2016-10-29 18:11:51 更新

概要

千歌「……GANTZ?」Part1 2の続きです。
前回は前後編に分けましたが、今回から章ごとにします。
今回は前半部分を投稿します。
(10/28 後半部分を追加しました)


二章



――

―――

???(私が……私が何をしたっていうの?)




フードを深く被り右手には包丁。

左手には―――小さな黒い球



黒い球には“タカミ チカ”という文字と、この顔写真が写っていた。


そして、その人物の殺害が指示されていたのだ。



こんな指示に従う人間はまずいない。

報酬も無ければ、恨みもない。


ましてや彼女は自分が“全く知らない”人間である。




それでも彼女はタカミ チカの殺害を実行する。



――家族を人質にされているからだ。




彼女はまだ知らない。


これから自分が殺める人間と“再びあの戦場”に戻ることを―――





~初ミッションから二日後 教室~



千歌(自己紹介が終わった後、私たちは一旦家に帰ることにした)


千歌(善子ちゃんに聞きたい事は山ほどあったけど、善子ちゃんもかなり疲れていてそれどころじゃ無かったんだ。まぁ……当然だよね?)


千歌(部屋を出るとそこは、沼津駅の近くにある高層マンションの一室だったんだ)


千歌(善子ちゃんの家は割と近くにあるみたいだけど……まだ夜明け前だったから当然バスは無く、私は走って帰る羽目に)


千歌(内浦まで普通だったら徒歩で三時間はかかるけど……スーツの力を使ったら三十分もしなかったよ。凄いねこの服)


千歌(家に着いたら美渡姉に思いっきり殴られたよ……スーツ着てるから美渡姉の方が凄く痛かっただろうな)


千歌(『あんたいままでどこに行ってたんだ!!』『私たちがどれだけ心配したかっ!!!』って泣きながら怒鳴られてね……)


千歌(私はこの時になってやっと自覚したんだ。『――私は帰って来られた』ってね)


千歌(そしたら今までの緊張から解放されて……そりゃワンワン泣いたよね。騒ぎを聞きつけた志満姉も一緒になってさ……)


千歌(二人には詳しい事情は話せなかったけど、曜ちゃんを探してたって言って納得してもらった。……ウソじゃないもんね?)


千歌(――そして今日は休みが明けた月曜日、私は教室にいるんだけど……)





千歌「――転校生?」


クラスメイトA「そうなの!なんでも東京の学校から来る子らしくてさ」


クラスメイトB「本当はもう少し早かったらしいんだけど、ほら……曜ちゃんの件でちょっとごたごたしたでしょ?」


クラスメイトB「うちの学校だけじゃなくて全国的みたいだよ?ただ人数はそこまで多くないみたい」


千歌「………」


クラスメイトA「曜ちゃん……どこに行っちゃったんだろうね………なんでも三年生のクラスでも一人行方不明になったみたいだよ?」


先生「はーい全員席につけー」ガラガラ




先生「何人かは知ってると思うが、このクラスに新しいメンバーが加わる。入っておいで」



先生の呼びかけで、扉から一人の女の子が入ってきた。


長く綺麗な赤っぽい髪に少しつり目をしている。

多くの人は彼女を見れば綺麗な人だと感じるだろう。



転校生「音の木坂学院から来ました、桜内 梨子です。よろしくお願いします――」





~放課後~


千歌(綺麗な子だったな~)



千歌の率直な感想だった。

休み時間になれば彼女の周りには多くの人が集まった。

転校生、それも東京からとくれば聞きたいことは沢山ある。


千歌(でも、なんで私が話しかけた時あんなに驚いたんだろう??)



