゃんと帰ってくる……よね……?」


北方棲姫「誰が帰還の目処も立たぬ場所へ行くものか。……安心しろ、無傷で帰還する」


港湾棲姫「がんばってね……今日のお夕飯はイ級のソテーだからね……」


北方棲姫「深海棲艦の誰もがカニバリストだと思うなよハイパーブラストワンダフォーグレートオッパイフォートレス 」


港湾棲姫「…………なんて?」






――――



\バイバーイ……/ \オミヤゲヨロシクネ……/



北方棲姫「………………」



北方棲姫(深海の影響力を知る為、自分に課した極秘の任務……)


北方棲姫「……そのはずだ。………… しかし…………」



北方棲姫(本土での調査を……俺は、何故……待ち遠しく感じていた……?)


北方棲姫(……敵地だぞ。ただでは済むまい…………だのに………………)








天龍「悪かったなぁ、提督。付き添いなんかしてもらって」


姉提督「構わん。フェリーでの船旅も久々だったからな、たまにはこうゆっくりした休日も悪くは無い」


妹提督「ねえねえおねえちゃん!!おねえちゃん!!!やべえよ!?見てこれ!!バッキュマン売ってる!!!」


姉提督「うるさいよ。175cmが騒ぐな、目立つだろうに」


妹提督「ぇえ!?いいじゃんお姉ちゃんは180なんだから!!」


姉提督「その判断基準はわけがわからん」


天龍(バッキュマン売ってるのは確かにやべえな)






姉提督「しかし苦労するな。目当ての銘柄を買うには本土に行くしかないとは」


天龍「ここにしか売ってないからな……ホントならトラック島にも仕入れてほしいもんだが」


妹提督「でもそれだけ欲しいものなんだよね。わたしはタバコ吸わないからよくわかんないけどさ」


天龍「おう。思い入れがあるからな。誰しも推しの銘柄ってやつはあるもんさ」


妹提督「アイドルみたいなもん?」


天龍「まぁ単純な話そんなとこだな」


姉提督「私はコイーバが好きだな。名前がかわいい」


妹提督「えー?じゃあわたしトレジャラー・ブラックー」


天龍「アイドルどころか花魁じゃねーか。ていうか吸わないのによく知ってるな」


妹提督「お姉ちゃんほんとに買わないの?エアー抜いてあげないの?」


姉提督「いらんだろうが。キモいし。」


天龍「聞いてくれよ」






天龍「じゃあ、ちょっと散歩してくるわ。適当なとこで時間つぶしててくれ」


姉提督「ああ、判った。気にせずゆっくりしてきてくれ」


妹提督「不思議だよねー。故郷って何しなくても時間つぶせるもんね」


天龍「全くだ……まぁ、俺の故郷ってわけでもないんだけどな。……じゃあ、行って来るわ」


姉提督「あぁ。行ってらっしゃい」




天龍「………………」



天龍「どこもかしこも変わっちまったようで……その実、変わったのは俺一人か」






北方棲姫「………… 道を歩く人間の顔色には特に目立ったものは無い」


北方棲姫「耳に入る話にも、海の話題はあがらない……か」



北方棲姫「……戦況が気にかかるレベルではない、ということか。……大戦時のココが異常すぎただけだな」


北方棲姫「兵士が戦い、平民は日常を過ごす。……戦争のもっとも理想的な形だ。反吐が出る」



北方棲姫(現在の戦力や配備の傾向を調べた方が、情報としては有用なのだろうが……それは今俺がすべき仕事でも無い)


北方棲姫(……俺自身が知りたいことを知りたいだけ知ればいい。……そのためにここに居る)






天龍「…………」シュボッ……


天龍「……ふーっ………… ……」



天龍「…………海に出れなくなってから…… どんだけ経つのかなぁ」


天龍「…………。」



――まだ……立ち直れないでいるんですか。


――そりゃあそうだろう……いくら化物じみた戦闘力を持ってても、艦娘は少女なんだ


――その戦いは、支えあってのもの。……その支えがなくなってしまえば……戦うことは、もう不可能だ



――……龍田さん……変わったね。


――うん。口調はすっごくおとなしくなったけど、なんか…… ……そう。総旗艦に似てきた。


――似せてる……のかな。すっごく頼りがいがあるようになった……けど…………


――………… どれだけ……無理をしているんだろう。







天龍「…… まるで走馬灯だな。いつ死ぬともわからねえからいつでも見れる、か」


天龍「厄介なもんじゃねえか。こんな白昼夢……思い出したくないことまでいつでも思い返せるたぁ…………」



天龍「………… なあ嬢ちゃん。そう思わないか?」


北方棲姫「…………。」


天龍「ぉっと、構えンなよ。俺にはもう戦えるだけの力なんて無いし、あんただってこんな場所を汚すような無粋なマネをしやしないだろ?」


北方棲姫「……それに関しては同感だ。事実……俺は戦うためにここに来たわけじゃない」


天龍「…… ?」(……なんだ……こいつ。見てくれは完璧に北方のソレだが…… ……なんだ。いやに貫禄がありやがる)


