彼と彼女の記憶。
心機一転ですよ。
何かが新しくなった、あの作者です。
文学に挑戦してはみますが、文学かは怪しい...いや、違うか...?
「........提督」
それはなんら変哲のない日だった。
太陽の光のおかげで海が干からび全てが砂漠と化してしまったとか、逆に雨が降りすぎてどこもかしかも洪水に見舞われただとか、そんな非現実的な事はない、普通の日常。
「......提督...?」
「......zzz...」
僕等は忘れない、この時。
この瞬間から始まった事を。
「は、や、く!起きろ!」
「は、はい!?」
彼の耳元である女性の怒号が鼓膜を大きく刺激する。
その音の反響と鼓膜に対する衝撃により、提督は飛び起き何時ものように地面に正座をした。
「............」
何も敷かれていない木材で出来た床の上に、正座をしている為、案外冷たい。
彼は己が怒られているという事実を尻目にこの部屋にカーペットを敷こう、など何とも今の状況には考えられない馬鹿な事を考えていた。
「......仕事中に眠るのは最近仕事量が多くなっていますから分かりますが....流石に寝過ぎです」
「はい......」
これは弁明の余地はないと心の底から反省をする彼。
彼は子供みたいにイタズラや嘘を吐く事もあるが、全て“軽く”がモットーだ。
軽くでもイタズラをしたり嘘を吐いた事には変わりないが、相手が泣いたり悲しめば勢いよく頭を下げるし、出来るだけの事はするという、何ともお調子者とお人好しを掛け合わせた様な性格の持ち主であった。
「......はぁ......」
提督の反省した姿を見て、彼女は僅かながら「やり過ぎたか?」とふと考える。
しかし、ここは心を鬼にしてやらなければ!と自分を自分で鼓舞させる。
「......もう...!なんていうか......っっ!!」
しかし、彼女は“根っからの善人”だ。
こんな事を聞いたことがある。
人は産まれた時から悪、産まれた時から善であると考えられている考え方。
善悪二元論。
なら、彼女は産まれながらの善人と言えるだろう。
それは恐らく彼女を知っている人間ならば全員がそれを肯定する筈だ。
しかし、それは"他人から見た彼女"であり、
現実は勿論、上っ面だけだ。
中身のない笑み、上辺だけの態度、心の底から湧き上がらない感情。
本当にそんな天使の様な奴がいるのならば会ってみたい、私は勘弁だが。
「......その...「ァアァ!?」あ、ハイすみません......」
彼女の歪みに歪みきった表情に彼はより一層背筋を伸ばし、硬直した。
しかし、そんな表情になりながらも可愛いと思えるのは日頃の印象のおかげなのだろう。
「......もう、良いです......やりましょう、やれば怒らないですから...」
「......はい...」
そりゃあ、そうだ。
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