千歌が話しかけた時……正確には千歌の顔を見た時、梨子は激しく動揺した。



――まるで、いないはずの人間が目の前に立っている。

そんな反応だった。


おかしな反応をしたのは一瞬だけで、その後は何気ない会話をした。



千歌(私が誰かに似てたのかなー?驚かれたのはちょっとショックだったなぁ)



そんな事を考えながら廊下を歩いていると――




???「あなたがタカミ チカさん……?」




背後から声をかけられたとき

―――体が冷たくなる感覚がした。



あの時と同じだ……誰かに刺されたあの時と!!


嫌な汗をかきながら恐る恐る


振り返ると――




???「わたくしは、生徒会長の黒澤 ダイヤと申します。あなたは果南さんのご友人の高海 千歌さんですよね?」


千歌「あ……あぁはい!そうです私が高海 千歌です!!」


ダイヤ「??それはわかりました。では、わたくしの質問に答えてくださいます?」


千歌「はい?何ですか??」


ダイヤ「――果南さんが行方不明になっているのはご存知ですよね?」


千歌「っ!!……はい、“今朝”聞きました」


ダイヤ「今朝……ですか。なら最後にあったのはいつ頃ですか?」


千歌「先週の金曜日の夕方です。果南ちゃん家で話してました」


ダイヤ「金曜の夕方……ですか」


千歌「……探してるんですか?」


ダイヤ「当たり前ですわ!!わたくしの学校で、もう二人も行方不明になっているのですよ!?」


ダイヤ「黒澤家として……いや、生徒会長としても必ずお二人を探し出してみせますわ!!」




――できっこない。

事情を知っている千歌にとってダイヤの宣言はとても無意味なものだった。




千歌「そうですね……頑張って下さいね」



軽く頭を下げ、ダイヤのもとから去った。


後ろから何か言っていたようだが

千歌の耳には届かなかった―――





善子「―――遅かったわね?」



千歌は学校からそのまま善子の家に向かった。


あの時に聞けなかった事を全部話してもらうつもりだ。




千歌「いやー、ちょっと色々あってバスに乗り遅れちゃってさ」アハハ


善子「まあいいわ、んで?何から聞きたいですか?」


千歌「……あの部屋について全部」


善子「え……ざっくりしすぎじゃないですか!?」


千歌「だってさ!何から聞いたらいいか分からないんだもん!!」


善子「……仕方ないわね、だったらこのノートを見ながら順に話しますね?」


千歌「?なあに、そのノート??」


善子「前に果南さんから受け取ったの。このノートには部屋でのルールとか武器の使い方なんかがまとめてあるわ」


善子「私もしっかり読む時間が無かったから……ホント、無理してでも読むべきだった……」


千歌「善子ちゃん……」


善子「今さら言っても仕方ないか……いい?大前提としてあの部屋に転送されるのは完全に不定期よ。今もスーツはちゃんと持ってる?」


千歌「もちろんだよ!ちゃんと着てきた」


善子「いいわ。不定期といっても、転送される時間帯は必ず夜だから今日みたいに夜まで家に帰れない時はスーツだけでも持ち歩いて下さいね」


千歌「うん。このスーツにはかなり助けられたからね……着てなかったら生き残れなかったよ」


善子「スーツの重要性については説明の必要は無さそうね。次は武器についてだけど―――」




果南が残したノートを頼りにあの戦いで生き残る方法を話し合った。


――気がつくと辺りはすっかり暗くなっていた。




善子「結構話し込んじゃったわね……バスも終わっちゃったんじゃない?」


千歌「大丈夫だよ!このスーツなら走って帰れるからね!」ニコ


善子「ならいいけど……あんまり見られないようにしなさいよ?」


千歌「わかってるって!じゃあ善子ちゃん……また明日ね」


善子「……えぇ、また明日」




幸運にもしばらくの間、つぎのミッションが来ることは無かった―――







――

―――少女は部屋の隅でうずくまっていた。

机にはあの子を殺めた包丁。

そして小さな黒い球が置いてある。



???(なんで高海さんが生きてるの!?確かにあの時……それに黒い球にもミッション完了って………)