北方棲姫「なあ艦娘。聞いていいか?」


天龍「………… なんだよ。」


北方棲姫「ここは今、平和か?」


天龍「……喧嘩を売ってるのか、てめえ。……平和だよ。お前らさえ居なけりゃな。」


北方棲姫「だろうな。……なら、何よりだ。」






北方棲姫「……。」


天龍「…………今度はこっちが聞くぞ。」


北方棲姫「構わん」


天龍「お前らの目的は何だ?」


北方棲姫「……。 世界、征服……とでも言えばいいのか?」



北方棲姫「……――死ぬためだ。」


天龍「…… あ?」


北方棲姫「俺達は誰ひとり例外なく、死ぬために戦っている。死力を尽くし、殺し、殺され、血みどろの戦争の中、同胞の屍の上に倒れ伏すために戦っている」


天龍「………… なんだ……それ。」


北方棲姫「不思議に思わなかったか?どれだけ殺してもあふれ出てくる連中が、何故、本格的にこの地へ攻め込まないか。敵重要拠点をどれだけつぶそうと蘇る我々が、『一定以上』に踏み込まないことを。」


天龍「…………。」


北方棲姫「我々は志半ばにして死んだ者の集いだ。悔恨だ。だからこそ、二度目の生にしがみついた。……今度こそ……晴れ晴れと死ねるように。」







天龍「…………」


北方棲姫「……海の上で、志半ばにして死ねば……その水漬く屍は、やがて動き出すだろうな。理想の死に場所を求め」カチン、シュボッ……


天龍「…… お前……そのライター」


北方棲姫「命を賭けるべき御国に背いて―― ――? ……どうした。珍しいか、艦娘?」ジジ……


天龍「…………。 いや。懐かしいんだよ。あんたが吸うソレもな」


北方棲姫「……なんだ、それは。深海棲艦のセンスに懐かしさを覚えるのか」スゥ……フーッ……


天龍「だって、俺も同じだぜ。使ってるのも吸ってるのも」カチッ


北方棲姫「……! ………………」



――私も吸えれば、提督の気持ちがわかるでしょうか。


――わからなくていい。こんなものに頼る人間の気持ちなど


――私は、そんなものに頼る人間の気持ちが知りたいわけではありませんよ。


――提督の気持ちが知りたいんです。






天龍「…… なんだ? オイ、どうした」


北方棲姫「…… いや…………なんでもない。……そうか。…………そうか。」


天龍「いきなりピタっと止まるから驚いたぜ。火元が口にあんだから気ィつけろっての」


北方棲姫「……悪かったな。それより………… 待ち人がいるんじゃないのか?……ここへは、ひとりか?」


天龍「え?あっ……やっべ、提督姉妹を忘れてた……そろそろ戻ったほうがいいな」ゴソゴソ


北方棲姫「互いに、ここで見聞きしたことは無かったことにするとしよう。……互いの身の為だ」フゥ……グリ


天龍(……携帯灰皿まで持ち歩いてやがる。)「あぁ、そうだな。……けどまぁ、面白い話を聞けたぜ。納得したよ」


北方棲姫「こちらも珍しい経験が出来た。ありがとう、天龍」


天龍「……深海棲艦でも礼が言えるんだな。どういたしまして、だ」


北方棲姫「――――ああ、そうだ。最後に」ゴソッ……


天龍「何だ?………… ミトン?くれんのか?」


北方棲姫「……『箱は用意できなかった』。……似合うやつにくれてやれ」


天龍「……よくわからねえが……もらえるならもらっとくぜ。…………手、つやつやだな、お前」


北方棲姫「若いからな」






――――


天龍「…………」


姉提督「おかえり、天龍。もういいのか?」


天龍「……あ?あ、あぁ。もう大丈夫だ。久々の故郷を充分楽しんださ」


妹提督「なら何よりだね。えーっと……今日は日帰りだっけ?」


姉提督「いや、連休をとったからここに泊まるぞ。なんだ、仕事したいのか?」


妹提督「やだ。……あー、連休とかいつぶりかな……忘れてた……」


天龍「チェックインの時間がそろそろだろ?急ごうぜ、二人とも」


姉提督「そうだな。…… ん? 天龍。なんだ、それ?」


天龍「あー……これか。いや、その、なんだ。……通りすがりの女の子に貰った。」


妹提督「なにそれ!?気に入られたの?こんなヤニくせえヤンキーがっあ痛ッ!?」


姉提督「馬鹿野郎、いいヤンキーは昔から子供ウケがいいんだぞ。……で、どうするんだ?それ。」


天龍「……怒るとこ、そこなのか?いや……ちっこいから、誰かにあげようと思うけど」






天龍(……けど、あいつの言ってた……箱って何のことだ?もっとしっかりした形でプレゼントしたかったってか?)