――黒い球から音声が流れだした。



ミニガンツ『次はこの方をたおしてくだちい。

クロサワ ダイア

クロサワ ルビィ

期限:明日の夕方

場所:生徒会室』―――






千歌(今日の桜内さん……なんか元気ないな)



善子との最初の会議から半月が過ぎた。

あの後も定期的に集まり、武器やスーツの訓練をしていた。


いつあの部屋に呼び戻されるのか……

びくびくしながら生活。



――という事無く、クラスメイトや善子と普通の学校生活を送っていた。

転校生ともそこそこ打ち解けていったのだが……


今日はいつもと違い、明らかに様子がおかしい。



千歌(なんかずっとうつむいてるし、話しかけても“何でもない”としか言ってくれないんだもんなー)


千歌(結構仲良くなれたつもりだったけど……そろそろもっと踏み込んで名前で呼んでみようかな?)




千歌「梨子ちゃん!お昼一緒に食べない?」


梨子「―っ!?ビクッ……ご……ごめんなさい。今日は一人にさせて………」


千歌「あー……うん、わかった。また今度誘うね」



梨子はそのまま教室からどこかへ行ってしまった。



昼休みが終わる頃には戻ったが、相変わらず暗い表情のまま。

放課後になると誰よりも早く教室から出て行った。



千歌(ヘンな梨子ちゃんだったなー、悩みがあるなら相談してくれてもいいのに)ムスゥ


クラスメイトA「おーい千歌ちゃん、廊下でいつもの子が呼んでるよ!」


千歌「あ!善子ちゃんだね!!今行くねー」







――

―――黒澤 ダイヤは生徒会長である。

基本的な業務は一人でこなすことが多く、帰りは遅くなる事が多い。

普段なら帰りも一人。


だが、今日は妹のルビィが一緒にいた。

帰りに二人で買い物をする約束をしているからだ。

姉妹の仲の良さは知り合いの中では周知の事で

特に珍しいことではない。


ほとんどの生徒は下校しており、校内にはおそらくこの姉妹しかいない。



――はずだった。

生徒会室の扉の前に深くフードを被った少女が立ちすくんでいる。

右手には先日、千歌の血液をたっぷりと吸わせた包丁が握られていた。




???(教室は全部確認して誰もいなかった。この時間帯なら見回りの先生もしばらく来ない……)ブルブル


???(前回は海に沈めたけど、二人の遺体を運ぶのは難しい……一旦ロッカーに隠して夜に移動させるしかない……)ガタガタ



部屋からは姉妹の楽しそうな笑い声が聞こえる。

これから自分たちがどうなるのかも知らずに。


???(………よし)




包丁を強く握りしめ、少女は扉を開けた―――






―――千歌は教室まで迎えに来た善子と一緒にいつものようにバスに乗っていた。


千歌「そういえば善子ちゃん、いつも私を教室まで迎えに来てくれるね?」


善子「何よ?ダメなわけ?」ムスゥ


千歌「そうじゃなくて、ほら……クラスのお友達はいいのかなー……なんて?」


善子「………私に友達がいない、みたいな言い方ね!!」プンプン


善子「私にだってね!ルビィとずら丸っていうリトルデーモンがいるのよ!!」


千歌「リトル……その子達は友達じゃないの??」


善子「いや……まあ、うん友達です………」


千歌「ならふつーに友達って言えばいいじゃん!善子ちゃんたまによく分からない言い方すくよねー」ジトッ


善子「ぐぬぬ……まだ中学の癖が残ってるのよ……」


千歌「でもさー……だったら何でその子と帰らないのさ?」


善子「……わかるでしょ?私たちがどんな立場なのか」


千歌「………」


善子「あんまり親しくしちゃうと……もしもの時悲しませちゃうから」


善子「だからさ……千歌さんが……同じ立場の人が近くにいてくれてホントに助かってる」


千歌「善子ちゃん……」


善子「―――雰囲気悪くしちゃったわね。そういえば一昨日、駅の近くに新しい雑貨屋がオープンしたんだけど……!?」ゾクゾク


千歌「!?ゾクゾク――善子ちゃん!これって!!」


善子「えぇ……この寒気が来たってことは、もうすぐ転送が始まるわ」






――

―――


???「ハァー……ハァー………ハァー」ガクガクガク


先ほどまで姉妹が楽しく会話をしていた生徒会室は


辺り一面


真っ赤に染められていた――



二人を仕留めるのに五秒もかからなかった。

部屋に入ると同時に

近くに座っていたルビィの喉を一突き。


間髪入れず、状況を理解し切れないダイヤの元に駆け寄り

頸動脈を切り裂いた。


床に倒れたダイヤは


首から大量の血を流しながらも

最後の力を振り絞り


ルビィの元へ……



弱々しく這って進むダイヤ。


既に絶命したルビィの手に届いたダイヤは


安心した表情のまま



そのまま動かなくなった――




???「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ………」



これで三人の人間を殺めてしまった。

人の命だ

軽いはずがない。


得体のしれない感覚が彼女を蝕む。





???「―――何をしてるずら?」



この日、出掛ける約束をしていたのは姉妹だけでは無かった。

確かに“教室”には誰もいなかった。

約束をしていたもう一人は

図書室にいたのだ。



目撃された事実を認識した少女の体は

自分にとって“最善の行動”へと

考えるより先に移していた―――






―――転送の前兆を感じた二人はすぐにバスから降り、人気の少ない場所に入っていった。


善子「いい?あの寒気を感じてたら、すぐに準備をしなさい?」


善子「しばらくすると突然動け無くなって転送が始まるからね」


千歌「わかってる!今日もスーツは下に着てきたっ!!」


善子「ならいいわ。……でもおかしいわね。まだ夕方だってのに転送が始まるなんて……」


千歌「確かに……ノートにも転送は夜のみって書いてあったもんね」


善子「………転送が始まったわ」




千歌と善子の体が徐々に消えていく。

少女達は再び

生き残りをかけたミッションへ送られた――






~GANTZの部屋~


転送された部屋にはすでに3人の女の子がいた。

幸か不幸か、この戦いに巻き込まれてしまったのだ。



千歌(それにしても……女の子しかメンバーが増えないなー)


新人A「うぅ……おねぇちゃん……」ブルブル


新人B「……大丈夫よ。お姉ちゃんがずっと傍にいますから」ヨシヨシ


新人C「ほえー、この黒い球はなんずらかー?」ペシペシ



千歌(……なんか一人だけ適応力が高いというか、緊張感が無い子がいるな)アハハ


千歌(それにあの人……どこかで会ったような??)