天龍「…… …………っ?」


妹提督「そんじゃ私が貰っちゃおうかな、なんて…………どした?」


天龍「いや、中に……なんか…………」



…………キラッ…………



天龍「…………っ!!?」



姉提督「……指輪……か?」


妹提督「わお。プロポーズされてるじゃん……そんな高級品を、ただの子供が?」


姉提督「……。なんだか……裏がありそうだが。怪しいぞ?それ…… 道端に捨てるわけにもいくまい。」


天龍「いや……いい。いいんだ。そうだな。…………保管なんてするのも、面倒だし……」



天龍「……『どうせ、ずっとつけてるから』……」







――――



北方棲姫「…………」ザザ……


飛行場姫「……おう、おかえりー、アクタン」


北方棲姫「ああ、ただいま。留守を任せて悪かったな。……伝書はちゃんと届いたか?」


飛行場姫「おーう、問題なし。……しっかし懐刀として渡した艦載機を伝書バトみたいに使うかい、ふつー。しかも内容は「カエリ アサガタ 遅クナル」だけって」


北方棲姫「仕方ないだろう、通信手段が無いんだ。それに言ったとおり無傷で帰還したぞ」


港湾棲姫「ほんとに?ほんとに??どこにも傷とかない???ま……服とか破れてない……??」サワサワサワ


北方棲姫「触らずとも分かるだろうに。なんだおまえ、どっから出てきた」ゴスッ


港湾棲姫「あ痛った……あれ?なんかいつもより硬かったけど………… ………………あれっ!?」


飛行場姫「ほんじゃあ私は帰るねー。またいつでも呼んで頂戴、最近暇だから」


北方棲姫「ああ……とはいえ、あんなハイリスクローリターンなことはもうやらんとは思うがね。」


港湾棲姫「アクタン?アクタンミトンは!?あなたのおチャーミーなポイントはどうしちゃったの!?」


北方棲姫「ああ。喫煙するのに邪魔だから外した。そしたらどっかいった」


港湾棲姫「そんな艦載機みたいに飛んでいっちゃうものだっけ……?……まぁ、あなたが不自由してないならいいんだけど……」


飛行場姫「うっわあくたん手つやつやじゃん。はじめて見た」


港湾棲姫「あ、本当だ……もうこっちでもいいかも……」






タ級「お疲れ様でした、姫様。どうでしたか?」


北方棲姫「ああ、なかなか有意義な時間を過ごしたよ。……というと、なんだか旅行のように聞こえるが。」


タ級「いいじゃないですか、旅行で。お体に傷ひとつなく帰還なさってくれたんですから」


北方棲姫「うーむ……そういうものかなぁ………… …………ああ、そうだ。ユウ。ひとつ頼んでいいか?」


タ級「はい?なんでしょうか、姫様。」


北方棲姫「以前、お前が薦めてくれたライターがあったろう?あれをひとつ取り寄せてきて欲しい」


タ級「……?承知しました。少しお時間をいただきますが……よろしいですか?」


北方棲姫「いくらでもかまわんさ。それと、仕入れる煙草の銘柄も変えてくれ。アレじゃなければ何でもいい」


タ級「ふたつじゃないですか…… なんて言いませんよ。わかりました。……でも、どうしてまた?」


北方棲姫「気分転換…… ……ではないよ。何――」




北方棲姫「――深海棲艦になりたくて…………な。」


タ級「…………?」










提督「……そうだ。重心は常に中央、動ではなく静を心がけろ。海上では、決して急ぐな」


天龍「………… こう……か。……んむっ………… 上手くいかねえな……」グラッ……


提督「しかし……妙な話だな。お前が、海に出るためのリハビリをするなど」


天龍「似合わねえか?へっ…………だろうな。……けど、やらせてくれ」



天龍「――殺したい相手が出来たんだよ。この手でやるまで……俺はまだ、陸にあがるわけにはいかねえ」


提督「…… ……それほどまでに憎いのか?」


天龍「いいや?今でも愛してるよ。ていうか死んでも愛してる。あ、これじゃただのヤンデレじゃねーか……違くてさ」……ピタッ……


提督「……! そうだ、そのまま体勢を維持――……。 どういうことだ、天龍?」


天龍「…………。」




天龍「――死んでも死にきれないやつを、殺してやりたいんだ。あの、死んでも欲張りなジッポちゃんをさ」






後書き

地の文ナシをはじめてやったけど、まさかレ級の話より文字数が増えるとは思わなかった。

楽しかったです。


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2016-03-24 22:15:58

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