善子「―――………ルビィ? ずら丸?」ブルブル



善子の顔は青ざめていた。



ルビィ「善子ちゃん!? いつの間に来たの!??」


花丸「もう善子ちゃん! 私の名前は“花丸”ずらっ!」ジトッ


花丸「でも、善子ちゃんにルビィちゃんも来たってことは……この部屋は秘密基地か何かなの?」



善子「そんな……だって……なんでよ………」


千歌「よ……善子ちゃん? この二人ってさっき話してたクラスメイトだよ……ね?」



新人B「――高海さん? やっぱり高海さんですわね?」


千歌「え!? せ……生徒会長!!? 会長も来ちゃったんですか!!」


ダイヤ「ダイヤでいいですわ……。 どうやらお二人は何か知っていらっしゃるのですね?」


千歌「ほぇ? あぁ……はい。 ダイヤさん達よりは知っています……」


ダイヤ「でしたら今すぐ! 今すぐ状況を詳しく説明して下さい!!!」



ダイヤが激しい口調で千歌に問いただしたと同時に

GANTZから前回同様、ラジオ体操の音楽が流れ始めた。



ダイヤ「……何ですの? このふざけた音楽は??」イライラ


千歌「ごめんなさいダイヤさん……。時間が無いので詳しくは説明できません」


ダイヤ「は?」



千歌「この音楽が終わったら黒い球が開きます。 中には武器とスーツが入っています―――」


ダイヤ「ちょっ……――」


千歌「スーツは自分の名前、それか関係のある単語が書かれたケースに入っているのを着てください――」


ダイヤ「ちょっとま……――」


千歌「少し経つと外へ転送が始まりますが、絶対にその場から移動しないでください。 あと」


ダイヤ「ちょっと待ってください!! 一度に色々言われてもわかりません!!!」


千歌「とにかく! 何がなんでもスーツだけは着てください!! 今回は生き残ることだけを考えればいいんです!!」



ダイヤ「生き残る……? それって一体……」



GANTZ『てめえ達は今から

この方をヤッつけてに行って下ちい

ひょうほん星人 特徴:きもい 好きなもの:かがく 口くせ:ごごご』



ガシャン―――!



勢いよく両端開き、武器が現れた。



ルビィ「ピギィィ!? び……びっくりした……」


花丸「おぉーー、未来ずらぁ」キラキラ




いままで黙っていた善子が激怒した。




善子「いい加減にしなさいよずら丸!! あんた自分の状況分かってんの!!?」


花丸「ずらっ!? よ…善子ちゃん……?」ビクッ


善子「やけにテンション高いけど、ピクニックに行くのとはわけが違うのよ!!? そんな浮かれた気持ちでいたら気持ちでいたら絶対に死んじゃう!!!」


善子「なんでよ……なんであんた達この……ヒック……こんな部屋なんかに……」



花丸「………マルにはよく分からないけど……ごめんね?」


善子「……バカ、分かってないのに謝ってんじゃないわよぉ……」グスッ




千歌「―――……時間がありません。三人は早くスーツに着替えてください。善子ちゃん、準備するよ」


善子「グスッ……ええ、分かったわ」




全員の準備が完了したのと同時、順々に転送が始まった―――。





――

――――

――――――完全に誤算だった。

まさか近くにまだ生徒が残っていたなんて。


口封じの為、反射的に息の根を止めてしまった。

が、この子の殺害はあの黒い球の指示では無い。


動揺した彼女は、思わず部屋から飛び出した。



???(ナンデナンデナンデ………誰もいないはずだったのに!? そもそもコロス必要は無かった!! 顔は見られて無かったんだ――いやもしかしたら―――証拠は残せない―――あれは仕方ない――ワタシハ、ワルクナイ……そう、悪くない)ブツブツブツ


???(―――戻って処理しなきゃ)




これは彼女の才能なのだろう。


凄まじい罪悪感に襲われようとも

想定外の事態に陥ったとしても


すぐさま、次に何をすべきか瞬時に判断し

冷静かつ大胆な行動へ移せるのだ。



???(隠す遺体が三人に増えただけ。リスクは多少高くなったけど問題無い……)




急いで生徒会室へ戻った。

相変わらず辺り一面血で染まっていたが――



???「……えっ?」



ついさっきまでそこにあった遺体が忽然と消えていたのだ―――






~沼津市内 某高校 特別棟三階 廊下~


ルビィ「ここって……学校?」


ダイヤ「ええ……ただ、浦女ではないようですね」


花丸「外に出られたならこのまま帰れるんじゃないかな?」


善子「ダメよ。今回はこの学校の敷地が範囲だから、その外に出ると死ぬわよ」



レーダーで今回の範囲を確認した善子は三人に警告する。



千歌「ちょっとマズくない? この時間帯だとまだ生徒が残ってるんじゃ……」


善子「かもね。 まあ、向こうからは私たちは見てないから大丈夫だと思うわよ?」


ダイヤ「見えない?」


善子「そうよ。 ただこっちからは干渉出来るから人がいても無闇に触れないようにしなさいよ?」



ルビィ「あの……これから私たちは何をするんですか?」ビクビク


千歌「簡単に言えばサバイバルゲームをするんだよ。 出てくる敵を全員倒せばゲームクリア。 逆に全員やられたり、時間内に倒し切れなかったらゲームオーバー……」


花丸「ゲームオーバーになったら……マルたちは――」


善子「勿論死ぬわよ? 今度こそ本当にね」


花丸「え? マルは死んでるの??」


善子「………まさかそこから理解してなかったとはね」ヤレヤレ


千歌「あははは……」




ダイヤ「!? 何か来ましたは!!?」



ダイヤの声に千歌と善子はすぐに銃を構え臨戦態勢に入った。

その先には、頭部の無いヒト型の骸骨か立っていた。


数は……廊下の曲がり角や教室の中から現れどんどん増えていく。



花丸「うわぁ! 後ろからも来てるずらぁ!!」



千歌「この数じゃ小さいXガンじゃ厳しそうだね?」


善子「私のデカいやつなら大丈夫よ! 後ろの方は任せてっ!!」




『Xガン』、果南が残してくれた本にはイラストと共にそう命名されたこの銃にはハンディサイズタイプと大型のXショットガンがある。

どちらも着弾した部位を内部から爆発させる。

発射してから効果が出るまでタイムラグがあるが、二つの大きな違いは威力と射程距離、それに弾切れの有無である。


ハンディサイズのXガンは小回りが利き、扱いやすい反面

射程が短く三発連射するとエネルギー切れとなり、チャージの為に一定時間使えなくなる。


ショットガンタイプは大きく近接戦には向かないが、遠距離からの狙撃も可能で威力も高く、フォアグリップのスライドを引くことで瞬時にチャージが完了し連射が可能となっている。



善子とダイヤはこのXショットガンを部屋から持ってきていた。




しかし千歌はダイヤからその銃を受け取らず、構えていたXガンを右大腿部のホルスターに収める。


そして逆側のホルスターにある柄と鍔の部分しかない刀に手をかけた。



果南により『ガンツソード』と命名されたこの武器は通常はグリップ部分のみであるが、スイッチを押すことで伸縮自在の刀身が出現する。

その形状は日本刀に近く切れ味は鉄をも切り裂く。




千歌は刀身を程よい長さまで伸ばし、体の正面に構えた。



千歌「―――さあ、行くよっ!!」





――――――

――――

――

ルビィ「す……凄い………」


花丸「あれがホントに喜子ちゃんなの……?」




善子は迫りくる敵の群れを次々に狙撃していく。

時々撃ち漏らしがあるものの、格闘による近接攻撃により対処している。


千歌との訓練により前回までと明らかに動きが良くなっていることは

善子自身も自覚していた。



善子(大丈夫……数は多いけど、前の敵よりは随分動きが遅い! 落ち着いて戦えば勝てる!)ギョーン!ギョーン!ギョーン!



善子側の敵の数も残り僅かになり殲滅まであと少しとなった。





ダイヤ「………」



千歌の戦いを見ていたダイヤは唖然としていた。

目の前にはバラバラになった骨の残骸と千歌の後ろ姿が映っていた。



一瞬……まさに一瞬の出来事であった。


武器を構えた千歌が敵陣に切りかかったと思えば

次々と敵が倒れていった。


敵からの攻撃は一切食らわず、一撃で敵を行動不能にしていく。

数十体はいた敵の群れは千歌の前では無力であった。




ダイヤ(――千歌さん……あなたは一体……)



千歌「善子ちゃん! そっちはどうなった!?」


善子「あと少しっ!ギョーン!……よし、全部倒したわ!」


千歌「ふぅ……これでひと段落だね」


ルビィ「これで終わったの?」


善子「まだよ。ガンツにあったあの星人を倒せてない」


花丸「がんつ??」


千歌「部屋にあった黒い球の名前だよ。 あの写真の敵が今回のミッションのボスみたいなものだと思う」



善子「レーダーだと下の階に居るみたいね……三人はここにいてもらう?」


千歌「いや、一緒に来てもらおう。 これで最後じゃないかもしれないからね」




周囲に警戒しつつ、五人は敵がいる下のフロアへ向かった。






~二階 生物実験室前~


善子「レーダーによるとこの中ね」


ダイヤ「生物室……ですか」


千歌「どんな敵か分かりません……三人は私たちの後ろにいてください」



三人は無言で頷く。

千歌と善子は目で合図を送ってから静かにドアを開けた。




中に入ると、実験室の後ろによくある人体模型が立っていた。

言うまでもない、写真の敵である……



善子「……私が狙撃するわ。 外した時はすぐに切りかかって…」


千歌「わかった。 準備しとく……」カチャッ



善子は銃の標準を敵に向ける。


トリガーにかける指はブルブルと震えている。


大きく息を吐き、トリガーにかけた指に力を加えた直後――



――星人は素早く横に動いた……




善子「んな!?」ギョーン!



善子が撃った弾丸は先ほど星人がいた壁に当たり、大きな穴を開けた。




千歌は星人が回避した刹那

地面を勢いよく蹴り、星人との距離を詰める――



スパッ――!



千歌の斬撃が敵の左腕を切り落とす。

――が、敵は構わず後ろの四人へ襲い掛かった。




銃を外したショックと千歌が仕留めそこなった驚きで善子は硬直している。


星人は残った右腕で善子と花丸を吹き飛ばす。



バキッ―!



善子は勢いそのまま窓ガラスを突き破り外へ、花丸は実験室の机に叩きつけられた。


衝撃で机は大破、花丸は自身に何が起こったか分からないでいた。




花丸(あ……れ……? 痛くない??)



花丸はスーツの自動防御により無傷である。




しかし星人の攻撃は止まらない。


口から得体のしれない液体を

ルビィに吹きかけた――




ダイヤ「――! ルビィ!!!」ドン



ダイヤはルビィを押しのけ、液体の直撃を防いだ。


――液体の一部がダイヤの左腕と右足にかかった瞬間

瞬く間に触れた部分からみるみる溶けていったのだ。



ルビィ「っ!!? おねぇちゃん!!!?」


ダイヤ「あアあァァあっ!!! くうぅぅううウヴヴぅぅ!!!」



ダイヤは今までに味わったことのない痛みにのたうち回っている。

星人が止めを刺そうともう一度液体を口に溜める。



ギョーン――!!



奇妙な発砲音が教室に響く――

不思議に思った星人は音のする方向を向くと


千歌がXガンを構えていた。



バンッ――!



星人の頭がはじけ飛ぶ――





千歌「ルビィちゃん!! 花丸ちゃん!! 無事!!!?」


ルビィ「千歌さん!!! おねぇちゃんが!! おねぇちゃんがぁ!!!!」


千歌「……よかった。 まだ生きてる」フゥ



千歌がダイヤの生存を確認すると転送が始まった。


今回のミッション

誰一人死者を出さずに生還する事ができたのだ――







~GANTZの部屋~


ダイヤ「……わたくしは…確かルビィをかばて手足が……」


千歌「ミッションが終わった時に生きていれば、どんな大ケガをしても元通りになるんですよ」


ルビィ「グスッ……よかった、よかったよぉ……」ポロポロ



善子「うう、私がしっかり当ててれば……」


花丸「善子ちゃんも大丈夫だった? 窓から落っこちてたけど……」


善子「ピンピンしてたわ! スーツ着てなきゃ大ケガだったけどね」


花丸「やっぱり私が無事だったのもこの服のおかげたったずらかー」ペチペチ



千歌「ほら、採点が始まるよ」




いつの間にかガンツの表示が切り替わり採点画面となっていた。


GANTZ『硬度10


      0点』




ダイヤ「……は?」イラ




GANTZ『ずら丸

      

      0点』




花丸「だから花丸ずらー……」



GANTZ『ピギィ


      0点』



ルビィ「擬音語……」




GANTZ『堕天使(笑)


       22点


TOTAL 32点』




善子「ふぅ……まあまあって感じね?」



GANTZ『ちかっち


       42点


    TOTAL 52点』




善子「うお!? 42点とか……凄すぎじゃない?」


ダイヤ「そもそも……この点数てなんですの? そろそろキチンと説明して頂けますわよね?」



千歌「……そうだね。 ここじゃなんだから、一旦私の家に行こうか」





――

――――

――――――

彼女は生徒会室の清掃を済ませていた。

遺体が消えていた事が気がかりだが、無いものは仕方ない。

むしろ運ぶ手間が省けたと思えばいいと考えていた。



???(もう……帰りましょう………)



さすがの彼女も疲弊しきっていた。

また明日も“いつも通りの自分”を演じるためには

休養が必要である。


使用した雑巾をカバンにしまい、生徒会室を後にした。




――そんな彼女をずっと監視していた人物の存在に最後まで気が付く事はなかったのである。






~千歌の部屋~


千歌「―――説明はこんな感じかな……」



千歌はダイヤ、ルビィ、花丸に自分達があの部屋で経験した事など

知っていることを全て説明した。


話を聞き終わった彼女たちの雰囲気はとても暗く重いものとなっていた。



ルビィ「……ルビィたちはホントに一回死んじゃったんだね?」


善子「ええ……あの部屋に来たってことは間違いないわ」


花丸「………あの時、善子ちゃんが言ってた意味……わかったよ」グスッ


善子「ずら丸……」



ダイヤ「あの部屋から解放されるには、星人を倒して100点を取る以外に方法は無いのですね?」


千歌「……おそらく」


ダイヤ「行方不明になったお二人もあの部屋で……」


千歌「………はい」



ダイヤ「……覚悟はできましたわ。千歌さん、善子さん、私に戦い方を教えてください!」


千歌「ダイヤさん?」


ダイヤ「戦いが回避出来ない以上、生き残るすべを身に着けることは必然」


ダイヤ「――皆さんと一緒にあの部屋から出たいのです!!」


ルビィ「ルビィも!! 見てるだけじゃ出られないなら……!」


花丸「……マルもお願いします」ペコ



善子「みんな……」


千歌「――もちろんだよ!! 全員であの部屋から解放されよう!!」






~同日 同刻 浦の星女学院 理事長室~


浦の星女学院の理事長に就任している人間は全国的にも類を見ない学生である。

しかも自身もその学校の三年生に所属している。


本来なら彼女もこの時間帯は自宅に帰っているのだが

家ではできない調べものをする為に理事長室に残っている。


ノートパソコンのディスプレイには複数のウェブサイトのページが表示されている。



内容は

『最近発生している行方不明事件』『沼津市内で多発している建物の破壊事件』

『5年前に発生した高速道路でのバス爆破事故』『大人気スクールアイドルに関する都市伝説』『謎の部屋にある黒い球』――

などなど様々である



???「……やっと分かってきたわ」



彼女はパソコンを閉じ、窓の方を向いた。




???「近いうちに関係者へ話を聞く必要がありますネ……まあ、全部は答えてもらえないでしょうけど――」



彼女が核心に辿り着くのに時間はかからないだろう。

“決定的な瞬間”を生徒会室で目撃したのだから。



???「――もうすぐ見つけてあげるわ……果南っ♪」





―――三章へ


後書き

ペースが早いのか遅いのか分かりませんが、この物語も二章が終わりました。
メンバーもほぼ登場し、揃うまでもう少しかも?
時系列はアニメ寄せで書いているのでそこをしっかり意識して続きを書きたいと思っています。

Part 4も読んで頂けると嬉しいです!


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